第76回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 
第76回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(議事録)
 
1.日時 令和元年6月12日(水) 13:58~15:28
 
2.場所 厚生労働省中央合同庁舎第5号館専用第22会議室(18階)
     (東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)
 
3.出席委員
(公益代表委員)
○東京大学大学院法学政治学研究科教授 荒木 尚志
○慶應義塾大学名誉教授 大前 和幸
○読売新聞東京本社編集委員 宮智 泉
○慶應義塾大学大学院法務研究科教授 森戸 英幸
  
(労働者代表委員)
○全日本海員組合奨学金制度運営管理部長代理 楠 博志
○全国建設労働組合総連合労働対策部長  田久 悟
○UAゼンセン 政策・労働条件局部長 松浦 勝治(代理出席者)
(欠席:浜田 紀子 UAゼンセン政策・労働条件局部長)
○日本労働組合総連合会総合労働局長 村上 陽子
  
(使用者代表委員)
○東京海上ホールディングス株式会社人事部ウエルネス推進チーム専門部長 砂原 和仁
○鹿島建設株式会社安全環境部長 本多 敦郎
○日本製鉄株式会社人事労政部長 山内 幸治
○一般社団法人 日本経済団体連合会労働法制本部長 輪島 忍  

4.議題
(1)労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問) 
(2)複数就業者への労災保険給付の在り方について
 
5.議 事
○荒木部会長 御出席予定の方は既にお揃いということですので、ただいまから、第76回労災保険部会を開催いたします。まず、開催に当たりまして、事務局から何かあればお願いいたします。
○労災管理課長 労災管理課長の田中です。まず、前回御欠席の新しく御就任いただいた委員の方について御紹介いたします。公益代表として、森戸英幸委員に御就任いただいております。よろしくお願いいたします。また、本日、局長の坂口におきましては、業務の都合上、途中退席させていただきますので、あらかじめ御了承いただければと思います。以上です。
○荒木部会長 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の中野委員、水島委員、労働者代表の坪田委員、浜田委員、使用者代表の二宮委員、北委員は御欠席と承っております。使用者代表の本多委員におかれましては、遅れて来られるという連絡を受けております。なお、浜田委員の代理として、本日はUAゼンセン政策・労働条件局部長の松浦勝治様に出席いただいています。これにより、現在の出席者は11名ですが、公益代表、労働者代表、使用者代表それぞれ1/3以上の出席がございますので、定足数は満たされていることを御報告いたします。それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
 本日の議題に入ります。第1の議題は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱です。事務局から説明をお願いいたします。
○労災管理課長 それでは、配布資料の資料1、参考1-1、1-2に従って御説明申し上げます。今回の改正事項ですが、メリット制に関する改正です。参考資料1-2をお開きください。メリット制についてです。既に御案内のとおりかと思いますが、労災保険のメリット制は、事業の種類ごとに定められている労災保険率を個別の事業場に適用する際の制度です。個別の事業場の災害の多寡に応じ、労災保険率又は労災保険料を増減することで、事業主の保険料負担の公平性の確保、災害防止努力の促進を図ると、こういった目的で定められているものです。仮に災害がたくさん発生しているということであれば、最大で+40%、発生していないということであれば-40%、こういう形でメリット制というものを制度化しているということです。
 参考1-1は、今回、御提案する省令案の概要です。改正の趣旨ですが、前半については、先ほど御説明いたしましたメリット制のメリット収支率の関係の説明です。今般、毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを、一部抽出調査で行っていたこと等により、スライド率とか、あるいは最低保障額が低くなっていたと、こういった場合がありましたので、過少給付であった方については、その差額に相当する分等を追加給付として支給すると。これについては3月にも御議論いただいたところなのですが、この追加給付の額についてはメリット収支率の算定に反映させないようにする、そのために、当該徴収法施行規則の一部を改正する、こういった内容になっております。
 これを要綱にしたものが資料1です。おめくりいただくと縦書きになっていますが、第一として、先ほど申し上げた内容について書かせていただいています。なお、施行期日については、公布日から施行することを考えております。説明は以上です。よろしくお願い申し上げます。
○荒木部会長 これは、諮問案件ということでよろしいですね。
○労災管理課長 はい。
○荒木部会長 それでは、ただいまの諮問のあった件について、御意見、御質問があればよろしくお願いいたします。
○輪島委員 参考1-1の確認です。改正の趣旨の所の下線部ですが、メリット収支率の算定に反映させないようにするということですけれども、実際には毎勤統計の関係で大分影響があるということが前提なのでしょうか。そもそも額としての幅には、そんなに大きな影響はないように思うのですが、それでもこのようにしておいたほうがセーフティだと、そういう趣旨なのでしょうか。
○労災管理課長 そういう趣旨です。もちろん全ての個別の事業場について当てはめて確認しているわけではないですが、仮にこれでメリット収支率が変わってしまって、何らかの影響を受ける事業場が出てくる可能性もありますので、ある意味念のために、こういう措置を講じておくということです。
○輪島委員 公布は大体いつぐらいですか。官報に出すということでの公布かと思いますが、すぐに公布される状況でしょうか。
○労災管理課長 今回もしお認めいただけましたら、速やかに公布しようと思っております。
○荒木部会長 ほかにはいかがでしょうか。特に御意見等はございませんでしょうか。それでは、御意見もないようですので、諮問のあった件について、当部会としては妥当と認め、労働条件分科会長宛てに報告することといたしますが、よろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○荒木部会長 ありがとうございます。それでは、事務局に報告案を用意してもらっておりますので、まずこれを配布し、読み上げてもらうことにいたします。よろしくお願いいたします。
                                   (報告案配布)
○労災管理課長 それでは、案を読み上げます。労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について。令和元年6月12日付け、厚生労働省発基0612第1号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本部会は審議の結果、下記のとおり結論を得たので報告する。記、厚生労働省案は、妥当と認める。読み上げは以上です。なお、労働政策審議会令及び労働条件分科会運営規則等において、当部会の議決をもって分科会の議決とし、分科会の議決が実質的には労働政策審議会長への報告となり、労働政策審議会長から厚生労働大臣宛てに答申されると、こういう流れになっておりますので、あらかじめ御了承いただければと思います。以上です。
○荒木部会長 ただいま配布して読み上げられた内容で労働政策審議会長宛てに報告し、この報告のとおり厚生労働大臣宛てに答申を行うことにしたいと考えますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、そのように取り計らうことといたします。
 では、次の議題に移ります。第2の議題は、複数就業者への労災保険給付についてです。事務局から説明をお願いいたします。
○労災管理課長 お手元の資料2を御覧ください。資料2ですが、複数就業者への労災保険給付についての検討状況(案)です。昨年6月からですが、複数就業者への労災保険給付について御検討いただいたところです。これまでの検討状況について、1年検討してきたということもありますので、まずは中間的に取りまとめて、今後も御検討いただければと思っている次第です。今までの検討状況についてまとめてみたものです。また、事務方として新しい論点も少し加えておりますので、それも併せて御説明申し上げます。
 まず、第1という所ですが、検討の背景です。これまでも御説明申し上げてきたところですが、ざっと説明いたします。平成29年の働き方改革実行計画、あるいは昨年の閣議決定、未来投資戦略2018において、副業・兼業を促進することとともに、併せてセーフティネットとしての労災保険制度の在り方について検討を進めるようにということが、盛り込まれているところです。労災保険部会においては、このような状況とか、あるいは多様な働き方を選択する方、パート労働者といった方々が複数就業しているという実態が非常に顕著に見られるということもありますので、一連の政府の流れや実情を踏まえて御議論いただいてきたということです。「なお」という所で、雇用保険や社会保険、ほかの保険制度についても検討が行われていることを付記させていただいております。
 次ページの第2という所です。今回、御議論いただいておりますのは大きなところで、いわゆる額の合算の検討と負荷の合算ですが、前回、前々回もですけれども、額の合算について主に御議論いただいてきたということですので、これまでの御議論をまとめると分量的には額の合算の所が非常に多くなっています。第2の(1)(2)(3)は、今までの論点をダイジェスト版にしてまとめているということですので、新しいところは特にありません。それから、これまでの議論という所で、頂いた御意見についてこれまで参考資料ということで付けていたのですが、これを時系列的に並べ替えて、かつ労働者側の委員の意見、使用者側の委員の意見、公益側の委員の意見というように分けて、書かせていただいています。
 少し御説明申し上げますと、2ページですが、まず非災害発生事業場の賃金額も加味して給付することについてどう考えるかということです。これは御案内のように、非災害発生事業場の賃金額については現在は考慮せずに、災害発生事業場の賃金額のみを給付基礎日額として様々な給付を行っていると、こういう状況ということです。現行制度ですが、必ずしも労災保険制度の目的である被災労働者の稼得能力や遺族の被扶養利益の喪失の填補を十分に果たしていない可能性もあるというところから、出発点として御議論いただいているということです。
 これまでの議論という所で、主なところだけをざっと御説明いたします。労働者側の意見ということでは、非災害発生事業場の賃金額も加味して給付すべきだという意見が多く寄せられております。3ページの使用者側の意見ですが、災害補償責任との関係をどうするのか、あるいは労災保険制度の基本理念との整合性はどうなのかといった御意見がありました。また、労働者保護という観点からは見直すべきということについては理解するという意見もあったということです。公益側の意見としては、下から7行目ぐらいの所ですが、労災保険の目的は、労働災害の被災者に対して迅速に補償を行い、貧困の状態に陥らないようにすることであり、このような目的を達成できるのかどうかというような御意見がありました。
 次ページです。仮に合算を行った場合ですが、保険料の負担をどうするかを2つ目の論点として掲げております。御案内のように、現行制度ですが、先ほども少し申し上げましたけれども、保険料率は業種ごとに定まっているということです。ただし、業務災害分以外は全業種一律ということで、保険料率を御負担いただいています。メリット制については先ほど御説明したとおりで、災害発生状況によって保険料率が各事業主ごとに変わっているということを書かせていただいております。
 これまでの議論の所ですが、労側の意見としては、大分昔になりますけれども、平成16年に検討会で検討がなされて、そこでは、保険料の負担の在り方とかメリット制等の検討はしていなかったが、今回はそういった点も議論していくことが必要だといった御意見がありました。4、5ページにかけて使用者側の意見として掲げておりますが、5ページの上から2つ目に御意見が凝縮されているのではないかと思います。賃金額を合算した給付を行う場合には、非災害発生事業場の業種の保険料率やメリット収支率の算定に不利益を生じさせないようにする、災害発生事業場の業種の保険料率やメリット収支率の算定についても、非災害発生事業場の賃金に対応する給付分を考慮しないこととする、これは絶対条件だという御意見がありました。その下ですが、賃金額を合算する場合には、保険料の引上げにつながらないよう事務費などの無駄を省き、社会復帰促進等事業の内容の精査を行うことが必要ではないかと、こういった御意見もあったということです。公益側の意見としては、額の合算分については全業種一律で負担してもらうと、こういう整理もあるのではないかという御意見があったということです。
 続いて、3つ目の論点は、仮に合算するといった場合の災害補償責任です。現行制度の課題等の所にありますが、災害補償責任というのが労働基準法上、事業主の義務ということであるわけですけれども、労災保険制度が実質的にこの災害補償責任を担保する役割を果たしているということを書かせていただいております。ただ、労災保険法に基づく保険給付は、労働基準法に基づく災害補償責任の範囲とは必ずしも一致していないと。これは何度か御説明させていただいたことです。
 これまでの議論は、6、7ページにかけてです。これまでの意見ということですが、労働者側の委員の方からは、労災保険制度は労働基準法上の災害補償と関連はあるが、既にそれを超えているところもあると思うので、そうした観点からの検討もすべきである、あるいは休業3日までの補償についてどのように保障されるのか、その給付が確実に保障される仕組みや制度の検討をお願いしたいといった御意見がありました。使用者側からの意見ですが、基本的に労働基準法に規定する事業主の災害補償責任と労災保険は対になっているのではないか、災害補償責任と労災保険が一体になっているのではないか、こういった趣旨の御意見があったのと、事業主の災害補償責任と不整合が生じないように整理すべきだ、あるいは、使用者の災害補償責任に影響を与えないようにすべきだといった御意見があったということです。7ページは公益委員の意見ということで、これまでにも出てきた意見にもありますが、労働基準法上の災害補償責任と労災保険法は、必ずしも範囲が一致しているわけではないという御意見がありました。
 (4)は、非災害発生事業場の賃金額をどう把握するかという論点です。これは今までやっているものではありませんので、特に現行制度に何かあるというわけではありません。これまでの議論ですが、労側の意見としては、非災害発生事業場の資料を労働者が提出できないときには、監督署が調べるべきではないかといった御意見がありました。使用者側の意見ということで、7、8ページにかけて様々な意見を頂いているところですが、災害発生事業場に非災害発生事業場の調査をさせるといったことは適切ではないのではないかといった趣旨の御意見とか、あるいは非災害発生事業場について過度な負担を掛けるべきではないといったような御意見があったということです。
 (5)は、事務方として今まで論点として掲げていなかったのですが、御議論がいろいろありましたので掲げております。就業規則における複数就業者の位置づけについてということです。現行制度の課題等の2つ目の○ですけれども、仮に非災害発生事業場の賃金額も加味して給付額を決めるといった場合に、就業規則で副業が禁止されている方、あるいは届出義務を課されているのに届出をしていない方、こういった就業規則違反が疑われる労働者に係る給付の取扱いの考え方の整理を行う必要があるのではないかと、こういった論点です。
 これまでの議論として、労働者側からは、労災給付について副業をすることを自己申告していたかどうかで分けるのはいかがなものかという御意見がありました。使用者側の意見としては、申し出ている方とそうでない方との公平性を図る必要があるのではないかという意見とか、あるいは9ページですが、副業を企業が認めていない場合にまで、労災と無関係の事業者に一定の負担や義務を負わせるのはいかがなものかという意見、その下ですけれども、事前に事業者に副業・兼業の届出を行っていたか等によって、取扱いに差異を設けるべきではないかというような御意見がありました。公益側の意見としては、労災保険や災害補償は法律で定められた仕組みであり、企業が就業規則で副業・兼業を禁止していることをもって影響を受けるのはおかしいのではないかという御意見があったということです。
 (6)は、これも前回御意見があったので、論点として掲げております。仮に非災害発生事業場の賃金額も加味して給付額を決める場合、給付の形式をどうするかということです。御意見としては、いわゆる本体給付ではなくて、社会復帰促進等事業として実施することもできるのではないかといったような御意見がありました。
 次ページは、少し新しい論点として、事務方として付け加えたのですが、特別加入者の取扱いをどうするかということです。これは今回、初めて御議論していただきますので、制度の中身について少し御説明できればと思います。参考2という横書きの資料がありますが、この12ページをお願いいたします。労災保険の特別加入制度についてということで、簡単に書かせていただいております。御案内のところもあるかと思いますが、これは、いわゆる労働基準法上の労働者でない方を対象とした制度です。業務の実態や災害の発生状況等から見て、労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしい方について、特に労災保険の加入を認めるということですので、加入するという手続をしないと適用されません。通常であれば、労働者であれば適用になるわけですが、これは入る・入らないという選択の問題ということです。
 どういう方が対象になるかということで書いておりますが、1つは中小事業主の方であるとか、その事業に従事する労働者以外の役員等の方と。これは第1種特別加入です。②がいわゆる一人親方であるとか、その他自営業者の方等ですが、これは第2種特別加入です。次も第2種なのですが、特定作業従事者ということで、一定規模の農業の事業場において危険有害な農作業に従事する方とか、あるいは訓練の作業に従事している方々について対象になっています。それから、第3種特別加入と言われるもの、④になっていて紛らわしいのですけれども、これは海外派遣者ということです。
 それぞれ保険給付については、ほぼ同様の給付が行われています。若干違いはありますが、ほぼ同様です。保険料率についても、①第1種については、当該事業に適用される保険料率と同じです。②~④については、同種の事業を考慮して定める率ということです。給付基礎日額については、希望額を徴収すると。つまり、私は給付基礎日額はこれぐらいだというところを選んでいただいて、それに応じた保険料を納めていただくと、こういった形になっています。
 ざっと制度を説明いたしますと以上ですが、資料2に戻っていただいて10ページです。例えば、兼業・副業している兼業先が特別加入だった場合にどうするかといったことも、これは労働者でないということなのですが、特別加入している場合、どのように取り扱うかということについて今後、御議論いただければなと思い、論点として掲げています。
 続いて11ページですが、業務上の負荷の問題です。第3という所ですが、現行制度は御案内のように、労災認定する場合は1事業ごとに判断しているということです。したがって、2つの事業についての負荷を合わせて労災認定するという取扱いはしていないのが現行制度です。
 これまでの御議論の所ですが、どうすべきかということで論点として掲げさせていただいたのが前回ですので、御意見の量的には先ほどの額の合算に比べて少ないのですけれども、労働者側の委員の皆様方からは、この負荷については合算すべきであるという意見がありました。12ページ、使用者側の方からは、負荷の合算については労働時間の関係とかほかの問題もあるので、今はなかなか決められないのではないかという御意見や、ハードルが高いのではないかという御意見があったということです。まだ余り論点を提示していませんので、そういう意味では議論がまだ深まっていないのかなと思っております。
 (2)~(4)ですが、事務方から少し論点を掲げさせていただいています。(2)は、仮に業務上の負荷を合わせて労災認定するといった場合に、どこまで負荷を合算するか、疾病の範囲をどこまでにするかといったことを掲げています。現行制度の課題等とありますが、これは現行制度の取扱いを書いているということです。それぞれの認定基準を定めて認定しているわけですが、その認定基準については、医学的な見地から定めていると、こういったことを書いています。これまでの議論の所は、議論がありませんので空けております。
 13ページの(3)は、仮に業務上の負荷を合算して認定する場合には、どのように認定していくかということです。現行制度というのは、負荷を合算しているわけではなくて、今の取扱いを書かせていただいておりますが、まず請求人の申立てを見て、家族の方とか事業主とか、様々な方から事情をお聞きする、それから、医学的な見地から様々な資料を収集する等、様々な調査をして認定しているといったことを書いています。(4)、仮に負荷を合算したときには、災害補償責任をどうするかということについて、論点として掲げています。
 14ページは、進め方について御意見がありましたので、書かせていただいています。労働者側の意見としては、昨年から議論を積み重ねてきたと、早く議論しておくべきではないかという御意見がありました。使用者側の意見ですが、副業・兼業についてのほかの検討会があるので、その状況を見ながら議論すべきだと。あるいは、様々な問題点があるので、十分な議論と検討が必要ではないか。それから、ほかの検討会と比較すると、労災保険の議論だけ突出して早いのではないか、こういった御指摘もあったということです。
 以上、これまでの御議論を踏まえて、まとめてみたらどうなるかということで、15ページ、第5という所で今後の検討の方向性を書いております。冒頭に2行書いてありますが、労災保険制度の趣旨を踏まえ、以下のような方向性に沿って引き続き十分な検討を行い、速やかに結論を得ることとするということで、以下のような方向に従って今後とも御検討いただきたいということで書かせていただいております。
 (1)は額の合算の関係ですが、先ほどいろいろ御意見があったところですけれども、①で非災害発生事業場の賃金額を加味して賃金額を算定するという方向で検討を進めていただければと思っていますので、進めるべきであるということで書かせていただいております。②③で留意点ということになりますが、先ほどの御意見の中にもありましたけれども、非災害発生事業場の事業主が労働基準法に基づく災害補償責任を負うのは不適当だということを書いています。また、災害発生事業場の事業主が非災害発生事業場での賃金を基礎とした給付部分まで災害補償責任を負う、これも使用者責任を著しく拡大するものなので不適当だということを書かせていただいております。③で保険料の負担ですが、新たに加味することとなる非災害発生事業場の賃金を基にした給付分の原資ですけれども、この保険料については個別の事業場であるとか、あるいは業種には反映させない、負担させないということを書いています。その原資はどうするのかということですが、通勤災害等の業務外の保険給付に係る取扱いと同様の取扱いの方向で検討を進めていただければということです。
 ④で賃金額の把握について書かせていただいておりますが、災害発生事業場における賃金額の把握と、非災害発生事業場の賃金額の把握はしっかり分離するということです。まずは請求者に自己申告していただく、その際に非災害発生事業場における賃金額に関する証明を求めると。仮にそれに不明な点がある場合には、監督署が調べるということです。
 これらの方向性のほか、以下のような論点についてもということで書いております。まずは、制度改正をした場合であっても、保険料が極力引き上がらないようにということを考えるべきだということで、これも論点として掲げています。それから、先ほどの論点の中に御意見がありましたが、就業規則で副業が禁止されている場合や、副業する場合には届け出ることになっているのに届け出られていない場合、そういった労働者の方についての取扱いも論点にしています。それからウとして、やはり増えてしまう手続ということですので、賃金額の把握の手続については労使の負担軽減のための方策が必要だということを書かせていただいています。また、事務方側として掲げさせていただいた論点については、全然議論がされていないということですので、ここも論点として掲げています。
 最後のページです。論点を掲げさせていただいて実質1回議論ということですので、ほとんど書いていないのですが、16ページの(2)です。①複数就業者の労災認定に係る業務上の負荷の範囲、これは、今、各事業ごとに負荷を判断しているという現行制度ですが、この現行制度の在り方について引き続き検討を進めるべきであると。引き続き以下の論点について検討を進めるということですが、今日の御議論等も踏まえて、今後御議論いただければという論点についてしっかり書き込んでいければなと思っています。資料の説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○荒木部会長 ただいまの事務局からの説明について御質問、御意見等があればお願いいたします。
○酒向委員 先ほど御説明いただきました9ページのところで少し教えていただきたいのですが、これまでの議論の中で、社会復帰促進等事業としての制度設計をするという論点があったかと思います。保険給付ではなくて、社会復帰促進等事業として制度設計した場合における課題は何かないのかということ、被災労働者や御遺族に対してデメリットはないのかということについて、事務局に教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○荒木部会長 事務局お願いします。
○労災管理課長 もし本体給付ではなくて、社会復帰促進等事業で給付を行ったら、どういう違いがあるのかという御質問かと思います。幾つかあるのですが、主なものというか、特に労働者あるいは使用者も含めて、労使に関係が深いところについて御説明申し上げます。まず、1点目として、本体給付の場合は、譲渡や差押えの対象にならないのですが、いわゆる社復事業であれば、譲渡や差押え等の対象になり得るということがあります。
それから併給調整の関係ですが、ほかの社会保険、例えば厚生年金とか併給調整が本体給付の場合はありますけれども、社復の場合はそれがないと。それからもう1つ、民事損害賠償との併給調整。いわゆる本体給付であれば、民事で損害賠償請求が起こった場合にはその分引きましょうと、こういう規定があるのですが、社会復帰促進等事業の場合はその調整の対象にならないと、こういうことがあろうかと思います。
あとは徴収関係になろうかと思いますけれども、第三者行為災害のときに求償の対象にならないとか、あるいは不正受給があったときの徴収の仕方がちょっと違うというところがあります。
また、これは労働者に関係するかと思うのですが、処分について不服があった場合に、本体給付であれば労働保険審査会、あるいは審査会に不服を申し立てるという手続になりますけれども、社復事業の場合であれば行政不服審査法に基づく不服申立てになる、こういう手続がちょっと違ってくると、こういう違いがあるかと思います。大体主なものとしては以上の違いがあります。
○輪島委員 資料2の検討の背景の所で、いろいろ書いてありますけれども、今日の新聞各紙にも6月21日には新しい骨太が決まって、その中にもいろいろな書きぶりがあるし、今議論されている規制改革会議の話とか、それから未来投資会議でも兼業・副業の議論があるやに聞いておりますので、そこの部分でいうと、ここの所は大分書き変わるのではないかなと。その意味で緊急性というか、労政審での議論の在り方というのもその中で書かれて閣議決定がされていれば、それなりの前提で議論をすることになるのではないかなということだけ一言申し上げておきます。
 そうは言いながら、今日初めて検討状況の御説明をされたわけですけれども、例えば10ページにある特別加入者の取扱いというのは今日初めて論点として示されて、しかも現状の課題とこれまでの議論、今後議論すればここが増えていくのでしょうけれども、全く議論していないというのであれば、このまとめの中にそもそも入れる必要があるのかどうかというところも含めて、検討するべきではないかと思います。特にそういう意味では、第5の今後の検討の方向性の所には全く書かれていないわけで、給付の合算と負荷の合算のところだけしか書いてないわけなので、そういう意味でも急にボッと出てきて、何かまとめろ、議論をしろ、中間まとめだというのが、前回も申し上げましたが、非常に性急な感じがするので、慎重な議論をしていただきたいと思っています。
 もう一点、10ページの所で言うと、今の御説明について何だかよく分からないのですが、兼業・副業ですから特別加入プラス雇用ということだと思いますが、今の御説明を聞いた限りは、基本的に雇用があって、さらに特別加入でという場合にどうするのかという前提だったように聞いたのですが、そのようなことはあるのかなと。基本、特別加入で働いている人がさらにプラスで雇用になるというほうが一般的なのではないかなと思うのですが、そういう前提も含めて議論を全くしていないというところに大変違和感を感じると、このように思っています。
 それからその点で言うと、第4までについて言えば、これまでの議論を論点として、労使双方の意見と書いてあるのですが、15ページからの第5の今後の方向性というのは、それを踏まえてこれから書く話だと思うのですけれども、その割にはかなり書いてあると思いますので。これも含めて、まとめてみたらという課長からの御説明ですが、まだまとまっていないので、そういう意味でちょっと書きすぎだろうと思っているので、まずそのことだけ申し上げておきたいと思います。
○荒木部会長 はい、ありがとうございます。事務局からは、まだお答えはよろしいですか。
○労災管理課長 御指摘が幾つかあったかと思います。まず、特別加入制度ですが、これは確かに今まで全然議論をしていないというところではあります。御指摘のように、特別加入している方が副業というか、もう1つの雇用労働者として雇われるケースもあるでしょうし、私は例として、雇用労働者の方が副業で特別加入している場合で申し上げたのですが、こういうことも有り得るということで付けさせていただいたということです。実態がものすごくあるということではなくて、理論的にはこういうことが考えられるけれども、どう整理すればいいのかということで、論点として付けております。また今後御議論をするときに論点にしていただければということで追加したもので、今結論を出してくださいというつもりで追加したものではないことを、申し上げさせていただければと思います。
 それから、第5の今後の検討の方向性ですが、前回までの御議論を踏まえて書かせていただくとこのようになるかということで、案として書いておりまして、これで中間まとめとしてフィックスするということではありません。これまでの御意見をまとめたらこのようなところになるかなということで、案として提示させていただきました。いずれにいたしましても、これで終わりということではなくて、引き続きまだ御議論を頂きたいということで書いておりますので、何とぞまた御意見等頂ければと思います。よろしくお願いします。
○輪島委員 こだわるわけではありませんが、10ページの特別加入ですが、参考2の12、13ページ以外の資料、現状はどれぐらいの人が特別加入をしているのかとか、そのようなことも含めて資料を提出していただいた上での議論だと思いますので、その点もお願いをしておきたいと思います。
 それから余りこんなことは言わないほうがいいのかもしれませんが、フリーランス、雇用類似の検討会を別途、今、学識の方でされていると思いますが、そこでも、私どもで承知をしている限りは、そのフリーランスの方の労災保険の特別加入について、論点として挙がっていると。そうなると、それは少なくてもこちらで引き取って議論するのかなと思うと、兼業・副業の場合の特別加入者の話とは別の論点がそもそもあるのではないかと思っています。そうなると、その後の話であれば、やはり10ページの所の特別加入者の取扱いの議論を若干したとしても、中間まとめにその点も入れるというのは、やはり適切ではないのではないかということだけ、申し上げておきたいと思います。
○荒木部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はありますか。
○楠委員 10ページの新たな論点に記載されているところについてですが、特別加入者の取扱いについて、改めてこの労災保険部会の中で検討することについては、大変意義があるのではないかと思います。御承知のように、健康保険は業務上の事故を治療の対象としていないので、中小事業者や一人親方などの個人事業主が業務により被災した場合、健康保険も使えないということにもなりますので、仮に副業・兼業先が請負であったり、雇用かどうかという判断がすぐにできないような曖昧な雇用であったりする場合については、業務により被災した労働者を保護する観点からも、この特別加入制度の拡充、そして加入促進といったものが必要になるのではないかと思います。この制度は長らく改正されていないのですが、第2種特別加入の範囲や労災保険事務組合の在り方などについても、現在の雇用・就労情勢を踏まえて、制度全体についてこれから検討していくべきではないか、そういう必要があるのではないかと思います。
○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
○田久委員 私も同じように10ページの特別加入についてです。議論は是非していただきたいというのもありますし、先ほど輪島委員が言われたように、フリーランスのほうでも議論をされているし、実際問題、働き方改革によって生産性向上も含めたところの議論の中では、建設の中では特に多能工化が進められている関係上でも、そうした意味では範囲の拡大などの議論はしていくべき問題になるかなと思っています。先ほど輪島委員が言われたように、雇用が先、雇用でその後一人親方というのは、建設の部分で言うと逆のパターンが多いというのが事実ではありますが、ほかの産業でどれだけあるのか、そうした資料が是非欲しいというのが1つ。
 実は、厚生労働省で一人親方のアンケート、建設に関してのアンケートを昨年1年掛けてやらせてもらい、全建総連としても4万枚近い件数を集めさせてもらっています。それは今厚労省でも集計をしているということでありますが、全建総連としても少し分析をさせてもらうと、先ほど言ったように、雇用といわゆる直接受注をする、こういう方が3割、特別加入しているうちの3割ぐらいはそういう働き方だという答えが返ってきています。アンケートで見ますと、4万のうちの9割ぐらいが加入していましたので、その3割はそうした働き方です。また、一人親方といって第2種特別加入をしている人の中の45%が、建設でいくと出来高とか手間請けみたいな働き方をしているということも、数字として出てきた。そうしたことで働き方の関係というか、保険の在り方も含めたところでは数字として出てきたのかなと思っています。
 今言われたように、加入というか適用の範囲も含めたところや、そうした多能工に対しての範囲、また中小の所でも働き方改革で言うと、今は確か、労働者が一緒にいないと第1種特別加入の場合は支給がないのですよね、日曜とかの場合ですと。しかし働き方改革で、今後、従業員を休ませようと言っているのに、休みの日に従業員を連れて現場に行く人はいないというのもありますので、そういう議論などは、ここではないとは思いますが、是非検討の1つにしていただければと思っています。
○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
○松浦委員代理 11ページから始まります第3、複数就業者の業務上の負荷についてですが、労災の給付と同様に、労災の認定においても複数の事業所での負荷を合算すべきであると考えています。そのような意味では、12ページの今回新しく示された論点の(2)仮に業務上の負荷を合算して労災認定することとした場合の対象となる負荷の範囲については、過労死・過労自殺の原因とされている長時間労働あるいはハラスメント行為といったものについて、合算することが不可欠であると考えています。過労死・過労自殺は、本人はもとより、その家族そして社会にとっても大きな損失であると考えています。そうした観点からも、過労死等の原因とされる業務における過重な負荷及び業務における強い心理的負荷については、合算すべきであると思っておりまして、それ以外の疾病に起因する要因の合算についても、是非検討していただきたいと思っております。
○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
○山内委員 私からも1点です。副業されている方で被災された場合に、非被災事業所のほうの給与も含めて生活保障をしてあげたいといった大きな趣旨については、私も一労働者という感覚もありますので、非常に合理的なのかなと感じています。ただ一方で、全体の議論で申し上げますと、正に今、松浦委員がおっしゃったところが大きな論点だと感じていまして、働く自由があって、それで働く、それを認めていくということですけれども、一方で、労働時間管理あるいはハラスメントも含めて働かせるほうの責任、これに非常に明確なルールが今できてきていると思っています。そのルールをきちんと守るために、使用者側はいろいろな仕組みを作って、働く人にも理解していただいて、それで守っていこうというようにしています。というときに、そういう人を念頭に置いた場合の副業の場合の責任なり、果たすべきミッション、これは誰が負っているのか。この辺の整理とその結果発生した労災、その結果の給付、これがつながるのではないかと考えていまして、ここが明確でない中で、給付は合算でやろうというところが先に進むということには非常に違和感を感じているというのが私の意見です。
○輪島委員 松浦委員にお伺いしたいのですが、負荷の合算をするときに、今の資料で言うと、A社とB社があって、A社が本業で時間で言うと40時間、B社のほうで20時間働いていて、兼業をしていますと。時間のところも今議論しなければいけないのですが、心理的負荷というのを合算するということですけれども、私どもの頭の前提で言うと、A社で本業で働いていて、B社で働くというのは、まず基本的には労働者の選択、自由意志がまずついて、B社の雇用がある。A社のほうの心理的負荷もあるにしてB社のほうもあって、そこでおっしゃったようなハラスメントがあるとか何とかというのを、どうやってテクニカルに合算するのか、これはかなり難しいところがあると思うのですけれども。合算すべきだという総論は何となくそうかなと思うのですが、そこのところの合点がちょっとどうもいかないのです。どのようなイメージで、労働者の自由な意志に基づいたB社の雇用においての心理的負荷を合算するという、そこをもう少し我々にも分かるように、何かお考えがあれば教えていただけますか。
○松浦委員代理 確かに労働時間の合算は分かりやすいかと思いますが、例えばハラスメントで考えますと、A社とB社それぞれでハラスメントを受けて心理的負荷を受けているときに、B社だけだとそれほどの因果関係のない負荷の程度が小さいハラスメントであったとしても、A社でもハラスメントを受けていて、それを合算すればその方の精神疾患につながる、そうしたことも考えられるのかという思いで、言わせていただきました。
○輪島委員 そうしたら事務局にお伺いしたいと思いますけれども、労災認定のときに、例えば仕事上のミスがあったとか、それからハラスメントを受けていたというA社における認定の中程度と、B社においての中程度と、中+中が大になって、それで認定するというようになるのでしょうか。
○補償課長 補償課長の西村です。今、輪島委員がおっしゃったとおりということなのでしょうけれども、現在においては御案内のとおり、今さらではないのですが、A社、B社それぞれの負荷だけで認定をしております。A社で発生したらA社だけ、負荷の合算はしないということです。仮に心理的負荷の合算をするというのは、どういうことが考えられるかと言うと、今、輪島委員がおっしゃったとおりですけれども、例えばA社で上司が業務上の範囲を越えて叱責をした、これがいわゆる認定基準上の負荷の程度が中であったという例が1つあるとします。もう1つB社で、例えば顧客とトラブルがあった、このような例があったとします。これが業務上の負荷の程度が中であったと。今、この2つの負荷が1社であれば、それを合算して、中+中が中の場合もあれば、中+中が強になって業務上と認められる場合もあります。A社、B社でそれぞれの場合も、中+中が中あるいは中+中が強となって業務上として認定されることが想定されるということではないかと思います。よろしいでしょうか。
○審議官(労災、建設・自動車運送分野担当) 少し補足しますと、もちろん今は、事業場ごとに判断をしておりますので、今の運用はそのようには当然なっていないわけなので、そういうところについて負荷を合算するという御議論がある前提というのは、B社のものが仮に同じA社で起きた場合には合算されるのではないかと、そうすると業務上の認定をされる方というのがあるのではないかと。A社、B社で分かれている場合だと、そことのバランスをどう考えるのかと、そういう御議論なのかなと私どもは受け止めているところです。もちろん御結論が出れば、そういうところについて運用をどうするのかは、しっかり議論しなければいけないと思っております。
○村上委員 私は、次の13ページ(3)の新しく論点として設定いただいている所について、意見と質問です。意見としては、ここに書かれているように、本人又は親族などの請求人からの労災の請求に基づいて、労働基準監督署などが複数の事業場における負荷を把握するということが重要です。医学的資料も参照しつつ、負荷の適切な把握のために関係する複数の事業主が協力するということで、よいのではないかと思っています。これで不明な点があるのであれば、少し図なども使っていただければ、よりイメージが湧くのではないかと思います。
 質問は、その○の2つ目なのですが、下のほうに「適切に把握していくために、事業主、労働基準監督署等がどのような役割分担をすべきか整理していく必要がある」と書いてありますが、このように書いてあるということは、監督署の役割なども一部変更するのか、整理が必要ということなのか、ここの何を整理していくことが必要なのかがよく分からなかったので、もう少し説明を頂ければと思います。
○労災管理課長 そこで役割分担をどうするかという所なのですけれども、特定の事象を念頭に置いているわけではなくて、認定のための大きな仕組みをどうしましょうかという、かなり抽象的な意味で書かせていただいています。突然、役割分担が変わって、事業主にいろいろ調べていただくなど、そういうことを念頭に置いているわけではなく、どのような運用をしていこうかというのを少し書かせていただいているということです。これで役割分担を変更するなど、そういうことを念頭に置いて書いているものではありません。すみません、そういう意味では少し書き方が悪いかもしれないです。
○村上委員 分かりました。ということは、実務的なスキームなようなものを、どのようにしていけばよいのかということの関係と理解したので、今現在の実務に照らして事務局で考えられるスキームを、モデルとして少し御提示いただければよいのではないかと思います。
 次に、その下の(4)ですが、こちらも新しい論点で、災害補償責任の在り方についてですが、ここで書かれているように、じん肺などの遅発性疾患の場合と、長時間・過重労働やストレスによる精神疾患などの発生について、事情が異なるということはそのとおりだと思います。そのため、最終ばく露事業場で被災したことにするという現行制度とは別の考え方が必要です。この点は理論的な整理などもして、適切に整理するということが必要だと思いますので、この御提示されていることについては、賛成です。
○荒木部会長 はいありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
○村上委員 第5でもよろしいですか。
○荒木部会長 どうぞ。
○村上委員 15ページの第5、先ほど輪島委員から、ここまで書くのはいかがなものかという御意見もありましたが、ある程度、方向性が見えているところは、現時点での整理ということで出していくことも必要かと思っています。その上で、複数事業就業者の労災給付額の在り方について、非災害発生事業場の賃金額も加味して給付額を算定するという方向で賛成であるということです。
 ただその中の15ページ⑤のイの就業規則との関係が触れられている所があります。この点については、前回も申し上げましたし、公益委員からも以前指摘があったところですが、就業規則での問題と労災の認定や給付というのは別の問題であると思っていますので、ここについては今後、まだ何か検討しなければならないのかという疑問があります。
○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
○輪島委員 ありがとうございます。おっしゃる点はもっともなのですけれども、15ページ⑤の所についていうと、引き続き検討を進めるということなので、ここで結論を出すということではなく、もう少し議論をしましょうということが書いてあるということなので、そういうふうに飲み込んでいただければと思います。
 1点だけ、私が思っているのは、就業規則上にどう書くのかということが、これから大きいのではないかと思います。基本的に今は、競業避止や秘密の厳守、働き過ぎの観点から言っても、就業規則上は禁止しているところが多いのだろうと思います。そうすると、冒頭に申し上げた全体的な未来投資会議や骨太などの政府の方針として、基本的にはこれから兼業・副業を促進していますという立場からして、では就業規則をこれからどうするのだという、在り方というのがそもそもこれについて言うのかどうかは分かりませんが、やはりどう考えるのかというのは、私どもとしては整理はしておきたい。そういうことも含めて、申し上げておきたいと思います。
○村上委員 輪島委員が御指摘の、兼業や副業に関して、企業の実務の立場から考えれば、就業規則にどのように記載していくのかということについて、いろいろな議論をしていく、工夫もされていくということが必要だという認識は理解できるところです。労働組合の立場でも、労働時間管理をどうするのかということ、実際どうするのかということについては議論があります。ただ、そのことと、実際に被災した場合にどうするのかということは、事情が違うと思います。ですから、就業規則などの検討については、どこか別の場でするべきで、ここではないのではないか、労災認定や労災の給付については、もう論点にならないのではないかと考えています。
○荒木部会長 はい、ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
○森戸委員 今日、初めてなので、議論の流れが余り分かっていませんが、感想みたいなことで恐縮です。まず特別加入のところは、既に複数の委員から御意見が出たように、やはり実態としてどういった兼業、兼職があり得るのか、実際どうなっているのかという、私も不勉強でイメージが湧かないので、こういうことなのですねというイメージが湧くような説明があると、議論もできるかなと思いました。
 もう1つは、今、議論になっていた15ページの今後の検討の方向性の⑤の所ですが、今後検討を進めることということなので、ここまでの議論を私は存じ上げないのですが、ここで議論になったことは、ここに書いてあってもいいのでしょうが、ぱっと見ると⑤の中でイだけすごく浮き上がっている感じがして、ちょっと違和感があります。村上委員がおっしゃるように、労災保険制度で何か考えることがあるのかなというのが率直な感想です。
 それは置くとしても、何かア、イ、ウ、エというのに、いろいろなことが入っていて、例えば、エの特別加入は項目に挙がるのだから、もうここには入らないのかなと最終的には思いました。イはすごい具体的で、アとウは大きな目標みたいなことで、今後の検討の方向性だから、何でもこれから議論すべきことは挙がるのでしょうけれども、一応、検討状況を案でまとめるとしたら、ここに書かれるということは、それなりに重要なので、一定のそろった整理というか、そういうものがあるべきなのかなということは、少し思いました。以上です。
○荒木部会長 ありがとうございました。
○輪島委員 15ページ⑤のイについては、部会長に取扱いをお任せしたいと思います。
○荒木部会長 はい、御意見承りました。ほかにはいかがでしょうか。
○山内委員 今のイの所ですけれども、もしかしたら業務上の負荷の合算の判定の中に、この論点は入るのかなというのが、個人的な意見です。そういう意味では、先ほど申し上げた労災保険の認定をどうするのかということとの関係もあるのかなと感じています。
○荒木部会長 はい、ありがとうございました。
○村上委員 山内委員の今の御発言がよく理解できなかったので、もう少し教えていただきたいのですが、負荷の合算をするかどうかと、許可を受けているかどうかということが、どのように関わるのでしょうか。
○山内委員 私がイメージしたのは、要は1企業で通常仕事をした場合、残業時間が45時間超にならないようなことや、複数月で80時間超、単月で100時間超にならないような運営をやっている就業規則がある中で、副業を認めるとしたら、相当な確率で労働時間の超過が認められることが想定されるといった背景のもとに、この禁止措置や届出義務があって、雇用契約を結んでいると。この労働者がそうした行為をせずに、違う労働契約を結んでいた場合は、適正な労働契約なのでしょうか、その場合の労働時間の上限規制は、誰が責任を持って見るのでしょうかなど。要は労働そもそもが正しいものかどうなのか、その結果生じた労災は、例えば過重労働で精神疾患になった場合、その責任は誰にあるのだろうかというところが、論点としてあるのではないかなと感じています。
 そういう意味で、給付の合算ではなくて、負荷の合算のほうの論点なのかなということを申し上げたということです。
○村上委員 まだよく整理できていないまま申し上げるのですが、許可を受けていれば働き過ぎになっていても給付が受けられて、許可を受けていなければ、働き過ぎになった結果の被災については労働災害と認められない、という御意見のような気がしています。ここで負荷合算をして被災労働者の労働災害として認定していこうというのは、必ずしも民事の話ではなく、被災労働者の労働によって起きた災害、疾病についての補償をどのようにするのかという話で、事業主責任みたいな話がリンクしているのか、負荷の合算について就業規則が問題になるのかどうかということについては違和感がありますので、意見として申し上げておきます。
○砂原委員 若干関係するかもしれないのですけれども、基本的にはどっちが先かというのは、なかなか分かりにくい部分でもある、ということは、やはり一体できちんと議論した上でないと、どちらも方向を出せないということなのではないかなと感じました。やはりもう少し議論した上で、方向性について記載する。そうでないと、その前にはなかなか方向性は記載しにくいということではないかなと感じましたので、申し上げます。
○荒木部会長 はい、この辺は方向性というか、議論すべき論点の整理かとは思いますけれども、ほかに御意見はありますか。
 先ほど、山内委員と村上委員の間で議論のあった問題は、この条文の問題にするのが適切かどうかも一論点ですけれども、労災保険法にも、労働者が故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡、その直接の原因となった事故を生じさせたときには支給制限があります。本業において、これ以上の副業をすると本業に差し障る、本人の健康も害するということで、いわば副業を禁止することも可能なような状況があって、禁止していたにもかかわらず副業をやったというときに、さてどうするのかという問題につながってくるかもしれないという気はします。もう1つ確認すべきは、労災保険法、労災補償というのは無過失責任であり、使用者の責任を問うのではなく、被災した労働者を救済する制度ということで、どっちの使用者が悪い、帰責性があるということではなく、被災労働者をどう救うかという観点から議論をしているということ。その両方を見ながら議論を深めていく論点かなとお聞きしていました。ほかにはいかがでしょうか。
 今回、資料2ということで、検討状況について、これまでの議論をまとめるような形で整理をされたということです。これからどう議論していくかということについても、いろいろな御意見が出ました。今日、初めて出た論点として特別加入の問題、それからまだ議論がされていない負荷の合算に関わる新しい論点が、12ページ以下の(2)、(3)、(4)ということで提示されています。これは、これまで議論していない新しい論点ですので、今日、議論を出していただければ、それを更に反映させたいということで、事務局には用意していただいているということかと思いますので、これらの論点について、更に御意見があれば承りますが、いかがでしょうか。
 特別加入について、特別加入している人が少し副業・兼業するのが普通ではないかということと、いやそうでもない例もあるということは出ましたけれども、恐らくこれはどちらか1つが雇用であれば、論点としては問題となる。例えば雇用のほうで被災をしたという場合に、特別加入しているという状態をどのように見るのか、これは雇用・雇用と見るのか、雇用・独立自営と見るのか。特別加入というのは、一応、特別加入すれば独立自営業者も労働者とみなすということになっていると思いますが、それを合算等においてどう考えるかと、そういう論点ですので、どっちが主か副かということと関係なく、問題にはなるのかなと考えていました。
 第5について、いろいろ御意見も頂いたところですけれども、今後の検討の方向性で、(1)の額の合算については、これまでの議論をまとめると、こういうことだったのではないかという形で、事務局でおまとめいただいて、(2)の負荷の合算については、まだまだ方向性が見えるようなところまで議論が詰まっていないということで、何も書き込んでいないと、そういうことではないかと思います。この点については、今日いろいろ御意見は出ましたけれども、更なる御意見はありますか。
○輪島委員 まず10ページの特別加入ですけれども、ここの中間取りまとめに入れなくてはいけないかどうかというところ、今日、論点が新しく提出をされて、どうするのかなという、なぜ今ここが必要なのか。議論をするのであれば、次回以降に資料を出していただいて、議論をした上で整理というふうには思います。ただ懸念しているものは、先ほど申し上げたとおりと思います。特に特別加入だと100万、150万人ぐらい、多分いらっしゃると思うので、そういう方の実態がどうなのかというのは、よく議論してみたいと思います。
 第5なのですけれども、冒頭から申し上げているように、給付の合算はどちらかと言うと使用者側の中で議論していても、それなりに分かりやすい話で、労働者保護に欠けないようにどうするのかというところは議論しやすいのです。しかし、負荷の合算のところは、例示で出ているのは、A会社で40時間、B会社で20時間で、労働者Xさんにとってみれば週60時間働いているけれども、月でやると80時間になって上限規制ぎりぎりですと、それを付加をしましょうというのだけで、そこも本当にそうなのかなと思いつつ、今、使用者側として思っているのは、心理的負荷の合算という更に難しい論点があって、そこまで行き着かないので、何とも言い様がないというところで止まってしまっているのですけれども。そういう状況なので、部会長から意見がありませんかということなのですけれども、今、我々で整理をしていても、先ほど少し負荷の合算については、こちらのほうの疑問は申し上げましたけれども、そういう状況で行きつ戻りつしているので、なかなか意見を申し上げられない状況であるということだけ申し上げておきたいと思います。
○荒木部会長 はい、ありがとうございました。今後ですけれども、次回の議論について、事務局としてはどのようにお考えでしょうか。
○労災管理課長 御説明するときに少し御説明しましたけれども、正にこれまでの検討の状況はこうなのだというところで、何か結論を出すということではなくて、中間的な整理、そういう意味での取りまとめをお願いできればなと思っています。例えば検討の方向性が出ているところは、出ているところ、出ていないところは、ある意味ニュートラルに、そして論点としてまだ全然議論していないということであれば、その論点を目出しするというか、こういう論点がまだ残っていますと。例えば先ほどの特別加入などは、今回、私たちから初めて出させていただいたのですけれども、そういう意味では全く御議論されていないので、今後もしっかり議論しなくてはいけないという意味で、論点としてこのようなものがありますということで載せさせていただければなと。正に次回というか次々回、今後どういうふうに御議論を頂くかということで、ちょっと濃淡が付くと思いますけれども、こういう方向性で議論しましょうとかっちりある程度決まったところと、まだまだ全然足りないというところですね、そういう状況になるかと思いますけれども、それを現状の検討状況ということで、おまとめいただければなというふうに考えているところです。すみません、そういう意味では何かここで結論を全部出してくださいと、そういうことではありませんので、検討状況はこうですよというところを、おまとめいただければなと思っているところです。今回の頂いた御意見なども踏まえて、今回の資料2についても、しっかり修正はしていきたいと思っています。
○荒木部会長 ということで、今回この検討状況案というのが出ましたけれども、これまでいろいろな議論があって、ほぼ方向性の共通点が見られる部分はこういう点、それとやはり大きく意見の隔たりがあるのはこういう点、それからまだまだ議論自体が深まっていないのは何か、そういった議論の整理をさせていただきたいという趣旨とお聞きしました。
 これ以上は特段御意見がなさそうですので、若干早いですけれども、今日の議論はこの程度とします。今日、様々な要望のあった特別加入については、具体的な資料等も踏まえて、更に議論を深める、それから、論点としてどういうふうに整理すべきかについても、御意見があったところですので、そうした点も踏まえてこの議論の整理をするということで、次回、検討させていただければと考えています。そういうことでよろしいですか。
 それでは、本日は以上としたいと存じます。本日の議事録の署名委員ですけれども、労働者代表の楠委員、使用者代表の輪島委員にお願いをいたします。本日は、お忙しいところどうもありがとうございました。