地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(第1回) 議事録

日時

令和元年5月16日(木) 14:00~17:00

場所

厚生労働省専用15会議室(12階)

出席者

構成員(敬称略・五十音順)

・朝比奈 ミカ   中核地域生活支援センターがじゅまる センター長、市川市生活サポートセンターそら 主任相談支援員
・池田 昌弘    NPO法人全国コミュニティライフサポートセンター 理事長
・大原 裕介    社会福祉法人ゆうゆう 理事長
・奥山 千鶴子    NPO法人子育てひろば全国連絡協議会 理事長、認定NPO法人びーのびーの 理事長
・加藤 恵     社会福祉法人半田市社会福祉協議会半田市障がい者相談支援センター センター長
・助川 未枝保     船橋市三山・田喜野井地域包括支援センター センター長
・立岡 学     一般社団法人パーソナルサポートセンター 業務執行常務理事
・田中 滋     埼玉県立大学 理事長、慶應義塾大学 名誉教授
・知久 清志    埼玉県福祉部長
・野澤 和弘    毎日新聞 論説委員
・原田 正樹    日本福祉大学副学長
・平川 則男    日本労働組合総連合会 総合政策局長
・本郷谷 健次     千葉県松戸市長
・宮本 太郎        中央大学法学部 教授
・室田 信一    首都大学東京人文社会学部人間社会学科 准教授

議題

(1)地域共生社会に向けた検討の経緯・議論の状況について
(2)その他

議事

○鏑木包括的支援体制整備推進官 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第1回「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」を開催いたします。
皆様におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。
座長が選出されますまで、社会・援護局地域福祉課包括的支援体制整備推進官の鏑木にて進行を務めさせていただきます。
まず初めに、構成員の皆様の御紹介に入らせていただきます。本日御出席の構成員を五十音順で紹介させていただきます。
朝比奈ミカ構成員。
池田昌弘構成員。
大原裕介構成員。
奥山千鶴子構成員。
加藤恵構成員。
助川未枝保構成員。
立岡学構成員。
田中滋構成員。
知久清志構成員。
野澤和弘構成員。
原田正樹構成員。
平川則男構成員。
本郷谷健次構成員。
室田信一構成員。
宮本太郎構成員。
また、本日は、池田洋光構成員、菊池馨実構成員、堀田聰子構成員、宮島渡構成員から御欠席の連絡をいただいております。
また、事務局からの出席者につきましては、お手元の座席図のとおりとなっておりますので、紹介にかえさせていただきます。
それでは、本検討会の開催に当たりまして、谷内社会・援護局長より御挨拶を申し上げます。
○谷内社会・援護局長 社会・援護局長の谷内でございます。地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。
出席者の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらず、お集まりいただき、心から御礼申し上げます。
我が国の福祉制度におきましては、1980年代後半以降、高齢、障害、子供など、属性ごとの制度の整備が進む一方で、昨今、いわゆる8050問題に象徴されます地域社会からの孤立、そしてここ数カ月では就職氷河期世代やひきこもり問題への注目が高まるなど、制度分野を超えた複合的な課題が浮かび上がってきております。
また、社会保障制度を取り巻く状況といたしまして、その基盤となっていました共同体機能の脆弱化、そして人口減少が進むことに伴います地域社会の担い手不足が生じている現状がございます。こういう状況のもとで、地域では現在さまざまな取り組みがなされておりますけれども、その中では、従来の血縁、地縁、社縁とは異なる新たなつながりや出会いの機会が生まれている事例、そして、このつながりが福祉の領域を超えて、担い手不足にある地域の産業などと結びつくことで、多様な社会参加と地域の持続を試みる事例が見られているところでございます。
こうした地域づくりを支援するため、厚生労働省におきましては、平成29年の社会福祉法改正におきまして、その改正の検討の際にはここにおられます構成員の幾人かの皆様にも御尽力いただいたところでございますが、その改正法におきまして、市町村が包括的な支援体制づくりに努める旨を規定しておりまして、モデル事業の活用などによって各地域における取り組みを推進しております。
また、この改正の附則の中では、公布後3年を目途として包括的な支援体制を全国的に整理するための方策について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされているところでございます。
本検討会におきましては、日本社会の構造や個人の価値観の変化を捉えまして、いま一度地域共生社会のあり方、そして今後の社会保障制度のあり方も念頭に置きながら、皆様の御知見や実践を共有いただきまして、市町村におけますそれぞれの創意工夫のある取り組みを一層支援するための具体的な方策について議論を深めていただければと思っております。
皆様方におかれましては、忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。
○鏑木包括的支援体制整備推進官 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りしていますのは、まず議事次第、座席表、それから、資料1としまして「開催要綱」、資料2として「地域共生社会に向けた検討の経緯・議論の状況」、資料3として「ご議論いただきたい論点」、資料4として「今後の進め方(案)」です。また、参考資料として3点つけさせていただいております。
続いて、本検討会の座長の選出について御説明申し上げます。本検討会の座長は、参集者の互選により選出することとなっておりますが、事前に構成員の皆様において調整をいたしまして、中央大学の宮本太郎教授に座長をお願いすることとなっております。
早速ではございますが、宮本座長から一言御挨拶をお願い申し上げます。
○宮本座長 ただいま座長を仰せつかりました、中央大学の宮本でございます。マイクの関係で座ったまま失礼をいたします。
今、谷内局長からもお話がございましたように、地域共生社会の形を模索していくと、これがこの検討会の大事なミッションであろうかと思います。ただ、この地域共生社会の展望というのは、何か恣意的な設計図のようなものをどこかで描いて、それで実現するものではございません。ほかならぬ皆様の地域での、あるいは団体での経験を積み上げていく、多様な教訓を積み上げていくことでしか展望は切り開けないだろうと思っております。
これだけの皆さんがお集まりということで、私自身は、微力ではございますけれども、皆さんの御議論を存分に引き出す進行役に徹して努力をしていきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事運営ということになりますが、私のほうからでよろしいでしょうか。
○鏑木包括的支援体制整備推進官 1点だけ申しわけございません。
ここからは宮本座長に議事運営のお願いをしたいと思います。
カメラの方々は、ここで御退室をいただきますようお願いいたします。
○宮本座長 ということでございまして、お手元の資料に沿って、まず議題1「地域共生社会に向けた検討の経緯・議論の状況について」、事務局のほうから御説明をお願いしたいと思います。
○野﨑生活困窮者自立支援室長 生活困窮者自立支援室長の野﨑です。よろしくお願いいたします。
私のほうから、資料2と資料3に基づいて御説明をいたします。
まず、資料2をごらんいただければと思いますけれども、1ページですが、日本社会や国民生活の変化ということで、この検討会の一つの議論の前提を共有させていただきたいと思っています。
日本の福祉制度の変遷ということで、日本の福祉制度は、1980年代以降、高齢者介護を起点に発展し、介護の後、障害福祉、児童福祉など各分野において制度化されてきたと。その結果、属性別・対象者別のリスク別の制度となり専門性は高まった一方で、今、局長からも申し上げたように、8050のような世帯内の複合的なニーズ、あるいは個々人のライフステージの変化に柔軟に対応できないという課題が顕在化している。これが福祉制度が抱えている課題と。
一方で、青いところを2つ書かせていただいていますが、社会の変化に伴って課題が表面化している部分もある。1つが共同体機能の脆弱化でございます。これも数十年来言われていることでありますけれども、さらに高齢化による地域の支え合いの力が一層低下する、あるいは未婚化が進むなど、家族自体が形成されなくなってくるということで、さらに経済情勢の変化、グローバル化により、雇用の慣行も大きく変化してきたという中で、血縁、地縁、社縁という日本の社会保障制度の基礎となっていた共同体の機能が弱まってきているということが一つ言えるのではないか。
もう一つが、直近の動きとして踏まえておかなければいけないのは、右側にある人口減による担い手の不足です。人口減少が本格化し、社会保障分野だけではなく、あらゆる分野で担い手が減少している。地域の持続そのものへの懸念が生じている。一方で、特に福祉制度の中で支援対象者と言われている方ですが、高齢者、障害者、困窮者などは、社会とのつながりが希薄であったり、あるいは社会参加の機会に十分恵まれていないというような問題がそこには課題があるということです。
このような世の中の動きの一方で、黄色い部分に書かせていただいているのが、地域の実践を見たときに我々が感じていることを簡単にまとめさせていただいております。
まず、共同体機能ということに関しては、多様なつながりや参加の機会をみずから生み出していくことで、血縁、地縁、社縁のような、何かに属することで生じている縁ではなく、個々人が縁を結び直している例が見られているということ。また右側の人口減のほうですけれども、地域の実践では、福祉の領域を超えて、農業や産業、住民自治などのさまざまな地域の資源とつながることで、多様な社会参加と地域の持続という2つを実現しようという試みが見られているのではないかと考えております。
このような世の中の変化あるいは福祉制度の課題、そして地域で起こっている実践、これらを踏まえて我々は社会保障制度において新しいアプローチを試みていかなければいけないのではないかと。それが地域共生社会が目指しているコンセプトだということで、それを図にしたのが2ページ目になります。
簡単に申し上げれば、上のオレンジのところですけれども、全ての人々の生活の基盤としての地域において、人々が支え・支えられる関係性を循環していく。また、青いところですけれども、全ての社会・経済活動の基盤としての地域において、人と資源、つまり地域のさまざまな産業資源などを活用しながら、その人の社会参加の場であったり、あるいは人と人がつながる場であったり、そういうものを生み出していく。この2つを地域共生社会のコンセプトとして今、掲げて、政策を推進しているということでございます。
3ページがこれまでの地域共生社会に関連する議論ということを簡単にまとめさせていただいております。もともとの議論のきっかけは、まだそのときは地域共生社会と銘打っておりませんでしたけれども、平成27年9月の「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」であります。それに引き続く形で、それをさらに消化させる形で、平成28年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」という閣議決定の中で、地域共生社会というコンセプトと大きな施策の方向性、また、一定のロードマップも引かれたということでございます。
そのロードマップに基づいて、平成29年2月には、介護保険法の一部改正法の中で、社会福祉法の改正が行われています。その改正法は、平成30年4月に施行されているという流れです。
4ページは「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」の概要となります。
5ページは「ニッポン一億総活躍プラン」における地域共生社会の実現の記載になりますが、このあたりは省略をさせていただきます。
先ほど申し上げた平成29年の介護保険法の改正における社会福祉法の改正の概要は、6ページに書かせていただいております。この中で特に2番をごらんいただきたいのですが、市町村が地域福祉の理念を実現するために、包括的な支援体制づくりに努めるという努力義務を規定しております。具体的な内容を申し上げると、1つには、地域住民の地域福祉活動への参加を促していくための環境を整備していくこと。2つ目に、住民に身近な圏域、例えば小学校区域、中学校区域ぐらいを念頭に置いておりますけれども、その圏域において分野を超えて地域生活課題について総合的に相談に応じ、関係機関と連絡調整等を行う体制。つまり、さまざまな地域生活課題を丸ごと受けとめる体制ということです。3つ目が、その中であらわれてくるさまざまな難しい課題に対して、主に市町村の圏域において生活困窮者自立相談支援機関等の関係機関が協働し、複合化した地域生活課題を解決するというための体制。この3つの要素を持つ包括的な支援体制を市町村で整備してほしいというメッセージを、前回の社会福祉法の改正では法律に明記したということでございます。
この箱の欄外を見ていただきたいのですが、※を2打っていますが、その1つ目です。この改正法においては、附則において、法律の公布後3年を目途として、今申し上げた2の体制を全国的に整備するための方策について検討を加え、必要に応じ、その結果に基づいて所要の措置を講ずるということが規定されておりまして、それが令和2年となりますので、それを1つのタイムラインとして、この検討会を置かせていただき、具体的な方策について検討いただくということが、この検討会の目的でございます。
7ページですけれども、今、申し上げたような市町村の体制づくりの努力義務という法的な規定の裏づけとして、平成29年度から、先ほど申し上げた3つの機能を整備していただくための体制整備のモデル事業としてスタートしたということです。それが7ページに書かせていただいているモデル事業の図ですが、平成29年度は100自治体を想定して予算組みをしましたが、平成31年度には既に200自治体で、毎年50自治体ぐらい手が挙がってくる自治体がふえるということで、自治体の潜在的なニーズというものは、ここに少しあらわれてきているのかなと考えております。
具体的な内容は先ほどの法の規定に沿っておりまして、赤い数字で書いていますが、[1]地域福祉を推進するために必要な環境の整備、また、[2]地域の課題を包括的に受けとめる場、[3]として右下にありますけれども、相談支援包括化推進員という者を置いて世帯全体の課題を的確に把握し、多機関のネットワーク化を推進する。そういったような機能をこのモデル事業の対象としております。
8ページ、9ページ、10ページは、モデル事業から見えるさまざまな実績となりますが、次回以降、このあたりについては詳細にお示ししたいと思いますので、一旦は、多くは割愛させていただきますが、1点だけ、10ページの先ほど申し上げた相談支援包括化推進員、つまり多機関の協働による相談支援にどれぐらい、どういう課題を持った方がつながっているかというのがこの10ページの左側に書いてあるものです。支援対象者として来られた方が抱えていた課題を見ると、課題1つで来られているという方はわずか3分の1で、その他の方は皆、複数の課題を持って相談支援包括化推進員につながってきているという、課題の複合化の状況が見てとれます。
また、それぞれの課題の内容については、その下、複数回答でありますので足し上げても100にはならないわけですが、例えば経済的困窮、障害、家族関係、就労不安定、病気・けが、ひきこもり、このあたりが多く相談として寄せられている課題の内容となっています。
ここまでが政策の流れ、モデル事業までです。今、我々がどこまで進んでいるのかという御説明を申し上げましたが、続きまして、地域の実践でどのようなことが展開されているのかということと、そこから見えてくる若干の課題について御説明を申し上げたいと思います。
11ページですけれども、秋田県小坂町と三重県名張市における相談支援体制の例です。秋田県小坂町においては、地域包括支援センターの機能として、居宅介護事業所、障害者の相談支援事業所、また保健センターの機能をここに付加する形で、総合窓口として「まるねっと」というものが機能するという形をとっていらっしゃいます。
三重県名張市のほうは、そのような地域に身近な圏域における丸ごと相談の窓口として「まちの保健室」というものを置いて、それはあわせて相談の受付機関と同時に、同じく小学校区域に置かれた地域づくり組織という地域運営組織のサポートもしながら、身近な県域での体制をつくると。一方、さまざまな相談事例については、市役所のほうに置かれた5人というか5カ所、5分野に置かれたエリアディレクターの方々が連携をしながら、その解決に向けて協働をしていくというような体制が組まれております。
いずれにしましても、どちらの例も、規模は違いますけれども、自治体において分野を横断するような包括的な相談支援体制を組むという考え方のもとで進められている取り組みでございます。
一方、12ページを見ていただければと思いますが、このような市町村圏域というか市町村における包括的な支援体制を組んでいく上で、自治体が直面している支障というか、壁というか、若干の障壁が存在しています。例えばそれは、A町というのを見ていただければと思うのですが、この町では、直営の地域包括支援センターで総合的な相談対応を含め、業務量を案分して費用を支出していると。正職員のうち、保健センターや地域支援事業(介護予防事業)を担当する保健師は地方交付税で、その他の正職員は単費で対応するというようなことをしているわけですが、会計検査院による会計検査において、地域支援事業、介護保険に基づく事業とその他の事業を明確に分けているのかという質問があったので、それから毎月の業務実績に応じて業務量と財源を案分する。月々、業務実績を把握し、それに基づいて財源と業務量の案分をしているという事例です。
B市については、市内3カ所のうち1カ所の地域包括支援センターで、高齢・障害・困窮全体を対象とするような共生型で運営を開始するに当たって、地域包括支援センターの職員の方に、高齢者以外の相談対応に要する時間をはかって、2カ月間、タイムスタディを行ったと。そのタイムスタディの結果に基づいて、高齢者と高齢者以外の相談対応に要する時間を算出し、それに基づいて財源の案分をしているというような事例です。
3つ目、C市ですけれども、市役所内に全世代対象型の「福祉総合相談課」というのを置いたのですが、地域包括支援センターの機能を内包し、同センターの職員が高齢者以外の相談対応も実施していたところ、会計検査において国からの交付金は65歳以上の高齢者を対象とした包括支援センターとしての業務に対してのみ支給されるものなので、それの対象となっている職員については、包括支援センター以外の業務に従事させてはならないというような指摘を受け、その結果として、各種相談支援機関の機能を明確に分ける体制に変更したと。つまり、体制変更まで至っているというような事例です。
つまり、包括的な支援体制を自治体で組んでいこうというときに、やはりそれぞれの属性ごとの財政支援というか補助金、負担金の仕組みを前提に、市町村では相当工夫をされながら、また、業務量をはかるという業務負担も負いながら実施されている現状にあるということです。
厚生労働省としても、そのあたりを少しでも緩和して、もっとやりやすくできないかということで、13ページ、地域づくりに資する事業の一体的な実施ということで、市区町村が複数の事業を連携して一体的に実施ができるのだということをお示ししたり、また、2番で書いていますが、その際の費用の計上については、合理的な方法であれば、比較的簡便な方法であっても案分して実施していただくことができるというような考え方をお示ししてきたところでございます。
ただ、実際、自治体の方のお声を聞くと、国からの通知は通知として、もちろん一定の後押しにはなるけれども、やはりなかなか国の一本の通知だけで制度というか、補助金自体は縦で割れて公布される中で、この一本の通知だけでは、会計検査にかかるかもしれないというリスクをみずから負って包括的支援体制を構築するというところまでは、正直、若干二の足を踏んでしまうという声も聞かれているところであり、このあたりについても我々は何らかの方策があるのか、どのような方策を講ずるべきなのか、そのあたりも含めて検討を進めていきたいと考えております。
以上が政策の流れと自治体で展開されている実践、そしてまた、直面している一定の支障ということを御説明しました。
ここからは、厚生労働省内における検討の状況を御説明したいと思います。
14ページですけれども、今、2040年を展望した社会保障・働き方改革本部というものが厚生労働省内に置かれています。その中で、2040年というある種、非常に長期の期間を念頭に置きながら、我々は社会保障あるいは労働政策をどのように見直していくべきなのかという議論を進めているわけですが、その中で「多様な就労・社会参加」という大きな柱の中に赤い字で記しておりますけれども、地域共生・地域の支え合いということも記載されておりまして、この大きな本部の下に置かれたタスクフォースのほうで、今、実務的な検討を進めているという状況にあります。
具体的な今の検討の方向性を15ページに簡単にマッピングしておりますけれども、大きく分けまして3つの柱で検討を進めております。1つ目が「丸ごと相談(断らない相談)の実現」、2つ目が「地域共生に資する取組の促進」、3つ目が「高齢者も障害者も利用できるサービスの推進」ということでございます。1つずつ簡単に御説明をいたしますが、まず「Ⅰ 丸ごと相談(断らない相談)の実現」については、8050問題など、世帯の複合的なニーズやライフステージの変化に柔軟に対応できるよう、新たな制度(制度別に設けられている各種支援の一体的実施)の創設も含め、包括的な支援体制の構築に向けた方策を検討すると。
そこで、今、要素として考えておりますのは、断らない相談支援を実現していく。また、相談支援と一体的に機能するような、多様で継続的な出口支援としての社会参加、就労支援であるとか居住支援。そしてまた、地域において伴走体制、つまりこれまで支え合いと呼んでいたようなものですけれども、このようなことが生まれていくような体制を確保していく。ここは1つ、丸ごと相談の要素として考えております。
また、色を変えた網かけで書かれておりますが、最近、経済財政諮問会議などでも議論が盛り上がっておりますけれども、就職氷河期世代などへの支援の強化を検討していると。その中で、生活困窮者への就労準備支援事業の全対象自治体での実施を促していくための方策であるとか、あるいは地域におけるひきこもり支援を強化していくというようなことも別途検討をしているということでございます。
また「Ⅱ 地域共生に資する取組の促進」ということで、冒頭にも申し上げましたが、地域の実践を見ると、必ずしも福祉領域だけではないところからスタートして、それが実は支え合いの基盤になっているとか、そのような広がり方をしている地域づくりの取り組みというのも非常に多く見られるので、つまり、地域づくりと一言で言っても、社会保障の枠の中だけで考えるのではなくて、他領域との連携も含めながら、ただ、それぞれの取り組みがばらばらにあるというよりも、それぞれの地域の中で取り組み同士が出会って、またそこから学んで、新たな取り組みが展開されていくような、例えばプラットフォームを形成していくとか、あるいは民間からの資金調達を含めた資金調達手法を検討していく。あるいはNPO、社会福祉法人などの多様な主体による事業の促進、そしてまた、先ほど申し上げました地方創生であるとか住宅セーフティーネット制度なども含めて、あるいは農福連携といったような他領域との連携も含めた連携策を促していくということも検討していきたいと考えております。
この検討会の議論の射程というか、範囲というのは、ⅠとⅡに関するものを中心に考えております。「Ⅲ 高齢者も障害者も利用できるサービスの推進」ということで、もちろん議論の中で御意見いただくことは構いませんけれども、一旦この検討会の検討の範囲は「Ⅰ 丸ごと相談の実現」と「Ⅱ 地域共生に資する取組の促進」で、具体的な個別給付、サービスのところについては、一旦この検討会の議論の外とさせていただきますが、もちろん自由に御意見いただければと思います。
今、申し上げた相談支援と地域共生に資する多様な取り組みの促進ということを簡単に図示しているのが16ページから18ページとなりますので、ここも簡単に触れたい。このあたりの具体的なイメージは、まさにこの検討会で検討いただく内容だと思っておりますので、簡単にしたいと思います。
まず、16ページの新たな事業の支援フローということですが、自治体のモデル事業の取り組み事例を見ても、自治体における一言で包括的な相談支援体制といっても、その置き方というか体制の組み方というのは非常に自治体によってまちまちです。例えばB自治体のように、分野ごとの相談窓口というのはそれぞれ置きながら、人の顔をしておりますけれども、それの連携を担当する機能を置くというような自治体もあれば、例えばA自治体のように、その連携を担当する機能を置くことに加えて、介護、障害、子供、困窮といった分野ごとの相談支援機関の機能をワンストップで一つの場所に集約をして丸ごと相談を受けとめる。つまり、総合相談窓口を置くというようなことをされている自治体もあるということです。大きく総合相談支援とか包括的相談支援体制といっても、自治体の規模、資源の状況によってさまざまな形があり得るのではないかということをお示しした絵です。
このような相談支援体制と、あわせて17ページですけれども、生活困窮者自立支援制度の概要をお示ししておりますが、この困窮者自立支援制度では、包括的な相談支援としての自立相談支援事業を中心としながら、そこに居住の確保であるとか就労支援、緊急的な支援、あるいは子供の支援、家計支援みたいな、さまざまな出口支援をかけ合わせながらこの制度をつくっておりますので、この検討会での議論でも相談支援とあわせて、このあたりの出口支援というか、社会につないでいく、あるいは多様な社会参加を実現していくためのさまざまな出口支援についても御議論いただきたいなと考えております。
18ページですけれども、地域における伴走体制の確保で、真ん中にあります地域共生に資するさまざまな地域活動が生まれやすくしていくようなプラットフォームをどのようにつくっていくのか。そして、それを生まれやすくしていくために、例えば住民、福祉関係事業者、自治体、NPO、社会福祉法人とさまざまな主体がございますけれども、この皆さんが、それぞれの主体が参画しやすいような環境をどうつくっていくのかということをこの検討会では考えていきたい。
また、欄外の矢印の後にありますが、その際には地方創生施策であるとか、農福連携であるとか、他省庁の関係施策ということも視野に入れながら議論を展開していただければと考えております。
最後に、19ページ、20ページで、今まで申し上げたのは厚生労働省省内における検討状況ですが、あわせまして、省内の検討と並行して、例えば19ページにある平成30年度社会福祉推進事業で行ったのですが、地域共生社会研究会というのを置いて、これから社会保障がどういう方向性を目指していくべきなのかということを有識者の先生方にお集まりいただいて、御議論をさせていただいております。
特に第1章、第2章のあたりが、さまざまな社会の変化に伴って、一人一人の人生や生活の多様性、複雑性の度合いが増す中で、公共政策、つまり公共私のあるべき形と行政の役割は何かということを第1章では整理し、また、第2章では、その中で特に社会保障においてどのような機能を強化してくべきなのか、どのようなアプローチを強化していくべきなのかをおまとめいただいたということでございます。
特に社会保障について申し上げると、関係性の貧困への対応など社会的包摂の実現を目指すという観点が重要だと。また、その際には社会的包摂の視点の重視であるとか、あるいは多様な社会参加の機会を確保していく。そういったような政策が求められるのではないか。
また、2番目ですけれども、多様かつ複雑な課題を抱えながらも、社会の中で生きていくための個人の力であるとか、あるいは個人が主体的に自由にみずからの生き方を追求する自立を支えるという観点を重視し、相談支援などの手続的給付を重点化していくべきではないのかということ。
また、3つ目として、自助・互助・共助・公助といった固定的な役割分担ではなくて、個人の自律を支える行政・市場・非営利組織・地域コミュニティーといった各主体がバランスのとれた形で役割を果たしていくことで初めて、個人を起点とする包括的なセーフティーネットの充実につながるのではないか。
その中でテーマとして挙げられているのが、生きていく力を高めていく、エンパワーメントしていくような伴走型の支援の普及と、もう一つは、住民相互の顔の見える関係性に基づくケア、支え合いを多様に広げていくというアプローチ、それによって個人が必要なつながりを選択していくことができるような環境をつくっていくというようなあたりを社会保障がこれから果たしていくべきなのではないかということで、研究会から御提言いただいた内容となっております。
最後、20ページですけれども、今のような中長期も視野に入れた社会保障の機能とあわせて、実際に自治体、特に先ほど御紹介したモデル事業を実施している自治体の皆さんにお集まりいただいて、実際にそのモデル事業を実施する中でどのような課題が見えてきたのか。そしてまた、どういう機能がこれから地域の体制に求められるのかということを計4回にわたって御意見いただいております。この通称自治体間協議と我々が呼んでいたものですが、これについては非常にインフォーマルな、非公式な形で開催をさせていただいておりました。ただ、この中から見えてくる自治体の皆さんのニーズは非常に重要でありますので、この検討会の中でも折々で皆さんからの御意見を御紹介させていただきたいと考えております。
最後に、資料3で、きょう御議論頂きたい論点について簡単に触れたいと思います。
まず、①として、市町村における包括的な支援体制を全国的に整備するための推進方策としてどのようなものが考えられるか。
また、②として、先ほど見ていただいた厚生労働省において検討中の内容について、各自治体において包括的な支援体制の整備を、創意工夫を凝らしながら図っているけれども、属性ごとに分かれた制度のみを前提とすると、複合化した課題への対応、あるいは市町村における体制づくりに支障があると考えるがどうか。また、これに対応するため、包括的な支援体制を全国に整備するための方策の一つとして、新たな制度の創設も含め検討していますけれども、その必要性をどう考えるか。また、そのような新たな制度ができるとして、どのような具体的内容が必要か、そのあたりも御意見をいただきたいと考えております。
最後に③として、地域づくりのあり方について、各地域の実情に合わせた地域づくりを柔軟に進める際に求められる環境整備とは何か。非常に広範な論点となっておりますが、第1回の入り口として、このような論点を掲げさせていただいております。どうぞ御議論のほどよろしくお願いいたします。
○宮本座長 野﨑室長、どうもありがとうございました。
これまでの議論の経緯と、既に各自治体が属性を超えた包括的な支援に向けた取り組みを開始されている。ところが、その一方で、旧来の縦割りの制度を前提にして会計検査院などから慎重な意見も寄せられていて、自治体にしてみれば、ブレーキとアクセルが両方踏まれているというか、赤信号と青信号が両方ついているというか、加えて、この道がどこにつながっているのかということについてもまだ不安が払拭し切れているわけではないのかなと思います。
そうした状況を御紹介いただいて、あわせて、この検討会の課題についてもう一度整理をしていただきました。そうした中で、資料3で議論いただきたい論点についてもお示しいただいたわけですけれども、以上を踏まえて、早速意見交換に入っていきたいと思います。
第1回でございますので、ちょっと形式的になりますが、朝比奈構成員から順番に皆さんの取り組みの紹介も兼ねてお話しいただければと思います。野﨑室長からあった論点にかかわってということになりますが、これを全てカバーすると大変長い時間になってしまうかと思いますので、いずれか論点を絞っていただいて結構ですので、大体5分くらいをめどにお話しいただければなと思います。
あわせて、朝比奈構成員、池田構成員、立岡構成員、知久構成員、原田構成員、平川構成員、御欠席ではありますが宮島構成員からは、資料を提出していただいております。参考資料3という形でお手元にまとめてございます。これからの5分のお話の中でその資料に触れていただいても構いませんが、5分ずつのお話とは別に、一旦休憩を挟んで、その後に小一時間、50分ぐらい時間は確保できる予定でございます。したがいまして、そちらに資料の御説明は回していただいてもよいと思います。
今、朝比奈構成員からと申し上げたのですけれども、奥山構成員が事情で早目に御退席の必要があるということで、そこまでどれくらい時間がかかるかわからないところもありますので、まずは奥山構成員からお話しいただけるでしょうか。
○奥山構成員 急に振られてどぎまぎしております。
ありがとうございます。横浜にて乳幼児子育て家庭の支援を行っている、昨年認定になりましたが、認定NPO法人びーのびーのと、また、親子の交流の場であります地域子育て支援拠点事業、それから、子供分野でもやっと相談コーディネート業務ができる利用者支援事業というのが新制度下でできましたので、そちらの普及啓発・研修などを行っております、全国組織でありますNPO法人子育てひろば全国連絡協議会、両方の代表をしております奥山と申します。このような貴重な委員会にもかかわらず、所用があって中座するため、皆様より先に発言させていただくことになりまして大変恐縮でございます。
私もこの委員会の何人かの皆様とともに、平成28年度、原田先生を座長とするいわゆる地域力強化検討委員会のほうに参加させていただきました。このたび、その後、平成29年度、今もずっと話題になっております介護保険法の改正に伴い、もう少し縦割りを超えて取り組む体制というのができつつあることについて、非常に期待感を持って参加させていただいている次第です。
ただし、子供と家庭をめぐる昨今の状況というのは、新聞報道等でも非常にあらわれているわけですけれども、大きな子育ての全体からいいますと、まず、若い世代の方々が就労の関係で首都圏に非常に集まってくるということでは、自分が育った土地で子育てができない。全然知らないところで子育てをスタートするという、私たちひろば全協で「アウェイ育児」と名づけたのですけれども、そういう状況から地域でのスタートが始まるということです。
また、夫がなかなか子育てにかかわれないということで、ワンオペ育児というような表現もあります。また、親自身の疾病、貧困、子供の発達障害や疾病等、いろいろな要因によって子育ての不安ですとか孤立、格差が生じているというのが地域の現状かなと思っています。
それだけではなくて、若い人たちがそもそも希望していても、出会いですとか結婚につながらない。就労の問題や貧困の問題があって、そういった意味でも非常に、どこから手を付けたらいいのかという人生におけるライフサイクルの中で、子育てということを考えたときに、私たちは子育てだけではなくて、若者たちが結婚に希望を見出せるような、そういった支援もしていかなければいけないと思っております。
それから、子育ては地域とかかわる第一歩となるゲートウエーのようなものだと思っております。地域力強化検討委員会においても、地域の担い手が不足しているという観点からも、ここで一旦子育てのときに地域からしっかりと支えられた。ここで子育てしてよかったというような関係が持てた人たちは必ずいつか地域の担い手になっていただける。私どもは今、20年、地元、横浜市港北区で活動していますけれども、本当に支えたというか、ここを利用してくださった方たちが支援者になる。それから、地域では親の会ですとか、そういったようなことにかかわってくるというのをこの20年で目の当たりにしております。そういった意味でも入り口は非常に重要だと思っています。
ただ、子育ての分野で、実は子育て世代包括支援センターという名称で今、産前からの切れ目ない取り組みということで、いわゆるポピュレーションアプローチという形で母子保健が進んできておりますが、ここから子育てにつながるところもまだまだ大変なハードルがあると感じております。そういった同じ分野の中でも、なかなか縦割りの中でうまく進められない部分をさらに地域ということで、断らない相談につなげていくということについては、非常にチャレンジングなことだと思っています。ですけれども、それをしっかり進めていかなければいけないことは間違いないと思っておりますので、私も現場のほうから、なるべく現状などを皆さんと共有して、一緒に手を組んでいけるような体制づくりに参画をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○宮本座長 どうもありがとうございました。いきなり振ってしまいまして、申しわけございませんでした。
それでは、順番でお話を承っていきたいと思います。
まず、朝比奈さんからお願いします。
○朝比奈構成員 発言させていただきます。
中核地域生活支援センターという、千葉県が県の単独事業として平成16年から実施しております13カ所のセンターのうちの一つ、市川市、浦安市を担当するがじゅまるというセンターのセンター長と、あわせて平成27年の困窮者支援法以降、市川市から委託を受けまして、市川市生活サポートセンターそらという自立相談支援事業プラス任意事業の一体的な実施に当たっております朝比奈と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
お手元の参考資料3に私の意見を提出させていただいております。あわせて、席上にカラー刷りで「中核地域生活支援センター活動白書2017」というものを配付させていただいております。後ほど参考にしていただければと思います。
私からは3点申し上げたいと思います。
私も先ほどの奥山さんとともに、原田先生を座長とする地域力強化検討会の議論にも参加をさせていただきました。それ以降、多機関協働のモデル事業と、さまざま現場の方々と交流を深め、断らない相談支援体制づくりということについて若干取り組みを進めてきているところですけれども、その中で1点、見落としがちな点があるということをまず指摘させていただきたいと思います。
相談支援のプロセスの中で、相談者のニーズが解消されない理由として、アセスメントが適切になされていなかったり、課題解決を進める手だてが見つからないということがあるのですけれども、最大の要因としては、援助関係の構築が困難であるということが非常に大きいと思っています。
先ほど国のモデル事業の中で、障害や病気、それから障害の疑いがある方々の割合がかなり大きいということも数字として紹介されていましたけれども、特に孤立した状態で他者への信頼を失っているですとか、コミュニケーションに困難を抱える方々とどのように、誰が接点を持っていくかということ、ここを見落としてはならないと思っております。
その点で、これまでの議論の中で、いかんせん、例えば問題を切り分けて、振り分けて、誰がどのように分担をしながら動いていくかとか、サービスをどのようにマッチングさせていくかというところに議論のフォーカスが当たりがちだというところが少し懸念をしているところで、ソーシャルワーカーにはそもそも御本人とかかわるとかつき合うというケアの要素が含まれていると考えます。その点、この検討会には、小規模多機能の事業所の方々ですとか宅老所の方々も参加をしていらっしゃいますので、そのあたりを含めて、ぜひ深みのある議論が進んでいくといいかなと思っております。
2点目です。相談支援の働きかけの目標というのは、既に見えている課題の解決だけではなくて、孤立の解消を進めていくということは、さきの困窮者支援法の改正の中でも明確になったところかと思っております。その点で、地域づくりはニーズを発見するということだけではなくて、相談者と社会との継続的なかかわりの接点となる出口がどのように用意されていくかということが重要で、最初の入り口を一体化するということだけではなくて、出口が一体的につくられるということが、必然的に入り口の縦割りを解消していくことにつながるのではないかと思っています。
出口として重要なのは、一つが就労支援、仕事づくり、もう一つは居住支援も含む公的な身元保証の仕組みづくりが必要なのではないかと考えています。地縁や血縁が薄れている中で、親族を頼れない身寄りのない人たちがふえています。身寄りのない人たちは、住宅の入居、施設入所、入院で制限を受けて、また、若年者の場合には特に就職や奨学金の貸し付けで困難にぶつかるということも多々あります。社会が慣習として求めてきた身寄りの問題を、これから社会的にどのように取り上げていくのか。そこに何らか公的な関与が必要なのではないかということを問題提起しておきたいと思います。
3点目です。重層的なセーフティーネットを築くためには、身近な居住地である市町村だけではなくて、都道府県にも一定の役割を付与していくことが必要なのではないかと考えております。
千葉県が県内13カ所で整備をした中核地域生活支援センターは、対象を限定しない相談事業として2004年10月から実践を重ねてきております。このセンターは当初、その当時、国庫補助が廃止された直後の障害(児)者地域療育等支援事業を吸収する形で整備されましたので、結果として障害(児)者の支援の専門性を持った法人や職員が多く担い手となりました。それにより、先ほど申し上げた援助関係のところで非常に専門性が発揮されたと思っておりまして、アセスメントを深めて市町村の関係機関と協力しながら問題解決に当たっていくという現在のスタイルが形づくられることとなりました。
中核センターは、当初、障害のある方からの相談が中心だったのですけれども、障害の法律による整備が進む中で、徐々にそのニーズも変化をしてきております。現在では障害のない人たちからの相談のほうが多くなっておりまして、社会環境の変容の中で相談者像も変化をしていて、市町村の体制が進展しても、相談件数は減少せずに、県内各地域のセーフティーネットの一翼を担ってきており、既存の仕組みからこぼれる新たな課題に対するアンテナの役割を持っていると考えています。
市町村を中心とした体制づくりの中では、他市の職場や学校で問題が発生していたり、居住地を転々としていたり、場合によっては住民票を持っていなかったり、それから、市町村域を超えて分かれて生活をしている家族の問題が相互に関係し合っているなどの場合があって、対応の調整が難しくなります。中核センターは県と協力しながら、この白書もそうなのですが、連絡協議会を組織して活動し、県事業として各圏域が相互に結びついて、日常的に連携しながら、こうした広域のニーズにも対応してきております。
包括的な体制整備が住民の暮らしのセーフティーネットとして確実に機能していくためには、都道府県にも一定の役割を位置づけていくということについて、ぜひ検討をお願いしたいと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
出口の検討もこの会の大事な課題であると、事務局からお話がございましたけれども、今、出口が一体的につくられることが、入り口の縦割りを解消していく前提になるという大変印象的なお話もございました。
続きまして、池田構成員、お願いをいたします。
○池田(昌)構成員 全国コミュニティライフサポートセンターの池田と申します。
私は、朝比奈構成員からも出てきました、介護保険前の制度のなかった時代に、民間等を活用した宅老所で、特に認知症の方を地域で受け入れるという取り組みを30年以上支援させていただきました。その間に小規模多機能型居宅介護という制度ができたり、あるいは共生型サービスができたり、宅老所のケアを取り込む形で特養がユニットケアの質を上げていくことにかかわってきました。
きょうは、介護保険の生活支援コーディネーター、あるいは協議体を通した地域づくりについて、北海道から沖縄までいろいろな地域でかかわらせていただいて見えてきたことと、もう一つは、ことしで丸10年になるのですけれども、東日本大震災の被災地である石巻市、そして仙台市で、緊急で受け入れ先のない方々を断らずに24時間365日受け入れる取り組みをさせていただいていることについて、発表いたします。
一つは丸ごと相談、断らない相談について。私たちは「断らない相談」ということとあわせて、相談を受けとめたうえで緊急一時生活支援をしなければならないと考え、「断らない生活支援」をさせていただいています。相談にあわせて、児童相談所の一時保護所のような形で、あるいは障害分野の地域生活支援拠点の緊急受け入れのような形で、多様な方々を受け入れることが求められているのではないかと思っています。
仙台市の「ひなたぼっこ」では、子供から高齢者まで、医療度の高い方々も含めて受け入れ、仙台市役所だけで30の部署とかかわりがあります。市内全体で言うと、100を超える機関と連携をはからないとならないのですが、相談と同時にセットで受け入れるような機能が必要なのではないかと考えています。
ひなたぼっこの運営に当たっては、介護保険の地域密着型サービスの運営推進会議と同様に、地域の住民の方々や専門職の方々に入っていただいた運営組織を10年前の始まる前から立ち上げ、会議を重ねて50回を過ぎました。刑余者の方、メンタルの方、さまざまな方々が利用されますけれども、地域の住民の皆さんに、「このような受けとめる場所がないといろいろな課題を抱えた方々が地域で安心して暮らせないし、地域の人たちも一緒に暮らしていけないですよね」と言うと、「このような場所が必要だよね」とご理解いただいています。地域の方にも一緒になって受けとめてもらうように取り組んでいくことが大切であり、地域における広い意味での伴走型支援のようなことができてくるのではないかなと考えています。
もう一つ、地域づくりについては、最近いろいろな関係資料を読ませていただくと、地域の課題を発見して住民の方々が主体になって解決する、というような表現があります。けれども、住民の皆さんは住みよい地域をつくるというところから出発しているのではないかと思うと、まずは住みよい地域づくりから考えていくほうが住民の皆様には受けとめていただきやすいと考えています。
どうしても地域の課題探しから始まると、住民の皆さんがやらされ感を高めていって、俺たちに何をさせるのかというようなことになって、かえって地域づくりが進まなくなるということが起こっています。町内会、自治会等で、それぞれの地域で何十年かけて住みよい地域づくりをされてきたことや、住民の皆さん一人一人のふだんの暮らしの中でのさまざまな工夫を、見える化して、まずは自分たちの地域をよくしようと思ってやっていますよねというところをみんなで評価し合い、肯定し合って、その上で、さらに住みよい地域を考える上で課題に取り組んでいくことが必要だと思います。
その際に、中間支援組織といいますか、住民の方と専門職の方と行政が一緒にやっていくところを支えていくような支援の機能も必要なのではないかと実感しています。
まずは以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。本当に地域づくりの長い御経験からのお話であったと思います。
引き続きまして、大原構成員、お願いいたします。
○大原構成員 社会福祉法人ゆうゆうの大原と申します。私は、北海道の当別町というところで社会福祉法人の理事長を務めております。地域力強化検討会のほうにも加えていだいておりまして、それ以来ということですが、そのときには我が町の人口は1万6000人規模と言っていたのですが、今、我が町は1万5000人規模になってしまっています。年間300人が減っております。この人口の減り方でしたり、どんどん朽ちていくといいますか、元気を失っていく町の姿というのは、遠くもない日本の将来の姿にあるのではないかというような前提のもとに、いろいろと日々現場の中で感じていることをお話しさせていただければと思います。
まず1点目ですが、断らない入り口の支援というところの、特に相談支援専門職、例えば包括で言えば3専門職が配置の基準になっておりますが、これを恒久的に確保するのはもう無理だと思っております。ある市町の話を聞くと、社会福祉士が採用できないとか、主任ケアマネジャーをなかなか獲得できない。これは人材確保することが非常に厳しい状況にある。
今回、モデル事業のほうを見させていただきましたが、一定多機関といいますか、機関が整っており、専門職の方々がたくさんおられる中での創意工夫というようなモデル事業と拝見しましたが、今後は将来的な専門職の確保の困難性なども含めて、現実的な検証というものを取り入れていく必要があるのではないかと思っております。これはやはり少ない人数で、よりどういう効率を出すかとか、合理性と言ってしまうとちょっと誤解を招くかもしれませんが、そういった視点を持ちつつ、一方で、相談を受ける利用者の方々の個別性もしっかり担保していくというようなこともあわせて検討していく必要があるのではないかと。
また一方で、北海道で言うと札幌であったり、政令指定都市というところにはたくさん専門職がおられる。こういう方々の人材を地方で活用できないかということをいろいろ考えていたのですが、今後のテクノロジーの発展の中に、リモートで、例えば相談支援員がスーパーバイズを受けられるとか、ある市町は3人の保健師しかいないと。社会福祉の視点が欲しいのだけれども、どうも我が町では用意できないと。そういったところをリモートで社会福祉士のさまざまなアプローチについて助言いただくとか、場合によっては直接相談支援に入ってもらうとか、そういうテクノロジーを活用する必要があるのではないかと思っております。
厚労省の検討中の内容についてですが、今の話も踏まえて、今後の人口減少、高齢化、少子化の現状を踏まえた現場のリアリティーの中では、もうこれは必須だと思っています。例えば8050問題も、きのう、うちも包括支援センターをやっているのですが、職員からいろいろなジレンマを聞きました。例えば80歳の認知症の方の御自宅に訪問に行ったら50代の方がいらっしゃったと。障害認定を受けているわけでもないですし、かといって本人が困っている印象もない。そういう困っていない方にどうサポートするかという悩みと、ただ一方で、見てみると、賞味期限の切れた食事があったりとか、乱雑な部屋を見て、何とか家事援助に入りたいけれども、介護保険のホームヘルパーはそこには手出しができない。80歳のあくまでその対象の方にと。50歳の方に対する居住支援を進めたいが、なかなかできないというジレンマでしたり、今回欠けている視点というところで言うと、住宅を用意するとか働く場所というところがあるのですけれども、きのう、この8050の問題を聞きまして、やはり在宅での生活支援をどのように柔軟につくっていくのかというのがとても重要かなと思いました。そういう意味では、ホームヘルパーという資格を持った方々の専門職をもっと公益的に生かすべきではないかということを感じたところです。
もう一つは、だんだん町の人口が減ることによって、今までは障害のある方を採用してほしい、雇用してほしいということの働きかけを企業にしていましたが、今はむしろ企業から障害者を雇用したいと言われるようになってきました。そうすると、B型事業所などを運営している事業者は何とか一般就労をという思いと、一方でそれで報酬が減ってしまうというジレンマがあって、なかなかそこが進まない。
私は、そうはいっても地域の産業と障害のある方のいわば自己実現も含めて、どんどん産業に就職するような推進策をとって、一方で、そうすることによって障害のある方のB型事業所が脆弱化していく。ただ、そういったサービスを必要としている高齢者の方とか生活困窮者の方も地域の中にいると。B型のような福祉的な就労サービスがあることで、なかなかデイサービスに通えないとか、中間的就労ではなじまない、もしくは就職した後にドロップアウトをしてなかなか社会につながらない。そういった方々が、例えば障害のある方の就労サービスを使える。そういった弾力的な運用ができることを非常に期待しております。
こうした中で、やはり現場のジレンマで、制度改正が必要だと思いますし、もう一つ踏み込まないといけないのは、先ほど会計検査院の話もありましたが、財源論というのはしっかりと議論していかないといけないなと思っております。会計検査院という話もありましたが、私の印象では市町村そのものがそういう印象にあるので、私たちとしては俎上に上がらないというような印象を持っていますので、こういう制度改正を契機に市町村の中での意識といいますか、推進されるようなことを期待しています。
長くなりまして済みません。最後になりますが、地域づくりのあり方ということで、先ほど池田さんも支援を見える化することが大事だとおっしゃっていましたが、私もまさにそうだと思います。福祉という取り組みでしたり地域活動というものが、余りにもそこに関心のない人たちに見えないのですね。取り組みが可視化されていないということが非常に課題だと思っております。可視化にあわせて、それが町の中にわかりやすく発信されていない。
つい先日、非常にうれしい申し出があって、我が法人に非常に多額の寄附をしたいという個人の方がいらっしゃって、これは御主人がお亡くなりになったいわば相続の一部を我が法人に寄附したいという申し入れをいただきました。全くつながりのなかった方なのですが、認知症の方とか障害のある方が地域で畑の作業をしていたり、いろいろアクティビティーをしているところを見て、こういうことを応援したいというふうに申し入れをいただいたところです。まさにそういう、これから迎える地域のあり方をしっかりと一般の方に見える化して、寄附であったり、自分の参画であったり、そういったものを自然と促していくような働きかけが必要なのではないかなと思っております。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
人口減少と専門職確保の困難という非常にリアルな現実から出発して、創造的な御提言もいただいたと思います。
ここまでのところ、大変皆さん時間にほぼ厳格でございまして、順調に進んでおります。この後もこの調子でぜひともよろしくお願いをいたしたいと思います。と同時に、後半部分も議論の時間がございますので、そこにもエネルギーをとっておいていただきたいと思います。
続きまして、加藤構成員、お願いいたします。
○加藤構成員 皆さん、こんにちは。私は、愛知県半田市で障害のある方の相談支援を取り組んでおります加藤と申します。
私は法人が社会福祉協議会という団体ですので、私の業務としては、障害のある方の相談支援センターのセンター長という役割とともに、私どもの法人の中に包括支援センターと生活困窮者の相談、権利擁護の相談、ボランティアセンター、私どもの障害者相談支援センターというさまざまな相談機能が入っています。その中で私の役割としては、中学校区ごとに横割りにされた地域の中で、私はある一つの中学校区のチームリーダーも任されているという感じで実際にやっているという職場で働いております。
そんな中で、断らない相談支援体制のためにというところの現状なのですが、我が町でも生活困窮者の全体の会議の中にはたくさんの関係者の方が存在して見えまして、市全体の第一層の中で多種多様な関係課や関係団体との連携協議体というのは必ず必要だろうと思っています。
一方で、専門職の総合相談の窓口だけではなくて、気軽に相談ができるような、歩いて30分ぐらいのところに身近な相談窓口があるというような重層的な相談窓口のあり方が、どこの市町村も一つだけのあり方ではなくて、どの人にでもかけ合っていけるような重層的な相談支援のあり方が必要なのではないかなと資料を見て思っておりました。
もう一つ、伴走支援の必要性というところで、私は20年前に現場で実際の支援に当たっていたダウン症の方が知らない間に7年間もひきこもりになっていたという事例に再度会うという機会がついきのうありました。一度支援につながった方であったとしても、その一つの課題が解決した後にも課題は残っているわけで、定期的に確認できるような仕組みが公的な仕組みとして一つあるべきだろうと思っております。
一方で、小さな変化に気づくのは、やはり身近に住んでいる同じ生活者の視点として、同じ地域に暮らしている住民の方の、例えば、あれ、コンビニに行っていないなとか、きょうは送迎が来ていないなというような身近な生活者としての気づきの発信ができる伴走者も必要だなと思っています。
なので、この伴走者の支援としては、公的な支援としての定期的な確認のできる仕組みとともに、同じ地域に住んでいる生活者としての気づきの視点を発信できるような伴走者が必要なのではないかなと、日ごろから感じています。
もう一つ、伴走者というのは当たり前なのですけれども、窓口に座っている伴走者は必要がないなと個人的には感じておりまして、窓口で待つという形ではなくて、アウトリーチ型で点在するような形の伴走者が望ましいのかなと感じます。あと、私は、障害のある方とピア活動で、障害のある当事者も障害のある方を支えるという活動や、私自身が子育てをしながら子育ての当事者を支えるという活動をしているのですが、支援される側も支援する側も、いろいろな立場のいろいろな層の地域の住人がいるというのは当たり前なのですけれども、その当たり前さにより沿うというところにおいては、ピアの視点で障害当事者や高齢者、子育て中の主婦という方々の活躍が当たり前に期待できるような仕組みにしていけたらいいなと思っています。
私も子育てをする中で生活者としての視点が大きく変わったような気がしていまして、伴走者側にも多種多様な広い世代の協力が求められる仕組みとをつくっていけたらいいなと思っています。
先ほど朝比奈さんがお話ししていたように、出口支援というところを考えたときに、障害の中で言うと地域生活支援事業といったところをより地域に根差した形で考えられるのですが、縦割りの中でそれぞれの仕組みができている中で、出口支援も一体的にということを考えたときに、それを再編成、再構築することが必要なのですけれども、お互いの、例えば高齢の方、障害の方、子育て中の方といったところの足りていないような課題が、実はまだ共有されていないというところが課題なのではないかなと思っています。
本当に困難な事例を一緒に解決したということでしか本当の連携というのは生まれないなと実践の中で感じていまして、どの地域もきれいにネットワークを組みますという図を描くことは簡単なのですけれども、実際のところ、それを本当に連携している地域にしていくということを考えると、ともに実践をしてきた事例を一緒に検討していくということが一番の本当のネットワークの構築になるのではないかと思っています。
もう一つ、企業とか農業との連携ということを視野に入れると、我が町で言うと地域福祉課というところがこういったことを多分総括する課になると思うのですが、必ずしもそこに企画課というような、まちづくりを考える課とともに運営事務局を置くというようなことも含めて、もっと大きな視点で、まちづくりの視点の関係各課を一番の中核のところに、運営の側に置くことが必要なのではないかと感じています。
相談の入り口体制と伴走支援、出口支援といったそれぞれの町に合ったものを考える必要があると思うのですが、たくさんの専門家と住民、企業等の協力及び啓発が大事だということはわかっているのですけれども、それを支える人材の規制をどうしていくのかという仕組みだけではなくて、人材育成の仕組みというところをこれからつくっていくものの中に入れていく必要があるなと思っています。
現状からいくと、私も含めてなのですが、相談支援センターのセンター長でありながら、地域づくりの一角を担う。それも当たり前なのですけれども、私どもの専門的な支援プラスアルファで地域福祉をやっていくという存在の必要性と、もう一つは、それぞれの町に合った仕組みを企画し、コーディネートしていく専属のコーディネートの必要性を感じているところであります。この後も現場に則したような形で意見を言っていけたらいいなと思っています。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
先ほど大原構成員から、これは池田構成員の御発言を捉えて、支援の見える化が非常に重要だと。池田構成員御自身は、とはいえ、何か課題探しのように重苦しいものであってはいけないのであって、地域を住みよくするという当たり前の視点が大事で、それに対して今、加藤構成員のほうから、気づきを伴ったピアの視点というふうに、それもまた同じことを言いかえてくださったのかなと思いました。ありがとうございました。
引き続き、助川構成員、お願いいたします。
○助川構成員 船橋市の三山・田喜野井地区で包括支援センターをやっております助川でございます。
包括支援センターの立場から現状をお話しさせていただきますと、やはり介護予防プランに追われている包括支援センターもまだあるということで、そういう意味では、包括支援センターの総合相談や権利擁護、包括的なケアマネジメント業務が介護予防の業務にかなり押されてしまっているという包括支援センターもあると聞いております。
私がやっているところは船橋なのですが、専門職は予防プランを立てないということを徹底してやっておりまして、専門性に基づき相談に入っていくという形になっています。
その中で、今、やはりふえているのは独居高齢者及び老老・認認介護の問題でして、認知症高齢者の問題は、今、うちの地区は徘回がすごく多くて、警察の生活安全課との連携で結構呼び出しがあったりするというのがふえてきております。
その認知症の問題もさておき、8050、年代的にはもう7040と言っていいぐらい、親の世代と子供の世代の世帯を一緒に考えていかなくてはいけない生活課題を持っていらっしゃる方がふえてきております。どういう形でやっているかというと、ここの会計検査院のヒアリング結果を見て驚いたのですが、このように共生型と言わなくても、実際にその世帯を支えるためには、親の問題だけではなく、子供の問題を全然一緒に、第一の対象者が高齢者、第二の高齢者は家族ということでやっておりますので、こんな分かれているというのはちょっと、私、初めて知りました。一緒にやっています。
どういうことかといいますと、私たちだけではやはり若い世代の障害を持っていたりとか生活困窮の問題は対応できませんので、非常にラッキーなことに、船橋はいろいろな団体がありまして、ちょっと名前を出させていただくと、PACガーディアンズ、さーくる、ふらっとなど、そういう団体の方々と子供世代のいろいろな問題をチームとなって一体的にやっております。そのために、個別ケア会議を非常に上手に使わせていただきまして、地域の民生委員さんや地域住民も含めて、親と子供の生活課題を一緒に話し合って、その中から解決策を見つけていこうということでやっております。
ただ、全ての方のケースにこのようにチームで毎回個別ケア会議を開きながら対応するのは非常に難しいものがありまして、時間と労力の問題で、やはり一番優先順位の高いものから月に2件ぐらいずつ個別ケア会議を開きながらやっているというのが現状です。
その次に、地域づくりは非常に大事な役割だと思っておりまして、地域づくりの中で核になる民生委員さんたちとの連携が非常にうまくいき始めたかなと思っています。今から2年前にちょうど、民生委員さんは75歳定年なのですが、うちの地区の38人の民生委員さんの中の約半数が世代交代いたしました。その世代交代したときが、非常にありがたいのですが、わからないことがあったら包括にいろいろお声をかけていただいて一緒に相談をしたりすることから、民生委員さんとの連携が非常に強くなりまして、実際に現場での早期発見、早期対応は、民生委員さんから「ちょっと気になる人がいるのですが」という電話から入るようになりまして、事後対応にならなくて済んだので、非常に助かっております。やはり対応は早目にとっていくというのがすごく大事なので、大きな問題になる前から「ちょっと心配なのだけれども」ぐらいで相談に入れる。この体制が非常に助かっているなと思っています。
私のところで3万8000人の住民のうち約29.何%の高齢化率で、1万1000人近くの高齢者がいるのですけれども、その中で町会ごとの高齢化率を見ると、若い町会は18%なのです。高齢化率の高いところは40%です。ですから、これからはもっとミクロに見ていかなくてはいけないなと考えています。やはり町会単位だとか、マンション群があったりとか、そういうところをミクロな視点で見ながらやっていかないと対応がおくれてしまうかなと思っています。
その次に、私たちが今困っているのは、独居の高齢者の身元保証の問題です。居住環境に関しましては、船橋は一歩進んで、身元保証のところを社協でやるような仕組みをつくったのですが、民間のマンションに入りたいとか、有料老人ホームに入りたいときの身元保証の問題はなかなかまだ解決がついていなくて、そこは民間の保証会社に、これも信頼関係が結べているケースごとで、信頼関係が結べたところにお願いするという形ですので、もっと公のところでできる形が欲しいなと思っています。
それから、成年後見制度を社会福祉の担当でいろいろやっていますが、市長申し立てがふえてきましたので、市長申し立てはすごく時間がかかるのです。だから、本当に欲しいときに何カ月後かにしか後見人が決まらないというのはタイムリーな対応ができなくて、今、ここのところで、それは一つには、いろいろたどっていかなくてはいけないので時間がかかるのはわかるのですが、もっといい仕組みがないかなと考えているところです。
それから、私たち、地域課題を見つけた上で、先ほどおっしゃったように課題があるから暗いかなと思っていたら、住民の方々といろいろなワーキングをやっていきますと、いやいや、うちのところはこうだから、こういうことが必要なのだよと。実際、食品を販売する車が回っているのですが、あのルートを変えてもらえないかなとか、あそこに来て買い物している人たちは井戸端会議ができるから、あの井戸端会議をもう少し上手に活用できないかなと、結構地域住民の方々はいろいろな発想をしてくださるので、そういうところを上手に捉えて生かしていって、住民の方々と地域づくりができればいいかなと思っています。
よく独居の方で孤立死の問題がありまして、私は孤立死の問題は必ずしも暗い問題ではなく、御本人の、自分が最期、この家で死にたいというような意志の表明をされている方もおりますので、ヘルパーさんが行ったら見事にビールを片手に亡くなっている方がいて、これは自己実現だなと思ったのです。
もう一つは事故死ですね。入浴中の事故死はありまして、それに気がついてくださるのも地域住民です。やはり新聞がたまっているとか、そういうお互いにすぐにつながっていって、ちょっとおかしいかなというところですぐに連携がとれるような地域になって、そしてみんなで、私たちは、認知症があっても楽しく暮らせる地域づくりと言っていますけれども、そんな地域になればいいかなと頑張って、今やっているところです。
以上です。
○宮本座長 助川構成員、ありがとうございました。
これまでのところ、子育て支援、障害、そして今の助川構成員の介護の分野と、実は制度的には全く異なった分野の皆さんですけれども、見事に違和感がないといいますか、まちづくり、地域づくりという主旋律で見事にハーモニーになっているということが非常に印象的ではないかと思います。どうもありがとうございました。
続きまして、立岡構成員、よろしくお願いいたします。
○立岡構成員 パーソナルサポートセンターの立岡です。よろしくお願いします。
1枚物の資料を提出させてもらいました。私たちの団体は、今、仙台市、宮城県全域の町村、並びに多賀城市、富谷市の生活困窮者の自立支援の窓口を受託して、運営させてもらっています。
私たちの団体は、2011年3月3日、震災の8日前に立ち上がった、まだできたばかりの団体です。そんな中、制度と制度のはざまに陥った人たちをサポートしたいという思いで、NPOの団体が幾つか集まってつくった団体です。CLCの池田さんも実は構成団体に入ってもらっているのですけれども、そういったNPOの団体でつくった法人となっています。
下を見ていただくと、何をやっているのかという話になるのですけれども、困窮者の支援事業のほかに、当然ながら大震災がありましたので、私たちはまずは被災者の支援ということで、仮設住宅の見守りから始めて、仮設に閉じこもっている人たちを社会に出すような支援だったり、あとは就労支援とかを進めていく中で、困窮者の支援事業のほうに進んでいき、そして今は、仮設住宅から転居できない人たちに対する転居支援みたいなことも実際にやっているという形です。
見ていただくと、色を塗っていないところが被災者の支援事業で、青く色を塗っているところが生活困窮者関係の事業で、黄色いところが自主的な事業という形でやっています。
それと、今、居住支援の話になっていますけれども、うちの法人も居住支援法人をとりあえず宮城県1号ということで認定を受けています。
続いて、裏ですけれども、今回のテーマが断らない相談というテーマと、あとは会計検査院の関係の問題みたいな形だったので、一応関連するようなところを引っ張ってきたのですけれども、とりあえず断らない相談に関して考えているのは、まず、相談者が孤立しないようにたくさんの仲間、困ったと言えるような状況をつくっておく必要があって、先ほどの池田さんの話でありましたけれども、困ったと言って本当にこの人はどこも行き場なないよとなったときには、実際には「ひなたぼっこ」という池田さんがやっているところにお願いしますというような形でお願いをする。困ったと言うというような感じで、実際にはさまざまな「困った」を関連団体等にお願いする形で、一人で抱え込まない。だから支援者も孤立しないという形で進めていくことが、断らない支援というのにつながっていくのかなと思って、実際に取り組みを進めています。
これで言うと、私たちはやはりまちづくりという観点もいろいろ思いを持っていて、実際にさまざまな構成団体とか、NPOの中間支援をやっているところとか、まちづくりをやっているところと、我々福祉をやっているところが全国の先駆的なところ、それぞれが5つ挙げて、それぞれ5つずつ挙げたりすると15個の先駆的なところがあって、そこにみんなで行く。そうするとそれぞれ違う視点で、結局そこの団体とか先駆的なものを見ると、別な角度からいろいろなものが見えるということで、私たち、そんな中でわかってきたことは、結局、今、何だかんだいいながら伴走型は、個人に対して伴走型と言っているけれども、NPOとか法人組織に対しても、立ち上げ支援はあるけれども、そういった地域の中の資源がやばいぞといったときに、自分たちで頑張れというふうになっているのを、そうではなくて、そこを伴走させていくような取り組みが、ある意味、地域資源を枯渇させずに、地域資源をなくならないようにすることなのかなということが、いろいろなまちづくりの関係とかと話をする中においてわかってきたことです。
それと、フランスとかではもう社会的連帯経済という形で進んでいますけれども、やはりそういった営利を求めない非営利的な部分の事業等でGDPの10%とか行っているという状況から見ると、多分、この共生社会でやる取り組みは、まさにこういったことにかかわってくるのかなと思ったりもしています。
続いて、これが今回の会計検査院の関係の部分に当たるのかなと思うのが、実際、子供関係の児童養護施設に関係する事業に関しても、一応、共同体を組んで取りを進めています。主たる団体には私たちはなっていません。あくまで生活困窮者の相談窓口の担当が一緒にかかわるという形で、ここは仙台市と握りながら。というのは、困窮者の窓口に児童養護施設退所者の相談が結構多いので、まずもって入所中からいろいろサポートできないかということで取り組みを進めています。なので、チャイルドラインみやぎさんが主たる団体として、実際には仙台市から900万を超えるぐらい、あと、宮城県から700万を超えるぐらいの予算をいただいて、私たちは就労支援というところの中においてさまざまお手伝いをするという形です。公的なお金の案分を自治体が非常に嫌うという傾向があるので、もしこういったものを進めるのであれば、公的なお金と公的なお金を案分する場合には加算をつけますみたいなものとか、そういった形で一定程度、公的予算、公的予算の案分を嫌う自治体に対して一定考えてもらうと、こういった部分はある意味突破口になるのかなと思ったりしています。
時間が来ましたので、以上にさせていただきます。ありがとうございます。
○宮本座長 ありがとうございました。御協力、心から感謝をいたします。
続きまして、田中構成員、よろしくお願いいたします。
○田中構成員 埼玉県立大学の田中でございます。私は現場の人間ではないので、少し分析的に話をします。
幾つかの自治体を手伝っていて、皆さん、それぞれ最近こういう、断らない窓口とか、丸ごと相談に取り組んでいらっしゃいます。大変結構だと尊敬していますが、その結果、問題が減ったとの説明は聞いたことがないのです。つまり、今まで眠っていた問題を一つ見つけると、次々に問題が上がってくるのが現状です。さらに、しばしば困難事例に取り組んでいらっしゃる方自体がバーンアウトしてしまう。したがって、人をどんどん注ぎ込まなくてはならなくなっていく事態も起きています。
本来は、困難事例になる前に、もう少し早い段階で見つけられればいいわけですが、そのためには原因を分析しなくてはなりません。原因として何が一番重要か。それは宮本先生がリードなさった研究会の報告書なり、きょうの厚労省の資料の19ページの真ん中に載っていますが、キーワード的に言うと、関係性の貧困という分析的な用語ですが、これは鍵だと思います。関係性が貧困になっている。関係が貧困にならない環境は一緒に働いている状態です。昔の農業社会、特に水田耕作型農業社会では関係性がないと生きていけませんから、嫌でも関係性がありました。また、近代工業の組立型産業・工業でも、同じ工場で同じ作業をしているところでは、関係性がなければ作業になりません。ところが、現代の働き方ですと、そういう関係性が切れた人たちがいるし、非正規社員はもっと切れています。
一方で、プライベートな生活では、最初の指摘がありましたように、未婚率の著しい上昇を指摘できます。家庭という関係性が切れている、あるいは乏しい。つまり、関係性をつくれないことが問題を大きくする前に、誰かに身近で相談する。ここにいらっしゃる方、プロのところに行く前に、まずは身近にいる人に相談できるような関係性がない人をどうするか。ここが鍵だと考えています。
そのためには、もちろん現在発生してしまった問題に対して皆様方が取り組むのは仕事としてしようがないとして、もう少し早い段階で取り組むとしたら、何も最初からプロが仕事として携わる必要はないわけですね。そのためには、皆さん御指摘のように、地域づくりとか地域の関係性づくりが鍵になるはずです。
地域の関係性づくりのときの資源は、福祉の専門職や自治体の職員だけではない。地域資源が減っているといわれるけれども、実は資源はふえていると思っていまして、それは2000万人以上いる元気高齢者の中の退職した人たちです。重要の要介護状態になった人は別として、私の世代を中心に元気高齢者は2000万人いるのですよ。政府は70歳まで働くと提案していますけれども、その働き方は何も企業で働かなくてもいいわけで、こういう地域活動だってよいはずです。この人たち、史上空前の数の引退後の元気な老人がいる時代は日本で初めてです。この人たちを使わないのはもったいない。
地域活動に使える人的資源はあります。その人たちを巻き込むのが皆さんの仕事で、福祉の専門家、そして自治体の方の仕事はプラットフォームをつくっていって、その上で動く人はプロではなくても構わないです。軽い段階の話ではね。重い福祉ニーズを抱える方、困難事例になった方についてはプロの力が不可欠ですが、そうではなくて孤立し始めみたいなところについては、皆さんがつくったプラットフォームの上で訓練を受けた住民が手伝う。
それから、何も高齢者だけではなくて、福祉畑の話を聞いていると時々視野から落ちていると感じるのですが、地元の商業や地元のサービス業、さらに大学のような教育機関があります。あるいは埼玉の資料にありますようなお寺さんとか、こういう地域資源は軽い段階の人に関係性をつくっていく上では非常に役に立つ存在です。そういう幅の広い人脈をつくって、困難事例に行く前のところを地域でサポートし、そして本当に困ったらプロの力を使う。医療の世界でも介護の世界でも同じはずです。本当の重度のところでは医療や介護の専門職の力が必要ですが、全て軽度の段階からちょっとでも医療ニーズがあれば、健康支援ニーズがあれば、ちょっとでも介護ニーズがあれば全部プロの力を使ったら、それこそ人材が足りません。福祉人材論で言う富士山の上のほうの話と裾野のところの話を分けて、できる限り地域の資源を使って困難事例を減らしていくこと、そういう作業も必要であると考えます。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
支援の裾野を広げていくことは、すなわち関係性の豊かさを実現していくという大変示唆的なお話をいただきました。
続きまして、知久構成員、よろしくお願いいたします。
○知久構成員 埼玉県福祉部長の知久でございます。よろしくお願いいたします。
私からは、お手元の資料に配付してございます参考資料3の5ページを御覧いただきたいと思います。これに沿って埼玉県における地域共生社会の推進に関する取組について紹介させていただきたいと思います。
埼玉県の基本的な考え方といたしまして、子供の貧困や高齢者の生活支援などにつきまして、地域の課題に応じた民間との連携支援、伴走型支援と福祉の縦割りを超えた総合相談支援体制の構築支援の2本の柱を中心に取り組んでいるところでございます。この取組によりまして、一人も取り残さない福祉の実現を目指しております。
具体的には、Ⅰ、地域における活動への支援、Ⅱ、地域への相談機関に対する支援、Ⅲ、市町村域全体の支援の3つの圏域別に支援をしております。
まず、地域でのⅠ「多様な主体による地域福祉の推進」につきましては、地域の課題に対し、地域住民や民間の力を活用して解決する仕組みづくりの支援を行っております。例えば子ども食堂を地域住民が運営する場合について、食品衛生などの注意点やフードバンクとのつながりが難しい場合などがございます。そこで、子ども食堂の立ち上げを考えている方に対し専門のアドバイザーを派遣し、運営のノウハウを伝えたり、民間企業、NPOとのマッチングなどを行ったりしています。
次に、地域におけるⅡ「住民に身近な圏域での相談支援」につきましては、地域では福祉分野ごとの縦割りというものはございませんので、相談機関は福祉の分野横断的な視点を持つことが必要でございます。高齢者、障害者、子供など各分野の相談機関の職員を一堂に集めまして、複合課題などの各分野の相談支援員が連携して対応するための研修を実施することによりまして、総合相談支援を担う人材の育成を図っているところでございます。
また、地域の課題を最終的に解決するためには市町村の役割が何より重要となります。そこで、埼玉県におきましては、Ⅲの、制度や政策の縦割りでない「市町村総合相談支援体制の構築支援」を進めております。ワンストップ型総合相談窓口や複合課題を調整するチームの設置を検討している市町村に対しまして、アドバイザーを派遣して支援しております。いずれも地域や市町村のニーズを踏まえて実効性のある支援となるよう努めているところでございます。
次に、具体的な取組を幾つか紹介させていただきたいと思います。下のページになりますけれども、アスポート事業及びジュニア・アスポート事業の取組についてでございます。この事業は、貧困の連鎖を断ち切るために埼玉県が平成22年9月から生活保護の世帯の中学生を対象に学習支援事業を開始したものでございます。平成27年度から生活困窮者自立支援法に基づく事業として全国展開されてきたところでございます。多くの教員OBや大学生のボランティアなど、800人近くの方々に登録いただいて、協力をいただきながら取り組んでいる事業でございまして、アスポート事業、いわゆる学習支援事業の参加者の高校進学率、中退率とも大幅に改善されているところでございます。
平成30年度からは、より早期の段階から困窮世帯の小学3年生から6年生を対象とするジュニア・アスポート事業をモデル的に開始し、今年度から全市町村で実施されるよう、展開を進めているところでございます。
次のページ、裏面を御覧いただきたいと思います。子供の居場所を広げる取組について御紹介させていただいております。埼玉県では、地域住民や民間の力を活用して小学校に1カ所程度、県全体ですと800カ所程度の子供の居場所づくりを目指しております。団体・個人のネットワークである「こども応援ネットワーク埼玉」を県が関係者とともに立ち上げて、取り組んでいるところでございます。
その下の段につきましては、子供の居場所を広げるための県がマッチングをした取組事例を幾つか紹介しておりますので、後ほど御覧いただきたいと思います。
次のページを御覧いただきたいと思います。県のページですと5枚目になりますけれども、地域包括ケアシステムの構築に対する市町村の支援の取組でございます。全市町村と意見交換を行ったところ、個別課題ごとの支援ニーズがありました。専門職などで構成する地域包括ケア総合支援チームを派遣して、伴走型の支援を行っているところでございます。
その下のページでございますが、福祉の縦割りを超えた総合相談支援の実現を紹介させていただきます。
埼玉県では、平成29年度に策定しました埼玉県地域福祉支援計画におきまして、市町村が総合相談支援を構築するに当たりまして、先ほども申し上げましたけれども、ワンストップ型総合相談窓口の設置、あるいは複合課題を調整するチームの設置を提案しているところでございます。平成30年度から希望する市町村に対しまして、学識経験者や実際に市町村で総合相談支援体制の構築経験のある元市町村職員などを派遣して、助言などを行っているところでございます。
また、右下の3に人材育成が書いてあるかと思いますけれども、人材育成につきましては、市町村・市町村社会福祉協議会・地域包括支援センター・障害・子供分野の合同研修を行いまして、複合課題への対応能力向上を図っているところでございます。
以上、紹介しました地域や市町村への支援を通じた埼玉県の取組を踏まえまして、広域的自治体としての県の立場から、本日の論点に関する意見を述べさせていただきたいと思います。
子供の居場所や高齢者の生活支援などを通じまして、地域の課題に関心を持ち、地域に貢献したいという地域住民、関係団体はたくさんおられます。このような活動を盛り上げていくためには、活動を支援するコーディネーターの育成でありますとか、関係者間のネットワークづくりが必要となります。また、こうした活動は、福祉分野の高齢・障害・子供などといった縦割りではないため、市町村においても総合相談支援体制を構築することが必要でございます。今まで皆さんがおっしゃっていることでございます。したがいまして、市町村における包括的な支援体制を全国的に整備するには、人材育成と活動を支援するための安定的な恒久財源が必要だと考えております。その際は、新たな財源を確保いたしまして、自治体が運用しやすい制度としていただきたいという願いを持っております。
次に、厚生労働省におきまして現在検討されておられます新たな制度についてでございますが、先ほど説明申し上げたとおり、埼玉県が進めている市町村総合相談支援体制とほぼ同様の内容でございますので、必要な制度であります。ぜひ国として、こうした動きを推進していただきたいと考えておるところでございます。新たな制度におきましては、市町村や地域において既に機能しております地域包括支援センターなどの相談員を最大限生かすような制度設計にしていただきたいということが現実的かつ有効であると考えております。
また、繰り返しになりますけれども、福祉の分野横断的な視野を持った総合相談支援を担う人材育成についても検討を進めていただく必要があるかと思います。
ちょっと長くなりましたけれども、埼玉県の地域共生社会の取組と本日の論点のコメントにつきまして、説明させていただきました。どうもありがとうございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
先ほど朝比奈構成員からも重層的な支援に向けた都道府県の役割の重要性というお話がございましたけれども、まさに埼玉県がその重層的な支援に向けてどのような取り組みを展開されているかというお話を承りました。あわせて幾つか御要望もいただいたと思います。
続きまして、野澤さん、よろしくお願いいたします。
○野澤構成員 野澤です。私のほうから簡単に3点ほどお話ししたいと思います。
1つは、テーマであります断らない相談支援ということで、千葉県、先ほど朝比奈さんが紹介してくれた中核地域生活支援センターというのは前の堂本暁子知事のときにつくったものなのです。現場の活動については朝比奈さんに聞くのが一番いいのですが、私は当時、制度設計するあたりからかかわって、今でもその評価委員会で15年間ずっとやって、ちょっと俯瞰した立場から話させていただくと、どういうことかというと、24時間365日、あらゆる相談をワンストップで受けなさいと、絶対断ってはいけない。しかも、そこで出口がなければ、出口を自分たちでつくってくれというかなり無茶なもので、朝比奈さんに相当苦労をかけてきているわけですけれども、これを15年やっていて、この間、市町村がいろいろな相談の窓口をつくって整備してきたのです。
その後、生活困窮者の自立支援事業なども始まって、そのたびごとに中核センターの不要論が出てくるのです。県の単独事業なので、やはり県の財政当局としては、もうそろそろいいのではないかと、市町村に任せたり、国の生活困窮に任せればいいのではないか。
ただ、見てみると、ますます必要性は高まってきているように思うのです。それは社会の状況の変化もあるし、あるいは市町村もいろいろな相談が整備されてきたから、余計にもっと難易度の高いものをやれるようになってきたということがあるかと思うのです。よく8050と言いますけれども、最近のあれでも8050プラス20みたいな、もう親子3世代で家の中でぐちゃぐちゃの状況になっているみたいなものが出てきたりとかですね。
一般の分野ごとの相談と総合相談は本質的に違いがあるのではないかと最近思うようになってきて、誰かが総合的なカルテを書かなければいけないし、それぞれの分野の機関をコーディネートしていかなければいけない。やはり目の前の相談に対する対処とは違うものが求められてくるのではないかという気がしているのです。
そして、そうやっていく中で機能していない機関が結構あったりして、そこを活性化したりとか、あるいは人材育成ができているなと思いますし、自助グループをつくったり、新しい福祉の資源をつくり出すみたいなことまでやっている。大体こういう制度をつくると、半分ぐらいうまくいって、半分はなかなかうまくいかないねと言われて、最初は中核センターもそんな感じだったのですけれども、今は15年やって、ほとんどいいですね。全部がよくなっている。
これはなぜそうなっているのか。朝比奈さんに分析をしてほしいところでもあるのですけれども、市町村のアンケートをとっても非常に頼りにされていますね。なので、やはりいろいろな相談窓口をつくっていくのとプラス、総合相談というのはあったほうが、絶対に私は地域にとっていいのではないかなと思います。
2点目は、とはいえ、やはり専門職とかプロの相談支援だけでは足りないのではないかと最近思ってきて、家族やコミュニティーの希薄化というのは予想以上にどんどん進んでいて、穴がどんどん広がってきているような気がします。
地域住民全体のソーシャルワーク機能というものを上げていかないと、とてもこれから追いつかないのではないかなみたいな危機感も感じていて、10年ぐらい前からトラブルシューターをつくっていこう運動もやっていて、それは何かというと、発達障害とか知的障害の人たち、あるいはそうした障害のある子供が地域でトラブルに巻き込まれたり、トラブルを起こしたりする。放置しておくと警察が刑事手続をとるようになって、刑務所や少年院に行って往復していくということが繰り返されているので、できるだけ刑事手続をとる前に地域でつなぎとめるようなことができる人たちをつくっていこうということをやっているのです。
あるいは静岡でも縁側みたいなものをつくっていこうということをやっているのですけれども、ここで一番感じるのは、地域住民たちも何か気になってしようがないのです。どうしていいかわからないから背中を向けているだけであって、どうしていいかわかるようになると、声を上げてくれるようになるということです。
そのために、自分で何もかもわかるわけないので、いろいろなところにつながり合っていくと、自分にはできないけれども、この人に言えば動いてくれるとか、弁護士さんだとかいろいろな地域の福祉の人材とつなぎ合わせてくことが結構有効だなと思います。
そのときのすごいキーパーソンは、やはり当事者性の強い人たちですね。非行少年で少年院や刑務所に入った経験のある人とか、自分は虐待された経験があるとか、あるいは依存症の家族を持っているとか、介護をやってきた方だとか、そういう方たちはいてもたってもいられなくなって、権限がなくても、資格がなくても、お金なくても断らない。この方たちの資源というものをもっともっと活用したほうがいいのではないかなと。そういう仕組みをつくっていけないかなと思っています。
3番目ですけれども、何もなくてもすごく力のある人が一人いると、地域があっという間によくなったりするし、新しいものが始まったりするのをあちこちで見てきました。リーダーになり得る人材をどうやって見つけてきて、育成していくのかを考えたいなと思っています。
これだけ人材不足の中で、どこから持ってくるのかとよく言われるのです。私は、先ほど先生がおっしゃったように元気印の高齢者、そしてあとは大企業とか、優秀な大学の一般の学部の学生たち。彼らはすごく迷っていますね。大企業なども本当にこれでいいのだろうかと迷っているような優秀な人材はごろごろいると思います。大企業、優秀かどうかは別として、例えば私の職場、毎日新聞の論説室は20人ぐらい論説委員がいるのですが、待遇や居心地は良いのに辞める人がいる。この春にやめたのは私の同期で、経済部で大企業だとか経産省や財務省を長らく担当してきた人なのです。彼は何でやめるのだといったら、司法試験を受けたら受かっちゃったのでやめると。何をするのだと言ったら、おまえがふだん言っているような障害者とか生活困窮者の人たちの支援をやりたいんだと言うわけです。結構このような社会課題を何とかしたいみたいなことを思っている、大企業で全く違うビジネスの分野で働いている人たちは相当いるなと、何となくそういう実感がするのです。
ただ、彼らは情報がないのと、飛び込んできたときのお金がどこから出てくるのみたいなものがないのであって、このあたりを何とかすると、結構おもしろいことが始まるのではないかと思っております。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
805020、これに子供さんでもいれば80502005とか、電話番号のような状況になりつつあるということがよくわかって、それ自体、電話番号そのものが包括的な支援の必要性を物語っているのかもしれません。
続きまして、原田構成員、よろしくお願いいたします。
○原田構成員 原田です。
構成員提出資料の8ページと、先ほど事務局から御説明いただいた議論の状況、資料2の18ページを見てお聞きいただければと思います。
8ページの冒頭のところで、先ほど来、構成員の皆さんからもお話がありましたけれども、地域力強化検討会というのがあって、そのときに地域共生社会とは何かということを相当議論しました。そのときの押さえというか、確認されたことは、国のほうから「我が事」だとか、共に生きるということを押し付けられるのはおかしい話だと。むしろ、ともに生きるということは、障害者の自立生活運動をはじめ、昔からあったいろいろな運動の中で生まれてきているものであって、そのことをどう権利として保障していくかという論点に立たないと、一億総活躍社会からひも解いてしまうと、担い手とか働き手の確保という話になってしまうので、そこのコンセプトのところはしっかりと押さえておかないといけないという議論をしました。ぜひこの検討会の中でも、コンセプトのところの共有ができればというのが1点目です。
その上で、共に生きるということを何度も言っても、それは反面、難しいところで、何が難しいかというと、地域の中にあるコンフリクトの問題や、あるいは排除や差別の問題。そこの部分に向き合わずして、支援だけで共生社会ができるというわけではないですから、先ほども例えば野澤さんがおっしゃった、地域住民全体がソーシャルワークの機能を発揮するみたいなことになれば、まさに地域全体のエンパワーメントが必要です。特定の対象者のエンパワーメントではなくて、私たち一人一人の住民の福祉意識を変えていくとか、そのような働きかけとあわせてなければ、共に生きるということは支援だけの話ではないだろうという、住民をどう捉えるかというところの話です。
その上で、住民をどう捉えるかといったときに、先ほど事務局からいただいた資料2のところなのですけれども、住民のところでいくと、どうしてもこの議論をすると住民は担い手という位置づけをしてしまうのですが、必ずしも地域住民というのはサービスの担い手という位置づけだけではないので、共感をするとか、あるいは住民の願いやニーズ、そういったものといかないといけない。例えば18ページを見ていただくと、住民のところは参画と寄附なのです。これだけでは多分、住民の方たちは参画しようという意欲が出てこないというのは、ほかの構成員の方も指摘されていたとおりです。
その上で、有償ボランティアというところも非常にひっかかるところで、これはボランティアの現場の中では古くから議論があったことですが、有償ということとボランティアという相矛盾した用語を安易に使っていいのかという意見です。ものを、担い手の議論からすれば有償ボランティアということの意味はわかるのですが、かえって現場ではそれが混乱をしています。特に福祉教育の場面で、子供にボランティアを教えにくくなっているという声が学校やボランティアセンターでよく出てくるのです。つまり、大人がお金をよこせ、ポイントをよこせと言っている後ろ姿を見て、子供たちにボランタリーな意識なんて育めないだろうと。そういう意味では、有償ボランティアというのは安易に使うべきではないし、担い手を養成するという側からのロジックだけで地域住民を捉えるものではないだろうと思っています。
ただ、有償制を否定するわけではなくて、コミュニティーサービスだとか、あるいはコミュニティビジネスみたいな形で、仕掛けとしてそのような方たちがより活動しやすい、そこの部分で有償制のものをつくっていくのがこれからとても大事だと思います。ここのところは少し慎重に整理をしていかなければ、ボランタリーな意識みたいなものが、逆に担い手ということを強調するがゆえに崩れていってはいけないだろうということを思っています。
16ページを見ていただいて、下の4つは少し具体的なところになりますけれども、これもほかの構成員の方がおっしゃっていただいたように、ややもすると16ページの新たな事業の支援フローというのは市町村を単位に、自治体単位でのフローを書いていただいているのですけれども、より身近な圏域での仕組みと、それから、先ほど朝比奈さんも強調していただいた、全部が全部市町村で完結するわけではなくて、広域や圏域につながっていくという、田中先生もおっしゃっていただいた、もう少し構造的に身近なところ、自治体、広域、そこのところで丁寧にフローをつくっていかないといけない。この包括的支援体制の構造化ができないのではないだろうか。そのときに大事なのは、ソーシャルワーカーの配置や機能も含めた、ソーシャルワークがどう展開できるか。同じことを身近なところでも自治体でも広域でもやればいいということではなくて、1次圏域、2次圏域、3次圏域みたいなことをしたときのソーシャルワーク機能の構造化を考えていかなければいけないだろうし、あるいはさまざまな専門職のところで養成のカリキュラムの見直し等々が必要なのですけれども、どこの分野、領域のところでも、地域共生社会や伴走型支援という研修を入れていかなければ、領域の縦割りのものがたくさんある中で、横串になっていかないのではないかということ思います。
最後は、福祉事務所等に企画調整機能が必要だというお話もありましたけれども、具体的には新しい社会福祉法の改正で出てきた地域福祉計画の策定担当者の研修というのを相当していかなければいけないのではないか。先ほどのモデル事業の包括化推進員の部分だけではなくて、行政組織の再編も含めて担当する担当者、地域福祉計画の担当者だけとは限りませんけれども、そのようなところの研修を一方でしていかないと、地域共生社会の実現に向けて自治体の機能というのが変わっていかないのではないかと、そのように思っています。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
原田構成員が中心になってまとめられた地域力強化検討会の報告で、共生は権利である、つまり共生は強制できないということですね。と同時に、共生は支えられなければいけないという議論は、この検討会でも恐らく継承されていかなければいけないのかなと思いながら伺っておりました。
平川構成員、よろしくお願いいたします。
○平川構成員 ありがとうございます。
9ページに資料をつけさせていただきました。連合は労働組合ということで、組合員は700万人いるわけですけれども、労働組合員は地域共生社会に関してどのようにかかわっていくか、どういう問題意識を持っているかということも含めて説明させていただきたいと思います。
先ほど700万人いると発言しましたが、地域を見ますと全ての47都道府県に地方連合会がありますし、そのさらに地域ということで、もう少しな地域で言うと250ほどの地域協議会というのがございまして、それぞれに組合の専従者がいるという状況であります。
そこから見えてくる地域の風景ということでいいますと、人口減少や単身高齢者の増加ということで大きく地域の風景が変わってくる中で、地域社会をどうやって維持していくかということも一方で大きな課題として各地域から上がってきているという状況であります。
さらにまた事業者団体ということで、労働者福祉協議会、略して労福協といいますけれども、そこにおいては生活困窮者支援の事業を行っているところも多々ありまして、特に沖縄や新潟県などでは総合的に就労支援事業や学習支援も含めた生活困窮者支援の事業を幅広くやっている団体もあるということであります。
また、連合に加盟している労働組合でいいますと、地方自治体の職員がつくっております自治労といいますが、そこでも生活困窮者やさまざまな課題について、その現場で働いている方々も多くおりますので、そこに対してのかかわりもあるということであります。
さらに言いますと、退職者の集まりであります退職者連合という組織もありまして、そこでは民生委員のかかわりであるとか、場合によっては退職者の方が集まって子ども食堂を運営するとか、そのような取り組みを行っているということであります。
そういう中で総合的に連合として見えてくる課題でありますけれども、先ほど言いましたように、いわゆる地域が大きく変化をしているということであります。8050の問題も先ほどありましたけれども、例えば東京の港区でも、マンションが大変多い地域でありますが、8050の問題が発見されないままずっと来て、例えば80歳の親が死んだ後に、実は50歳の精神疾患を持った子供さんがいたということが次々と生じているということや、例えば中国地方のある地方自治体においては、3世代同居というのは既に崩壊をしていて、本当に身寄りのない単身高齢者が多くなる中で、権利擁護とかをどうしていこうかという実態が多く報告されているということがあるかと思います。
そういった中で、9ページの資料でありますけれども、連合としましては、ことしの10月で30周年を迎えまして、社会保障や税制、教育も含めて、それぞれの政策課題としての2035年を見据えた政策構想をつくっていこうという話で現在議論が進められているところであります。これについては6月にも内容が決定されていくという形になっているところでありますけれども、連合としては、どういう社会像を目指していくのかということを含めて、より広い視点で議論をする中で、この共生社会についても少し議論をしてきたということであります。
9ページの下のほうが「働くことを軸とする安心社会」ということで、「まもる・つなぐ・生み出す」となっていますけれども、すみません、これは修正を忘れていまして「つくり出す」というふうに変わっているところであります。その言葉を基本にしつつ、持続可能性がある社会、そして互いに認め合い、誰一人取り残されることのない包摂性を理念とした、全ての人がともに生きることのできる社会を目指していこうということであります。厚労省のほうでは2040年となっていますけれども、連合としては2035年を射程にいこうということで考えているところであります。
10ページは、この間の厚労省の分析でも、皆さんの分析でも出されておりました、現状どういう問題があるかということを記載させていただいているところであります。
11ページには、連合が目指す社会と社会保障の姿ですが、社会保障政策のさらなる推進ということを含めて強調しているところであります。
そういった中で、労働組合として何をしていくべきかということで、12ページに書いてありますけれども、参加型社会保障の推進と労働組合の役割ということであります。この辺は先ほど言いましたように、「4.地域コミュニティの担い手としての参画」ということでありまして、どうしても働く者というのは地域ということに関してなかなか遠い存在だということもありますが、労働組合がみずから地域コミュニティーの担い手として取り組むことができるかどうかということを進めていこうとしています。
5.は先ほど言いました労働者自主福祉活動ということで、労福協の取り組み。さらには労働金庫や退職者連合の取り組みということで、地域に対してしっかりとかかわっていこうということなどについて記載しているところであります。
そういった中で、さまざまな社会保障制度があって、年金とか医療という制度についても提言をしているわけでありますけれども、その中で共生社会ということでも少し提言をさせていただいているところであります。
13ページを見ていただくと、地域の事情に留意しつつ、多様な人材等を含め、それをつなげていくということ。これは皆さんも言われていることがここにも書いてあるかと思います。また、住まいの問題をどうしていくのかということや、孤立などを含めた地域のつながりを活用した見守りが重要だということなどについて記載させていただいているところであります。
また、行政のワンストップ化等も含めて、これについてもしっかりと対応していくということを記載しているところであります。
ただ、問題は、こういう取り組みを進めていくことは必要なことでありますけれども、その仕組みや仕掛けをどうやって地域や自治体の中でつくっていくかというのが大きな課題かと思っています。例えばスーパー公務員、スーパーNPO職員、スーパー社協職員が全国各地にいるわけでありますが、そのスーパー公務員やスーパー職員などだけに頼っていては、共生型社会を全国普遍的につくっていくのはなかなか厳しいのではないかなと連合としては考えています。これは多分、宮本先生が雑誌のインタビュー記事で同じように御提言をされていたかと思いますけれども、そういうスーパー公務員、スーパー職員に頼るだけではなくて、より普遍的な仕事として共生社会を自治体がしっかりと担っていく。また、地域がしっかりと担っていく。そのために仕掛けをつくっていくことが必要であり、
その仕掛けの一つとして、「つなぐ社会基金」の創設と書いてありますけれども、都道府県単位で基金を創設し、地域をつなぐ役割や居場所の創設であるとか、そういうのを地方自治体の地域実態に見合った形で基金をつくり、使いやすいものにしていく。そのことによって普遍的な業務として取り組みが進んでいくのではないかということで提案をさせていただいているところであります。
以上、報告にかえさせていただきます。
○宮本座長 ありがとうございました。
続きまして、本郷谷構成員、お願いします。
○本郷谷構成員 松戸市の市長の本郷谷といいます。
ちょっと紹介させていただきますけれども、松戸市は東京に隣接して、人口約50万人です。そして、毎日20万人の人が松戸市から市外に、ほとんど東京ですけれども、人が行って働き、あるいは学校で勉強したりしている。10万人ぐらいの人は外から松戸に来ているということで、大変人の動きの激しい、年間の社会的な人口の移動は大体2万5000人の人が出入りしておりますので、20年たつと50万人ということで、住民が全部入れかわってしまうぐらいの人の動きをしています。
一方で、日本全体の少子高齢化、人口減少社会の中で、こういった非常に人の動きの激しい町ですから、魅力的な町をつくれば、今後ともしっかりとしたまちづくりができるということで、政策の一番に挙げさせていただのは、やはり将来を担う子供たち。高齢者を支えるという意味でも子供たち、あるいは若い人たちがしっかりする必要があるということで、子供たちの環境整備に第一に力を入れています。これは何があっても優先してやれということでやっています。
そういうこともあって、「共働き子育てしやすい街」全国編で1位ということでグランプリ賞をいただきました。一定の成果は出ているかなということです。
2つ目は、2025年度問題ということで、松戸市も75歳を超える方が9万人ということが予想されています。9万人というと、一人一人に対して手を差し伸べるような状況ではありません。行政が手を差し伸べるにはもうギブアップです。したがって、先ほどあった共生社会、まさにプラットフォームをどうやってつくり上げていくかということが大変重要だということで、共生社会づくりというものに2番目の大きな力を注いでやっています。
私は今、市長になって3期目ですけれども、一番最初に手をつけたのは自治会の組織です。自治会の組織というのは、地域で最近、組織化率が減少したといっても7割ぐらい松戸市の場合にまだあります。7割というと、50万人のうち35万人が会員になっている組織ですから、ここの地域組織をしっかりさせないと何をするにしてもうまくいかないだろうということで、連合長会ということで市内を15地域に分割しました。また、自治会と市の間に市政協力員制度ということで400人ぐらいの組織があって、直接市が自治会・町内会と話ができる状況ではなかったので、市政協力員制度も全部廃止して、市が直接自治会・町内会と話ができる体制にいたしました。
ということで、自治会・町内会を15の組織にしまして、この15の組織に合わせて福祉関係の組織も、地域包括支援センターも15カ所、地区社会福祉協議会も15カ所、今は全てこの15カ所に。昔はもうばらばらだったのです。自治会・町内会の連合会は11で、社会福祉協議会は15、それぞれがばらばら、地域もそれぞれで違っていたのですけれども、15の地域に全部合わせていって、お互いに連携をとれる体制を一歩でもつくっていく必要があるということでやってまいりました。こういうことでそれぞれの組織ができ上がってきています。また、丸ごと相談体制もこの15地域を今、順番に整備してきています。
松戸市として特徴があるのは、医師会、歯科医師会、薬剤師会の3師会が大変協力的に地域に入っていただいていまして、各地域で支援医制度という先生方の組織をつくっていただいて、したがって、介護、医療、いろいろなものが、あるいはそれぞれが活動体制を強化しています。この医療体制は医師会が非常に前向きに地域に対してやっていただいているというのが我々としても力強いし、特徴的かなと思っています。
そういうことで、プラットフォームづくりもそれぞれの組織を強化するということでは大分めどが立ってきたかなと思っています。これからは地域内の横の連携というのか、さらに横で戦略的に地域ごとに立てられる体制をこれからつくっていく必要があると思って今、動いているわけですけれども、その中でやはり常に気になるのは、縦割りという問題です。これは福祉の中でも縦割りがありますけれども、福祉だけではなくて、地域では福祉以外の問題が、災害のときの防災組織もありますし、いろいろな組織が活動しています。自治会もまちづくりからいろいろなことをやっています。これがお互いに連携体制をとって、例えば福祉で問題があって人手が足りなかったらみんなで自治会の連中も行って協力してやる体制を組むとか、それぞれが手を差し伸べないと、先ほど言った9万人のお年寄りが、日常は元気だけれども、何か起きたときに誰かが気がついて手を差し伸べる環境をつくっていく必要があるということになると、どうしても縦割りというのは何があっても廃止していかないと。そして、健康的なときからいろいろな課題があるので、これに対してぜひお願いしたいなということです。
もう一つは人材ですね。やはり自治会・町内会とか、そういうことを担っていただこうとすれば、思いだけではできませんので、当然ながら専門的な資格とか、あるいは先ほどあったソーシャル的なものとか、何らかの体制をしっかりバックアップしてあげないと、素人の思いだけの集まりではこんな大きな組織は動かせないなと思いますので、これから議論されていく内容ですけれども、とりあえずこの2点について述べさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
○宮本座長 ありがとうございました。
松戸市の大変先駆的な取り組みについて、本郷谷市長みずからお話をいただきました。代理がお見えになることも多いのですけれども、こういう市長さんがたくさんいらっしゃると、さぞかし、まさに地域も変わっていくのだろうなと思ってお伺いしておりました。
では、最後になりますが、室田構成員、よろしくお願いいたします。
○室田構成員 いよいよ最後なので、余りもう言うことがないなというか、言い尽くされてしまったなと思うのですが、私のほうから皆さんの発言を少し引用しつつお話ししたいと思います。
私は地域福祉を専門としている研究者でして、その中でもコミュニティー・オーガナイジングという概念を中心に研究しています。この考え方は「我が事・丸ごと」といった考え方と非常に親和性が高いと思っているのですが、何かというと、当事者がリーダーシップを発揮することで、自分たちが地域の中に、社会の中に変化を起こしていく力を身につける、蓄えるというところを意識しています。先ほど野澤構成員が当事者とおっしゃっていましたけれども、ここで言う当事者というのは、誰でもが当事者だと思っています。誰もが何かしら生きづらさや弱い側面を持っていて当事者になり得るかなと。その人たちが自分たちの望む変化に向けていかに力を蓄えることができるか。それを地域の中でつくっていけるかということが重要だと思っています。
そう考えたときに、地域共生社会、先ほど原田構成員が、そもそも政策的におりてくるものではないとおっしゃっていて、これは私も同感でして、では、それを実質的なものにしていくにはどうするのかということが問われていると思います。
そういった中で、野﨑室長が冒頭で共同体の崩壊という背景があるとおっしゃっていた中で、地域共生社会の仕組みがなければ、そういった生きづらさを解消する手段を持たない人というのはたくさん出てきてしまうと思うので、こういった仕組みを地域に落としていくこと自体は政策として推進していくことが必要なのだろうと思うのですが、では、私の問題意識はどこかというと、先ほど平川構成員が、スーパー公務員がいるから成り立つとおっしゃっていましたけれども、各地の先駆的な実践は、どうしてもやはり思いのある、意識のある、理解の深い担当者の方が仕組みを推進していくという側面があって、それを普遍化できるのかというと、そこがやはり一番難しいところではないかなと思っています。準備ができていないと言ったら失礼ですけれども、政策がおりてきて、担当になったその担当者が包括的な相談支援体制をつくることができるのかというと、そこで本人は一生懸命頑張っていると思うのですけれども、どうしても政策で意図しているような形で推進されないという実態はあるのではないかと思っています。
そういった中で、私が提案するのは、これも既にほかの構成員の方の発言の中に含まれていたことなのですが2点ありまして、一つは自治体の運用の方法で、もう一つは現場の実践と考えています。自治体の運用面に関しては、知久構成員がおっしゃっていたことがほぼ全てだなと思っていて、繰り返しになってしまうのですが、いかに政策に関する担当者の理解を深めることができるのか。そして、新たな試みに対して許容できるような理解を持つことができるのか。つまり、これは池田構成員の資料にもありましたが、グッドプラクティスを模倣するような形で制度を落としていくのではなくて、その自治体に合った形で制度を推進していく。そのような理解を担当者がどのように身につけることができるのかということが一つだと思います。
その中でよく起こりがちなのは、担当者の方が強引に自治体内のゴールを定めてしまうのか、もしくは全くゴールを定めないで現場に任せてしまうのか。そのどちらかに陥りがちだなと思っていて、大事なことは、現場の人と担当者が一緒に考えながらゴールを設定していくというプロセスを踏むことだと思っています。
ただ、そのやり方は簡単ではないので、先ほどから挙がっているように、ないしは知久構成員の資料にもあったように、原田構成員もおっしゃっていましたが、研修を充実させるということだったり、あとはきょうの資料にもあったように自治体間協議の場というか情報交換、ピアチェックするような場があるというのは大事だなと思います。
それに加えて、担当者を支援するということも必要だと思っていまして、これは既に皆さんおっしゃられていましたが、立岡構成員は伴走支援が必要だとおっしゃっていましたし、アドバイザー派遣というのが知久構成員のおっしゃっていたことだと思います。それと同時に、現場に対するスーパービジョンのような機能も必要だと思っていて、大原構成員のリモートでそれを行うというのは非常におもしろいアイデアだなと思いましたし、それも可能なのかなと思います。というのは、誰がスーパービジョンできるのかというと、人材がいなくて困る自治体もたくさんあると思っています。
あとは、加藤構成員がおっしゃっていた事例検討などを取り入れるということもここでは重要になってくるかなと思います。そういった意味で、自治体運用の部分をいかに実質的なものにしていくかというか、担当者が力を最大限発揮できるような体制を整えるかということが非常に重要だと思っていて、もう一方で、現場の実践ですけれども、やはり池田構成員がおっしゃっていた支援の見える化というところは私も重要だと思っています。ちょっとかたい表現になると、研究機能みたいなものを現場が持つ必要があるのかなと思っています。それはどういう研究かというと、いわゆる担い手というか、中心に活動を推進していく人は誰なのか、誰がなり得るのか、その人たちは何を求めているのかということをしっかり研究する必要があると思っています。
先ほど元気高齢者という話もありましたけれども、では元気高齢者がその自治体の中にどれくらいいて、どれくらいの潜在的な活動者がいるのかということがしっかり研究された上で実践されていく必要があるかなと思いますし、ほかにも自分の自治体に合った仕組みとはどういうものかということを研究する。それは圏域をどのように設定するのかとか、ワーカーの配置をどのように進めるのかとか、あとは中長期的な計画をどのように立てて、何年までにどれくらい進めるのかということを自治体の中でしっかり研究して定めていくことが必要なのかなと思うのですが、それを政策として落としたら、恐らく全てが、各地で研究機能を持ってくださいといったらそれ自体が形骸化してしまうと思うのです。
では、どうすればいいのかと思うのですが、先ほど話していたように、ゴールを与えるのか、ゴールを全く設定しないのかではなくて、ゴールをともにつくっていくという方法です。現場とともにゴールを一緒に設定していくというノウハウをまずは担当者が身につけるような支援が必要なのかなと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
皆さんの大変豊かな内容の議論をどうやってまとめようかと思っていたところ、室田構成員がほとんどまとめてくださいましたので、半分以上負担が軽減されたなと思っております。
かつ、予定より20分ほど過ぎているのですけれども、これはこれまでの議論の中身を考えるといたし方ないかなとも思います。
ここで5分ほど、30分まで簡単な休憩を挟ませていただきまして、残り25分から30分くらい、最後の、言及されてまだ解決されていない言い残されたこと等をお話しいただければと思います。
それでは、休憩いたします。
 
(休 憩)
 
○宮本座長 よろしいでしょうか。残り時間、長くはございませんけれども、有効に使って議論をまとめてまいりたいと思います。
一通り皆さんからお話をいただいたわけですけれども、先ほど室田構成員からもおまとめいただいたような形で、相互に密接に連関したお話が伺えたかなと思っております。
その中で、野澤構成員から、こうした断らない相談支援というのが持続していく難しさと同時に、例えば朝比奈構成員のがじゅまる等でそれが持続的に進められてきたと。そこはどういう背景だったのかという御質問もあったかと思います。これに対して朝比奈さん、いかがでしょうか。
○朝比奈構成員 朝比奈です。十分なお答えになるかどうかわからないのですが、何点か申し上げたいと思います。
まず一番は、野澤さんが先ほどおっしゃった、事業の組み立て自体はかなりむちゃなのだと。そのむちゃさが現場を育てたという側面はあるかなと思います。私自身の見解では、ソーシャルワークというのは現場に裁量がなければならないと思っていて、その裁量が最大限与えられた現場だったということがあります。一方で、今、包括化推進員の方々など大変苦労をされていると思うのですけれども、中核センター自体、恵まれていたのが、孤立しない現場だったということです。それには2つありまして、1つは、中核センター事業自体は千葉県の第1期地域福祉支援計画の中で生み出された事業なのですけれども、その地域福祉支援計画策定の過程で県内各地でタウンミーティングが開催されまして、そのタウンミーティングの推進主体自体が千葉県であったと同時に、各地元で組織された多分野を横断する実行委員会組織だったと。そこでネットワークが培われて、そのネットワークの力をかりながら中核センターが活動していくことができたということがあります。
もう一つが、この活動白書なども編集をしている千葉県の連絡協議会組織です。中核センター同士がかなりピアな関係の中で現場の悩みを分かち合ったり、困難事例を交換し合ったり、場合によってはほかの県域に応援に行くといったような形も含めて相互スーパーバイズの形が定着をしてきた結果、孤立せずに仕事をしていくことができました。
この間、17年目に入っていますけれども、現場も世代交代が起きています。中核センターの実績を買われて、例えば障害の基幹相談支援センターの事業の委託を受けたり、困窮者支援事業の委託を受けるなどで、そちらに当初のコーディネーターが人事異動して、その下で働いていた第2世代が今は所長として仕事をするようになっていて、そこで、これまで経験的に、職人的に積み上げられてきた実践に対して、かなり素朴な疑問や質問がぶつけられるような闊達な議論の空間が連絡協議会の中にあって、そのことが先ほど池田さんもおっしゃった支援の見える化。自分たちがやっていることの言語化を鍛える俎上にもなってきたのかなと思っています。決して待遇はよくないですけれども、現場のおもしろみということについては誰もが認めていて、そういう意味では、人材の話がありましたけれども、結構地域の人材の受け皿にもなっているのです。今までの現場で煮詰まった人たちが思ったような支援をやりたいといって移ってくることもありますし、中核センターで中心的な役割を果たしていた職員が新たな事業所を立ち上げるときの中心メンバーとして、地域の中にまた育っていくというような人材育成の拠点だったり、交流の拠点になっている側面もあるかなと思っております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
あわせて、先ほど来の議論の中で支援員の専門性と同時にピアの視点といいますか、田中構成員がおっしゃったように裾野の広がりで関係性自体が豊かなものになっていく。そういう専門性と地域のピアの視点との関係というのは、朝比奈さんのところの経験ではどのようにまとめればいいでしょうか。
○朝比奈構成員 皆さんのお話の中に出てきたその点については私も非常に同感で、今後の議論の展開の中で、先ほど公的な保障制度が必要だと申し上げましたけれども、その仕組みの中に、そうしたピアな存在の見守りなども位置づけられていくといいなと思っております。
現に中核センターの相談の入り口というのは、一番は市町村なのですけれども、その次は、過去に経験した、相談を受けてきた人たちなのです。中核センターの支援から離れた人が、身近な関係の中で心配な人がいると。その人を連れてきてくれるといった形で少しずつつながりが広がってきているということがありまして、やはり支援を経験した立場、受けてきた経験を持っているからこそ声がかけられたり、説明ができたり、促しができるということは非常に重要だと思っておりますので、大事な役割ではないかと思っています。
○宮本座長 ありがとうございました。
それでは、いかがでしょうか。皆さんのほうから、ほかの方の御意見や御発言に対する質問やコメントでも構いませんし、さまざまな論点について付加的に御議論いただいても構いません。ここからは御自由にお話しいただければと思いますが、いかがでしょうか。
大原構成員、大原構成員の後にさまざまなお話が出てきて、今、ゆうゆうでも専門性と同時にボランティアの活用などでも実際に大原さんのところにお伺いしていろいろ拝見してきましたけれども、随分御経験を積み重ねてこられたのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○大原構成員 先ほど田中先生がお話しされていたことは、全くもってそのとおりだなと思って聞かせていただきました。この15年間、地域の中で、私たちは小さい町ですから対象を限定としない方のいわば出口支援をしてきたのですが、やはり公的なサービスの中だけでは担い切れないサービスも出てきて、結局それを専門家は制度ではできないということを言いわけにしてやらないということが生じてきたと。これを実際に担っていただこうということで、地域の方の力をかりようということでボランティアセンターをつくり、さらにそのボランティアセンターの中から意欲のある方に研修・講習を受けていただいて、制度ではできないサービスを担っていただいたと。
その中で非常に違和感として感じていたのは、公的制度というものが最初にあって、そこで漏れゆくところを地域住民が支えているという違和感が自分の中にあって、むしろ地域の中でやるべき生活支援の担い切れないところを公的がサポートする。まさに田中先生がおっしゃっていた、専門家がやるべき重度もしくは重篤な方々のサービスと、むしろこれは地域の方々に担っていただいたほうがいいのではないかというサービスをしっかり整理すべきだと感じております。
もう一つ、これは副次的に起きた成果なのですが、非専門家の方々が行った生活支援の中で、この方々が今度、自分たちの生きがいとかやりがい、何か必要とされている実感ということに変わっていく。アクティブシニアの方々がまさに御活躍されているのは、そこに何か貨幣的な評価をもらうというよりも、自分が必要とされている地域での実感値を感じていく。そういうことが副次的に起きました。
そもそもここが今、事業として運営できているスタートは、19ページの資料に地域共生社会研究会報告書概要の第1章、2行目ですが、出会いや学びを通じてという文脈がございます。まさにこれはとても大事だなと思っておりまして、なかなか地域でどういうことに困り事があってとか、場合によっては自分自身がこれから地域でどう生きていき、その生きてきた先にどういうことがあるのかということを、何とかなるみたいな、そういった印象を持っていた方々と一緒に定期的な学びを通じて、学んだ一つのモチベーションをそうした生活支援の提供者になっていく。そういったことで一緒に学んだ方々が、同じような境遇の方の出会いがあって、そこでまたコミュニティーのプラットフォームができてくる。そういった学びと出会いというものがいろいろな世代の方々、最近でいえば、例えば福祉系に通っていない学生たちにとっての福祉と出会うプラットフォームであったり、当事者から学ぶことであったり、そういった学びと出会いというものを通じて、先ほど話していたような非専門家として生活支援を担っていき、それがその方々の活力になっていく。そういう循環がつくれているのかなということを感じております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
要するに、制度から漏れた課題を下請的に引き受けるということではなくて、それぞれの特性といいますか、合った形で役割分担をしていくと同時に、専門的であろうが、地域住民であろうが、支える側が支えられなければいけないということなのだと思います。と同時に、その中で生まれていく出会いと学びというものをどう地域のエネルギーに展開していくのか。そのあたりをお話しいただけたのかなと思います。
池田構成員、お願いします。
○池田(昌)構成員 今のお話に関連して、今、私たちは住民の皆さんがふだんの暮らしの中で無意識に支え合っていることを「お宝」と呼んで、「お宝探し」を行っています。地域を課題から見るという視点の前に、すでに地域でできていること、やれていることから見ていくのです。ある一人暮らしの人は、自分の家にお友達を呼び寄せて、気がついたら毎日誰かしら来ています。お友達が来る途中に買い物してきてくれたり、来たついでに洗濯して、布団を干してくれて、食事もつくってくれて、ヘルパーさんを使わずに暮らしています。一緒にお風呂に入ってくれる人がいて、入浴のためにデイサービスを利用するということもありません。こういう暮らしが、すべての人にできるとは思わないですが、こういう暮らしぶりがあれば介護サービスをそんなに多く使わなくても地域で暮らせることがわかりますし、その輪にいる人たちは自分がいずれそうなったときに自分もこうやって地域で暮らしたいと願います。その意味では、支援を受ける年代の人たちが、10歳や15歳ぐらい年下の友達をつくっていると、このような関係が構築できるということも見えてきました。
高齢化率100%の集落に行くと、集落でしっかり支え合っています。ちょっと困ったときには包括の保健師さんに電話をかけて、どうしたらいいかを教えてもらっています。高齢化率100%の集落で、畑で倒れていた人を救急車が来るまで50分間見守った実話もあります。先ほどの田中先生のお話を受ければ、そういう高齢者の暮らしぶりを2040年に向けて今の子供たちがきちんと受け継いでいかなければいけません。私たちが親から受け継がず、子供に引き継いでいないのですが、本当はそういう暮らし方を子供たちにつないでいくということが、まずはつながりの豊かさの基盤づくりではないかと思うのです。
この基盤づくりの地域づくりや、地域課題を支えなければならないときの地域づくりなど、地域づくりには幾つかの層があるのに、私たちは一つの「地域づくり」という言葉で話しています。それぞれイメージが違う中で議論していても、なかなか深まらないと感じています。
○宮本座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
田中構成員、お願いいたします。
○田中構成員 大原構成員と池田構成員に賛同いただいてうれしいです。ありがとうございます。
私は、地域包括ケアシステムの分野で議論を行ってきたので、そこと地域共生社会の話をちょっとしておきます。しばしば聞かれるのは、厚労省は地域包括ケアシステムの旗をおろして共生社会に変えたのかという質問を受けたりしますが、そんなことはありません。私はこう答えています。地域共生社会は目的概念であると。地域包括ケアシステムはそこに至る設計図のつくり方だから、地域包括ケアシステムが目指しているのは共生社会。両者は相反するものではない、が第一義的な答えです。
それから、地域包括ケアは、高齢者ケア、特に介護から始まりましたし、共生社会論はどちらかというと福祉問題から来ているので、ルーツが違うのは確かですが、政策論としての地域包括ケアの指摘も2003年ごろから始まり、2008年に厚労省の老健事業になり、2014年には医療介護総合確保法の中で第1条に書かれました。最初は高齢者ケアだったけれども、だんだん福祉のほうに、そして今言われた地域づくりに軸足を移してきています。両者は別に相反するものではなく、老健局と社会・援護局がけんかしているわけではなく、協力していけるところを御理解ください。
私たちが地域包括ケアの中で、特に層があると言われましたけれども、同じように地域包括ケアも中重度者のみとりが近い方のケアについては重い話でプロの力が貸せません。こういうところから、問題がまだ軽く、虚弱だけれども杖をついて散歩できる人の居場所をつくる地域包括ケアまでいろいろな層があります。その中で、目的概念はその人たちも社会に参加し、孤立せず包摂される社会、すなわち共生社会であるという意味では、両者は連動している。あるいは目的概念と設計図概念であると御理解をいただくと、我々もこれからも続けやすいと考えています。
○宮本座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
原田構成員、お願いします。
○原田構成員 今のお話ともつながってくるのですけれども、もう一つ、地域共生社会を考えるときに、地域福祉の系譜みたいなものをどのように押さえておくかということもあります。ただ、それは必ずしも地域共生社会が昔に戻れというスタンスではなくて、むしろ多様性を認める地域をつくるということは、新しい地域づくりをしていかないと、かつて農村モデルで支え合いがあってよかったと、そこにまた戻りましょうというベクトルではなくて、むしろ外国人の問題であるとか、今回出てきているさまざまな、そのような人たちを包摂できる地域社会をどうつくるかというのは、多分、従来の地域福祉を乗り越えていかないと新しいものが出てこないのではないでしょうか。そういう意味でいくと、2000年のときに出た社会的援護を要する人々に対する社会福祉のあり方、2008年のこれからの地域福祉のあり方の報告、その延長で地域共生社会を捉える部分と新しい部分を整理しないといけないかなと思っています。
○宮本座長 ありがとうございました。
古いものの復活ということではなくて、我々が直面している必要が新しい縁のきっかけになっていくと。しかも、それを、恐らく池田構成員がおっしゃるように楽しくやっていかなければいけないということなのだと思います。
何度も縦割りを超えていって、それが先ほど平川構成員からもお話があったように、どうしても縦割りを超えるのがスーパー公務員とかカリスマNPOリーダーならではという話になってしまうのですけれども、本郷谷市長、先ほど縦割りの弊害と同時に、縦割りを超えていくことの意義についてもいろいろお話しいただいて、首長さんからごらんになって、このようにしていくと縦割りも超えられるのではないかとか、何かヒントがあればぜひ。
○本郷谷構成員 我々首長は市民と直接接しているし、基礎自治体ですから、これは福祉ですよ、こうだというのではなくて、やはり常に視点は人です。だから、それは機能的にこうだからこうだなどと言われると、まずそこで我々としては反発心で出て、私はこうですよ、こうだと言われたらそんな話は聞きたくないと、こういう感じで、全体を見ながら自分のところを言っていただくということがどこの組織でもしっかりしてくれないと、特に地域をまたいで全てが集約されますので、そういったものはここだけではなくて、いろいろな省庁を超えたものが必要かなという気がします。
もう一つは、人口減少社会に入っていますので、外国人の問題というのは、これから1億人を維持しようと思ったらそれなりの外国人が入ってこないといけないということを考えると、日本の社会の中に外国人が一定程度の足場を築いたまちづくりを一緒にしておかないと、どこかで破綻してしまうのではないかなと。今、我々は日本人としての感覚でやっているけれども、全く違った、どちらかといったら世界から見れば日本人のほうが違和感があるわけですから、そういう人たちとどうやって、そういうことが前提で2040年とか先を考えたりすると、多様な価値観の入った人たちも通用するようなということを考えておかないと、純然たる日本人の今までの感覚だけのまちづくりをやったら、世の中どこかで変わって、ついていけないのではないですかねという思いがあります。
きょうはちょっと思いつきだけの意見ですけれども、よろしくお願いします。
○宮本座長 ありがとうございました。
思い返してみれば、縦割りの弊害などというのはもう30年、40年言われつづけているわけでございまして、そうした流れの中でこの検討会は最終的にそこにどう決着をつけるのかという非常に大きな課題を負っているのだなと、改めて皆さんのお話を伺いつつ思った次第でございます。ある意味では、縦割りというのは、ただでさえ日々重くなっている支援者あるいは自治体職員の業務に対する唯一の防御壁でもあったりするのですけれども、しかし、それがまた仕事の中身を非常に空疎なものにしてしまってもいるわけでございまして、そこに支援者あるいは職員もきちんと支えられなければいけない。その関係を維持し、またつくり出しながら、どうやって包括化をしていくのか。大変有意義な議論をいただいて、そのあたりの課題が非常にはっきりしてきたのかなと思います。
ほかに何か、これだけは言っておきたいということが、もちろん次回以降続けますけれども、きょうの段階で何かございましたら遠慮なくお話を。
○原田構成員 言い残してはいけないので1つだけですけれども、先ほど冒頭のところで補助金のあり方という、まだどうなるかわからないけれども非常にチャレンジングな議論をと言っていただいたのですが、もう一つは、基礎自治体というだけではなくて、福祉事務所そのもののあり方の縦割りをなくしていくということを考えたときに、この検討会でそれを真っ正面には捉えられないと思うのですけれども、もう一方では、福祉事務所のあり方を含めた組織のところを少し議論しないと、縦割りをなくすというのは難しいのではないかと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
平川構成員。
○平川構成員 今後の進め方ですけれども、7月以降、中間取りまとめがされるということになっていまして、その後、どうなっていくのかというところは少し関心があります。厚労省中心に2040年に向けたさまざまな課題に対しての検討が始まるのではないかという報道もありますが、それとの関連性について、もし考え方があれば示していただきたいと思います。
○野﨑生活困窮者自立支援室長 全体としてこの検討も2040年に向けたという大きな文脈の中の一つのパーツとして入っていますので、全体としては入っていますということなのですが、夏までと夏以降で何が違うのかということで言うと、仮に制度的な対応が必要だという方向性で皆さんの総意となれば、そうすると各関係の審議会とも議論を進めていかなければいけない。それもあるので、一旦夏ぐらいまでで、何をどこまでやるのかというあたりの骨格までは届いておかないと、秋以降のほかの議論に間に合わないなということで、夏で一旦区切りをつけていると。
夏以降、どのようにしていくかというところは、まだ正直、十分に見えていませんけれども、恐らくきょうの議論の中でも、例えば都道府県の役割をどうするのかとか、それぞれ多分各論も幾つか、この文脈でも出てくると思うのです。今の原田構成員からあった組織のあり方とか、ここでどこまで扱えるかという問題はあるにしても、何らかの各論、もう少し詳細の部分、制度の骨格とまでは言えないけれども、重要な要素みたいなものをどこまで秋以降触れておくかということは、きょうは初回なので、まだ十分論点も出切っていないと思いますが、整理しながら、夏以降どのようにしていくか考えていきたいと思います。
以上です。
○宮本座長 平川構成員。
○平川構成員 今の話で1つお願いがあるのは、関係省庁との連携をしっかりとやっていただければと思っています。かなり地方自治体に関することがありますので、ぜひともその辺をお願いできればと思います。
○野﨑生活困窮者自立支援室長 自治体の業務に関連するところの関係省庁ももちろんですが、あわせて、夏以降ひとつあるかなと思うと、各省でいろいろ地域づくりとか、こういう部分の提案とか提言、議論をされていますので、そこも十分視野に入れながら議論をしていきたいと思っていますので、そのように工夫していきたいとは思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
こういう検討会をやっていると、座長の主な役割は、皆さんの発言にストップをかけることが多いのですけれども、きょうは皆さん大変協力的でございまして、私の不手際もございましたけれども、何とか予定時間どおりに終了させることができそうでございます。どうもありがとうございました。次回以降の議論も何とぞよろしくお願いをいたします。
それでは、事務局のほうから次回以降の御案内等をお願いいたします。
○野﨑生活困窮者自立支援室長 次回以降の日程については、資料4で、まだ十分に日にちまでははまっていないものですけれども、次回の日程については5月下旬を予定しておりますが、詳細についてはまた御連絡をさせていただきたいと思います。決まり次第、早急に御連絡をさせていただきます。
また、事務連絡として、本日の議事録は、公表前に構成員の皆様に御確認いただくこととしていますので、速やかな御確認に御協力をお願いしたいと思います。
事務局からは以上です。
○宮本座長 それでは、きょうの検討会はこれにて終了とさせていただきます。次回、皆さんとお会いできるのを楽しみにしております。どうもありがとうございました。

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(代表電話) 03-5253-1111(内線2233)