2019年7月30日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第33回) 議事録

日時

令和元年7月30日(火)15:32~17:31

場所

中央労働委員会講堂(7階)

出席者

今村主査、土井構成員、中村構成員、宮崎構成員、戸田構成員、坂爪構成員、三宅構成員

議事

 
 
○今村主査
 それでは定刻よりかなり早いですが、皆様おそろいのようですので始めさせていただければと思います。ただいまから本日の第2ラウンド、「第33回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、引続きでお疲れの中、恐縮でございますが、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日は志藤構成員、関口構成員、高田構成員が御欠席です。
 次に本日の議事について、事務局から説明をお願いいたします。
 
○政策評価官室長補佐
 政策評価官室長補佐の加藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。御説明の前に事務局で異動がありましたので、御報告いたします。政策評価官の溝口です。
 それでは本日の議事について御説明いたします。始めに、議事次第にあります参考資料1~9に関しましては、お手元にございますタブレットの中に収納してありますので、そちらを御覧ください。画面がスリープ状態になっている場合は右側の電源ボタンを軽く指で押してください。
本日は労働者健康安全機構について、平成30年度業務実績評価及び中期目標期間実績評価に係る意見聴取を行うこととなっております。構成員の皆様には、重ねての御説明となり恐縮ですが、御意見を頂くに当たり、今年は3月12日付けで総務省において、「目標・評価の両指針」の改定が行われておりますので、その中で、評価の枠組みに関わる事項について、簡単に御説明いたします。
 評価指針においては、「年度評価」について、「当概目標期間中の各年度において、中期目標の着実な達成を確保する上で支障となると考えられるものなどの業務運営上の課題を的確に抽出できることが重要である」との考え方から、評価書作成に当たり、「事務事業の特性や目標の内容、目標の重要性等、目標・計画の達成状況に応じて、重点化して評価を行う」こととされたところです。この「重点化」については、タブレットの中ですが、参考資料2の2ページ目の「評価項目」の中に記載しておりますとおり、「目標期間終了時における目標達成の上で重要なもののみ従来の単位・精度で評価を行うこととする一方、それ以外の項目については、簡素・効率的な評価となるような工夫を促すことにより、評価にメリハリを付けようとするもの」と評価指針において示されております。その上で、重要度又は難易度が高いと設定している目標については、必ず重点化の対象とすることとされております。
 なお、改定後の評価基準S、A、B、C、Dへの当てはめ基準の適用時期については、改定後の指針に基づいた新目標期間の開始時からとなりますので、当面の間、従来どおりとなっております。その考え方は参考資料2の2ページ目下段の※のとおりであり、改定後の目標指針の下で目標を策定して以降の評価について改定後の評定ルールを適用するということになります。労働者健康安全機構の場合は、今年度から目標の次の目標期間の開始年度の翌年度、即ち令和7年度に実施される年度評価からとなります。
また、「中期目標期間実績評価」においては、参考資料2の2ページ目の上段に記載しておりますとおり、「見込評価時に使用した中期目標期間終了時の実績見込みと実績との間に大幅な乖離がなく、かつ考慮が必要な状況変化もない場合には、数値の更新等必要な修正を行った上で、見込評価を活用することができる」とされたところです。
 これらの点を踏まえまして、今年度のWGにおきましては、「年度評価」において、重点化の対象とする項目を中心に御意見を伺うこととしたいと考えております。そのため、始めに法人所管課室より、「重点化対象項目選定の考え方」を説明いただいた後、続けて、法人から「重点化対象項目」の業務実績及び自己評価を説明の上、有識者の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。
その際、「重点化」の趣旨を踏まえまして、単に、例えば「A」という評定が適切かどうかというだけではなく、法人の取組の中で、中期目標の達成に向けて、優良と思われる点や、逆に課題があると思われる点については、評定に直接影響しないような場合であっても、積極的に御指摘いただければ幸いです。重点化対象以外の項目については、法人からの説明は行いませんが、御意見がある場合には、議事の最後にまとめてお伺いすることとさせていただきます。
 次に、中期目標期間実績評価においては、法人より、見込評価と比べ、実績等に変化があった項目を中心に、複数ある場合は、重要度、難易度が高いとしている項目を優先的に、業務実績及び自己評価を説明の上、有識者の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。それ以外の項目については、年度評価と同様、議事の最後にまとめてお伺いすることとさせていただきます。
法人からの説明項目は、資料1の「労働者健康安全機構 評価項目一欄(年度評価・期間実績評価)」の中の網かけされているものとなります。議事の流れとしては、年度評価の各項目について、一通り意見を頂いた後で、中期目標期間実績評価の意見をお伺いいたしますので、中期目標期間実績評価における法人の説明については、既に年度評価で説明された内容は極力省略の上、御説明のほどよろしくお願いいたします。
 最後に、参考資料9ですが、若干御説明いたします。これは、平成29年度の業務の実績に係る年度評価等について、A以上の評定の場合に、その根拠が具体的に説明されているか等の観点から点検した結果を総務省が整理したものです。こうした点検は、毎年度行われていますが、今回、全体として、著しく適正を欠く評価を実施と考えられているものはなかったとした上で、今後の評価のための参考例として別紙1、2が示されております。例えば、A以上の評定において難易度の高い項目について、定量的指標の達成状況は120%未満であるが、根拠を具体的かつ明確に記述した上で、A以上の評定としている例だとか、本来の定量的指標に加えまして、定量的には把握が難しい業務の達成状況も含めて、根拠を合理的かつ明確に記述した上で、A以上の評定としている例などがあり、詳細がまとめられております。
 評定に十分な根拠があるかどうかは、本WGでも議論となる場合がありますが、総務省側の考えられているレベル感として、参考にしていただければと思います。なお、例年どおり、各府省別の評定状況も、「参考」として示されていますが、かつて問題となりました「A」以上の割合について、前回の評価では、年度評価において高いほうから2番目でありましたが、特に突出はしていない状況です。事務局からの説明は以上です。
 
○今村主査
 ありがとうございます。ただいま、事務局からの説明がございましたが、皆様、何か御質問等ありましたらお願いします。よろしいですか。
 それでは議事に入りたいと思います。労働者健康安全機構の「平成30年度業務実績評価」について、御議論いただきたいと思います。始めに法人所管課室から「重点化対象項目選定の考え方」について御説明いただきます。
 
○労働基準局安全衛生部計画課長
 厚生労働省労働基準局安全衛生部計画課長の小宅でございます。よろしくお願いいたします。重点化対象の項目数は全部で8つあります。
 始めに、中期目標の第2・Ⅰ・1(1)で掲げております統合による相乗効果を最大限に発揮するための研究の推進です。重点化の理由は、安衛研(安全衛生総合研究所)が持つ労働災害防止に係る基礎・応用研究機能と、実際に診療・治療をしている労災病院が持つ臨床研究機能を一体化するという国内では初めてのチャレンジングな取組であることからです。また、我が国の勤労者医療政策に資する研究として重要な位置付け になるとして、重要度・難易度を共に「高」としております。
 次に、第2・Ⅰ・1(2)等で掲げております、労働者の健康・安全に係る重点的な研究の実施等です。重点化の理由は、労働現場における労働災害の防止を図るためには現場のニーズというものを的確に把握しまして、そのニーズや、あるいは労働安全衛生行政の課題といったものを踏まえて、研究課題を設定する、そして設定した研究課題を確実に実施するということからです。また、これらの研究を通じて開発された機器等が現場に実際に導入されるということを通じて、労働災害の減少というアウトカムに結び付けていくことが求められており、重要度を「高」としております。
 次に、第2・Ⅰ・1(3)労災疾病等に係る研究開発の推進です。重点化の理由は、労災病院は労災補償行政の要請に基づいて、各種の審議会へ委員の派遣や、あるいは労災認定に関しての意見書の作成といった国の労災補償政策上の中核的な役割を果たしていることからです。特に、アスベストにつきましては、労災病院に設置しているアスベスト疾患センターにおいて、アスベスト関連疾患に係る健康相談などを行うことが求められており、重要度を「高」としております。
 次に、第2・Ⅰ・3化学物質等の有害性調査の実施です。重点化の理由は、日本バイオアッセイ研究センターは、発がん性等の有害性が疑われる化学物質にいて労働安全衛生法の規定に基づき、化学物質の有害性の調査を実施していることからです。特に、長期吸入試験という試験の方法に関しましては、これを実施できる国内唯一の施設であるという特徴があります。ここにおける試験の結果を踏まえまして、実際に国が化学物質に関する規制などの対応を行う流れになっております。こうした取組が働く人の健康確保につながって、労働災害の減少というアウトカムとなることから、重要度を「高」としております。
 次に、第2・Ⅰ・6研究成果等を踏まえた産業保健活動の積極的な支援と充実したサービスの提供です。これは独立行政法人改革等に関する基本的な方針におきまして、産業保健活動への効果的な支援を図るために、産業保健三事業(産保センター、地域産業保健事業、メンタルヘルス事業)を一元化して、労働者健康安全機構が事業を実施することが求められており、この事業の実施状況が、今後の国の施策に影響を及ぼすことから、重要度を「高」としております。
 また、がん等の疾病を有する労働者に係る治療と就労の両立支援という新たな課題等、産業保健を取り巻く環境と共に、国の制度や政策も大きく変化しております。これに対応するためには、地域の医師会ですとか、関係機関と連携した産業保健三事業を一元化した体制についても時代に即した対応が求められております。加えて、メンタルヘルス対策の重点分野を始めとした小規模事業所の産業保健活動などの実施件数を増加させております。地域の医師会等関係機関の協力と、事業者の積極的な取組姿勢など、地域との連携が必要な分野です。さらに、新たな課題である疾患を有する労働者の治療と両立の支援につきましては、病院の主治医、それから医療ソーシャルワーカー、あるいは労働者の方本人など、多くの関係の方の連携が必要となることから、難易度を「高」としております。
 次に、第2・Ⅰ・7、研究成果などを踏まえた治療と就労の両立や円滑な職場復帰支援の推進等です。例えば、がん対策推進基本計画におきましては、がん患者の就労支援等に取り組むこととなっておりますが、労災病院に対して治療と職業生活の両立を図るモデル医療、あるいは職場環境が疾病の発生に及ぼす影響などに関する研究に取り組むということが求められており、重要度を「高」としております。
 次に、第2・Ⅱ・1、未払賃金の立替払事業の着実な実施です。立替払事業は、企業が倒産し、賃金が支払われないまま退職となった労働者の方に、未払賃金の一部を政府が事業主に代わって立替払をするセーフティネットです。国内で唯一機構が行っているものです。経済危機対策等におきましても、あるいは国会の附帯決議等においても、機構が本事業を引き続き着実に実施することが求められており、重要度を「高」としております。
 最後に、第2・Ⅱ・2、納骨堂の運営業務です。納骨堂(高尾みころも霊堂)は、不幸にして労働災害で亡くなられた方々の御霊を奉安する日本唯一の施設です。毎年、産業殉職者合祀慰霊式が挙行されておりまして、内閣総理大臣などが慰霊の言葉を捧げるなどしております。また、「第12次労働災害防止計画」で掲げている「安全・健康に対する意識改革の促進」というものを具体化する指標として実施しております。経営のトップ自らが参列して遺族の前で誓いをすることは、意識の高揚を図る上で重要であることから、重要度は「高」としております。
以上のほか、今回の会議では先ほど御説明しました重点化対象項目に加えまして、法人が自己評価をAとしている第2・Ⅰ・2の労働災害の原因調査の実施についても、後ほど法人から説明がございます。
以上です。
 
○今村主査
 ありがとうございます。続いて法人から、法人の業務概要及び重点化対象項目の業務実績及び自己評価について説明をお願いいたします。
 
○労働者健康安全機構総務部長
 それでは法人の業務概要及び重点化対象項目について御説明を申し上げます。資料2-1を御覧ください。まず1ページ目、法人の業務概要です。左上の設立についてです。平成16年に設立されました独立行政法人労働者健康福祉機構と平成18年に設立されました独立行政法人労働安全衛生総合研究所が平成28年4月に統合し、設立されているものです。設立目的につきましては右側にまとめております、労働者健康安全機構法第3条に、このような形で定められています。主な役割といたしましては、8つの事業を青字で書いておりますが、各施設、労働安全衛生総合研究所、日本バイオアッセイ研究センター、労災病院等で実施をしているところです。
 2ページ目、先ほど所管課から説明がありましたが、当機構の評価項目は14項目です。そのうち、下線を引いた重点化項目の8項目、それから自己評価をA評価としております、1-2の労働災害調査事業の計9項目について御説明申し上げます。なお、記載しております自己評価につきましては、外部有識者で構成されております当機構の業績評価委員会で審議していただいた結果を自己評価として記載しているものです。それでは各事業について順次、御説明させていただきます。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 それでは、今の資料の3ページ目を御覧ください。まず、評価項目1-1-1、統合による相乗効果を最大限に発揮するための研究の推進について御説明いたします。この項目は平成28年度の法人統合に伴って設定されたもので、我が国の勤労者医療政策に資する研究としての重要度、労災防止に係る基礎・応用研究と臨床研究機能との一体化という難易度のいずれも「高」に位置付けられているものです。中期目標といたしまして、1の概要の1つ目です。安衛研が持つ基礎・応用研究機能と労災病院が持つ臨床研究機能との一体化による相乗効果を最大限に発揮できる研究に取り組むこと。4つ目の重点研究5分野の具体的な指標及び目標を中期計画において設定し、いつまでに、どのような成果を得るかについて具体的な工程表をできるだけ早期に作成し公表することなどが定められているところです。
 2の自己評価の要約です。下段に自己評価の要約として大きく3つにまとめております。重点研究の推進、異なる施設間の意思疎通の円滑化への取組、機構内複数施設の連携による重点研究の推進、これらの活動によりまして、中期目標における所期の目標を上回り、統合による相乗効果を更に発揮したと認められるということで自己評価はAです。
 具体的な取組につきまして4ページです。まず、この重点研究5分野につきましては、上のほうの真ん中に赤い文字で書いてありますが、せき損等、産業中毒等、アスベスト、精神障害、過労死等関連疾患、この5分野を重点研究5分野ということで進めているところです。平成30年度のトピックといたしまして、この下に調査・研究発表会という欄があります。これは安衛研と労災病院の研究者の相互理解を目的として、平成29年度から開催しておりますが、平成30年度におきましては新たに産業保健総合支援センターの職員にまで対象を拡大いたしました。当日は出席者87名が得られましたが、そのうち産保センターから19名が参加しております。安衛研から労災病院まで、合わせて11の発表テーマがあり、これらの課題に対して活発な意見交換が行われたものです。
 もう1つのトピックといたしまして、重点研究における連携範囲の拡大が挙げられます。5分野の重点研究は工程表に従って、4ページから5ページにかけて記載のとおり実施しておりますが、まず、4ページの下の段です。産業中毒等(化学物質ばく露)分野につきましては、安衛研と労災病院に加えまして、動物実験による毒性試験が行われる日本バイオアッセイ研究センターも参画した研究チームで平成29年度から研究を進めております。これは平成30年度も継続をしております。平成30年度下半期の新たな取組として、せき損等(職業性外傷)分野において、安衛研が担当した墜落、転倒対策、それから介護機器の安全対策など、これをテーマとしたセミナーを東京、埼玉、愛知の産業保健総合支援センターが主催する産業医研修会の一環として、1月から2月にかけて延べ4回実施いたしました。123名の参加者を得ております。受講者のおよそ半数が産業医ですが、産業安全の分野ということで、普段はなかなか聞けない内容で具体例も多く、今後の産業医活動に役立てるということで興味深かったというような感想が寄せられております。このように研究成果の普及を機構内の機関の連携で行うことによって、産業安全分野と産業医との接点を形成できたということは、当初、想定以上の統合効果を遺憾なく発揮された事例であると認識しておりまして、本年度の自己評価をAとしたというところです。
 6ページ目、1-1-2、労働者の健康・安全に係る重点的な研究の実施です。この項目は労働安全衛生総合研究所における研究活動に係るものです。多様化する労働安全衛生分野の課題解決に向けたエビデンスの提供を災害の減少に結び付けることが求められるということで、重要度「高」に指定されているものです。中期目標といたしましては、労働現場における負傷、疾病等の労働災害防止に必要な科学技術的ニーズや実態に対応した研究、技術的支援等を積極的に実施するために、業界団体や企業内の安全衛生スタッフ等との間で情報交換を行い、機構の業務に関する要望、意見を傾聴するにとどまらず、機構の職員自らが、より積極的に労働現場に赴いて現場の抱える喫緊の課題や問題点、職場環境の実態を把握することとしております。
 また、労災病院などで収集した臨床データや化学物質等の有害因子へのばく露の研究データを活用するなど、労働現場のニーズや実態を的確に把握することなどが求められております。2の自己評価の要約ですが、中期目標に基づいて、1から8まで、8つの指標が定められております。この達成状況をこちらに取りまとめておりますけれども、平成30年度は1から8の全ての指標について、年度計画に定める目標を達成いたしましたので自己評価はBといたしております。具体的な実績につきましては7ページ目です。まず、過労死等防止調査研究センターにおいて、平成30年度を初年度とする第2期の研究がスタートしております。右側にプロジェクト研究、基盤的研究、行政要請研究とありますけれども、これらにつきましても研究計画に沿って研究を進めているところです。特に行政施策と関連の深い研究の実施につきましては、必要に応じて厚生労働省の政策担当者とも意見交換を行っているところです。
 8ページ目、成果の積極的な普及・活用という部分です。この左上の(1)にあるとおり、安全衛生に関する法令や基準制定・改正の検討に際して、研究成果が広く活用されているところです。
右側に、学会発表等の促進あるいはインターネット等による調査及び研究成果情報の発信などがありますが、こちらにつきましても積極的に実施しているところです。以上のように、この項目では年度計画で定める目標を全て実施しておりますので、自己評価はBとしたところです。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 では私からは、労災疾病等に係る研究開発の推進、1-1-3を説明させていただきます。資料の9ページを御覧ください。中期目標の概要は、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組むため、3領域については、先ほどの重点研究の5分野と連携を図りつつ、研究を行うことなどが定められています。平成30年の実績としては、年度計画等に定める目標を達成したことから、自己評価をBとしております。指標の達成状況は、同9ページの下段を御覧ください。下段に指標の達成状況を取りまとめておりますが、全指標について年度計画等に定める目標を達成しました。
 事業の具体的なものにつきましては、10ページを御覧ください。運動器外傷機能再建というテーマにおきましては、四肢長管骨骨折、つまり手足の骨の骨折などの手術例1,231例につきまして、社会復帰を視野に入れた情報を含めて、登録するデータベースを構築いたしました。また、機構ホームページの労災疾病等研究普及サイトのリニューアルに心掛け、第3期中期目標期間中に終了した研究の報告書、また、平成30年度から開始した新たな研究の情報、新たなコンテンツの追加作成を行い、アクセス数の増加を図り、目標を上回っております。
 最後、11ページを御覧ください。平成26年度に開始いたしました研究テーマが全て終了しましたことから、厚生労働省の要望を確認し、それに基づき各労災病院へ新たな研究の課題を公募し、その中から9テーマを選定いたしました。その中には、ここに書いていますように、運動器外傷機能再建、勤労世代肝疾患、早期復職など、働き方改革の重要なテーマである治療と仕事の両立支援に資するテーマを中心に、新たな研究に着手しております。以上です。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 それでは続きまして、資料の12ページを御覧いただきたいと思います。評価項目1-1-4、化学物質等の有害性調査の実施です。この項目は、日本バイオアッセイ研究センターにおいて実施している化学物質の有害性調査に係る項目で、重要度は「高」とされているものです。
 中期目標におきましては、国が指定する発がん性等の有害性が疑われる化学物質について、安衛法第58条に規定する化学物質の有害性の調査を計画的に実施すること。長期吸入試験を実施できる国内唯一の研究施設として、試験の質を維持するための取組や試験手法の的確な選定に加えて、試験の迅速化・効率化を図るための試験法も検討すること。3つ目として、化学物質の有害性調査の成果の普及についても、目標に沿って行うとともに、国内外の化学物質の有害性評価の進展する観点から、海外の研究機関(IARC(国際がん研究機関))などへの情報発信に努めることとされております。2の自己評価の要約ですが、平成30年度は年度計画に定める目標を達成したということで、自己評価はBとしております。
 具体的な業務実績につきましては、13ページ目を御覧ください。平成30年度は、お示ししております工程表に基づき、国が指定した4つの物質につきまして、GLP基準に基づく長期吸入試験を実施しております。成果の普及につきましては、2つ目の○に示しておりますとおり、平成30年度はメタクリル酸ブチルの長期吸入試験の結果について、厚生労働省を通じて、IARCに提供しております。3つ目の○にありますが、平成30年度に公表されたIARCmonographs122号と123号において、日本バイオアッセイ研究センターで過去に実施した8物質の試験結果が登載されているということです。一番下の段にありますが、遺伝子改変動物を用いた発がん性試験も着実に実施しております。以上のように計画に定めた目標を達成しているので自己評価はBとしたところです。
 続きまして、14ページを御覧ください。評価項目1-2、労働災害調査事業です。こちらにつきましては、安衛法第96条の2に基づく災害調査等の実施ということで、緊急時も含めた連絡体制の整備、高度な専門的知見を有する研究員の現地派遣などにより、迅速かつ適切に労働災害の原因調査等を行うこと。それから原因調査結果につきましても、これを踏まえた再発防止対策の提言や、災害防止のための研究への活用・反映を行うことが定められているところです。
 自己評価の要約といたしましては、ローマ数字の2としてまとめておりますけれども、中期目標における所期の目標を上回る成果を得られたということで、自己評価はAとしております。具体的な中身につきましては、14ページの下段を御覧ください。まず、平成30年度ですが、災害調査(14件)、捜査事項照会・鑑定等(17件)、労災保険給付に係る鑑別、鑑定等(5件)を実施しているところです。
下から2番目にありますが、この労働者災害防止のために、「フッ化水素回収ライン修理中に発生した爆発災害」等8件の災害調査報告書を安衛研のホームページで公開いたしました。それから一番下の○ですが、災害調査の結果により、高純度結晶性シリカの微小粒子を取り扱う事業場における災害調査の結果を受けて、厚生労働省から指導・要請が実施されたものです。これにつきましては、15ページを御覧ください。こちらで御説明したいと思います。
 この災害調査の流れの下に※印で書いてある部分ですが、これは極めて純度の高い結晶性シリカを扱う事業場で、極めて短期間(2年から6年)のばく露で、じん肺を発症したという特殊な事案です。災害調査を行いました結果、当該事業場の労働者に結晶性シリカへの高濃度ばく露が認められております。原因物質である高純度結晶性シリカは、半導体封止材の製造等に用いられており、多くの取扱い労働者も見込まれるということを踏まえて、厚生労働省から関係業界に対して、発散抑制措置や防護性の高いマスクの着用、健康診断の実施などの指導・要請がなされたものです。このように災害調査により、結晶性シリカへのばく露状況を明らかにして、被害の拡大防止の要請につながったということで、自己評価をAにしたところです。
 
○労働者健康安全機構総務部長
 それでは続きまして、21ページのほうを御覧いただければと思います。1-4、産業保健総合支援センター事業です。中期目標として、労働災害防止対策やメンタルヘルス対策など国の施策として求められている産業保健活動について、中核的な機関としての機能を充実・強化し、地域における中心的な役割を果たし、必要な支援を着実に提供することなどが求められているところです。自己評価につきましては、年度計画等で定める目標を全て達成したということで、B評価とさせていただいております。
具体的な達成状況については、次の22ページのほうを御覧いただければと思います。1から9まで、専門的研修から効果の把握まで9個の指標があるわけですけれども、こちらは全て計画の目標を達成したところです。具体的な取組について幾つか御説明を申し上げます。1、地域の産業医等の産業保健関係者への研修におきましては、中小企業事業者に積極的に産業医を活用いただくために、中小企業事業者向けの産業医活用テキストを作成するなど、研修の充実を図ったところです。
 次の23ページを御覧いただければと思います。(2)小規模事業場等における産業保健活動への支援の充実につきましては、右側のほうに赤い囲みがありますけれども、新たに「産業保健専門職(保健師)」を各センターに配置するなど、体制を強化いたしまして相談件数増を図ったところです。
 次に、24ページを御覧ください。(3)産業保健に関する情報の提供その他支援については、周知活動といたしまして右側にありますように「島耕作」を広告塔にした漫画を作成し、治療と就労の両立支援の内容を、患者の方、家族の方、医療機関、企業等へ幅広く周知をしたところです。
それでは、次の25ページを御覧ください。1-5、治療就労両立支援センター事業についてです。中期目標は、仕事を有する患者に対しては診断時から退院時に至るまで、治療方針の選択や医療提供に当たり、就労継続や職場復帰を念頭に置き、医療ソーシャルワーカー等を活用し、患者への支援を行うこと。就労継続及び職場復帰支援については、産保センターと治療就労両立支援センター等が連携し、企業との連絡調整等に対する支援をしていくことなどが求められているところです。自己評価ですが、年度計画で定める数値目標を大きく上回るとともに、国の政策にも大きく貢献したということで、S評価としているところです。
 指標の達成状況については、下の欄の右側を御覧いただきたいと思いますが、支援した罹患者の有用度は、目標値が80%であり、仮に全ての患者さんが有用と回答しても達成度は125%にとどまる中、実際の実績は120%ということで、非常に多くの方から有用と評価していただいているところです。また、両立支援の支援事例件数につきましても、135.8%の達成度となりまして、いずれも年度計画等に定める目標を大きく上回る達成度となったところです。
 具体的な取組につきましては、次のページ以降で御説明します。26ページを御覧ください。まず、最初の研修会等の開催につきましては、両立支援コーディネーターの養成に向けた基礎研修を平成30年度は合計15回開催いたしました。また、「産業保健に関する基本的知識」に関する講義を新設するなど内容の充実を図り、受講者数は前年度を大きく上回る1,700名となったところです。
右側の円グラフを御覧ください。受講者の職種につきましても、医療従事者のみならず社会保険労務士や企業の労務担当者など幅広い職種の方が受講されており、受講者の勤務先につきましても全国各地の方が受講されるなど、広く普及を図ったところです。
 その結果、下の2にありますように、政府が決定した「働き方改革実行計画」での2020年度までに両立支援コーディネーターを2,000人養成するといった計画に対し、2018年度時点で2,316人を養成し、2年前倒しで計画を達成したところです。
 また、その下の3ですが、第3期がん対策推進基本計画及び平成30年度診療報酬改定等を踏まえた対応として、厚生労働省からの依頼を受け、全国のがん診療連携拠点病院の約7割の施設の医療ソーシャルワーカーや看護師に対して研修を実施したところです。
1ページ飛ばして28ページを御覧ください。平成30年度の新たな取組として、両立支援コーディネーター研修修了者に対して、研修効果を検証する目的で、活動状況等のアンケート調査を実施しました。真ん中の円グラフにありますように、調査結果からは回答者の約8割が、実際に両立支援業務に関与していることが明らかになったところです。
 また、一番下の欄にありますように、両立支援の普及促進のため、調査結果につきましては、関係学会等で発表し、査読のある学会雑誌に投稿し、これが採用され、学会雑誌に掲載されたところです。このように年度計画で定める数値目標を大きく上回るとともに、国の政策にも大きく貢献したということで、自己評価はS評価とさせていただいております。
 次に、31ページを御覧ください。1-7、未払賃金立替払事業です。中期目標の概要としては、審査の適正化、効率化を通じ、不備事案を除き、支払いまでの期間を25日以内に維持することなどが求められているところです。自己評価につきましては、年度計画等で定める目標は全て達成したことから、B評価とさせていただいております。
 具体的な取組については、次の32ページを御覧いただければと思います。(1)迅速かつ適正な立替払の実施についてですが、不備事案を除く請求書の受付日から支払日までの期間は、目標値25日以内に対して16.3日ということで目標を達成したところです。また、(2)の立替払金の求償につきましても、確実な債権保全、適切な求償を行い、回収をグラフのとおり実施しているところです。
最後の項目1-8の納骨堂運営事業です。中期目標の概要としては、産業災害殉職者の慰霊にふさわしい環境整備を行い、来場者等から慰霊の場としてふさわしいとの評価を毎年90%以上得ることなどが求められているところです。
 次の34ページですが、(1)として慰霊環境の改善に向けた取組につきましては、四半期ごとに、参拝者からのアンケート結果について検討会を開催し、平成30年度におきましては、障害者用駐車場を特設するなど、継続的な業務改善を行っているところです。結果として、その右側にありますが、満足度調査結果ということで、慰霊の場としてふさわしいとの評価を、「非常に満足」「満足」と回答された方の割合、また、そのうち「非常に満足」と回答された方の割合、いずれについても目標を達成したところです。このように年度計画等の目標を達成したということで、自己評価はB評価とさせていただいているところです。
以上で、御説明項目についての機構からの説明を終わります。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○今村主査
 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明がありました事項について、御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。どうぞ、どなたからでも。
 
○三宅構成員
 御説明どうもありがとうございます。私のほうから3つほど伺いたいと思います。1つ目は、この資料でいきますと、3、4ページ辺りの、いわゆる統合による相乗効果ということですけれども、非常にチャレンジングな取組ということで、取組は非常に評価が高いと私も思っています。一方で、仕組みというのはできたと思うのですが、これから成果を更に上げていくための仕掛けというか、その辺をもう少し伺えたらというのが、まず1つです。
 それから2つ目は、8ページ目の重点的な研究の実施のところなのですが、成果の積極的な普及・活用ということで、非常に活発に成果が出ているということで評価されるところなのですが、いわゆる今、世の中で求められているのは、いろいろな取組がいかに本当に活用されて、実社会に実装されていくかというポイントだと思います。その点で国内外の基準や規格の設定に非常にコミットされている、あるいは現場に対して非常に活用されていて非常にすばらしい取組だと思っています。
 一方、右側の論文ですとか、基礎研究のようなところで、成果というのが量的にはカバーされていて、評価は一応100%を超えているのですが、クオリティーの面から言ってどうなのだろうかということをちょっと伺いたいです。昨今は研究力の低下というのが、産官学どこも低下しているということが指摘されているのですが、もちろんヒューマンリソース、それから資金の話と、いろいろ厳しい状況にあるのですが、その中で量、いわゆる論文の数、発表の数は一定量をクリアしたとして、今度は質のほうですね、それをどのように担保するのかと。例えば研究の面から言うと、評価の高いジャーナルにどれだけサイテーションが出ているかとか、あるいはクオリティーを図るような指標というものがあると思うのですが、そういう観点から見た場合に、今回の成果というのは、いわゆる量から質に、どのように転化していくのかという、その辺をちょっと伺いたいというのが2番目です。
 それから3つ目は、資料で言うと15ページなのですが、労働災害等の原因調査に関してのところなのですけれども、ここでちょっと伺いたいのは、いろいろな成果につながっているということは分かるのですが、事例が発生して、大体どれぐらいの時間でそれぞれのステージに動いて行って最終的に、例えば法律ですとか、あるいは基準に反映されていくまでにどのぐらいの時間が掛かっているのかというのをちょっと伺いたいです。以上3点をお願いします。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 ありがとうございました。それでは順次お答えいたしたいと思います。まず3ページ目の統合効果のチャレンジな仕組みについてということですけれども、これにつきましては平成28年度から3年間にわたって実施してきておりまして、やはり拠点が全国に散らばっているということもあって、なかなかそのマッチングが難しいこともありますので、本部の研究試験企画調整部が仲介役になって、それぞれの引き合わせをしているところです。実際に労災病院と安衛研で、やってくださいと言っても、すぐにできるものではありませんので、間に本部が立って橋渡しをするということを、特に強化しているところです。これで少しずつ歩み寄りというか、連携が強まっているのかなと考えています。
 それから8ページ目の重点的な研究の発表の件ですけれども、研究の質につきましては、1つには原著など、いわゆる査読のある論文の数という面と、国際的な発信、例えば英文の論文とか国際会議などで発表するというところが、指標として見ていくのかなと思っております。それから、行政ミッション型の研究を進めるという意味では、研究の企画の段階から厚生労働省の担当課と密接に意見交換をいたしまして、今、行政でどういうことが課題になっていて、何を解決しなければいけないのかと、それを十分に意見交換した上で研究の設計をしていくという形にしております。そういった意見交換を密にしていくことによって、その論文、基盤研究も含めて質の担保を図ってまいりたいと思います。こういう指標で測っていくというのは、なかなか難しいのですけれども、行政との連携は、これまで以上に密にやっていくということで取り組んでまいります。
それから災害調査につきましては事案によっては、再現実験などもやった上で原因を究明するといったこともありますし、一概にどれぐらいの期間でというのは、ちょっと言いにくいのですが、最終的に法令などに反映させていくとなりますと、相当確たるエビデンスが必要ということになります。そこは丁寧に調査を重ねて現場に展開できるような形に仕上げていくということで、ケースバイケースということでお答えします。よろしくお願いします。
 
○三宅構成員
 どうもありがとうございます。最後のケースですけれども、そうすると例えば今回の高純度シリカの件は、いつ頃問題視され始めていて、事案が起きて、それで最後の平成30年9月27日の基安発何号とかというものですね、ここまでは大体どのぐらい掛かったのでしょうか。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 この件に関しましては、大体1年ぐらいです。まだ、シリカによる健康障害の発生機序など細かいところが分かっておりませんので、まずはとにかく、ばく露を防ぐようにという通知につなげていただいたところです。
 
○三宅構成員
 どうもありがとうございました。
 
○戸田構成員
 御説明ありがとうございました。途中で失礼させていただきますので、中期目標全体的なことに関しての質問も入ってしまうのですが、3つほど私からも質問させていただければと思います。まず1つ目は、1-1-1の相乗効果の話ですが、先ほども質問等ありましたけれども、お話を伺っていると、卒直に着実に進められているなという印象を持っておりまして、やはりそういう意味では機構が合併して、そのまま存在意義を十分に発揮されているという理解をしております。
 その点に関して質問なのですが、組織的に、この有識者会議でも、調整する部門がうまく労災病院と安衛研の、それぞれの持つ強みをいかすというようなことをやっていらっしゃるという、そこが本当にうまくいくのかということを、この有識者会議の場でも議論させていただきましたけれども、現時点で組織的な課題としてどういうことを考えていらっしゃるかというところについて、もし何かお考えがあれば教えていただければと思います。
 2点目の質問は、1-2の労働災害に関する質問ですが、これは中期目標全体を通じてなのですが、毎年かなりいろいろと新しい発見があるということで、逆に言うと、これだけ新しい発見が出るものなのかという、素人じみた印象で恐縮なのですが、そういったことも少し印象として持ってしまいます。
 今回のシリカの件もそうなのですが、実際に災害の現場で、そういった新しい発見というのは、そもそもある程度、この辺が発見につながりそうだというような勘所といいますか、ポイントみたいなものをお思いになってやっていらっしゃるのか。それともいろいろと機構が労働災害を調査されるというのは、機構が独自でやっていらっしゃることですので、その経験を通じて毎年毎年いろいろと、もちろん災害調査ですので災害が起こった事案に対してどうなのかというところもあるかと思います。
 そういった起こった事案に対して、やはりここをもう少し注意深く見ないといけないというようなことを思っていらっしゃるのか、そういう新しい発見がいろいろと多く出て、それが世の中の方々の健康状態に寄与するということは、すばらしいことなのですけれども、この点、実際にどうやっていらっしゃるのかということを、すみません、卒直に思ったものですから、教えていただければと思います。
 3点目の質問は、1-5の治療就労両立支援センター事業の話です。こちらはSを付けていらっしゃるということで、私自身はこの評価については妥当だと考えているのですが、その理由も両立支援コーディネーターを2年前倒しで目標達成されたということで、第4期の中期目標計画でも量ではなくて質というところを注目されて進められていらっしゃると理解しております。
ただ、この1-5に関してお伺いしたい点としては、資料のほうでは安衛研と労災病院のシナジーを活用されていると。安衛研の研究成果と労災病院の臨床結果をうまく統合されて、こうした取組をされているというところがあると書かれておりますが、この辺を少し御説明していただくと、やはりこのシナジーというところが、1つの機構にとっての強みでもあり、やはりアピールするポイントでもあると思いますので、この点について、是非教えていただければと思います。
 総じてですが、私も有識者会議を4年ぐらいやらせていただいておりますけれども、やはり機構の取組は着実に成果が出ているというところは、この評価から見ても分かるというところでもありますので、是非、今後もこの調子で頑張っていただければと思っております。以上です。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 ありがとうございました。それではまず、1-1-1からお答えします。統合効果を発揮するためということで、今、本部でも本当に大車輪でマッチングに走っているところですので、1つには、本部でも体制を強化したいということ、それから、調査・研究発表会でも昨年ターゲットを広げたのですが、それでもまだ87名の参加なので、この参加をもっと広げて、お互い相互の理解を深めていくのが課題かと思っております。特に労災病院の先生は普段の診療もありますし、所属する学会も違うということで、なかなか普段の生活から接点を形成するのが難しいのですが、そこは本部が仲立ちになって、もう少し大々的に動けるようにしたいというのがやはり課題かと思っております。
 14ページの労働災害調査です。これは、安衛研が独自にやっているのではなくて、労働安全衛生法第96条の2に基づいて、労働基準監督署とか都道府県の労働局などから要請を受けて専門家の立場から参画しているものです。労働局で、そういった健康被害などの状況把握をされて、今までにないパターンで、原因がよく分からないということで安衛研に調査の依頼が来るものです。最近、今までにないパターンの健康被害などが出ておりまして、調査をしたら、いろいろ新しいことが分かったという面があります。ですから、私どもがターゲットを定めてというところでは必ずしもないのですが、それをきっかけにして、更に原因について深掘りをして研究につなげていく形で、より災害防止の実を挙げていくことにつなげていけるのかと思っております。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 私からは両立支援の話もさせていただきますが、木口理事の御発言に追加させて頂きます。相乗効果とは、安衛研やバイオアッセイという基礎の研究所と労災病院とのことですが、医学は非常に早いスピードで進歩しており、労災病院でもそのスピードに対応して、大学病院に負けないぐらいの機能を発揮して得られた臨床データがあります。また一方、バイオアッセイや安衛研では、基礎医学だけでなく、いわゆる化学、土木や工学などの新しい解析方法、また、基礎医学領域においては遺伝子等の網羅的解析など新しいものを取り入れていることもあって、その基礎と臨床の最先端を走っている2つが融合できているということがあります。そこにプラスアルファーで、産業保健総合支援センターなどの産業の研究も加味することができるので、いわゆる大学においての医学部附属病院と工学部、理学部だけではなくて、さらに産業衛生のフィールドとして、産業保健総合支援センターという、日本中の津々浦々のフィールド網を使った相乗効果がありますので、それらの相互理解が課題と言えば課題ですが、逆に言ったら、大きな組織となってできる力がある。
 そこに更に新しい発見とおっしゃってくださいましたが、そうなのです。我々は別に自分たちが勘所でやりたいことをやっているのではなくて、今、木口理事がおっしゃったように、新しいことが起こった中で、what’s newを見つけるための、これまでの安衛研、労災病院、バイオアッセイセンターの知見と経験があります。それを活かしてベースにして、その中で何が新しいのだというのを初めて発見できる力があるので、それが労災病院の臨床能力であり、「何だこれ、今まで見てきた病気と違うではないか」と。これは普通でしたら口から、空気から入るもので発症する反応とは違うよねと言って、ある病気は皮膚からだということを発見したり、肺の病気にあっては、免疫学分野で今まで知られたものとは全く違う反応が起きているということは、労災病院の免疫の先生のトップと、そしてバイオアッセイや安衛研の免疫の先生の、いわゆる基礎の先生の勘所、それこそ勘所です。その最先端が融合しているということで新しい発見ができているのは、今までの知見と経験と新たなメソッドを持っているからだということだと思います。
 両立支援についても、ありがとうございます。是非とも、「S」をお認めいただきたいと思うのですが、コーディネーター養成研修については、確かに2年前倒しにしておりますが、まだまだです。全国津々浦々に病院8,000あります。プラス事業所でもコーディネーターが活躍していなければいけないとすると、全国津々浦々、人の毛細血管のように、指先、手足、髪の毛の先まで両立支援が日本中に広がるには、やはり何万人というコーディネーターの養成が必要であろうと思っています。去年は15回、今年は28回以上、やはり年間1,000人、1,500人、2,000人、年間ですよ、少なくとも養成しなければいけないと、心して令和元年度もかかっておりますのでこういうことになっております。また、今後のいろいろな展開例についても、これこそ今、申し上げた安衛研又は産業保健総合支援センター、特に全国津々浦々の産業保健総合支援センターと、その下にあります地域産業保健の窓口と労災病院はタッグを組んでいまして、病院の患者さんだけでなくて、産業保健、事業場、また他の病院にかかっていて、まだそういう制度がない所の患者さんの支援にも当たっております。そこに安衛研が頑張っていく、例えば脊損などの知見、独自にいろいろな共同研究をしていますが、そこも知った上での両立支援ですので、単に病院側、そして事業場側だけでなく、研究所プラス、先ほど申し上げてきた全国津々浦々の産保センター、地産保からの現場の状況を見た上での両立支援を進めていきたいと思っております。よろしいでしょうか。答えになっているかどうか分かりませんが。
 
○労働者健康安全機構理事長
 具体的な話が今、お二方から出たので、相乗効果というか、最後にシナジーの話が出たので、ちょっと気が付いたことを追加したいと思います。実は、研究等を、どういう共同研究ができるのかということで、集まって議論をするとか、お互いの発表を聞きながら質疑応答するとか、そういう話だとか、それから今、お話があったみたいに、産業保健総合支援センターをベースにして、労災病院の先生や研究所の先生がそれにどのように関われるのかということで議論をする。そのような交わりの中でどういうことが起こっているかと言いますと、例えば、私たちの機構の全体の大きな目標としては、総労働力を維持したいということもあるので、労働者の健康という観点で産業保健の話があります。それから、勤労者の安全ということからすれば、研究所による長い研究の歴史があります。労災病院の先生方も、先ほど忙しい中でという話がありましたが、労災病院を出発点にした研究のプロセスで両立支援という方法論を病院の中から展開することについて、相当程度のレベルに来た。
 そういう現象として確かにそのとおりなのですが、実は、労災病院で働く人たちからすると、両立支援というものが、確かに働きながら治療を受けているという話でいけば、医療の中の話なのですが、今、言った研究所の歴史的な日本国における仕事の歴史だとか、それから、産業保健総合支援センターがこのようなことをやっているという話を同時に勉強、勉強というか議論をすることによって、結局のところ、この国において若い男性の労働者がすごく減っていく。それを補うかのように女性にも働いていただきたいとか、それから高齢者も働いていく。その延長線上で治療をしながらでも働いてもらおうということが、病院から見た治療就労両立支援というポイントだけではなくて、日本の労働者全体をどのようにして盛り上げていくのかという文脈で自分たちの仕事、労災病院における仕事が分かるようになってきたという話が実はあるのです。
 これは、本部から見ると、機構のミッションとして、そういうことを言ってきてはいるのですが、具体的に自分の仕事がこのように結び付いている、つまり日本の国の全体の問題点の解決の中における位置付けとして分かってきていることが今、各労災病院においても起こっている。これが本当の意味でのシナジーの、実は大事な芯の部分ではないかというか、核になる、中核的な部分ではないかということに私自身も実感しつつあるということがありますので、そういう観点でいくと、治療就労両立支援はまだまだだという話は、全くまだまだなのです。それから、相乗効果についての研究ももっともっとやっていかなくてはいけない。ですから恐らく、ここではAだとかBだとかやっていますが、それはこれから先10年、20年先になると、あのときBだとかAだとか言っているけれどかわいいものだという状況になる可能性もあるのではないかということを考えて、今現在、一生懸命ばく進しているということです。最初の三宅先生からの質問と少し重なっていますが追加しました。以上です。
 
○今村主査
 ありがとうございます。
 
○坂爪構成員
 御説明ありがとうございました。両立支援コーディネーターの話が出ていますので、その点についてもう少しお聞かせいただければと思います。非常に前倒しで多くの方を養成されているということで、すばらしい実績が上がっているかと思います。一方で、恐らく見せていただいたときに、やはり両立というのは働く場の問題でもあるので、そうすると、参加者の中にもっと、いわゆる企業だとか事業所側の人がいてもいいのではないかという印象を持ったのです。今後、更に増やしていくときに、例えば、恐らく地域でも偏りがある、参加する方の職種ももう少しバラエティがあったほうがいいというときに、足りないところを重点的に増やしていこうとするような働きかけをされるのかどうか。恐らく今、非常に増えているというのは、興味ある方がぱっと応募して、よいトレンドが出てきているかと思うのですが、そのトレンドに乗りつつ、でも足りないところを増やしていくというアプローチが次の段階で必要になってくるかと思うのですが、そこについてどう思われているか、どのように考えていらっしゃるかというのが1つです。
 それから、研修会の内容を見ていくと、基礎研修と応用研修ということで、恐らく一通りのことができればいいのではなくて、どんどんスキルアップができるようなプログラムを考えているのだと思うのですが、そのプログラムの見直しについてどのように予定をされているか、まずは両立支援コーディネーターに関する2点の質問になります。
 もう1つ、両立支援データベースについてお聞きしたいのです。本当は、望ましい姿は必要な所に全てコーディネーターがそろっていることだと思うのですが、多分それは非常に難しいことで、そういう辺りを今度はデータベースが補ってくることになるかと思うのですが、現在構築されているデータベースは、誰が見る人として使われているのか。例えば女性活躍とか介護とかというのは、本当に個人が見ても使えるし、事業所が見ても使えるしと、幾つかの使うユーザーを想定されているデータベースがあるのですが、この両立支援データベースは、ユーザーとしてどういう方を想定して作られているのかについて教えていただければと思います。以上です。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 ありがとうございます。まず、コーディネーターの職種ですが、本日の資料2-1の26ページにも掲げておりますように、当初は当然、病院側の方々、MSWや看護師さんが多かったのですが、これを見ていただくと分かるように意外に、現在は事業所が大体半分、病院が半分です。事業所は当然、専門職以外の、つまり企業の労務担当者とか、そこまで、また、社会保険労務士とか、当然、事業所の産業保健師さんとかがいらっしゃいますし、当然、ソーシャルワーカーや病院からの看護師さんやドクターや臨床心理士さん等がいらっしゃいますので、基本的にトライアングルということがありますので、患者さんに寄り添うコーディネーターは、患者さんと事業所と病院のトライアングルを助けなければいけない。ですので、取りあえずはまず、今のところは事業所と病院は大体半々、それで90何%を占めています。
 では足らないところはどこかということでいろいろなところがあるのです。例えば、個人事業主はどうするのかと。親子2人又は夫婦でやっているそば屋さんは誰が助けるのかと、それは現在のところ、地産保や、我々の機構の産保センターの両立支援促進員が助けていますが、そこに関しては、おっしゃるように、まだまだ第一次産業、例えば漁業、農業ではどうするのかということになります。そういうときには、その辺のいわゆる各漁業組合、JAとか、そういうところにも広げていきたいとは思っています。ただ、現在そこを特化して、そういうところにするかというと、余りにも今はニーズが多すぎて、とにかく全国津々浦々でやっておりますので、その地域の事業の特性、産業の特性がありますから、その産業の特性に応じた方々が受けていますので、とにかく今は、全国津々浦々で数をこなして質の高いものをやっていくことによって、今の御質問のような、いろいろな職種、いろいろな所に配備できるのではないかと思っております。
 プログラムの見直しですが、厚労省からの依頼で我々が委員会を作ることを決め、その中でプログラムを作成しました。これは現在3年目に入っております。そのために、現在そのプログラムの見直しは考えておりません。というのは、現在、今年で28回、去年15回とどんどん増やしておりますので、大体一回りです。全国津々浦々で来年ぐらいには、一回りはしますので、そこでまた今後もデータ又はアンケートでいろいろな調査をしまして、必要に応じては考えておりますが、現在は、今の質を落とさないことに関して、きっちりと産業側と医療者側の両方の知識を持って、また法律も両方のものを知っている方を育てることがメインですので、今のところの見直しは考えてはおりません、というのが2つ目の回答です。
 次にデータベースです。これは、現在これから構築しようというところです。現在、試験的に労災病院で、この3月までは糖尿病、がん、メンタルヘルス、脳卒中の4つの分野に絞って両立支援のモデル事業として行ってきました。そのうち、試験的に、脳卒中に関して労災病院にかかっている患者さんに両立支援をしたデータベースを一度作りました。それを基に、これは使えると。つまり医療者側において、両立支援をこのような疾患でどう進めていけば効果的に復職につながるかというのが非常に明らかになってきましたので、これは今後、来年は、今作っている構築データの対象患者さんは労災病院に入院して両立支援を受けた全症例です。つまり、4疾患にとどまらず全症例の患者さんで、まずはデータベースを構築します。そして、そのデータベースを誰が使うかというのは、取りあえずは、労災病院の各機構に属する両立支援に従事している全員がこのデータを見て解析をして、いかにして今、おっしゃってくださったように、では足りないところの両立支援はどこなのか、どういう仕方がベストなのかという解析、又はそれを今後のプログラムに活かしていくということで、まずは機構の中で使ってみて、そして、行く行くは、もちろん広く皆様が使えるようなナショナルデータベースに資するものにしたいと思っております。今、考えている来年度に構築、今、作って来年度から運用し始めて集め出すのは、そういう対象者です。以上です。よろしいでしょうか。
 
○今村主査
 今の件について質問なのです。一言で言うと、産保センターと両立支援センターの関係の問題で、先ほどの御質問の中に、日本の雇用制度の中で両立支援というのはなかなか難しいというのがあったので、恐らく産業医、特に中小企業における産業医サービスと両立支援というのはかなり重要な要素だと思うのですが、それについてはどう展開されるのですか。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 おっしゃってくださったように、中小企業の産業医は専属ではないのです。いわゆる、月1回行くという、いわゆる医師会の会員さんがやってくださっているのが多いです。月1回行ってくださって、産業医としての活動を中小企業でしてくださる。その方々に関しては、産保センターにおいていわゆる産業医の研修、つまり更新には研修が必要なのです。それは産保センターが行っているものです。産保センターの研修の中で、両立支援を産業医に、逐時、毎回、常に全国至る所の研修会において両立支援の徹底をお願いしているところです。また一方で、もっと小さい50人未満の所は、御存じのように、産業医の選任義務はありません。努力義務ですので、そういう所に関しては、先ほど申しました産保センターが全都道府県にあります。その下に地産保というのがあります。各労働基準監督署と同じエリアに1個ずつ地産保があります。そこの登録産業医に、この産保センターに登録していただきまして、そのセンターの先生方が50人未満の所に出掛けて行ったり相談に乗って、その地域の困っている労働者に対する相談とか事業主への相談に乗っております。両立支援が必要だというところを見つければ、産保センターに促進員がいますので、そこにつなげたり、労災病院などのコーディネーターにつなげて両立支援を図っていくことをしております。
 
○今村主査
 いかがでしょうか。時間は大体予定どおり進行しておりますが、この後は、今、重要度、難易度で御指摘いただいたこと以外の項目について、もし何か御質問、御意見等がありましたらよろしくお願いします。
 
○宮崎構成員
 どうも御説明ありがとうございました。前年度の中期目標設定の専門委員会議でも意見を述べさせて頂いたところですが、やっていらっしゃることが非常に重要な業務で大いに成果も出ているところで、是非、私も専門外の者ですから余り詳しいことは特にこれといってコメントしませんが、継続していただくことが重要だと思っております。しかしながら、研究と労災病院の臨床機能等を維持していく際に、財務的な観点で、労災病院の収支の改善もやはり運営を継続していく上では重要な課題だと思っておりますので、その点に関して、業務実績、財務内容改善は、赤字幅が小さくなりましたということでB評価にはなっているのですが、中長期的にやっていく上では、やはりもう一段踏み込んで、いろいろな対策を打っていくとか、そういうことも当然重要だと思っていますので、そこも併せて、次の中期目標の期間にきても、是非、検討いただければと思っております。
 
○労働者健康安全機構理事(佐藤)
 ありがとうございます。経営に関しては今、御指摘のとおり、若干の収支等の改善とか、収益の改善とかしておりますが、地域にとって労災病院が、どういった役割を果たしていくかということで、例えば、地域に応じた体制を組むとかという形に今、順次シフトしております。ただし、例えば、ベッドを削減するとか、その地域の状況に応じてという対策を取りつつあるのですが、いわゆる職員の雇用等の問題もあることから、少しなだらかな形で支出の減につながっていくかと思います。あと一応、地域においてどういった役割を果たしていくかを念頭に置いて、経営的にもそれに見合った形にだんだん病院のスタイルを変えていこうということで今、取り組んでいる際中です。若干、今年度は12億円程度の損益改善しか出ませんでしたが、徐々にその効果が出てくると考えております。
 
○今村主査
 ありがとうございます。
 
○中村構成員
 構成員の中村です。非常によくやられているし、今日の御説明もきちんと手順を踏んでおり、最後に具体的な取組の内容という形でアウトカムについても説明してくれたので非常によく分かりました。しかも、シナジー効果うんぬんも非常によく理解できましたし、これからが楽しみだと思っています。あえて違う視点でちょっと御質問したいのですが、労働安全衛生総合研究所は、労働災害防止という形でもって国の行政に対していろいろと貢献してきたと思うのですが、今日の御説明はほとんどが労災疾病とかという形で、いわゆるシナジーに関係するような御説明が多く、労働災害防止という視点での研究のプレゼンスがちょっと弱いという気がしています。労働災害の原因調査の実施はAになっていますので、頑張っているのは分かります。この分野は、かねてより実績のあった分野ですが、腰痛となるとこれはシナジー領域の疾病になります。それ以外で、墜落防止とか、建設現場での労災問題、そういった労働安全独自の取組等について、研究者の皆さんは今も元気でやられているのかどうかお聞かせ下さい。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 産業安全の研究については、清瀬地区の研究グループでやっております。もちろん、墜落防止や、機械の災害といった研究も積極的にやっているところです。墜落防止に関しては、いわゆるハーネス型安全帯の研究が政省令の改正につながったという事例もあります。機械安全の関係では、最近AIやIoTなど、現場の状況も変わっておりますので、そういうことに伴った新しいリスクが出てくるのなら対応しなければいけないということで、そういった分野の研究も進めているところです。
 
○中村構成員
 安心しました。非常に難しいことですが、ロボットの普及とか、機械と人間が協調した作業はこれからどんどん要求されます。そういう中での労働安全では安衛研は大きな業績を上げてきましたので、そのような面での成果についても是非、触れていただければという気がしております。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 はい。
 
○今村主査
 続きまして、「中期目標期間実績評価」について御議論いただきたいと思います。法人所管課室としては、見込評価の活用はしないこととしたと伺っております。そこで、法人より、見込評価と比べ、実績等に変化があった項目を中心に、複数ある場合は、重要度、難易度が高いとしている項目を優先的に、業務実績及び自己評価の御説明をお願いします。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 資料3-1です。2ページ目をお開きください。自己評価の要約としては複数施設の協働による研究を実施したということで、平成28年度は短期間でしたけれども、工程表を作成して研究を開始した。平成29年度は新たな取組として調査・研究発表会を開催した。平成30年度においては複数施設での協働の範囲を広げたということで、かなり平成30年度評価の取組と被るところはありますけれども、シナジー効果は着実に進めた、3年間で1段ずつステップアップを遂げたということで、自己評価をAとしています。
 次に、評価項目1-2の労働災害調査事業です。これは13ページ目を御覧ください。中期目標期間中は、災害調査の結果が法令等に活用されたということで、先ほども御指摘がありましたように、こちらで挙げているのは職業性疾病発生の防止のものがかなり大きいですが、平成30年度以外の成果としては、膀胱がんの原因となった3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタンに関する政省令の改正、特殊健診項目の改正であるとか、あるいは有機粉じん、いわゆるポリマーによる間質性肺炎等の防止のための指導に結び付いた等の活動成果も上げているところです。健康関係事案が多くなっていますけれども、被害の拡大を未然に防ぐための法令改正等に活用されたということで、いろいろな取組をしていますから、こちらも自己評価をAとしているところです。
 
○労働者健康安全機構総務部長
 それでは、3つ目として治療就労両立支援センター事業について、若干御説明申し上げます。資料は28ページを御覧ください。こちらの事業につきましては中期目標を大きく上回る業務実績に加え、目標策定時の想定以上の業務成果を得られているということで、見込評価と同じく自己評価をS評価とさせていただいているところです。
 中期目標期間中の全体像ですけれども、次の29ページを御覧ください。評価指標につきましては1、2とございますけれども、患者の有用度については平均して120%を超えていますし、また、支援事例件数につきましても、いずれも130%を超えるというような達成度となっているところです。その下の事業の政策実現への貢献ですが、「働き方改革実行計画」におきましては、機構が構築した主治医、会社・産業医、両立支援コーディネーターの3者によるトライアングル型のサポート体制の構築や、両立支援コーディネーターの養成に係る両立支援スタイルというものが、政府方針へ反映されたところです。また、両立支援の普及につきましては、両立支援事例を収集し、分析・評価を行った上で「両立支援マニュアル」を作成し、普及を図りました。両立支援コーディネーターの役割や養成方法の取りまとめを厚生労働省に提言しまして、その内容が国の方針(国が定める今後の養成カリキュラム)として反映されたところです。また、平成30年度診療報酬改定では、両立支援コーディネーターを前提とした診療報酬が新設されました。
 繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げましたように「働き方改革実行計画」での2,000人養成を2年間前倒しで実施させるなど、機構が治療と就労の両立支援に係る社会全体の関心の高まりを牽引し、目標策定時に想定した以上の政策実現に大きく貢献することができたと考えています。そのことを踏まえまして、自己評価はS評価とさせていただいているところです。当機構からの説明は以上です。よろしくお願いいたします。
 
○今村主査
 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明がありました事項について御意見、御質問等がございましたら、お願いします。
 
○三宅構成員
 ありがとうございます。1つ、労働災害の調査の件で聞かせてください。災害調査に当たっては、厚労省とか労基のほうからの依頼を受けて実施すると先ほど伺ったのですが、そこにむしろ機構側あるいは安衛研側から、こういう事案について、今回は被害は小さいとか影響度は社会的に大きくなかったとしても、将来において非常に大きな災害になる可能性があるような事案だと判断したときに、安衛研のほうから申し出て調査に行くことは可能なのですか。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 まだ被害が出ていなくて、可能性があるのではないかという事案でしょうか。
 
○三宅構成員
  一応、トラブル事案とか何らかの被害は出ていると。ただし、例えば研究機関であったり、あるいは小規模なパイロットでやっていたりした場合に、例えば化学反応を機構がまだよく分かっていない状態でトラブルが出たとき、省とか労基からの依頼が来なかったとしても、これは将来、現場で発生したら大災害になると判断した場合に、むしろ安衛研の側から調査をさせてほしいと言うことは可能なのですか。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 例えば現場のほうで何か問題が起こりそうだとか、企業から、こういうことで問題があるんだけどといった相談を受けて、一緒に研究していくということはあり得るかもしれないと思います。私どもだけで、いわゆる災害調査という形でなく入って行く権限はございませんので。
 
○三宅構成員
 安衛研なり機構側から省のほうへ申し出て、これは将来、大きな災害に発展するかもしれないということを進言しつつ、その調査を進めるということが可能なのかどうか。というのは、私は昨日、経産省のほうの事故調査みたいなことをやっていたのですが、そこでは被害の大きな災害、もう1つは社会的に大きな影響があるだろうと考えられる災害、3つ目としては、現在は小さい所で起きているけれども将来は大災害になるかもしれないという可能性を秘めたトラブル事例、これは事故と認定されたものですが、そういったものについて深掘りをして原因究明をするということで進めているのですが、そういう厚労省のほうから、あるいは労基のほうから依頼が来たもの以外に、もちろん事業者のほうと協働して進めるということもありますが、最先端の技術の場合、事業者のほうは必ずしもウェルカムでないかもしれないので、そういうときに、こちら側から調査を申し出るということは現状ではできないということですか。
 
○労働基準局安全衛生部計画課長
 厚生労働省の立場からのお答えになるのですが、災害調査と申しましても純然たる研究というよりは、後々、労基署が行政処分とか、あるいは大きな問題につながっていくということについて専門的な知見を得るということで、かなり権力的な側面を持っているものもございますので、今後の問題との関連ということであれば、いろいろコミュニケーションを取りながら、必要性があればお願いするようなこともあろうかと思いますが、そういった微妙な権力性を伴うような部分があることも留意しつつの研究機関かなと、そういうところがあろうかと思います。
 
○労働者健康安全機構理事(木口)
 いわゆる災害調査という枠組みではなく、研究の枠組みとして可能な範囲で取り組んでいくことは、この後もあり得ることと思います。
 
○三宅構成員
 伺いたかったのは、もう既に災害は発生してしまっていると。しかしながら、労基とか省のほうで大事だと思わなかったとすれば、これは比較的シンプルな事例なので通常どおり報告書を上げて再発防止すれば大丈夫だと思っていたかもしれないけれども、むしろそういう事例に関して研究員の方が、これは将来、もっと大きなことへ発展するかもしれないと感じたときに、それを進言するのは現状では難しいということですか。
 
○労働基準局安全衛生部計画課長
 そういう問題提起ということであれば、今、問題になっている災害調査という形なのか、あるいは研究を依頼するという形なのか、いろいろあろうかと思いますけれども、そういった問題提起はコミュニケーションを取りながら、必要な調査は進めていくべきだと思います。
 
○三宅構成員
 本日の会議の冒頭で出ていたように、産業構造も変わっているし、労働の構成も変わっている。技術もどんどん進展していて、安全は、どちらかというと再発防止という観点で調査であったり、あるいは研究がされてきたというケースももちろんある。しかしながら、再発防止というのは、事故を見て現場に行って得られることも非常に大きいと思います。そこをヒントにして、これから起きるであろう事象であるとか事故に対して先に手を打つようなことを研究員の方々ができる。そういう組織であったらいいなと願ったわけです。
 つまり、研究員というのは、先ほどお話があったように最先端の知識とかスキル、見識を持っている方々です。ですから、そういう方から見て、依頼は来なかったけど、この事案は非常に重要な案件だと考えた場合に、むしろどんどん提言をすることで、将来起きるかもしれない大災害を未然に防止することができれば、より価値のある存在になるのではないかと考えた次第です。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 ありがとうございます。おっしゃってくださるように、もしそういう軽微というか、何らかの細かい災害の火種があったときに、我々の研究員がそれを知ることができたら、そういうものを本省の方と議論したり提言はできると思いますが、今のところ、そういうシステムは機構として持っていない。ただ、唯一、今、おっしゃったことから視点はずれますが、日本バイオアッセイにおいては、新たにできた物質ですね、工業製品として使うような物質に関しては先におかしなことが起こらないかということで、いろいろな種類を使い、ばく露試験で発がん性がないかのチェックをして、あらかじめ災害が起こらないように、起こる前のチェックのための対応はしているところです。
 
○今村主査
 最後に、中期目標期間実績評価について、今、説明がなかった評価項目について、もし御意見がありましたらお願いいたします。
 
○土井構成員
 先ほど説明いただいたことの続きで恐縮ですが、統合による相乗効果ということで今はある意味、お見合いをそれぞれの所にしていただいて、うまくミーティングが設定できましたという段階だと思います。そういう意味で今期、A評価というのは、それはそれでいいと思いますが、今後、これを更に緊密な融合にしていくためには、これから次の期とか次の年度以降の話になると思いますけれども、さらに何をすればいいとお考えなのか。こういうふうにいろいろ設定するというのはできるのですが、それを一生懸命促進している方がいなくなると忘れられてしまって、また別個にというケースは結構あると思います。それをそうではなく、本部が一生懸命肩入れしなくても、できるようにするための仕組みとか何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 今、非常に興味深いお話を頂きました。例えば安衛研と病院の人的交流で、一番はどれだけ一緒にするかということです。労災病院で臨床をやっている者が基礎のほうを学びに行って、安衛研がやっていることを学ぶ。例えばアスベストは我々がずっと長くやってきたものですが、これまでは当然、アスベストは臨床のレントゲンを見るのと、基礎のほうで肺の繊維計測ですが、つい最近では労災病院の職員がわざわざ安衛研のほうに半年ほど研修に行って、安衛研の技術を持って労災病院に帰る。そのように人的交流でお互いの技術を融合する。このようにして研究能力を高めるということは既に始めています。そういう内容のことを考えているところです。よろしいでしょうか。
 
○今村主査
 ありがとうございます。今までの話を聞いて隔世の感があるのは、安衛研の場合は従来、今日は全然強調されませんでしたが、『インダストリアル・ヘルス』といった自前の雑誌のインパクトファクターが高いとか、そういう研究レベルの高さを強調しておられたのを思い出しました。労災病院のほうは、せき損センターとか急性期医療ですか、そちらのほうで非常に緊急性の高い治療ということで正に臨床で頑張っておられる。ここにある両立支援で、理事長が先ほどおっしゃったようにコミュニケーションを図って成果を上げていることは、本当に機構が大きく変わっていることを正に実感させていただきました。
 ただ、資料2-1の26ページの写真ではないですけれども、先ほどの土井構成員からのコメントもありますし、三宅構成員からもありましたけれども、やはりリーダーがいなくなったときにそれをどう守るか。ワークショップ形式と言うのですか、できるだけ皆さんが一堂に会して講義形式でなくコミュニケーションする。そういうエコシステムというか、イノベーションのための人と人とのつながりを、もっと維持していかれたらと思いますので、是非、その方向で御努力いただければと思います。よろしいですか。
 それでは最後に、法人の監事及び理事から年度中期目標における目標の達成状況等を踏まえまして、今後の法人の業務運営等についてコメントを頂きたいと思います。最初に法人の監事から、続いて法人の理事長よりお願い申し上げます。
 
○労働者健康安全機構監事(藤川)
 機構非常勤監事の藤川でございます。資料2-5にあります監査報告を御覧ください。この監査報告は、令和元年6月30日付けで退任された黒須監事とともに、6月25日付けで当機構の理事長宛に提出したものです。隣に座っておられるのは、7月1日から着任されたばかりの遠藤監事でございます。資料2-5の裏面以降に、具体的な内容として、監査の方法及びその内容、監査の結果などが総務省の雛型に従って記載されていますので、特に長い説明はいたしませんけれども、簡単に一言で申し上げるとすれば、特に指摘すべき事項は見受けられなかったということ。そういった結論でございます。この書面の監査報告に加えまして、この場では監事としての率直なコメントを述べさせていただきたいと思います。
 まず、本日、この場で様々な御指摘や御議論を頂きました、年度評価や期間実績評価についてですが、監事といたしましては、機構は各項目や課題について真摯に取り組み、おおむね期待に応える成果を上げてきたのではないかという印象を持っています。特に、治療と仕事の両立支援につきましては、本中期目標期間を通じて機構に課せられた重要な課題でありましたし、国からの要請に応えて社会に働きかけるといった、機構が果たすべき一定の役割を発揮してきたのではないかと評価しています。また、諸課題の遂行状況を通じた機構の内部統制につきましても、ここには改善すべき点もございますが、全体としては、おおむね問題ない状況にあるという印象を持っています。
 一方、機構にとって最大の懸念事項としては、先ほど宮崎委員からも御指摘があった労災病院の収支、経営状況であり、昨年も黒須監事からこの場でコメントさせていただいたと記憶しています。当機構の佐藤理事からの説明にもありましたが、産業構造の変化はもとより、超高齢化社会や人口の偏在が進む中で、労災病院に求められる医療の質は地域ごとに大きく変わりつつあり、病棟、病床のダウンサイジングや機能の見直しなど様々な取組をしています。しかしながら、収支や損益の赤字から抜け出せない病院も少なくありません。また、現在、収支に大きく影響する人件費を含めた労働条件の見直しを労働組合に提案していますが、その実現には働き方改革を進める中で職員全体の意識改革が不可欠という状況です。
 機構にとっての病院事業は、単なる病院の運営ではなく、先ほどの理事長からの両立支援に係る熱いコメントや、今村委員からのコメント等にもありましたように、機構が国民に対して提供するサービス、その他、質の向上、労災疾病、勤労者医療、治療と仕事の両立支援といった機構の重要な課題に取り組むための下支えとなる、すなわち機構の統合相乗効果を支える重要な1つの機能であると考えています。こうした観点を踏まえつつ、機構本部と各施設はもちろんのこと、本省を含めて労災病院群の健全経営や将来展望につき、危機感とスピード感を持って更に尽力されることを期待しています。
 
○今村主査
 ありがとうございました。それでは、理事長、お願いいたします。
 
○労働者健康安全機構理事長
 では、理事長としての発言をさせていただきたいと思います。先ほどからの議論のこともありますので、少しそれを先にコメントさせていただきまして総括的なお話へと展開していきたいと思います。三宅先生が言われたアクシデントや、場合によってはインシデントがあったときに、その原因を調査しながら安全衛生を高めていくという方法論については、私は長い間病院に勤務していましたのでSafety-Ⅰという、要するに失敗事例を集めて安全を高めていく。そういう方法論に今はあるということをおっしゃっているのではないか。
 病院での議論は、Safety-Ⅰはいいとしても、レジリエンスエンジニアリングの手法を取り入れたSafety-Ⅱという、つまり、ほとんどのパフォーマンスはうまくいっている。だけど、その中からときどき塀の向こうに落ちる。その落ちる様と、うまくいく様は基本的に同じ歩き方をしている。だけど、こうだと。その部分についての現場への洞察力というのは、少なくとも先ほど来言われている中小企業に対する産業保健や産業医の関わり方という形での現場に対する観察する力が強くなっていく。そのプロセスでSafety-Ⅱの話が出てくるだろうと思います。
 ですから、今すぐこうすると、ああなって、インシデントが出る前に見つかりますよという話はなかなか難しいのですが、少なくともそういうふうな工学系で行われてきたような手法を、私たちの組織が利用することについての勉強はしていかなくてはいけないのではないかと感じました。ありがとうございます。
 それから、これはそんなものかなということで大変申し訳ないのですが、資料1を見ていただくと、評価項目一覧に重要度や難易度があり、納骨堂の運営業務というのがあります。ここに書かれていること、つまり下の2行目ぐらいにありますが、「社会、企業、労働者の安全・健康に対する意識改革の促進」を具体化するものであり、経営トップ等が参列し遺族の前で誓うことは、経営トップが自ら所属組織の意識の高揚を図る上で重要である。ここに書いてあることそのものは全く間違っていません。ただ、私が合祀をするための式典に参画するに当たって、基本的に私たちの国で働いてくれたことそのものは、私たちの国の産業や経済の礎としての仕事をしていただいたと。そういう礎としての仕事をしてくださった方たちに対し、労働災害で亡くなったという話、その人たちに対して、もともと式辞の中では悲しみという形で表現されていますが、悲しみだけでなく、その方たちに対するリスペクト、つまり尊敬というか、だから言葉としてはその方たちに対する尊崇の念を表現しようということで、式辞の内容をそのような形にアレンジしています。
 何を言いたいかというと、この業務が重要なのは、ここに書いてあることは全くそのとおりなのですが、私たちの国の人々が私たちの国で働いて、そしてこの国の力を強くするということについて、残念ながら亡くなってしまった方たちに対しては、そういう観点からリスペクトしたいということが、かなり重要なのではないかと思って臨んできました。ですから、ここに書いてあることそのものは全くそれでよろしいのですが、今言ったようなことを含めて、悲しみのみならず、尊崇の念を持って御遺族の方とともに亡くなられた方に対して接していくと。こういうふうな心でございますので、ちょっと追加しておきます。
 最後に、総括的なお話をさせていただきます。私たちの機構というのは、先ほどからお話しているように複数の組織が一緒になってシナジー効果を発揮している。それらは労災病院で言えば勤労者医療を充実させる。研究所で言えば労働者の安全を向上させること。産業保健総合支援センターなどは産業保健を強化する。こういうようなことを考えながらやってきました。そういうふうなことで、私たちの国の産業や経済の礎を維持・発展させることがあって、そして勤労者一人一人の人生を支えていくと、そういうふうな大きな役割として、この2つを担っているということはあると思います。
 今日、ここで報告させていただいた取組の中でも、治療と就労の両立支援については、政府が推進しているところの一億総活躍社会の実現に向けた大事な話ということになります。したがって、従前にも増して労働者の健康や安全に意を払って、病にあっても働き続けることができるということを支援することは、私たちの機構の非常に重要な課題であると認識しています。このことは、先ほど来、全国津々浦々に展開していかなくてはいけないということで頑張る次第ですが、当座は治療と就労の両立支援という観点から、私たちの組織がフロントランナーとして取り組んでいると。そういうふうなことで産業医、会社、事業場、それから主治医、患者に寄り添うような両立支援コーディネーターのトライアングル型のサポート体制の構築の実現に向けて、コーディネーターを養成したりマニュアル等の普及などをしていくことがフロントランナーとしての仕事であるということでやってきています。今、ここでのお話にもありましたように、事業場における両立支援に対する理解を、より深めていくことが必要なので、労災病院や治療就労両立支援センターだけでなく、産業保健総合支援センターが産業医や関係各位を鼓舞し激励するような形でもって、この件に取り組んでいきたいと考えています。
繰り返しになるかもしれませんが、病気ではないけれど、必ずしも健康でもないという労働者、特に高齢の働く方が増えておられます。もちろん、高齢でない労働者についてもそうなのですが、健康に働くためには企業における産業保健活動を、今、お話したように高めていくことが非常に重要です。多くの労働者が働きながら、それでも産業保健活動が低調であるような中小規模の事業場において、このような活動を高めていくことが労働者が健康で働き続け、日本国が元気であり続けるために大変必要であると。ですから、産業保健総合支援センターとか、もちろん、この機構もシナジーという形で小規模事業場に対する産業保健活動の強化を、先ほど少し言及されましたが、より一層深めていきたいと考えているところです。
 基礎と臨床の応用ということでの議論がたくさん出ましたので、その部分についても、是非、今後とも充実させていきたいということがございます。労働安全衛生総合研究所と労災病院の話が出ましたが、最後に出たバイオアッセイ研究センターも研究所の一画を占めているわけですので、そういう所と治療就労両立支援センター、労災病院、それから産業保健総合支援センターの十二分な協働体制について、私たちとしては意を尽くしていきたいと思っています。
 今日は、先生方によって大変高いレベルというか、大所高所の見地から多くの御示唆を頂き、社会的要請に対してしっかりと働けということを感じた次第です。この発言の冒頭で申し上げましたが、インシデントやアクシデントが起こる前に、どのような形で労働者の安全を全うしていくかという話は非常に奥の深い重要な問題であると思いますので、これから引き続き、いろいろと研究していきたいと思っています。そのためにも、組織全体のコンプライアンスという観点での徹底が必要です。ですから、法人としてのガバナンスを、より一層強めて、コンプライアンス、内部統制の強化にも努めていきたいと思います。
 ということで、全体を締めますと、本日は先生方から大変貴重な御意見をたくさん賜りました。心から感謝申し上げます。ありがとうございます。働く人たちの健康を守り続けるという大事なポイントを引き続き、今後とも頑張っていきたいと思っている次第です。大変貴重な御指摘や御助言を賜りましたので、それらを参考とさせていただいて今後の機構の事業の展開に是非ともたくさん反映させていきたいと思います。引き続き、よろしく御指導、御鞭撻のほどお願い申し上げます。ありがとうございました。
 
○今村主査
 ありがとうございました。最後に私事で大変恐縮ですが、実感として機構の仕事は非常に大切だと思ったのは、今回、私、グローバルイノベーション学科という所の立ち上げで頑張り過ぎ、飛行機に乗り過ぎて、エコノミークラス症候群ということで、今、労災申請をしているところなのです。正に治療と就労の両立ということから、生活の支援を実感として非常に有り難さを感じているところです。理事長の言葉も大変重く受け止めています。今後とも御努力、御健闘をお願いしたいと思います。ありがとうございました。本日の議事を終了いたします。最後に事務局からお願いします。
 
○政策評価官室長補佐
 今後の流れについて御連絡いたします。本日、御議論いただきました労働者健康安全機構の「平成30年度業務実績評価」及び「中期目標期間実績評価」につきましては、この後、本WGにおける御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知しますとともに、公表いたします。決定したそれぞれの内容につきましては、後日、構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。
 最後に、構成員の皆様におかれましては、本日、配布した資料の送付を御希望される場合は机上にそのままにして御退席いただきますよう、お願いいたします。事務局からは以上です。
 
○今村主査
 ありがとうございます。それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。そろそろ外も少し涼しくなってくるかと思いますが、2ラウンドにわたり、皆様、御苦労さまでした。また、御説明ありがとうございました。長時間にわたり熱心な御議論をありがとうございました。お疲れさまでした。
 
(了)