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- 第1回 未来イノベーションワーキンググループ
第1回 未来イノベーションワーキンググループ
日時
平成31年1月25日(金曜日) 18:00~20:00
場所
厚生労働省本館17 階専用第21 会議室
出席者
委員(五十音順)
- 佐久間座長
- 渋谷副座長
- 安宅委員
- 飯田委員
- 市橋委員
- 落合委員
- 香取委員
- 熊谷委員
- 後藤委員
- 坂田委員
- 桜田委員
- 鈴木委員
- 田宮委員
- 辻井委員
- 中野委員
- 堀田委員
- 本田委員
- 松尾委員
- 山本晴子委員
出席者(厚生労働省)
- 根本厚生労働大臣
- 諏訪園審議官
- 迫井審議官
- 佐原審議官
- 森審議官
出席者(経済産業省)
- 磯崎経済産業副大臣
- 藤木商務・サービス審議官
- 江崎商務・サービス政策統括調整官
- 西川ヘルスケア産業課長
- 富原医療・福祉機器産業室長
プレゼンテーター
- トーマツベンチャーサポート株式会社 木村氏
議題
○開会
○厚生労働省 根本厚生労働大臣より挨拶
○経済産業省 磯崎経済産業副大臣より挨拶
○事務局より資料2、資料4 に基づき説明
○佐久間座長よりプレゼンテーション
○落合委員よりプレゼンテーション
○トーマツベンチャーサポート株式会社 木村氏よりプレゼンテーション
○後藤委員より資料7 に基づきプレゼンテーション
○討議
○厚生労働省 根本厚生労働大臣より挨拶
○経済産業省 磯崎経済産業副大臣より挨拶
○事務局より資料2、資料4 に基づき説明
○佐久間座長よりプレゼンテーション
○落合委員よりプレゼンテーション
○トーマツベンチャーサポート株式会社 木村氏よりプレゼンテーション
○後藤委員より資料7 に基づきプレゼンテーション
○討議
配布資料
議事
- ○厚生労働省 根本厚生労働大臣より挨拶
- ・わが国は例のない高齢化・人口減少社会を迎えており、厚生労働省でも2040 年を展望
し、部門横断的な検討を行っている。2040 年の高齢者のピーク・生産年齢人口減少から、
医療福祉サービスの担い手の確保が課題となり、医療福祉現場の革新を通じた生産性向
上が急務。より長期的な展望により先端技術と人が共生する未来社会を含めた戦略策定
が必要。
・ この戦略策定は、日々の暮らしの中に先端技術が溶け込んでいる社会を想定し、そこか
ら医療福祉サービスがどのように変容するかをバックキャストして考える。この実現の
ためには産業界の参画や民間投資、イノベーションを活性化する施策や、政府の研究開
発戦略のあり方の議論が必要である。その内容を議論する場として、今回経済産業省・
厚生労働省などで連携して未来イノベーションWG を立ち上げた。
・ 例のない高齢化・人口減少社会を迎えるにあたり、分野の壁を越えて叡智を結集するこ
とが必要であるため、既存の枠組みを越えた自由闊達な議論を交わしていただきたい。
- ○経済産業省 磯崎経済産業副大臣より挨拶
- ・ 人生100 年時代に向けて生涯現役社会の構築に政府として取り組んでいる。その中でも
次世代ヘルスケアシステムの構築は重要な柱であり、未来投資戦略に基づき推進をして
いる。
・ 経済産業省では先進技術により様々なデータ・機械・技術・人・組織などをつなぎ、新
たな付加価値の創造と社会課題の解決を推進している。またスタートアップを含む新た
な産業や自治体、さらには医療・介護の専門家とのネットワークを形成することで、新
たなヘルスケアサービスの促進をしている。
・ 産業界の医療・介護分野への積極的な投資を呼び込むためには、官民による中長期的な
ビジョンの共有が必要である。本WG では2040 年に向けて、必要な技術革新、社会シス
テムの変化についての協議を行っていただきたい。その上で、経済産業界が医療介護に
どのような影響を与えるかについて検討を行っていきたい。さらに大阪万博では生き生
きとした超高齢社会のあり方とそれを支える医療・介護のあり方を全世界に披露する場
となる。
・ 本WG は2040 年を見据えた議論を経済産業省と厚生労働省が一体となって行う初めての
場であり、委員の皆様の議論に大変期待している。是非忌憚のない意見をいただきたい。
- ○事務局より資料2、資料4 に基づき説明
- 資料2、資料4 に基づき説明
- ○佐久間座長よりプレゼンテーション
- ・ 「生命は複雑系だ」という先ほどの話があったが、分子生物学がかなり進歩をした一方、
まだ分からないことがあるため、様々なものを統合的にまとめるということが必要であ
ると考えた。そのときに工学・技術は定量化、精密操作、統合化などを多階層に渡って
実行することが必要である。そのときに情報工学・数理工学などを使いながら、いわゆ
るウェットな情報などをまとめることが必要であるし、また、ロボット等を使って非常
に精度よく再現するということが必要になる。
・ その中の技術として、(1)生体を「識る」技術:単なる計測ではなく、血液チップや京の
プロジェクトに代表される予測のための技術、(2)「制御する」技術:前世紀はたとえば
悪くなったら切除・交換していたが、メカニズムを知った上で回復力や再生能力を刺激
する治療がある。(3)「置換する技術」:再生医療のように自然回復や自然治癒ができな
い部分への対応、の3 点が研究として進めるべき必要な技術である。
・ こうした技術研究を進める際に、中心にあるのは人体と分子・物質・情報や電気刺激も
含めたシステムの相互作用の理解が必要になり、すぐれた工学技術シーズとなる。これ
を医療技術に適正条件で使うための臨床研究、社会に安全に導入するためにレギュラト
リーサイエンスと言われるものが必要である。加えて社会実装のためには産業と接続し、
サークルを作ることが必要である。
・ 将来像としては「病院を外来に」「外来を家庭に」「家庭で健康に」ということを言って
いる。病院で入院する期間を短くすることが必要であるが、そのためには家庭で簡単に
使えるような医療機器が必要であり、それをつなぐのは情報ということになる。一方で
予兆を測るという点はモデリング等が必要である。そうすると、健康リスクが見える化
され行動変容につながるだろう。これらを総合的に考えるということが必要。バイオマ
ーカーなどで早く検出するだけではなくて、こうすれば良くなるということを指示する
必要があると思う。一方で計測情報が統合されてくると、治療を最適化するという方向
に向かい、「日帰り治療」につながる。ここにはロボット等の技術が入ってくるところ
になると思う。
・ 一方で再生医療等の技術も該当する病理の管理も重要であるし、自分で出来る日常計測
などによる病気の重症化防止も重要なことだと思う。また技術としては、たとえばウィ
ルスが決まると抗体分子をこれまでの知識とAI などの技術を用いてかなり確度よく設
計出来る時代になっている。私の研究テーマだが、超音波技術と抗体技術を組み合わせ
ると非常に標的性の高い治療が可能である。
・ 生命科学の実装については、従来は自然発生することを考えてきたが、目的に合わせて
生命科学の知識を使って、色々なものを合わせることが必要だろう。
- ○落合委員よりプレゼンテーション
- ・ 我々が指針として考えているのは、どうすれば社会に多様性をもたらすことが出来るの
かといったことを考えたときに、体力が弱ってきた人や認知能力が弱ってきた人にコン
ピュータを使ってさらにインクルーシブな社会にしていけるかということが、我々が
2030 年に向かって目指すべきところだと考えている。全員の能力をどう補うことが出
来るかということである。
・ 我々のプロジェクトは「クロスダイバーシティ」という名前で呼ばれており、我々が意
識的に取り組んでいるのは、個別課題から現場共通の課題への掬い上げについてである。
高性能な科学という点ではなく、AI や既存のハードウェア、コストの安いソフト、スマ
ートフォンなどを使った問題解決方法を、オリンピックなどの契機とあわせて模索して
いる。たとえばこの電動車いすはかなり昔から使っているものであるが、全天球カメラ、
コストの安いハードウェア、操作補助での人間検知も非常に低コストで出来るようにな
っている。そういうときに、たとえば追従走行でマーカー付であれば、非常に安い価格
でタブレットをディスプレイにして使用可能である。そのようなハード機能の現場での
ワークショップによる使える機能の吸い上げ、外部カメラとして低コストで現場に配備
出来るものの検証といった作業を行っている。
・ 画一的な認識アルゴリズムや一般物体認識アルゴリズムを我々の国のIT 企業が完成さ
せるのは非常に難しいと考えており、一つ一つの課題へタスク思考でアプローチしての
問題解決は出来る可能性が高いと考えてプロジェクトを行っている。
・ 我々が考えている当該分野の課題として、技術面では少ないデータセットでの学習方式
や、個人に合わせたチューニング時のユーザ側の入力インタフェース、デジタルファブ
リケーションによる身体性の拡張などが挙げられる。社会面としては、アカデミックを
含めた分野融合でこういった技術評価を支えるための方法や、ユーザ層へリーチしての
コミュニティ形成が挙げられる。これらを一気通貫で課題解決するためには、オリンピ
ックや万博が開催され社会機運が醸成される今、取り組むべき。
・ 去年はオーケストラと組んで、耳の聞こえない人のための音楽会を実施した。インクル
ーシブに普通の人も耳が聞こえない人もエンターテイメントとして楽しめるように作
り、社会の中でそれが立つ位置を探していくというのは面白いことだと思っている。ま
た、最近では「五体不満足」で著明な乙武氏用の高性能の義足を作り、デジタルファブ
リケーションによる義足の一つのムーンショットである「歩くアプローチ」により、問
題解決をしながら社会認知をあげることでチャレンジしてくれる人が増えるのではな
いかと検討している。個別の事例からの社会認知の獲得と、個別問題のタスク思考型で
の解決と現場へのフィードバックについては、乙武氏のようなユーザのサポートを得な
がらプロジェクトを進めていくことが重要である。
・ 我々はちょうど今プロジェクトの真最中であり、データセットのない変数をどうやって
オープン化するかなどの問題を解きながら、研究組織とタスク思考からのPoC で社会実
装を目指すということを行っている。使えるツールは2030 年くらいまでを考えると5G
やエッジデバイスの処理、ディープラーニングによる偏微分の自動化などではないかと
思っている。
・ 最後になるが、AI をどう学習させるかは非常に大きな課題で、それをユーザに教える必
要がある。
・ 身体介助に関する問題は普通の人にとってはソリューションがシンプルで、シンプルが
故に課題が分からないところから問題が出てくるが故にユーザ数も広がらずユーザ層
も分からずソリューションも共有しにくいが、高齢社会のときにこの点をどうスケール
モデルに変えていけるかが成長戦略であると考える。
- ○トーマツベンチャーサポート株式会社 木村氏よりプレゼンテーション
- ・ Aging 関連スタートアップへの出資額は、直近3 年間で過去の5 倍に増加している。約
500 億円の水準で、日本でのベンチャーへの投資額が約2,000 億円であるため、一定の
規模となっている。特に(1)コスト削減(2)ウェアラブル×AI(3)認知症の分野に投資されて
いる。
・ 海外での事業者や社会コストで特に高負担のものは日本と同様一番は人件費になって
おり、米国では介護の離職率が40%と深刻な問題である。緊急対応の増加や、在宅への
移行が進まないことも大きな問題となっている。それに対応する対応策として、オート
メーションやロボティクスやウェアラブルデータのAI 活用という策がとられている。
・ ケアプランの遂行の初期段階のコミュニケーションを音声AI アシスタントによって行
うベンチャーでは、老人がエンゲージされ一人当たりのケアギバーの労働時間が一日あ
たり3 時間削減され、全体で22%のコスト削減に結びついている。また、記録のオート
メーションとして介護士のサポートなく、患者が指カフだけでFDA レベルの血圧や血中
酸素濃度を測定出来るベンチャー企業があり、介護者の負担を軽減する取組みが進んで
いる。
・ ロボットスーツの活用については、当初はリハビリ用から進展してきたものが、介護士
の負荷軽減へと発展してきている。デザイン性の高いウェアラブルを開発する企業も増
えてきている。一方で現場レベルではコストや緊急対応時の装着の迅速性が課題となっ
ており、現場への浸透が遠い状況となっている。
・ ウェアラブル×AI については、従来のバイタルデータを取って個人が確認するという
ところから、良質で多様なデータが取られて、そこからインサイトが導かれて、音声に
よってケアを受ける方にフィードバックされるようなサイクルが回り始めている。
・ 現在ウェアラブルではほとんどのデバイスで歩数やカロリー、血圧、心拍などが測られ
ており、データの質も高まっており、FDA 承認を受けるようなデバイスも増えてきてい
る。このデータを統合解析することによって、今まで原因分析や特定のデータからの特
定疾病の検知程度だったところから、日常生活のデータの解析による将来予測やインス
トラクションを出す方向へと進展している。今まで現場に行きながらそれぞれケアを受
けたり、健康状態の改善を行ったりしていたものが、一箇所にデータがまとまり、その
データに対してAI 解析が行われて、遠隔でケアが受けられる時代へと発展してきてい
る。
・ Care Predict という会社はこの分野での先端企業となっており、位置センサーと加速
度センサーを使って、生活習慣をモニタリングする仕組みとなっている。生活習慣に着
目してその中から日常生活の異常や、特定疾病の異常を検知し、音声やケアギバー経由
でユーザにフィードバックする仕組みをとっている。Q Medic という企業はプラスアル
ファでバイタルデータを加えている点が特徴である。これらの企業も直近で資金調達を
しており、ソリューションの広がりが見て取れる。
・ AliveCor という心電図のパイオニアの会社ではアライアンス先であるMayo Clinic か
ら1,000 万の心電図のデータが提供されており、こちらの企業で取得したプロレベルの
心電図データを合わせて解析が行われている。AppleWatch も同様の機能を発表して大
きな話題となっている。
・ 米国を中心にテクノロジーの利用が進んでいる背景として、保険のカバー範囲が非常に
狭く、負担も大きいため消費者・患者への経済的インセンティブが非常に強いことがあ
げられる。質の高いケアに対する対価が取れるという考え方が進んでおり、事業者側に
も導入のインセンティブがある。補助ロボットスーツに関しては、介護士離れが日本よ
り深刻な問題となっており関心が高い。ウェアラブルも非常におしゃれで、テクノロジ
ーを活用することがクールであるという文化の醸成が進んでいる。
・ 認知症のソリューションの種類の中でも、予防については世界的な権威が続々と脳トレ
の分野に参入してきている。検知に関しては客観的な指標を確立する上で手軽に拡張性
を持って診断可能かという観点で音声に注目が集まっている。タブレット上に映し出さ
れた情景を言葉で説明する時に発生する文章の揺らぎなどから認知の低下を判断する
ソリューションを提供しているベンチャーは、手軽さと拡張性が評価されている。この
ベンチャー以外にも多くの企業が音声に取り組んでいる形になる。それ以外にも今まで
非常に高価であったMRI やCT を置き換えるソリューションを開発しているベンチャー
企業もある。
・ インクルージョンは非常に重要なテーマになっており、Hogeweyk というオランダにあ
る村では認知症の方とケアを行う方を一緒に混ぜて共生させるような取組みがなされ
ている。認知しやすいサインの表示などの配慮により認知症の方が普段どおりの生活を
行えるという点がポイントになっている。フランスで2019 年にオープン予定の村も出
てきている。この様にいかに認知症の方と普通の方を一緒に共生させるかが世界的なテ
ーマになり、大きなムーブメントとなっている。
- ○後藤委員より資料7 に基づきプレゼンテーション
- (資料7に基づきプレゼンテーション)
・ 「イノベーション」を考えたときに、ヘルスケア業界に限らず、生まれた技術が全く社
会に受容されないケースは枚挙に暇がない。「イノベーション」とは単純に優れた技術
だけではなく、それを受け入れるための「社会システム自体のイノベーション」という
ものも考えられるのではないか。実際、イノベーションと医療のインフラというのが密
接に絡み合い、日本の目指す地域包括ケアモデルの電子化バージョンが、局所的ではあ
るが実装されている例があるのではないかと思う。
・ イノベーションの構成要素においては、単純に技術やデータだけではなく、コストを負
担のスキームやインセンティブの付与、組織のあり方・組織間連携がある。また、一番
重要で見過ごされがちな部分かと思うが、患者・医療従事者の働き方・価値観の変容を
促すためのコミュニケーションや教育、エンゲージメントが大きなポイントになるので
はないかと思っている。
・ アメリカはある意味で皆保険制度ではないという点が奏功し、保険者の自助努力でこう
いった包括モデルが局所的に生まれ、逆にヨーロッパは国主導で取組みが進んでいると
いう例が多いと考える。イギリスやスウェーデンの例が多いが、薬価制度の中で費用対
効果の検証をかなり早期に進めており、薬価制度のイノベーションとこういった包括ケ
アにおける価値の考え方もリンクしてきているのではないか。
・ Iora Health は2010 年に設立されて以来250 億円程度の資金を調達しており、米国で
最も成功したベンチャーの一つといえる。この法人にテクノロジーの面で特筆すべきも
のはなく、彼らのミッションは「ヘルスケアに患者の尊厳を取り戻す」というものであ
る。医療データの統合や患者自体のデータへのアクセスは手段であり、一番のバリュー
は患者にあった形でのチーム医療の展開と患者のコミットメントである。入院患者が4
割減った、外来の救急搬送が3 割減った、コストが2 割くらい減るというコスト面の貢
献もある一方、重要なのが、これを通じた患者の満足度とケアに対するコミットメント
の向上である。
・ 技術的なハードルだけでなく、社会実装を目指していくための価値観・行動変容を促し
ていくためのイノベーション、それを実現するための組織間連携を考えていくことで、
地域包括ケアのその先、地域包括ケア3.0 のような世界が見えてくるのではないか。
・ オランダにおいても国主導でデータのインフラをだけでなく、患者や医療従事者の巻き
込み、あるいはそれを戦略的に実現していくためのコミュニケーションも考えている。
- ○討論
- ・ 2040 年、医療費が90 兆円のレベルにきてしまうと医療費が財政や経済を圧迫して、皆
保険が破綻し、富裕層だけが治療を受けられるようなすさんだ社会になるのではないか
という不安を感じる。
・ 我々が自然科学の立場として持続可能な医療を実現するためには、個別のニーズを解決
するパイプライン型の技術開発だけではうまくいかず、多様なステークホルダーが広く
使えて、使いたいと感じるプラットフォーム型が必要になり、この定義が必要である。
・ 生命はロボット・機械と異なるため、生命をありのままに表現出来る新しい生命医科学
のプラットフォームが必要である。生命医科学と数学、データと機械学習、人間の知性、
アートと人工知能の技術の融合、こういった知の基盤が出来るようなプラットフォーム
が出来ることが日本が取り組めるムーンショットであると考える。こういったプラット
フォームは問題が相互作用するようなSDGs の多様なニーズをすべて答えていけると考
える。
・ 日本人は自然との共生を行いながら西洋の自然科学をとりこんだ歴史があるため、日本
だからこその生命医科学の新しいプラットフォームが出来るのではないかと考える。こ
れはグローバルに利用され、経済的な意味でのイノベーションを引っ張っていくだろう。
生命科学が根幹にあった上でのアプリケーションであるため、生命科学をもう一度しっ
かりやっていくことが鍵になる。
・ 行動変化を起こすために「期待」の役割に注目している。東大発ベンチャーを「期待値
ビジネス」と呼んでいるが、医療福祉分野は潜在的な付加価値が大きい一方ハードルが
高いとビジネスサイドからは思われているため、多様な技術領域を呼び込むために認識
変更が必要。
・ 自動運転の分野や非常に堅い分野だと思われていたエネルギー分野でも非常に大きな
動きが胎動しつつある。これらを踏まえると、この委員会を通じて社会が進む先の先を
しっかりとコミットし、例えば住宅・都市・農業・モビリティといった従来の社会保障
制度が対象としてこなかったような領域とつながり、コミュニケーションをとることが
重要ではないか。
・ 循環器領域では重要なのは技術ではなく、生活リスク・危険因子をコントロールである
ことは分かっているが、サイレントマジョリティの国民は病院に来ないためそれができ
ない。
・ まず患者を減らした上で、減った患者に対して先進的な技術を導入していくことを同時
並行で行う必要があると思う。
・ 2040 年のムーンショットとしては、サイレントマジョリティの国民のインセンティブ
を上げてどんな理由でもよいから生活習慣病を減らしてほしい。
・ もうひとつのムーンショットとしては、循環器疾患を半減するなどのために技術を使う
方向にしていただきたい。
・ 遅れた慣習や時代遅れの規制は非常に大きなボトルネックである。
・ 提供者側も受け手側も支払うリソースが何であるかは行動を規定する非常に大きな部
分であると思うので、技術的なものと社会システムの両輪でバランスよく議論していか
なければ将来に向けたドライブがかからないのではないか。
・ 医療はともすると、「ある疾患を減らす」「健康寿命を延ばす」といった議論がメインに
なるが、これからはエンパワーメント、個人の自己実現やケイパビリティ、潜在能力を
どう出すかという方向に変わり、テクノロジーと社会価値が新たな形で結びついて、命
に関する新たな定義づけが進んでいくのではないか。
・ AmazonGo のように、自分の体自体がスマホのようになり、自分と社会の新たな関係性が
出来て、自分が自分の主治医になる時代が遠くない未来に来るだろう。そうすると今の
医療制度を規定している医師法の定義づけは実質的には変わっていかざるを得ない。そ
ういったテクノロジーと社会と法制度の接点などが2040 年に向けて変わっていくとい
う点をもう少し議論していきたい。
・ SDGs の流れは無視できず、「誰も取り残さない」、「困った人にもきちんとした医療や価
値のあるものを提供する」ということをSDGs の観点から価値として加えていただきた
い。
・ 非常にVibrant な技術の展開が起こっている中でデータの取り方も多様化していく一
方、それを蓄えていく中央のデータベース部分は時間とともにかなり変わってしまうた
め、個別のVibrant な技術とある種の持続性を持ったデータの収集機能やエコシステム
と呼ばれているようなものをどのようにすり合わせていくかがかなり大きな問題にな
っていくだろう。
・ どういうインセンティブを与えて、ひとつの統合したものを作っていくのかは置かれて
いる社会のあり方に非常に影響される。例えばアメリカとヨーロッパでは違ったエコシ
ステムの作り方をせざるを得ない。日本はその意味合いではアメリカ型ではなく、ヨー
ロッパ型でもないが、そういった社会の中でボトムアップ的な動きと全体をまとめてい
くシステム構成をどう作っていくのかというのがこの委員会の大きな課題になるので
はないかと考えた。
・ 先ほどアメリカは皆保険でないことがメリットであったということだったが、日本は皆
保険であることがメリットであるという話をしたい。
・ 在宅医療が他の国と比べて非常に先駆的であると思う。在宅医療が存在する5 つの要件
と考えるのが、(1)高齢化社会(2)高密度な人口(3)夜でも訪問診療可能な安全な社会(4)国民
皆保険(5)IT リテラシーがある、といった5 つの要素が揃う国はなかなかないため、在宅
医療を機軸にしたイノベーションが面白いのではないか。
・ 患者の困りごととそれを解決してくれるテクノロジーとのマッチングをどうするとい
いかを考えるといいと考える。そうすると再入院予防のプログラムとして在宅医療が使
われるような形にバージョンアップしていくだろうと思う。
・ 独居社会が進行していくというのがひとつの可能性である。夜中をサポートしてくれる
ような公的なサービスが少ない「24 時間の壁」にIT・テクノロジーが関与すると在宅
の見取りなどがやりやすくなる。
・ 遠隔診療についてはまだテクノロジーが十分でないと思っている。例えば胸に巻くと肺
の音をチェックして差分を取得し、肺炎を診断してくれるというような、現場の使って
いる人の課題をうまく吸い上げてアイデアが出るようなオーダーメイドのテクノロジ
ーを企業に考えてほしい。
・ そして最終的には人口の少ないところの在宅医療をサポートするということが最新テ
クノロジーになっていくのではないかと思っている。
・ テクノロジーは重要であるが、ハイテクばかりに目を向けずローテクと低コストソリュ
ーションの視点、さらに経済的な経路を作るという視点を非常に重視したほうがよい。
Cure・Care よりもPrevention に振っていかなればならないし、ヒューマンサイバーイ
ンテグレーションやナノマシンも活用したほうがいいのは当然であるが、非常にハイコ
ストなソリューションであり、長期的な範囲になる。システム的な課題に対して単純な
ソリューションで対応することを検討すべきである。
・ また医療費の松竹梅化は即やるべきである。さらにいうならば安楽死の合法化は絶対に
考えるべきだろう。自己負担率の見直しや年金課税も即考えるべきである。
・ 日本が目指してきた像が根本的に間違っているのではないか。15 歳から65 歳という現
状の生産年齢人口の定義ではなく、20 歳から少なくとも90 歳程度まで広げて無限に働
ける社会を目指し、そのためにテクノロジーもローテクも使うことが重要なポイントで
ある。強い人はいつまでも働き、弱い人をそういう人たちが守るような社会像を目指す
べきである。年齢や性別による雇用の制限、定年制度は絶対に廃止すべきである。
・ 現状の巨大なインフラコストでは計算上地方を支えることは不可能であり、都市集中型
の未来しかない。これらを考えるとインフラコストを劇的に下げるということと共に、
インセンティブを長期的にかけて老人をなんとしてでも都心に寄せ、若い人は逆に外に
行けるようにインセンティブをかけた上で、自動走行車をルーティーンに走らせるよう
なスキームを検討するべきである。
・ これらはステージ論で考えるべきである。少なくとも「止血」「治療」「再生」といった
3 ステップくらいで考えるべきであって、この社会保障費の増大をとりあえず止血する
フェーズもあるし生涯元気に働ける状況をどうやって実現するかということが再生の
フェーズもある。このフェーズ論をなくして、今の話だけでは日本の経済発展にもつな
がらず未来に対するビジョナリーなものにもならない。
・ 「目指す将来」を考えたときに、「よりよく生きる」ということが阻害されているかも
しれないとすると、処遇の支援に寄ったテクノロジーの議論ではなく、存在の承認やア
タッチメントの形成、それを支えるような街の展開など、存在の支援やその意味付けと
いったところにどう展開していくことが出来るかが重要ではないか。
・ 「価値を起点に考える」ということを考えると、健康は医療が作ってくれると思ってい
る幻想や、病気になったら終わりであるといった価値観を「全ての人たちが持っている
価値が発揮される」というような価値観への転換を図り、今目指していくものを本当に
価値として届けるためには、専門職に限らず全ての人の学びのあり方を変えていく必要
がある。
・ 価値が多様化している際に、本人、家族、自治体あるいは企業の間で共通言語を作り、
開発されたものが結果的に私たちの体験を良いものにしたということが常に確認され
るような開発のプラットフォーム、共創のプラットフォームのデザインを創りこんでい
く必要がある。
・ 医療・健康・ヘルスケア・介護に出来るだけ自然に触れる状態にしたいと考えたが、そ
の際には医療のプロフェッショナルと一般のレベルでいう医療情報の需要・認知度のギ
ャップを埋めていく作業が実は一番大事なのではないかと思っている。どんなゴールで
あれ、そのギャップを埋めないと正しい姿にはならないのではないかと思う。
・ 例えば初等教育で国語・算数・理科・社会・保健といったようにごく当たり前のように、
知識を持つ。最後個々人が選ぶ際には自分の価値観と自分の知識を持って選ぶと思うの
で、底上げをしていくということが重要である。
・ 技術やモノ・サービスを提供する側も医療・保健リテラシーを持たなければ、必ず望ま
しくない方向になるか、あるいは無駄が多くなるし、5 人に1 人が医療介護分野の労働
者としていかなければならない状況下で、医療プロフェッショナルだけでは足りないの
で、それ以外の方で医療介護分野を支える文脈でも医療・保健リテラシーの向上を行う
ことが重要である。
・ 酒田市での30 年以上の実践で予防により歯の喪失をほぼ防げることが示されているが、
東京ではそのことを知らずに治療を受け続け歯を失う人があまりにも多い。またその結
果、歯の喪失に起因する認知症や歯周病の放置による糖尿病の進行などがありふれてい
る。
・ 現状では患者との相互不信での会話や説得、必要のない治療や処方の話ばかりで、行い
たい予防についての指導ができない。AI 等の技術を使ってスムーズにお互いにストレ
スなく診療出来るかという点が大きな課題であると思っているし、医科も似たような状
況なのではないかと推察している。
・ そのようなことを克服していくためには、予防を前提とした医療を組む必要があるが、
その結果が出るのには時間がかかることを患者に納得してもらうことができれば、将来
医療に対して不安がなくなり、医療に信頼を寄せていくだろう。
・ 医療は治療の価値ではなくて患者の健康そのものの価値で、それは10 年20 年30 年後
に真の価値として現れてくるので、その先どうなるかを予測し、患者自ら予防を前提と
した医療を選択して、健康になり、患者・市民・医療者・政府・保険者が強い信頼関係
で自分たちの仕組みを大切にしていく形を目指すべきである。
・ 2040 年に向けては人材をどのように確保するか、少ない人材でどれだけたくさんの介
護・医療を行うのかが最大のポイントとなる。また、インクルージョンの世界が広がる
だろう。
・ 在宅医療、在宅介護においては、伝統的な職種別組織間の情報の共有がなされていない
ことから無理・無駄・ムラばかりであり、情報の連結が必要な時代になっている。その
ためにはプラットフォームが必要であり、そのプラットフォームによって、職種別の組
織でありながら、情報システムの中では有機的に一元化された組織として活動する仕組
みが必要と考える。
・ 2040 年のあるべき姿としては介護の生産性の向上と介護の提供価値の向上があり、多
職種同期のスケジュール管理による効率的に在宅介護が提供される仕組みや、医療と介
護の情報を一元化し、それぞれの成果を明確にする仕組みがあるべき姿の実現のために
必要である。さらにIoT やウェアラブルの技術による見守りが発達し、在宅生活の継続
に直結してくる。
・ あるべき姿の実現のために整備すべき要素としては各要素の規格化である。まず介護と
医療の電子カルテの連結を可能とする情報システムの規格化、医療・介護用クラウドの
プラットフォームの準備と規格化、そしてサービス提供実績の管理も規格化し、サービ
ス実施の有無について管理を実施する。これらにより少ない人員でも大きな介護が出来
るのではないかと思う。
・ 様々なヘルスケアのスタートアップの方を見ていると、非常に理想は素晴らしく、希望
に満ちて色んな技術を使いたいという方がたくさんいらっしゃるが、ビジネスとして機
能するのかといった点が大変気になる。
・ 患者・提供者・サービスを提供する企業それぞれがプラスになるような、ベン図の重な
り合うところにしかサービスや新しいイノベーションはなかなか継続して生まれない
と考えている。制度などでその重なり合ったインセンティブの部分を広げていくような
打ち手がこのWG で出るとよいと思っている。
・ 介護は生活を支えるものなので、ローテクというべきか分からないが、生活のテクノロ
ジーに関する議論も重要になるかと思う。
・ ダイバーシティの観点でいえば、いわゆる機能的な障がい者だけでなく、例えば刑務所
から出所してきた人や、薬物依存、お酒の依存、こういった人とのダイバーシティを考
えた際に我々が向かい合えるためのテクノロジーや態度はどのようなものが求められ
るのか。
・ たとえばAmazonGo を利用する際の万引きしているような背徳感や、高齢者が障がい者
と同じ場所に通う際に高齢者は自分のことを障がい者だと思っていない、そういった価
値観に起因する抵抗感や、法律の制度などに対するバリアを、教育や社会システムでク
リアするための素地を作っていかないとイノベーションは起きにくいのではないかと
思った。
・ 今でも医療の分野でAI の技術が使われてきているが、データだけで勝負が出来る領域
ではアメリカや中国の二強に対して日本には勝ち目がないと考えている。
・ 医療分野では最近ディープラーニングを使って自動で診断することで競争が激化し進
展していると思うが、日本の勝ち目はディープラーニング+ロボット・機械という、日
本が強みを発揮している部分と新しい技術進展の組み合わせを医療介護における課題
にぶつけていくことにしかないのではないかと思っており、10 年20 年というスパンで
その未来像をしっかり想像し動いていくということが必要と考えている。
・ 医療介護のデータ分析がなぜできたかというと、2000 年に介護保険が一斉に始まり、デ
ジタルになったので、介護のデータが全国民に対してあるためである。それを厚労省が
2020 年には医療と介護を突合したものをリリースするとのことであるが、これは世界
にないデータだという反応をされる。
・ データの分析により医療と介護のバランスが分かる状況に来ているが、それを活用して
見せていくデータサイエンティストがまだ足りない。何か開発したら幸せになったとい
うことがデータで分かるようなデータの整備を進めていただき、それを分析して現場に
生かせる人材の教育を含めて進めていただきたい。
・ 出来ればそのデータの中に、例えば介護する側の情報や家族・社会のことなどの主観的
なデータが入れられると素晴らしいデータが出来るため、それを分析する側と現場がつ
ながっていくとよい。
・ 様々な立場から安寧な社会を作ろうとテクノロジーを社会実装していくのだと思うが、
人それぞれによって「安寧」は一体どういうことなのか、そしてテクノロジーを入れて
いくときに、社会のコンセンサスをどうとっていくのか。
・ AI やロボットなどそれぞれの技術を、人それぞれ幸せがどうなのかということを日本
の言う「おもてなし」の技術としてどう実現するのかだと考える。
・ 教育も非常に大事で、10 年20 年先、40 年先に高齢者になる子たちはどういう社会を望
んでいるのかを見据えてロボットやAI のテクノロジーを教えていく必要がある。
- ○佐久間座長
- ・ 「患者さんが来ないがどうすれば」という話は教育の話として必要である。
・ ハイテク/ローテクの話もあったが、システムインテグレーションを製品だけではなく
て制度とどう結び付けていくか、なかなか統合出来ていないデータをどう集め、長い時
間にわたって使える形にしておくか。
・ データを集めるだけでは勝てないという話もあり、そこの部分をどうするか。
- ○厚生労働省 迫井大臣官房審議官
- ・ 座長にまとめいただいた論点はまさにそのとおりで、本日議論いただきたいと考えてい
た点は幅広くカバーいただいたと認識している。
・ インクルーシブなど既存のアプローチで課題となっている点をテクノロジーがカバー
しようとしている点に驚きを感じた。
・ 社会実装を目指す上で社会システムや制度によるバックアップ、ローテクやインセンテ
ィブを与えることによるバックアップが必要である。
・ 価値観に起因する要素が大きいが、テクノロジーが価値観を変えられるのかという点に
ついて今後議論いただきたい。
- ○経済産業省 藤木商務・サービス審議官
- ・ 組織・時間の制約などを取り払った際に何ができるのか、何を達成するのかといった議
論ができたのは価値があると考える。
・ 厚労省・経済産業省で組織のハードルを越え推進していきたいと考えているので、引き
続き様々な形で制約にとらわれない、思い切ったご意見をいただきたい。
- ○経済産業省 江崎商務・サービス政策統括調整官
- ・ イノベーションは常識を変えることであり、例えば「お年寄りは支えられるものである」
というような価値観を変えないと答えは出ないだろう。
・ 100 年生きられる幸せの形のために、社会の仕組みのあり方を変えられるかがポイント
である。
・ データの質で世界に勝つことを考える必要がある。そういったデータを共有することで
医者の仕事のあり方を変え、この国だからこその幸せの形を世界に示すことができれば
と考えている。