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2019年7月31日 第13回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録
日時
場所
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
議事
○元村予防接種室長補佐 定刻になりましたので、「第13回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」を開催します。本日は御多忙のところ、御出席を頂き、誠にありがとうございます。開会に先立ちまして、この度、健康課長に着任しました神ノ田より御挨拶を申し上げます。
○神ノ田健康課長 皆様、おはようございます。厚生労働省健康課長の神ノ田です。7月9日に着任いたしまして、今回が初めての、この小委員会への参加ということになりますので、一言御挨拶を申し上げます。
本日は大変御多忙のところ、本小委員会に御出席を頂きまして誠にありがとうございます。また、大西委員長をはじめ、この本小委員会の委員の皆様方におかれましては、日頃から予防接種施策の推進に格別の御理解・御協力を頂いているところです。この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます。
本小委員会では平成25年の予防接種法改正以降、新たに定期接種として導入するワクチンに関する技術的課題につきまして、活発な御議論を頂いてきたところでありまして、今回で13回目の開催ということです。欧米諸国とのワクチンギャップの解消と、その解消に向けた大変重要な役割を担っていただいているところでありまして、重ねての感謝を申し上げます。
本日はロタウイルスワクチンを定期接種化するにあたっての技術的事項等につきまして、これまでの御議論を踏まえ、本小委員会としての見解を取りまとめていただきたいと考えています。大変限られた時間ではありますが、忌憚のない御意見を頂戴できればと思っています。以上、簡単ではありますが、会議開催にあたっての私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
○元村予防接種室長補佐 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いします。また、傍聴の方は、「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。
続きまして、委員の出欠状況について報告します。現在、委員8名全員に御出席いただいていますので、厚生科学審議会の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。また、本日は参考人として、2名の方に御出席を頂いております。まず、予防接種推進専門協議会からの御推薦で、福岡看護大学基礎・基礎看護分野 基礎・専門基礎分野教授の岡田賢司参考人です。
○岡田参考人 よろしくお願いします。
○元村予防接種室長補佐 続きまして、ファクトシート作成の関係で富山県衛生研究所所長の大石和徳参考人です。
○大石参考人 よろしくお願いします。
○元村予防接種室長補佐 それでは申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いします。
それでは、議事に入る前に配布資料の確認をさせていただきます。前回までと同様にペーパーレスの開催をさせていただきます。お手元のタブレットには、議事次第、配布資料一覧、委員名簿、座席表、資料1~5、参考資料1~4、委員からの審議参加に関する遵守事項のファイルを格納しています。不足の資料等がありましたら事務局にお申し出ください。
それでは、ここからの進行は大西委員長にお願いします。
○大西委員長 皆様、おはようございます。大変お暑い中、お集まりいただきましてありがとうございます。それでは、早速ですが本日の議事を始めていきたいと思います。事務局から審議参加に関する遵守事項等について、報告をお願いします。
○元村予防接種室長補佐 審議参加の取扱いについて報告します。本日御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取り状況、申請資料への関与について申告を頂きました。各委員・参考人からの申告内容については、タブレットに格納してありますので、御確認いただければと思います。
本日の審議事項は、「1.ロタウイルスワクチンについて」を予定しています。こちらの製造販売業者はグラクソスミスクライン株式会社、MSD株式会社となっています。本日の出席委員及び参考人の申出状況及び本日の議事内容から、今回の審議への不参加委員及び参考人はいないことを報告します。以上です。
○大西委員長 ありがとうございます。それでは、議事に入ります。審議事項1の「ロタウイルスワクチンについて」の審議を始めたいと思います。活発な御議論をよろしくお願いします。まず事務局より、資料1~4の説明をお願いします。
○永田予防接種室長補佐 事務局です。資料1~4に基づいて説明します。まず資料1を御覧ください。こちらは「ロタウイルスワクチンについての経緯」です。前回、6月5日に本小委員会が開催されておりますが、その際に、この経緯については説明をさせていただいたところです。今回はその2ページ目の最後の部分、2019年6月という部分を経緯として追記をさせていただきました。3点、本小委員会においては技術的な課題について審議を頂いているところですが、「➀腸重積のベースラインデータの整理」、「➁リスクベネフィット分析」については、一定程度明らかになったという御議論を頂いたところです。「➂費用対効果の推計」については、事務局で追加の知見を整理した上で、今回の小委員会において説明をさせていただき、取りまとめに向けた議論を行う方針とされたところです。
続きまして資料2、「ロタウイルスワクチンの技術的な課題に関する知見(2019年7月、再々整理版)」という資料をお開きください。こちらについても2018年、また2019年6月に御議論いただいた資料を更新しているものです。具体的に申しますと、8ページを御覧ください。前回、6月5日の本小委員会におきまして、8ページに掲載させていただいております、星、近藤らによる効果指標として質調整生存率、QALYを用いた費用対効果の論文について、掲載が落ちているという御指摘があったところです。大変失礼いたしました。こちらの研究につきまして、8ページ、「その他の知見」という形で掲載させていただいているところです。内容につきましては、同じ内容を資料3のほうでまとめておりますので、併せて資料3のほうでこの後、説明をしたいと思います。
それでは、資料3をお開きください。「ロタウイルスワクチンの技術的な課題について(改訂版)」です。先ほど経緯の部分で説明をさせていただきましたとおり、本小委員会においてロタウイルスワクチンについては、技術的な課題として3つ整理をしていただきたいと考えております。技術的な課題➀、「腸重積のベースラインデータの整理」については、2~4ページ目について、前回も同じような資料で説明をさせていただいたところです。前回の御議論によりまして、論点の1と2という所につきましては、御議論を頂いて、結論を頂いていると理解をしているところです。なお、前回4ページ目で説明をさせていただきましたが、腸重積の発症数と報告数につきましては、仮にロタウイルスワクチンが定期接種化された後には報告数が上昇するという形で説明をさせていただいているところです。
続いて5ページ目以降ですが、技術的な課題➁、「リスクベネフィット分析」についてです。5ページでは過去のこのような報告、リスクベネフィット分析についての報告がありますということ、ないしは、6ページ目におきましては赤囲みをしている所ですが、腸重積が1症例生じる間に480例のロタウイルス胃腸炎入院例が予防されているという形で、ベネフィットのほうが上回るのではないかという形で御議論を頂いたところです。
続いて7、8ページ目ですが、技術的な課題➂、「費用対効果の推計」についてです。前回、事務局からの資料で7ページ目、中込らによる報告につきまして、費用比較分析の結果について説明を差し上げたところです。具体的に申しますと、7ページ目の右側、費用対効果の推計という所で、(ロ)ロタウイルスワクチンはほかのワクチンと同時接種される場合が多いことから、接種時を除き生産性損失も含めた場合の計算として、ロタリックス、ロタテックが、それぞれ接種群費用のほうが1,854円、3,331円、非接種群費用よりも上回っているという形で資料を説明させていただきました。この結果として、全体でワクチン価格、又は接種費用が少なくとも4,000円程度低下すれば費用は逆転するという御議論を頂いたところです。
8ページ目、今回追加をさせていただいている資料ですが、技術的な課題➂、「費用対効果の推計」について(2)です。こちらは前回御指摘がありましたところで追加をさせていただいておりますが、星、近藤らによる厚生労働科学研究費に基づく論文に基づいて資料を作らせていただいております。こちらの研究においては、QALY、質調整生存年を用いまして、支払者の視点でロタウイルスワクチンの費用対効果が687.7万円/QALYであり、500万円/QALYを僅かに上回った。その際に接種費用が3万円という形で計算をされているところですが、3万円から2万5,000円程度となった場合につきましては、500万円/QALYとなる。社会の視点では33.7万円/QALY、又は費用削減的であったという結論が示された論文です。
本論文におきまして、費用として考慮されているものとしては、直接医療費としてワクチン接種費用、ロタウイルス感染性胃腸炎の外来費用・入院費用、ロタウイルス関連脳炎・脳症の治療費用、神経学的後遺症に対する治療費用などです。また、保護者の生産性損失も計算の一部として示されているところでして、ワクチン接種時の生産性損失、ロタウイルス感染性胃腸炎の外来・入院時の生産性損失、ロタウイルス関連脳炎・脳症治療時の生産性損失、神経学的後遺症に係る生産性損失が含まれているところです。
右側ですが、費用対効果の推計は3通りで行われていまして、(イ)が支払者の視点、(ロ)が社会の視点、こちらについてはロタウイルスワクチン接種の75%をほかのワクチンと同時接種する場合の計算となっています。(ハ)の部分で社会の視点、全てのロタウイルスワクチンを単独接種する場合で計算されています。
なお、ワクチンなしと(イ)(ロ)(ハ)で比較していただくと、計算上出ておりますが、QALYの増分につきましては、ロタウイルスワクチンを導入した場合につきまして、小児1人当たり0.00174QALYが増加するという形でICERのほうが計算されているところです。論文中では(イ)のものに基づきまして、先ほど申し述べた687.7万円/QALYとなるという形で示されているところです。
続いて9ページ目です。こちらも新たに作成させていただいた資料ですが、内容としては前回、池田先生から御示唆を頂いているものです。イギリスにおいて、本ロタウイルスワクチンが導入された際の過去の経緯について、事務局でも確認をさせていただきまして、まとめさせていただいたものです。イギリスにおいては2009年2月にJCVI(Joint Committee on Vaccination and Immunisation)において、ロタウイルスワクチンは胃腸炎の発生率を下げる効果があると考えられる。しかし現在のロタウイルスワクチンの価格では、新規のワクチンを予防接種プログラムに導入する際の費用対効果の基準を満たさない。このため、ロタウイルスワクチンの定期接種としてのプログラム導入には、価格を現在よりも大幅に引き下げる必要があるという結論を持って、定期接種へのプログラム導入が見送りをされたという経緯があります。
また、2011年6月、同じようにJCVIにおいて改めて議論が行われたところですが、こちらについても費用対効果の基準を満たさないことから、定期接種としてのロタウイルスワクチンのプログラム導入が見送られたという経緯があると伺っています。その上で2012年春にイギリス保健省がロタウイルスワクチンについて入札を実施され、2012年11月に費用対効果が良好となる価格でGSK社のロタリックスが調達されることが決まり、2013年7月よりロタリックスが小児予防接種プログラムに導入されたと理解しているところです。
こういった点を踏まえまして、10ページ目ですが、これも前回お示しさせていただいているところですが、論点1~6とありまして、前回6月の本小委員会においては5番の部分、また、一部6番の部分について事務局への宿題が残っているという形ですので、本日、こちらについて御議論いただければ幸いです。
続きまして、先走って大変恐縮ですが、資料4を御覧ください。前回の小委員会で、先ほど申しました論点5以外の部分については、皆さんの御議論を頂いているということがありましたので、事務局としまして、これまでの経緯を踏まえまして、「議論のとりまとめ(案)」という形で資料4で整理をさせていただいているところです。あくまでこちらは案ですので、御意見を頂ければと思います。
1ページ目、「はじめに」については過去の経緯ですが、4つ目の○で示しているように、本小委員会においては、3点の技術的な課題について議論が行われた、ということは先ほども説明をさせていただいたところです。「2.ロタウイルス感染症について」につきましては、これまでもファクトシートなどが作成されておりますので、そちらの記載を書かせていただいているところです。
2ページ目、「3.ロタウイルスワクチンの概要について」、こちらについてもファクトシートなどから記載をさせていただいているところです。(1)ロタウイルスワクチンの有効性について。小委員会での議論のポイントという形で、四角囲みをさせていただいております。この有効性につきましては、「本小委員会においては、ロタウイルスワクチンは、ロタウイルス下痢症を発症するリスクを低下し、この有効性は、ロタリックス及びロタテックで同等と考えられた。ロタウイルスワクチンには間接効果(集団免疫効果)があると考えられた」という御意見を頂いていると、事務局としては理解しているところです。
続きまして3ページ目、ロタウイルスワクチンの安全性についてですが、同じように本小委員会においては、ロタリックス及びロタテックの安全性は同等と考えられた。また、海外において、ロタウイルスワクチンの接種後、腸重積の発症リスクが増加するという報告があることから、我が国においても腸重積の発症率のデータの整理が必要と考えられた、というように整理をされたと思っています。
続きまして、その点を踏まえて4ページ目の「4.技術的な課題」の➀、「腸重積症のベースラインデータの整理」についてですが、前回、6月5日の小委員会におきまして、我が国においてロタウイルスワクチン接種後に腸重積症の発症率が増加するリスクを否定することはできないが、このリスクは大きいものではないと考えられた。月齢3か月頃以降、徐々に腸重積症の発症率が増加することを踏まえると、ロタウイルスワクチンの初回接種は、早い時期に実施することが必要であると考えられた。ロタウイルスワクチンが定期接種化された場合、副反応疑い報告等によって報告される腸重積の報告数が見かけ上増加した場合であっても、必ずしも腸重積症の発症数全体の増加を意味しないことに留意が必要ではないか。腸重積症全体の発症数が増加していないことを確認する観点から、研究班によるサーベイランスや、NDBを活用したモニタリングを合わせて実施する必要があるのではないか、というような御意見を頂いたところです。
続きまして、8ページ目の「5.技術的な課題」の➁、「リスクベネフィット分析」についてです。前回の小委員会におきまして、我が国におけるロタウイルスワクチンによるリスク(副反応によって生じうる腸重積症)とベネフィット(ワクチンによって予防されるロタウイルス胃腸炎入院例)とを比較した結果、ロタウイルスワクチンの接種を推奨している諸外国の報告と同様に、ベネフィットがリスクを大きく上回ると考えられました。ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることは、リスクベネフィットの観点からは問題ないと考えられた、という御議論を頂いたと理解しているところです。
続きまして10ページ目、「6.技術的な課題」の➂、「費用対効果の推計」についてです。こちらにつきましては、これから本日も御議論いただくものと理解しておりますが、小委員会での議論のポイントという部分に記載させていただいているとおり、現状で入手可能なエビデンスにおいては、ロタウイルスワクチンは費用対効果が良いとは言えないことから、費用対効果の観点からは、現状の接種にかかる費用でロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることは適当でないというような御議論が、前回一部分であったと理解しているところですが、本日も御議論いただければと思っています。
こういった点をまとめたのが、10ページ目の下にある7.です。「ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることについて」という形で、これまでの議論に基づいて、事務局で文案を作成させていただいておりますので、紹介をさせていただきます。ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることは、リスクベネフィットの観点からは問題ないと考えられた一方で、費用対効果の観点からは、現状の接種にかかる費用でロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることは適当でないとされた。このため、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とするにあたっては、接種にかかる費用を低減することが必要であると考えられる。ロタウイルス感染症の予防接種法における位置付け等については、予防接種制度全体の状況も勘案しながら総合的な判断が必要であることから、引き続き、予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会等で審議をすることが妥当である。こちらにつきましては、本日の御議論を踏まえたものとなっておりますので、一応、事務局としては議論のたたき台として示しているものですので、御審議いただければと思います。事務局からの説明は以上です。
○大西委員長 ありがとうございました。資料1と資料2に関しては、これまでの経緯や知見について整理した資料ですので、本日は事務局から御説明があった資料3と資料4を中心に御議論を頂ければと思います。まず、資料3について確認をしたいと思います。8ページ、9ページが新しい部分になろうかと思います。8ページが前回、近藤先生から御指摘のあった星等の費用対効果に関する推計についてと、9ページのイギリスでのロタウイルスワクチンの導入経緯についてです。この部分に関して、御質問や御意見があればいただきたいと思います。いかがでしょうか。まずは8ページからいきたいと思います。
○近藤委員 8ページに出ている星先生の論文です。今回、この場で議論されている現在の状況からロタウイルスを定期接種しなければいけないという観点で、この研究の結果をどう解釈するかということですけれども、この研究で置いている過程と現在の状況は多少違っているので、どう読み込むかということが問題になると思います。まず増分費用効果比で見るということが、費用対効果に優れるか優れないかという大きな見方ですので、それをどう見るかという話です。
大きな違いは、前回も申し上げたように、これから定期接種化するというときの増分を考える場合、現状では6割か7割ぐらいの方が、もう既に打っていらっしゃるという状況で、定期接種化すればそれが8割、9割になるのではないかという話になっているのです。こちらのモデルがそのまま、おおむねよろしいという前提で、今回は現状からの定期接種化という、ディシジョンメーキングに伴う増分分析を行うとすると、2割程度の方が増える。5分の1ぐらいの効果を得るのに、例えば6割から8割だとすれば、それまで財政の立場から言えば、アウト・オブ・ポケットで皆さん払っていらっしゃったところまで払うという話になってくると、4倍、5倍の負担をするということになる。そうすると、増分費用効果費が687万円となっているところが10何倍、20倍、1億円近い話になるということが、まず増分分析をしっかりやって厳密に考えましょうという話になります。
ただし、そういう読み方ではないと。1人でも打ってもらう方が増えて、打っていない状態と打っている状態とを、今は6割の方が打っているのですけれども、そうではなくて、ロタウイルスに関わる疾病の負担に伴って、社会がお付き合いして費やしている損失なり、費用なり、資源の失われているものと得られる健康とのバランスを考えましょうと。全く打ってない状態と比較してということになってくると、それからは財政の立場ではなく、誰が負担するかにかかわらず、社会全体でvaccine preventable diseasesがあるのに、皆さん御苦労されていると。保護者の方も連れて行って御苦労されているということも含めてやれば、(ロ)のシナリオになってきて費用削減的で、公衆衛生政策上としては、予防接種としては、もっと打っていただくように財政負担することもいいのではないかという話になってくる。
しかしながら生産性損失のようなものではなく、もう少し財政的な視点になってくると、それでもそういう観点になっても、687万円は500万円より高いじゃないかという御指摘があるかと思うのです。しかし、そもそも論で言うと500万円というのが目安であることに変わりはないのですが、きっちり500万円になるかならないかというように解釈すべきものではないというように、多くの専門家は考えていらっしゃると私は思うのです。そうすると400万円とか、600万円とか、300万円とか、700万円とかをどう考えるかということが1点になってきます。もちろん、このモデル自体も不確実性があって、そこは微妙なところになってきます。
もう1点の論点としては、500万円というのがあちらこちらで言われていますけれども、主に治療的な医療に対する基準です。そういった医療が行われたときに、受益者は患者本人であるというものです。アメリカなどでも5万ドルルールというのがあると言われているのですけれども、ワクチンの場合は10万ドルぐらいまでいいのではないかという議論があると。それはどう説明するかと言われれば、いろいろな説明の仕方があると思います。ワクチンの予防接種というのは、経済学的には外部効果があって、打たれた本人だけでなく、社会全体にベネフィットがあるという観点では、社会的な支払額は個人が享受するような医療の技術革新に対して500万円というのに比べれば、もっと社会全体にベネフィットが広がるということを考えれば、1,000万円でもいいかもしれないという議論もあるかもしれません。
そういうことを総合的に考えると、ワクチンに関しては500万円にそんなにこだわることもないのではないかという議論もあるかと思います。解釈の仕方には、いろいろな問題点があるとは思うのです。私としては、そういうことを総合的に考えて社会的に考えれば、687万円というのは、費用対効果に優れると言っていいのではないかと思っております。あと、比較的最近定期接種化されたものの中でも、実際には600万円台、700万円台というものでも定期接種になった事例があったのではないかと思っております。もちろん、このモデルがある程度いいという話が前提になっております。そのほかにも、今の話は非常にいろいろな解釈で、いろいろなジャッジメントをしておりますので、正しいかどうかということはありませんが、687万円と出てきたモデルの結果を見て考えれば、社会的には費用対効果に優れると私は考えます。
○大西委員長 幾つかの解釈の仕方の視点を御説明いただけたかと思います。コメント、あるいは御意見はありますか。
○大石参考人 前回の議論でもこの辺は廣田班の議論で、社会的視点での評価は、小児のワクチンについては非常に難しいのでやらないと決めたという議事があったと思います。私は直接この議論に参加していないので詳細が分からないのですが、費用対効果の理論というのは、支払者の視点と社会的な視点の両方があって、どちらを重視するかが大事になってくるだろうと思うのです。ただ、社会的視点の意義は理解できるけれども、実際に数値化するのは非常に難しいのではないかと思います。この意味で、私としては支払者の視点が分かりやすいような気がしております。専門の先生方、いかがでしょうか。
○近藤委員 小児が難しいというのがどういう議論だか、私はその経緯を存じ上げないのですけれども、この分野で、国際的には別に小児のワクチンの費用対効果というのは普通に行われているもので、特段難しいこととは私は認識しておりません。
支払者の立場が分かりやすいというお話でしたけれども、そうすると基準の閾値のほうの話になってくると、500万円ということは外的な基準になりますので、委員会としてはそこを基準にするとなれば、687万円を超えているという話になると思うのです。それは別にオーソライズされているわけでもなく、議論としては予防接種のようなものでは、もう少し高いものであるという議論もないわけではない。正しく解釈の領域です。
では、解釈を統一しようということになれば、解釈の仕方について、ある程度のコンセンサスが出ればいいと思いますけれども、なかなか難しいところです。要するに、現状は支払者の立場で、かつ増分分析もありなしということです。現実の増分分析と言うよりは、やった場合とやらない場合だけを比較したような単純な増分分析をして、こういう計算をすればこの値になってきて、この値をどう見るかというのが、正しく500万円で良いか悪いかという話に帰着してしまう。小児で難しいというのはよく分かりましたが、私は別に普通にされていることだと思います。
○大石参考人 もしよろしければ、前回会議で御発言の池田先生、この辺はどういう議論だったのか、詳細を教えていただければと思います。
○池田委員 廣田班のときに、幾つかの定期接種化を想定しているということで議論しているワクチンについて、共通の指針で費用対効果の検討をしようということを実施したときには、その時点で小児のワクチンに関しては大人と比較して、2つの点で特別な事情があるだろうということでした。1つは、いわゆるQOLの測定が、海外では一定、小児のQOLを測るような指標もあるのですが、日本ではそういうものが少なくとも当時はなくて、外国の数字をそのまま引用して使うということでした。日本と海外のQOLというのは、大人でさえ同じ健康状態でも値が異なってきます。小児についてそれを機械的に当てはめて計算することは難しいのではないかというのが、1点ありました。
もう1点は、小児のワクチンの場合は疾病が防げた場合に、親とか介護する方の生産性損失の減少にも非常に大きなインパクト、価値があるわけです。むしろ、その部分を反映させたような費用比較分析で行うことが、ワクチンの価値をより適切に反映するのではないかという議論がありました。このときは技術的な課題もあり、研究班の分担の班の中では小児のワクチンについては原則QALYの算出を行わず、一方で生産性損失という部分を反映させた形で、複数のワクチンについて共通の方法論で分析をし、結果を提示させていただいたというのが過去の話です。それに基づいて7ページで紹介された中込先生の分析、あるいは、それを基にした費用などを置き換えた場合の推計というのは、そこがベースになっているところです。
今、近藤先生から御紹介いただいた費用対効果、コスト/QALYを使って計算するのは本当に理想的なやり方ですし、これが世界的な標準に近いとは思うのですが、ワクチンの世界では議論があるところです。小児1人当たりのいわゆるQALY(質調整生存年)の増分が、こちらの数字を拝見すると0.00174QALYです。多分、これは1日分にも満たないようなゲインで、そのゲインのために幾ら掛けますかというその割り算の値が、このQALYの値です。小さいものと小さいものの割り算をしたときに、ちょっと不確実性を考慮すると、この値は大きく変動するのです。この論文は非常に立派な論文で、そういう感度分析はしっかりやっているのですが、相当なレンジの広さなのです。そうなると割り算した結果を基に、いわゆる点推定の値でいろいろな判断をしていくというのは、なかなか限界があるのではないかと、我々が似たような形で分析をしたときに感じたところです。
実は、近藤先生に御説明いただいた中では、非常に納得のいくことが多かったのですが、私がちょっと理解できていないことがあるので、教えていただきたいと思います。増分分析のことを御紹介いただいたのですが、増分分析というのは比較対照を何に置くかによって、その増分が変わってくるわけですよね。要するに現状の一定程度、そのワクチンが使われている状態なのか、ワクチンをやらない方にやったらどうなるかという比較対象の取り方がいろいろ変わってくるのです。多分、私の理解が悪いと思うのですが、比較対照がその二者のどちらであっても、増分費用と増分効果を出して割り算を出したら、値が同じになるような気がしています。
「支払者の立場」と言うときの支払者というのは、国なのか、保険者なのか、国民なのか、誰なのかによらず自己負担も含めて費用として算定されると思うのです。例えば今、一定程度の人が受けていて、残りの方に追加の費用、要するにワクチンを受ける人が増えたらその分の費用を誰が負担するにせよ、支払者は負担するわけだから、それで得られる効果はその人数分の効果なので、多分割り算をしたときにICERの値は、単純に考えれば同じになるのではないかと思ったのです。いわゆる支払者の視点という文脈で議論をしたときには、同じになると思うのですが、そこが変わってくるというところが、私が理解できていないところです。
○近藤委員 池田先生が説明したほうが正しいです。ただし、財政の公的な支払いということで、一般財源で使う予算があるところから定期接種をすれば、財政措置をするという観点で言うと、そこが増える増えないというところについて、このモデルでは先生がおっしゃるとおり、モデル上は自己負担も多分に入っていることになるのです。ただ、一銭も払わなくても60%、70%の方が打っていらっしゃるという今の状況に対して、打っている方にも払うというのはたくさん払うことになるから、そこの部分だけを出せばということで、それは財源影響分析のように、違う観点で計上し直さなければ分からないのです。
潜在的な問題としては、新しく追加的に国庫から出ていくお金の額と得られるゲインが、このモデルよりも悪いのではないかということについては、認識はあってもいいのではないかという観点です。そこはなかなか不正確な部分もあって申し訳ないのですが、池田先生のおっしゃるとおりです。モデル上は、そういうように割れば、あと、自己負担も含めてという話になっておりますので、そうなりますけれども、中には国庫ということになってくると、政策決定を伴う国庫からの出金となると、そういうポイントがあるのではないかということで、少し不正確な説明で悪かったと思いますけれども、説明させていただきました。
○池田委員 大変よく分かりました。ありがとうございました。あと、先生が御指摘されていたことで、いわゆる閾値と言いますか、幾らを超えたら費用対効果が悪くなるという基準値についてです。保険医療のいろいろな水準などは各国違うので、世界で1つの統一値を作ることは、多分難しいと思います。ちょっと部局は違うのですけれども、医療課と言いますか、中医協の部会でいろいろ議論がなされたときには、例えばアメリカでは医療費の水準が日本とは大分違うところがあり、GDP比で見たときに、医療費そのものも2倍近い違いがあるということで、それで閾値も変わってくる可能性があるとか、あるいは途上国だと医療の水準も違うし、恐らく出せる金額も変わってくるということがあります。参照すべき国というのが、そのときはイギリスを中心としたヨーロッパ、カナダ、オーストラリアといった所の基準値を参考に、日本の数字の妥当性などが検討されました。
また、複数の研究者が1年分の健康な命の価値について、幾らの価値があるかというWTPという研究を過去に行っております。その結果、複数の研究者が違う手法でやっても、おおむね500万円前後に収束してくるということがあります。今のところ、中医協では、保険診療で使う場合の価格の算定においては500万円/QALYというのを、原則的な参照値と言いますか、基準値と考えて、これを上回っていくと価格の調整として引下げを行うということが、この4月から制度化されたという状況です。
ワクチンあるいは予防的な医療サービスの場合に、違う基準値を使うかどうかというのは、更に研究が必要な部分もあると思いますけれども、今日、事務局のほうで参考資料として出していただいたイギリスでは、全く同じ基準値、全く同じガイドライン、手法を使ってこういった判断をしております。また、私がオランダ、カナダ等の研究者に聞いても、薬とワクチンとでは一緒ですということを確認しております。そういうことなので、もし日本でこれをあえて変える必要性があればいいと思いますが、そうでないということであれば、当面500万円というのを1つの基準値としてよいのではないでしょうか。今回出された手法が異なる2つの研究結果の中で、このワクチンに関しては若干価格の見直しと言いますか、その辺りの価格に関しての一定の課題があるのではないかという認識を私は持ったところです。これはほかの先生方にもいろいろ御検討を頂いて、議論すべき部分かと思っております。
○大西委員長 ありがとうございます。本委員会での技術的な課題の3つ目、費用対効果の推計という点においては、この資料の7ページと8ページの費用比較分析・費用対効果のデータが、今資料として出されているということかと思います。閾値の話等々、また後で取りまとめ案のところで議論させていただくことになろうかと思いますが、ここでは9ページに、イギリスの対応の経緯という資料が出ております。これについて何か御意見、御質問等はありますか。
よろしければ、次に資料4に議論を移していきたいと思います。資料4では前回の議論の内容に基づいて、本小委員会での取りまとめの案が事務局から示されています。今日はこれをまとめることを目標に、議論をしていきたいと思っております。幾つかに区切って議論をしていきたいと思います。まず、資料4の1ページから始まる「はじめに」と、1ページの下の2ポツのロタウイルス感染症についてです。これまで本小委員会で説明があった事実関係だと思いますが、御意見などがあれば、ここでお聞かせいただければと思います。
それでは次に、「3.ロタウイルスワクチンの概要について」ということで、ここには(1)、ロタウイルスワクチンの有効性についての議論のポイントが、2ページの下の四角の囲みでまとめられております。もう1つ、(2)のロタウイルスワクチンの安全性についてというのが、3ページの中段に四角囲みになっております。こちらについて御意見はありますか。
よろしいですか。ここについても取りまとめ案に関して、特段の御意見はなかったということになろうかと思います。
次に技術的な課題の➀の「腸重積症のベースラインデータの整理」についてと、➁の「リスクベネフィット分析」が8ページに、「技術的な課題」の「費用対効果の推計」についてが、10ページの頭にあります。これについて御意見などはありますか。特に資料3の費用対効果の議論があった点も踏まえ、事務局案である四角の囲みの中の表現ぶりなども含め御確認を頂ければと思います。まずは、ちょっと長いので、技術的な課題の➀の「腸重積のベースラインデータの整理」についてという4ページの囲みの中で、御意見等がありましたらお願いしたいと思います。多屋先生、よろしいですか。
○多屋委員 特に意見はありません。十分に議論されたと理解しております。
○大西委員長 あと、NDBの活用の文言も、ここに出てきておりますが、よろしいですか。
それでは技術的な課題の2番目、8ページの真ん中にある「リスクベネフィット分析」についてということで、議論のポイントを事務局でまとめさせていただいております。これに関して何か御意見、コメント等がありましたらお願いいたします。リスクベネフィット分析に関しては、ベネフィットがリスクを大きく上回ると考えられるということと、その観点からは予防接種法の対象疾病とすることには問題がないというまとめになっております。よろしいでしょうか。
次に先ほどの議論の続きです。まとめとしては10ページの一番上になりますが、「費用対効果の推計」についてということで、本委員会で議論を重ねてきております。取りまとめの案としては10ページ上の囲みですが、これに関して御意見、留意する点、コメント等がありましたら、よろしくお願いします。
○原委員 ここで、「適切でないと考えられた」という文言がちょっと強いような感じがして、これまで話していてリスクベネフィットは十分あることが分かっていて、費用対効果分析に関しては解釈の仕方などいろいろあって、課題があるぐらいなのかなという印象があります。何か、ずっと読んでいくと、費用対効果分析を持って定期接種化するかしないかを決めてしまうように読み取られてしまうのではないかなという印象を受けました。いかがでしょうか。
○菅沼委員 私も同じ意見で、A類疾病の対象は人から人へ感染し、その蔓延を防ぐということと、感染した際に重篤化する、あるいはその恐れがあるという疾患となっていたと思います。費用対効果というよりは、そういった点が対象疾病の要件と思いますので、この言い方だと、今までと考えが変わってくる印象を受けます。さっき御意見があったように、これで断定したような形で言ってしまうのは違和感を感じるところです。
○大西委員長 お二人の先生方からのコメントとしては、まとめの後段の部分、費用対効果の観点からはと一応制限は付けておりますが、適当ではないというのが一人歩きしてしまうところがちょっと恐いかなというような御意見と理解しました。この辺の文言の修正ぶり、何か適当な修正があれば頂けたらと思います。
○金川委員 予防に関して言うと、今はオールオアナッシングだと思うのです。定期になると全部公的費用でカバーしていただいて、任意は全部自費という形で、ほとんどサポートがないものをどうやって打つかというのは非常に、キャッチアップをやるときに難しいところです。ここで言う適当でないというと、やることは余りよくないという印象にとられるのではないかと思うのです。予防接種法というか、費用対効果を見ると公的費用で全て賄うことは、現在のところは適当でないというような言い方になるのかなとは思うのですが、将来的には適当になるかもしれないというような含みも持たせるかどうかということ。
それから、公的費用でワクチンをキャッチアップというか、遅れている人たちは打たないということでやると、麻疹とか風疹みたいになって、ずうっと打たない人が出てくるというようなことなのです。費用対効果だけで公的費用でカバーするかどうかを決めると、どんどんワクチンを進めるという立場からすると、非常に難しい状況になってしまうのです。予防効果というのも、非常にリスクベネフィットが高いということを考えて説明をすることもよくあることなので、ここで適当でないと言い切ってしまうと、今、自分で自費でやっている人たちはどう考えたらいいのという話になってしまうと思うのです、というところです。
○大西委員長 しかし、3つに分けてまとめをしているので、総合的なまとめのところで、恐らくリスクベネフィットの有効性という部分と総合的にということではあるので、ただ、一人歩きするのはまずいという御意見かと思います。
○大石参考人 基本的に私もリスクベネフィットの観点では定期接種すべきだけれども、費用対効果の推計からは課題が残るという程度にとどめたらいいのかなと思っております。総じて言うと、これまでの予防で、定期接種の対象疾患の考え方としては、やはり安全性、そして効果、そして費用対効果も1つ挙がってはいたのですが、場合によってはHibワクチンのように、費用対効果が明確でなくても、そういう髄膜炎とかの疾病を完全に減少する効果があったというところでは、必ずしも費用対効果は、場合によっては必要ではなかったというような過去の経緯もあると思うのです。ですから、ここでこのワクチンについて、ロタウイルスワクチンについて、費用対効果ではならないというような形にするのかどうかですね、その辺の位置付けが大事だと思うのです。Hibワクチンの場合、定期接種になったのは、いろいろ経緯もあったとは思うのですが、ここにはそういうコスト/QALY、あるいはコスト、ワクチン費用をある程度下げるとか、そういうことが過去にあったのかどうかを1点、事務局にお伺いしたいと思います。
私が申し上げたいのは、費用対効果の位置付けということを、定期接種化のワクチンの中で明確にしておくことが1つ大事なことかなと思います。この文章としては、費用対効果の観点からは、まだちょっと定期接種化には課題が残るというような文言にしてはどうかなという提案です。
○大西委員長 まとめのところの文言としては、適当でないという部分は、未だ課題が残るとか、そのような形のニュアンスにしておいたほうがよかろうということかと思います。このまとめはまとめですけれども、その後の矢じりというか、そこの所にポイントで詳細に書いてあるということも含めて、まとめとしては文言の修正程度でよいというようなことでよろしいでしょうか。
○林予防接種室長 1点質問がありましたので、お答えさせていただきます。Hibワクチンについては、緊急接種促進事業に導入する時点では、価格についての議論は余りなかったと思いますけれども、その予防接種法の定期接種に位置付けるにあたって、いろいろな経緯の中で価格が、若干ではありますが引き下げられた上で、時期は定期接種化の直後だったと思いますけれども、引き下げられたというような、そのように調整をしているところです。
これまでもやり方は十分に洗練されてこなかったかも分かりませんけれども、そういった考慮の中でやっています。今の御議論の中で今回3つの観点について御議論いただきましたので、それぞれについて問題がないか、あるかということでまとめていただくということが、この委員会にお願いしているところだと思います。総合的にどう判断するかというのは、また次のステップがあると思っていますので、今回は主に3つですけれども、それについての結論は明確に出していただいて、それを合わせてどう判断するかは、また次のステップだということで御理解いただければと思います。
○大石参考人 その価格調整が行われたのは2013年4月前ですか、後だったのですか。
○林予防接種室長 不正確だったら申し訳ないですけれども、価格が引き下げられたのは定期接種化後ではなかったかと思います。
○大石参考人 了解しました。
○岡田参考人 定期接種化の議論で有効性と安全性と費用対効果、この3つを見ていくというのは多くの皆様の御意見で賛成です。ただ、大石先生がご指摘のように、その中で、おそらくワクチンによって何が一番大切なのかが、ワクチンによって違ってくると思います。そういう意味では、費用対効果の位置付け、有効性の位置付け、リスクベネフィットの位置付けなど、それぞれ同じ重さを持っているものではなくて、ワクチンによってそれぞれ観点が少し違ってくる可能性があります。ほかのワクチンも含めてですが、書きぶりも全てがそろわないと定期になれないということになると、今からの定期の議論のところで課題を残すことになります。ロタウイルスワクチンに関しては、費用対効果には課題が残るけれども、有効性と安全性の観点では定期化することに関して問題ないというような、3つの課題の重き付けを少し考えていただければ有り難いかと思います。
○大西委員長 本委員会で、技術的な部分でデータを集め整理していくと。ある一定の結論を出し取りまとめをして、更に総合的な判断の部分に関しては基本方針部会のところで話をしていただくというように私は認識しているのですが、枠組みとしては。
○林予防接種室長 今おっしゃるように、総合的にどうするかについては1つ上の基本方針部会のほうでというように思っております。安全性・有効性については、ここでの御判断を次の部会で変えるということはできないと思うのですが、その価格に関しては、一見変えることができないように私たちは感じてしまいますけれども、そういうものではなくて、日々変わっていくものだと思いますので、ここで今の価格についてどうかという意見を出していただいて、その上で将来に向けてどうしていくかということだと思っていますので、ここで価格について否定的なコメントを出してしまうと、将来そこに拘束されるような性質のものでは、価格に関しては少なくともないというように認識しています。
○大西委員長 価格の部分に関しては、データに基づいて、ここでは評価をして取りまとめているということだと思います。ただ、閾値の所、閾値を500万円うんぬんの所もここで議論するような話でもないかと思っておりまして、基本方針部会の所でもう一度御確認と。ここでは500万円としたときにはと、要は目安的にその値を使っているというように考えていますけれども、それで御異論はありませんでしょうか。
○池田委員 もちろんそのように、私としては結構ですが、ここの何と言いますか単なる細かい書きぶりのことで恐縮ですけれども、今、技術的課題➂の中の矢じりになっているものの4つ目の文章、研究者の研究結果がこうなのでこれで基本的にいいと思うのですが、500万円/QALYを僅かに上回ったという、これは原文で見るとslightlyという言葉を使っていまして、もちろんslightlyですから僅かと言えば僅かなのですが、多分私が論文を読ませていただく中で、ここを僅かというように表現したのは、いろいろな不確実性とか推計のいろいろな精度のことも踏まえると、これは500万円を大きく超えているということではないので「僅かに」という言葉を使われたのだと思うのですが、この取りまとめにおいてはそういった経緯が全くなくて数字がパッと書いてあって、これで「僅かに」となると、これが何と言うか、一人歩きしますと、687という数字だと、これはもう500と比べて僅かな差だということが、前例としてずっと今後踏襲されそうな気がします。この「僅かに」という言葉は、ある意味価値判断にもつながるような要素もあるので、除いていただいてもいいのかなと思いました。
もちろん論文はそう書いてあるし、そう書くだけの理由というのは十分理解できるのですけれども、この取りまとめからは少し、ここは御留意いただいてもいいかなと思いました。
あと本当に細かい点ですが、矢じりの2つ目の「費用対効果分析」という言葉がありますが、そのほかの所は「費用効果分析」となっているので、そこは統一をしていただいたほうが間違いがないかと。別の分析だと思われると困るので、思いました。あと矢じりの最後のところは、四角の中で文言を修正される中で、それと整合性のある形で多分そこも変えていただけると思いますが、そのようなことで修正いただけるといいと思います。
○大西委員長 特に「僅かに」という部分は、評価も入っているのでここでは削除して、資料3のほうの「僅かに」という文言は残す形にしたいと思います。
○池田委員 著者というか、原文のほうでそういう形になっていて、それを紹介するパートなので、こちらは残っていてもいいのかとは思います。
○大西委員長 非常に重要なところなので、もう一度確認したいと思いますけれども、議論のポイントの四角囲みの「適当でない」という文言は、課題が残るというようなニュアンスに書き換えると。そのベースにある考え方として、本委員会では費用、価格の部分で若干課題があるということで、2つのデータから検討を要する点があるということをここで指摘しておくということにしたいと思いますけれども、よろしいですか。
はい、ありがとうございます。最後の7ポツのところ、「ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることについて」ということで、3つのセンテンスというか取りまとめ案として提示しておりますけれども、ここの部分に関して御意見等はありますでしょうか。最後ですので、読み上げます。「ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることは、リスクベネフィットの観点からは問題ないと考えられた一方で、費用対効果の観点からは、現状の接種に係る費用でロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることは適当でないとされた」。おそらくここの「適当でない」という所は同じような修正が必要なのかと思いますが、いかがでしょう。
はい、2番目、「このため、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とするにあたっては、接種にかかる費用を低減することが必要であると考えられる。ロタウイルス感染症の予防接種法における位置付け等については、予防接種制度全体の状況も勘案しながら総合的な判断が必要であることから、引き続き予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会等で審議することが妥当である」。よろしいでしょうか。
○大石参考人 2番目のポツの部分で、「接種にかかる費用を低減することが必要と考えられる」ということは、ワクチン代と接種費用を込みでまとめて書かれているという理解でしょうか。
○林予防接種室長 はい、そのとおりです。ここについては、区別なくトータルでの費用という意味です。
○大石参考人 了解しました。
○大西委員長 ほかによろしいですか。御意見がこれでよろしいようであれば、意見は出尽くしたというように思いますので、取りまとめを行いたいと思います。重複するところはありますけれども、これまでの議論を踏まえると、取りまとめ(案)の7に示されているというところで、1点、「適当ではない」という文言の修正は必要かとは思いますけれども、ここの部分ということで小委員会としては取りまとめを行いたいと思います。最後に確認です。これでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○大西委員長 表現ぶりの部分で幾つかあったと思いますので、事務局でそこの部分は取りまとめはできていますでしょうか。
○永田予防接種室長補佐 はい、事務局で今、本日御議論いただいたところだと、10ページの、費用対効果の推計につきましては、上の四角囲みの部分、「適当ではない」というところにつきましては、課題が残るというような表現を検討させていただきたいと思っております。また、矢じりの4ポツ目の、「500万円/QALYを僅かに上回った」という部分で、「僅かに」という文言を削らせていただきます。こちらの資料3につきましては、論文を紹介しているということでそのまま残す形にさせていただきたいと思います。
また、5ポツ目の、上の四角囲みとの関係ですが、最後の部分の「適当ではない」の部分を「課題が残る」というような表現に改めさせていただきたいと思います。また、10ページの7ポツの1つ目の○の語尾ですが、「適当でないとされた」という部分を「課題が残る」というような形に改めさせていただきます。一応手元のメモでは以上ですが、1点、金川先生の部分がありました。「現状では」という一言を入れるとか入れないとかいう点があったかと思いますけれども、それはよろしいですか。
○金川委員 検討するということを含めているといいと思うのですけれども。でも、この7番で全部でまとめて見ると、費用を下げないと予防接種法の対象にしませんと言っているような気がするのです。費用だけの問題になっているような気がするのですけれども、どうでしょうか。2つ目の○の所で、予防接種法の対象疾患とするにあたっては、接種にかかる費用の低減と他の要因を含めて検討することが必要ということだと思うのですが、これでいうと費用の検討をしなさいという話になるような気もするのですが、それはどうでしょうか。
○林予防接種室長 先ほどの繰り返しになるかも分かりませんけれども、ここでありましたほとんどの課題についてはクリアする議論を頂いたことを、まず、大変感謝をいたしております。残された課題がどこにあるかということだけが残っていますので、そのことを上の部会にお伝えした上で、やはり医療保険でもそうですが、どういう価値判断をするかということについては、それぞれのファクトに基づいて全体的な総合的な議論が必要だと思いますので、そういう観点から引き続き議論をしていくということになろうかと思います。
○大西委員長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。一部文言の修正はありますけれども、取りまとめができたと判断したいと思います。その上で事務局に確認をしておきたいのですが、本日の取りまとめを踏まえて、価格等々の話が出てきていましたけれども、例えば企業へ何かお願いするとかいうようなことが、今後どのような対応が想定されているのか教えていただければと思います。
○林予防接種室長 事務局としましては、今回の取りまとめを上の部会に御報告をした上で、さらに総合的な観点からの議論を頂きたいと思っております。ただ、その際に価格については、今の価格を前提とする必要は必ずしもなくて、今後変わりうるものだと思っておりますので、企業、製造販売業者2社ございますけれども、どのような対応が可能かを文書でお伺いしてはどうかと考えております。その結果も合わせた上で、予防接種基本方針部会において、定期接種化すべきかどうかを御議論していただいてはと考えております。
○池田委員 ちょっと蒸し返して申し訳ございません。例えば先ほどの取りまとめの7番の2つ目の○の表現を、「このため、現状において予防接種法の対象疾患とするためには」とか何か、現時点でこういう課題があるということを、つまり1つ目の○に現状の接種にかかる費用と「現状」と入っているので、2つ目も現在の状況ではとか、現時点ではとかという、少し限定を入れたほうが。つまり、これを10年後に見たときに状況が変わっているかもしれなくて、そのときは、費用がこれであってもほかの状況が変わっていて、費用対効果が改善されているかもしれませんし、何かここに「現状において」とか、そういう現時点での。推計も現時点のいろいろな仮定、前提をおいてやっているわけですので、そういうことを少し加えることもあるかなとちょっと感じたのですが、いかがでしょうか。
○大西委員長 ○で文章を全部分断したので、そういう印象が非常に強くなっているのは確かかと思います。つながりで読めば、このためなので、上がそのまま引き継いでいるように読めるような気もしますが、あってもよかろうかと、重複する分にはよかろうかとは思うので、検討していただきたいと思います。ほかによろしいでしょうか。
○多屋委員 重複するということについてはよいだろうということでしたので、例えば「リスクベネフィットの観点から問題ない」という一言で終わってしまっていますので、有効性について認められたことと、安全性については、腸重積症に関しての議論がされたことを少し簡単に補足してもよいのかなと。もし、重複がよいのであればそのように思いました。
○大西委員長 1文目に。
○多屋委員 「問題ない」という一言なので、資料1番とか2番でまとめになった所を、一行ずつ少しずつ加えておくことで、有効性はこの小委員会ではこのように議論され、安全性についてはこのように議論され、そして費用対効果はこのように議論された結果、費用対効果について課題があったということがわかるようにと言う意味です。ここだけ見た方には分かりやすいかなと思いましたが、いかがでしょうか。
○大西委員長 1文目に安全性の部分を入れればよろしいですか。問題ないということは非常に強い表現なので、私は十分な表現だとは思うのですが。
○池田委員 すみません、いろいろなことを思い付いて申し訳ございません。1つ目が有効性・安全性の問題がないということの文章にしておいて、2つ目の○で、一方、費用対効果はこうなので、価格を低減する必要があるというように分けてしまうという、そういうのもつながりとしてはよいかなと、ちょっと感じましたがいかがでしょうか。
○大西委員長 そうですね。1文目の所で安全性を含めて、「一方で」の前までにポジティブな、2文目にということで、そういう形でよろしいですか。ありがとうございます。審議事項の1はここまでにしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
続きまして、議事次第にあるように審議事項の(2)として、「不活化ポリオワクチン(IPV)及び沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(DPT)について」の審議を行いたいと思います。事務局から資料の5について説明をお願いいたします。
○永田予防接種室長補佐 事務局でございます、資料5に基づいて説明をさせていただきます。
資料5をお開きください。1枚目はタイトルとさせていただいておりますので、2枚目を御覧いただければと思います。「各ワクチンの定期接種化の検討を進めるにあたって」。各ワクチンの定期接種化に係る様々な課題についてこれまで説明をさせていただいていますけれども、IPVであったりDPT、DTaPにつきましては1つの課題に対してこういうデータが必要ですというようなお話を頂いて、1つの課題が解決する度に、また次にこういうデータが必要ですねというような御議論を頂いていたところでございます。
このため、効率的に検討を行うために、今後想定される論点をあらかじめ先の議論も踏まえまして議論していくこととしてはどうかと考え、今回、このような資料を作らせていただいているところです。
具体的にはIPV及びDTaPの5回目接種につきましては、第9回及び第11回ワクチン評価に関する小委員会、本委員会においてそれぞれのワクチンによる接種だけではなく、四種混合ワクチンを用いた接種に係る検討の必要性についても御指摘を頂いているところでございます。このため、IPVとDTaPを別々にというわけではなく、単一の課題というような、関連する課題として検討してはどうかという御意見、また5回目接種に使用できるIPVを含む混合ワクチンが現状では開発をされていないという状況がございますので、開発促進のために必要な論点についても、並行して議論していただければと考えているところでございます。
まず、不活化ポリオワクチンIPVについてですが、3ページ目に過去の議論につきまして背景と、直近となります2018年9月の小委員会での意見を記載させていただいているところです。IPVにつきましてはもう皆さん御存じかと思いますけれども、生ポリオワクチンからIPVに切替えがあったり、2016年2月の所ですが、接種上の注意書きが削除されIPVの4回を超える接種が可能となったというようなことが過去にございましたので、IPVの5回目接種について現状を整理し議論をしてきたというところがございます。
また研究班の方であったり、ないしは宮村参考人などからヒアリング等を行いまして、2018年9月、第11回のワクチン評価小委員会で議論していただいた際には、1ポツとして不活化ワクチン接種後の抗体価と感染防御能との関係、現時点の我が国におけるポリオに対する集団免疫の状態などにつきまして記載させていただいたような議論を頂いているところです。
2ポツ目、今後、5回目の接種についてどのように考えるかということにつきましても、四種混合ワクチンの開発ということについて御議論いただいたところです。
3ポツ、抗体価の推移と5回目の接種時期についてですけれども、どのような要素を考慮すべきかというような御意見につきましては、1つは就学前に接種すべきではないかという御議論も頂いているところですが、一方でなるべく遅い時期も選択肢に、抗体価の推移の観点からあり得るのではないかという御意見も頂いているというところです。
このような過去の御議論を踏まえ4ページ目、これを今回新たに作成させていただいたところですが、IPVの5回目接種について当面の論点という形で事務局で整理をさせていただいております。左のカラムとして、「接種の目的」「疾病負荷の大きさ」「国民の免疫の保有状況」「ワクチンの有効性」「ワクチンの安全性」「費用対効果」「その他の論点」という欄を作らせていただきまして、オレンジといいますか、赤の部分で記させていただいている部分は、過去に審議会の丸囲みの数もございますが、過去に御議論いただいている審議会で既に検討が始まっている、ないしは結論を頂いているというものをそれぞれの欄で示させていただいております。
一方で、接種の目的、疾病負荷の大きさ、ないしはワクチンの安全性、費用対効果につきましては、これまで余り議論の遡上に載っていなかったということも、今回この整理で示させていただきました。想定される論点として、当面の、まずは5回目の接種に関すること、単味ワクチンのような議論と将来の混合ワクチンの開発を踏まえた形での議論ということで、論点をそれぞれ整理をさせていただいたところでございます。
本日、これは、あくまでも事務局で過去の議論を整理させていただいたところ、また、今後将来想定されるところを事務局で検討した部分ですので、このような論点が更に必要ではないかという話であったり、ここはもう既に議論しているので黄色でなく赤にしたほうがよいのではないかというような、そのような形で本日論点に関して御議論いただければと考えております。
続きまして5ページ目、「沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(DTaP)の経緯について」、御報告させていただきますと、百日せきワクチンに関するファクトシートが2010年に作成をされ、「作業チーム報告書」及び「ワクチン評価に関する小委員会報告書」も作成されたところでございます。こちらを踏まえまして、DTの2期接種につきまして、百日せきの抗原を含むワクチンの安全性・有効性について御議論いただいているような経緯がございます。
続きまして、その後、いろいろ御議論いただいているところですけれども、例えば2017年2月ではDTの代わりにDTaPを用いる場合に期待される効果や安全性等について御議論を頂いているところです。また百日せきが全数把握による届け出が行われるということになりましたので、そちらのデータも踏まえ、2018年の1週目から16週目ですが、発生動向調査に基づいたデータを示させていただき、2018年6月に最新の議論を頂いているところでございます。
その際には、まず2ポツ、1週目から16週目までではなく、半年ないしは1年程度の発生動向調査の結果を見たほうがよろしいのではないかという御議論を頂きました。また1ポツ、当時、2018年のデータにおきまして9歳が百日せき患者の接種のピークということもございますので、9歳より前に百日せきワクチンを入れる必要があるのではないかという御議論、ないしはポリオにつきましても併せて考慮すべきではないかという御議論を頂いたところです。
こういった過去の経緯を踏まえ、先ほどのIPVの5回目と同じような形で、6ページ目及び7ページ目で同じような表を作らせていただき、検討した論点及び検討に着手した論点と今後想定される論点をそれぞれ分けて事務局で整理させていただいたところでございます。想定される論点につきましては取り急ぎDTaPによる2期接種、DTのものをどのようにしたほうがいいのか、もう1つは将来のDTP-IPVが開発された場合につきまして、どのような論点が想定されるかという形で事務局で整理をさせていただいております。本日はこういった論点が正しいのか、ないしは不足している、追加すべき点があるのではないかといった観点で御議論いただければ幸いです。
続きまして、かいつまんで参考資料についても御説明をさせていただきます。今回、新しく準備させていただいた資料としては、例えば12ページ目、不活化ポリオワクチンIPVにつきまして、感染症流行予測調査、2018年のものが出ておりますので、今回事務局で一応整理をさせていただいております。また13ページ目、ちょっと見えなくなっておりますけれども、こちらにつきましても2018年度の感染症流行予測調査の結果を示させていただいているところです。
17ページ目ですが、DTaPの部分です。百日せきの症例報告につきまして全数調査の部分ですが、感染症発生動向調査(2018年)に基づき、資料を17ページ目で作成をさせていただいているところです。また18ページ目ですが、百日せきの抗体保有状況を2013年のものと2018年のもので比較するような形で流行予測調査のものを示させていただいているところでございます。
それ以外の資料につきましては、これまでも過去の議論で一応事務局が何らかの形で提示をさせていただいている資料と考えております。こういったものを踏まえまして、本日、各論に入るというよりは、むしろ論点としてどのようなものが今後必要であるというような形で御議論いただければ幸いでございます。事務局からの説明は以上です。
○大西委員長 ありがとうございました。御説明がありましたように、本日はポリオワクチンの5回目接種とDTaPについて当面の論点の案が示されております。今後、議論していく行程表があったほうがよいという前回の御指摘・御議論を受けて用意してくれたものです。最後にもありましたが、論点そのものの議論ではなくて、今後進めるべき論点がこのような論点でよいか、足りているのか、追加すべきものがあるのか、修正するべきかというようなところで御意見を頂きたいと思います。
まず、ポリオワクチン5回目接種に関する論点、ページで行きますと4ページに関しまして御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。
○大石参考人 今更なのですが、2013年7月に研究開発及び生産流通部会で5回目接種の必要性が議論されたとあります。このときになぜ必要だということになったのか、根拠になる情報とかがありましたら、今更ながら恐縮なのですが確認させていただきたいと思うのですが。
○永田予防接種室長補佐 手元に資料を整理致しますので、少しお待ちください。
○岡田参考人 そのときの議論に少し加わりましたので、私から概要を説明させていただきます。ポリオの生ワクチンから不活化ポリオワクチンに変えた世界のほぼ全ての国々では、就学前、あるいはもうちょっと上の年代に不活化ポリオワクチンの追加接種が行われていることが当時から分かっていました。このため、日本でもOPVからIPVに変えるときには、世界にならって追加接種として2期接種が必要であると書かれています。また、日本独自の事情ですが、日本で開発した生ワクチンに使われていたセービン株を不活化した新しい不活化ワクチンでしたから、何もデータがない状況でした。海外のポリオ患者さんの発生状況からも、セービン株由来の新しい不活化ワクチンでも、2期接種は必要ではないかとなりました。しかし、データがまだ全くありませんから、そのデータを集めるように求められ、研究班で研究を行ってきた経緯があります。
○大石参考人 ありがとうございます。了解しました、ありがとうございました。
○大西委員長 ほかに、論点として追加しておくべきことがあればよろしくお願いいたします。
○岡田参考人 ポリオに関する行程表を作っていただきまして本当にありがとうございました。いろいろなアームがDT、DPT、IPVなど入り交じっていますから、今回のように当面の5回目接種に関することと将来の混合ワクチンに関することを分けていただいたのは、今からの議論に関して、とても分かりやすい議論が今から進んでいくのだろうと思います。ありがとうございました。
ここで黄色の部分に、ある程度できている部分が少しあると思います。例えば、安全性に関しては、少数例ですが日本でソーク株由来単抗原ワクチンの5回目接種の安全性をみた報告はあると思います。ただ、セービン株由来ワクチンの5回目の安全性のデータはありませんので、今使えるものとしては、ソーク株由来のイモバックスポリオしか5回目としては使えません。なおかつ、セービン株由来の四種混合は5回目接種ができません。5回目接種の安全性は問題ないかというこの議論の中では、ソーク株由来単抗原の不活化ポリオワクチンに関しては問題はないと言えると思います。このため、ここは左側の赤のところに移るのではないかと思います。
それから、その他の論点の1番目、先ほど申し上げましたように、セービン株を世界に先駆けて導入した我が国における追加接種の在り方が、導入するときからずっと、議論をしないといけない課題だと思っています。世界には何もデータがありませんから、世界で広く使われているソーク株由来の不活化ポリオワクチンのデータを参考にしながら、日本で開発したセービン株由来のワクチンに関しても議論をしていく。ただセービン株由来の単抗原の不活化ポリオワクチンがありませんから、当面議論するものとしてはイモバックスポリオでの課題を今から検討していただければ、前回も申し上げましたけれども、Ⅲ型が今これだけ低い状態になっている状況で、多くの方々がオリンピック・パラリンピックに向けて海外から入ってくるときに、本当に大丈夫なのかという議論を早急に、できればしていただければありがたいかなと思います。
○大西委員長 ありがとうございます。論点として、ちょっと分からなかったのですが、安全性の部分はもう既に委員会で議論が終わったということでしょうか、それともデータはあるよということでしょうか。
○岡田参考人 論文はあると思います。
○永田予防接種室長補佐 事務局でございます。確かに、当面の5回目接種に関することというのは今、岡田参考人からございましたようにソーク株を前提とした議論です。こちらにつきましては、過去の審議会においても議論としては行っておりますので、まだ完全に結論を得たというわけではないかというように我々は理解しておりますが、議論しているという意味ではもう、赤の「検討に着手した」という時点では間違いないということでございます。赤で整理したほうがよろしいかという部分はあるかと思いますので、今後検討させていただければと思います。
○岡田参考人 それともう1つ、費用対効果についてどう考えるか。これも先ほどの議論にありましたように、ポリオに関しては1例でも出れば、その方にとってみると一生涯後遺症を残すようなものですから、費用対効果としては、もしかしたらきちんとしたものが出てこない可能性があります。しかし、VPDという考え方の中では、この不活化ポリオに関しては、費用対効果に重点をおかずに有効性と安全性に重点を置いたほうがいいのではないかと思います。
○大西委員長 中身に関しましては、実際の委員会のところで恐らくそういう議論になっていくのだろうと思います。ほかに論点としての追加はよろしいでしょうか。
それではDTaPのほうの6ページ、7ページのところに関しましても、各論ではなく論点として追加すべきことがありましたら御指摘いただければと思います。こちらのほうは接種の目的、疾病負荷の大きさというところで、まだ議論すべき論点が残っているということで、かなり多くの論点が提示されています。
○岡田参考人 すみません、私ばかり発言して。論点に関しては、これもDPTの2期接種に関することと将来のDPT-IPV接種に関することの2つに分けていただいて、みんなの頭の整理ができてくると思います。ありがとうございます。
そこで、例えば接種の目的に関しては、多くの人たちが、乳児の重症例をできるだけゼロにしたいと思っていますので、コンセンサスは得られているのかなと思います。疾病負荷の大きさに関しても全数報告になって、入院例を含めて死亡例も報告されているということを考えると、疾病負荷が大きいということは検討に着手しているという部分に入ってくるのではないかと思いました。それから、発生動向調査に関しても全数報告に変えていただいて以降、はっきりしてきたと思います。学童期以降が問題になってきているということは前回も御指摘を頂いているとおりで、免疫の保有状況、一番下がっている就学前がいいのではないかという議論が今後も続いていくのだろうというように思います。
2ページ目、一番最後に大前提として申し上げておきたかったのが、DTの2期接種を置き換えるべきか、あるいはDTワクチンと選択可能な形で導入するべきかという項目です。これはDTトキソイドにはとても申し訳ないのですが、DTトキソイドの役割は、もう終わっているのだろうと思っています。役割が終わっているDTトキソイドを2期接種として、11歳から13歳に定期として打ち続けるというのは税金の無駄遣いになっているのではないかと思います。そういう意味では、このDTの2期接種をできるだけ早くDPTに切り替える。百日咳の入ったDTPワクチンに切り換えていただく議論をしていただきたいと思います。接種年齢に関しても現在の2期の11歳から13歳がもともとは始まりでしたけれども、今の疫学の変化からは、就学前にも2期接種としてDPTを議論していただけないかなと思いました。以上でございます。
○大西委員長 ありがとうございます。論点としては一応拾い上げてあるということで議論を深めていく必要があると思います。
○大石参考人 今の岡田先生の御意見なのですが、DTが余り意味がないという御意見でしたけれども、テタヌ抗体も成人ではかなり低下しているところもあると思います。先生がおっしゃりたいのはDTをDTaPに変えるという方向性を検討して欲しいということですよね。
○岡田参考人 はい。昔の全菌体百日咳ワクチンを含む三種混合ワクチンでは、発熱や脳症などの有害事象の頻度が高かっために、百日咳を除いたDTにされたと聞いています。疫学の変化と安全性が評価された現行のDTPワクチンをDTに替えていただく時期にあるのではとの思いからです。
○大石参考人 はい、了解しました。もう1点、論点の中にどうまとめられるのか分からないのですが、昨年から全数把握疾患になって、百日せきの発生動向状況が明らかになってきたわけです。その中で、やはり目立つのは小学校、中学校の4回接種後の患者が大半を占めているということです。この所見については、自治体の人も国民もすごく理解に苦しんでおられると思います。このデータをワクチンが効いていないと読むのか、発生動向裏には100万人コホートの中でかなりの人が予防されているというように読むのか、悩ましいと思います。しかし、定期接種ワクチンの中で4回接種しているにもかかわらず、疾患がかなり発生していることについては問題があると思います。やはり、ワクチンの接種による特異抗体の減衰が課題です。抗体の持続期間について、2010年時点のファクトシートでは4年から12年とされていますけれども、実際はそのほとんど下限に近い結果だと思います。12年というのはどこから来たのか私もよく把握していないのですが、やはり抗体の持続期間については今後見直していく必要があると思います。是非ワクチンメーカーにも、このワクチンの改良ということについてもご検討いただきたいと思います。以上です。
○大西委員長 ありがとうございます。ワクチンの有効性の●の1、2あたりが恐らくそこら辺の議論の内容を吸収していくのかなと考えます。また、ここの論点の文言等々の調整は恐らくこのあと入っていくのかと思います。ほかに何かございますか。
○多屋委員 6ページのDTaPによる2期接種に関することの一番上にある、接種の目的ですが、先ほど岡田先生もおっしゃられましたが、乳児の重症百日せきを予防するということが目的として大きいことは、これまでも議論されてきたかと思います。黄色ではなくて、ここは左側の着手した論点に移ってもよいのではないかと思いました。
3番目の免疫の保有状況は前回、2013年度の結果でしたが、2018年度の結果がついこの間出たばかりですので、これについてもう少し詳しく解析をして、検討することができるようになったのではないかなと思いますので、3番目の黄色の部分も検討には着手したと考えてよいのではないかと思われました。
○大西委員長 ただ、一部、まだ議論のアップデイトだったりというのは必要だということですか。
○多屋委員 アップデイトは必要だと思います。
○大西委員長 ほかによろしいでしょうか、大体よろしいでしょうか。それでは、幾つか御意見を頂きましたので、事務局のほうでもう一度整理していただくということかと思っています。今後、整理された論点で小委員会で議論していくという形で進めていきたいと思います。
以上で、本日予定していた議事は終了ということになります。その他、事務局から何かございますでしょうか。
○元村予防接種室長補佐 次回の開催につきましては、また追って御連絡をさせていただきます、事務局からは以上でございます。
○大西委員長 ありがとうございます。それでは、本日の第13回ワクチン評価に関する小委員会を終了します。本日は活発な御議論を頂きまして本当にありがとうございました。