令和元年度第1回トンネル建設工事の切羽付近における作業環境等の改善のための技術的事項に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課環境改善室

日時

令和元年6月26日(水)16:56~19:08

場所

厚生労働省 省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館 9階)
 

議題

(1) 前回議事のポイント
(2) 前回の議論を踏まえた測定方法の方向性
(3) 今年度の調査の方向性
(4) その他
 

議事

○米倉改善室長補佐 本日はお忙しい中御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻より若干早いですけれども、皆様おそろいですので、ただいまから令和元年度第1回トンネル建設工事の切羽付近における作業環境等の改善のための技術的事項に関する検討会を開催させていただきます。
委員の出席状況ですけれども、全ての委員が出席されております。
 本日はオブザーバーとして、本検討会の議論を踏まえて調査を行う独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所から、作業環境研究グループの中村主任研究員に御出席いただいております。また、関係省庁として、国土交通省大臣官房技術調査課から川尻課長補佐、経済産業省産業保安グループから小野塚石炭保安室長補佐にも御出席いただいております。
 事務局に異動がありましたので、改めて御紹介いたします。安全衛生部長の椎葉です。化学物質対策課長の塚本です。環境改善室長の安井です。私は、室長補佐の米倉です。
 続いて、配布資料の確認をさせていただきます。厚生労働省では、審議会等のペーパーレス化の取組を推進しており、本日の検討会はペーパーレスで実施させていただきます。お手元にはタブレットを配布しております。使用方法については、操作説明書を机上に配布しております。御不明の点がありましたら、近くにいる職員にお声掛けください。
 タブレットを御覧いただきますと、上から順にファイルがあります。議事次第、座席表です。資料1は、前回検討会の議論のポイント。資料2は、前回の議論を踏まえた測定方法の方向性について。資料3は、今年度の調査の方向性等について。資料3-1は、ずい道等建設工事中の質量濃度変換係数(K値)に関する文献等について。資料3-2は、浮遊粉じん中の遊離けい酸含有率に関する文献等について。資料4は、粉じん濃度測定結果の位置付け等について。資料4-1は、トンネル工事における粉じん測定及び換気等に関する文献等について。資料4-2は、電動ファン付き呼吸用保護具の防護係数に関する文献等について。資料4-3は、定点測定と個別測定の測定値の比較について。
 参考資料1は、トンネル建設工事の切羽付近における作業環境等の改善のための技術的事項に関する検討会開催要綱及び参集者名簿。参考資料2は、「トンネル建設工事の切羽付近における粉じん濃度測定に関する研究」報告書、こちらは平成30年度第1回検討会の資料4-3となっております。そして、タブレットのみの配布、委員・オブザーバーのみということで、資料4-3-2と書いてありますけれども、これは参考資料2の別冊です。その下は、熊谷委員から提出された資料を配布しております。
 今申し上げたファイルが格納されていることを御確認ください。もし資料の不足等がございましたら、タブレットを交換いたしますので事務局までお申し付けください。よろしいでしょうか。
カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。御協力をお願いします。
 議事に入ります。以降の議事進行については、小山座長にお願いいたします。
○小山座長 議事を進めさせていただきます。議事次第にあるように、議題が4つあります。1番目は前回議事のポイント、2番目は前回の議論を踏まえた測定方法の方向性、3番目は今年度の調査の方向性、4番目はその他です。この順番で議論をさせていただきます。最初に、1番の前回議事のポイントと、2番の前回の議論を踏まえた測定方法の方向性の2つについて説明をしていただいて、議論をさせていただきます。説明をお願いします。
○安井環境改善室長 私のほうから、資料1について説明させていただきます。前回の検討会から相当時間がたっておりますので、復習という形でポイントをまとめている資料です。
 まず、測定方法の比較についてです。測定結果からは、どのような測定方法であってもそれほどの差はない。粉じんがある程度拡散して飽和状態になっているので、それほど差がないのではないか。定点測定と個人サンプラーによる測定を組み合わせることも考えられるといった御意見がありました。
 2番目の分粒装置及び粒径については、吸入性粉じん、レスピラブルを測定対象とすべき。分粒装置についてはインパクター方式のみならず、サイクロン方式も考えるべきだということでした。
 3番目の質量濃度変換係数については、昨年度実施したレスピラブルの粉じん濃度の測定結果からは、K値を統計的に定めるのは可能ではないか。また、過去の文献からのK値の分布を調べて、それで決めるというのも方法としてあるのではないかということでした。
 4番目は、個人サンプラーによる測定の実行可能性です。他の測定と組み合わせて頻度を下げるとか、測定器を1種類に限定して作業者の負担を軽くするということが考えられる。作業員には高価な測定器を壊すことを心配する負担感があるという御意見がありました。
 5番目は、定点測定の実行可能性についてです。吹きつけ作業の場合は切羽付近でも測定可能ですけれども、発破・掘削・ずり出し作業については、建設機械がそばにありますので、三脚を置くのは非常に難しいということと、測定する人間の安全という問題もあって、切羽付近の測定は難しい。昨年度の吸入性粉じん濃度の測定結果では、切羽からの距離による大きな変動は認められないため、切羽付近での測定にこだわらず、管理しやすい場所で測定すべきではないかということでした。
 6番目は、遊離けい酸含有率についてです。じん肺のリスク評価の観点から、遊離けい酸含有率の測定が重要である。定点測定では、ずり出し以外では十分な量をサンプリングできなかったということで、岩石そのものを粉砕して再発じんしたものを採取するなどの方法、あるいは吹きつけ時には十分なサンプリングが可能である。過去の文献から遊離けい酸含有率の分布を調べて、それで決定するような方法もあるのではないかという御意見がありました。これが資料1です。
 資料2に移ります。こういった内容を踏まえ、こちらのほうでまとめたのが資料2です。基本的な考え方として、現在のずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドラインと同様に、一定の教育を受けた自社の労働者で実施可能な方法を前提とするということでよいか。当然、作業環境測定機関にお願いするというのは構わないということです。
 測定点についてです。以下の測定のいずれかを事業者が選択するということでして、(1)定点測定、(2)個人サンプラーによる測定、(3)重機上(運転台等)での測定、(4)上記測定点の組合せと、このいずれかを事業者が選択するということでよいかということです。(1)の定点測定の測定点は、切羽からの距離が10mから50mの範囲。換気装置がある場合は、その吸入口よりも切羽側に限るということで、均等距離ごとにトンネルの両側に測定点を計6点程度設けることでよいかということです。ただし、昨年度の調査結果で切羽からの距離による粉じん濃度に大きな変動が認められなかったことを踏まえると、測定に関わる労働者の安全確保の観点から、発破、機械掘削、ずり出しの作業中は、切羽から20m以上離れたほうがいいということです。
 それから、測定点を壁面から1m程度離すことが従来の指針などに書いてありましたが、これよりも切羽に近づけることを優先して、例えばトンネル壁面に配置された配管の上に測定点を設けることも可とすべきではないかということです。
 個人サンプラーによる測定では、測定器を装着する人の負担を軽減するため、測定器は1種類として、測定頻度も半月に1回にこだわらず、それより低くてもいいのではないか。重機上(運転台等)での測定ですが、切羽での測定という観点から、原則としてトラックは含まない。トラックは当然抗口まで行ってしまいますので、基本的にはそれ以外の機械であるドリルジャンボといったものの運転台等に設置するなどでやる。当然落下物に対する配慮も必要だということです。それから、上記測定点の組合せということで、個人サンプラー測定と重機上の測定を組み合わせるといったものも考えるということです。
 3番、測定対象粉じんの粒径はレスピラブルでよいかということです。4番の測定時間ですけれども、定点測定についてはNATM工法の1サイクル(発破工法の場合は、発破後から装薬前までの1サイクル)を通じて実施することが原則ということですが、これが特段の理由で困難な場合は、粉じんの発生量が最も多いと見込まれる作業のみを対象とした作業の測定、この場合は当該作業の開始から終了までを認めることでよいか。個人サンプラーによる測定は、途中でフィルターを取り換えるというのが難しいので、作業工程の1サイクル連続測定を原則とすることでよいかということです。
 5番、測定頻度ですが、現状の粉じん則第6条の3に準じて、半月に1回でよいか。なお、複数の測定方法を組み合わせる場合には、1つの測定を月2回とすれば、他の測定の頻度はそれよりも緩くてもいいのではないかということです。資料の説明は以上です。
○小山座長 ただいまの資料1、資料2について御質問と御意見を頂きたいと思いますが、熊谷委員からメモを頂いていますので、それを説明していただけますか。
○熊谷委員 ⑭の私の資料です。基本的な考え方のところです。自社の労働者による測定ということです。簡易測定、デジタル粉じん計のみの測定であれば割と簡単ですし、自社で教育・研修することでいいと思います。そのときには、測定意義の理解と十分なトレーニングが必要です。
 ただ、自社で測定するということで、値を正確に出すことが必要なので、測定者の権限を明確にすることが必要ではないか。不正の防止ということですが、そういうことはないとは思うのですけれども、やはり自動車メーカーの不正などということが実際に起こっているので、そういうことが起こっている以上、起こらないような方策というのは行政としてちゃんと立てておく必要があるのだと思います。
 それから、併行測定、遊離けい酸含有率の測定、および個人ばく露測定については、精度をちゃんと確保するという意味で、作業環境測定士に限定したほうがいい。実際にそういう資格があるので、限定するべきではないか。作業環境測定士などの国家資格というのは、測定者の権限を明確にするという意味で意義があります。権限と責任です。デジタル粉じん計のみでも測定は可能ですから、今の全体の枠組みはどちらでもいいということなので、これらの測定を測定士に限定しても支障は出ないのではないかと考えます。
 測定時間についてです。定点測定で1サイクルが困難な場合は粉じん濃度が高い作業を1つということでした。遊離けい酸の含有率が吹きつけとそれ以外では違うということを考慮すると、機械掘り、ずり出しのうちの1つと、吹きつけの2作業のほうがいいのではないかということです。
 測定頻度についてです。個人サンプラーの場合には頻度を低くしてもいいのではないかみたいなことが書いてありまして、それはもちろんそうなのですけれども、これは私の理解では、半月に1回はとにかく測定はするという前提で、何らかの測定をするという考え方でいいのですよね。個人サンプラーをしたとしても、デジタル粉じん計も使いながら半月に1回はやりましょうという考え方でいいのでしょうか。そこの3点を確認したかったということです。
○小山座長 最後の測定頻度の件については御質問のようです。
○安井環境改善室長 測定頻度については、いずれかの方法で必ず半月に1回やるという趣旨です。
○熊谷委員 はい、分かりました。
○小山座長 ほかにはいかがでしょうか。
○佐藤委員 質問です。測定のところで、定点測定、個人サンプラー、重機というのがあります。定点測定というのは、今現在行っている当社の職員がデジタル粉じん計を持って、しかるべき場所に行って測るということも含むということでよろしいのですよね。配管の上に測定器を置いて測るということだけではないですね。この定点測定というのが、資料2のアの所の切羽から10m以上50m以下で、均等距離ごとにトンネルの両側に測定点を設けるというのは、定置するわけではなくて、持っていってもいいということですよね。
○安井環境改善室長 定点測定は、基本的に1サイクルですから、例えば4時間とかずっと置き放しになりますので、人間がずっと持っているというのは想定していません。どこかに置くということです。ですから、配管の上に木の台を作ってそこに置くとか、三脚を立てられるスペースがあれば三脚を立てるということだと思います。
○佐藤委員 そうすると、現在は壁際の2点と真ん中と3点で測っているのですけれども、真ん中辺りはできないということですね。
○安井環境改善室長 基本的に壁際に配置する形になります。
○佐藤委員 2点ということですね。
○安井環境改善室長 20mから50mぐらいになると、例えば15m置きにトンネルの左右に置くとちょうど6点ぐらいになります。
○佐藤委員 それで6点ということですね。では、3測線ということですね。
○安井環境改善室長 はい、そういうことになります。
○佐藤委員 イメージとしてはですね。
○安井環境改善室長 そういうことになります。
○佐藤委員 そうすると、従来の測定は一切なくなって、これに変わる。
○安井環境改善室長 従来の測定はなくなるというか、いわゆる真ん中に置くというのはちょっと現実的ではないということで、壁面に配置するということです。
○佐藤委員 今は切羽から50m離れた所で、壁から1m離れた所2点と真ん中という3点で測っているのですね。
○安井環境改善室長 はい。
○佐藤委員 これではなくて、10m以上50m以下の中で、2点を3測点置いて測るということですね。
○安井環境改善室長 そうです。メートルについてはまだ議論を頂いておりませんけれども、均等距離ごとに6点程度という議論はありました。20mから50mであると、例えば20mと35mと50mというポイントで、それぞれトンネルの左右に2点ずつということで6点といったことを念頭に置いております。
○佐藤委員 そういう解釈ですね、分かりました。
○熊谷委員 今のに絡んでですけれども、従来の換気のための測定はやめるという意味ではないのですよね。それとは別にこれをするという意味でしょう。そこはどうなのですか。
○安井環境改善室長 後ほど御議論いただきますけれども、この測定の値をもって、換気の機能も見ますので、従来の測定と代替される形になります。
○熊谷委員 そういう考え方ですか。
○安井環境改善室長 そうです。
○熊谷委員 それが今の考えですね、分かりました。
○小山座長 ほかにはいかがでしょうか。
○外山委員 意見です。基本的な考え方で自社の労働者で実施可能な方法というのはいいと思うのです。やはり、公正さというか、中立性を担保しないといけないと思います。熊谷委員の意見で、自社で教育・研修ということもあり得ると思うのですが、もう一歩進める、つまり、罰則等が適用されないと、なかなか公正さというのは担保されないと思います。そうして考えていくと、作業主任者程度の資格者を養成しないと、ここはうまくいかないのかと思いますので、技能講習的なものを作って、測定主任者的な有資格者として、罰則が掛かるようにする必要があるのかと思います。
○熊谷委員 自社の労働者について、簡易測定の場合はいいけれども、ほかは作業環境測定士に限定するという意見を言わせていただいたのですけれども、これは意見を言い放しということで、議論はしないのですか。
○安井環境改善室長 ほかの方で、特に建設業関係の方で御意見があればお伺いしたいのですが。事務局としての考えはありますので、それは後ほど御紹介いたします。
○佐藤委員 私の個人的な考え方としては、自社の社員で測定するという形にしないと、作業環境測定士を1か月に2回呼ぶというのは非現実的のような気がするのです。こういう資格を持っている方がどの程度いるのか分かりませんけれども、その辺のところは実際に対応するときに、工程の進み具合だとか進捗によって、その現場のやりたい時期というのがあると思うのです。それに、ぴたっとピンポイントで当たっていけるのかというのがちょっと不安です。
○熊谷委員 私の意見を誤解されていると思うのです。半月に1回するというのは、簡易測定でもいいわけで、自社の職員でもいいというように私は考えています。それ以外の、もう少し精密な測定をする場合は作業環境測定士でやったらどうかという意見であって、これはどちらでもいいという選択なのです。自社の測定だけでもいけるという考え方の上で、精度はちゃんと守りましょうという意味で言っているのです。
○佐藤委員 分かりました。通常は簡易測定をやっていて、例えば1年に1回とか2回は専門家が来て測定してもらうというような考え方なのですね。
○熊谷委員 そうです。
○佐藤委員 分かりました。
○熊谷委員 それと、自社の場合は、先ほど外山委員からもありましたけれども、責任と権限を明確にしないと、こんなことは起こらないと思いますが、例えば上司から、濃度が高いデータが出たらもう一回測り直せというようなことが起こってはいけないと思うのです。そういう意味で、何かちゃんとしたことが必要だと。よく分からないのですけれども、トンネルの建設現場には衛生管理者というのはおられるのですよね。私は、そこのところの法律はよく分かっていないのですが、衛生管理者がちゃんと研修を受けて、衛生管理者にそういう資格を与えるみたいなことをしないといけないのではないかと思うのです。
○小山座長 よろしいですか。
○土屋委員 衛生管理者の話があったのですが、50人以上だったら安全管理者がいて、トンネルのほうは。阿部さん分かりますか。衛生管理者を置いていますか。
○阿部委員 衛生管理者は置かないです。
○土屋委員 置かないですよね。
○野﨑委員 50人以上……ですよね。
○土屋委員 そうすると、そんな大現場のトンネルだったら4パーティとかないと多分出てこないので、社員が50人以上配置する現場はまずはないかと思います。
○熊谷委員 安全推進者とか、衛生推進者はいるのですよね。
○土屋委員 それは、当然安衛法で決まっていますので。
○熊谷委員 そういう方でもいいと思うのですけれども、そういう資格を持っている方がちゃんと教育を受けて、そういうことだけの権限ではなくて、測定もする権限みたいなものをちゃんと与えるようなことが必要ではないかという意味です。
○土屋委員 分かりました。私の質問は、測定点を6点やるというのは、同時に6点の話ですよね。そうすると、機械が6台要るという考え方でよろしいのですか。
○安井環境改善室長 同一サイクルでずうっと測り続けますので、1台で場所を動かしながらというわけにはいかないので、6台要るのが原則かと思います。
○土屋委員 イのほうで、トンネルの中はある程度同じ密度の場合だと、あってもそれほど差はないかと思うのです。あとは、一回一回1台ずつ表へ出して、全部掃除してまたセットするわけですから、かなりそこの負荷も掛かってきます。私はトンネルの災害を調べてみたのですけれども、平成27年で4人がトンネルで亡くなっています。平成28年は6人、平成29年は7人、合計17人のうち、切羽の崩壊で4人亡くなっています。あとは重機災害で3人、こちらのほうでほとんどの災害が起こっていて、やはり切羽および重機稼働内です。鉱内の安全の面から考えても、元請にしても業者にしても、できるだけ作業行動を増やしたくないのです。確かに、定点に置けばいいという話もありますけれども、それでも一回一回出して清掃等しますし、ですから、測定に対しては簡易で安全にできる方法で議論していただければいいかと思います。
○小西委員 資料2の基本的な考え方で、今いろいろなお話が出ていました。少なくとも努力として、第二種の作業環境測定士の資格を現場の方が取る方向へ努力をしていただく必要があるのではないか。正しくデータを取るという。国家資格ですから、そういう方を増やしていく必要があるのだろうと思います。そういう努力はしていただきたいという気がいたします。
 それから測定点のことで、個人サンプラーの測定のところで、「測定器は1種類とし」と書いてあります。この意味は、デジタル式の個人サンプラーなのか、ろ過捕集のサンプラーなのか、それをどちらか1つにするという意味なのかどうか。デジタル式のものでやっていけば、恐らく定点の所と同じで、K値の問題が出てくるのだと思います。ろ過捕集だけに限定してやっていけば、個人サンプラーで1サイクル測定する。1サイクルそのものの時間というのは、この下に書いてあるとおりで、発破工法の場合は、装薬から発破までの間、発破から発破の間だと、必ず作業者は待避所に戻ってきますから、そこでフィルター交換なり、サンプラーの取換えができます。計測している人がわざわざ切羽付近まで行かなくても、待避所で交換ができるのではないかと思います。できれば、個人サンプラーの場合は、前回の議論の中にあったように、リスク評価うんぬんということを考えると、遊離けい酸の含有率を測定したほうがいいのであれば、ろ過捕集での個人サンプラーのほうがいいのではないかと思います。
 定点での測定については、今もお話がありましたように、従来から換気指針に基づいて3点の測定はやってきているわけです。そういう意味では、それを15m置きという形で6点に増やすということなのですが、ただ、その場合、今までは現場の人なので、できるだけ切羽に近い所で3点選んで、測定器を持っていってある時間測定をして、休んで、また測定してということができました。定点の測定で、これをずうっと1サイクルやっていくことの意味なのです。これは、濃度の高い所と低い所を定点でずうっと連続やったら、トータルのカウントを見たいのではなくて、今のものでリアルタイムのデータが後で出てきますから、どこが高いのかを調べるにはいいと思うのです。先ほどの、換気の状態もこれによって確認するということであれば、逆に言うと人が測定器を持っていって測定をするということ、6点でもいいのですが、その測定をして、それをずうっと連続するというよりは、むしろ前にも話があったとおりで、濃度が最も高く出てくるときに、例えば掘削、ずり出し、吹きつけのときに、その6点を、人間が行って3回測るほうがいいのではないかという気がいたします。
 とにかく個人サンプラーの場合には、そういう意味で個人サンプラーで測定したろ紙を測定機関に依頼をして、有離けい酸の量を測ってもらえばいいと思うのです。日本の場合は含有率を計算することになっているのですけれども、リスク評価をやっていくのであれば、アメリカのACGIHなどではレスパイラブルで、アルファコーツと、クリストバライトについては0.025mg/m3という基準があります。ですから、その基準とダイレクトに有離けい散を分析した濃度を比較するという方法も1つの方法ではないかという気がいたします。
○安井環境改善室長 先ほど御質問のあった測定器は1種類でどうするかということですが、それはデジタルでも、ろ過方式でもどちらでもいいのですけれどもという趣旨です。今までの累次のご意見についてコメントさせていただきます。作業環境測定士かどうかという話です。作業環境測定士の資格というのは、作業環境測定基準に基づく作業環境測定をするための資格です。現在検討しているように、重機の中に乗せるとか、個人サンプラーを使った測定をするということを想定した資格ではありませんので、それに限定するというのは法制度上できないと考えております。もともと作業環境測定ではないという位置付けで現在は議論しておりますので、これを作業環境測定士に限定するというのは法令の趣旨に反するということです。
 それから、衛生推進者というのは資格ではありませんで、事業者が指名する者です。こういうことを総合的に考えて、今までの御意見を踏まえますと、誰が測定するのかというのをあらかじめ指名して、その人をしっかり教育するということだろうと思います。当然のことながらろ過方式になってくるとラボが要ります。作業環境測定機関と連携しないとそれは当然できないということになりますので、そういった作業環境測定機関と連携しながら、その指名された方がきちんとやっていくということになってくるのかと考えています。
○井上委員 今の点で質問します。今の説明の中で、今やろうとしているのは作業環境測定ではないのだという発言をされました。もともとの出発点は、トンネルにおける切羽での作業環境を客観的に把握するための作業環境測定を目的とするということで出発したと思っていたのですが、全くそれとは違う目的のために、今議論しているということなのでしょうか。
○安井環境改善室長 詳しくは後ほどの資料で位置付けなどは出てきます。今回議論いただいているのは、いろいろな目的が当然あるわけです。個人測定をやるとか、個人がどれぐらいばく露しているかという議論がありました。あるいは工学的対策は十分なのかということを言うべきだという議論もありました。そういうことを踏まえて、これまで御議論いただいてきたということです。
 いわゆる法律上の作業環境測定ということになると、それは後ほど御説明申し上げますけれども、単位作業場所という概念にトンネルというのはもともと合わないということがありまして、そういう厳密な意味で法律上の用語としての作業環境測定でないということを申し上げているだけです。一般的な日本語で言う作業の環境を測定するということは、もちろんそういう議論をしているということです。
○明星委員 少しそれとも関係するのですけれども、6点のために6台要るのはたいへんという意見はごもっともです。でも、もし壊しても、それは粉じん計ではないですか。そこに人が入って危なかったりしたら、もっと高いものになると思うのです。最初の話は、6点ぐらいを連続でというよりは、そこに置いてしまえば、見ているのですけれども、人が入らなくても測定ができるからという趣旨です。本当に6台要るか、本当に半月に1回必要かという問題はあります。でも、元の趣旨はどなたかが言われたように、事故は困るということなのです。6台で我慢してください、要するに1台でなくてということです。1台ということは、人が入ってうろうろするということではないですか。だから、6台で6点を測れれば、今の作業環境測定の定点かどうかというのは若干問題がありますけれども、6点を測るということと、安全ということが、一応何とかすり合わせられるのではないかというのが最初の趣旨なのです。よろしいでしょうか。
○橋本委員 今の測定器の台数なのですが、例えば先ほどの20m、30m、50mでその両端で合計6点測る場合、結局その目的は、同じサイクルの作業が繰り返し何度もされる中で平均的にどんな濃度なのかを把握することが目的です。そうすると、あるサイクルのときは1点測り、次のサイクルのときに次の2点目を測ることでもよいかと思います。ですから、予備も含めて2台ぐらい持っておいて、実際は1台ずつ使って測ることもできると思います。
○熊谷委員 話を元に戻してしまうのですけれども、先ほどの作業環境測定士の話です。値をきちっと出すというのも非常に重要だと思うのです。作業環境測定士の資格というのは、労安法第65条に基づいてやる場合のために作られたという趣旨だったと思うのです。測定士というのは、ここで行うような測定もちゃんとできる技術を持っているわけですから、測定士をここで使うと、それを限定するということに問題は全くなくて、法律を変えればいいだけのことではないかと思うのです。きちっとしたデータを出さないと、最終的にはマスクの中の濃度を評価しようみたいなところまで全体として入っているわけでして、働いている人の健康の問題なので、それぐらいはしてもいいのではないかというのが私の意見です。
○安井環境改善室長 御意見として伺います。取りあえず作環法で法律の前提がありますので、現時点において法律を変えるというのは現実的なスケジュールには乗ってきませんので、その範囲内で現実は考えております。そういうことでよろしいでしょうか。
○熊谷委員 例えば、規則を変えただけではうまくいかないのですか。
○安井環境改善室長 いかないです。法律上に作業環境測定というのは明確に規定されていますので、多分法律を変えないと難しいです。ここで法制度の議論をするというのは避けたいと思いますが、そういうことがあります。
 もう1つは先ほど申し上げましたが、重機上の測定とか、個人サンプラーの測定というのは、試験科目にも講習科目にも入っておりません。作業環境測定士であれば、そういうことができるという担保は何らないという実態があります。もちろんベター論という意味ではあると思います。全く知らない素人と比べれば、当然作業環境測定士のほうがいいというのはあろうと思います。ただ、それを限定するという話ではないのではないかという話です。
○熊谷委員 測定士がいきなりできるというわけではなくて、トンネルなりのいろいろなノウハウがあると思うので、そういうトレーニングはもちろん必要だと思います。値をちゃんと確保するということは重要だということを言いたいのです。それを何か担保するもの、そういう制度が絶対に必要ではないかと思います。
○安井環境改善室長 一般論として、測定というのはもちろん測るからにはきちんと測定する必要があるわけです。測定について資格を設けているのは、今のところ安衛法では非常に限定しております。作業環境測定についても、作業環境測定士でなければいけないのは指定作業場所だけです。例えば、事務所であるとか、そういう所では誰が測ってもいいということになっていますので、そういうものと整合性を図りながら検討させていただきます。
○熊谷委員 しつこいですけれども言います。事務所の場合にはデジタル粉じん計でやるので、それは私も別に測定士でやる必要はないと言っているのです。そういう意味で、こういう併行測定とか、こういうのは測定士に限定するのが重要ではないかということです。もう1つは、デジタル粉じん計をやる場合でも、何らかの限定と言いますか、自社でやる場合でも資格というか、ちゃんとしたものでしないと、実際いろいろな所で不正が行われていて、これをいかに防止するかというのは、行政として制度を作るときに絶対にやっておかないといけないことだと思うのです。何か考えてほしいと思います。
○漆原委員 今のところでお聞きします。資料2の1の基本的な考え方にある「一定の教育を受けた」という、その「教育」というのはどの程度の教育を考えておられるのですか。また、熊谷委員からお話があった、不正の対策というところで、例えばその不正があった場合にその責任というのは当然会社が負うという形になると思うのです。今も多分その枠組みは変わらないと思うのですが、その不正のあった場合の責任の所在は実際どのような立て付けを考えておられるのかを教えてください。
○安井環境改善室長 1点目の教育については、別に現時点においてどういう教育をするということを考えているわけではありません。今、検討されている測定を実施するに足る内容を教育していただくことを考えております。それから、不正の対策は事業者の責任ということですけれども、現時点でも作業環境測定士、あるいは自社測定というのはもともと行われています。自社の社員で作業環境測定士で行う場合もあれば、作業環境測定士の資格を持っていない方が作業環境測定を行う場合もあります。それは従来のものと同じということですので、トンネルにおいて特別に何か違いがあるという認識はしておりません。
○外山委員 今のと関連します。粉じんの濃度測定ができる作業環境測定機関は全国で430幾つかあります。やはり、こういう機関や作業環境測定士がこういう測定をするのが現状では一番適しています。ですから、こういう能力のある人たちをきちんと活用するということは是非考えるべきだということです。私も実際にトンネルの中の測定に行きましたけれども、かなり特殊な場所でして、測り方も違いますので、一定の教育なり研修なりが必要になってくるということもあり得ます。
 逆に、自社の労働者で測定する場合も、それは測定のことは何も分からないわけですから、それは測定の教育をきちんとしなければいけないということです。幾つか方法があって、その中で一番いい方法というか、合理的な方法を選ぶというのがいいのかなと思います。
○小西委員 今の教育の件ですけれども、前の換気指針ができたときに、日本産業環境測定協会で、全国のずい道の建設に携わっている人たちで、測定する人たちの講習会を過去にやりました。そのときに、もう一点、今使われているデジタル粉じん計のメンテナンスの問題というのがありました。それで、使っている粉じん計を持ってきていただいて、ある程度分解できるところまで分解してもらって、清掃のやり方も全部その講習の中で教えました。その結果として、ずい道建設で使われている粉じん計が精度管理センターのほうに定期的に較正に出てくるようになったといういきさつがあります。ですから、そういうことも加味して、必要な事項については何らかの形で担当する人たちに講習をしていただければと思います。
○小山座長 ほかにはよろしいでしょうか。予定の時間を大分過ぎていますが、特にまだ何かありますか。
○及川委員 1点質問させていただきます。資料2の2の測定点で、「以下の測定のいずれかを事業者が選択する」ということで、(1)から(4)まであります。定点測定と個人サンプラーと重機上というのは、イメージとして、組合せによっては個人サンプラーは省略してもいいという組合せということになりますが、それは取るほうの間違いでしょうか。どういうことをイメージして選ぶということにしているのでしょうか。
○安井環境改善室長 資料1で御説明いたしましたように、昨年、労働安全衛生総合研究所で実施していただいた結果によれば、定点測定、個人測定、あるいは重機に乗せる測定について大きな違いはないというのが前回の検討会で御議論され、この3つのうちいずれかをすればよいのではないか、それの組合せも含めていずれかでいいのではないかという結論になったということで、そのようにまとめているところです。
○及川委員 つまり、この3つのうちどれか1つでもいいということですか。
○安井環境改善室長 そうです。
○橋本委員 ちょっと話は変わりますが、測定した結果をどのように扱うか、例えば労働者に対して説明するというような議論がまだ出ていないと思います。例えば、安全衛生委員会のような場はトンネルにはないかもしれませんが、何らかの場で労働者にきちんと説明する。現場にそういう場がないのであれば、その現場を担当する支社なり本社なりを決めて、そういう所の安全衛生委員会で報告するとか、何らかそのような報告とか情報公開のことも考えたほうが良いと思います。
○小山座長 よろしいですか。次の議題に進めます。次は議題3、今年度の調査の方向性について説明をお願いします。
○安井環境改善室長 資料3を御説明いたします。資料3については、今年度の調査をどうするかということでして、前回の御議論を踏まえて、このように調査をするということで案を考えております。
 1点目の粉じん濃度測定についてです。質量濃度測定による方法か、光散乱方式による測定機器と質量濃度変換係数(K値)を使った相対濃度指示方法をするかの、いずれかで考えております。K値については、併行測定による算定が本来なのですが、文献の測定結果から統計的に決定した標準K値を使用することを認めて、その妥当性を昨年度及び今年度の粉じん測定結果で検証するということでよろしいかということです。昨年はLD-5Rを使っておりましたので、今年度は新たにLD-6N2のK値というのも定めたいと考えております。現地測定については、分粒装置付き、これはレスシピラブルの20L/minのサンプラーと、LD-5R、LD-6N2の併行測定を考えております。測定器については若干追加することも検討しております。
 2つ目は、遊離けい酸含有率の測定方法です。遊離けい酸含有率の測定は、作業環境測定基準に準じたろ紙補集方式及び分析方法に加えて、簡易な方法も可能とするということです。簡易な方法としては、過去の文献に基づいて岩石の分類別に3段階程度の標準含有率を定めて、事前のボーリング調査等の結果と照らし合わせて遊離けい酸含有率を推定する方法として、その妥当性を本年度の調査結果で検証したいと考えております。今年度の調査としては、可能な範囲で火成岩、堆積岩、変成岩など、異なる地質のトンネルで測定を行う。ろ紙補集方法による測定は作業別にフィルターを交換して1サイクル連続でサンプリングすると。遊離けい酸の測定下限値の関係から、複数のサイクルを連続測定することも検討する。相対濃度計による測定は1サイクル連続測定するということです。
 3つ目、現地調査場所の選定基準はこちらに書いてありますが、湧水が少ない、断面ができるだけ大きい、発破よりは機械掘りが望ましいということです。
 今後のスケジュールですが、7月から9月にかけて労働安全衛生総合研究所のほうで現地測定及び結果の取りまとめをしていただいて、10月から11月頃には再び検討会を開催し、こちらでは骨子案の提示を行いたいと考えております。12月から1月頃にもう一回検討会を開催して、報告書案の審議を行いたいと考えております。必要があればもう一回2月から3月頃に検討会を開いて、報告書案の審議を行いたいということです。いずれの形にしても、年度内に報告書をまとめたいと考えております。
 資料3-1について御説明します。こちらは、ずい道建設工事中のK値に関する文献をレビューしたものです。1番、文献レビューです。(1)新藤ら(1985)というのが、NATMの工法のトンネル坑内において測った結果がありまして、相対濃度が500cpmを超えるとK値が大きくなるという傾向がありますが、掘削・ずり出しとコンクリート吹きつけ時のK値というのは大きな違いはなくて、Fig.5にあるように、基本的に直線関係があったということです。
 (2)日測協が2010年に行った個人ばく露測定の結果です。こちらもトンネルごとの平均値はばらついてはいますが、定点測定のトンネルごとの平均値と比べてほぼ変わらない、全トンネルの平均値が0.81~1.1倍であり、定点測定が0.55~1.36倍のばらつきということで、いずれもそれほど大きなばらつきはなかったということです。
 (3)名古屋(2008年)ですが、こちらも分粒特性が5μmから4μmに変わったときに測っているものですが、併行測定を行った結果、K値は同一の測定値であっても作業内容やトンネルについてばらつきがあありましたが、平均値はおおむね0.002になったということで、LD系相対濃度のK値は0.002が妥当であるという報告書になっております。
 (4)赤坂ら(2005年)ということですが、こちらもNATM工法のトンネルのコンクリート吹きつけ時の場合でK値を測定しております。こちらは切羽からの距離が10m、50mのいずれもK値に大きな違いはなかったという結果が出ております。
 (5)名古屋(2014年)ですが、これはNATM工法の2つのトンネルの掘削・ずり出しで、K値を測定しております。K値は測定値によって異なって、十分安定した標準的なK値を求めるのは困難であるという結論になっております。
 (6)は昨年行った労働安全総合研究所の結果です。これもNATM工法による5つの作業トンネルの坑内で併行測定を行った結果、1サイクルでのK値は外れ値等々を除いて、0.02を中心として0.01~0.03の間の狭い範囲に分布しているということと、切羽からの距離を見ますと、おおむね0.002に分布したと。分粒装置の場合については、分粒装置なしのものよりK値が相対的に大きくなったということです。
 4ページ上に図が出ておりますが、定点測定における相対濃度と質量濃度の関係を解析した図です。おおむね直線関係になったということで、K値を求めることは妥当であるということの1つのエビデンスになるということです。
 大下ら(2007年)が、模擬トンネルの中で粒径がどのようにK値に影響を与えるかという研究を行っております。その結果、粒径が大きい範囲、11μm以上の粉じん濃度が増加するに従って、K値というのは大きくなっていくということです。これは、実際粉じん計の精度、特質性から考えて妥当なことです。粉じんの中の細粒分が大きくなるほど、K値が減少するというのは図8に出ております。K値が粉じんの粒度分布特性に依存していることを示しております。
 2番、過去の標準K値の設定根拠ということです。(2)平成20年にガイドラインが改正されたときには、名古屋(2008)の数字を使って、要するに平均値を取って0.002を使っております。(3)平成23年のガイドライン改正のときには、分粒装置を備えたサンプラーによる質量濃度と光散乱方式の測定器による相対濃度の併行測定は一定のばらつきはあったのですが、測定器ごとの平均値の有効数字の2桁目を四捨五入し、平均値を使って設定しております。(4)平成29年の改正ですが、LD-5Rの標準K値が追加されたときには、LD-5とLD-5Rの相対濃度を同時に併行測定して、そのばらつきを見て直線関係になっているので、同じK値を使うという結論になっております。
 3番、考察です。(2)にあるように、切羽からの距離による実測K値の影響というのはあるものとないものということですが、特に名古屋(2014)は分粒装置を装着していなかったため、粒度分布における大粒径の粉じん割合が高くなってK値が大きくなったと。大下らの研究からとも整合的にそのように考えられると思います。
 (3)ガイドラインに定める標準K値の設定については、平均値の0.5~1.5倍程度のばらつきある中で、全ての測定されたK値の平均値によって設定しております。それを踏まえますと、(4)に書いてありますが、労働安全衛生研究所が昨年行った1サイクル平均の標準K値というのは、外れ値の2点を除くと、大体0.6倍~1.4倍の程度に収まっており、また切羽からの距離の偏りは見られないと。相対濃度と質量濃度の関係が直線関係になっているということで、過去の標準K値の設定方法を踏まえると、平均値を使って標準K値を設定することは問題ないのではないかと考えております。
 (5)(6)は過去のものについて、名古屋(2014)については、粒度分布、分粒装置がなかったために違う数字が出ているということと、(6)は個人ばく露測定の数字とも大きな違いはないということが書いてあります。
 資料3-2、こちらは遊離けい酸の含有率に関する過去の文献を調べたものです。1の文献レビューの結果です。(1)房村(1995)ということですが、鉛と亜鉛鉱山について採取した石を粉々にして、それから直接遊離けい酸の含有率を調べたということです。結果としては、非常にばらつきが大きくて、一鉱脈又は一岩石から1つ採取された試料をもって、その鉱脈又は岩石の全体としての遊離けい酸を知ることはできないという結論になっております。ただし、この図の表10にあるように、全ての試料中の遊離けい酸の含有率を10%刻み分布で見ると、正規分布はしていたと書いております。
 (2)石炭鉱山については、こちらも同じように岩石を粉砕した微粒子の遊離けい酸濃度を調べたところ、走向つまり奥に行くに従って非常に分布が変動していると。それから、統計上の有意差はないと。一方、砂岩と頁岩という岩質の違いには統計上の有意差はあったということで、岩質を変えるということについては違うことが分かったと。また正規分布であったということが書いております。
 (3)採石プラントについて様々なものを調べております。これについてはチャート質砂等については50%とか、塩基性岩類というのは10%台とか、岩石別に一定の傾向が出ていることが分かっております。
 (4)実際のトンネルの坑内の浮遊粉じんを測ったものについては、Table4がありますが、粘板岩が21%、例えばコンクリートの吹きつけ材料はほとんど含まれておりませんとかいったことが分かったということです。いずれも、房村の研究は直接岩石を砕いておりますので、その値よりは低くなっているということです。
 (5)日測協がNATMのトンネルを対象に同じように測定しておりますが、これも地質別に花崗岩6%、砂岩が10%とか、それも岩石別に一定の傾向が出ているということです。
 2番の考察です。房村の一連の研究は、鉱山及び炭鉱の岩石を粉砕した微粒子の分析結果ですので、定量的な分析の結果としては適切ではないわけですが、定性的にどれが大きい小さいと比較する評価には妥当ではないかと。同一の坑内の測定結果が正規分布していることを踏まえると、一定期間坑内労働を行う労働者がばく露する遊離けい酸の総量は、遊離けい酸の平均値を連続してばく露する値とほぼ同じということで、平均値を使う妥当性が出ております。場所によって統計的な有意差はないが、岩石の種別が異なる場合は統計差はあるということで、主たる岩石の種類を把握した上で、当該トンネルの遊離けい酸含有率を推定するという方法は可能ではないかと考えております。
 (3)火成岩というのは二酸化ケイ素、遊離けい酸と同じ化学式ですが、この含有率によって酸性岩、中性岩、塩基性岩、超塩基性岩に分類されておりまして、当然これは遊離けい酸の含有率に影響するということです。これは房村の研究を見ますと、そのような傾向がきれいに出ております。
 (4)堆積岩については、もともといろいろな起源を持つ粒子が堆積しているということで、化学組成はもちろん一致しないわけですが、過去の房村の研究の表8から見ますと、堆積岩の遊離けい酸含有率の平均値は酸性岩とほぼ同程度であったと。ほかの測定結果も、堆積岩は酸性岩とほぼ同等の遊離けい酸含有率であったというデータがあります。
 (5)変成岩についても、岩石が熱や圧力等によって変性したもので、その由来はまちまちですが、こちらも過去の文献によりますと、酸性岩とほぼ同等であったということです。こういったことを考えますと、遊離けい酸濃度を推定するための岩石の分類については、第1グループの中に火成岩のうちの酸性岩、堆積岩、変成岩を入れれば安全側になるだろうということです。第2グループについては火成岩のうちの中性岩、第3グループについては、火成岩のうち塩基性岩及び超塩基性岩の3つ程度に分けるというのは1つ考えられるのではないかということです。この場合、事前のボーリング調査等によって、主たる岩石の種類は必ず調べておられますので、そういったものと上記の3グループの区分を照らし合わせて、標準の遊離けい酸含有率を使用して簡易測定するのは可能ではないかということです。
 (8)ですが、具体的に何パーセントかということについては、測定によって第1グループでも10%と20%と測定が分かれておりますので、そういうばらつきがあります。一連の研究を見ますと、第2、第3グループの遊離けい酸含有率は第1グループのそれぞれ3分の2、3分の1程度ということになっておりますので、第1グループの濃度が分かれば、それに3分の2、3分の1を掛ければ、遊離けい酸含有率、標準的なK値が計算できるのではないかと考えております。
 資料3に戻ります。こういった文献をベースにして、1番のK値については標準K値を定めることができるのではないか。遊離けい酸含有率についても3段階の標準Q値を作れるのではないかということで提案しております。説明は以上です。
○小山座長 ありがとうございました。この議題について御質問、御意見を頂きたいと思います。最初に粉じん濃度測定に関して頂きたいと思います。
○明星委員 どうしても話がK値によるのですが、K値は所詮は換算係数であって、動かないものではないのです。今言いたかったのは、粉じん計に分粒装置があるかないかで安定性が違うのですが、安定性が違うだけではなくて、K値も違うのです。そのために、最終的には分粒装置付きの粉じん計でやれば、ある種安定したK値が得られることは期待できるのですが、当面、過去のデータはいろいろな粉じん計のタイプによってばらつくので、例えば日測協がやったものとか、安衛研がやったものというのは分粒装置が付いていますし、この中の文献で言うと、そのほかのものは付いていない。それぞれ違う粉じん計が値を出すわけです。
 一方で、質量濃度は吸入性粉じんで測っているので、それはそれで安定した値ということで、両者の間にばらつきがあるというか非常に変動が起きます。ですから、分粒装置を付けた粉じん計でデータを集積した上でK値を決めることは可能だと思いますが、取りあえず過去のデータを平均しても、非常に苦しいと私は思います。
○安井環境改善室長 明星先生の御指摘のとおりでして、分粒装置を付けると、当然粒径が落ちますのでK値は小さくなる傾向があります。昨年、労働安全衛生研究所で測っていただいたものは全部分粒装置が付いておりますので、その値に加えて、今年度もう一回測っていただいて、その辺りのデータを踏まえて標準K値を定めたいと考えているところです。
○熊谷委員 今の話で、それでいいと思いますが、分粒装置を付けるとむしろK値は大きくなりますよね。これを見ますと、実際そうなっていますよね。
○安井環境改善室長 失礼しました。間違いました。逆でした。小さい分布になるとK値は大きくなります。すみません。
○熊谷委員 というか、大きいものは除去するのです。
○安井環境改善室長 そうです。文献でもそうなっています。私が勘違いしただけです。すみません。
○橋本委員 資料3の方針で基本的に私も賛成です。丁寧な方法とすれば現地で併行測定をやってK値を求める、となるかもしれませんが、先ほどの去年の安衛研の結果でも、K値はガイドラインの標準値の0.6~1.4倍の範囲というのが出ています。実際、併行測定をやっても、その場その場の作業とか条件でK値は変わると思いますので、ある併行測定をやってつかんだK値というのは、必ずしも全体の平均を反映しているとは限らないし、むしろ、それを使えば危険なこともあると思います。ですから、ある程度データを集積して、標準のK値の変動する範囲をつかんでおいて、その中の8割方ぐらいの厳しいところ、前回も私はこれを80%と言ったのですが、そのように決めるのがむしろ安全ではないかと思います。
○安井環境改善室長 データの取り方はいろいろあると思いますが、先ほど御説明したとおり、過去の標準K値は全部平均値でやっておりますので、一定のデータの数をどこまで取れるかというのは確かにあると思いますが、一定の信頼性のあるデータがそろえば、平均値でいいのではないかと。過去の整合性から考えますと、それでいいと考えております。
○鷹屋委員 橋本先生の御意見のとおりだと私も思っております。基本的に多分、同じトンネルで粉じん計を幾ら並べてNを増やしても、余り本質的ではないのかなということで、それで、どこまでいろいろな岩や断面の所に行けるかを考えますと、確かに今回出すもの、K値にしろ、後半に議論する遊離けい酸にしろ、少し限定的なものになるのかなという気はしています。ですから多分、K値の要因として2つあると思うのですが、岩そのものをどう砕かれるかということと、トンネルの大きさ等によって、違うものの(粉じんの)ソースの一つである重機の排気ガスとの比率とか、そういったことでK値というのは動くのかなと思っていますが、結局1つのトンネルでN数を増やしても、どこまで行くのかなという不安は私ども行く前から正直持っているのが事実です。
 もう一点、今の話とはずれますが、あらかじめ考えに行き違いがあるといけないので確認させていただきます。今回、やはり遊離けい酸も測りたいということで、併行測定点の装置が異なります。前回はいろいろな測定の違いを見ようということで、定点を測る所にしても、個人ばく露と同じような機械を持って行って、小さな機械でいろいろ動き回って測るということをやった関係で、粉じんの全体の量が取れなくて、結局、遊離けい酸のデータが取り切れなかったということがあるので、今回は併行測定は普通のロウボルを持って行って測ろうということを考えています。ですから、併行測定点に関しても、機種としては個人ばく露用のLD-6Nも持って行くのですが、基本的には今回併行測定ができ、つまりK値を求める点というのは、基本的には定点におけるK値のデータしか取れないのではないかと考えております。その点についても、それではどうかという御意見もこの場で頂ければと思います。
○熊谷委員 先ほどの橋本先生の話ですが、事務局は平均で行くとおっしゃったのですが、今回せっかく改めて調査されるので、今この場で平均でいくということではなくて、それも踏まえてもう一回考え直すということでいいのではないですか。どうでしょうか。
○安井環境改善室長 検証するということですので、昨年の安衛研の結果は、ばらつきがかなり少なかったということを私は前提にしておりますので、本年度測って数字が違えばもちろん違うということで、そこは検証したいと思いますが、現時点ではそれでいいのではないかと考えております。
○小西委員 今の粉じん測定の鷹屋さんからお話があった件ですが、LD-6Nと粉じん計LD-5Rというのは、サンプリング……というのは確か違いますよね。
○鷹屋委員 違います。
○小西委員 違いますよね。それと、ここに書いてあるのは、20Lの定点のろ過補集のものとK値を取るという意味でよろしいのですか。本来であれば、LD-5Rはそこそこあるので、6Nは恐らく流量が低いのだと思います。それで粉じんが取れなかったと思いますが、それぐらいのところの流量の粉じんと、それでない流量でろ過補集のものとのK値というのを本当は取ってほしいなという気がするのです。
○鷹屋委員 ちなみに流量そのものは5Rのほうが少ないです。と言うのは、本来の6Nの何も付けていない形ですと、確かに小西先生がおっしゃるように流量は少ないのですが、前回の測定は結局6Nについても分粒機を付けて、分粒機で何を使うかというと、結局NWPSを使うので、NWPSですと毎分2.5L引くということで、通常のLD-5シリーズの粉じん計は1.7Lなので、前にLD-2のときに小西先生が使われたドルオリバーのサイクロンを使ってます。K値に関しては、6Nには分粒機を付けますので、当然質量濃度も測れますので、そのK値は出しますが、最終的には5Rと遊離けい酸の都合では普通のロウボルのデータを取って、一応併行測定はしたいということです。
○小西委員 よく分かりました。ですから、全部6Nのほうもフィルターを取って、K値が20Lで取ったものと、LDの5Rと、6Nの関係がきちんと分かればいいのではないかという気がします。
○鷹屋委員 分かりました。
○小山座長 ほかはいかがですか。よろしいですか。粉じん濃度測定については、大体よろしいですか。次に2番目の遊離けい酸含有率の測定方法について御質問、御意見を頂きたいと思います。
○熊谷委員 これは資料3-1も資料3-2も非常によく調べてあって、よくやっておられるなと感心しました。上から目線ですが。先ほどから文句ばかり言ったので、一応ありがとうございますということは言っておこうかなと思います。
 質問ですが、資料3-2の2ページ、表7、8は、一応これは採石プラントでやっているものですよね。Table4がトンネルでやっていると。採石プラントのほうも一応採石プラント上でハイボリで取っていますが、例えば、表7の一番上、砂岩は平均が36%、下のTable4は17%ということで、かなり差があるのですが、私が勝手に考えたのは、例えばトンネルの場合はその石だけではなくて、いろいろな吹きつけなども入ってくるので、1日取るとこんななふうになるというイメージで考えたのですが、この理由が分かれば教えて欲しいのです。
○安井環境改善室長 私も推測するしかないですが、御指摘の可能性は高いと思います。私が確実に申し上げられるのは、測っている場所が全然違うということです。それから、採石プラントの粒径というのも実は全然分からなくて、粒径が違うのもあるのかもしれません。そういったことしか申し上げられないです。
○熊谷委員 どなたか、推測理由が分かれば教えてください。
○橋本委員 Table4は分粒しているからではないでしょうか。その影響はないでしょうか。
○小西委員 基本的には分析法が少し違うのですよね。Table4はリン酸法ですよね。
○熊谷委員 そうですね。
○小西委員 あとのほうのものはX線で分析していますから、そこの違いもあるのではないかと思います。
○熊谷委員 それはどちらが正確ですか。
○小西委員 正確と言っても、それはちょっとどちらが正確かというのは、多少データは違いますよ。同じものを分析しても。
○熊谷委員 リン酸法のほうが多めに出る。
○小西委員 完全に一致はしない。
○熊谷委員 リン酸法のほうが多めに出るのですか。別にそういうわけでもないのですか。
○小西委員 今、手元にデータが無いのではっきりしたことは申し上げられません。
○熊谷委員 分かりました。
○安井環境改善室長 いずれにしても、実際にトンネルで測ってみて、その結果を踏まえて、次回検討いたします。
○橋本委員 1つ建設業界の方に確認したいのですが、岩石の種類によって遊離けい酸の含有量を大体決めるという方法は良いと思いますが、トンネルを掘るときには、どういう岩石があるかを把握はされるのですか。例えば何kmとか長い距離の場合もあるかと思いますが、そういう場合は一様な岩石と言えるものなのですか。
○佐藤委員 その件についてお答えしますと、当初トンネルを掘る前から地質については全部調べます。ただ、そのとおりの岩質が出るか出ないかというのは、掘ってみないと分からない部分が若干あるというような状況です。そうしないと、中の構造が若干変わってきますので。
○安井環境改善室長 今の話を補足しますと、ボーリングで基本的には分かるということですが、ボーリングも精度が粗いので、実際掘ってみないと分からないということはあろうかと思います。ただ、おおむねこの山はこうだというのは分かりますので、それをベースにしながら、例えば突然岩質が変わったというような特殊な場合はもちろん作業に支障が出ることになろうかと思いますので、それはボーリングの結果と現場の岩質を見ながらということで決めていくことになるかと思います。
○小山座長 よろしいですか。遊離けい酸含有率の測定方法についても、事務局からの御提案の方向でよろしいですか。それでは、その他として、現地調査場所の選定基準と今後のスケジュール案等含めて、御意見を頂きたいと思います。
○熊谷委員 調査は、すぐ7月からということですが、実際には何箇所ぐらいでやるというのは大体想定されているのですよね。それも教えていただけたらと思います。
○鷹屋委員 今のところトンネルの数で2か所程度を考えています。繰り返しになりますが、今回は比較的大きな流量が取れる装置を置きっぱなしにしたいということで、一昨年、5か所行ったときには地下水位が高くて壁面はずるずる水が上がって、ちょっと大型な機械は置けないという所があって困ったなということと、それから、発破が終わった後で、機械を展開しなければいけないので、少し大きな機械で取るのは難しいということです。結局2カ所と限られた測定ですと、去年の報告された現場でもそうだったのですが、そもそもずり出しのときには三脚を置くのも大変で、ダンプとすれ違うのがぎりぎりな面もあったので、そういった(確実にデータをとるために)ことで全くこちら側も技術的な都合でなのですが、トンネルの水が出ない、断面が広い、できれば機械掘りということを条件として提案させていただいております。今日そういった形でいいのかということは検討会で御了承いただいた後、多分、現場を探すので、もちろん9月ぐらいまでに終わりたいとは思っているのですが、調整等もありますので、そういった形で現在のところおおむね2か所と考えて、私どもは研究リソース、人員がどれぐらい割けるかといったことで、少ないとは思いますが、今年度は2か所を基本として考えております。
○小山座長 よろしいですか。それでは、現場の測定、現場調査については事務局提案の方向で進めていただくということで、いろいろ御意見を頂きましたので、それも考えながら進めていただければと思います。次は「その他」でして、「粉じん濃度測定結果の位置付け等について」という資料について御説明をお願いします。
○安井環境改善室長 こちらについては、これまで議論されていなかったということですので、本日意見集約を図るというよりは、いろいろな御意見を踏まえて今後考えていきたいというところです。
 まず、資料4を御覧ください。1番、粉じん濃度測定結果の位置付けということです。既存のガイドラインの粉じん濃度目標レベルの設定の経緯、あるいは粉じん濃度・所要換気風量に関する基準、作業環境測定及びその趣旨を踏まえると、以下の整理でいいのではないかという提案です。
 (1)について、粉じん濃度については従来のガイドラインと同様、発散源対策及び換気装置等の工学的対策が適切かを判定する際の指標として使って、粉じん濃度目標レベルという形で、それと比較する値とすべきではないか。
 (2)ですが、遊離けい酸濃度については、遊離けい酸ばく露低減の目標値を定めて、測定された遊離けい酸濃度と比較して、ばく露低減措置を講じる必要があるを評価するということ。なお、このばく露低減措置については、換気等の工学的対策による作業環境管理では限界がありますので、必要な防護係数を有する電動ファン付き呼吸用保護具の選択等の作業管理が必要ではないかということです。
 (3)ですが、粉じん濃度等の評価方法としては、昨年の粉じん濃度の測定値の度数分布を踏まえると、平均値としては算術平均値を使えばいいのではないかということです。
 2番は新たな粉じん濃度測定に係る目標レベルということです。技術の進歩等があるということですので、それを踏まえて最新の粉じん測定の結果や粉じん濃度低減に関する技術開発の進展を踏まえて、新たに定める粉じん測定目標レベルというのは実現可能な範囲で、できるだけ低いほうがいいのではないかと。その適切なレベルを設定するためには、現状のトンネル工事での濃度がどうなっているのか、あるいは換気装置はどうなっているのか、低粉じん吹付剤等の最新技術の取入状況等をアンケート調査して、その結果を踏まえて目標レベルの値を検討すべきではないかということです。
 資料4-1に移ります。こちらについては長い資料ですが、「トンネル工事における粉じん測定及び換気等に関する文献等について」というものです。まず1番ですが、ガイドラインでの粉じん目標レベルの設定の経緯ということです。こちらについては、建災防で行った委員会(2000年)のときに、あくまでも発散源対策あるいは換気装置が適切に稼働しているか否かを判定するということで、工学的対策が適切であるかどうかの指標として定められていて、その数字というのは可能な限り最小限にすべきであって、なおかつ現実的であるべきであるということになっていまして、2000年の段階では、これが3mg/m3程度ということで提案されて、現在のガイドラインに取り入れられています。
 2番の粉じん濃度に関する基準、所要換気量等に関する文献です。まず、ACGIHでは、ばく露濃度基準というのが定められていない粒子状物質については、空気中の濃度はレシピラブルについては3mg/m3にすべきだとなっています。結晶質シリカについては0.025mg/m3ということが書いてあります。このACGIHの考え方は、粉じん濃度を測定して、それに結晶質シリカの含有率を乗じて結晶質シリカのばく露量を求めて、それとTLVを比較しますので、この考え方ですとTLVを満たすことのできる粉じんの濃度というのは、Q値に反比例して小さくなるということになります。
 (2)ですが、管理濃度の考え方としては、この3mgと0.025mgを包含する管理濃度として計算式を採用していて、これも同様に、管理濃度というのはQ値に反比例して小さくなっていくということになっています。
 (3)です。産衛学会は結晶質シリカについては0.03mg/m3ということで、ACGIHとは違う数字を使っています。欧州については、図が小さくて見にくいと思いますが、Quartzという所があるのですが、0.05~0.3mg/m3ということで、国によって違いますが、ACGIHあるいは日本の基準と比べてかなり緩い国もございまして、日本は一番厳しいと言えると思います。
 それから(5)です。粉じん濃度を減少させるための所要換気量ということです。こちらは建災防の換気指針というものがありまして、基本的に所要換気量というのは粉じん管理目標濃度に反比例するということですので、粉じん管理濃度を10分の1にしようとすると10倍の換気量が必要になるといった単純な関係があります。
 3番はトンネル坑内の粉じん濃度に関する文献です。(1)は3mg/m3としたときの根拠としておりますが、大断面の場合は6mg/m3未満が80%とか90%、断面積が小さくなってくると更に大きいといった数字が出ております。
 (2)は図で示していまして、右に図-1というのが出ていますが、上の図がガイドライン以前の1998年の建災防の調査データです。これは3mgに比べて測定値がすごく上振れしているのが見えるかと思います。下の図、2005年にガイドラインが出た後はどうなっているかと言うと、3mg近くにかなり収束しているのが見えると思います。残念ながら、まだ半分の現場が3mgを超えているわけですが、大分状況が改善しているのが分かるということです。
 (3)が、昨年の安衛研の結果です。1サイクル連続測定の定点測定と個人測定等、度数分布を出していただいておりまして、これが図1から図4までありますが、1サイクル連続測定でやると、割にきれいに正規分布しております。個人測定については、ちょっと右に傾っているような気もしますが、おおむね正規分布と。掘削・ずり出しになるとちょっと左に寄っているかなという感じで、吹きつけについてもおおむね正規分布かなという結果が出ているということです。
 (4)は米国のトンネルがどれぐらいの濃度なのかということで、これは文献ですが、トンネル工事での結晶質シリカの幾何平均というものが示されていまして、0.328mgということで、TLVの13倍ぐらいあるということです。同じく(5)は米国の状況ですが、トレンチ又はトンネルの掘削の結晶質シリカの幾何平均は0.25、吸入性で15.64ということですので、それぞれTLVの10倍、5.2倍ということです。
 4はトンネル坑内の換気手法に関する文献ということです。(1)の西村(2010年)は、年を追うごとに集塵機の能力が大型化していることと、より効果的な吸引捕集方式、これは送気すると同時に排気するということで、両方やるということです。そういった方法を取ると、比較的少ない排気量で効果があるということで、表3にあるように、3mgだけではなくて、2.5とか2mgとか、そういったものも可能な数字となっているということです。
 (2)は大林組の研究ですが、トラベルクリーンカーテンというものを使うと切羽の濃度を下げることに貢献できるということが書かれています。
 5が、換気以外の粉じん濃度低減方策に関する文献ということです。(1)が、吹付コンクリートに液体急結剤というものを練り込んだ場合に粉じんの低減効果があるということで、図-3が通常の粉末、図-4が液体を使った場合ということで、濃度の低減が著しく見られるということが書いてあります。
 (2)は、粉じん抑制剤というのを吹付コンクリートに添加することで低下するということです。図3というのがありますが、添加率を上げると粉じん濃度が下がっていくという結果が出ています。
 (3)についても液体急結剤でして、これはアルカリフリーという、より安全性の高いものを使って4分の1となる効果がありました。特に、これは小断面のトンネルですので、それでもかなり効果があるということが記されております。
 (4)が吹付コンクリートの方式に圧縮空気を使わずにエアレスというのを使うと、相当濃度は下がるということです。
 (5)は毛色は違いますが、吹付作業において遠隔操作をするということも可能になってきているということです。
 6は作業環境測定とその評価の趣旨ということです。作業環境測定の評価というのは安衛法の65条の2の本文に規定されておりまして、その趣旨は単位作業場所について作業環境測定の結果から得られる測定値を統計処理して、測定対象ごとに決められている管理濃度と比較するということです。評価値については、時間的にも空間的にも正規分布ではなく対数正規分布しているといった前提を取っているということです。
 7は考察です。1つ目が、新たな粉じん濃度測定の結果の位置付けということです。(1)にあるように、トンネル工事というのはサイクル別に作業の内容が大きく異なって、このため粉じん濃度が時間的に対数正規分布するということはなくて、作業別に全く違うということです。それから、空間的にも単位作業場所というのは切羽から抗口までとすると、それを全体の空間的な平均を求めるのはまた難しいという特質がございます。こういった問題をある程度解決できたとしても、単位作業場という概念がありまして、トンネルの切羽というのは毎日前進していき土質が異なる可能性がありまして、また同じ土質であっても雨が降れば土中の水分量などが変わりますので、測定日の単位作業場所と測定日の翌日の単位場所の粉じんの発生しやすさというのは連続性があるとは一般的に言えないということで、前者の平均的な作業環境は後者の平均的な作業環境に一致するとは一般的には言えないということなのです。こういったことから、現時点でも作業環境測定の対象としてトンネル等は入れておりませんし、今回検討している測定についても、作業環境測定の評価による厳密な管理区分の設定にはなじまないのではないかということです。ただし、当然トンネルの粉じん濃度の工学的対策の効果を示す目安、一般的な意味で言う作業環境の評価に使えるわけですので、それの目標レベルと比較するために、値としては当然使えるということです。
 それから、遊離けい酸に関する測定結果について、工学的対策が難しいということは書いてありますが、当然のことながら、遊離けい酸のTLVあるいは管理濃度を満たそうと思うと、例えば粉じんの濃度を15分の1とか19分の1にしなければいけないとなりますが、そのためには所要換気量というのは15倍から19倍が必要になるということになります。これができるだけ大きな送風管を使ったとしても、現状で今の送風速は14m/sぐらいありますので、これを単純に15倍すると風速は210mということになります。これは工学的には出ないと思うのですが、仮に出たとしても、それは落石等、切羽での労働災害の発生を誘発するおそれもあって現実的ではないということで、米国においてもそういった状況があって、TLVというのは10倍ぐらいとなっているということですので、工学的対策の目標値としては現実的でないということです。
 ただし、遊離けい酸による健康障害の防止のためには、換気等の工学的対策に加えて、電動ファン付き呼吸用保護具の防護係数を適切に選択する等の作業管理が必要になるということです。
 それから、粉じん濃度の平均値については、全測定値を算術平均するのか幾何平均するのかという問題がありまして、こちらについては1サイクル連続測定が正規分布となっていますので、算術平均でいいのではないかという提案をしています。
 8番が、もう1つ、新たな粉じん濃度目標に関する考察です。こちらについても、遊離けい酸は実現不能だから現状を放っておけばいいということは当然ないわけで、でき得る限り下げるべきだという、引き続きそのスタンスは維持したいと考えておりますが、どこが現実的なレベルなのかというところを検討する必要があるということです。(3)にあるように、いろいろな吸引捕集方式の開発とか、トラベルクリーンカーテンとか、液体急結剤、エアレス吹きつけ等があります。昨年行われた安衛研の結果が比較的低かったということもありますので、現状のトンネル工事における粉じん濃度の現状とか、換気設備や低粉じんコンクリート等の取入状況、あるいはそれの隘路といったものを十分にアンケート調査して、その結果を踏まえて、この数字について議論すべきではないかと考えています。
 次は資料4-2です。こちらは電動ファン付き呼吸用保護具の防護係数に関する文献等についてです。1番は、国の構造規格というものです。こちらについては、まずフィルタの捕集効率というものがありますが、それ以外に、指定のフィルタを装着したマスクからの漏れ率を等級別に定めていて、これはフィルタと面体からの漏れ率を両方評価した値となっているので、防護係数の逆数に近い概念と考えています。防護係数というのは、外にある粉じんの濃度が10だとすると、マスクの中が1であれば防護係数は10といったものです。
 それから2番ですが、日本工業規格にどのように書いてあるのかを見たところ、半面形については4~50と幅がありまして、そのままでは使えずに、きちんと計算して使ってくださいということが書いてあります。
 アメリカについては、指定防護係数という概念があります。こちらは、本来はフィットテスト等を行って防護係数をきちんと定めるのが望ましいのですが、そういうことができない場合は、非常に保守的な数字として指定防護係数というのを定めているということです。3の(2)に図がありますが、例えば半面マスクで言うと、平均値で言うと431ぐらいありまして、5%パーセンタイルという95%は絶対に大丈夫だというものになると58ぐらいしかないので、50ぐらいを使うべきではないかというようなことになっております。全面形については、1,000で大丈夫だということです。ただ、これはフィルタから漏れているというのを想定していませんので、効率の低いフィルタを使えば、また数字は変わってくることになるような数字だということです。
 4番は考察です。表1にあるのは、構造規格で定められている漏れ率の逆数を計算するとこのようになるということですので、これぐらいの漏れ率であるというのは試験で担保しているということは言えるということです。
 (2)は、指定防護係数というのが表2にありますが、それにフィルタの漏れを考えると、ここに書いてあるような数字が出てくるということです。当然のことながら全面形についてはピッタリと合うのですが、半面形については、指定防護係数というのは非常に保守的な数字ですので、これをどのように考えていくのかというのは、これから専門家の御意見を聞きながら考えていきたいと思っています。
 資料4-3です。こちらは、定点測定と個別測定の特定値について比較してみたという値です。労働安全衛生研究所のデータから、まず作業別と現場別に分けてやっております。(1)の値は、切羽から51m以上離れた測定点の測定値については除いております。今回は20mと50mを図るという趣旨からです。
 それから、掘削・ずり出しについては、個人測定の平均値の定点測定に関する比率が0.575~1.304ということで、いわゆるY=Xという式に乗せてみると分かるように、大きな差があるものではないということです。
 それから、安衛研の図5(2)というのがあります。これはこの資料にも入っておりますが、個人が高いようなケースもあるけれども、定点が高いケースもあって、個人と定点、重機では差がないということが書いてあります。
 (3)です。コンクリート吹きつけ時ですが、これも図を見ていただくと分かるように、0.322~3.4ということで、3点しかないということもあってばらつきが大きいということです。安衛研の結果の図5(3)では、個人測定のほうが高い値もあるが、重機でより高い値も測定されていて、個人測定値が一概に高い値になっていないということです。
 (4)が1サイクル連続測定です。定点測定の数字をプロットしていますが、これも外れ値、切羽から51m以上の数字を外してプロットすると、比較的直線関係に乗っかっているという感じで、何らかの比例関係、例えばX=2Xのような高いものに乗っかっているような様子は見えないということです。それと、1サイクル連続測定は、1サイクルを連続して測定しなければいけない関係で、25mよりも近い数字が入っていないということなので、個人ばく露測定と比較するにはそもそも適切ではないということが言えるということです。
 それから、考察です。2つの異なる測定法の系統的な偏りの有無については、こういった形で直線的な関係があるかを見るということが一般的で、もう1つコンクリート吹きつけ中の遊離けい酸濃度というのは、例えば0.4%ぐらいで、ほとんど寄与しないということですので、遊離けい酸濃度のそういったものの評価に考えられた場合については、コンクリート吹きつけ作業以外の測定値で比較するという必要があります。
 掘削・ずり出し作業については、系統立った片寄りは見られないということです。また、調査員が個人サンプラーを装着していたため、若干個人測定の値が低めに出ているのではないか、という御指摘もあった現場Bを除いても、余り変わりはありません。それから、図5の(2)についても、安衛研としては差はないという見解です。吹付・ロックボルトについてもデータ数が少ないので分かりませんが、系統立った片寄りがないということです。図5の(3)についても、個人測定よりも重機測定のほうが高い値もあって、3つの測定において一概に個人測定の値が高いとは言えないというのが、安衛研の見解でした。
 それから、1サイクル連続測定についてもデータ数は十分とは言えませんが、系統立った片寄り、少なくとも別の直線の上に乗っているようなことはなかったということです。
 これまで述べた事項のほか、測定値が影響を受ける要素として、定点測定の位置、作業者が個人測定中にどのタイミングで切羽にいたか、換気による粉じんの拡散状況等、それからデータの欠損もあるということですので、統計的な判断を出すのは困難ということですが、遊離けい酸の測定値に関して考えれば、掘削・ずり出し作業中の両測定に系統立った片寄りはないと。それから、1サイクル連続測定についても、信頼性の低い外れ値を除けば、おおむね直線関係にあるということですので、測定方法の違いによる系統的な測定値の違いがあるという明らかにするデータはないと考えているところです。
 資料4に戻っていただきます。こういった文献の結果を踏まえて、このような提案をしているということですので、御議論いただきたいと思います。説明は以上です。
○小山座長 ただいまの御説明について、御質問と御意見を頂きたいと思います。
○井上委員 弁護団の井上と申します。この点が一番問題があると考えております。先ほども申しましたように、そもそもこの検討会が始まったのは、平成19年6月に政治合意が結ばれて、その中でトンネル工夫のじん肺を防止するために、徹底した防護対策を行っていくと。そのための粉じん測定が重要であるということで、検討会をすることになったわけです。ですから、ここで検討している粉じん測定というのは、あくまでも作業環境がどういう状態にあるかということを管理していくための、作業環境管理のための測定、目的はそこにあると考えています。
 現在義務付けられている切羽から50mの測定は、換気の効果を測るための測定であって、作業環境測定ではないのです。ですから、それと同じ目的に今回のものもしてしまうというのは本末転倒ではないかなと、出発点が全然違うのではないかと思っています。もちろん、工場と同じような作業環境測定が、トンネルで全く同じようにできるとは思っていませんけれども、あくまでも目的は作業環境測定と位置付けるべきである。では、出た結果を何と比較して評価していくかということになるのですけれども、今回の事務局の提案は、あくまでも工学的に実現可能な目標レベルを設定して、それと評価をすると提案されていますが、それは今のガイドライン等で行われてきた手法であって、作業環境測定とはかけ離れたものだと思っています。目的を作業環境測定だと考えるならば、やはり現行の作業環境評価基準、要するにあそこで取られている数式、1.19×Q+1分の3.0で出てきた数値を評価して、その数値が人体にいかに害悪を及ぼす危険な数値であるのかということを、まず客観的に評価することが重要だと思います。
 その上で、そのことをやはり労働者の健康を守るためには、防護マスクをきちんと着けることが重要だと教育にも結び付けていく。そのためにも客観的に評価を、評価基準でしていくということが重要だと思っています。ただ、平成9、10年の測定、実際のトンネルでの測定結果を見ても、遊離けい酸を加味して評価していくと、ほとんどの現場が管理3になってしまう。いわゆる、これで評価をして3を超えた場合には、工事をストップして工学的な改善がされない限り工事を再開してはならないということになれば、それはもう現実的ではないし、私たちもそこまでは考えていないです。ただ、評価は評価基準でやるべきだろうと思っています。
 その先のことについては、今回事務局が提起しているような方式で、作業環境改善につなげていくのはいいと思っています。現実に評価基準では厳しすぎるということで、現在の工学的レベルで実現可能な目標値、目標レベル、現在は3.0ですけれども、それより厳しい数値がいいとは思いますけれども、目標レベルを定めてそこに近づけていくような工学的な改善をする。それとともに、遊離けい酸で評価して出た厳しい数値を参考に、有効なマスクはどういうものかということを検討して、マスクの使用の徹底を労働者に図っていく。そうやって、現場の環境改善と労働者の保護の実現を図っていく。その後半部分はいいと思いますけれども、まずはやはり評価基準で評価を厳しくするというのが重要ではないかと思っています。
○安井環境改善室長 井上委員の御指摘につきまして、私のほうで資料をもう一回説明したいと思います。(1)は御指摘のとおり、粉じんの目標濃度ということで、レベルということでこうやってくださいということなのですけれども、(2)に書いてあるのは、遊離けい酸ばく露低減の目標値を定めるというのは、これは例えば先ほど言ったように管理濃度の数式を使うであるとか、ACGIHの0.025という生の数字を使ってもどちらでも、どちらか決めないといけないのですけれども、それを使うことを想定しておりますので、両方入っているというか、どちらがメインなのかというのはちょっとここでは明確にしていませんが、当然そういった遊離けい酸の測定値を踏まえた評価の目標値は入っているということです。
○熊谷委員 今の井上委員の意見は、要するにマスクをしない場合にどういう評価ができるかというのをするべきだと、多分そういう意味だと思うのです。この考え方そのものは、なるべく工学的対策でとにかく低くして、最終的にはマスクしかないというのは、私もそれは賛成です。ただ、その前に、マスクは最終的な手段なので、今現状でどういう評価になるかということだけはちゃんと示すべきではないかという意味で、そういう意味では私も賛成です。それは割と簡単にできることだと思います。
○安井環境改善室長 (2)に一応、遊離けい酸ばく露濃度低減の目標値を定めて、測定された遊離けい酸濃度と比較するということが書いてありますので、比較はすると。
○熊谷委員 比較はするわけですね。マスクの防護係数からこのマスクが良いと選ぶだけではなく、一応それはそれで比較して評価をするということでいいのですね。
○安井環境改善室長 評価という日本語はちょっとあれですが、何倍という数字が出るのはもちろんであって。
○熊谷委員 つまり今はマスクをしないと駄目ですよという意味ですよね、評価としては。マスクをしないで働ける状況にはなっていないという意味ですよね。
○安井環境改善室長 そうですね、遊離けい酸濃度が、例えばパーセントによりますけれども、0.5とかそれぐらいの数字になったときに、0.025と比べると20倍ですねとか、そういう数字は当然出てきます。
○熊谷委員 ですから、数字は出るのですけれども、それをちゃんと評価として表すべきではないかという意見だと思いますが。
○安井環境改善室長 そこは実は、私もちょっと分からないところで、御議論いただきたいのですけれども、管理濃度という名前になっていますが、作業環境管理のための濃度で、もちろん工学的対策によって実現することを前提にしています。これについては、先ほど縷々御説明したとおり、作業環境管理で実現できる数字ではないわけです。例えば0.025という数字は。そういう意味では、従来の作業環境測定でいう作業管理の濃度という、目標値というものではなく、ありのままに遊離けい酸による人体影響を示す、ありのままの測定になろうかと考えています。
 ちょっと用語の問題でもめている気がするのですけれども、評価基準である例の計算式を使うとか、0.025を使うというのは、当然使わざるを得ないのです。当たり前ですが、遊離けい酸を測る以上は、それは当然なのです。それを管理濃度のように、工学的対策の目標値として使うことは現実的ではないということで、そういう意味で2つに分けているということです。1つ目は工学的対策ができる目標値、現実的な目標値を作りましょうと。先ほどの遊離けい酸濃度については、工学的対策だけでは無理なので、それに加えて保護具も含めた、いわゆる作業管理も含めた管理をする目標として使おうという趣旨です。
○井上委員 評価基準を、工学的な管理を行っていくための目標値にするのは現実的ではないということは、私も今のトンネルの現状では無理だというのは分かっているので、管理をしろというところまでは言うつもりはないのですが、やはりこの評価基準に基づいて客観的な評価をして、いかにこの現場が危険なのだと、マスクをしないで作業をしたら、いかに危険なのかということを、労働者に分かりやすくする必要があると思うのです。
 その意味では、作業環境評価基準に基づいて、管理1、管理2、管理3と3つに分けて評価していますけれども、あの手法をそのまま取り入れて、管理という言葉は特別な意味があるというのであれば、管理という言葉は使わずに例えばABCでもいいと思うのですが、そうやって評価をする。分かりやすく評価をして、いかに危険なのかというのを現場のゼネコンさんもそうですが、労働者にも理解させる。そういう意味で評価をして、分かりやすく表す。単に数値だけを測定して、そこに数値が出ましたと言っても、その意味が分からないですから。それはこういう意味ですよという評価をして、労働者に示すことが重要なのではないかと、そういう意味で言ったつもりです。
○熊谷委員 余り時間がないのですよね。それで今の議論は、今日はここは取りあえず皆さんに意見を聞くということだったので、次回も含めて議論するということでいいと思うのです。文書を作ってきたのでちょっと紹介させてください。真ん中辺りから下、まず今の防護係数の話なのですけれども、ちょっと読ませていただくと、「適切な防護係数を有する電動ファン付き呼吸保護具の選択等の作業管理について」ですが、「測定された遊離けい酸濃度を防護係数で割った値を、遊離けい酸ばく露低減の目標値と比較するという意味だと思うが、労安研の昨年の調査では、個人ばく露濃度は作業環境濃度の2倍程度であったことを踏まえる必要がある」。それで、「作業者と調査者の個人ばく露濃度に差があったことからも、作業者付近で濃度が高いといえる。呼吸保護具は健康障害防止の最後の砦なので、安全側に設定することが必要である。例えば個人ばく露濃度を測定した場合は測定値のままでよいが、作業環境濃度を測定した場合は測定値を2倍にする」というのが私の提案なのです。
 これを出した後に、先ほど事務局から説明があったのを作られたので、先ほどの資料4-3というのを作られています。私の数字とちょっと差があるのですが、後でずっと見ていると、私のほうは作業環境測定の51m以上も含めてしまって計算しています。51mから向こうを計算しているので、作業環境濃度がそれ以上に低くなってしまっているという意味です。それで差が大きくなっています。もう1つは、私のほうは個人ばく露については調査者は含めていません。
 取りあえず、今言いたいことは、事務局が出していただいた資料でいいますと、資料4-3の2ページにある図3が正しいとした前提で言いますけれども、現場のBは全部調査員なので、これは私は除くべきだと思っています。そうすると全て個人ばく露測定のほうが濃度が高いのです。
 先ほど言いましたように、保護具について何を選択するかという基準に使うというところもあるので、やはりここで一定の倍数を掛けないといけないのではないかというのが、私の提案です。
 働いている人の健康に関わる問題なので、これは非常にデータ数が少ないし、実際なかなかデータがないというのも仕方がないのですけれども、ここは慎重に考えてほしいと思います。以上です。
○安井環境改善室長 まずデータについては、資料4-3に入っておりますが、先ほど申し上げましたように、セメントの吹きつけの中に遊離けい酸は入っておりませんで、それを含めたデータで議論するのは余り意味がないと思います。それを除いたデータというと、資料4-3の図1しかなくて、ちょっと見ていただくと分かるように、現場Bを仮に除いたとしても、上振れしているようには見えないという実態があります。あと何か補足をお願いします。
○オブザーバー(中村主任研究員) 調査を担当した中村です。データ数に限りがあるということで、先ほど説明の中にもありましたけれども、1サイクルで比較する場合になると定点測定の位置は後ろのものに寄ってしまうことに対して、個人ばく露だと前のほうでも作業しているデータも入りますので、やはり個人ばく露が高くなってしまう傾向が出るということは1つあります。
 もう1つ、ここでは考慮されていないのですが、平均を取るときに個人サンプラーの結果について、全員で取れていない現場もあります。先ほどの熊谷委員の図で言いますと、我々の調査結果の図5-1を出しているのですが、その個人のところを見ていただければデータ件数が違います。この現場で言うと、現場Eは実は全員の作業者に付けていただいたので、切羽で作業していない方も含まれています。そうするとやはり高い人と低い人が出る。
 それに対して、全員には付けられないという現場の場合は、なるべく切羽で作業をする人に付けさせてくださいと言っていますので、そうなると高いデータに寄るという可能性もありますので、やはり平均して出すということは、なかなか厳しいのです。
 では、同じような条件の人でというふうになると、データが2点3点ぐらいしか残らないということになってしまって、現状ではまだここでそういうことを言うのは厳しいと我々は考えています。
○熊谷委員 まず1つお願いなのですが、調査員を除いたデータを次回のときに示していただけたら有り難いです。調査員を除いた値です。これはBだけではなくて、AにもDとEにも調査員が1人ずつ入っていたと思います。これは簡単にできるのでやっていただきたいです。切羽付近が濃度が高いというのは当然のことなので、そこで働く人というのがある程度固定しているのであれば、やはりその人たちの健康を守るというのが一番重要になってくるので、そういう意味では単純に作業環境測定と個人ばく露が一対一だという話ではないというのが、私の意見です。これは重要なことなので、次回にも議論していただければと思います。
○佐藤委員 評価の仕方をどうのこうのというのは、これから議論していけばよろしいと思うのですけれども、入口の話として、我々の身に直接返ってくるのですが、遊離けい酸濃度を各現場で測るようになるのですか。測らなければならないとなるのですか。それとも先ほどあったように、岩質で3タイプぐらい決めて、それを使って先ほどの算式に入れて、それをどう評価するかということになるのか。ちょっとその辺が分からないので、教えていただきたいと思います。
○安井環境改善室長 御質問だけ簡単にお答えしますと、実際にサンプリングして遊離けい酸濃度を測るという方法ももちろんOKですし、先ほど言った標準Q値というのを粉じん濃度に乗じて計算するという方法も、両方認める予定です。
○外山委員 井上委員の御意見に関連してなのですけれども、資料3-2に今回労働安全研究所がやられた遊離けい酸濃度のデータが出ています。5つの現場で6つ測られていますけれども、これを私は、それぞれの現場に定点、個人の最高濃度を入れてみました。BとEだけお話しますけれども、Bが一番高くて遊離けい酸含有量が37.5%で、管理濃度が0.066になります。このときの粉じんの最高が1.35でした。そうすると実際の粉じん濃度は管理濃度の20倍ぐらいになるのです。
 けれども、Eの現場は遊離けい酸含有率0%なので、Eの値が3です。粉じん最高が2.9だったので、0.97と管理濃度を下回るのです。ヒヤリングのときも作業者の方がおっしゃっていましたけれども、吹きつけのときが一番濃度が高い、もうもうとするということを言われていたのですけれども、実際のリスクとそれだけ合わないということがあり得ると言うのです。そういったこともきちんと教育の中で、あるいはリスクアセスメントの中で加味していく必要があるということと、やはり遊離けい酸が非常に重要だということ。
 それから私は実際に2017年にトンネルの現場に行きましたけれども、その中で防じんマスクの使い方を間違っている、ヘルメットの上に締め紐を付けているような付け方でしていた方が、かなりいらっしゃいました。電動ファン付き呼吸保護具半面形を使っていて、最大40から50防護係数ですけれども、この場合は50には多分ならないということですし、そうなってくると、例えば実際大丈夫なのかということになってきます。今、粉じんの特別教育というのは、呼吸保護具に関する講義だと0.5時間、30分しかないのです。例えば石綿則だと1時間あるわけです。この辺りの教育をきちんと見直す、教育をしていく、それはやはりリスクアセスメントに基づいて、現場がどういうリスクになっているのかということを、現場の労使がきちんと把握していくところから始まっていくと思います。
○熊谷委員 せっかくこれを書いてきたので、まだ済んでいないのでやらせてください。私の資料なのですが、1ページ目の下のほうの(3)というところは、統計的な話を書いているので、後で読んでいただいたらいいかなと思います。
 2ページ目の最後の2行なのですが、工学的対策の換気以外のことに興味を持って読ませていただき、こういうのがあるのだと思ってみていました。液体急結剤とか粉じん抑制剤というのがあるのですが、これは非常にいいのですけれども、例えば液体が入ってくるとマスクのフィルターが目詰まりするのではないかとか、毒性は大丈夫なのかということも、一応検討しておく必要があるのではないかと思いました。何か、こういうものの毒性というのは分かっているのでしょうか。
○オブザーバー(中村主任研究員) 毒性に関してですが、基本的に急結剤などを購入するとSDSが付いてくるので、それを見ていただければそこに書いてあるということではあります。ただそれを、現場の方々がきちんと認識しているかどうかはまた別で、それこそ教育だとは思うのですが、基本的には液体急結剤というものに関するSDSはあります。そこに書いてあります。
○熊谷委員 それで、見られてどんな感じの毒性でしたか。
○オブザーバー(中村主任研究員) 私が見たものでは、例えば粉じんとしてはこういう感じで、基本的には普通の粉じんとしての3mg/m3という形で書かれていたので、そういうものであれば同じような管理でよくて、もしそこに、それより厳しい値が書いてあるようであれば、それも加味してということになります。ただ、混ぜる配合によってもそれがまた変りますので、そういうことも加味してということになるかと思います。
○熊谷委員 今のいろいろな対策があって、私が見て単純にいいなと思ったのは、エアレス吹きつけというのが非常に効果があって、かつ、化学物質も使っていないので、エアレス吹きつけというのがすごくいいと思ったのですが、これは非常にコストが掛かるものなのですか。ちょっと教えてください。また次回にでも教えていただけますか。これはすごく良いですよね。私はこれだけ見たらそう思ったのですが、違うのですか。
○安井環境改善室長 よろしいですか。コストというのは調べてみないと分からないですけれども、エアレス吹きつけが個別の企業がやっているという状態で、幾つか方式もあるみたいなのです。製品として広く使える状態になっているかどうかというところが、まだはっきりしません。
○熊谷委員 何かまた調べていただけたら有り難いです。
○安井環境改善室長 建設業界の方から情報提供を頂かないと、私はちょっと分からないのですけれども。
○熊谷委員 余り一般的ではないのですか。
○安井環境改善室長 一般的ではないですね。
○熊谷委員 そうですか。でもこれから一般的にしていったらいいので、是非教えてください。
○安井環境改善室長 測定値の話はさておきまして、井上委員からあるいは外山委員から御指摘があった中で、外山委員が正におっしゃったように、粉じんの濃度と健康リスクというのは一致しないわけです。Q値によって異なるということです。そこで外山委員が御説明されましたように、20倍とか0.97倍とか、正にその数字がある意味、健康リスクを表す数字になってくるわけです。
 井上委員が、区分するということを御発言されましたけれども、リスクという概念になってくると区分は、もちろん無限に区分できるのですが、結局リスクというのは定量的に0%から100%に決まってくるということですので、そういう意味においては、外山委員がおっしゃったような感じの話を労働者に伝えていくということになっていくのではないかと思います。これは私の意見です。
○熊谷委員 もう1つだけ。資料4-1で、度数分布を取られて正規分布という表があったのですけれども、これは今回取ったトンネルの全部のデータを合わせて度数分布を取られているように思うのですが、本当は各現場での度数分布を出さないといけないと思うのです。そこの現場で正規分布しているから算術平均を算出するという話をしないといけないわけで、実際データが少なくてできないかもしれませんが、一応そこだけ言っておきます。
○小山座長 よろしいでしょうか。この資料4の議題は次回も引き続き議論をしなければいけないことだと思いますので、特に今日御発言しておきたいということがあれば、していただきたいと思います。なければ、時間が少々過ぎておりますので、一応議論を打ち切りたいと思いますが、よろしいでしょうか。一応、この資料4のその他についての議論は、ここまでということにしたいと思います。それでは最後に事務局から連絡事項等があればお願いします。
○安井環境改善室長 本日は精力的な御議論を頂きありがとうございました。今後の予定ですが、先ほど御説明しましたとおり、7月から9月にかけて現地測定を行いまして、その結果を踏まえて10月から11月頃に開催したいと考えていますので、日程調整については後日また御連絡させていただきます。それでは、本日は検討会を以上で終了といたします。ありがとうございました。