2019年6月21日 第19回厚生労働統計の整備に関する検討会 議事録

政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和元年6月21日(金)9:00~10:00

場所

厚生労働省共用第9会議室
(中央合同庁舎第5号館20階2016号室)

出席者

構成員(五十音順、敬称略、◎:座長)

  大江 和彦
  大久保 一郎
  加藤 久和
  黒田 祥子
  玄田 有史
 ◎津谷 典子
  樋田 勉

構成員以外の関係者

  廣松 毅(情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科客員教授)


事務局

  藤澤政策統括官
  中井参事官(企画調整担当)
  中村世帯統計室長
  細井統計企画調整室長
  飯島政策立案支援室長
  田中審査解析室長
  中原賃金福祉統計室長
  官野統計企画調整室長補佐

議題

1 構成員の改選に伴う座長の互選及び座長代理の指名について
2 毎月勤労統計調査等について(報告)
3 「賃金構造基本統計調査の改善に関するワーキンググループ報告書」について(報告)
4 国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ構成員及び主査の指名について
5 その他

議事

 


○中井参事官(企画調整担当)
 委員の先生方おそろいでございますので、ただいまから第19回厚生労働統計の整備に関する検討会を開会させていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。私は、政策統括官付参事官をしております、中井でございます。本日は、昨年11月に委員の改選をさせていただきましたが、持ち回り開催を除いて初めての開催となります。そのため、座長が選出されるまでの間、司会をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 本日の出席状況でございますが、阿部委員、永井委員、長島委員、野口委員、原委員が御欠席でございます。また、本日は審議協力として、廣松先生に御出席を頂いております。
 審議に入る前に、本検討会の委員御就任について御報告いたします。参考資料1、開催要綱の構成員名簿を御覧になっていただければと思います。昨年10月の任期満了をもちまして、石川委員が退任され、本日は御欠席でございますが、新たに日本医師会常任理事の長島委員に御就任いただいているところでございます。各委員の御紹介につきましては、名簿をもって御紹介にかえさせていただきます。失礼いたします。引き続き、本検討会の審議への御協力につきまして、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、これまでの開催以来、新たに事務局メンバーで変更があった者について御紹介いたします。政策統括官の藤澤でございます。

○藤澤政策統括官
 藤澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○中井参事官
 政策立案支援室長の飯島でございます。

○飯島政策立案支援室長
 飯島です。どうぞよろしくお願いいたします。

○中井参事官
 審査解析室長の田中でございます。

○田中審査解析室長
 田中でございます。よろしくお願いします。

○中井参事官
 賃金福祉統計室長の中原でございます。

○中原賃金福祉統計室長
 中原でございます。

○中井参事官
 それではまず、検討会の開催に当たりまして、政策統括官の藤澤より御挨拶を申し上げます。

○藤澤政策統括官
 おはようございます。改めまして、今年2月から統計担当の政策統括官を厚生労働省において拝命をしております、藤澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今日は、委員の先生方には、大変お忙しい中、この検討会に御出席いただきありがとうございます。日頃から、厚生労働統計の改善などにつきまして、多大なる御協力と御理解を頂いていること、この場をお借りして厚くお礼を申し上げたいと思います。
 初めに、毎月勤労統計あるいは賃金構造基本統計調査などをはじめとする厚生労働統計の不適切な取扱いがあったことについて、委員の皆さん、またユーザーをはじめとした国民の皆様に御心配と御迷惑をお掛けしたことを、深くおわび申し上げます。事案の詳細については、後ほど改めて御説明申し上げますが、現在、厚生労働省として統計の信頼回復、また再発防止に取り組んでいるところです。
 さて、この検討会ですが、第Ⅲ期の公的統計の整備に関する基本的な計画の中で示されている課題に対し、厚生労働省として講ずるべき具体的な対応、あるいはその改善、体系的な整備について、先生方の専門的な見地から御意見、御助言を頂くことを目的としているものです。今日は、主に2つテーマをお願いしていて、賃金構造基本統計調査の改善に関するワーキンググループの報告、それから新たに設置をお願いしますが、国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループの構成員あるいは主査の指名を頂くことをお願いしたいと思います。今後とも、委員の皆様には、専門的な立場から厚生労働統計の改善に向けて、忌たんのない御意見を頂けることをお願い申し上げまして、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○中井参事官
 カメラ撮りがある場合はここまでとさせていただきます。
 それでは、本日の1つ目の議事でございます。構成員の改選に伴う座長の互選及び座長代理の指名について、事務局から御説明申し上げます。

○細井統計企画調整室長
 それでは、参考資料1を御覧ください。本検討会の開催要綱です。先ほど、中井参事官から御紹介がありましたが、本検討会については昨年10月の任期満了に伴い、構成員の改選が行われたところです。つきましては、この開催要綱の4運営等にある(2)に基づき、構成員の互選による座長の選出、(3)に基づき、座長の選出後、座長より座長代理の御指名をしていただきたく存じます。よろしくお願いします。

○中井参事官
 ただいまの御説明のとおり、本検討会では構成員の互選により座長を選出し、また座長が座長代理を指名することとなっています。それでは、自薦、他薦、いずれでも構いませんが、どなたか推薦いただければと思いますが、いかがでしょうか。

○大久保委員
 この分野に大変造詣が深く、そして今までも座長として適切なマネジメントをされてきた津谷先生に、引き続き座長をお願いしたいと思いまして、津谷先生を強く推薦いたします。

○中井参事官
 ありがとうございます。ただいま、大久保委員から津谷委員という御推薦がありましたが、委員の皆様方いかがでしょうか。

                                   (異議なし)

○中井参事官
 ありがとうございます。それでは、座長の選出について御賛同いただいたので、本検討会の座長は、引き続き津谷委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。すみません、隣ですが、お席を移っていただければと思います、恐縮です。
 それでは、以後の進行については、津谷座長にお願いします。よろしくお願いします。

○津谷座長
 ありがとうございます。それでは、御指名を頂きましたので、座長を務めさせていただきます。どうぞ皆様、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。先ほど、事務局より御説明があったとおり、引き続き、座長代理の指名に移らせていただきたいと思います。座長代理については、座長である私が指名させていただくということですので、本日は御出席になっていませんが、阿部委員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

                                   (異議なし)

○津谷座長
 ありがとうございます。それでは、座長代理については阿部委員にお願いしたいと思います。
 続いて議事2「毎月勤労統計調査等について(報告)」に移ります。事務局より御説明をお願いします。

○中井参事官
 それでは、私のほうから御説明させていただきます。お手元の資料1「毎月勤労統計調査等について」という資料に沿って説明させていただきます。よろしくお願いします。
 まず、2ページです。毎月勤労統計の概要ですが、左上にあるとおり、常用労働者を5人以上雇用する事業所の雇用、給与及び労働時間について、毎月の変動を把握するという調査です。これについては、右上にあるとおり、雇用保険の基本手当日額の算定に用いる賃金日額の範囲等の算定資料として、毎月きまって支給する給与を利用するということをはじめとして、月例経済報告等、公的な経済判断に活用されているなど、幅広く活用されている統計であることは言うまでもないことですが、そういった中におきまして、3ページですが、今般の事案の概要について簡単に整理しています。
 昨年12月に事案が発覚したのですが、まず内容としては1.全数調査としていたところを一部抽出調査で行っていたということで、「500人以上規模の事業所」については、公表資料あるいは平成30年調査からは調査計画において全数調査としていたわけですが、実際には東京都について平成16年から抽出調査になっていたということです。具体的には、本来ある事業所のおおむね3分の1程度の抽出になっていたということです。また、2.統計的処理として復元すべきところを復元しなかったということですが、これについては、平成16年~29年の間、公表するデータを作成する際に、東京都の抽出調査の結果について、抽出率による復元を加えることなく、全数調査の結果として取り扱っていたということです。また、東京都における「499人以下規模の事業所」についても、平成21年~29年の間、一部に異なる抽出率の復元が行われない集計となっていたということで、こちらのほうは影響は実際には小さかったわけですが、結果として統計上の賃金額が低めになるという影響があったということです。また、調査対象事業所数についても、公表資料よりおおむね1割程度少なくなっていたことも確認されています。
 4ページです。このような事案が起きたことについては、特別監察委員会等の報告でも明らかにしていただいているところですが、非常に各方面に御迷惑をお掛けしたということで、この場を借りて、私からもおわび申し上げたいと思います。そのような中で、対応についてですが、1つは「再集計値」の作成・公表ということで書いています。これは、復元を行っていなかった期間のうち、復元に必要なデータ等が存在する平成24年以降について、改めて集計し、再集計値として公表しているということです。かい離幅は、「きまって支給する給与」ベースで、金額ベースで平均0.6%程度あったという状況です。また、まだ再集計ができていない期間についてどのようにするかという問題が、まだ課題として残っていますが、これについては引き続き総務省の統計委員会で御議論いただいている状況です。
 次に、2番目として全数調査の実施ですが、こちらは本来申請した適正な調査で行っていくということです。こちらも統計委員会の審議を経て、この6月から「500人以上規模の事業所」について、東京都において全数で実施するということで、今、実施しているところです。これについては、その下に書いてあるとおり、全ての事業所を集計するということですが、5月以前は抽出調査でしたので、比較できるような情報を集計して提供するということについても検討しているところです。
 なお、5、6ページに数字が出ていますが、毎月勤労統計調査を利用されていることについて、先ほど雇用保険等と申し上げましたが、実際に雇用保険制度、労災保険制度、それから船員保険制度の支給に、過去に遡って影響が出てしまったということです。それについて、「再集計値」があるところについてはそれを使い、「再集計値」が存在しない期間においては、「再集計値」と従来公表していた値のかい離幅を活用して、給付のための推計値を作成して、それを給付に活用するということもさせていただいています。
 7ページ以降で、賃金構造基本統計について概要を説明します。8ページは統計の概要です。左上にあるとおり、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に把握するという統計で、年1回実施しているものです。こちらの利活用用例については、右上にあるとおり、最低賃金額の目安を定める際の資料として利用していたり、労災保険給付の休業給付基礎日額の最低・最高限度額の算定資料として利用していたりということで、こちらも各方面で活用していただいているという統計です。
 9ページです。「賃金構造基本統計調査」に係る今般の事案の概要です。まず1番目として、調査員調査により実施しているとしていた配布・回収を、実際にはほとんど郵送調査によって実施していたということです。実際に調査員は任命されていて、事業所からの照会対応や調査票の審査、事業所への疑義照会、未提出事業所への督促などに従事していたわけですが、こちらも承認を受けた調査方法と異なっていたということです。2番目の報告を求める期間については、7月31日という報告期限を設けていましたが、実際は都道府県労働局でそれよりも早い提出期限を定めていた例があったという状況です。3番目として調査対象の範囲ですが、計画では日本標準産業分類による「宿泊業、飲食サービス業」を含めていましたが、特に産業小分類の766「バー、キャバレー、ナイトクラブ」について、母集団から除外していたことが分かったということです。
 10ページです。課題○1、○2ということで、報告者負担の軽減、行政事務の効率化も含めて、総務省の統計委員会で御審議いただき、4月26日に答申を頂いています。それを踏まえた調査計画ですが、そこに記載しているとおり、「郵送調査」を基本としつつ、統計調査員等により督捉・回収を行う、調査票は本省から事業所に直接配布し、労働局を介さない、本社一括調査という形でも実施する、オンライン化に向けて電子媒体による調査の試行的な実施も行うとしています。5番目として、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」については、それを含めて調査を行うということにしています。それぞれ運用上も工夫して、これまでとの整合性も見ながら実施していくということです。
 11ページからですが、統計の点検検証ということで、12ページを御覧ください。今回の事案を踏まえ、政府全体で公的統計に対して点検を行っていくということになり、この1月には基幹統計の点検を行いました。その後に一般統計についても点検を行いました。その際には、総務省の統計委員会に「点検検証部会」という部会を設置し、そちらで検証を行っていくということになっています。厚生労働省については、2番目に検討の範囲と書いていますが、基幹統計が9統計、一般統計が70統計ということで、政府の統計全体の中でもかなりのウエイトを占めています。そのような中で、結果については、13ページにあるとおりです。点検検証部会で、影響度区分を下の欄外に書いてありますが、Ⅰの数値の誤りも利用上の支障も生じない場合から、Ⅳの利用上重大な影響が生じると考えられる数値の誤りまで区分分けをし、それぞれ点検検証の結果として、区分されているということです。結果としては、特に毎月勤労統計調査については、非常に大きな影響を及ぼしたということで、区分Ⅳになっています。また、区分Ⅲの利用上重大な影響はないが数値の誤りがあったということについては、一般統計で全省庁16調査のうち8調査、厚生労働統計が該当しているということです。また、数値の誤りがないものについても、今回、結果として一定の課題があったことについては、そこに示されているとおりです。このような状況を我々として真摯に受け止め、今後適正な統計の実施に取り組んでいかなければいけないという状況になっています。
 そのような中で、12ページは今後の進め方です。統計委員会でこのような点検検証を行うとともに、政府全体の第1次再発防止策、これは最終的には統計委員会で決定されるものですが、点検検証部会でこれの素案を決定し、それを今、最終決定に向けて審議されている状態です。昨日の点検検証部会でも審議されたと伺っています。
 14ページです。今、申し上げたことも含め、進め方ということで再発防止策が、最終的には統計委員会で6月から7月に決定される見込みと承知しています。また、この間、点検検証を踏まえ、「ターゲット型審議」と右下に書いてありますが、重点的に改めて審議をする統計が選定され、順次審議され、秋頃までそれが行われることになっています。厚生労働省も、毎月勤労統計調査をはじめ、幾つかの統計が該当しています。
 15、16ページ、再発防止です。こちらについては、先ほど総務省の統計委員会で再発防止策について検討されていることを申し上げましたが、厚生労働省としても、そのような状況も踏まえ、また1月以降、特別監察委員会で指摘いただいたようなことも踏まえ、現在検討しているところです。中身としてはまだ固まっている状況ではありませんが、16ページに4月の衆議院の厚生労働委員会で根本大臣が答弁された内容を少し抜粋していますが、3つの柱で取り組んでいこうと考えています。1番目、統計に関する認識・リテラシーの向上ということで、統計の重要性や統計に関する知識、それは作成と活用の両方ですが、そのようなことについて組織を挙げて向上に取り組んでいくことを考えています。2番目としては、統計業務の改善ということです。基礎の基礎ということですが、統計の調査内容の正確な公開、あるいは利用者、ユーザー目線での統計の見直しを進めていくことを考えています。3番目、組織の改革とガバナンスの強化ということで、今回いろいろな御指摘で、閉じた組織という問題点が指摘されている中において、統計を外部有識者により審議していただく仕組みを強化していくこと、あるいは人材の交流も行って、開かれた組織に変えていく。それから内部組織の強化ということですが、統計作成におけるガバナンスをしっかり見直していきたいと考えています。
 最後に、17ページです。雇用保険等の追加給付ですが、18ページ以降は4月に報道発表した資料の抜粋になっています。追加給付については、これから支給する分については、雇用保険について、3月18日からお支払いを始めるということで既に進めてきています。いろいろ事務手続、確認をするということも含めて苦慮していますが、雇用保険、労災保険、船員保険それぞれあります。また、関連の助成金についても、22ページからの参考資料で出てきますが、このようなものに影響があるので、それぞれ適正に給付を進めているところです。具体的な日程については、19、20ページに記載されているとおりです。見込まれる費用額については21ページに記載されているとおりで、給付費と事務費が、各々右側にありますが、564億円、195億円、全体で790億円を見込んでいて、こちらもしっかり取り組んでいきたいと考えています。
 若干長くなってしまいましたが、以上御報告です。まだまだ課題が山積していますので、再発防止という観点を中心に、しっかり一連の取組を行っていきたいと思っていますので、引き続き御指導等を頂ければと考えています。以上です。ありがとうございました。

○津谷座長
 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について、御質問も含め、何か御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして議事3「「賃金構造基本統計調査の改善に関するワーキンググループ報告書」について(報告)」に移りたいと思います。まず、ワーキンググループの主査を務められました玄田委員より、ワーキンググループ全体について総括していただき、次いで事務局より報告書の概要についての御説明を頂きたいと思います。お願いいたします。

○玄田委員
 承知いたしました。賃金構造基本統計調査の改善に関するワーキンググループにおける検討状況について、総括的に報告させていただきます。
 本ワーキンググループについては、平成29年7月14日の第1回会合を皮切りに、本年6月6日の第5回会合まで、約2年間にわたり検討を進めてきました。賃金構造基本統計調査については、平成17年以降、大きな見直しが行われておらず、社会情勢の変化などに伴って見直しが必要な時期に来ており、統計委員会からも幾つかの課題について指摘がなされていたところです。そこで、本ワーキンググループではこのような要請に応え、賃金構造基本統計調査をどのように改善していくべきかという方向性を得ることをミッションとして、主に推計方法の見直しや職種・学歴といった調査事項の見直しを中心に議論を行ってきました。
 検討に当たっては、厚生労働省が平成30年6月に行った試験調査や企業ヒアリングの結果を踏まえ、事務局に御用意いただいた各種試算結果なども詳細に吟味しました。その上で、統計ユーザーのニーズの変化に十分応えられるか、精度が高く安定的なデータを提供することができるか、見直しの前後でのデータの接続性に十分配慮がなされているか、報告者である事業所の記入可能性や記入負担の面から問題がないか、見直し内容は合理的でユーザーに分かりやすい簡潔性に優れたものとなっているか、といった観点から議論を重ね、報告書という形で見直しの方向性を取りまとめました。報告書の内容については、この後、調査担当の中原室長から御紹介があると思いますが、事業所抽出に係る復元方法を回収率を考慮したものに変更すること、学歴区分を細分化すること、職種調査を全労働者へ拡大するとともに職種区分を統計基準と整合的なものに見直すことをはじめ、これらに関連して、幾つかの論点や報告者負担を軽減するための調査項目の見直しについても方向を示しています。
 賃金構造基本統計調査は研究者のみならず、労働問題に携わる者にとっては非常に有用な情報を提供してくれる重要な調査です。職種の見直しをはじめとして、本ワーキンググループ報告書で取りまとめた改善が実行されることにより、本調査の利用価値がより高まることを期待しています。また、この報告書が広く公開されることにより、今回の見直しに関する検討過程や根拠が明らかになり、ユーザーにその真意が伝わるとともに、様々な有益な御意見が表明され、その意見が更に今後の改善につながっていくことも期待できると考えています。
 厚生労働省では、令和2年調査より調査見直しが行われるものと思いますが、その際に、今回の見直し内容について、ユーザーに詳細な情報提供を行っていただければと思います。それとともに、今回の見直しにとどまることなく、不断に改善を続けることにより、賃金構造基本統計調査の利用価値の更なる向上に御尽力いただきたいと思っています。
 今回のワーキンググループの検討に当たり、構成員の先生方には、それぞれ専門家としての見地から、精力的に御議論いただいたことに感謝申し上げます。また、早稲田大学の西郷先生にも、オブザーバーとして貴重な意見を頂いたことを併せて申し添えさせていただきます。私からの報告は以上です。

○津谷座長
 ありがとうございました。では、御説明を事務局よりお願いいたします。

○中原賃金福祉統計室長
 それでは「賃金構造基本統計調査の改善に関するワーキンググループ~報告書~」について説明いたします。ただいま玄田主査から御紹介がございましたように、このワーキンググループでは、主に推計方法の見直しや職種・学歴といった調査事項の見直しを中心に御議論いただいたところです。報告書として資料2-2を取りまとめていただきましてお配りしておりますが、本日はその概要について資料2-1を用いて説明いたします。
 2ページです。令和2年「賃金構造基本統計調査」の見直しの概要についてまとめております。上の囲みの2つ目の○の所ですが、「公的統計の整備に関する基本的な計画」において、いろいろな課題が指摘されていたところがあります。また、「「行政手続コスト」削減のための基本計画」において、行政手続コスト、すなわち報告者負担の軽減を行うこととしていました。改善すべき課題と令和2年調査の対応については、ポイントをこちらのページでまとめておりますが、それぞれについては次ページ以降で説明いたします。
 3ページです。推計方法の見直しについてです。基本計画の中で、事業所抽出の復元方法が回収率を考慮していないといった課題が指摘されていました。そのため、推計労働者数が母集団の労働者数よりも少なくなっているといったことが課題としてありました。また、層別の推計労働者の構成比が層ごとの回収率の影響を受けるということがあります。例えば産業別、規模別で言いますと、回収率に差が出てきますと、産業計の所定内賃金の額などにも影響する可能性が出てくるといった問題がありました。それについて、幾つかの復元方法を御検討いただいたところですが、検討結果としては右のほうにありますとおり、事業所の復元倍率について、それぞれの抽出層ごとの抽出率の逆数に回収率の逆数を乗じたものに変更するとしております。数字の動きの状況ですが、ここにありますグラフの真ん中にある●の線が母集団の動きです。▲でポイントしている所が経済センサスの労働者数です。現行の賃金構造の数字の動きが、一番下の線です。今回見直しを行ったところ、新しい方法のものが、この赤い点線のグラフです。このように現行よりも母集団との差が縮まるといった状況になっているといったところです。
 ただいまのところは事業所抽出の復元方法ですが、もう一点、労働者抽出の復元方法です。賃金構造では、事業所を第1次抽出単位として抽出し、各調査対象事業所の労働者の中から、更に対象労働者を抽出していただくという二段抽出方法を採っております。現在の労働者の復元方法ですが、原則としては労働者抽出率の逆数を復元倍率としているところですが、その抽出倍率と全く同じように出てきた場合とか、多少下がる場合がありますので、その場合については復元倍率を再計算するなどしておりまして、事務処理上も非常に手間が掛かるといったところがありました。そういった点から、統計精度や分かりやすさの観点から、改善を求める必要があるのではないかといったところがありました。
 この結果についてですが、労働者復元倍率については、抽出率の逆数を用いるのではなくて、雇用形態、すなわち正社員・正職員/正社員・正職員以外/臨時労働者の区分別に、事業所の労働者数と抽出された労働者数の比に変更して、復元するということとしております。これにより、雇用形態別に見ますと、より適正な労働者ウエイトになると考えているところです。
 併せて、標準誤差率の推計についても御検討いただいたところです。現在、賃金構造基本統計調査の報告書に掲載している標準誤差率ですが、これは副標本方式によってやっています。一方で、標本設計に使用している標準誤差率は、分散推定方式により計算しているといったところです。また、現在のところの推計方法によりますと、副標本方式、分散推定方式の数字にかい離があるといったところがありました。
 検討結果ですが、将来的な方向性としては、厳密な手法である分散推定方式のほうでやっていくとしています。ただ、一方で、プログラム修正とか、非常に手間が掛かる部分も表によってはありまして、その観点からできるタイミングになったところで移行するということで、当面の間は、副標本方式を採用すると。先ほど申し上げましたように、副標本方式と分散推定方式の水準に差がある、かい離があるという御指摘もありましたが、これについては副標本方式の取り方を適正化することで、解決するということが分かりましたので、そのように解決した形、ここで書いていますが、事業所ごとに組分けをして副標本を採るといった方式を採用することで今後やっていくということで、まとまっております。
 4ページです。調査事項の見直しの関係です。大きく職種と学歴についての検討といったことで始まったところです。職種区分ですが、現在の賃金構造では、御紹介のとおり、職種については全ての労働者について調査をしているわけではなく、技能系の職種、あるいは建設・製造業といった工業的職種が中心となっておりまして、それに該当する方のみ職種番号を記入していただく方式になっています。それについての検討結果ですが、日本標準職業分類と整合的な分類でやっていくということ、そして、全労働者を網羅する区分に変更するということで、全ての労働者について職種番号を書いていただくといったことに変更となっています。その職種の分類ですが、5ページの表のとおりとなっており、こういった区分で令和2年の調査を行っていくとされています。
 職種の見直しに関連して、いろいろな見直しも行っています。関連見直しの所の役職者の職種です。現在の調査では、企業規模100人以上の事業所について、役職を調査していますが、役職者については職種を調査しないといった形となっていました。これについては役職者も職種を調査すると。それと企業規模10人以上について役職を調査するといったところで、見直しを行うとされています。
 続いて労働者の種類です。こちらについては、鉱業,採石業,砂利採取業、建設業、製造業といったところで、生産労働者、管理・事務・技術労働者の別を調べていますが、今般、全てについて職種を調べるということになりましたので、こちらのほうで代替するという考えの下に、この調査項目は廃止するとしています。
 続いて短時間労働者の集計条件です。現在の短時間労働者ですが、特定の職種を中心に、1時間当たりの所定内給与額が著しく高いものを集計から除外するということをしております。この考え方については、従来からのパートタイム労働者のイメージからしますと、やはり非常に高い人が入っているのでどうなのかというところで、除外していたところです。一方で、職種別の集計のほうでは除外はしなかったといったこともありました。今後ですが、働き方の多様化とか、短時間正社員といった方も徐々に出てきているといった実態等も踏まえて、今後は職種や賃金によって除外を行わない、短時間労働者全体を集計対象とするという方向とされております。
 続いて学歴区分です。学歴区分はこちらにありますとおり、現在4区分でやっていますが、「高専・短大」に入っている「専門学校」を区分するといったこと、「大学・大学院」が1区分ですが、これをそれぞれ「大学」「大学院」に分けるといった見直しを行うということです。
 続いて新規学卒者の初任給額です。賃金構造基本統計調査については、行政手続コストについて22%削減というものを求められておりまして、報告者負担の軽減が喫緊の課題となっていました。また、一方で、調査も非常に複雑化してきているということと雇用形態や賃金制度の多様化によって、審査事務に時間が掛かるといったこともあり、私どもの調査事務の効率化も図る必要があるといったことがありました。そういったところから、新規学卒者の初任給額については、他でも把握可能であるといったこともありますので、廃止するといったことで考えています。ただ、一方で、個人票の集計のほうで、新規学卒者と考えられる者に限定した代替集計を行うとされています。これについては、例えば賃金構造で高卒18歳、勤続年数0年といった者が取れます。そういった条件に該当する者を高卒の新規学卒者とみなして集計するという代替集計、そういったものを行うとされています。
 最後の諸手当です。ここの通勤手当、精皆勤手当、家族手当の項目ですが、現在、最低賃金の審議資料に使うということで、特定の産業の小規模事業所のごく限られたところで調査をしております。これは、最低賃金において、これらの手当を含まないということに対応するためですが、これの活用については、賃金構造基本統計調査のほうでは特に集計もしていないといった事情もあります。一部の限られたところといったことが理由です。最低賃金のほうでも、ほかのところで代替して行うという方向性となりましたので、この3手当については調査を廃止するといったこととされています。
 5ページは先ほど申し上げた職種の分類表です。続いて6ページです。集計事項の見直しです。今回、日本標準職業分類と整合的な区分で全体の調査をするということで、集計表の見直しを行うとしています。その際には統計精度を担保できる観点から、というところも含めての検討結果です。検討結果ですが、ポイントとしましては、職種大分類別の集計を行う、それをもって大分類を作ることによって、産業と職業のクロス集計を行うとしています。また、全集計事項について男女計を追加と。現在は職種によって男のみ女のみといった形の集計となっていますが、基本的に男女計を集計するといったこと。また、男女別については、ある程度サンプル数が確保できるところについて集計を行うとしています。また、そこにありますように、非常にクロスを深くするとサンプル数が厳しくなるところについては、ある一定程度のサンプル数を確保できるところについてのみ集計を行うという方向性とされています。
 下のほうの四角ですが、未集計・未公表となっている事案です。これは4月25日の点検検証部会第1ワーキンググループのほうで厚生労働省から報告したものですが、現在の調査計画に定めてある集計事項のうち、「企業規模5~9人」の所について、未集計・未公表のものがあったことが確認されています。これについて、令和2年以降の調査でどういうふうにしていくかというところの結論ですが、5~9人の所はサンプル数に非常に厳しいところもありますので、そういった観点からの検討もしています。結論としては、ここにありますとおり、職種、年齢階級別所定内給与額について、5~9人については年齢計のみ公表、標準労働者の特定年齢別所定内給与額分布については表章しない。また、先ほど説明した初任給については、調査事項から落とすことで集計はないといったことになっています。
 最後の7ページですが、こちらはワーキンググループの御議論の範囲ではなかったのですが、令和2年の調査方法について、こういった形で見直しをしますといったものです。ポイントとしましては、ここの上のほうに赤囲みでありますが、政府統計共同利用システムを使ったオンライン調査システム、オンライン調査を導入するといったことが大きなポイントです。また、光ディスクによる提出も認めるといったことを考えています。さらに、右のほうにありますが、調査票の受付関係については、民間の活用も考えている、さらに厚生労働省の中でも調査票審査支援システムを導入することによって、審査事務の効率化を図っていきたい。こういった形で来年の調査を行っていければと考えているところです。
 これらについては、こういったワーキンググループの御議論を受けまして、総務大臣への変更承認申請を行いまして、統計委員会の諮問、答申を頂きたいと考えています。説明は以上です。

○津谷座長 
 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について、委員の皆様、御質問、御意見などはございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。本検討会として、ワーキンググループの報告書を御了承とさせていただきたいと思います。なお、このワーキンググループの報告書を踏まえた形で、令和2年の調査計画案が総務省に申請され、その後、統計委員会の審議に諮られるということです。このワーキンググループの主査、玄田委員をはじめ、各委員におかれましては、計5回にわたる精力的な御審議を経て、この報告書をおまとめいただきました。御尽力に感謝いたします。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、議事4「国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ構成員及び主査の指名について」に移りたいと思います。資料3を御覧ください。このワーキンググループは、本年3月に持ち回りにより開催されました第18回検討会で了承されたものです。本ワーキンググループでは、2019年本調査の調査計画について平成30年12月17日の統計委員会諮問第118号答申において、今後の課題として示された「非標本誤差の縮小に向けた更なる取組の推進」について、オンライン調査の導入に向けた検討、そして、調査結果精度の向上に向けた推計方法の見直しの検討をすることとしております。このワーキンググループの構成員と主査については、参考資料1に示されています本検討会開催要綱に基づき、座長である私が指名させていただくということですので、構成員については大久保委員、加藤委員、樋田委員、そして私津谷、そしてこれら本検討会の構成員の方々に加えて、一橋大学経済研究所の臼井先生、同じく一橋大学経済研究所の小塩先生、そして、国立社会保障・人口問題研究所の小山先生を指名させていただきたいと思います。そして、主査については、加藤委員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それではどうぞよろしくお願いいたします。
 最後に議事5「その他」となっておりますが、事務局から何かございますでしょうか。

○中井参事官(企画調整担当)
 事務局からは特段ございません。

○津谷座長
 分かりました。ありがとうございます。それでは本日、予定しておりました議事は以上となりますが、全体を通した御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
 それでは本日の議題は、これで全て終了となります。それでは事務局にお返しいたします。ありがとうございます。

○中井参事官(企画調整担当)
 ありがとうございました。本日はお忙しい中、御出席いただきまして、また御審議いただきましてありがとうございました。これをもちまして、第19回厚生労働統計の整備に関する検討会を閉会させていただきます。また、この後、先ほども御審議いただきました第1回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループを10時15分をめどで、場所が離れて恐縮ですが、仮設第2会議室で開催させていただきたいと思います。ワーキンググループの構成員の皆様方におかれましては、会場のほうに御移動いただけますよう、よろしくお願いいたします。以上です。ありがとうございました。
 


                                                                                                                                                                                       (了)

照会先

政策統括官付参事官付統計企画調整室

電話:03-5253-1111(内線7373)