第3回救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会(議事録)

医政局地域医療計画課 救急・周産期医療等対策室

日時

平成30年5月30日(水)
14:00~16:00

場所

厚生労働省 専用第22会議室

議事

下記のとおり
○野口救急医療対策専門官 それでは、定刻になりましたので、ただいまより、第3回「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」を開会させていただきます。
構成員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
なお、本日は、参考人として、東海大学医学部救命救急医学教授猪口貞樹参考人、大阪府済生会千里病院千里救命救急センター長林靖之参考人、手稲渓仁会病院救命救急センター長の奈良理参考人にお越しいただいております。
また、オブザーバーとして、総務省消防庁救急企画室救急推進係長の石井秀樹様、一般社団法人全日本航空事業連合会ヘリコプター部会ドクターヘリ分科会委員長辻康二様にお越しいただいております。
まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。お手元に、議事次第、座席表、開催要綱、構成員名簿のほか、資料1から7まで、参考資料1から3をお配りしております。乱丁・落丁等がございましたら、お知らせください。
報道の方で、冒頭カメラ撮り等をしておられる方がおりましたら、ここまででお願いいたします。
(報道関係者退室)
○野口救急医療対策専門官 それでは、遠藤座長に、以後の議事運営をお願いいたします。
○遠藤座長 皆様、お忙しいところを御出席ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
それでは、議事に入らせていただきます。 資料1の前回の議論のまとめ、これがまとまっておりますので、事務局から説明をお願いします。
○野口救急医療対策専門官 事務局でございます。
前回検討会第2回としまして、4月20日に行っておりますが、そこでの主な意見をまとめさせていただいております。
「DMAT事務局の在り方について」ということで、資料にありますとおり、<組織>、<災害時の支援範囲について>、<教育>という視点で、発言をまとめさせていただいております。
また、「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)」に関しまして、<システムの在り方について>、<入力方法の教育>、<機能について>という形で、御発言をおまとめさせていただいております。
「その他」に、1項目記載をさせていただいております。
報告は以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ただいまの報告について、何か御意見、御質問はございますか。
それでは、もし、何かあれば、また、最後の段階で御発言をいただくということで、議事に移りたいと思います。
次の議事でございますけれども、「病院前医療の提供手段について」ということでございます。
まずは、事務局から説明をいただきたいと思います。その後に、現場の立場から、まず、ドクターヘリについて猪口参考人、続いて、ドクターカーについて林参考人から、さらに、北海道患者搬送固定翼機運航事業について奈良参考人から御説明いただいた上で、皆さんとディスカッションをしたいと思います。
では、資料2の説明について、事務局からお願いします。
○飯塚病院前医療対策専門官 ありがとうございます。
では、資料2について御説明させていただきます。
まず、その前に、今回の議事としまして、病院前医療の提供体制と題しまして、主には医師が病院前において診療を行うということついてお話しさせてもらいます。これに関しまして、今は多様な手段がございますので、その地域における現状をまずお話しさせていただきます。
その後、「ドクターヘリの安全運航について」ということでございますけれども、ドクターヘリにつきましては、安全運航と効率的な運航との2つのテーマで考えておりまして、効率的な運航というところに関しましては、別途、日を改めまして、検討会の議題とさせていただこうと思います。今回は、地域による協議の現状及びドクターヘリの安全運航についてということですすめさせていただこうと思います。
まずは、資料2の「病院前医療の提供手段について」に関して御説明させていただきます。
本日は、ちょっと発表が多いものですので、少し早口になり、場合により資料の一部割愛せて愛いただこうと思いますので、御容赦をお願いいたします。
では、病院前医療の提供状況についてということでございますけれども、2ページ目にございますように、今回は、ドクターヘリとドクターカーとメディカルジェットを挙げさせていただいております。この中では、ドクターカーが一番歴史が古いというところでございます。
次のページでございますが、「ドクターヘリとは」。皆様にはよく御存知のことと思いますけれども、救急医療に必要な機器及び医薬品を装備したヘリコプターであって、救急医療の専門医及び看護師等が同乗し救急現場等に向かい、現場等から医療機関に搬送するまでの間、患者に救急医療を行うことのできる専用のヘリコプターのことをいうということでございます。
「ドクターヘリの経緯」とございまして、1999年に、ドクターヘリの試行的事業が行われまして、その後、平成19年には救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法の制定がなされり、平成20年には、「救急医療用ヘリコプターの導入促進に係る諸課題に関する検討会」が開かれているということでございます。
次のページでございますが、「救急医療用ヘリコプターの導入促進に係る諸課題に関する検討会 報告書概要」でございますけれども、こちらでも、ドクターヘリの配備のあり方ですとか、ドクターヘリの運用のあり方について御議論いただいたというところでございます。
次に行きまして、「ドクターヘリの導入状況」でございますけれども、平成30年3月26日現在では、導入状況といたしまして、42道府県52機にて事業を実施しているところでございます。
また、次の「都道府県間の効率的運用」でございますけれども、都道府県間の応援協定は、導入県も増加して、相互応援が平成24年より増加しているというところでございまして、都道府県間の相互応援と共同運用というところがふえているというところでございます。
では、実際に、ドクターヘリの現在の実績推移はというところでございますけれども、平成28年度の実績で申しますと、今、51機で、年間で約25,000件搬送されているというところでございます。
これにつきまして、次のページでございますけれども、ドクターヘリの導入促進に66億円、また、ドクターヘリ事業従事者研修を、現在、補助事業として実施しているというところでございます。
次からは、ドクターカーでございます。
ドクターカーとは、一般に「診療を行う医師を派遣するための緊急走行が可能な車両」と考えられまして、運用方式としては、消防機関からの要請に基づき、傷病者が発生している現場へ急行する方式が代表的でありますす。
傷病者が発生しまして、119番通報、その後、消防機関からドクターカー要請ということになるわけでございますけれども、実際には、一般的にドクターカーと言われているのは、この3種類であると考えております。医療機関の有する救急車タイプのドクターカー、また、医療機関の有する乗用車タイプのドクターカー、こちらは傷病者の搬送用ベッドがないというものでございます。また、消防機関の有する救急車等を活用したドクターカー、医師を医療機関にピックアップするようなものとか、医療機関に救急車が待機している方式等を指しているということでございます。
次のページに行きまして、ドクターカーの実績推移というところでございます。救命救急センターで活用可能なドクターカーの台数及び年間運用件数は、年々増加しているところでございまして、平成28年度の、救命救急センターの調査によるものでは、救命救急センターがドクターカーを所有している台数は239台、また、消防の救急車等を活用している台数が32台となっています。また、運用件数は、それぞれ32,000件と約9,000件となっているというところでございます。
次のページは、救命救急センターにおける所有しているドクターカーの内訳というところでございますけれども、救急車型は約181台(136施設)、乗用車型は58台(54施設)を有しているというところでございます。
また、ドクターカーに関連する事業としまして、救命救急センター運営事業としまして、ドクターカーの運転手の確保に要する経費を補助、また、救命救急センター設備整備事業としまして、ドクターカー及び搭載する医療機器等の購入費を補助しているというところでございます。
次に、メディカルジェットの運航支援事業でございます。こちらの背景として、へき地等の医師不足地域における固定翼機を用いた患者搬送については、平成22年度及び平成23~25年度において、北海道の地域医療再生基金を活用して、道医師会によってモデル事業として実施されて、こういった事例を踏まえて、平成29年度より高度専門医療機関が所在する都心部へ航空機を活用して患者を輸送することができるよう、「メディカルジェット(へき地患者輸送航空機)運航支援事業」を想定したところでございます。
実際には、平成29年7月30日から事業を開始しておりまして、現在まで、平成29年度で21件の患者輸送事例があったというところでございます。
こちらに関しましては、次のページにございますように、へき地保健医療対策予算の概要の中でとっておりまして、赤枠で囲ってありますように、メディカルジェット(患者輸送航空機)として、予算を確保しているところでございます。
次の(参考2)としまして、「巡回診療航空機運営事業」ということで、巡回診療航空機運営事業の御紹介をさせていただいているというところでございます。
次でございますけれども、こちらからが本題でございますが、「ドクターヘリ、ドクターカーの地域ごとの現状について」ということで、御説明をさせていただきます。
「ドクターヘリ基地病院ごとの運航状況」でございますけれども、今、年間要請件数が最大で2,300件のところが、中央値が500件であるということで、基地病院ごとにかなり大きな幅があるというのが現状でございます。
こちら、一番上のグラフを赤と青で分けておりますけれども、赤のところは、要請があったが出動しなかった未出動件数を示しておりまして、青のところは、実際に出動した件数というところでございます。
その内訳として、真ん中の赤で囲ってあるところですけれども、時間外要請、天候不良、重複要請、出動前キャンセルに関しまして、それぞれ基地病院ごとにばらばらの対応であることが言えると思います。出動前キャンセルは、要請がありましたけれども、現場に行く間にキャンセルになって、実際は飛ばなかったというものを示しております。
また、一番下の青枠の実出動件数でございますが、こちらも基地病院によって多様であることを示しています。現場出動や施設間搬送、出動後キャンセル等々ございますけれども、出動後キャンセルは、実際に要請があって、実際に飛んだのですけれども、途中キャンセルがあって、現場には行かずに戻って来られたりしたということを示しております。
次のページは、基地病院ごとにドクターヘリの運航回数や運航方式はさまざまということで、散布図で示したものでございますけれども、こちらに関しましては、上のグラフは、より視覚的に訴えているものでございまして、多様な方式があることを述べているものでございます。
また、次のページにございますのは、ドクターヘリのインシデントでございまして、平成28年8月8日に、神奈川県ドクターヘリ落着事故の御紹介でございます。
次に、「ドクターカーを活用可能な救命救急センターごとの運用状況」ということで、ドクターカーについて御紹介させていただきます。
ドクターカーにつきましても、やはり基地病院ごとにかなり異なっておりまして、出動件数が最大2,500件のところから最小値0件、中央値は105件でございます。ドクターカーを活用可能な救命救急センターにおいても、運用件数や運用方式はさまざまではございますけれども、ドクターカーを有していても十分活用できない救命救急センターもあるということでございます。
また、運用状況の調査においては、毎日24時間稼働しない理由として、医師等のマンパワー不足がよく挙げられているというところでございますけれども、赤の折れ線グラフでは、救命救急センターの専任医師数を示しておりますけれども、必ずしも、専任医師が多い救命救急センターでドクターカーの出動件数が多いというわけではないというところでございます。
また、下の表につきましては、日本病院前救急診療医学会における平成27年の調査でございますけれども、全国248地域メディカルコントロール協議会を通じて、ドクターカーの運用状況調査についての調査結果によれば、期間中に週1回以上医師を臨場させたドクターカーシステムは全体の2割にとどまったというものの紹介でございます。
ドクターヘリ、ドクターカーの有効活用の地域の協議についてというところでございますけれども、ドクターヘリ、ドクターカーの有効活用で、事後検証等を通じて地域の救急医療関係者間の協議を経て、PDCAサイクルを効果的に機能させることが必要だが、必要な議論が十分にされていないのではないかと考えております。
具体的には、要請基準設定に関しては、ドクターヘリ、ドクターカーの基準は各地域で策定されていると思いますけれども、ドクターヘリ及びドクターカーの両者を活用可能な地域においては、両者の要請のための明確なルール、例えば距離や搬送時間等による要請における優先順位等は、多くの地域で策定されていない。
我々の都道府県における調査おいてドクターヘリ、ドクターカーの有効な活用方策の策定状況をしていると答えているところが12%、していないというところが88%でございます。両者を効率的に活用できてない可能性があるのではないかと考えております。
また、ドクターヘリ事案の事後検証におきましては、「実施していない」と答えたところが17%ございますし、もしくは「基地病院が主体となり実施している」という答えは約半数でございます。ドクターヘリの事案の詳細について、地域の救急医療関係者間で十分に協議されてはいないのではないかと考えております。
また、改善策の策定ということでございますけれども、PDCAサイクルを回して、要請基準を改訂することが大事でございますけれども、ドクターヘリの効率的な運航については、事後検証を通じて適切に要請基準等の運航要領を改訂していくことが必要ですが、例えば要請基準が改訂されていない消防本部があるとか、改訂に際し、地域の救急医療関係者の一番の大きな協議の場でございますメディカルコントロール協議会の十分な協議があげられていない可能性があるのではないかと考えております。
最後でございますけれども、今回の論点といたしまして、御議論いただく内容としましては、下の3点でございます。
地域の有限な医療資源を有効に活用し、救急医療の質の向上のため、医師派遣及び患者搬送手段の選択や、効率的な運用方法等について協議すべきではないか。
ドクターヘリやドクターカー等の効率的な運用のためには、事後検証も含めて、PDCAサイクルを効果的に機能させ、地域で一体として協議すべきではないか。
ドクターヘリやドクターカー等の効率的な運用に係る協議の場として、メディカルコントロール協議会を活用すべきではないか。
事務局からの説明は、以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、資料3につきまして、猪口参考人より御説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○猪口参考人 それでは、御説明させていただきます。
資料3の1ページ目です。これは、先ほど事務局からも御説明のありましたドクターヘリの出動件数の推移になります。平成19年度「ドクターヘリ特措法」の後に、地方交付税・交付金で財源措置がなされてから急激にふえまして、昨年度で25,000件出動しております。要請は30,000件を超えているという状況です。
次のページの図は、ドクターヘリの配置状況になります。現在、42道府県に52機配備されておりまして、本年度から、石川県が開始しました。京都府は、滋賀県・兵庫県・大阪府がカバーしています。未配備都道府県は、東京都、福井県、香川県の3都県という状態です。ほぼ全国で配備されているという状況でございます。
次のページの図が、対象となっている疾患でございます。おおむね半数が外因性でございまして、その中で外傷が最も多く、全体の42.3%になります。それから、大大血管疾患・脳血管障害が、それぞれ約15%でございまして。その他の内因疾患は、さまざまな神経・呼吸器・消化器・代謝性疾患等でございまして、この中に小児が再掲ですけれども、7.9%、周産期が1%含まれてございます。その他の外因が6.8%ございます。したがいまして、約4割が外傷、心大血管疾患・脳血管障害が合わせて3割というのが、昨年度の状況でございます。
次は、ドクターヘリの運用方式ですけれども、現在、さまざまな方式で運用されておりますが、一番基本的といいますか、多く用いられているのはランデブー方式になります。これは、傷病発生現場から救命救急センターに出動要請がありますと、ヘリがランデブーヘリポートと呼ばれる臨時離着陸場に向かいます。消防機関は傷病発生現場から患者さんを近くのランデブーヘリポートに搬送して、ドクターヘリが到着しますと、そこから医療介入が開始されるということでございます。傷病発生現場から直接救命救急センターに運ぶのが早いか、あるいは、臨時離着陸場に運んで、そこでドクターヘリによる医療介入が早いかというところが、早期医療介入ができるかどうかの分かれ目でございます。
1ページおめくりいただきまして、これは、一番最初にドクターヘリの試行的事業をやったときにとったものです。今のランデブー方式で運用しますと、救急車搬送時間が長くなるほど、ドクターヘリによる介入が始まる時間が早くなる。ただし、救急車搬送で10分以下ですと、直接運んだほうが早くなりますので、それ以下についてはドクターヘリの対象にならないということになります。実際に運んだ症例で、このときは、医師間評価で485例中55例で何らかの救命効果があったという評価を受けています。搬送時間が長くなればなるほど、介入時間の短縮効果も長くなるということでございます。
次のスライドは、2010~2013年に、日本外傷データバンク(JTDB)に登録されていて、かつ、日中搬送されて、ISSが16以上の成人の鈍的外傷だけを抽出して、12,000例ですけれども、この方々の生存退院に対するドクターヘリの介入効果を見ています。そのバーは、それぞれのオッズ比の95%を示したものです。一番左側の青い棒が全症例でございます。オッズ比の最初1.5からございまして、1より上ですと、一応ヘリのほうが生存退院しやすいということになるので、救命効果があるということになります。
このとき、傷病発生現場から医療機関までの時間(搬送時間)と介入効果で交互作用が行われて、搬送時間によって効果が異なるので、右側に、搬送時間ごとの効果を記載してございます。これもやはり10分以下は効果がなくて、10分を超えると効果があるということがございます。したがいまして、搬送時間が10~40分ぐらいでは、ヘリの介入がありますと、生存退院しやすいということがわかります。40分以上は、物すごく長い時間の症例とかもまじっておりますので、ちょっときつくなっておりますけれども、確定的に何か申し上げることはありません。
1ページおめくりいただきたいと思います。今まで、おおむねのヘリの運用の状態と、少なくとも重症外傷に対しては介入効果がありそうだというのがわかります。
ここからは、今の課題になります。この図は、全要請件数は、平成28年は32,837件ございました。このうち出動したのは25,000件余りで、これは約76.5%になります。すなわち、残りの23.5%は、要請があったけれども出動しなかったという部分になります。これの内訳がその下のバーにございますけれども、時間外というのは、日没が近くでできなかった。天候不良は、その行く経路の途中で天候の悪いところがあってできなかった。これはやむを得ないのですけれども、その右側に、重複要請がございまして。これは、要請があったとき、すぐにヘリが飛んでいる、あるいは、2件同時に来て出られなかったということであります。これが2,500件ほどございます。出動前キャンセルは、要請したけれども、不要になったので離陸する前にキャンセルしたというものです。応需不可というのは、必要があったけれども、出られなかったということで、このうちの重複要請が多くなってきますと問題になります。
それから、一方で、実際に出動した25,000件の内訳を見ますと、現場に出動しているのが17,500件程度、施設間搬送が4,473件でございますが、出動後キャンセルは、離陸して、その要請された地点に向かったけれども、途中で、救急隊員が患者さんの病態をよく見たら必要ないということでキャンセルになったのが3,000件ほどございます。これは不要なフライトということになりますので、オーバートリアージということになりますけれども、これが余りふえると、これも、また、効率を悪くする原因になります。
出動に対する出動後キャンセルは、現在12.5%、全要請に対する出動後キャンセルは9.5%ございます。それから、全要請に対する重複要請が7.8%ありまして、この辺りが余りふえてくると、運用の効率が悪くなってくるということがございます。
次をめくっていただきますと、左側は、出動数に対する出動キャンセル数の割合の施設間ごとのパーセンテージを分布で見たものです。平均は9.5%ですけれども、0~28%まで非常にばらつきがおわかりいただけると思います。
それから、右側は重複要請数/要請数の割合を見たもので、こちらも平均7.8%ですけれども、1~20%で非常に格差が大きくなります。多いところですと、出動後キャンセルが3割近く、重複要請も2割近くになっています。
1つおめくりいただきますと、これは要請方式(要請のタイミング)でございます。現在、救急隊(消防機関)がヘリを要請するタイミングが2つございまして、1つは、救急隊が現場に到着する前に要請するという方式があります。これは、消防から司令室に入ってくる連絡の内容の中に、ショックとか何とかというその重篤さをあらわすキーワードがあると、自動的に司令室からヘリ要請をするという仕掛けでございます。
下にある、救急隊現場到着後の要請は、これは救急隊が現場に着いて、患者さんの状態を見てから要請するという方式です。これが2つございまして、一番上のほうが、当然早く要請ができますので、ラグタイムと申しますか、ヘリが臨時離着陸場に着くまでの時間を短縮することができますけれども、オーバートリアージが多くなるということでございます。
1つめくっていただきますと、基本的に、ヘリの要請基準の閾値を下げますと、アンダートリアージは減少するけれども、オーバートリアージはふえます。そうしますと、要請数も増加する傾向にあります。
それから、要請のタイミングでは、先ほど申し上げました、現場到着前の要請ですと、現場到着後の要請に比べて、医療介入までの時間が短縮されます。ただ、一方で、現場到着前要請では、要請の通報者と消防司令が判断し、現場到着後は救急隊が患者さんを観察した後に判断してくれますので、現場到着前要請は、到着後要請に比べて、要請基準の閾値を下げざるを得ないということで、要請数の増加がありますと、これがキャンセルとか重複要請の原因となっていきます。
したがいまして、適切な要請基準あるいは救急隊現場到着前要請をどういう場合に使うとよいのかということについて明確化していく必要がございまして、現在、この研究を進めているところです。
それから、非常に要請数の多い地域において、ドクターヘリ以外の航空機搬送や医師派遣などの代替手段を検討する必要があると思います。
ドクターヘリの全国配備は順調に進んでいて、現在42道府県で52機、主導件数も25,000件以上でございます。外傷、心大血管疾患、脳血管障害などを診療しています。
重症外傷に対する救命効果が認められ、傷病発生現場から救急医療機関まで、搬送時間10分以上ではドクターヘリが有効と思われます。
現在、出動後キャンセル、出動前キャンセル・重複要請による未出動が、それぞれ要請の約10%あって、地域差も大きいので、今後、運用面での検討が必要かと考えております。
以上でございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、資料4につきまして、林参考人より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○林参考人 よろしくお願いいたします。
では、資料4に従いまして説明させていただきます。
では、1枚目から説明させていただきますが、まずは、当地域、大阪府豊能医療圏の概要についてです。大阪府北部に位置します豊能力医療圏は、4市2町で構成されておりまして、救急車が32台、実働救急救命士が170名、面積が約275平方キロ、人口は約100万人です。年間救急搬送件数は、昨年度、約56,000件となっております。この中に、救急救命センターが当センターと大阪大学高度救命救急センターが存在しております。
2枚目。当センターのドクターカーシステムですけれども、1993年1月に運用を開始しまして、今年で26年目になります。当初は、大阪府立千里救命救急センターということで、運転手を外部から雇いまして、病院の救急車である病院車ということでずっとやってきておりました。2006年に、済生会となりましてからも、このシステムは継続して現在に至っております。
次、3枚目は、当センターのシステムですけれども、キーワード方式をとっておりまして、重症傷病者が発生して、119番通報が司令室に入りますと、その内容から重症と判断されれば、当センターに派遣要請がかかります。そうしますと、当センターの医師・看護師、それから、毎日、同院に研修に来られている医療圏の消防の救急救命士、それから、運転手がドクターカーに出動して、現場に出動するというふうになっております。
4枚目ですけれども、出動基準と搬送先選定です。キーワード方式、消防覚知時点での同時出動を原則としておりまして、1番目、呼吸循環不全など、生理学的徴候に異常が認められる疾患、これを最重要視としております。
それから、経過中に急変の可能性があるような心筋梗塞・重傷脳卒中。
それから、心呼吸停止が推測される場合。
それから、閉じ込め事故あるいは多数傷病者発生が推測される場合。
目撃のある高所(3階以上)からの墜落・頚部体幹刺創。
こういうものを基準としております。
そして、搬送先選定ですけれども、重症の場合は、阪大、千里救命救急センターに搬送になりますが、中等症につきましては、まず、かかりつけがあればかかりつけ病院に搬送、そうでなければ、直近の二次救急病院に搬送します。軽症の場合は、救急隊にお任せして引き揚げます。
5枚目ですけれども、年間出動件数です。2000年にキーワード方式に変えておりまして、そこからは、多少増減はありますが、漸増傾向でありまして、2017年には3,000件を超えるに至っております。
6枚目ですけれども、その内訳になります。これは、どういうような病態かということをお示ししておりますが、最も多いのは心疾患、次いで、中枢神経・呼吸器疾患ということになります。出動事例の中のCPA(心停止)の割合は、大体4割前後となっております。
7枚目ですけれども、これは、一般出動におけるどこへ運んだかという搬送先を示しております。黄色が当センターへの搬送、赤がドクターカーでほかの病院に運んだ事例、それから、水色が救急車で他院に搬送、それから、ブルーが現場死亡、そして、一番上の灰色が途中中止というのがありまして、当センターへ運んだ黄色が重症ということになるかと思います。また、赤の他院へドクターカーで運んだものについては、それなりの中等症。そして、水色は比較的軽症と御判断いただけるかと思います。そして、灰色につきましては、途中、傷病者が軽症だということで救急隊から電話が入って、途中で中止ということになっておりますが、これが今6割ぐらいを占めておりまして、1つ大きな問題となっております。
ここから課題ということで、また、説明させていただこうと思いますが、それでは、9枚目をお願いいたします。ドクターカーの的確な要請をしていただくためには、きちっとした検証が要ります。特に、ドクターカーが必要で、ドクターカーが出ていない事例について、なぜ出せなかったのか。そういうところをきちっと検証する必要があると思います。そういうことで、当地域では、この「豊能MC検証票」ということで、最初の出動の例えば車両などにも、ドクターカーについての項目を設けて、どのような時間関係で要請されたか、そういうものを記載するようになっておりますし、また、一次検証、二次検証、検証医のコメントのところにも、ドクターカー出動の是非についてもコメントしてもらうようにして、これを消防にフィードバックするようにしております。
それから、10枚目ですけれども、これは「豊能MC症例検討会」ということで、可否についてはいろいろ検討会をやっておりますが、当地域では、グループディスカッションということで、このような形で、特に救急隊活動に問題のあったC評価についてグループでディスカッションしておりますが、この中につきましても、ドクターカー出動の是非についても言及しております。そういうことで、こういうところでもフィードバックをしております。
その次、11枚目ですけれども、「救急救命士院内・ドクターカー研修」ですけれども、当地域の救急救命士は全員、当センターで年数回の研修を受けますが、メインは治療室ですけれども、ドクターカー出動がありますと、所要中であっても、同時にドクターカーに出動してもらって、ドクターと一緒に率先して患者管理に当たっていただきます。また、帰ってきますと、翌日の毎朝のカンファレンスがあるのですが、その際には、ドクターカー出動症例の一部につきまして、救急救命士の方に発表をしていただいております。
それから、12枚目ですけれども、「口頭指導技法研究会」ということで、近年は通信指令員に対する教育が重要視されておりますが、こういうところにおきましても、当地域では、こういう形でシミュレーショントレーニングをやっておりますから、その際にも、ドクターカー要請についても、フィードバックの対象としてトレーニングをしております。
それから、13枚目ですけれども、これは救急活動プロトコル。当地域の活動プロトコルは、大阪府のプロトコルに準拠してつくっておりますが、この中でも、傷病者基本プロトコルであったり、ショックプロトコルであったり、そういうところにはドクターヘリ、ドクターカーを要請するというようなところで、文言が盛り込まれております。また、出動基準についても、別紙がつけられております。
14枚目ですけれども、ドクターカー医師と救急救命士との関係を示していますが、ドクターカー医師が現場へ行くということは、傷病者への医療行為、適切な搬送先選定、搬送先との連携ということで、非常に重要でありますが、また、現場の救急救命士を直接指導できますし、また、その医師が的確な検証・教育を行うことで、救急隊、救急救命士自体のレベルアップにつながります。そういうことで、現場の救急隊が迅速な処置を行うということで、そういうことと相まって、重症傷病者の救命率向上につながっているのではと考えております。
それから、15枚目ですけれども、「ドクターカーのMCコア業務への関わり」ということで、当地域では、ドクターカーが真ん中に入りまして、当然、現場活動も行いますが、事後検証でも、ドクターカーが含まれますし、再教育にもドクターカーとの協働を前提に行われておりますし、プロトコルもドクターカーが盛り込まれております。そういうことで、コア業務の中にも、ドクターカーが中心となってPDCAを回していることがおわかりになるかと思います。
それから、16枚目。そういうことで、ドクターカーがどれぐらい現場のそういう医療を改善したかということですが、数字を出すのはなかなか難しいのですが、ちなみには、これは総務省消防庁が公表しておられるデータですけれども、一般市民が目撃した心原性心室細動の1か月生存率10年分ですが、全国平均は30.4%、大阪府は39.2%で、右側は、豊能地域で算出したものですが、ドクターカーの有無を問わずに見ますと47.3%、ドクターカー出動のみを見ますと50.8%ということで、この成績の要因についてはいろいろな要素がありますが、ドクターカーが少なくとも多少は貢献しているのではないかなと推測されるかと思います。
ということで、17枚目ですけれども、現状・課題ということで、現状におきましては、ドクターカー要請の可否についてフィードバックされ、積極的に出動要請が行われております。
そして、ドクターカー医師の現場での活動救急隊への直接指導に加えて、研修救命士に対する院内・ドクターカー研修での指導も救急隊のレベルアップに貢献していると考えられます。
そういうことで、ドクターカーは傷病者への医療という直接的な効果と救急隊のレベルアップという間接的な効果によって、重症傷病者の救命に貢献していると考えられます。
それから、オーバートリアージの増加による途中中止事例が多く、この対応方法が現在の課題となっております。
その次、医師教育についてですけれども、ここは「ドクターカー常務医師に求められる能力」ということで、観察力、判断力、処置能力、説明能力ということで、これは院内においても同じことが求められて、当然、On the job training、あるいは日常臨床でのトレーニング、こういうことである程度は可能なのですが、消防との協力のもとのリーダーシップあるいはコーディネート力、こういうところは今のところは余り議論をされておりません。こういうところについては、これから議論の上、システムをきちっとつくっていくことが大事かなということで、これは今回これくらいにとどめておきます。
最後、収支ですけれども、21枚目ですね。これは経費です。また、設備投資ということで、車両につきましては、救命車タイプを使っておりますので、約1,800万円、装備は900万円、合計27,000,000円になりますが、これは一回買えば終わりではなくて、数年ごとの更新になります。特に、当センターは年間25,000キロ走っておりますので、6年もしますと更新が必要になってくるかと思います。
また、毎年の経費ですけれども、これは医師、看護師人件費ということで2,800万、車両運行委託費(運転手の給与も含む)は2,100万、合わせますと5,000万強という費用がかかります。これは毎年かかっております。
そして、収入といいますと22枚目になりますが、これは往診料、救急搬送診療料、診療情報提供書作成料、こういうものが該当するかと思います。ちなみに、2016年度の当センターのドクターカーに関する他院搬送症例の請求額は1,633万円となっております。ただ、この額につきましては、当地域では、市民の皆様が比較的理解を示しておられて、お支払いに応じていただけるのですが、こういう請求を全くできないという地域もあると聞いておりますので、この辺りも議論が必要かとは思います。
財政的課題について、23枚目にまとめておりますが、運転手確保については、どのような方式であれ一定の財源が必要です。
医療スタッフの確保については、院内業務と兼務となりますが、専従を雇うということになりますと、相当な財源が必要になります。また、車両も高額ですし、出動件数がふえますと、それに応じた予算措置も必要になります。
そういうことで、診療報酬につきましては、上記を勘案しますと、増額が必要ではないかと考えております。ただ、やみくもにふやすことは問題があると思います。地域MCがちゃんと認証した教育も含めたきちっとしたシステムが構築されている場合に、それに特化した往診料設定とか請求ルール、そういうものをつくっていただければいいのではないかと考えております。
最後、24枚目の「まとめ」にまいりますが、ドクターカー運用上の課題は以下のとおりということです。
消防との連携は良好ですけれども、これは今までの検証、教育、そういうものの効果であると考えております。
また、医療スタッフ教育については、コーディネート能力等の医療以外に関する部分の教育が必要と思います。
財政的問題は重要でございまして、現状以上の財政的対応が必要と考えられます。
以上、簡単に説明をさせていただきました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、資料5に基づきまして、奈良参考人より御説明をお願いしたいと思います。
○奈良参考人 昨年の7月30日から運航を開始しました北海道患者搬送固定翼機運航事業、Medical Wings(メディカルウィング)と申しますが、お手元の資料に従って説明させていただきます。
私は、本事業でメディカルディレクターを担当します奈良と申します。よろしくお願いします。
では、1枚おめくりください。2ページ目になりますが、本事業の目的と、その目的の背景の1つである、北海道の広大さを示しております。下段に、本事業で用いています主要機体、2機体示しております。1機はジェット機、1機はいわゆるターボプロップ機でございます。通常、汎用機体ですが、メディカルウィングとして運航する場合には、専用ストレッチャー、電源、酸素、吸引が装備されているユニットを搭載します。また、必要に応じて研究会が所有する保育器や本事業のためレンタルしています人工呼吸器やモニター等を搭載します。運航パイロットが2名と整備士が1名で、搬送に関しては、患者1名、ほかに3名が搭乗可能となっております。
3ページ目をごらんください。事業主体と財源については、先ほど事務局から説明していただいたとおりです。
4ページ目。本事業の搬送対象患者の基準ですけれども、北海道内の医療機関に入院治療中の患者で、1~4までの全ての基準を満たすものとしております。
1は、当該地域の医療機関では提供できない高度・専門的医療を必要としていること。
2.高度・専門医療機関へ転院して治療を受けることにより、症状及び生命・機能予後の改善が期待できること。
3.搬送中に医師による継続的な医学的管理を必要とすること。
4.搬送環境(使用可能な医療機器、室内与圧等)や搬送時間等の制約により、当該事業による搬送が適当であること。
を適用基準としています。
要請者は、北海道内の医療機関で診療に従事している医師。
搬送体制は、計画的な搬送により実施しておりますが、これは具体的には、要請翌日以降の搬送で、研究運航のときに定義した計画搬送をもとにしております。計画搬送ですので、距離的な問題ばかりではなく、既に、既存のドクターヘリ、緊急搬送を対象としている防災・消防ヘリとは基本的に異なる疾患を対象としております。
5ページ目以降は、5~9ページ目には、具体的な搬送手順を示しております。
5ページ目は、北海道内の医療機関に入院している患者さんがメディカルウィングによる搬送を希望する場合に、統括医療機関であります札幌医科大学附属病院の要請センターに、電話による連絡と患者情報についてFAXしていただいています。患者情報のFAXは、10ページ目にお示ししてあります。
これらの情報をもとに、当日担当のメディカルディレクター、これは現在8名ほどおりますが、要請元の医療機関の担当医師に連絡し、要請内容や患者さんの状態、それから、当該医療圏での治療が困難である等の聞き取りを行い、搬送可否を検討します。搬送先の医療機関、転院先の医療機関については、あらかじめ決定していただき、搭乗する医師・看護師も、原則、搬送元もしくは搬送先医療機関に確保していただいています。医師等の確保が困難な場合や患者さんの重症度によって、メディカルディレクターが必要と判断した場合には、我々が搭乗する場合もございます。FAX情報はメディカルディレクター間で共有できるようになっていますので、原則、複数のメディカルディレクターで判断するようにしております。
6ページ目は、医学的に搬送適用と判断した場合には、メディカルディレクターから運航会社のCSに連絡し、運航スタッフ、機械・天候等の調査を行っていただきます。CSは、運航に関して、ドクターヘリのコミュニケーションスペシャリストとほぼ同等の役割を果たしております。医療、運航とも搬送可能と判断された場合には、メディカルディレクターから搬送元医療機関にその結果を伝えることになっています。
7ページ目は、搬送決定以降の医学的な事項は、メディカルディレクターが担当し、病院から空港までの搬送、空港から病院までの搬送を含めた全ての行程に関しては、運航会社のCSがマネジメントするということになっております。
8ページ目。機体は、県営名古屋空港にございますので、当日もしくは前日に、そこから計画に従って運航を開始するということになります。
9ページ目ですが、搬送当日は、搬送元から空港までの搬送が必要になりますので、これに関しては、自治体消防に依頼する場合には、これは事前調整を行ってはいますが、当日の搬送元医療機関から119番通報をしていただくというルールにしております。
飛んで、11ページ目です。平成29年度の搬送実績で、21件の搬送要請がございました。18件が道内の搬送で、3件道外搬送もございました。
あと、資料にはつけてないのですが、この間の総要請件数、キャンセル、相談も含めてですが、34件ございました。34件の問い合わせに対して21件搬送したということになります。
12ページ目は、これは公開しているベースのデータですが、搬送患者の年齢、疾患区分。
それから、13~14ページには、運航内容、運航地域、時間も含めた一覧表をお示ししております。道内搬送の場合は、総搬送時間は、札幌市の丘珠空港を使用する場合には、病院から病院までおおむね2時間。それから、新千歳空港を使用の場合でも、3時間以内という結果が出ております。
搬送元医療機関から搬送先医療機関までの推定地上搬送距離を汎用ソフトを使って計算しましたが、おおむね100~365キロでした。ですから、救急車搬送を時速80キロに想定すると、大体2時間半~5時間の搬送時間ということになります。
15ページには、参考として、今年度の6例を示しておりますが、今日現在まで9例の搬送を行っています。要請自体は12~13件で9例の搬送を行っております。
最後に、本事業の検証についてですが、全体にわたっては、これはドクターヘリも同じような形態をとっていると思うのですが、運航調整委員会を設けて、その中で総括的な議論をしていただいております。本年は、3月23日に1回目の委員会を開催しました。
17ページには、より専門的な見地から、詳細な事後検証を行うために、資料にお示ししましたメンバーによって事後検証部会を設置しております。昨年度は、事業初年度ということもあり、事業開始年度中の1月28日に事後検証部会が、事後検証会として、この時点の17症例とキャンセルを含む症例全例について検証を行いました。
検証の仕方は、要請のFAX内容、運航計画、運航実施内容について、その資料をもとにメディカルディレクターと運航担当者が説明し、その後に搬送元医療機関と搬送先医療機関からも、予後等を含めた事後調査票を提出していただいておりますので、その内容も含めて検証されました。
検証会では、初年度ということもあり、行政手続の簡素化、効率化に対する搬送元医療機関からの要望、搬送先医療機関の選定の理由、その判断の確認方法、それから、病院から空港までの搬送の確保等について、事後検証票をもとに議論されました。
幾つかの課題も指摘されましたが、搬送症例全てについて、現時点では、掲げている搬送基準を満たしており、また、キャンセルや相談事案についての対応も、「妥当」という判断がなされました。まだ年度途中で行いましたので、21例全例については行っておりませんので、来月行う予定でおります。
私からの説明は、以上です。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、これまで御説明ありました、事務局の御説明と参考人の3先生の御説明、これについて、御質問、御意見があれば、承りたいと思います。
それでは、山本構成員、お願いします。
○山本構成員 先ほど、資料2の17ページで、年間要請件数のところで、最大値が、私どもの兵庫県の中にある公立豊岡病院でございますので、私なりの感じていることをちょっとお話ししたいと思います。
1つは、兵庫県の但馬豊岡というところはどういうところかといいますと、兵庫県の日本海側半分の地域を占める広大な過疎地域であります。その中で、この公立豊岡病院が唯一の高度的な医療ができる基幹拠点病院なわけであります。先ほど、適用基準について、今後の課題ということでお示しいただいた中で、私たちは、ある程度医療機関があって、人口もある程度あるところのエリアのところと、豊岡がある但馬地域と言われているところのような広大な過疎地域のところとの適用基準にある程度差をつけてもいいのではないかという感覚があるのです。
それは何かというと、オーバートリアージと言われて、結果としては、ドクターヘリで運ぶほどのものではないけれども、運んでいるのではないかということがある中で、一方、そこに住んでいる地域住民にとっては、医療過疎の地域ですので、高度な医療機関へのアクセスを容易にしているという意味において、地域住民に対して高度な医療の提供ということにおいては貢献しているのではないかという印象も持っています。
先ほど、補助体系の中には、ドクターヘリに加えメディカルジェットがあるという中で、結果としては、メディカルヘリみたいなものもあってもいいのではないか。どういうことかといいますと、そういう広大な過疎地域を抱えるようなところのドクターヘリに関しては、場合によっては、メディカルヘリみたいなものの概念もくっついたような、そういった新たな補助体系があってもいいのかなというような気もしています。多分、今までの歴史がさまざまある中で、今までの補助の枠組みが是とした中で、適用基準がどうあるべきかという議論が行われているのですが、そもそもの補助体系の概念自体を一度御議論いただいて、それはそれで、また、違うよと。そういうのは消防・防災ヘリのやる仕事だよとか、多分、過去に今までいろいろな議論があったのかもしれませんが、ただ、効率的な運用を考えると、先ほど、公立豊岡病院での飛び方は異常だと言われて、1機体制でやっている中で、後、話題になる安全運航の課題にもつながるのですが、場合によってはそちらに2機置いておいて、そして、どんなときにもドクターが搭乗するフル装備のドクターヘリではなくて、場合によっては、救命士あるいは相手先の病院のドクターが乗るといったメディカルジェット的な運用があってもいいと思うのです。従来のドクターヘリという概念のものに加え、過疎地域の住民に対して高度医療へのアクセスといったような機能を持つことを付加するのはどうかというような、かなり根本的な議論もできればしていただくと良いと思っています。私ども、実際、公立豊岡が恐らく断トツに数が多いのは、多くの方が、もしかしたらオーバートリアージではないかと思っている中で、でも、地域住民の立場を考えると、それもある意味では、どれだけコストベネフィットがあったかという課題があるとは思っていますけれども、十分議論し、また、検証していく価値があるのではないかというのが、私の個人的な意見でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
御意見を承りましたが、どなたかのコメントは御必要ですか。
○山本構成員 意見ですので、コメントは求めません。
○遠藤座長 では、御意見として承りました。ありがとうございます。
ほかにございますか。
加納構成員、どうぞ。
○加納構成員 ありがとうございます。
まず、厚労省にちょっと確認ですが、資料2の12ページの下のドクターカー事業についても、一応経費の補助が出ているというのですが、大体どれぐらいの経費の補助が出ているかを教えていただけますでしょうか。ドクターカーの運営のほうと、ドクターカーそのものの購入費の補助が出ているということです。
○飯塚病院前医療対策専門官 事務局でございます。
ドクターカーに関する事業につきましては、こちらの右側に書いてございますが、医療提供体制推進事業費補助金の内数ということでございますので、実際の基準額は、ドクターカーの運営、運転手を確保する金額としては470万×確保月数÷12、ドクターカーの購入につきましては、約555,800万程度補助しているところでございます。
ただ、こちらに関しましては、県からの要望額が予算額を上回る場合は、それに応じまして県のほうで配分されるということでございますので、満額出るというわけではございません。
○加納構成員 先ほど、林先生からお聞きした、補助が足りないのではないかというような御意見的な話があったので、それ1か所当たりそれで充当する金額ではないということがまず1点あるのですかね。補助金は出ているということで理解していいわけですよね。
そこで、もう一点、そこからお聞きしたいことが、実は、資料4の1でございます。資料4の1で、今回の千里救急救命センターから、私、大阪なので、確かに箕面市民とか池田市民とかよりは、多分、能勢町とか豊能町の問題が一番大きいのかなと思います。距離的には、実は、吹田は一番距離が離れているという地理的な状況がある中で、7ページを見ていただきますと、例えば、3月の千里救急救命センターへ実際入ったのは32件、1日1件という計算になるかなと思うのですね。
先ほどから、ドクターヘリとかメディカルウィングの話を聞いていますと、ドクターカーの必要性が何なのかなというのが、経費的なことも考えて、ちょっと疑問視されるかなと。確かに、救命救急士の処置よりはドクターの処置が有効であるというのは誰でもわかることですけれども、果たして、それぐらいの経費を使ってやる必要があるのかどうか。また、聞いていますと、救命救急士の実際のいわゆる実践的な研修のために非常に効果があるのはわかるのですけれども、そのためにこれだけの経費を使ってやる必要があるのかというところが少し疑問であります。
地方によって違うのではないかなということは理解します。へき地とかそういうようなところでは、また、違った状況があるかとは思うのですが、都会において、ドクターカーが果たして必要なのかなというのが少し疑問視されましたので、この点はどなたにお聞きしたらよろしいのでしょうか。
○遠藤座長 それでは、この件について、とりあえず事務局からお答えいただいて、関連で、何か御意見があれば、また、言っていただきたいと思います。
では、事務局、どうぞ。
○徳本救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。
ただいま、2点御質問をいただきました。まず、資料4の21ページ目に示されています、ドクターカー運用にかかる経費について、国の補助事業としてしっかり見れているのかということですがまず1つ御説明申し上げたいのは、車両の購入費は先ほど申し上げた基準額で準備はしておりますが、さはさりながら、国としても予算の限度がありますので、必ずしも車両の費用2,700万全部見れているかどうかというのは、その個々のケースによるところでございます。
あと、医師、看護師の人件費とかを積んでいただいているところですが、補助事業としては対象としておらず、先ほど説明で申し上げましたように、ドライバーの人件費の部分を補助しているものでございます。
ドクターカーが都市部において運用する必要があるのかどうかという2つ目の御質問についてですけれども、その点について、まさに、しっかりと地域において議論をしていただいたらいいのではないかという我々のお願いがありまして、この資料2の最終ページ、23ページに、議論いただきたい内容として提示させていただいているところでございますので、本日、皆様方から御議論いただければと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
それでは、せっかく議論していただきたい内容が3つほどあって、その御指摘もありましたので、これから、御発言はもちろん自由ですけれども、この3つの内容に関連するようなことがあれば、ぜひ、御発言をいただきたいと思います。
それでは、坂本構成員、お願いします。
○坂本構成員 今のお話に関連してなのですけれども、資料2の12ページの運営事業のところで、整備事業に関しては、※2というマークがついていて、救急車であるということで、救急車型に限定されていることはこれでわかるのですけれども、運営事業に関しては特にないということは、これは、乗用車型のドクターカーであっても、運転手の確保に関する経費は補助ということでよろしいのでしょうか。
○遠藤座長 事務局、お願いします。
○飯塚病院前医療対策専門官 事務局でございます。
救命センターの整備事業におきましては、坂本先生がおっしゃいますように、「患者監視装置等の医療機器を搭載し、医師、看護師等が同乗し、搬送途上へ出動する救急車である」と定義はしておりますけれども、しかしながら、これを満たすものであれば、乗用車タイプも補助対象になり得ると考えております。
○遠藤座長 坂本構成員、よろしいですか。
○坂本構成員 はい。
○遠藤座長 ほかに、いかがでございましょう。
それでは、横田構成員。
○横田構成員 横田です。
先ほど、加納構成員の御質問に、私がお答えするのはあれですが、一つのヒントになるのは、この資料4の16ページは、一般市民が目撃した心原性心室細動の生存率ということで出ていますけれども、これを見る限りも、統計的な操作がされていないので、その評価は難しいのでしょうけれども、恐らく林先生きちんとされていると思うので、このような効果が出ているというのが1点と。
あと、私ども東京都では、4台の乗用車型のドクターカーが運用されていて、きょう、構成員の大友先生が会長なのですけれども、そこでも同様の結果が出ています。ですから、都市においても、やはり一定の効果はあるのかなと私は認識しています。
それから、もう一点、これは事務局に質問をしたいのですけれども、よろしいでしょうか。
○遠藤座長 どうぞ。
○横田構成員 メディカルジェット的の運用といいますか、今、実際の運用は、北海道のメディカルウィングという形でのみと先ほど説明があったと思うのですが、これは、病院間搬送を想定しているということで、例えば、ほかの地域で、ここを想定しているとか、ここの地域だとかというのは、厚労省としては何かお考えはあるのでしょうか。北海道だけのことを考えていればいいということなのでしょうか。
○遠藤座長 事務局、お願いします。
○稲木課長補佐 事務局でございます。
メディカルジェットでございますけれども、へき地の事業として、「へき地保健医療対策実施要綱」の中で定められておりますけれども、この中では、括弧つきで「メディカルジェット」になっていまして、正式には「へき地患者輸送航空機」という名称で立てられています。
したがいまして、これについては、特段、北海道を特出しで運用をしてくださいとかということをしておりませんので、この要綱に見合った運用をされる都道府県があれば、それに応じて、必要に応じて補助がされるというふうになっています。あくまでも、都道府県自身が主体的に運用していくものというふうにしています。
○横田構成員 地図を思い浮かべたときに、例えば、東京都は小笠原諸島があって、でも、小笠原諸島には実際エアポートがないことを考えると、ほかの地域を考えたときに、北海道はもちろんこのように効果を発揮しているわけですけれども、どういう地域を想定しているのかなと思って、質問した次第です。
○稲木課長補佐 追加で、事務局からでございます。
これは、へき地患者輸送航空機と申しますのは、たてつけ上は固定翼に限定しているわけではございません。回転翼もありという考え方でございますので、これは必要に応じて、つまりヘリであっても、過疎地域、無医地区等の高度専門的な医療提供が困難な地域から、より高度な専門医療が存在している都心部へ航空機を活用した輸送に対する補助でございますので、これはいろいろな運用方法があると認識をしております。
○横田構成員 いわゆるドクターヘリは、いろいろな機材が装着されてしまう、病院間搬送には向いてないですよね。ですから、そういうドクターヘリのスペックとは違ったヘリを想定もしているということですか。
○稲木課長補佐 患者輸送、かつ、へき地から高度医療提供ができる都心部への輸送という概念でございますので、これは運用方法によって、必要な装備等も異なってきますので、それぞれの都道府県の必要性に応じて必要な装備を考えていただくということだと思います。
○遠藤座長 よろしいですか。
○横田構成員 はい。
○遠藤座長 それでは、お待たせしました。大友構成員、どうぞ。
○大友構成員 今、そもそも論で、ドクターカーが本当に有効なのかという。つまりは、医師が時間を使って、なおかつ、お金をかけてやることに意味があるかという根本的な疑問があって、もし、意味がないのだったら、これは議論しなくてよくなるのですけれども、ドクターヘリのときも、当初、本当に有効なのかという議論がありました。
ただ、あのときには、十分なエビデンスがなかったので、その辺が疑問視されていましたけれども、たくさんの搬送件数を積み上げて、かなりレベルの高い、有効性を示すデータが出てきて、ドクターヘリの有効性は認められていると思います。そのドクターヘリの有効性に関しては、速く運べるという要素と医師が早く患者に接触できるという要素と2つありますが、もしも、医師が早く接触することに関して意味がないのだったら、ドクターヘリでなくても、通常のヘリ搬送を充実すればいいはずなのですが、恐らく、医師が早く接することもかなり有効な要素だと考えられます。
だとすると、ドクターカーも特に搬送時間が長い症例において、医師の早期診療開始という点において有効なのだろうということです。これは、まだ全国的にごく一部でしかやってないので、なかなか有効性を示すデータを集められないのですが、これが全国的にドクターカーの運用が普及していけば、間違いなく、ドクターヘリと同じように有効性を示せるのではないかと思います。
どういうところにドクターカーの意義があるかというと、現在、救急救命士、高度な医療処置ができると。具体的には、気管挿管や薬剤投与はできますが、ただ、残念なことに、輸液以外は、心臓が止まらないと実施できない。医師の場合には、心臓が止まる前の重篤な状況において、気道確保や呼吸管理や循環管理ができるというところがやはり違うところになり、明らかに、医師が現場に出動し、早く患者さんと接触したほうが有効である症例は、一定の比率でいるだろうということと。
あと、例えば、くも膜下出血みたいな場合には、これは、時間を速く運ぶことよりも、再破裂を抑えて運ぶことが大事になってくるので、そういうときには、鎮静・鎮痛をやりながら運ぶことによって救命につながるということだと思います。
ドクターヘリに関しては、10分という、直接運んだほうがいいのか、ドクターヘリが有効なのかの時間的要素が出てきましたけれども、ドクターカーに関しても、都市部でどうなのだという議論はありましたけれども、何分以上の搬送時間のときにはドクターカーを使ったほうがいいというデータを蓄積していけばわかってくるのかなと思っております。
いずれにしろ、ドクターカーは、医学的に考えれば、これは有効。
もう一点、言い忘れましたけれども、では、心肺停止の患者さんに対して、高度な医療に関しては、ドクターは救急救命士と同じことしかできないのではないかということなのですが、ただ、我々のデータは、そこに関しては、明らかに有意差があることが判明しました。心肺停止症例に対して、統計的に重症度をそろえても、ドクターが対応したほうが、明らかに社会復帰率、蘇生率が高いと。何が違うかというと、輸液もしくは薬剤投与までの時間が、救急救命士が実施すると18分ぐらいかかるのが、医師だと3~4分でできるというところが大きく違っていて、心肺停止に関しても、実は、ドクターカーのほうが有効だということであります。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
加納構成員、どうぞ。
○加納構成員 ありがとうございます。
スコアはよくわかるのですが、例えば、先ほど、僕、最初に地図をちょっと申し上げたのは、吹田から例えば能勢町のほうへ行くということを考えますと、これは非常な距離なのですね。ですから、能勢町から救急車に乗せて、例えば、箕面とか池田の市民病院へ運ぶなりとかそういうことのほうが有効ではないかなということをちょっと思いまして、御質問させていただいたのです。
ドクターカーを維持するのに、最低、運転手の費用が、また、要るとなると、これだけでも、年間の見積を見ますと2,100万ですから、1日6万円ぐらいの費用を絶えず使いながらスタンバイしているなという感じはわかるのですけれども、費用対効果は、これは救急が言ってはいけないことですけれども、必要性と効率性をしっかりと考えないと、ある面本当に役立っているか、都会でのドクターカーとか、また、へき地でのドクターカーとか、必要度によって大分違うのは認識するわけですが、過去のことであっても、少しずつ検証していかなければいけないのとちがうかなということで、ちょっと提案させていただいたわけです。
○遠藤座長 ありがとうございます。
それでは、森村構成員、お願いします。
○森村構成員 皆さん、こんにちは。森村でございます。
今の議論を進めていく上で、ぜひ、検討していただきたいのは、多少の仕様は違いますけれども、消防の車であろうが、あるいは、警察車両であろうが、医療チームが乗れば、それはドクターカーの機能を発すると私は思っていて、ヘリコプターもたくさん機があるわけですが、そこに私たちが乗れば、ドクターカーと同様のものができるような、いろいろリソースをうまく使っていくという考え方の推進です。
すなわち、ハード面もさながら、ソフト面をどのようにするのかということを決めていけば、自ずとドクターカーというものは何か、あるいは、ドクターヘリというものは何かという定義づけがしっかりしてくると思いますし、そういう議論が今後必要になると思っています。
例えばフランスでは、重症の患者さんに対する病院前診療チームとスペースのことをモダリティを問わず、モバイルICU、すなわち、「動くICU」と表現しています。その「動くICU」の中にヘリコプターがあったり、エアクラフトがあったり、船があったり、そして、車があるというわけです。したがって、どういうものをドクターカーと呼ぶかという議論が今後必要になると思います。
その上で、私は、都市部のことを考えるときには、2つの視点が必要だと前から思っています。すなわち、現場の傷病者を助けるという視点と、運ばれた後の病院に助けに行くという、この2つの視点だと思います。1つ目の視点においては、メディカルコントロール協議会が非常に充実していて、プロトコルがしっかりしている地域であって、かつ、救急隊員、救命士が明らかにそのプロトコルの判断に迷わないような病態、例えば、脳卒中であったり、急性冠症候群であったり、そういった場合は周辺の医療機関とのリソースとの兼ね合いで、ドクターが介入することなく、円滑な病院前救護が展開できると思うのです。
しかし、それ以外の場合の切り札としてドクターカーを出すというプロトコルをつくることによって、現場支援という意味でドクターカーという選択肢の必要性が出てくるかなと思いますし、すなわち、プロトコルがグレーゾーンになっているようなものの場合には、現場に出て行く医師たちの医療チームの意義は十分にあると思っています。
ただ、都市部でもっと重要なのが、病院間搬送に活躍するのではないかと私は思っています。必ずしも、きれいに分類されていない医療機関に、救急隊員はプロトコルと言いながらも運ぶわけですけれども、各医療機関が必ずしもその病態にマッチした医療のリソースを提供できない場合があり、いわゆる途中から、さらに高次病院に運ばなければいけないということは、その日のうちに起こることもありますし、数日たってから起こることもあるし、例えば入院してから1週間ぐらいで、敗血症から多臓器障害になって、もうアップアップしていて、これ以上はこの病院では診られないけれども、搬送するには非常に危ない、というような状況は多々あります。そのような場合に病院に患者を迎えに行くという点において、ドクターカーがその力を非常に発揮すると思います。
今までの病院間搬送は、先ほどのメディカルジェットもそうですけれども、「もう、だめだ」と言っているところの人たちの人を割いて、その人たちが次の医療機関に送るとはちょっと思えない。その病院はもともと数的にも厳しいから助けを求めているわけで、その助けを求めている病院の人が搬送について行ってしまうと、その間、その病院の周辺、診療圏は、また、手薄になるのではないか。これは、病院間搬送のもともとの文化は、「助けに行く」という文化なので、それを達成するには、都市部においても、ドクターが、医療チームが現場に迎えに行きながら、それで、診療しながら搬送する、適切なところに行く。その他には、乗用車型のドクターカーで病院に向かい、搬送元医療機関のリソースを使って初期診療を支援するという、こういうことに意義があると思っていますが、もちろん、絵に描いた餅と言われるかもしれません。こういうのがうまくやれるためには、病院間の地域のネットワークと信頼関係が大前提にありますけれども、もう既にそうやっている地域、横浜もそうだと思います。やっていますので、そういった点において、都市部のドクターカーの意義があると思っております。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
お待たせしました。嶋津構成員、どうぞ。
○嶋津構成員 嶋津です。ドクターカーについて、2点発言させていただきます。
1点目は、厚労省の資料でも、ドクターカーの運用実態はかなりばらばらだと話しておられましたけれども、平成27年に、病院前救急診療医学会が、ドクターカーのアンケート調査ということで、林参考人もその中の委員だったと思いますけれども、そこでは、400件、二次救急の施設も含めてドクターカーを運用していると答えられています。その結論では、約2割が充実した活動をしているということですから、実際、ドクターカーがたくさんあっても、どのような運用されているか、施設ごとですので、本当に必要か云々もそうですけれども、ちゃんと運用されているかどうかも含めた議論が必要だと思います。
1点は、先ほど、加納構成員からも御発言がありましたけれども、大阪の豊能、能勢から千里救急救命まで行くと、車でも40分以上はかかるのですけれども、2010年に阪大にヘリが入っていますから、それ以降はほとんどヘリにかわっています。そういった意味では、また、後で出るかもしれませんけれども、ヘリとドクターカーの連携、あるいは棲み分けといったことも含めたドクターカーの運用が大事ではないかと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
島崎構成員、どうぞ。
○島崎構成員 幾つか質問があります。
1つ目の質問ですが、搬送との関係で言うと、DPCのデータがあるので、どの地域で、どれだけの重症度の、あるいは、どういう疾病別の発生があったかどうかはわかります。また、GISのデータを使えば、ある病院から何分以内で搬送できるかというのもわかります。そういう方法を組み合わせれば、どのくらいの重症度の疾病に関して、どのくらいの範囲のところまでカバーできるかどうかということは分析できるわけです。
何を言いたいかというと、ドクターカーとかドクターヘリの議論をするときに、まず、そういうデータをベースにするというのは、当然あって然るべきだと思います。ですが、正直申し上げて、地域医療計画の救急のところを見る限り、私がざっと見た限りで申し上げているのですけれども、あまりそういう分析をした形跡がありません。
一方で、先ほど言ったとおり、理屈上はそういうことをやればいろいろな分析はできるわけで、もちろん、これで全て問題が解決できると申し上げるつもりはありませんが、そういうのを事務局のほうで何かごらんになったことはありませんか。
あるいは、本来は、そういうようなことを地域医療計画の5疾病・5事業のところで、期待が過剰なのかもしれませんけれども、本来は、そういう議論をすべきだということを言うべきなのではないかなという気がするのですけれども、どうお考えでしょうか。
○遠藤座長 事務局、何かコメントはありますか。
○徳本救急・周産期医療等対策室長 過去、第何回の医療計画関係の検討会で、GISを用いて評価をしたとかというのを、今すぐ御紹介申し上げることはできませんが、たしか、過去そういったものを提示させていただいた経緯はあったと思いますので、また、ちょっと調べ調べさせていただいて、今後、報告させていただきたいと思います。
○島崎構成員 もちろん、それで問題が全て片づくということを申し上げたわけではないのですけれども、そういう議論をMCの協議会だけでなくて、地域の医療関係者が情報をきちんと共有して、費用対効果の問題も含めて議論をしていくことが、今後必要になってくるのではないのかなというのが意見の1つです。
2つ目は、先ほど、消防・防災ヘリの話が出ましが、今回、直接、資料の中に入っていないですね。ドクタージェットは、私はきょう初めて話を聞いたのですけれども、ドクタージェットとドクターヘリ、消防・防災ヘリには、それぞれメリットとデメリットがあるはずですよね。それから、こういう場合については、こちらで代替するとか、実際、共用しているケースも結構あるはずで、それらのデータをきちんと示していくことが必要なのではないかと思います。
それからさらに申し上げると、広域救急は、北海道はちょっと別にすれば、都道府県単位でどこまで考えていくのが適当なのかという点はもう少し議論をしてもいいのかなと思います。あるいは、そこまで行かなくても、都道府県の連携みたいなことがあって然るべきだろうという気がします。以上は意見ですが、ぜひ、消防・防災も含めた実態がどうなっているのかは、改めてお示しいただいたほうがよいという気がします。
それから、3つ目は、これはちょっとないものねだりですけれども、いつも救急の議論をやっていて困るのは、全体の費用構造がよくわからないことです。ある疾病の治療費だと、診療報酬で推計できる。診療報酬が原価を反映しているかという議論はありますけれども、どのくらいのコストがかかっているかは、おぼろげながら推計がつくのですけれども、例えば、ドクターヘリに関して言うと、地方交付税の算定基準に入っているということは、地方交付税分も計算しなければいけないということですね。それから、以前に申し上げたと思うのですけれども、救急の1回当たりの搬送のコストに関して言うと、東京都の場合、1件当たり4.5万円ぐらいかかっていたという報告がありますが、これは、救命救急士の人件費とかいろいろな諸々の経費が含まれています。
何を言いたいかというと、全体の救命医療の費用構造の全体像がよくわからないのです。さらに言うと、それぞれのドクターヘリとかドクターカーのコストも、何を入れて、何を除外すると、どのくらいのところが損益分岐点になっていて、どのくらいしないと費用対効果が見合わないのかというような議論ができないのです。これは天に唾するみたいな話なのかもしれませんけれども、例えば、どこかの学会が議論しているよか、それに近いアプローチをしているとかということはないのでしょうか。これは質問になります。
○遠藤座長 事務局及び関連学会で何か。費用の話ですので、ちょっと微妙なところもありますが、何かそういうことを研究しておられるところはありますかね。
どうぞ。
○猪口参考人 東海大の猪口です。
ドクターヘリの費用につきましては、実測するのは極めて難しいですけれども、事業費がございますので、これを費用と今のところ考えつつ、効果というやり方しかできていない。これは委託事業ですので、真の費用といいますと、会社の経費とか何かが必要になってきますので、非常に難しいです。あと、諸外国では会社というのがあったりしますので、それを比較するとわかると思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
石川構成員、どうぞ。
○石川構成員 日本医師会の石川でございます。
10年前になるのですけれども、千葉県で2か月間、救急車の覚知から患者を病院に搬送するまで、全数把握をしたことがあります。ですから、地点とか移動距離とか全部わかります。病名もちゃんとわかって、重傷度も一定の範囲でわかるということをやりました。すごく大変だったですけれども、そのデータは手に入ると思います。僕らはちゃんと発表しているので、それは少しお役に立てるかもしれません。
それから、私は、日本医師会へ来る前は、船橋市でドクターカーにずっと乗っていました。ドクターカーの費用対効果はほとんど難しいと思います。これは出ないと思います。というのは、プレホスピタルケアで、本当に行って助けられるかどうか。例えば、回転寿司で、窒息しかかった65歳を、私、挿管して助けたことがありますけれども、それは絶対ドクター扱いでないと助からないと思いますね。それから、餅ですね。餅も3人経験して、そのうち1人助けましたけれども、ああいうのも絶対ドクター扱いでないと難しかったかもしれないですね。そういうふうなので、ドクター扱いがあったら、これを費用対効果がどれくらいあったか。恐らく、ほとんど無理だと思います。
ちなみに、今回、4ページ目に、千里の搬送の出動基準があるのですけれども、船橋市は、実は、御遺体であっても、死んでいるとわかっていても、一応不審死は全て出動していました。ですから、ひどいときは、夜中泊まっていて、5件全部自死というか、そういうのもありまして、それも全部確認。そういう役目もあることはあります。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
まだ、いろいろお話があるかとは思いますが、実は、もう一つアジェンダがございまして、議題の3番目、「ドクターヘリの安全運航について」がございますので、そちらのほうに話を進めさせていただきたいと思います。
それでは、「ドクターヘリの安全運航について」猪口参考人より、資料7については事務局より続けてお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○猪口参考人 それでは、資料6について御説明させていただきます。
「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」というページになります。
先ほど、事務局から説明がありましたように、平成28年8月に、ドクターヘリの落着事故が初めて発生いたしました。
これを踏まえて、厚生労働科学研究において、専門家の意見を集約の上、「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準試案」をつくり、さらに、平成29年度に追加の研究を行って、「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」を作成しました。これは、本日、資料として添付させていただいております。
現在、残った課題について、調査・研究を継続している状況でございます。
1枚おめくりいただきますと、ドクターヘリの安全管理の特徴ですけれども、非常に多職種・多機関の連携で運用されているところが特徴でございます。普通は、例えばエアラインの航空機で旅客を搬送するというのは、非常にシンプルな構造になりますけれども、ドクターヘリの場合、傷病発生現場から、要請されたドクターヘリには、医療クルーと運航クルーの両者が乗っております。それから、消防のほうは、当然、救急車で救急隊員が臨時離着陸場に運びます。ここで、傷病者、患者さんの受け渡し、あるいは、医療介護が行われることがありますし、離着陸時には、周囲に住民がおりますので、この安全確保が必要ということで、いろいろな機関がいろいろな人に対していろいろな安全管理責務を負っているという状況で運用されている場所であります。
1ページおめくりいただきますと、多職種・多機関連携で運用されていること、それから、確保しなければいけない安全は、航空機の航行の安全、医療の安全、臨時離着陸場の安全確保、それから、このシステム全体の安全な運用といった、いろいろな面での管理が必要になります。
したがいまして、従来、当然、航空機の運航については、航空運航会社あるいは医療については病院、消防は消防ということで、安全管理が行われておりますけれども、これらの機関間における安全情報を共有化することと、多職種連携がどう行われているかという、その視点での管理が必要だということが特徴でございます。
それから、もう一つは、ドクターヘリの運用は都道府県の事業でございますので、各都道府県で運用の仕方が若干異なっております。これをある程度統一していく必要があるのではないかということも問題の1つでございます。
1ページおめくりいただきますと、つくりました「安全管理基準」の目次がございますけれども、このうち、問題がある部分を赤字で示しておりまして、この部分だけ御説明させていただきます。
まず、1番目は、医療クルーの前教育でございます。ドクターヘリは、これまでに、急激に配置都道府県を拡大してまいりましたので、ドクターヘリの従事者講習会、これは厚生労働省の委託で行ったり、その他ございますが、これの新しくできたドクターヘリの基地病院で、それを立ち上げて、指導していく方を養成するという考え方で養成しております。
それから、新規に導入した基地病院の従事者につきましては、認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)という機関が、既存の基地病院で、要員の研修を実施してもらいました。これは都道府県が拡大していく中で、こういうことを最優先でやってきたわけですけれども、そろそろドクターヘリの全国配備も完成しつつありますので、安全で安定的な運用という目標を少し切りかえて、医療教育の教育体制を再構築する必要があるということです。これについて、目標設定とカリキュラム作成等を行っております。医療クルーの安全教育については、搭乗前の事前の教育と、それから、それぞれの専門教育、それから、あとは、継続教育がありますけれども、これは、実際、学会等が中心になって実施しているものと考えていいです。
2番目でございますけれども、運用・運航の標準化についてです。ドクターヘリの運用は、地域差がかなりありますので、運航要領・運航手順書の標準例を作成して、当然、各地域の特殊性もございますので、これを参考にしながら、臨検に行くと違う運用をしているというようなことが余り起こらないように調整していく必要があるということです。これについても、しばらく運用した後で、さらに、問題点を抽出して、整備していく予定でございます。
それから、3番目。これは先ほど申し上げました、多職種・多機関による安全管理・安全情報の共有化が非常に重要になります。現在、全基地内の80%ぐらいで、朝出かける、朝、これからミッションが始まるというときに、医療クルー、運航クルーが集まって、ブリーフィングをやっておりまして。大体運航が終了しますと、デブリーフィングという、きょう何があったかという話し合いをしています。この中で、インシデント/アクシデントのたぐいが抽出できます。これを集計して、問題点をフィードバックするということを、場所によっては行っているということです。これをきちっと制度化といいますか、これをきちっと行うようにして、もう一つは、各運航地域の中に、現在、運航調整委員会がありますけれども、そのもとに安全管理部会のようなものをつくって、その中で情報を多機関で共有化する。そして、ある一定以上のものについては、データベースに登録して、全国で共有できるというようなシステムをつくっていくと、ほかで起こったトラブルを知らずに、また、同じことが起こるというようなことが避けられると思います。
次も同じことが文章で記してあります。ドクターヘリの安全管理部会。それから、インシデント/アクシデント情報はデータベースに登録して、安全管理部会にも報告する。それから、これは各安全管理部会は情報を定期的に確認して、必要があれば、調査・検証等を行って、安全管理体制に反映させる。それから、この情報は全国で共有化する。もちろん、各機関の法律等に従った責任者、所轄官庁、都道府県等への報告は、これは、別途、従来どおり行うことになります。
このようにして、地域で包括的な安全管理体制と情報の共有化をやっていただくということでございます。
次が、「効果的・効率的な運用」ということです。これは、先ほど、現在の課題でも申し上げましたけれども、要請基準を見ると、アンダートリアージがいいか、オーバートリアージがいいか。また、救急隊現着前要請みたいなものは、介入までの時間が短縮するので、オーバートリアージを要請する。これで、キャンセル、重複要請がふえるということで、離陸後のキャンセルとか、また、軽症例の出動が増加すると、安全管理面からも好ましくないということになりますので、この運用を効果的・効率的にすることによって安全にもつながるということになります。
次のページに移らせていただきます。これは、ドクターヘリの症例登録システムをきちっとしたほうがいいということでございます。現在、ドクターヘリの効果検証を行うために、ドクターヘリの症例登録システムを稼働させておりますけれども、登録検証用の集計が終わりましたので、今年度で終了いたします。これは、目的が効果検証というところにありましたので、項目が非常に多いものですけれども、継続的に運用状況が確認できるようなデータベースをきちっと構築して、全国でどのようなことがどう行われているか、リアルタイムで把握できるようなことをしていったほうがいいだろうということです。
次のページになります。これは、先ほどのそれぞれの課題とそれに対する対応策をまとめたものです。
最後のスライドです。一昨年に航空事故が起きて、安全管理体制の確立がドクターヘリの最重要課題になっております。
ドクターヘリは、医療クルー、運航クルー、消防職員などによる多職種・多機関連携で運用されているのが特徴です。
各機関の安全管理に加えて、包括的な安全情報の共有化と多職種連携には安全管理が必要だと思います。
現在の課題としては、「医療クルーの安全教育」、それから、「運航・運用の標準化」、「各地域の安全管理・検証体制の整備と安全情報の共有化」、それから、「効果的・効率的な運用に関する調査・研究」、そして、「ドクターヘリ症例登録(レジストリ)の確立」といったことがございます。
以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
では、事務局、お願いいたします。
○野口救急医療対策専門官 事務局でございます。資料7の説明にまいります。
現状に関しましては、資料2、資料6で説明があったところで、割愛させていただきますけれども、こちらの資料7の論点としましては、とりまとめられました「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」を踏まえた上で、ドクターヘリについては、以下に示す安全管理体制の下で運用することとし、「ドクターヘリ導入促進事業」の実施要綱にその旨を明記してはどうか、という提案でございます。
2ページ目以降で(案)を提示させていただいております。
1.に関しましては、もともと「ドクターヘリ導入促進事業」の事業者は、「運航調整委員会」を設置することになっておりますが、必要に応じて、「安全管理部会」を設置することを明記する。
それに、下部組織として安全管理部会が、その下で示す役割を明記してはどうかという提案でございます。
2.目でございますが、運航要領と運用手順書をしっかり作成していただくというところでございます。それぞれ、運航要領は運航調整委員会、安全管理部会は運用手順書をしっかりつくっていただいて、PDCAを回して、確認をしていくというところでございます。
3.目でございます。医療クルーの安全教育に関してですけれども、事業者は、基地病院やドクターヘリ運航会社等と協力して、ドクターヘリに搭乗する医師や看護師等の医療クルーに対して、ドクターヘリの運用・運航に必要な知識や技術を習得させるための協力体制を整備するという役割がありますので、従事する際には、基本的な安全講習、継続的な安全講習を、運航クルー等から受けるものとすると明記してはどうかということでございます。
続きまして、4.目でございます。多職種ミーティング、こちらは特に今までは明記しておりませんでしたが、このようなことをしっかりやっていただきたいと明記してはどうかと。
5.目でございます。インシデント/アクシデント情報の報告に関してですけれども、2.目以降、実際にインシデント/アクシデントが発生した際には、基地病院はしっかりインシデント/アクシデント情報をまとめまして、3.目にありますように、レベル3b以上に該当するもの及びこれに該当しないものであっても、緊急に注意喚起を必要とするものに関しては、速やかに、安全管理部会、運航調整委員会及び事業者に報告を行うというところを明記してはどうかというところでございます。
これらに該当しないものに関しましては、一定期間ごとに当該学会等に報告をして、解析を行う。
ただ、一応ここに注記しておりますけれども、ドクターヘリ運航会社は、航空法に基づく事故や事態、及び航空機の正常な運航に安全上の支障を及ぼすような際には、同法に基づき国交省に報告するという、各者の安全管理は引き続き続けていただくことを明記してはどうかというところでございます。
後ろにつけておりますのは、別紙1。これは別添の参考資料3にもあるのと同様でございますが、日ごろの日常業務手順を示した運用手順書であります。次のページが運航手順書。標準例でございます。
めくっていただきまして、別紙2、9ページ。標準例を示しております。
10ページ、11ページに関しましては、インシデント/アクシデントに関連する、こういったことをやってはどうかという提案でございます。
これに関しまして、しっかり安全管理体制の下で運用をしていただきたいという事務局の案でございます。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ドクターヘリの安全運航についての現状を御説明いただいた後に、それらを踏まえて、事務局からこのような案が出されております。時間も限られておりますので、事務局提案について御意見等があれば、承りたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
石川構成員、どうぞ。
○石川構成員 これを見せていただきまして、ちょっと質問ですけれども、私、千葉県でこれを担当していましたときに、時間の問題と、要するに、日没の問題と、それから、発着の場所が高速道路の広い場所がすごく話題になっていたのですけれども、今回、全然ないのですけれども、そういうのは今は全然ないと考えていいのでしょうか。
○遠藤座長 事務局、どうぞ。
○野口救急医療対策専門官 事務局でございます。
今回に関しましては、この資料に関しては、安全管理という点でまとめさせていただいております。
御指摘のありましたような、いわゆる日没時の運航に関しましては、それぞれの地域で運航要領に従って、それに関しては対応するかしないかというのは判断いただいている部分でありますし、あと、高速道路の離着陸に関しましても、厚労省としましても、関係機関と調整をしまして、通知を出しております。それに基づいて運用するという形形形になっております。
以上です。
○遠藤座長 石川構成員、いかがでしょうか。
○石川構成員 そうすると、ここには一様には書けないというふうな解釈ですかね。
○徳本救急・周産期医療等対策室長 今回、御提示させていただきましたのは、参考資料3としておまとめさせていただいています研究班の「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」の中で、多職種や多機関、いわゆる医療クルーの連携が必要な部分に関する内容のうち、特に安全に関わるもの抜き出して、資料7として提示させていただいていますて。
ご指摘の日没以降の夜間の運航等に関しましては、厚生労働省としては従前より補助事業の枠としてつくってはいるところですが、実態的にはまだ運航がスタートされてないところでございます。こちらに関しては、また、別途、単発機の安全等に係る案件として、今後の検討会で議論させていただきたいと思っております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかに、何かございますか。
横田構成員、お願いします。
○横田構成員 参考人の猪口先生の資料を、ちょっと質問をさせていただきます。
資料6の10の安全管理部会というところですが、この主体はどこなのかというのをお聞きしたいと思うのですが、安全管理という部分では、機体の安全やシステムの安全は当然ですけれども、患者安全という視点から考えて、その検証をするとか、あるいは、効率的な運用が恐らくこういうところで議論されると思うのですが、そういうことがどういう主体でされているのか。そこに、例えば、地域MCなり、都道府県のMCと何か関係があるのか。あるいは、そういう枠組みはそもそも馴染まないのか。その辺、ちょっと教えていただきたいと思います。
○遠藤座長 よろしくお願いします。
○猪口参考人 このページの一番上は、各地でドクターヘリ運航調整委員会のもとにと書いてございまして。ドクターヘリ運航調整委員会と申しますのは、現在、要綱に記載されているものでございまして、関連各機関は、都道府県の運航調整委員会をつくって、その中でルール等を決めてやっていくようにと。これの下部機関として設けたらいいのではないかという提案でございます。
○横田構成員 これから、運用というか、この部会が開催されるということですか。
○猪口参考人 これは、やっているところもありますが、やっていないところもたくさんありますので、こういうものを設置するようにしたらよいのではないかという提案でございます。
MC協議会と連携が大変重要だと思っているのですけれども、ヘリのほうは活動範囲が広いので、複数の協議会と連携しなければなりません。
○横田構成員 都道府県のMC単位としても馴染まないものなのでしょうか。
○猪口参考人 都道府県のMCが、個別の検証とかやっていれば、一緒にやっていけるのですけれども、それは各地区でやっていることが多いので、実際はなかなか難しいです。ただ、連携は必ず必要なので、何か連絡会をつくるとか何とかで、お互いにこの間でも情報を共有化していくことは重要だと考えております。
○横田構成員 わかりました。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかに。
野口構成員、どうぞ。
○野口構成員 野口でございます。
ちょっと門外漢的にはなっていますけれども、1つは驚きました。こういうものがまだできてなかったのかということが。
それが1つと、今も出ていましたけれども、運航調整委員会は年1回ですよね。そういうものを何回以上やれとか、マンスリーでやれとか、症例検討会、細かいものに関してはやっているところは多いのでしょうけれども、全部でやっているわけではないので、これが非常に問題ではないかなという気がしますので、そういうことも落とし込んで。
それから、MC、今もお話に出ていましたけれども、県単位のMCできちっと仕切っていただかなければ、こういう細かい問題は解決しません。
これはもう一つ、何が言いたいかといいますと、各消防本部で適用が違うのですよ。一切呼ばない消防本部も愛知県ではたくさんございます。そんなようなことも含めて、ましてや、安全に特化したものであれば、ますます重要なことになると思いますので、ぜひ、その辺のところも御検討をいただければと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかにございますか。
それでは、中板構成員、お願いいたします。
○中板構成員 何か門外漢のような感じの質問をちょっとさせていただきたいと思います。
今回出していただいた資料7の「ドクターヘリの安全運航のための取組について」ですけれども、これは、実際に、これを読んだり、活用されるのか、一体どなたなのかなというところで、ナースも含めて本当にスペシャリストの方たちが読むものと理解すればよいのか。新しくフライトナースになられた方たちも読まれるのかということについてお聞きしたいなと思っております。
というのは、別紙1から運用手順書を提示していただいているのですけれども、幾つか意見を言わせていただきたいと思います。
4ページの看護師の「待機開始時」にある「安全のしおり」が書いてありますけれども、この安全のしおりというものは、オーソライズされた誰もが理解できる標準的なものを指しているのかということがちょっとわからなかったので、そちらです。
それと、「待機終了時」に、「必要書類を作成する」と書いてありますけれども、この必要書類というものが一体どのようなものになるのかといったところが、普通だったら、皆さんわかるのかといったところです。
あと、次のページの5ページですけれども、例えば、離陸から着陸までの手順のところで、医師のところに、「感染予防対策が必要な場合」という文面があるのですけれども、こちらについては、フライトナースなどによって、看護師がいわゆる感染予防対策が必要な場合に、その機内の環境とかそういったことについても配慮し、医師に報告するとか、そういったことは、隣のところには、感染予防については一切書かれていませんので、そういったことを看護師は行っているのではないかなと思ったりしたことですとか。
それから、次のページの6ページですけれども、現場での看護師のところですが、ヘリで搬送する場合に、「担当医師より先にヘリに搭乗し」と書いてありますけれども、順番はそうだと思うのですけれども、先にヘリに搭乗する意味は一体どういうことなのかということは、もう当たり前のようにわかっていて、こういう状況になっているのかというところも、どちらかというと、そういった意味を書くほうが重要なのかなとちょっと思いました。
あと、一番下の7ページの到着後のところの「ドクターヘリ診療録を作成する」というのが看護師のところに書いてありますけれども、これは、ドクターヘリに搭乗した、その搭乗記録のことを指しているのか。いわゆる本当に診療録なのかということで、ちょっと曖昧になりやすいなと思いました。医療法で、医師が書いた記録が診療録で、看護の場合は、「看護師の記録に関する指針」を日本看護協会から出させていただいておりまして、いわゆる看護の実践とか、看護の質の評価も含めて考えたときに、「看護記録」という表記にしておりますので、そこはちょっと曖昧にならないほうがいいのかなという印象を持ちました。
○遠藤座長 御意見としてお聞きしますか。それとも、今の一連のお話は、回答は求められているということですね。当初は質問かなと思っていたのですが、最後は御意見のようだったのですが、質問と理解してよろしいですか。
事務局、お願いします。
○野口救急医療対策専門官 事務局でございます。
この資料に関しましては、参考資料3をもとに、研究班の成果をもとにつくらせていただいております。参考資料の1ページを見ていただきますと、どのような研究者、分担研究者や研究協力者が研究に係わったかというところがわかると思います。そこの意見を踏まえ、この標準例がつくられたと我々は考えてこちらに参考として載せさせていただいているのですけれども、議論の経緯等に関しましては、研究者の猪口参考人に少しコメントをいただければと思います。
○遠藤座長 猪口参考人、お願いいたします。
○猪口参考人 これは、手順書は非常に具体的で、かつ、細かいものですので、各地域で大幅に異なっておりまして、幾つかの地域の医師会、その他関係の方に集まっていただいて、すり合わせながら検討をしていったものです。
一つにしますと、細かいところで課題はあると思いますし、あと、運用してみての問題点もあると思いますので、約1年後を目途に見直す予定ではございます。ただ、文言等ですぐ直したほうがよいというところにつきましては、できるだけ速やかに修正したいと思います。
○遠藤座長 中板構成員、よろしいですか。
○中板構成員 はい。
○遠藤座長 ほかにございますか。
それでは、時間の関係で、先ほどちょっと飛ばしたところがございまして、既に、議論の中には踏み込まれているものもありますけれども、資料2の御議論いただきたい内容が事務局から3つ出ているわけであります。中身については、既に、御意見が組み込まれているものがありますけれども、改めて、これについて何か御意見があれば、承りたいと思いますが、いかがでございましょうか。
島崎構成員、どうぞ。
○島崎構成員 済みません、最終的に、この検討会の議論はどういう形にするのですか。
例えば、もし、今回の先ほどの資料などのように、議論した結果コンセンサスが得られたものについては、例えば通知に落とし込むとか、あるいは、ガイドラインをつくるとかということであれば、例えば、今、座長がおっしゃった3つの点について、抽象的過ぎます。
例えば、先ほど、費用対効果の話はちょっと置いておいても、効率的な運用方法であるとか、医師派遣及び患者搬送手段の選択は、どういうことを斟酌して選択すればよいのかとか、効率的な運用方法というのは、何をどういうふうに検討すればいいのだろうかというのがわかりません。もちろん、それを全部数量化しろということを言っているわけではありませんが、例えば、最終的に、これをもうちょっと何かのところで行政施策の中に生かしていきたいのであれば、もうちょっとブレークダウンするプロセスが必要なのではないかなという気がします。
○遠藤座長 事務局から答えていただきますが、恐らく、最初の段階だからこれが出てきたので、そのうち、いろいろと、先ほどの資料7のような、こんなのがどうかというのが出てくるに決まっているのですけれども、恐らくそういうふうになるのではないかと思いますが、計画課長、どうぞ。
○佐々木地域医療計画課長 計画課長でございます。
今回、資料2の一番最後のところは、これは、今回で何か決めるというよりは、今回、いろいろな視点とか、いろいろなことを御議論いただいて、我々のほうで、また、資料を御準備させていただきながら、少し形にしていこうというものでございます。
一方、資料7は、もし、今日御異論がなければ、安全管理のことにつきましては、できるだけ早くとりかかったほうがいいということで、運営要綱とかを改正して、都道府県のほうに周知をすることにとりかかってまいりたいと、こういう状態でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ということでございます。
大友構成員、どうぞ。
○大友構成員 今の話に絡むのですが、ドクターヘリに関しては、全国に普及していますし、社会的にもその有効性は認知されていて、安全に関してもう少し整備すれば、それでいいのですけれども、一方、ドクターカーに関しては、資料2の20ページの下にありますように、まともに動いているところのほうが少ないというか、3か月に12回ということは、週1回出動ですら20%しかないということです。千里みたいなところはごく限られたところで、多分、10か所もないのではないかということで、今は、各医療機関が、やる気があるところが手を挙げて、みずからやっているだけなのですが、これをもっと広げるべきとするのか、現状のままで行くのかというところをまず決めないと、この先の、最後の論点の議論にはいかないような気がいたします。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかに。
島崎構成員、どうぞ。
○島崎構成員 簡単に言います。今の大友構成員の御意見に私も賛成です。
それから、もう一つ言えば、それは、各地域の三次医療の機能、それから、二次医療の機能がどうなっているかということとも密接に関係しています。二次医療圏を見ていても、二次医療がしっかりしていて、その上に三次医療がきっちり載っかっているところもあれば、そうではなくて、二次医療のところが相当崩れてしまって、全部三次医療機関のところへ送り込んでいるところとか、いろいろ地域によって実態は違うので、その辺りを丁寧に見ていかないと、一概になかなか言えないところがあるような気がします。
それから、もう一つだけ。先ほど、いろいろな条件が随分違ってきたという話がありました。ICTの活用はその例ですが、救命救急士についても、先ほどいろいろ御意見がありましたけれども、半年かけて養成しているわけですから、救命救急士と組み合わせれば、かなり個別具体的な指示もできるのではないかと思います。となると、ドクターがもちろん同乗したほうがベストであることは間違いないにしても、救命救急士によりどこまで代替できるかということも少し議論をする必要があるのではないかなと思います。
以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
事務局からお願いします。
○飯塚病院前医療対策専門官 事務局でございます。
大友構成員の答えでございますけれども、ドクターカーを今後推進していくべきか否かということに関わりますけれども、ドクターカーの事業は、地域の救急医療の向上に寄与していると、関係者間の共通認識の上で実施されるものと考えております。その上で、さらには、ドクターカーの医療提供体制については、そもそも基地病院に、当該地域でどのような役割が求められているのかとか、そういったことも含めて、地域で、例えばMC協議会等を活用して、十分に検討をした上で、まずは運用されるべきではないかと一応考えております。
以上でございます。
○遠藤座長 阿真構成員、お待たせしました。
○阿真構成員 確認と感想ですけれども、ドクターヘリとかドクターカーとかメディカルジェットとか、こんなにいろいろな仕組みで、住民の命が守られているのだなということを知って、そのことに対してはありがたいなと思うのですけれども、確認は、これは全部住民の負担はないということ、金額的な負担は全部ないということですよね。
であれば、なおさらのこと、医学的に見て意味があるかどうかということを検証してほしいということと、重複だったり、無駄だったりは避けていただきたいと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかに、何かありますか。
よろしゅうございますか。
それでは、本日は非常に積極的な御意見をありがとうございました。
本日出ました、さまざまな御意見を反映して、事務局におかれましては、次回以降の検討が進むような所要の手続をお願いしたいと思います。
最後に、確認ですが、資料7の事務局提案については、検討会としては、これでお認めするという理解でよろしゅうございますよね。何か反対があれば、お聞きしますが、よろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○遠藤座長 では、そのように対応させていただきます。
それでは、これをもちまして、本日の検討会を終了したいと思います。
事務局から、何か連絡事項はございますか。
○野口救急医療対策専門官 事務局でございます。
最後の資料7の件に関しましては、文言修正が少し入ると思いますけれども、進めさせていただきたいと思います。
あと、連絡でございます。第4回目につきましては、詳細が決まり次第、また、御連絡をしますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
○遠藤座長 どうぞ、よろしくお願いします。
それでは、これをもちまして、会議を終了したいと思います。
どうもありがとうございました。

照会先

【照会先】

医政局地域医療計画課
救急・周産期医療等対策室
救急医療対策専門官 野口(2556)
災害医療対策専門官 北久保(2558)