第277回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 議事録

日時

2018年(平成30年)12月4日(火)10:00~

場所

東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館
職業安定局第1・2会議室(12階)
 

出席者

(公益代表委員)
・鎌田 耕一(部会長)
・松浦 民恵

(労働者代表委員)
・永井 幸子
・奈良 統一
・村上 陽子


(使用者代表委員)
・佐久間 一浩
・高野 晶子
・正木 義久

 

議題

(1)「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備及び経過措置に関する省令案要綱」等について(報告)(公開)

 

議事

議事内容
○鎌田部会長 定刻となりましたので、ただいまから、第277回労働力需給制度部会を開催いたします。議事に先立ちまして、本日は公益代表の藤本委員が所用により御欠席されています。本日は、お手元の次第にある議題1について公開で御審議を頂きます。
それでは、議事に移ります。本日の議題ですが、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備及び経過措置に関する省令案要綱」等について、報告を頂きます。本件は、同一労働同一賃金部会の所掌であり、同部会において平成30年11月27日付けで諮問がなされ、同日付けで「おおむね妥当」との報告がされましたが、労働者派遣法に関する事項も含まれていることから、本部会においても御報告いただくものです。
資料の分量が多いことから、区切りのよい所で分割して質疑の時間を取りたいと思います。まず、資料1、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の概要」、資料2及び資料3、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う厚生労働省令案及び指針案」について、事務局から説明をお願いします。
 
○古屋調査官 おはようございます。需給調整事業課の古屋です。本日は、働き方改革推進法の労働者派遣法の改正の省令関係部分について、御審議いただくこととしています。なお、本日は、タブレットの資料に加えて参考資料1~6をお付けしていますので、適宜、御覧いただきながら御説明する形とさせていただきます。
まず、資料1から、概要について御説明いたします。1ページを御覧ください。働き方改革関連法の中でも、いわゆる同一労働同一賃金に関連する法改正部分につきましては、企業内における正規と非正規の間の不合理な待遇差の是正を目指しまして、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法を改正するというものです。ポイントは3つありまして、不合理な待遇差を解消するための規定の整備、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備というものです。施行期日につきましては平成32年4月1日ですが、中小企業の適用については平成33年4月1日となっています。
2ページをお開きください。雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指すため、不合理な待遇差を解消するための規定を整備しています。この中の左側にお示ししていますが、現行の均等待遇規定につきましては、職務内容、職務内容・配置の変更範囲が同じ場合に、差別的取扱いを禁止するというものです。均衡待遇規定につきましては、職務内容(業務の内容、責任の程度)と職務内容・配置の変更範囲、その他の事情といったものを考慮して、不合理な待遇差を禁止するものです。均衡待遇規定については、どのような待遇差が不合理なものに当たるかの明確性を高める必要があるというものです。
これらにつきまして、右側の図にありますように、均等待遇規定は有期雇用労働者については対象とはなっていませんでしたが、新たに、有期雇用労働者も均等待遇規定の対象とするものです。また、均衡待遇規定の明確化を図りまして、それぞれの待遇ごとに当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化しました。待遇の具体的な内容としましては、基本給、賞与、役職手当、食事手当、福利厚生、教育訓練など、こういった具体的な待遇ごとに適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化しました。これらの規定の解釈の明確化のため、ガイドラインの策定根拠を規定しています。
次のページをお開きください。派遣労働者の均等待遇・均衡待遇についての規定の御説明です。まず、派遣労働者の均等・均衡待遇規定は、これまでありませんでしたが、今回の改正で(1)と(2)に示しておりますように、まず、派遣先の労働者との均等・均衡待遇、2番目として、一定の要件を満たす労使協定による待遇、のいずれかを確保することを義務化しています。これは派遣労働の特性を踏まえた労働者派遣法独自のもので、一般に賃金水準は大企業であるほど高く小規模の企業になるほど低いという傾向にあることから、派遣労働者の段階的・体系的なキャリアアップの支援と不整合な事態を招くこともあり得るという考え方から、労働政策審議会におきまして、選択制とすることが適当との建議を受けたものです。
派遣労働者の待遇に関する情報の提供に加えまして、派遣労働者に関する情報の提供義務が新たな義務となりまして、教育訓練、福利厚生施設の利用について、努力義務から配慮義務に派遣先の義務を強化するという改正も行っています。また、ガイドラインの策定根拠を規定しています。
具体的に申し上げますと、協定方式についてですが、賃金決定方式に関しては、協定対象の派遣労働者と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金としまして、職務内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に賃金が改善されるというものとしまして、こうした内容を公正に評価して賃金を決定して、賃金以外についても派遣元の通常の労働者と不合理な相違がなく、待遇の決定方法も記載し、段階的・体系的な教育訓練を実施することを記載するというのが条件です。
先ほど申し上げましたことは、(2)の点線の四角で囲っている内容です。こうした内容を担保するということで、派遣先の事業主に対して、派遣料金の額について、派遣元事業主がこうした内容を順守できるように配慮義務を創設しています。また、この下ですが、均等待遇規定・均衡待遇規定の解釈の明確化のためにガイドラインの策定根拠を規定しています。
次のページを御覧ください。労働者に対する待遇に関する説明義務の強化についてです。現行法におきましても、パートタイム労働法、労働者派遣法におきまして、待遇内容、待遇決定に当たっての考慮事項の説明義務が定められています。これにつきまして、有期雇用労働者にも適用することとともに、新たに、待遇差が生じる理由についても労働者の求めに応じて説明を義務付けることとしています。この改正の趣旨につきましては、労働者の納得性の向上を図ることとともに、事業主しか知り得ない情報があるということがありますので、労使の話合いに応じたり、あるいは、労働者が訴訟で争うことを断念することがないようにということで設けたものです。また、説明を求めたことを理由として解雇その他不利益な取扱いを行うことを禁止することとしています。
次のページを御覧ください。こういったことの具体的な内容を担保するため、行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備を図っています。現行では、行政による報告徴収・助言・指導につきましては、有期雇用労働者についてはありませんでした。また、行政による裁判外紛争解決手続、調停などについては、短時間労働者のみに規定があり、有期雇用労働者あるいは派遣労働者については規定がありませんでした。また、短時間労働者につきましても、均衡待遇規定に関する紛争については対象外とされていまして、今般、有期雇用労働者につきましても、事業主に対する報告徴収・助言・指導の根拠規定を整備することと、有期雇用労働者・派遣労働者について、行政による裁判外紛争解決手続(行政ADR)の根拠規定を整備しているものです。また、均衡待遇や待遇差の内容・理由に関する説明についても、行政ADRの対象に追加しています。
こうしたことの流れを一連の手続の流れとして、参考資料2に示しています。参考資料2は、事業主が実施すべき実務の流れということで、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式に整理しまして、流れを示しました。オレンジ色の部分は派遣先事業主が行うべき事項、水色の部分は派遣元事業主で対応すべき事項です。これはイメージということで、個別には多少違うところがありえますが、お示ししています。
まず、派遣先均等・均衡方式につきましては、比較対象労働者の情報を派遣先から派遣元に提供しまして、派遣元で待遇を検討・決定し、派遣料金の交渉に移り、派遣契約を締結するという形です。その上で、⑤に示していますように、それぞれの派遣労働者に、雇入れ時と派遣時に待遇情報を明示して説明するということです。また、派遣先均等・均衡方式につきましては、比較対象とする労働者に待遇の変更があった場合は、変更部分について派遣先から派遣元に待遇情報を提供しまして、派遣元は、こうした情報に基づき派遣労働者の待遇の検討を行い、必要に応じてもう一度この流れに沿って対応していただくというものです。求めに応じて、派遣労働者に対する比較対象労働者との待遇の相違等の説明をしていただきます。それから、これは協定方式と共通ですが、派遣先の労働者に関する情報、派遣労働者の業務の遂行の状況等の情報の追加提供の配慮を派遣先がすることとしています。
労使協定方式につきましては、過半数組合がない場合は、過半数代表を派遣元において選出するということになります。また、この手続を受けまして、労使協定を派遣元で締結し、労使協定を派遣元の労働者に対して周知し、年1回の行政報告においても協定の内容について報告することとしています。比較対象労働者の情報提供も派遣先から受けていただきます。この内容は、教育訓練あるいは福利厚生に限った内容ですが、こうしたものを受けていただくことになります。その後、派遣料金の交渉と契約の締結をしまして、雇入れ時、派遣時の説明を得るというような手続となっています。
(注)で示しておりますが、同種の業務に従事する一般労働者の平均賃金に変更があったときについては、派遣元は、協定改定の必要性を確認し、必要に応じてこの流れに沿って対応する必要があります。また、求めに応じまして、派遣労働者に対する労使協定の内容を決定するに当たって考慮した事項等の説明を、派遣元でしていただくことになります。
こういった流れになっていますが、具体的な手続の内容につきましては、省令・告示等に定めることとしておりまして、省令・指針の具体的な内容については、資料2にお示ししておりますので、御覧ください。今回の改正では、大きく分けて、省令1本、告示3本の改正、それから、同一労働同一賃金のガイドラインの制定をしています。派遣法改正に伴うものは、この中の1~3と5です。
概略を御説明しますと、1の省令につきましては、協定締結に関する過半数代表者の選出方法、派遣先から派遣元への待遇情報の提供に関する比較対象労働者の選定や情報の内容、雇入れ時・派遣時の説明事項やその方法についてです。2の派遣元指針につきましては、待遇の相違の内容や理由等に関する、派遣元事業主が説明すべき内容や説明方法、3の派遣先指針につきましては、派遣料金の額に関する配慮が契約の締結後にも求められること、5の同一労働同一賃金ガイドラインにつきましては、不合理な待遇の相違の解消等を行うに当たって、労使合意なく通常の労働者の待遇を引き下げることは望ましくないことなどについて規定しています。
具体的内容について御説明いたします。資料3を御覧ください。1ページをお開きください。まず、労使協定に関する事項について御説明させていただきます。労使協定の締結主体であります過半数の労働者代表の選出方法の手続について省令で規定するものです。この条件につきましては、(1)に示していますように、労働基準法の管理監督者ではなく、投票、挙手等の民主的な方法による手続により選出された者で、派遣元事業主の意向で選出された者ではないことを条件としています。2つ目ですが、派遣元事業主におきましては、過半数代表者に労働者がなろうとしたことなどを理由として不利益取扱いをすることを禁止しています。3つ目のポツに示しておりますように、協定に関する事務を円滑に遂行できるよう、必要な配慮を行うこととしています。
2ページをお開きください。労使協定の締結に関する手続に関わるものです。協定を締結したときにおきましては、協定に係る書面を、その有効期間が終了した日から起算して3年を経過する日まで保存しなければならないこととしています。
次に、労使協定の対象とならない待遇ですが、教育訓練あるいは給食等の業務の円滑な運営に資するような福利厚生施設については、労使協定の対象とはしていません。続きまして、労使協定の対象となる派遣労働者の範囲です。一部に限定する場合については、その理由。派遣元事業主は、特段の事情がない限り、協定期間中に派遣労働者について、派遣先の変更を理由として待遇決定方式を変更してはならないという旨を協定に記載することとしています。
3ページをお開きください。協定方式で同等以上とすべき賃金額につきまして省令で定めるもので、派遣先等を含む地域で派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者で、派遣労働者と同等の能力及び経験を有する者の平均的な賃金額とすることを定めるものです。次に、賃金額で、法30条の5の対象とならない賃金、それから、法30条の4第1項第2号ロの対象とならない賃金についての規定です。この規定は、通勤手当、家族手当などの職務の内容に密接に関連しない賃金については、職務内容等を勘案した賃金決定の努力義務からも除外するというものです。
続きまして、4ページをお開きください。労使協定の有効期間について、協定の中で定めをおくということを定めています。次に、協定の内容ですが、(1)~(4)の方法のいずれかにより行わなければならないことを定めています。まず、(1)は書面の交付による方法。(2)は、労働者が希望した場合、ファクシミリを利用して送信するか、あるいは電子メールやSNSを活用する形で送信する方法といったものがあります。こういった電子メール等の送信につきましては、記録を出力することで書面を作成することができるものに限ることとしています。(3)はイントラネットで媒体を掲げる方法です。(4)は、常時、派遣元事業主の各事業所の見やすい場所に掲示又は備え付ける方法です。ただ、なかなか派遣労働者の方は事業所に行かない可能性が高いので、協定の概要について、先ほどの、書面の交付又はファクシミリや電子メール等の送信によって併せて周知する場合に限ることとしています。
5ページをお開きください。労使協定の行政への報告事項です。事業報告については、毎年、厚生労働省に提出いただいていますが、これと協定を添付しなければならないものとするものです。もう1つ、事業報告におきまして、協定対象派遣労働者の職種ごとの人数と職種ごとの賃金額の平均額を報告することとしています。
続きまして、6ページを御覧ください。協定対象派遣労働者に対する安全管理に関する部分です。協定労働者に対する安全管理に関する措置及び給付のうち、当該協定対象派遣労働者の職務の内容に密接に関連するものについては、派遣先に雇用される通常の労働者との間で不合理と認められる相違等が生じないようにすることが望ましいということを、派遣元指針に記載するよう規定するものです。これにつきましては、同一労働同一賃金ガイドラインにおきまして、協定対象派遣労働者の安全管理等の措置について、派遣元事業主の雇用する通常の労働者との均衡を図ることとするという内容を補足するものです。
次に、派遣先における施設の利用に関する配慮です。これにつきましては、下線を引いている箇所が今回追加している箇所です。派遣先指針におきまして、派遣労働者が利用することのできる施設についての配慮の具体的な例等について追加しています。これらは、派遣先が設置及び運営しているものについてということです。
続きまして、7ページをお開きください。派遣先から派遣元への待遇情報の提供の内容です。まず、待遇情報を提供すべき比較対象労働者についてです。派遣先につきましては、契約の締結に当たりまして、比較対象労働者の情報を派遣元に提供することとしていますが、比較対象労働者については、法律の第26条第8項におきまして、派遣先に雇用される通常の労働者であって、業務の内容等、それに伴う責任の程度といった、職務の内容と職務の内容・配置の変更範囲が派遣労働者と同一であると見込まれる者など、派遣労働者と待遇を比較すべき労働者として省令で定める者とすることとしています。
その内容については、まず、(1)の職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が派遣労働者と同一であると見込まれる通常の労働者というのが1つです。2つ目は、こういった労働者がいない場合は、職務の内容が派遣労働者と同一であると見込まれる通常の労働者がこれに当たるというものです。3つ目ですが、こういった方々がいない場合は、これに準ずる労働者を比較する対象とすることとしています。この場合の通常の労働者というのは、必ずしも1人である必要はないということで複数人あるいは雇用管理区分、過去1年間に雇用していた労働者(モデル)なども想定しています。
また、(3)につきましては、(1)、(2)に相当するパート、有期雇用労働者、そういった方もいないような場合につきましては、新規に通常の労働者を雇い入れる場合の当該労働者がこれに当たると考えておりまして、こういったことについては、業務要領などで示すことを考えています。
続きまして、8ページを御覧ください。派遣先から派遣元への待遇情報の提供の具体的な内容です。まず、契約前に派遣先から派遣元に情報提供すべき事項につきましては、省令で規定することとしています。適用すべき条項につきましては、2つに場合分けをさせていただいています。まず、(1)のように、協定対象労働者に限定しない場合、つまり、派遣先均等・均衡方式の労働者が契約の対象となることを想定する場合の、提供すべき比較対象労働者の待遇情報です。イは、職務の内容、職務の内容と配置の変更範囲、雇用形態。ロは、比較対象労働者を選定した理由。ハは、待遇のそれぞれの内容。ニは、待遇のそれぞれの性質と待遇を行う目的。ホは、待遇のそれぞれについて、待遇決定に当たって考慮した職務の内容、職務の内容と配置の変更範囲等の事情。これらについて、情報提供をすることとしています。
次に、(2)のように、協定方式に限定することを派遣契約に定める場合につきましては、教育訓練の内容、福利厚生施設の内容と、これがない場合はその旨を記載することとしています。これらについては、具体的にどのような情報を提供するか、様式あるいはその記載方法を示すなどして周知を図ってまいりたいと考えています。
次に、9ページです。情報提供につきましては、書面の交付などによって行いまして、派遣元は当該書面等を、派遣先はその写しを、派遣終了後3年間保存するというものです。
続きまして、10ページを御覧ください。派遣先は、比較対象労働者に関する情報に変更があったときは、遅滞なく書面の交付等により情報提供を行わなければならず、書面等やその写しについて、派遣元と派遣先は派遣終了後3年間保存することとしています。下ですが、協定対象労働者に限定しないことを定めました契約に基づいて派遣が行われている場合は、その中に派遣先均等・均衡方式の労働者がいない場合については、情報提供は不要としています。ただし、新たに派遣先均等・均衡方式の労働者が含まれることとなったときには、派遣先は遅滞なくその情報を提供しなければならないこととしています。また、教育訓練あるいは福利厚生施設に関わる情報については提供する必要があります。
続きまして、11ページをお開きください。派遣契約が終了する日の前1週間以内の変更で、変更を踏まえた待遇の変更がなくても法の規定に違反せず、かつ、情報の提供を要しないものとして派遣契約で定めた範囲を超えないような変更が生じた場合は、情報の提供は不要とするものです。
続きまして、12ページです。派遣先の通常の労働者の待遇等に関する情報につきましては、賃金等の個人情報も含まれますので、法に基づく秘密保持義務の対象とすることとともに、個人情報に該当する情報の保管又は使用につきましては、待遇の確保等という目的の範囲に限られること、また、個人情報でない情報の保管や使用につきましても、同様に適切に対応することを派遣元に求めることとするものです。
13ページです。派遣先均等・均衡方式の待遇の相違の内容と理由の説明についてです。派遣元におきましては、派遣先から提供を受けた情報に基づきまして、待遇の相違の内容と理由について説明することを、一番上の指針に定めることとしています。その下は、待遇の相違の内容についてです。派遣元事業主につきましては、派遣労働者と比較対象労働者との間の待遇の相違の内容として、(1)と(2)に掲げる内容について説明することとするものです。(1)は、待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した事項の相違の有無、(2)は、待遇の個別具体的な内容又は待遇に関する基準について、説明することとするものです。派遣元は、待遇の相違の内容の説明に当たりましては、職務の内容、職務の内容と配置の変更範囲等の事情のうち、待遇の性質や目的に照らして適切と認められるものに基づきまして、待遇の相違の説明をすることとする、と指針に盛り込みます。
14ページをお開きください。説明につきましては、資料を活用し、口頭により説明することを基本とします。ただ、説明すべき事項を全て記載した、派遣労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、当該資料を交付する等の方法でも差し支えないこととするものです。
続きまして、15ページです。労使協定の場合の待遇の相違の内容と理由等の説明についてです。派遣元事業主は、協定対象労働者の賃金が協定で定めたもので、この定めによる公正な評価に基づき決定されていることについて、派遣労働者に対して説明するというものです。協定対象労働者の待遇が、派遣元の通常の労働者との間に賃金や教育訓練、福利厚生施設を除き不合理な相違が生じないように決定されていることについて、派遣労働者に対する説明の内容に準じて説明することとしています。この説明につきましては、派遣先均等・均衡方式と同様に、資料を活用して、口頭により説明することを基本とすることなどとしています。
続きまして、16ページをお開きください。待遇の相違の内容や理由等の説明についてです。比較対象労働者の情報が変更された場合は、変更部分について、派遣先から派遣元に待遇情報を提供することとしておりますが、派遣労働者についても、求めがない場合でも、比較対象労働者との間の相違の内容と理由について情報提供をすることが望ましく、法により措置をすべきこととされている事項に関する決定に当たって考慮している事項に変更があったときは、その変更内容についても、同様であることを定めるものです。
17ページをお開きください。その他の労働者派遣法に関する改正事項についてです。まず、あらかじめ関係者に知らせることが適当であるものとして省令に定める事項に、協定を締結しているか否か、締結している場合の対象労働者の範囲と有効期間の終期を追加することとするものです。これらの情報提供に当たっては、常時、インターネットの利用により広く関係者、とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすることを、派遣元指針に記載するものです。
続きまして、18ページを御覧ください。派遣契約の記載事項に、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度や協定対象労働者に限るか否かについて、省令で追加するものです。また、責任の程度につきましては、派遣元管理台帳や派遣先管理台帳の記載事項にも追加します。責任の程度について、どういったことを記載するかについては、今後、具体的な内容を様式等でお示しする予定です。
19ページを御覧ください。派遣元は、雇入れ時にあらかじめ労働者に対して文書の交付等の方法により労働条件に関する事項を説明し、法に定める措置の内容を説明しなければならないこととしています。明示すべき労働条件につきましては、労働基準法に基づく省令で定める事項としておりまして、この事項につきましては、昇給、退職手当、賞与の有無、協定対象労働者であるか否か、協定対象の場合は当該協定の有効期間の終期、苦情の処理に関する事項です。これらの内容については、事実と異なるものとしてはならないとしています。また、労働者が希望した場合は、ファクシミリを利用する方法や、電子メール等の記録を出力することで書面を作成することができるものによる方法で実施することが可能です。
説明するべき事項ですが、労働基準法に基づく省令で定める事項、あるいは、先ほど申し上げた事項を除く、法に基づいて構ずべきこととされている事項に関して構ずることとしている教育訓練などの措置の内容について説明することとしています。この説明は、書面の活用その他の適切な方法により行わなければならないとしています。
20ページをお開きください。派遣時に明示すべき事項について御説明させていただきます。法第31条の2第3項では、派遣元は派遣をしようとするときは、あらかじめ派遣労働者に対して文書の交付等により労働条件に関する事項を明示するとともに、派遣法に基づく措置の内容について書面の活用その他の適切な方法により説明しなければならないこととしています。明示すべき事項につきましては、雇入れ時に明示した内容のうち(1)~(6)に示した内容については、明示は不要としています。ただし、賃金、昇給、退職手当、賞与に関する事項については派遣時にも明示をすることとなります。なお、緊急の必要があるため、あらかじめ文書の交付等により明示が行えないような場合につきましては、文書の交付等以外によることができますが、派遣労働者から請求があったとき、あるいは派遣の期間が1週間を超えるようなときは、派遣開始後遅滞なく文書の交付等により当該派遣労働者に明示しなければならないこととしています。
続きまして、21ページです。先ほどの、第31条の2第3項の説明による内容について、書面の活用その他の適切な方法により行わなければならないこととしています。
次に、22ページをお開きください。調停の手続の規定です。これにつきましては、男女雇用機会均等法の施行規則の規定の一部を準用して所要の読替えを行うものです。
続きまして、23ページです。派遣料金に関する配慮義務ですが、この配慮義務は、派遣契約の締結又は更新のときだけではなく、締結又は更新された後にも求められるものであることを明示的に定めるものです。以上、少し長くなりましたが、御説明を終わります。
 
○鎌田部会長 どうもありがとうございます。それでは、今、御説明いただいた部分について、御質問、御意見がありましたら、どうぞ自由に御発言をお願いします。では私から。非常に正に知の結晶と言いますか、素晴らしい御努力を頂いて、こういうふうに出されたと思います。私は基本的なことで教えていただきたいことがあります。参考資料2の事業主が実施すべき実務の流れ(労働者派遣法関係)(イメージ)を中心に2点ほど御質問をしたいのですが、労使協定方式で過半数代表者の選出ということがあるのですが、これは労基法上の事業所単位ということですが、ここで言う過半数代表者の選出母体と言いますか単位は、どういったものですかね。これが質問の第1です。では1つずつ。
 
○古屋調査官 お答え申し上げます。労使協定の締結に当たっての過半数組合、それから過半数代表者についての単位ですが、これについては、派遣会社の特有の事情、様々な所に派遣すること等を踏まえ、企業単位とすることを認めることを考えているところです。
 
○鎌田部会長 分かりました。ありがとうございます。次に、これはやや複雑な質問かもしれませんが、前提として、今回いろいろ御説明いただいた均等方式、協定方式、これは基本的には派遣元と労働者の処遇に関わることだと思うのですが、派遣法は御存じのように、派遣先と派遣元の労働者派遣契約とこのような処遇がかなり密接に結び付いているということです。それは経済的に結び付いているだけではなくて、派遣法第26条で派遣契約と労働者の業務内容とか就業場所等については、言わば就業条件の明示と一致させる、明示をし、一致させるという方式を取っているわけですね。
そういったことから気になったことは、今回の均等方式あるいは協定方式の導入あるいは変更において、派遣契約の帰趨にどう影響を与えるのかということなのです。もう少し詳しく事例を申し上げると、例えば2年間の派遣契約を結んでいたとします。その1年目のところで派遣元で協定方式を導入したと。そうしますと、協定方式を導入して協定方式で処遇を決めていくのは、これは当然なことですが、その際、派遣契約はまだ契約期間が1年間残っているわけです。そうすると、2つの考え方ができると思うのですが、協定方式を導入して、必要な所掌の変更部分だけ変更すればいいのだという考え方と、いや、そもそも派遣契約自体もここでは一旦解消して、新たに締結し直してもらうということになるのか。その辺はどうなるのかということですが、どういうことになりますか。
 
○牛島課長 部会長の今の御指摘は、実務の絡みになってくるので、そこをどう整理するかはまだ明確には整理ができておりません。ただ、今でも派遣契約の内容が契約期間中に変わったときは、その該当部分について、変更の合意をした上で締結すればいいという形が確かあったかと思いますので、基本的にはその扱いにパラレルに沿っていくのではないかという感覚でおります。ただ、具体的にどうするというところについては、これは施行までの間に要領等で明確にしておくべき論点ではないかと思いますので、御指摘を受け、そこは整理をしてまいりたいと思います。
 
○鎌田部会長 分かりました。それについては私の意見を申し上げたいと思うのですが、今、課長がおっしゃったように、もし仮に再度、派遣契約を解消して締結し直すということになると、うっかりすると協定方式の導入が言わば派遣契約の解約理由になってしまうと。それは私の気持ちとしては、どう考えてもおかしいかと思うのです。そうするので、できれば今おっしゃったように、仮に契約の解消成立という方式を取るにしても、それはできるだけ言わば一部変更方式というのですか、それをしていったほうが、実務的にもあるいは労働者においても適切ではないのかという感じがしますので、そこは正に実務運用の細かな話になってくると思いますので、注意してください。
少なくとも今私が言いましたように、協定方式を導入したり、あるいはある程度、協定内容の変更等に伴って一旦派遣契約のリセットをするということで、それがリセットの理由になるというのですか、待遇を変える、改善することが、派遣契約のリセットの理由になるというのは、私などはややネガティブな気持ちを持っていますので、そこを改善してもらうのはもちろんいいわけですが、それは少なくとも派遣契約が継続している以上は、継続というか継続が期待されている以上は、それを安定化する方向で実務の取扱いを検討していただければと思います。
次に、均等方式の場合です。均等方式の場合は、比較労働者がいて、その比較労働者に合わせて均等方式を取るわけですが、また同じ話ですが、これは情報提供に関わることだけ、つまり元と労働者の間の労働条件を決定する場合に、何を基準、目安とするかというだけの話なので、比較対象者が仮に変更したとしても、それが派遣契約の内容に影響を与えるということは、基本的にないと理解してよろしいのかと。理屈で言うと余り関係なさそうにも思うのですが、でも今思い付きで言っているので、もしかしたら、そうとも言えないところが出くるかもしれないので。もし、そうだとすれば、今私が意見として言ったところで、改善のために比較対象者が変更になるとか、あるいは今までいなかった比較対象者がいましたということであった場合には、仮にそれが派遣契約に影響する、帰趨に影響するとしても、それはあくまでも雇用の安定、あるいは派遣契約の従前の期間が安定的に推移することを見据えながら、こういった変更についても対応していくことがいいのではないか。
ただ、実務的にどう仕組むかは、これは実務家が実務においていろいろ考えなくてはいけないことかと思います。例えば従前の契約に変更部分だけ届け出て合致させるとか、契約書の作り方とか、それはいろいろあるかとは思いますが、そう考えたらどうか。これは恐らく業務取扱要領などで、もしかしたら今言ったようなことが書かれるとすれば、そこも併せて実務の方と実務の意見を聞きながら決めていただければ有り難いと思っております。
 
○牛島課長 今の部会長の御関心の部分については、法律に基づく派遣契約の契約事項では、特に賃金に関することとか、料金に関することは位置付けられていないので、比較対象労働者が変わったからといって、法律上は派遣契約を変えること自体は生じないはずなのです。ただ、個別の契約においては、その派遣契約の中で料金を書いてあったりとか、そういったことも可能性としてはあるので、そのときは場合によっては、当然、当事者の合意によってではありますが、その部分は書き換えていただかなくてはいけないというところはあろうかと思います。それだからといって、派遣契約自体を全部リセットして新しく作り直してくださいというのは、そこは契約関係の安定性を確保する観点からは、例外的に扱うべきなのではないかという感覚を持っています
 
○鎌田部会長 ですから、いずれにせよ、一部変更前に更改というのですか、全く債権・債務関係を変えてしまうということでもいいのです。ただし、それは今言ったような言わば基本方針、つまり安定を図るという基本方針の中で、実務的にいろいろな工夫でできることだと思うのです。私が心配しているのは、そのことを解約理由にされると、これは何かおかしいかな、あるいは様々な、言わば労働者の不利益に当たるような派遣契約が結ばれる、不利益といっても労働条件の変更について書くわけではないのですが、その辺は、これは法律論ではないかもしれませんが、御留意いただければと思っています。取りあえず私のほうは。あと、また、あれかもしれませんが。
 
○村上委員 先ほど、鎌田先生から、当初は派遣労働者の待遇決定の方式が派遣先均等・均衡であったけれども労使協定方式に変更した事例について、待遇方式の変更が労働者派遣契約の解約に直ちに結び付かないよう検討いただきたいというお話がありました。その検討をされるときは、逆のケースも考えられると思っていて、当初は労使協定方式であったけれども、労使協定の有効期限の1年が経過した際に何らかの理由で労使協定を更新できなかったときに、派遣先均等・均衡になるというケースも考えられるので、両面をお考えいただければと思います。
 
○鎌田部会長 あと思い付きで申し訳ないのですが、この協定方式、この新法の施行は平成32年4月ですよね。
 
○牛島課長 はい。
 
○鎌田部会長 ただ、その施行前に締結された派遣契約も適用対象になるのですよね。
 
○牛島課長 はい、そのとおりです。
 
○鎌田部会長 そうすると、当然、協定方式を取ったと、そこでまた先ほどの議論と同じ場面が出てくるわけですよね。ですので、多分、私は今、特に特定して言っているわけではないのですが、取りあえずその時期に噴き上がってくる問題かもしれないので。
 
○牛島課長 おっしゃるとおりで、部会長が御指摘のとおり、平成32年4月1日施行で、そこの時点で協定に切り替わる方もいらっしゃいますし、先ほどの均等・均衡方式でいく方、会社もあるかと思いますが、その時点である意味節目の1回目が来ますので、そういった節目が来ますということは、事前にきちっと周知をした上で必要な準備はしていきたいと。その際には、先ほどの村上委員からの御指摘も含めて、そこの時点で存在する派遣契約は、基本、どう扱われるべきかというところも、何かの形で考え方を示していく必要はあるかと思いますので、そこはまた改めて事務方で整理をしてみたいと思っております。
 
○正木委員 今の点について、施行日以降に新たに締結される契約からだったらいいのですが、どうもそうではないということですね。今、現にある契約でも2020年4月1日を超えるものも場合によってはあると思うのですが、その場合も2020年4月1日から施行になるということですね。
 
○牛島課長 はい、そのとおりです。
 
○正木委員 そのときに施行日をまたぐ派遣契約の場合は、均等・均衡方式になるのですか。労使協定方式もあり得るのですよね。
 
○牛島課長 今の正木委員の御指摘ですが、労使協定方式が施行日時点で存在するのであれば、施行日時点で同時にその協定は法律上の効力を持つことになりますので、協定方式が適用される可能性はあります。ただ、そのためには、事前に法律上の要件をあらかじめ考慮した上で満たす協定を、過半数組合ないしは過半数代表者との間で締結いただくところが前提になってまいります。
 
○正木委員 そうすると、情報提供がされないうちに派遣契約は締結されてはいけないという形になっているわけですが、またぐ契約を締結する場合には、施行日よりも前に派遣元に対して情報提供をすることが求められるということですか。
 
○牛島課長 細かい条文なのですが、そこの部分については附則において経過措置が設けられております。何かと言いますと、要は、基本的には契約が締結されている場合は、施行日時点で待遇情報を提供してくださいという義務が、派遣先にはまず掛かります。ただし、その行為を施行日前に既にやっているのであれば、それは施行日時点において、その義務は果たしたものとみなすという規定がありますので、要はあらかじめ準備のために待遇情報を提供しておいていただく、そこは運用として可能ですし、それをやっていただければ、わざわざ施行日時点に出さなくとも、法律上の要請は果たす形になっております、少し分かりにくくて恐縮ですが。
 
○正木委員 派遣先の人たちは2020年4月1日が施行だと思っているわけですが、今、既にある契約についても、いきなり人材派遣会社から、「いや、提供してください」と明日にでも言われる可能性があると。
 
○牛島課長 施行日をまたぐ場合だと思われますので、恐縮ですが、派遣契約は大体3か月、6か月というところを考えてまいりますと、今、正木委員が御指摘されているような事態が今日、明日に起こるかと言われると、そこは考えづらいのですが。
 
○正木委員 来年4月1日以降だったら結構ありますよね。
 
○牛島課長 2020年の年明けとか、更にもう少し前ですね、2019年10月ぐらいからですと、派遣契約6か月ということであると施行日に掛かってくる場面が出てきますので、そこら辺から派遣会社が、もし待遇情報の提供を頂けるのであれば、あらかじめ提供を頂きたいという動きを取り始めるのではないかと思っております。ですので、そういった仕立てになっているというところを、きちっと周知の中では、私どもとしては労働局を通じてやっていく必要はあると考えておりますので、分かりやすい周知というところについて少し意を配ってまいりたいと思っております。
 
○正木委員 一方で派遣会社は求めてくるけれども、施行日より前だから、「何ですか、それ、そんなの出せませんよ」という反応をして、派遣先が出さなくても、施行日前だから、それは構わないと。
 
○牛島課長 施行日前だから出さないのは、それは構わないのですが、どちらにしても2020年4月1日時点では出していただく義務が、これは生じます。それを4月1日の時点でお出しされるのか、準備のために時間が掛かるということで、もう少し前段階から出していただけるのか、そこは元・先との関係でやっていただければいいのではないかと思っております。
 
○正木委員 そうすると、派遣日をまたいだ派遣契約がまずあって、4月1日になったら「分かった、出す」と言って派遣先が情報を出した場合、それは提供した情報に変更があったというのと同じ扱いですか。
 
○牛島課長 今、恐らく先均衡方式をイメージしているのではないかと思うのですが、そこの時点で出てきたら、そこは逆に言うと、派遣元においては、その待遇情報を基に、もしそのままでは派遣先の通常の労働者との間で均等・均衡が取れないということが生じるのであれば、では、そこで改めて派遣元の処遇を見直さなくてはいけない。そのためには、場合によっては原資が不足するので、派遣料金を派遣先に交渉しなくてはいけない。そういったことを作業としては短期間でやっていただかなくてはいけなくなるので、極力その作業を前め、前めにやっていただくという意味では、事前に派遣先から派遣元への待遇情報の提供はやっていただくほうが、望ましいのではないかと思っておりますし、恐らく派遣会社もそれを想定しながら、個別の契約の中ではいろいろと動きを取っていくのではないかと思っております。最後、待遇情報をいつの時点で出すのかは、それは派遣先の御判断が一義的には軸となりますが、そういった直前になればなるほど、いろいろなところでのどたばたが生じてしまうというところは、併せて御留意いただく必要があるのではないかと思っております。
 
○正木委員 また後で労使協定方式は、スケジュールの説明があるかと思いますので、協定方式のほうは後にします。
 
○鎌田部会長 私も聞きたいことがまだほかにもありますが、取りあえずよろしいですか。今、説明いただいた部分については、よろしいですか。また戻っても結構ですので。
 
○佐久間委員 今日は御報告ということですから、同一労働同賃金部会で、どういう協議があったかを教えていただきたいのですが、資料3の2ページに「労使協定の対象とならない待遇」があります。ここの記載は、当然のことと言えば当然の例になるからだと思うのですが、基本的に労使協定にこの項目も記載はする必要がないのか、記載をしても別に差し支えない、「任意記載事項」のような項目として記載しておけば、それによってまた効力が出るのではないかと思うのです。明確にするためにも、記載おくのもいいのではないかとか思ったのですが、これがどうして対象とならないのか、記載をしてもいいのではないかというのが疑問でありました。教えていただきたいと思います。
それから、資料3の14ページの右側の「指針」に、「派遣元事業主は、派遣労働者が説明の内容を理解することができるよう、資料を活用し、口頭により説明することを基本とすること」とあります。使用者側は口頭で説明すれば十分なのか。これは資料に基づきというのがありますが、だから口頭だと不安だとかというのがベースにあって、明確にしたいというときには、もちろんそれでもいいのかもしれませんが、この「口頭」ということで分科会でも何か議論があったかどうかを教えていただきたいと思います。
あと、比較対象労働者の数ですが、均等・均衡の待遇の形で比較対象労働者を選出するときに、大きな職場ではなく、中小企業の場合、本当に小さい職場ですと、人も出せないという形で、対象者がいないという場合もあるかもしれません。それで、無理やり対象者を選定することも考えられます。その場合、また大きい事業所と小さい事業所があって、大きい事業所の場合などは、業務によっても幾つかの種類みたいなのがあって、もちろんそれも出さなくてはいけないかもしれませんし、経験年数的なもので後から出てくる経験の賃金の差というものもあるのかもしれない。職務の種類によって対象者を複数、例えば3名とか、4名とか選出していって、それのまた平均値を取るとか、また、経験年数に応じた方がいれば一番いいのですが、そこまで人がいないというときに、職務に応じて人数的なものはどう考えていけばいいのか、教えていただきたいと思います。

○古屋調査官 幾つか御指問を頂いたところです。1つ目は、教育訓練と福利厚生について、協定に定めるというのは可能かどうかというところですが、これについては、必須的な事項ではないという形ですが、協定に定めていただくことも可能だと考えております。ただ、派遣先の均等・均衡待遇なので、派遣先の情報がないと、定めるのがなかなか難しいところですので、この協定の義務からは外しているところです。
2つ目の口頭の部分ですが、これは国会でも議論があったところでして、ペーパーだけではなかなか不安な部分もあるということで、資料を用いて口頭で説明することを基本とすると定めているところです。
あと、比較対象労働者の人数ですが、これは今後の運用に関わってくるのですが、小さい職場だとなかなか難しいところもありますので、例えば過去に来られた方はこうだとか、そういう形ですと、御本人の情報を特定する形にならないというところもありますし、様々なやり方はあると思いますので、また今後検討させていただければと思います。
 
○牛島課長 3点目の複数の人の平均を取るというところについては、比較対象労働者の選び方が別途省令で書かれており、そこの区分に属する方で候補者が何人かいるということであれば、その方の平均を取って出すというところについても、それが職務内容であるとか、職務内容・配置の変更の範囲が近いというところがあって、その方が複数いる、そうすると、その方の平均がどうなのか、それが大体のモデル的な労働者というイメージになってくるのかもしれませんが、そういったところで出すことも許容はされます。運用の中でどうするかは少し整理をしていきますが、多分こうではなくては駄目だというところまでやってしまいますと、実務はなかなか回っていかないと思いますので、そこはある程度柔軟性も持たせながらやっていただくのかと考えております。
 
○鎌田部会長 よろしいですか。ほかにありますか。
 
○村上委員 2点あります。
1点目は、派遣労働で働こうとする人たちが派遣会社を選ぶときや、どの仕事で働こうかとリサーチするときには、待遇決定方式が派遣先均等・均衡なのか労使協定方式なのかが分かることは重要だという話を部会ではしていて、何らかの方法で示したほうがよいという話になったと思います。今回、派遣元指針で書くという話と、別の方法としては、職業安定法の求人時の労働条件明示の関係で職業安定法の指針で何か書けないかというやり取りが、建議前の部会ではありました。この扱いは、その後どうなったのでしょうか。施行まで時間もあるので、併せて検討いただきたいというのが意見で1点目です。
2点目は、先ほどの佐久間委員の御指摘の2つ目についてです。具体的には、派遣労働者に対する待遇の相違等の説明は「口頭により説明」という部分です。この点は労働側としても、口頭説明だけだとやはり派遣労働者が分からないのではないかということは、かなり申し上げているのです。ただ、資料だけだと分からないではないかなど、いろいろな議論の中で、「資料を活用し、口頭で説明」という結論に落ち着きました。口頭で言われただけでは分からないのではないのという意見は、国会でもかなりありました。派遣元・派遣先にとっても、口頭だけだと、後で「言った」「言わない」という話になるので、やはり何らかの資料があったほうが望ましいということは、労働側としても申し上げてきたことです。
 
○牛島課長 1点目の村上委員からありました件については、建議に至る過程で御指摘の御議論はありました。今日の資料でいくと17ページですが、今の求人条件時、あと派遣会社をどこにするのかを考えるとき、そういったことについて、要は協定があるのかないのか、その協定の期間はどれぐらい有効かについては、今で言うマージン率と同様に、これは人を採る、採らない、派遣会社が採る、採らないに関わりなく、一般に派遣会社として開示してくださいというところで網を掛けているつもりです。これをきちっと運用していけば、この派遣会社が協定を持っている所か、持っていない所か、採るときにはどういうことになるかというところも、確認ができると考えておりますので、そこで担保をさせていただいたというのが私どもの考え方です。
 
○鎌田部会長 よろしいですか。ほかにございますか。なければ次の御説明に移ってください。
 
○古屋調査官 続きまして同一労働同一賃金のガイドラインについて御説明いたします。資料4に沿いまして御説明いたします。このガイドラインについては、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇差が存在する場合、いかなる待遇差が不合理で、いかなる待遇差は不合理でないかといったものを示したものです。御案内のように、昨年3月29日の働き方改革実行計画の策定の際に公表したガイドライン案を基に、労働政策審議会同一労働同一賃金部会において御議論いただいたところです。ガイドラインの基本的な内容については、有期パートの部分については、ガイドライン案と同様という形で、派遣労働者についても、法改正の内容を踏まえて記述を追加することとしているところであります。資料の中の1、2ページの目次で示しておりますように、目的と基本的な考え方を示しまして、短時間・有期雇用労働者、派遣労働者、それから協定対象派遣労働者について、対応すべき事項を記載しているところです。ガイドライン案については、目次を御覧いただければ分かりますけれども、基本給などの賃金だけではなく、福利厚生などもカバーしているものです。構成としては、原則となる考え方を示しまして、問題となる例、問題とならない例を示しております。この間には一概に決めることができないなどという部分がありまして、最終的には裁判において判断されることになります。
具体的な内容について、かいつまんで御説明させていただきます。まず2ページ目の第1の目的の第2パラグラフを御覧ください。今回、派遣労働者についての記述も追加したところです。派遣労働者については、間接雇用という特性がありますので、短時間・有期雇用労働者とは異なりまして、派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者との間の差別的取扱いの解消を目指すべきものということとして記載しているものです。また、協定対象派遣労働者にありましては、派遣法の規定により決定された事項に沿った運用がなされることとしているところです。
続いて、3ページの第2の基本的な考え方の部分を御覧ください。この基本的な考え方の所にありますが、事業主が第3から第5までに記載された原則となる考え方に反した場合については、待遇の相違が不合理と認められる等の可能性があります。この指針に原則となる考え方が示されていない退職手当、住宅手当、家族手当の待遇だとか、あるいは具体例に該当しないような事項についても、不合理と認められる待遇の相違の解消が求められるところです。このため、各事業主において、労使により個別具体の事情に応じて待遇の体系について議論をすることが望まれると記載しているところです。
第2のパラグラフです。正規雇用労働者の中に幾つかの雇用区分がある場合については、非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消が求められている部分というのは全ての雇用区分でありまして、そのため意図的に低い待遇の正規雇用労働者の区分を設けて、その区分と非正規労働者との均等・均衡を確保したとしても、その他の正規との均等・均衡も必要であるということを盛り込んでいるところです。また、職務分業をした場合であっても、不合理と認められる待遇の解消を行うという必要があるところです。
続いて4ページの第1パラグラフを御覧ください。今回の同一労働同一賃金の趣旨については、非正規の待遇の改善ですので、正規雇用労働者の待遇を引き下げるということで、不合理な待遇差を解消することは望ましくないという旨を記載しているところです。
続いて4ページ目以降ですが、指針案のうち、派遣労働に関する部分、第4の派遣労働者と、第5の協定対象派遣労働者の区分について、記載しているところです。先ほど申し上げましたように、短時間・有期雇用労働者の考え方を踏まえまして、内容を整理しているものですので、短時間・有期雇用労働者の部分と、対比表の形式で示させていただいているところです。右側の短時間・有期雇用労働者の記述を見ながら御確認をお願いできればと思っております。4、5ページ目の内容ですが、こちらについては、労働者派遣法での派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の考え方をそれぞれ示させていただいているところです。内容については、法律の内容と重なっておりますので省略させていただきます。
続いて6ページ目以降ですが、基本給についての記載です。これについては、それぞれケースを分けて書いているところです。基本給については、趣旨、性格が様々ですが、趣旨、性格に照らして、違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求めるというのが基本的な考え方となっておりまして、それぞれの基本給等について記載をしているところです。派遣先で雇用される通常の労働者と派遣労働者で支給基準が同じ場合、実態に違いがなければ同一の、違いがあればその違いに応じた支給を求めているところです。また、昇給については、基準は様々ですが、例えば正規とパート、有期ともに勤続による能力向上を評価して昇給を決めているのであれば、パート、有期についても同じ能力向上が見られるのであれば、同じように昇給を、能力向上に違いがあるのであればその違いに応じた昇給を求めているところです。具体的には第1の(1)で能力又は経験に応じて基本給を支給するような場合について述べているところです。
続いて8ページの(2)ですが、業績又は成果に応じて基本給を支払うケースについて記載しているところです。
飛びまして10ページ、(3)で勤続年数、派遣先における就業期間に応じて支給するものについて記載しているところです。11ページ、昇給の記載ですが、昇給であって、派遣先における派遣就業の継続による能力の向上に応じて昇給する場合について、記述をしているところです。派遣先に雇用される通常の労働者と、派遣労働者との間に賃金の決定基準・ルールの相違があるような場合、例えば正規は職能給、パート、有期は職務給というような場合について、11ページの注の所にありますが、職務の内容、職務の内容及び配置変更の範囲、その他の事情の客観的、具体的な実態に立ち返りまして、不合理でないということが求められるものです。その際、こちらに書いてありますが、将来の役割期待が異なるというような主観的、抽象的な説明では不十分であるというものです。
続いて12ページです。派遣労働者の部分に記載がない部分ですが、右側の所で、短時間・有期雇用労働者については、長澤運輸事件の最高裁判決を踏まえまして、定年後再雇用について、その他の事情として考慮され得るが、そのことのみをもっての待遇差は不合理になる、認められるものではないということを記載しているところです。
続いて13ページの賞与についてです。賞与については、派遣先の業績等への労働者の貢献に応じて支給するような場合については、同一の貢献に対しては同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求めているところです。
続いて15ページです。3の手当についてですが、内容や性質に応じて取扱いが異なっているところです。まず(1)の役職手当については、同一の役職に就く労働者には同一の、役職の内容に一定の相違がある場合には、その相違に応じた役職手当を支給することとしているところです。続いて16ページの(2)、(3)の特殊作業手当、それから18ページの(4)の精皆勤手当、(5)の時間外の割増率、19ページの(6)の深夜労働又は休日労働に対して支給される手当、(7)の通勤手当と出張旅費、20ページの(8)の食事手当、21ページの(9)の単身赴任手当、(10)の地域手当等については、支給要件に該当すれば同一の支給といったものを求めているところです。
続いて22ページをお開きください。福利厚生についてです。給食施設、休憩室、更衣室といった福利厚生施設、転勤者用社宅、慶弔休暇、それから病気休職、法定外休暇等については、要件に該当すれば同じように利用や付与を求めているところです。23~25ページに具体的な内容について記載しているので、御確認ください。
次に5のその他のうち、(1)の教育訓練についてですが、現在の職務に必要な技能、知識を習得するためのものに限りますが、派遣先は派遣元からの求めに応じて、同一の職務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を求めているところです。教育訓練については、派遣元事業主についても、派遣法に基づく義務を逃れるものでない、ない旨記載しているところでして、段階的かつ体系的な教育訓練を実施することとしているところです。(2)の安全管理については、同一の業務環境に置かれている労働者には、同一の安全管理に関する措置と給付をすることとしているところです。法定の義務である、派遣法の第45条等の規定に基づく安全管理に関しましては、派遣先と派遣元双方で履行することについても記載しているところです。
最後に第5の協定対象派遣労働者についてです。賃金については、同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として省令に定めるものと同等以上としています。賃金の決定方法についても、協定対象派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験、その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に、賃金が改善されるものでなければならないこととしておりまして、賃金決定に当たっては、これらを公正に評価することとしているところです。2の福利厚生については、(1)の福利厚生施設は派遣先に雇用される通常の労働者との同一の利用を認めることとしまして、(2)の転勤者用社宅、(3)の慶弔休暇や健康診断に伴う勤務免除等、(4)の病気休職、(5)の法定外の有給の休暇等は、派遣元に雇用される通常の労働者との同一の対応とすることとしています。パート、有期と派遣については、同様の考え方に基づきまして、派遣先の労働者との均等・均衡を考慮したものが求められるというのが基本ですが、労使協定方式の場合については、賃金は労使協定に基づきまして、賃金以外の待遇については、派遣元の労働者との均等・均衡を考慮したものが求められているというものです。
3のその他ですが、この中で(1)の教育訓練については、現在の職務に必要な技能、知識を習得するためのものに限りますが、派遣先は派遣元からの求めに応じて同一の職務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を求めているところです。教育訓練については、派遣元事業主についても、派遣法に基づく義務を逃れるものではない旨記載しているところです。(2)の安全管理に関する措置及び給付についてですが、これについては、派遣元の雇用する通常の労働者と同一の業務環境に置かれている労働者には、同一の安全管理に関する措置と給付をすることとしているところです。法定の義務である派遣法第45条の危険に基づく義務については、先ほど来、申し上げていますように、派遣先と派遣元双方で履行するということについても記載しているところです。以上です。よろしく御審議いただくようお願いします。
 
○鎌田部会長 どうもありがとうございます。それでは、今御説明いただいた部分について、御質問、御意見があれば自由にお願いいたします。
では、私から一言。様々な労働条件、処遇に関して、均等待遇ということで、いろいろな事例も挙げていただいて、分かりやすく説明されておりますので、それは非常に有り難いなと思っておりますが、個々の処遇に関してとは別に、制度に関わるものが、やはり均等待遇の事項として出てくる。例えば、一例を挙げると病気休職などもそうです。病気休職についても、派遣先において、そういう制度がある場合には、派遣元は当該派遣労働者についても提供しろということがガイドラインに書かれているのですが、これは通常で考えると、就業規則で病気休職というのは、単に病気休職に当たるというだけではなくて、その間の給料の問題だとか、言ってみれば復職するための様々なこととか、割といろいろ書かかれているわけですよね、単に休ませるというだけではなくて。そうすると、休職するというのはいいのですが、それは派遣元事業主に対して、このガイドラインの心としては、少なくとも受け皿になるような病気休職制度は用意してほしいという、そういったニュアンスなのですかね。それとも、正に個々の派遣先によって事情が違っているのだから、それは単に比較してそれが不合理であるかどうかのピンポイントの判断材料でしかないという考えなのでしょうか。その辺のところはどう考えればいいですか。
あるいはもっと私の問題意識を別の言葉で言うと、時間外手当についても、割増賃金についても、基本的には労基法に定めた計算方式で支払いなさいというのは、当然のことなのですが、派遣先がいわゆる固定定額残業代制を取っているような場合というのは、どのように、不合理性というのですかね。派遣労働者について、派遣元では通常に従った計算方式でやってますよという実態がある中で、いや、派遣先では定額制を取っているという場合にどうするのか。もしかしたら、通常の計算式のほうが。余り深掘りしないで、制度との関わり合いで、不合理性というのはどう捉えたらいいのですか。ピンポイントの目安でしかないのか、どう理解したほうがいいですか。すみません、何か初歩的な質問で。
 
○牛島課長 部会長の今の御指摘は、初歩的な御質問ではなく、非常に深い質問でございまして、事務方の理解としては、待遇の取扱いがそろっていればというところですので、派遣先と同じ仕組みや制度までを設けることを義務づけるものではないと考えています。制度があったほうが、恒常的にそろうという意味では望ましいのではないかと思っておりますが、そういった認識に立っております。その上で先ほど御指摘のありました、定額の残業代につきましても、端的に言いますと、あくまで同一の労働時間を行ったときは同じ割増率で賃金額を払ってくださいというような理解でありますので、派遣先が固定残業代を取っているので、じゃあ、派遣元も固定残業代を採用しなさいというところまでを求めるものではないとは認識をしています。どちらにしても、今申し上げているのは、制度までそろえなさいということではなくて、あくまで実務として派遣先が割増率30%でやっているのであれば、同じ所定外労働時間をやっている場合は、当然同種の業務をやっているという前提はありますが、同種の割増率で時間外労働については算定をしてくださいよというようなところを担保していければと思っております。派遣先が固定残業代を採用しているので、元も固定残業代を採用しなさいということを広げていくというところは、若干考えなければいけない別の論点があるのではないかと思っております。
 
○鎌田部会長 その点は私も同感なのですが、固定残業代をちょっと深掘りしますと、いわば労基法所定の割増賃金の計算でいくと、固定残業代のほうが手当としては大きい場合がありますよね。それで、恐らく定額分は支払われるということが普通だと。つまり、労働者にとってみると、定額分を取って得になる場合というのが出てきますよね。その場合に、今言ったように、元ではいわゆる労基法所定の計算式で出していますと言った場合に、固定残業代分を請求することができるのか、あるいはそれをもらえない場合は不合理ということになるのかというような。額の問題で。
 
○牛島課長 そういう意味で言えば、ガイドラインの立て付けとしては、同一の時間外の部分というのは18ページになってまいります。あくまで同一の時間外労働を行っているという前提がありますけれども、その時間外労働を行っている場合は、所定時間を越えた部分については、同一の割増率で支給してくださいよということになりますので、固定残業代を適用している結果、どういう算出方法になっているのかによって、派遣元においてもそれと見合うだけの割増率で算定をしてくださいということになってこようかと思います。そういう意味では、実態として、派遣先での同一の時間外労働が発生しているような場合に、一定額が出ているのであれば、それとある意味同等の額を派遣元は派遣労働者に出してくださいというところに帰結してくるのかなと。
 
○鎌田部会長 なるほど。正に今御説明いただいたのは18ページの(5)の御説明のとおりで、そうすると、固定残業代を採っていたとしても、基準法所定の計算式で出したものを出している限りは不合理とは言えないという、そんな感じなのですかね。
 
○牛島課長 待遇の取扱いを揃えていただく必要があり、計算方法も完全に揃えるまでは行かずとも、実質的に同等の取扱いになっていることが必要ということかと。
 
○鎌田部会長 そうすると、固定というのは制度としてあるけれども。でも、制度についても均等にするという発想なのですよね、基本は。答えが分からないで言っているのだけれども。
 
○牛島課長 制度まで完全にそろえることを義務づけるものではないと考えています。要は派遣先の就業規則と同じ制度を全部、派遣元の就業ルールの中で書いてくださいというところまでは求めていない。それはいろいろな制度があって、然るべきではあるのですが、派遣先でこれこれの手当を出しているのであれば、それと同等の取扱いをしてくださいと。派遣先の制度と完全に揃えるというところまでを縛るものではないのではないかというふうに、私どもとしては考えています。
 
○鎌田部会長 そういう理解で。同一部会の中でも制度視点ではないということですね。
 
○村上委員 部会では、そこまで踏み込んだ議論はしていないと思います。制度と手当や給付の線引きは難しい部分があり、実務的に具体例を出していけば難しい部分があるのではないかと思います。部会では、2年前の12月に出されたガイドライン案をベースに、そこから事例の足し引きをせず議論をしました。ガイドライン案に記載がなかった詳細な事例について具体例を出して議論をしたかというと、そういう感じではありませんでした。
 
○鎌田部会長 でもこの出来たガイドラインで言っているのは、今の御説明のとおりだと思うのですよね。多分そういうことで、業務取扱要領も書いていくのかなという感じになるのだけれども。
 
○松浦委員 そこまで踏み込んだ議論はされていないかもしれないですけれども、私の理解では、今までも短時間労働者等に関する均等・均衡待遇という規制はあったわけで、制度で見るのか、待遇で見るのかというのは、これまでの考え方を踏襲して判断することになるのではないでしょうか。少なくともガイドラインの中で、制度を全部がっちり合わせるという議論はなかったとは思います。今までの考え方との整合性を確認しておいたほうがいいのではないかということで、補足させていただきました。
 
○鎌田部会長 余り深掘りするつもりはないのですが、まず今度の8条、9条があって、いわゆるパート法の9条、あれについては制度も均等なのですよね、多分。
 
○松浦委員 均等ですね。
 
○鎌田部会長 いわゆる給与規定まで含めて同一化するという発想なのですよね、9条については。だから、派遣でも正に内容から処遇から全部一緒であれば、制度も同じ制度でいきますよという発想なのだと思うのですが、今ガイドラインで出ているのは、そうではなくて、正に不合理性の評価の問題ですよね。
 
○牛島課長 はい。
 
○鎌田部会長 だから、それは違って、今議論しているのは、不合理性評価の部分で制度にまつわる部分がある場合にどのようになるのでしょうかねということなのではないですか。
 
○村上委員 松浦委員がおっしゃっていることと共通するのですが、部会ではそこまで踏み込んだ議論はしてません。ただ、制度までそろえなくてもいいという話かというとそうではなく、司法判断の中でいろいろ事例が積み重ねられていくだろうという理解でいます。ガイドラインは、労使で待遇を考える上で一定程度参考になるものを示したという位置づけなのだろうということを、岩村委員が部会の中でおっしゃっていたと思います。派遣労働者だけでなく短時間・有期雇用労働者に関しても、職場で均等・均衡待遇をはかるときには、例えば、休業制度であっても、上乗せの給付や、取得要件などの制度を少しずつそろえていって、均等にするというようなことをやっています。
ですので、派遣労働者に関して、均等待遇はやらなくてもいい、ということまで書かれてしまうと、均等・均衡が進まないのではないかというおそれもありますので、慎重に御検討いただければと思います。
 
○牛島課長 今の御意見、審議を踏まえまして、松浦委員の言われるとおり、均等・均衡、パート・有期法の先行している整理というものがあるはずですので、そこも押さえながら、考え方を整理していきたいと思います。大変失礼いたしました。
 
○鎌田部会長 どうもありがとうございます。この部分につきまして、ほかにございますか。
 
○佐久間委員 今回の指針については、この均等・均衡という考え方が根本で、これを理解しないとなかなか各項目の内容というのが、規模の小さい企業では、わからないのではないかと思います。また、これは派遣元、派遣先についてもちょっと分かりにくいかなというのは感じるところです。このような状況の中で、これから、ガイドライン、指針ができて、その後、派遣元への周知で、パンフレットなども分かりやすいものを作っていかれるのでしょうけれども、実際にパンフレットを作って、具体的にどういう形の普及を考えているのか。また、先ほど議論になっていましたが、例えば、この指針が4月1日から適用されるとき、もう一回金額を見直すんだというときに、すぐ受入れを変えなければいけないとか、また労働者なり、企業にとっても、多分、この均等方式なり労使協定という形になると、金額というのが、例えば今まで通勤手当が排除されたとか、いろいろな意味で高くなってくるおそれもあると思います。賞与をその期間に中小企業は払っていなかったとか、又は払うことができなかったとか、それから、退職金についてもある、ないというのもあると思います。それも次の資料の議論になってしまいますが、そういうものを全部加味しなければいけないとなると、制度を導入して1つずつ説明していくのがすごく負担、あとは事業者にとっても重荷になるかなというところを感じるのですが、その辺の考え方を教えていただきたいと思います。
 
○牛島課長 今佐久間委員が御指摘の件は、同一部会の中でも非常に労側、使側の双方から御指摘があったという点でございます。御案内のとおり、今、関係者を交えての意見交換をしながら手引書の作成をしているところですので、そういった中で、現場の実態、実務をよく御存じの方の意見も踏まえながら、導入に向けての手引書の作成をし、当然のことながら作っただけではなくて、労働局、若しくは47都道府県にある支援センターでしたっけ。
 
○吉村室長 働き方改革推進支援センターです。
 
○牛島課長 そこでいろいろと周知をしていく、若しくは相談があったときには対応をしていくといったようなところで、進めていきたいと思います。
派遣につきましては、とにかく派遣先もさることながら、派遣元がきちっと認識をした上で、それぞれ派遣先に必要なアクションを起こしていくというところが重要だと思っておりますので、業界団体なども含めて、周知が行き届くように、そこは個別に働き掛けをしていきたいと思います。
 
○佐久間委員 実際、厚生労働省では、非常に今、働き方改革の関係の政策、施策がクロスしていますから、周知する項目とか、普及しなければいけない項目がかなり多くなってきている。そこの中で、各労働局は各部署単位に分かれているのですけれど、人数が足らない状況にあると思います。あとは、働き方改革推進支援センターなども、いろいろな項目がありすぎて、なかなか普及できないのではないかと思うのです。また、派遣事業者については自分の所のことだからということで、労側への周知と理解しようと努めていくのでしょうけれども、それでも今こうやって部会で許可を出しているというか、認めているときには、2万数千社以上、これだけのものが動きながらやっているわけですから、そこで大部分が中小企業となると、本当に規模が小さい、1人でやっている事業所が多い中で、そこまで理解ができるのか、4月1日に同時にスタートできるのかどうかというのが、不安なところがあります。
 
○牛島課長 業界団体もございますし、労側、使側、いろいろなツールを使わせていただいて、周知は一生懸命やっていきたいと思う、その一言に尽きます。もし、何か御示唆等々を頂ければ、私どもとしても対応してまいりたいと思っておりますので、是非よろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。まだ、もう少し資料もあるようですので、次に移ってください。
 
○古屋調査官 続きまして、労使協定方式の、同種の業務に従事いたします一般労働者の賃金水準と、それと比較する派遣労働者の賃金について、御説明いたします。資料5をお開きください。御案内のように、労使協定方式の賃金については、派遣先の事業所等の地域において、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者であって、派遣労働者と同程度の能力・経験を有する方の平均的な賃金額と同等以上としているところです。この賃金水準については、国会での附帯決議などを踏まえまして、職種別に賃金を把握できる政府統計として、賃金構造基本統計調査と職業安定業務統計を用いることとしています。これらの統計のうち、賃金構造基本統計調査については、賃金自体を表わしているものではあるのですが、全ての職種をカバーしているものではない。それから職業安定業務統計については、逆に全ての職種をカバーしているのですが、求人賃金であるということに少し留意が必要です。これから御説明します処理をした上で、対応していくということになります。
同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準についてですが、職種別の賃金の一覧表、これについては参考資料3-1と参考資料3-2で示しています。この一覧表と能力・経験調整指数、これについては同じ参考資料3-1と3-2の中に「注」で記載しています。これと地域指数ということで、都道府県別、ハローワーク別の数値、これは参考資料3-3で用意しています。これについては毎年、政府が時給ベースで公表するというものです。対応する個々の派遣労働者の賃金を時給換算した上で、これらの賃金を計算したものと同等以上かどうかというのを確認するところです。イメージとしては、この下の表で表しています。
賃金構造基本統計調査については、所定内給与と特別給与があります。これを合わせたものに能力・経験指数調整を掛けると、それに地域指数の調整を掛けるというものです。職業安定業務統計については、賞与は出ていませんので、一定の賞与指数というものを掛けて計算したものに、能力・経験の調整指数と地域指数を掛けるものです。これらについて※で書いてありますが、比較するのは同種の業務に従事する一般労働者ということで、同じ職種、同じ地域、同程度の能力・経験の無期雇用かつフルタイムの労働者というところです。能力・経験指数については、賃金構造基本統計調査の賃金の上昇率を基に出しています。先ほど申し上げましたように、賃金構造基本統計調査の勤続0年については中途採用者も含まれますので、学歴計の初任給との差12%を調整して、職業安定業務統計は求人賃金の下限を使用しているところです。職業安定業務統計については、特別給与額が分からないので賞与指数を掛けているところです。労使協定については、同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準と派遣労働者の賃金の両方の数字を明記していただくこととしています。退職金については、追って御説明をさせていただきます。
こうした処理をして出したものについて、まず出し方について御説明します。比較に当たっては、基準となる職種ごとの勤続0年の賃金を決めていただきます。具体例を申し上げます。参考資料3-1を御覧ください。例えば、1ページ目ですが、207 プログラマーがあります。こちらについては基準値(0年)が1,160円となっていますが、この右側の所に参考値(0年)(補正前)というものがあります。こちらは1,389円というもので、先ほど申し上げた所定内給与の0年を出すための処理ということで、学歴計の初任給との差を差し引いて出しているものです。
次に、こちらの中で、3ページを御覧ください。注3ですが、賃金構造基本統計調査について、通勤手当が含まれているところですので、他の調査を活用して通勤手当分として12%を引いたところから、71円を控除しているものです。注6にありますように、先ほど申し上げた能力・経験調整指数については、下に書かれているとおりの数字です。また、注7にありますとおり、計算の結果、最低賃金を下回る場合については最低賃金を用いるということを記載しています。
続きまして、職業安定業務統計での出し方です。続きで付いています、参考資料3-2をご覧ください。1/9と入っているのが最初のページです。こちらについては、求人賃金という性格を踏まえて、職種ごとに下限の平均を出しているものです。0年の所と参考値の所を、比較していただければと思います。こちらについては、右側は求人賃金の全体の平均で、左側は下限の平均を示しているものです。これについて、9/9と書いている所の注2で示しているように、サンプル数30未満の職業については、数が少ないということで「-」を記載しています。それから賞与については、先ほど申し上げたように指数を掛けるということで1.02を掛けています。注5ですけれども、能力・経験指数については、こちらの数字を掛けているというような計算をしています。先ほども申し上げたように、最低賃金を下回るような場合には、最低賃金を用いるとしています。こちらについては、基準値の0年目の数字が一番左で、これに基づいて経験年数指数を掛け、また地域指数を掛けて計算を進めていくということです。
資料5に戻ってください。局長通達でこういった統計を示していくことになりますが、これ以外を用いる場合として、賃構等でも把握できる職種と派遣労働者が実際に行う業務との間に乖離がある場合などに、いずれかの条件を満たせば局長通達で示す統計以外を用いることが可能としています。例えば公的統計であるということが1つ考えられるということと、もう1つは集計項目ごとに一定数以上の標本数を確保したような独自統計を実施するような場合、そういったものは使っても可能としているところです。
続きまして、退職金の計算の方法です。2ページを御覧ください。退職金については、3つの方法を労使の話合いで選択していただくような形となります。まず選択肢1ですけれども、退職手当の導入割合、最低勤続年数、支給月数の相場について、国が各種調査結果を示すこととしています。今回、調べて明らかになっている調査については、参考資料3-4に付けているところです。退職手当の導入割合等で、国が各種調査を示していたものの中から、いずれかを選択して退職手当制度を比較するというものです。例えば、点線で囲っているものですけれども、「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」について、(1)と(2)を満たした別表のとおり、一番下に入っている表のとおりとするというものです。退職手当の受給に必要な最低年数については、東京都の調査で最も回答割合が高かったものとして、3年としているというものです。それから退職時の勤続年数ごとの支給月数について、退職理由に応じて、通達に定めている東京都の調査の大卒自己都合、大卒会社都合それぞれの勤続年数別の支給月数に退職制度の導入割合を掛けた数字、上に書いてある表ですが、これを出していただきます。それを出したものと、実際の派遣会社の退職手当制度の平均支給月額を比較し、それを上回っていれば同等以上とするというものです。
選択肢2は、退職手当相当にかかる費用について時給換算して、派遣労働者の賃金に加算して、それと一般労働者の賃金水準に退職費用分を、大体6%程度ですが、これを上乗せして、その上で両者を比較するというものです。
選択肢3ですが、給与の6%以上で中退共やあるいは確定給付、確定拠出年金に加入しているような場合については、退職手当は同種の業務に従事する一般労働者と同等以上であると整理するものです。
こうした形で、賃金テーブル等を具体的に比較することとなりますが、3ページ目に具体的な比較の方法を出しています。この表の中で賃金テーブルAランクからCランクまで、プログラマーのお仕事ということで例を示しています。この中で上級のプログラム開発をされる方については、時給、賞与額を含めて1,600円賞与額320円を払うこととしています。Bランクについては時給1,250円賞与額250円を払う。Cランクでは、時給で
1,000円賞与額200円を支払うというものです。これについて、先ほど申し上げた賃金構造基本統計調査の表に基づいて通達で示された額に地域指数ということで、例えば北海道では91.5というものがありますので、これを掛けて出した数字が1,061円となります。これとCランクの方、一番下の方を比較して1,200円と1,061円ということで、1,200円が上回っているので同等以上であるとするというのが1つ。BランクAランクについては、通常、一般的に同種の業務に従事する一般労働者の何年目に相当するかということで、Bランクであれば3年目、Aランクであれば大体10年目であろうということで、これを比較して両方とも上回っているので同等以上であるというように比較するものです。今後、また具体的な賃金の計算方法等については、ツールを準備するなどして紛れのないように対応していきたいと思っています。
4ページ目を御覧ください。労使協定方式については、先ほど申し上げたように統計を出すというのがスタート地点になるところです。これについてのスケジュールを御説明します。賃金構造基本統計調査については、毎年2月末に前年6月分の賃金を基に公表しているというものです。またハローワーク業務統計については、有効求人倍率等がありますが、4月末に年度単位の公表をしています。こういった数字を基に、6月から7月に局長通知にするための計算をして、通知を発出して、翌年の4月1日に局長通知を適用することになりますが、その間に労使協定の締結や、あるいは労使協定の周知、就業規則の整備、料金の交渉、契約の締結、こういった手続を派遣元で進めていただくというところです。こういったスケジュールで進んでいくこととしていますが、初年度についても、やはり同じような形で進めていければと考えています。説明は以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。私の進行の不手際で、現在12時3分になっていまして予定の時間を過ぎておりますが、大切なことですので、もし皆さんがよろしければ10分程度延長していただければと、よろしいでしょうか。では、そのように進めたいと思います。この件について、自由に御発言をお願いいたします。
 
○正木委員 局長通達で示す統計以外を用いる場合の、「公的統計であること」ということなのですが、例えば職種をまたがっているので、条件を組み合わせたデータを作りたいなどといった場合はいかがでしょうか。公的統計というのは個票からいろいろ積み上げて仕上がったものが出ているわけで、個票まで見せてほしいとまでは言わないですが、「こういう部分とこういう部分の正確な数を出して按分比例して、両方を融合した職種のものを出したい」といったときは、それは御協力いただけるということでしょうか。
 
○牛島課長 今、正木委員が御指摘のデータの個票までを出すというのは、なかなか難しい手続になってきます。ですので、仮にそういった職種をまたがっていくということであれば、今は大分類・中分類・小分類のどういうくくりでやっていただいてもというところがありますが、同じ中分類の中でここだけは小分類だけれども、それ以外は中分類でやるといった恣意的な引下げにつながるようなものは、不可という形にしたいと思っています。今、おっしゃったようなまたがる場合については、小分類ベースでまたがってしまうのであれば、そこはそれを包含する中分類という形でやっていただくというのがベースではないかと考えています。
 
○正木委員 はい、分かりました。
 
○鎌田部会長 では、ほかの事項でも結構ですが、何か。
 
○正木委員 先ほどの労使協定方式の実務の流れは理解いたしました。では、例えば、2019年になりまして〇〇株式会社がシステムのセキュリティを上げるために、SEさんを頼もうと思いました。しかし、SE職の人は、今、自社にいないので、派遣先均等・均衡方式では難しい。これは労使協定方式でやってくださいと言いました。契約のタイミングが年度の予算も下りた、5月ぐらいで、プロジェクトとしては1年掛かりますといった場合、派遣会社さんはどう対応することになるのか。6、7月に、2019年についても局長通達が出るのですね。
 
○牛島課長 はい、2019年に出します。
 
○正木委員 2020年4月1日用の通達が2019年の6,7月に出るということですよね。そこから労使協定を結ぶのですけれども、労使協定ですのでやってみたら結構な料金になりましたといったときに、2019年5月ぐらいに結んだ派遣契約だと4月以降が赤字になるというときに、派遣会社さんとしては派遣先との交渉があるわけです。しかし、派遣先としては「相見積りを取ってそのときにあなたの派遣会社が安かったのだから、〇〇株式会社としては、当初の契約通り、1年間、この料金でやってください、4月1日以降の労使協定でこうなったから、その分は派遣料金を上げてくれと言われても知りません」ということはあり得ますね。あるいは、それでは話が合わないから解除するということになるのですか。
 
○牛島課長 今の御指摘については、派遣先には必要な派遣料金を支払っていただく配慮義務がありますので、どういう場合にこの配慮義務を満たしていないと評価するかというのは、これはもう少し整理が必要だと思っています。派遣元で協定が変わりました、その上で出てきた派遣賃金があり、それを踏まえて派遣料金をこれだけにしてくださいと言われたのに、一切、門前払いをする、そういったことをやられたときに、これは配慮義務を果たしているのかと言われると、少し疑問があるのではないかと思っています。基本的には、最後は派遣元と派遣先との交渉事ということにはなってきますが、そういった配慮義務が掛かっているということを念頭に置いて、運用においては派遣先の方々にも御理解をお願いできればと考えています。先ほど、おっしゃったように、前にこのように取ったから、そこから先の値上げは、一切許容しない、派遣元を変えるという扱いをされてしまうと、そこは少し気を付けていただく必要がある事例になると思います。
 
○正木委員 2年目、3年目になっていけば、大体、予測も付いていて局長通達で示される賃金の水準がある程度分かるというか、世の中全体の趨勢で分かるのでしょう。しかし、特に初年度、施行の年になると、これまでの派遣料金が急激に変わるとか、随分と違うねという話になる。特に今回、この話を受けて実際の料金水準を皆さんが認識するまでに、ものすごく時間が短いものですし、協定を結ぶのも、最初の協定を結ぶときは人材派遣会社も派遣社員の人にまず制度の説明をして、仕組みを理解してもらって、その後に協定を締結するというプロセスが必要になる。そのプロセスの間にものすごく時間が掛かると思うのです。ですから、特に初年度は何か御配慮があったほうがうまくいくのではないか。パートタイム・有期雇用労働法は大企業が先行して、中小企業が後となりますが、派遣法、特に協定方式だとただいま申し上げたような準備期間も考慮すると、中小企業も実質上、前倒しと同じことになり、先ほどの佐久間さんの話ではないですが、本当に間に合うのかという気持ちになります。是非、初年度について特に御配慮をお願いしたいと思います。
 
○牛島課長 実態に則して、適切に対応してまいりたいと思っています。
 
○鎌田部会長 派遣先の配慮についても、これから業務取扱要領でお書きになると思いますけれども、その辺の過渡的なものという観点も踏まえて、少し丁寧に説明をしていただいたほうがいい。法律家の観点から言うと、いろいろな弁護士さんは、特に契約実務に精通している方は、かなり強硬なことを言われるかもしれませんけれども、少なくともこれは民事的な効力を伴う配慮義務ということではないと私は思いますので、そこは行政としてのいわば目安を示すということで、双方が納得できるようなところを知恵を絞っていただければ有り難いと思います。
ほかにございますか。よろしいですか。相当、駆け足で御説明いただきまして、私も改めて更に勉強したいと思いますが、業務取扱要領等で本日の議論などもできるだけ反映をしていただくような形でお願いしたいと思います。
それでは、本日の議事については以上となります。冒頭で述べたとおり、本議題は報告ですが、円滑な運用が図れるよう、本部会での御意見を踏まえ、事務局は業務要領の見直し等に取組をお願いいたします。議事録の署名は奈良委員、高野委員にお願いいたします。事務局から連絡事項はありますか。
 
○永島補佐 はい、次回の部会の日程ですけれども、12月26日水曜日を予定しています。場所等、詳細については追って御連絡をさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 それでは、以上をもちまして第277回労働力需給制度部会を終了いたします。どうも皆様、ありがとうございました。