地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(第3回) 議事録

日時

令和元年6月13日(木) 16:00~18:30

場所

中央労働委員会 講堂(7階)

出席者

構成員(敬称略・五十音順)

・朝比奈 ミカ   中核地域生活支援センターがじゅまる センター長
          市川市生活サポートセンターそら 主任相談支援員
・池田 洋光    高知県中土佐町長
・池田 昌弘    NPO法人全国コミュニティライフサポートセンター 理事長
・大原 裕介    社会福祉法人ゆうゆう 理事長
・奥山 千鶴子     NPO法人子育てひろば全国連絡協議会 理事長、認定NPO法人びーのびーの 理事長
・加藤 恵     社会福祉法人半田市社会福祉協議会半田市障がい者相談支援センター センター長
・助川 未枝保     船橋市三山・田喜野井地域包括支援センター センター長
・立岡 学     一般社団法人パーソナルサポートセンター 業務執行常務理事
・知久 清志    埼玉県福祉部長
・平川 則男    日本労働組合総連合会 総合政策局長
・堀田 聰子        慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科 教授
・宮島   渡           全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会 代表
          社会福祉法人恵仁福祉協会高齢者総合福祉施設アザレアンさなだ 総合施設長
・宮本 太郎        中央大学法学部 教授
・室田 信一    首都大学東京人文社会学部人間社会学科 准教授


参考人(敬称略・五十音順)

・長島 朋子    松戸市福祉長寿部高齢者支援課 保健師長

 

議題

包括的な支援について(1)

議事


○鏑木包括的支援体制整備推進官 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第3回「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」を開催いたします。
皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただき、まことにありがとうございます。
本日御出席予定の構成員の皆様の中で、奥山構成員につきましては、少しおくれて御出席されますので、御案内申し上げます。
また、初めに、本日初めて御出席の構成員を御紹介申し上げます。
池田洋光構成員です。
○池田(洋)構成員 高知県から参りました。現在、全国町村会の副会長を拝命しております。池田洋光といいます。よろしくお願いします。
○鏑木包括的支援体制整備推進官 続きまして、宮島渡構成員。
○宮島構成員 宮島渡といいます。
私は今、長野県の上田のほうで高齢者関係の施設の法人の常務理事をしておりまして、ここでは全国小規模多機能型事業者連絡会の代表をさせていただいておりますので、小規模多機能からの視点もぜひまたお話しさせていただきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いします。
○鏑木包括的支援体制整備推進官 また、本日、公務のため、局長と総務課長が途中で退席をさせていただきます。あらかじめ御了承ください。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。
本日の資料は全部で6点ございます。上から順に、議事次第、資料1「事務局提出資料『包括的な支援について①』」、資料2「御議論いただきたい論点」、参考資料1「構成員提出資料」、参考資料2「第21回社会保障審議会福祉部会における主な御意見」、参考資料3「本検討会構成員名簿」となっております。御確認をお願いいたします。
それでは、ここからの議事運営について、宮本座長にお願いしたいと思います。
カメラの方々は、これで御退室いただきますよう、お願い申し上げます。
○宮本座長 きょうもお忙しい中、御参集いただきまして、どうもありがとうございます。
第3回になりますけれども、検討会を開始させていただきたいと思います。
思い返せば、前回の検討会の当日に川崎で事件がございまして、その数日後に練馬で事件があるという経緯もございました。いかに今、地域社会が直面する極めて困難な問題が、まさにこの制度のはざまで起きているのかということをうかがわせる事件でございました。
この検討会は、ぜひともこうした事態に対しても目配りをしながら、議論をさらに進めていく、その大切さが問われている、浮き彫りになっていると思います。
本日の議題は「包括的な支援について」ということで、これまでも少し理念的なところでは議論を積み重ねてきたわけなのですが、さらに制度に実装していくということを射程に入れながら、ただし、今回の議論というのは、各自治体に共通の制度、センター、協議会等を設けるということではなくて、規模もさまざまな、条件も異なった自治体が、それぞれ最もふさわしい形で受け入れることができるようなフレームを考えていくということでありまして、どうしても少し議論が機能論になりがちなのですけれども、そういう意味では抽象的になる傾向もあるのですが、いよいよ次は制度論を射程に入れてという段階に来ておりますので、これまでの議論の蓄積の上に立って、さらに議論を前に進めていただければと思っております。
まず、対人支援のアプローチ、断らない相談支援に求められる機能等について、資料1及び資料2に基づいて議論を進めていきたいと思います。
その後に、出口をめぐって、出口という言い方がどこまで適切かどうか。つまり、支援は続くわけですが、とりあえず地域とつなぐ対象ということになるかと思いますが、出口をめぐって、さらに議論を後段で進めるということになろうかと思います。
まず最初に、事務局のほうから資料1、資料2に基づいて御説明をお願いしたいと思います。
○野﨑生活困窮者自立支援室長 生活困窮者自立支援室長の野﨑でございます。よろしくお願いいたします。
私からは、まず、資料1から御説明申し上げますが、資料1の1ページは第2回の検討会でお示しした資料ですが、ここでは「これまでの社会福祉政策の枠組みと課題」「個人を取り巻く環境の変化」を踏まえ、下でございますけれども、元来、個人の人生は多様かつ複雑であるが、近年、その多様化・複雑化の度合いが一層進んでいるのではないか。また、典型的なリスクに対応する従来の枠組みの延長・拡充のみでは、対応に限界があるのではないか。そして、一人一人が課題を抱えながらも、自律的な生を継続していくことを支援する機能の強化が求められるのではないかということで御提示し、御議論いただいたところでございます。
2ページですが、これは先日5月29日に開かれました省内の本部の提出資料ですが、このうち、きょう御議論いただきたいのは、Ⅰの赤い四角で囲っている部分でございます。「丸ごと相談(断らない相談)の実現」のうち、「断らない」相談支援と多様で継続的な「出口支援」ということで、その中には社会参加・就労支援、居住支援などを含むということでございます。
その上で、3ページ以降が「1.対人支援におけるアプローチについて」で、4ページをごらんいただきますと、これも第2回の検討会でお示しした資料ですが、そのときには「支援の“両輪”と考えられるアプローチ」として、1つは「具体的な課題解決を目的とするアプローチ」ということに加え「つながり続けることを目的とするアプローチ」というものが、これから強化していくべきものなのではないか。また、それらに共通の基盤として、本人を中心として“伴走”する意識というものが必要なのではないかということを御議論いただいた。
この時点ではまだ抽象的ではございましたけれども、今回は、モデル事業を初め、さまざまな相談支援の実践から「つながり続けることを目的とするアプローチ」あるいは「本人を中心として、“伴走”する意識」の必要性について、改めて確認させていただければと思っております。
5ページをごらんいただきますと、モデル事業からの実態というか、実情というものを2ページほどつけておりますけれども、多機関協働による包括的支援体制構築事業、モデル事業の実績において、そこでの支援対象者のうち、複数の課題を抱えていらっしゃる方が全体の6割、3つ以上の方に限っても全体の3分の1以上を占めており、相談者の多くが複合的な課題を抱えているという実態が明らかとなっています。
その内容については、経済的困窮が最も多いですけれども、次いで障害とか家族関係、あるいは就労不安定・無職、ひきこもり・孤立・ニートなど、個人だけでなく世帯全体が課題を抱えている相談者もいらっしゃいます。
また、ここには書いてございませんが、必ずしも従来の制度ごとの対応のみでは十分に対応できないケースも明らかとなっているのではないかと考えております。
6ページは、モデル事業における複合的課題を自治体へのアンケートで見てみたものですけれども、顕在化しがたいニーズの把握を依頼したところ、8050の問題であるとか、ダブルケアの問題、不登校、ひきこもり、ニート、あるいはごみ屋敷といった複合的課題を抱える事例を把握しており、対応に苦慮している様子が明らかとなっております。
また、モデル事業と同じく、包括的支援をうたっている生活困窮者自立支援制度の新規相談の実態を見たのが7ページですが、右側の円グラフを見ていただくと、複数の課題を持って相談窓口にいらっしゃる方が56%、また、4つ以上に限っても4分の1以上となっております。
実際に抱える課題というのが左側にあります。経済的困窮が5割弱と多いですが、先ほどと同じように、家族の問題、社会的孤立などの問題のような非常に多様な課題が複合化していることが見てとれます。
一方、属性ごとの制度の相談支援機関ということで、まず、8ページは、ある地域の介護保険制度の地域包括支援センターでの調査を見ていただくと、包括支援センターにおける困難事例の要因を調査したものですけれども、その結果によれば、家族関係、認知症、拒否・気質などの多様な要因が挙げられるとともに、1事例当たり平均5.4項目の要因が挙げられている。複数の要因が複雑に絡み合い、事例への対応を困難にしているという状況が見られることに加え、また、3番目の○にありますが、地域の課題として、家族、親族、地域との関係が希薄で、支援者が不在である事例が困難化している状況などが見えてきています。
9ページは、障害福祉の分野で2008年度と2018年度の調査を比較したものですが、下の「分析結果」の右側を見ていただくと、困難事例に含まれる問題領域は、各分野において総じて拡大しています。問題領域の平均値を見ても、2008年は6.4だったものが2018年には8.6と、複合化の傾向が強まっている。
また、2番目のポツで書いてありますけれども、障害福祉分野以外の教育、ひきこもり、人間関係、収入といった分野も拡大していて、他分野に関する対応困難事例が増加している状況にあるのではないかと考えております。
10ページは、子ども分野の一つの切り口として、家族にケアを要する人がいることで、家事や家族の世話を行う子供、いわゆるヤングケアラーと呼ばれる皆さんの実態調査ですが、2番目の○にありますが、支援団体からのヒアリング結果によると、例えば、子供自身が声を上げることが難しく孤立しやすいであるとか、あるいは家族構成の把握まではするのだけれども、家族一人一人の状況を把握するまでには至っておらず、家族のケアまでは考えられていないということであるとか、あるいは3つ目のポツですが、教育、医療、保健、福祉等が横断的につながることが必要であるといったような意見が支援団体からは挙げられているということでございます。
11ページは、関連として、自殺既遂者の方に民間団体が行った調査結果によれば、自殺で亡くなった方が抱えていた危機要因の平均個数は約4つで、最初の危機要因の発現から実際に亡くなるまでの期間の中央値は5年、平均値は7.5年。また、亡くなる前に行政や医療等の何らかの専門機関に相談していた方は、7割に上るという調査結果が示されています。
このような調査結果からは、さまざまな危機要因が複合的に絡み合うということもそうですけれども、それが時間の経過につれて変化し、また、複雑化しているという状況が見られる。個々の課題に対応するための支援とあわせて、本人に継続的にかかわり続けるための支援の必要性が示唆されているのではないかと考えております。
継続的な支援に関連して、幾つかの実際の事例を見ていただきたいので、12ページになりますけれども、その中では、相談に応じる中で、相談に至る端緒と異なるさまざまな問題が明らかになる。あるいは問題が複雑に絡み合い、本人が1人で対応できる範囲を超えている。また、社会的孤立など、これまでの属性ごとの支援のみでは対応が難しいといったように、継続的にかかわり、問題を一つ一つ解きほぐした上で、生きる力を高めていくような支援のあり方が求められている場合が少なくないということでございます。
13ページ、14ページは、断らない相談支援ということに関連して、これまでの検討会で先生方からいただいた御意見です。
見出しの紹介のみにとどめさせていただきますが、「包括的な支援」「本人主体・力を引き出す支援」、また、地域社会も含めた「関係づくりの支援」「早期的な支援」「継続的な支援」というような要素が浮かび上がってきているのではないかと考えております。
15ページは、第2回の検討会でお示しした資料ですけれども、ここでは左側の専門職による「伴走支援」と、右側の「地域住民同士のケア・支え合う関係性」を豊かにしていくということの両方をもって、セーフティネットの構築となっていくのではないかという考えをお示ししました。
このようなことを踏まえて、16ページ、17ページが論点になりますが「対人支援におけるアプローチについて」ということで、ここまでのまとめになりますが、相談支援の実践において複合的な課題が顕在化している。その複合的な課題というのは、モデル事業や生活困窮者自立支援といった包括的支援の中で多く見られるだけでなく、高齢・障害といった属性ごとの相談窓口においても、困難事例として挙げられている。
複合的な課題の内容や複合化の過程というのは、極めて個別性が高いことに加え、その背景に家族の問題や本人の不安、ひきこもりなど、本人や家族の社会的孤立、教育問題など、福祉領域以外の課題が関係する場合も多く、本人や世帯の個々の状況に応じた柔軟な対応が必要となっていると考えられるということです。
また、同じく相談支援の実践において、継続的なかかわりの必要性が明らかとなっている。
先ほども御紹介しましたが、対応する中で相談の端緒と異なる課題が明らかになるケース、あるいは人生の時間軸を通じて課題が変化したり、複雑に絡み合っていくケース、また、課題が本人の対応できる範囲を超えているケースがあらわれている。
このようなケースに対応していくためには、個々の課題の解決のための支援とあわせて、生きる力を高めながら一つ一つ解きほぐしていく支援が必要となっている。
これらを踏まえると、今後の対人支援においては、訪れた相談者の属性や課題にかかわらず、幅広く相談を受けとめる。また、本人・世帯の暮らし全体を捉え、伴走し寄り添いながら継続的にかかわるという、両方の機能を備えたこれらを「断らない相談支援」の機能として整備していくことが必要なのではないか。
また、本検討会におけるこれまでの議論からは「断らない相談」における基本的な視点として、先ほど御紹介した5つの要素が浮かび上がってきていると考えられるが、いかがかと。また、ほかにどのような要素が必要かということで、御議論いただきたいと考えております。
次のページでございますが、一方、これまでも第1回などで御紹介してきましたけれども、本検討会におけるこれまでの議論を踏まえ、市町村において「断らない相談支援」を中心とした包括的な支援体制を柔軟に整備しやすくなるよう後押しする観点から、新たな制度の創設を含め、検討が必要ではないかということで、これまで提示させていただいたことを少し改めて提示させていただいております。
さらに、本人を中心とする包括的支援には、社会との関係性が重要ということが重ねて指摘されており、セーフティネットを構築していく観点から、地域におけるケア・支え合う関係性を豊かにしていくという取り組みも同時に必要ではないかということで御議論いただきたいと考えております。
続きまして「2.『断らない相談』に必要な機能等について」ということで、18ページになりますけれども、ここでは「断らない相談」というものを体制の中に埋め込んでいく上で、必要な具体的機能ということを少し御議論いただきたいと考えております。
18ページは、第1回でもお示ししましたけれども、丸ごと相談を実現していく上で、さまざまな自治体の実情に応じながら、連携を担当する職員が機能することでさまざまな相談機関をつなぎ、そして、地域における伴走支援のコーディネートにつないでいくというようなイメージ図をお示ししたところでございます。
20ページは、またこれも再びになりますが、モデル事業では、上の半分にありますように、住民に身近な圏域において、地域福祉を推進するために必要な環境の整備とともに、地域の課題を包括的に受けとめる場を置き、また、市町村域において多機関協働による包括的支援体制を構築するということで、相談支援包括化推進員というものを置いているということでございます。
21ページは、前回もヒアリングに来ていただきましたが、大阪府豊中市の事例から、今申し上げたような体制が組まれている事例ということで御紹介をしております。
22ページでありますが、モデル事業における相談支援体制をお示ししたわけですが、その構成要素を整理したものでございます。
大きく言うと、縦軸がフロントでの対応からバックサイドへの連携という切り口と、あと、左右ですけれども、個別ケースへの支援という視点と地域における体制整備という視点、これら2軸を用いて、その機能・要素を抽出しているということです。
まず、下の「機能B」と書いてあるところですけれども、属性にかかわらず地域のさまざまな相談を受けとめ、みずから対応またはつなぐ機能がまず一つ必要なのではないか。その要素としては、相談を受けとめる機能と解決に向けた対応を行う機能があるのではないか。
また、上の半分は、多機関協働の中核を担う機能として、上から申し上げますけれども、相談支援に関するスーパーバイズ、人材育成、多機関のネットワークの構築、個別支援から派生する新たな社会資源・仕組みの創出を推進するということがあるのではないか。
これらが交わるところで、制度のはざま・隙間や、課題が複合化・複雑化したケースにおける支援調整を、多機関協働の中核の機能と相談を受けとめる機能が協働しながら整備していく、確保していくというイメージをお示ししたものでございます。
23ページから26ページは、今申し上げた特に多機関協働の中核を担う機能について、モデル事業の実践から、例えば23ページは複合化・複雑化事例の支援調整の事例、24ページは社会資源や仕組みを創出している効果が見られる事例、25ページは情報集約・ネットワークづくり、26ページは人材育成、スーパーバイズということで、先ほどお示ししたような多機関協働の中核を担う機能の実際の実践例をお示ししております。
このようなことを踏まえまして、27ページの論点2に参りますけれども「断らない相談」に求められる機能として、必要な機能は以下の3つに大別されると考えるが、それでよいかということで、御議論いただきたいと考えております。
①は、属性にかかわらず、地域のさまざまな相談を受けとめ、みずから対応し、またはつなぐ機能。
②として、制度のはざま・隙間の事例、課題が複合化した事例や、生きづらさの背景が十分明らかでない事例に対しても、本人に寄り添いつつ対応する機能。
③として、今申し上げた①②の機能を円滑に機能させるために、多機関のネットワーク構築や、個別支援から派生する新たな社会資源・仕組みの創出、相談支援に関するスーパーバイズ、人材育成などを行う機能ということで大別されるのではないかと考えておりますが、それでよろしいでしょうか。
2つ目の●については、今申し上げた3つの機能については、まず①については「断らない相談」にかかわる全ての相談支援機関が担う。
②については、多機関の連携の中核を担う機能を配置した上で、全ての相談支援機関が協働して担う。
③については、多機関の連携の中核を担う機能が担うということを想定したけれども、今後の体制整備に当たっても、引き続きそのような考え方でよいか。この点も御議論いただきたいと思っております。
最後に、モデル事業においては、圏域設定ですけれども、①の機能、属性にかかわらず受けとめ、対応し、つなぐ機能については、住民に身近な圏域において体制を確保する。
②③の機能については、市町村圏域において体制を確保するということを想定していましたけれども、引き続きそのような考え方でよいかということでございます。
ここまでが「断らない相談」の機能ということになりますが、28ページ以降がいわゆる出口支援、社会とのつながりや参加を支援していくという機能についてということでございます。
29ページは、出口支援について、検討会での御意見と、非公式に行ったものですが、自治体協議から抽出した意見をまとめたものでございます。
特に検討会について申し上げると、このような出口支援の機能については、断らない相談支援が機能するには、断らない生活支援もセットで必要であるとか、あるいは孤立の解消を目標として視野に入れると、一体的な出口支援が求められるであるとか、出口の縦割りも解消していくことも重要だというような御指摘をいただいております。
出口支援として求められる内容としては、多様な仕事づくり・就労支援、あるいは居住支援、あるいは各種制度のサービスにおいて、弾力的な運用を行える制度とすることが必要だというような御意見もいただいております。
30ページから32ページは、今申し上げたような出口支援に当たると考えられるさまざまな支援の実践例を御紹介しております。
例えば30ページの三重県伊賀市の例では、地元の農業と連携しながら、生活困窮者、若年無業者、障害者、高齢者など、さまざまな人に共通の中間的就労ニーズへの対応を目指すといった事業・プロジェクトを立ち上げている事例であるとか、31ページは「居住・見守り支援の事例」で、民間によるさまざまな取り組みを御紹介しております。
32ページは、子供の学習支援事業において、生活困窮者自立支援制度とひとり親家庭支援のどちらにも学習支援事業はあるわけですが、これらを連携して一体的・横断的にやっていらっしゃる桑名市の事例などをお示ししております。
33ページ、最後の論点3になりますけれども、出口支援につきまして、これまでの御議論を踏まえると「断らない相談」とともに、社会とのつながりをつくり、参加を支援する出口支援の機能が不可欠ではないか。
このような機能について、現在はニーズの個別性に着目して、属性ごとの支援メニューが準備されている一方で、地域の実践では横断的な支援が試みられている。また、これまでの検討会の議論でも、属性を超えた出口支援の機能の必要性が重ねて指摘されています。
これまでの実践などを踏まえ、包括的な支援体制を構築していく上で、相談とともに一体的に確保されるべき出口支援の機能について、具体的なメニューとして何が考えられるかということをこの場で御議論いただきたいと考えております。
資料2が本日御議論いただきたい論点になりますが、これは先ほど資料1の中で御説明した論点を若干まとめて整理をしておりますので、この説明は割愛させていただければと思います。
以上で説明を終わります。ありがとうございます。
○宮本座長 御説明ありがとうございました。
それでは、先ほど申し上げたとおり、まず、前半と申しましても、少しこちらに時間をかけて、60分ぐらいになるかと思いますけれども、事務局が整理してくれた論点1と論点2にかかわって議論を進めてまいりたいと思います。
先ほども申し上げたように、制度に実装していくということをそろそろ射程に入れつつ、複合的な課題に対処していくというのはどういうことなのか、あるいは「断らない相談支援」とは、具体的にどういう機関が引き受けて、ほかの機関との関係をどのようにしていくか、あるいは日常生活圏域と市町村レベルの機能の連関等、少し話を具体化しながら進めていければと思っております。
もちろん、また理念に立ち返るということも大事なことでございますので、そこはそれぞれの御議論を余り限定しないで結構でございます。柔軟にお話をいただければと思います。
その後、30分ぐらいかけて、いわゆる出口支援に関して重点的に議論してまいりたいと思います。
それでは、今回は端から順番にということではなく、挙手をしていただいた上で御発言を願えればと思います。いかがでしょうか。
立岡構成員。
○立岡構成員 では、最初にお話ししたいと思います。
断らない相談の中で、うちも仙台等で生活困窮の相談の窓口をやっていますが、基本的なスタンスとしては、皆、断らないということは自覚しながらやっている中で、どちらかというと、断らないというより、うまくフィットしないというのが、本人が困っているとか困ったという自覚がないまま、つながれてくるケースがあるなと。そのときは、どうつなぐにしても何をするにしても、自覚がない人を促していくというのはなかなか難しいなというのはすごく感じています。
あと、本人がお金を借りたいと非常に強く思っていて、社協さんの困窮の窓口に行ってきなさい、そこで連携してやるよと言うと「あんたのところは金を貸してくれるところじゃなかったのか」「あんたのところに言ったってしようがないのだな」とうまくつながらないというか、その後、いろいろやりとりはするのですけれども、断らないというよりも、本人が望んでいるものとうまくフィットしなくて、うまくマッチしないというところはすごく感じているところです。
それと、断らない相談で絶対的に必要だなと思うのは、やはり時間を稼げる場所だと思っています。うちのほうでも、当然ながら、シェルター等がありますが、本当に困ったときは池田さんのところの「ひなたぼっこ」にお願いをして、時間を稼がせていただきながら、実際にはアセスメントをとりながらという形で進めていくということで、時間を稼げる場所というと言葉がいいのかどうかはわかりませんけれども、そういったところは相談員がじっくり本人と向き合って問題の解決等に向かう中においては、絶対的に必要なことなのだろうなと思っています。
どうしても感覚の中で、これは言ってはだめだよと言っているのは、例えば、障害の手帳を持っていますという人が相談に来ても、あなたは障害手帳を持っているのだから、障害の相談支援事業所へ行きなさいみたいな、とりあえずどんな人であっても、たとえ話の中で属性がわかったとしても、まずは一旦受けとめるというか、その中において、よくよくいろいろ考えて、一緒に進めていこうかという感じに持っていくというのをきちんとルール化するというか、そのような属性がわかった段階において、専門的な見地がある人ほど、どうしても頭の中で、この人はこういう属性だからこちらだよねと思う可能性があると思うので、まずは、やはり受けとめるということが大事なのかなと思っております。
的外れなことを言っていたら大変申しわけありませんけれども、今、そのように感じているところです。
○宮本座長 ありがとうございます。
的外れどころか、断らないというのはどういうことなのか、何を断らないのかという極めて本質的なポイントを提起していただいたのかなと思います。これが曖昧なまま進むと、自治体も現場も混乱してしまうわけでありまして、ぜひこのあたりも少し具体的に話を進めていきたいと思います。
今の問題に関連してでも結構ですし、また別な角度からでも構いません。いかがでございましょうか。
朝比奈構成員、お願いします。
○朝比奈構成員 朝比奈です。
今の立岡構成員の発言とも重なるかもしれないのですが、専門職による相談の中で、こちらの資料1の4ページにもありますけれども、恐らく「具体的な問題解決を目的とするアプローチ」の側に分類されるであろう、例えば生活困窮者の自立相談支援機関とか、障害の機関相談などもそうかもしれないのですが、なかなかはっきりデマンドからニーズに中身が整理し切れないまま経過していくというタイプの相談の方々がいらっしゃるなと思っています。
それは恐らくその方の身近な関係があれば、例えば日常的な不満や愚痴のレベルから、ちょっとした願いや希望が日常的な環境の中で言語化されて、育まれて、その希望が右に行ったり左に行ったり、出たり引っ込んだりという時間的な経過の中で接触をした結果、御本人の意思となって形成されて、必要があれば公的な機関につながって、物事が進んでいくというのが恐らく自然な形なのだろうと思うのですけれども、その方が日常的な関係を持たないままちょっと口に出したことが、相談機関との関係の中で、逆にまだその段階ではないのに、相談されたのだから解決しなければいけないといった形で問題が膨れ上がっていって、あらぬ方向に行ってしまったり、それから、直前のところで引き返してくるような話になったり、そんなこともありやしないかなと思っています。
そういう意味では、断らない相談をきちんとやっていくためにも、つながり続けるという枠組みや関係や場所があって、一旦つながったのだけれども、とりあえずそのことは保留にしつつ、日常的な関係の中でもう少し思いを熟成させたり、そういうことがあって初めて展開していくのではないのかなと思っています。
そういう意味では、断らないという入り口のことだけに着目をしていても、そこの体制はなかなかうまく進まなくて、その人の孤立というところにも着目しながら、豊かな選択や自己決定をできるというのが断らない相談支援には不可欠な環境だと思いますので、そんな視点も少し検討していただければなと思うのが1点です。
あと、多機関の協働なので、たくさんの機関が力を合わせながら一つの家族にアプローチをしていくという取り組みは、少しずつ進展してきていると思うのですけれども、私も現場でかかわっている中で、例えば、御家族の存在があるなしで相談機関の動き方も大分変わってくると思っています。
家族の中で誰がキーパーソンになり得るかというのが、どこの領域の関係機関でも着目をするところで、例えば、そのキーパーソンの人が親の介護もし、子育てもし、障害のある兄弟のケアもしているとなると、物すごく重い負担を背負うことになるのですけれども、そこをトータルに誰が見ているのかというところが、実は盲点になっているのではないかなと思っています。
そういう意味では、血縁と地縁と社縁が薄れているというのが前提条件として整理されていますが、例えば地縁が薄れているところには、コミュニティーに働きかけて、そこを活性化していく取り組みが進んでいたり、社縁が薄れているところには、会社全体を面的に支援するということも含めた定着支援の取り組みですとか、多様な就労の受け皿づくりということで取り組みがされているのですけれども、家族・血縁が薄れているところに対して家族の機能を補うというのが、現にいる家族をサポートするという発想だけではなくて、目に見えないところで今まで血縁が担ってきた事柄を誰がどのように担っていくのかという視点とか、新たな取り組みなども必要になってくるのではないかなと思っています。
○宮本座長 ありがとうございました。
朝比奈構成員から、立岡構成員からの御発言に有機的につなげる形で、非常に重要な2点のお話がございました。
中でもデマンドからニーズへの転換、断らないということは、市民の皆さんにとっては、立岡構成員の表現でいえば、お金がないということを含めて、それは当然、ここに行けば何とかなるという期待を持たせても仕方ないというところはあるのかもしれませんけれども、同時に、この制度というのは、デマンドではなくてニーズ、つまり、社会的に解決すべき問題点を引き受けていく必要がある。
さらに、それに関連して、その場合、引き受けていくに当たって、地縁、血縁、社縁、どういう縁を補塡できるのかということについても、引き受ける側に一定の見通しがなければならない。
大変大事な2点について、お話をいただきました。
いかがでございましょうか。今の点をさらに前に進めていただいても構いませんし、さらに、少し別な角度から議論の幅を広げていただいても構いません。
では、池田昌弘構成員、お願いをいたします。
○池田(昌)構成員 立岡構成員からも出ていた、断らない相談を支えるためには、断らない支援もないと実際は困るということがあって、実際に断らない支援をやっていると、断らない相談のため断らない支援がある場合もあります。私どもは今、断らない相談とは別に断らない支援を行い、受け入れをしています。そうすると、本人たちが自由に行動や発言をする環境の中で見せる姿から、断らない相談を受けている人たちに向けた声とはまた違う一面が見えて、全く違った目でご本人を受けとめることがあります。 その意味では、断らない相談に断らない支援をセットするという先ほどの報告もありましたが、一緒にセットにしていくのか、あるいは分けて考えていくのか。どちらかというと断らない生活支援については、地域の人たちとの交流を含めて、生活を整えてもらう場を持つことのほうが、ふだん見えていない本人たちのいろいろな声や思いも出やすくなるのかなと思っています。誰も彼もが断らない支援を必要だとは思わないのですけれども、必要な中では、案外そういう相談者に見せる顔とはまた違ったものが見えてくることもあるのかなという感じがします。
もう一つ、対人支援のアプローチについて、一人一人が地域で暮らしている中で、地域社会にそれを理解してもらうような支援もないと、本人にかかわっていくだけでは、やはりその地域で暮らしていくことに結びついていかないのではないかと思っています。どうも個別支援が孤立化支援になっているのではないかという側面があって、そういう意味では、地域の中でつながっていくことの支援になっていくような視点もあわせて必要だと思いました。
○宮本座長 ありがとうございました。
相談者に見せる顔とは違った、それはニーズなのですかね。そこをどう引き受けていくのか。いわゆる主訴というのでしょうか、主訴は大変大事なのですけれども、その先にあるものをどう引き受けていくのか。その場合、さらに地域社会の理解をどうつなげて、広げていくのかということですね。これも今の論点をさらに深めていただいた議論だと思います。
ほかにいかがでしょうか。
では、宮島構成員、お願いいたします。
○宮島構成員 今の池田構成員の話を聞いてもそう思ったのですけれども、私は今、小規模多機能の全国の連絡会で、去年、どういう相談が持ち込まれるのかというアンケートをとったのですね。
そうすると、やはり高齢者の介護の問題だけではなくて、その背景のその世帯の経済的困窮とか、お預かりする家族の病気の問題とか、家族の関係とか、ひきこもりとか不登校まで相談が持ち込まれるのです。
今お話があったように、小規模多機能というのは高齢の分野なのですけれども、実際には世帯単位で支えていることもあるということで、ただ、相談という側面よりも支援という側面がすごく強いので、何かよろず屋とか何でも屋みたいな感じなので、かえって曖昧になっている、わかりづらいということがあります。
ですから「かかりつけ支援」と呼んでいるような人もいて、田中滋先生などは「小規模多機能」「居宅介護」という名前がよくないのだというようなこともおっしゃっているのですけれども、ただ、小規模多機能のよさというのは、相談とサービスが一体になっているので、さまざまな変化に柔軟に対応できるので、時間の経過とともに伴走することができるということがあるのです。
やはり全て小規模多機能ではないとしても、恐らくサービスのレベルと相談のレベルがある程度近接していないと、そこら辺はうまくいかないのではないかなと思っていて、恐らく仕組みとして縦割りになっているだけではなくて、相談と支援が縦割りになっているということが課題としてあるかなと思いました。
もう一つ、小規模を利用する本人を支えているのですけれども、実をいうと非常に家族が脆弱なのです。ですので、ちょっとしたことで関係が崩れて、そのもろさを支えるということがすごく支援のポイントになっていて、今の池田構成員の話からすると、単に宿泊とか通いで本人と家族を切り離すだけでは全然問題は解決しない。
一方で、家族のもろさみたいなものを支えるような仕組み、それは多分、地域の中に支援としてはあるのではないかなと思うのですけれども、そういったものにつないでいかないと、ただの引き離しサービスになってしまって、結果的にお年寄りは地域に暮らせないで施設に入ってしまうということで、家族にしてみると、ある種、ほっとする場面なのですけれども、本人は地域で暮らしたいということを実現できないということがあるので、そこが我々の支援としてすごく難しいところなのです。
ですから、本人を支えることは、実をいうと裏側に家族のもろさがあるので、小規模多機能の運営をしていると、そのもろさを支えるのは地域という構図が何となく見えてくるところはあります。
○宮本座長 ありがとうございました。
かかりつけ支援という言葉があったように思います。ただ、そのかかりつけは、実は世帯丸ごとのかかりつけであって、そこと支援をどう地域につなげるかという機能なのだというお話であったように思います。
いかがでしょうか。
平川構成員、お願いいたします。
○平川構成員 ありがとうございます。
私のほうからは、ここのところ別の審議会に出ていて、強く問題意識を持ったことがありますので、それを含めて発言させていただきたいと思います。
最近、私は中医協の委員もやっているのですが、療養病床に入っている方々のうちの3割ぐらいが、実はもう入院しなくてもいいのだけれども、地域に戻れないから入院しているのだという調査結果がありました。多分、これは地域差が結構あると思います。
次に、これは昔から言われていますが、精神病院においても、本来は退院できるけれども、地域に移行できる場所がないから入院しているという方が2割か3割ぐらいいるという状況があるということです。
これらはいろいろな要因が重なってこのようになったかと思うのですけれども、例えば患者や家族が相談する機会がなかったとか、相談も十分対応しなくて、オートマチックで入院施設に入ってきてしまった結果が、そういうことにあらわれているのかなということでありまして、何とかしないとだめだなと思っているところであります。
こういう社会的入院を少しでも少なくしていくということは極めて大切です。
断らない相談ですが、すぐ思い出すのは、生活保護のケースワーカーでは他法活用が運用原則ですが、本来であれば、生活保護のケースワーカーは他法を知らないと十分な活躍ができないということを考えれば、これについては、断らない相談の実現というのは、多くの制度の知識が十分必要でありますし、もっと言えば、地域資源がどのぐらい地域にあるのかということも当然十分知っていく必要があるのかなと思っているところであります。
これらの実現のためには、基本的には人材をどうやって育てていくのかというのが大変重要なのではないかなと思いますが、残念ながら、なかなかその辺が脆弱なところかと思っています。
人材の育成、もしくはそこで働く人たちの処遇の問題というのは、今までもなかなか話しづらいなという面があったかもしれませんけれども、ここまで来ると、本気になって断らない相談支援の基盤としての人材、そのための処遇の問題も含めた対応が重要になってくるのではないかなと思っているところであります。
もう一つ、断らない相談支援というのは、何となく相談機関に来る人たちが対象になっていますけれども、逆に来られない人たち、来ようという気持ちがない人たちも含めて、さまざまな方々がいる中で、来る人だけではなくて、来ない人たちの問題に対してどう対応していくか。アウトリーチも含めた相談が断らない相談ではないのかということも、少し概念として考えていかなければならないのかなと思いました。
これも少し別なところの話ですが、例えば、この前、札幌市で児童虐待で子供が痛ましくも亡くなった事件がありましたけれども、あの母親などは、誰にも相談できない中で結果的にあのような状況になってしまったということに対して、断らない相談支援の中にしっかりとしたアウトリーチという内容も含めていかないといけないのではないかなと思っているところであります。今後、それをどう展開していくかというのは、少しまた議論をしていかなければいけないと思っています。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
ここも大きく2つの大事な論点、1つは、先ほど朝比奈構成員から、デマンドをニーズに転換しつつ選択肢を示すことが、断らないということの中身に近いのではないかと。平川構成員からは、他法利用といいますか、制度の活用、それから、地域資源の動員、そうなると、それができる専門性をどのように担保するのかということと、2点目は、アウトリーチの問題、これが断らないということとどのように重なっていくのかという大事な2つの論点が出されました。
いかがでしょうか。
では、加藤構成員、お願いいたします。
○加藤構成員 私は障害の相談に基幹相談支援という形で乗っているのですが、具体的な事例で支援をしていると、地域の住民の方とか民生委員さんから相談があって、入り口としては、私たちは障害相談なので、具体的には、もしかしたら障害のあるかもしれない人が、お父さんがずっと自転車で追いかけて見ているのだけれどもみたいな相談から入っていって、自宅のほうに入っていくと、実は高齢のお母さんが動けなくなっていて、それこそふすまの向こうにはみたいなことがいっぱいあるのですが、具体的な属性がわかっていてニーズがわかりやすい事例に関しては、相談支援を断らず受け取ることは可能なのですけれども、ふすまの向こうにいる、一番理由がないというか、明確でない、先ほどのデマンドからニーズになっていないところに寄り添うというところが、実は一番時間がかかって、一番埋もれやすいところだと思うのですけれども、ニーズが表出しにくいがゆえに、誰が継続的にかかわるのかということが難しい。
何が言いたいかといいますと、断らない相談を一旦受け入れることは、一歩外まで目を向ければ、どの機関でもできると思うのですけれども、一歩外まで受けた相談を継続的に支援するということが実は難しいのではないかと思っているのです。
断らない相談を一旦受けるということは、意外にどこの機関もできて、もっと言うと、つなぐというところも、そのニーズが明確であれば、意外につなぐことができる。だけれども、ニーズが明確でない人の相談に継続的に誰がかかわっていくのかというところが、実は断らない相談の一番の肝ではないのかなと思っています。
もう一つは、私たちが困難事例ですと受けるケースというのは、よくよくひもといていくと、一度はどこかに相談したのです。その困難だった1個の事例は解決しているのです。でも、その後、実はこんな問題も、あんな問題もというところが家族問題の中で出てきていて、つまり、困難事例というのは、一度はどこかに相談をしているにもかかわらず、本質的な解決まで結びつかなかった事例が実は困難事例になってきているということを考えると、属性のない人の継続的な相談支援の難しさと、それから、本質的な問題解決に結びつかなかった方の埋もれていった問題が一番の課題なのではないのかなということを、日ごろの支援の中で感じたりはしています。
○宮本座長 ありがとうございました。
これも、これまでの議論を踏まえつつ、主訴の中には含まれていないけれども、ふすまの向こうに見えてきてしまうものを、どのように引き受けつつ、継続的な支援が可能なのかということを考えると、それは容易ではないということになるのかなと思います。
非常に重要な時間軸での展開の話も、今、出していただきました。
いかがでしょうか。
長島参考人、お願いいたします。
○長島参考人 私は松戸市で「福祉まるごと相談窓口」をやっている者なのですが、先ほどの加藤構成員さんのお話にもありましたように、何かしら支援が入っている家庭はたくさんあって、それが多問題にわたれば、いろいろな機関がたくさん家庭の中に入っているのですけれども、それぞれがそれぞれの対象に対しての支援をしているのですが、家族全体としての支援をしていないということに気づいたりすることがあります。
そこの中でひもといているうちに、例えば、実はそこの娘さんとお母さんの関係だったり、娘さんの意向とお母さんの意向が違うのだけれども、支援者が別々なので、それぞれがそれぞれの支援をしていて、うまく合致しないというか、そのような家庭がたくさんあって、私どもが福祉まるごとを始めて、そういうところにかかわることによって、その機関をつないで、新たにその家庭をもう一度見直すという作業を今しているので、加藤構成員さんがおっしゃったことにすごく感じるものがありましたので、発言させていただきました。
○宮本座長 ありがとうございました。
前回、松戸からの御報告もいただきましたが、松戸でもやはり丸ごとの支援については、御苦労が多いということであろうかと思います。
いかがでしょうか。
では、室田構成員、お願いいたします。
○室田構成員 今回、資料を拝見させていただいて、資料1で出てきた包括的な支援についての論点1と2は、このような言い方はよくない言い方かもしれませんが、地域で相談支援をする上では当たり前のことというか、当然のことであると思っています。ただ、その当然のことがなかなかできていない実情の中で、こういった包括的な支援のあり方を示すことは重要ではないかと思って、資料を拝見しました。
1回目の会議でも申し上げたのですけれども、私のスタンスとしては、ここで行っているような議論、包括的な支援体制はどうあるべきかということを、各自治体の中で、うちの自治体ではどうあるべきかというより質の高い議論をすることが、この体制や仕組みが各地でより充実して展開されていくことにつながると思うので、もちろん、ここでの議論は重要だと思うのですが、同様の議論を自治体ごとに行うためにはどういったことができるのかということに、私は関心として一つあります。
ただ、もちろん、全く白紙の状態で各地で議論してくださいというわけにはいかないと思うので、ここである程度議論したものを参考に各地で考えていただくことが重要だと思っていて、では、ここでの議論としてお話しすると、先ほどの加藤構成員の発言に少し関連するのですが、包括的な支援を継続的に行うことがどれぐらい可能なのかということは、議論したほうがいいのかなと思っています。
地域の中で包括的な支援体制をつくるときに、一つ、私の疑問としては、今、専門職がどれぐらい中心の議論をしているのか、そこに住民が参加して共同で進めていくという話なのか。恐らくどちらの可能性も含めて議論をしていると思うのですけれども、継続的に専門職がかかわるとなると、その自治体の中で、そこまでのマンパワーはないとか、財源はないと考えると、どこまで継続的に専門職が関与し続けられるのかという話に当然なるのかなと思います。
そういったときに、継続的かつ包括的に、住民のもう少し積極的な参加を通して継続的な支援の体制をつくっていこうとなったときに、住民の相談の仕組みの中で、断らない支援体制をどうやってつくっていくのかということは、また次の次元の話になってきて、そういう考え方をどうやって各自治体の専門職ないし行政の担当者の人が、住民の理解を得て断らない支援の仕組みを各自治体でつくっていくのか。
ここでどこまでそれを深く考えることができるのかというと、少し果てしない議論のような気もしてきて、我々はこの検討会の中でどこまでを提案するものなのかなというのが、少し私の中で見えにくくなっているので、この議論の中で、ここまでとか、これぐらいの体制をつくるというところを、何となく目星をつけることができればいいなと。今、少し混乱している部分もあるので、そのようなことを共有させていただきました。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
今、室田構成員がおっしゃってくださったことは、私が冒頭申し上げたこととも重なるのですけれども、この検討会が議論している中身というのは、これまで厚労行政でも多かった、つまり、ある制度をつくっておろしていくということとは根本的に違うわけです。
それぞれの自治体の規模、条件に応じて、具体化していただく中身を選択肢として提供していく。これは全く新しいチャレンジでありまして、これをやりおおせるということはどういうことなのか。つまり、どこでこの検討会の仕事を終えればいいのかということ自体が、まだこれまで余り多く経験を重ねてきていないことであると。ひょっとしたら、何か新しい恒常的なコミュニケーションの回路みたいなものをつくるようなことも射程に入ってくるのかもしれない。
恐らく自治体ごとに相談支援の軸が、先ほど加藤構成員は基幹相談のお立場で議論されていますし、ほかの方は地域包括の御経験をもとに、あるいは生活困窮者自立支援制度と、それぞれが今まで一貫して議論されてきた断らない中身だとか、世帯との、あるいは家族丸ごととのつながり方というのも恐らく条件が違ってくる。この条件の違いというのを、どのように我々は議論に繰り入れて話を進めていけばいいのか。このあたりも大変大きなチャレンジであります。
今、室田構成員がおっしゃっていただいたことは、そういう重みのあることでございまして、引き受けながら、では、どうすればいいかという代案もないわけなのですけれども、ぜひそこも皆さんのお知恵を拝借したいと思います。
いかがでしょうか。
では、知久構成員、お願いいたします。
○知久構成員 今の話と関連するのですけれども、ここで提案されている関係は、理想形が提案されているなと思うわけでございます。丸ごと受けて、それを解決するということで、全ていいようには思うのですけれども、実際にこの機能としては、相談の受付から調整機能に加えまして、多機関の連携、新しい資源の開発や仕組みの創設、相談支援に関わるスーパーバイザーや人材育成の機能まで、幅広く担っているような先進事例もあります。
ただ、これがどこの自治体でもできるかというと、かなり厳しいものがあるのだろうと思います。
そうした場合に、これらを担う機能としては、今申し上げたように、各相談機関との調整する力、各福祉分野の制度に精通して各課や委託先の相談支援員を指導する能力、地域の民生委員や自治会、NPOと連携して、新たな社会資源の仕組みをつくり、それを事業化する能力などが必要とされる。それらをどこの自治体でできるような形にしていく必要があるのだろうと思います。
その場合に、これは次の議論にもきっと関わってくるのかもしれませんけれども、そこに権限あるいは財源が与えられる、または自治体の中で課長級の職員など、実力のある人が配置されるなどといったような体制をとる必要があると考えられます。
その下に、介護保険でいう生活支援コーディネーターのような、地域に密着した資源を創出する人材を配置することが必要になるのかなということでございます。
どこの自治体でもできるような仕組みを考えていく上では、そういったことが論点になるかと思います。ちょっと先走った議論をして申しわけないのですが、室田構成員の言葉も受けまして、そんな感想を持ったところでございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
先走るどころか、今、そのことを深く我々は自覚しておかないと、どんなにいい議論をしても、それが全く空回りをしてしまうことになりかねないわけでございまして、我々はここで理想形に近づけばいいという問題ではないということですね。
地域との温度差、あるいは現実を踏まえつつ、本当に地域の問題の解決のために、実現可能な選択肢をどのように示していけるのかということです。
大原構成員、お願いいたします。
○大原構成員 今、お二人の委員の御意見、ちょっといろいろ整理したのですけれども、大分私の意見と重複していましたので、非常に共感していましたし、改めて難しいなと思っておりました。
私は、大学生のころに、空き店舗を借りまして、大学生の身分でしたが、学生ながら、いろいろな困り事に応えていこうということを始めまして、専門性も何もなかったのですけれども、断らないということを掲げようと。我々として、来る困り事に対しては断らないということを掲げました。
基本的に障害のある子供たちのレスパイトサービスとかショートステイをやっていたのですが、あるとき0歳のお子さんが来まして、どうにかこの赤ちゃんを預かってほしいと言われたのです。ただ、我々は断らないと決めていたのですが、我々は子供を育てたことはありませんし、どうしようと悩むわけです。そのときに、うちのサービスを使ってくれている障害児の親御さんにお願いしようというアイデアが出たのです。
この障害児の親御さんは、少しノイローゼぎみで疲れていたのですけれども、その赤ちゃんを抱きながらしばらく過ごしていると、だんだん回復していくところが見えたのです。
確かに各市町村それぞれで、持っているリソースも状況も全て違うと思うのですけれども、私が大事だなと思うのは、断らないということをしっかりと共通理念としてみんなが持っていく。つまり、いろいろ方法・手法はあると思うのですけれども、断らないということをこの国で掲げようということが大事なのではないかと思っています。
なぜかというと、そうすると、みんなが知恵を出すからです。知恵を出して、こういうやり方ならできるのではないかとか、ああいうやり方ならもっとうまくいくのではないかと。
今、結局、制度が整って、そこに当て込んでいこうというようなことが、どうも何かマネジメントの仕事になっているのですけれども、先ほど来から必要とされている要素というのは、知恵を出すということに専門職が時間をかけられていないということがあるのではないか。
ですから、もう一回その辺、制度がないころのほうが豊かだったということをよく伺うのですが、それは多分、皆さんが知恵を出し合って、あるリソースをどのように有効的に活用しようかということをきっと御議論されて今に至ったと思うのです。ですから、私がこの制度改正に極めて期待しているのは、同じ理念のもとに、同じ地域で同じことをしている仲間たちと共通の言葉で語れるというのが、非常に期待感として大きいのです。
これはもう知恵を出していくしかないなと私は思っています。学生のころにもできたことなので、スーパーマンどころか、超素人だったのですけれども、いろいろな人たちの助けを求めて何とかできた。そういうことが、実は今、私は社会福祉法人を経営していますけれども、あのころのほうが実は豊かだったのではないかというようなことを思いました。そういう意味では、今回の制度改正に非常に期待しています。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
現状を追随するだけではなくて、あえて断らないという理念を掲げるということ、そのことによって、むしろ地域で知恵を出していただく条件を広げていくというお話でありました。これもまた継続的に議論させていただければと思います。
では、池田洋光構成員、お願いいたします。その後、堀田構成員、お願いします。
○池田(洋)構成員 全国の町村の数は926あり、その数は、市よりも多く、主に中山間地域でございます。
きょうの会議に初めて出席をさせていただきましたけれども、やはり事業所の方が大変多うございますし、私も首長として日々いろいろ仕事をする中で、皆さんの御苦労というのが大変よくわかります。
私の高知県は
面積7,100平方キロメートル、人口は70万人を割っており、人口密度が低いため、福祉行政を行うにしても非常に効率が悪いわけです。
しかし、断らないという話が先ほどありましたけれども、特に高知県は、県土の84%が山林で、北側には四国山地がそびえて、西日本最高峰の石鎚山というのもあり、南は太平洋に面しておりまして、海岸の距離も700キロメートルというような、いわゆる大変な条件不利地域であります。

そういった条件不利地域ではありますけれども、まず、高知県の市町村において、断るという選択肢があるのかなと思ってしまうのです。まずないです。
といいますのも、先ほども申し上げたとおり、非常に人口密度が低うございますので、大体どこの首長も自分のところの住民の状況はよくわかっております。そうでないと選挙で選ばれません。
また、移動距離が長い条件不利地域であるがゆえに、できるだけ労働集約型の福祉ができないかということで、いろいろな工夫をしています。
先ほど大原構成員さんのお話がありましたけれども、やはり知恵を出していくということが非常に重要であろうと思いますし、我々の地域の考え方として「我が事」「丸ごと」を合い言葉に、いろいろな事業に取り組んでいます。
要は、当事者意識がそれぞれのスタッフになければ、働かされている感だけでは、なかなか物事に対応できないということがありますので、私は、都会においてもそういった考え方を導入することによって、解決策を見出せる部分があるのではないかなとも考えます。
あと、お役所は縦型社会でありまして、自分のところもそうなのですが、やはり縦割りというものをある程度突き破って、織物のように横軸、縦軸と、そういうことを図っていかないと、限られたマンパワーと、限られた予算では、なかなか物事を解決することはできないと思いますので、そういった縦割りの弊害をなくしていただくような仕組みもぜひつくっていただきたいと思います。
第1回目の資料1の12ページにC市の事例があるが、要はお金の使い方なのですね。
国からの交付金については、65歳以上の高齢者を対象とした地域包括支援センターとしての業務に対してのみ支給されるものであり、交付金の対象になっている職員については、地域包括支援センター以外の業務に従事させてはならないという指摘を受けた。まさにこれは役所の論理ですよね。私も役所なのですが、一般の国民・市民にしてみれば、何だこれはという話なのです。
「どこに当事者というのがあるのかね」ということだと思います。このあたりにメスを入れないと、せっかくいろいろないい考え方、前向きな取り組みをしようとしても、どこかで頓挫をしてしまうということであります。
また、いわゆる資格を有する、例えば保健師とか、社会福祉士とか、理学療法士とか、そういった専門知識とノウハウを身につけた専門職の方がその仕事をできるかどうかが重要。
往々にして制度が変わっていくので、その都度、一生懸命その制度設計についての勉強をしなければならない。本来は保健師としての仕事をしたい。地域住民の皆さんに接したい。しかし、役所に、都道府県に、あるいは国に報告書を出さなければならない。まさに本末転倒なことが起きておりまして、そういったいわゆる役所の弊害をできるだけ取っ払う。これは各機関の皆さんも同じだと思いますけれども、そういうことをやらないと難しいと思います。
あと、会計検査院は、内閣からも独立した組織であり、まさにどんと踏み込んでこれはだめだと指摘をするわけで、それが先ほどのC市の例だと思いますけれども、そういったことも含めて、こういった会議の場で皆さんの声をしっかりと政府与党にも伝えなければならない。
そういったことも含めて考えると、国民の幸せはどこにあるのか、どこに福祉の大きな問題があって、それを解決するための手段がどこにあるのかということをもっと議論しないと、まさに画餅に帰すではないですけれども、そんなことになるのではないかと思います。
大変勝手なことを申し上げましたけれども、まずは、それぞれの福祉の大変厳しい現場に携わっておられる皆さんに心から敬意と感謝を申し上げて、私の発言といたします。
○宮本座長 どうもありがとうございました。
小規模な自治体、あるいは中山間地等でも、逆に支援を断らない形にならざるを得ないのだというお話も大変興味深く伺った次第であります。
続きまして、堀田構成員、お願いいたします。
○堀田構成員 自治体レベルのお話になっているところに、戻るようで恐縮なのですが、皆さんのお話を伺いながら1つ感じていたことが、資料1のほうでいうと4ページの図で、それから、資料2のほうでいくと、論点1の視点なのかなと思うのですけれども、課題解決のほうはニーズがはっきりしてからのことなのでいいとして、制度改正をというときに、4ページのほうでいくと、この2つに加えて、まだそれでも右側の「つながり続ける」という箱の中身は、本人と支援者がと書いてあるのですよね。
これを人と人として、市民と市民として出会い直す、それを通じて、資料2でいうところの本人主体とか、力を引き出す、あるいは関係づくりというところに、さらに、出口と称されているところにつなげていくというような視点が必要なのではないかなと、前半の何人かの構成員の方々のお話を伺いながら感じました。
それは特に窓口で受ける立場、そして、本当に厳しい状況でそこに至った状況だと、相談の受け手と、社会によって困らされてしまった人というように出会ってしまって、それはある意味、人としてともに風景をつくっていこうというような感じにはなりにくくて、それが支援する側、される側ということではなくて、継続的にというお話も随分ありましたが、とすると、前回、たしか質の高い出会い、ともにする体験、ともにつくる体験ということを申し上げたと思うのですけれども、相談の窓口においては、困らされている相談者とそれを支援する側ということになるのだと思うのですが、そこを広げていく、人として出会い直す場をつくっていけるということも、このアプローチの中に含めていく。
逆に言うと、今までの制度や事業のつくり方ですと、左側によりアウトカムとして問われがちだったと思うのですけれども、人として出会い直すというところも含めた形で、もっと現場の方々が裁量を持って展開していける余地をつくるということは、一つ重要なのではないかなと思っています。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
前回も堀田構成員のほうからは、出会いの演出といったお話もあったかと思いますけれども、こうした断らない相談という議論を、また一つのかちっとした制度にしてしまうのではなく、もっと多様な出会い方が可能であるようなデザインをどのようにつくっていくのか。それも大変大きな契機だと思います。
助川構成員、お願いいたします。
○助川構成員 助川です。
現在、地域包括支援センターに所属しておりまして、包括支援センターの業務としては、やはり総合相談の窓口ですから、高齢者が中心といいながらも、8050とか、ファミリー全体、世帯全体を見ていく中では、障害やいろいろな方たちの相談も一緒に入っていくわけなのです。
そのときに、包括支援センターは介護保険制度の中で設置されていますので、介護保険制度のケアマネジャーの研修の中では、家族は対象者なのです。家族は第2の対象者で、家族支援というのは介護保険制度の中のすごく大事な部分でありますので、高齢者の介護が必要になった状況のときに、その家族がそのために疲弊しないように、家族アセスメントをきちんとやって家族をサポートするというのは、すごく大事なポイントになっております。
私たちは、特に8050が多いのですけれども、そのときの80は、どちらかというと、タイムリーに解決をつけないと、高齢者の場合というのは本当に待ったなしでいろいろなことが起こってくるので、すぐ対応するのです。
でも、50のほうの対応に関しましては、私たちだけでできないので、やはりチームを組んで、それと、信頼関係を設立するのに、50の部分の子供さんの世代というのは時間がかかるのです。そのために、子供さんの世代には時間をかけて、継続的にいろいろな団体と協力しながらやっていくということがすごく大事になっております。
今、私が思っているのは、1つの機関の中に多機能に入れるよりは、いろいろな機関が存在しているので、そこをいかに調整しながらきちんと結びついていけるのかなと、そういう形で支援できるのかなということを非常に地域の中で考えています。
そして、包括的な中で、もう一つ、世帯単位の家族の部分も考えるのと同時に、高齢者の場合は、やはり地域で暮らし続けるというのはすごく大事なことなので、インフォーマルなサポートを非常に取り入れるという形になっておりまして、それがやはり地域の力なのです。
本人がこれまで生きてきた中で、地域の中ではどのような資源が結びついているのかということを浮き彫りにしながら、インフォーマルなところと再度結びついていけるようなサポートをしていくという形で、包括的な支援という部分にもかかわってくるのかなと思っています。
それから、早期支援のところ、いろいろな構成員の先生方の御意見を聞かせていただいた中で、ふと気がついたのは、早期支援というのは、地域の中にそういう見守りの目、そして、一緒に暮らしていく目があれば、早目の相談が持ち上がってくるのではないかなと思うのです。
だから、事後対応で何々が起きたからの対応ではなくて、早期に、ちょっとこういう状態が心配なのだけれどもというような声かけから始まる相談は実は結構ありまして、新聞が2~3日たまっているよとか、そういうところから包括のほうに相談に来てくださる住民も結構いらっしゃるので、そのような早期発見の仕組みづくりみたいなものが地域の中に醸成されてくればいいかなと思っているところです。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
地域包括は、現実にもう既に世帯問題、家族問題に取り組まざるを得なくなってくるというお話と同時に、早期サポートのためにも、これは先ほど平川構成員からもお話があり、そして、今、堀田構成員からの議論ともかかわる、つまり、多様な出会いのデザインということにもかかわると思いますが、いかに早期に、声かけも含めて、アウトリーチ的なアプローチも含めて接点をつくっていくのかということ。つまり、この検討会での議論が窓口論にならない、収れんしないことが非常に大事なのだということだと思います。
きょうも皆様のおかげで議論が大分深まっておりますが、時間にも制約がございまして、このあたりで論点1、2から論点3、いわゆる出口問題のほうに少し力点を移してまいりたいと思います。
もちろん、完全に論点1、2と論点3は切り離すことはできないわけでございまして、そういう意味では、議論が続いていくわけですけれども、少し論点3を念頭に置いた御発言のほうにシフトしていっていただければなと思います。
いかがでしょうか。
では、池田昌弘構成員。
○池田(昌)構成員 論点1、2ともつながっているということで話をさせていただきたいのですが、先ほどからも出てきましたが、非専門職である住民の皆さんとのつながりがとても大きいのではないかと感じています。
つながりを大切にして暮らしている人は結構多くいらっしゃって、そういう人たちが地域のいろいろなことに気づいていたり、支えていたりということが見えてきます。
介護保険で生活支援体制整備事業というのがあって、今、生活支援コーディネーター・協議体を設置して全国で進んでいるのですが、地域課題を探して、その解決案の話を住民の皆さんとすると、「専門職や制度で解決できないものまで、なぜ住民にやらせるのか」という声が出ます。協議体があっという間に抗議体になる恐れがあります。
私たちは、住民の皆さんのふだんの暮らしの中でのつながりや自然な見守りによって安心感がつくられていることをしっかり評価していないと思っています。それは見えにくいからなのですけれども、本当はそういう住民の皆さんの暮らしから学ぶことが必要なのだろうと思います。
住民の皆さんは地域をよくしていこうと思って暮らしていて、その上で課題を解決していくということになるのだろうと思うのです。
次回、この辺の議論があるのだと思うのですが、小学校区や旧小学校区くらいでまちづくり協議体や地域運営組織をつくられて、そこで住民の方が相談に乗ったり、問題解決にかかわったり、専門職の方と協働している取り組みが結構あります。その際、どうも地域の小さな単位では、必ずしも専門職が窓口でなくてはならないということにならないのかもしれないなと思っています。
町全体になると専門職でなければならないと思いますし、さらに広域でいうと、都道府県がそれを支援するという意味での中間支援の機能も求められてくるのだろうと思いますが、地域のところは住民の皆さんでもいいのかなと思っています。
特に今、平日の日中に地域にいる若い人たちがいません。みんな働きに行っていて、地域は高齢者だらけになっているので、そういう意味では、若い有給の人と元気な高齢者が地域で支えていくというようなものが必要になってきているのではないかと思っています。
今後、池田町長が話をされるかもしれませんが、先ほど高知型福祉というものがありましたが、高知県では、単独補助事業として「集落活動センター」と「あったかふれあいセンター」に取り組んでいて、、運営形態はさまざまなのですけれども、ある市町村ではその運営を全て住民の方に担ってもらっています。
その意味では、住民の方が見守ったり、支えたりというところは、もう少しポジティブな形で考えていくことが求められているような気がして、そういうコーディネーターのような方々とあわせて、個別支援の丸ごと相談が対応していくことが求められてくるのではないかなと思っています。
地域のことは次回なのですけれども、別々に議論するよりは、やはりつながっているということを意識しながら考えたほうがいいかなと思って、発言させていただきました。
○宮本座長 ありがとうございました。
出口とは実は地域なのだという非常に根本的な問題に気づかせていただいた御議論だったと思います。
ほかにいかがでしょうか。
奥山構成員が到着されましたので、奥山構成員、よろしくお願いいたします。
○奥山構成員 2回目も欠席だったので、議論についていけないところがあって申しわけありません。
私も一応、意見書を出させていただきました。子育て支援の分野で活動している者です。
実は子育て支援の分野では、平成27年度より利用者支援事業というものが創設されました。新制度ということで、保育園や認定こども園など、保育・教育の施設が結構多様になりましたので、選ぶのに戸惑いのある方や、自分が使える事業なのかどうかよくわからないというようなことが子育て分野でもあって、それをコーディネートするケアマネジャーさんのような機能が子育て分野になかったものですから、利用者支援事業が平成27年度からできまして、幅の広がりが少し出てきております。
事業内容は、子供と保護者が、自分たちの家族が必要とするサービスや事業を確実に、円滑に利用できるように支援する。子供と保護者にとって身近な場所で円滑に利用できるように支援する。情報提供、相談支援、機関連携、地域支援を総合的に行うというような事業になっております。
そちらのガイドラインでは、支援者の基本的な姿勢として以下の視点が記載されており、論点1の方向性は一緒だと認識しております。
この利用者支援のとても大事な視点というのは、身近な場所で敷居の低い相談を受けるというところです。そういった意味で、地域子育て支援拠点、親子の交流の場というところなのですが、子供を遊ばせながら、時には相談できるという体制を構築していって、そこに利用者支援のコーディネーターがいるというようなイメージです。
今も地域の方のお話があったのですが、子育て分野でどんな支援があるかというと、地域の方が子供を預かってくれたり、送迎をしてくれたりというようなファミリーサポートセンター事業、これは本当に地域住民がやっているのですけれども、かなり厳しい案件も実はやっています。
一時預かり事業も本当に突発的なところの緊急対応をしているのですが、これは通常の保育園の保育士不足で、一時預かりの枠が厳しくなり逆にハードルが高くなっていて、就労ではない緊急一時預かりがなかなか難しくなっているというのが現状なのです。
そのような状況の中で、子供と母親を見るだけではなくて、包括的な家族を見ていくという視点、夫との関係がどうなのか、家族の状況はどうなのか、そういったところまでも踏み込んでしっかりと見ていくというようなこと。
特に最近では児童虐待等の問題で、婚姻関係のない相手の暴力等々もあって、その辺の確認というのが非常にどの地域でも課題になっているのではないか。そういった意味でも、全体として、同居している人たちも含めた家庭全体の包括的な把握というのが、非常に重要になってきているということがあります。
また、子育て家庭は、子供が生まれて非常に力がそがれている期間ということもあって、本人の力をもう少し発揮してもらえるようなエンパワーメントの支援が非常に重要になってきていて、それは皆さんの分野と全く同じだと思います。
ただし、利用者側から状況を捉えるということが非常に重要で、よかれと思って支援者側が誘導的になると、せっかく相談したのに、全然うまい相談につながらないということが危惧されるという部分が私たちのところでもございます。
また、関係づくりの支援という視点が出てきておりますが、地域住民の話が今もありましたけれども、もう少し住民の主体的な支援ですとか、地域ぐるみの支援ですとか、そういった視点を関係づくりの中に入れていいのか、ちょっと取り出したほうがいいのか、フォーマルだけではなくて、インフォーマルな支援の組み合わせなど、このあたりを少し深めていったほうがいいのではないかと思っています。
早期的な支援でいえば、子供の分野では、今はやはり予防という視点でやっていかないと、厳しい状況をなかなか解決できないということになっておりますので「予防」というような表現も必要ではないかと思いました。
あと、継続的な支援ですけれども、相談機関だけでなく、機関、事業、サービスが定まってからも、相手先とチームでかかわっていく体制が必要だと思っております。
論点2についても、ここに書かせていただきましたけれども、今お話ししたような内容で、世帯や家庭全体を包括的に把握し、家族側から状況の理解・対応をするなど、寄り添い型の対応を強化するような仕組み。
それから、社会資源の開発や仕組みの創出ということで、特に子育て分野は社会資源がなかなかまだ少ないという中で、そこをどうしていくかということ。
それから、人材育成は独立させた方がいいと思っております。
社会資源の開発や仕組みの創出、人材育成については、私たちの利用者支援事業にも入っています。多分、皆さんの各事業にも入っていると思うのですけれども、そうなった場合に、各分野事業毎にそれぞれでやるべきなのか、分野横断的に一緒にチームでやるべきなのかという議論も含めて、このあたりのところは、一度それぞれの事業の実施要綱を確認していく必要もあるのではないかと思っています。
論点3については、定期的に通っている場所があるなど、家庭以外の社会とのつながりや社会参加の指標があると、わかりやすいのか。しかし、限定せずに広く捉える必要があるのではないかなというような、まだ漠然とした感じですけれども、そのように感じているところです。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
奥山構成員からは、子供分野を中心とした御発言ですけれども、これまでの論点1、論点2の他構成員の御議論と非常に重なり合う、共有し合う論点をお出しいただいたのかなと思います。
ほかにいかがでしょうか。論点3のほうを主要に。
では、宮島構成員、お願いいたします。その後、立岡構成員、お願いします。
○宮島構成員 出口支援という言葉は、私のイメージで申しわけないのですが、問題解決型のイメージがあって、これは一歩間違うと伴走とは異なる感じがあるのですけれども、この言葉がいいかどうかというのはあれなのですが、もしかすると、出口支援にみんなでかかわるプロセスの中から、次の同じような状況にある人たちに対して、経験を活用してチームが成長していくというイメージであれば、それはいいとは思うのです。
ただ、先ほどお話もありましたように、かなり時間をかけていかないとなかなか難しいし、もしかすると、子供さんとか、あるいは世帯全体というのは、山あり谷ありで、いろいろな問題を抱えながら継続して支援をしていかなければいけないといったときに、どこが出口になるのかよくわからないというか、言葉の使い方がよくわからないのですけれども、そういう意味では、一つ一つに出口があって、その経験を積み重ねながらチームが成長する。そのチームが世帯を伴走していくということなのかどうか、ちょっとそこら辺が私にはよくわからないなと思ったのが一つありました。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
ある意味では、出口支援という考え方そのものと伴走型支援という考え方の緊張関係みたいなもの、ここを踏まえていく必要があるのではないかという非常に大事なポイントかと思います。また、評価の問題もかかわってくるので、何らかの出口というのは設定しておく必要もあるのかもしれません。
立岡構成員、お願いいたします。
○立岡構成員 出口支援に関しては、私なりの解釈でいうと、出口支援というのも基本的に「困ったに寄り添う」なのかなと思っていて、あと、選択肢をふやすということなのだろうなと考えています。
その中で、3点ほどなのですが、1つ目は、先ほど池田さんのほうから地域というお話があって、今、実際にある地域の地域包括ケアシステムを構築することにお手伝いをさせてもらっているのですけれども、その中で非常に怖いなという経験をしたのが、おまえは地域を壊すのかというようなことを言われたりしたのです。
というのは、地域住民の中において、それこそ小地域福祉ネットワークの活動が非常に盛んになっているのに、新たに地域包括ケアシステムを持ってくるのかみたいな形で言われて、地域といろいろ話をしながら、何が一番困っているのですかねという話の中で、町内会の未加入世帯でも、やはり地区でサポートしていくという体制を構築していきたいのだというような話をされて、では、そこのところを一緒になって今からつくっていきましょうみたいな感じで進んでいるような感じで、やはり地域は地域の中において、住民同士でのサポートができているのです。
ただ、その後、生活困窮の窓口だったりすると、当然ながら、地域に住んでいくという中において、地域にサポートしていただきたいということも考えると、これは時間が本当にかかることだと思うのですけれども、そういう中において、地域の「困った」に寄り添いながら、こちらの「困った」もサポートしてもらう形をつくっていくというのが大事なのかなというのが、まず、地域の中における1点目です。
2点目は就労の部分なのです。就労支援をしてほしいという形で来ている人たちに対しては、当然ながら、就労の選択肢を提供していく中において、最初は企業さんにお願いだったのが、だんだん「おまえたちはお願いだけだな」という形ではなくて「俺たちの困ったに寄り添ってくれないのか」というのも、企業は企業なりに人手不足とか、あとは、新入社員を入れたのだけれども、やめそうだと。そいつらの話をちょっと聞いて、仲を取り持ってくれないかみたいなものもあって、今、うちはやめさせない支援をしています。
体験実習先などを開拓する際に、企業の方々と話をする中において、うちの職員にちょっと変わった感じの行動を起こしているやつがいるのだけれども、ちょっと話を聞いてもらえないかみたいな、そういう企業の「困った」に寄り添う形のものを、実際、出口支援という形の中でやっていくと、企業さんも、おまえたちは役立つなという信頼関係を得る中において、おまえたちのほうで困ったという人がいたら、受けてもいいぞみたいなところが広がっていったというのが実際にあったので、企業の「困った」に寄り添うのがもう一つの出口支援なのかなと思っています。
3つ目は居住という部分なのです。当然ながら、住まいを失ったという人たちが来るので、そのときに不動産屋さんにお願いばかりしていたのです。そうすると、不動産屋さんも、本当に心あると言うと表現がいいかはどうかわからないのですが、それなら協力してやるかという不動産屋さんもいるのですけれども、なかなか広がっていかない。
あとは、大家さんをなかなか説得できないという中において、ある意味、これはもう不動産屋さんになってみないとわからないなということで、うちの法人で別会社をつくって不動産屋さんになりました。
不動産屋さんになって大家さんと話をすると、大家さんたちが言っている悩みとか苦しみとか、あと、父ちゃん、母ちゃんでやっている不動産屋さんが多いので、そうすると、あなたたちが対象にしている人たちを入れて、もし何かあったときに俺たちで対応できるかわからないから怖いのだと。何かあったときにあなたたちに電話したら、あなたたちが一緒に対応してくれるというのだったら、俺たちももう少し協力できるぞというようなことを言っていただいて、ある意味、知恵を出すという形ではないのですけれども、わからないところに飛び込んでいきながら、お互いの気持ちがわかるような形になってこそ、初めて出口というのは広がっていくのかなということで、一応、「困った」に寄り添うというようなことなのかなということで、ちょっと私として意見をさせていただきました。
○宮本座長 ありがとうございました。
特に2点目と3点目、就労であれ、居住であれ、出口支援というのは出口をスタートラインにしていくと。つまり、就労も、そこから逆に企業に寄り添うことで、同時に当事者にも寄り添うことができて、やめざるを得なくならない支援、これは双方ウイン・ウインの関係であるし、居住も見守り等で不動産屋さん、大家さん等とともに歩むスタートラインに出口がなっていく。そのことによって、ウイン・ウインの関係が育まれるということだと思います。大変示唆的な御意見ありがとうございました。
ほかにいかがですか。
朝比奈構成員、その後、大原構成員、お願いいたします。
○朝比奈構成員 朝比奈です。
私も意見を出させていただいたのですが、構成員提出資料をめくっていただいて、ちょっと稚拙なのですが、2ページ目の「地域社会における相談機能と支え合いの関係」というところを見ていただければと思うのですけれども、これは第2回検討会に出された、きょうの資料だと15ページになるのですが「伴走支援と多様なケア・支え合う関係性の充実によるセーフティネット」という、左側に伴走支援があって、右側に地域住民同士のケア・支え合う関係性という、これを見たときに若干違和感を覚えて、何となく描いてみた図なのですけれども、先ほどの例えば生活困窮の自立相談支援機関などは、いわば急性期の相談機関だと思っています。
宮島構成員からまさしくかかりつけ支援というお話が出たのですが、差し当たり私たち急性期の相談機関にとっては、大きな問題解決がある程度進んで、日常の生活に戻っていくときに、どこにつなぐか、かかりつけをどこにしておくかということが結構重要な視点になっていて、それが例えば子育てでは保育園だったり、日常的にファミリーサポートを使っていただいたり、それから、障害の福祉サービスだったり、介護保険のサービスなどだと思うのですけれども、そういうケアを中心とした日常的にかかわり合うところに移っていくと、多くの場合、日常的な相談事というのはそこで拾われていくわけです。
そうすると、先ほどどなたかからも出ていましたが、かなり早期に問題が拾えて、そこで手に負えなくなったら、もう一回急性期のほうにサインを出していただければ、私たちもまた一緒にかかわるというようなやりとりの中で進んでいくのですが、こうした子育て支援とか、障害とか介護につながらない人たちで、しかも、孤立のリスクを抱えている人たち、既存のどこかのコミュニティーに所属していればいいのですけれども、そうした人たちをどうするかということが結構大きな悩み事になっています。
コミュニティーの支え合いというのは、もちろん地域組織だけではなくて、例えば同じニーズを持つ当事者のグループとか、いろいろあると思うのですが、それはそもそも自由に育まれて豊かになっていくもので、別にそこに行政や専門職の意図があろうがなかろうが存在するものだと思っているので、そこに何らかあらかじめ当てにすることで、そこ自体が窮屈になっていくということも一方で避けなければならないだろうと。
そうなったときに、介護とか障害サービスとか、もちろん先ほどの小多機のかかりつけ支援も非常に象徴的なのですが、何らかの公共性を持ったつながり続ける仕組みが求められているのではないかなと思っています。
その点で、今、立岡構成員から居住のお話も出ましたけれども、私たちも不動産屋さんに緊急連絡先も立てられない人をお願いしますという話で、要するに、何かあったら、あなたに連絡すればいいのだなと。そこさえ引き受けてくれれば、もちろん受け入れはするよという話が非常に大きくて、これが特に若い人だと、今度は就職の場面でもそういう話になってくる。
孤立のリスクを抱えている人たち、例えば虐待を受けて育った若者たちだったり、それから、家族と縁が切れてしまったり、家族を失ってしまったり、DVから逃げてきている人たちなど、あと、外国人の方々もそうかもしれないですが、そうした人たちの公的な保証、それは1点、その人に何かあったときに誰が動くのかということをはっきりさせておくということだと思うのですけれども、それがあることで、つなぎ先ができる、つながり続ける仕組みの受け皿の一つになり得るのではないかなと思っています。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
出口は地域であるということは事実なのだけれども、そこで解消し切れない幾つかの大事な問題点を出していただいたように思います。ありがとうございました。
では、大原構成員、お願いいたします。
○大原構成員 ありがとうございます。
先ほどから地域というところが出ているのですが、地域の中でとても必要だなと最近つくづく思うのですが、当事者性をどう醸成していくかというのが非常に大事だなと思っています。
これを黙っていても、多分、生み出せるものではないので、やはりともに学んでいく機会というか、これからの時代、これから地域がどのように変貌を遂げていくのかということのさまざまな情報を共有していく中で、一人一人の町の人たちの当事者性を醸成していくことが、いろいろな困り事に寄り添うような地域づくりになっていくのではないかということを思いながら進めているのですが、では、実際にこういうことの仕掛けというか、いわば資源開発みたいなことをどこが担うのかということになったときに、これは地域包括がやるのか、社協がやるのか、いろいろな議論があるのです。
ただ、これは多分、そういう視点を持って、先ほど企業の話もありましたが、企業も人手が不足しています。農家も人手がいない。今まで頭を下げて頼んでいた就労が、向こう側から人を欲している。
いろいろ地域の情報を集めて、地域の人たちが意識醸成されていったときに、この関係性をつなげていく人というのがとても重要なのですけれども、ただ、今の相談員の人を見ていると、もう今の仕事で精いっぱい。だとしたら、財源を確保して人をふやすというすべもあるかもしれませんし、もう一歩現実的なのは今やっている業務の省力化。
私は相談支援にはかかわっていないのですけれども、この間、自分の法人の包括に行ったら、こんな事務仕事をやる必要があるのかというのがたくさんあるのです。議事録なんかは録画でいいではないかと思うのです。会議参加などはラインでいいではないかと思ってしまったりするのですよね。
では、何でこれが必要なのか。やった証書だというわけですよね。そういう考え方を改めないと、もうこれ以上、いろいろな人を見ましょう、いろいろな人をつなぎましょうみたいなところが苦しくなってくるのではないか。
つまり、その機能を整理しながら、先ほど言ったように、地域とどなたかの出会いやつなぎをつくっていくだけの学びを、それを仕掛ける専門職をすこし楽にさせるというか、ボリュームを落としてあげて、それに従事できるような専門職をつくっていく必要があるのではないかということを思ったりしました。
もう一つ、制度論でいえば、私は、ヘルパーの方というのは極めて専門性が高いなと思うのです。自宅に入って、あの短時間の間にいろいろな生活の変化や、御本人の困難性みたいなことを即座に見抜くわけですよね。ですけれども、この方々というのは、単元、単元のすごく短いところでしか活用されていないのですよね。ヘルパーというよりも、家事援助みたいなことになっている。
この人たちがもっと違う形で、例えば町なかヘルパーではないですけれども、そのエリアのちょっと気になっている家庭に、自分のヘルパー業務が終わった後にちょっと顔を出して「大丈夫?」と声をかけるとか、民生委員の方よりも少し専門性のある仕事をしっかり報酬上評価していくとか、今までかかわっていた80の方のヘルパーが、もし手から離れたときに、今度は50の方にちょっとだけ目をかけて、何かあったらすぐつなぐとか、そういったあの方々の専門性と機動力と、往来しているこの時間に何か付加的な価値を乗せていくことで、地域の中での安心体制というのは変わってくるのではないかなということで、そういうことができれば、ヘルパーというのはとても価値が高まるのではないかなと思いました。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
地域の当事者性の醸成という極と、それから、逆の極になるのかもしれませんけれども、特にヘルパーさんを含めた専門職の力をどう生かしていくのか。それについては、煩雑過ぎる事務手続についての反省をお役所にも若干促すということも含めて、お話がありました。
いかがでしょうか。
それでは、加藤構成員、助川構成員の順番でお願いいたします。
○加藤構成員 またちょっと事例からですが、それこそ、出口支援ということを考えたときに、例えば8050で支援に入った方で、80の方はもうお亡くなりになってしまって、50の方は何も属性がない方なのですけれども、家の中が大変な状態になっていて、机を捨てられないみたいなことでヘルプが入って、支援に入ったのですが、それのヘルプをしてくれたのは、地域住民のお助け隊みたいな人が支援に入ってくれたのです。最終的にその人は、今度はその活動に参加する当事者として地域に戻ることができたのです。
出口支援ということを考えたときに、社会とつながる第一歩になるような出口支援というのがすごく大事なのかなと思っていて、そういう意味では、地域の中に役割があったり、居場所があったり、かかわりがあるということがすごく大事で、「困難」というフレームだけではなくて「生活者」というフレームで属性が持てるということが、もしかしたら出口支援の大事な視点なのかなと少し思っていて、そういう意味で、地域の中のといったところの出口支援と、それから、もちろん問題解決型の出口支援と、両方存在しないと解決に結びつかなくて、もしかしたら、特に属性がなくて課題が明確ではない人ほど、地域の中の生活者としてのフレームとしての出口支援みたいなところが用意される必要があるのかなとすごく思ったりしています。
○宮本座長 ありがとうございました。
生活者としての属性というのが、事実上、出口としての一つの受け皿になっていくという御指摘だったかと思います。
続きまして、助川構成員、お願いいたします。
○助川構成員 ちょっといらっしゃらなくなったのですが、大原構成員のおっしゃっていただいた包括の業務の見直しの部分なのですけれども、私、包括の内々の業務は余り話していませんが、非常に多岐にわたっていて、例えば、徘回の人が警察に保護されても包括に連絡が入ります。認知症の問題でも、それから、虐待の疑いのところも包括に連絡が入ります。
そうすると、それはこちらのほうで事案として全部概要をまとめて、警察のほうに戻したり、本庁のほうに戻したり、どうしてもその業務は発生してしまうのです。
でも、一件一件丁寧にそういうことをやっていくことで、つながっていくのだと考えておりまして、その中で地域課題も見えてくるし、世帯の課題も見えてくるということで、確かに煩雑な業務ではあるのですが、そういうことは、やはり包括としては、ストップ相談を受け、また、警察との連携の中での相談を受け、地域の中でちゃんと位置づけができてくるのかなと思っています。
ただし、今、ペーパーベースの業務というのも非常に多いので、これからはもう少し業務の整理をして、簡素化できる部分は簡素化していく必要があるかなと思っています。
そのためには、業務の整理をするというだけではなくて、私たちに投げられている業務を果たして私たちがこのまま継続していいのかどうなのかという議論もする必要があると思うのです。1つには、介護予防の予防プランを全部包括が担うのが果たして妥当なのかどうなのか。専門職としての役割をもっと果たせるように、そちらのほうに少しシフトしていったほうがいいのかとか、まだまだ考えなくてはいけないところがあるかなと思っています。
なおかつ、もう一つ、余り言いたくなかったのですけれども、人材育成がすごく大変なのです。やはりいろいろな問題がかかわってくることで、包括の人材育成というのは非常に大事で、内部でのOJTで育成するだけではなく、いろいろな分野の研修会に行って、情報や知識、また、人脈がつながっていくというようなこともありますので、時間的にはそういうことにも非常に時間がとられているかなと思います。
そして、どこの機関に相談が入っても、それぞれの分野の相談機関がつながっていくというのも、出口支援のつながりだけではなく、相談の最初のところのつながりももう少し明確化していくといいのかなと。
だから、きっと子供の相談分野におじいちゃん、おばあちゃんの相談が一緒に入ったりしたときには、そちらとつながって一緒に相談するとか、実はこちらに子供の相談が入ったら、そちらのほうに協力を求めていくとか、相談機関同士の縦割りをもう少し解消する方法を考えていってもいいのかなと、今、包括の中では考えているところです。
包括に期待される部分は、やはり私たちは非常に勉強しなくてはいけないし、自分たちだけでできないところを、スーパーバイザー的な方の配置がもしどこかの部局にあれば、すごく助かるなとも考えているところです。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
包括支援センターは、やはり断らない包括相談の一つの希望の星であると思うのですけれども、であるがゆえに、包括の包括化という重い課題にしてしまうのではなくて、それこそ、そこでかかわっている人たちの思いを遂げられる形にしていくということですね。そういう意味では、ある種、業務の合理化ということも含めたアプローチになるのかなと思います。
いかがでしょうか。
では、室田構成員、お願いいたします。
○室田構成員 出口支援に関してですが、論点3で出ている具体的なメニューとして何が考えられるかということですが、正直、反社会的な取り組みでなければ全て入るのではないかなと思うのですが、ここでは恐らく、その中でも絞り込んでどういったメニューをという問いかけなのだと思います。
ただ、あらゆることが含まれるという考え方には次のような意味合いがあって、出口支援の評価という観点から少しお話しさせていただくと、2つの観点で出口支援の評価は難しいと思っています。
1つは、これは私の感覚であって、ひょっとしたら現場で出口支援をされている構成員の皆様からも御発言いただければと思うのですが、出口支援というのは、多くの場合、うまくいかないことがたくさんあって、たくさんの失敗の上にやっと何か実るというような形で支援が成立することが多いのではないかなと、私自身は考えています。
今回の資料の30ページから、具体的な事例を幾つか挙げてくださっているのですけれども、恐らくこれらの事例も、「いがぐりプロジェクト」であれば、いがぐりプロジェクトをやろうといって、最初の提案がすぐに成立したものではなくて、さまざまな紆余曲折があって、その蓄積の上にこれが成り立っていると思うのです。
そうすると、出口支援を評価するといったときに、その紆余曲折の部分、数々の失敗の部分が、先ほど宮島構成員からも時間をかける必要があるとおっしゃってくださったのですけれども、ひょっとしたら、2年間余り芽が出ない取り組みをしてきた結果として、3年目でいがぐりプロジェクトができたのかもしれない。そうしたときに、どう評価するかといったときに、最初の2年が実になるか、実にならないかはわからないけれども、そこの蓄積が重要になってくると思います。
そうすると、各地で出口支援に取り組むといったときに、それをいかに評価するかという点では非常に難しさがあるのではないかなと思います。ただ、それはやらないほうがいいという意味ではなくて、簡単ではないと。
2つ目の難しさですけれども、先ほど大原構成員が当事者性を養うことが重要だとおっしゃっていて、私もそれに賛成なのです。
出口支援の場合、わかりやすく評価されるものというのは、例えば就労に結びついたとか、サロン活動に参加したとかいう社会参加の形に結びついたというと、見えやすく可視化しやすいので、評価に結びつきやすいと思うのですけれども、相談してきた人の当事者性が非常に強くなったとか、先ほど堀田構成員からは主体性という話もありましたが、主体性がより強くなったという部分は可視化するのが難しいので、そこの部分をいかに評価するかということも、出口支援において難しくなるのではないかなと、そのように思います。
そういった上で、出口支援で重視するポイントというのは、どんなメニューを提供するかというよりも、むしろいかに現場で裁量を持った出口支援をすることを支える仕組みをつくるのかということがより重要になるのではないかなと、そのように思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
出口支援の難しさを2点にわたって御指摘いただいて、これを乗り越えるためにも、現場の裁量をどう保障できるのかというお話だったかと思います。
いかがでしょうか。そろそろ時間も来てはいますが、もし皆様のほうでこれは議論をしておきたいということがあれば、ぜひ遠慮なく挙手をしてください。
平川構成員。
○平川構成員 出口支援のあり方から少し外れるかもしれないのですけれども、自治体の取り組み事例、特に30ページを見ていて気付いたことがありまして、出口支援のさまざまな社会地域資源をどう考えるかというのを考えたときに、改良センターという存在に気付きました。
農業改良普及センターのことだと思いますが、どうしても我々、厚生労働関係の社会資源ばかりを見がちなのですけれども、農業改良普及センターというのは、最近、私はしばらく北海道から離れているので承知していないのですが、昔は生活改良普及委員という方もいました。
農村の地域生活全てをカバーするという、ある意味、農業・農家に新規参入された方の農業指導のほかにも、生活の支援をする役割がありました。生活の支援の中から、例えば北海道などは、とてつもなくおいしいアイスクリームができて、それを商品化したというような例もありますけれども、それは置いておいても、農業改良普及センターというすばらしい社会資源があったなというのを、今、私、地域資源をこれで発見したということがあるかと思います。
そういう資源をどうやって発見していって、それも出口につなげていき、一つの支援、一つのメニューにしていくかということが重要かなと思っています。
それに続いて思い出したのが、実は松戸市の本郷谷市長と立ち話をしているときに、松戸市は人口50万なのになぜ各地域でいろいろなことができるのでしょうかと聞いたら、それは松戸市の地域資源、地域におけるすばらしい地域活動があって、それを基盤に活動ができてきたのだよと本郷谷市長は言われていたので、やはりそういう社会資源、地域資源の発見ということがそれが出口につながっていく一つの材料になるかなと思いました。
そういった意味で、逆に言えば、好事例というのは多く出てくるのですが、これはできるかどうかわかりませんけれども、いい例も悪い例も含めてデータベース化していくことが、先ほど知久部長がおっしゃっていましたが、業務の標準化につながっていく可能性があるのかなと思った次第であります。
出口支援とは少しずれましたけれども、とりあえず30ページの資料を見てあっと思いついたことを、感想ということで言わせていただきます。
○宮本座長 私も平川構成員と全く同感でございまして、まさに出口支援のリソースというのは、義務的経費にかかわる福祉部局と、投資的経費にかかわる経済部局、産業部局をどう架橋していくのかという、実は相互に大いに裨益するはずではあるのですけれども、なかなか現実にはハードルが高い面もございまして、ここをどのように突破していくのかということになるのかなと思いました。
いかがでしょうか。
それでは、予定の時間を過ぎておりますので、きょうの審議はそろそろ終了ということにさせていただきたいと思います。
では、事務局から次回の案内をお願いいたします。
○鏑木包括的支援体制整備推進官 次回ですけれども、6月25日火曜日、15時からの開催を予定しております。
会場等の詳細につきましては、追ってまた連絡をさせていただきます。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございます。
25日というと、もうすぐでありまして、大変頻度の高い開催になっておりますけれども、引き続きどうか御協力のほど、よろしくお願いいたします。
きょうはここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

照会先

社会・援護局地域福祉課

(代表電話) 03-5253-1111(内線2233)