2019年7月1日 第153回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和元年7月1日(月) 13:00~14:30

場所

航空会館702・703会議室

出席者

【公益代表委員】
    荒木委員、平野委員、両角委員
【労働者代表委員】
    川野委員、櫻田委員、柴田委員、中川委員、村上委員、弥久末委員、世永委員
【使用者代表委員】
    池田委員、齋藤委員、早乙女委員、佐久間委員、佐藤委員、鳥澤委員、松永委員、輪島委員
【事務局】
    坂口労働基準局長、田中審議官、富田総務課長、黒澤労働条件政策課長、石垣監督課長、長良労働関係法課長

議題

(1)報告事項
(2)賃金等請求権の消滅時効について
(3)その他

議事

 
○労働条件政策課長 定刻には若干早い時間でございますけれども、皆様お集まりでございますので、ただいまから第153回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日は、本年4月27日付の分科会委員改選後初めての分科会となりますので、冒頭は、私、労働条件政策課長の黒澤が司会を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、議事に入ります前に、分科会委員の交代につきまして御報告させていただきます。
お手元に参考資料No.1といたしまして、労働条件分科会委員名簿を配付しております。最新の名簿は、お手元の参考資料No.1の2枚目にございます令和元年6月21日現在のものとなりますので、この令和元年6月21日現在の名簿の順番によりまして、新しく委員に就任された方々につきまして御紹介させていただきます。
まず、公益代表の委員として新たに法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授、藤村博之委員に御就任いただきました。藤村委員は本日は御欠席と承っております。
次に、使用者代表の委員として新たに日本通運株式会社総務・労務部専任部長、池田祐一委員に御就任いただきました。
次に、同じく使用者代表の委員として新たに株式会社CKK代表取締役、鳥澤加津志委員に御就任いただきました。
以上が新たに委員に就任された方々の御紹介でございます。
続きまして、本日は分科会委員改選後初めての分科会となりますので、分科会長を選任する必要がございます。分科会長は、労働政策審議会令第6条第4項に基づき「当該分科会に属する公益を代表する本審の委員のうちから、当該分科会に属する本審の委員が選挙する」こととされております。当分科会におきましては、本審の委員は荒木委員のみが該当されます。したがいまして、荒木委員が当分科会の分科会長に就任されることとなります。
それでは、以後の議事進行は荒木分科会長にお願いいたします。
○荒木会長 ただいま分科会長を務めることになりました荒木と申します。皆様の御協力を得ながら、円滑にこの議事を進行してまいりたいと考えますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、分科会長の就任に際しまして、分科会長代理の選任をさせていただきます。分科会長代理につきましては、労働政策審議会令第6条第6項により「当該分科会に属する公益を代表する本審の委員または臨時委員のうちから分科会長があらかじめ指名する」こととされております。そこで、この規定に基づきまして、藤村委員に分科会長代理をお願いしたいと考えております。
なお、藤村委員は本日御欠席ですけれども、あらかじめ分科会長代理への指名については御了解を得ておりますことを御報告いたします。
次に、本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員として、公益代表の安藤至大委員、川田琢之委員、黒田祥子委員、藤村博之委員、水島郁子委員、労働者代表の八野正一委員と承っております。
定足数については事務局からお願いいたします。
○労働条件政策課長 定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
○荒木会長 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
本日の議題に入る前に、坂口局長より一言御挨拶をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○局長 労働基準局長の坂口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
委員改選後初めての労働条件分科会でございますので、一言御挨拶をさせていただきたいと思います。
まずもって、委員の皆様には、大変お忙しいところ、この労働条件分科会の委員をお引き受けいただきまして、まことにありがとうございます。心から感謝申し上げます。
この労働条件分科会は、労働政策審議会に置かれている分科会の一つとしまして、労働時間あるいは賃金の支払いなどの労働条件に関することにつきまして、厚生労働省が行う事務に関します重要事項を御審議いただくこととされております。
本日も議題を幾つか御用意させていただいておりますけれども、今後も、当分科会の所掌に関することにつきまして、私どものほうから御報告させていただきましたり、いろいろお諮りさせていただくことがさまざま出てこようかと考えております。その際には、委員の皆様方の専門的な御知見をもとに充実した御審議をいただきますようにどうぞよろしくお願いいたします。
以上をもちまして、簡単ではございますけれども、私からの御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
本日の議題の「(1)報告事項」につきまして、まず、事務局から資料No.1について報告をお願いします。
○総務課長 総務課長でございます。
私のほうからは資料No.1の「『経済財政運営と改革の基本方針2019』等について」ということで、先般、6月21日にここに書いております3つのものが閣議決定されておりますので、それぞれについて、かいつまんで御説明いたします。
3ページをごらんいただきたいと思います。いわゆる骨太の方針でございます。第2章に「(2)働き方改革の推進」が書いてあります。この4月から施行されております長時間労働の是正等を中心にしました働き方改革関連法において円滑な施行を進めるということでございます。ワンストップの相談窓口であります「働き方改革推進支援センター」において中小企業支援機関とも連携しつつ、企業への相談支援を行うといったこと、中小企業支援機関の相談体制の強化や下請取引対策の強化に積極的に取り組むということ、それから、民間企業におきまして1時間単位で年次有給休暇を取得する取り組みを推進するといったことが書かれております。
4ページ以降は「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」等でございます。
7ページでございますが、「成長戦略実行計画」の「第1章 基本的考え方」の「(4)人の変革」に「3 兼業・副業の拡大」という項目が入っております。ここでは現状を紹介しているところでございますが、「兼業・副業の拡大は、所得の増加に加え、スキルや経験の獲得を通じた、本業へのフィードバックや、人生100年時代の中で将来的に職業上別の選択肢への移行・準備も可能とする。労働時間・健康管理についての懸念に対応するため、課題の論点整理を加速するとともに、兼業・副業について規定したモデル就業規則等の促進や取組事例の展開により、希望する者が、兼業・副業が可能となる環境を整備する必要がある」と書いております。
8ページは「成長戦略フォローアップ」でございます。まず、「2.フィンテック」の(2)です。賃金支払いについて、給与受け取り側のニーズやキャッシュレス社会実現に向けた要請を踏まえ、賃金の確実な支払い等の労働者保護が図られるよう、制度の具体化がされることを前提として、資金移動業者の口座への賃金の支払いを可能とすることについて、労使団体と協議の上、2019年度、できるだけ早期に制度化を図るといったことを書いております。
「Ⅱ.全世代型社会保障への改革」のうち、2の(2)のⅲ)でございますけれども、「解雇無効時の金銭救済制度について、可能な限り速やかに、法技術的な論点についての専門的な検討を行い、その結果も踏まえて、労働政策審議会の最終的な結論を得て、所要の制度的措置を講ずる」と書かれております。
3の(2)の「1 副業・兼業の促進」ということで、成長戦略実行計画のフォローアップのところでも書いておりまして、「長時間労働の抑制や労働者の健康確保に留意しつつ、副業・兼業の普及促進を図る。(中略)検討会における健康確保の充実と実効性のある労働時間管理の在り方についての検討を加速し、2019年中に結論を得る。その上で労働政策審議会において議論を開始し、可能な限り速やかに結論を得る」と書いております。
ⅱ)の「1 長時間労働の是正を始めとした働く環境の整備」でございますが、この4月から適用されております労働時間規制につきまして、監督指導の徹底に加えまして、2020年4月からの中小企業への適用などがありますので、そういうことについて支援策を講じるなどを通じて円滑な法の適用に向けた取り組みを行うということを書いております。
右下は先ほどの再掲でございます。
次に、9ページ以降が「規制改革実施計画」でございます。
11ページ以降に、労働条件分科会の所掌に係る事項についてまとめておりますが、まず11ページの「4.保育・雇用分野」の「(3)ジョブ型正社員の雇用ルールの明確化の検討」でございます。これについては「規制改革の内容」の「a 『勤務地限定正社員』、『職務限定正社員』等を導入する企業に対し、勤務地、職務、勤務時間等の労働条件について、労働契約の締結時や変更の際に個々の労働者と事業者との間で書面による確認が確実に行われるよう、以下のような方策を検討し、その結果を踏まえ、所要の措置を講ずる」と書いております。1つ目が「使用者による労働条件の明示事項について、勤務地変更の有無や転勤の場合の条件が明示されるような方策」、2つ目が「就業規則の記載内容について、労働者の勤務地の限定を行う場合には、その旨が就業規則に記載されるような方策」、3つ目が「労働契約法に規定する労働契約の内容の確認について、職務や勤務地等の限定の内容について書面で確実に確認できるような方策」を検討するということでございます。
bとしては、無期転換ルールの適用状況について実施状況を検証する。
cとしては、無期転換ルールが周知されるよう、無期転換ルールの内容を当該労働者に対して通知する方策を含めて、周知のあり方について検討するということが書かれております。
12ページは「年休の取得しやすさ向上に向けた取組」でございまして、「規制改革の内容」をごらんいただきますと、aが「年休の時間単位取得の制度導入を促進するため、制度を導入している企業の具体的事例の周知等を通じて制度の啓発及び普及に取り組む」。
bとしましては、平成20年の法改正で入ったものですが、期間が経過していることを踏まえ、年休の時間単位取得について現状把握を行った上で、有効な活用のあり方について検討する。
cは、女活法に基づき企業が公表する情報項目があるのですが、それに時間単位取得の制度の有無を加えることを労政審で検討して、データベースに反映することも検討すると書いております。
「5.投資等分野」の(4)でございますが、資金移動業者の口座への賃金支払いについて、賃金の確実な支払い等の労働者保護が図られるよう、運用方法や十分な対策について関係者と協議・検討し、その仕組みが実現でき次第、措置を講ずるといったことが書かれております。
最後に13ページでございます。規制改革におきましても、副業・兼業の促進を書いておりまして、厚生労働省は、労働者の健康確保や企業の実務の実効性の観点に留意しつつ、現行制度の適切な見直しをすることについて、現在、検討会を開催しているわけですが、その議論を加速化し、結論を得た上で速やかに労政審において議論を開始し、速やかに結論を得ると書いております。
それから、テレワークの促進ですが、テレワークそのものは雇用環境・均等局で推進しているところでございますけれども、労働条件分科会関連でも、深夜に行った場合にどうなのかということについても関心が高い事項だと思いますので、ここでも記載させていただいております。
私からの説明は以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見があればお願いいたします。中川委員。
○中川委員 ありがとうございます。
先ほどの御報告の副業・兼業の促進について、一点、確認させていただきたいと思います。7ページ、8ページ、13ページにありますが、御報告にあったとおり、成長戦略実行計画や規制改革実施計画で副業・兼業の普及促進を図る考えが示されており、厚労省の検討会で結論を得た後、労政審で議論し、結論を得るとされております。
その検討会の中で、複数の委員から、時間外労働の上限規制や割増賃金に関して労働時間の通算は行わないことが適当との意見が出されており、我々としては懸念を抱いております。我々としては、労働者の健康確保や、あるいは時間外労働を行った労働者への補償の観点からは、上限規制や割増賃金に関しても労働時間の通算を行うべきと考えております。その旨を示した現行の行政解釈を堅持すべきであると考えております。検討会報告において、そうした労働者保護を後退させるような特定の方向性を打ち出すことは適当ではないと考えますけれども、事務局の考え、認識を確認させていただきたいと思います。
○荒木会長 まず、事務局からお願いします。
○監督課長 監督課長でございます。
私のところで「副業・兼業の労働時間管理の在り方に関する検討会」の事務局を担当しておりますので、少しお話をさせていただきます。
検討会では、政府の方針で副業・兼業を推進するということで御議論いただいているわけですが、政府のこれまでの各種の方針の中でも、健康の確保にも十分留意しつつ、企業の実務の実効の観点でも留意しつつということで、健康の確保についてもどのように確保していくかということは重要な検討課題の一つになっているところでございます。
委員の先生方には幅広い選択肢、いずれにしましても、学識者の方々の検討会でございますので、論点を整理していただいた後には、政府会議のほうでも書いてありますように、こちらの分科会でさまざまな観点から御議論をいただきたいと思っておりまして、そういう中で論点整理をしていただいているということで考えております。委員御指摘の点も、そういう御意見があったということも踏まえながら、御検討をお願いするようにしたいと思っております。
以上でございます。
○荒木会長 輪島委員、お願いします。
○輪島委員 ありがとうございます。
私のほうも要望ということでございます。兼業・副業の議論はスタートしていて、企業の中でも人事のほうに従業員から、うちの会社で兼業・副業はこれからできるのでしょうかという問い合わせとか、採用面接のところらしいですが、関心の高い学生さんのほうから、この会社は兼業・副業ができるような環境が整っているのでしょうかとか、そういう質問もされると聞いているところです。
しかしながら、一方で、ことしの4月から労働基準法が改正されて、いわゆる上限規制が導入され、労働時間管理が厳しくなっています。それから、悩ましい問題ですけれども、割増賃金の支払いについてもさまざま企業側でも課題があるということでございます。言わずもがなでありますけれども、健康確保措置も非常に大事な点だと考えているわけであります。
そのほか、例えば競業避止の問題、情報漏えいの問題、安全配慮義務の問題、企業側としてはわからないといいますか、課題としてどのようなものがあるのかということはクリアにして、その先、労働条件分科会での議論というふうに思っていますので、その点では分科会で丁寧な議論をこれからしていきたいと考えているところでございます。
私からは以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかに何かございますか。池田委員。
○池田委員 私のほうからは、資料No.1の3ページ目の右側に年次有給休暇と介護休暇の時間単位取得のことが書かれているかと思いますが、このことについて申し上げたいと思います。介護休暇につきましては、ほかの分科会の所掌であると理解しておりますが、もとより介護休暇は無給です。それに対しまして、年次有給休暇は有給ですので、実際、労働者が取得する段では年休を利用することが優先されてくるのではないかと思います。ですので、介護休暇の時間単位制度よりも年次有給休暇の時間単位制度のあり方をしっかり議論することが実効性のある政策を考える上で重要ではないだろうかと考えているところです。
12ページには、取得日数などの利用実態等調査、現状把握を行うということもお書きいただいておりますが、現在、時間単位年休を導入していない会社も入れていない相応の理由があろうかと思いますし、また、最近であれば、時差出勤やフレックスタイム制とか、柔軟な仕組みを運用している企業もふえていると存じております。子育て、介護、治療などの事情を抱える社員が時間単位の年休をどれぐらい制度として望んでいるのか、また、企業が現行の年休の制度について見直しを求めていることがあるかどうかなど、その現状把握に当たっては、業種業態、働き方等も含めて、年次有給休暇に関する実態やニーズについても幅広く把握していただくことが大切と考えるところです。
私からは以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。櫻田委員。
○櫻田委員 ありがとうございます。
今、池田委員からお話がありましたけれども、私からも年次有給休暇と介護休暇に対しては少し意見を申し上げたいと思います。労働者側としても、やはりニーズという点で言えば、育児、介護、治療などの理由で休暇を時間単位で取得したいというニーズは確かにあると思います。そういったニーズに応えて、休みやすい環境を整えて働き続けられるようにするということは非常に大事なことだと思っているところです。
ただ、その一方で、年次有給休暇については、労働者の健康で文化的な生活の実現に資するためのものというのが労基法の考え方でありますし、細切れの休暇取得が拡大することによって健康の確保や生活時間の確保が不十分になってしまうとすれば、それは望ましくないことではないかと思います。そういったことで、休暇のあり方の議論においては休暇の使いやすさということだけではなく、健康と生活時間の確保の側面にも十分留意していくことが必要ではないかと考えるところです。
時間単位年休制度については、JILPTが年次有給休暇の取得に関して調査・分析をしていると思いますが、2011年の公表から時間が経過していますので、今後実施する年休の時間単位取得に関する実態調査では、JILPTの先行研究を参考にして、可能であれば、労働者、使用者のヒアリングも行って、現状とニーズを的確に把握して公表していただきたいと思います。
○荒木会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。村上委員。
○村上委員 ありがとうございます。
資料の8ページ、12ページにあります資金移動業者の口座への賃金支払いの問題についてです。以前の分科会におきまして、こういった資金移動業者の口座への賃金支払いについては、確実な賃金の支払いや資金保全の仕組みの点から問題があるということは指摘してきたところでございます。今回、資金移動業者が破綻した場合の保険制度など、資金保全の仕組みの実現を前提としているということについては、私どもが指摘した問題点を一定程度受けとめていただいたものと思っております。
ただ、資金移動業者というのは、「移動」の名前のとおり、資金を移動させて送金などすることを目的とした制度です。現在の預貯金口座などとは性格が違うところがございまして、そのような中で資金をどう保全していくのか、また、どう速やかに支払っていくのかということが大変重要だと思っております。
検討に当たりましても、繰り返しになりますが、賃金は労働者にとっては日々の生活を送る上で欠かせないものでありますので、確実な支払いを担保すること、労基法24条の原則をしっかり堅持するということを前提に検討していただきたいと思っております。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。佐久間委員。
○佐久間委員 ありがとうございます。
一点質問と、もう一点は御依頼をお願いしたいと思います。
まず、資料の8ページです。副業・兼業の場合もありますが、労災補償のあり方は労災保険部会のほうでも議論が進められる形になると思います。ぜひ、労災保険部会の審議とこちらの労働条件分科会の議論展開を相互に情報共有しながらやっていただきたいと考えております。
もう一点が12ページの「年休の取得しやすさ向上に向けた取組」というところでございます。この調査を行うということでございますが、今、中小企業でも年休5日の取得に向けて私たちも周知を図っているところでございますけれども、実態がどのぐらいとれているのか、また、時間としての取得というのがどういうふうに可能になってくるのか、そういうものを踏まえた調査になってくると思います。その調査のスケジュール感を教えていただきたいと思っています。
以上でございます。
○荒木会長 それでは、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 ただいまの佐久間委員の年休に関する調査のスケジュール感でございます。12ページの規制改革のところの11番にございますが、こちらの実態把握の調査に関しましては、令和元年度に調査を開始するという閣議決定をしたところでございますので、現在、今年度中の調査の開始に向けまして、調査項目など検討を進めているところでございます。
○荒木会長 よろしいですか。
○佐久間委員 年を越えてというものになる可能性もあるのでしょうか。
○労働条件政策課長 調査の結果に関しましては、どこの段階で取りまとめができるかといったところまではまだつかめておりませんが、その後に適切な御議論がいただけるようなきちんとした調査を実施してまいりたいと考えております。
○荒木会長 労災保険部会との関係は、よく情報を共有しつつ議論するということでよろしいですね。
ほかにはいかがでしょうか。世永委員。
○世永委員 ありがとうございます。
報告書の8ページの解雇無効時の金銭救済制度の関係について、要望、意見を述べさせていただきます。成長戦略実行計画では、解雇無効時の金銭救済制度について法技術的論点の検討を行い、労政審の結論を得て所要の措置を講ずるとされています。2018年6月以降、「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が設置され、議論が続けられていること自体、労働側としては賛成できないわけですが、法技術的論点の整理が目的であるはずの検討会において、実は制度導入を前提としているような議論が行われている、どのような制度や考え方をとるのがよいかというところまで立ち入ったやりとりがされているとの指摘もあります。検討会の議論は、法技術的論点の整理にとどめられるべきであり、制度導入ありきの制度の具体的な検討を行うような議論は行わないでいただきたいということについて強く要請させていただきます。
以上です。
○荒木会長 御意見ということで承りたいと思います。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、議題がほかにもありますので、資料No.1については以上とさせていただきます。
続きまして、資料No.2について事務局から報告をお願いします。
○労働条件政策課長 資料No.2をごらんいただきたいと存じます。医師の働き方改革について御報告申し上げます。
時間外労働の上限規制につきましては、大企業はこの4月から、中小企業は来年4月から適用されることになっておりますが、医師に関しましては、資料No.2の赤枠で囲っております部分、これは働き方改革実行計画でございますけれども、その適用が5年間猶予されまして、5年後をめどに規制を適用する。具体的な規制のあり方や労働時間の短縮策については、医療界の参加のもとで検討の場を設け、検討し、結論を得る、このようにされておりました。
2ページでございますが、このような働き方改革実行計画を踏まえまして、医療界の参加のもとに「医師の働き方改革に関する検討会」を厚生労働省では開いてまいりまして、平成29年8月2日から平成31年3月28日まで22回にわたり精力的な御議論をいただいたところでございます。3月28日にこの検討会で報告書を取りまとめていただいておりまして、その概要が3ページ以降にございますので、御報告させていただきます。
3ページでございますが、まず、医師の働き方改革に当たっての基本的な考え方が整理されております。1番にございますように、基本的な認識として、医師はぬきんでた長時間労働の実態があり、改革を進める必要があるということ、その背景としては、組織のマネジメントの問題のみならず、地域医療提供体制における問題など、関連する施策と医師の働き方改革が総合的に進められるべきであるとの御指摘でございます。医師の診療業務の特殊性として、応召義務、公共性、不確実性、高度の専門性、技術革新と水準向上といったことが指摘されております。
2番でございますが、今後目指していく医療提供の姿といたしましては、医師の宿日直の許可基準、医師の研さんの労働時間の取り扱いについての考え方を示すということ、医療機関内部のマネジメントや地域医療提供体制における機能分化などの問題、そのような全体として徹底して取り組んでいく必要があるという御指摘をいただいております。
その上で、具体的な医師の上限規制のあり方に関しましては、4ページから書かれておりますが、6ページをごらんいただきたいと存じます。図が描いてありますので、こちらを中心に御説明申し上げます。
時間外労働の上限規制につきましては、左側に「一般則」とございますように、1年間であれば360時間あるいは720時間といったものが上限として既に施行されております。5年後の医師に関しましては、その右側にA、B、Cとございますように、3つの区分けによって5年後から上限規制をスタートさせてはどうかというのが検討会の報告の内容でございます。
まず、Aにつきましては、診療従事勤務医に2024年度以降適用される水準として、年間で休日労働を含んで960時間ということにされております。これにつきましては、脳・心臓疾患の労災認定基準も考慮しまして、休日込みで月平均80時間という水準を考慮されたものでございます。また、月の上限は100時間とし、ただし、例外を認めるという内容でございます。Aが5年後から始まります医師の時間外労働規制の原則となるものでございます。
Bにつきましては、地域医療確保暫定特例水準とされております。あくまでもAが原則であるものの、しかしながら5年後の時点においてはいまだ医療の需給ギャップが存在すると見込まれること、さらには医師の偏在解消なども取り組みながら段階的に改革を進めていく必要性があるといったこと、そのようなことからやむを得ずAの水準を超えてしまうような場合、そのような医療機関につきましては、あらかじめ特定した上でBの特例水準を適用してはどうかということでございます。その水準につきましては、年間で休日労働込みで1860時間、1カ月については100時間、これは例外ありということでございます。
さらに、C-1、C-2というものがございます。これも医師に特有のものでございますが、C-1につきましては、研修医があらかじめ作成された研修計画に沿って一定期間集中的に数多くの診療を行うといった場合、C-2につきましては、高度な医療技能・技術を育成することが公益上必要とされている分野におきまして、あらかじめ承認された計画に沿って一定期間集中的に技能育成に係る診療業務を行う場合といったものでございます。
このように、A、B、Cという3つの区分けを設けてはどうかというものでございますが、BとCに関しましては、時間外労働の上限が高い水準に設定されております。したがいまして、あわせて強い健康確保措置が必要であるという御議論がされまして、まずは月の上限100時間を超える場合につきましては、面接指導と、それに応じた就業上の措置を講ずることとされております。また、連続の勤務時間の制限を28時間とすること、それから、勤務間インターバルは9時間を確保すること、例外的に9時間が確保できなかった場合は代償休息を与えること、この健康確保措置につきまして、医師の面接指導といったものは全体を通じてかかりますとともに、連続勤務時間制限、インターバル、代償休息については、BとCに関しては義務づけるという内容となっております。
一方、これに関しましては、右側に矢印がありますように、あくまでもこの水準は今から5年後のスタート段階でございまして、B水準、地域医療確保暫定特例水準に関しましては、2035年度末をもって解消するという報告となっております。
この点に関しましては、5ページをごらんいただきたいと存じます。年表のようなものをつけておりますが、ただいま申し上げましたのは、5ページの真ん中の年表に「2024」「時間外労働上限規制の施行」とオレンジで書いてある部分、ここにおけるスタート段階のものとしてこの検討会で示されたものでございまして、最終的には矢印が右に行きまして、緑色のところの2035年度末を目標に、このB水準は終了し、A水準に移行させていくことが考えられております。
この2035年の意味は、この年表に医療計画という青い矢印がございますが、都道府県単位で医師偏在を解消する目標年が、二度の医療計画を経て2036年とされております。医師の偏在対策と連動する形で医師の時間外労働の短縮、医療提供体制、そういったものを確保していき、2035年度末を目標に終了するというものでございます。
以上がこの検討会の骨格でございますが、この報告書におきましては、引き続き検討するとされた事項がございます。例えば、BやCといった対象医療機関をどのように特定するのか、先ほどのような健康確保措置をどのように義務づけ、どのように履行確保を図るのか、医師の時間外労働について最新の実態を把握するといったこと、これらに関しましては、今年度、新たな検討会を立ち上げまして、引き続き医療界の参画もいただいた上で検討を進めることにしております。そういった検討の状況につきましては、また、適宜のタイミングにおきまして、この分科会に御報告することも検討してまいりたいと考えております。
以上が資料No.2の医師の働き方改革の御報告でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等ありましたらお願いします。弥久末委員。
○弥久末委員 どうもありがとうございます。
今、検討会の報告書の一連の報告をいただきました。6ページ等が中心になろうかと思いますが、今のお話のように、医師の時間外労働の上限規制は原則年960時間としつつも、特例的水準として年1860時間を認めるということが示されています。この特例時間数を見ますと、過労死ラインの約2倍に匹敵する非常に大きな時間であるということで、労働側としては賛同しづらい内容であると思います。医師の命と健康確保に向けては、何より報告書で示されております勤務間インターバルや連続勤務時間制限、こういった追加的な健康確保措置を確実に行うことが非常に重要だと考えています。言うまでもありませんが、患者さんのためにという強い使命感のもとで働くお医者さんが長時間労働により命を落とすということは絶対にあってはならないと思っています。今後、先ほどのお話では、別途、新しい検討組織を立ち上げて議論を深めていくということでしたが、長時間労働にならざるを得ない医師に対してしっかりと追加的な健康確保措置を講じる方策を検討するとともに、特例を認めるにふさわしい労働時間短縮の努力を行っている医療機関を適切に評価できる仕組みづくりに向けて、議論をぜひ深めていただきたいと思っています。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
最後のほうで事務局に質問ですけれども、新しい後継の検討会のスケジュール感と、労働条件分科会との関係をもう少し御説明いただけないでしょうか。
○荒木会長 お願いします。
○労働条件政策課長 輪島委員からの御指摘の点でございます。この検討会に関しましては、まずは速やかに検討を開始していきたいと考えております。現時点では具体的にいつまでといったものは明確にございませんが、一つの考え方といたしましては、年内にどういったことを議論していくのかといったところになろうかと思っております。
労働条件分科会との関係でございますが、ただいま6ページで御説明申し上げましたような上限規制のA、B、Cといった形で医療機関を特定した上で課していく、このような仕組みに関しましては、医事法制あるいは医療政策の中において必要な措置が伴うものも中身として含まれております。したがいまして、今後は、この後継の検討会で議論した上で、医事法制、医療政策において必要な法令の整備などがあるのかどうか、そういった議論がまずされ、それらの措置がされた上で、あわせて労働条件分科会におきまして、上限の時間数を労働基準法の施行規則に定めていくことが想定されるところでございます。したがいまして、今後といたしましては、まずはこの後継の検討会におきまして、具体的な課題、詳細についての制度の詰めを行っていくことになります。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、資料No.2については以上といたしまして、次は資料No.3について事務局よりお願いします。
○労働条件政策課長 続きまして、資料No.3によりまして裁量労働制の実態調査について御報告を申し上げます。
裁量労働制の見直しにつきましては、当分科会におきましては、平成27年2月13日の建議に見直しが盛り込まれ、平成29年9月15日には、当分科会におきまして、裁量労働制の見直しをその内容に含む法律案の要綱について答申をいただいていたところでございます。
しかしながら、その後、資料No.3にございますように、平成25年度労働時間等総合実態調査のデータをめぐる御指摘がございまして、改めて実態を把握し直した上で制度のあり方を議論することになっているところでございます。
そのようなことから、1ページにございますように、統計学の先生方、労働経済学の先生方、労使関係者にも御参加いただいた上で専門家検討会を開催いたしまして、新たな調査の設計に関しまして御議論いただき、この4月に調査の内容についておおむね整理がなされたところでございます。
2ページにつけておりますのは、ただいま申し上げましたように新たな実態調査をした上で制度のあり方を考えていくといったことが附帯決議などで御指摘いただいているというものでございます。
具体的な調査の概要につきましては、3ページ、4ページで御説明申し上げます。
まず、3ページの冒頭にございますが、本年5月に一般統計としてこのような実態調査を行うことについて総務大臣の承認を得ているところでございます。
調査の対象は主に4つございます。1が裁量労働制を適用している事業場と、裁量労働制が適用されている労働者でございます。2が裁量労働制を導入していない事業場と、裁量労働制ではない一般の労働時間制度で働いている労働者でございます。このように適用・非適用で事業場、労働者それぞれに調査票をお送りする。合わせて4種類の調査票をお送りするというのが本体の調査の基本となっております。
主な調査事項でございますが、1は、裁量労働制が適用されている方、適用されていない方、それぞれにつきまして、労働時間の状況、健康の状況、業務における裁量の程度など、2といたしまして、裁量労働制が適用されている事業場につきましては、健康確保措置などの諸手続の実態などについて聞くこととしております。3は、裁量労働制適用についての満足度、4として対象業務の範囲などについての御意見もお聞きすることとしております。
4ページでございます。この調査結果からどのような比較ができるかということを書いております。1の事業場調査から出てまいりますのは、業務に従事する労働者の1カ月の労働時間の平均の比較が裁量労働制が適用されている事業場と適用されていない事業場で可能となります。また、1カ月の労働時間の状況の1日当たりの平均と、みなし労働時間の比較が裁量労働制が適用されている事業場において可能となります。2の労働者調査におきましては、1週間の平均労働時間の比較が裁量労働制を適用されている方と適用されていない方で可能となります。また、この1年以内に裁量労働制が適用された労働者の1週間の平均労働時間につきまして、裁量労働制に入る前と入った後で比較してどうかといったことも可能となります。
これらの調査につきましては、調査時期のところにございますが、総務大臣承認をいただいておりまして、現在、今年秋以降の調査の実施に向けて事務的な準備を進めているところでございます。
なお、調査・集計方法でございますが、データを適切に取り扱うという観点から、まず、調査を委託する民間事業者に関しましては、品質確保の観点から厳正に選定するということ、オンラインの調査システムを構築し、オンラインでの回答・回収を可能として、さまざまなミスが起きにくくするということ、さらに集計は、プログラムによって、何らか問題があった場合、再現可能な形で行っていくということでございます。
スケジュールに関しましては、今年秋以降の実施に向けて、現在、準備を進めているところでございます。
先ほど申し上げました調査票に関しましては、本日、お手元の参考資料No.3-1からNo.3-6で添付しております。概略は今、申し上げたところでございまして、後ほど御参照いただければ幸いでございます。
以上、資料No.3の説明でございました。
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見があればお願いします。柴田委員。
○柴田委員 ありがとうございます。
今回の裁量労働制実態調査に関しましては、公開の検討会で、今、御報告がありましたような調査方法や調査票について詳細な議論が行われまして、充実した内容となったと考えております。携わられた委員の先生方と事務局にまず敬意を表したいと思います。
ただ、もとを正しますと、裁量労働制に関する調査につきまして、2018年に調査手法に問題があったということが判明し、データが撤回され、やり直すことになったという経過があります。その後も毎勤統計を始めとする政府統計に関して、さまざまな問題が明らかとなっています。
今回の実態調査につきましては、内容への関心が高いだけではなく、政府の統計や調査をめぐる一連の問題を受けて、調査の信頼性に厳しい目が向けられていると考えております。調査が始まる段階でもありますので、適正に実施されるよう要望しておきたいと思います。よろしくお願いします。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
今、柴田委員と全く同じことを申し上げようと思っていました。2018年の国会審議でデータの不備の問題があり、2019年の国会審議では毎月勤労統計で、いわゆる統計問題というようなことで、変な話、二度あることは三度ないように、しっかり調査方法、実施体制、それから事後の検証、紙がどこに行ったとか、黒塗りばかり出して、また同じような議論にならないようにしっかりと取り組んでいただきたいというお願いをしておきたいと思います。
以上です。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。統計問題の御要望の点については事務局から何かございますか。
○労働条件政策課長 統計の問題に関しましては、今、まさに御指摘をいただきましたように、もともと裁量労働制に関しましては、データに不備があって混乱を招いたところでございます。その深い反省に立ちまして、今回の調査があるところでございます。また、今も御指摘がございました毎月勤労統計なども含めまして、調査というものについてより一層気を引き締めて、当然ながら適切にやっていく、そのような思いでしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、報告事項ということでお聞きしたということになります。
次の議題に移りたいと思います。次は「(2)賃金等請求権の消滅時効について」であります。資料No.4について事務局から報告をお願いします。
○労働関係法課長 労働関係法課長の長良でございます。
資料No.4「賃金等請求権の消滅時効の在り方について(論点の整理)概要」につきましては、私のほうから御報告いたします。
この問題につきましては、資料No.4と参考資料No.4をごらんいただければと存じます。
賃金等請求権の消滅時効のあり方につきましては、議論の発端となりましたのは民法の改正でございます。現行の民法の規定は、原則、債権は10年間行使しないときは消滅、これは客観的起算点という形でございましたが、例外として短期消滅時効というものがございまして、そのうち使用人の給料に係る債権につきましては、1年間行使しないときは消滅という規定が設けられておりました。この民法の短期消滅時効の特別法といたしまして、労働基準法における賃金等請求権の消滅時効の関連規定が設けられております。
具体的には、一番下の青く塗り潰してあるところが規定でございまして、労働基準法第115条でございます。こちらにつきましては、賃金、災害補償、その他の請求権は2年間行使しないときは消滅するということで、これについては客観的起算点という形で解釈、運用がなされているというものでございます。
この2年といいますのは、労働基準法ができた昭和22年の整理でございますが、民法の短期消滅時効と比較いたしまして、労働者にとって重要な請求権の消滅時効が民法の1年ではその保護に欠けるが、10年では使用者に酷に過ぎ、取引安全に及ぼす影響も少なくないため、2年とされたという整理がされているところでございます。
なお、このうち、退職手当の請求権につきましては、昭和62年に法律改正がなされまして、一律2年だったのを退職手当だけ5年に現在は引き上げられているところでございます。
規定上のその他の請求権といいますのは、年次有給休暇などがここに含まれております。
あわせまして、労働基準法の規定上、賃金台帳などの書類は3年間保存しなければならない旨の規定がございます。
こういう法律上の構成だったところが、民法が改正されまして、こちらは平成29年の6月に改正民法が成立して、2020年、来年4月に施行の段となっております。
改正後の民法につきましては、時効の簡素化、統一化のために、使用人の給料などに係る短期消滅時効は廃止した上で、債権は、1 権利を行使することができることを知ったとき(主観的起算点)から5年間、2 権利を行使することができるとき(客観的起算点)から10年間、この2種類に一本化されたということでございます。
この民法の改正を踏まえまして、特別法たる労働基準法の扱いはどうすべきかを検討するために設けられたのが「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」でございまして、こちらは、さきに申し上げた平成29年6月の改正民法の成立を受けまして、その年の12月に設置されました。委員はそちらに書かれている委員の方でございまして、労働条件分科会の安藤先生や水島先生にも委員に参画していただいているところでございます。
この検討会の最終会が先月、6月13日に行われまして、その場で検討会の論点の整理案をお示しいたしました。この検討会では、座長の山川先生に一任の上、取りまとめるという形で終わりまして、本日お出ししている参考資料No.4がこの検討会の完成版に位置づけております。
消滅時効のあり方について、論点の整理でございますけれども、資料No.4の2ページをごらんいただければと思います。概略を整理しておりますので、御説明させていただければと思います。
論点の整理は、大きく分けて4つございます。
1つ目が「賃金等請求権の消滅時効の起算点、消滅時効期間について」でございます。
この検討会でどのように整理されたか、順次ポイントをまとめているところでございます。「以下のような課題などを踏まえ、速やかに労働政策審議会で議論すべき」として「消滅時効期間を延長することにより、企業の適正な労務管理が促進される可能性等を踏まえると、将来にわたり消滅時効期間を2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要ではないかと考えられる」。
「ただし、労使の意見に隔たりが大きい現状も踏まえ、消滅時効規定が労使関係における早期の法的安定性の役割を果たしていることや、大量かつ定期的に発生するといった賃金債権の特殊性に加え、労働時間管理の実態やそのあり方、仮に消滅時効期間を見直す場合の企業における影響やコストについても留意し、具体的な消滅時効期間については引き続き検討が必要」ということでございます。
起算点に関しましては、これは民法の改正を踏まえた形で「新たに主観的起算点を設けることとした場合、どのような場合がそれに当たるのか専門家でないと分からず、労使で新たな紛争が生じるおそれ」があるのではないかというようなまとめがされているところでございます。
2つ目の論点が「年次有給休暇と、災害補償請求権の消滅時効期間について」でございます。
主に2つの意見がございました。まず、年休でございますが、「年次有給休暇の繰越期間を長くした場合、年次有給休暇の取得率の向上という政策の方向性に逆行するおそれがあることから、必ずしも賃金請求権と同様の取扱いを行う必要性がないとの考え方でおおむね意見の一致がみられる」ということでございます。
災害補償につきましては「仮に災害補償請求権の消滅時効期間を見直す場合、労災保険や他の社会保険制度の消滅時効期間をどう考えるかが課題」であるという整理がされたところでございます。
3つ目の論点が「記録の保存期間について」でございます。
公訴時効は、労働基準法違反である場合は原則として3年ということになりますが、「公訴時効との関係や使用者の負担等を踏まえつつ、賃金請求権の消滅時効期間のあり方と合わせて検討することが適当」ではないかというまとめをしているところでございます。
4つ目の論点が「見直しの時期、施行期日等」でございます。
民法改正の施行期日は来年の4月1日でございます。「民法改正の施行期日も念頭に置きつつ」、米印にございますように、来年(2020年)4月は中小企業の労働時間の上限規制や大企業の同一労働同一賃金の施行などがございますが、「働き方改革法の施行に伴う企業の労務管理の負担の増大も踏まえ、見直し時期や施行期日について速やかに労働政策審議会で検討すべき」ということでございます。
もう一つ「仮に見直しを行う場合の経過措置については、以下のいずれかの方法が考えられ」ということで、両論を併記しております。1つ目の経過措置の考え方は「民法改正の経過措置と同様に、労働契約の締結日を基準に考える方法」、2つ目は「賃金等請求権の特性等も踏まえ、賃金等請求権の発生日を基準に考える方法」、この2つの方法を両論併記しているところでございまして、これにつきましても、速やかに労働政策審議会で検討すべきということで整理されているところでございます。
資料の説明は以上です。
○荒木会長 ありがとうございました、
賃金等請求権の消滅時効期間につきましては、報告書では、今、御説明があったとおり、「将来にわたり2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要ではないか」との方向性が示されたところですが、具体的な消滅時効期間については、労使の意見に対立がある状況にあることなどを踏まえて、労働政策審議会で検討することとされたところであります。賃金等請求権の消滅時効期間については、労働者の権利を拡充すべきという方向性は示された一方で、企業の労務管理に与える影響も大きい課題であります。また、時効制度というものがそれぞれの社会において営んでいる機能等も視野に入れつつ、今後、十分議論を尽くす必要がある論点ではないかと考えているところです。
そこで、まずはこの報告書を踏まえまして、委員の皆様から御意見をいただければと考えております。御質問、御意見等がありましたら、どうぞお願いいたします。川野委員。
○川野委員 ありがとうございます。
御説明いただいた資料No.4の内容について、考え方をお話しさせていただければと思います。御説明いただいたとおりでございますけれども、改正前民法において使用人の給料に係る債権が1年で消滅するとされていたことは労働者保護の観点に欠けるということから、労働基準法第115条に定める賃金等請求権の消滅時効は、民法の適用を排除して、1年を上回る2年とした経緯があります。
また、会社の倒産や解雇があった際に、未払い賃金、いわゆる労働債権の請求のために労働者側が資料を整理して労働審判や訴訟の準備をしますが、その準備においては数カ月から半年以上かかる場合もあって、そうしたことを踏まえると、現行の2年の消滅時効期間では短いという声が聞かれます。
今回、民法改正によって消滅時効期間が5年と10年に整理されましたが、労基法上の労働者保護という趣旨を踏まえれば、一般的債権の時効を定めた民法の消滅時効期間を労基法が下回るということはあってはならないと考えているところでございまして、労働関係の債権についても改正民法同様の5年とすべきであると考えるところでございます。
また、2017年の民法改正の決定から2年が経過して、施行期日の2020年4月が目前に迫る状況でございます。ようやく労基法上の消滅時効について論点整理がなされたわけでございますが、時間がかかり過ぎていると言わざるを得ないと思っています。早急に改正の議論を進めて、改正民法施行と同時に5年の消滅時効期間の適用が受けられるようにすべきであると考えているところでございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
事務局に確認ですけれども、私どもの理解は、6月13日でしたか、さっき御説明がありましたが、前回、座長一任という形になって、きょう、初めて正式に参考資料No.4という形でファイナルなものが出たという理解でよろしゅうございますか。
○労働関係法課長 さようでございます。
○輪島委員 初めて見るというわけではないでしょうけれども、最終的なものということを踏まえて発言したいと思います。先ほど分科会長がお取りまとめといいますか、解説していただいたとおりだと思っておりまして、今後、本格的に労働条件分科会で議論するということでございますので、使用者側としては真摯に対応してまいりたいと思っております。
そこで、きょうは、参考資料No.4の16ページにございますけれども、昨年6月26日にこの検討会でヒアリングということで私ども経団連としても意見を述べさせていただきましたので、繰り返しになりますが、懸念事項ということで述べさせていただきたいと思います。
第1に、賃金等請求権の消滅時効期間を延長した場合には、賃金台帳、それに関連する記録の保存期間も延長するということになりますので、それによるコストの増加が企業経営に非常に大きく影響するのではないかと心配しているということでございます。
第2に、実際に労働者から未払い賃金の請求がなされた場合に、時間外労働等の過去の業務の指示の有無とか、さまざまな状況の確認が必要になるということで、この場合に、過去にさかのぼって時間外労働、休日労働の有無を確認するということは、単に保存義務があります賃金台帳等を確認するだけではなくて、メールの送受信や入退館の記録であるとか、法律で求められている以上のさまざまなものを残しておかなければ対応できないという、実務的には非常に難しい点があるのではないか。
加えて、組織再編が非常に激しい時期でございまして、例えば異動、転勤、退職等、5年前のそのセクションといいますか、関係する職場というものも、当時のことを知る人が誰もいないということもあるのではないか。5年、10年さかのぼって事実を確認するということは現実的ではないのではないかと考えております。
そういう意味で、現行の規定は、実務では定着していると考えておりまして、実際にそんなに不都合があるということでもないと思いますので、労働者保護という点についてもそれなりに担保されているのではないかと考えているところでございます。
最後に、現行の規定は、賃金債権の特殊性を踏まえて、企業の取引の安全性、労働者保護の双方に配慮されたものということで、民法では先ほど来御説明のあったとおりでありますが、民法とは独立してそのあり方を検討することも必要なのではないかと考えているところです。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。村上委員。
○村上委員 先ほど川野委員からも申し上げたのですけれども、賃金請求権の消滅時効について、私どももヒアリングで対応させていただいております。今、輪島委員から使用者側の立場で懸念点などをおっしゃいましたけれども、その点に関しても改めて、繰り返しになりますが、申し上げておきたいと思います。
主に輪島委員からは、資料や記録などの保管やデータの問題についての御指摘がありました。その点に関しましては、参考資料No.4の8ページにもございますが、ほかの運送費などでも短期消滅時効は廃止されておりまして、その点に関して、事業者側から負担を軽くするために短期消滅時効を残すべきであるという意見は出されておりません。労働に限って負担が重くなるというのはどうなのかということはございます。賃金だけ、データの保管が必要になってくるという話ではないのではないでしょうか。
また、現行の2年が定着しているという御指摘につきましては、確かに2年でずっと運用されておりますが、労働組合のない職場で解雇された労働者からの相談などに対応しておりますと、解雇されてしばらくたってから相談などに来られて、労働組合に入ったり、あるいは弁護士に相談したりして、ようやく申し立てをするときには半年ぐらい経過していることがよくある話でございまして、そうすると、残り1年半ぐらいしか請求できないということがケースとしてはよく見られるところでございます。働いた対価として、本来、支払われるべきものが支払われていないということが課題でございますので、その点、やはり早く民法と同様の5年にするべきという考え方でございます。
また、要望としては、2017年に民法改正が成立したわけですが、施行は2020年4月ということで、1年を切っているところでございまして、このままで2020年4月に賃金債権に関する労基法の改正も一緒に施行できるのかというと、大変不安があるところでございます。ぜひ早急に検討を開始していただくとともに、論点を整理して議論しやすいようにしていただきたいという要望でございます。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
佐久間委員。
○佐久間委員 ありがとうございます。
これから労働条件分科会で議論が進んでいくと思います。ただ、私ども中小企業としましても、賃金債権が5年以上になってくるとなると、先ほどの事務の関係、賃金債権以外のものでも同じだということがありますけれども、実際にはデータで管理している中小企業ばかりではありません。紙ベースでファイルをつづってやっているところもいっぱいあると思います。そこの中で、中小企業の場合、担当者はいろいろなことを担当したり、また流動性が多い職場ということもあれば、過去のものがどれだけの期間、存在しているか、非常に疑問なところでございます。また、これが延びたからといって、5年以上のものをいろいろさかのぼってくると、そこまでなかなか見切れないということが出てくるのではないかと思っています。
私どもは、労働側にとっては長ければそれなりの対応ができると思いますけれども、今までの実態等々を考えれば現状どおりということを望みたいと考えております。紙で管理していること、それから、労使間でも円滑に有効に機能していくためにも話し合いを持たなければいけないということもあると思います。書類が整っていない、そして期間が単純に5年になれば事務作業等も2.5倍になってしまいますから、それによって税理士、社会保険労務士、弁護士にお互いが依頼する費用というのも2.5倍以上になってくることになります。かなりの費用の問題も出てくると思いますし、賃金債権は優先的な債権でございますので、こういう債権があれば必ず優先的に払わなければいけないということはあると思いますが、それによってほかの債権者に対しても支払いがおくれてくる、また、支払いができなくなることもあると思います。そういうことで2年の現状どおりというのをぜひお願いしたいと考えております。
以上でございます。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
鳥澤委員。
○鳥澤委員 今回から参加させていただきます鳥澤でございます。
私は、本当に小さな会社でございますので、今、佐久間さんが言ったことと同じなのですが、中小企業の立場としてお話をさせていただきたいと思っています。
3点あるのですが、まず1点目は、先ほど言われましたように、中小企業の多くが未だに紙ベースで行っております。実際、うちの会社でもそれをデータ化しようという動きはあるのですが、データ化する人材がいない。そこになかなか手をつけられないというのが非常に大きな問題でございます。また、期間が延びることによって保管の場所等を含めて、いろんなものが、今、書類のハンディがあるのですが、増えていくのは大変というのがございます。
2点目が、労働者から未払い賃金の支払い請求があった場合の対応についてです。そういった問題になるのは恐らく簡単にできるような問題ではないと思います。複雑な経緯、要因がある場合ということでございますので、期間が長くなればなるほど、お互いにとって、記憶をさかのぼる、書類をさかのぼる、ここが非常に難しい作業になってくるのではないかと思っております。先ほどの話にもありましたように、5年となると担当がいなくなってくるのと同時に、今、中小企業同士のM&Aも非常に増えてきておりまして、5年たつと企業そのものがどこかに変わっているという状況も出てきております。そういったことを踏まえますと、期間が長くなるというのは、ある一定のところの期間で、今の2年というのはいいところではないかと思っております。
3点目は、有給休暇の問題でございます。これについてはまだどういう形がいいのかというのは書いてありませんでしたが、単純な考え方として、これも5年間になると、年20日として、5日間は必ず取得義務があるわけですけれども、残り15日間の4年間分、プラスその年と考えると、最大80日分を一挙に取得することも出てきます。果たして中小企業にとって、一人の方が80日間有給休暇をとったときに対応ができるほどの体力があるのかというと、非常に難しいと思っております。
中小企業の立ち位置を改めてお話しさせていただくと、なぜ存在できているのかということで言えば、中小企業というのは間接部門の人員が少ない、費用が少ないから存在できているのだと思っております。一般的な大企業に比べて、例えば事務職だとか、本業以外の部分にかかる人数が少ないから運営できているというのがあります。企業によっては、社長一人が全て事務職を行って、ほかの社員は全員、事業部門となってくると、一人にかかる負担が非常に大きいのが現状でございます。
こういった中で、さまざまな事務処理が増えていくということは非常に厳しくなってくるのと同時に、消滅時効の延長だけではなく、働き方改革によって事務職の負担が非常にふえているというのが現実でございますので、ぜひとも今後の延長に関しては深い配慮をいただきたいと思っています。特に労働基準法というのは罰則規定でございますので、民法とは性格が異なるものだと私は思っております。ぜひ、中小企業の活力が損なわれないようなことに留意していただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木会長 ほかに御意見はございますか。
両角委員。
○両角委員 ありがとうございます。
今、労使双方から御意見がありまして、消滅時効を民法に合わせるのか、現行のままにするのか、それともその間の何年にするのかということは、これからここで話し合われていくのかと思います。
また、時効の期間そのものとは一応区別される問題として、例えば割増賃金の定額払い制がとられている場合のように、法的なルールが複雑で不明確な点も残されているようなケースもございます。このような場合には、労働者はもちろんですが、使用者のほうも、未払い賃金があるのかないのか、あらかじめ認識することが難しいこともあり得るかと思います。そういう場合に、どういうふうにするのがいいのかということも考えに入れながら、この問題を考えていく必要があると思っております。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはよろしゅうございますか。
公労使それぞれから御意見をいただいたところであります。大変難しい問題ですので、当然まだ意見の隔たりが大きい点があろうかと思いますけれども、今後、民法の改正も施行されるという中で、この労働条件分科会としても何らかの着地点を見出していかざるを得ないのではないかと考えておりますので、引き続き御議論のほどをよろしくお願いしたいと存じます。
それでは、次の議題に移りまして「(3)その他」、これは資料No.5についてということでありますので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 資料No.5によりまして、働き方改革関連法の施行の状況等につきまして御報告申し上げます。
1ページから6ページにかけましては、3月までの状況を書いております。
7ページから御報告申し上げたいと存じます。
まず、1の「(1)年次有給休暇の年5日の取得義務付け」でございます。この4月から施行されている部分でございますが、例えば法定休日ではない所定休日を労働日に変更して、その日を年休として時季指定するといったような、今回の改正の趣旨に照らしますと年休の取得促進につながらない、望ましくない事案が散見されるところでございまして、右側にございますような新たなリーフレットを作成いたしまして、労働基準監督署におきまして周知や指導を行っております。
続いて、2の「(1)メディアを活用した周知」でございます。周知に関しましては、この間、さまざまな資料を作成し、あるいはテレビCMも流したりしたわけでございますが、今後、さらに中小企業の皆様、そして、この場でも何度か御指摘いただきました、働いていらっしゃる労働者の方々に対してもわかりやすく働き方改革を御理解いただく、そのような観点も含めまして、新たに動画を作成いたしまして、働き方改革法の周知を図っていきたいと考えているところでございます。夏以降、順次、インターネットなどで動画を配信できるように取り組んでいるところでございます。
「(2)説明会・セミナー等による周知・支援」に関しましては、働き方改革推進支援センター、労働局、監督署におきまして、引き続き実施しているところでございます。
次に、8ページでございます。2の「(3)時間外労働等改善助成金による支援」につきましては、今年度から勤務間インターバル導入コースの助成上限額を引き上げるなど、拡充しているところでございます。
(4)ですが、本年4月22日に日本商工会議所、東京商工会議所と厚生労働省との間におきまして「働き方改革の推進に向けた連携協定」を締結させていただいております。この協定に基づきまして、各種支援、広報、セミナー、そういったことに関しまして連携・協力を図っていくこととしております。
(5)ですが、ことし4月に根本厚生労働大臣が、働き方改革に積極的に取り組む企業ということで三越伊勢丹ホールディングスを訪問し、具体的な取り組みを視察いたしました。
続きまして、9ページ、10ページでございます。下請等中小企業への「しわ寄せ」防止対策でございます。時間外労働の上限規制や、年5日の年次有給休暇の確実な取得など、順次施行されておりますが、大企業、親事業者によります長時間労働の削減などの取り組みが下請など中小事業者に対するコスト負担を伴わない短納期発注、急な仕様変更、人員派遣の要請、附帯作業の要請など、いわゆるしわ寄せを生じさせることがないようにする必要がございます。
したがいまして、9ページにございますように、4月以降、新聞広告による政府広報、テレビCMによりまして「しわ寄せ」発注をしてはいけないということを流しております。
10ページでございます。6月26日に、厚生労働省、中小企業庁、公正取引委員会の3者によりまして「しわ寄せ防止総合対策」を策定したところでございます。具体的な内容を4つ書いております。
1番目に「事業者が遵守すべき関係法令の周知徹底」ということで、11月をキャンペーン月間として設定して集中的に行う。さらには、公正取引委員会、中小企業庁によりまして、不当な行為の事例集、わかりやすいものを準備いただいて、それを用いて一緒に啓発を行っていくといったことです。
2番目に「『しわ寄せ』に関する情報の共有」ということで、例えば「しわ寄せ」の相談情報が労働基準監督署などに寄せられた場合につきましては、地方経済産業局などにもそれを共有していく。そして、解決を図っていくといったものでございます。
3番目に「『しわ寄せ』防止に向けた重点的な要請及び厳正な指導」ということで、労働時間等設定改善法に基づきまして、労働局において要請を行っていく。あるいは公正取引委員会、中小企業庁におきましては、下請法違反のおそれがある事案に関しまして厳正な対応を図っていくといったことです。
4番目に「業所管省庁に対する働きかけ」ということで、業所管省庁におきましても、それぞれの業界団体に対しまして「しわ寄せ」事例あるいは「しわ寄せ」防止・改善事例、そういったものを収集いただいて、業界団体にフィードバックいただく。あるいは業界の経営トップに対しまして「しわ寄せ」防止について直接要請を行っていただく。あるいは下請法の「振興基準」に基づく行政指導を行っていく。
そのようなことを政府全体で力を入れて取り組んでいくことによりまして「しわ寄せ」を防止いたしまして、下請等中小企業におかれましても働き方改革に取り組んでいただく環境を整えていきたい、このような対策を講じているところでございます。
以上、資料No.5の御報告でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等があればお願いいたします。
松永委員。
○松永委員 ただいま御説明いただきました中で、いわゆるしわ寄せ対策ということでコメントといいますか、お願いを改めてさせていただきたいと思います。
経済界としましても、中小企業への無理な発注が行われることがないように、全体のサプライチェーンの中で働き方改革を推進していくことが重要だと認識しております。経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会を含む112の経済団体は、2017年に長時間労働につながる商慣行を是正するために共同宣言を行いまして、好事例を紹介するなどの活動を展開しております。引き続き、政府と協力して改善に取り組んでまいりたいと考えております。
一方、昨年、経団連で調査を行っていただきましたところ、中央省庁や地方自治体などの行政機関との取引においても同様の商慣行が一部あることがわかりました。例えば、見積もりの提出期間が非常に短期間であること、契約内容に少し曖昧な部分があって、想定外の対応、しかも急な対応が求められる事例、そういうものがあったということです。
その調査結果を受けて経団連としまして、ことしの3月に厚生労働省に対しまして、官公庁取引における長時間労働につながる商慣行改善に向けた要請を行いました。厚生労働省からは、今回の要請内容を省内でも共有するとともに、関係省庁にも展開していくということでコメントをいただいております。
民間企業としましても、日々、効率化や、付加価値の高い仕事をどういうふうにやっていくか、懸命に努力しているところでございまして、例えば、簡単なことですが、就業時間以外のところで極力、取引先に連絡をとらないようにするなど、すぐにできることもあると思っています。働き方改革については国全体の課題だと思っておりますので、引き続き、官民協調しながら商慣行の改善に向けて一層取り組んでいきたいと考えております。よろしくお願いしたいと思います。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。村上委員。
○村上委員 今、松永委員からあった御指摘については、私どものところにも同様の意見が出ておりまして、官公庁からの発注についても同様に扱ってほしいという要望がありましたので、あわせてお伝えしておきたいと思います。
また、直接この分科会のお話ではないかもしれませんが、せっかくの機会なので申し上げたいと思います。働き方改革関連法の施行については御報告いただいたような支援策をしっかりやっていただきたいということですが、その際に、先ほど鳥澤委員からもありましたが、中小・零細企業においては間接部門、人事・労務担当者が専任でいるわけではないということからすると、周知や支援をする主体というもの、担い手を広げていかなければとても回っていかないのではないかという問題意識を持っております。そういったことで言うと、社会保険労務士などの専門家をどんどん活用していくということが必要ではないかと思っております。ハラスメント防止や女性活躍なども、改正法が施行されていけば、そういった需要はさらに高まっていくと思います。
何を申し上げたいかというと、現場で、例えば労災認定に時間がかかって長期化しているというような声も出されておりまして、翻ってみると、監督官が監督官としての仕事に集中できていない部分もあるのではないかという指摘がありました。また、安全対策などについて専門人材が確保されてきていないのではないかという指摘もありました。そういったところは、監督官でしかできない仕事は監督官にやっていただく、それ以外の周知や支援など、ほかの方でもできる仕事は担い手を増やしていくということも、ぜひ考えていただきたいと思っております。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、時刻が参りましたので、本日は以上とさせていただきたいと思います。
最後に、次回の日程等について事務局からお願いいたします。
○労働条件政策課長 次回の労働条件分科会の日程、場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木会長 それでは、以上をもちまして、第135回労働条件分科会は終了といたします。
なお、議事録の署名につきましては、労働者代表の川野委員、使用者代表の齋藤委員にお願いいたします。
本日は、お忙しい中、どうもありがとうございました。