技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議(第35回) 議事要旨

                           人材開発統括官海外人材育成担当参事官室

○日時 令和元年6月19日(水)15:00~17:00

○場所 厚生労働省 専用第12会議室

○出席者
  大迫委員、岡野委員、椎根委員、冨高委員、羽柴委員
  厚生労働省人材開発統括官海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課
  外国人技能実習機構、公益財団法人国際研修協力機構
  (グラビア印刷関係)全国グラビア協同組合連合会、経済産業省
  (耕種農業、畜産農業関係)全国農業会議所、農林水産省
 
○議題
  1 印刷職種(グラビア印刷作業)の追加について
  2 耕種農業職種、畜産農業職種の試験の実施・運営状況の報告について
 
○議事
  1 印刷職種(グラビア印刷作業)の追加について
  ○ 印刷職種(グラビア印刷作業)の追加について全国グラビア協同組合連合会より概ね以下のとおり
   説明があった。
  ・ 印刷方式は、活版印刷・フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷の4つが
   主流。
  ・ グラビア印刷の原理は、版面のくぼんだ部分に残ったインキを転写するもの。具体的には、版を回転
   させインキをどぶ付けし、ドクターブレードと呼ばれるインキをかき落す装置によって不要なインキを
   かき落し、圧ローラーでフィルムに転写する。1色ずつ乾燥させ、何色も印刷する。高速の機械では、
   毎分300メートル以上の印刷が可能。
  ・ 印刷職種(グラビア印刷作業)の製品は、食品、飲料、日用品、医薬品等の包装に使用されている。
  ・ 国内出荷額は、印刷業全体が漸減傾向の中、グラビア印刷は横ばいを維持している。そのため、
   印刷業全体におけるグラビア印刷業の比率は上昇している。
  ・ 東南アジアでは様々な包装印刷方式の中でグラビア印刷の割合が最も高く、ASEAN6カ国では
   グラビア印刷の占める割合が70%を超えている。日本も海外も基本的には同水準の印刷機を使用
   している中で、日本のグラビア印刷の技能は際だって高く、生産性も高い。グラビア印刷への依存度が
   高い東南アジアにおいて、日本の高品質の製品を確保し、かつ、生産性の高い印刷技能の習得が
   求められている。
  ・ 全国グラビア協同組合連合会は、昭和46年1月に設立され、北海道から九州までの8組合、傘下の
   会社数164社で運営されている。
  ・ グラビア印刷の製造工程は、食品メーカー・広告代理店・デザイン会社による企画・コンセプト立案
   から始まり、仕様や構成決定、デザイン決定、レイアウト作成を行う。その後、製版会社で校正物を作成し、
   レイアウト修正、印刷用データの作成を経て、刷版で版を作る。その版を使用して印刷を行い、ラミネート、
   スリッター・製袋を行い、包装材料等として配送される。
  ・ グラビア印刷作業は大きく分けて、前準備作業、本番前調整作業、本番印刷作業、印刷後作業に分けること
   ができる。
  ・ 前準備作業は、印刷に必要な版やフィルムを印刷機に取り付けたり、インキをインキパンと呼ばれる器に
   用意する作業をいう。
  ・ 本番前調整作業は、準備した材料で印刷できるように、絵柄や色を合わせ、本番印刷で高速印刷をする際に
   インキが飛散しないように、インキカバーで版やインキまわりの養生を行う。また、版とフィルムを圧着
   させる圧胴に傷や異物がないかなどを清掃しながら確認し、本番印刷作業で印刷抜け等の不良が発生しない
   ようにする作業をいう。
  ・ 本番印刷作業は、指定された絵柄を指定された数量で印刷する作業をいう。新しいフィルムや消費して
   不足したインキの補充を行う。印刷の品質に影響する条件が刻々変化するため、印刷の品質を確認しながら
   調整することが必要となる。また、自動検査機が印刷の不良を発見して警報を発したとき、その内容を
   確認し、機長に報告する。
  ・ 印刷後作業は、使用した版の洗浄、版を機械から取り外し、使用したインキの回収、インキ使用量の把握、
   インキパンの洗浄を行い、次の印刷ができるようにする。
  ・ 技能実習1号では、指示を受けてグラビア印刷作業及び安全衛生業務ができることを目標とする。
   技能実習2号では、主体的にグラビア印刷作業及び安全衛生業務ができることを目標とする。
  ・ 技能実習1号の実習内容は、前準備作業の補助では、版(シリンダー)準備取付け、フィルム取付け及び
   フィルム継テープ準備について、本番前調整作業の補助では、インキまわりの養生について、本番印刷作業
   の補助では、フィルム継替え及び印刷済フィルムの梱包について、印刷後作業の補助では、版の洗浄取外し
   について、指示を受けて行うこととする。
  ・ 技能実習2号の実習内容は、1号の実習内容に加え、前準備作業では、インキの溶剤希釈調整、版面の
   耐水ペーパー掛け及び機械へのフィルム通しについて、本番前調整作業では、見当合わせ及び圧胴清掃確認
   について、本番印刷作業では、印刷済サンプルの検査・報告、調整済インキの補充及び検査機の確認・報告
   について、印刷後作業ではインキ回収・計量及びインキパンについて、主体的に行うこととする。
  ・ 安全衛生業務の実習内容は、技能実習1号と2号は共通で、雇入れ時等の安全衛生教育の受講、作業開始
   前の安全装置等の点検作業、印刷職種に必要な整理整頓作業、印刷職種の作業用機械及び周囲の安全確認
   作業、保護具の着用と服装の安全点検作業、安全装置の使用等による安全作業、労働衛生上の有害性を防止
   するための作業、異常時の応急措置を修得するための作業とする。
  ・ 技能実習1号の実習内容について説明する。前準備作業の補助について、版準備取付けは、印刷機に版を
   取り付ける作業。フィルム取付けは、グラビア印刷機にフィルムを取り付ける作業。フィルム継テープ準備
   は、フィルム残量が少なくなってきたときに、ほかの軸に用意したフィルムに連続して継ぎ替えられるよう、
   フィルムの端面に粘着テープを準備する作業。
  ・ 本番前調整作業の補助について、インキまわりの養生は、色合わせや見当合わせの終了後、本番印刷の際、
   機上のインキが周囲に飛散して印刷物を汚染することがあるため、インキ飛散防止カバーを取付ける作業。
  ・ 本番印刷作業の補助について、フィルム継替えでは、印刷しているフィルムの残量を確認して継テープ準備
   をしたフィルムへ切替操作を行う作業。印刷済フィルムの梱包では、印刷済フィルムを機械から取り外して
   梱包を行う作業。
  ・ 印刷後作業の補助について、版洗浄取外しは、版の洗浄と機械からの取りはずしを行う作業。
  ・ 技能実習2号の実習内容について説明する。技能実習2号では、1号の実習内容に加えて、それ以外の内容
   を主体的に行えるようにする。前準備作業について、インキ溶剤希釈調整作業では、使用するインキが適正な
   粘度になっているか確認を行う作業。場合によっては、ドクター圧、ブレードの角度、ロール圧、フィルム
   張力等について、絵柄、印刷速度、天候などの状況に合わせて、的確に決定する。版面の耐水ペーパー掛け
   は、版面とドクターの馴染みを良くして、印刷品質を安定させるために行う作業。回転している版面を確認
   して、筋状の汚れや薄く汚れている版面を目視で確認して、適正な状態にする。機械へのフィルム通しは、
   フィルムが印刷途中で切れた場合の対応として行う作業。
  ・ 本番前調整作業について、見当合わせでは、印刷位置ずれを目視で確認しながら調整する。圧胴清掃確認
   では、圧胴に異物が付いていないかを確認し、印刷物の品質を維持するために清掃を行う作業。
  ・ 本番印刷作業について、印刷済サンプルの検査・報告では、印刷サンプルを数部取り、印刷物を見本と
   比較・確認して異常があった場合に機長に報告する作業。調整済インキの補充では、消費したインキの補充
   を行う作業。検査機の確認・報告では、自動検査機で検知した不良を確認して異常があった場合、機長に
   報告する作業。
  ・ 印刷後作業について、インキ回収・計量では、使用したインキを回収し使用量を計量する作業。インキパン
   の洗浄では、インキパンの洗浄やフィルムにカバーをかける作業が含まれる。
 
  ○ 同団体からの説明に対して、概ね以下のような質疑があった。
   委員)グラビア印刷は食品向けの製品を扱っているが、試験問題の中に「製品が衛生的に製造されているか
     どうか」を入れる予定はあるか。また、出来上がった製品の衛生的な保管に関する指導・教育を技能実習
     で行ったり、実技試験で問うたりする予定はあるか。
   説明者)全国グラビア協同組合連合会の多くの組合員は、軟包装衛生協議会が作成している衛生管理自主基準
     (業界基準)の認定工場の認定を受けている。認定工場では製品に異物やホコリが混入しないように
     クリーンルーム(エアーシャワーをして入室)や消毒設備の設置、作業者に作業着・帽子の着用を義務
     付け、出来上がった製品の衛生的な保管など業界基準を守りながら作業をしている。実習生を受け入れる
     場合においても、業界基準に基づき指導・教育を行うことになるため、御指摘について対応を検討
     したい。
   委員)送り出し国の中ではどのような労働災害が多いのか。
   説明者)海外の労働災害について詳しく把握できていないが、インキで使用されている有機溶剤は揮発性が
     強いことから人体に害を与えるおそれがある。有機溶剤中毒を発生させないよう、実習生の安全衛生には
     十分注意を払う予定である。
   委員)1号技能実習と2号技能実習を比較して、2号技能実習の方が安全衛生に関する高い知識が求められる
     ということはないか。
   説明者)安全衛生業務は、実習生の安全や健康確保を図る上で重要な業務であることから、経験年数に
     関わらず高い知識が必須であると考えており、1号より2号の方が高い知識が求められるというもの
     ではない。
   委員)日本人が2号の仕事ができるようになるまでには、どのくらいの経験期間を要するのか。
   説明者)個人差はあるが、日本人でも高校卒業程度の者で3年程度の期間が必要となる。
   委員)グラビア輪転印刷機械のような高価で大規模なものから安価で小規模なものまであると思うが、印刷
     機械の規模によって操作の難易度が異なることで公平な試験ができなくなるのではないか。
   説明者)印刷機械の規模により若干操作方法は異なるが、機械自体の基本操作、例えば見当合せの印刷位置
     や色の調整に必要な技能に大きな違いはなく、公平な試験は可能である。
   委員)フィルムの材質が異なる場合、それに合わせてインキやフィルム通しの方法も変わるのか。また、
     フィルムの材質により有利、不利など試験に影響が出るのではないか。
   説明者)フィルムの材質に合わせてインキの種類を決めるのが一般的であり、フィルムの材質によってインキ
     の付き方や着肉が若干異なることもある。しかし、版からフィルムに転写する技能や印刷された製品と
     見本を合わせるという技能はどのフィルムの材質であっても同じであり、試験の公平性は保つことが
     できると考える。
   委員)試験監督者により印刷サンプルの良品・不良品の判定が変わる可能性があるのではないか。また、
     「品質判定ガイドライン」の判断基準を一定にしないと、試験の合否判定にも影響が出てしまい、公平性
     が担保できなくなる。例えば去年受けた人はなかなか合格しなかったが、今年受けた人はすぐに合格した
     ということなると試験の公平性が担保できなくなる。早めに「品質判定ガイドライン」の判断基準を
     固めるとともに、限度見本のようなものを作成しておく必要がある。
   説明者)全国グラビア協同組合連合会では限度見本を示した「品質判定ガイドライン」を既に作成している。
     このガイドラインを活用した対応について検討したい。
 
  ○ 検討の結果、印刷職種(グラビア印刷作業)については、厚生労働省、法務省において、省令の改正案に
   係るパブリックコメントを実施し、その結果を踏まえ、審査基準案や技能実習評価試験案等について引き続き
   議論が行われることとなった。
 
 
  2 耕種農業職種、畜産農業職種の試験の実施・運営状況の報告について
  ○ 全国農業会議所より概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 試験だが、初級、専門級、上級の3等級で実施している。学科試験の問題数は、初級が20問、専門級が
   30問、上級が50問。実技試験は初級が判断等試験、専門級と上級が判断等試験と計画立案等作業試験を
   実施している。合格の基準は、初級は学科、実技ともに60点以上、専門級と上級は、学科が65点以上、実技
   は60点以上としている。合否の判定は試験後7日間程度を要する。
  ・ 試験実施機関の概要だが、会長の下に事務局、技能実習評価委員会、技能実習評価試験委員会、試験官
   を置いている。評価委員については、行政機関の職員、学識経験者、実務経験者から選任されている。試験
   委員会委員については、学識経験者、実務経験者から選任されている。試験官も学識経験者、実務経験者
   から、現在、全国に42名が選任されている。
  ・ 耕種農業職種と畜産農業職種における過去3年度の試験実施状況だが、受検者の割合は耕種農業職種が
   約8割、畜産農業職種が約2割となっている。受検者の人数では、耕種農業職種では施設園芸作業が多く、
   畜産農業職種では酪農作業が多い。
  ・ 技能実習評価試験の運営状況の自主点検結果について報告する。「試験業務を適正かつ確実に実施する
   ために必要な組織を有していること」については、毎年2回、全国の試験官を集めた農業技能実習評価試験
   試験官会議を開き、そこで公平・適正な実施に必要な事項を周知するとともに、その都度必要な措置を
   講じている。
  ・ 「試験業務の継続実施のための施設・設備を確保する能力を有すること」については、試験を継続実施
   できる公民館、市民ホールなどの公共施設を活用して実施している。
  ・ 「評価に当たる者の選任の方法が適切かつ公正であること」については、毎月開催している試験運営委員会
   で協議・決定しており、その会議録を保存している。また、評価に当たる者によって評価に差が生じない
   よう、試験官マニュアルを整備し、毎年2回修正し、試験官会議で研修を行っている。
  ・ 「試験業務の運営管理を、試験実施機関の役職員が自ら行うことができること」については、試験業務の
   外部委託はなく、監理団体、実習実施者、受検者からの試験に関する苦情等は、全国の試験官、事務局が
   共有し、その内容及び対応結果を踏まえて試験官マニュアルを修正し、毎年2回の試験官会議で周知し、
   苦情等が発生しないように努めている。
  ・ 「前年度に実施した試験問題の一部又は全部及び試験の受検に必要な事項について公表ができること」
   については、前年度に実施した試験問題の一部をインターネット上のホームページで公開し、毎年度更新
   している。更に試験基準についても、ホームページで公開している。申込方法等の受検に必要なことについて
   も公開している。
 
  ○ 同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
   委員)専門級の学科試験の言語は「日本語」(漢字かな交じり+漢字にルビ)となっているが、試験問題
     にはヘボン式ローマ字の記載もあるため、削除すること。
   説明者)御指摘のとおり削除する。
   委員)評価委員、試験委員及び試験官の実務経験者の選任要件については、規程類で「概ね○年以上の
     実務経験」と決めておくこと。
   説明者)御指摘のとおり明確にする。
   委員)試験問題や合否判定に関する苦情もあり得るため、試験官マニュアルへの共有だけでなく、試験委員
     及び評価委員への共有も検討すること。
   説明者)対応について検討する。
   委員)試験官マニュアルだけでなく、試験問題の作成や合否判定に関するマニュアルの作成を検討すること。
     また、試験官によって評価に差が出ないように、試験官マニュアルの中に、これは良い例、これは悪い例
     などの見本を幾つか入れ込んではどうか。
   説明者)試験官マニュアルに見本を入れ込むことを含め、対応について検討する。
   委員)学科試験問題において、カタカナ表記の外来語の意味と英語本来の意味とが異なるものについては、
     受検者に誤解を与えないような配慮が必要である。
   説明者)対応について検討する。
 
  ○ 報告の結果、農業技能実習評価試験について、試験実施機関は会議で受けた指摘に対応し、より一層適切な
   実施に努めることとされた。