第7回 副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会(議事録)

労働基準局監督課

日時

令和元年6月4日(火)10:00~12:00

場所

厚生労働省 共用第6会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館3階)

議題

・論点整理
・その他

議事

 

○守島座長
 皆様方、おはようございます。何人かまだいらしていない方がいらっしゃるのですけれども、委員の皆様方はいらしているので始めたいと思います。
 ただいまより、第7回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を開催いたしたいと思います。委員の皆様方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただき、どうもありがとうございます。
 本日は、小畑委員及び島貫委員が御欠席でございます。
 本日は、これまでの議論を踏まえて論点を整理していくことを目的としております。よろしくお願いいたします。
 カメラ撮りについては、この辺で終了していただきたいと思います。
 それでは、本日の議題に入りたいと思います。資料について、事務局より御説明をお願いいたします。
 
○岸田監督課長補佐
 今回もペーパーレスで行わせていただきます。まず、資料の御確認をいただきます。パッドのほうに資料といたしまして、資料1「副業・兼業の場合の労働時間管理及び健康管理の在り方に関する主な論点の整理について」と、参考資料1、参考資料2、その他座席表がございます。うまく見られないなどございましたら、事務局までお申しつけください。
 次に、資料について説明をさせていただきます。前回、前々回と2回にかけて現行制度の課題について整理いただきました。今回はこれまで御議論いただきました内容をもとに、主な論点について先生方の御意見をまとめさせていただきました。
 では、資料1をごらんください。資料1については、主な論点ごとに先生方のこれまでの御意見を並べさせていただいておりますが、時間の都合もございますので、少しピックアップして御紹介したいと思います。
 まず、1の「健康管理について」でございます。
 1つ目の○の「副業・兼業を行う労働者の健康確保について」で、これまでの先生方の主な御意見としまして、1ポツのところですが「日本は諸外国とは状況が違うことを前提に、健康管理(安衛法)との関係では、新たに労働時間を通算するような仕組みを設けていく方向性が考えられるのではないか」というような御意見がございました。
 そして、次の○として、通算した労働時間の状況の把握を仮に各事業者に義務づける場合、どのような健康確保措置が考えられるかについてです。主な御意見の2つ目のポツですが「労働時間を自己申告等によって把握し、一定時間を超える場合には指導を行う仕組みとすることが考えられるのではないか。ただし、指導するにしても、自社の部分については措置を講ずることができるが、副業先の使用者に対してコントロールを及ぼす権限はないことから、労働者に対してアドバイスをする程度にとどまるのではないか」といった御意見です。
 1つ飛ばしまして上から4つ目のポツですが「医師の面接指導について、例えば副業を自己申告したら実施するということは、今の制度の趣旨とも合っているし、基本的には自己申告ベースの中でできるだけ本人が自分の健康を守るために積極的に使ってもらう仕組みを用意することは今の枠組みの中でもできるのではないか。ただし、その結果として、産業医という立場で副業・兼業を止めることができるのかなどについてはよく整理する必要があり、そうしないと非常に動きにくい制度になってしまうのではないか」です。
 そして、次のポツですが「通算して医師の面接指導が義務付けられる場合であっても、現行制度では、基本的には本人が申し出た場合となっており、申出がなくても行うのは高度プロフェッショナル制度の対象者など一定の者に限定されていることを踏まえつつ、議論すべき」といった御意見がございました。
 続きまして、2の論点「上限規制について」で、1つ目の○として「上限規制の意義について」でございます。
 これまでの先生の御意見として1つ目のポツですが「使用者が違う場合に労働時間を通算することが所与のものかについては、法律上は何も書いてない。昭和22年に労基法を施行したときに行政解釈が出て、使用者が違っても通算するという行政の解釈が示されただけである。非常に極端なことを言うと、その行政解釈が裁判に行って誤っていると判断されることはあり得ないではなく、厚労省の通達なども、例えば労災関係で出しているものが最高裁で否定されて、それで行政解釈が覆ったことはたくさんあるわけで、あくまで行政としては通算するという解釈をこれまでしてきているということで、そのことも含めて恐らくここでは議論しているのではないか」というものです。
 次のポツですが「労働者が兼業・副業を自由にすることの妨げになるものを除いていく観点からすると、この上限規制を通算することは、必ずしも望ましい結果にはならないのではないか。また、健康管理との関係でも、この上限規制の通算、適用をしていくことが本当にいいのか考える必要があるのではないか」といった御意見です。
 そして、次のポツですが「少なくとも上限規制については、厳格な運用は普及を阻害しかねないという懸念はあるものの、健康確保という観点から設けられた上限規制の趣旨からすると、副業・兼業の労働時間を少なくとも雇用・雇用の関係で把握しないわけにはいかないのではないか」といった御意見です。
 次のポツですが「通達の根本の問題についてどうするかという議論はあるが、労基法ができてから今日まで、一応行政としては通算をする建前で来ている状況がある。そして雇用と雇用の場合に完全に何らの規制もしないのかということは、健康確保の問題の議論になり得る。雇用と雇用では、そこでまた指揮命令下に入って残業せざるを得ないような状況があるかもしれない。そういうさまざまな事情があることを考えると、ある意味ではソフトランディングかもしれないが、本人が雇用と雇用の副業を申告した場合には、その場合の対処を考えることは別の選択肢としてはあり得る」といったものです。
 次のポツですけれども「雇用・雇用の副業・兼業の場合に、本人が自分は副業を雇用としてやっていますと申告した場合に、自分は完全に自分の判断で働くということだと、健康を害するかもしれないので、一定の保護のもとで副業・兼業をしたいということで、自らが申告した場合には一定の規制を及ぼすのがよいのかということが問題になっているのではないか」といった御意見がございました。
そして、次の○ですが「実務上実効性のある在り方について」というところです。
 1つ目のポツの下線部からでございますけれども「通達が出されたときには変形労働時間性は1種類しかなかったが、今はフレックスタイムとか、日々労働時間が変わるようなさまざまな労働時間制度も許容するようになってきている。当時の通達は、そういうことを想定した通達ではない。現在の制度の下で一日一日時間外労働が生じているか否かを厳格に把握して、管理することは、およそ現実的ではなく、そのことも含めてどこまで通算するのかという問題があるのではないか」といった御意見です。
 次のポツですが「上限規制について、通算労働時間をどのように、なるべく負担のない形で把握していくかということが議論になってくるが、一つのやり方は、あらかじめ副業・兼業をできる時間の上限を就業規則の中に定めておいて、やるのだったら、その範囲でご本人の裁量でやってくださいというような形にするのが、副業をしたい、そんなに厳密に管理されたくないと思っている人にとっては、現実的に一番やりやすい方法なのかもしれない。どうしても管理することが必要なのであれば、日々厳密にというのを副業・兼業との通算の場合にはもう少し長いタームで見ることができるようにするような特例的な運用を認めるというやり方もあるかもしれない」です。
 次のポツの下線のところからですが「労働時間の上限を設けるときには、副業先の労働時間というよりは、副業・兼業先と通算した労働時間の上限を設定することで、ある程度本業と副業の調整が本人の中ででき得る余地はあるのではないか」というものです。
 次のポツですが「今、働いている使用者との契約がどこまで副業・兼業の自由を縛れるのかという問題になってきて、副業・兼業の働きのほうが自分の将来にとっては有望である人にとっては、むしろ上限も本業のほうを減らしていって、もっと副業のほうを膨らませていきたいということがあるかもしれない。そうしたときに、本業の使用者が最初から副業の上限を設定してよいのかもあわせて考えないといけないのではないか」ということです。
 次の2つは上限のために労働時間を把握する場合ですけれども、下線のところで「労働者の自己申告によらざるを得ないのではないか」ということと、次のポツの下線のところですが「その時間で何をしているかに関する証明、給与明細などを求めることは、本来望ましくないが、通算をして上限規制を遵守する、徹底するということであれば労働者に求めざるを得ないのではないか。そのため、本当に通算をして上限規制をかけることが必要なのかという、その議論に立ち戻るのではないか」という御意見がございました。
 続きまして、3の論点「割増賃金について」です。1つ目の○の「割増賃金の意義について」。
 先生方のこれまでの御意見の1つ目のポツですが「同じ企業の中でこれからさらに働くと割増賃金が発生する状況で、初めて割増賃金が長時間労働の抑制装置になり得るのではないか。また、他の企業で働いた時間を後で申告されて割増賃金を払うように言われたとしても、自社で法定労働時間を超過して働いてもらっていない企業からすると納得感がないのではないか」という御意見です。
 次のポツの下線のところですが「他の使用者のところで働いた結果として法定労働時間を超過した場合について、割増賃金請求権が生じるとの解釈には疑問である」という御意見です。
 次のポツですが「労働基準法は、自分のコントロールできる中で法定時間を超えて労働させてはいけないという規制であり、ヨーロッパと同じように割増賃金は通算しないという考え方を日本でも採用する合理性は相当あるのではないか」ということです。
次のポツですが「海外調査においても、割増賃金とは関係なく通算が考えられ」ということで、次の下線のところですが「通算しての割増賃金をこのまま堅持するのが唯一の解ではないのではないか」ということです。
 次のポツですが「別の使用者の下で働く場合と異なり、同じ使用者との間で複数の異なる労働契約を締結する場合や、同一の使用者の複数事業場で働く場合については労働時間通算ということをしていかないと法の潜脱になってしまうので、当然通算は必要になってくるのではないか」という御意見がございました。
 続きまして、4ページの一番上のところですが、割増賃金の「実務上実効性のある在り方について」ということに関して、先生方の御意見です。
 1つ目のポツで「現行制度が非常に複雑であること、つまり月当たりざっくりした労働時間を把握すれば良いわけではなく、一日一日の労働時間を把握しないとどちらが割増賃金を負担するか判断できない今の仕組みを前提として、一日一日の判断をしながら割増賃金を通算していくのは、現実的ではないのではないか」というものです。
 次のポツですが「日々時間を計算して把握することはできないが、例えばフルタイムの仕事をしている労働者との間で新たに労働契約を結ぶ場合など、必ず時間外労働をさせることが前提となるような場合についてのみ月単位で割増賃金を請求できるような立法をするという方向もあり得るかもしれない」というものです。
 4として「その他」の論点について、2つ載せさせていただいております。
 1つ目の○が「副業・兼業の性質等による取扱いの差について」ということです。
 これまでの先生の御意見として、1つ目のところですが「生産性の向上やイノベーションにつながるかどうかは判断が難しく、外形的に把握できるものでないと、区分の基準にはなりにくいのではないか」という御意見です。
 次のポツですが「生産性向上やイノベーションを進めるような兼業についても収入目的で従事されている方もいる。また、主な動機は収入面であるが、それに従事することでいろいろなスキルの獲得などポジティブな効果を持つ兼業もあり、実務上、ここの区別は困難である。区別があり得るとすれば、副業・兼業が本当に労働者自身の意思に基づいて行われている兼業なのか、それとも使用者の一定の影響下のもとで行われている兼業なのかといった形での区別があり得るのではないか」です。
 次のポツで「生産性向上に資する兼業と収入面からの兼業とでは属性が異なるところがあるので論点の提示は意味があるが、両者の兼業をどのように切り分けるかは、大変難しい問題であり、極端なことを言うと、一定以上の年収の生産性向上に資する兼業にはこうした規制をかけなくてよいというようなことも思うが、非常に難しいのでないか。両者を同一に取り扱わないことについて、理由はあると思うが、実際に差を設けるのはかなり困難ではないか」という御意見がございました。
 最後の論点の「雇用、非雇用による取扱いの差について」です。
 「非雇用での副業・兼業を労働法制で規制することは困難ではないか。あくまで雇用・雇用の場合について労働法制はどこまで規制するのかということであって、非雇用については原則及ばないと考えることになるのではないか。そして雇用・雇用の場合に、副業・兼業をするかどうかは基本的には労働者の判断であり、同一使用者の場合とは相当状況が異なることも踏まえる必要があるのではないか」という御意見です。
 最後ですけれども、次のポツで「雇用と非雇用では差をつけざるを得ないのではないか。ただ、雇用の保護を図れば図るほど、非雇用化が進むことを懸念する。副業・兼業先には雇用のものと非雇用のものもあることを踏まえた上で、どれだけ労働者を保護すべきなのか。雇用の非雇用化に進まないことも含めて検討が必要ではないか」という御意見がございました。
 資料の説明は、以上になります。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 
○岸田監督課長補佐
 すみません。事務局から一言補足させていただきます。
 
○石垣監督課長
 監督課長でございます。
 これから守島座長に議事をお進めいただくわけですけれども、少し進め方についてお願いがございます。今回の検討会でございますけれども、私どもは副業・兼業の促進の観点から、これから先どういう制度的な見直しが必要なのかということが、この検討会での御議論をお願いする前提だったと考えております。
 そういう観点から申しますと、これまでの検討会のいろいろな各国の状況ですとか、企業からのヒアリングなどの中、あるいはその後においても、先生方から御持論といいますか、御意見をいろいろといただいていたわけでございますけれども、今後制度的見直しをしていくことを踏まえまして、仮に先生方が御自分でおとりになる以外のものも含めまして、考え方の整理としてはこういうものがあるのではないかという取り得る選択肢みたいなもの、あるいは取り得る論点みたいなものがありましたら、その辺もぜひ幅広く御議論をお願いしたいと思いますので、大変恐縮ですが、よろしくお願いしたいと思います。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 では、本日の検討事項についてですが、まず資料1の1番の「健康管理」について議論し、その後、2の「上限規制」について、それから、3の「割増賃金」について、それから「その他」の論点について議論をしていきたいと思います。
 今回の資料は過去の検討会の皆様方の御発言を整理したものですけれども、この内容の確認にとどまらず、新たな観点を追加することも含めて、ぜひ議論をお願いしたいと思います。
 それでは、まず、1の「健康管理」について御意見をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
○武林委員
 では、少し口火を切らせていただきたいと思います。
 健康管理をどうするかということは、むしろこの後の上限規制と時間の通算をどうするかということが、本来枠組みとしては先にあるのではないかと思っています。その議論が最初に課長が申されたような幅広になったときにどうするかというのは、それによってかなり変わってきますので、先に健康管理を議論してしまうのがいいのかというのはありますが、ここに書かれていることの中で、もう少し視点を広げるという観点で幾つか確認したほうがいいかなと思っていることがございます。
 ここに書かれているとおり、健康管理は、2つの会社にまたがる健康問題になるわけですので、それを複数の会社に分けて判断すること自体が、健康管理の観点からしたら無理、よほど極端な場合以外は無理と認識されているのではないかと思うのです。
 そうなると、仕組みとして産業医の場合は権限強化なども行われていますが、そういう極端な場合を除くと、本人以外に何らかの意見を出すこと自身がほとんど無理という認識は、もう一度確認しておく必要があるのではないかと思います。あなたはこっちで何時間働いて、こっちで何時間働く仕事をしているから、この会社に原因がありますということを、健康管理の観点から区別することは難しいのではないかと整理をしておく必要があるかなと思っております。
 その上で、ここにも書かれているように、現行の枠組みで健康管理を行っていくことでありますので、考えておかなければいけないのは、現行の枠組みの狭間に位置するようなケースが恐らく兼業・副業を観点に入れると出てくるということをどう考えるかだと思います。
 例えば、多くの場合、一方では心理的な、いわゆるストレスチェックでカバーされる部分と、一つは長時間労働ということでカバーされる部分だと思いますが、ストレスチェックでは50人以上の事業所が対象になっているわけです。
 その中でも対象になる方は、常勤の方の4分の3を超える以上の時間にかかわっている方が対象になっているわけですが、現実的に兼業・副業を考えると、どちらも4分の3には達していないけれども、複数の事業所で働いているような方が、通算をすると4分の3を当然超えることが出てきますので、こういうことが起こった場合に、そもそもストレスチェックの対象にするのかとか、対象とするならば誰が責任主体となってやるのかということは、ぜひ制度的にどのように考えておられるか、伺いたいと思います。
 もう一つは、ストレスチェックの場合には、基本的には本人の情報の保護が重視されていますので、ストレスチェックの結果そのものは、直接は最初に事業者にはフィードバックされないわけです。申し出があればとなっていますが、特に兼業・副業のようなケースであると、必ずしも会社側に申し出をする前の、例えば保健師に相談するとか、そういうところでとどまる可能性もありますので、実効性をどう担保するのかという議論は少し広く考えておく必要があるかなと思います。
 気づいたことを先に申し上げてしまいますが、もう一点は、やはり50人未満の事業所に対してどう考えるかということです。特に制度上で考えますと、50人未満の事業所の場合には、ストレスチェックは努力義務になっていると思いますが、長時間の面接指導は全事業所が対象になっていると思いますので、先ほどの組み合わせとさらに50人を超えない場合に、片方は努力義務で、片方は全事業所の義務になっているものに対して、制度上どのように手当てをして整理をするのか、もう少し確認しておく必要があるかなと思いました。
 以上でございます。
 
○守島座長
 ありがとうございました。ほかにどなたかございますか。
 石﨑委員、どうぞ。
 
○石﨑委員
 今、こちらの資料に出ている意見は健康確保をするとすればという前提での御意見が出ているかと思うのですが、さまざまな可能性としては、そもそも健康確保は本人に委ねるという考え方ももちろんあり得るところであります。
 また、健康確保の仕方につきましても、事業者側に健康確保措置の実施を求めるのではなくて、兼業・副業している時間のみを事業主側に把握を義務づけて、そうしますと、当然労働者自身も自身の労働時間等を記録したり、自分で見直したりしなければならないことになりますので、そういった形で長時間労働にならないよう、労働者自身にも促していく方向もあり得るかなと考えております。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 武林先生もおっしゃったように、健康管理と労働時間管理をなかなか切り分けて議論することは難しいと思いますので、上限規制をどうするのかということ、それがどういう形になった場合には健康管理はどうなのかということの両方を見ながら議論する必要があり、労働時間を通算するのかどうかとか、労働時間管理についての方針が決まらないと、なかなか健康管理単独では難しいのかなというのが一つです。
 もう一つは、健康管理は法規制、具体的な施策のほかに、使用者は兼業であろうが、副業であろうが、本業であろうが、労働契約上は安全配慮義務を負っているわけであります。その観点からどのような規制があるのか議論ができると思うのですけれども、労働時間を通算した場合に特にかかってくるようなさまざまな施策がどうなるかは、やはり労働時間を通算するのか、そして、その通算する場合の契機をどう考えるのかとあわせて考えないと、なかなか単独では議論が難しいのかなという印象を抱きました。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 ほかにどなたかございますか。
 私も皆様方と同じで、健康管理だけの議論をすると、基本的には御本人の自己管理ですというような方向で議論をせざるを得なくて、ほかの理由から時間通算する、もしくは時間把握をするのであれば、それを使ってということもあり得るとは思いますけれども、これだけ議論すると何となく、最終的には本人に任せますと先ほど石﨑委員が言われたような方向で行かざるを得ないという言い方がいいのかどうかわかりませんけれども、行くことになるのではないかと思うので、ほかの議論をした後でまた戻ってくるのもあり得るかなと思います。よろしいですかね。
 一旦、これで決着がついたわけではございませんけれども、上限規制についてという部分について、ここは多分メーンの話だと思いますけれども、そこについて御意見を伺いたいと思います。
 水島委員、お願いいたします。
 
○水島委員
 昭和22年の行政解釈を前提として、これまで事務局から資料を作成いただき、議論を進めていたところでもございますが、1つ目の御意見にありますように、行政解釈が裁判で覆ることがあり得ることは、今一度考えなければいけないと思いますし、先ほど、監督課長からお話がありましたように、副業・兼業促進の観点からの議論となりますと、昭和22年当時の行政解釈をそのまま維持することが適切かどうか、いまの時代に合った解釈も考えなければいけないかと思いました。
 まずは以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 石﨑委員、どうぞ。
 
○石﨑委員
 私も厳密な労働時間管理の上で、この上限規制を厳格に適用していくことについては、やはりいろいろ難しいのではないかという考えを個人としては持っております。
 仮に厳格に適用していくと考えた際に懸念されますのは、企業側が兼業・副業ですとか、こういった兼業・副業先での労働時間についてきちんと申告しないといったような場合に、どうしても厳しく対応せざるを得ない。具体的には、場合によっては懲戒であるとか、解雇といったような手段をとらざるを得なくなってくるかと思います。もちろん程度問題ですので、裁判所で争えば懲戒であったり解雇というのは無効となるのかもしれませんが、争われない場合はそういった事態が生じることになりますし、いずれにせよそういった紛争を招く恐れがありますので、この規制を厳密に適用することについては、ちょっと疑念を持っているところでございます。
 ただ、他方でこの中にも御意見として出ているかと思いますが、健康確保という趣旨を重く見るのであれば、あるいは労働時間以外の時間、労働者が家庭の人間として過ごす時間でありますとか、地域社会の中でいろいろ社会活動をする時間の確保が、やはり求められており、そこが重要であるのだというところを強調するのであれば、やはり労働時間を通算して、それ以上の労働は労働者にとっても許されないのだといったような発想から規制を及ぼしていくことも、選択肢としては当然あり得るのかなと思っております。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 松浦委員、どうぞ。
 
○松浦委員
 上限規制を適用するかどうかと、先ほどの健康確保措置をどうするかという点は連動してくると思います。上限規制を通算して適用しないという選択肢をとるのであれば、恐らく健康確保のほうで何らかの対応をとらなくてはいけないのではないかと思います。
 一方で、仮に上限規制を通算して適用しない、本人の裁量に任せるというような選択肢をとったとしても、結果として、例えば社員が健康を損ねて裁判になったときに、果たしてどちらの企業が責任を負うのかの判断が難しいとなると、やはり企業としては、社員の健康確保という観点に加えて、企業のリスクマネジメントという観点からも、通算して長時間労働することはできれば避けてほしいと考えるのではないでしょうか。
 そうすると、例えば最近、予め通算の労働時間の上限を設定し、通算してその上限の範囲であれば副業・兼業を認めるような事例も出てきているので、そのような形で副業・兼業を促進していくことはあり得るかもしれません。
 ですので、すでにモデル就業規則で、副業を制限・禁止できる条件が列挙されていますが、その中に、通算した労働時間が一定の上限を超えると、副業・兼業を制限・禁止できるという条件を加える、つまりモデル就業規則を一部変更するのも1つのやり方ではないかと思っております。もちろん、通算した労働時間の上限も幾つか段階があるので、どこを上限にするのかは検討する必要があると思いますけれども。
以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 石﨑委員、お願いします。
 
○石﨑委員
 今の松浦委員の御発言に関連してなのですけれども、仮に上限規制を外したとしても、御指摘のように企業側がリスクマネジメントとして労働時間について制限することはあり得るのかなと思います。仮に企業が設定しているにもかかわらず、労働者がそれを超えて働いてしまったときに、上限規制がかかってくるとすれば、企業側は刑事罰の責任を問われる可能性もあり得るということになるのかなと思っておりまして、そこでそれを適用することがよいのかどうかというところは問題があり得るかなと思っているところです。
 あと、実際に健康を損ねたときに、民事訴訟において、果たして副業している状況のもとで、例えば本業側が安全配慮義務違反等の責任を問われるのかという点は、裁判例も余り出てきてないところもあって、判断が難しいところですけれども、仮に労働者の側に体調不良の様子とかが認められるようなケースにおきましては、副業の事実について認識していないとしても、体調不良であることを踏まえてさまざまな対応をする義務は生じ得るのかなと思いますので、そういった形で責任を問われる可能性はあるのかなと思っております。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 なかなか難しい問題だと思っております。最初に事務局から言われたように、副業・兼業を促進するために議論をしているのだというので一番簡単な答えは、既に御指摘があったところですが、通算をしないことにすれば、自由に副業・兼業ができて促進できるという議論があり得るところだと思います。
 もう一つ、しかしそうは言っても、副業・兼業で健康を害する人がいた場合に、それを全く規制しないといいますか、そういう状況でよいのかということになってくると、潜在的なリスクの観点から、むしろ副業・兼業を企業のほうでも抑制することになるかもしれない。そういうことも考えておく必要があるようにも思います。
 そこで、松浦委員からは、副業・兼業をできるいわば枠のようなものをあらかじめつくっておいて、その枠内で許容する制度も一種のリスクマネジメントとしてあるのではないかというお話があったように思います。その枠を仮に考えるとしたときに、どういう枠が実際上設定できるのかというあたりは、かなり技術的にも難しいことになってくるのかとも思います。
 本業をしている方が副業をしたいというときに、本業の使用者からすると、副業などをしたら疲労がたまって本業に差し障るのではないかということで、これまでは就業規則で禁止をしてきた。しかし、これはモデル就業規則を変えて、原則禁止できませんよということになってきたわけです。
 その後で、一定枠内だったら許容しましょうといった場合の枠をどうするのか。本業のほうでも一定時間36協定を結んで時間外労働をさせることは可能なわけです。本業の使用者がある程度の時間、自分のところで残業させる枠も確保した上で、その余った部分でのみ副業を許容するような枠になるのか。
 それとも、コメントのどこかにあったかもしれませんけれども、ある労働者にとっては、むしろ副業のほうが自分にとっては能力を活かせる活動であって、むしろそちらに注力したいという人にとって、その枠を本業の使用者のほうが先にとってしまうというような枠の設定でよいのか。これは一例ですけれども、そのように枠を設定するとしても、望ましい副業・兼業というのはどういうものか。これは非常に多様ですので、妥当な枠の設定が可能かどうかということも詰めて検討する必要が出てくるのではないかと思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 今の荒木先生の御発言にもあったのですけれども、副業・兼業というときに、主がどちらかで、従がどちらかという前提でずっと多くの議論が進んでいるのですけれども、そうでない場合もあるのだということですね。かつ、そのような従で自分の能力を開発していきたいと、そこで自分の能力を磨きたいだとか、エンプロイアビリティーを高めたいみたいな議論もあるのですけれども、同時にやはりバイトの掛け持ちみたいなものをたくさんやっていらっしゃる人たちがいた場合に、そのときに誰がそのときの主なのか、従なのかはなかなか決めにくい状況もあると思うのです。
 そのときに、その規制は誰がやるのかということもあるので、ちょっとそこのところは機械的に決めることはできるのかもしれませんけれども、そういう意味で言うと、主と従というような議論をしていることの、もちろんそれが出発点であることは否めないのですけれども、そこの部分も少し考え直す必要はあるのかな。マルチで仕事している人たちにどのような総労働時間規制みたいなものをかけていくのかみたいな議論をしたほうがいいような気はちょっとします。済みません。具体的なアイデアがあるわけではありません。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 難しい問題があるという指摘だけ先ほどしたのですけれども、恐らくきょうの上限規制の意義についてのところでは、下から2番目のポツが、以前私が申し上げたことかもしれませんけれども、労働政策として妥当な副業・兼業を認めていこうという方向からすると、一定の雇用・雇用の場合に施策を展開することは十分あり得ることです。昭和22年以来の通算するという行政解釈をとってきたことを踏まえたソフトランディング的な対応かもしれませんけれども、そういう対応はあり得る。
 それを何人かの委員がおっしゃっているように、昭和22年当時のように1日単位で時間外労働を全部把握して、それに違反した場合に罰則をかける形でのやり方は非常に困難であるし、しかも、弊害のほうが大きいであろうということであれば、副業・兼業をしたいという人たちは、むしろ非雇用という形で働いたり、あるいは健全でない形での展開が生じてしまうこともあると思います。
 そこで、非雇用で働く場合には、これは雇用の問題でないとなりますと、もともと規制はかからないので、副業・兼業をするかどうか自体は本人の選択だということも加味して考えますと、雇用・雇用の場合に本人がそれを申告してきた場合には、一定の労働政策としての対応を考えるという選択肢はあり得るのではないかと考えております。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 恐らく企業人事の立場から言うと、自己申告をさせることは、内容はもちろん労働時間を含んでも構わないのですけれども、それをさせるのは、企業にとっては重要なことだと思うのです。例えば協業でやっていないだろうかとか、どういう仕事をしているのだろうかとか、どのぐらいの収入があるのかとか、収入はともかくとしても、その一環として、労働時間を報告してもらうのは、要するに人事上はそんなに追加的な手間には多分ならないはずなので、それは、私は十分可能かなと思うのです。
 次の割り賃の議論とも関連してきますけれども、やはりここはもともと前提とされていた、毎日人事が労働者を把握することよりは、自己申告である程度長い期間の自己申告をしてもらうという、その辺のところは、健康確保という先ほどの議論とも関連した上では、十分あり得る話なのかなという感じはちょっとしています。
 石﨑委員、どうぞ。
 
○石﨑委員
 上限規制は基本的には強行規定なので、通算との関係でこれを残すとすれば、仮に労働者側から何か同意があったりしたとしても、適用は除外されないことになるのだろうと思うのです。
他方で、これまでにも御指摘があったように、兼業・副業が、仮に労働者自身の自由な意思の決定に基づいてされているとするのであれば、そこをどう考えるかということがあるかと思います。
 その際、労働時間を確認するタイミングとしては、今、守島先生から御指摘いただいたように、兼業を開始するタイミングで最初にどのくらい働くのかを企業として把握していくということなので、そこをベースに上限規制の適用も考えていく方向が一方にはあるかなと思うのです。
ほかの選択肢としては、実際に働いている労働者自身が、あるいはカウントするのかもしれませんけれども、その上限近くなったときに申し出てもらうような制度のあり方も、もしかしたらあるのかもしれないなというようなことが、考えられるところです。
 もう一点は、この上限規制の適用という観点からいくと、基本的には本業が枠を設定してというようなことはあったのですが、先ほど話に出ていたように、仮に副業先の比重が労働者自身の中で高まってきたときに、本業側に対して労働時間を調整してもらうようなそういった権利みたいなものも認めていくのかということも、立法的な課題としてはあり得るのかなと考えているところです。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 水島委員、どうぞ。
 
○水島委員
 今、石﨑委員からもありましたけれども、副業・兼業が労働者の自由な意思によってなされていること、これは建前かもしれませんが、このことを前提にして議論を進めなければいけないのではないかと思います。
 副業・兼業の促進は、労働者が強制された副業・兼業をすることを促進するものではないはずです。そうしますと、労働者の自由な意思によって、副業・兼業が選択されていると見るべきである。そのように考えていきますと、先ほど委員からも御指摘がありました、申告に基づく上限規制の適用という考えはなじむと思います。
 ただ、その場合に懸念されますのは、通算した上限規制を厳格に適用しない場合には、悪用するものが出てくるだろう、つまり実態としてはほぼ同一の使用者同士が労働者に副業をさせるようなケースが出てくるのではないか。そうしたときに、同一の使用者と認定できれば問題ないのですけれども、別の使用者と判断せざるを得ない場合に何か上限規制をかける方法といいましょうか、使用者側が副業・兼業制度を悪用して、 労働時間規制を免れることが起きないようにすることを考えることは必要ではないかと思いました。
 以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 異事業通算を使用者が異なっている場合にもするかというときの、実態としては使用者が異なってるとはいえないような場合には、厳格に1つの使用者と見て規制すべきであるのは、水島委員がおっしゃったとおりでありまして、その潜脱は許されてはならないと思います。
 もう一つ、副業・兼業は自発的な意志による副業・兼業が前提ということで、自己申告による場合には、労働時間の規制も考えるといった場合の、どのようにやるかというのは次の実効性の確保とも関連してくると思います。
 そのときに労働基準法の32条によると、1日単位で把握しなければいけないことになります。これまでの過労死認定基準なども、月単位での時間外労働が80時間とか100時間というように一定のタームにおける時間外労働として議論してきているところですけれども、労働基準法自体は1日8時間という1日単位で規制をしています。
 それをどうするかというのが、きょうの「実務上実効性のある在り方について」で、いろいろな論点が出てきていると思います。この点は仮に副業・兼業という形であって通算をする場合、これが実効性があるような通算の仕方を考えておかないと、形式上通算をすることになったのだけれども、実態として回らないことになりますと、その規制の実効性がなくなり、そうすると、違法状態が蔓延しかねない状況にもなって、労働基準法上の規制としては非常に問題があるということになる。実効性のある規制としてどのように考えられるかということについて、さらに検討を深める必要があると思っております。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 松浦委員、どうぞ。
 
○松浦委員
 先ほどの、悪用や規制の潜脱は回避しなくてはいけないという御指摘に関連して、例えば請負会社で雇用されている労働者が、別の事業所で働いている場合は、別の事業所から指揮命令はしてはいけない。する場合は派遣にしなくてはいけないというたたずまいになっています。
 しかしながら、請負労働者が別の事業所の企業でも雇用される、つまりダブルワークみたいになったときに、双方の労働時間が通算されないとすると、トータルの労働時間が長時間化する懸念もそれなりにあると思われますので、特に請負労働者の副業化みたいなものが起こったときに、どういう支障が出てくるかということについては、少し整理しておく必要があるかもしれません。先ほどの悪用の1つの事例となり得るのではないかなという懸念です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 水島委員、どうぞ。
 
○水島委員
 意見というほどではないのですが、今のお話の確認を含めて、確かに請負でなくても労働者が幾つかのところに派遣登録をしていて、たまたま同じ事業所に別の日で派遣されることも想定し得ると思うのです。
 問題なのは、仕事を始めた時点での副業は、使用者の制度悪用ではなくて、労働者側の意思なのですけれども、時間外労働が組み合わさったときにどのように判断すべきか。副業・兼業は、労働者の意思といえる場合であっても、時間外労働を強制された、余儀なくされたような場合にどのように考えていくという問題があると思いました。全てが全て悪用、潜脱にはならないと思いますので非常に難しいと思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 石﨑委員、どうぞ。
 
○石﨑委員
 今の悪用に関連する議論との関係ですが、悪用とまでは言えなくても、例えば会社の社長が別に経営している法人で仕事をするケースであるとか、そういう会社同士の関連性が見られるケースについてまで上限規制を外していくのかとか、仮に緩やかな適用も検討するといった場合に、どの範囲でそれを認めていくのかというのは、確かに論点になり得るかなと思っております。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 今の水島先生、石﨑先生のおっしゃったような事案で、仮に同一使用者でないとした場合であっても、先ほどの議論で、自己申告で、これを副業・兼業として、やはり自分の健康を守るために労働時間規制を適用してほしいと労働者自身が思って、そのように言った場合には、通算して労働時間に規制をかけることが可能だといたしますと、そういうことでなければ、むしろ自発的なものとして許容するという形で受けることは可能かと思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ただ、私は雇用主悪人説はとりたくないですけれども、雇用・非雇用で非雇用が兼業的な働き方の場合には規制しないというのが大方の今回の流れなので、だから、本当に極限な例を考えれば、労働者に非雇用で業務委託をさらにさせていくような雇用主もあり得ないわけではないのです。その場合もある意味では総労働時間を自己申告してもらってみたいなことは可能なのかもしれませんけれども、そこまで行ってしまうとある意味では上限規制であるとか、労働時間の規制という話からは、今の私たちの議論だと外れてしまうように思うので、原則論として一応総労働時間を把握することを、極端に言えば非雇用であったとしても、労働契約をしている場合にはというぐらいの枠は設ける必要はあるのかなと、今の話を聞いて思いました。
 
○荒木委員
 法律家の間では雇用か非雇用かというのは客観的に判断されるというのが前提です。非雇用という形でと当事者が言っても、つまり非雇用の業務請負契約という当事者間の了解で役務を提供していても、客観的にそれが指揮命令に服した労務の提供と評価されたら、それは雇用・労働であって、労働法制は適用されるということは前提としております。ですので、当事者間がこれは非雇用だねと了解していても、裁判所に訴えた場合には、これは非雇用ではなくて雇用ですということは十分あり得る。そのように客観的にも雇用と評価されないものについては、労働法制が規制することはできないということです。
 つまり指揮命令に服していないし、業務の委託についても自由に断れるような、そういう自由があっての役務提供ということであれば、これは純然たる非雇用ということになると思います。それについては恐らく通算とかいう話は問題となってこないと思います。
 これは世界中で同様の議論がありまして、雇用類似の検討会でも議論しておりますけれども、非雇用と当事者が思っていても客観的にはそれは労働・雇用であるという誤った分類(ミスクラシフィケーション)の問題は常に生じ得ますので、それについては厳格に、客観的に労働法制を適用していくことを前提の上で整理すべきかなと思っております。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 大分議論としては入ってしまっている部分もあるのですけれども、実効性のあるという話を、もし御意見がございましたらお願いします。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 先ほど既に触れたことかもしれませんけれども、労働基準法32条は、週単位40時間、1日単位8時間という規制でありまして、これを本人の自己申告によった場合には通算するという制度を仮に考えた場合には、それは本当に1日単位でやるのかということになってくると思います。
 しかし、諸外国でも大体通算をすると言っているのは週単位の40時間とか、そういう規制を前提に通算する話が展開していると思いますので、もし通算を考えるということであれば、やはり実効性も考えた上でワーカブルな制度を考える必要が出てくると思います。その場合にひょっとすると現在の労働基準法のままでよいのか、その点も併せて考える必要が出てくるかもしれません。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 松浦委員、どうぞ。
 
○松浦委員
 実務的にどのような流れで自己申告なり、時間の調整なりがなされるのかを考えたときに、多様な副業・兼業があることは、私もそうだと認識しているのですが、モデル就業規則にあるとおり、副業・兼業を制限・禁止できるという前提に立つと、最初に副業・兼業を社員が申し出てきたときに、どれぐらい副業先で働くのかを申告してもらう。その段階で、例えばその程度の労働時間なら本業の労務提供上支障が出ないであろうということであれば、副業・兼業を労使合意のもとでスタートすることになるでしょう。
 その後の具体的な労働時間の調整なのですが、本業の会社で残業が発生した場合、副業は通算した上限の枠内でやってくださいと合意したはずが、社員のかたが副業先での仕事がおもしろくなってきて、副業先でたくさん働きたくなりましたというときには、多分もう一回、副業先、本業の会社双方と話し合うことになるのでしょう。
 そもそも、残業は本人の意向だけ決まるものではなく、あくまでも残業が必要な業務が発生し、会社から残業をしてくださいという話になって初めて成立すると思います。当初の合意に反して、社員から、途中で副業がおもしろくなってきて、こっちでいろいろ残業することになりましたので、残り時間はこれだけしか働けませんと一方的に言われてしまうと、多分本業の会社は困ると思うので、やはり副業の働き方を変えますと、もっと副業のウエートを高めていますというところでもう一回、副業・兼業をどう位置づけるかを、特に本業の会社と社員が話し合うというステップが必要になる気がしています。
 個別の労働時間をそんなに厳密に管理する必要はないということは賛成なのですが、多分副業のウエートが高まるのであれば、やはり相談してもらわないと本業の会社が困ってしまうのではないかと思います。
 もう一つ、労働時間規制を通算して適用としてほしいと申告するという選択肢を設けるのであれば、よそのときは本業も副業も、働いている先全部に申告するプロセスになるのですよね。まだ実務のイメージがまだはっきりしませんが。
 以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 多分、松浦先生の言われたことは、例えば、副業をもう少し重要視したいときにどうするかという問題としてお話をされたのですけれども、もう少し敷衍して考えると、自己申告とは一体どの程度の頻度で、どのタイミングでやってもらうのかという議論はやはりあるのだとは思います。多分、年に1回とか定期的に報告させて、変わったのならば、そこでもう一回話し合うようなこともあり得るのだと思います。
 何となく変わり始めたときと言っていると、できるのかもしれませんけれども、それは実務上結構難しいように思うのです。そこのところは自己申告といったときに、どの程度の頻度で出してもらうのか、そこまで法律で考える必要はないのかもしれませんけれども、実務上は考えておいたほうがいいかなという気はします。
 石﨑委員、お願いします。
 
○石﨑委員
 今の点もまさにいろいろなオプションがあり得るのかなというところで、自己申告みたいなものを定期的に、年1回といった形でも求めていくというような設計の仕方もあり得れば、他方、松浦先生がおっしゃられたように必要が生じたとき、つまり本業側か第一使用者かわかりませんが、そちら側に何らか労働時間の調整を求めるようなニーズが生じたその都度、そういう申し出をする選択肢もあり得るのかなとは思っております。
 ただ、その前提として、本業側における労働時間の調整も認めるのか、ある種の時短措置のような形をとることを求めるのかというのは、かなり大問題となるかと思いますので、仮にそれを認めるとすればという前提での議論にはなるかと思います。
 もう一点、上限規制を緩やかに適用する方向性という議論をこれまでしてきたかと思うのですが、そういった緩やかな適用を特例のような形で認めるのか、あるいは1回労使協定をかませて認めるのかみたいなところも、一応選択肢としてはオプションとなり得るのかなと思っております。
 現時点での個人的な感触としましては、労使協定をかませることについては、果たして労働者代表というのが、副業している労働者の利益をどこまで代表しているのかといったようなところで若干疑義があるかなという意見を持っているところです。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 これは逆にお伺いしたいのですけれども、労働者代表というのは、何かの制度がある集団に適用されるときに、その集団の代表からの意見をとるという意図ではないのですか。
 
○石﨑委員
 通常ですと、事業所の過半数を代表しているものと。
 
○守島座長
 そうなのですけれども、先ほどの議論の中でしていたのは、具体的なコンテンツというか、例えば最近の例だと、36協定であれば、36協定というのは個人が残業するかどうかということを許す、許さないというよりは、その集団に対してどの程度の残業を許すかという話のように思って、私は法律家でないので、そこのところをちょっと理解していないのですけれども。
 
○石﨑委員
 兼業・副業は個人のマターであると。
 
○守島座長
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 どういう制度を設計するのかということにも関係するので、確たることは言えませんけれども、例えば自己申告があった場合に、使用者は違っても労働時間を通算するとして、現行法では1日単位で必ず通算して、それで8時間をちょっとでも超えたら罰則がかかり割増賃金規制もかかるということになりかねない。そういう状況を現実にワーカブルな形にするために、労基法の最低基準の例外を認めるための労使協定ということであれば、これまでの労基法上の原則的な規制の例外を認めるための労使協定と同じ位置づけですので、可能かと思います。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかにどなたかございますか。
 それでは、最後にまだ割増賃金の議論が残っておりますので、これも上限規制と時間把握と関連するのですけれども、これについてどなたか御意見をお願いします。
 松浦委員、お願いします。
 
○松浦委員
 副業・兼業を推進する立場に立つのであれば、恐らくこの割増賃金の通算を見直す、つまり通算しないことが結論になり得るのではないかと思うのですが、さまざまな選択肢を提示するという観点からあえて、割増賃金を通算する場合について申し上げると、上限規制の議論のところでも出てきましたように、一日一日の割増賃金の計算はおよそ現実的ではないので、そこの計算の仕方や、あるいは申告の仕方を簡易化するような運用、特例を考える必要があると思います。
 ただ、繰り返しになりますが、副業・兼業を推進する観点に立つのであれば、また、時代背景の変化だとか、割増賃金のそもそもの趣旨も考え合わせると、通算しない形に見直すというのが結論として有力なのではないかと考えております。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 既にきょうのペーパーでこれまでの議論としてまとめてあることの繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、もともと労働基準法32条は、週40時間、1日8時間を超えて「労働させてはならない」ことを使用者を名宛て人にして命じているわけです。仮に割増賃金を副業・兼業と通算して両者を足して法定時間を超えた場合に割増賃金を払わせることになると、自分が時間外労働を「させ」たのではないにもかかわらず、割増賃金の支払い義務が発生し得ることになるのは、現行法の解釈としても、本当にそれでよいのかという問題があると思います。昭和22年以来、通達としてそうなっていましたけれども、本当にそれはそうなのかは考える必要があるのではないかと思います。
 昨年、ヨーロッパへ調査に行きましたけれども、行った3カ国では、使用者が違う場合に割増賃金請求権に関して通算して割増賃金が発生するような制度をとっている国はいずれもなくて、それは賃金の問題であって、健康確保のための労働時間の通算とは全く別の問題であるという整理がされておりました。
 労働基準法32条も、基本的には健康確保のために法定時間以上働かせてはならないという規制でありますので、そういうことを踏まえて再度この問題を位置づけてみる。すなわち割増賃金については通算するのは必ずしも合理性がないという考え方は十分成り立ち得るのではないかと考えております。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 水島委員、どうぞ。
 
○水島委員
 労働者が割増賃金を期待して時間外労働を引き受ける傾向は、一定程度見られると思いますが、そのような理由から副業・兼業をする、また、そうした副業・兼業を促進するのは、副業・兼業の促進の趣旨から逸脱するように思います。
 割増賃金の1つの意議として、1つの会社、1人の使用者が労働者を必要以上に拘束することに対する補償という面があろうと思います。副業・兼業は先ほど申しましたように、一定程度労働者の意思、選択によることを考えますと、使用者が拘束しているからその補償的な意味合いで割増賃金を支払うという論理は、副業・兼業の場合には当てはまらないと考えます。
 以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 石﨑委員、お願いします。
 
○石﨑委員
 私も割増賃金につきましては、労働時間を通算すべきではないという考えではございますけれども、多様な選択肢という観点から、仮にこの制度を維持するのであればという点からいきますと、実効性のある在り方についての話に入ってしまうかもしれませんが、日々の労働時間で割増賃金を請求する形ではなく、月単位といった形で請求する形があり得るのかなと、そういう可能性があると言えるかと思います。
 ただ、このような形で割増賃金を請求しやすくする仕組みにしていった場合に、労働者の側がこういった割増賃金を積極的に請求していこうかとなったような場合には、反面、そういった副業労働者を雇いたくないといったような方向に動く可能性も出てくるのかなというところでありまして、この提案が果たして妥当かどうかという点については、私個人の意見としては疑問に思っているところです。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 先ほどの話を補足しますけれども、自己申告によって、いわば健康確保のために上限規制を及ぼし得るとしても、割増賃金規制もかかることにするかどうかは選択の問題となると思います。
 上限規制をかけたとしても、割増賃金規制については別にすることが、選択肢としてあり得るのではないかという趣旨でございました。
 自己申告をすることによって、割増賃金が発生すると、使用者としては最初からほかの人より1.25倍払わないと雇えない労働者ということになると、そういう方は雇わないし、例えば有期契約であったら次の更新はやめておこうということになる。副業・兼業をしている大多数の方は、収入が低いので副業・兼業をしておられるわけですので、その労働者のニーズにかえって背く結果をもたらしかねない。
 健康の確保が必要だということであれば、長時間規制はやるけれども、割増賃金規制については別に扱う。そういう選択肢もあり得るのではないかという趣旨でしたので補足いたします。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 私も皆様方がおっしゃったことと基本的には同じなのですけれども、自己申告と割増賃金をかけるという、その2つはちょっと矛盾があるような気もします。いずれにしても労働者が正しいことを言っているかは、どこかの段階で問題にはなるのだと思いますけれども、雇用主として見た場合に、自己申告で労働時間を言ってもらったときに、それが逆に言うと、オーバーに言っているのではないかという要素をどのようにコントロールするのかというのは出てくると思います。
 健康管理のほうは、十分論理は成り立つと思うのですけれども、割増賃金を自己申告で進めていくのは、実態上そういうことをやっているところはありますけれども、制度としてはちょっと矛盾があるのではないかなという気はします。
 ほかにどなたかございますか。
 それでは、最後に「その他」のいわゆる異なった種類の兼業とか、雇用・非雇用の問題がございます。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 これも質問みたいになるかもしれません。「その他」の最初の「副業・兼業の性質等による取扱いの差について」の最初のポツで、生産性の向上やイノベーションにつながるかどうかは判断が難しいので、区別の基準になりにくいという議論は、恐らくこの前に、生産性向上とか、イノベーション目的の兼業・副業であれば、特別扱いをするのがいいのではないかという問題提起があって、それに対するリプライだったのかなと思いますけれども、そういう理解でよろしいのでしょうか。確認です。
 
○岸田監督課長補佐
 前回の議論の流れとしまして、参考資料2のほうで、前回の検討事項のペーパーと、さらにそれに先生方の意見を加えたものをつけさせていただいております。
 前回の検討事項の中で、(1)の「副業・兼業を行う労働者の保護に当たっての留意事項」という検討項目の中の3つ目の○です。企業のヒアリングの結果などで「副業・兼業には」のマル1で「企業内だけでは身につけられない幅広い経験を身につけ、生産性の向上やイノベーションを進めるようなもの」で、イメージしているのは、どちらかというと年収が高くて、さらにキャリアアップですとか、そういったものを企業からも求められているし、自分たちもやりたいというような方々です。
 一方で、マル2のように主に飲食業などでバイトのかけ持ちなどをされている方が多いという結果もございましたので、収入面からバイトのかけ持ちをされている方などがいらっしゃるという御紹介を再度させていただいて、そういったいろいろなパターンがあるけれども「使用者の労働時間管理や健康管理の観点から、両者は同一に取り扱うべきか、それとも差を設けるべきか」というような論点提示をさせていただいた結果として、このような御発言があったというものでございます。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 水島委員、お願いいたします。
 
○水島委員
 今回、副業・兼業の推進というのは、今御説明いただきましたマル1の推進だと思いまして、マル2を別に禁止するという趣旨ではないけれども、こちらを積極的に推進するということではなかろうと思います。そうなりますと、先ほど御質問がありましたようにマル1を特別扱いする方向は、大いにあり得ると思います。ただ、前回の意見にありますように、マル1とマル2の区分が難しいので現実的にはないかなと。もし仮に区別ができるのであれば、切り分けたほうがマル1の副業・兼業の推進に寄与すると思います。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 石﨑委員、どうぞ。
 
○石﨑委員
 私は生産性の向上と収入面の区別は、やはり難しいと考えておりますし、前回の御意見にもありますように、いずれもセルフインタレストであるという点で、どこまで違いを認めていいのかというところはあるのかなと思っております。
 仮に区別があり得るとすれば、生産性の向上やイノベーションにつながり、かつ当該企業における何か利益につながるようなものと理解するのであれば、一応企業の利益に還元されるという観点からの区別は可能かなと思いますが、法律の適用を考えたときに、実際にそこをどう区別するのかというのはなかなか難しいかなと思っております。その企業として副業を推進している場合に、労働契約上の配慮義務的なものがより重くなるといった議論は、もしかしたらあり得るのかなと思いますけれども、特に労働時間規制の適用いかんという点で考えますと、そこは区別が難しいかなと思っております。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 松浦委員、どうぞ。
 
○松浦委員
 そもそもの立ち位置に戻ると、副業・兼業は基本的には私生活の領域です。つまり、モデル就業規則で示されているような、本業に支障が出る等雇用者が何らかの不利益を被る場合に限っては、ある程度規制がかけられるかもしれませんが、私生活の領域には介入できないというのが基本原則だと思います。
 そうすると、逆もしかりで、生産性の向上やイノベーションにつながるから促進したいという、そういうコントロールも本来はできないのではないかと思います。ここを分けて考えるのは、やはりなかなか難しいというのが個人的な意見です。
 以上です。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 多分、ここで言う生産性の向上は2種類あって、企業の生産性向上と個人の能力アップみたいな話と両方あって、能力アップのためであったらば、区別をするという議論もあり得るという話ではないかな。ただ、石﨑委員が言われたこともちょっと関連するのですけれども、それが回り回って企業の利益につながるとなると、それはちょっとグレーなところに入ってくるかなという気はするので、やはり私も分けられないのではないかなという感じはします。
 私も荒木先生と同じように、その次のポツで質問なのですけれども、労働者自身の意思に基づいて行われている兼業なのか、それとも使用者の一定の影響下にという話があるのですが、これは先ほどの議論から言うと、今回の議論からはらち外というか、別の話になるのではないかなという気がちょっとします。
 
○石﨑委員
 これは私が申し上げた意見かなと思うのですけれども、御指摘のように副業・兼業の性質という問題ではなくて、恐らく労働時間規制をどう適用するかといったような議論とのかかわりで申し上げた意見と関連する部分でございます。
 
○守島座長
 ありがとうございました。
 ほかにどなたかございますか。石﨑委員、どうぞ。
 
○石﨑委員
 雇用・非雇用についても、これまで御意見が出ているように、非雇用のほうを労働法制で規制することは難しい点は私も同意見なのですけれども、ただ、現行の兼業・副業ガイドラインなどを見ておりましても、個人事業主として兼業・副業を行う場合についても、過労等により業務に支障をきたさないようにする観点から、就業時間を把握することを通じて、長時間にならないように配慮することが望ましいといったような規定は入っているところでありまして、とりわけ健康管理という観点からは、そういった就業時間の把握が望ましいこともあり得るのかなと考えているところでございます。
 ただ、実際問題として立法の仕組みをつくっていくときに、どこまで使用者に健康確保をやらせるのかといったようなところで考えていくと、その際にやはり自営の場合の就業時間も含めていくのが妥当なのか、別途論点になり得るところかと思います。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 武林委員、お願いします。
 
○武林委員
 今の雇用・非雇用の問題、特にポジティブな意味でも一つは雇用で、もう一つは自分で起業されるような非雇用ということは想定されているのだと思うのですが、実は先ほどから割り賃を含めていろいろな議論を聞いていて、きょうずっと議論をしてきた最初の健康管理もひっくり返すようなことなのですけれども、もし割り賃がなしという方向に行くのであれば、実際に日々なり月々の総労働時間の把握ということの実効性がかなり難しいことを認めざるを得ないと思うのです。
 そうすると、何のために時間を通算するのか、ちょっとまだしっくり来ないところが正直に言ってありまして、もし健康管理という観点であるのであれば、例えばもともと最初の時点で雇用主のほうは兼業・副業をするかどうかは、労働契約のところでも出てくると思います。例えばその時点で、今でいう長時間の面接指導の枠組みに入れてしまえば、別に時間の把握は無理にしなくても、健康障害の防止も可能になりますし、というのを今思いついたのです。今の雇用・非雇用の議論も、それを申告した時点で長時間の枠組みに入れてしまうという、例えばですよ。
 
○守島座長
 非雇用も入れてしまうのですか。
 
○武林委員
 はい。申告があって入れてしまうということをすれば、無理に精度が問われる自己申告の総労働時間の把握のことは、すっ飛ばしても、別の理由があれば別ですけれども、健康障害の防止という観点は、メンタルヘルスのストレスチェックはもともと全員対象になっているわけですから、そうすると、主要な問題である2つの問題とも、余り労働時間のことは気にせず、特に本人の自由のもとにきちんと申告をしていただいて支援をする。
 もう一つの意味は、最初に申し述べたようにそもそも兼業が悪いのか、主が悪いのかを健康管理上区別できない以上、どんな形であれきちんと健康管理を受けていただくという仕組みとしては、もうそれでいいのではないかという気もいたしました。
 すみません。思い切った意見ではありますが。
 
○守島座長
 かなりオープンになってしまいましたけれども、ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 今の議論は1つのソリューションだと思うのです。別に反論しているわけではないですけれども、難しいのは非雇用といったときに健康を害する活動というか、健康に支障のある活動は、非雇用なのだけれども、労働活動をしていない場合でも十分起こり得るわけですね。そのグレーゾーンが結構あって、そこのところはどのように、例えばボランティアであるとか、そういうものをどのように考えるのか、ちょっと考慮する必要はあるのかなと感じはします。
 
○武林委員
 それはそのとおりだと思います。そもそも雇用・雇用の中でも、もしかすると総労働時間の把握をどう考えるかというのは、今みたいなことでもいいのかなとちょっと思ったものですから。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 荒木委員、どうぞ。
 
○荒木委員
 武林先生のお考えは、大変私も共鳴するところが大きいです。
 労働時間規制は、労働者の健康確保ということですので、健康確保が目的だとすれば、何も労働時間を必ず通算するのだけが唯一の選択肢ではなくて、労働時間規制ができたときは、工場労働者のような肉体労働者が8時間以上働いたら健康を害するだろうということからできてきたのですけれども、非常に多様な働き方がなされている中で、健康確保のためにはむしろストレスチェックとか、別の方策が有効かもしれないということであれば、それで同じ目的が達せられるのであれば、技術的に非常に困難な問題がたくさんある通算をどこまでやっていくか。いずれの選択がより妥当なのかというのは、十分に議論して詰めるべき課題だと思いました。
 
○守島座長
 ありがとうございます。
 ほかにどなたかございますか。
 健康管理まで戻っても構わないですけれども、最後にどなたかお話をされたければ、お願いします。
 よろしいですか。
 最初に石垣課長が言われた多様性を持ち込むというよりは、多少収束的な議論になってしまったような感じもしますけれども、いずれにしても皆様方、議論を出していただいて、どうもありがとうございました。
 あと、10分程度でございますので、ここで終わりにさせていただければと思います。
 それでは、本日の議論でさまざまな論点について、新しい方向が出てきたものもあり、整理も進んだのではないかと思います。どうもありがとうございました。
 次回の進め方については、私と事務局でまた整理させていただいて、御連絡をさしあげたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
 
(委員首肯)
 
○守島座長
 では、そのようにさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします
 それでは、これにて第7回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を終了いたしたいと思います。
 皆様方、お忙しい中、どうもありがとうございました。