第8回 副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会(議事録)

労働基準局監督課

日時

令和元年7月9日(火)10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 I+J会議室
(東京都港区西新橋1丁目6番15号 NS虎ノ門ビル3階)

議題

・報告書(案)について
・その他

議事

 

○守島座長
 それでは、時間よりも少々早いのですけれども、出席されるべき方は全員おそろいになりましたので、ただいまより、第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を開催いたしたいと思います。委員の皆様方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただき、まことにありがとうございます。
 本日は、島貫委員、小畑委員、水島委員が御欠席でございます。
 まず、本日の議題に入る前に、前回、当会を開催してから事務局のほうに異動がございましたので、事務局より、御説明をお願いいたします。
 
○岸田監督課長補佐
 事務局に異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 大臣官房審議官(労働条件政策、賃金担当)の吉永が本日付で参っておりますけれども、本日、恐縮ながら公務のため、欠席しております。
 続きまして、労働基準局総務課長の久知良でございます。
 続きまして、労働基準局安全衛生部労働衛生課長の井内でございます。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 これまで、当会では、委員の皆様には、企業ヒアリングの報告や、労使団体等へのヒアリング、諸外国調査の結果等を踏まえ、現行制度への課題の整理や論点の整理を行ってまいりました。
 前回までの御議論で、大きな論点についてのお考えは、おおむね整理されたと思います。
 そこで、本日は、これまでの議論を踏まえて、事務局に報告書(案)を用意してもらいましたので、本日は、この資料に基づいて取りまとめに向けた議論を始めたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは、カメラ撮りは、いらっしゃいませんね。では、そういうことで。
 では、本日の議題に入りたいと思います。
 まず、資料について、事務局より御説明をお願いいたします。
 
○岸田監督課長補佐
 まず、資料の御確認をお願いいたします。
 机の上に、資料といたしまして、資料1「『副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会』報告書(案)」、そして、参考資料1としまして「第7回検討会における委員の主なご意見」を用意させていただきました。
 その他、座席表がございます。不足など、ございましたら、事務局までお申しつけください。
 では、続きまして、資料について御説明させていただきます。
 資料1の報告書(案)をごらんください。
 1枚おめくりいただきまして、まず、目次でございます。
 全体の構成でございますけれども、まず「I.はじめに」の「1.副業・兼業の現状」ということで、最初のほうの検討会で御紹介させていただきました、データを書かせていただいております。
 「2.副業・兼業の促進に向けた政府の対応状況」といたしまして、働き方改革実行計画、柔軟な働き方に関する検討会等の、これまでの取り組みについて記載させていただいております。
 続きまして「II.労働時間法制の変遷と労働時間通算の規定等について」ということで、こちらも第2回の検討会で御紹介させていただきました労働時間法制の変遷ですとか、労働時間通算の規定の歴史的経緯、現行の取り扱いについて等を書かせていただいております。
 続きまして「III.企業、労使団体へのヒアリング結果」ということで、先生方に検討会の場で行っていただきました労使団体へのヒアリングですとか、事務局のほうで事前に行って検討会の場で御報告させていただきました企業のヒアリング結果について書いております。
 続きまして、IVのところで、先生方に行っていただきました諸外国の調査です。フランス、ドイツ、オランダ、それぞれについて書かせていただいております。
 続きまして、Vのところが、報告書の主になるところかと思いますけれども「実効性のある労働時間管理や健康管理の在り方に向けて」として、まず、1のところで、それぞれの現行制度の課題について書かせていただいた後、先生方の御議論をもとにまとめさせていただきました、今後の方向性についてということで、2のところから、それぞれ健康管理、上限規制、割増賃金について等々を書かせていただいているところでございます。
 では、具体的な中身について入ってまいります。3ページをごらんください。
1のところは、冒頭「はじめに」ということで導入部分です。
 続きまして「1.副業・兼業の現状」のところですけれども「(1)働き手側」のところで、就業構造基本調査等の統計調査について書かせていただいております。
 1つ目の〇の最初のポツのところで、副業を希望している雇用者数は増加傾向であることと、実際に本業も副業も雇用者として働いている者についても増加傾向であること。
 次のポツのところで、所得階層別に見ると、本業の所得が299万円以下の方が全体の7割を占めているということ。
 あとは、2行ぐらい後ですけれども、本業の所得が199万円以下の階層と1000万円以上の階層で割合が比較的高くなっており、分布が二極化しているということについて、記載させていただいております。
 次の○のところですが、JILPTの調査についても御紹介させていただきましたが、その結果についてでございます。
 1つ目のポツのところですけれども、業種別に見ると、2行目のところですが、全体的に本業と副業が同じ業種である割合が高いということですとか、一方、副業の業種のうち、卸、小売ですとか、宿泊、飲食については、本業の業種に関わらず、比較的副業をしている方がいらっしゃる。
 次のポツですが、副業する理由としては、収入をふやしたいとか、1つの仕事だけでは収入が少なくて生活できないという方が多い。
 一方、本業の収入が高くなると、そういった収入面の理由が低くなって、自分が活躍できる場を広げたいとか、そういったものが高くなる傾向がございました。
 次のポツは、就業形態ですけれども、副業の就業形態は、パート・アルバイトが多いということと、本業、副業ともにパート・アルバイトである方ですとか、本業が正社員で、副業がパート・アルバイトの方が多いということでございます。
 次のポツで、副業の平均実労働時間が、収入が一番目に多い副業において、およそ週13時間となっています。
 次のポツですが、本業、副業の合計した平均実労働時間は、およそ週48時間となっています。
 続いて「(2)企業側」でございます。
 副業・兼業を認めていない企業が85.3%ということで、その理由として、次の〇ですが、企業側の課題・懸念として、本業がおろそかになる、長時間労働になるということと、労務・労働時間管理上の不安があるということが挙げられております。
 続いて2.のところ、政府の対応状況ですが、まず「(1)働き方改革実行計画」のところで、副業・兼業の促進を図るというような方針が示されたところです。
 少し飛ばしまして、次の5ページでございます。
 「(2)柔軟な働き方に関する検討会」が、2017年10月から開催されまして、そこで副業・兼業の促進に関するガイドラインですとか、改定版モデル就業規則の御議論をいただきまして、翌年1月にガイドラインの策定等をしているところでございます。
 「(3)制度的課題の検討」のところですが、実行計画ですとか、未来投資戦略、さまざまな閣議決定のところで、副業・兼業の場合の労働時間管理のあり方について、制度的な検討を進めるとされたこと等が書かれておりまして、この検討会につきましても、それらを踏まえて、御議論をいただいてきているというような経緯を書いております。
 続きまして、6ページでございます。
 「II.労働時間法制の変遷と労働時間通算の規定等について」でございます。
 「1.労働時間法制の変遷」のところですが、1つ目の〇、基準法制定当時については、1日8時間、1週48時間の通常労働時間制と、1つの変形労働時間制のみ規定されていたところでございますが、次の〇ですが、さまざまな社会的背景を踏まえて、さまざまな弾力的な取り扱いについて法整備が進められてまいりました。
 「2.労働時間通算の規定等について」、歴史的経緯でございますが、1つ目の〇で、工場法のときにも同様の規定がございましたということ。
 次の〇ですが、基準法でも、その規定が引き継がれていることと、解釈通達が出されているというようなことが書かれております。
 次の最後の〇のところですが、一方、厚生労働省で、これまで開催された検討会において、この労働時間通算について議論され、見直すべきとの指摘がなされたことがあるということで、注の7のところですが、1つは、契約法の制定時の今後の労働契約法制のあり方に関する研究会の報告書ですとか、次のページのほうに注が続いておりますけれども、柔軟な働き方に関する検討会、先ほど御紹介した検討会のところでも、見直すべきというような指摘があったところでございます。
 7ページの(2)のところでございますが、そこで、労働時間通算の現行の取扱いについて書かせていただいております。
 1つ目の〇のところで、通算して、その結果、サブロク協定を締結するとか、割増賃金を支払うということが書いてあります。
 次の〇のところでも、契約の先後でそれを考えていくのだというような現行の行政解釈について触れさせていただいております。
 3つ目の〇でございますが、先ほど御紹介した副業・兼業の促進に関するガイドラインのほうでは、労働者からの自己申告により副業・兼業先での労働時間を把握することが考えられるとされているところでございます。
 続きまして(3)の健康管理です。
 健康管理のところでは、1つ目の〇にございますけれども、1行目の後段のところから、安衛法の規定に基づきまして、その使用する労働者に対して健康診断等を実施しなければならないこととなっておりまして、8ページのところに、その対象となる要件が書いてございます。
 2つ目のポツのところですけれども、そちらの時間数で対象者が決められておりまして、1週間の労働時間数が、当該事業場において、同種の業務に従事する、通常の労働者の1週間の所定時間の4分の3以上である者となっております。
 しかし、次の〇のところですけれども、このような措置の実施対象者の選定に当たりまして、現行では、副業・兼業先における労働時間の通算は不要ということになっているところでございます。
 おめくりいただきまして、9ページ、引き続きまして「III.企業、労使団体へのヒアリング結果」でございます。
 こちら11社のヒアリングを事務局のほうでさせていただきまして、その結果の御紹介ですけれども、上から5行目の後段のあたりですが、副業・兼業を認める企業の中には、副業・兼業を認める理由として、大きく2つの考え方が見られたということで、1つ目の○、自社社員に企業内だけでは身につけられない幅広い経験を身につけさせることにより、自社の人材の能力を高め、企業として、生産性の向上やイノベーションを進めていきたいという考え方。
 2つ目として、収入面や自己実現の観点から、労働者が希望することについて、労働者の自由を実現するため、法令遵守できる範囲や企業秩序に反しない範囲で認めようとするような考え方等が見られました。
 詳しく見ていきますと「1.労働時間管理について」ですが、1つ目の〇ですが、ヒアリングをした企業の多くに共通していたのは、マル1のとおり、副業・兼業先に雇用を認めていないですとか、マル2として、労働時間通算の問題が生じないように、本業、副業・兼業の通算した労働時間が法定労働時間内となるような副業・兼業しか認めていないというものでございました。
 この理由としましては、3行後ですけれども、労働基準法第38条ですとか、通達の適用を遵守した制度運営をするためには、こういったものしか認められないということでございました。
 具体的にネックになっている部分としては、マル1、マル2、マル3とございますけれども、日々の労働時間管理が実務上できないですとか、労働者の申告に信頼性がない。また、さまざまな労働時間制度がある中で、実務ができないといったようなものがございました。
 続きまして、労働時間管理について、10ページのところで、1つ目の〇、労働団体へのヒアリング結果について書かせていただいております。
 1つ目のポツのところで、さまざまな長時間労働の問題ですとか、安全配慮義務の責任分担の問題等々の多くの課題が指摘されていること。
 4行目のあたりですけれども、また、現実に副業・兼業をしている者の中には、1つの勤務先の所得では不十分であるため、やむを得ず複数の仕事をかけ持ちしている者もいると。このような現状を踏まえれば、政府として、いたずらに副業・兼業を後押しすべきものではないということ。
 次のポツですが、複数の仕事が合わさることによって、長時間労働が生じる問題があることから、使用者は、私生活への過度な介入とならないように配慮しつつ、副業・兼業に関して、労働時間を適切に把握し、38条の労働時間通算の規定など、現行の労働時間ルールを遵守すべきというような御指摘。
 次のポツですけれども、通算について、自己申告によりかかった制度にすべきかどうかということには、慎重な意見を持っている。申告しなかった場合に、労働者保護が外れてよいのかということが課題というようなお話がございました。
 次の〇ですが、使用者団体へのヒアリングでは、1つ目のポツですけれども、長時間労働のみならず、職務専念義務、秘密保持義務など、さまざまな観点から懸念すべきことが多いということ。
 また、通算について、企業はどこまで対応すれば、これらの就業時間の把握義務を履行したことになるのかが、なかなか明確にされていないと混乱するのではないかということ。
 3つ目のポツですが、割増賃金の算定に当たって、日々管理していくことは極めて困難であるし、自己申告による場合はさらに把握が難しいということ。
 次のポツですけれども、現在の職場では、自分のやってみたいことがなかなかできにくい環境である場合、違うところで自分の力を試してみたいということもあると思うので、今後、副業・兼業がふえる可能性はあるのではないかというような御意見もございました。
 続きまして、11ページの「2.健康管理について」のところでございます。
1つ目の〇、ヒアリングした企業のほうでは、1つ目のポツですが、独自の基準により、本業、副業の通算した労働時間ですとか、副業だけの労働時間の上限を設けているような例もございました。
 また、次のポツですが、自己管理に委ねつつも、相談窓口等の案内や健康教育の実施などにより対応している例もございました。
 1つ〇を飛ばしまして、3つ目の〇ですが、労働団体のヒアリングでは、先ほど御紹介したさまざまな健康診断等の対象者の選定に当たって、通算を行った上で要件を満たす者について、必要な措置を講じることが必要との意見がございました。
 次の〇ですが、使用者団体のヒアリングでは、副業・兼業の導入によって長時間労働が懸念されるので、労働時間を削減し、過労死を防止するという働き方改革法の理念に鑑みると、それを両立させるのは大変難しい状況ではないかというような御意見がございました。
 続きまして、12ページ「IV.諸外国の状況について」でございます。
 まず、1つ目のフランスについて「(1)制度の概要」のところでございますが、各国共通しておりますけれども、最長労働時間規制に違反する副業は許されないということになっております。
 1つ目の〇の後段のところで、それを守るためのいろいろな仕組みがあることとなっているというようなことが書いてございます。
 次の〇の4行目の後ろのほうからですが、複数の使用者がいる場合の調整について、労働時間についてですけれども、理論的には、両使用者から労働者に情報提供がなされているというような前提で、労働時間規制を遵守しなければならないけれども、調整を行うことは難しく、実務上、できているかどうかは別問題だというようなお話がございました。
 次の〇ですが、割増賃金の通算に当たって、労働時間は通算しないということとなっています。
 次の〇ですが、健康診断について、複数の使用者で雇用されている者か否かで使用者に課される実施義務に違いはないということでございます。
 「(2)監督等の状況」のところですが、監督署が使用者に対して、労働時間通算に関する働きかけを行うケースは非常にまれで、研究者によると、実務上は、労働監督官は点検できていないというようなお話がございました。
 続きまして「2.ドイツ」でございます。
 「(1)制度の概要」ですが、ここも同じく、最長労働時間規制を超える副業はできないということとなっております。
 その中で、契約上、いろいろ義務を課すとか、そういったようなこともございますけれども、同じ〇の上から7行目の後ろあたりからですけれども、使用者に労働時間の調整を義務づける明文の規定はないが、使用者は労働時間規制を守らなければならないことから、副業先の労働により労働時間法違反とならないように調整するとか、あるいは調整されるというようなことになっているということでございました。
 また、次の〇ですが、労働団体によると、割増賃金については法律上の規制はなく、協約により設定される。算定された労働時間は通算しないということになってございました。
 次の〇ですが、健康診断について、複数の使用者で雇用されている者か否かで、使用者に課される実施義務に違いはない。
 次の「(2)監督等の状況」について、労働時間法では、監督署の人手不足の影響もあり、余り監督等はされていないということでございました。
 「3.オランダ」です。
 「(1)制度の概要」にございますけれども、こちらも同じように、1つ目の〇のところですが、最長労働時間規制について、複数就業の場合に、労働時間を通算して規制が適用されることとなっております。
 ただ、その〇の下から2行目のところの後ろのほうですけれども、理論的には、双方が労働時間を調整せずに放置した場合は、双方の使用者が法違反に問われることとなるということでございます。
 次の〇ですけれども、割増賃金について、法律上の規制はなく、協約等により設定されております。
 次の〇ですが、健康診断について、複数の使用者で雇用されている者か否かで使用者に課される実施義務に違いはない。
 次の14ページ「(2)監督等の状況」のところでございますけれども、副業は個人の問題でありまして、労働者本人の意思によって行われるものなので、労働者が違法を申告しない限り、発見は困難であり、監督等は事実上されていない状況だというようなお話がございました。
 続きまして、15ページの「V.実効性のある労働時間管理や健康管理の在り方に向けて」のところでございます。
 「1.現行制度の課題」で、まず(1)に健康管理がございます。
 1つ目の〇のところですが、先ほど来、御紹介していますとおり、健康診断等の実施対象者の選定に当たりまして、労働時間は通算していないということで、課題として、そこのポツにございますとおり、副業・兼業している者の労働の状況が把握される仕組みとなっていないことから、副業・兼業をしている者に対する特別な健康確保対策はとられていないということが課題かと思います。
 「(2)上限規制について」ですけれども、現行制度では、通算の結果、上限規制を超えて労働させた事業主が法違反となるということですが、課題としては、そこのポツにございますが、上限規制を遵守するためには、少なくとも通算した労働時間が上限規制を超えそうな労働者については、日々厳密に労働時間把握を行う必要性があるが、こうした厳密な労働時間の把握は、実務上かなり難しく、使用者からすると、副業・兼業自体を認めることに慎重になり得ること。
 続きまして「(3)割増賃金について」ですが、現行制度では、通算の結果、法定労働時間を超えた労働時間について、割増賃金の支払い義務が生じますけれども、課題として、次のポツからですが、割増賃金規制が時間外労働の抑制装置になり得るのは、同じ事業主のもとで働いていることが前提であって、別の事業主のもとで働く場合に、抑制装置になり得るのか疑問であること。
 次ですけれども、労働時間の通算に当たっては、契約の先後で判断することとなっておりまして、日々、労働時間数の把握が必要となりますけれども、こうした厳密な労働時間の把握は、実務上難しく、使用者からすると、副業・兼業を認めること自体に慎重になる。
 また、この煩雑さというのが、日々の法定労働時間超えで直ちに生じることから、上限規制の場合よりも、その困難さというのは大きいということでございます。
 次のポツですが、使用者としては、このような煩雑さから通算して法定労働時間を超えるものは雇わないということとなりまして、副業・兼業をして収入を得たいという労働者の雇用をかえって阻害するというようなデメリットとなり得るのではないかということを課題としてございます。
 続きまして、16ページの「(4)副業・兼業先の労働時間の把握方法について」ですが、先ほど御紹介したとおり、1つ目の〇のところですが、ガイドラインでは、自己申告によって把握することとされております。
 それに関連しまして、課題がございますということで下のところに書いてございます。
 まず、1つ目、労働者からの自己申告で労働時間を把握する場合でございますが、課題としては、1つ目のポツのとおり、事務量がふえて煩雑になってくるということ。
 次のポツ、自己申告が正しいかわからないということ。
 次のポツですが、労働者が副業・兼業の事実を使用者に知られたくないなど、自己申告を望まないこともある。そういった場合に、企業が把握することが困難な場合があるということ。
 次のポツですが、労働者の自己申告といった場合に、労働者が副業・兼業している事実だけを申告して、労働時間数の申告を拒む場合があり得ると、少し自己申告の中でも段階があるのではないかということ。
 次に、使用者間で情報をやりとりする場合の課題については、自己申告の場合と比較しても、使用者から積極的に情報収集する必要があって、副業・兼業を行う者が多くなると、企業にとって事務量がかなり膨大になるということ。
 次のポツですが、副業・兼業先の労働時間数も通算して適切に管理しようとしても、自社の努力だけでは難しく、他社の適切な対応も必要になってくることというのがございます。
 そして、上記いずれにも生じる課題として、さまざまな労働時間制度が創設されたりですとか、さまざまな働き方がふえていることからも、さらに困難性が増しているということを書かせていただいております。
 続きまして、17ページ「2.今後の方向性」でございます。
 まず「(1)議論の前提」ということで書かせていただいておりますけれども、1つ目の〇ですが、御紹介したとおり、工場法の時代からあるものでございますが、当時も今も労働者の健康を保護するための規定であるということは変わりがないのではないかと。
 しかし、次の〇ですけれども、当時と異なって、さまざまな働き方が生じていることから、実務上、非常に困難になっているというような状況がございます。
 次の段落の「また」のところですが、働き方の多様化によって、必ずしも労働時間だけが労働者に負荷を与える要素ではなくなってきているという側面もあるということ。
 一方、副業・兼業を希望する方ですとか、実際に行っている方がふえている現状においては、副業・兼業による長時間労働が懸念されることも踏まえれば、副業・兼業を行う労働者の健康確保の充実というのは重要な課題になっている。
 そういったことを前提といたしまして、先生方の御議論も踏まえて、(2)の健康管理以降にまとめてございます。
 「(2)健康管理について」でございますが、1つ目の〇として、副業・兼業を行う労働者の健康確保の観点から、新たに労働者の自己申告を前提に、各事業者が通算した労働時間の状況、例えば、月の総労働時間などを把握することも考えられると書いてございます。
 ただし、副業・兼業は、労働者のプライバシーに配慮する必要もあること、また、事業所をまたがることから、労働者自身による健康管理も重要になり、また、事業者は副業・兼業先の労働まで把握し切れないことから、事業者に責任を課すとしても、副業・兼業をせずに自社のみで働いている労働者に対する責任とは差異が生ずるものと考えられる。
 次の〇ですが、産業医については、委嘱されている事業者との関係で、専門的な立場から健康管理の一端を担っており、委嘱関係にない副業・兼業先の労働について直接的に対応することは困難であることに留意が必要でございます。
 このようなことを前提として、健康管理に係る制度の見直しの方向性としては、例えば、以下のようなことがあると考えられるということで、マル1、マル2と書いてございます。
 まず、マル1でございますが、事業者は、副業・兼業している労働者について、自己申告により把握した通算労働時間などを勘案し、当該労働者との面談、労働時間の短縮その他の健康を確保するための措置を講ずるように、何らかの配慮をしなければならないということを公法上の責務としてはどうかというものでございます。
 18ページの1つ目のポツですが、現行においては、通算した労働時間に基づく労働者の健康管理が安衛法令上、位置づけられていないため、事業者に通算した労働時間の把握の上、労働時間の状況に応じて、必要があれば、労働時間の短縮等の何らかの措置を講じることを求めるものでございます。
 公法上の責務として設けるため、いかなる措置も講じていない場合は、行政指導の対象となり得る。
 一方で、この措置のみでは不十分ではないかという指摘はあり得るところであり、労働者自身による健康管理がより重要になるということでございます。
 続きましてマル2ですが、事業者は、副業・兼業している労働者の自己申告により把握した通算労働時間について、休憩時間を除き一週間当たり40時間を超えている時間が一月当たり80時間を超えている場合は、労働時間の短縮等の措置を講ずるほか、みずからの事業所における措置のみで対応が困難な場合は、当該労働者に対して副業・兼業先との相談、その他適切な措置を求めることを義務づける。
 また、当該労働者の申し出を前提に、医師の面接指導その他の適切な措置も講ずること。
 ポツのところですが、通算した労働時間が、現行の安衛法においても健康管理上の措置が求められているほどの長時間労働となった場合に、マル1より、より強い措置を求めるものでございます。
 ただし、この場合においても、労働者のプライバシーに配慮する必要があることですとか、他の事業場の労働時間を直接コントロールすることができない等の理由により、労働者の自主性を尊重した措置にならざるを得ないと考えられます。
 また、適切な事後措置まで視野に入れた場合には、当該責務は所定労働時間の長さ等により事業者間で差をつけることも検討課題になり得るということでございます。
 次の〇でございますが、上記は、あくまで考えられる選択肢の例示でございまして、その他、労働時間の長さにかかわらず、労働者から副業・兼業を行っている旨の申告があった場合に、現行の健康確保措置の枠組みの中に組み込むことなども考えられるかと思います。
 また、副業・兼業の場合の健康管理のあり方につきましては、労働時間の上限規制ですとか、割増賃金など、その他の部分のところで、どのような選択肢をとるかによっても変わり得ると考えられることに留意すべきであると書かせていただいております。
 「(3)上限規制について」の1つ目の〇ですが、現行の課題のところで見たように、上限規制を遵守するためには、労働時間を通算することを前提としております。
 おめくりいただきまして、しかし、この通算を行うために、複数の事業場の労働時間を日々厳密に管理することは、企業にとって実施することが非常に困難な場合が多い。
 この結果として、違法状態が放置され、基準法に対する信頼性が損なわれかねないことですとか、労働者保護がされない事態になりかねないこと等を踏まえて、制度の見直しの方向性としては、例えばということで、以下のようなことが考えられるとして、マル1、マル2がございます。
 マル1ですけれども、労働者の自己申告を前提に、通算して管理することが容易となる方法を設けることとして、例えばでございますが、日々ではなくて、月単位などの長い時間で副業・兼業の上限時間を設定し、各事業主のもとでの労働時間をあらかじめ設定した時間内に収めるというものでございます。
 ポツのところですが、副業・兼業先の月の労働時間の上限を設定し、それを前提に、自社の労働時間管理を行うことを認めること等により、労働時間管理を容易にしようとするものでございます。
 ほかの事業場における労働時間の変動を考慮する必要がなくなるため、企業の予測可能性が高まり、リスクマネジメントを図ることが可能となります。
 一方で、自社における労働時間を長く確保しようとするため、副業・兼業の上限時間を限りなく短くする可能性があり、無限定に設定することを認めてよいかは検討が必要である。
 また、本業及び副業の業務状況に応じて、複数の事業場間の労働時間を変動させることがあるような場合、本業の労働時間を短縮してもらうなど、本業の企業と調整できるようにすることも課題であり、引き続き、検討していくことが必要である。
 なお、全企業が当該方法をとることができるとするやり方もあるが、労使協定が締結された企業のみ当該方法をとるとすることができるやり方もあると考えられる。
 次のマル2のところですが、事業主ごとに上限規制を適用することとするが、通算した労働時間の状況を前提に、適切な健康確保措置を講ずることとすること。
 ポツのところですが、上限規制を事業主ごとに適用すると、事業主はより労働時間の管理がしやすくなり、労働者も副業・兼業を行いやすくなります。
 しかしながら、このような場合に、通算した労働時間が過労死ラインを超えるような場合が生じ得ることになりますので、労働者の健康確保が図られないおそれがございます。
 このようなことから、健康確保措置を適切に行わないと、労働者の保護が図られなくなるおそれがあることに留意が必要でございます。
 なお、この案をとった場合でも、別の事業主のもとで働く場合と異なりまして、同じ事業主との間で複数の労働契約を締結する場合ですとか、同一事業主の複数事業場で働く場合、事業主間で同一の労働者を雇用していることに明確な認識がある場合等については、法の潜脱とならないよう、通算することが適切だと考えられる。
 また、実務的には、各企業において、自社と副業・兼業先の労働時間を通算した上限時間を就業規則に盛り込むなどの対応をとることが望ましいとも考えられます。
 次の〇ですが、上記は、あくまで健康管理と同様に、考えられる選択肢の例示でございまして、その他、労働者自身が月の総労働時間をカウントし、上限時間に近くなったときに、各事業主に申告することなども考えられるかと思います。
 また、副業・兼業の場合の上限規制のあり方についてどうしていくかについては、健康管理ですとか、割増賃金など、その他の部分でどのような選択肢をとるかによっても変わり得ると考えられることに留意が必要であるということでございます。
 続きまして「(4)割増賃金について」でございます。
 割増賃金については、その支払いのために、上限規制と同等以上、さらにということでございますが、その厳密な労働時間管理を実施することが必要となります。
 しかし、日々他の事業主のもとでの労働時間を把握することは、企業にとって実施することが困難であるということと、結果として違法状態が放置され得るということですとか、マル2にございますけれども、別の事業主のもとで働く場合に、現行のとおり、労働時間を通算して、割増賃金の支払い義務があることが、時間外労働の抑制装置となっていない面もあること等を踏まえて制度の見直しの方向性としてはということで、例えばということで、マル1、マル2が書いてございます。
 マル1ですが、労働者の自己申告を前提に、通算して割増賃金を支払いやすく、かつ時間外労働の抑制効果も期待できる方法を設けることでございます。
 例として、使用者の予見可能性のある他の事業主のもとでの週や月単位などの所定労働時間のみを通算して、割増賃金の支払いを義務づけることでございます。
 ポツのところですけれども、現行の制度においては、契約の先後関係ですとか、所定外時間の実労働の順序で割増賃金の支払いが決まることとなっておりまして、他の事業場における労働時間に影響を受けますけれども、他の事業場における実労働時間を日々把握することは困難ですので、こういったことに影響を受けず、予見可能性のある仕組みとすることが考えられます。
 そうした場合、例えば、労働者からの自己申告により把握した他の事業場の所定時間のみを前提として、自社における所定時間と通算し、割増賃金の支払いは、自社における所定外時間について対象とすることとすると、使用者の予見可能性を高めることが可能となります。
 もちろん、この場合、割増賃金の支払いが義務づけられるのは、みずからの労働時間と、他の事業場の所定時間の合計が法定時間を超えていることが前提になろうかと思います。
 また、例えば、日ごとではなくて、週単位等で法定労働時間が上回るかどうかにより、割増賃金のお支払いを行うようにすれば、実務上も簡易に行うことが可能になります。
 こうした場合、自社における所定外時間の変動が、みずから支払う割増賃金の増減に影響するようになりますので、割増賃金の時間外労働の抑制装置としての機能がより働きやすくなると考えられます。
 ただ、一方で、さまざまな働き方がある中で、所定労働時間が日々変化する労働者もいるので、実務上の手間がそれほど軽減されない場合もあり得ます。
 また、割増賃金の支払いを抑制するために、自社の所定労働時間を長目にとるようになる可能性があることに留意が必要かと思います。
 次のポツですが、労働者の自己申告を前提として、割増賃金を通算する制度とする場合、企業にとって健康管理ですとか、上限規制に比べて、特に客観性が重要になるとも考えられます。
 続いてマル2ですけれども、各事業主のもとで法定労働時間を超えた場合のみ割増賃金の支払いを義務づけるものでございます。
 ポツのところですが、各事業主のもとでの法定外労働時間についてのみ割増賃金の対象とする場合、予見可能性は高まり、労働時間管理の煩雑さは解消されるほか、自社の労働時間のみを考慮すればよいことから、割増賃金の時間外労働の抑制装置はより働きやすくなるということです。
 一方で、この場合、現行解釈における取り扱いを変更することとなることから、労働者の保護にかけることのないよう、上限規制や、労働者の健康確保措置を含めた全体の措置の中で対応することが求められることに留意が必要でございます。
 また、上限規制のところでも書いてございますけれども、法の潜脱とならないように、一定の場合には通算することが適切だと考えられます。
 上記についても、あくまで考えられる選択肢の例示でございまして、その他、割増賃金の支払いについて、日々計算するのではなくて、計算ですとか、申告を簡易化するようなことも考えられるかと思います。
 続きまして、22ページの「(5)他の事業主の下での労働時間の把握方法について」ですけれども、これまで御説明してきました、いずれについても、他の事業主のもとでの労働時間の把握方法については、労働者のプライバシーの配慮ですとか、HR Tech等の普及状況等に鑑みますと、労働者の自己申告が基本となると考えられるかと思います。
 しかし、労働者の同意もあり、事業主間でのやりとりができる場合に、それを妨げるものではないと考えられます。
 一方、労働者の自己申告を基本とするとしても、副業・兼業の事実のみを申告し、時間数の申告を拒む場合はどうするのかですとか、どの程度の客観性を求めるのかというのは、それぞれどの選択肢をとるかによっても変わり得ると考えられます。
 また、次の〇ですが、どのようなタイミング、どのような頻度で労働者の自己申告を求めるかについては、これも同じく、それぞれどのような選択肢をとるかによっても変わり得ると考えられ、引き続き、検討していくことが必要としてございます。
 続きまして「(6)その他」でございますが、1つ目の〇でございますが、こちらの副業・兼業にはマル1として、主に年収の高い層が、企業内では身につけられないような幅広い経験を身につけ、生産性の向上やイノベーションを進めるようなもの。
 マル2として、主に年収の低い層が、収入面の理由から行うものがございます。
 これらについて、取り扱いを変えるということも考えられるということで御検討いただきましたけれども、実際には区分の基準を検討することは困難だということで御意見があったかと思います。
 次の〇ですけれども、雇用と非雇用のお話もございました。
 副業・兼業は、雇用の場合だけでなく、非雇用の場合もあるが、本業も副業も雇用の場合は、指揮命令下に入って、残業をせざるを得ないということもあり、労働法制で保護する必要性もあると考えられる。
 しかし、雇用の副業・兼業のほうを図ろうとして、厳格な規制になってしまうと、労働者が副業・兼業をしにくい、企業が副業・兼業を行う者を雇わないなどにより、副業・兼業の非雇用化が進み、かえって労働法制の保護が及ばない事態を招きかねず、かえって収入面からかけ持ちをしている者の不利益につながりかねないことにも留意が必要であるということでございます。
 最後といたしまして、これまで検討会で、いろいろ精力的に議論を行っていただいてまとめたところであるということ。
 3行目のところですが、この報告書を踏まえ、労働者の健康確保や、企業の予見可能性にも配慮した実効性のある労働時間管理のあり方については、労働政策審議会において引き続き積極的な議論が行われることを期待するということで、以上となります。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に基づいて、資料につきまして、御質問とか御意見がございましたら、ディスカッションに入りたいと思います。
 どの部分でも構いませんので、御自由に御発言をお願いします。どうぞ。
 
○石﨑委員
 報告書ですと、12ページ以降の諸外国の状況について、何点かコメントをさせていただきたい点がございます。
 まず、1点目なのですけれども、健康診断について、各国ともに複数使用者で雇用されているか否かで、使用者に課される実施義務に違いはないと記載していただいていまして、この点は、確かにそのとおりかと思うのですけれども、ただ、この記述だけ読みますと、各国複数就業している者に対して、健康診断をしっかりやっているというような印象を与えるところ、諸外国におきましては、日本のような通常の労働者に対する健康診断を毎年やるというような仕組みはとられておらず、ドイツであれば、基本的にはハイリスクな業務に従事している者ということだったかと思います。
 また、フランスにおきましては、健康診断はあるのですけれども、法改正によって、通常の労働者については5年に1回というような改正がなされたところかと思いますので、そういった健康診断の一般的なルールにつきましても、こちらに記載していただいたほうが、誤解がないのかなと思っております。
 もう一点目としましては、13ページのドイツのところでありまして、最初の○のところに、労働時間法違反となる、超える部分の労働契約が無効となるという記載があるかと思うのですけれども、確かにドイツ法の場合、最長労働時間規制に、複数就業によって違反した場合に、契約を無効とする効果があるということは指摘されているところでありまして、これを判例のほうで認めているところなのですけれども、たしか判例が認めていたのは、最長労働時間を著しく超えるような場合において、労働契約を無効にするということだったかと思いますが、この記載だと、最長労働時間に少しでも超えたら自動的に無効になるのかなというような印象を与える部分もあるかなというところでございまして、ここも若干書き方を変えたほうがよいのかなと思っているところです。
 3点目につきまして、すみません、戻って恐縮なのですが、12ページのフランスの、これも(1)の最初の○のところなのですけれども、監督署からの働きかけを契機として、疑われているような事情が生じている場合に、使用者は労働者に対して、労働時間規制を遵守していることを証明する書類を提出するように求めるとありまして、これは、確かに制度上はそのような仕組みがあるということかと思うのですけれども、実態としては(2)のところで指摘されているように、こういうケースは非常にまれだということだったかと思います。ここだけを読んでしまうと、そういうことがよくあるのかなという印象も与えるところで、どう書くのがいいのかというところ、具体的な提案ができておらず恐縮なのですけれども、少し表現を考えたほうがいいのかなという印象を持っているところであります。
 差し当たりは、以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 ほかにどなたか。では、松浦委員、お願いします。
 
○松浦委員
 今、諸外国の状況についてというところで御意見がありましたので、関連して1点申し上げたいと思います。
 諸外国の状況について、フランス、ドイツ、オランダそれぞれについて、淡々と整理されているのですけれども、結局、V以下で今後の方向性を示していくに当たり、これらの状況がどのように参考にされたのかということを、多少整理していただいたほうがいいのではないかという意見です。
 たとえば、割増賃金がどこの国でも通算して適用されていない。一方で、最長労働時間規制については適用されているというところの背景がどういうところから来ているのか。
 また、健康診断については、先ほども御指摘をいただきましたように、日本のように厳しい規制にそもそもなっていなくて、もちろん、通算ということもなかったということなのですが、これを日本への示唆として受け取る場合には、日本と諸外国で長時間労働の実態とかが異なっているということに留意する必要があるとか、これらの現状を示唆として受け取る場合に、どう受け取ればいいのかということをきっちり整理した上でVにつないでいっていただいたほうがいいという意見です。
 差し当たり、以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 では、荒木委員、お願いします。
 
○荒木委員
 12ページ以下の諸外国の状況について、訪問に行った3国は、いずれも文献上、労働時間を通算することになっているようだということで、その実態を調査に行ったところです。
 欧州諸国の中には、そもそも使用者が違えば、通算はしないという国が半分ぐらいあったような気がいたします。それを書かないと、必ず労働時間を通算するというのが諸外国の状況だという誤ったメッセージになります。
 今回の調査は、通算をするという国を選んで、法律上は、こういうふうに通算することになっているのだけれど、では、それをどう監督しているのですかという調査に行ったところ、いや、監督は事実上なされていないというのが実態だったということでしたので、諸外国の状況については、ここに書いていない情報についても説明した上で、通算するという国についての実態を調査に行ったという位置づけをしていただくのが正確な情報となると思います。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかに、では、石﨑委員、お願いします。
 
○石﨑委員
 そうしましたら、また、別の点になりますけれども、報告書(案)の16ページの現行制度の課題に関する部分で、副業・兼業先の労働時間の把握方法について、労働者からの自己申告で労働時間を把握する場合の課題あるいは使用者間で情報をやりとりする場合の課題としまして、いずれも当日の議論では、副業・兼業が雇用なのか非雇用なのかの判断が難しいという問題があるのではないかという指摘と、結局、非雇用の場合には通算されないということになるとするならば、副業・兼業の非雇用化の問題も生じるのではないかと、そういった指摘もあったように記憶しておりますので、その点についても追記されたらいいのかなと思っているところです。
 また、ほかの点になるのですけれども、18ページの「2.今後の方向性」の「(2)健康管理について」の最後の○のところで、上記は選択肢の例示であるといった後に、その他、労働時間の長さにかかわらず、労働者から副業・兼業を行っている旨の申告があった場合に、この健康確保措置の枠組みの中に組み込むといったことも考えられるという記載がありまして、これは、たしか前回、武林委員のほうから御発言いただいた内容かと思いますけれども、改めて考えてみますと、確かに副業・兼業を行っている場合には、副業・兼業にかかる労働時間だけではなくて、本業から副業に行く移動時間であるとか、あるいは分断して仕事をするということになれば、ちゃんとまとまった休憩時間、休息時間が確保できないというシチュエーションもあるのかなと思っておりまして、そうすると、単純に労働時間の通算だけで健康状態への影響というのもはかり切れない部分もあるのかなというところでありまして、長さにかかわらず、場合によっては健康確保を行っていくという選択肢は、もう少し、その他という形ではなくて、第三の選択肢として強調してもよいのかなと、個人的には思った次第でございます。
 意見は、以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 武林委員、お願いします。
 
○武林委員
 それに関連して、少しだけつけ加えさせていただきます。
 健康管理をどう扱うかということは、ここにも書かれているように、副業・兼業が、自主的に皆さんがやるものだということを前提としても重要であるということは、そのとおりだと思いますが、1つは、15ページの「1.現行制度の課題」のところでありますが「(1)健康管理について」というところで、主に以下の課題が考えられるということで、これを読みますと、特別の健康確保対策はとられていないこと。これは、このとおりだと思いますが、これまでの検討会の中では、他の先生方からも御発言があったと思いますが、そもそもとられていないというと、すぐとれそうにも読めますけれども、今の法制度上であったとしても、とるとしてもかなり限定的であるということが議論されてきたと思いますので、少しそのことに触れていただく、バランスをとっていただくほうが、現行制度上の課題なり問題が見えるのではないかと思います。
 これと関連するのが、今、石﨑委員からもお話のあった点だと思いますが、もう一度、この健康管理、17ページに行っていただきまして、ここに幾つかの例示の前に論点が整理されていると思います。
 この3つ目のところに、また、産業医については、委嘱されている事業者との関係でという文章がございますが、これを読みますと、委嘱関係にない副業・兼業先の労働について直接的に対応することは困難である。これは、このとおりだと思いますが、やはり、ここはそもそも産業医の仕事からしますと、副業・兼業と本業を分けて、どちらがどれだけ寄与しているということが判断できないということは、これまでも発言をさせていただきましたし、議論をしてきたことだと思います。
 単なる契約上、委嘱関係がある、なしという問題ではなくて、そもそも健康上の判断として、原因と結果の判断が難しいということを、ここにきちんと整理をしていただいたほうがいいのではないかと思います。
 と申しますのは、その後出てまいります例示、マル1、マル2というのは、かなり事業者に主体的な責任を持ってやっていただくということになっておりますが、今、挙げた点があることを考えますと、実際に現実の現場では、結局のところ、本業と副業を切り分けて評価ができない以上、非常に重い責務が、当然、労働者を保護するという観点は、そのとおりだと思いますが、技術的には、非常に現場では混乱をするということも考えられます。
 そのことを考えますと、今、石﨑委員から御提案がありましたような、最後のマル2の後のその他のところに例示があります、労働時間の長さにかかわらずという部分については、前回、私も発言をいたしましたけれども、むしろ第三の選択肢としていただくほうが、できることと、できないことを整理した上で、現実的に労働者の方たちがきちんと自己申告をしていただくことによって、適切な健康確保措置につながるという観点では、実効性が非常に高いのではないかと考えます。
 というのは、19ページのところの上限規制のところにも、結局、マル2のところに事業主ごとに上限規制を適用するという場合の例示がございますけれども、この場合も、結局は、健康確保措置を適切に行わなければならないとありますので、やはり、適切に行える健康確保措置が何かという観点で例示を少し多様に挙げておいていただいたほうが、この後の議論では、いろいろな議論をしていただけるのではないかと感じます。
 以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかに、どうぞ。
 
○松浦委員
 まさに、今、御指摘いただいた部分について確認なのですが、18ページのマル2の下の○です。
 考えられる選択肢の例示ということで、その他、労働時間の長さにかかわらず、労働者から副業・兼業を行っている旨の申請があった場合にというくだりについての確認です。
 健康管理については、マル1についても、マル2についても通算した労働時間を把握するということが前提になっていますが、この労働時間の長さにかかわらずということについて御発言をいただいたときには、把握するか、把握しないかということの選択肢も含めた御発言であったのではないかと記憶しております。一方、この文面からは、つまり労働時間の長さにかかわらずということだけでは、把握するか、しないかの選択肢があるということが読み取れないのではないかと思っております。
 後ろの上限規制の19ページについては、マル2に事業主ごとに上限規制を適用するというような選択肢も示されております。ここの長さにかかわらずということについても、把握する、把握しないという双方の選択肢があるということをきっちり書いていただいたほうが、誤解がないのではないかと思いますので、そこは追記いただければという意見です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかに。では、松浦委員、どうぞ。
 
○松浦委員
 御議論になっているカテゴリーとしては同じなのですけれども、上限規制の適用のところで、2つ選択肢を示していただいていて、19ページのマル1のところは、今、実際に企業の中で事例としても出てきているような通算の労働時間を設定して、その範囲の中で副業をやってくださいというようなやり方をイメージされていると思ったのですが、マル2の最後のポツ、20ページのところで「また、実務的には、各企業において、自社と副業・兼業先の労働時間を通算した上限時間を就業規則に盛り込むなどの対応をとることが望ましいと考えられる」という文言で少し混乱してしまいました。これはマル1の話かと思ったのですが、最後のポツの意図を教えていただいてよろしいですか。
 
○岸田監督課長補佐
 ちょっとわかりにくくて恐縮ですけれども、マル1のほうは、今、松浦先生がおっしゃったとおり、それぞれ自社で管理できる範囲に設定して、上限を通算します。端的に言うと、上限規制を通算した上で法規制をかけるというのは維持する。ただ、それがやりやすいように、それぞれの企業で枠と言うのがいいのかわかりませんけれども、時間を設定して、その中で収めるということになっておりまして、基準法上の通算は維持するというのがマル1の考え方でございます。
 マル2のほうにつきましては、事業主ごとで上限規制を適用するということでございますので、こちらは少し考え方を変えて、もう通算しての上限規制の管理は行わないということに、法律上はなるということではございます。通算して法律上の規制はかからないのですけれども、ただ、それをそのままにしておいていいのかという観点から、最後のポツが書いてございまして、例えばの話ですけれども、何らかのガイドラインのようなもので、こういったものが望ましいのだということを、法的な規制はできませんけれども、周知していくというようなやり方として書かせていただいております。
 
○松浦委員
 ありがとうございます。
 まず、今の御発言の中で、マル1については、例えば、A社という企業で副業を認める際に、A社という企業の労働時間はこれだけであるので、最長労働時間も踏まえて、残り労働時間として、副業・兼業できるのはこれだけであると、だから、これだけの範囲の中で副業をやっていただける分には御自由にどうぞと、そういう規定になるのだと思います。
 ですので、例えば、A社とB社の間で調整して規定が設けられるという話ではなくて、あくまでもA社の中で完結する規定として上限が設定され、労働者がその上限の範囲で、労働者の裁量で別の企業B社で副業をすると、そういうイメージだと思っていたのですが、それはそれでよろしいですか。
 
○岸田監督課長補佐
 おっしゃるとおりだと思います。
 基本的には、マル1のポツのところに書いてございますとおり、副業・兼業先の月の労働時間の上限を設定するということなので、自分のところはこれだけなので、副業・兼業先でこれぐらいならいいですよということにするのだと思います。
 それを設定することによって、各社が自分のところだけで管理すればいいということになろうかと思います。
 一方、4ポツのところでございますけれども、それが不変の枠かというと、そうではなくて、もしかしたら、本業と副業の業務状況が変わってくる可能性もございます。本業を減らして副業を多くするというようなことも、労働者の希望として出てくる可能性もございますので、その時間数を調整していく仕組みを設けるかどうかとか、そういったことも引き続き検討していくことが必要だということで書かせていただいているところでございます。
 
○松浦委員
 ありがとうございます。承知しました。
 それで、マル2のほうは、あくまでも原則としては事業主ごとに上限規制を適用するのだけれども、ただ、望ましくは、就業規則などに自主的に、こういう規定が設けられることも考えられるのではないかと、そういう補足的な位置づけだという理解でよろしいですね。

○岸田監督課長補佐
 おっしゃるとおりでございます。
 
○松浦委員
 ありがとうございました。
 
○守島座長
 荒木さん、どうぞ。
 
○荒木委員
 19ページのマル1のところですけれども、今のような制度と理解をしまして、具体的には、本業の企業でも残業を想定しているわけで、サブロク協定を結びます。サブロク協定は、当然、それ以上時間外労働をさせることができない枠を一旦設定することになります。
 実際のサブロク協定もそうですけれども、サブロク協定に違反しますと、労基法違反になりますので、違反とならないように、かなり高いレベルまで、ここまでは時間外労働があり得るというのを設定するわけで、実際の残業の実態とは違うサブロク協定の締結が十分にあり得るし、現にそうなっている。
 ここで設定するのは、サブロク協定で設定した枠とはまた違う枠を設定するのか、そうすると、サブロク協定で可能な時間外労働枠と、マル1で考えられている枠というのは、実務上は相当複雑になって、かつ、それが労働者の自己申告を前提に、そのような新しい枠が機能することになるというあたりは、技術的にも相当困難な問題も含まれているのではないかという印象を受けたのですが、その点は、いかがでしょうか。
 
○岸田監督課長補佐
 サブロク協定は高めにというようなお話もございましたが、自分のところで働かせたいときに、働かせられなくなってしまうと困るということで、少し多めに自分のところの労働時間を確保してしまうという企業が出る可能性もあろうかと思います。
 そういうこともございますので、マル1の3ポツ目のところですけれども「一方で」のところですが、自社における労働時間を長く確保しようとするため、副業・兼業の上限時間を限りなく短く設定する可能性があり、無限定に設定することを認めてよいかは検討が必要ということで、ここのところで少し論点の芽出しをさせていただいているところではございます。
 また、サブロク協定と違う労働時間数を設定するかについては、おっしゃるとおり、サブロク協定は、全体で結ぶものでございますので、副業をやりたいという個人の方の要望に従って、その枠とは違うところを設定するということは、大いにあり得るところかと思いますけれども、少し技術的に困難であるという御指摘もございますので、引き続き検討していく必要がある論点であると思っております。
 
○守島座長
 どうぞ。
 
○荒木委員
 引き続いて、19ページのマル2の一番下のところで、事業主間で同一の労働者を雇用していることについて明確な認識がある場合等については、法の潜脱とならないよう通算することが適切だというくだりがありまして、明確な認識があるというのは、どういうことかというのが、少し気になったところです。
 副業として働いていますということを自己申告することがあり得るということですが、明確な認識があるというのが、そのことと同じとすると、マル2は通算しないといいながら、通算することになってしまうのではないかという疑問がありますので、これは、事実上、使用者が違うことになっているけれども、実際上は使用者同士が通謀して、いわば法の潜脱となるような場合であればわかる話ですけれども、単に明確な認識があるということでいくと、最初のマル2の出発点からすると、少し混乱を招くのではないかという気がいたしました。
 
○守島座長
 石﨑先生、どうぞ。
 
○石﨑委員
 同じかかわる点で、20ページの最後のポツのところで、上限規制を外す場合であったとしても、ガイドラインなどでは、そういった枠を設定することが望ましいというお話だったかと思うのですけれども、そうしましたら、報告書としては、望ましいと言い切ってしまっていいのかどうかというところを少し懸念しておりまして、要するに、全く外すという考え方も別途あり得るとすれば、そういうことが望ましいとのガイドライン等を策定することは考えられるとか、その両選択肢があるような書きぶりのほうが、複数選択肢を示すという観点からはよいのかなと思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。
 
○武林委員
 今の上限規制の話を聞きながら、健康管理のことをもう少し確認、教えていただきたいこともあるのですけれども、今、話を伺っていると、マル1あるいはマル2の方法をとるとしても、結果として健康確保措置については通算するということが、ここでも例示としては挙がっていると思いますが、これで17ページ、18ページに戻ったときに、最初に教えていただきたいのは、マル1の公法上の責務として書かれているものと、マル2に書かれていることの違いは何を意図しているのかというのが、少しよく理解できないところがあるのですが、これは、どういう違いを意味していると理解したらいいのでしょうか。
 
○岸田監督課長補佐
 マル1のほうにつきましては、配慮しなければならないということで、配慮義務のようなものを想定しておりますので、事業者のほうで何らかの行動をとっていただくということで、例えば、今、派遣法ですとか、パート法ですとか、そういったものに類似の規定がございますけれども、何らかの行動をとる必要があるようなものと考えております。全く何もしていないときには、行政指導の対象となるということで、緩やかな義務というような部分があろうかと思います。
 一方、マル2につきましては、少し長時間労働になっている方への措置でございますので、しっかりこういったことをやってもらわなければいけないということで、マル1よりは少し強めの措置ということになろうかと思います。
 
○武林委員
 ありがとうございます。
 この例示が何となく、先ほどのマル3と言っていたものとのバランスが、ほかと比べると、ここだけ非常にマル1とマル2のニュアンスが、かなり似ているところもありますので、そこのバランスとして、ほかのところは、大体2つマル1とマル2が、自己申告を前提にしてというようなことと、事業主ごとにというような書き方になっているのに対して、ここだけが非常に、事業主への責務を前提にしてマル1、マル2が書かれているというところが、違和感があったので伺ったということでありまして、本来は、マル1とマル2は一緒でもいいのかなという気もしましたが、今伺ったことでよくわかりました。
 それであったとしても、結局、起こってくる健康上の問題というのは、必ずしも長時間の問題だけではないということ。一般健康診断等でも挙がってくるということも考えますと、そこのところが少し議論が長時間のところに偏り過ぎていると、今後、議論をしていく中では、もう少し幅広く議論ができることが必要なのではないかと思います。
 それから、先ほど松浦委員からも御指摘があった、書きぶりとして時間を通算しないで自己申告ということを活用して、事業主側が必ずしも通算を前提としないでとれるということが、最後の18ページの○のところに書いてございますので、それを明記していただいて、違いがもう少し今後の議論の中でよくわかるような形で整理をしていただくほうが、今、伺っていて必要かなと思いました。
 以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかに。荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 今の御指摘とも関係するところで、事業主単位で考える場合の19ページのマル2の3ポツ目「このことから(2)で述べた健康確保措置を適切に行わないと、労働者の保護が図られなくなるおそれがあることに留意が必要である」というときに、この(2)が、17ページの健康管理だと思うのですが、そうすると、マル1とマル2に加えて、先ほど複数の委員から御指摘があったように「上記は、あくまで、考えられる選択肢の例示である。その他」と、この「その他」は、やはりマル3としてしっかりと位置づけていただくことが全体としても平仄がとれることになるかなと思いました。
 
○守島座長
 ちょっと今の関連した点について事務局にお伺いしたいのですけれども、上限規制という考え方をどういうふうに、この報告書の中では捉えていくというか、政策的な意味づけをしているのかというのは、ちょっと私は何となく曖昧になっているような気がしてきて、ことしの4月から働き方改革のいろんなお世話になったものも含めて、やはり、総量としての労働時間を下げていこう、もくしは短くしていって労働者がいろんな意味で、ワーク・ライフ・バランスだとか、そういうものが確保できるようにしていこうという話だと思うのです。
 そういう立場を、この中でも貫いていくのか、それとも、副業ということに関しては、特殊ケースとして扱って、上限規制というのは、ある意味では、もう少しフリーな領域として捉えているのかというのは、特に19ページのマル2のところが、多分、厚労省の一番の悩みが出ているところかなと思って、副業・兼業の場合には、自由でやっていいよという、そういうことを言いつつ、でも、やはり上限規制をやらなければいけないというので、最後の、先ほど松浦委員が指摘された、とることが望ましいという3ポツ目が出てくる。
 そこのところが、逆に曖昧性が大きくなっているような気がして、方法論として、どういう方法論を使っていくのかという話と、それからコンセプト、原則として上限規制は、これからも働き方改革の中でかけていくべきなのかという話と、ちょっと分けてクリアーに書かれたほうがいいのではないかという感じが少ししてきました。
 石﨑委員、どうぞ。
 
○石﨑委員
 今、御発言いただいた点に関連してなのですけれども、やはり、非常に難しいなと思いますのが、副業・兼業というものは、ワークであると同時に、場合によってはライフでもあり得るという側面があって、そのどちらを重視するかによって、今、御指摘されたような上限規制の捉え方とか、そういったものも変わってくるのかなと思ったところでございます。
 ですので、その両面性があるということの難しさという点は、どこかで御指摘をいただいてもいいのかもしれないなと思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。
 
○荒木委員
 座長から上限規制についての発言がありまして、実は上限規制というときに、先般の労働基準法改正で、時間外労働のサブロク協定を結んだ場合の上限規制ができましたので、それが念頭に出てきがちなのですけれども、もともとは労基法32条で週40時間、1日8時間という時間外以前の労働時間自体の上限規制がございます。
 これがサブロク協定を結んだ場合には、そこまで延長できるのですけれども、その延長の限度を昨年法改正で労基法上設定をしたということですけれども、そうしますと、18ページからの上限規制も、そもそもサブロク協定を結んでいなければ、週40時間、1日8時間の枠というのが上限になるわけです。
 それが、サブロク協定を結んだときには、上限が一旦解除され、設定されたところまでの時間外労働はできる。その上限について、複数月平均で80時間とか、単月で100時間とか、そういう規制が入ったというので、その後の議論は、何となくサブロク協定を結んだ上限の話を念頭に展開されているようです。しかし、そもそも副業・兼業を想定していない状況の後に、ある労働者が副業をしたいといったときに、その人が40時間を超えるときに、誰がこのサブロク協定を結ぶのか等々の問題も、実は根本的問題としてありますので、そのことも、この上限規制の中では考えておく必要があるのかなと思いました。
 
○守島座長
 ほかにどなたか。
 武林委員にちょっとお伺いをしたいのですが、18ページの「労働時間の長さにかかわらず」というパラグラフの中に出てくる話なのですけれども、そうすると、副業・兼業をしたということが、自己申告で明らかになった場合には、何かフラグみたいのを立てて、その人たちに対して、何らかの新たなというか、ある特定の健康確保措置をやっていくと、そんなイメージになりますか。
 
○武林委員
 ここは、そういうイメージであります。御本人から申告があった場合には、というのは、結局、今までの議論の中でも、時間を通算することの精度でありますとか、いろんなことの難しさがありましたので、副業・兼業をする人が自由になったとは言っても、それほど多くないことを考えますと、最初からフラグを立てて、その方たちには産業医あるいは保健師への相談ということのアクセスを最初から推奨してということの仕組みに入れてしまったほうが、あるいは各企業長時間については、全従業員を対象にやっていますから、そのスキームに載せることで、比較的整合性があったまま、しかも自主性を保てると、そういう配意等でございます。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ。
 
○荒木委員
 今の点に関連して、現行の健康確保措置の枠組みの中に組み込むというときに、ついつい時間外労働の上限、だから、80時間を超えたら面接をしなければいけないとか、その話ばかりを想定しがちなのですけれども、実際の産業医の皆さんが行っていることは、時間だけの話ではなくて、さまざまなストレスの問題もある。つまり、副業・兼業をしているということが、本人が言ってきた場合に、何時間やっているかという把握は、そういう問題の一部でしかなくて、そのほかにどういう働き方をしているかとか、全体的に健康を害するような状況になっていないかということを、恐らくはチェックされているのだろうと思います。
 具体的に、どういうことで健康チェックをするのかということを、もう少し豊富化して議論していただくと、時間数ばかりに目がいった議論が、一面的だということが伝わるのではないかという気がいたしました。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ。
 
○石﨑委員
 そういった意味で、この議論の流れで、長さにかかわらず、健康を確保するというのは、3つ目の選択肢としてどうかということを、私も申し上げたのですが、先ほど、武林委員から御質問のあったマル1、マル2というのは、ある意味、ソフトかハードかという差はあっても、内容は似ているという面があることからすると、1、2、3と併記するのではなくて、例えば、1と2で分けて、1-1、1-2として分けるというような整理のあり方もあるのかなと思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございました。どうぞ。
 
○武林委員
 先ほど、荒木先生から追加をいただいた点、今後、ここではこれ以上の議論はないと思いますが、実際に現行の健康確保措置の枠組みということを1つ考えても、やはり、今まで最初のほうに御紹介のあった、さまざまな場所でのいろんな副業・兼業を考えると、50人未満のような、必ずしも産業保健サービスの行き届いていないところも、この中には入ってきますので、今後の実効的に仕組みとしてどうするかという観点の中では、そういう労働安全衛生サービスがどうなっているかということ、それをどういうふうに支援できるかということをセットで議論しませんと、まさに長時間だけではなくて、さらに企業の規模によってもかなり変わってきますので、そこも視野に入れてぜひ、この中に、それを書いておくのかどうかということは方針にもよると思いますけれども、非常に大事な点であろうと思います。
 
○守島座長
 どうぞ。
 
○松浦委員
 今まさに御議論いただいているところとも関係がありつつ、ちょっと別の観点になるのですけれども、22ページの「(6)その他」のところに、2つ目の〇ですが「また、副業・兼業は雇用の場合だけでなく、非雇用の場合もあるが、本業も副業・兼業も雇用の場合は、指揮命令下に入って」云々というくだりがございます。
 ここの文言の中には、結局、雇用の場合のことしか書いていなくて、雇用の場合は、指揮命令下に入って残業せざるを得ないので保護する必要性があると後段に書いてあるのですが「非雇用の場合もあるが」ということについては、その必要性について言及がされていない。
 ですので、この文言の修正ということだけで言えば、まず「副業・兼業は雇用の場合だけでなく、非雇用の場合もあるが」と、ここの文については消してもいいのではないかと思いました。
 一方で、もう少し大きな問題として、非雇用については、この検討会の中でそこまで踏み込んだ議論ができなかった面もあるかと思いますが、今まで御議論になっている18ページのフラグを立てる、要は副業・兼業をしているという方については、労働時間を把握するかどうかも含めて、把握しないという選択肢も含めて通算している労働時間にかかわらず、一定の健康確保措置の枠組みの中に組み込むという場合に、この副業・兼業をしているということについて、副業が非雇用の場合ということをどうするのかということは、1つの検討ポイントになると思います。そこは、結論がこの場で出ないとは思うのですけれども、非雇用をどうするかというのは検討課題だということについては言及しておいたほうがいいのではないかということは、今、御議論を聞いて思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございます。どうぞ。
 
○荒木委員
 今の22ページの「(6)その他」の2つ目の〇、私は、これは残しておいてもいいかなという気がいたしました。
 というのは、副業・兼業には雇用の場合もあるし非雇用の場合もある。それが雇用の場合には、労働法制の適用があるということに当然なると。そうなのだけれども、そのときに適用する労働法制が余りに硬直的であると、むしろ労働者自身が副業・兼業をしたいと思っても、使用者のほうでいろんな規制がかかってくるから、あなたは副業・兼業として働きたいといっても雇うことはやめておきますと、そういうことになりかねない。
 そのままでは、雇用ではなくて、非雇用という形で働くということに、むしろ誘導しかねないという問題がある。もちろん客観的に労働かどうかを見るのですけれども、しかし、非雇用ということで、いろんな指揮命令の一部を緩和化するということがあって、客観的にも非雇用と評価される役務提供をする、ということは十分あり得るところです。
 そういう状態に誘導することが、働く人にとって望ましいかというと、かえって問題となることもあるので、副業・兼業は雇用であっても、そのときの規制の内容は、現実を見ながら妥当なものにしていく必要があるのではないかという趣旨だとすると、労働法制で保護する必要性もあるというのは、言外に非雇用の場合には、そういうことにはならないということまで言っているとすると、両方について書いてあると読むこともできるかなと思った次第でした。
 
○守島座長
 ありがとうございました。どうぞ。
 
○松浦委員
 今、荒木委員のおっしゃったことを伺って、なるほどと思ったのですが、一番後ろの非雇用化が懸念されるというところも含めて、非雇用の場合があるということを言及しておいたほうがいいというご指摘、おっしゃるとおりだと思います。
 ですので、修文の案としては、この「あるが」ではなくて「ある」で一回切ったらいいのではないかと。雇用の場合だけでなく、非雇用の場合もあると、そこで一回切っておくと、一番後ろの懸念される事態についてもつながっていくので、ここで一回切っていただくと、わかりやすいかもしれないということです。
 ありがとうございます。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。
 
○松浦委員
 関係のないところで、形式的な話なのですけれども、よろしいですか。
 
○守島座長
 どうぞ。
 
○松浦委員
 3ページのところで、2つ気になったところがございまして、御相談です。
 まず、3ページの「I.はじめに」の3行目のところなのですが「事業主は、企業統治の観点から、自社での労働に専念させたいという意向があった」という部分です。企業統治という言葉の意味するところが余りにも大きくて違和感があるので、脚注のところに入れていただいている「労務提供上の支障、機密保持、競業避止等」を懸念点をそのまま上に持ってこられたほうが、誤解がないのではないかという点が1つ。
 もう一つは「1.副業・兼業の現状」の「(1)働き手側」というところの○の最初のポツに「副業を希望している雇用者数は増加傾向であり、実際に本業も副業も雇用者として働いている者についても増加傾向である」ということが書いてあるのですが、副業をしている者自体がそもそも何人、何割ぐらいで、なおかつどの程度増加傾向なのかという点は、大切な基本情報ですので、ある程度数字を入れて書いていただいたほうがいいと思います。これは要望です。
 以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 表現上の問題で、企業統治については全く同感で表現を変えられたほうがいいかなと思いました。
 6ページのIIの「1.労働時間法制の変遷」の2つ目の〇ですけれども、いろんな変形制があるのですが、なぜか労基法32条の5の1週単位の非定型的変形制の言及がないのです。むしろ非定型的変形制というのは、あらかじめ就業規則などで変形を定めておかないから、余計に通算したときには、難しくなってくる場合ですので、むしろ労規法32条の5の1週単位の非定型的変形制も1年単位の変形制の後に入れておかれたほうが適切かと思いました。
 
○守島座長
 ほかに。
 法律家の方に、どちらでもいいのですが、ちょっとお伺いしたいのですけれども、本業で働いていない時間に、時間というのは、極端に言えば、何をやってもいいよと、自分の個人の自由なのだと、その議論は「I.はじめに」など何かに入っていなくてもいいのか、多分、そこは1つの、いろんなことを決めていく中の原則的な要素のように思うのですけれども、今回は、余りそういう話は全然出てきていないのですけれども、その辺はどうですか。
 
○荒木委員
 それは、恐らく出発点としてあると思います。
 例えば、6ページの注7の労働契約法を制定する前の研究会報告書では、まさにそのようなことから説き起こしておりまして、通算をするということについての疑問も提起したところであります。
 それから、諸外国の調査におきましても、基本的に所定労働時間外にどういう活動を行うかというのは、本人の自由であるはずである。それを制限できる場合というのは、客観的な理由がある場合で、競業に従事するとか、あるいは、それをやると、本業に支障が生ずるとか、そういう客観的な理由がある場合にのみ、副業・兼業を規制できると、そういうことについては、かなりユニバーサルに確認できたと思っておりますので、それは1つどこかで確認的に述べておくのがよいかと思いました。
 
○石﨑委員
 私も同意見で、諸外国もそうですし、我が国もそうですが、労働者は職業選択の自由がございますので、そういった点から確認をしていただくのがいいのかなと思っています。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ。
 
○武林委員
 今の流れで少し追記をするのであれば、7ページから8ページのところに、現行の健康管理に関する法的なことが書いてあると思いますが、もちろん時間のことが重要だということに基づいて書かれていることはよく理解できますが、先ほどありましたように、例えば、ストレスチェックであると、ここにある常時使用するかどうかも大事ですが、企業の規模によって、事業場の規模によって、これがあるか、ないかということも大事だと思います。
 逆に、長時間ということであれば、そこが規模によらないというようなことも、やはり必要な情報として、ここに整理をしていただいておいたほうが、この後、実効的なという議論になったときには、論点になるかと思いますので、可能であれば、少しそこを御検討いただき、追記をいただくことも必要ではないかと思います。
 
○守島座長
 ありがとうございます。ほかに何か。
 今のに関連して、もしかしたら、もう一つつけ加えておいたほうがいいのは、働き方実行計画の中で、1つは、もちろん副業・兼業をイノベーションとか、生産性を高めるという観点からやっていかなければいけないという話も1つなのですけれども、同時に、労働時間の総量規制をやることで、働く人たちの健康であるとか、ワーク・ライフ・バランスをより推進していこうという動きも非常に重要な働き方改革の一部だと思っていて、それが今回の議論の中に深く影響を与えているように思いますので、そういう点も、ぜひメンションしていただけるといいかなという感じはしました。
 どうぞ。
 
○石﨑委員
 今の点と関連してなのですけれども、御指摘いただいたように、4ページ目に働き方改革実行計画が引用されているかと思いますが、そちらにある記載を見ますと、まさにオープンイノベーションとかということに加えて、第2の人生の準備ということも挙がっておりまして、たしか、背景には、やはり人生100年時代という言葉に代表されるように、人生が長期化しているという中で、できるだけ多様な職業キャリアのあり方というのが望ましいという、そういう背景があるかと思うので、その点も可能であれば、言及していただければと思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ。
 
○荒木委員
 9ページの「III.企業、労使団体へのヒアリング結果」として、2段目の2行目「副業・兼業を認める企業の中には、副業・兼業を認める理由として、大きく2つの考え方が見られた」ということで、マル1とマル2、この2つの考え方は、どういう関係で2つに整理されているのかが、ちょっと伝わりにくいかなと思ったのですけれども、これは、どういう趣旨でしょうか。
 
○岸田監督課長補佐
 マル1のほうは、どちらかといえば、企業が積極的に企業のためにやるという観点かと思います。
 もう一つは、労働者の要望があるので、労働者の確保のことも見据えて、そのニーズに応えるという観点から、積極的にではないけれども、認めているというようなことがあろうかと思います。
 その側面がありつつ、どちらかというと、マル1のほうは、二極化の話でいえば、高年収の方々が多いような部分もあります。
 マル2については、例えば、パートのかけ持ちだったり、そういった方も多いような、必ずしもきっぱり分かれるものではないと思いますけれども、そういったようなイメージで書いているところでございます。

○荒木委員
 そうすると、大きく2つの考え方というは、かなり見方が違うというか、単にこういうことがあったというふうにしておられたら、まだいいのですけれども、2つの考え方は、どういう観点から2つの考え方を分けて論じられているのかなというのが、少しどうかなと思った点でした。
 10ページの使用者団体のヒアリングの中の最後のあたりのところは、企業にとっても、本人にとっても、むしろ、新しい転身の機会として活用できるのではないかという意見もあったところですけれども、多様な意見があったと思いますので、2つの考え方というのは、少し整理のし過ぎといいますか、整理するとすれば、どういう観点から、企業のニーズと労働者のニーズということで、マル1、マル2になっているかもしれませんけれども、人材確保に役立てたいとマル2が掲げていると、これは使用者のニーズを付言されているようですので、少し書き方を工夫されてもいいのかなと思いました。
 
○守島座長
 今の点は、まとめないで、もともとのヒアリングから言葉を拾って書かれて、それは結果として2つに、幾つかにまとまっていても構わないのですけれども、これだと、今、荒木先生がおっしゃったように、ちょっとまとめ過ぎのような感じが、私もします。
 あと、非常に細かい点なのですけれども、10ページの割賃の算定に当たっては、日々管理していくことは極めて困難であるし、自己申告の場合にはさらに把握が難しいというのは、どういう意味で、さらに正確性を保つのが難しいとか、厳密性を追求するのが難しいというのであれば、ある程度理解はできるのですけれども、把握が難しいというのは、どういう意味で言われているのですか。
 
○岸田監督課長補佐
 ここは、使用者団体のヒアリングなので、少しそのときの概要に戻って確認をさせていただきたいと思いますけれども、管理することも難しいし、自己申告でお願いするとなると、企業側だけの努力では何とも難しいというところが念頭にあるのだろうと理解しておりますが、少し確認をさせていただければと思います。
 
○守島座長
 ほかに、よろしいですかね。大体今回は。
 次回もありますので、今回については、一応、終わったということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、ありがとうございました。
 今、いただいた御意見を踏まえて、また、事務局において修正をしていただきたいと思います。
 修正案について、次回にまた議論をさせていただければと思います。
 それでは、定刻より少し早いのですけれども、本日の議論は、ここまでにさせていただきたいと思います。
 次回の日程については、事務局からお願いいたします。
 
○岸田監督課長補佐
 次回の日程につきましては、決まり次第、また、場所と含めて先生方に御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 これにて、第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を終了いたしたいと思います。
 本日は、お忙しい中、お集まりいただき、大変ありがとうございました。