第2回 未来イノベーションワーキンググループ 議事要旨

日時

平成31 年2 月18 日(月曜日)18:00~20:00

場所

厚生労働省本館12 階専用第15 会議室

出席者

委員(五十音順)

出席者(厚生労働省)

出席者(経済産業省)

次第

○開会
○経済産業省 藤木商務・サービス審議官より挨拶
○事務局より資料に基づき説明
○4グループに分かれてワークショップ
○各グループより発表
○討議

配布資料

議事

○グループ1(医療・介護過疎化への対応)より発表
・ 過疎地では一つの職種が他の機能も持つ「多能工」でなければいけない。そのときに、
 スタンダードオブケアといって通常のガイドラインで行える全てのことではなく、僻地
 なりのミニマムリクワイアメントを満たすガイドラインを制定し、それに基づいてトレ
 ーニングを施した形での権利委譲をしていく必要がある。
・ そのときに必要な検査キットなどの開発プロセスにおいて、現場が必要としているもの
 を絞った上で明らかにする引き算の開発が必要である。
・ 「互助」の観点で、隣にいる高齢者でも簡単に使えるようなテクノロジーを使わなけれ
 ばならない。
・ 人は、人の役に立つと幸せを感じるので、最終的にお年寄りがお互いに貢献できるよう
 な形に持っていく必要がある。それは現場・実社会だけでなく、バーチャルリアリティ
 で距離が離れた人に対しても互助ができるようなテクノロジーもあってよいのではな
 いか。
・ 僻地での在宅医療の問題は「24 時間の壁」という点があり、夜不安なため施設入所にな
 ることがあるが、それを克服するためには困ったことを通報してくれる見守りロボット、
 全体を俯瞰してAI を含めた形で見守ってくれるスマートハウス、ロボットを介した形
 でもよいが遠隔でトイレ介助ができるものが必要になるのではないか。
○グループ2(医療・介護集中への対応)より発表
・ 都市部なのでインフラは揃っており、減るといっても医療機関・介護機関が一定数はあ
 る。そしてある程度人口は落ち着くが、超高齢者が増え、大半は独り暮らしであり、介
 護施設に入りたくないだろう、という前提の中での理想の姿として、かなりの超高齢者
 で独り暮らしの人であっても可能な限り自宅と言われるところで生活ができるように
 したいということを理想的な姿とした。
・ 独り暮らしの寂しさなどはVR でのコミュニケーションなどである程度は解消されるの
 ではないか。また医療機関・介護施設も需要が増えるが、個々の医療機関・介護施設で
 考えるのではなく、医療や介護に関する規制・現在の枠組みを解体していく必要がある。
 そのための指標としては、経済的ではなく個人の幸せ・満足度を定量化する指標を作る
 ことが一番重要ではないか。それがひいては社会としての幸せの定量化につながる。そ
 れをアウトカムにした上で、そのアウトカムをしっかり出していけるサービス・技術が
 正しく評価され経済的に回っていく必要がある。
・ いくつかの前提条件として、高齢者の家の中である程度介護、生活補助をするロボット
 の開発、VR、IoT の進歩、地域における医療機関・介護のサービスが地域全体として最
 適化されるシステムが作られていなければならないだろう。
・ 子育てしたい世代は郊外へいき、「住み替え」により自然な流れとして高齢者が介護・
 医療機関の近くに集まり、施設に入れるのではなく自宅として住む流れを作っていく必
 要がある。ただ、東京は地価が高すぎるので、東京はもう少し分散しなければこの話は
 進まないのではないか。
・ 東京以外の大都市であればこういったことができると思う一方、個々の技術がきちんと
 育っていかないと難しい。きちんとアウトカム評価がなされて、経済的に回るのであれ
 ば技術進展は進み、ロボットはどんどん開発されていくだろうという見通しである。
○グループ3(テクノロジーを活用したインクルージョン)より発表
・ 理想的な姿として、認知症または身体介助の必要な要介護高齢者または独居の高齢者・
 障がい者の方たちがつながって生活できることだけでなく、例えば刑務所から出てきた
 人やユニークフェイスの人の受容の様に、想定される多様性より多様な社会をどう想定
 していくかが重要。
・ インクルーシブなテクノロジーを一言で言うと、「孤立した人が『うーん』とならない」
 ということが重要。「うーん」というところに全てが凝縮されているが、皆が孤立した
 なかでも「これでいいのだ」と思える気楽な社会や、諦めなくていい社会が理想的な姿
 で、選択が多様で受容的な社会をどうテクノロジーがサポートするかである。
・ サポートとエンパワーの仕組みだけでなく、まず気づきをどうテクノロジーで作るかが
 重要。例えば健康診断のマイナンバーへの紐づけや、心身の不調や、虐待や会社で嫌な
 ことがあったといった「社会性としての」不調にどう皆が気づき、テクノロジーでどう
 気づかせるかという点、社会システムとしては「発見」、本人としては「気づき」という
 点が非常に重要。その手段は気づくチャットボットや、「もしこれを言い出したら社会
 的に終わるのではないか」と思うことでも無限にやり直す仕組みがあることとそのやり
 方を、あらゆるテクノロジーを使い啓蒙することなのかもしれない。またそういったこ
 とを本人が気づくようなインタフェースの、高齢者の方でも使えるようなアクセシビリ
 ティを考えたような設計論をどうするかが重要。
・ 気づき、サポートと補助、エンパワーしていくというテクノロジーを使った三段構成の
 真ん中として、社会参画を容易にする環境、これは多様な人に多様なゲーム、ゲームと
 は仕事やタスクなのかもしれないが、それを与えられる環境がある。事例として認知症
 の方が注文を間違える料理店というものがあり、注文を間違えても大丈夫なようにテク
 ノロジーがサポートしている。能力や多様性を認められる環境作り、ソーシャルワーカ
 ーをサポートするSNS や事務手続きからの解放、隣の人と同じ気分になるためにコンテ
 キストを共有するテクノロジーがあればその人の背景が分かり少し多様になるのでは。
 それのクラウドソーシングでの解決、お互いが自分のタスクをはめられる環境という点
 で社会を柔軟にする。
・ その後エンパワーするのに、例えば皆が安心して暮らせるような励ましbot、経験専門
 家出会えるSNS、外出する気になるような楽しいコミュニティの形成、今まで注目され
 てこなかった自閉症の人や高度障害の人が突然動いてしまうようなことのほうが、スー
 ツを着けて重たいものを持ち上げていくより検出も困難であるしサポートも難しい、こ
 ういった課題を2040 年代のテクノロジーでは解けているべきである。
○グループ4(予防)より発表
・ 「誰にとっての理想的な姿なのか」という点が非常に重要であり、主体としては政府、
 想定するペルソナ、個々というよりも、「みんなの幸せのための健康実現」を理想的な
 姿として位置づけた。
・ そこに向けた提供したい価値は、大きくまとめると、支えあったり守りあったり助け合
 う社会、自己実現や承認欲求や自己納得できる社会、「健康投資型の社会」で攻めるこ
 とができる環境の3 つである。
・ この3 つの価値を提供するにあたってのアプローチとしては、まずはリスクをしっかり
 可視化することである。一方で、いくら「リスクがある」といわれたとしても、ほとん
 どの人が行動を変えないだろう。その行動を変容させるという部分が非常に重要で、そ
 れぞれの人たちの行動変容のレバーをしっかりと見つける必要がある。リスクの可視化、
 行動変容のレバーを見つけること、行動変容のレバーをしっかりと踏まえた上での多様
 な介入方法の用意、その多様な介入方法の実装、この四つが全てパラレルに成り立って
 いないと予防というものは成り立たないだろう。
○討議
・ 今日はエビデンスが十分にないので議論はできないが、2040 年になると人工知能の社
 会における役割が深まり、例えば正解を求めるような部分は人口知能が活躍できるよう
 になる。そうすると人の社会でのあり方や社会の構造が変わるため、それを受けての今
 日議論されているような問題の変化も見ていかないと解けないことがあるだろう。
・ 例えばより安く良い物を作っていく時には、資本主義の競争原理が非常に重要なドライ
 ビングフォースとして社会の根底にあるが、機械学習の強化学習を使い、競争をして良
 い物を作らなくても最適解を出せるとなると、従来型の競争社会が不要になり、心のあ
 り方や人と人との関係というものが変わり、もう少し生きやすい世の中になっているか
 もしれない。
・ 幸せを感じ続けるようなチップを埋め込めばいいのではないかというように、テクノロ
 ジー先行だとディストピア的な話になる。2040 年頃になるとおそらく技術や様々な価
 値観が変わっていくが、人間が健やかな気持ちで生きられるという点を価値基準として
 残していただきたい。
・ 「健康至上主義」「健康がとにかく是」ではなく、これからの価値観というものが、「個
 人」対「社会」、「生死」から「自己実現」「承認欲求」というレイヤー、リスクにおいて
 も今分かっていないリスクについてなど様々なレイヤーにあるが、それを「幸せインデ
 ックス」のような形にすること自体が間違っているのではないかという発想がある。
・ 様々な意見があると思うが、健康の定義自体が色々変わるだろう。今までの「生き死に・
 病気を治す」から「承認欲求・自己実現」へ、という個人のレイヤーでの議論、社会の
 レイヤーでも対人だけではなくテクノロジーも含んだ定義などの軸で議論をさせてい
 ただいた。
・ 今日の議論をどう活かすかという点では、テクノロジー、社会システム、経済メカニズ
 ムの三者のトライアングルをどううまく設計していくかにかかっている。幸せ指標のよ
 うなインデックスを打ち出すことは、一つのシグナリング効果を社会に与え、社会シス
 テムと経済メカニズムとの間に調整メカニズムを入れるということである。テクノロジ
 ーに様々な可能性はあるが、社会システム、経済からのシグナリングがないとそこの分
 野にはリソースが集まらないため、三者のバランス、組み合わせをどう考えるかが重要
 である。
・ 日本は、コストはかかるが比較的選択の多様性を認める。他国と比較して相対的にそう
 いった考え方が基盤としてあり、そこが日本型システムの特徴になるのでは。
・ 社会の形・全体についてバランスを取りながらよく考える必要がある。例えば、中国に
 おける社会主義的な考え方やサイバーセキュリティがどう変容するのかも含めたかな
 り大きな変化の中で、こういった業界の問題も考えていく必要があると思う。
・ 興味があるのが、脳のニューロンを再生できる様になるのかどうかという点である。技
 術的には非常に難しいと思うが、これができるようになると高齢者という定義が相当変
 わるはずであり、若い人と知的には全く変わらなくなるという社会がやってきたら素晴
 らしいのではないか。
・ 今回2040 年という時間を区切ってのイノベーションの話をしているが、AI などがある
 前の教育とAI が出た後の教育というのは随分様相が異なっていることを踏まえて、新
 しいイノベーションが2030 年、40 年、50 年と持続的・継続的にできる人材育成の生態
 系をどう作っていくかもトピックスになるのではないか。
・ 例えば「多様な価値観を思う教育である」といっても、多様な価値観と教育が裏返しに
 なっているフレージングでもあり難しい。「教育だ」という話だけでは議論停止になっ
 てしまうため、そのフレーズにならないようにするためにはどうすればよいかは議論の
 中でも踏み込んでいきたい。社会に対して何かを発信するもの、学校教育のように幼少
 期から行うもの、リカレント教育の様に社会に出てからの学び直しなど、いくつか教育
 といっても方針があるため、そのようなセクションの議論がないとうまく伝えられない
 のではないか。
・ 「人が何をやるべきか」「機械が何をやらせるか」「社会制度をどう整えるか」をバラン
 スをとって考えていくべきである。
○厚生労働省 迫井大臣官房審議官
・ とても有意義な時間であった。
・ 「実現したい・提供したい価値」そのものの部分から立ち返っての再構築・整理や、行
 間を埋めるコメントも頂き、最後のラップアップも非常に学びの場として有意義であっ
 た。