第5回 「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」議事録

日時

令和元年6月20日(木)16:00~18:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター新館 11階 ホール11C
(〒100-0011 東京都千代田区内幸町1-3-1)

議題

(1)眼の水晶体の等価線量限度について
(2)その他

議事

  
○永井座長 では定刻になりましたので、ただ今から「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」を開催いたします。お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。初めに、本日の出席状況でございます。細野委員、萩原委員は欠席とのことです。三上参考人の代理として中村参考人、また、佐々木参考人の代理として辻参考人が出席されていらっしゃいます。また、持田参考人は遅れてご到着とのことでございます。本日は放射線影響協会より伊藤参考人、日本画像医療システム工業会より小田参考人、量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所より神田参考人にご出席いただいております。カメラの撮影はここまでとさせていただきます。では議事に入る前に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 それではお手元の資料をご覧ください。議事次第が1枚ございまして、その後ろに配布資料がございます。資料1としまして、眼の水晶体の等価線量限度について 第4回までの検討会の議論、資料2として、十分な放射線防護を行っても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者に関する実態調査について、資料3 放射線防護用品の開発工数に関するヒアリング結果について、資料4 医師法・医療法と労働安全衛生法の関係性について、参考資料として、参考資料1 医師の働き方改革に関する検討会 報告書、参考資料2 国家線量登録制度に関する検討状況について、参考資料3 除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度の概要、この他、お手元に机上配付資料として資料がございますが、検討会の説明の中では中身について事務局の方から説明はしない予定でございます。この内容につきましては、プレスリリースが中にございますけれども、このプレスリリースは報道されることによって同種事案の防止に資する目的で行っているものでございます。一方、行政機関のホームページに公開することによる無用な社会的制裁を防止する観点から、本検討会の資料としては採用していないものでございます。このため、検討会の議論の中ではご自由にご発言いただいて構いませんが、ご発言いただく際、病院や個人の特定に繋がる情報につきましてはご留意いただくようお願いいたします。また、検討会終了後、回収させていただくことにご理解をいただきますようお願いいたします。事務局からは以上でございます。
○永井座長 ありがとうございました。資料の不足等ありましたらお申し出ください。では、本日の議事に入ります。まず、事務局で第4回検討会までの議論についてまとめていただきました。資料の説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 資料1をご覧ください。1枚めくりまして、第4回検討会までの議論についてのまとめでございます。一つ目としまして、意見具申どおり眼の水晶体の等価線量限度を見直すことについては、防護眼鏡等の放射線防護の強化、猶予措置の必要性、健康確保措置の強化の3つの論点について検討が必要となり、防護眼鏡等の放射線防護の強化について、関係者へのヒアリングにより防護眼鏡等の開発に要する期間を確認することが必要。教育・研修については、必要な教育が実施される為には、労働安全衛生マネジメントシステムなどの取組を着実に進め、事業者が安全衛生管理体制を確立することが適当。猶予措置の必要性については、一般的な医師については問題ないが、地域医療が守られるとのエビデンスやトップレベルの医師についての情報が提供されるまでは、一律に引き下げることは妥当ではなく、調査して示すことが必要。医師法における応召義務と安衛法における危険防止措置・健康障害防止措置との関係性を整理することが必要。健康確保措置の強化については、十分な放射線防護を行っても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者に対して、電離放射線障害防止規則第56条に規定する健康診断について健康診断の項目の省略は認めないことが適当。次のページをご覧ください。第4回検討会までのまとめの続きでございます。二つ目、三つ目を併せて説明しますが、緊急作業従事者、及び除染等業務に係る眼の水晶体の等価線量限度については意見具申どおりとすることが適当。四つ目として、眼の水晶体の等価線量を算定するための実用量については意見具申どおりとすることが適当とされております。そこで本日の論点でございますが、意見具申どおり眼の水晶体の等価線量限度を見直すことにつきましては、十分な放射線防護を行っても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者に関する実態調査の進捗状況についてご報告いただきます。また、防護眼鏡等の開発に要する期間について、医師法・医療法と労働安全衛生法の関係性について議論したいと思います。以上です。
○永井座長 はい、ありがとうございます。意見具申どおり眼の水晶体の等価線量限度を見直すことを考えるにあたって、防護眼鏡等の放射線防護の強化、猶予措置の必要性、健康確保措置の強化について、これまでご議論いただいてまいりました。防護眼鏡等の放射線防護の強化と健康確保措置の強化については、第4回までに一定の方向性が示されたかと思います。なお、十分な放射線防護を行っても高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者に関する実態調査の進捗状況、また、新たな線量限度に対応した防護機器の開発に必要な期間、さらに、眼の水晶体の等価線量限度を見直した場合に現場で医師法・医療法の遵守と労働安全衛生法の遵守の間で生じる齟齬について、あるいは困難について、どのように考えたらよいのかという点について、本日資料が用意されております。これからご議論いただければと思います。また、放射線業務従事者の被ばく線量限度の登録管理制度に関する現状につきましても、参考人にお越しいただいておりますので後ほど情報提供をいただきます。よろしいでしょうか。ではまず、労災疾病臨床補助金研究班で実施していただいております、十分な放射線防護を行ってもなお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者に関する実態調査の進捗状況について、欅田委員よりご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○欅田参集者 はい。ありがとうございます。欅田です。今、まとめていただきましたように、地域あるいは機関でトップレベルの医師におきましては、線量限度の引き下げに伴いまして、診療機会の制限が入るのではないかということが今までの議論の中であったところであります。それで、その実態調査を行うということが求められましたので、現在、本調査の方は実施しているところですけれども、この実施にあたってのフィージビリティ検証を行いましたので、その概要について報告させていただきます。資料2をご覧ください。1枚めくっていただきまして、2ページ目ですけれども、今から報告する内容に関しましては、今お話ししましたような背景のもとで、トップランナーで水晶体の被ばく線量が高く、質的に代替できないような医師、あるいは地域の医療を担って量的に代替できないような医師において、限度を超えるような機会があるのかどうか実態調査を行うための方法論に関してフィージビリティスタディを4月から行ってきたというところであります。それとともに、こういったような調査を行った際に今も議論のありました、防護眼鏡等、どうしても表現としては防護眼鏡が一番に出てくるわけですけれども、基本的には様々な防護措置を組み合わせてやっていかないといけないのですけれども、その中でも防護眼鏡が実際使うにあたって、現状販売されているようなものの使用勝手がどうなのかといったようなことに関して調査を行いましたのでご報告いたします。さらに、現在実施中の本調査に関しましても進捗をご報告したいと思います。ではもう1枚めくっていただきまして3ページですけれども、フィージビリティスタディの調査方法に関してです。この検討会の委員の中にもおられる医療機関の方々にご協力いただきまして、フィージビリティスタディを実施しております。それぞれの医療機関での使用装置に関しましては、X線発生装置はそちらに書いていますように島津さん、SIEMENSさん、日立製作所さんといった形で、代表的な医療機器を使っているようなところであります。防護方法に関しましては、一つは防護眼鏡ということで、広く使われておりますパノラマシールドの鉛当量としては0.07mmというふうな軽いもの、あるいは0.6mm、前面が0.5mm、側面が0.6mmというふうに鉛当量の大きいもの、こういった眼鏡を2つ準備しまして、下に図1、図2という形で写真が載っていますけれども、こういったものを使って対応いただきました。加えて実際施術する時、天井吊り型の防護板ですね、図3に示しておりますけれども、こういったものの設置状況も確認しながら行ったところであります。線量の測定に関しましては、1症例ごとの被ばく線量を評価するということで、蛍光ガラス線量計、図4に示しておりますけれども、1.5cmくらいの蛍光ガラス線量計、これを用いまして、設置としましては前回も回覧しましたけれども、図5に示しますように防護眼鏡の内側と外側、それぞれ左右の4箇所に付けまして線量を評価します。図5に関しましては、これは専用のホルダーがありますのでカセットのような形でセットできるものがありますけれども、研究班で開発していますそのようなホルダーを使ってセットしていますが、そういうのがつけられないものに関しては図5に示しますようにテープで眼鏡の内側、外側、それぞれ左右に付けて4箇所で測定を行ったところであります。実際どのような結果になったかと言うことで、最初に4ページですけれども、トップランナーを想定して大学病院の循環器内科の先生にご協力いただいたものです。実際、実施しました症例に関しましては、2段組になっていますけれども、介入前、介入後ということで、介入前に関しましてはちょっと小さくなりますが、一番下のところに2行に渡って書いていますけれども、PCI、経皮的な冠動脈形成術ですね、この治療的なものが3例、それと冠動脈カテーテル検査、CAGが2例、合わせて5例の方について、介入後の分については同様にPCIが2例、CAGが3例の方に実施した時の線量を評価しております。それで、表の見方ですけれども、左右に付けておりますので右の水晶体の等価線量率、線量率で評価しております、左も同様に線量率ということで、一番上に介入前の遮蔽版というような形で書いていますが、これは防護眼鏡の外側の線量を読んだ時の分、2行目に遮蔽版プラス防護眼鏡と書いていますが、これは防護眼鏡の内側の線量を評価した時のものになります。これで、通常の作業をする時の線量を先ほどの5例の方に測っていただいて返していただくと。その際に、診療放射線技師の方々にもご協力いただいて、施術中の術者の写真、防護板の設置状況等の位置関係がわかるような写真を撮っていただいて送り返していただく。それを見ることによって対応をとれるところがどのようなものかということで、助言して、介入後、同様に測ったというような形になります。結果を見ていきますと、線量率は平均±SDと中央値で示していますけれども、中央値で見ていただきますと、この方法では通常右眼より左眼の方が線量率が高くなりますので、左眼の方で説明していきますけれども、眼鏡の外側、遮蔽板だけの線量率が中央値で5.4μSv/minというような状態です。眼鏡の内側のものになると4.0という形で低減率としては26%ぐらいになります。この後介入を行って、実際測定したところでは、遮蔽板のみで3.8ということで、さらに減衰し、遮蔽板と眼鏡を実施した場合では1.4ということで、最初の遮蔽板の外側に比べると、防護眼鏡を使わない状況に比べると、74%の低減率がありましたという形で見ていただければいいと思います。ちなみにこの方は昨年度の実績として、その下に表にしていますけれども、施術数、年間で183例ということですけれども、今の中央値の線量率と実際施術した時の透視時間ですね、先ほどの一番下のところに時間が書いてありますけれども、これから1症例の被ばく線量を推定して、症例数が少ないものですからざっくりとした値になりますけれども、年間に可能な、20mSvまでになる可能な症例数はいくらなのかということを見ていきますと、遮蔽板のみであると165ということで、昨年の実績より少なくなるということは、昨年度、このままの計算で行くと計算上は20mSvを超えていますよというふうな実態になります。一番右側、遮蔽板プラス防護眼鏡の介入後の分は784例可能になりますよということで、現状183例を十分にクリアできる線量率になって対応取れますというふうな形で見ていただければと思います。引き続き症例を説明していきますけれども、ちょっとその介入というのをどのように行ったかということを見ていただくために、ページをいくつかめくってもらって9ページを開けてください。9ページに施術中の写真がありますけれども、左側に介入前とありますが、左のブルー衣を着ている人が術者ですけれども、その奥にフラットパネルディテクターが患者さんの上に見えるような形になっています。その左側に天井吊り型の防護板が入っている状態なのですけれども、これが通常やっている状態のものとして写真を撮って送っていただいたものです。これでいきますと線量が高かったのですけれども、見てわかりますようにこのフラットパネルディテクターと術者の眼のちょうど間に防護板を設置しているようなイメージなのですけれども、実際の散乱線というのは患者さんが散乱体になってそこから散乱線が来るものですから、本当はこの防護板が患者さんに密着したような位置になることが望ましいので、そういったことを助言して、右側に介入後とありますけれども、防護板は体に合うようにRが切ってあるのですけれども、そのRを使って患者さんの体にフィックスするような形で正しく設置してもらう、そうすると線量が下がりますよといったようなこと、こういった介入を行いながらその他の症例についても検討を行っていたところであります。それを踏まえて、もう一度戻ってもらって5ページをご覧ください。これは大学病院の放射線科の医師の方ですけれども、施術はまた一番下のところに2行書いてありますけれども、介入前がTACEと言って肝臓内の肝動脈化学塞栓術ですね、そういったものを3例、介入後も3例実施しているところであります。この場合ですと介入後が右側の方が高い状態になっていますので、右側の眼を評価対象として説明していきますけれども、先ほどと同様に見ていただきますと、眼鏡の外側の防護眼鏡をしていないとした時の介入前の線量率の中央値が2.3μSv/minというような状態であります。眼鏡をしてもあまり変わりないところでそこに介入を行って見ていきますと、遮蔽板の位置を調整しただけでも30%くらいの低減になって、眼鏡をつけると合わせて74%の低減がありましたというふうな形になります。この方は施術数としては昨年度実績が174例なのですけれども、線量率の中央値と透視時間の中央値から割算していきますと遮蔽板だけで防護眼鏡をかけてなくても531例実施可能ということですので、昨年の実績線量は比較的低いというような形になります。ただし遮蔽板の位置調整と防護眼鏡をきちんとつけると、一番右の方ですけれども、1773例可能ということで70%以上の低減が可能、介入する余地が十分にまだ残されているような状態でしたというのが見てわかるかと思います。同様に6ページですけれども、今度は呼吸器内科の先生にご協力いただいた時のものであります。施術前はTBLBと言ってtransbronchial lung biopsy、経気管支肺生検ですね、この場合には管球との位置関係から左眼の方が高くなりやすいものですから左眼の水晶体の線量率の中央値をご覧いただければと思いますけれども、防護板なし、眼鏡なしというような状態ですと7.1μSv/minという線量率でしたが、眼鏡をかけることによって38%低減、4.4μSv/minになると。防護板の設置状況とかを介入していくことによって防護板、それとともに撮影条件ですね、1秒間あたりのフレームの枚数とかそういったことに関して、あるいは絞りといったことに関しても支障のない範囲で調整いただくような形にしますと1.7μSv/minということで眼鏡をかけない状態と比べると76%の低減効果があったということで、この方の場合も昨年度実績が204例ですけれども、防護板なしで眼鏡なしの状態だと213例できるということですから、ほぼもう20mSvに達するような状態だったのですけれども、眼鏡をかけて、いろんな対応を取った後であれば992例まで可能ということで、非常に低減できて70数%の低減が可能で十分に余裕がある範囲に収まるというふうなことが見て取れるわけです。次、見ていただきまして、今までの分は大学病院の先生でしたけれども、今度は地域のトップランナーで量的にも対応が難しいことが起こり得るかもしれないという形の、総合病院の方にご協力いただきまして循環器内科の先生での症例でございます。実施例に関しましてはアブレーションが5例、介入前の状態、介入後が3例というような状態で、この場合も位置関係的に左眼の方が高くなりますので左眼で見ていただきますと、遮蔽板のみであれば中央値が8.8μSv/minというような状態でしたけれども、眼鏡をかけることによって3.8μSv/minということで、眼鏡だけで60%くらいの低減効果がある。さらに介入を行いまして、遮蔽板の位置関係とかを調整することによって、最終的には1.2μSv/minということで、眼鏡をかけていない状態に比べると86%の低減効果がありましたというところです。この方は昨年度実績152例行っておりましたけれども、こういう対応をとると886例対応することが可能という形になりまして、十分に限度をクリアできるような状況ということで、ここまで介入に成功した事例のご紹介になります。もう1つ最後に出てくるのが循環器内科医師(ホ)という形でありますけれども、この方に関しては同じ医療機関なのですけれども、ちょっと介入の対応の仕方が、情報交換の中でも失敗があった結果、十分な低減が得られなかったというふうなものについても提示させていただいております。この方は実際の実施症例数に関しましては一番下に書いておりますように、PCIが4例、CAGが1例、n=5で介入前に実施しまして、介入後はPCIが1例、CAGが2例というようなn=3でやっていますけれども、また位置関係、この人も左側の方が高くなりますので左の中央値を見ていただければいいのですが、遮蔽板のみの眼鏡の外側の線量は7.0μSv/minというような状態、眼鏡の内側は3.1で先ほど同様に56%くらい眼鏡だけでの低減効果があります。この状態に先ほど似たような形で介入を行ったのですけれども、介入を行ったところ、残念ながらこの場合におきましては遮蔽板のみで眼鏡の外側の線量が7から12.2というふうにむしろ高くなってしまったと。透視時間は下のところに書いてありますけれども、透視時間はむしろ短くなるくらいの状況なのですけれど、線量率としては高くなってしまった。眼鏡の内側も5.5ということでやはり高かったというふうな状態になっております。これらについてどのような介入を行ったかということに関して、ページをめくっていただきまして9ページですけれども、9ページは先ほど言いましたように成功事例のもので、防護板の位置関係を散乱体が患者さんになるのですよということを十分に理解していただいて、患者さんと術者の眼の間に防護板が入るような設定をしてもらうときれいに下げることができましたというのが先ほどの成功例の解析4のものとかになるのですけれども、10ページの方、解析例5の失敗例という紹介した方ですけれども、こちらは介入前の、ちょっと見にくいですけれども防護板の設置がCアームでフラットパネルディテクターが斜め11時くらいの方向に見えますけれども、ここと術者の間のところに入れているのですけれども、これの設置位置を改善しましょうというふうな形で助言を行ったところ、右側の介入後の写真がありますけれども、患者さん側に防護板を近づけすぎた結果、防護板がフラットパネルディテクターの術者から見た外側に行ってしまうという形になりまして直接線も散乱線も防げないような位置関係になってしまったということで、むしろ高くなってしまったというようなところがあります。なかなか物理的にこの天井吊り型の防護板を上手にセットするというのが難しい状況も出てくる時がありますので、そういったところに対する工夫が必要になってくるかなという感じです。ただこれらを、実際に訪問するのではなくて、先ほど言いましたように写真を送ってもらって介入していくということをやったのですけれども、その中ではなかなか、ほとんどの場合は成功していますけれども、こういった事例も出てくるところで、具体的にそれを上手に把握してもらうためには、11ページを見ていただければ、実際これは動画として情報をお送りしたのですけれども、必ずそれぞれの医療施設にはこの電離箱型の線量計とかがありますので、実際に防護板を設置した時の線量率を測っていただくと位置関係がわかるということで、左側、不適切な場合というふうな形で書いていますけれども、患者さんの代わりに、ファントム、下に白く四角に見えているところがありますけれども、このファントムを置いておいて、このファントムと防護板の位置関係を適切にするとどのように線量率が変わるのかということで、お配りしているのは紙ベースですから静止画になっていますけれど、これを動画で取ったもので位置を動かした時の線量率の変化を一目で理解できるような形の説明を作ってお送りして見ていただいております。左側の絵では、フラットパネルディテクターが十分にカバーできないような位置で直接線もカバーしきれていない状況、さらに散乱体からの散乱線も防護できないような位置のところに入っているものですから、眼のところでの線量率が0.77mSv/hと高くなるのですけれども、患者さんとしてもファントムですね、その白い箱のように見えますけれども、そのファントムを十分覆い隠すような形に防護板を設置すると0.45mSv/hというふうな形で、適切な場合には線量率は下げることができますよというような形で見ることができます。こういったものを、先ほども言いましたように動画でお配りしていて、実際それを現場でも再現していただくと説明もしやすいということで、ご利用いただいて、多くの分に関しては適切な対応が取れているというところであります。今の症例に関してまとめたものが12ページのところで、まとめ(1)というふうな形で説明しております。それぞれの線量率、介入前、介入後は今お話ししたような数値が書いてあるところで、結論として一番下の介入効果としての低減率%というのを見ていただきますと、先ほど失敗例としたのが一番右端の分で21%となっていますけれども、それ以外の部分に関しましては75%前後から80%を超えるような低減率ということで、防護眼鏡の外側に対して防護眼鏡と遮蔽板を上手に使うとこれだけの低減効果が得られますよということを評価することができました。ここまでの作業は、実際は先ほど示しました線量計をパックにして郵送して、診療放射線技師の方とか施術するドクターご自身によって防護眼鏡に線量計を付けていただいて日ごろの診療を行ってもらう、それを返していただいて、読み取って、評価したものをフィードバックするというふうな形でやりましたけれども、非常に短期間の中でこういった操作をすることができるので、本調査でもこういったことが実施できるということで、現在本調査の方を実施しているところです。ただし一番下に書いてありますように、状況によってはその防護介入方法の本来の意図が十分に伝わらない時がありますので、そこは慎重に情報交換をしながら進めているところであります。これがフィージビリティスタディの状況で、引き続き説明をさせていただきますけれども、併せて今のような形で防護措置をとってもさらにまだ20mSvを超えるなりで、新たな防護眼鏡を準備するとかという必要があるのかということで、現在市販されている眼鏡について着けたときの着用感等についての評価も行いました。ここでは防護眼鏡A、B、Cというふうな形で紹介しておりますけれども、別に製品の優劣を評価するものではなくて、この後でもご紹介がありますように、製品開発の際に実際使用者サイドで関心があるようなポイントがどういったところなのかというようなことを認識していただくためにこういったものを行っておりますけれども、製品A、B、Cの特徴としましては、鉛当量として一番上のものは前面が0.75mm鉛当量、側面が0.5mm、Bのものが0.3mmあるいは0.15mmといったところで、Cが0.07mmということでCが一番鉛当量としては薄いものになってきます。当然それに比例して重量もA、B、Cと従って軽くなっていき、Aが81g、Bが68g、Cが51gといったようなものです。ちなみに一般に近視矯正とかでかけていただいている眼鏡がだいたい20gくらいですので、どの程度か感覚として見ていただいたらと思います。これを先ほどと同様に、14ページの資料をご覧ください。先ほどフィージビリティスタディでやったのと同様に線量計を防護眼鏡のそれぞれ内と外、左右に付けて、調査対象検査と書いてありますけれども、ERCPとか先ほどの循環器関係のCAG、PCI等の措置を行う時に線量を評価するということを行いました。さらに使用感についても調査を行っていたところです。線量についてまず見ていきますと、15ページをご覧ください。先ほど紹介したと同様に、右眼の遮蔽率、左眼の遮蔽率ということで、個々の線量率は示さずに遮蔽率をそのまま示しておりますけれども、施術内容、細かいことは欄外に注釈で書いてありますが、Aの眼鏡を使っていただいている時には管球との位置関係からどちらかというと右眼が高い線量になるような時のものでして、この時の遮蔽率が右眼で81%というような状態、B、Cに関しましては左の方が高い線量率になるような対象の施術を行っておりましたけれども、それぞれその時の遮蔽率は71%、60%ということで、鉛当量に応じた遮蔽効果が認められるというのがこの結果であります。一方で、それらを着けた時の使用感、好感度については16ページの方をご覧ください。実際着けていただいた医療従事者の方、医師、看護師、診療放射線技師の方々に、簡単な質問紙で、防護眼鏡の使用感の評価ということで、視野の大きさ、視野の歪み、レンズの曇り、防護眼鏡の重さ、こういったものについて7点評価をしていただきました。また、防護眼鏡の好感度として、購入意欲があるかどうか、使用したいかどうかといったものについても確認を行いました。17ページをご覧ください。今の7段階評価の結果を箱ひげ図でお示ししているところですけれども、左上が視野の大きさについてのものです。箱ひげ図が3つずつありますけれども左から眼鏡のA、B、Cというふうな形になっております。点数としては上に行くほど良い評価になっているように記載しておりますけれども、視野の広さはCが最も見やすいというふうな形になっている。つけた時の視野の歪みに関しましては、防護眼鏡のBがちょっと特異的に歪みが非常に強く出るということで若干低い評価になっているというようなところです。眼鏡の曇り具合に関しましてはやはりCが一番使いやすくて、Aは曇りがちになると。Aはいわゆるゴーグルのような形でちょっと囲い込むような形になっているのですけれども、その結果、眼鏡の中が曇りがちになるというふうなことで点数が低くなっているところがあります。重さに関しましては、全体的な重さがA、B、Cとだんだん軽くなっていくところがありますので、そういった形での点数が反映されているような状況であります。18ページをご覧ください。そういったことを踏まえて、好感度として購入したいか、使用してみたいかというようなところを見ていきますと、どうしてもやはりA、B、Cの順番で、青いところが使用したいというふうな好感を示している割合ですけれども、Cが一番高くて、Bがさっきの視野の歪みが強いというふうなことがありまして若干低い点数になっているというところです。自由記載でのコメントを下に書いていますけれども、Aに関しましては、フィット感が良かったのですけれどもゴーグルのような形で閉塞感があって、曇ってくるというところに関する課題が挙げられているところがありました。Bに関しましては、歪みが非常に強いという意見が多数出ているというようなところでありました。Cに関しては、かけた感触も支障がなくて、カバーされているような感じで圧迫感がなく、安定している、軽いし使い勝手が良いというようなコメントが多く見られたところであります。19ページをご覧ください。今のことをまとめますと、A、B、C、それぞれの特徴がどうなのかというと、遮蔽率、一番左端に書いてありますけれども、遮蔽率を%で示していますが、これは鉛当量の高いA、さらに順番にB、Cの形で遮蔽率が下がっていくというようなところです。鉛当量はさっき紹介しましたけれども、右に書いていますように、Aが前面で0.75mm、Bが0.15、Cが0.07という形でどうしても鉛当量に応じた遮蔽効果になってくる。ただし使い勝手、全体的な状況は○、△、×で示していますけれども、そういった中から好感度としてはCが一番好感度が高いというような状況が得られたというところであります。眼鏡をかける時の調査に関しましてはこういったところですけれども、さらにこれらを踏まえて、本調査、現在実施しているところの概況について20ページのところでご紹介させていただきます。先ほどのフィージビリティスタディを受けて、短期間の中で実施可能ということで、前回ご紹介しましたようにこちらの委員として入っていただいている各学会の方から全国のトップランナーになる方々のご推薦をいただきました。各学会から10名くらいのご推薦をいただきまして、その方々に研究班の方からコンタクトを取りまして、昨年までの被ばく実績等を確認し、高い線量の方々を選択させていただきまして、学会の方に確認いただいて最終対象者とさせていただくというふうな形で実施しております。実際の参加施設、参加者数はこの表に示しているところでありまして、各学会から2名、3名、消化器に関しても施術方法が明らかに違う方法があるということで5名の方に入っていただいてやっております。1人の医師あたり介入前の調査について5症例を目指して、介入後も5症例を目指して実施するということで、現在の測定完了施設が6月14日現在という形でまとめていますけれども、介入前の調査は全部終わって、介入後についてもほとんど終わっているところであります。ということで、次回までにこれらの詳細をまとめてご報告したいと思います。なお、一番下のところに個人線量計の装着状況ということで、10名ぐらいの方々を各学会の方からご推薦いただいたのですけれども、その中から上に示した対象者を選択する時に、昨年度までの被ばく実態をヒアリングするというところで実際の線量計の装着状況について確認しましたところ、やはり放射線関係、日本医学放射線学会とかIVR学会の方々は100%装着しているのですけれども、それ以外の学会の方々はかなり低い装着率になっているというところが、これが非常に大きな問題かと思います。前回までいろいろ眼鏡だけじゃなくて総合的な対策が必要なのだということをお話してきたところでもありますし、そもそも線量を測定するということは、これは超えるとか超えないとかよりも事前に法令としてやっていかないといけない最低レベルなのですけども、それが上手にできていないところがあるということに関しては、これからさらに教育の場を設けて、こういったことを徹底できるような環境を作っていく、その上でさらにマネージメントを進めて線量が下げられる環境を作っていくということが求められるのかなというふうに思います。長くなりましたけれども私の方からは以上です。
○永井座長 欅田先生、どうも大変貴重なデータをありがとうございます。時間が押しておりますがご質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。多くの先生方に大変関心のあるデータだと思いますが。横山先生、いかがでしょうか。
○横山参集者 はい、ありがとうございます。いくつか質問させていただきたいのですけれども、1つは、測定をされているのは水晶体の等価線量というふうに書いていただいておりますけれども、3mm線量当量を測定したというふうに考えてよろしいでしょうか。
○欅田参集者 直接の校正場は検討中のところですけれども、係数かけて一応3mm線量当量として評価しているところであります。
○横山参集者 ありがとうございます。それから防護板のないものとか、遮蔽板のあるもの、ないものというふうに比較する対象として元々ある場合とない場合になっていますけれども、これはその手技として一般的にやられているものを基準としてやられていると考えてよろしいでしょうか。
○欅田参集者 介入前の状況に関しましては通常の作業をそのまま再現いただいて、その時の写真を撮っていただいて送り返していただき、対応できるところをこちらからアドバイスしていくという方法でやっております。
○横山参集者 もう一点だけ。放射線科の方ですかね、P5のところだったと思うのですけれども、介入後のところで確かに中央値自体は低くなっているのですけれども、平均値を見るとかなり、4.1±4.5というようなことになっていますけれども、これは一部介入がうまくいっていないケースがあったというふうに考えてよろしいのでしょうか。
○欅田参集者 どうしても3例の中でやっているものですから、そこはばらつきがありますのでそういったところで、フィージビリティスタディの時も当初は2例くらいでまず実行可能性をチェックするということで計画していたのですけれども、それだと今この症例を含めてかなり大きなばらつきがあるということで本調査の方では5例を前提としてフィージビリティの中でも数を増やして対応してきたというところがあります。
○横山参集者 ありがとうございました。非常に件数が多くできそうだというところがこの調査でわかったというのが良かったなと思います。
○欅田参集者 どうしても今までですと、1か月の積算線量で評価することが多いものですから、直接の施術に対する介入がどういうふうにしていったらいいのかという具体例が掴みにくいところが多くあったわけですけれども、こうやって1例ずつ見ていきますと細かく対応できるところがありますので、その結果、まだまだ改善すべきところが見られたよというのが今回の結果かと思います。
○永井座長 他にいかがでしょうか。今回の結果からかなり教育とか、現場での指導で対応できそうだということが見えてきたということですね。これは非常に大きな点ですが、ただ一方で、最後の資料にありましたように、バッジをつけていないという現実があるということです。これはいかがでしょうか。整形外科では手術と関係があるのでしょうか。
○中村日本整形外科学会理事(三上参考人代理) これは、線量計は眼鏡につける線量計でしょうか。
○欅田参集者 眼鏡か、襟元なり不均等被ばくをつけているかどうかということを前提にしているわけですけれども、ヒアリングしている数値から見ていくとどうもメインの、普通男性であれば胸部につける分も十分なつけ方がされていないような方も見受けられるのではないかなというところが非常に危惧されるところで、まず最低限そういったところを、やはり医療従事者も自身を守るというふうなところの関心を高めていかないといけないのかなというふうに思います。
○中村日本整形外科学会理事(三上参考人代理) データ上こうなっておりますけれども、一般的には胸くらいは最低限つけているだろうとは思っているのですけれど、学会の方でよく、非常につらい数字ですので十分に考えていきたいと思います。
○永井座長 よろしいでしょうか。今後の予定としては、次回本調査の結果のご報告をいただけるということでよろしいのでしょうか。
○欅田参集者 先ほど20ページで示しましたように、測定の方はほぼ完了しつつあるところですので、それを今からデータをまとめていきますから、次回の調査の時に今回フィージビリティで紹介しましたような形でまとめたものを紹介したいと思います。今日はフィージビリティですので各所、先生ごとの形でまとめましたけれども、今度は数が多くなりますのでもうちょっとまとめた形でのご報告になるかと思います。
○永井座長 ありがとうございます。では次回よろしくお願いいたします。続きまして、新たな線量限度に対応した防護機器の開発を業者からヒアリングしていただいた結果について、日本画像医療システム工業会より小田参考人に情報提供をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小田参考人 日本画像医療システム工業会で事務局を担当しております小田と申します。まず画像医療システム工業会というところは所謂、画像診断機器とかですね、放射線の治療装置などを扱っているところ、それから放射線の防護装置、防護器具、それから放射線の管理システムとかですね、そういったものを扱っているところの産業界の工業会でございます。今、先生からいただいたご報告、大変参考になるのですけれども、まず私からの報告に先立ちまして一点だけご了承いただきたいことがございます。今の先生のご発表にもありましたように、放射線眼鏡1つ取りましても、曇りとか、重さ、かけ心地、いろんな要素がございます。そういったことを1つ1つ開発して、クリアしていく必要がございまして、そういったことで開発の工数についてのご報告をすることになっていると思うのですけれども、製品となる仕様が決まっていない状況でどれほどの開発工数がかかるというのは一概には申し上げられませんので、本日の私からのご報告は、あくまで一般的な開発の内容を考慮した上での報告をさせていただくということでご了解いただきたいと存じます。それでは、資料3の裏側の2ページ目をご覧いただきたいと思います。放射線防護用品の開発工数ということで、私共の工業会の2社の方にヒアリングをいただき、なかなか開発内容のわからない中ご報告いただきました。まずA社につきましては、A社は眼鏡の開発ということでご報告いただいております。眼鏡のフレームは一般のフレームですね、眼鏡のフレームのものを採用してそこに防護レンズを搭載するということについての工数をご報告いただいております。ただ、フレームのかけ心地とかですね、企業の方から用意をいたしますレンズに合ったものというのを選定するのにかなり高い課題がございまして、その時に、現時点では工数を見積もることは困難ですと。これはフレームを選定する工数を見積もることは困難ですと。適したフレームを定めた後に製品化の工数といたしましては少なくとも1年程度を要するというふうなご報告をいただいております。B社からの報告ですと、防護眼鏡を含むその他X線防護全般の開発というのが必要となってくるということで、そういった全般的なものを考えて、基本的な工数として市場調査に約1年、試作の制作に約1年、最終試作後の試用期間、評価も含めまして1年と、少なくとも3年程度が見込まれるというふうな報告をいただいております。A社、B社からそれぞれご報告いただいておりまして、やはり少なくても3年程度の開発工数というのを市場調査から見て必要になるのかというふうに考えております。簡単でございますけれども以上で報告を終わります。
○永井座長 ありがとうございました。ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○漆原参集者 すみません、よろしいですか。
○永井座長 はい、どうぞ。
○漆原参集者 ご説明ありがとうございます。一点お聞きしたいのですが、これは眼鏡に特化したというような聞き方をされたのかどうかというところでございまして、先ほどのご説明の中にもあったように、防護板を介することによってある程度効果があってということで、防護板ですと多分その術者の負担も少ないと思いますので、防護板を仮にもっとその鉛当量の高いものを仮に開発してという場合についてもやはりこのぐらい、3年とか、かかってしまうものなのでしょうかという、今からこのことを聞いてどこまでお答えいただけるかどうかちょっとわからないのですけれども、防護板ですとここで、さっき使われていたのはMAVIGですので、メタクリル樹脂の鉛が入っているもので、そうするとJIS規格上は鉛を出していないので、規格から、規定がなかったというふうに思うのですけれども、確か、今手元にないのですけれども、10mmの厚さで光の透過量80%以上というのがJIS規格の防護板に定まっていたというふうに思うのですが、この樹脂の場合は仮にそれを規格上厚くして、鉛当量を増やしたとしても可能なのでそういった開発ということについてもやはり同じくらいの年数がかかってしまうものなのでしょうか。
○保科氏 パノラマシールドの製造元をしております保科製作所の保科と申します。よろしくお願いいたします。先ほどのご質問の件なのですけれども、樹脂の鉛当量を上げると言われるものに関しては、比較的簡易的に鉛当量を引き上げることは可能です。しかしながら鉛当量を上げるということはですね、当然レンズの厚みも上がりますので、先ほどもちょっとご報告にございまして、レンズの歪みであったりとか、後は視界がやはり多少悪くなるというような弊害もございますので、そういった問題をクリアしていく上ではやはり先ほど小田さんの方からもお話ありました通り3年ということでご理解いただければと思います。
○漆原参集者 今ちょっと聞きたかったのは防護板の、板の方の、眼鏡ではなくて、板の方ですと多分曲げるというような工程もないと思いますし、そこのところがどうなのかなという、そこがお聞きできれば。
○保科氏 すみません。防護板に関してはですね、鉛当量の規格ももちろん何通りかございますので、そちらに関してはご要望を頂戴しましたら比較的簡単にこちらも開発は可能ではございますので、3年のみならずオーダーメイドで製品の方、我々作れますので、そういった意味では通常の納期の間で考えていただければなと思います。
○永井座長 数か月でもできるということですか。
○保科氏 そうですね。はい。数か月でできるということです。
○前田氏 第3回の時にも参考人として参らせていただいた株式会社マエダの前田と申します。よろしくお願いいたします。防護板のメーカーではないのですが防護業界で一緒にやっている仲としての私の知識の中からお答えさせていただきたいと思います。今この資料を拝見いたしますと、防護板に使われたのが鉛当量0.5mmという記載がございます。防護板としては一番薄い方の規格でございますので、今保科さんがおっしゃっていましたけれども、もっと厚い規格があります。防護板としても1mm当量くらいまであるのではないかと思います。衝立のような置くものですと、2mmというのもありますけれども、吊り下げますので重さの関係から確か1mmくらいまでは可能だったと思います。だたその、おそらく、推測も入ってきてご専門の先生の方がお詳しいと思いますけれども、鉛当量を上げても今現在0.5mmありますので、板としての防護能力はかなりあります。ですので、周りから回り込んできている散乱線による被ばく線量が今出ているのであって、分厚くしていってもさほど効果はないのではないかなというふうに思われます。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは、是非、検討会としては制度を円滑に運用する観点から、これを踏まえて対応することをお願いしたいと思います。続いて、眼の水晶体の等価線量限度を見直した場合に現場で医師法、医療法の遵守と労働安全衛生法の遵守の間で生ずる困難についてどう考えるかという点について事務局から説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 はい。資料4をご覧ください。1ページめくりまして、まず、医師法と労働安全衛生法の関係性について、今年3月28日に医師の働き方改革に関する検討会報告書が出ておりまして、その中の記述を抜粋しております。読み上げます。応召義務については、医師が国に対して負担する公法上の義務であり、医師個人の民刑事上の責任や医療機関と医師の労働契約等に法的直接的な影響を及ぼすものではなく、医療機関としては、労働基準法等の関係法令を遵守した上で医師等が適切に業務遂行できるよう必要な体制・環境整備を行う必要がある。とされております。これを踏まえますと労働安全衛生法と医師法の関係は、医師の働き方改革に関する検討会報告書と同様であると考えられます。次に、労働安全衛生法の概要でございますが、第1回検討会でもご説明いたしましたが、労働安全衛生法は日本国憲法を根拠に労働基準法が定められておりまして、それの分化した法律でございます。目的としては労働者の安全と健康を確保する目的として具体的な講ずべき措置として危険防止措置や、健康障害防止措置などの規定がございます。これらについては罰則をもって実施を担保しているというものでございます。次のページをご覧ください。定期監督等の実施状況と送検状況について資料を用意いたしました。平成28年は、定期監督等の実施事業場数134,617件のうち保健衛生業については7,450件となっております。違反事業場数は89,972件で、そのうち保健衛生業が5,538件でございました。また、平成28年の労働安全衛生法違反に係る送検事案は全体で497件でございましたが、その中で保健衛生業は3件でございました。平成26年から平成28年に、電離放射線障害防止規則違反で書類送検となった保健衛生業の事案はありませんでした。次のページをご覧いただきたいのですが、平成31年に書類送検となった事案がありましたのでご紹介いたします。読み上げます。放射線技師に法定基準(皮膚に受ける等価線量年500mSv)を超える被ばくをさせたとして、医療法人ほか1名を労働安全衛生法第22条など違反の疑いで送検したとなっています。放射線技師は30年近く検査業務に従事しており、年間被ばく量は500mSvを超えていたということでございます。次に病院や診療所などにつきましては、都道府県による立入検査がございますのでその概要をご説明いたします。こちらは医療法に基づきまして、検査の目的が規定されております。目的としましては、病院・診療所等が法令により規定された人員及び構造設備を有し、かつ、適正な管理を行っているか否かについて検査し、不適正な場合は指導等を通じ改善を図ることにより、病院・診療所等を良質で適正な医療を行う場にふさわしいものとすることとされています。この根拠としましては医療法第25条第1項などによりまして、都道府県、保健所などが実施することになっており、その他、国が実施する場合も規定されております。実際の検査の頻度でございますが、病院については原則として毎年、その他、有床診療所については概ね3年に1回、無床診療所・助産所については随時となっております。検査項目については、資料にある通り、病院の管理状況、人員の配置状況、構造設備、清潔の状況がございますが、この構造設備、清潔の状況の中で放射線管理が位置付けられておりまして、医療法に基づき被ばく線量の規定がございますので、そちらの方も立入検査によって確認する項目となっているところでございます。次のページをご覧ください。労働基準監督署と都道府県等(保健所)の連携に関する新たな取組についてです。こちらは案ということで今後の取り組みとして考えているものでございますが、労働基準監督署で、医療現場において年20mSv超~50mSvまでの被ばく労働者がいる情報を把握した場合には、原則として労働基準監督署から都道府県等に情報提供を行う。都道府県等は、医療法に基づく立入検査等の際に、当該情報提供も踏まえ病院・診療所に指導を行い、結果等を適宜、労働基準監督署に情報提供を行う。これによりまして労働基準監督署と都道府県、保健所は、医療機関で医師等が適切に業務を遂行できるよう連携を図りたいというふうに考えております。私からは以上でございます。
○永井座長 ありがとうございました。それでは、ただ今のご説明にご質問をお願いいたします。これまでの議論でこの制限を超えた場合に非常に厳しい対応がされるのではないかという懸念があったわけですけれども、この送検の件数を見ますと、超えたからといってすぐに違反で摘発されるわけではないのだと、ただ先ほどご紹介のありましたこの机上配付資料のような例ですとこれはかなり悪質であるということで送検されたと、そういう理解でよろしいのですね。普通はまずは指導が行われる、そういうことだと思いますが。いかがでしょうか。はい、横山委員。
○横山参集者 先日の放射線審議会の時にも少し、管理というところで意見させていただいたのですけれども、やはり線量限度を超えるような線量になってから何か起こるとそういう罰則というところが非常に重く効いてくるので、その前の段階で、非常に難しいとは思うのですけれども指導というような形で、年20mSvから50mSvということなので20mSvであれば線量限度を超えていないという状況ですので、その段階で指導なりがうまく、指導できるような体制というのがこれで整いつつあるのかなというふうに思っております。ですので、是非こういう連携したような仕組みというのをうまく使って適切な管理というのを行っていっていただければなというふうに思っています。
○永井座長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。ここは非常に重要なところですので委員の皆様からご意見をいただきたいと思いますが、調査をいただいた欅田委員、いかがでしょうか。
○欅田参集者 やはり線量を超えたからといってすぐに送検されるものではないので、ちゃんと管理するための情報提供の場になってくるのだということを十分に認識しながらやっていく必要があるのかなということと、それと共に、先ほどもちょっと出てきましたけれども、その前提になる線量をちゃんと評価しておくというのは非常に重要だというところで、加えて特に医療従事者の場合は、この後の議論にも関連すると思うのですけれども、主な機関だけではなくて別の機関でも従事することがありますけれども、その時の線量の統合をしっかりやっていく必要があると。その時に管理者が誰になるのかということを十分踏まえた上での対応が求められてくるのではないかなというふうに思います。
○永井座長 ありがとうございます。同じく労働衛生の立場、山口委員、ご意見いただけますでしょうか。
○山口参集者 ただ今のスライドの最後のページ、7ページですか、これが案として今後議論されるのだと思うのですが、この左側に書いてあるケースというのは、これは何か申し出とか、そういうことを想定してらっしゃるのですか。通報という形なのか、誰がどういうふうに通報するのですか。
○川越放射線室長補佐 お答えいたします。労働基準監督署に対してはですね、法令によりまして事業者が電離放射線の健康診断を実施した結果を報告することになっております。この結果の報告の中には労働者の線量分布、数ですね、一定の被ばく線量を受けた者の数を報告することになっておりまして、そういった情報からこちらにあるような年20mSv超えの労働者に関する情報は把握できることになっておりますので、そういった情報を保健所等に提供することによりまして効率的に指導等行って参りたいと考えております。
○山口参集者 ありがとうございます。そういうふうな想定は理解できましたが、それ以外に働き方の時に大変問題になった通報、申し出的なものも想定の中に入れて考えた方が良いのかなというふうな気がしましたので、ご検討いただけたらと思います。
○永井座長 ありがとうございます。では医療の現場のご意見をお聞きしたいと思います。富田委員、いかがでしょうか。
○富田参集者 医療の現場におきましては、現状、ガラスバッジ、フィルムバッジの管理は、病院ではですね、私の病院もそうですが、診療放射線技師が医師、看護師、あるいは管理区域内に入る放射線従事者のフィルムバッジの管理を主にしているのが現状だと思っております。従いまして、現状20、50mSvというような線量を病院、通常の診療所も含めた病院で医療被ばく、職業被ばくが起こるというところはちょっとなかなか、私の感覚ではちょっとレアケースなのかなというふうに思っております。しかしながら、欅田委員が先ほど少し触れましたが、このやはり線量管理に関しましては、病院が移るということが非常に医師、特に医師に関しては多いというのが現状だと思います。ガラスバッジ等々の管理に関しては、何月何日から医師が赴任されます、何月何日をもって辞めますというようなところで3か月単位あるいは1年単位とか、非常に短い単位で異動されるので、それを管理していくということが非常に難しいというのは思っておりますので、そこも含めて一元管理というところが必要かなというふうに思っております。
○永井座長 それでは看護協会から、奥村委員、いかがでしょうか。
○奥村参集者 ありがとうございます。そうですね、労働基準監督署と保健所で連携をして現場に指導、助言をして頂けるということであれば非常に効果的かなと思って伺っておりました。どちらかと申しますと労基署に関してはアレルギーが、と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、若干そういうところが医療界、どうしてもございまして、その点、保健所からの指導の方が親和性があるのかなという印象を持っておりますので、この辺りをお進めいただければなと思っております。
○永井座長 三井委員、いかがでしょうか。
○三井参集者 はい、歯科の方ですけれども、まず歯科の方は基本的に年間5mSvを超える被ばくはほぼないと。ですから所謂健康診断の義務も課されてない部分が非常に多いというところで、20mSv、50mSvという部分に関してはほぼほぼないというふうに考えております。
○永井座長 松本委員、いかがでしょうか。
○松本参集者 保健所が、きちんと連携して協力してということに関しては非常にいいことではないかなと思いますし、ここのところはしっかりとやっていただきたいと思います。最初の応召義務の問題についても、私この研究会の方に入っていましたけれども、この時は放射線の、この被ばくの話は全く想定しておりませんでしたけれども、このような切り口でよろしいのかなと思いました。
○永井座長 続いて産業現場の状況を踏まえたご意見をお伺いしたいと思います。漆原委員、お願いいたします。
○漆原参集者 いただいた資料の7ページのところの、監督署と都道府県の連携というところが本当に新たな取り組みとして重要だというふうに思いまして、こういった情報連携というのは多分これ以外にも必要なのかもしれませんが、まずこういったことでお互いに情報共有することで法違反が少なくなるような改善というのは是非とも進めていっていただきたいというふうに思います。
○永井座長 渥美委員、いかがでしょうか。
○渥美参集者 電力ですけれども、電力も作業員の方とかですね、電力会社でない従事されている方についてはやはりその専門のスキルを持っている方が発電所を渡り歩くようなことがよくあってですね、そういった方をやはり管理するためにも一元的に管理した方が確実に管理できるかなというふうには考えています。
○永井座長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。参考人の方々からもご意見伺いたいと思いますが。赤羽参考人、何かご意見ありますでしょうか。
○赤羽参考人 はい、J-RIMEの赤羽です。被ばくを管理する上においてやはり重要になるのは線量評価になります。ここでは、20mSv超から50mSvの被ばく労働者がいる旨の情報があった場合というケースが想定されています。先ほど法律のところの話でありましたように、例えば非常に高い被ばくをしている場合、個人線量計をつけていなくてもある程度高い被ばくであるという評価ができるかと思います。欅田委員の最初のご報告にもありましたように、医療現場では個人線量計をつけていない方がいらっしゃるということは以前から私も耳にしています。そうした中、線量計をつけていない場合、被ばく線量が実際どの程度であるかといったところを評価することがやはり課題になってくるかと思います。それが明らかに低い、あるいは高いということであれば、ある程度指導ができるかと思いますけれども、20mSvあるいは50mSvに達するか達しないかというようなところの想定がされるような場合、どのように対応していくか、どのように指導していくかといったところは考慮していく必要があるのかなと思います。
○永井座長 今回の水晶体の被ばく限度の問題以前に、フィルムバッジをつけていないという実態があるということですね。これは学会として取り組みが必要だと思いますけれども。
○中村日本整形外科学会理事(三上参考人代理) これはもう取り組まないと駄目だと思いますけれども、ちょっと私としましては、ガラスバッジはだいたい全員着けていますので、それ以上に手術場で着けていないのかどうかというのは、そこの問題はあろうかもしれませんけれど、通常はもう着けているものだと思っていました。この数字には非常にびっくりしておりますので、学会の方でまず検討いたします。
○永井座長 循環器学会、消化器病学会はいかがでしょうか。
○池田参考人 循環器も56%という数字を見ましてびっくりしたのですが、多くは大学病院とか総合病院の大きいところはですね、フィルムバッジを着けないと仕事できないようなシステムになっているのですが、残念ながら今回ご依頼したところに民間病院のところがあったのですけれども、そういったところではもしかしたらこういった実態なのかなと改めて思いましたので、学会として取り組むと同時に、今回のこの新しい取り組みはですね、潜在的に隠れている被ばく量の多い人を洗い出すにはいい取り組みかなと思いました。
○富田参集者 我々、先ほどもちょっと申しましたように診療放射線技師がほとんどの病院で放射線の医療現場にいると思って間違いないと思っています。従いまして、我々の業務、もちろん撮影だけではなくて危機管理、それから線量評価というところも現場では一番詳しいというふうに自分たちは、医療の中では思っておりますので、我々もこのフィルムバッジ、ガラスバッジの装着状況を見させていただいて非常にびっくりしたところもございまして、同じように我々診療放射線技師の中でもこの辺の調査も含めて今後ちょっと取り組んでいきたいと思いました。
○欅田参集者 今の富田委員のことに関連して、第2回の時に簡単に私の方からも紹介させていただいたのですけれども、やはり診療放射線技師の方が専門職としてお声掛けすることで、そういったところがかなり確実に運用できるようになると、線量計の着用、それと保護具の着用といったようなことはかなり確実に実施できているということに関しては数が少ないですけれど実態をご報告させていただいたところで、やはり専門職それぞれが連携できる環境を作っていく、またそういったことが求められているということを各学会と一緒に今後も検討していきたいと思います。別のところでそういった対応、教育する場をどういうふうにしていくのかということでガイドライン作りということも、横山先生らを中心にしてご検討いただいているところですので、さらにそれらが、意識が共有されていくのかなというふうに思いました。
○永井座長 消化器病学会はいかがでしょうか。
○持田参考人 バッジ装着率が43%と低率で驚きましたが、消化器領域は23施設での検討で、かなり信頼性がある数値と思います。日本消化器病学会に持ち帰って、対策することを提案します。消化器領域では、放射線を用いた手技は、主として内視鏡室で行われるといった特殊性があり、放射線技師の管理が行き届いていない可能性があります。日本消化器病学会とともに日本消化器内視鏡学会にも連絡し、両学会で情報を共有して会員に啓発していく必要があると考えます。
○永井座長 バッジの装着のことと、もう1つは医療従事者の被ばくというのは患者さんの体から飛んでくる二次X線だということです。ここの教育がなかなか徹底していないように思うのですが、その辺も含めていろいろな角度から、またいろいろな学協会を通じて現場への指導が必要なのだろうと思います。それでは、今の議論については改正規則の施行にあたって対応するということでお願いしたいと思います。さっき話が飛びましたけれども放射線業務従事者の被ばく線量限度の登録管理制度に関する現状について、本日は原子力規制庁放射線安全規制研究事業で研究いただいております、量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所の神田参考人、及び除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度を実施いただいております放射線影響協会の伊藤参考人にお越しいただいております。それでは、ご説明をお願いしたいと思いますが、最初に神田参考人からお願いいたします。
○神田参考人 本日は発表の機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。私、ご紹介にありましたように量子科学技術研究開発機構の神田と申します。現在、私ども、原子力規制庁より受託しております放射線安全規制研究戦略的推進事業の枠内で国家線量登録制度について検討しております。参考資料2を用いまして本日はその検討状況についてご報告をさせていただきます。1枚おめくりいただきましてスライド2枚目をご覧ください。本日お話する内容になりますが、国家線量登録制度について検討しているグループについて、それからこうした検討の背景、これまでの検討結果、これをご紹介しまして4と5の検討状況についてご報告をさせていただきます。3枚目をご覧ください。受託しております放射線安全規制研究というのは放射線防護研究分野のネットワーク形成を目指しております。事業名が大変長いので私ども、アンブレラ事業というふうに呼んでおりますけれども、放射線防護の喫緊の課題、これを解決するために、専門家だけではなくそれに関わるいろいろなステークホルダー、これを交えたネットワークを作って検討すると。それがいくつものネットワークが1つの傘の下でプラットホームを作って情報ですとか問題意識を共有すると、こういった形態を目標とした活動を行っております。国家線量登録制度に関する検討をしているのも、このアンブレラの中のネットワークの1つということになります。主査は、本日お見えいただいておりますけれども原子力機構の吉澤先生です。検討会のメンバーの中には原子力作業者ですとか、除染作業者の被ばく管理を行っている、この後ご説明される放射線影響協会の方、それから大学関係者や医療関係者が加わっています。こうした議論、今に始まったことではないのですけれども、近年、流動性の高い職種が増えているということで、問題が新たに浮上しております。そこで、専門家だけじゃなくて事業者、作業者、線量管理請負者などいろんなステークホルダーが集まって議論を始めたところでございます。1枚おめくりください。この国家線量登録制度というのはあまり耳慣れないかもしれませんけれども、実は海外の多くの国が、国として線量登録制度を持っているのでこういった名称を使っておりますが、ポイントは国にあるというわけではなくて、むしろその個人の被ばく線量が事業者単位ではなくて個人単位で合算できる登録制度、これを重要視しております。と申しますのも、法令的には個人被ばく管理というのは線源別、施設別というふうになっておりますので、複数の施設で作業している方の個人線量というものは合算ができないですし、その流動性の高い職種ですと、5年で100mSvといった線量限度と実際の個人の累積線量が比較できていないという可能性がございます。次をおめくりください。じゃあ今、個人線量を合算するシステムとして機能しているものがあるかと言いますと、放射線影響協会の中央登録センターが運用している3つのシステムが存在します。これはいずれも事業者の自主的な事業というふうになっております。これが始まった発端ですけれども、1970年代に定期検査等で複数の原子力発電所で働く作業者の線量管理がなされていないということが社会的な問題となりまして、制度を国が検討して、その結果としてここで書かれている3つのシステムの内の①原子力業務従事者被ばく線量登録管理制度、これが発足いたしました。そして東電福島第一原発事故の後は除染等事業者の制度が発足しております。これについては後ほど協会の方から詳しいご説明があるようです。これらの制度ではもう本当にデータが公表されていて、登録されている作業者の数というものも記載されていて、しっかりとしたデータがあります。3つ目のRI事業者について、制度はあるのですけれども参加事業者が非常に少ないので、今のところデータも公表されておりません。ですので、現状ということで申し上げますと、原子力と除染以外の職種につては作業者数ですとか線量分布としてのきちんとしたデータがないというのが現状であると思っています。唯一個人線量測定サービスを行っている協議会、通称、個線協と呼んでおりますけれども、こちらでは保有しているデータをまとめて公表をしております。このスライドの下のところを見ていただきますと、医療従事者が我が国の放射線作業者の半分を占めているということがわかります。また、先ほど来お話がありますように、医療も流動性がかなりある職種ですので、医療従事者の仕事の形態に合った線量管理というものが必要だろうというふうに思っておりますが、これまではこうした議論になかなか医療人を巻き込んで議論するという機会がございませんでした。この点は反省するべき点だというふうに感じております。おめくりください。では、じゃあ今医療人の職業被ばくの特徴というのはどういう点があるのかですけれども、比較のために原子力作業者の被ばく線量分布を見ていただきます。ここ数年の傾向はあまり変わっていません。これは放射線影響協会のデータでございますけれども、線量限度以上、つまりは年間50mSvを超えるケースというものは見られないということになります。じゃあ医療についてはどうかということで次、7ページ目、こちらは個線協のデータとなります。一番左端が一般医療、その隣が歯科医療ということになりますが、こうなりますと一般医療のところに50mSv超えのケースが出てくると。それから、5年間で100mSvとなりますと、年平均で20mSvということになりますが、これを超えるケースというものも結構見えてくる、出てくるということでこれが医療職の特徴ということが言えるかと思います。さらにおめくりいただきまして、じゃあどういった職種かということで、医師、技師、看護師、その他ということで分類をしてみますと、やはり医師の方、技師の方、被ばく線量が多いというデータとなっております。このデータでは複数の施設で働いている医療人の場合、合算できておりませんので、正直なところ、実際の個人に着目した被ばくの実態というものはこうした施設単位の管理ではわからないということになります。これが実情だということで、9ページ目をご覧ください。では、一元的な被ばく管理が必要ということでこれまでどういった議論が行われてきたのかというものをまとめてございますが、今から10年ほど前から議論は始まっておりまして、海外の多くの国々がこうした線量登録制度を持っていると、整備されているということがこうした議論をこれまで促進してまいりました。平成22年には日本学術会議の分科会が提言をまとめて、翌年にはかなり具体的なものをまとめて関係省庁や国会議員に説明するといった活動が行われています。また、昨今、国連加盟国としては、国連が呼びかける職業被ばくの実態調査に協力しなければならない、だけれども、なかなか適当なデータがないといった現実にも向き合わなければならない時期となってきております。1枚おめくりください。そこで、日本学術会議の報告書、なぜ一元管理が必要かということで、真っ先に被ばく前歴の把握ができていない、特に医療領域ということを挙げております。この時代、放射線管理の専門家が海外の先行例を基に議論していたということもあって、一元管理については当然国が機関を設置して実施することを前提とした議論が行われてきたようです。そして一元管理に求められる基本機能といたしましては、作業場所が異なっても同一個人の被ばくデータが合算できること、所謂名寄せができること、そして職業被ばく全体の状況を包括的に把握できるということ、この2つを示しております。次の11ページ目では、日本学術会議の提言に続いて発表された記録で、より具体的な提案が示されたことをまとめております。個人に関する情報、線量情報、被ばく前歴線量などについて施設管理者が線量登録を代行する機関を活用して線量登録する方式が良いのではないかということで推奨してございます。おめくりいただいて12ページからですね、今度は私どものグループで行っている検討の結果でございますけれども、一元管理、当然国が一括して実施することを前提とした議論を進めてきたのですけれども、費用負担ともリンクするのですが、やはり事業者と国の役割については整理をする必要があるだろうというふうに考えてございます。また、何のため、誰のための一元化ということも突き詰めて考えてみると、登録する情報も変わってくるだろうと考えております。さらには被ばく線量や個人識別のための情報、これは個人情報でございますので取扱いにも注意が必要だという点も今後の課題でございます。また、分野によって線量管理の状況が違うと、こうしたことを考えてみますと、やはりいろんなステークホルダーで議論をするということの必要性が見えてまいりました。新たな動きといたしますと、人材の流動化が進んでいます。それから累積被ばく線量を問題にするケースが増えてきています。厚生労働省では放射線業務によるがんの労災認定の目安ということで、累積線量100mSv以上という数値を公表しております。さらには今検討いただいているところでございますけれども、眼の水晶体の線量限度が変更ということになれば、線量合算の必要性が増すものというふうに考えています。そこで、どういった制度体系が考えられるか、13ページ、これはまだグループの委員の中でたたき台を出している段階ではございますけれども、大きく分けて3つのパターンが考えられると思います。1つは国、あるいは国が指定した機関が一括管理をする方式で、IAEAですとか欧州委員会が推奨しておりますので、海外では国の機関が、あるいは国の指定した機関がこうした役割を担っているということが多いようです。それから2つ目、事業者が費用負担をして線量登録機関を設置する、または既存の制度を拡張して一括をするという方法。3つ目は、1人の方が原子力と医療とか、異なった業界で働いているケースはあんまりなかろうということで、業界、分野別に制度を設けるというものであります。3つ目のパターンとなりますと、国全体で統計データは得にくいというふうに考えられます。おめくりいただきまして、それぞれのパターンの特徴ということを比較してみますと、国が管理する制度は完全性が高いですけれども国の負担も大きくなりますので、法制化を正当化するための必要性があるかどうかということが論点になろうかと思います。それから2つめ、事業者が負担する場合、これは事業者の参加が少なければ意味がありませんので何らかの規制要求事項など縛りが必要となるかもしれません。また、業界別、分野別、これは一番ハードルが低いかもしれません。けれどもこれは業界の取り組みに強く依存します。今大学の中ではすでに連携して線量管理の制度を検討スタートしたところもあるのですけれども、進まない業界は進まない可能性があるというふうに思っています。15枚目となります。今後ですけれども、私ども、理想に走らず現実可能性のある、合理的な方法を提案したいというふうに思っております。皆さんと一緒に検討するためにも、複数の具体案を検討していろいろなステークホルダーを交えた議論を進めてまいりたいと思っています。その中でやはり国と事業者というのが特に重要なステークホルダーで、今ある線量登録制度の構築においても国と事業者の双方が足並みが揃って初めて可能になったということがございますので、業界という意味で言うと、医療というのは大きくて、一口に医療とは括れないほど大きいというふうに思っておりますので、是非この先、議論に先生方にご参加いただければと思っております。以上でございます。よろしくお願いいたします。
○永井座長 ありがとうございました。続いて伊藤参考人からお願いいたします。
○伊藤参考人 私、公益財団法人 放射線影響協会 放射線従事者中央登録センターの伊藤でございます。本日は発表のお時間をいただきましてありがとうございます。本日ご紹介させていただきますのが、除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度でございますけれども、先ほど神田先生の方からご紹介ありました通り、当協会 中央登録センターでは、3つの登録制度を運営しているわけでございますけれども、本日は厚生労働省さんの除染電離則にも関わりのある除染登録管理制度の方を説明させていただきます。1枚めくっていただきますと、1.除染登録管理制度発足の背景と、それから2.発足の目的がございます。登録制度ですけれども、平成23年3月に大震災が発生いたしましたけれども、それから平成25年の8月から12月にかけて、実は除染のJVの管理会社となるゼネコンさん、あるいは放射線に関わるような企業さんが自主的に参集して、除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度検討会というものを開きました。私ども影響協会が事務局となっているわけでございますけれども、オブザーバーとして厚生労働省さん、環境省さんにご出席いただいております。この検討会の中で、やはり被ばく履歴等の把握を確実にするため、原子力登録制度に倣って一元管理制度の設立が必要であるということで認識が一致したわけでございます。それで平成25年11月15日にこの除染の被ばく線量登録管理制度が民間の自主的な制度として発足したということでございます。その制度発足の目的、これは検討会報告書に書いてある目的でございますけれども、先ほどありましたように、労働者、作業者の流動性があるというようなことから、労働者の過去の被ばく歴を確実に把握するためには、元請け事業者さんが原子力等でも活用しております放射線管理手帳制度と相まって、労働者の過去の被ばく線量を必要な時に確認できる登録制度が必要であると。それから、数十年後に健康障害が発生したような場合にも、過去の被ばく線量の累計でありますとか、所属事業者等の把握ができる制度を構築しておくことが重要なのであると。それから、放射線管理手帳、原子力の登録管理システムとの連携を図りつつ制度を構築するということを目的として発足したわけでございます。1ページめくっていただきまして、除染登録管理制度の特徴を書いてございますけれども、この登録制度は、参加事業者の負担金によって運営される民間が運営する従事者の登録管理制度でございます。この中でデータベースを、私どものところに設置いたしまして、ここに定期線量と書いてありますけれども、このサーバーに事業者の方から実効線量をデータベース登録していただくと。それで各事業者の端末からそのデータを照会ができる、要するに参加事業者が共同利用できるデータベースの仕組みを作る。それから、記録の引き渡しと申しますのは、除染事業者が法定の被ばく線量記録、それから電離健康診断記録をドキュメントの形でそのまま引き渡すと、それを我々の方でマイクロフィルム化して検索可能な状態で長期保存するということ。それから4番目ですけれども、放射線管理手帳の取得と書いてありますけれども、登録制度で大事なのがその従事者、労働者一人一人のIDを登録して、中央登録番号を付与していくというのが大事でございまして、こちらの方はすでに原子力の方で実施しておりまして、これに乗るような形で除染の従事者に中央登録番号を付与して放射線管理手帳を所持させる、放射線管理手帳には最新の被ばく歴を事業者さんが記載していく。それから、制度参加の明確化ということで、厚生労働省さんの除染電離則ガイドライン、あるいは環境省さんの工事共通仕様書等に、元請け事業者の制度参加について明記していただいたというようなところが特徴でございます。もう1枚めくっていただきまして、実はこの除染登録管理制度なのですけれども、除染と申しましても除染特別地域内で行われる除染、あるいはその外側の地域の除染というような区分、区別がございます。除染特別地域内の除染でありますとか、事故由来廃棄物の処分、これはまさに管理区域を設定しての事業ということになりますので、ある程度の線量、管理区域なりの線量が想定されますので、参加項目としては原子力登録管理制度に倣いまして、先ほどもご紹介した放射線管理手帳の取得でありますとか、実効線量、これをデータとしてデータベースに登録していくというようなこと、それから法定記録を引き渡してくれること、それからデータ化された線量等を事業場の端末で経歴照会可能とするというようなことを参加項目として加えているわけです。一方、除染特別地域外、汚染状況重点調査地域、そういったところの比較的線量の低いところの作業につきましてはあまり難しい義務を課すということではなく、法定の被ばく線量記録、あるいは健康診断記録を作業後に引き渡していただくということを契約内容としております。参加項目もこうやって異なることから、先ほどの除染特別地域内の除染業務でありますとか事故由来の処分の業務につきましては、制度負担金としては今年度の工事分としては1人4000円をいただいておりますし、除染特別地域外の除染につきましては今年度分の工事につきましては1人あたり3000円の負担金で運営をしているというところでございます。1ページ開けていただきまして、除染登録管理制度における各種登録等とありまして、繰り返しになりますので表の方はあまり説明いたしませんけれども、協会の中央登録制度には、そういう元請け事業者さんからこの事業場の登録でありますとか、定期線量の登録でありますとか、そういうものが事業場の端末から登録されていくわけでございますけれども、それについて事業場の端末で経歴照会ができるというところが特徴としてございます。法定記録としてはドキュメントの形で我々の方に引き渡されますと、それをマイクロフィルム化するというようなところであります。それで実は、先ほど一番最初にも申し上げましたように、除染で働く従事者は、除染が終わりますと原子力発電所で働くということが想定されます。あるいは原子力発電所で働いている方が除染の事業場で働くということも想定されますので、この除染登録管理制度のシステムですけれども、2つの独立したシステムなのですけれども、除染の事業者は除染のシステムを通して相互照会、原子力の従事者が原子力の作業で受けた線量もその従事者について紹介することができる、あるいは原子力の事業者さんは原子力登録管理システムを通しまして、除染の方で働いた時の線量も照会できるというような仕組みを作っているわけでございます。もう1枚開けていただきますと、除染従事者等の線量登録の推移というものを平成24年から30年の表と、グラフをつけております。人数の方ですけれども、環境省の面的除染が平成28年度で終了しているということもございまして、人数の方を見ますと平成27年を4万人ピークにしてまた右肩下がりで徐々に人数は減ってきているところでございまして、平成30年で2万4千人あまりの人数が記録されております。これはですね、除染特別地域、事故由来でデータ登録されている、要するに中央登録番号をつけた方々の実人数、名寄せされた実人数として記録されているものでございます。それで平均線量が平成30年度0.3mSv、最大線量が30年は9.6mSvであったというような統計が作られてございます。以上でございます。どうもありがとうございました。
○永井座長 ありがとうございました。それではご質問、ご意見いただきたいと思いますが。医療関係者が全部登録すると何十万人かになると思うのですがそれは対応できるのでしょうか。
○伊藤参考人 今の状態でそれは難しゅうございますので、ちゃんと制度設計して、対応できるようにすればできることだろうと思います。
○永井座長 いかがでしょうか。はい、横山委員。
○横山参集者 神田先生にお伺いしたいのですけれども、諸外国の例といたしまして、国でやる必要性があるかどうかというのは別問題かとは思うのですけれども、諸外国で国が必要と判断している理由とか経緯といったようなものもお調べになられていらっしゃるのでしょうか。
○神田参考人 このグループの主査である吉澤先生からお答えいただきます。
○吉澤氏(国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構)このグループの主査をしております原子力機構の吉澤でございます。今の件なのですけれども、それぞれの国でどういう必要性があって、どういう理由で設立したかという経緯の情報はなかなか得られないというのがあります。少なくともIAEA、それから欧州委員会の放射線管理関連のガイドラインの所謂放射線管理の基本的な要件の中に被ばく管理について国として制度を設けるべきというものに基づいて、中央的に線量を管理できるシステムを、特に今先ほどから議論があるように、特に欧州ではいろんなところを渡り歩く方々についてはそういうシステムを国として整備すべきということが以前から要件に入っているといるものですから、多分それが基本的な考え方になっているのだろうというふうに思います。ちょっと各国の個別の情報というのは、情報を得られていないところです
○横山参集者 ありがとうございます。多分ヨーロッパなんかだと、それこそEUで渡り歩いている方がいらっしゃるからそこで何か問題が起こるのではないかというところから入ってきているのかなというような気もするのですけれども、どういう理由で今ここの検討の中に挙がっている国がここまで実施する必要性が論点というふうに書かれていましたのでちょっとお伺いしたというところです。それからもう1点だけすみません、今、民間会社で個線協というところがあって、4社程度でそんなにたくさんの会社が集まっているわけじゃないという、線量測定を行っている会社が多くないのですけれども、そうすると、それほどそのデータの受け渡しというのは難しくないのかなというふうに、原子力と併せて1つのシステムとして整えるというのは非常に難しいのかもしれないのですけれども、今おっしゃられたような医療は医療というか、原子力と原子力以外というようなもので整備するというようなことで問題点、課題というのはあるのでしょうか。
○吉澤氏(国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構)はい、吉澤でございますけれども、個線協のデータというのはものすごく貴重なデータであるというのは、ちょっと資料の方にもありましたけれども、学術会議の記録のところでもそういうものを活用すべきというのは当然発想としてあります。それで、そういうものを活用する時の最大の壁は個人情報です。ですから、そこをそれぞれの個線協の方がサービスしているところで、名寄せとかそういうことをするためには絶対に個人情報が必要になります。その場合にそれぞれのところの特定サービス機関としてそこまで個人情報があって責任を持たなきゃいけないというところがかなり重い負担になりますのでそこが大きな壁だろうと思います。
○永井座長 では手短にお願いします。
○神田参考人 もう1点なのですけれども、やはりそういうものを民間のところに頼るということは、何年間、線量を記録していただく保管していただくことが約束できるのかということになり、民間ですと難しいということを個線協関係者の方から伺ったことがございます。
○永井座長 これは、システム化するためには相当大きな課題が、いろんな課題がございますね。さらに引き続きご検討いただければと思います。今日ご欠席の細野委員からは、「医療機関では国家資格を取得した者が従事しており、原発の作業員らと同様とは言えない、医療機関の従事者については1mSv未満の被ばくが多いことを考えれば、手間が多い割にベネフィットが見込めないのではないか」というご意見をご紹介させていただきたいと思います。これは引き続き検討ということでよろしいですね。どうもありがとうございました。本日の議題は以上でございます。次回の予定等について事務局から説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 はい、第6回の検討会につきましては、また事務局から調整させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。また、本日の議事録については各委員の方々にご確認をいただいた上で公開することとさせていただきますので、ご了承願います。また、本日机上配付資料がございますのでこちらにつきましては事務局の方で回収いたしますので机上にそのまま置いてお帰りになっていただければと思います。また、傍聴者の方々につきましては出口のところで事務局の方にお返しくださいますようお願いいたします。以上です。
○永井座長 それでは第5回の検討会をこれで終了いたします。どうもありがとうございました。