2019年8月2日 第2回厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)有識者懇談会 議事録

日時

令和元年8月2日(金)10:00~12:00

場所

厚生労働省 共用第6会議室

出席者

<構成員(五十音順、敬称略)>

 

<オブザーバー(敬称略)>

議題

1 各種報告等における再発防止策のポイントについて
2 第1回有識者懇談会を踏まえた論点整理(各委員の主な意見)について
3 厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)の策定に向けた提言項目(案)について
4 その他

議事

 
○武藤政策統括官付参事官 皆様、おはようございます。
それでは、定刻より少し早いですけれども、おそろいでございますので、ただいまから第2回「厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)有識者懇談会」を開会させていただきます。
委員及びオブザーバーの皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
本日の出席状況でございますが、川口委員が御欠席でございます。
なお、カメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○武藤政策統括官付参事官 それでは、早速でございますが、以後の進行につきましては、小峰座長にお願いいたします。
〇小峰座長 どうも皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
第1回の有識者懇談会におきましては、委員の皆様から大変貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。
今回は、第1回の御議論を踏まえて、大きく分けて2つ、各報告書等における再発防止策のまとめ、それをどう考えるか。
もう一つは、今後の統計をどう扱っていくかという、今後の方策についての御意見。これは、皆さんの意見を整理したものと、それから、神林先生のほうから資料をまとめていただいていますので、これを後で説明していただきます。
こういった資料をもとに、今後、作成することになる厚生労働省の統計改革ビジョン2019に向けた政策提言というものをまとめていきたいということで御意見をいただきたいと思います。
それでは、議事に入りたいと思います。
今日は、委員の皆様に議論の時間を十分確保するために、議事の1から議事3、全部合わせて説明をお願いして、最後にまとめて議論をするということにしたいと思います。
それでは、まず、議事の1から3の資料につきまして、事務局からの説明をお願いいたします。
〇菱谷大臣官房人事課調整官 調整官の菱谷でございます。
それでは、資料に従いまして、御説明させていただきます。
まず、資料1をごらんください。
「各種報告等における再発防止策のポイント」でございます。
こちらにつきましては、前回の有識者懇談会におきましても、神林委員より、各種報告等における再発防止策を最大公約数の形で、まず、まとめてみてはどうかという御発言もいただいておりました。
各種報告、提言、建議等を事務局の方で読解いたしまして、そこに記載されている事項を、こちらに毎勤、賃構、建議等と書いてございますけれども、それらをまとめていくことといたしました。
その際に、第1回有識者懇談会でも、特別監察委員会の荒井代理から御発言いただきましたように、厚生労働省として、公的統計の意義や、その重要性に対する意識の低さ、幹部職員の公的統計に対する無関心、組織としてのガバナンスの欠如等が厳しく御指摘されておりました。
こうした点を踏まえまして、資料1につきましては、厚生労働省としての再発防止策を検討していく際には、根本厚生労働大臣の国会答弁にもありますように、統計に関する認識・リテラシーの向上、統計業務の改善、組織の改革とガバナンスという3本柱に即しまして、各種提言を整理してみました。
まずは、「統計に関する認識・リテラシーの向上」から、柱立てとして整理しております。
1ページ目でございますけれども、各種提言等から、「研修の実施」「人事交流の推進」「統計職員のキャリアパスの形成の見直し」といったものに、大体類型化されました。
その中で「研修の実施」につきましては、幹部職員も含め、統計の基本知識の習得や意識改革の徹底。
責任の自覚とガバナンスの強化を目的とした管理職を含めた研修の強化。
計画的な研修受講。長期研修等を受講しやすい環境の整備。
統計学だけではなく、調査方法論に関する教育も必要などの御指摘をいただいております。
「人事交流の推進」につきましては、他府省や民間の統計専門家などとの人事交流、開かれた組織への変革も必要。
統計人材の政策部門等における勤務経験を計画的に付与していくことなどが指摘されております。
「統計職員のキャリアパス形成の見直し」につきましては、職員の統計人材プロファイルの整備等により、統計人材を計画的に育成していくこと。
基幹統計などに関しましては、統計業務経験者を中心に作成することを基本とすること。
統計の専門知識や業務経験が評価されるような人事運用・仕組み(処遇等)を検討していくことが重要と指摘されております。
2つ目の柱でございます。
「統計業務の改善」につきましては、大きく6つの項目で構成しております。
1点目が「統計ユーザーの視点に立った情報公開」でございます。
こちらにつきましては、調査設計、推計方法など、詳細な調査内容の正確かつ迅速な公開。その際には、標本抽出や復元推計の方法、目標精度・回収率等をインターネット上に掲載していくこと。また、調査票情報の利用を一層促進していくことなどが指摘されております。
2点目でございますけれども「適正な業務ルールに基づく業務の遂行」につきましては、調査計画を変更する場合の手続のルールの明確化。
調査内容や手法に計画との乖離や誤りなどを発見した場合、速やかに問題を報告し、迅速に対応するための体制整備。
一般統計を含めた業務マニュアルの整備。
結果数値等の誤りを発見した場合、再発防止策等の検討を行うことなどを内容とした対応ルールの策定などが指摘されております。
3点目でございますけれども「システムの見直し」につきましては、ICTを最大限活用して、手作業のデジタル化、誤りが発生しないようなシステムの見直しを検討していくということが指摘されております。
また、COBOLに代表されますような、ブラックボックス化したシステムにつきましては、容易に改修等ができるシステムへの計画的な移行を早急に検討していくことが指摘されております。
4点目でございますけれども「統計作成室における業務見直し」につきましては、システムによるエラーチェックの実施の徹底。
結果数値等の誤り分析情報の共有などが指摘されております。
また5点目でございますけれども「調査実施機関との連携」につきましては、国と地方自治体との関係を風通しのよいものとし、速やかに相互に指摘し合える体制の構築。
建議におきましては、調査員の任命状況の確認、統計調査員による適切な調査を確保するための措置を調査の事務手引き等において定めることなどが指摘されております。
6点目でございますけれども「統計等データの一元管理」につきましては、補助情報を含む必要なデータの保存ルールを整備していくことが指摘されております。
3つ目の柱につきましては「組織の改革とガバナンスの強化」でございます。
こちらの中につきましては、4つの項目で構成しております。
まず、1点目でございます。
「組織改革、省内における統計監査体制、相談窓口の確立」でございます。
こちらにつきましては、建議におきまして、PDCAサイクル、分析審査等に必要となる体制(分析的審査担当官等)を速やかに配置。
こちらにつきましては、先般、既に分析的審査担当官が配置されているところでございます。
また、調査内容の抜本的な見直し、調査手法や統計作成プロセス・システムの抜本的な見直しなどを行う改革のエンジンとなる企画担当や、政策部局が統計を作成する際の相談・支援窓口の計画的な整備などが指摘されております。
2点目でございますけれども、外部有識者の積極的な活用につきましては、他府省や民間の統計専門家などとの人事交流などを通じた外部チェック機能の導入。
若手研究者等の任期付職員としての採用や学界との交流などが指摘されております。
3点目でございますけれども、「統計部門のリソースの拡充」につきましては、統計部門の業務遂行能力の強化及びそのためのリソースの拡充などが指摘されております。
また、4点目でございますけれども、統計委員会との連携強化につきましては、政府全体の専門家集団が精度の評価、統計の改善のために組み込まれている協力体制を構築していくことなどが指摘されております。
以上が、各種報告等における再発防止策のポイントでございました。
資料2に移ります。
資料2でございますけれども、こちらにつきましては、第1回懇談会を踏まえた論点整理ということでございます。
こちらにつきましては、各委員の御意見を、先ほどの3本柱と、そこに収まらない意見との別に整理しました。具体的には、1つ目の柱として「総論」。
2つ目の柱として「今回の統計問題の総括」。
3つ目の柱として「今回の統計問題の総括を踏まえた再発防止策」としております。
具体的には、先ほどの3本柱の再発防止策に即して整理しておりまして、その中で、4本目の柱として「『統計行政のフロントランナー』を目指した取組」を追加し、3本柱で収まらない先進的な取り組みとして整理しております。
4つ目の柱が、統計改革の推進体制、ビジョンのフォローアップ体制について整理しております。
以上ですけれども、まず「総論」でございます。
まず、川口先生から統計には、公共財としての側面があるとの御指摘がございました。
また、神林先生からは、統計情報が国民から負託された財産であるとの認識を持つ必要があるとの御指摘がありました。
それから、EBPMとして公正かつ透明な政策立案が強く求められる中、統計の社会的使命は、一層重要性を増している。
統計作成の独立性確保が重要。
また、統計は国の志でもあると。行政は、国としてどういう課題を抱えているかを常に考える必要があって、今ある統計が必ずしも十分ではない場合については、政策立案等の観点から統計を進化させていかなければならないといった御指摘もいただいております。
また、統計の利用を通じて統計の質を向上させていくという視点で改革案を考えるべきという御指摘もいただいております。
また「今回の統計問題の総括」につきましては、今回の毎勤問題で最も問題とされるのは、調査方法の変更が担当部局の独断で行われ、公表されなかったこと。
また、こういった中で、調査の個票が外部の目に触れる機会がなかったことといったことも原因になっている。
また、所管統計について統計の専門家にふだんから相談する意識が、厚生労働省として欠けているのではないかといった厳しい御指摘もいただいております。
こうしたご指摘を踏まえた再発防止策でございます。
こちらは、先ほどの1つ目の柱が「統計に関する認識・リテラシーの向上」でございますけれども、その中の「研修の実施」につきましては、統計教育の体系化、経験を蓄積できる体制の構築などが指摘されております。
「人事交流の推進」につきましては、先ほど、既に御説明したような意見が記載されております。
「統計職員のキャリアパス形成の見直し」につきましては、統計の専門家、経済的な見地から利用する専門家が省内でキャリアアップでき、リスペクトされる環境を整備していくこと。
統計専門職を系統的に育成し、専門性を継承させていくことの重要性が指摘されております。
一方で、小さな組織で、統計の専門家やシステムを理解できる人を抱えていくというよりも、ガバナンスやシステムを使いこなせるような人材を育てていけばいいのではないかといった御指摘もいただいております。
2点目の柱「統計業務の改善」につきましては、1点目の「統計ユーザーの視点に立った情報公開」といたしましては、研究者等が統計の誤りを早期に発見できるよう、個票データを利用しやすい環境を整備していくこと。
また、業務データを研究に利用できないといった課題も対応していく必要があるといった御指摘をいただいております。
2点目でございますけれども「適正な業務ルールに基づく業務の遂行」につきましては、結果数値等の誤りを発見した場合の対応ルールの策定、誤りを発見できるようなチェック方法の改善などが指摘されております。
「システムの見直し」につきましては、統計に関するシステムを最新のものに見直すこと、その導入に向けた研究や予算が必要で、それを使いこなす職員の育成も重要だと。
システム全体をブラックボックス化させないための取り組み。
システムによるエラーチェックの実施の徹底などの重要性が指摘されております。
「統計作成室における業務見直し」につきましては、省内に統計の専門部局を創設し、厚生労働省所管の統計を集約させることが重要だといった御指摘をいただいております。
また「調査実施機関との連携」につきましては、調査を実施した民間事業者、地方公共団体等から調査実施後に、今後の調査プロセスの改善に向けた意見を聞いて、調査設計等に反映させるなど、調査プロセスの改善の参考にしていくべきではないか。
あるいは、地方支分部局等とのコミュニケーションエラー等が生じないよう、関係者間の連携の強化が重要だといった御指摘をいただいております。
また「統計等データの一元管理」につきましては、集計データは、電子データ化をすることを基本として、保存期限の見直しもあわせて行い、附属情報の保存と提供も検討していくといった御指摘をいただいております。
また、3本目の柱である「組織の改革とガバナンスの強化」につきましては「組織改革、省内における統計監査体制、相談窓口の確立」といたしまして、上司、部下との情報の共有組織をちゃんとしていくということ。
それから、代理決裁を原則認めないとすること。
それから、PDCAサイクルの確実な実行によるガバナンスの強化などが指摘されております。
2点目ですけれども「外部有識者の積極的な活用」につきましては、統計学者あるいは統計を十分に利用している経済学者など、専門家との協力・相談体制が常に必要であること。
組織外のコンサルティングやシステムをつくる会社と契約していくようなことが重要ではないかといったような御意見をいただいております。
3点目の「統計部門のリソースの拡充」につきましては、必要な人材の確保、適切な予算の編成が重要だと。
それから、最新のシステム導入に向けた研究、必要な予算を確保していくことが重要だと御指摘をいただいております。
また「統計委員会との連携強化及び政府方針に対する迅速な対応」といたしましては、やはり、統計委員会と密に連絡をとるような体制を整備していくことが重要だと御指摘をいただいております。
また、政府全体として、統計組織の再編成等を通して、統計にかかわる総合調整機能を強化していくべきではないかといった御指摘もいただいております。
以上の3本柱に入らないような取り組みを4つ目の柱として「『統計行政のフロントランナー』を目指した取組」として整理をさせていただいておりますけれども、大きく2つの御指摘がございました。
1点目は「個票データの一層の有効活用に向けた取り組みの推進」でございます。
こちらにつきましては、個票データを広く活用できるように、オープンにしていくべき。
業務データを研究目的に使うことができるような仕組みを構築すべきといった御指摘をいただいております。
2点目が「EBPMの推進(EBPMの実践を通じた統計の利活用の促進)」でございます。
こちらについては、厚生労働省内において、EBPMの推進を一層図っていくべきだという御指摘。
それから、EBPMのフロントランナーとなるためには、厚生労働省が保有する大量データを用いて、実際にEBPMを実践していくことが有効だといった御指摘をいただいております。
また、4つ目の柱になりますけれども「統計改革の推進体制、ビジョンのフォローアップ」につきましては、基幹統計については、統計の専門家を含む常設の研究会が必要ではないか。
あるいは、統計学、経済学などの専門家と日常的に意見交換ができる仕組みをつくるべきではないかといった御指摘をいただいております。
以上を踏まえまして、資料3といたしまして、各種の報告等における再発防止策のポイント、各委員の主な意見を踏まえて、厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)の策定に向けた提言項目(案)を整理いたしました。
これは、提言の目次のようなものでございます。
「III 今回の統計問題の総括を踏まえた再発防止策」のところに書かれておりますのが、先ほどから説明をしております、再発防止策の3本柱と、そこに入らない4つ目の「『統計行政のフロントランナー』を目指した取組」を記載するということになっております。
その前に、再発防止策の前提となる、統計問題の総括というのが2つ目に来ております。
一番最初といたしまして、統計の重要性、再発防止、統計改革に向けた基本的な考え方といったような「はじめに」をつけております。
こういった再発防止策を進めていく上で「必要な統計改革の推進体制、ビジョンのフォローアップ」につきまして、4つ目の柱としております。
最後に「結び」という形で提言項目(案)として、今般、事務局(案)として提示させていただいております。
私からの説明は、以上でございます。
〇小峰座長 ありがとうございました。
それでは、次に、本日は川口先生と神林先生と中室先生の連名でペーパーをいただいておりますので、こちらを御説明いただいて議論をしたいと思います。
御説明は、神林先生ですか。
〇神林委員 はい。
〇小峰座長 それでは、お願いします。
〇神林委員 少々お時間をいただきます。
前回のこの懇談会の後、川口さんと、中室さんと、いろいろとお話をする機会がございました。
その中で、ある程度自分たちの方で、こういうことをした方がいいのではないかというのを、まとめて事務局の方に提案をした方がいいという判断に至りまして、3人で相談をいたしまして、今、資料4として皆様の手元にお配りしました構成案というのをつくってみました。
前提としているのは、事務局の方で、資料3で出していただきました、これが提言項目になっているわけですけれども、このような感じで、自分たちの方はこういう構成した方がいいのではないかというのを考えたわけです。
多少、事務局の方と視点が異なることがありますので、この2つの資料は、全く交差するような格好になっていると思いますので、両方を見ながら議論を進めていければと思います。
私たちの方の資料4の方は、ごらんいただいてわかると思うのですけれども、大きくは3つの構成になっておりまして、まず最初に、統計問題に関する総括というのをきちんとした方がいいというのが最初に来ます。
そこから、現実的な組織改編あるいはビジョンの構成をするために、一体何をすればいいのかということ考えると、その基礎的な考え方として、IIにありますように、行政組織と統計情報との関係というのをきちんと整理しておくべきだというのが出発点になっている。
そこから具体案として、A案、B案という2つの組織の改編についての具体案というのを提示するという格好になっています。
あとIVとして、アネックスで厚生労働省と外部との関係について議論を少しつけ足しておりますけれども、ここはまだ自分たちの方でもはっきりと整理をつけられておりませんので、少し特出しという格好になっております。
以上、一つ一つ少しかいつまんで説明を申し上げたいのですけれども、一番最初の「統計問題に関する総括」というのは、事務局でつくっていただいたようなことが中心になっております。各種の建議、報告書等々から指摘された問題点というのをまとめて、それに対する再発防止策というのを書くというのが基本なのですが、私たち3人の中で、これらの報告書を見てみる、あるいはまとめてみると、少し補足した方がいいのではないかという論点が1つ見つかりました。
それは、こういった報告書あるいは建議というのは、専門家がそれぞれ書いていますので、例えば、統計学会から出てくる報告書、建議等々は、統計学の観点からまとめられておりまして、行政監察から出てくるものは法律の観点からまとめられております。
ですので、法的にどういうふうになっているのか、統計技術的にどういう稚拙なことをやったのかというのはわかるわけなのですけれども、実際、その担当者が、なぜそういう判断に至ったのかということは、実はよくわかっていません。どういう根拠で、何をどういうふうに判断したのかというのは、1つは記録がないということ。もう一つは報告書等々の人たちがそういうことに関心がない。結果として、法律に違反したかどうかというのが関心の中心で、それがなぜ行われたかということは、余り関心がなかったと自分たちは解釈しています。そこが追加的な論点になるだろうと私たちは考えました。
それはどうしてかというと、実は統計問題というのは、政府を横断的にどこの部局でも起こっているということは、統計委員会の基幹統計等々の調査でわかっていることなのですが、なぜか厚生労働省の労働部門に集中的に起こっている。これはなぜかということをちゃんと考える必要があるだろうというのが、Bのところで述べているものです。
報告書等々は、意識が欠如しているとか、そういう表現で言っているわけなのですけれども、意識の問題であれば、例えば意識が高い人がそこに来れば、統計問題というのは解決していたのかというふうに言われると、自分たちは、多少そこは違和感があるところです。
それはどうしてかというと、恐らくこの問題というのは、2ページ目の3ポツのところに書きましたように、2つの問題というのが背景にあって、1つは能力不足の問題。もう一つは、現場の人たちのインセンティブの問題だというふうに考えています。
この2つの能力不足の問題と、インセンティブの問題を解決しないとどんなガバナンスのシステムをつくったとしても、どんなにがちがちな統計法をつくったとしても、恐らく問題が起こり得るというのが私たちの出発点とお考えください。
そのために、ある程度独自といいますか、このことは話しておいた方がいいという観点を、その後に2つ挙げております。
1つは、これは確認なのですけれども、統計法というのは、今の新統計法というのは、旧統計法と観念が全く違う法律であるということは、ぜひ強調したい。
そこに書いてあることを、繰り返しになりますけれども、基本的に日本の統計というのは、行政の観点で発展してきた統計です。
そこから脱却をするというのが、新統計法の根本にある精神だったわけなのですけれども、これが必ずしも行き渡っているわけではないというところが問題点の1つと考えております。
ただ、これはそこに書いてありますように、自分たちの見方としては、統計委員会にも責任の一端があって、統計法が大きく変わったというのは統計委員会が身に染みてわかっているはずのことなのですけれども、それを各部局に行き渡らせる、その責任というのはある程度統計委員会も負っていたと、自分は思います。
自分たちが所管している新統計法の精神が現場でリスペクトされていないということについて、もっと真剣に統計委員会はかかわるべきであったということが、ここに書いてあることです。
もう一つは、労働政策の独自性というのを、どこの報告書も実は全く言及していません。ここは私たちが少し危惧しているところなのですけれども、労働政策というのはそこに書いてありますように、当事者の代表を通じた、公労使の代表を通じた労働政策審議会という非常に大きな政策決定のバックボーンというのがあります。
昨今、最低賃金が中央の方で目安が決められましたけれども、あれも公労使の三者構成で決めていくという、官邸がいろいろ言ってはいますけれども、基本的にはこの公労使で決めるという、そういうシステムがどこの分野でも基本的に動いています。
これが労働政策の独自性で、そうなると結局何が出てくるのかというと、どんなデータを持っていたとしても、結局労使の妥結で労働政策が決まるので労使自体がデータをリスペクトしないのであれば、どんなデータで説得しようと余り関係がない。逆に言うと、データがなくても労使の説得することができれば、それでよいという仕組みになっているのがこの労働政策審議会です。
ですので、こういう労働政策の独自性というのがあって、それがデータを軽視するという現場のインセンティブと、恐らく表裏一体になっていたのではないかというのが、私たちの見立てということになります。
ですので、この辺の観点を取り入れながら、これからシステムといいますか、制度というのを考えていく必要があるだろうということで、次の「行政組織と統計情報の関係の再整理」に移るわけなのですけれども、ここで言いたいことというのは、繰り返しになりますけれども、能力の向上をどういうふうにするのかということと、あとは制度的関与というのを、どういうふうにするのかと、この2つの関係で、これからの制度改革というのを考えていった方がいいだろうということを提言しております。
主な点というのは、そこに書いてあると思いますので、ざっと目を通していただくとおわかりになるかと思います。
少し時間を使いたいのは、その後の制度改革の提案というところなのですけれども、先ほど冒頭、大きく2案提示をしていいますということを言及いたしました。
最初のA案というのは、お題を言うと、基盤的統計の統計委員会への移管と、調査局の設立ということを書いてありまして、最後のほうに、多少カリカチュアライズした図をつけております。
これが言わんとすることは、一つ統計をざっとながめたときに大きく3つの種類に分かれるだろうと。
1つは基盤的な統計。
もう一つは、政策的な統計というふうにここでは示しておりますが、というべきもの。
そして最後が、業務に近い業務統計と呼ばれるもの。
基盤的統計というのは、現行の統計法で言うところの基幹統計と似たような関係にあるわけなのですけれども、社会経済を考えるときに必ず必要になる、非常にかたい、そして正確性を旨としなければいけない数字。つまり、極端に言うと、外部から捜査が一切できないと、そういう情報の類いであるというのが、こういう基盤的統計と呼ばれるものだろうと。
もう一つ、政策的統計というのは、ある特定の政策目的あるいは立案に資するようなデータを集めなければいけないというのが、この政策的統計というふうにカテゴライズされるものだろうと考えております。
極端に言うと、基盤的統計というのは、一回つくってしまったら、それを正確に遂行するということが目的なのであって、政策的統計というのは、年々歳々想起してくる政策目的を実行するために、どういう情報が必要なのかということを常にウォッチしていって、それで改定をしていかないといけないという類いの統計であろうと考えております。
業務統計は、その政策を遂行するための統計になるわけです。もちろん、おわかりになっていると思いますけれども、これは極端に3つに分けている、いわゆる理念系と呼ばれるもので、あらゆる統計は、この3つの要素の複合体としてあるわけなので、はっきりと分かれるわけではないですけれども、説明のためにはある程度はっきりと分けておいた方がいいだろうと考えました。
A案というのは、統計情報を3つに分けて、それぞれに適した人材というのをそこに張りつけるべきだと考えるのがA案の骨子となります。
ですので、基盤的統計ということに関しては、統計学をきちんと学んで、統計的にいかに正確で、かつエフィシエントな効率的な統計をつくるのかということを目的にした人たちというものの集団にする。
政策的統計というのは政策立案にかかわる人たちが、いかに公平公正な、あるいは効率的な政策を設計するかと、そういう人たちがこの政策的統計というのを管轄する。
行政統計というのは、その政策を遂行する人たちという格好で、それぞれに適した人材をこういうふうに張りつけて、それぞれ組織を独立させるというのが案ということになります。
ただ、先ほどの論点の1つにありましたように、統計学を専門としている統計的人材というのを厚生労働省の中だけで、キャリアとして育て上げるということができるだけのサイズがあるのかそういうことは、多分問題になるのだろうと思います。規模の経済が働きますので。
そう考えると、A案の骨子というのは、統計的人材かつ基盤的統計というのは、もう厚生労働省から離してしまって、統計委員会がありますので、統計委員会がそれを専門的に管轄するというふうにお任せをした方がいいのではないかというのが、A案の骨子ということになります。
ですので、統計的な人材というのを厚生労働省が必要とするというのは、恐らく必要最小限の場面になるのであって、基本的に、分析的人間、政策立案する分析的な人材というのが一般統計を見ていくということになるだろうというのがA案の骨子ということになります。
もう一つは、EBPMです。政策立案との関係で、この統計というのをきちんと利用していくというようなことがないと、正確な統計をつくるあるいは統計をつくることによって、あるいは統計を利用することによってリスペクトする、キャリアとして評価されるということを担保するのは難しいだろうと。
その観点から言うと、今のEBPMがなぜ政府全体で動かないのかということとも少し関係するのですけれども、EBPM部局と呼ばれるものと、この政策的統計を管轄する部局、そして分析的人材というのが集中する部局というのを重ねて、そこにEBPM機能というのを集中させて、それを労政審の事務局というふうに兼ねさせるというのが、最も理念系としては、理想的なのではないかというのがA案の1つのポイントということになります。
問題は、政策的な統計というのを分析的人間に任せると、ある意味、それはマニュプレートするインセンティブというのが強くなるわけです。こういう政策をやりたいというのが、もしその人に強くあるとしたら、そういう結果が出るような統計をつくろうということを許してしまうことになりますので、そこをどういうふうに公平性を保つのかというのが、この案の1つの考えなければいけないことだろうと考えております。
その手の対策といたしましては、利用です。アクセスをいかに自由にするのかというところで対応するというのがポイントかと思います。
B案の方は、そういう意味では、基盤的統計というのと政策的統計というのを、A案ほど峻別をしないというところが大きな違いだろうと思います。
逆に言うと、基盤的統計というのを運用するときに、統計的人材というのが、専門的に、そこにかかわる100%の人が、統計的人材である必要は恐らくないだろうと。基盤的統計と言えども、必要によってはある程度改定を重ねるということが必要になってくるだろうし、そういう場合には、統計的人材と、分析的人材というのを混ぜながら、この基盤的統計というのを管理していく必要があるだろうと。
そう考えると、基盤的統計を省の外に出してしまって、統計的な、専門的な人だけに任せるというのは恐らく効率が悪くなる。
そういう場合には、省内に基盤的統計と政策的統計、ここでは基幹統計と一般統計と書いてありますが、それを両方維持していくということが必要になるわけですけれども、ただ省内では、そういう統計的な部局というのを調査的な部局あるいは分析的な部局とは切り離して組織化するべきだろうというのが、このB案のもう一つの骨子ということになろうかと思います。それが統計の一元的管理というふうに書いてあるものです。
後ろの方で、こちらのほうの間違いで、B1案とB2案というのを連記しておりますが、A案のほうは、今、説明しましたように、基盤的統計を外に出すということが書かれておりまして、B1案とB2案というのは、全ての統計を厚生労働省の内部で管轄をしようというものでございます。
B1案とB2案の違いというのは、統計を管轄する部局、統計課というふうに仮に仮称しておりますが、それと調査を担当する部局、分析を担当する部局の距離をどれぐらいとるかというのが1つのポイントで、B1案というのは距離を近くするという格好になります。B2案のほうは、ある程度距離をとるという考え方になろうかと思います。
昨今言われている用語ですと、統計のユーザーとメーカーの距離をどういうふうにとるのかということに近いと考えております。
以上が、A案とB案の骨子ということになりまして、あとは、厚生労働省の外部との関係なのですけれども、これはEBPMと労政審との関係で労政審の事務局というのをきちんとデータを管轄する部局とかなり近く設定して、データを使って労政審というのを動かしていく。この中で強調したいのは労使協議というのは、単純に密室で労使協議をするというのではなくて、エビデンスに基づいて労使協議をしてくださいということをきちんと表明するというのは重要なことだと思います。
労働政策審議会の場合は、この検討会からはかなり話題がずれますけれども、その代表性について疑問が呈されているということがあろうかと思います。大企業、正社員中心の労働政策審議会になっておりますので、ただ、エビデンスに基づいて労使協議をするのであれば、それは代表制に対する疑問というのを緩和する一つの道筋にもなっているはずです。
ですので、労働行政が担っている労働政策審議会のシステムというのと、統計データをいかにきちんと利用するのか、そして、その利用として統計データの正確を期していくということを一体にして組織というのをつくっていくということができれば、恐らくこうした密室、密室はなくならないとは思いますが、スキャンダルというのは最小化することができるのではないかと考えております。
済みません、少し超過しました。
〇小峰座長 ありがとうございました。
以上で説明は終わったわけですが、今後の進め方ですけれども、最初に今の神林委員からの説明が全般的にまたがったものになっておりますので、これについて質疑をいただいて。
〇神林委員 中室さんのほうから、何か補足があれば。
〇小峰座長 何かありますか。
〇中室委員 私は大丈夫です。
〇小峰座長 いいですか。
では、まず、神林さんが御説明いただいたものについて御意見をいただいて、その後、事務局のペーパー等に基づいて、再発防止策の部分、それからフロントランナーの部分ということで議論を進めていったらどうかと思います。
最初に、今の神林委員からの御意見につきまして、御質問、御意見があればどうぞ、お願いします。
〇吉川委員 所用で、まだ時間がありますが、今日は11時半ぐらいに早退させていただきますので、神林先生、あと、今日御欠席のようですが川口先生、中室先生がまとめてくださったペーパーというのは大変有益なペーパーだと思います。
今、座長のほうから、これに対するコメントということだったのですが、関係しますので、少し周辺のことも含めて発言のお許しいただきたいのですが、幾つかございます。
今回問題になっている統計の問題というのは、私の認識では、大小2つあると思っています。大小の小は、大事ではないという意味ではなくて、大はマクロというのか、我々が使いなれている言葉だと、小はミクロということで、言いたいことは、マクロというのは、国全体の統計制度とか、あるいはシステム全体にかかわる問題、小というのはミクロという意味で、1つの省の中でのあり方とか、業務というようなことで、初めにも申し上げたとおり、大小というのは、大が重要で、小は重要ではないという意味ではありませんが、とりあえず、2つのレイヤーがあると考えています。
神林さんたちのペーパーにもありましたが、大の問題に関する認識というのは、今から言うとも13年くらい前ですか、旧統計法を当時60年ぶりにくらいに改正したときにも、十分そういう認識が持たれていて、そういう認識のもとに統計法の改正というものがなされたわけです。
このペーパーの中にも、新しい統計法というのは、統計のそもそもの考え方というのが大きく変わったわけですが、法律の上では変わっても、それが行政組織の中では必ずしもそのスピリットがシェアされていなかったという御指摘もあると思うのですが、そういうことなのかなと、美添先生とか、私は、当時の統計法の改正にかなりかかわりましたので、残念だけれども、そういうことかと。
改めて、そういうことを確認しなければということで、今回事務局の用意されている、また、神林先生たちの提言でもあるのだろうと思うのですが、資料3の、事務局の初めにあった提言の1つの骨子案ですか、これは「はじめに」の総論みたいなところにかかわる話だと思うのです。
私も、資料1だったか、サマリーに、統計は国の志だという発言を前回の会議でもさせていただいた。
これが、ある種の精神論だととられると少し困るところがあって、そこにかかわることで、繰り返しになりますが少し発言をさせていただくと、このごろよく使われる言葉で、エビデンス・ベースト・ポリシー・メーキングとポリシー・メーキングはエビデンスに基づかなければいけないと、エビデンスは、結局は統計になるというようなことが言われるのですが、これは言葉としては、エビデンス・ベーストというのは新しいのですが、これこそが実は人間の歴史の中でまともな国の中で、続いてきたことなのです。
象徴的には、これも美添先生を前に、ちょっと恐縮なのですが、我々はウィリアム・ペティーというのを、竹内啓先生という、統計委員会の初代の委員長にもなっていただいた、統計の大先生に教えられたものですけれども、アダムスミスの前に、イギリスの巨人ということですね。専門は外科医ですが、ともかく統計学の父、場合によっては労働価値説の生みの親という意味で、経済学の父とも言われる。
このペティーが言ったことは『政治算術』という本の中で、要するに、それまでは政策の決定あるいは国の名というのはレトリックに非常に頼っていた。これは山よりも高く、海よりも深いとか、この手の雄弁なレトリックに頼っていたのは、それは全部間違いで、全てを数字であらわさなければいけないというのが、ペティーの『政治算術』のスピリットということなのです。
これは、昔話ではなくて、今、神林さんのペーパーの御説明をいただいて、こちらの労働政策審議会の話が出てきていると思うのですが、密室での議論というのは、結局は力関係ですから、いわゆる関係者の人たちの気合みたいなもので決まるというような話は、声の大きさというのはペティー時代のあれで言えば、レトリックみたいなもので、力関係で決まる。
まさに、それではだめで、数字であらわすというのがペティーのスピリットだったというわけです。
実はさらに話を戻せば、別にペティーの前からエビデンス・ベーストというのは、まともな国では幾らでもなされていたので、それはなぜかというと、まともな国では、やはり国家というところから、古代から課税と徴兵の問題というのが国の存亡のもとであって、したがって、課税目的、徴兵という2つの大きな国家の柱、それは、結局は、とりわけ人口統計に基づかざるを得ないということで、古代から、そういう国では、そうした人口統計が整えられてきたわけです。
とりわけ、中国では、既に世紀の変わり目くらいからは、いわゆる正史の中に、食貨志という経済史ですね、そのところに人口統計というのがあって、我々が歴史で習う中国の場合には均田法ですか、日本では、それを輸入した班田収授というのは、国が全部国有で、土地が国有で、それを貸与するというのは学校で習うとおりですが、その制度がまともに回るためには、デモグラフィーに関する統計が整備されていなければ、国自体が成り立たないわけです。
結果、日本の場合には、奈良時代が人口統計のピークだった。平安時代に入ると、もうぼろぼろになっていくということですが、それは、国の衰えと並行して人口統計がぼろぼろになる。因となり果となりということかもしれません。
話は長くなりましたが、言いたいことは、単なる精神論を超えて、統計というのは国の大本なのです。それを今はエビデンス・ベーストというような言葉で表現して言っているのですが、そういう新しい言葉を使わなくても、統計というのが国の基であると。
明治以降、日本もまさにそうした認識を強く持って、明治2年とか3年とういうころから、伊藤博文、大久保利通、大隈重信と、そういうような人たちによって、そうした理念というのは非常に強く持たれて、ドイツの影響、イギリスの影響、両方あるわけですけれども、とにかく統計整備というものが進められてきたと。それで戦後に至ったと。
もう長くなっていますのであれですが、そこがぼろぼろになってきたということで、十数年前の統計法の改正というのは、1つ大きく理念も変えたわけです。
いずれにしてもそこのところが、うまくネジが締まっていなくて、行政組織全体、これは厚生労働省だけではもちろんないです。それで現在の問題に至っていると。
これは、組織の中の一部の怠慢とかルール違反という次元を超えた問題です。ですから、大小、国全体、システムとしての問題。私が一番初めに整理した、1番目の問題ですね。これは何とかしなければいけない。統計委員会が司令塔として、十数年前にできたのですが、改めてそれをどういうふうに位置づけて考えるのかという問題が1つあるということです。
それから、もう一つは、先ほどミクロといったシステムの中の図詳細設計にかかわるところで、神林さんのプレゼンテーション、3人の先生方のあれは、非常に具体的なA案、B案を出されました。
私は必ずしも、今日こういう話を伺って、すぐにどちらにということは言えないのですけれども、基盤的な統計というのは必ずしも基幹統計とは一致しないというのはどこかに書いてあったと思いますが、とりあえずはアバウトで似たようなものだということで、基幹統計という言葉で表現させていただきますが、基幹統計は一元化してやったらどうかというA案ですか、そういうサジェスチョンがあると思うのですが、それでうまく集まるのかなと、つまり統計を収集するときのある種のエンフォーサビリティーが確保されるのか。
要は、基幹統計も所管の役所がつくっているものが多いわけです、全てがそうではなくて、総務省の統計局というのはもちろんありますが、たとえて言えば、法人企業統計は財務省とか、鉱工業生産の統計は経済産業省とか云々あると。我々の身近なところでは、学校関係は文部科学省が集めているとか。
さてということなのですが、学校にかかわる我々の身近な統計をどこか国が、重要な基幹統計に当たるものを収集するというときに、文部科学省が学校にお触れを出してこういう統計を届け出ろといったときと、あるいは金融的な統計であれば金融庁でしょうか、場合によっては日銀ということですが、全く違った国の統計の司令塔的な組織が、金融機関あるいは学校統計であれば学校に統計を集めるから報告せよといったときに、果たして円滑に十分に集まるだろうか。やはり監督官庁というか、所管の役所、金融であれば金融庁、場合によっては国ではありませんが日本銀行、学校であれば文部科学省というところが集めるのだということによって、答えるほうも協力するという面があるのではないかという気がしています。
今回の問題の発端にもなった統計を報告する側、東京都に投げるということをやったのですが、とにかく統計、統計と言われて報告するのが面倒だと、この面倒だというのは馬鹿にならないのです。話が長くなって恐縮ですが、アメリカンフェデラリザーブシステムというのは、御存じのとおり、認可名ですので、どうでしょう、私も正確に知りませんが、数で言えば、大きな金融機関は、もちろんフェデラリザーブシステムに入っていますが、地方の中小の金融機関、金融機関の数で言えば、半分入っていないのではないでしょうか。せいぜい半分くらいだろうと思います。
フェデラリザーブシステムに入っている金融機関は、金融関係の統計を届ける義務がありますが、システムに入っていない銀行は、義務はないわけですね。
そういうようなあれですが、話を戻しますが、要は統計を集める上でのエンフォーサビリティーというのか、何というのか、ちゃんとそれを集めるというのがA案的なもので、本当にできるのかどうか、これは反対論で言っているわけではありませんが、その点は見極める必要があるのではないかと思っています。
最後に、私がマクロといったような問題で、確かにいろんな問題があるというのは、残念ながら事実で、ただ、これは統計だけではない問題ですね。一般にトラブルをどれだけ届けるか、これもこちらの役所にたまたま関係していますが、労災隠しというのがある。もう御存じのとおり、日常であって、多くの企業で労災隠しの問題をどういうふうに解決するかというのが課題になっているわけで、それで言えば、ハラスメントと言われるようなこともそうかもしれません。とにかく大小さまざまな問題が生じたときに、ルールではそれを届けるということになっていても、ルールどおりにはいかないというのは、残念ながら人間社会の現実だと、組織の現実であるというふうに考えると、もとより統計だけが例外であるはずはなくて、統計にかかわる業務に関しても、そうした問題が当然発生する。今回の場合にも発生したということなのだろうと認識していますが、これを組織の問題としてどのように解決するかというのは、なかなか難問なのですけれども、ともかく今回の大きな問題というのを幾つか整理して、業務上のいろんな組織のあり方の問題というのも確かに重要な問題で、しかしそれと統計制度全体の設計というのをもう一度考え直すというのは、どちらが重要だという問題ではなくて少しレベルが違う、繰り返しですがどちらのほうが重要ということを言っているわけではありませんが、頭の中を整理する必要があるのだろうと思うのです。
大変長くなって申しわけありませんでしたが、早退させていただくということで、あらかじめ幾つか発言をさせていただきました。いずれにしても、三先生の御提案は非常に有益な御提案であるというふうに思っております。ありがとうございました。
〇小峰座長 ありがとうございました。
神林さん、もし何かあればですが、それと関連して、私が聞きたいのはA案で統計委員会直轄へ移管するとなっていますけれども、これはどういう意味なのですか。統計を作成する部局ごと厚生労働省から外してどこか別のところに持っていって、そうすると基幹統計を扱う統計庁みたいなものができるという、そんなイメージなのでしょうか。
〇神林委員 2点ございまして、1点目は、小峰さんの今の御質問なのですけれども、ぼかした表現です。ですので、現状の統計局に移管するというのが現実的かもしれませんが、意味することは先ほど来、話にでておりますように、基幹統計を独立した組織で運用するということになるのが理想系です。
今の統計局というのは独立していません。ですから3条委員会のような格好で統計委員会というのを構成し直して、そこで基幹統計を管轄するというのが恐らく理想的な、このA案で行ったときの場合の理想的な格好になるでしょう。ただ、そこはちょっと何となくこんな感じで、そこは押さえた表現にしたというのが実情です。
もう一点は、吉川先生がおっしゃいました、エンフォーサビリティーのところなのですけれども、これは議論のための議論なのですけれども、自分はそういう形で統計を集めているからこそ、現場の人間は、それは行政のものだと考えてしまう。つまり、学校基本統計調査、学校基本調査の場合には、文部科学省から報告せよというお願いが来るわけですね。けれども監督官庁ですので、これは実は賃金センサスも同じです。労働基準監督署がデータを出せというふうに言うというのは、現場にとっては物すごいプレッシャーになります。だからこそ、それは行政目的で収集しているデータだというふうに出すほうも感じるでしょうし、だからこそ回答率が高くなるのですけれども、使うほうといいますか、収集する方もそういうふうに意識するでしょう。
そうだとすれば、それは全く行政のためのデータであって、それは行政庁が所有するという意識が強くなるというのは、恐らく当然なのではないかと自分は考えております。
〇小峰座長 どうぞ。
〇吉川委員 そこは、具体的な話ですが、私はちょっと違うと思う。つまり、よく御存じのとおり、旧統計法は、まさにそれぞれの官庁が統計も集めるし、それぞれの官庁がつくっている統計は、自分の役所の行政のためだというあれですね。当時10何年前、美添先生、その他の方とやっていたときに、私が使っていた例えは、道路で言えば軍用道路だと。軍がつくった道路で、その道路はあくまでも軍用であると。でもあいているときにはほかの車も通ってもいいですよと。
ですから、ある役所がつくっている統計については、第三者がそれはまだだとかつくり方がおかしいというのは全て筋違いと、つくっている人が自分のためにつくっているので、ほかからその統計について言われる筋合いは一切ないというのが旧統計法のあれだったのが、新しい統計法では御存じのとおり、統計というのはいわゆる公共財のようなもので、その統計を国はきちんと整備する義務がある、行政府として、したがってこういう統計はもう要らない、逆にこういう統計が足りないというようなことを国全体できっちり考える必要があるということで、いわゆる司令塔として統計委員会というのがつくられた。
さて、神林さんがおっしゃったこととの関係で言えば、新しい統計法のもとでも、いわゆる基幹統計でも、それは当然行政府も使ってもいいわけです。公共財としての情報というのは、国民全てのために重要な統計なのですが、それは当然行政府も使うと、使ってもらわなければいけない統計なのです。新しい統計法のもとでも、つくられた統計を何か行政は、使用者ユーザーとしてどうなのでしょう、恐る恐る使うなど、そんな馬鹿な話ではなくて、堂々と使っていただかなければいけない。
私は、大学人ですが、非常に乱暴な表現をすれば、基幹統計の第一のユーザーはやはり行政府かなという気がしています。大学の先生の研究でももちろん大いに使われる、それで言えば、これも十何年前の議論では、我々は少なくとも高校生の夏休みの宿題でも、個票データを使えるようにすべきだというような主張していました。これは考え方が幾つかありましたが、私の個人的な立場は、個票データでも、もちろんランダマイズして、匿名ということですけれども、関心を持った高校生が夏休みの宿題のために使いたいというような場合には、それは大学の先生でも、行政府でも、それと並ぶような、イーブンの立場に立つべきだというのが十数年前の、今も変わりませんが、私の立場です。
戻りますが、行政府も当然使うと、ポイントはどれだけいい統計が集まるかということなのです。神林さんも今言われたとおり、学校統計というのは、監督官庁である文部科学省が言うから、おっかないから、みんな面倒くさいと思いながらも報告するわけです。それはどう考えるか。神林さんは、それは好ましくないともちろん言われたと思うのですが、私もそれをいいとまでは言わないですが、統計ということからすれば結構なことではないかと。言うことを聞かないところがいって、ぼろぼろの統計ができるよりは、うるさいと思っている、しようがない言うことを聞かなければならないなと思っているところから言われて、みんなが統計を言うというのであれば、もちろんそういう人間社会のあり方が、おまえはいいと思っているのかと言われると、少しじくじたるところはありますが、結果オーライかなというのが、私の立場です。
〇神林委員 いや、結果オーライは、みんな結果オーライでいいと思うのですけれども、考え方として、行政監督官庁が情報を集めるということと、調査方法というのは統計の質を左右しますね。ランダムサンプリングで、中立的な機関が統計情報を集めるというのでは、多分統計の質は違うと自分は思っています。
ですので、むしろ、例えば賃金センサスのような情報というのは、行政情報として各労働基準監督署が蓄積をしていくというのはありだと思うのですけれども、それを調査というふうにして基幹的統計あるいは基盤的統計として位置づけるというのとは多分少し違うのではないかと思っています。これは考え方の違いです。
ただ、現実は、そうは言ったって、そんなに調査できるのかと言われたら、地方の出先機関の力を借りるというのが効率的かもしれませんので、そういう調査方法というのはありだと思いますけれども。
〇小峰座長 ほかの論点も多分あると思いますので、ほかは、いかがでしょうか。
どうぞ。
〇美添教授 この前は、許可も得ずにオブザーバーが発言してしまいまして、失礼いたしました。
まず、資料4、たった1週間で、これだけつくられたのは、本当にすごいと思います。
ただし、私たちも、いろいろな歴史がございまして、1つは、旧統計法から新統計法に移る、さっきから吉川先生が何回も言われたとおり、私が当時統計審議会の会長で、統計を改正しなければいけないと、20年ぐらい言い続けて、ようやく同意を得た、それは、吉川先生が小泉首相を説得したという、これは本当に歴史的な大転換点なのです。
細かいことは、私たちと相談しながらつくっていただいて、それこそ統計法の精神というのは、国際的な流れに沿ってつくったもので、統計は国民の共有財産だと、この視点を明確にしたと。そこまではいいのです。統計法改正は2009年にできました。ところが、ある意味で不完全でした。統計委員会は、特に統計委員会委員長の権限がほとんどないのです。骨抜きにされたというのが実感です。
それに対して、再度仕掛けがあったというか、いろいろと統計批判を受けて、改善しなければいけないという機運にのって、2年前から議論をして、ついこの間新しく部分改正いたしました。今度は権限を強化しております。
したがって、御批判を受けました、旧統計委員会に責任があると言われて、私はそのときも統計審議会から、委員会になったときの委員でしたが、当時の竹内啓先生が、統計委員会の委員長で、本当にあの先生は少数で仕切っていて、やりたいことをやらせてもらえない。だから、責任があると言われればそうなのですが、それは当時の統計法に問題が、その御指摘のとおりで、統計委員会としてやりたいことができなかった。御容赦いただきたいと思います。
それで、統計委員会は反省して、新しい統計法をつくりましたので、そこは御了解いただきたいと思います。
それで、この委員会はそもそも厚生労働省の委員会なので、厚生労働省として何ができるかを、厚生労働省の資料3にお書きいただいている。それに対してかなり抜本的な追加というか、書き直せというすごい校正案が出てきたので、これは、私はコメントを差し控えたいことがたくさんあるのです。
というのは、日本統計学会の公的統計に関する臨時委員会の報告書も2つ出しています。第1部と第2部。第1部は、そもそも今回の統計不正と言われる事件が、どうして起きたのか、わかる範囲で公開された資料と、実は担当者等からも聞き込みをしてまとめてみました。かなりまとまっていると思います。
それには、統計技術的観点でまとめられているというふうに評価していただいていますが、もちろん技術的にも書きましたけれども、技術以外にも実務をも含めたつもりなのです。統計の実務というのは、調査もある、企画設計から調査があります。それの担当、どこで、どうしたらこんな問題が起きたのかということも書いてあります。
特に、資料編にたくさんあって、資料編は厚いので、お読みくださいとは少し言いにくいのですが、第1部のほうは本文で16ページ、資料編を合わせても40ページぐらいなので、これは一般の方たち向けに書いたものですから、そこにかなりのことは書かせていただきました。
そこに書いてあるのは厚生労働省に対する、なぜこういう問題が起きたのだろうかと、我々が解明できた範囲で書いて、その背景まで書いてみました。その背景が、資料4の2ページ目で推測しているところ、少し私の個人的な意見では、公的統計に関する臨時委員会、日本統計学会の臨時委員会の委員長として、各委員の意見のほぼ集約されたものだと思いますが、能力不足の問題、これは三角です。能力はあります、あるけれども時間がない。それから過去にさかのぼって、過去の技術を使いながら運用してきた。個人的には優秀な方たちだと思います。それは、私は個人的につき合ったこともあるし、今回の資料について、この誤差率計算はどうなっているのかと聞いたら、すぐ答えが返ってくる。それなりの方はいます。
ただ、人数が少ない。だから、厚生労働省の責任はそこにあると思います。先週から今週にかけて厚生労働省でどんなことが起こったのかということを見ますけれども、統計関係の、皆さんに教えていただきますが、統計関係はかなり大幅に削減されていると思います。これは定員削減もあるし、予算のシーリングもあるので、各省横並びで減っているのですが、ほかの役所の名前は言いにくいので言いませんが、厚生労働省の中でもかなりびっくりしました。私が統計委員会にいたころから見ると何が起こったかというと、平成24年度に、それまで課は4つありましたね。私もおつき合いした人口動態保健統計課、社会統計課、雇用統計課、賃金福祉統計と、4つあったのが、24年度に2つになった。課が2つになりまして、これは、ちょっと人が減ったのだろうなと。
それから、26年度には、統計と情報を両方持っていたのが、情報部門が政策統括官に移管したと、残りは統計だけになった。
28年度に、今度は統計情報部まで廃止されてしまって、政策統括官に移管して、さらに、課が廃止されていましたね。室になって、参事官になっていました。
それで、30年に、最後に統計担当参事官まで廃止されてしまって、今、たしか管理官というお名前なのです。
これで何が起こるかというと、これだけ課が削減、部が廃止、課の廃止まで、統計部門の位置づけが年々低下してきて、そうすると、量、人も少ない、質の維持が非常に難しいということになりますね。
そうすると、質の維持が難しかった、質が低いだろうと、では、この統計は不要だろうという判断が当然出てきて、批判を受けると。これがすごい悪循環になっているのだろうと。これが私たちの想像なのです。多分根拠のある想像です。能力があって人もいるけれども、その人たちを統計に使っていただかなかった、どんどん削られました。
それで、神林先生たちの資料4で、理由の推測なのですが、(2)の科学的根拠を求める必要がないと考えていたとは、私たちは思わない。誤差率の評価式、ホームページに、これを持ってきましたけれども、これは、実は比推定の線形近似による比なのです。これがすらすらと書ける、これは普通の人は書けませんよ。今、世の中で批判している、統計学者、経済学者は、これを一目見てわかる人はほとんどいないと思う。酷い悪口を書いている人は、3倍しなかったと言っている人たち、これを見せたら、多分、わからないと思います。そのくらいの力はあるのです。あるのだけれども、これは厚生労働省の中の問題で、これだけ課を削減していたら、今度の改革も難しいのではないか。
それで、日本統計学会の報告書、第2部がありまして、そこは、実は国全体として、こうあるべきだという改革を書きました。
それについては、私は、この場では控えさせていただきますが、実は、今日もありますけれども、統計改革推進会議の方で、そちらを考える。そこで、私は、そちらでも発言をしますので、国については、そちらでさせてください。ただ、違う方向を向かれては困るので、国として統計改革を推進したいというときに、厚生労働省も同じ方向を向いていると、この原案ではそう思いますので、ぜひ、そこに歩調を合わせていただきたい。
そうすると、組織のことは非常に言いにくいのです。中央統計庁と、ちらっと名前が出ましたけれども、こういうのは、我々何十年も考えてきて、できそうにないかな、できそうかなというのを考えていました。
実は、報告書の第2部のほうに、海外の事例をびっしり書き込んだので、それを参考にすると、国の制度がうまくいかないという提言を具体的にしています。それは、ここでは控えます。
それで、厚生労働省だけに言って、組織の問題、提言の資料の4にもいろいろ書いてありますけれども、まず、今日にするかどうかというのは、コメントを控えますね。ただ、戦後すぐに統計局があった組織は、総理府統計局と農林省の統計局、それから、通商産業省の統計局、厚生省の統計局、この4つあったはずですね。戦後すぐは、統計委員会は3条委員会ですから、任命権を持っていた。局長の任命までしていた。ちょっとやり過ぎかなということで、それは、統計委員会から統計審議会に変わったという歴史があるのですが、そういうのを復活するというのは、夢で、夢を持っていてもいいけれども、ちょっと無理かなと、私はいつも保守的だとしかられているので、そう思うのですが、ただし、今の厚生労働省の組織を調べてみたのですが、厚生統計の資料集というのをいただいていますので、見ると、基幹統計は旧厚生関係で5本、労働関係で2本あったのですね。
そのほかにも重要な一般統計は山ほどあるのですね。全部で40だか、60だか。これを今の人数でできるかというと、私はかなり負担がある、もう疲れ切っているのだろうと思うのです。また、吉川さんにしかられますね。いつも、私は保守的なので。
〇吉川委員 いやいや、同感ですよ。
〇美添教授 それで、このままではだめだろうと、せっかくビジョンを書いたら、人と予算をふやせと、私は勝手に言っていますが、そんな難しいことをどうするのだと言われても、それは厚生労働省の中で判断していただかないと統計改革は無理だと思います。
国全体として、統計の総合的調整機能を担う組織というのは必要だと、これは吉川先生も前から言っていた司令塔ですね。だから、それは統計委員会に当然置いていただきたいのですけれども、この省内においても同じような、省の中の統計の総合的調整機能は必要だと思うのです。そういう組織に、今の統計企画調整室ですね、それから、審査解析室、室が2つですよ。これではさすがに弱過ぎて動きにくいと思います。
これをそれなりの組織に衣替えして、その格付を上げて、そうすると、その格付にふさわしい有能な人材、厚生労働省の中にはいっぱいいますから、そういう人たちを統計担当に回していただきたい。
現状、室長が都道府県に対して、そのまま依頼文書を書けないのだそうですね。室長ではだめだと、課長でなければだめだと、これは都道府県から聞きます。ということは、都道府県との連携も、今、従来より弱くなっているはずです。
これが私の思いついたことで、もう少しだけ資料4について言うと、さっきの吉川先生と議論があったエンフォーサビリティーなのですが、これは、例えば、文部科学省の学校基本統計、あれは、本当は行政資料なのです。行政資料を統計的にやっている。だから、行政資料を統計として活用するというストーリーをきちんとつくればいいのです。行政資料をちゃんととりました。それを統計に使います。今、使っていますね。
それから、人口動態統計も行政資料です。あれは厚生労働省です。それをきちんと使っている。ああいう仕組みをもっとふやすのです。そうすると、統計調査も、報告者負担というのは、資料4に書いていないと思うのです。報告者負担は、実は大変なのです。だから、統計をふやしてほしくないのです。本当に大事な統計だけ統計調査でかけていただいて、やむを得ない場合、ほかはできる限り行政資料を活用する。
現状では、行政資料の活用というのがなかなか進まないのは、地方公共団体が持っているものは同じフォーマットで電子化されていない。
それから、法律的な問題があって、例えば、税法上の秘匿義務があって出せない。こういうのがあるので、これは、個別の役所でもお願いするし、国全体としてもそういう運用を考えなければならない。これは、統計改革推進会議の方でも同じような発言をしていますので、この方向で検討が進んでいるということは間違いないのです。
あとは、資料4で、いろいろとすごいことを言っていただいているので、どこまで取り入れられるかは厚生労働省の判断いかんですが、オブザーバーとしては、この辺で控えておきます。
〇小峰座長 どうぞ。
〇山田政策立案総括審議官 参事官から管理官になったという話がありましたが、管理官は課長級ポストですので、位置づけは変わっていません。
いろいろ情報部門が離れたりくっついたり、そういった沿革はありますけれども、大きな流れとして、厚生労働省になってから、それまでの統計情報部長(部長は審議官級なので、局長より格は下)は、情報部門と一緒になってはいますが、政策統括官という局長級のポストに格上げされています。
ただ、美添先生が途中で言われましたとおり、地方公共団体への指示だとか、指導だとか、そういったものに一定のステイタスが必要だということは当然ありますし、重い負担をしている者がそれ相応の処遇をされなければいけないという点は、少し我々も、これから組織をどうするかというところで念頭に置きたいと思っています。
定員の問題については、厚生労働省は非常に地方組織が大きいところなので、本省組織だけ見ると、地方組織を持たない統計部門が大きく減っている印象になりますが、これを個別に労働部門でいけば労働局、厚生部門でいけば厚生局という地方組織まで含めて考えると、統計だけに定員削減の圧力を背負わせているとは言えません。
ただ、そこは、行政の需要と定員のバランスの問題に加えて、行政の質を高めることまで考えて、どこまで定員が必要かという原点に立ち返って考えなければいけない話はあるかと思います。
〇小峰座長 ありがとうございます。
どうぞ。
〇美添教授 反論ではありませんが、でも、全体として厚生労働省、厚生部門はまだしっかりしていると、まだとは失礼ですね、相変わらずしっかりしていると思いますが、労働部門は、昔の、あれだけの知識と経験が継承されていないというのは、外から見て、そういう印象があります。
これは、組織として、外部の指摘がどこまで本当かはともかく、そう見えているということ、資料4にも御指摘がありますね。労働統計関係で、どうしてここまで問題が突然出たのか、大体推測はつきますけれども、それを組織としてちゃんとやってきたという回答は、何か釈然としないので。
〇山田政策立案総括審議官 現実問題として労働部門で集中的に問題が起きたのはなぜか。具体的には、スタッフの育て方をどうしてきたかとか、スタッフのキャリアラダーをそれぞれどう考えてきたか、統計部門から統計以外の部門にきちんと人を出していたかなどについて、それぞれ労働統計部門と厚生統計部門について点検しています。おそらく厚生統計部門の方がしっかりしていたというのは間違いない。そうした問題の積み重ねが今回のような問題を引き起こしているという御指摘は当たっていると思いますので、その改善のためには、そうした質的な問題に加えて、量の問題の両方に目配せしていかなければいけないとは思います。
〇小峰座長 ありがとうございます。
ちょっと、時間が大分経過してしまいまして、時間がもったいないので、大変申しわけありませんが、今の議論は、もちろん、これも議論の対象として続けていただいていいのですが、前半で事務局から御説明いただいたまとめと、それから資料3でお示しいただいた提言の項目案みたいなものも踏まえて、全般的に御意見をいただきたいと思います。
それで、改めて確認しますと、今回我々が有識者として集まって、割と急いで提言をまとめることが求められているというのは、それを受けて厚生労働省の方で役所としてのビジョンをつくりたいと、それに向けて我々が提言をするということですし、さらに一番早いのは、来年度に向けての予算とか、機構定員、そういう要求になるので、それに間に合うようなタイミングでということで急いでいるし、内容もそういうものを期待されているということだと思いますが、そういう点で、今、美添さんもおっしゃったように、神林さんのペーパー、これを厚生労働省に投げても、厚生労働省でちょっと対応できないというのも結構あるので、その辺の整理がこれから必要になってくるのかなということ。
それから、全部が来年度に向けての予算機構定員でできるわけでもないので、できることはもちろん急いでやっていただくし、組織の中で工夫すればできるようなものは、どんどんやっていただいて、さらにそれを超えて中期的にもう少し時間をかけてじっくりやっていただくようなものと、それから、国全体で考えていかないとなかなか対応できないようなものと、そういうふうに分かれていくのかなという気がします。その辺の整理は、また、順次やっていきたいと思います。
全般的に、どうぞ御意見があれば、お願いします。
どうぞ。
〇中室委員 ありがとうございます。
これまでの経緯などをお聞きして大変勉強になりました。ありがとうございます。
私としては、神林先生、川口先生と一緒お出しをさせていただいた資料の中で、1つ繰り返しになるようですが、申し上げておきたいこととしては、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングには、つくるということと、伝えるということと、使うという3段階があるというふうに言われていて、神林先生が冒頭おっしゃったのは、使うところのインセンティブが弱いと、つくるところがいいかげんになるということなのだと思います。
それが労働行政側に起こっていたのではないかということが、私たちの問題意識の根本的にあるところでありますので、そのエビデンスを使うというところを、どの程度実現可能なように実装していけるのかということを、今回のビジョンの中で、やはりどうしても盛り込んでいきたいということがあるということが1つでございます。
2つ目には、小峰先生が御指摘になったことと完全にかぶるのですけれども、今何ができて、お金がつかなければできないことは何なのかということを整理して、ある程度工程表みたいなものをつくり、それをこの委員会なのかあるいは別になるのかわかりませんが、できていることとできていないことをチェックしていくということが非常に重要になってくるのではないかと思っております。
ここに書かれていることは非常によく整理されていて、リテラシーの向上、業務の改善、ガバナンスの強化というのはおっしゃるとおりだと思いますが、逆に言えば非常に多岐にわたっているということもありますので、何ができて、何ができなかったのかということをタイムラインとともに整理をしていくということが重要ではないかというふうに思いました。
〇山田政策立案総括審議官 今回8月中に「提言」をまとめていただいて、それをもとに、遠くないうちに「ビジョン」を厚生労働省としてまとめます。
「工程表」はそこからブレイクダウンして、もう少し細かい作業することになるので、おそらくそれより少し後になるかと。
委員の先生方の御都合もあると思いますけれども、8月以降も引き続きビジョンの内容がきちんと履行されているかどうかのチェックを今回の懇談会と同じメンバーの先生方に見ていただこうと思っています。厚生労働省としては、座長から御説明があったとおり、とりあえず令和2年度でできる話をまずは打ち込む、具体的には、8月末が組織定員についても予算についても締め切りなのでそこで一定打ち込みをした上で、すぐにできない話も含めて工程表を作成、事後的にチェックしていただくような段取りで考えていきます。
〇小峰座長 ほかはいかがですか。
どうぞ。
〇梶木委員 今、政策立案総括審議官がおっしゃった全体的なスケジュール感というのは、非常に合理的だと思いました。
2点目ですが、資料3で配られたものを、私にしては、ちょっと細かく項立てをしているなという感じがしました。外から見られているという意識があるので、いろんなものを盛り込まなければいけないということなのだろうと思いますが、これ自体について特段私は、反対はいたしませんので、うまくまとめていかれたらと思います。
3つ目ですけれども、先ほど来統計情報の収集あるいはその利用の高度化と言っていいでしょうか、そういった考え方が議論されました。非常にもっともなことだろうなと思いながら聞いておりました。
ただ、今回の問題からいきますと、まず現場をどうするのだということが1つあり、恐らくその次には、同じような統計作業をやっているところが省内にあるわけですから、この省内はどうするのか、先ほど予算とか定員の話が出ましたけれども、これはどの省庁も抱えていて、非常に工夫をしながら違う部署と違う部署をくっつけて、似たような業務をさせたりというような努力をしているところです。
したがって、まず省内でそこをうまく効率化できないかということが第2弾なのだろうと思うし、国家統計局みたいな話になると、よその省庁を説得する話なので、それはもう少し次の段階の話なのかなという印象でございます。
ただ、方向性として、そういう目で議論をされる、あるいは進めていかれるということは非常に大事なのだろうと思いました。
それから、当面、おやりになる仕事として、何においてもシステムを新しいものにするというのが第一だと思っています。
その際に、これまでやってきたような訪問調査主体ではなくて、どちらかというと、ネットを経由して、個々の企業で、まず、打ち込んでもらうというようなものを中心軸に据えるような形で、当面は厚生労働省の中で、サーバーの中で処理できると、あるいは場合によってはクラウドを利用するような形で、大型データを外に預けるということも可能なのだろうと思いますけれども、そういうような形で人手を少し割きながら、多分、先ほど来も話が出ていたように、直接人が行くのと、メールでお願いしますというのでは信頼度が違うというのは一般的にはそのとおりだと思いますけれども、それは、労働基準監督署があるから大分違うだろうし、場合によると、何パーセントかをピックアップして、当分自己調査をする。そういうやり方もあり得るのだろうと。つまり、打ち込まれてきたデータの信頼度をチェックするというようなことを、最初の1年、2年に組み込むということはあり得るだろうということで、できる限り人手に頼らないでやっていくようなシステムを、まず、お願いすることが大事なのだろうと思います。
最後ですけれども、先ほど神林先生ほかでおつくりになりました中で、今回の問題発生の根拠について能力不足の問題あるいはインセンティブといいますか、そういう問題があるのではないかという御指摘がありました。これは切り口の問題なので、これが本当の原因かどうかという議論をする必要は余りなくて、こういう切り口で見たらどう見えますかという話なのだろうと思いました。
私から見ていると、例えば、少し性質の違う役所が2つ一緒になって、言わば合併会社ですね。通常の合併会社の場合には、同種の業務をしているところが合併するわけですね。ところが少し違う種類の仕事をしているところが合併して1つの省になっているわけです。
したがって、人事配置の御苦労もあるでしょうし、キャリアパスといっても1つの単一の省庁のようにいかない難しさがあるということ。
それを十分に認識した上でというのは、釈迦に説法ですけれども、何かできる工夫はないのかということですね。多分、他省庁が抱えているよりも、そういう意味での教育研修キャリアパスの作成というのは難しい問題を抱えておられるようにお見受けしております。そこは主力を置いて努力をしていただけたらと思っております。
以上でございます。
〇小峰座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。
私、資料3の提言項目(案)についてなのですけれども、少し違和感があるのは、IIIが「今回の統計問題の総括を踏まえた再発防止策」というタイトルになっていて、私の理解では、再発防止というのは当たり前の話で、絶対にやらなければいけない話なので、これをやったからといって余り自慢にはならないという話なのですが、あとのほうにフロントランナーを目指して、よりポジティブにいろんな方向を出していくというのがこの中に入ってしまうと、再発防止策をしっかりやればフロントランナーになるのかという、そんな感じになってしまうので、その辺をもう少し整理ができないのかなという印象があります。
○山田政策立案総括審議官 御指摘の通りだと思います。ただ再発防止策というタイトルにしてしまうと、狭い感じですけれども、実際に入っている中身はゼロからプラスに上げる方向の話もあるので、タイトルは少し工夫してみます。
〇小峰座長 どうぞ。
〇中室委員 さらには、統計行政のフロントランナーというふうになったときに、やはり、厚生労働省の中だけではなくて、この取り組みが、それこそさっきの学校基本調査の話が出ていましたけれども、他省庁にも参考とされ、同じように実装されていくということが望ましいのだと思います。
ほかの統計でも同じように、エラーだったり、間違いが起こっているという、6割の統計でそういうことがあったということが既に報道されているところでありますので、この取り組みが省内の特殊な事情や人材によってなされるのではなくて、きちんと制度となり、その仕組み自体が、他の省庁や官庁でも参考とされるような、そういう取り組みである必要があるのではないかと思います。
〇山田政策立案総括審議官 (厚労省だけということではなく)できるだけ普遍的な感じにしようと思います。問題を起こした厚生労働省が他省庁に範を垂れるという格好には当然できないのですけれども、ただ、内容の一部を他府省に参考にしてもらうことはあり得ます。これまでの御意見を踏まえて、最終的に報告をまとめますけれども、居丈高にならない程度に普遍性を持たせて、あまり厚労省だけという感じにならないようにしようと思っています。
〇土屋厚生労働審議官 ちょっと補足しますと、私どもの立場は、今、政策立案総括審議官が申し上げたとおりですが、先生方からいただくものは、これは提言としていただいて、それを各省に伝えているということ、これは我々の役割だと思いますので、先ほど統計改革推進会議のお話も出ていましたけれども、政府の中でいただいた提言を私どもは伝えて、受けとめていくということは工夫してみたいと思います。
〇小峰座長 ほかは、いかがですか。
どうぞ。
〇美添教授 中室委員の発言で、ほかの統計でも60%誤りがあると、あれは勘違いですよ。マスコミの誤報、私たちの臨時委員会の報告書にしっかり書きました。本当に軽微案件なのです。何が軽微かというと、本当の軽微ですよ、軽微ではないのが、もう一つ労働関係で1つあっただけで、軽微な例を言いますけれども、財務省の法人企業統計の統計委員会に出した報告書の申請、計画書の中に2項目、それが漏れていた。それは比率なのです。財務諸表の比率で、しかも、金融保険業だから比率をとって意味がないということで、従来出していなかったものが、参考にほしいというので、では出しましょうと、保険業界と協議の上、出しますと書いたのを、分母と分子は出したけれども、割り算したのを出し忘れました、それで、ごめんなさいなのです。これは、自分でチェックしてあるのですから、これが不正だと言うのですよ、ほかの事例も同じようなものですよ。私、財務省の仕事を何十年もやっているので、そこは中から聞いたので、ほかもそうです。
これを不正だと、マスコミの方がいらっしゃるけれども、某新聞は不正だと、堂々と書くのです。あれは、どこが不正ですかと、こういう間違った情報を流して、国民の統計に関する不信感をあおるような記事というのはやめてほしいということは、臨時委員会の報告書にちゃんと書きました。あの報告書は、マスコミや政治家にも読んでもらいたいということで書いています。
〇小峰座長 ほかにどうですか。
では、ちょっと私から神林先生にお聞きしたいのだけれども、さっきのペーパーの中で、科学的根拠を求めるようなインセンティブを持つことが必要だと、これは当然、経済学者ならインセンティブに基づいて進んで行動するというのが一番効率的でいいというのは当然なのですが、具体的にどういうインセンティブなのかなと、例えば何か間違ったことをやると罰せられるというのも、一種の逆のインセンティブというか、それは間違ったら許さないぞということだと思うのですが、そうではなくて、そういう方向にポジティブにやっていくことが自分にとってもプラスになるというインセンティブというのがどういうものなのかというのがちょっとわからない。
〇神林委員 今回の原案の中にははっきりと書いてはいないのですけれども、3人で話しているときに、結構前提として考えていたことは、現在の厚生労働省のキャリアの人たちが何を目的に役人になったのかということを考えると、やはり政策を立案して遂行するというところに物すごく強いモチベーションがあるはずなのです。これは十把一絡にそういうことを言うというのは、少し間違いかもしれないのですけれども、全体としてはそういう人材がそろっている。
ですので、そういう人たちのモチベーションをきちんと反映させるようなことができれば、これは倫理の話になってしまうのですけれども、多少まずそうな状況に陥ったときにちゃんと踏みとどまるということができるのではないかということが暗黙のうちにあります。
逆に言うと、そういう有意な人材のモチベーションというのをむやみに低めているというのが、今の状況なのかなと。そうすると、形式的な責任を回避すればいいということになってしまいますので、こういうことが起こってしまうのかなというふうに考えていたわけです。
ですので、どういう人材がどういうモチベーションで仕事をしているのかということと組織の目標、それと統計の利用度ということの、うまくベクトルを合わせるというのが、理想的な考え方だというふうに自分は考えています。
ある意味、もう少し主観的なこと言うと、どんなにルールを、デュープロセスをがちがちに固めたとしても、多分不正は起こってしまう。モチベーションがないと。ですので、そこが一番根本のところで、今、労働行政が問われていることだろうと。あえて労働行政と言いますけれども、労働行政が問われていることだろうということが出発点になります。
〇小峰座長 ありがとうございました。
ほかは、いかがですか。
どうぞ。
〇山田政策立案総括審議官 統計関係の研修の現状は、3つぐらいの層に分けて考えていて、(1)純粋に統計を専門にする職員向けの、それはクオリティーが相当高いところまで目指すというのと、(2)各現場で統計をつくる、何々局というところで統計をつくる職員向けの研修と、(3)統計を直接作らない、統計のユーザー的な職員でも、最低限必要な統計の知識を身につけるということで、階層を分けた形での研修スタイルに、1、2年前から移行させています。
経済分析的なモチベーションを上げるために、これはどちらかというと労働側の方で先に進めている話があります。各部局で特に経済分析や白書を書いたりしているわけではない部署で、それは経済学者の先生も入れてやっていますけれども、経済分析的なものがどこまで局でできるのかという、ちょっとモデル的なものをやるという話を業務外の話ではありますけれども、やっていたりします。逆にこれも経済学者の人だとか、厚労省のシンクタンクであるJILPTとかの人に、特定の論文を題材にして、計量経済学を全然知らない人でも、どういうふうに論文を読んだらいいのかということを学ぶ研修会とかもやったりしています。EBPMのモデル事業もやっていますけれども、そういうEBPM感度が上がるような仕掛けもしています。
おそらく他府省もそうだと思うのですけれども、全体的に年齢が若ければ若いほど、EBPMが大事だと考えている職員は増えていると思うので、そこにはある種の希望の光はあります。そういうものをいろいろな仕掛けでもって醸成していくということで、何となく気がついたらEBPMマインドが広がっているという感じになればと考えています。
今回のような問題もありましたので、先に進めていかなければいけない話かと思っています。
〇小峰座長 ありがとうございました。
〇神林委員 その点で、1点よろしいですか。
〇小峰座長 どうぞ。
〇神林委員 恐らく研修をうまく構築するというのは、外部のリソースもありますし、それほど難しい話ではないと自分は考えています。
ただ、問題はさっきのインセンティブの話なのですけれども、そういう研修を受けた、こういう能力があった、では使いたいと思うのが人間のさがで、それで使うことによって、また、何を勉強していいかがわかっていくというのがキャリア形成になっていくと思います。
そこのスピードが少し遅い。勉強してください、勉強してください、それはそれでいいですけれども、それはある意味やりっ放しになっているところがあって、そこで、若い人たち、自分たちは大学で教育教える側ですけれども、せっかく勉強したことが論文に生かせないということになると、やはりどんどん腐っていくというか、もういいやみたいな、そういうふうになっていってしまう。そこはぜひ気をつけて、少し勇気が要るかもしれませんけれども、実施、実行に移していくということが、このタイミングでは必要なのかなと考えています。
〇小峰座長 どうぞ。
〇中室委員 今の意見に関連してということなのですけれども、EBPMに理解のある人に若い人が多いというのは、多分、近年の経済学の流れと軌を一にしているところもあるかと思いまして、政策評価だったり、インパクト評価と言われる分野が体系化されてきたのが2000年以降なので、多分そこで大学で学んできた人たちが省庁に入っているので、EBPMに理解があるということなのだと思います。
私としては、ぜひそういう若い人たちをうまく使っていただければいいのかなと思っていまして、私も自分の学生を教えていて思うのですけれども、例えば、プログラミングのスキルがあるとか、その数字をハンドリングする力があるとかだと、少し老眼になりかけている我々よりもはるかに彼らのほう方が、能力が高くて、スピードが速いということもあるので、うまく使っていただければいいのかなと思うときがあります。
その最もいい例としては、環境省の方で今、ナッジ・ユニットというのが立ち上がっているのですけれども、そのナッジ・ユニットのリーダーをやっているのは、留学から帰ってきた非常に若い方でありまして、ですので、さすがに大きな局をマネージできるということにはならないと思いますが、例えばプロジェクトベースで、例えばモデル事業で、ナッジ・ユニットのような1つのトライアルみたいなところで若い人にリーダーシップを発揮していただけるような機会を与えていただければ、EBPMの実装というところに少し近づいていくのではないかと思っております。
〇小峰座長 どうぞ。
〇山田政策立案総括審議官 ポストそのものを、EBPMとか分析とかいうポストをどんどん増やすことはおそらく難しいです。
ただ、前回もお話ししたとおり、大学、シンクタンク、国際機関等で分析的な業務をするというポストは、この5年でかなり増やしています。あとは、政策的な業務もやりつつ、分析的な要素を増やしていくというのが、実際的な展開かという感じがします。部局を超えたプロジェクトチームっぽいものというのは、その祖型的なことはすでにやっていますが、そういったところで、半年前まで留学していて学んだ話が生かせる、そういった受けとめはできると思います。
〇小峰座長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
どうぞ。
〇神林委員 多分、1点だけ確認しておいた方がよいのは、システムなのですけれども、システムの改編というのは大体どれくらいの見通しというか、タイミングが、今、念頭に置かれていますか。
〇菱谷大臣官房人事課調整官 今、まさしく概算要求に向けた準備をしているところですけれども、COBOLなどにつきましては、ただ、いきなり全てを変えてしまうということというよりは、まずどういうふうに見直していくかということも含めて、まずは調査研究が必要だということで、COBOLだけではなくて、そもそも厚生労働統計のシステム自体の全体をどう見直していくかということを来年度検討していくための予算を要求しています。それで、まずいろんな外部有識者の人の意見も踏まえながら、システムのあり方自体を検討した上で、実際の見直しは、来年すぐにできるわけではないですけれども、速やかにやりたいと考えております。
〇神林委員 ですので、今年度といいますか、次の概算要求には、システムの改編に関する調査研究みたいな形な感じにとどまるということですね。
〇菱谷大臣官房人事課調整官 そのとおりです。
〇神林委員 そのシステムは、特に統計情報と今おっしゃいましたけれども、確かに統計のシステムもあるのですけれども、業務統計ですね、業務システムというのは、その中に入っていますか。
〇菱谷大臣官房人事課調整官 そういう意味で申しますと、業務システムというのは、また別個にありますので、例えばハローワークインターネットサービスの巨大なシステムがありますけれども、こちらにつきましては、今年度の1月に向けて、これは結構5年とか大きいスパンで進めていて、ちょうど来年の1月から新しいシステムが起動するようなスケジュールになっております。
〇神林委員 もう設計は終わっていますね。
〇菱谷大臣官房人事課調整官 終わっています。
〇神林委員 もし、可能なら、その辺の情報を内々でも、公開することはできるかどうかわからないですけれども、教えていただければと思います。特に大きいのは、労働関係だと雇用関係のシステムと、職業安定行政のシステムですね。この2つが大物だと思いますけれども、それをどういうふうに設計するかということと、統計情報をどう設計するかということは、多分、表裏一体になってくると思いますので。
〇小峰座長 ありがとうございました。
ほかは何かありますか。
どうぞ。
〇美添教授 資料2について、ちょっと感想を言ってもいいですか。資料2は資料3に反映されることだと思うのですが、少しだけ申し上げます。
総論に書いてあることは、さっき吉川さんも言ったとおり、そもそも新しい統計法の精神に沿ったことなので、それは丁寧に書いていただくというのは当然のことだと思います。
それで、IIの「今回の統計問題の総括」のところで、私たちの臨時報告書でも書いたのですが、資料4にも御指摘されているように、まだ世の中で情報が足りないのではないかと御指摘されていることが幾つかあるので、それも追加で、なぜこういうことが起きたのかというのを調べていただきたいと思います。
というのは、2004年に東京都を抽出調査にするとき、その前に何が行われていたかというのは、この前御指摘されて初めて気がついたのですが、それ以前に、規模を30人以上、499人以下の事業所のうち、抽出されるべきサンプル数の大きい地域産業について一定の抽出率で指定した調査対象事業所の中から、これは監察報告書ですが、半分の事業所を調査対象から外すことで云々とあるのです。
これで実質的に抽出率を半分にして、その半分そのものでしょうね、そのかわりに調査対象となった事業所を集計するときには、事業所が2つあったものとみなして集計する方式である。これがそもそもあったわけですね。これが特別監察委員会報告書には書いてはあるのですけれども、なぜそうしたのですかと。これで精度が落ちない、この精度を向上させようとしたものであると、特別監察委員会の方でも、そう考えているというのですけれども、これは、私は全然釈然としないのです。
実際に公表されている、さっきの誤差率の算式で計算されたのだと思いますが、公表されている誤差率は確かに大きくなっている。大きくなっているからサンプル数は減っているのだなというのがわかるのですが、これを指摘している人がいて、なるほどという感じです。
誤差率は、この式のとおりだと思うのですが、違う式もあるらしいけれども、これを、なぜ減らしたのか、言いにくいのか、私たちも実は臨時委員会の報告書で、この点は触れなかったので、せっかく今回総括するのなら、これはぜひ追記して、なぜそういう判断をしたのか、これは資料4で御指摘されているところで、ここは強く同感します。なぜいいと思ったのか、どのような根拠で影響は軽微と判断したのか、ここがわからないと今後もその判断を、客観的な判断かどうかわからないままでなされるおそれがあります。
ですから、私も前回も言ったけれども、これがふだんから、統計学者や経済学者との交流があったら、その場で確認ができたはずだと思うのです。その点だけ報告させてください。
〇小峰座長 ありがとうございました。
ほかはいかがですか。
それでは、特段ないようですので、最後に事務局から連絡事項等があれば、お願いいたします。
○武藤政策統括官付参事官 皆様、本日はお忙しい中、御出席をいただき、ありがとうございました。
本日御議論いただいた、厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)に向けた提言項目や論点整理などに即しまして、今後、座長とも御相談の上、各委員の皆様の御意見を反映した提言(案)の肉づけ作業をしてまいりたいと考えております。
提言(案)の素案のイメージができましたら、各委員の皆様に早急に御確認いただく予定です。
次回の日程につきましては、8月20日火曜日、9時半から11時半、厚生労働省18階の専用22会議室において開催予定ですので、よろしくお願いいたします。
〇小峰座長 ありがとうございました。
本日は、活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。
これをもちまして、第2回の有識者懇談会を閉会させていただきます。
 
(了)

照会先

政策統括官付参事官付統計・情報総務室 菱谷・益田

代表03-5253-1111 内線7637