2019年8月20日 第3回厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)有識者懇談会 議事録

日時

令和元年8月20日(火)9:30~10:30

場所

厚生労働省 専用第22会議室

出席者

<構成員(五十音順、敬称略)>

議題

1 厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)の策定に向けた提言(案)について
2 その他

議事

 
○蒔苗大臣官房参事官 定刻よりも少し前でございますけれども、委員の方もおそろいですので、ただいまから第3回「厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)有識者懇談会」を開会させていただきます。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
本日の出席状況でございますけれども、川口委員、吉川委員、美添教授が御欠席でございます。
カメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○蒔苗大臣官房参事官 それでは、早速ではございますけれども、以後の進行につきましては、小峰座長にお願いいたします。
○小峰座長 それでは、本日はお忙しい中、お集まりいただき、大変ありがとうございます。
これまで第1回、2回の有識者懇談会におきましては、委員の皆様から貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。今回は、これまでの議論を踏まえて、厚生労働省統計改革ビジョン2019の策定に向けた提言(案)について御意見をいただく予定にしておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事に入りまして、資料1、2につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○菱谷大臣官房人事課調整官 そうしましたら、調整官の菱谷から御説明させていただきます。
資料1を御覧ください。前回までの懇談会を踏まえました論点整理ということで、前回のおさらいをさせていただきます。
まず、Iの「総論」のところでございます。下から3つのポツでございますけれども、総論といたしまして、提言項目につきましては、「再発防止策」と「フロントランナーを目指した取組」は分けて考えるべきとの御意見がございました。
また、本懇談会は厚生労働省の懇談会であることを踏まえれば、厚生労働省として何ができるのかを考えるべきであるという御指摘。
統計委員会や統計改革推進会議等でも同様の再発防止の議論がなされておりまして、それらと異なる方向性のビジョンが作成されないように留意しなければならないという御意見をいただいております。
また、「今回の統計問題の総括」といたしましては、2ページ目の最後のポツのところでございますけれども、今回の統計問題の原因に関する議論については、これまでの特別監察委員会報告書等とは違う視点から捉えて議論するものであって、本懇談会では議論する必要性は低いのではないかといった御意見をいただいています。
3ページ目でございます。「統計業務の改善」につきましては、2.(1)の「統計ユーザーの視点に立った情報公開」のところで、調査の設計、母集団情報、調査客体数、回収率、欠測値処理を含めた推定手法、達成精度の評価などを提供する必要があるという御指摘をいただいております。
それから、(3)の「システムの見直し」の一番下のポツ、訪問調査から、インターネットによるオンライン調査に切り替えるなど、人手に頼らない方法を考える必要があるのではないかといった梶木先生からの御指摘をいただいております。
5ページ目でございます。「統計部門のリソースの拡充」につきましては、統計改革、統計部門は非常に人が少なくなっているという美添先生からの御指摘がございました。
また、「統計委員会との連携強化、政府方針に対する迅速な対応」といたしましては、基幹統計のような経済社会の一般的情報を継続的に集積する目的から行われる統計は、厚生労働省から切り離すべきといった御意見をいただきました。一方で、それに対しては、実施者が関係業務の監督官庁だからこそ一定の回収率や質が確保されている実態を踏まえる必要がある。あるいは、基幹統計の一元化といった議論につきましては、厚生労働省に投げても対応が困難な内容であって、本懇談会の提言とは分けて考える必要があるといった御意見もいただいております。
それから、Ⅳの「「統計行政のフロントランナー」を目指した取組」については、一つ章立てを分けて議論するべきだといった御指摘を踏まえまして、章立てを分けております。
その際に、「EBPMの推進」のところでございますけれども、若い職員はEBPMに理解があるし、環境省のナッジ・ユニットのような留学帰りの若い職員を中心としたチームを作ってはどうかといった御指摘をいただいていました。
最後の「統計改革の推進体制、ビジョンのフォローアップ」につきましては、一番最後のポツでございますけれども、「今できることは何か」「予算措置が必要なものは何か」を明確にするために、工程表のようなものをつくって、工程表に基づいて、何ができて、何ができなかったかの実施状況もフォローアップしていくべきだといった御意見をいただきました。
そういった御意見を踏まえまして、次は、資料2を御覧ください。
資料2につきましては、これまでの議論を踏まえまして、提言(案)という形で作成しているものでございます。この提言(案)の作成に至りましては、どのようにつくったかでございますけれども、第1回目、7月22日の懇談会の議論におきまして、統計学会であるとか総務省統計委員会などの各種の提言の指摘を最大公約数的にまとめてはどうかと、そういったものがまず基本になるのではないかといった御意見を受けました。
それを踏まえまして、8月2日、第2回の懇談会におきましては、その第1回の議論を踏まえた提言項目(案)という形で提言項目をお示しさせていただきました。
さらに、各種の指摘、各提言等の指摘などにつきましても簡単に整理した形でお示しさせていただきました。その際、提言項目(案)の項目の構成などについてのさまざまな意見を踏まえまして、作成するというふうに至ったところでございます。
また、この間の事務的な調整の経緯におきまして、参考3という形でお配りさせていただいておりますが、この参考3につきましては、川口先生、神林先生、中室先生から出てきたペーパーでございますけれども、提言につきましては、こういう形でまとめてはどうかといった御意見をいただきました。
一方で、ここに書かれている御意見につきましては、必ずしも第2回の議論におきまして、意見の一致が見られた意見ばかりではなかったといったこともございますので、まずはこれまでの懇談会の議論を踏まえまして、第2回の懇談会で議論した提言項目(案)と、3委員からの意見を踏まえまして、小峰座長、神林先生ともご相談させて頂いた上で、小峰座長のご指示の下、今般の報告書の目次、項目を取りまとめさせていただき、そこから何度も事務的なやりとりをさせていただいたところでございます。
目次でございますけれども、1ページ目でございます。まず最初に「はじめに」からございまして、第2章として「今回の統計問題の整理」、第3章として「今回の統計問題の整理を踏まえた再発防止策」、第4章といたしまして「「統計行政のフロントランナー」を目指した取組」を書かせていただきまして、第5章で「統計改革の推進体制、ビジョンのフォローアップ」、第6章が「結び」という構成になってございます。
4ページ目を御覧ください。Ⅰの「はじめに」ですが、最初に、統計改革の基本的な考え方ということで御意見をいただいたところでございます。こちらにつきましては、吉川委員が取りまとめを行われました「政府統計の構造改革に向けて」にもあるように、統計というものは、人口、経済、社会等に関して、その集団の状態を客観的に把握することで、国や社会の姿を映し出す「鏡」となり、進むべき方向性を示す「羅針盤」ともなるもので、さらに言えば、経済や社会の内部構造に迫る「内視鏡」と言うべき機能も有しているところでございます。
また、平成19年の統計法につきましては、「国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的」とするとされておりまして、このように統計情報は、国民から負託された「財産」である、「公共財」であるということを認識していかなければならないとされております。
また、そういったものなので、統計については、大学等で一定の統計学の教育を受けた専門的人材が、独立性が担保された形で担っていくことが求められるといったことを記載しております。
5ページ目でございます。「統計の利活用を通じた質の向上」でございます。
この提言につきましては、委員からさまざまな御意見をいただいておりますけれども、この提言が重視するところというのは、統計情報は、異なる角度から、利用が重ねられることによって、ミスが発見され、品質が改善され、さらに独立性が担保される考え方を強調するべきだと。統計作成担当者が統計作成過程を透明化し、説明責任を果たしていくことで、そういった品質が改善され、独立性が担保されるという考え方であると。
このためには、全ての部局がちゃんとEBPMを推進していくことによって、透明性のある政策立案を推し進めることによって、統計を実際に利用することを通じて統計の質を向上させていくということをこの提言の基本方針に据えるべきであるという御意見をいただきました。
統計を改善するためには、統計情報へのアクセシビリティを高めていくことが重要である。あるいは統計の仕様や品質に関する情報の開示については、透明な統計の利用及び利用者からの信頼確保に不可欠なものであるといった御意見をいただいております。
また、この提言を取りまとめていくに当たりまして、各種の提言等との関係について、3.で整理しております。総務省統計委員会で今年の6月に第一次再発防止策が既に取りまとまっております。また、骨太2019の中で統計改革推進会議の下に「統計行政新生部会」というものが設置されて、総合的な対策が取りまとめられる予定となってございます。
毎月勤労統計問題、それから賃金構造基本統計問題などを引き起こした厚生労働省については、こうした政府全体の対策について率先して実施していくことが当然求められるわけでございます。このため、本提言の取りまとめに当たりましては、政府全体の見直しの方向性と整合性をとっていくということを意識しております。
また、日本統計学会や社会調査協会などの各種の指摘や提言についても、厚生労働省として対応すべきものについては幅広く取り込む形で提言を取りまとめております。
その一方で、それだけにとどまらず、政府全体の取組の方向性、ベクトルには即した形で、さらに一歩でも二歩でも前に進めるための取組を「「統計行政のフロントランナー」を目指した取組」ということで積極的に盛り込み、これを第4章という形で記載しているところでございます。
4.の本提言の構成でございます。
第1章のところは、再発防止とか統計改革に向けた基本的考え方を整理しております。
その上で、第2章として、今回の統計問題について、毎月勤労統計調査の特別監察委員会の委員長代理、荒井代理の出席を求めさせていただいて、報告を受けておりますので、その内容を紹介しております。
第3章として、そうした問題の整理を踏まえた再発防止策を記載しております。
第4章につきましては、単なる再発防止策にとどまらず、今回の問題を契機に「統計行政のフロントランナー」として生まれ変わるための独自の取組を整理しております。この際、本懇談会で出ていた意見を踏まえまして、速やかな実施が求められる取組を1つの節として、また、中長期的な観点から検討すべき取組を1つの節として、さらに、有識者全員の合意を得られなかったけれども、一部の委員から出ていた意見というものについても、類型化して取りまとめているということとしております。
第5章には、こうした再発防止策、あるいは統計行政のフロントランナーとして記載された取組を具体的に進めていくための推進体制であるとか、ビジョンのフォローアップ体制の構築について整理しております。
それでは、内容に入らせていただきます。
8ページ目でございますけれども、統計問題の整理につきましては、第1回の荒井代理の御説明をそのまま記載させていただいておりますので、こちらについては説明を割愛させていただきます。
11ページ目でございますけれども、第3章でございます。再発防止策につきましては、3点の柱で整理しております。1点目につきましては、今般の事案を引き起こした組織のあり方などの見直しに関する「組織の改革とガバナンスの強化」に関する取組ということで1点目の柱とさせていただきます。
2点目の柱でございますけれども、統計業務のあり方やその進め方などの見直しに関する「統計業務の改善」に関する取組でございます。
3点目の柱でございますけれども、今回の問題を引き起こした職員の資質・能力や法令遵守意識など、職員一人一人に求められる「統計に関する認識・リテラシーの向上」に関する取組ということでございます。
この3点の柱でございますけれども、この間の事務的な調整の中で、最初は「統計に関する認識・リテラシーの向上」を1本目の柱として記載しておったところでございますけれども、物事の重要性ということに鑑みて、「組織の改革とガバナンスの強化」を1本目の柱とするべきだという、委員からの御意見を踏まえまして、順番を入れかえたという形にしております。
「組織の改革とガバナンスの強化」につきましては、まずは組織改革、相談窓口ということにつきまして、厚生労働省の統計幹事の下に統計改革のエンジンとなる企画担当や、政策部局が統計を作成する際の相談・支援窓口を計画的に整備するといった取組を記載しております。
また、内閣官房の指示の下、分析的審査担当官については、結果数値の誤り発見後の原因分析と再発防止策の検討状況の管理等を実施していくことなどが記載されております。
それから、外部有識者の積極的な活用につきましては、今回の統計の改善等に向けて、外部人材の積極的な活用を図っていく。適切な処遇の確保に努めるとともに、採用された外部人材については、役割をもっと明確化することが重要だということで、統計改革や、統計幹事の補佐などを担当する者として、ミッションを明確にしていくということを記載しております。
ちょっと改行がずれておりますけれども、こうした取組を通じて、統計学者や統計を十分に利用している経済学者などの外部の専門家と、常に協力・相談できる体制を構築することとしております。
また、統計の業務改善を行う際には、統計に精通するコンサルティング会社やシステム開発を行う業者の活用などを検討してまいることとしております。
それから、統計部門のリソースの拡充につきましては、やはり統計業務に専念する、併任ではなくといった御意見も途中でいただいておりましたけれども、統計学や経済学などの専門性を有する人材の確保を初めとした、計画的な職員採用や定員の確保を図ることを記載しております。
また、人材の育成には一定の時間を要するため、外部人材も積極的に活用する。
あるいは予算の確保ということにも努めていく旨を記載しております。
「統計業務の改善」の節でございます。
やはり統計作成プロセスを透明化していくことの重要性、本提言の特徴でございます。そうした観点から、まず1点目でございますが、情報公開という観点で、ブラックボックス化しやすい調査設計など、詳細な調査内容を公開していくということを基本原則としたいと考えております。
また、調査票情報の二次利用を一層促進するということで、これについては利用しやすい形式での提供やオンサイト施設の利用など、利便性にも配慮していくということをしております。
それから、いわゆる一般統計、基幹統計だけではなくて、行政記録情報の利用促進を図っていくといったことについても記載しております。
それから、外部からの情報提供依頼については、組織内で共有して、速やかに対応していく必要があるということとともに、また、その方法については、後述する検討会などを踏まえて積極的に対応していくものとすることを記載しております。
「適切な業務ルールに基づく業務の遂行」につきましては、まず、標準的なマニュアルをちゃんと整備していくということ、その中でチェックリストなどを整備していくことなどを記載しております。
また、対応手順の策定につきましては、早期に誤りを発見した場合にどう対応していくかという組織内情報共有ルールをちゃんと記載していくということ。
その際には、調査計画の変更などについて、あるいはプログラムの変更などについて承認権者(専決区分)を示していくこととしております。この際、公表物などについては、もともと統括官決裁ということになっておりますけれども、調査計画の変更などについての意思決定プロセスが不透明であったという反省を踏まえて、こういったことについてしっかりと幹部が関与していくことが重要であると考えております。
それから、毎月勤労統計の事案につきましては、今後、整備が見込まれる誤り発見時の対応ルールにのっとって、統計の誤りを発見した際には、その影響を迅速・正確に把握して適切に対応していくということを記載しております。
データの保管状況や、記録の保存状況など、業務マニュアルのチェックリストに基づいて、定期的に点検していくということも手順としてルール化してまいりたいと考えております。
「システムの見直し」につきましては、梶木委員などからもしっかりとやるべきだと御意見をいただいております。まず、システムの計画的な移行を早急に検討するべきだということを記載しております。
それから、ICTを活用した業務プロセスの見直しということで、人の手間をかけないでできることはちゃんとやっていくということを基本としたいと思っていることと、オンライン調査の導入とかオンライン回答率の向上といったこともしっかり取り組んでいくこととしております。
システムを用いたエラーチェックについても、システム見直しのたびごとにこういったものを、一回やったら終わりということではございませんので、その都度しっかりやっていくということで、可能な限りのエラーチェックの徹底をシステムによっても対応していくということを取り組んでまいりたいと考えています。
それから、「統計作成室における業務見直し」「調査実施機関との連携」も進めていく。
それから、「統計等データの保存の徹底」というのが、やはり今回の毎勤統計の再集計ができなかったこととつながっておりますので、16ページでございますけれども、何かあった場合に過去に遡って再集計が行えるように、推計乗率の算出情報等の補助情報を含めて必要なデータや集計プログラムの保存ルールを整備する。さらに言えば、それを定期的にフォローアップしていく、全てのデータを電子化していくといった形で、ユーザーの視点に立った調査設計の情報公開にも十分留意していくことに努めていくこととしております。
「統計に関する認識・リテラシーの向上」につきましては、「事なかれ主義」を打破していくために、職員一人一人にどういう取組が求められるかということでございます。
まず1点目「研修の実施」でございます。こちらについては、段階的な研修体系の整備をした上で、中核的な統計人材も育成していくということ。
それから、本省全職員に統計研修をやるということ。さらに言えば、幹部職員に対する統計リテラシーの向上、ガバナンスの強化に関する研修を体系的に整備して、計画的な受講を推進していくこととしたいと考えております。
また、人事交流の推進、厚生労働省の統計部局が「閉じた組織」となっていたことが、今回の問題の一つの要因ともなっておりますけれども、そういった点につきましては、まず、ユーザーの視点に立った統計の作成をしていくことが重要かと考えておりますので、省内の政策部局との人事交流もちゃんと取り組んでいくということ。
それから、他府省、民間の研究機関等との人事交流、国内外の大学・大学院との留学機会の付与等により、先進的な技能・知見の習得や相互研鑽機会の拡充の機会を設けてまいることとしております。
「職員のキャリアパス形成の見直し」につきましては、職員の統計人材プロファイルを整備していくということ。計画的にキャリアアップさせていくということ。誇りを持てるようなキャリアパスを策定していくということを記載しております。
また、統計調査担当に統計業務経験者を配置していくということ。基幹統計にはスペシャリストを計画的に育成して、担当させていくということ。
省全体で、統計の専門知識や業務経験が評価されるよう、人事運用・処遇等について検討していくということを記載しております。
第4章の「「統計行政のフロントランナー」を目指した取組」に移りますけれども、この取りまとめに当たりましては、「速やかな実施が求められる取組」「中長期的な観点から検討すべき取組」をまとめるほか、有識者全員の合意を得られなかったけれども、一部の複数委員から出ていた意見についても紹介することとしております。
まず「速やかな実施が求められる取組」につきましては、1つ目でございますけれども、「個票データの一層の有効活用に向けた取組の推進」ということで記載しております。こちらについては、やはり統計データの利活用というのが、それを外で使われるということが、日常業務に緊張感を持って取り組む要因ともなるので、個票データの一層の有効活用に向けた取組を推進していくべきであると。この際、一般統計の個票データだけではなくて、行政記録情報とか、省内の行政記録についてもどんどん使えるように、これは統計部局から省内の業務統計の所管部局に対して利活用の促進をどんどん働きかけていって、実際にそうした所管課室も利活用の推進を図っていくということを記載しております。
「EBPMの推進」につきましては、エビデンスには「作る」「伝える」「使う」の3段階があって、やはり「使う」というインセンティブが弱いと、そもそも「作る」が適切に行われないと。なので、統計をどのように使っていくかということを実装していくことが課題であると。
こういった観点から、厚生労働省を挙げてEBPMの推進を図っていくということで、外部有識者の力もかりながら、プロジェクトチームを設置してはどうかと。実際にEBPMを実践していく。また、この際、EBPMに関する調査研究、厚生科学研究なども使って推進していってはどうかといった御意見を踏まえて、こうしたことを記載してございます。
「データの一元管理の推進」につきましては、もともと保存の徹底を進めていくということ、それから、個票データについてはテキスト化した形で全てもともと永年保存しておるわけですけれども、こういったものについて、ばらばらではなくて一元管理が可能になるように次期統計処理システムの見直しを検討していくということ。この際、都道府県など国以外の主体が保有・管理しているため、永年保存されていない調査票情報であるとか出先機関が保有・管理しているものについても、国に集約して保存できるように進めていくべきであるとしております。
また、こうした取組については、個票データの一層の有効活用とか、EBPMの推進の動きとも連動したものとしていくと、こういった観点で進めていくということを記載しております。
「ICTを活用した業務プロセスの更なる見直し」については、国・地方における業務の効率化等につながるAIやRPA(自動化ロボット)の導入に向けた調査研究を推進していくべきとの御指摘をいただいております。
「PDCAサイクルの徹底による更なるガバナンスの確立」についても御指摘をいただいております。
「外部有識者等の積極的な参画」については、これは第5章でも記載しております。
(7)の「統計委員会との連携強化及び政府方針に対する迅速な対応」でございますけれども、毎勤の調査方法の見直しに当たっては、やはり統計委員会との意思疎通に課題があったといったこと、素直に厚生労働省として反省すべき点もあったというご意見が散見されております。厚生労働省は、常日頃、統計委員会や統計委員会事務局との連携を図るものとするといったこと。
それから、総務省の統計委員会や点検検証部会、内閣官房の統計改革推進会議の議論というのもまだ動いております。そういった動き、この統計改革のビジョンというか提言だけにとどまらず、政府全体の動きがさらにあれば、こうした動きについても迅速かつ適切に対応していくということを記載しております。
「中長期的な観点から検討すべき取組」につきましては、進めるべき取組なのだけれども、すぐにはできないかもしれないけれども、ちゃんとやるべきだと、厚生労働省に対して求められている取組として記載しております。
データ利活用検討会の設置につきましては、最初の取組と関連いたしまして、統計情報や行政システムの設計・利用環境の改善につきまして、外部の意見を取り入れる仕組みとして、データ利活用検討会の設置を検討することとしております。
また、個票データについては、一般統計とか業務統計同士、あるいは基幹統計同士のマッチングキーなどの情報も保管して、個人情報の保護にも留意しつつ、相互利用可能なものとするように検討していってはどうかといった御指摘をいただいております。
また、分析・政策立案機能の強化に向けた組織機能のあり方というものもしっかり見直していくべきだといった御指摘をいただいております。その際には、省内の基幹統計・一般統計を一体的に所管する調査統計部門を設置し、分析・政策立案機能を強化する方法、あるいは、省内の基幹統計・一般統計を部局横断的に調査統計部局が調整し、分析・政策立案機能を強化する方法の2通りのいずれかで見直していくべきだと。
いずれの方向性であっても、これらの部門が、エビデンスに基づく政策立案、原局・原課の協力を得ながら政策立案の基礎となる資料作成と各種調整を行い、審議会、研究会等に提出する資料の客観性の担保等について重要な役割を果たしていくことが求められるといった御指摘をいただいております。
3.のところでございます。こちらにつきましては「一部の委員から出ていた意見等」ということで記載させていただいております。大きく2つ記載しております。
1点目でございますけれども、「政府全体の基盤的統計の集約化」でございます。こちらについては、基盤的統計、基幹統計に近い概念でございますけれども、それについては現業管庁が直轄する利点は少なくなっているので、統計を集中的に所管する組織に集約させていくことを検討するべきであると。この意見は、基盤的統計というのは技術的に厳密な統計を維持するということを自己目的とするべきであって、政策遂行組織である現業官庁との親和性は低いのではないかといった問題意識に基づくものでございます。
こうした意見につきましては、前回の第2回懇談会におきましても、統計調査については、実施者がその関係業務の監督官庁だからこそ一定の回収率や質が確保されている実態があること。それから、こういった意見については、本懇談会の提言とは分けて考える必要があるのではないか。あるいは実効可能性が疑問であるなどの理由より、複数の委員から反対する意向の意見があったところでございます。
もう一点、「労働政策の政策形成過程を踏まえた対応の強化の必要性について」の御指摘でございます。こちらにつきましては、一連の統計不正が厚生労働省の労働分野において発生したことが非常に多かったことについて、労働政策の形成過程と関係があるのではないかと。それについては、労働政策は「公労使」の三者構成に基づいて立案・遂行されるべきとの原則を前提として労働政策審議会で意思決定がなされているところでございますけれども、その事務局たる厚生労働省が現実的な交渉妥結可能性を重視する余り、客観的統計情報に基づいた資料を提出することに価値を置かなかった、あるいは正確な統計情報をつくることのインセンティブが弱かったのではないかといった御意見がございました。
こうしたことを踏まえまして、労働政策審議会の事務局を担当する厚生労働省におけるエビデンスに基づく政策提案能力を向上させ、エビデンスに基づく資料作成を制度的に担保することが重要であって、この資料作成過程で各種統計を十分に利用し、利用を通じて統計の重要性を認識し、その認識を統計の品質改善につなげていくというサイクルをつくり上げていくことが重要との御指摘がございました。
第5章「統計改革の推進体制、ビジョンのフォローアップ」についてでございます。
まず、工程表の作成、進捗状況の管理ということで、こちらについては提言の内容が非常に多岐にわたりますので、すぐに実行できるもの、予算要求で対応するもの、機構定員要求で対応するもの、中長期的に取り組むべきものといった形で、工程表を作成し、それに基づいてちゃんと進捗管理をしていくことが重要ではないかといった御指摘を記載しております。
また、常設の検討会の設置につきましては、厚生労働省は、もともとふだんから統計や経済の専門家の意見を聞く機会が少なかったのではないかといった指摘を受けておりまして、学識経験者や有識者との関係性の構築を、一過性のものとするのではなくて、継続的なものとする必要があるのではないか。
また、統計改革を作って終わりということではなくて、ちゃんと進捗状況を確認するとともに、さらなる改革を行っていく必要があるという御指摘をいただいております。
その際に、厚生統計については社会保障審議会統計分科会がある一方で、労働統計にはそういった審議会組織が存在しないこと、一方で、統計のあり方を検討していく際には、公労使による合意形成という形では余りなじみにくいのではないかということで、統計のあり方を考えるのにふさわしい検討会のあり方を厚生労働省で今後検討していくべきではないかといった御意見をいただいております。
最後に「結び」でございますけれども、厚生労働省に対して改めて猛省を求めるとともに、このビジョンのフォローアップを着実に実施していくことで、公的統計のさまざまな改善を実現することを通じて、公的統計と厚生労働行政について失われた信頼を一刻も早く取り戻し、国民の期待に応える厚生労働省となることを切に希望するといった懇談会委員からの意見をまとめております。
私からの説明は以上でございます。
○小峰座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの提言(案)等につきまして、御質問、御意見があれば、委員の皆様からお願いしたいと思います。
どうぞ。
○梶木委員 今回、小峰座長に御尽力をいただいて、いろいろな意見を出していただいた中のものをうまくまとめていただけたと思います。ありがとうございました。
今、若干御紹介があったように、かなり多岐にわたる方策、考え方が提言されているということです。先ほど御紹介のあった中室委員の発言にもありましたように、いますぐやらなければいけないこと、あるいはできることというのと、少し準備とか予算、対外折衝とかが必要で、少し時間がかかるものというのがあると思います。そういうものをそれぞれスケジュールに割り振って、順次、改革の実現に向けて努力をしていただけたらと感じております。
2つ目は、ごく一般的なことなのですけれども、どういう企業であっても、どの官庁であっても、どういう研究機関であっても、やっている仕事の中身に育てられたカルチャーというのがあります。組織のカルチャーというのは余りばかにできないことで、この際、厚生労働省あるいはその中の労働部門、あるいはその中の統計という分野なのかもわかりませんが、それぞれにおいて過去に先輩がつくってきたカルチャーはどういうものであって、今の日本が、あるいはこれからの国民が望んでいるそれぞれのカルチャーはどういうものなのかという、少し大きなふわっとしたことをこの際皆さんで議論されて、将来に向けて若い人たちを育てていただければと思いました。
以上でございます。
○小峰座長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
○神林委員 ちょっと細かい話ですけれども、一個一個よろしいですか。
どうもありがとうございました。特に小峰先生、かなり時間を使っていただきまして、どうも申しわけありませんでした。うまくまとめていただいたと思いますが、少々確認したい点が幾つかございますので、お願いいたします。
まず最初に、これは情報をいただきたいのですけれども、12ページ目にあります分析的審査担当官と呼ばれるものですが、これはもうどなたかアポイントされているのですか。
○菱谷大臣官房人事課調整官 されています。
○神林委員 菱谷さんのコメントは、この方の仕事がまだ明確に決まっていないということなのでしょうか。
○菱谷大臣官房人事課調整官 既に厚生労働省に4名の分析的審査担当官が配置されております。実際にはまだ内閣官房の指示のもとで、こういったことをやっていくべきだといったことを整理している段階でございますので、基本的にはここに記載されているような、分析的審査担当官の仕事については、調査結果の分析的審査、調査設計の変更時の影響分析とかそういったことをやっていくことが基本になっておりますが、必ずしも物すごく明確になっているわけではございません。
○神林委員 その指示系統はどのようになっているのですか。
○菱谷大臣官房人事課調整官 それは内閣官房に統計改革推進室というものがございまして、その下に事務局があるという形になってございます。
○神林委員 この提言の中でも、チェックをどうするかということがなされていると思うのですけれども、特に14ページにありますマル2の「対応手順の策定」の最後のほうの「データの保管状況や、記録の保存状況など、業務マニュアルのチェックリストに基づいて、定期的に点検を行う」というところで、菱谷さんからは、これは調査担当部署が一次チェックを行って、統計部局の取りまとめが二次チェックを行うことになっていると書かれておりますが、分析的審査担当官との関係というのは、今、はっきりしているのでしょうか。
○菱谷大臣官房人事課調整官 必ずしもはっきりしているわけではございませんけれども、基本的なところでございますが、まず、チェックリストとか業務管理しやすいようにしていく、あるいはマニュアルをつくってそれに基づいてしっかりやっていただくと。それは全部を統計部局が逐一点検していけたら一番いいわけですが、平時の話としては、まずそれに基づいて、一時的な点検を各課室、統計所管課室でやってもらうことを基本としていくというのが、やり方としては効率的だと考えております。
その上で、もちろん重点を決めて何かやっていくとかいうことについては、今後の新しい検討会の設置などでも対応していったらいいのかもしれませんけれども、まず一義的にはそういった対応が現実的ではないかと考えております。
○神林委員 その検討会というのは、データ利活用検討会というここで述べられているものを念頭に置いていますか。
○菱谷大臣官房人事課調整官 大きな統計のあり方みたいな議論については第5章の常設の検討会みたいなところで検討していったらいいのかなと思っております。
それから、データの利活用の話については、データ利活用検討会で議論していったらいいのではないかと。
○神林委員 別ですか。
○菱谷大臣官房人事課調整官 関係性は、また今後検討していきたいと考えております。
○神林委員 今のところ、それを一緒にするというニュアンスは書いていないということですね。
○菱谷大臣官房人事課調整官 データの利活用というのは、どちらかというと、もうちょっと固有のテーマかなと考えております。
○神林委員 なるほど。
自分がこのコメントを書いたときに、チェックをするということは、業務の担当ラインの人たちがそのままチェックするというのは多分当然だと思うのですけれども、ラインから外れたオフラインの組織みたいなところが業務進行状況についてチェックするというもう一つの考え方があると思いまして、そういうのをつくったらどうかというのを書いたところ、とりあえずは業務担当ラインでチェックをしますという御回答だったのですけれども、それはもしかしたらラインから外れた組織でこういうものをチェックしていくこともお考えだと理解してよろしいのでしょうか。全然関係ないですか。
○菱谷大臣官房人事課調整官 どこから議論したらいいのかあれなのですけれども、まず、先生からいただいた常設の監察委員会みたいなものをつくったらどうかということなのですが、それについては余り議論されていなかったということと、そういった役割については、基本的には内閣官房から置かれた分析的審査担当官という人たちがまずいるということ。
それから、そもそも統計の審査や、統計の企画調整をやっている部局というのは既に今でもございます。その上で、まだ何もできていなかったところについては、例えばマニュアルなりチェックリストなりをつくって点検していくことを常として、そこで問題があった場合は、取りまとめである今やっている部局がちゃんとそこについてコミットしていくというやり方が現実的ではないかと。それを、新たなものをぱっとつくるというのは。
○神林委員 そうですね。なので、現状どうなっているかということと、もうちょっと整理をしておいたほうがいいのかなと思います。現時点で言うべきことなのかどうかわからないですけれども、できれば、現在既にある担当部局との関係をはっきりさせたほうがよいかなと思いました。
あとは幾つかあるのですけれども、続けてよろしいですか。
○小峰座長 どうぞ。
○神林委員 16ページの頭のほうですね。「統計等データの保存の徹底」というところの2ポツ目なのですけれども、「必要なデータや集計プログラムの保存ルールを整備するとともに」と書いてありまして、この辺はどのレベルまで保存ルールをつくるのかということについてです。自分が指摘したのは、個票データが、現状の統計法の定義の範囲では非常に狭く定義をされていて、必ずしも統計情報、統計調査の過程で収集された情報を全て保存しているわけではないということが問題であろうと考えていました。
それをカバーするために、ある程度現状の統計法の個票データと呼ばれるもの以上に何か調査資料を保存すべきだろうという意味でここを書いたのです。
あと、後段のデータ保存のところで「省内の行政記録情報や業務統計の所管課室も利活用の推進を図るものとする」と書かれてあって、これは統計情報を収集する過程で生じた情報をきちんと保存していくというふうに理解してよろしいのでしょうか。菱谷さんのコメントはかなり、「容量や費用、手間の問題が生ずるほか、後者については、個人や企業を特定できるデータをいつまで保存していくのか、という課題もあり、明記するのは難しいと考えています」と書かれてあって、ちょっと賛否というか、否定的ニュアンスが強いと思うのですけれども、これはちょっとお話をお聞きしておきたいと思いました。
○菱谷大臣官房人事課調整官 16ページ目の一番上のところでございます。昨日、意見をいただいておりましたのは、過去にさかのぼって再集計を行えるように、推計乗率の算出情報等の補助情報とかだけではなくて、そもそも個票の画像データと、それから、集計プログラムだけではなくて調査するときの要図というのですか。どこの家をどういうふうに調べるとか、そういうものを統計調査のときにはつくるわけなのですけれども、こういったものも保存するべきだということがございました。
我々が物を考えていくときに、総務省のガイドラインというものを一つ参考にしていくこととしております。そこの中で、まず要図であるとか個票そのものについて、我々は個票に書かれている文字情報についてはテキストデータの形で全てデータ化しておるのですけれども、個票そのものの画像、例えば6と9を読み間違えているのではないかみたいな、そういった画像そのものを保存することについては、総務省からそこまで求められているわけではないというのが現状でございます。
それから、例えば要図というのは、その統計調査を実施するときにどこの個票を選んだかということのデータなのですけれども、それはどこの企業、あるいはどこの個人を特定したかという情報の保存ということになります。それは、そもそもどこの家を調査したかということが課題なのか、それとも統計数値をつくり直すときにどこから議論するかということかと思うのですけれども、まだそこら辺については政府部内においてもなかなか確定的な考えがあるわけではないということ。
それから、画像データを保存するということになりますと、テキストデータを保存するよりもはるかに容量、あるいは費用の問題等がかかってくるということがございますので、現時点において、そういった方向性についてまだ総意が得られているところではないかなと考えました。その一方で、必要な情報を、例えばマニュアルなどの改訂履歴などはちゃんと保存するべきだということは中にも記載させていただいております。そういったことは基本的なご指摘の方向性を否定するわけでは全くないのですけれども、画像データなどまでと言われると、現状明記することは難しいかなということで、書けるところまでを書いて、あとは政府全体の議論などを踏まえて考えていくべきことではないかと考えております。
○神林委員 ありがとうございます。
あとはデータ利活用検討会と、22ページの常設の検討会というのは、違うということもあり得るということですね、先ほどの回答では。
○菱谷大臣官房人事課調整官 まず、ミッションということで申しますと、別にメンバーを多くの方々が兼ねることを否定しているわけでは全くございません。そのあり方については、委員の先生方の御意見も踏まえて、また今後検討してまいりたいと思っておりますけれども、ミッションといたしましては、常設の検討会につきましては、まず有識者から統計についていろいろな意見を聞く機会、これから厚生労働省が関係性をちゃんと構築していく先生方に入っていただきたいと思っておりますし、このビジョンそのもののフォローアップであるとか、そういったことを担ってもらうということが直接的なミッションだと考えております。
データ利活用検討会につきましては、その中での個別のテーマであります個票データの利活用であるとかEBPMの話なども含めてですけれども、そういったことをどう進めていくかということを検討するための固有の検討会だと考えています。もちろん委員の何人かに兼任していただいたりということは検討していくべきことだと思っておりますけれども、そのあり方についても、また今後、御意見を踏まえながら検討していきたいと考えております。
○小峰座長 そこは私も説明を受けたのですけれども、ここでやっているような大所高所からの統計のあり方についての議論をする委員会とは別に、利用者の観点から具体的な問題点を指摘してもらうというものを別途つくるというのが、この報告の考え方だと理解しています。
○神林委員 それを統計の作成に直接反映させるという意味では一緒でもいいかもしれないですね。ただ、やはり考え方は2つありますかね。別々につくるということと一緒にしてしまうと。
○小峰座長 例えば実際に使っているシンクタンクだとか、学者の方だとか、そういう方の意見を聞くというイメージだと思います。
○神林委員 あとは、つまり利用するときに、統計の修正あるいは改変まで想定して使ってみるという場合と、とりあえず今ある統計は変えられない、全く変わらないという前提で使ってみるというのと、結構利用者の意識が変わってくると思うのです。そういうときに、何かこういう工夫があったらぜひ意見を言ってください、それを次回の統計作成に反映させる公式ルートがちゃんとありますという前提で使うのと使わないとでは大分違うと思いますので、その辺は今後きちんと考えていただきたいなと思います。
あとは、統計の突合のところなのですけれども、マイナンバーの利用の点で中室さんから意見のあったところがあると思います。20ページでしょうか。マッチングキーのところです。その際に、マイナンバーはそういう使われ方を想定していないので、統計突合についても削除されてしまったのですけれども、マイナンバーを使わなくても、厚生労働省の管轄の中で統計の突合というのはできるものが結構いっぱいあると思います。その点については残しておくべきだと思います。
○菱谷大臣官房人事課調整官 20ページのデータ利活用検討会の2つ目の○のところに一応そういうことは記載しています。
○神林委員 ここでしたっけ。別のところですよね。
○菱谷大臣官房人事課調整官 マイナンバーは、15ページのエラーチェックの徹底のところで書かれています。
○神林委員 大分見えなくなってしまっているのですね。このマル3の「システムエラーを用いたエラーチェックの徹底」というところで、マイナンバー等を活用して統計間の突合によるエラーチェック可能なシステムをつくったらどうかというのが書かれていたのですけれども、それが消されてしまっているのですが、このエラーチェックをするときに、例えば毎月勤労統計調査と賃金構造基本統計調査を突合させるというようなことは、現状でもできるわけですね。賃金支払い総額等々については、それでどれぐらいずれるのかというのをチェックすることができるようになっているはずなので、そういう統計間の突合をシステムエラー、エラーチェックのためにするというのはすぐれた発想だと思います。
逆に言うと、それは重複して統計をとっていることと同義なわけなのですけれども、利用者負担がどれぐらいあるのかということを推定する上でも、この点はきちんとやったほうがいいかなと思っています。
マイナンバーはそれに使えない。つまり、個人レベルではそれはできないかもしれないのですけれども、事業所レベルではそれは可能ですので、ぜひそれは考えていただきたいと思います。
○菱谷大臣官房人事課調整官 御指摘につきましては議論が2つございまして、まず、分析を進めていく際にそういったさまざまなデータを利活用できるようにしていくべきだという御指摘につきましては、今回の提言の中でも20ページ目の「中長期的な観点から検討すべき取組」のところで、データ利活用検討会の設置・検討のところで、個票データの活用については各種の統計のマッチングキーなどの情報、これはマイナンバーという一つの案ですけれども、マイナンバーは今そういう使い方はできないかもしれませんが、個人情報の保護にも留意しつつ、相互利用可能なものとするように検討していくということについては記載させていただいております。
その上で、エラーチェックのところについて、マッチングキーが使えるかということについては、毎月勤労統計調査と賃金構造基本統計調査という御議論がございましたけれども、毎月勤労統計調査は全国3万3000の事業所に投げている調査でございまして、毎月の給与総額を出してもらっているものでございます。それに対して賃金構造基本統計調査につきましては、毎年6月の段階で年に1回だけ、7万ぐらいの事業所に対して投げている調査でございます。重複がある事業所もございますかもしれませんけれども、賃金構造基本統計調査につきましては、労働者の属性等を照らしてかなり細かな統計をとっているものでございます。総額のところという観点でひょっとしたら一致するものがあるかもしれませんけれども、それをシステムで突合させていくことについては、今後の方向性としてないわけではないかもしれませんけれども、非常に、それだけの事例で申しますと、ほかのものはあるかもしれませんが、なかなかそんなに効率的ではないかなと思いますが、そういった方策を今後、相互に見ていくということは、何かできるものはあるかもしれないと思います。
○神林委員 ありがとうございました。
○小峰座長 確認しますけれども、具体的に文章でここを直すべきだという指摘があれば明確にしておいたほうがいいと思うのですが。
文章を直すというやり方もありますし、基本的な方向がそんなにずれていないのだったら、まだまだフォローアップ等の機会もありますので、そのときに検討するということでよろしいですか。
○神林委員 はい。
○小峰座長 中室先生、何か。
○中室委員 ありがとうございます。
お取りまとめをいただきました座長と厚生労働省の皆様に、厚く御礼を申し上げます。本当にどうもありがとうございました。
これまでも相当いろいろなやりとりがあったので、あえてここで特にこういうふうにしてほしいということは、私としてはないのですけれども、あえてここで一言だけ申し上げるとしますと、ここで書かれていることを実際に実装していくときに、持続可能な再発防止策になるということが極めて重要ではないかと考えております。8月9日に出てきた案へのコメントとしても書いたのですけれども、当時の案は、再発防止策の一丁目一番地として、個々の職員のモラルに対してどのように働きかけるかということで、研修であったりとか、倫理面での働きかけなどが強調されていたのですが、不正防止のための倫理への働きかけ等については、短期的な効果はあるのだけれども、長期的な効果はないという経済学の研究があります。
そういった観点からも、今回の問題の発生が個々の職員のモラルや認識の問題であったということもあるのだと思いますけれども、最も重要な点は、やはり個々の職員が統計を重要と考えなかったとか、上司へ問題の報告をする必要がなかったというふうに考えた組織のあり方やガバナンスになるのだと思うので、その組織のあり方やガバナンスを変える。もっと言えば、統計利用のインセンティブを高めるような構造に変えるということが最も重要なことではないかと考えました。ですので、担当職員の質だったりとか倫理の問題に限定することなく、組織としてどのように変わっていくかということを考えていかなければ、持続可能な再発防止策にはならないのではないかと思いましたので、改めてその点をここで強調しておきたいなと思ったことが1点目でございます。
2つ目には、これも議論の過程で出てきたのですけれども、外部有識者の活用ということについて改めて考えてみますと、これは非常に難しい問題もはらんでいるなと思います。今、大学で実際に研究をやって、大学行政をやって、教育をやっているという身からすると、外部有識者として何ができるのかと考えたときに、適切な処遇なく、全力を尽くして非常に大きな問題に当たるというのはなかなか難しい立場に置かれていると思います。大学の外部環境が大きく変わってきていますし、適切な処遇をなくして責任の重い仕事を外部の人にやってもらおうと考えると、これは非常に難しいと思います。
今、大学も人のとり合いになっていて、海外の大学や国際機関やデータを扱うような分析をやる研究者だと、民間企業ですね。アマゾンだったりとかグーグルだったりとか、そういうところともとり合いになる。こういう政府の仕事で必要とされるような人材もいるということになると、適切な処遇をなしに呼んでこようと思うと、安かろう悪かろうという言い方をすると適切ではないかもしれませんが、そのようになってしまうおそれもあるので、能力の高い人に来てもらおうと思うのであれば、私はやはり適切な処遇が必要だと思いますし、大学の外部環境が変わってきているということを考えると、いろいろな仕事を外部の人に安く外注しようという考えは、やはり捨てたほうがいいのではないかということも感じました。
ただ、それは外部有識者を用いるなということとは全然違っていて、適切な場所で正しくその能力を使うことがどういうことかということをしっかり考えていかなければいけないところに来ているのかなと思ったということでございます。
以上です。
○小峰座長 ありがとうございました。
ほかに何かございますでしょうか。
それでは、今後、見守っていくべき点は幾つかありますけれども、基本的にはこの提言(案)で了承されたということだと思いますので、この(案)を取った上で取りまとめとしまして、本懇談会終了後、懇談会の提言として厚生労働省に提出することにしたいと思います。どうもありがとうございました。
本日予定しておりました議事は全てこれで終わりましたけれども、これまでの議事を離れて、または報告書を離れてでも結構ですが、何かこの際、言い残したこと、ちょっと言っておきたいということがあれば、どうぞ、お願いします。よろしいでしょうか。
それでは、どうもありがとうございました。
私から一言御挨拶したいと思いますが、大変短期間でタイトな日程でしたけれども、皆様の活発な御議論で非常に有意義な提言ができたことを感謝したいと思います。
それで、多分、この部屋の中で私が一番年齢が上だと思いますので、ちょっと昔の話が出てきてしまうのですけれども、昔、キューバ危機というのがあって、ケネディがこれに対して演説したことがあるのですが、このとき私は高校生ぐらいだったか、もっと後か、大学生ぐらいかな。うまいことを言うなと思って聞いていたのですが、ケネディは、漢字で「危機」というのは「デンジャー」という言葉と「チャンス」の合成であるということを言って、危ない局面というのは、非常に危ないのだけれども、それをうまく使えば次の時代へのチャンスになるのだということを言ったということです。今回の厚生労働省のいろいろな統計の不祥事というのも、非常にデンジャラスなことではあったのですけれども、今回のフロントランナーになるということにも示されたように、これをチャンスとして今後生かしていただければいいなと思いました。
事務局からは何かございますでしょうか。
○土屋厚生労働審議官 それでは、私からも一言御礼を申し上げたいと思います。
小峰座長を初めといたしまして、委員の皆様方には非常に短期間に集中的に精力的な御議論をいただきました。多岐にわたる御意見をいただき、また、忌憚のない御意見もさまざまいただきまして、今日、先ほどおまとめいただきましたように、統計問題の再発防止策、あるいは統計行政のフロントランナーを目指すための取組といったようなさまざまな具体的な内容を盛り込んでいただいた提言をおまとめいただくことができまして、誠にありがとうございました。
私どもとしては、この後、統計改革の羅針盤となります厚生労働省統計改革ビジョン2019というものを、今月中を目途に速やかに取りまとめをしたいと考えております。また、提言において速やかな実施を求める取組、中長期的な観点から検討すべき取組など、これからの取組のスケジュール感もお示しいただいたところでございます。これを踏まえて、9月中には、具体的なこれからの改革のスケジュールを示す工程表もこのビジョンとあわせて私どもとして作成をしていきたいと考えております。
また、提言におきましては、学識経験の方々、あるいは有識者の皆様方との関係性の構築というものについて、非常に重要な御意見をいただき、また、それを継続的なものにしていくという観点から、常設の検討会の設置であるとか、あるいはビジョンの進捗状況の管理といったことについても御提言をいただきました。私どもとして、そういった御指摘もしっかりと受けとめて対応させていただきたいと思っておりますし、また、その際には、今般この懇談会に御参加をいただいた委員の皆様にも、ぜひさまざまな形でお知恵やお力を拝借したいと考えておりますので、引き続きの御指導、御鞭撻をお願い申し上げまして、私からの御礼の御挨拶とさせていただきます。
どうもありがとうございました。
○小峰座長 ほかは、事務局からはいいですか。
○蒔苗大臣官房参事官 提言の取り扱いですけれども、この後、我々のほうに提出いただきまして、その後、委員会の提言として公表という段取りを考えてございます。どうぞよろしくお願いします。
○小峰座長 それでは、本日は活発な御議論をありがとうございました。これをもちまして、第3回の有識者懇談会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。
(了)

照会先

政策統括官付参事官付統計・情報総務室 菱谷・益田

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