第12回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録

健康局 健康課予防接種室

日時

令和元年6月5日(水)10:00~11:30

場所

中央合同庁舎5号館 講堂(低層棟2階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議事

 

○元村予防接種室長補佐 それでは定刻になりましたので、第12回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会を開催いたします。本日は御多忙のところ、御出席を頂き誠にありがとうございます。開会に先立ちまして、予防接種室長の林より一言、御挨拶を申し上げます。

○林予防接種室長 本日はお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。4月に予防接種室長を拝命いたしました林でございます。久しぶりの開催になりましたけれども、本日はロタワクチンに関する御審議を頂く予定としております。これまでの議論を踏まえまして様々な技術的観点から、また改めて御意見いただきたいと考えているところでございます。ワクチンにつきましては社会的な期待も多い一方で安全性でありますとか、安定性、様々な求められているものも高まっておりますので、この場で十分な御議論を頂きまして、私たちも予防接種対策を進めていきたいと思います。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は傍聴に関しての留意事項の遵守をお願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。

 続きまして、委員の出欠状況について御報告いたします。現在、委員8名全員に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会の規定により、本日の会議は成立していることを御報告いたします。

 ここで新しく就任された委員の方を御紹介いたします。まず始めに、予防接種基本方針部会の会長である倉根部会長より、脇田委員長の後任として、国立感染症研究所副所長でいらっしゃいます大西先生を事前に御指名していただいております。大西委員長です。

○大西委員長 大西です。よろしくお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 次に福島委員の後任になります大藤委員です。

○大藤委員 大藤です。よろしくお願いします。

○元村予防接種室長補佐 また、本日は参考人として2名の方に御出席をいただいております。予防接種推進専門協議会からの御推薦で、福岡看護大学基礎・基礎看護分野 基礎・専門基礎分野教授の岡田賢司参考人です。

○岡田賢司参考人 岡田でございます。よろしくお願いします。

○元村予防接種室長補佐 続きまして、ファクトシート作成の関係で、富山県衛生研究所所長の大石参考人です。

○大石和徳参考人 大石でございます。よろしくお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 それでは申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。これ以降の写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。

 議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきます。前回までと同様にペーパーレスの開催とさせていただきます。お手元のタブレットには1、議事次第、こちらのほうには配付資料一覧と委員名簿も含まれております。2に座席表、3以降が資料1から3、参考資料1から4、最後に各委員からの審議参加に関する遵守事項の資料を格納しております。不足の資料等がございましたら事務局にお申し出ください。それでは、ここからの進行は大西委員長にお願いいたします。

○大西委員長 皆様、おはようございます。本日はお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。今回から委員長を務めさせていただきます国立感染症研究所の大西と申します。これまでの議論についても十分に調べて勉強してきたつもりではございますが、足らないところがありましたら皆様から積極的に御発言いただきたいと思います。それでは、事務局から審議参加に関する遵守事項について報告をお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議会参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取り状況、申請資料への関与について申告を頂きました。各委員、参考人からの申告内容につきましては資料の➉のタブレットに格納しておりますので、御確認いただければと思います。

 本日の審議事項はロタウイルスワクチンについてを予定しております。こちらのワクチンの製造販売業者はグラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社となっております。本日の出席委員及び参考人の申し出状況及び本日の議事内容から、今回の審議への不参加委員及び参考人はおりませんことを御報告いたします。以上です。

○大西委員長 それでは議事に入りたいと思います。審議事項のロタウイルスワクチンについて審議を始めたいと思います。どうぞ活発な御議論をよろしくお願いいたします。まず、事務局より資料1から3の説明をお願いいたします。

○吉川予防接種室長補佐 事務局でございます。まず、資料1から順に御説明をさせていただきます。資料1に関しましては、ロタウイルスワクチンについてのこれまでの経緯を整理したものです。昨年6月にロタウイルスワクチンについて議論した際にもこちらの資料を付けさせていただきましたが、それをアップデートした資料となっております。かいつまんで御説明させていただきます。

 平成237月、ロタリックスが製造販売承認され、平成241月にロタテックが製造販売承認されております。これを受けまして、平成241月、当時の感染症分科会予防接種部会にて、ロタウイルスワクチンに関する作業チームの設置が検討されました。さらに平成249月、感染症予防接種部会に「ロタウイルスワクチンに関するファクトシート」が報告されました。こちらのファクトシートは、参考資料1として、本日資料に付けさせていただいております。こちらのファクトシートを受けまして、その後、対象疾患の基本的知見、予防接種の目的と導入により期待される効果、ワクチン製剤の現状と安全性、これらについてより深く検討することとなりました。

 平成2511月、「ロタウイルスワクチン作業班中間報告書」が報告されております。この報告書の中で、以下の3つの課題について整理するよう結論づけられております。➀腸重積のベースラインデータの整理、➁リスクベネフィット分析、➂費用対効果の推計です。このロタウイルスワクチン作業班中間報告書に関しましては、参考資料2として本日の資料に付けております。

 続きまして平成286月、第4回ワクチン評価に関する小委員会において多屋委員、池田委員から「ロタウイルスワクチンに関する最近の知見」、「ロタウイルスワクチンに関する評価・分析」が報告され、これまでに明らかになっている科学的知見について事務局で整理し、3つの課題について引き続き検討することとなっております。これらの報告は参考資料3、参考資料4に対応いたします。

 その後、議論を重ねまして、平成306月、第9回ワクチン評価に関する小委員会において、研究者から平成29年度に実施された研究の概要について報告され、3つの課題について、発表内容等を踏まえ、事務局において論点ごとのデータ等の整理資料をアップデートした上で、次回の小委員会において検討する方針となりました。これを受けて本日、小委員会を開催する運びとなっております。

 続きまして資料2です。資料2に関しては、「ロタウイルスワクチンの技術的な課題に関する知見(20196月再整理版)」という形でお示しをしております。これも昨年6月の小委員会の際にお示しした資料のアップデート版になります。

 まず、腸重積ベースラインデータの整理です。こちらは作業班中間報告書まで、平成2512月の知見では、当時の大石研究班の結果、あるいはオーストラリアの結果などで腸重積のベースラインデータのデータが示されております。また、2.「ロタウイルスワクチンに関する最近の知見」、平成2712月では更にアップデートした大石班の研究班の結果及び海外でのデータなどが示されています。

 2枚目です。3、第9回ワクチン評価に関する小委員会における発表内容(20186)、こちらが昨年6月に当時、神谷先生に御発表いただいた研究の内容です。1つ目の○から御説明します。ワクチン導入前の腸重積発症ベースラインについては、2007年から2011年の5年間に発症した腸重積について後ろ向き調査によって把握をされております。2つ目、20121月から20149月までの期間については、前向きの調査によって腸重症例が把握されております。3つ目、1歳未満の乳児における腸重積の発生率は、ロタウイルス導入前は102.8/100,000人年、ロタウイルスワクチン導入後は94.0/100,000人年とロタウイルスワクチン導入後、明らかな腸重積症の増加は見られなかったというデータになっております。4つ目、月齢別では3か月児での発症が導入後増加傾向を認めたが、統計学的な有意差はなかった。5つ目、ロタウイルスワクチン接種後、1回目の接種後1週間以内に腸重積症を発症するリスクが高くなる。こうした結果が昨年6月の発表で示されております。

 次のページです。「リスクベネフィット分析(腸重積の増加リスク)」です。1.「ロタウイルス作業班中間報告書」までという所です。2つ目の○、海外のデータ、2011年のオーストラリアからの報告ではワクチン導入前後の比較により、19か月の乳幼児全体での増加はないが、3か月未満児での若干の増加が指摘された。RV5というのはロタテックですけれども、接種後、17日後のRR=5.3、接種後121日後のRR=3.5という結果が示されております。

 2.「ロタウイルスワクチンに関する最近の知見」まで、(平成2712)というところです。先ほどの大石先生の研究班の結果と同様のものがお示しされております。また、海外のデータではメキシコ、オーストラリアのデータが同様に示されている形になります。

 3.その他の知見です。国内での製造販売後の安全性データの分析、20181031日時点までの結果をお示しております。これによりますとロタテック(RV5MSD)について医療機関納入量は4053.073本、そのうち腸重積の全報告数が141例、ブライトン分類に基づく診断確定数が121例、これによりますと出荷10万本あたり3.0例という形になります。そのうち入院が105例、外科手術例18(うち3例は腸切除)、死亡は0例という結果でした。

 ロタリックス(RV1GSK)についてです。納入量は5244,482本、全報告数は193例、うちブライトン分類に基づく診断確定数が171(出荷10万本あたり3.3)になります。入院が157例、外科手術例が23(うち6例が腸切除)、死亡0例という結果になっております。

 4ページ目です。特定使用成績調査という調査に基づくものを今回初めてお示ししております。特定使用成績調査に関しては下の※書きでお示ししておりますけれども、製造販売業者が、発売後に特定の対象集団、今回の場合ですと小児に対して副反応などを調べた市販後の調査ということになります。これによりますとロタテックに関しては1877例を登録しておりまして、腸重積の発症例が10万人年あたり159.1例、このうち13例を報告されている腸重積のうちブライトン分類レベル112例という形になっております。ロタリックスに関しては1982例が登録されておりまして、10万人年あたり腸重積症の発症率は47.45例の腸重積の報告のうち、ブライトン分類レベル12例という結果になっております。

 次のページです。リスクベネフィット分析のベネフィットのものになります。1.2.ともにこれまで発売後に示されてきましたロタウイルスワクチンに伴う入院例、あるいは外来症例の減少に関しての様々なデータがお示しされております。

 次のページです。3.9回ワクチン評価に関する小委員会における発表内容(20186))、こちらは昨年6月に御発表いただいた大石研究班、管研究班の報告内容です。多数の論文においてロタウイルスワクチン導入後のロタウイルス胃腸炎による外来患者、入院患者の減少が示されている。三重県津市、岡山県倉敷市、千葉県いすみ市における研究ではワクチン接種導入前後で、ロタウイルス胃腸炎入院症例や外来症例が減少している。三重県津市では「1歳未満」、「1歳以上2歳未満」、「2歳以上3歳未満」の年齢でワクチン導入後で、有意に入院率が減少、ロタウイルスワクチンのベネフィットリスク分析では腸重積症が1例生じる間に、480例のロタウイルス胃腸炎入院例が予防されるという結果が示されています。

 7ページ目です。費用対効果の推計になります。1.Satoらの報告によれば日本におけるロタウイルスワクチン導入の費用対効果について、1QALYを獲得するのに保健システム、社会のそれぞれの立場から見た場合、978.1万円・86.3万円であったことから社会の立場から見た場合、費用対効果的であるとしているという結果が、当時は示されております。一方、2.国内のデータです。中込らの研究結果の再解析によれば、RV1RV5、いずれを使用した場合でも、接種群の1人あたりの期待費用が被接種群の期待費用を上回る結果であることが示された形になっております。こちらの数に関しては後ほど資料3で具体的にお示しをしているところです。

 続きまして資料3を御覧ください。ロタウイルスワクチンの技術的な課題についてです。まず、資料の構成を御説明差し上げますと、今回、御議論いただく技術的な課題➀➁➂、それぞれについて課題及び現在明らかになっているデータ及び論点をそれぞれお示ししております。論点に関しては本日、御議論いただきたい論点としてお示ししている形になります。

 2ページ目です。技術的な課題➀腸重積のベースラインデータの整理について、課題です。海外ではロタウイルスワクチンの初回接種1週間以内やワクチン接種後の3か月未満児について、腸重積の発症率が自然発症率よりも増加することが報告されている。ロタウイルスワクチンの安全性を継続的に評価する観点から、腸重積の発症率のベースラインデータ及びワクチン導入に伴う腸重積症の発症率の変化についての整理が必要であるということをお示ししております。これは今までの議論に沿った形で、あくまでも確認としてお示ししたものです。

 マルAの腸重積の発症率のベースラインデータ、日本の乳幼児の腸重積のベースラインの発症率は、海外と比較して相対的にわずかに高い値が出ております。また、マルB、ワクチン導入に伴う腸重積の発症率の変化です。日本のワクチン導入前後の腸重積の発症率については、1歳未満全体で見ますと明らかな増加はなし。月齢3か月の児については、増加傾向はあるものの統計的な有意差はありませんでした。また、月齢3か月、あるいは4か月頃から腸重積のベースラインの発症率が増加しているというデータも、こちらの結果から得られております。

 続きまして3ページ目です。エビデンスとして示されてきたマルCです。Self Control Case Seriesによって、日本においても海外の報告と同様に1回目のワクチン接種後1週間以内に腸重積を発症するリスクが増加しているというデータが示されております。参考の所は、先ほど、御説明差し上げた製造販売後のデータになります。論点を2つ、お示しをしております。腸重積のベースラインの発症率やロタウイルスワクチン導入に伴う腸重積増加リスクについて現状で収集可能なデータに基づき一定程度明らかになっていると考えられるか。論点2つ目、ロタウイルスワクチンの安全性を継続的に評価する観点から、腸重積の発症率に関して、これまでに明らかになったデータと今後の腸重積のニタリングとの関係について、どのように考えるか。論点2つ目に関しましては補足をさせていただければと思います。次の4ページ目、参考、腸重積の発症数と報告数との関係(イメージ)と示している所を御覧ください。上の所に四角囲みで文字を書いておりますけれども、具体的にはグラフのほうを御覧ください。

 グラフの中では横軸は時間、縦軸は腸重積の発症数のイメージとして示しております。グラフの中では3つの波線がございます。マルア、乳児における腸重積の全発症数。マルイ、現状、副作用等報告によって報告されている腸重積の報告数。マルウ、定期接種化後、副反応疑い等報告等によって報告される腸重積の報告数になります。マルアが乳児における腸重積の全発症数、真の発症数とも言い替えることができるかと思います。現在までに大石先生の研究班などで研究を行ってこられました例えば10万人年当たり、約100の発症率、そういったものはこのマルアに該当する発症数とお考えいただければと思います。

 一方でワクチン発売後、医薬品医療機器等法に基づきまして、副作用等報告が行われていますけれども、そちらによって報告されている腸重積の報告数はマルイになります。マルアとマルイの差に関しましては、マルイは、あくまでもワクチンを接種した患者さんで、かつ、ワクチンによるもの、ワクチンと因果関係があると考えられるものなどについて報告される形になりますので、当然、マルアのうちの一部がマルイとして報告される形になります。

 一方で、ワクチンの定期接種化後、制度が変わりまして予防接種法に基づいて副反応疑い報告も併せて報告される形になります。そうすると報告されてくる腸重積の発症数というものは、マルウの波線になってきます。こちらに関してマルイと比較しましてマルウは増加することが予想されます。なぜならば、マルウの定期接種化後に行われる予防接種法の報告では、より幅広く腸重積の発症が報告される形になること、又、腸重積による認知度が保護者の方々、あるいは医療者の中でも向上することなどにより、マルイからマルウにかけて➀の矢印のような形で報告数が増加することが事前に予測される形になります。一方でマルウの波線とマルアの波線もやはり差がある形になると予想されます。これはマルウの報告によりましても、例えば、ワクチンを接種して時間がたってから発症したような、ワクチンとは関係がない腸重積に関しては報告されない形になりますし、当然、ワクチンを打たなかった方に関しては腸重積は報告されない形になります。こうした形でマルウの波とマルアの波にも➁の両矢印のような差があるというところが予測される形になります。

 これを受けて、先ほどの前ページの論点2のような形でロタウイルスワクチンの安全性を継続的に評価する観点から、腸重積の発症率に関してこれまでに明らかになったデータと、今後の腸重積のモニタリングとの関係についてどのように考えるかというところを論点として示しております。

 5ページ目、技術的な課題➁、「リスクベネフィット分析」についてという所です。課題としてはロタウイルス感染症予防接種法の対象疾病とすることの是非を判断する観点から、ベネフィットとリスク、これを基にしたリスクベネフィットの評価が必要ということになります。マルA、ロタウイルスワクチンのベネフィットです。ワクチン発売後、ワクチンの有効性を示すデータが多数、報告をされています。いずれも昨年6月の資料から抜粋したものであります。

 6ページ目、マルB、ロタウイルスワクチンのリスクベネフィット分析になります。日本でのロタウイルスワクチンによるリスクベネフィトの推計では、海外の報告と同等の結果が得られております。左側のスライドでは、三重県津市のデータを基に年間ロタウイルスワクチンによって、5歳未満のロタウイルス胃腸炎入院例が年間12,000例予防されていると推計されております。一方で右上、年間の腸重積症の増加を見積もった場合に25症例という数が推計されております。12,00025を比較した場合の480というものがロタウイルスワクチンによって予防される入院例と、生じ得る腸重積症との比率になります。これを海外と比較したものが右下、今までワクチンを国のプログラムなどに導入している国と比較しますと、同等の結果と言えるという議論がなされておりました。

 論点3.のロタウイルスワクチンのベネフィット及びリスクベネフィットについて、現状で収集可能なデータに基づき、一定程度明らかになっていると考えられるか。4.ロタウイルスワクチンのリスクベネフィットの観点から、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることの是非についてどのように考えるか。

 7ページ目、費用対効果に関してです。課題としてはロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることの是非を判断する観点から、ワクチンの費用対効果についての評価が必要。結論として示しているものはロタウイルスワクチン接種後の、接種群の1人あたりの期待費用は、被接種群よりも高い(費用対効果が良好ではない)。ただし、全体でワクチン価格(又は接種費用)が少なくとも4,000円程度低下すれば、費用が逆転し、接種群のほうが安価になるということを示しております。詳細を御説明差し上げますと、費用として考慮されているものは直接医療費、及び生産性損失、こちらは例えばケアをする御両親が仕事を休んだ場合の生産性損失で、仕事を休んだときの時給換算した費用などが含まれている形になります。費用対効果の推計、今回、行われているのは費用のみを比較した費用比較分析という形になりますけれども、➀➁➂、それぞれ結果を示しております。➀に関しては直接医療費のみを考慮したもの、➂は社会の視点としてすべての生産性損失を含めたもの、➁はその中間で接種時の生産性損失を除いている形になります。接種時の生産性損失を除いた理由としましては、ロタウイルスワクチンを接種する際には、通常ほかのワクチンと同時接種をすることが多いと言われております。こうした場合に関してロタウイルスワクチンを打つためだけに仕事を休んだりとか、生産性損失ができるということにはなりませんので、そうしたことを鑑みますと現状、➁の接種時の、除いた生産性損失が最も適切な推計であると考えられております。それに見ますと、ロタリックスでの差分が-1,854円、ロタテックは-3,301円という結果になっております。

 論点5.ロタウイルスワクチンの費用対効果について、現状で収集可能なデータに基づき、一定程度明らかになっていると考えられるか。6.ロタウイルスワクチンの費用対効果の観点から、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることの是非についてどのように考えるか。

 最後、8ページ目です。これまでの課題の論点について全てお示しした後に7.上記論点16を踏まえ、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることの是非についてどのように考えられるかということを御議論いただければと思います。長くなりましたが以上でございます。

○大西委員長 それでは、この後、議論をしたいと思います。資料1と資料2については、これまでの経緯や知見についてまとめていただいた資料になります。委員の方々はもう十分御理解されているところではあると思いますが、大藤委員と私が初めての参加なので、もし資料1と資料2に関して何か御質問があればここで受けておきたいと思います。よろしいですか。

 それでは、本日は資料3を中心に議論を進めていきたいと思っております。資料3では、技術的な課題➀として「腸重積のベースラインデータの整理」、それから課題➁として「リスクベネフィット分析」、課題➂として「費用対効果の推計」の3点について論点を示していただいております。まずは、資料3の技術的課題➀「腸重積のベースラインデータの整理」について御質問や御意見を頂きたいと思います。特に論点1.論点2.に対する御意見も頂きたいと思います。委員の皆様、いかがでしょうか。

○大石参考人 よろしいでしょうか。資料3だけでなくて資料2にも書かれていることなのですが、アタックレートが海外、国内と比較して示されているのです。研究班でも示してきたところですが、もう1つ、腸重積の手術の頻度がどのくらいあるかを研究班でも明確に出しております。この所は、資料234ページの企業からの情報にもあるのですが、ここにあるように、手術例が何%と書かれています。日本の手術例は近年頻度が少なくて、海外だとかなり高いことがあるのです。アタックレートだけではなくて、わが国では発生しても非観血的に整復できる症例が多いのだということです。この件につきましては、予防接種班の、私、大石班の研究班の中で菅が分担、そして神谷主任研究官が海外と国内のデータを示しておりますので、是非、参考にしていただければと思います。以上です。

○大西委員長 ありがとうございます。大石先生、ちょっと確認させてください。ロタのワクチンと関連する疑いがある、関連するかもしれない腸重積症例において、手術まで行くものの率が低いということですか。

○大石参考人 ワクチンとの関連性についてはまだそこまで言及してないのですが、具体的に言いますと、海外の外科的処置の施行割合が230%から80%ぐらいあるのですが、日本では8.9%という程度で、これは腸重積の発生の全体に対し、またそれに対する処置のことをいっているわけで、ロタウイルスワクチンとの直接の関連性ではありませんが、そういった比較がされていることを申し上げました。

○大西委員長 腸重積としてということですね。

○大石参考人 そうです。

○大西委員長 日本における腸重積の特性というかそういうことかと思います。

○吉川予防接種室長補佐 、事務局から補足させていただきます。ただいま大石参考人から御発言がありました内容に関しては、資料31ページ目の「マルA、腸重積の発症率のベースラインデータ」の所でお示しをしている大石班スライド番号12の所で、左から3列目「外科的処置の施行後割合パーセント」という所を御発言いただいたものと理解しております。これですと、日本の場合、外科的処置の施行割合が8.9%という数字で示されているところです。

○大石参考人 すみません、失礼しました。資料の内容を見落としていました。

○大西委員長 ありがとうございます。ほかに御質問、御意見とか。

○岡田参考人 小児科の臨床医として、追加させていただきます。先ほどの大石先生の御指摘は、多くの小児科医が、腸重積に関しては日本の医療アクセスが非常にいいものですから、比較的早く患者さんも受診をされているし、病院側も比較的早く見つけているということもあって、手術まで至るケースがやはり少ないのではないかと思います。私たちも神谷先生の研究班に参加していましたが、小児外科の先生方からもそのような意見を頂きました。

 私からはもう1つ追加をいいですか。同じ資料3のマルBの所で、生後3か月児の項です。有意差はありませんが、少し症例と対照で差が認められ、生後3か月での接種は少しリスクになるのではないかという説明がありました。ただ、生後3か月児の症例のうち、ワクチン接種歴、あるいは腸重積の発症日が分かっている症例は23例しかありませんでした。このため、生後3か月のところに腸重積の発症のリスクが高まるという誤解を与えないようにということで、次にあるSelf Control Case Seriesという解析方法がとられました。これは腸重積を起こした患者さんで、その患者さんがリスク期間、いわゆるワクチン接種前後どのくらいの間に腸重積を起こしたか、あるいは、そうでない期間に腸重積を起こしたかということを個人で見るような研究手法です。その結果は、先ほどご説明がありましたように、海外と同じように、1回目接種後だけが少しリスクが上がるという結果でした。補足させていただきます。

○大西委員長 ありがとうございます。腸重積の発症率のベースラインデータに関しては、ある一定の、ここに示されたようなデータがそろってきているという理解でよろしいでしょうか。そして、腸重積に関する発症率の、ワクチン導入に伴う腸重積の発症率の変化に関しては、マルB、マルC2つのデータが出ております。マルB3か月児の所に増加傾向が認められるが、これは統計的な有意差なしということ。それからマルCに関して、Self Control Case Series法において、1回目の接種後、1週間の腸重積の発症率の変化は存在するであろうということですか。委員の先生方、よろしいでしょうか。何か御意見よろしいですか。

 私から1点確認させていただきたいのです。このSelf Control Case Series法による評価の所で、2つのワクチン、異なるワクチンを、これは分けては解析できなかったということでしょうか。大石先生、もし分かれば。

○大石参考人 ワクチンの種類を分けては解析できてないと思います。

○岡田参考人 そこまで数がなかったと思います。

○大西委員長 ですと、オーストラリアの場合には分けているけれども、日本の場合にはそこまで数がなくて分けることはできないということで、接種目3回というところだけは単独ということでしょうか、はい。何か御意見、御質問等ありますでしょうか。

○池田委員 論点2.のほうの件でもよろしいですか。これまでのデータである程度腸重積の増加リスクについては、一定の結論と言いますか、こちらは見えてきているように思うのです。今までのデータも含め、あるいは今後の問題も含めて、参考の3枚目の絵に書いてありますように、前後のところの腸重積のいわゆる副作用報告等での数の比較というのは、解釈が困難な状況もあるように見えますので、限界はありますが、例えば、全発症数を見るのであれば、レセプトのほうというか、ナショナルデータベースなどを使いますと、残念ながらその児がそのワクチンを打っているか打っていないかについては分からないのですが、全体としてのワクチンの導入、あるいは多く使われている地域とその発症率との関係、あるいは経年的な変化を見ることができますので、今後、そうしたNDBNDを使った分析も追加的に行って、ケースの収集、モニタリングに活用してはどうかと考えますが、いかがでしょうか。

○大西委員長 ありがとうございます。ただいまの御意見について、原委員、よろしくお願いします。

○原委員 池田委員の御意見に私も賛成です。今後いろいろなワクチンについて有効性や安全性のモニタリングなどもしていくに当たって、やはり何か枠組みになるようなものがあったほうがいいと思いますので、こういったものを加えていければより良いのではないかと思います。

○大西委員長 ナショナルデータ(NDB)を利用していく枠組みを考えていくべきではなかろうかという御意見かと思います。この点に関して、モニタリングに関して、何か御意見があれば。

○大藤委員 私も池田委員と原委員の御意見に賛成で、その中のデータベースとかを使ってそういったこと、モニタリングをしていければいいかと思うのです。あと1点、定期接種をした人で、どれぐらいの腸重積が発症しているか、発症率とかを見ていくという観点では、接種を受けた人の何かデータベースみたいなものも作っていくのがいいのではないかと思いますが。

○大西委員長 多屋先生。

○多屋委員 今も任意接種ではありますが、ほとんどが同時接種が行われていますので、ほかのワクチンでの副反応疑い報告の中に腸重積が紛れ込んでいるのですが、もし、定期接種ということになった場合は、恐らく副反応疑い報告として医師に義務付けられると思いますので、それは副反応検討部会でリスト化されて、しっかり公表されていくと思います。

 あともう1つです。先ほどの池田委員、原委員がおっしゃられたデータベース、レセプトデータを使ったモニタリングは確かにとても大事だと私も思います。あともう1点、これまで研究班で続けてきた腸重積症のサーベイランスですが、同じ観点で継続してそれが増えるのか減るのか、しばらく見ていったほうがいいのではないかと感じますが、いかがでしょうか。

○大西委員長 多屋委員から、ナショナルデータベース等を使った広いモニタリングのシステムと、より深いというか、これまでやってきたモニタリングの比較対象を取るためにも、あるいはお互いを相補するために必要ではないかという御意見かと思います。よろしいでしょうか。大石参考人、よろしくお願いします。

○大石参考人 多屋委員の提案については賛同したいと思っております。それと、要は、研究班でモニタリングを続けるということですが、もう1点、事務局が御提示になったイメージ図にある副反応疑い報告、これが定期接種になった後に増えてくるかもしれないということで、一定、副反応疑い報告のモニタリングも継続する必要があります。副反応疑い報告の発生が認められた場合に、この疑い報告システムの評価に関与する厚労省、感染研、PMDAが、ワクチンの接種歴をしっかり把握して、関連性の有無を一つ一つ検証していくことが大事なのだろうと思います。以上です。

○大西委員長 ありがとうございます。ほかにこの論点1.腸重積のベースライン、それから増加リスク、モニタリング、細かく言と3点ということですが、何か御意見ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。腸重積の増加リスクは、否定はできないけれどもさほどは大きくないという今までの知見です。それをワクチン定期接種化した後しっかりモニタリングしておかないと、少なくてもいろいろな数の取り方があるので混乱をする可能性はあるでしょうか。参考イメージのマルイとマルウの所で、若干マルウのほうが上がっている状況になっていると思いますが、これを見て腸重積が増えたのではないかという反応も一応、事前に考えておく必要があるのではないか。多屋委員、何か御意見ありますか。

○多屋委員 今、大西委員長がおっしゃられたとおりだと思います。どうしても、注目されてきますと報告の数は増えてくると思いますし、医師に義務がかかりますので、報告が増えてくることは事前に把握しておく必要があると思います。一方で、これまでにロタウイルスワクチンの接種経験が小児科医にとって非常に豊富になってきていますし、また、接種医の先生方が保護者の方に、初回接種の1週間以内の腸重積症について丁寧に説明をしてくださるようになっているのです。一般のお母さん方は腸重積症といってもどういう症状か分かりにくいのですが、そこも非常に丁寧に、こういう症状があったときはなるべく早く受診してくださいということを説明してくださっていますので、最初に大石先生がおっしゃられたように、外科手術にまで至らずに日本は早期に回復していると思うので、ここは引き続きしっかりと情報提供することが必要な部分かと理解しております。

○金川委員 今、腸重積についての説明をよくされているということで、私はいろいろな相談を受けているところで思うのですが、今現在任意でやっている場合にはほとんど小児科でやっているのです。内科とか、定期予防接種になると割といろいろな所に広がって、接種のルールをどうするかとかというのは違う適応をされたりする場合があって。腸重積というのは、もともと岡田参考人が言われたように、小児科が絶対見逃してはいけない疾患としてトレーニングのときからずっと言われているので、小児科医にとっては子供の腸重積というのは非常にプリミティブで見逃してはいけないという認識があって診察もできるのでいいのですが、今のお話は、正しくやった場合にこうですよというのはあるのですが、定期として広まった場合にどうなるかは、ちょっと考えておかないといけないことかとは思ったのです。

 その点で、ちょっと心配なところはあったのですが、そこのところは将来的には増えているかどうかモニタリングをちゃんとして、3か月ぐらいで増えても、先ほど言ったように、ナショナルサーベイランス的にトータルで増えなければいいのですが、それは正しく打った場合で、一番問題なのは、この間もすごくそれはやめたほうがいいのではないかと言ったのは、7か月から始めたいという両親がいて、内科の先生から、ではどうしたらいいのでしょうかという相談を受けたのですが、やめてくださいとは言ったのですが、そういう事例が起こってくることを考えた場合にちょっと心配な所があると思いました。

○大西委員長 ありがとうございます。技術的な課題の所では、今、活発に御議論いただきまして、ベースライン、それから増加リスクに関しての一定程度の理解が深まってきていること。それからモニタリングに関しては、いろいろ技術的な課題は今後、将来的に考える必要はあるけれども、少なくても、ナショナルサーベイランス的なモニタリングも必要なのではなかろうかという御意見を頂いたということ。

○金川委員 先ほどと少し関連することを言うと、7か月はなぜか言うかというと、推奨しないとしか書いてないのです、ワクチンの添付文書に。16週以内でスタートするのは推奨しないとか、何か月では打ってはいけないとかと書いてないので、では大きくなってもいいのではないか。片や、アメリカなどでは打ってはいけないと書いてあるのです。ですからここはすごく大きな差が出ているのではないかと思います。 

○大西委員長 まだ検討すべきというか、準備しなければいけない点はあるだろうということと理解しました。それでは、技術的な課題➁の「リスクベネフィット分析」について議論を進めたいと思います。御意見いただけますか。岡田参考人、よろしくお願いします。

○岡田参考人 モニタリングの所です。もし定期になったときに副反応疑い報告基準を作られるときに、接種後からの日数をリスクの高い7日までにするのか、米国と合わせて21日にするのか、28日にするのかも一度は議論をしておいていただいたほうがいいのではないかと思います。

○大西委員長 ありがとうございます。この件は、ほかの委員会、副反応に関連する委員会のほうでの議論ということになろうかと思います。それでよろしいでしょうか、室長。

○吉川予防接種室長補佐 そのような形で検討すべき事項だと考えております。ご意見ありがとうございます。

○大西委員長 それでは、2番目「リスクベネフィット分析」について移りたいと思います。何か御意見等ありましたらよろしくお願いします。こちらでは、論点として2点ということで、ロタウイルスワクチンのベネフィット及びリスクベネフィットが明らかになっているかということ。それから、リスクベネフィットの観点から、予防接種法の対象疾病とすることの是非です。よろしくお願いします。これまでの収集された知見によりますと、ベネフィットに関しては、効果がいろいろな論文報告になされている。それから、資料の5ページ目のマルBの図表でいきますと、リスクベネフィット分析が行われている。年間、約12,000の入院例が予防されることが推計されているということ。腸重積のほうは25例という見積りをして考えますと、腸重積症1例の間に480例の入院例が予防されるという数字になっていることかと思います。御意見いただけますでしょうか。それでは多屋委員、よろしくお願いします。

○多屋委員 今の研究班の数字は非常に重要なものと考えております。あともう1つ、入院例を予防することなのですが、それに加えて、ロタウイルス胃腸炎で毎年数名、2016年、2017年で6人から7人の子供たちが亡くなっていること。あと、ロタウイルスに関連した脳炎脳症が、04歳のお子さんの中では、インフルエンザ、突発性発疹についで3番目に多いこと、そういった疾病負荷がロタウイルス感染症にあることも含めますと、リスクベネフィット分析としてはベネフィットの部分が大きいかと感じています。

○大西委員長 よろしいでしょうか。隠れている疾病負荷が存在するのではないかと。それが、ロタによる下痢症を抑えることによって、当然そこにも影響するであろうという推定です。

○多屋委員 すみません、死亡や脳症が予防できるかどうかまでの結果は出ているわけではないですが、基本、ロタウイルス胃腸炎を減らすということで、それに関連した負荷が減るのではないかという意見です。

○大西委員長 ありがとうございます。ほかに御意見ございますでしょうか。リスクベネフィットに関しては一定程度明らかになっているだろうという御意見です。

○菅沼委員 ファクトの資料だったと思うのですが、ワクチンの接種率が向上すると疾病のピークを下げることと、遅らせることが期待できることが海外の研究で示されていたと思います。そういったことがあれば、医療側の対応の負担が軽減されることも期待できるのではないかと思います。リスクの面でも、大石参考人がもう既に話されている重症度という点で、ワクチンかワクチンでないかの区別はつかないにしても、国内における腸重積症例においては幸い手術に至る例は少ないということがあります。しっかりと重症度が低いというところが示されてありますので、そういう意味でも、ワクチン接種のリスクが他国と比較してもと考えてよいのではないかと思います。

○大西委員長 ありがとうございます。現在、収集されているデータにおいて、一定程度ベネフィット、それからリスクベネフィットに関しては評価できるであろうという御意見ですかね。よろしいでしょうか。リスクベネフィットの観点からは、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることについて、もう一段ステップアップした議論になるとは思います。いかがでしょうか。多屋委員の意見は、そこを含めて、重症度の部分も含めてということかと。

○多屋委員 そのとおりです。

○大西委員長 よろしいですか。原委員、何か。

○原委員 私も多屋委員と同じ意見で、入院だけではなくて、より重症度の高いアウトカムも抑えられるということで対象とすべきではないかと思います。

○大西委員長 金川委員、何かよろしいでしょうか。ほかはよろしいでしょうか。

 それでは次、技術的な課題➂「費用対効果の推計について」に進みたいと思います。論点としては、費用対効果について一定程度明らかになっているかということ、足らないデータはないのかという視点かと思います。もう1つは、費用対効果の観点から、予防接種法の対象疾病にすることの是非について御意見を頂きたいと思います。まずは、これまでの収集データについて、何か御意見等ございましたらよろしくお願いします。近藤委員、よろしくお願いします。

○近藤委員 まず、資料3の費用対効果の推計の所から、引かれている中込先生のデータで費用対効果について明らかになっているかならないかということになりますが、これは明らかにならないと。費用のみが推計されていまして、かつ増分費用のみですので、増分費用のみの値が絶対値で幾らだったらいいか悪いかということは、全く判断する方法がないということになりまして、資料3からでは、まず分からないと。

 そうすると、資料2に戻ると、こちらではSatoらの報告というもので日本からの費用対効果に関する報告が報告されていますが多少古いものです。それで高いほうでいっても、1QALYにつき1,000万円ぐらいと。1,000万円ぐらいと言うと、公衆衛生の施策だと、一応いいかなというところに入るか入らないかというところだとは思います。ということで、共有されている資料からのもので、表面的にですが、データを見ればそういうことになると思います。

 あと、もう一点、どうしてこういうことになっているのかよく分からないのですが、厚生労働科学研究の廣田班から2017年に、ロタワクチンに関する費用対効果の分析が報告されておりまして、本日は共有されていないものですが、こちらでは直接医療費等を考慮したもので600万円か700万台でありまして、あと生産性損失を入れると、費用の現在価値換算の差を見れば、コストセイビングでマイナスになるというようなことが出ておりまして、その辺りを見ると、誰が費用を負担するかにかかわらず、ロタウイルスワクチンを定期接種として打つことについて、価値があるかないかという判断で言えば、費用対効果には一応社会的には許容の範囲ということになるかと思うのですが、1点、判断の基準について、かなりテクニカルなのですが、問題を感じております。

 というのは、前回肺炎球菌ワクチンのときに、この場で費用対効果の判断をするために共有されるデータとしては、増分分析をしっかりとやっていただきたいということをリクエストした経緯があるのですが、今回は増分費用しか出てこなかったのでなかなか難しかったのですが、今回は、実は状況が少し変わっておりまして、そもそも既に町中で7割ぐらいの人が打っているという話がありまして、それを今度政策的に決定して、定期接種化して、一般会計に当たるワクチン代なり、あるいは社会保険から出る治療費なりの公のお金を使うということで、支払者の立場に非常にこだわって、公の金が出るということに関して言うと、今回のデータからすると7割ぐらいの人が9割になりましたということになると、2割ぐらいの人が打つようになって、そういう人たちは発症が減って、重症化も減って、健康のゲインになりますという話になって、その場合、掛かる費用は政府の立場から言えば、今まで何もしないでも打っていた0から70%の人の分も政府が払ってあげると。2割の人が打つために9割分の費用を払って、今までは放っておいても7割分のゲインはあったのに、得られるのは2割のゲインが得られると。

 これは非常に厳密に増分分析をした場合なのですけれども、そうすると分母と分子の関係から言うと、増分偏差値は10倍以上になったりすると。そうすると、600万円だとか1,000万円だとかいっていて、ぎりぎりいいかなと言っていた話が、6,000万円だとか1億円という話になると。そういうものはどのように評価するかということについては、ルールがないので、ただ、公のお金を使う議論であるということであれば、これからはそういうことをどう評価するかの評価の仕方についても、多少透明性があるような考え方が必要かと。もちろん、そういうものというのはなかなか難しくて、個別のいろいろな案件が出てくるときのいろいろな事情で、複雑な解釈がされるべきものだと思うのですが、若干そういう問題点はあります。今回は社会の立場から見れば、誰が費用を負担するかに関わらず、ロタウイルスを定期接種で、もう少し広めて打っていただける形にしましょうということについて価値があるかないかのことについて言えば、恐らくは共有されていない知見も含めれば、よろしいのではないかとは私は思っています。

○大西委員長 ありがとうございます。池田委員、よろしくお願いします。

○池田委員 今御指摘いただいた点は論点がいろいろあるかなと思いますが、まず、この今日提示されている分析で、費用比較分析を行っているのは、廣田班のときに共通的な方法でワクチンの比較をしましょうというときに、この小児を対象にしたワクチンについては、コスト/QALY、費用対効果の増分費用効果比という数字で判断することはしないということに、そのときはこの研究班の中では決めたわけです。

 その理由の1つは、これは小児の数日間、例えば胃腸炎でお子さんのQOLが測れない、そして数日間のことなので、そのQOLの値というのは極めて小さい値なのです。QALYというのは1年分の健康の価値が1QALYになりますので。それで、その値も、例えば不確実性に関して仮に測ったとしても、不確実性が非常に大きくて、割算をしたときに、この小さな増分費、1,000幾らと、小さなQALYの不確実性を考慮して分析すると、アイサーという割算した値がバカッと、不確実性が極めて大きくて、費用対効果が良いも悪いも何も言えないというのが1点です。

 もう1つは、こういうワクチンについては親の介護とか看護とか、そういったところのコスト、いわゆる生産性損失、家族の生産性損失というのが非常に大きな要素を占めるわけですが、それを費用対効果の費用に組み込むということは、もちろん計算上はできるのですが、そのときに幾らであれば、費用対効果が良いか悪いかという基準は、私はないと思っていて、どこかにあれば教えてほしいと思っています。

 例えば中医協でやっている、あるいはイギリスのNICEでやっている、そこでは費用というのは、いわゆる直接医療費を基本に入れると。介護費用は入れてもよいとなっていますが、生産性損失を入れて計算して、その閾値が幾らだったら良い悪いという基準は世の中に存在しないので、分析したとしても評価ができない。ということで、廣田班のときには、こういったワクチンについては、大人のワクチンとかHPVなどについては、もちろん費用対効果は出せるわけですが、子供の場合は出しても意味がないし、出したところで判断しようがないので、費用比較分析とするというように、そのときは決めて、それを踏襲しているわけです。こういう形で、このような分析になっております。

 この結果は、ほぼQALYとしてはとんとん、費用としてはとんとん、あるいは何千円か接種したほうが結果的には高くなるということなのですが、高いから悪いということではなくて、この程度であれば皆で負担しましょうという考え方はあるかもしれません。

 実は、イギリスのJCVIでは、直接費用のみの費用として入れた形で、費用対効果の分析を行っており、このワクチンについては費用対効果がよくないという分析結果が出ました。

 それに基づいて、ワクチンの価格交渉をして、2011年にワクチンの価格を、費用対効果がいい水準まで引き下げるということで、2013年からロタリックスが定期接種の試験準備に入ったと聞いております。

 我が国において、この費用対効果の結果の解釈というのは、いろいろと論点が分かれるところでして、専門家の間でもいろいろな考え方はあると思うのですが、費用対効果が良いとは、今日報告されている中では、そういう結果にはなっておりませんし、また企業の方が共著者で入っている中込先生の論文でも、企業の方が入っているのに費用対効果が悪いと、10%ぐらいはワクチンの値段を下げないと、費用対効果が悪いと言っているぐらいなので、ワクチンの価格については、ある程度は引下げの方向で検討する必要はあるのではないかと思います。

 いずれにしても、いろいろと技術的な観点からも、いろいろと論点があるところなので、またいろいろと御指摘いただきながら、場合によってはこれは再計算をしていきたいと思います。以上です。

○大西委員長 費用対効果ということに関しては、厳密に言うと、今回のは費用比較分析を行っているということで、その理由に関しても池田委員から御回答いただいたというところかと思います。ただ、近藤委員から、既に廣田班で報告されているデータがここには使われていないという御指摘でしたね。

○近藤委員 廣田班からの報告で論文化されていて、一応広い意味では直接医療費ということに関してやっても、6877,000円となっていますので、まあまあのところではないかと。極めて優れているということはありませんが、少し許容範囲を広めに考えれば、いいところではないかという値にはなっています。ベースケースでは。

○大西委員長 事務局は、その論文はもう手に入れられたのでしょうか。

○吉川予防接種室長補佐 近藤先生から論文があるというお話を伺っておりますので、次回の小委員会で、論文の結果をお示しできるように資料の準備をしたいと思います。

○大西委員長 よろしくお願いします。

○池田委員 多分、その分析の時点と今では、診療報酬も改訂されているし、状況が変わっているかもしれないので、可能であれば、アップデートしたようなものがあると、さらにこの議論に資するような気がするので、可能であれば御提示いただけるとよいですが、687万円だと、一応保険局医療課では費用対効果が悪いので、価格を下げるという判断になるので、費用対効果は悪いということになります。

○大西委員長 よろしく御協力いただければと思います。あとは、今回出されている費用比較分析においての数値に関して、何か御意見があれば。

○原委員 ここに書いてある4,000円程度低下すればという所はいろいろな議論があって、許容範囲であるということはわかりました。価格に関しては、WHOからThe product fact sheetというのがあって、GAVIでサポートされている国、低所得国、高所得国ごとに価格が表示されています。それを見てみると高所得国では価格に幅があり、日本は高い所に位置しています。その辺りも含めて調整ができると、よりよいと思います。

○大西委員長 恐らく本委員会はデータの収集、その解釈と言うか評価というようなところで、なかなかどこまで立ち入るところなのかというのは分かりませんが、御意見は頂いたというように考えます。ほかに何か御意見はございますでしょうか。それでは、この技術的な課題➂で、論点の5.に関しては、もう少し可能な限り論文の収集を図って、機会があればその御報告を事務局から準備をしていただくと。6.に関しては、費用対効果に関して、ここに出している費用比較分析等に基づいて議論がなされたということで、なかなか難しい。近藤委員からも誰が支払うのかというような視点も必要なのではないかというようなこともありましたが、そのような議論がなされたということで、ちょっと考えなければいけないことはあるのだろうなということかと思います。

 まとめて、何か御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。もう追加の御意見等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、本日の御議論によって、ロタウイルスワクチンの技術的な課題については、論点5.の論文の収集というところの1点で、宿題は存在するとは思いますが、技術的な課題について、一定程度は明らかになったというように考えます。本日御指摘のあった点について、必要に応じて事務局で整理を行っていただくとして、次回の小委員会において、技術的な課題に関して取りまとめに向けた議論を行えるよう、準備をしていただきたいと思います。そういうような運びでよろしいでしょうか。

○吉川予防接種室長補佐 はい。そのように資料の準備をさせていただきます。

○大西委員長 それでは、以上で本日の議事は終了したいと思いますが。

○原委員 事務局に質問なのですが、どれぐらいのスパンでこのような委員会が開かれるかとか、どれぐらいの感じで進めていくとか、そういうのがあると、私たちも会議に参加しやすいと言いますか、そういうことがありますので、まだ議論が途中でペンディングになっているワクチンもたくさんありますので、ある程度の行程は示していただけたら有り難いのですが。

○林予防接種室長 ほかにもたくさん課題があるということは承知しています。できるだけ計画的に議論をしていくことができるように、努力をしていきたいと思っております。

○岡田参考人 追加のお願いです。前回の小委員会で原委員からも、行程表を作ってほしいという話が出たと思います。事務局の皆様は代わられましたが、行程表を作ることで、私たちが何を今からしなければいけないのかとか、そういう宿題が明らかになってくると思います。是非とも次の委員会までには、それぞれのワクチンの果たすべき課題を明らかに私たちに示していただきたいと思っています。

 百日咳も全数報告になって1年半が過ぎて、今のスケジュールだと、4回接種していても就学前から10歳代にかけて発症しています。ポリオに関しては、来年にオリンピック・パラリンピックが行われて、海外からポリオが持ち込まれるリスクが高まっています。おたふくかぜに対しても、これまでの流行周期から考えると数年後にはまた流行が来ます。そのときに、再び合併症として難聴の患者さんが報告される社会的なリスクは高まっていると思います。

 使えるワクチンがある状況で、何もできずに、今申し上げた疾患に罹患し重篤な合併症が起こると国としての不作為が問われるのではないかと心配しています。そういう意味で、是非とも早く行程表を示していただいて、次に向けて私たちアカデミアが、どのようなことをしないといけないのかということを示していただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○林予防接種室長 御指摘につきましては、真摯に受け止めて、頑張っていきたいと思います。疾病負荷の問題はおっしゃるとおりだと思いますし、その一方でワクチンを議論していくためには、そもそもワクチンの生産であるとか、物があるかどうか、承認の問題であるとか、今日御指摘いただいたような、副反応の問題、費用対効果と、いろいろなものを解きほぐしていかないと思います。行程表を作るに当たっても、私どもはきちんとそういったことを勉強した上で、していく必要があると思います。これからも未熟ではございますが、尽くしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大西委員長 いろいろ御意見を頂きまして、事務局にも頑張っていただきたいと考えます。それでは、本日の議事に関しては終わりにしたいと思いますが、次回の開催について事務局から何かございますか。

○元村予防接種室長補佐 次回の開催については、追って御連絡させていただきます。

○大西委員長 それでは、本日の第12回ワクチン評価に関する小委員会を終了します。本日は活発な御議論を頂きまして、本当にありがとうございました。以上です。