第2回 生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会 議事録

日時

令和元年6月21日(金) 15:00~16:30

場所

TKP虎ノ門駅前カンファレンスセンター ルーム9A
    (東京都港区虎ノ門1-4-3)

出席者(五十音順)

 

議題

・最低限度の生活に関する検討
・その他

議事

(議事録)

○駒村委員 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第2回「生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」を開催いたします。
 議事に入る前に、本日の委員の出席状況と本日の資料の確認を事務局よりお願いいたします。
○矢田貝社会・援護局保護課長 阿部委員が遅れていらっしゃいますけれども、あと5分ぐらいでいらっしゃるということですので、始めさせていただきます。その他の委員は御出席でございます。
 また、資料でございますけれども、資料1が「最低限度の生活に関する検討」、資料2が「生活保護世帯における生活の質の面からみた消費支出や生活実態等の分析の概要」、資料3として「諸外国における公的扶助制度の概要」、参考資料1が前回の資料2であります年次計画、参考資料2が前回の参考資料1でございますこれまでの主な指摘という資料でございますので、もし御不足等ございましたら、お申しつけいただければと思います。
 以上でございます。
○駒村委員 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 まず、資料1「最低限度の生活に関する検討」について、事務局から説明をお願いします。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 それでは、御説明申し上げます。
 まず、参考資料1をご覧いただければと思います。タブレットですと05になります。本日は、この資料の2ページ目の赤囲みをした第2回の最低限度の生活に関する検討マル1、諸外国研究マル1になります。
 また、その下の2018年度の調査研究事業というところを赤囲みしておりますけれども、ここの3つのポツ、「生活保護受給世帯の生活の質の面から見た消費支出の分析による家計内容の把握」、「等価所得別に見た社会的必需項目の不足に関する指標等における一般世帯と生活保護受給世帯との比較分析」、こちらの2点につきまして、後ほど資料2で概要を御説明します。それから、3ポツ目の「諸外国の公的扶助制度の現状把握」につきまして、資料3で御説明申し上げます。
 それではお戻りいただきまして、資料1で「最低限度の生活に関する検討」ということでございます。タブレットですと02でございます。
 まず、表紙の次の1ページ目、最低限度の生活に関する検討でございます。御案内のとおり、現在、生活保護において保障すべき最低生活の水準につきましては、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものということで設定しているところでございます。
 このうち、生活扶助基準の改定につきましては、昭和59年以降、一般国民の消費実態との均衡を図る「水準均衡方式」の考え方を採るとともに、平成16年以降は、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか定期的に検証を行っているところでございます。
 直近の平成29年検証におきましては、モデル世帯(夫婦子一人世帯)につきまして、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準とがおおむね均衡しているということが確認されたわけでございますが、報告書におきましては、1つ目のポツですが、一般低所得世帯との消費の均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることからも、これ以上下回ってはならないという水準の設定について考える必要があるという御指摘。それから、2つ目のポツですが、最低限度の生活を送るために必要な水準とは何か、本質的な議論を行った上で、単に消費の実態に合わせるとの考え方によらず、理論的根拠に基づいた複雑ではない検証手法を開発することが求められるという御指摘があったところでございます。
 これらの指摘を踏まえて、本検討会を開催しているところでございますが、まず、生活保護法の理念に照らして、今日における最低限度の生活を送るために必要な水準というものについて、改めて考える必要があるのではないかということでございます。
 参考として、もう御案内のとおりかと思いますが、法3条におきましては、最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないということを規定しており、法8条2項では、前項の基準は、要保護者の年齢別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならないということが規定されているところでございます。
 続きまして、2ページ目でございますが、貧困等の概念ということで改めて事務局においてまとめた資料でございます。
 絶対的貧困に関する概念、相対的貧困に関する概念、その他と分けているところでございます。一番上の絶対的貧困に関する概念としましては、ラウントリーの一次貧困・二次貧困という考え方がございます。このうち、いわゆる絶対的な水準に関するものとしましては、一次貧困ということでございますが、一次貧困の定義につきましては、その収入が、単なる肉体上の健康だけを保持するのに必要な最小限度にも足りない家庭を指すということでございまして、この必要な最小限度というものの具体につきましては、後段ですが、栄養科学に基づいたカロリー、たんぱく質などを摂取できる献立を価格計算して食費を算出し、これに家賃と家計雑費を加えたものということで、限定されたものの中で必要最小限度というものが構成されていたということでございます。
 その後、相対的貧困に関する概念というものが出てまいりまして、2つ目の○ですが、タウンゼントの相対的剥奪というものでございます。こちらは、ある社会における標準的な生活様式からの剥奪の度合いにつきまして、食事の内容、耐久消費財の保有、社会関係や活動などの剥奪指標からこれを計測して、この度合いが著しく高まる所得水準、これを貧困線ということで定義づけたものでございます。
 相対的剥奪の概念としましては、人々が社会で通常手に入れることのできる栄養、衣服、住宅、居住設備、就労、環境面や地理的な条件についての物的な標準に事欠いていたり、一般に経験されているか享受されている雇用、職業、教育、レクリエーション、家族での活動、社会活動や社会関係に参加できない、ないしはアクセスできない状態を総称して、相対的剥奪ということで考えられたというものでございます。
 もう一つ、相対ということで申しますと、OECD等の相対的貧困というものがあります。こちらにつきましては、単純に世帯所得を等価所得に調整した上で、その中位数の一定割合、これは50%の場合もあるし、60%、40%という場合もございますが、こちらを貧困線と考える概念があるところでございます。
 最後にその他でございますが、近年における考え方として2つ御紹介いたしますが、ソーシャル・エクスクルージョン、社会的排除ということでございます。こちらにつきましては、現代社会で普通に行われている社会関係から特定の人々が排除されている状態、こちらに焦点を当てた概念ということでございます。
 もう一つがセンのアプローチということで、潜在能力アプローチと呼ばれるものでございますが、財を用いて何かをなし遂げる能力を潜在能力とし、この潜在能力の欠如を貧困と定義づけるというものでございます。潜在能力は「機能」の集合から成るということでございまして、※印に機能の説明を書いてございますが、栄養状態が適切か、健康であるか、といった基本的なものから自尊心を保てるか、社会生活に参加しているかまで、色々な機能があるということでございまして、この機能の組み合わせが潜在能力だと言われているところでございます。
 こちらにつきましては、生活の機能、今申しました機能を実現する所得や財・サービスは、時代や社会によって異なるという点で相対的な考え方でございますが、機能自体が満たされているかどうかという点におきましては、時代や社会に関係なく絶対的な基準であるという考え方でございます。
 以上が貧困等の概念の御紹介でございました。
 次に、3ページ目につきましては、生活扶助基準の改定方式及び検証方法等の整理ということで、こちらも事務局においてまとめたものでございます。こちらの資料としましては、縦軸に、絶対的基準、相対的基準、その他としており、横軸に、左から毎年度の改定方式、真ん中が定期的検証の手法、右側がこれまでの基準部会において委員の方々から報告のありました検証方法ということでまとめているものでございます。
 一番左の毎年度の改定方式につきましては、第1回検討会でも御説明申し上げたところでございますが、絶対的基準としましては、昭和23~35年のマーケットバスケット方式と言われるもの、いわゆる積み上げ方式というものでございます。
 その後、エンゲル方式ということで、これは食費から逆算して生活費全体を計算するといった方式です。こちらのほうは39年までということでございます。
 昭和40年から格差縮小方式ということで、ここからは積み上げ方式ではなくて相対的基準ということで、一定の伸び率を乗じることで基準額を設定してきたということでございます。格差縮小方式につきましては昭和58年までですが、こちらは一般国民の消費水準の伸び以上に基準を引き上げることによって格差を縮小させるという方式でございます。現在採用されております昭和59年からの水準均衡方式につきましては、当時の基準が一般国民の消費実態と均衡したことから、それを維持するという考え方によるものでございます。
 真ん中は近年における定期的検証の手法ということでまとめております。冒頭で御説明したとおり、一般国民の生活水準との関係において捉えられる相対的なものということを基本的な考え方として、定期的検証を行っているということでございます。
 その下は、モデル世帯の水準検証の方法ということで、ごく簡単にまとめたものでございます。まず、水準均衡方式に至る直前の昭和58年検証におきましては、いわゆる変曲点分析という検証を行いまして、当時の基準が一般国民の消費水準と関係上均衡しているという結論を得たところでございます。
 その後、少し時間があきまして、平成15~16年検証ですが、これも家計調査を用いて分析したところです。こちらにつきましては、食費や教養娯楽費等の減少に着目しまして、第3~5・五十分位と均衡することを確認したところでございます。
 ※印ですが、この検討の過程におきまして、別途社会生活に関する調査の結果から作成しました社会生活指標と実収入及び消費の分析によって変曲点を算出する試みも行ったところですが、明確に見出すことができなかったということで、こちらを根拠としたものではなかったところでございます。先ほどの相対的剥奪の概念を踏まえたような検証を一応ここで行っているということでございます。
 その次に、平成19年検証でございますが、こちらは全国消費実態調査による検証ということでございまして、年収第1・十分位の消費水準に着目したということでございます。この時には、併せて高齢単身世帯の水準検証も行ったところでございます。
 その後、平成24年検証につきましては、いわゆる基準体系の3要素に着目した検証のみを行ったところでございます。
 直近の平成29年検証におきましては、年収階級別の変曲点分析と消費支出階級別の家計の消費構造、こちらの2つの分析を行いまして、いわば質と量の両面から検証した結果、年収階級第1・十分位の消費水準に着目することで比較検討したということでございます。あわせて、高齢夫婦世帯の水準検証も行ったところでございます。
 ※印につきましては、この検証の過程におきまして、いわゆる黒字世帯の割合の分析等も行ったということでございますが、高齢世帯の貯蓄の取り扱いに課題があるということで、参照するには至らなかったという経緯がございます。
 また、先行研究でありますMIS手法を用いて試行的に生活扶助相当額を算出したところ、検証結果よりも上回る結果となったということ、そういった経緯もあるところでございます。
 一番右でございますが、基準部会の先生方より御報告のありました最低生活水準の検証手法をごく簡単に書いているものでございます。
 一番上がMIS手法でございますが、こちらにつきましては、グループでお話し合いを行って合意形成をした上で、何が必要かというものを積み上げるような考え方でございます。
 その下がマーケットバスケット方式でございますが、こちらにつきましては、持ち物財調査等を踏まえて行ったものになっております。
 その下が家計実態消費アプローチということで、具体的には消費水準の抵抗点、可処分所得と消費水準の赤字黒字分岐点等に着目して算出したという内容になっております。
 それから、主観的最低生活費でございますが、こちらにつきましては、MISと同様ですけれども、一般市民が合意できる最低生活費というものを模索するためにインターネット調査による測定を行ったということで、切り詰めるだけ切り詰めて最低限どれだけ必要か、慎ましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活を送るためにいくら必要かという2種類の調査を行ったというものでございます。
 次に4ページ目です。以上の現状を踏まえての論点でございますが、検討課題1として、最低限度の生活を送るために必要な水準ということでございます。
 1つ目の○でございますが、今まで御紹介しました貧困等の概念、それから、参考資料にもつけておりますが、これまでの関係審議会等における検証・検討の過程、報告等々、その結果を踏まえて、今日における最低限度の生活を送るために必要な水準をどう考えるかということでございます。
 2つ目の○でございますが、それを検討するに当たり、かつての審議会等において言及されておりますが、必要な栄養量を確保すれば十分というものではなく、社会的経費についても必要最低限の水準が確保されるべきであるという考え方を基本として据えることについて、改めてどう考えるかということでございます。
 上記の論点と関連して、3つ目の○につきましては、部会報告にもありました、これ以上下回ってはならない水準ということにつきまして、価値観が多様化した今日の状況を踏まえて、どう考えるかということでございます。
 4つ目の○につきましては、どのような人が貧困であるかを測定するために用いられてきた貧困等の概念について、最低生活費を実際に算定するに当たってどう考慮すべきかということでございます。特に、所得や消費による金銭的な貧困指標の問題点を補うとされますいわゆる相対的剥奪、社会的排除等の概念について、どう考えるかということでございます。
 以上が検討課題1に関する論点でございます。
 次に、検討課題2に関する論点でございますが、検討課題1を前提としまして、それを検証・検討するための手法についてというものでございます。
 1つ目の○につきましては、具体的な検証・検討を行うに当たり、これまでの検証手法との継続性も踏まえた上で、どのような手法が考えられるかという点でございます。
 2つ目の○につきましては、先ほど御紹介しました基準部会において報告のありましたMIS手法による最低生活費、マーケットバスケット方式による試算、家計実態消費アプローチ、主観的最低生活費等について、今日における最低限度の生活を送るために必要な最低生活費の算出方式として、どう考えるかというところでございます。
 3つ目の○につきましては、それぞれの検証・検討手法について、どのようなデータが必要となるかということでございます。
 4つ目の○につきましては、この後御紹介いたしますが、2018年度に実施した調査研究の成果も踏まえて検討してみてはどうかということでございます。具体の内容につきましては、また後ほど御紹介いたしたいと思っております。
 6ページ目、7ページ目につきましては、第1回の検討会におきましても、これらの検討課題に関連する御意見がありましたので、こちらを事務局において簡潔にまとめたものでございます。
 簡単ではございますが、以上でございます。
○駒村委員 ありがとうございました。
 それでは、今の資料1に基づいての議論を最初に始めたいと思います。
 検討会でありますので、まず問題意識を共有することと、それから前回までの議論を確認していくということでありますので、私も今日、座長でございますけれども、これから自由に意見を言わせていただきたいと思いますが、まずは皆さんのほうから気がついた点について自由に御意見いただきたいと思います。どこからでもいいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 前回からの話で問題意識のところが1ページ目にあって、最終的に一番心配なのは、やはり一番の問題意識からいくと、前回の検討課題1の4ページですね。これ以上下回ってはいけない水準について、価値観が多様化した今日においてどう考えていくのかということ、これは一番大事な悩ましい点であると。
 そして、1ページに書いてあるように、生活保護の水準というのは消費水準との比較において相対的に決まっていく。それから、資料の7ページ、現行の水準均衡方式においては、定期的な水準検証がセットになっているものであって、毎年度の改定方式と定期的な水準の検証は別のレベルの議論であると。要するに、水準を確認するということと、それをどうスライドさせるかという2つの課題があると。
 この消費水準というのは、同じ経済学ですから山田先生からも少し御解説いただいたほうがいいのかもしれませんけれども、当然ながら国民の賃金と資産収入から所得が決まっていき、そこから消費が決まる。経済が成長し、賃金が実質的に上昇していく、また資産収入がふえていく。広い意味で、これを自助と呼ぶかどうかわかりませんけれども、経済の力が伸びていれば消費水準も改善して、そして、生活保護水準も改善していくのだろう。しかしながら、今日の経済状況、高齢化や経済成長の変化、あるいは格差の拡大において、この伸び悩みがあったり、場合によっては比較する消費水準が低下するということが出てくると、1ページに書いてあるように、これ以上下回ってはいけないという水準を下回るおそれが出てくるのではないかと。そこで、これ以上下回ってはいけない水準というのはどう考えていくのかということを考える。
 要するに、生活保護の水準であっても、別に経済動向から独立して決まるわけでもないというのが現状であり、近年の生活保護水準である。ただ、これ以上を下げてはいけない部分の確保が難しくなってくることがあるので、それを考えておきましょうということなのですが、ここら辺で山田先生、何かありますか。同じ経済の分野として、マクロから生活保護の基準を経済動態として見たときに、何か今の考え方、あるいは補足することがあればと思うのですが、いいですか。
 皆さんがお話ししてくれないと、座長としては一人でしゃべらなければいけない展開があるので、当てていくのは恐縮なのですけれども、ぜひとも協力いただきたいのですが。
 では、岩永さん、目が合ったので、お願いします。
○岩永委員 私は、最初のそもそもの議論で、今後自分でも考えて注意しておきたいなと思う点です。今日の議事も最低限度の生活に関する検討というふうにありまして、そのことから生活保護基準を考えようということだと思うのですが、当然のことながら、生活保護が保障する生活というのは基準だけで決まるわけではなくて、資産保有とか自立の支援とか、ケースワーカーさんがやられることも含めて、様々なことを含めて生活保護でやっていることを総合して最低限度の生活を保障するということです。今、駒村先生がおっしゃったような水準、どこまでという話は、どこかで質的なものの要素を入れないと考えられないわけですが、その質的な要素を考えるときに、最低限度の生活というものの質を考えるのだと思うのですけれども、それのみで生活保護で保障する範囲と言っていいのか。また、最低限度の生活から、生活保護基準の質を考えるときにどういうものを含めて考えればいいのか。さらにいえば、生活扶助基準相当支出とか、生活扶助基準相当という言葉も後でいっぱい出てくると思うのですけれども、こういうものの概念の使い方の難しさを、この議論を続けていくときに考えざるを得ないかなと思っています。
○駒村委員 ありがとうございます。
 質という表現は、後でまた剥奪の問題とか色々出てくるところで議論しなければいけないことだと思いますけれども、生活保護基準だけ見れば、経済の動態的なものもあると思いますが、おっしゃるようにその人をめぐる社会的な状況といったときに、どういう自立なり資産活用の道があるのかというのも意識しなければいけないということだと思います。質という切り口をどう表現するかというのはなかなか難しい部分があると思いますけれども、剥奪の議論とか、後の資料で色々悩ましいデータが出てくると思いますので、そこでまた深めて議論すればいいと思うので、ほかはいかがでしょうか。
 阿部さん、お願いします。
○阿部委員 すみません。遅れて来て申し訳ありませんでした。やはり厚生労働省に行ってしまいました。下で部屋がわからなくて、しばらくうろついておりました。
 4ページの議論なのですけれども、そもそも論というところで一言、3つ目の○のところ、価値観が多様化した今日の状況を踏まえて、どのように考えるかという点を、いま一度、私自身もリマインドという意味で発言させていただきますと、価値観がどのように多様化しても、私たちはやはり憲法25条というものに縛られているということ。縛られているという言い方は変ですけれども、健康で文化的な生活を保障しなければいけないということ。それから、今までのたくさんの生活保護の基準部会や社会保障審議会の中で議論されてきた社会生活の必要性ですとか、社会参加が必要だというような議論を踏まえた上での私たちの議論であって、全くのフリーハンドで考えるわけではないという点は強調させていただきたいなと思いました。
○駒村委員 ありがとうございます。
 おっしゃるとおりの部分で、当然ながら憲法の根拠の中で議論しなければいけないというのは当たり前の話で、確認ということだと思います。
 ほかはいかがでしょうか。まだ御発言のない方、お願いいたします。
○山田委員 4ページの最低限度の生活を送るために必要な水準について、2つ目の○で必要最低限をどう考えるのかということで、前回の基準部会の議論では、例えば、子どもについては、最低限というものをどう考えるかといった場合に、トランポリン的な機能みたいなものも考えなくてはいけないだろうということでした。例えばどの年齢階級にもとか、どの世帯類型にも、というのは、なかなか難しく、クリアカットできるものではないとは思いますが、やはり各世帯類型に応じて、特に子どもについては考えていく必要があるのではないかというのが1点です。必要な最低限といっても、先ほど質の話が出ましたけれども、一次元でぴっと線が引けるような単純な理解ではいけない、ということが1つあります。
 2つ目として、先ほど経済学では、ということをおっしゃったので、経済学では所得というものをどのように定義するかというそもそも論から始めると、定義としては、よく使われるのは、ある経済主体がその資産、資産の中には色々と含まれていて、人的資本とか健康資本、金銭的資本といったものが含まれているわけです。それらを全部、資産と言っているわけですけれども、その資産を維持しつつ消費可能な額ということなので、単純に消費額だけで見ていいかといったら、やはり考えなくてはいけないのは、例えば人的資本をすり減らしてでも消費している人と比べてはいけないわけですし、健康資本をすり減らしてでも消費している人と比べてはいけないわけですし、そういったことも考えなくてはいけないということです。この資料を見ると一次元ですぱっと切れるような印象を持たれるかもしれませんけれども、そうではないということを考えておかなくてはいけないと思いました。
○駒村委員 渡辺委員、何かありますか。
○渡辺委員 先ほど岩永先生が資産も考えて最低限度という話がありましたけれども、やはり何も資産がない、家具も何もないという状況でフローのインカムだけが入っていっても、最低限度の生活というのは成り立たないというところとか、突発的な支出に耐えられないとか、そういうところも考えると、やはり資産要件というところも、改めて最低限度の生活にどれぐらい必要なのか考えなければいけないのかなと思いました。
 それから、90年代半ばぐらいから所得も消費も落ちてきている中で、経済が向上していた80年代半ばとは状況が違う、経済が上がっていくときにつくられた水準均衡方式からは脱して、新たな算定方式ということになるのかなと思いました。
 最後ですけれども、5ページ目、検討課題2のところに、最低限度の生活を送るための算定方式としていくつか挙げられていますけれども、価値観が多様化している中、マーケットバスケット方式というのは常に専門家だけが決めてきたので、恣意性の問題が排除できないと指摘されてきて、一方でMISは市民からの合意形成の方法がとられてきたことを考えると、マーケットバスケット方式もMISも両方ありますけれども、マーケットバスケットだと、では誰が決めるのだということになってしまうかなとも思いましたので、MISを用いるということでいいのではないかと思いました。
 データについては、これまでずっと主に全国消費実態調査を使って検証がされてきていますけれども、今回の2019年度実査に当たってはかなり作成方法が変わっているようです。いつも改定までにかなり苦労をして特別集計しているということもありますので、なるべく、どのように変わったのかとか、速やかに提供が受けられて、分析して、検証する時間がとれるようにというところは、いつも以上に必要になってくるのかなと思いました。
 以上です。
○駒村委員 ありがとうございます。
 今のお話があった相対水準方式からの変更をどう考えるかというのが一番難しいところかと思います。生活保護の基準であったとしても、これは改めて確認するまでもないですけれども、経済全体のマクロの経済から独立して決められるわけではないということで、これが沈滞ムードになったときに下支えを今とは違う考え方で、どう社会的合意があるような最低限度の水準を設定するか、議論するかということが、この検討会の一番難しいところかなと思います。
 現状の水準でどういうことが起きているのだろうかと、まさに先ほどの質の話とか消費支出の実態、それから、諸外国においてはどういう対応があり、アイデアがあるのかというのをこれから学んでいこうということだと思いますので、事務局から資料2、3について、御説明をお願いいたします。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料2、32、32、資料3と順番に御説明申し上げます。
 まず、資料2でございます。タブレットですと03になります。これは調査研究事業の結果をサマリーとしてまとめたものでございます。
 1ページおめくりいただきまして、表紙の次のページですけれども、調査研究の目的でございます。先ほど御説明しました平成29年検証の部会報告の指摘を踏まえて、まずは生活保護世帯の現状を把握するという観点から、社会保障生計調査、これは生活保護世帯に対する家計簿調査でございますが、この調査と、その世帯に対して行った家庭の生活実態及び生活意識に関する調査のデータを用いて、質の面から見た消費支出や生活実態について、分析を試みたというものになります。
 調査研究の主な項目として大きく2つ記載しております。真ん中ほどでございますが、生活保護世帯の生活の質の面から見た消費支出や生活実態の分析による家計内容の把握という点が1つ目。大きな2つ目が、等価収入別に見た社会的必需項目の不足に関する指標における生活保護世帯と一般世帯の比較というものでございます。
 内容に入っていきますが、2ページ目ですが、家計内容の把握・現状分析でございます。分析内容を簡潔に書いているものでございますが、平成24~28年度の5カ年分の社会保障生計調査(家計簿調査)の個票データを用いまして、平成29年の部会検証において用いた固定的経費、変動的経費を支出費目の分類に従って集計を行い、生活保護世帯における固定的経費割合の状況と、その内訳としての10大品目別の消費支出割合等を確認したものになっております。
 使用データ、集計対象世帯数、集計方法については、こちらに記載しているとおりでございますが、左下に参考として、固定的経費と変動的経費の基準部会報告における考え方を記載しているところでございます。
 なお、集計値は、各費目を等価世帯人員1人当たりに換算し集計したということで、人員について調整した数値で分析を行ったところでございます。
 続きまして、その結果でございます。3ページ目でございますが、世帯類型別に見た固定的経費割合の状況でございます。5年間の平均の固定的経費の割合につきましては、赤の点線で囲っておりますが、72.3%でございました。これを世帯類型別に見ると、高齢者世帯が75.4%と最も高く、母子世帯が65.7%ということでございました。
 参考としまして、29年検証において、夫婦子一人世帯の消費支出階級別の折れ線回帰分析により確認した消費構造が変化する分位は、消費支出階級第11・五十分位ということでございまして、このときに回帰分析を用いて算出した固定的経費の割合は52.6%でございます。一般低所得世帯における数字は、このようになっているということでございます。
 2つ目の○ですが、エンゲル係数についても記載しており、全体平均でいきますと32.5%ということです。世帯類型別に見ますと、高齢者世帯が34.1%で最も高く、母子世帯が27.6%ということでございます。こちらも参考を入れておりますが、28年の家計調査の結果によりますと、一般世帯で2人以上世帯における年収階級第1・十分位のエンゲル係数は30.8%、全体平均でいきますと25.8%ということなっております。
 続きまして、4ページ目は、世帯類型別に見た10大品目の消費支出割合の状況ということですが、世帯によって保護費の額が異なりますので、ここでは各費目の割合として示し、世帯類型ごとにどこが高くなっているのかを示したものでございます。ここでは前のページで記載した高齢者世帯、母子世帯について、主な特徴的なところを記載しているところでございます。本日は時間の関係もありますので、詳細は割愛させていただきたいと思います。
 次に5ページ目は、生活実態・生活意識と収入及び消費支出との関係分析マル1でございます。こちらについては、まさに生活保護世帯がどのような生活実態・生活意識にあり、消費生活にどのように影響しているのかという点につきまして、これも試みとして「平成28年 家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」と、同じ年に実施した「社会保障生計調査」の個票データを世帯単位でマッチングして、生活実態・生活意識に関する回答の内容と収入・支出との間に相関関係があるのかどうか、そのような内容について分析を行ったものでございます。
 使用データとしては、平成28年の家計簿調査と、同年に実施している家庭の生活実態調査を用いているところでございます。
 結果として、まず、6ページ目でございますが、個々の回答の内容と等価実収入との関係を記載させていただいております。今回算出した各項目の連関係数を見ますと、生活保護世帯の生活実態や生活意識に関する回答内容と等価実収入との間には、多くの項目では相関関係は確認されなかったところでございます。
 次の○は、弱い相関関係がある項目ということで、ここでは0.2以上の項目を記載しておりますが、これを見ますと、インターネットの利用、お子様へのお小遣い、学習塾に通わせる等々が抽出されたところでございます。
 7ページ目は、それを消費支出で見たものでございますが、概要としては収入と変わりなく、回答内容と支出との間には、多くの項目では相関関係は確認されなかったところでございます。
 弱い相関関係がある0.2以上の項目ということで見ますと、パソコンの保有、インターネットの利用、有料のレジャー施設に行くといった項目が抽出されたということでございます。
 次の8ページでございますが、8ページ以降は、生活保護世帯における社会的必需項目の不足状況と当該世帯の消費支出との関係でございます。
 使用データは先ほどと同じものを用いております。等価消費支出階級別に社会的必需項目の剥奪指数及び社会的必需項目の不足数の集計を行ったところでございます。この集計の手法・考え方でございますが、その下に記載しておりますとおり、第34回基準部会の資料5に記載されている手法に基づいて行ったところでございます。
 分析の手法ということで、ポンチ絵を2つ左右に張っております。各世帯がどの程度相対的剥奪状態にあるのかを測るため、以下の方法により、社会的必需項目を設定し、回答内容を指標化したものでございまして、社会的必需項目の選定方法、アイテムの抽出につきましては、阿部先生の先行研究によって社会的必需項目であると判定されたアイテム、これは50%以上の方が必要であると回答した項目でございますが、このような項目を抽出したということでございます。
 そして、2つ目のポツですが、選定した項目に対して、経済的な理由により保有していないと回答した場合に、剥奪されている項目に該当するということで剥奪指数を点数化したものでございます。具体的なアイテムにつきましては、右のポンチ絵で個別に記載しておりますが、「食事の頻度」から「生命保険等の加入」まで、合計13項目を用いて分析を行ったものになります。
 その結果ですが、次の9ページ目でございます。まず、生活保護世帯の消費との関係でございます。1つ目の○ですが、この剥奪指数を等価消費支出階級別に見ると、消費支出階級ごとの指数の変化は小さく、消費支出の増加に伴う剥奪指数の変化に一定の傾向は見られなかったということで、左の赤の破線で囲っている囲み部分でございます。
 2つ目の○は、具体的な不足数ですが、これを消費支出階級別に見ますと、いずれの消費階級においても不足数なしは約1割、1項目が3~4割ぐらいということでございまして、これも消費支出の増加に伴って不足数の変化に一定の傾向は見られなかったという結果が得られたところでございます。
 この9ページが全世帯の状況でございまして、10ページ目は、これを世帯類型別に見たものでございます。基本的にはそれほど大きく傾向が変わっているものではございませんが、世帯類型別に見ますと、その他の世帯、障害者・傷病者世帯でやや高いが、全体としては、それほど大きな差は見られなかったということになっております。
 また、消費支出の増加に伴う指数の変化も一定の傾向は見られなかったところでございます。
 ここまでが生活保護世帯の分析ということでございます。
 11ページ目以降になりますが、今度は生活保護世帯と一般世帯との比較分析ということになります。一般世帯のデータにつきましては、国民生活基礎調査の後続調査として家庭の生活実態調査を行っている関係上、収入のデータしか得られませんので、これを生活保護世帯と同じ土台に並べて比較することで、収入階級別に比較分析をしたものになります。
 11ページ目は全世帯の剥奪指数でございますが、剥奪指数の平均値について見ると、左下の赤の破線ですが、生活保護世帯が11.4、右下の一般世帯の点数は3.5となっておりまして、生活保護世帯の指数の方が高いところでございます。
 これをそれぞれ収入階級別に並べております。これを見ますと、生活保護世帯の剥奪指数のほうがいずれも大きくなっていることが見てとれるところでございます。
 生活保護世帯の収入階級ごとの剥奪指数の動きについては、先ほどの消費支出と同じでそれほど大きくなく、その変化に一定の傾向は見られなかったというところです。
 一方、一般世帯につきましては、10万円未満の7.1から、16万円以上ですと3.4、19~20万円では2.3というように、わずかな可処分所得の増加に伴って、剥奪指数が減少していく傾向が見られたところでございます。
 12ページ目は、具体的にいくつのアイテムが不足しているのかという観点から見たものでございまして、不足数の平均値を見ますと、上の生活保護世帯の一番左ですが、不足数の平均値は1.8ということでございます。その下の緑の囲み、一般世帯は0.5ということでございます。
 それぞれの傾向を見ますと、※印ですが、生活保護世帯では不足数なしは1割ぐらい、1~2項目不足が36.3%と31.8%を足し上げて約7割ということでございます。これに対して一般世帯は、その下でございますが、該当なしが67.6%で7割弱、1~2項目が約3割、1項目不足が21%、2項目不足が7%といった状況にあるというところでございます。
 収入階級別の状況や実収入の増加に伴う指数の変化については、生活保護世帯はこれまで説明してきた内容と同じような傾向ということでございます。一般世帯につきましては、可処分所得の増加に伴い、該当なしの割合が、10万円未満では44.8ですが、19万円以上ですと71.8に上がり、それとは逆に、不足数1項目~4項目については、いずれも可処分所得の増加に伴い、その割合が下がっていくという傾向が見てとれるところでございます。
 13ページ以降は、この全世帯の状況を世帯類型別・世帯人員別に見たものでございます。生活保護世帯につきましては、世帯類型ごとに見ましても、先ほどの消費支出と同じようにそれほど大きな差があるわけではないという結果が得られたところでございます。一方、一般世帯につきましては、右の緑の破線の囲みの母子世帯と障害者・傷病者世帯について、それぞれ8.5と8.4ということで、全体平均の3.5と比較して高い状況にございます。
 収入階級別の状況などについては、先ほどの全世帯の状況とほぼ同じようなことになっているところでございます。
 14ページ目の世帯類型別の不足数でございますが、生活保護世帯につきましては、いずれの世帯類型でもほぼ同じで、1.7~1.9の間にございます。一般世帯につきましては、先ほどの剥奪指数と同じでございますが、母子世帯、障害者・傷病者世帯において不足数が1.33ということで1を超える状況になっているということでございます。
 最後15ページ、16ページの世帯人員別の状況でございますが、こちらも生活保護世帯につきましては、1人世帯から4人以上世帯に区分しており、3人世帯が若干へこんでおりますが、それほど大きな差はないと考えております。一方、一般世帯につきましては、全体平均3.5に対して、1人世帯が5.4ということで、2人、3人、4人がそれぞれ3.0、2.8、2.6ということを考えると、少し高い傾向にあることが見てとれるかと思っております。
 最後ですが、世帯人員別のアイテムの不足数につきましても、同様の傾向が見てとれるところでございます。
 駆け足でございますが、以上が資料2の御説明でございました。
○駒村委員 どうしましょうか。ここで一回切りますか。先ほど2つともお願いしますと言ってしまったのですけれども、2つの話はちょっと違う話だと思いますし、ここはここで、今、委員の方が聞きながら色々悩んだり考えたりしている部分があると思いますので、一回ここで切らせていただいて、委員の皆さんからこの結果をどう評価していくのかということを議論したいと思います。いかがでしょうか。
 では、山田委員、お願いします。
○山田委員 非常に興味深い調査結果の御紹介をありがとうございます。一番わかりやすいのは13ページなのですけれども、世帯類型別に見ても、等価可処分所得が上がっていくと、一般世帯だときれいに剥奪指数が下がっていくのに、一方で、なぜ生活保護世帯では同じように下がらないのかというのは、どう解釈していいのか非常に悩ましいところでした。
 そこで、もうこのプロジェクトは終わっているかもしれませんけれども、今後調べていただきたいのは、8ページのどの必需項目が落ちていて、例えば生命保険を持たないこととか何か、そういう特定のアイテムのところで剥奪のフラグが立ってしまって、このように下がらないようになっているのか、それによってインプリケーションが全く異なってくると思うのです。生活保護世帯特有の資産の保有の制限によってこれが起こっているのか、それとも本来だったらもっと生活をサポートしなくてはいけないという意味なのか。どちらに解釈していいのか、それによって変わってくるというのが1点なので、もうちょっと掘り下げたいと。
○駒村委員 今の部分は一回聞いておきたいと思うのですけれども、この点、具体的にほかの委員の話も聞きたいなと思っていて、阿部委員から手が挙がっていますので、後でまだあると思います。でも、数ではなくて、どういうものを諦めているのかということに山田さんはフォーカスを当てたいというところが今あったと。
 阿部委員、お願いします。
○阿部委員 今の山田委員のコメントに対するところでよろしいですか。まず、生活保護世帯の中での10万円から16万円のカテゴリーの中で下がっていかないというのは、最低生活費はそれぞれの家庭のニーズですとかをより細かく対処していますので、下がっていかないというのは、むしろ最低生活費の分解しているところがうまくいっているという一つのあらわれだと思うのです。下がってしまったらいけないわけですね。生活保護費の中では高いところと低いところをつくってはいけないわけですから、それはある意味、最低生活費の組み立てがうまくいっていることをあらわすということで解釈できるのではないかと思います。
 ですので、ここではやはり同じ所得階級であっても、圧倒的に生活保護世帯のほうが剥奪指標が高くなっているという、そこのところが問題になるのかなと思います。
 あと、1点クラリフィケーションといいますか、お願いしたいのですけれども、この剥奪指標は、今、8ページの十何項目ではなくて、六十何項目のものを使っていると思うのですけれども、そうですよね。最大値が30とか40とか60とかありますので、ということは使っている項目数はもっと多い。これは私が研究の中から出てきた前回のときに使われたものだと思いますけれども、なので、そこは。
○駒村委員 そこの部分は確認ですね。では、事務局に、どのアイテムを使っているかということを確認してください。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 8ページの右下に書いてある13項目だと理解していますが、確認いたします。
○駒村委員 大事な点だと思います。
○阿部委員 最大値が30とか、高いところは60とかになるのです。重みづけは、0.いくつで重みをつけるはずなので、こんなに高くならないはずなのです。
○渡辺委員 合計点数が100点になるようにしているのだと思います。
○阿部委員 合計点数が。
○駒村委員 渡辺委員、あれだったら今の確認を。データ確認の部分ですからね。お願いします。
○渡辺委員 8ページの分析手法のところで、集計方法として必需項目が多分13項目で選定されていて、集計方法の2ポツ目で、選定した項目に対する経済的な理由により「保有していない」「実施していない」と回答したそれぞれについて、回答割合をもとに重みづけした上で、合計点数が100点となるように換算しているので、多分この13項目がウエートづけされて、最大値がこうやって出てきたのではないかと思いました。
○阿部委員 なるほど。マル1とマル2の2つあるわけではないのですね。マル2のほうを採用しているということでしょうか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 マル2です。
○駒村委員 阿部さんのコメントというか解釈は、まさにこの差が出てこないこと自体が、生活保護世帯の中でもうまく給付がマッチしているので差が出ていないのは生活保護の設計が一応これはこれで成立していると。ただ、一般世帯と比べると、この差を見たほうがいいというお話ですね。一般世帯との剥奪の乖離幅というのは注目しなければいけない。
 それから、山田さんが先ほどおっしゃったのは、一方で、どの項目を諦めているかということも注目しておきましょうということです。渡辺さんは前に3月に別の研究会でも、剥奪は何を剥奪されているのかという、諦める順番みたいなものも言及されていたと思いますので、渡辺さんにもこの辺を聞きたいのですけれども、どう思われるか。
○渡辺委員 そうですね。一回研究したときには、必需的な項目、アイテムであっても、割と順番があって、最初に社会的なつながり、例えば友達と御飯に行くとか、冠婚葬祭に出るとか、あるいは旅行に行くというようなところから諦めていって、そこからちゃんとした栄養摂取ができる御飯が食べられなくなり、適度な室温を保つためのエアコンが使えなくなって、車とスマホが最後までキープする財というふうに、一応そのときにはプリミティブなリザルトが出ました。
 なので、山田先生がおっしゃったように、どこのアイテムでどれぐらいの人がデプライブドされているのかという集計結果は見てみたいなと思いました。
○駒村委員 阿部委員、お願いします。
○阿部委員 一般世帯については、これはもうかなり8ページの必要度値と書いてありますが、つまりこれは「ある」と答えた割合で、推測することができて、それが少ないところがやはり一番多くの方が丸をつけているところですので、そこからなくなっていくというのが一番で、それと違う構造が生活保護の世帯の中にあるかどうかというのはわからないですけれども。
○駒村委員 この集計表を見れば、諦める順番のおおよそのパターンは見えるだろうと。しかし、生保自体のほうはこのパターンと同じかどうかは見てみたいと。
 渡辺委員、何かありますか。もうちょっとやっていることは複雑なことをやられていると。
○渡辺委員 単純に簡単な事実確認をまずさせていただきたいと思ったのですけれども、この指標の算定項目は全て生保世帯にも当てはまるのかどうか。例えば、生命保険等の加入については、ややグレーゾーンかなと思う。そもそも買ってはいけない可能性がある。
○駒村委員 事務局、返事をお願いします。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 生命保険の保有に関する生活保護制度上の取り扱いについては、貯蓄性の高い保険は解約して最低生活に充てていただくことになりますが、危険対応のためのいわゆる掛け捨て型の生命保険の場合は、最低生活費の1割以下ぐらいの保険料であれば加入してもよいという取り扱いになっているところでございます。
○渡辺委員 あと、必需財のところで、ちょっとわからないですけれども、炊飯器、電気掃除機はマル、買ってオーケー。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 もちろん大丈夫です。
○渡辺委員 それでは、これは一応、生活保護世帯の中でも保有が認められている財なり何なりである。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 基本的にはそのように考えております。
○渡辺委員 ただ、必要なときに医者とか歯医者にかかれることが金銭的な余裕がないことというのは、医療扶助がある関係上、ちょっと考えづらいとうことですね。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 ここは確かにおっしゃるとおりだと思います。生活保護の医療扶助については現物給付でありますので。
○渡辺委員 もちろん時間的に余裕がないとか、自分一人で支援なしで通院することができないという場合はあるかもしれないですけれども、少なくとも金銭的な理由をもってしてできないということは考えづらい。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 基本的にはないものと思っております。ただ、この調査はあくまでも意識調査ですので、御本人がどう感じるかというのもあると思います。
○駒村委員 独特の制約要件があるのではないかということを確認したかった。
 山田委員、続きがあると思います。お願いします。
○山田委員 あと追加の質問としては、資料の前半部分も興味深かったのですけれども、前半部分について2つあって、1つは確かに10大品目別の消費支出割合を比べているのですけれども、後半は一般世帯との比較をしているので、例えば全消でも何でも、公刊された統計から比較可能なものについてはどう消費支出割合が違うのかというのはベーシックなものとして確認しておきたいなというのが1つあります。
 あと、これも教えていただきたいのですけれども、相関係数を出している6ページとか、これは世帯類型をそろえているのですか。それとも、色々な世帯類型を全部まぜ合わせてやっていますか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 あまり好ましくないかもしれませんが、ここの指数は、世帯類型は特に加味してございません。
○山田委員 中学生以下の子どもとか、いないところもあるのに何でだろうと。等価実収入で調整できない部分があったとしたら、そこの部分と単に相関しているだけではないかというのがあって。もう一点目は、例えば6ページでエアコンとかは0.15なので、世帯類型とかを調整するとここの部分がどのように変わるのかというのを見たいので、まず初回の図表としては十分だと思うのですけれども、もう少し掘り下げて見ていただくと、もう少し色々とわかるところもあるのではないかと思いますので、ぜひ今後よろしくお願いしたいと思います。
○駒村委員 今のところは世帯類型別に今後分析していただくということだと思います。
 岩永委員、何かありますか。
○岩永委員 先ほどの議論は私も同じように思っていたので、剥奪指標のうちの何が当てはまっているかというのはぜひ知りたいなと思いました。
 渡辺さんがおっしゃったように、医者にかかれることとか歯医者にかかれることが、もしできていないのだとしたら、それ自体、問題だと思います。それと関係するかわからないのですが、4ページの図表5をどう読めばいいのかなというのが難しい。つまり、これは生活保護費としてもらったものをどう使っているかという結果ですね。そのときに、例えば住宅扶助費をもらっている人とそうでない人、持ち家の人もいると思うのです。その人たちも入れてこういう形で出していると。
 何が言いたいかというと、例えば住宅扶助費が足りない場合、それよりも家賃が高い場合に、生活扶助費から持ち出しでその家に住んでいいよというような運用もしていると思うのです。そうすると、本来生活扶助費として支払われているものを削ってその人の住宅費を出しているわけだから、本当は別のものが削られているはずなのだけれども、そういうことはこういうところから見えてこないという読み方でいいのですか。
○駒村委員 事務局から。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 この点につきましては、例えば、持ち家世帯だけ取り出した集計ということは行っておりませんので、家賃がかかる世帯とかからない世帯を合わせた集計結果ということになっております。
○駒村委員 岩永さん、何かありますか。
○岩永委員 つまり、この表にあらわすのは難しいと思うのですけれども、生活保護で何が保障されていて、それをどのように使っているのかということと対比して見ないとよくわからないような気もして、生活保護で保障しているといっても、これをどう見ていいかは難しいなと思います。
○駒村委員 住宅扶助のところにはみ出しているようなものがあるのではないかということも確認したいという話だったと思います。
 山田委員、何かありますか。
○山田委員 今の岩永委員の話で、14ページの生活保護世帯の全く同じ議論で、等価実収入というのは多分、住宅扶助が入っていると思うのですけれども、もしそういうことがあると、やはり剥奪の部分で不足するものが多くなってくる可能性はあるかなと。一方で、一般世帯のほうでもし持ち家が非常に多かったとしたら、そういったことがあると思うので、住宅の部分をある程度、今後もし深掘りするのであれば、剥奪指標についてもコントロールする必要があるなと思いましたので、お願いできればと思います。
○駒村委員 事務局、これはできるのですか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 どこまでそのような加工ができるについて、特に、一般世帯のほうについてはなかなか難しい面があるのですが、どこまで可能であるかというのは検討したいと思います。
○駒村委員 ほかはいかがでしょうか。
 阿部委員、お願いします。
○阿部委員 まず、今の話題となっている3ページ、4ページの家計の分析のところなのですけれども、これは全てシェアを見ているわけですね。なので、高齢者世帯と母子世帯でシェアの内訳が違うのは当たり前ですし、傷病者世帯とかでも違いますし、同じ高齢者世帯の中でも家賃が発生する家とそうではない家ではシェアが大きく違いますので、持ち家率がどれぐらいかということによってもこの割合は世帯類型で変わってきてしまうので、はっきり申し上げて、世帯タイプ別にシェアを比べてもあまり意味がないかなと思います。
 なので、このシェアを見て何を見たいのかといったとき、小さな参考で書いてある数値ですね。例えば固定的経費の割合が全体で72%なのに対し、一般世帯での消費、第11・五十分位の折れ線部分、つまり52.6。でも、これをどのように解釈するというのは非常に、違うということはわかりますけれども、あまりそれがきちんと議論されないまま、高い、低いというようなことを言ったり、高齢者が高くて母子世帯が低いとか言っていることは、あまり意味がないのかなと思います。
 もしこれが数値で出てきているのであれば、実際の実費で出てきているのであれば、一般世帯と比較することができるので、例えば食費にどれぐらいかけているとか、固定費にどれぐらいかけているとかいったような議論ができるかなと思いますけれども、シェアで見てしまうと、本当に何を言いたいのかよくわからないなというような印象を受けました。
 次に、6ページの収入や所得との相関を見るところですけれども、そもそもこれは全部生活保護世帯の中ですので、所得や収入のバリエーションが等価ですので非常に少ないはずなのですね。先ほど山田委員がおっしゃったように、もし違うとすれば、それは世帯構成で子どもが多い世帯であったりとか、住宅費が発生しているところで、その上に住宅扶助がついている世帯とかでは若干違うかもしれませんと。ですので、それとこれの有無の相関を見ても、あまり言えることがないなというのが実際です。
 この相関をなぜ見るのかという一つの理由は、もしこれらの項目を必需品として認定して、剥奪指標に使うのであれば、なるべく相関がないものを選ぶべきだと。それは一般世帯の中でのデータでやってみて、そうでないと必需品ということができないので、それで相関がないものを選んで、それの剥奪の状況を見てみましょうという議論につなげればいいのですけれども、ここでなぜ生活保護の世帯の中でのほんの小さな類型とかによって出てくるバリエーション、等価収入とかのバリエーションとこれの有無の相関を見るのかというのが、私にはよくわからなかったというのがあります。
○駒村委員 阿部さんが極めて出口を意識しながら議論をされているというと、この分析は本当に意味があるのかというのは、色々持たれるのはそうかなと思う一方で、色々な切り口で見ていって、色々な選択肢も出てくるかもしれませんので、今日のところはそれほど絞り込むというよりは、コメントということで、まだ続きがあれば、どうぞ。
○阿部委員 いいです。
○駒村委員 いいのですか。別にとめようと思ったわけでも何でもないので、ただ、今までの経験上、私たち、この3人あたりはすぐにちゃんとした新しい形のものを見つけていく探索的な状態に入っていますので、気持ちとしては私も非常に共有する部分があります。意味があるかどうかまだわからないけれども、色々な切り口で一応見ておきましょうというのは、まだ2回目ですからということもあると思います。どうぞ。
○阿部委員 わかりました。
 その部分で、やはり剥奪のところで一般世帯と比べているというところが、今回の資料の中では一番興味深いところなのですけれども、先ほど申し上げたように、生活保護世帯の中での等価の所得とか収入の差ですね。10万円と11万円と12万円の差が何を意味するのかというのは、あまりわからない中で、階級別に見るというよりもちょっと違うやり方で、一般世帯と比べるにしても、やる必要があるのではないかなと。
 例えば、一般世帯の10万円と生保の10万円で母子世帯というのを比べると、16万円の母子世帯と一般世帯の16万円の母子世帯を比べるという、相関を受けてしまうことですね。それよりも、ちょっとやはり工夫をする必要があるかなと思いました。
○駒村委員 山田委員、意見があればどうぞ。
○山田委員 統計的にやるのだったら、たとえば傾向スコアマッチングのような、似たような世帯類型の一般世帯と生保世帯で差があるのかというのをやってみるということもあるかと思うのです。ただ、2回目なので、これだけでも色々と見えてきたという意味では、特にここの一般世帯と生保世帯を比べる表は非常に示唆的だと思いました。
 ただ、阿部委員がおっしゃるように、本当に生保世帯で所得階級値が何を意味するかというのは、もっとちゃんと見ていかないといけないというのはおっしゃるとおりだなと思います。
○駒村委員 3ページの固定的経費の項目というのは、全世帯共通でやっているのでしたか。ちょっと確認です。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 こちらにつきましては、29年検証では夫婦子一人世帯と高齢夫婦世帯で費目が微妙に違うのですが、今回は夫婦子一人世帯の分類を採用して集計しているというものでございます。
○駒村委員 ここについてはいかがでしょうか。こういうデータ分析をきちんと地道にやっていって、どこかでやはり阿部委員がおっしゃるように出口も意識しなければいけないと思いますけれども、データをしっかり分析して、何かそこにゆがみなり課題が出ていないかも見ておきたいと思いますので、引き続きお願いします。
 では、資料3のほうの説明をお願いいたします。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料3の「諸外国における公的扶助制度の概要マル1」についてご説明します。タブレットですと04でございます。
 1ページ目です。今回の諸外国の調査ですが、調査対象国はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、韓国の6カ国ということで、本日はこのうちドイツ、韓国、アメリカについて、報告をもとに事務局において作成したサマリーとしてお示しするものでございます。次回につきましては、イギリス、フランス、スウェーデンの残りの3カ国を同様の形でお示しすることを予定しております。
 今回の調査では、3に記載している主な調査項目を調べているところでございますが、本日は時間の関係もございますので、基準額の設定の考え方を中心に御説明させて頂きます。
 次に2ページ目のドイツ・その1ということですが、まず、資料の構成としまして、上に「公的扶助(主なもの)」、下の3分の1ぐらいに「社会手当(主なもの)」という構成としております。公的扶助につきましては、左から、使途、制度の名称、支給対象者、所得要件、資産要件、給付水準という形で資料を構成しているところでございます。
 ドイツにつきましては、日常生活に必要な費用に該当するものが3つあり、生計扶助、高齢・稼得能力減少時基礎保障、失業手当IIという3つでございまして、この棲み分けは、左から3つ目ですが、大きくは就労能力があるかないかということで分けられているところでございます。
 こちらの3つにつきましては、所得要件につきましては基本的に同様でございますが、資産の保有要件がそれぞれ若干異なっているところでございます。
 一番右の給付水準ですが、生計扶助から始まりますこの3つは、いずれも同様の給付水準を用いておりまして、これは一例ですが、単身の成人の場合、月額416ユーロとなっているということでございます。
 その下の社会手当(主なもの)ということで、住宅手当、児童手当、児童特別手当といったものがございます。なお、この住宅手当に相当するものにつきまして、生計扶助受給者においては、主な加算のマル1住居が適切な床面積である場合には住居費及び光熱費の実費を加算ということで、生計扶助対象者については、こちらで同様の給付が行われることになっております。
 続きまして、3ページ目につきましては、このうちの生計扶助の設定の考え方等についてまとめたものでございます。給付水準につきましては、社会法典第12編第28条に基づいて規定される基準需要定義法、ちょっと訳が堅いかもしれませんが、この法律に全国一律の基準需要適用額、給付額の算定方法が定められているということでございます。具体的にはEVS(所得消費抽出調査)、注1に記載のとおり、これは5年ごとに実施している調査でございますが、この調査結果に基づく基準需要額の合計に物価及び賃金の上昇率を勘案した調整値を乗じるといったことが基本の考え方です。この調整値には、連邦統計局による前々年度と前年度の間における基準需要に関連するサービスの価格変動と被用者の手取り賃金の上昇率が用いられ、7対3の割合で混合されるということになっておりです。
 具体的には、次のページの図を見ていただいた方がわかりますが、4ページの図表マル1-3はEVS特別集計に基づく参照世帯の基準需要額であり、調査結果から積み上げられる額がこの表の額となっており、1人世帯の成人がベースにあり、子どもについては、それぞれの年齢別に積み上げを行っているというものでございます。この額にそれぞれのスライド率(調整率)を掛けて、間の年の基準額を算定していくという考え方になっているということでございます。
 3ページに戻りまして、EVSによる需要の積み上げでございますが、真ん中ほどに参照する世帯ということで記載してございます。この参照世帯につきましては、成人の1人世帯の下位15%、夫婦子一人世帯の下位20%以下の世帯を参照世帯にしているということでございます。
 また、給付基準の体系でございますが、4ページをご覧いただければわかりますとおり、基準需要レベル1~6の6つのカテゴリーということで、成人が3段階、18歳未満の子どもで3段階、合計6段階でございます。
 レベル2・3につきましては、レベル1の9掛け、8掛けで設定されているということでございます。レベル4・5・6につきましては、それぞれEVSに基づく需要額にスライド率を掛けて算出するという考え方になっているということでございます。
 簡単ではございますが、以上がドイツの御説明でございました。
 続きまして、韓国でございます。5ページ目に韓国・その1とあります。韓国につきましては、扶助の体系はほぼ日本と同じような形になっているということで、生活、住宅、教育、医療、このほかに出産、葬祭等もございますが、主なものを記載しております。
 社会手当としまして、緊急福祉支援ということで、これは我が国で言いますと困窮者支援のようなものになりますが、そのような手当がございます。それから、児童手当、ひとり親世帯向けの福祉手当があるということでございます。
 生活扶助に相当するものとして、生計給付というものがありますが、韓国においては、所得要件について、所得認定額が基準中位所得の30%であるということです。この基準中位所得は、次のページに出てきますので、後ほど御説明申し上げます。
 給付水準につきましては、この額をそのまま持ってきており、基準中位所得の30%がベースになりまして、そこから収入認定額を引いた額が実際に給付されるということでございます。
 この給付水準の具体的な決め方につきましては、6ページに記載しております。まず、6ページ目の注1でございますが、韓国においては、国民基礎生活保障法というものが2014年に改正、15年に施行されたことに伴いまして、従来の積み上げ方式の最低生計費という考え方から、相対貧困の概念を取り入れた基準中位所得に変更されたということでございます。
 この基準中位所得でございますが、上から5行目ぐらいですが、全国民を100人と仮定し、収入の多い順に並べて50番目の人の所得がベースで、これにスライド率を勘案して算定するということでございます。生活扶助につきましては、この基準中位所得に30%を掛けた額となり、例示で言いますと、2019年度の1人世帯の最低保障水準は、基準中位所得を170.7万ウォン、給付選定基準を30%として、最低保障水準を51.2万ウォンに設定しているということであり、これにつきましては、次の7ページの真ん中の図マル2-4に掲載しており、これが基本的な基準額表というものになりまして、生計給付につきましては、1人の場合、170万ウォンに30%を掛けた51万2000ウォン、こちらで決められるということでございます。
 この基準中位所得をベースにして、医療給付、住宅給付、教育給付ということで、それぞれ40%、43%、50%とありますが、こちらについては給付水準ではなく、所得要件として決められているということであり、これは7ページ目の左上の図マル2-1でまとめているものですが、受給資格がそれぞれの扶助によって異なるというのが、見直し後の韓国の公的扶助の特徴となっております。
 この基準中位所得の改定方法については、7ページの図表マル2-5の基準中位所得の決定方式の推移ということで記載しておりますが、端的に申しますと、真ん中の基準中位所得(4人世帯)というところの2015年に422万2533ウォンとありますが、これに4%を掛けて439万1434ウォンという額で決められます。この4%の考え方は、その右に記載しておりますが、過去3年の所得増加率の平均値を採用するということです。基準中位所得自体は毎年調査を行って実測されますので、過去の増加率を平均したものを用いて改定する。このように毎年基準中位所得を決めて、生計扶助については、これに30%掛けたものが基準額として設定されるという考え方になっているということでございます。
 簡単ではございますが、韓国については以上でございます。
 最後にアメリカでございますが、アメリカにつきましては、8ページ目に記載のとおり、補足的保障所得から始まりまして、TANF、一般扶助(GA)といったものがあるわけなのですが、州によって運営が異なるというのが基本になっております。その上で参考になるものとしては、一番上の補足的保障所得であり、社会保障法に基づいて社会保障局が運営するということで、国が運営しているものですので、こちらを御紹介いたします。
 次のページに給付水準の設定の考え方を簡単にまとめています。9ページ目の真ん中ぐらいですけれども、給付額の改正というところでございますが、1974年から実施されているSSIの給付額の改定については、物価の上昇率を用いているということです。具体的には、賃金労働者物価指数の上昇率であるCOLA(生計費調整)を用いており、このCOLAは、当年の12月に前年と当年の第3四半期の物価の平均値の上昇率によって求めております。具体的には、10ページ目の図表マル3-2に2018年のCOLAの計算ということで記載しておりますが、こちらの第3四半期の3カ月の平均値、2017年でいきますと239.668から、2018年の246.354、この伸び率であります2.8%を用いるということです。
 そして、その右の図表マル3-3でございますが、2018年の単身者でいいますと750ドル、こちらに2.8を乗じることによって、2019年の給付額を計算するという方式で算定しているということでございます。
 簡単ではございますが、概要については以上でございます。
○駒村委員 ありがとうございます。
 ドイツ、韓国、アメリカの各制度を御紹介いただいたと。こういう国際比較をやるときには、この国はこうだとか、部分的に持ってきて議論してもなかなか難しい部分があって、所得保障体系は各国違いますので、単に一部だけ切り出して部分比較をしてもあまり意味はないのですけれども、しかし、それぞれの国で給付水準の考え方は色々工夫をされているという御紹介であって、ほかにも色々と伺いたいようなこともあるのですけれども、今日気づいた範囲でまたコメントいただきたいと思います。委員の皆さん、いかがでしょうか。どうでしょうか。
 韓国の例は非常に日本とは距離があるような、給付の種類によって基準と中位所得との関係が異なっていると。これはかなり日本とは違うわけですね。これから色々な国の例を学んでいくわけでありますけれども、この検討会としては、あくまでも社会的なコンセンサスのあるような基準をどう見ていくのかということが一番の手がかりですが、その制約状況の中で議論をとりあえずはしますけれども、場合によってはそういうことを考えたときに、今までの給付の体系とは少し工夫をしないといけないかなということも、もしかしたらあり得るかと思います。
 これは韓国みたいなパターンもあるなというのは頭の片隅に委員の皆様も置いていただくとか、ドイツも、この基準の検証は何年置きにやっているのでしょうかね。検証がない期間だと思いますけれども、ドイツは3ページあたりですね。調整値の話で、物価上昇率と手取り賃金上昇率を7対3でコンビネーションしてスライドさせるというのは、もしかしたらドイツの年金がそのようになっているのかもしれませんけれども、こういう形で検証がない時期を、ある物価と実質賃金動態をくっつけてウエートづけしてやるというのもおもしろいなと。これが日本でどう関係するかとか、これはもしかしたら年金を初め、ほかの保障体系のスライド率をこれで統一しているのかもしれません。これはこの中ではわからないなどなど、色々と考えさせるようなことはあると思うのですけれども、委員の皆さんから。
 では、山田委員、お願いします。
○山田委員 コメントとして、感想めいたコメントなのですけれども、ドイツも韓国も一応データに基づいて設定しているということは共通で、アメリカは、連邦貧困線を最初にどうやって引いたのかというのが書かれていないのでわからないのですが、少なくとも今日御紹介いただいたところでは、ドイツ、韓国ではデータに基づいてやっていると。
 ただ、これは最初の話に戻りますけれども、データに基づいて日本も消費実態でやってきたわけですけれども、日本の難しさは、それがそもそもこの検討会が始まった理由ですが、中位所得がずっと落ちてきたりとか、第1・十分位の等価可処分所得が落ちてきたときにどうするのかということなので、確かに諸外国もデータを使ってやっていると。それは我々がこれまで検証してきたことと、少なくともこの2カ国についてはマーケットバスケット方式ではなくてデータに基づいてやっているということについては同じだと思うのです。しかし、日本の場合には所得が下がっている中でどう決めるかということについては、難しいなと改めて思いました。
○駒村委員 色々な社会問題がヨーロッパとかほかの国で先にあって、これまでずっと学んで色々見ていたのですけれども、もしかしたら日本は既に色々な社会問題の先頭グループに立っていて、日本みたいに、このまま一緒に下げたらかなり低いラインになってしまうよという悩みは、ほかの国ではもう経験しているのか、経験していないのかというのは知りたいなと。要するに、我々が今直面しているような問題をほかの国では経験しているのかどうかというあたりは、やはり山田さんが言うみたいにあるかなと思いますけれども、ほかはどうでしょうか。
 これを見ていると、岩永さんとかは多分色々考えたくなると思う。自動車の保有はどうなっているのとか、扶養調査はどうなっているのとか、色々見たくなる。でも、あまり戦線を広げると焦点がぼやけるのですが、今後、ほかの国も検証するに当たって、もしあればと思いますが、いかがでしょうか。
○岩永委員 私もこのこと直接については色々疑問なところはあるのですけれども、最初に自分が発言したことと照らして、やはり資産の保有限度はどの国もある程度認めているというのは共通しているかなと思いました。
 その前の議論に戻るのですけれども、生活保護世帯の剥奪の指数が高いのは、資産といっても私たちが思うような資産ではなくて、生活の基盤となるような基礎資産とでもいうようなものがないということだと思います。生活の脆弱さみたいなものが剥奪指標の結果にあらわれていると思うのです。
 資料2の家計のデータとかで、先ほど住宅扶助の例を出しましたけれども、例えば借金の返済をしているとか、収入申告を怠ったとかいうことの不正受給によって、それを罰として返しているという場合もあって、そのようなことは全然この家計のデータには入っていない。多分、答えている世帯は、家計簿の調査に協力できるとてもまめな世帯であって、210万人いるうちの3,700世帯なので、これが生活保護世帯の実態をあらわしているとか、消費の実態をあらわしているというのもちょっと違うかもしれないなと、外国の制度の説明を聞きながら思いました。
○駒村委員 そういう代表性の問題みたいなものは、統計の上で考えなければいけない一方で、それを言うとデータが使えなくなるという部分もあるので、やはりそういうことは頭に入れながら、しかし、データで把握できるところはどこまでなのか、考慮しなければいけないところはどこまでかという話になると思います。
 ほかにお二人の委員、阿部委員、渡辺委員、ありますか。お願いします。
○阿部委員 今日の資料は非常に色々考えさせられ、興味深いところがありました。1つ気になったところは、公的扶助の体系自体の違いをあらわしているところもあると思うのですけれども、生活費の中で費目によって違う基準で決められているというところが国によってはあるのではないかと。アメリカが一番典型的で、アメリカも全部違うプログラムにしてしまっているので、例えば食費の積算と住居費の積算をどれぐらいの扶助の給付水準にするのかというのと、それ以外のところと、アメリカの場合は光熱費も別立てにしているわけですが、そういったものが違い、給付水準の設定の仕方も違い、受給資格でさえも異なるやり方をしている。
 その点、私が今まで生活保護の基準部会にかかわってきて悩んだところの一つとして、生活扶助の部分の中でかなり色々なものも全て見てしまっているところ。全部同じ指数を当てはめようとしていて、それを受け取る人が誰かということも、例えば子どもの食費と大人の食費を同じように考えていいのかと、先ほど山田先生もちらっとおっしゃったようなこともあったりして、乳幼児の食費を一般の乳幼児の食費の70%とかに設定してもいいのかという議論もあって、そういったことを考えていくことについて、私たちは生活扶助というものを一緒くたに考えているのですけれども、それを考える必要はないということもあるのかなと、これを見て思ったところです。
○駒村委員 積み上げるときの構造を、今のままの延長上で議論していていいのかというのは、個別の品目をよく考慮していかなければいけないのではないかと。制度的なもの、制約要件はそれだけなのか。
○岩永委員 今の阿部先生のお話を聞いて思い出したといいますか、今の先生のお話は実際的なことのインプリケーションだと思うのですけれども、そもそもこの外国の制度が最低生活を保障しようと思って成り立たせている制度なのかというのが問題だなと思いました。生存権を保障するという日本と同じ理念に立っている国は少ないと思うので、そこが違うと、色々な制度で色々な保障をして、自分で自由に使えばいいと考えているとか、そもそもの発想が違うと参考にするときにも注意が必要かなと思いました。
○駒村委員 憲法と生存権から規定している日本と同じパターンなのかと。国によって最低生活の意味づけというのは違っているので、それはチェックして意識しておかないと、実は違う政策を見ているだけなのかもしれないというのは注意しなければいけないと。この次の国際比較においては、それを見ておかなければいけないということだと思います。色々な生活や公的扶助の国の国際比較を見ても、その部分を意識しないとミスリーディングになる可能性はあると。
 渡辺さん、何かありますか。いいですか。
 もしよろしければ、またほかの国も続けて情報が出てくると思いますので、今日のところは、資料は以上のとおりだと思いますので、ここで今日の議事は終わりにしたいと思います。
 今後の開催について、事務局から連絡をお願いいたします。
○矢田貝社会・援護局保護課長 次回、7月から9月に1回ということでございますが、日程は調整中でございますので、また追って御連絡をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○駒村委員 それでは、本日の議論は以上にさせていただきます。御多忙の中、大変ありがとうございました。