第4回非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会 議事録

厚生労働省健康局がん・疾病対策課

日時

令和元年6月5日(水)15時~17時

場所

厚生労働省中央労働委員会 7階 講堂

議事


○石上がん・疾病対策課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第4回非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の出席状況について御報告いたします。本日は、小川久雄構成員、横田裕行構成員から欠席の御連絡を頂いています。なお、公務の都合上、健康局長は欠席、厚生労働省大臣官房審議官の吉永とがん・疾病対策課長は遅れての出席とさせていただきます。
 続いて、資料の御確認をお願いいたします。議事次第、座席表、構成員名簿、資料1「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方について(案)」です。また、構成員のお手元には第1回から3回の検討会の資料を配布させていただいています。資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。
 以上をもちまして、カメラを収めていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いいたします。これからの進行は、永井座長にお願いいたします。
○永井座長 それでは、議事を始めさせていただきます。前回は、循環器病の診療情報を収集・活用する体制や診療情報の取扱・同意の在り方、報告書骨子案について御議論を頂きました。
 本日は、これまでの議論を踏まえまして、「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方について」の報告書の取りまとめを行いたいと思います。
 早速、議題(1)、非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方についての報告書(案)について、まず第1から第3、続いて、前回主に御議論いただいた第4、最後に第5から第7の、3つの部分に分けて御議論を頂きたいと思います。それぞれの項目に対して、議論を追加すべき点があれば御検討いただいて、最後に本報告書全体に対して追加すべき点があれば、更に検討したいと思います。資料1の第1から第3について、事務局から説明をお願いいたします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 事務局です。お手元の資料1を御覧ください。こちらは、第3回検討会において提示した報告書骨子(案)をもとに、非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方について(案)として、循環器病の診療情報の活用の在り方に関する基本的な考え方を示す形で、検討会における議論を整理した資料です。取りまとめ案であり、逐次的な説明となりますことを御了承ください。
 目次を御覧ください。全体の構成として、第1はじめに、第2循環器病の診療実態の把握・活用に関する現状と課題について、第3循環器病の診療情報を収集・活用する目的と考え方について、第4循環器病の診療情報を収集・管理・活用する体制と利用目的に応じた診療情報の取扱・同意の在り方について、第5診療情報の収集・活用を行う対象疾患と必要な項目について、第6循環器病の診療情報の収集・活用に向けて、第7おわりに、としており、別紙と構成員名簿を後ろに付けています。
 まず3ページの第1、はじめにです。こちらでは主に、検討会設置の背景等を記載しています。1段落目では非感染性疾患における循環器病の位置付け、2段落目では循環器病の社会的影響の大きさと疾患特性から、循環器病の診療情報を収集する必要性について記載しています。3段落目では、このような経緯から検討会が設置され、議論を行ったことを記載しています。
 5ページの第2、循環器病の診療実態の把握・活用に関する現状と課題についてです。循環器病の診療実態を把握している調査及び取組の代表的なものとして、政府統計と第1回検討会で御発表いただいた研究者、学会の取組を、それぞれの特徴、強みと課題とともに記載しています。患者調査は、医療施設を利用する患者について、その傷病の状況等を調査し、今後の医療行政の基礎資料を得ることを目的としている。入院外来患者については指定した1日を、退院患者については指定した1か月間を、それぞれ調査期間とすることから、季節変動を把握することは困難であるとしています。研究者・学会の取組として、脳卒中領域では脳卒中データバンク及びJ-ASPACT Studyがある。心血管疾患領域では、JROAD及びJROAD-DPCがある。日本の脳卒中データバンクは主に個票により、J-ASPACT-StudyとJROAD-DPCは、主にDPCデータから診療情報を収集している。個票やDPCデータでの情報収集では、当該データベースの目的に応じた詳細なデータ集積が可能であるものの、情報収集方法に応じた労力負担を生じると記載しています。
 6ページ、1つ目のマルです。これら既存の調査及び取組から診療情報を利活用することについては、入力に係る負担の軽減が可能等の強みがある一方、参加医療施設や収集される情報が当該調査及び取組の目的に応じたものになる。2つ目のマルで、このような既存の調査及び取組には、その収集方法等によってそれぞれに強みと課題があるため、公的な情報収集の枠組みが必要である。循環器病の診療情報の収集・活用に当たっては、その目的を設定し、目的に応じた診療情報の収集及び利活用の在り方を整理する必要があると記載しています。
 7ページの第3の1、循環器病の診療情報を収集・活用する目的と把握方法等についてです。1つ目のマルで、循環器病による社会的な影響、疾患特性を記載しています。2つ目のマルですが、上記を踏まえ、循環器病については、➀急性期医療現場で活用すること、➁正確な患者数や罹患率を踏まえた診療提供体制の構築や予防等公衆衛生に活用することを目的に、急性期入院の診療情報を収集することとすると記載しています。将来的にはとして、3つ目のマルですが、急性期のみならず回復期や維持期の診療情報も合わせて収集するとともに、回復期や維持期の診療においても収集された診療情報を活用することが期待されるとしています。
 診療情報の収集方法等についてです。1つ目のマルでは、いつ何をトリガーとして患者の診療情報を把握し、どのように経過を追うのかなど、目的に応じて整理する必要があることを記載しています。2つ目のマルに、診療情報収集の目的は、急性期医療現場や公衆衛生への活用のためであることから、まずは急性期中心に横断的に把握することが適切であること、具体的には、脳卒中や心疾患などの治療目的とした急性期入院の患者を対象に、主に入院時と退院時の情報を把握し活用することを記載しています。3つ目のマルでは、縦断的な把握については、引き続き検討すべきであり、将来的には、縦断的な把握によって、長期的なQOL評価を含めた診療の質の評価や長期的な医療施策への活用、急性期医療でのより充実した情報の活用等が期待されると記載しています。
 8ページの第3の2、収集した診療情報の急性期医療現場への活用の在り方についてです。1つ目のマルで、疾患特性、現状と課題を踏まえ診療情報を収集し、急性期医療に活用すべきであると記載しています。2つ目のマルで、具体的には発症後、早期に適切な診療を行うため、患者の診療情報について医療機関間で共通の項目を把握し、循環器病情報センター(仮称)に集約することで、疾患の再発や増悪ごとに当該診療情報にアクセスを可能とするなど、医療現場で円滑に循環器病の診療情報を活用できるシステムが必要であると考えられると記載しています。
 次に、9ページ第3の3、収集した診療情報の公衆衛生の活用の在り方についてです。1つ目のマルで、現状と課題を踏まえ診療情報を収集し、地域の公衆衛生施策に活用すべきであると記載しています。2つ目のマルで、具体的には、発症患者数、医療機関への搬送状況、急性期から回復期、維持期への転帰といった診療情報を収集し、医療機関ごとや地域で集団として把握すること、収集された診療情報を、地方自治体における診療提供体制や救急体制の構築、評価等に活用することで、公衆衛生の向上や地域間の医療の平準化にもつなげることが期待されるとしています。3つ目のマルで、公衆衛生の向上等につなげるためには、必要十分な規模の母集団設定を行うことや、診療情報の登録率にも留意しつつ、患者数や治療内容など、循環器病の診療実態を明らかにする必要があると考えられると記載しています。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。それでは、ただいまの説明に対して、御議論いただければと思います。いかがでしょうか。
○羽鳥構成員 多分これは、誤字だと思うのですけれども、6ページの上の他施設の「他」というのは、この「他」でいいですか。「多」でなくて、「他」でいいのですか。「他施設」でしたか。複数の施設という意味ではありませんでしたか。
 もう1つ、4ページ目の図1のNCDsのイメージ図があるのですけれども、がんについては、がん対策基本法があるので情報収集は十分できていると思います。糖尿病についても、糖尿病対策基本法があって糖尿病学会、都道府県で一生懸命やっていると思います。今回、循環器病ですけれども、COPDに関しては、実態調査がなく、この委員会でNCDsと幅広く言っているので、このNCDsも何か考えているという意味なのでしょうか。
 3つ目、今年の12月8日までに、脳卒中・循環器病対策基本法を受けて、実施するロードマップをきちんと書かなければいけないということがあります。今回の調査も、それに相当するとして、12月を過ぎてから始まるとすると、どこかでデモ事業やこの調査票で入力するなど、そういうことをお考えになっているのか、その3点をお願いします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 事務局です。まず1点目ですけれども、大変失礼しました。誤字です。「多」の字に修正させていただければと思います。
 2点目ですけれども、NCDsということで記載させていただいていますけれども、趣旨としては、まずは循環器病を足がかりとして、将来的にほかのNCDsに広げていけたらという趣旨で書いているところです。
 3点目の御質問ですけれども、昨年12月に基本法が公布されたところですので、1年以内に施行ということで、正に準備を進めているところです。この報告書を受けて、どのようになっていくかということについては、前後しますが、この報告書の中でも第6の所に、循環器病の診療情報の収集・活用に向けてということで、1つ目のマルになりますけれども、これが循環器病について公的に情報を収集する最初の試みであることから、まずはモデル事業での診療情報の収集事業を開始しという形で、順を追って始めていきたいと、準備をしていきたいと思っています。
○羽鳥構成員 ありがとうございます。
○永井座長 私からよろしいでしょうか。はじめにの2行目ですが、NCDsは人から人に伝わらず、長期間にわたり一般的にゆっくりと進行すると、これで終わっているのですが、これですとフレイルのような印象で、進行するが臓器障害を来すと急激に悪化し適切な医療を行わないと高率に死亡するという面が表現できていません。こう書かないと何か一面しか捉えていないと思うのですが。
○丸山がん対策推進官 御指摘ありがとうございます。事務局です。今、該当の部分は、実はWHOのNCDsの定義を日本語に訳しただけですので、おっしゃるような内容はもちろん加味させていただきたいと思います。
○永井座長 ほかに。
○山本(晴)構成員 文章の中には、当初、急性期医療での利用のほうが前面に出ていたと思いますけれども、今回、公衆衛生上の活用というところをしっかりと記載していただいて、このほうがいいのではないかなと思いました。ありがとうございます。
 文章ではありませんが、8ページの図の2です。循環器病の診療情報把握のイメージということで、経過を図示していただいているのですが、これは恐らく心不全のイメージを使っておられると思います。全体として報告書は、それほど大部ではないので、やはりこの辺りを丁寧に、急性心筋梗塞ではどうなる、心不全ではどうなると。それが難しければ、循環器の中でも心臓系と脳卒中系で書き分けて、どちらも図示していただいたほうがいいように思います。確か、別の循環器病の対策の検討会で、恐らくこういう公的な文書としては初めて、がんの進行と循環器病、それも心臓と脳卒中で、それぞれ病性の進行が全然違いますよというのを図示されたと思います。ああいった図示というのは、本当に一般的なイメージとして非常に重要なので、繰り返しにはなると思いますけれども、こちらでもやはり正しい認識を持っていただくために、こういう図の所は丁寧に書いていただけると有り難いかなと思います。
○永井座長 はい、ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか、よろしいでしょうか。また後ほど、御意見を頂くことができますので、先に進めさせていただきます。
 資料1の10ページから14ページまで、第4循環器病の診療情報収集・管理・活用する体制と利用目的に応じた診療情報の取扱・同意の在り方について、説明をお願いいたします。
○石上がん・疾病対策課長補佐 第4、循環器病の診療情報を収集・管理・活用する体制と利用目的に応じた診療情報の取扱・同意の在り方について、御説明します。
 10ページを御覧ください。まず、循環器病の診療情報収集・管理・活用する体制についてです。診療情報収集の対象施設に関してですが、関連学会が認定する医療施設や協力を得られる医療施設を対象とし、将来的には医療計画で脳卒中や心血管疾患について、各機能を担う医療機関として記載されている施設等も対象とすることを検討するとしています。
 また、管理する施設に関しては、公共性の高い診療情報を集約・管理・提供する施設としては、循環器病情報センター(仮称)を設置する必要があり、同センターは公的な機関が担うことが望ましく、また、診療情報の収集には、関連学会等の協力も必要であり、これらのことから公共性・透明性の観点や関連学会等と連携した取組の実績も踏まえ、国立研究開発法人国立循環器病研究センターが、同センターの機能を担うことが適当と考えられるとしています。
 次に診療情報の活用の主体及び活用の在り方についてです。収集された診療情報は、急性期医療への活用のために医療機関等が、また、公衆衛生への活用のために、国、地方自治体、研究者等が活用すると想定されるとしています。収集した診療情報は、先行例を踏まえつつ、急性期医療現場での活用や、研究者、関連学会等による研究利用、医療政策への活用を進めていくべきと記載しています。また、収集した診療情報は、民間事業者等を含めた幅広い主体により活用されることも想定されますが、利用の公益性や安全性、透明性の確保や個人の特定がなされないような安全管理措置を実施した上で、成果の公表を図りつつ、段階的な利用の拡大を図っていくことが望ましいと記載しています。
 11ページに移ります。個人情報の保護等の安全管理についてです。本データベースで取り扱う情報は、その性質や利用方法等から個人情報保護に関する法律等に基づき、適正な安全管理措置が構じられた下で取り扱われる必要があること。また、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス等に基づき、取り扱う個人データの漏えい、滅失、き損の防止等の、個人情報の保護等の安全管理を十分構じる必要があることを示しています。
 3、利用目的や疾患特性を踏まえた診療情報の取扱についてです。収集された診療情報については、急性期医療の現場で活用し、患者が恩恵を受けられるようにすることが重要であるため、顕名で診療情報を収集し集積するとともに、これらの集積された顕名情報に、患者の診療に関わる医療機関がアクセスし活用できるようにすることが適切であると示しています。
 2つ目のマルですが、公衆衛生への活用においても、同一人物の判別等、データベースの正確性の担保のため、また、患者が入院した場合、過去に入院した患者と同一であることを把握できるようにするためにも、顕名での情報収集が必要であると記載しています。なお、収集された診療情報は、特定の個人を識別することができることとなる記述等を削除する等、個人が特定されないよう匿名化した上で、公衆衛生の向上を目的として広く活用することが可能と考えられ、また、学術研究等への活用においては、適切な審査を経た上で提供されるとしています。
 顕名での診療情報収集に際しては、個人情報保護の観点から、患者に利活用の目的を説明し同意を取得した上で収集・活用することが適切ですが、救急受診には同意を取得することが困難な場合があるため、入院期間中に説明内容の理解が可能となった時点で説明の上、取得することが適当ということも示しています。
 12ページ、亡くなられた方の情報に関して示しています。循環器病では、急性期において受診後短時間で死亡し、同意取得が困難な例が少なからず存在する一方で、そのような症例を登録から除外する場合、重篤な症例が含まれないことになり、実際より集団として軽度に偏ったデータが示される可能性があることから、疾患の特性を踏まえ、死亡症例を含めた診療実態の把握を勧めることが適切と言えます。死亡症例の診療情報の取扱いは、他の患者と同様の利用目的・範囲とし、個人情報保護の安全管理を適切に構じることが必要である。死亡症例においては、登録された診療情報を当該患者の診療に活用することは想定されませんが、過去の登録情報と照合できることが望ましく、また、個人が特定されないよう匿名化された形で、利活用する方策を検討することも考えられると記載をしています。以上の内容を、図5にイメージとしてまとめています。
 12ページの4ですが、診療情報の収集・活用のための同意書及び説明文書の在り方についてです。同意書、説明文書については、5つの事項に留意の上、各医療機関が作成し患者に適切に説明し、同意を取得した上で、診療情報を収集・活用すべきとしています。説明すべき事項の1つ目は、データベースの仕組み・データの提供の流れ等についてです。自らの診療情報が、「誰に」「どのような形で」「いつ」渡るのかが分かるように示すことが必要であるとし、具体的には、患者が循環器病の治療のために、医療機関にかかった後に、循環器病情報センター(仮称)に顕名で登録されること。患者が他の医療機関を受診した際に、当該他の医療機関や救急隊が必要に応じて、顕名で患者の診療情報にアクセスすること。蓄積された患者の診療情報が、匿名化された上で、国や地方自治体、研究者等に提供されることといった内容が考えられます。また、民間事業者等に匿名化された診療情報が提供されることがあり得る場合については、その旨も患者に適切に伝えることとしています。
 2つ目は、参加するメリット・診療情報の活用法についてです。患者にとって自らの診療情報がどのように活用されるのか、どのようなメリットがあるのかを伝えることが必要であるとし、具体的には、患者が他の医療機関を受診した際等に、必要に応じて過去の治療歴等を閲覧することで、患者の治療や搬送に役立て、患者自身の治療につながること。また、国や地方自治体、研究者等が、国や地域の政策立案・公衆衛生の向上のために活用し、我が国の循環器病対策の発展に寄与することといった内容が記載されています。
 3つ目に、個人情報が適切に安全確保されていることを、説明することが必要であるとし、具体的には、診療情報はセキュリティで守られた方法で受け渡しされることと、顕名情報は循環器病情報センター(仮称)の事務を扱う職員、診療や搬送の目的で活用する対象医療機関の職員等以外が閲覧することはないことを、適切に伝えることとしています。
 14ページですが、4つ目に本取組への参加は患者の意思に基づくものであり、説明内容に納得し同意した場合に限ることと、同意しない場合や同意を撤回した場合でも、通常の診療において何ら不利益を被るものではないことを適切に伝えるとしています。
 最後に5つ目として、同意の撤回については、本人の意思に応じていつでも同意を撤回できることや、同意の撤回に必要な手続について患者に適切に伝えることとしています。第4章の説明は以上です。
○永井座長 それでは、ただいまの説明に御質問、御意見を頂きたいと思います。
○小松本構成員 まず、診療情報の活用の在り方の、特に利活用のところについて述べたいと思います。今後こういうデータが集まると、公衆衛生とか研究で、いろいろな機関が利活用したいと申し出てくると思います。そうすると、11ページの下から8行目の所に、適切な審査を経た上で匿名でデータを提供するというようなことが記されているわけですが、今後の課題としてで結構ですけれども、どこにその審査機関を設置するかとか、どのようにメンバーで審査するかというようなことを、今後1つの課題として検討していただきたいと思います。
 1つの案としては、10ページに書いてあるとおり、国、地方自治体とか大学等のパブリックな研究機関については、最初からフリーにアクセスできるような形にするとか、それから、民間業者がそのデータを使って利益を得ようということが当然予想されるわけなので、そういうときにはきちんと審査会に載せるとかを提案させていただきました。
○永井座長 今の点はいろいろと重要な問題が入っていると思いますが、何か事務局からお答えできるところはありますか。例えば、どこに審査機関を置くか、公的機関は自由にアクセスできるのかとか。
○安井がん・疾病対策課長補佐 どこにということに関しては、基本的にはこのデータベースを運用する主体ということになるかと思っております。御指摘がありましたように、どのように安全性とか透明性を確保して、安全管理措置とかをきちんとやった上で利用拡大していくという必要があるかと思っていますので、その辺りは配慮しながら進めていきたいと思っております。貴重な御意見をありがとうございます。
○永井座長 宮本構成員、どうぞ。
○宮本構成員 この登録事業は、基本的には学会の関連施設で責任を持って始めるということになりますので、学術的な利用ということについては学会のメンバーも入ったような形で許可するような何らかのシステムを考えていただければと思います。一生懸命に学会員がデータ登録した情報を学会とは無関係の第三者によって、学会が全然知らないままに勝手にビッグデータを利用されてしまうのは困ると思いますので、その辺りを何か審議するメンバーの中に両学会も入れていただきたいと思います。
○永井座長 いかがでしょうか。
○丸山がん対策推進官 御指摘ありがとうございます。研究自体はなるべく広くという中で、当然学術的な研究ですので、学会の先生方が何かしらの形で利活用の審査員に入ってくるのが自然かなと我々は思っております。
 こちらは御参考ですけれども、現に当課で、循環器ではありませんが、がんのゲノムとかもまだデータがたまっていない段階で、今後、情報提供審査会の在り方は検討していくようなこと、また、その実費の取り方はどのようにやるべきかというのは検討させていただきますので、こちらのデータベースも同じように検討を進めるべきものと、事務局としては理解しております。
○山本(晴)構成員 このデータベース、レジストリですよね。こういうのはやはり、性格をあらかじめある程度規定しておいてあげないと、やる人たちがかわいそうというか、困ると思います。がん登録は、法律があるので行政事業として位置付けられていますが、これは裏付けになる法律がなければ、基本的には研究としてやるということになると思うのです。そうすると、今ここで例示されているレジストリはどれも研究事業として立ち上げて、始める前に基本的には参加する医療機関は全部倫理委員会を通しています。それから、それはなぜやるかというと、患者さんの同意文書についても、倫理委員会がやはり目を通して中身をチェックした上でOKを出して、学会のものなどは恐らく学会の中の倫理委員会で基本的にまず事前審査をして、それを参加する施設で同じように迅速審査か何かで通してということをしています。ここは今のところ、このレジストリの位置付けがちょっとフワッとしているということと、同意は取れと書いていますけれども、では、その説明文書は誰がチェックをするのかが書いていないということと、多施設共同で各医療機関からいうと、同意は取ったとしても、他の施設に情報を出すので、やはりそこのデータベースということの位置付けがよく分からないところもあります。それから、レジストリを持っている主体が誰かということになってきて、研究であって国循の情報センターがデータマネージメントをする部署として動くのであれば、研究の一部分として動けますけれども、これがそうでなければ、国循は業務としてこれを持つのかということになってきます。また、そうなると、個人情報保護法上での責任範囲がちょっと変わってきたりもするので、まず、これは研究としてやるのですかということと、研究だけれども二次利用として行政的な活用もできるし、また、そこまで同意があれば、その企業に対しての医薬品とか医療技術開発の1つの情報として提供するという二次活用も考えた同意を取るのかというところが、最初のレジストリの位置付けが何かということで、いろいろな規制が変わってくると思います。
○永井座長 今の点はいかがでしょうか。
○丸山がん対策推進官 御指摘ありがとうございます。この先どのように進めていくかということも含め、報告書に書かせていただきましたとおり、モデル事業としてまず進めていく中で、まだ実務的に解決をしなければいけない問題というのは幾つかあるのだろうと思っています。ですので、その中で最終的に現時点で御検討いただいたのは、がん登録法のような法律がない状況下で、どのようなことができるかという整理ですので、そのときの情勢を踏まえながらどのような形がいいのか、まずはモデル事業を進める中で循環器病センターのほうの事業としてやっていくのか、もしくは研究でスタートということにはなろうかと思いますが、その着地点を見据えていく必要があろうかと思っております。
○永井座長 つまり、行政からの委託事業ではないという認識でよろしいですね。
○丸山がん対策推進官 直近としては、そのような形ではなくというように理解しております。
○永井座長 これはガイドラインや個人情報保護法のカバーする範囲が違ってきますね。
○丸山がん対策推進官 はい。
○永井座長 羽鳥構成員、どうぞ。
○羽鳥構成員 13ページの個人情報の安全確保の一番下の四角の所に「事務を扱う職員」という言葉がありますけれども、医師と看護師は患者さんの情報の、守秘義務があります。ただ、事務の方にはそういうのがないということもあるので、個人情報に配慮すると書き込んでいかないと漏えいがあり得る。例えば、市町村における介護保険情報も、ケアマネ、ヘルパーはそういうのがないために漏れてしまったような事例もあるので、ここは何らかの縛りをきちんとつけたほうがいいというのが1点です。
 もう1つは、今回のレジストリで多分問題にならないのかもしれませんけれども、例えば急性心筋梗塞を起こされた方をレジストリする。その原因として、例えば家族性高脂血症みたいな遺伝性の疾患のように、父、母、兄弟に影響が及ぶようなものもあると思うので、それの情報の秘匿とかはどうするのか。あるいは、もしかしたら今後、ゲノム情報も絡んでくるとしたら、ある程度考えておいたほうがいいのではないかと思います。あるいは、生命保険の加入とかにも何か引っ掛かってくるようなことがあるかと思いますが、全体的な方向としてはそういうのは一切扱わないとするのか、それとも家族性高脂血症は結構、心筋梗塞で30代、40代でというと出てくる可能性があると思いますが、どのように扱うつもりなのか分かったら教えてください。
○永井座長 いかがでしょうか。
○丸山がん対策推進官 1点目の情報のセキュリティの関係ですが、循環器データベースの設置場所として想定している国立循環器病センター自体は独立行政法人で、独立行政法人の個人情報保護法、通称独個法が別途ありまして、その規程に従って、循環器病センター職員には一定の守秘義務が掛かってきます。同施設の中で運営する限りにおいては、職員の方々も一定の守秘義務を守っていただくということです。当然、御懸念もあると思いますので、そこについてはきちんと留意したいと思っております。
 もう1つは、このレジストリを通じて家族性高脂血症をはじめとした遺伝性疾患が分かった場合の対応ということですが、現時点で後ろのほうに登録項目案と書かせていただいていますが、6疾患類型の中で家族性高脂血症を明示的に取る項目は現時点でなかったと思いますので、この疾患がこの登録項目として入ってくるというのは想定していません。今後、そういった対象疾患が増えていったときにどうするかというのは、御指摘のとおり、検討すべき課題と理解いたします。
○永井座長 いかがでしょうか。
○今村構成員 幾つかありまして、最初に死亡情報ですが、かなり踏み込んで書いていただいて、死亡した方の情報を可能な限り集めていただけるということは非常にプラスだと思います。先日も少し追加でお話しましたけれども、同意が取れなくても、亡くなったという情報だけでも伝えることができれば、公衆衛生的には非常に意義がありますので、もう一声踏み込んでもらえると有り難いかなと思います。これが1つ目です。
 あと2つありまして、2つ目は、今回の情報の集め方は顕名で集めるのですが、匿名で利用する面と顕名で利用する面と2つの面があって、この切り分けがなかなか難しいだろうと思います。特に、顕名で集めることは賛成ですが、顕名と一言で申しましても、本人を特定できる情報というのは、苗字と名前と生年月日だけで特定できるわけではなく、どうやって本人だと特定するかということも大きな課題だと思います。
 特に、今回の活用の仕方としては、救急搬送された方に直接問い合わせして、すぐに返してもらうということを考えると、その場で本人かどうかということを確認できる情報を伝えて、その上で即断して情報を返すというステップになるのではないかと思います。その中で本人の確認、特に今、意識がないような場合には一体どうするのかということや、今は、性、年齢、生年月日をお考えですけれども、例えばスズキヒロシさんという名前の方はものすごくたくさんおられて、同じ日に生まれた同姓同名の方は全体では1%ぐらいはいるのです。ですから、そういったことを考えると、今度は顕名で誤認が許されないことを考えると、どこら辺まで本人だということが確認できる情報を最初の段階で集めるのかということが、今後モデル事業も進めていかれると思いますけれども、詰めていく必要があると思いますし、今の段階から、モデル事業を始める段階からも、それは非常に難しい問題として存在するということは、是非認識をしてもらいたいと思います。
 今、この後ろに書いてあるレジストリを想定して同意書の原案が書かれているのですが、診療報酬の例えばDPCの情報を集めるということになれば、診療情報の請求情報なども個々のデータには載ってくるわけで、それを提供するということも同意の中では本人の診療情報だけではなくて、請求書の情報も載ってくるということも合わせて載せておかないと、そこの病院の患者さんから出たカルテだけではなくて、そういう面もあるということを是非認識しておいていただければと思います。以上です。
○永井座長 よろしいでしょうか。ほかに御質問、御意見はありますか。
○宮島構成員 前回や、いろいろやり取りの中で個人情報の保護についてちゃんと項目を立てていただいたり、あるいはこれからの活用の範囲について書いていただいたことはよかったと思います。基本的に、この会のメンバーもですし、ほとんどの大方の医療関係者の方、あるいは使おうとされる方は、良心的な、本当にいい形にしようということが前提ですけれども、国民の側の心配からすると、最も悪意的な人や、悪く使おうと思う人や何かをしようとする人がいたとしても、それでも安全なのですということを備えてほしいと思います。ですので、この書面においては詳しいところは細かくは書き込んでいないのですが、実際に進めるに当たっては、その施設も安全性を講じる必要があるという目標的な単語を更に超えて、どのような形でそれを管理し、誰がそれをウォッチするかということを、随時進めるに従って具体的に管理していただく必要があるかと思います。
 更に言うと、守秘義務も含めて100%守られるとは、残念ながらというか、思ってはないので、それがブレイクされたときに、どういう対処をするのか、あるいはそこに罰則を付けるのかといったネガティブな要素に、どういう対処を取るかということをきちんと方向性を示していただければと思います。
 さらに今回、段階的ということなので、この先考えればいいことかもしれませんけれども、企業、いわゆる民間事業者というのは本当に千差万別で、ものすごく公衆衛生や医薬とかいったことに日常的に接していて貢献度の高い方から、先ほど申し上げたように、悪意的に何かをしようという方まですごく広くなるので、そこら辺のジャッジというのも、段階を踏むときに何となくずるずると広がってしまうのではなくて、かなりしっかりとした検討のプロセスを経て進めていただければと思います。
○永井座長 今の点は大変重要だと思いますが、何か事務局からアイディアはありますか。
○丸山がん対策推進官 ありがとうございます。正に御指摘いただいたとおり、悪意のある方がどのようにアプローチしてきても対応できるような体制というのは我々も重要だと思っています。病院が持っているデータを動かすときが1つポイントだと思っています。集約して循環器病のデータベースセンターの中でどうやって堅牢性を確保するかということだと思いますので、こちらはモデル事業も含めて移動の回線をどうセキュアにするかで、そのデータは顕名ですので、医療機関がアクセスするときにどういった堅牢性を発揮するかというのは、引き続き検討してまいりたいと思います。ありがとうございました。
○永井座長 民間事業者が利用する場合も、本当にどこまでCOI管理ができるのか。あるいは、アカデミアと連携して研究しなくてよいのか。この辺も細かいルールを決める必要があると思います。いかがでしょうか。
○山本(隆)構成員 10ページの下のほうに、「民間事業者等を含めた幅広い主体により」というのがあって、そこで利用の公益性や安全性、透明性等が書かれているのですが、私はNDBの有識者会議の座長を10年近くやっていますけれども、あそこは民間事業者は認めていないのです。基本的には、大学か行政ではないと駄目ということになっているのですが、それでも申請の中には主申請者が大学の先生ですけれども、それ以外は全部民間企業の人みたいな申請が出てくるのです。したがって、これ、研究者だからとか、大学だからいいというのは、余り意味がないと思います。そういう意味では、行政利用は別として、行政利用ではないものは、やはり全てきちんと公益性を検討するということが必要だと思います。何となくこの書き方はそうは書いていないのですけれども、明らかに民間事業者の場合はというところがかなり強調されていまして、それほどきれいに分けられるものではないと思います。
 それから、民間事業者が駄目だと言うと、結局は永井先生がおっしゃるように、アカデミアと協力する形でどんどん出てきますので、そちらのほうが結構審査は大変ですよね。本当にマークされてよく分からないところが出てきますので、むしろ、きちんと、単なる企業のプライベートメリットではなくて、パブリックメリットをきちんと追求しているのだということを審査する体制が必要だと思います。
○永井座長 アカデミアが入れば大丈夫というわけではないのでしょうが、民間オンリーで行ったときには、事業に都合のよいデータだけ整理されてしまう可能性もあると思います。その辺の利益相反の問題をどう管理するかということが大事になると思います。
○鶴田構成員 活用の面ですが、実際ここに書いてあるものを運用するという観点から意見を述べたいと思います。まず、急性期の場合に、患者が運ばれた病院がセンターにデータを聞いたらどのくらいの時間で返ってくるのか?我々が病院に電話して聞いても電話がつながらないのが一般的なので、自動応答システムですぐ返せないと急性期の場では使えないのではないかというのが1つです。次に、ここで取ろうとするデータというのは、医療現場で必要とされる情報のうちの何パーセントぐらいなのかを想定されているのか。また、どのくらいの人がこのデータを利用されるのか、そうした場合のコストベネフィットはどうなるか?今すぐ回答を求めているわけではなくて、そういう点も検討すべきではないかと思います。一旦始めたら、大体、事業化するとやめられないので、見直しをするときは、普通は5年で法律を見直すので、こういうシステムはどのくらいで見直すのかということも考えておかないといけないと思います。
 静岡の場合は、県立病院を中心に県内各病院といろいろな情報を取り合えるネットシステムを作っていますが、最初は補助金を使った総務省のICTの研究事業でやっていたのですが、その後、コストベネフィット、広がりの観点から考えたら、まだ不十分ではないかというように思います。そこで、データ収集と同時に、ここに収集したデータを本人に渡しておくようなシステムというのは考えなくていいのか。そのほうが一番容易に活用されるのかなという気がしました。一応、意見だけですので回答は求めません。
○永井座長 今村構成員、どうぞ。
○今村構成員 今の鶴田構成員のお話の続きかもしれませんけれども、今回、国立循環器病センターが事務局を受けられるということで、小川先生はおられませんけれども、この報告書の内容を具現化しようと思うと、ものすごく大変だと思います。結構な予算と、かなりの人員が必要になってきて、さらに期間も短期間ではできないのではないかと思いますが、国立循環器病センター自身にそれを受ける力があるのかということと、それを行政的に支えるだけの今、地盤があるのかというのは、可能な範囲でお答いただけると少し安心するのですが。
○永井座長 山本晴子構成員から、まずお答えを。
○山本(晴)構成員 今日は小川理事長が欠席なので、本当は理事長からお答えしていただくほうがいいと思いますが、今、例として挙がっているレジストリの中の心臓のほうのJROADとJROAD-DPC、それから脳卒中データバンクは実際にデータセンターが国循にありますので、一応、医療情報部と循環器病統合情報センターが下支えになって、大規模なレジストリをやるというインフラについてはある程度整備はされています。ですので、ゼロからの構築ではないということです。それから、既に運用している実態はありますので、ある程度は動くと思います。ただ、おっしゃるように、今そういう複数のレジストリを持った上で、もう1つまたこの新しいレジストリを立ち上げるとなると、人員とコストと期間というのは、ある程度はやはり必要になると思います。
○永井座長 事務局、何か御意見はありますか。
○丸山がん対策推進官 既に山本晴子構成員に御指摘いただいたように、国循の事情は先生のほうがお詳しいかと思いますので、そういった意味で私どもとしても、御指摘いただいたとおり、この体制をゼロからというと非常に大変なところでありますが、既に国循にあるものも含め、今回のレジストリというものを実際組み上げていく上で必要なものは別途あると思っております。そういった意味も含めて、まずモデル事業と書かせていただいているのは、一度始めてしまうと大変だという鶴田構成員の御指摘も然りでして、慎重に進めたいという意図でございます。
○永井座長 ほかにいかがでしょうか。
○羽鳥構成員 12月までに対策基本法の具体的なスキームの準備をしなければいけないということです。もし可能なら、このレジストリもその法案の中に書き込めば、法律になれば何らかの予算措置も付くのではないかと思いますので、がん登録ほどの悉皆性はとれないにしても、登録される医療機関側も意欲も湧くのではないかと思います。
○丸山がん対策推進官 ありがとうございます。1点明確にさせていただくと、12月は法律の施行期限でして、それまでに厚生労働省としてすべきは、循環器病の協議会の立ち上げです。その後、循環器病の基本計画を定めさせていただいて、御指摘の内容は、基本計画で今後こういうことに取り組んでいくべきというご示唆だと思います。従って、少し時間が掛かるものですので、その中できちんと明確にしていきたいと思っております。
○羽鳥構成員 そういう意味だったら、やはりこのデモ事業というか、少し国循は大変でしょうけれども、しっかり取り組んで、このぐらい大変だったということを数値化して、このぐらいの金額がもらえたらやる気になるよとか、そういうことも明示してあげるのがいいのかと思います。
○永井座長 がんの登録法ができるまでは、非常に実施率が低かったことを記憶していますけれども、多分、段階的に普及していくのだろうと思います。いかがですか。よろしいでしょうか。
○井上構成員 10ページからの第4番の収集・管理・活用する体制と利用目的に応じたうんぬんについて、非常に言葉を尽して、丁寧にまとめていただいたのは大変有り難いと思っております。一患者としては、参加するメリット、つまり、ほかでもない自らのためということがまず第一ですので、こういった事業は早く動き出して欲しいという思いを持っておりますのと、それがそのまま疾病対策の発展にも寄与するということになるのであればなお、諸手を挙げてと申しますか、早く実施に移されることを望んでいます。また、ここに同意書及び説明書の在り方という記載がありますけれども、この記載があるならば、その同意書及び説明書のひな形なども添付していただけると、患者としてはより具体的で有り難かったなという思いはあります。
○永井座長 事務局として、今、ひな形を出せる段階にあるかということですけれども。
○丸山がん対策推進官 御指摘ありがとうございます。この報告書案を準備させていただく上で、御指摘のような説明書とか、どのような同意書が望ましいかというのは検討させていただいたのですが、引き続きモデル事業を通してどのような説明をしていくのが望ましいか、臨機応変に少し変えていく必要があろうということも考えた結果、骨子としてこういうことは必ず説明すべきという形で、本報告書案を取りまとめをさせていただいた次第です。そういう意味で、全く考えていないというわけではありませんので、ただ、現場のことを鑑みて具体的な説明書等のひな形を提示していないということで御理解いただければ幸いです。
 1点、別件ですが、先ほど羽鳥構成員のご質問に対して、法施行前にと申し上げましたが、協議会自体は法施行後の設置ということでしたので、謹んで訂正させていただきます。ただ、スケジュール感は大きく変わるものではないと理解しております。
○永井座長 よろしいでしょうか。それでは、15ページから24ページまで、第5から第7について事務局から説明をお願いいたします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 資料の15ページを御覧ください。第5の1、診療情報の収集・活用を行う対象疾患についてです。1つ目のマルですが、診療情報を収集する対象疾患は、当初は医療計画における例示を念頭に、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性冠症候群、急性大動脈解離、急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)を基本とする。具体的に対象とする診断名や基準については、関連学会等において、公衆衛生の向上の目的にも活用することを踏まえつつ、学術的な整理が必要と記載しています。2つ目のマルですが、今後詳細な運用方法については以下の点に留意しつつ、関連学会等において検討を進めるべきと記載しています。各疾患の留意事項については、御議論いただいた部分を中心に御説明いたします。
 2)脳卒中領域についてです。脳梗塞については、従来一過性脳虚血発作と診断されてきたような局所神経症状が、24時間以内に改善した場合であっても、画像上脳梗塞巣を認めるものは登録の対象とするとしております。
 3)心血管疾患領域についてです。急性冠症候群については、医学的に急性冠症候群という考え方でまとめられた、急性心筋梗塞(ST上昇型、非ST上昇型)、不安定狭心症の患者の診療情報を収集する。不安定狭心症については、緊急対応を要した症例を登録するとしております。
 16ページを御覧ください。2、診療情報の収集・活用を行うために必要な項目案について。1)項目案策定に係る考え方についてです。急性期医療現場での活用の観点からは、再発時の急性期診療に必要な情報の把握を、また公衆衛生への活用の観点からは、地域における医療機関ごとの患者分布や患者の流れの把握、救急体制の把握、循環器病発症前後の状態変化の把握等を目的とした登録項目の設定が必要である。2つ目のマルですが、医療現場での入力負担を勘案し、収集する診療情報は正確かつ簡便に収集可能な項目とする必要があり、最低限必要な項目数に限定すべきと記載しております。3つ目のマルですが、他のデータベースから収集できる項目については、将来的に登録を省略する可能性もあるが、省略を検討するに当たっては、他のデータベースから収集する項目の正確性に留意が必要である。また、例えばDPCデータから収集できる情報から全体像を把握できない可能性にも留意が必要と記載しています。4つ目のマルですが、登録項目などの妥当性については、診療情報の収集・活用の試行等を経て引き続き検討すべきとしています。
 必要な項目案については19ページからの別紙に記載しております。登録項目案の注釈として、各ページの上段に、今後、学会等有識者と議論を行い、変更の可能性がある。個人情報等を考慮し、実行可能性については別途検討を行う。他のデータベースで収集できる項目については将来的に省略の可能性があると記載しています。
 17ページに戻ります。第6、循環器病の診療情報の収集・活用に向けてです。1つ目と2つ目のマルですが、循環器病について公的に情報を収集する最初の試みであることから、まずはモデル事業で診療情報の収集事業を開始し、その中で運用方法や登録内容等の検証を行った上で、診療情報を収集・活用できる全国規模のシステムを構築し、運用開始を目指す。モデル事業やその後の経過、また循環器病診療を取り巻く状況の変化等を踏まえて、その運用方法や登録内容の改善を検討していくべきと記載しています。
 3つ目のマルですが、縦断的な診療情報の把握や対象疾患等、データベースの拡張ならびに登録範囲や項目の妥当性については引き続き検討が必要である。4つ目のマルですが、患者や医療施設等に十分な理解のもと、協力を得る必要がある。より充実した診療情報の医療現場への活用や公衆衛生への活用に向けた方策の検討が必要であると記載しています。
 5つ目のマルですが、将来的には、例えば収集した情報を他の情報と合わせて活用することも考えられる。他の情報との突合については、法的課題や個人情報保護上・情報セキュリティ上の観点から検討が必要としています。
 6、7つ目のマルですが、公共性の高い診療実態のデータは、個々の医療機関、研究者等が保管するのみではなく、データを共有することやデータの基盤を有することといった考え方や管理の透明性が必要としています。大容量のデータについては、将来的には電子カルテから多くの情報を収集し、入院、外来診療における長年の情報をつなぐ収集方法も考えられ、このような方法により医療現場で必要な情報を適時活用すること、情報を深く分析し、回復期、維持期の管理状況から重篤な発作を予測するなど、個別化医療を行うことや長期予後も含めた診療の質の評価を行うことなどが可能になることが期待されるとしています。
 18ページを御覧ください。第7、おわりにです。本検討会において、循環器病の診療情報の収集・活用の基本的方向性について議論を行った。本報告書が循環器病の診療情報の収集・活用の取組の第一歩になり、その発展に寄与することで、循環器病の対策の推進の一助となることを期待したいと記載しています。以上です。
○永井座長 今の御説明に質問、御意見をお願いいたします。
○山本(晴)構成員 17ページの1つ目のマルですが、まずはモデル事業で開始してと、その中でいろいろな検証を行った上でというようにサラッと書いてあるのですが、今までの議論からすると、モデル事業で検討する項目はかなり多岐に渡っていると思うのです。なので、モデル事業はかなり重いというか、恐らく研究として立ち上げるとは思いますけれども、そのレジストリはどういう在り方で行くかとか、それから2次利用、企業とか民間にも出すのかどうか、そうするとどういう体制でやるか、その審査をするのかとか、あらかじめどこまで同意を取るかとか、かなり検討することが多いですよね。あと、技術的な問題もあるので、本当は最終的には急性期医療の現場で活用できるということになると、先ほど出たような患者さん自身が自分のデータにアクセスできるほうが、もちろんそれはいいのですけれども、現実的にはセキュリティの面から見たら今はまだそういうことはちょっと難しくて、むしろ登録する医療機関がそのリワードとしてそこにアクセスできるというぐらいのことでないと、ちょっとユーザー管理とかの観点からも考えると難しいと思いますので、将来的にそういうことも踏まえた上で、現時点ではセキュリティのことで制約が出てきますし、かなりこのモデル事業での検討結果と、検討する課題というのをもう少し書き込んでおいたほうが、検討会としてモデル事業で頑張ってこのぐらいはやってくださいというエールを送っていたほうがいいのではないかという気がしました。
○永井座長 事務局、いかがでしょうか。研究者がどれだけ研究できるか、また行政も大事ですけれども、やはり教育や広報によって社会にどの程度データが還元されるかということをなるべく早く見せる必要があると思うのです。そうでないと、医療者だけではなく社会の協力もなかなか得られないと思いますが、いかがでしょうか。
○丸山がん対策推進官 御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思っておりまして、特に今回のレジストリは既に先行しているがんと異なる点として、やはり急性期医療機関に返すということで、先ほど今村構成員の御指摘のとおり、やはり即断して返さなければならないわけです。同姓同名問題をどのように解消していくかとか、課題は幾つかもう既に御指摘いただいた部分もありますし、そうしたことを検討会としてまとめるべきだということであれば、そこら辺の記載の仕方については、既に頂いた御意見も含め、考えさせていただきたいと思います。
○永井座長 今村構成員、どうぞ。
○今村構成員 2つほど大きな点について意見を述べたいと思います。まず、疾患の定義をしっかり最初に作らないと、このレジストリが意味のないものになってしまうと思います。今、脳卒中や心筋、特に脳卒中については、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血とありますけど、では何が脳梗塞ですかというような、はっきりと定義付けができているとはちょっと思いにくいところがあります。これは登録する患者さんが最初に違っていると、その後いくら補正をしようとしても無理なのです。ですから、脳梗塞の人の、どのような人をここに登録してもらうのですかということの定義付けというのがものすごく重要になって、これはなかなか行政機関ではできないことで、これは学会にお願いするしかないのかなと。ただ、それは大変面倒な作業になってきまして、例えば出血性脳梗塞だったら、どのような場合はどっちに登録するのかというようなこととか、モヤモヤ病の場合にはどこにするのですかとか、逐一やっていかなければいけないというような問題があって、その辺のところをしっかり、最初の段階で誰が詰めていくかということを決めておかないと、うまくいかない可能性があると思います。
 それと、次の16ページの一番下から2つ目のマルの所で、DPCデータを活用して、できるだけ記入負担を減らしてもらうということにしてもらったら大変有り難いことですけれども、では、DPCデータがくればすぐに記載しなくてもよくなるかというと、そうではなく、これもまた、事業を実施する側の負担がものすごく大きくなるのです。例えば、後ろの項目を見ていると、抗凝固剤とか降圧剤の有無と一言で書いていますけれども、うちがNDBで降圧剤のリストを作ると2,000ぐらいは軽くあって、それがしょっちゅう入れ替わるということになります。それを追い掛けていくのは、誰がマスターを追い掛けていくのですかというようなことがあったりします。それから、何年か前に大きな製薬メーカーが合併したのですが、製薬メーカーが変わると全コードが入れ替わりますので、何千というコードが一斉に意味もなく変わります。ですから、そのようなことを追い掛けていく事務が発生するので、DPCを使って記入負担を減らすことは、是非してほしいのですけれども、そういった運用上の問題が出てくるので、定義を付けていく作業、そしてマスターを管理するような作業を、記載を少しでも減らすための作業、これは専門家の協力なしでは絶対できないことなので、是非、今の段階で検討の俎上に載せてもらいたいというように思います。
○永井座長 ほかにいかがでしょうか。
○山本(隆)構成員 患者さん自身のために利用するというので、履歴を参照することはありますけれども、当面は被保険者番号が一致すること以外に、多分一致の確認のしようがないと思います。介護保険と介護認定のデータベースと、NDBを仮名氏名と性別と生年月日でくっつけようとしていますけれども、あれは例えば99%合えばいいやという状況だからそれでいけるので、実際の臨床時の場合にはそれは絶対不可能で、間違った人を結び付けてしまうことがあると思います。したがって、今回モデル事業でやるのは、被保険者番号が一致するとき以外は多分参照できないという前提条件で始めるほうがいいと思います。それで、被保険者番号が一人一番号化されて、被保険者番号が一致しても、家族ですから性別とか名前とか一致しないと駄目ですけれども、一人一番号化されて履歴が追えるようになるのは多分2022年ぐらいで、それから先にこのデータベースにその情報が入った上で、なおかつ履歴情報を検索できるという制度整備をした上で、やっと個人を追跡できるようになりますから、そこまでは多分無理だと思うのです。ちょっとそこを無理にモデル事業にしてしまうと、絶対できないという結論にしかならないと思うので、もう少し注意したほうがいいのではないでしょうか。
○永井座長 ほかにいかがでしょうか。あるいは全体を通じてでも結構ですが。
○宮本構成員 先ほど山本構成員が言われた論点は非常に大事で、モデル事業をもう少しシンプルにして、きちんと登録できるか、安全に管理できるかとかいうことにしておかないと、ハードルが高過ぎて難しいのではないかなと。モデル事業を通じて検証すべきことというのを何か挙げておくというのが現実的なことかなと私は思います。
 あと1点、患者さんの同意が必要な顕名調査になっているわけです。モデル事業が行われるような大規模施設はいいと思うのですが、非常に忙しい中小規模の病院になると、患者さんの同意がなかったからといって登録されない症例が結構増えてくるのではないかなと思っています。そうしますと、疫学的なデータがしっかり集まらない可能性もあります。同意が得られなかった症例についてどうカウントするかは、重症例とか死亡例と同じように考えておかないといけないことかなと思います。
○永井座長 事務局にお聞きしますが、モデル事業の規模とか、いつから開始するか、どのくらいの期間続けるか、何かアイディアはありますか。
○安井がん・疾病対策課長補佐 今の時点で具体的な期間、規模等は決まったものはありません。むしろ今、先生方にいろいろな御意見を頂いているところですので、そうした点を踏まえて、どういう形がいいかを考えていきたいと思っておりますので、今の時点では決まったものはないという答えになるかと思います。
○永井座長 丸山構成員、どうぞ。
○丸山構成員 最初から私が指摘していたところというか、気になっていたところですが、今も山本先生がレジストリという言葉をたくさん使っておられるのですが、この報告書にはレジストリという言葉が出てこなくて、データベースなのですね。レジストリとなると、悉皆性を100%は難しいにしても意識してデータを集めることになると思うのですが、この同意について、14ページの患者の参加についてという辺りの文章の書き方は、以前の東京総合医療ネットワークのような急性期の後の発症の際に参照できるようなところを念頭において、参加という言葉、あるいは同意書を得てデータを登録するということを考えていると思うのです。そうなると、同意する人だけのデータを収集して、悉皆性は余り求めないということになると思うのですが、モデル事業ということで、いろいろな目的を想定して、どれはどれだけ達成できるのかを検討、あるいは追求してみたらいいと思うのですけれども、やはりレジストリという感じで、現在国立循環器病研究センターで既になさっているような感じで進めるのか、それともこの医療ネットワークの中で進めていらっしゃるような感じでデータベースを構築するのかという辺り、どちらかあるいは両方ともというところで、その目的が両者達成できるのか、それともどちらかに重点を置いてしないといけないのか、今日の報告書、特に14ページに「患者の参加について」と書かれているのですが、参加となると悉皆性はトーンダウンされているような印象を受けましたもので、ちょっとその辺り気になりました。
○永井座長 先ほどの宮本構成員のお話とも通じると思うのですが、同意を得られなかった部分をどのぐらい推測するのか、あるいはそこのデータをどうするかなど、宮本先生、何か御意見はありますか。
○宮本構成員 患者情報は入れないにしても、疾患発生がどれぐらいあったかということは把握しておかないと、公衆衛生的な検証にはならないと思うのです。今、丸山構成員からお話のあったのは本質的な議論で、この登録事業が何を目指すのかというのは初めから2つありますので、それが少しややこしい気はします。疫学的な検証をするのであれば、やはり同意を得られなかった患者、あるいは登録ができなかった患者についての何らかのデータベースを作っておかないと、意味がないと思います。
○永井座長 発生した件数は、大体は顕名で登録しなくても分かるわけですね。
○宮本構成員 顕名で登録しなくても、疾患の発生数の把握は必要だと考えます。
○永井座長 それを押さえた上でということになるのでしょうか。
○山本(晴)構成員 このような臨床研究の介入試験であろうが観察研究であろうが、臨床研究の公表のときの世界的なルールでは、母集団が何人で、その中の何人の同意を取って研究をしたかということを、最初にきちんと出しなさいというのがガイドラインとしてあります。数だけでいいと思うのですが、例えば実際には、この期間に脳梗塞の方は何人来られましたが、そのうち何人が参加を拒否されたというような数だけでも取っておいて、参加率が後で分かるような形にするというのは、一般的に臨床研究の公表のときにどのぐらい悉皆性のあるデータを公表しているかという観点から求められるものではあります。ただ、フェイリャーログを付けるのが、登録する施設としては割りと手間なので、余り好かれないのですが、数だけはチェックして一定期間にどの程度の患者さんがいらっしゃったかというところは、本当は入れてほしいと思います。
○永井座長 丸山先生のお話の中で出てきた国循か医療ネットワークのどちらで管理するかですが、医療ネットワークの実態、主体はどこにあるのでしょうか。
○丸山構成員 私が申したのは、現に国循で管理されているデータベースというかレジストリのようなものをモデル事業として進めるのか、あるいはこの東京総合医療ネットワークでデータ共有されているようなものをイメージしてデータベースを構築されるのか、両方できるのがいいのでしょうが、その辺りを今後詰めていかないといけないのではないかというようなことです。
○永井座長 いかがでしょうか。今の点について、もし事務局でお答えがあればお願いします。どちらにしても、予算は必要になってきますし、どこに予算を付けるかということにもなるかもしれませんが。
○山本(隆)構成員 東京総合医療ネットワークというのはデータベースではなくて、データは全部病院にあるのです。それを、IHN-XCAというプロトコルに従って、必要に応じてそのときに集めてくるだけで、データをどこかに集積することは全くありませんので、今回の検討からは外れるのではないかと思います。並木先生が、救急医療等でやられたことを少し発表されているのですが、明らかにまだ何かデータを集めているのではなくて、それぞれの病院のデータを患者さんの同意の下に見に行くことができるというだけのシステムです。
○永井座長 よろしいでしょうか。いろいろな要因の分析は大してできないということですね。
○山本(隆)構成員 分析は全くできないです。
○丸山構成員 今の山本先生の御指摘もあるのですが、この患者参加の同意文書の在り方、あるいは説明の内容として、どういうものを考えるかということを検討する際には、こういうところを参考にしました。恐らく、悉皆を目指したレジストリ辺りの患者の同意、あるいは意思の問題は余り参考にせずに考えているようなところがあるので、その辺りのすり合わせが難しいかと思っております。
○永井座長 難しいというのは、具体的にどういう点でしょうか。
○丸山構成員 ですから、14ページの患者の参加について、あるいは同意の撤回についてという所からイメージされるのは、余りレジストリには相応しくない組み立てかなと思うのですが。こういうやり方でもレジストリは作れるものですか。
○山本(晴)構成員 おっしゃることは分かります。レジストリは本来は通常の診療情報を集めるものなので、特に個別同意を取らずにやっているものもあります。今は、厚労省の別のCINという事業で、いろいろな患者の疾病レジストリの全国調査を、ある研究班でされました。ちょうど去年、その結果を見せていただいたのですが、数百のレジストリを調べられたようでして、私も意外だったのは、確か半数以上、6、7割のレジストリは個別同意を取っておりました。やはり前向きにデータを集積していくところで、個別同意を取っているレジストリが意外と多いことが分かりました。そういう意味では、現場では個別同意を取ってレジストリを作ることに、今はそんなに違和感はないのかなと思います。
○永井座長 悉皆調査でなくてもよいということを前提にしているということですね。
○山本(晴)構成員 そうですね。レジストリの多くが、どうしても前向きに、特にアウトカムを見る場合のレジストリの場合は、個別に電話したり調査したりと、全くのカルテ情報だけでは済まないことが多いです。恐らくそういうものがあるので、やはり皆さん個別同意を取っているのだと思うのです。今回の場合は、真に診療情報だけで組み立てられるとは思いますが、自分の医療機関から外にデータを出すというところで、やはりある程度同意は必要になってくると思います。そういう意味では、個別同意は必要になってくるのではないかとは、私の感覚ではそのように思います。
○永井座長 よろしいでしょうか。もともとの組み立てとして、全国の患者さんを全て登録することはできないわけです。拠点あるいは中核病院の中でも、同意を得られた方を下にして作るデータベース、あるいはレジストリ事業だという考えでよろしいでしょうか。そのほか、全体を通じて御意見を頂けますか。
○今村構成員 これからモデル事業を進めていかれるという話は伺いましたが、実際のロードマップというかスケジュール感的には、2022年ぐらいに本格可動を目指すのか、2024年ぐらいに本格可動を目指すのかという、全体的な目標として、どのようなスケジュール感で考えておられるかを教えていただければと思うのですが。
○丸山がん対策推進官 現時点では、いつまでにという細かいスケジュールが精査できていないのが現状です。お手元に第3回の検討会の資料があると思います。資料1の最後の段階で、今年の夏頃に報告書をまとめさせていただいて、2020年度以降に診療情報の把握活用の準備、試行を経て、実際の情報の把握活用を目指すと書かせていただいております。現に、先ほど御指摘いただいたとおり、モデル事業の中で検証すべきことが幾つかありますので、その検証の進み具合も含めて今後のスケジュールは検討、と思っております。検証の開始自体は、なるべく早くさせていただけるよう、この報告書の取りまとめが終わり次第準備を進めていきたいというのが事務局の考えです。
○羽鳥構成員 これを国循で入れるときには、webで入れていくという形でいいのですよね。そこまで設計するということ。そして、悉皆性のある保険者番号十二桁(医療等ID)を振るということになるわけですから、レジストリも更にリレーショナルデータベースとして、過去の既往も全部引っ張り出すことができるという形ですよね。何回病気をしても、前回、前々回等を引っ張り出すこともできますね。
○丸山がん対策推進官 前回か前々回の検討会の中で、webで入力できるほうがセキュリティが担保できるという御指摘を頂いていると思いますので、そのような方向でモデル事業も検討を進めていきたいと思っております。今、羽鳥構成員の御指摘のところは、縦断的にそういったデータが取れるようになるか、というご指摘と理解をいたしました。先ほど、山本構成員の御指摘のとおり、当面は被保番のような形で、本人の同一性を担保するといったことも含めて検証させていただきたいと思っております。
○永井座長 そのほか、いかがでしょうか。
○宮島構成員 全体のスケジュール感が出ないということは、それそのものは仕方ないと思います。ただ、少し心配なのは、私は専門ではないのでアバウトな言い方かもしれませんが、たった今、私の理解している日本のICTの設計の問題は、いろいろな所でバラバラに設計がなされてしまって、そのレガシーシステムが動かなくなってしまったために、再設計がすごく難しくなっているような分野がたくさんあると思うのです。ですので、モデル事業をスタートすることそのものはすごくいいことなのですが、これが最初のキックだとすると、他のいろいろなものとの連結をそんなに考えずにスタートしてしまうと、後になって整理するのがすごく難しくなってしまうのではないかと、心配しています。ですので、スケジュールはともかくとして、将来どこをどのように接続して、どうなると理想なのかというところの制度設計はきちんとした上で、システム設計に入られるほうがいいのではないかと、思っております。
○永井座長 これは、やはりコードの統一などいろいろな対応をしておかないと、後でつながらないということが起こりますので、是非御検討いただきたいと思います。
○丸山がん対策推進官 御指摘ありがとうございます。厚生労働省として、データヘルス改革の推進本部を設置させていただき、このような循環器に限らず、医療情報をどうやって動かしていくかを正に検討しております。そこは、議論の進捗状況ときちんと整合性がとれるような形で検討を進めていきたいと思います。ありがとうございます。
○羽鳥構成員 正にそういう意味でしたら、心不全の末期は地元の開業の先生たちも診るので、開業医の電子カルテも、そのように義務づけて厚労省から配布することなど、まずは、生活習慣病のひとつの循環器から提言していってもいいのではないかと思うのですが。こういうデータはきちんとここに載っているので、各診療所の先生たちも御活用くださいとすることによって、開業医の電子カルテのデータの統一化も出てくると思うので、いろいろな所で提言してほしいと思うのです。
○永井座長 これは私も経験があって、最近、心電図やエコーのデータの共通化をしたのですが、企業からは、学会が動いてくれないから統一できないというのですね。たしかに学会で委員会を作ってコードを決めたら、実際に企業の皆さんは従ってくれました。ですから、いつまでも企業任せにしないで、アカデミアあるいはこういうチームとして、積極的に動いたほうがよろしいと思います。循環器学会には情報委員会があって、そういうことを決めることができますので、いろいろな所と連携したらよろしいと思いますが。いかがでしょうか。
○今村構成員 今のコードの統一の話で、例えば顕名で名前を集めるにしても、コンピューターで漢字コードで、同じ漢字でも違うコードが振られています。例えば、ワタナベさんの「ナベ」の字は31種類あって別のコードになります。「ベ」のほうも、また10何種類あるので、それを掛け合わせると何百という組み合わせになります。ですから、ワタナベさんを漢字で入れるかどうかということも、そのようなコードの統一の問題が出てきます。今度は片仮名で入れると、先ほど言ったスズキヒロシさんの場合は、ヒロシさんが全部一緒になってしまうというような問題があって、一言に統一と言っても、日本全体でもまだまだ課題として残っているものがあります。そういうことを意識しながら、統一コードになるように考えていくようなことを前提に置いていただきたいと思います。
○永井座長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。そうしますと、本日の議論を踏まえて、事務局とも整理させていただきたいと思います。基本的には、皆様の御了解をほぼ頂けたのではないかと思います。もし、具体的な問題を御提起なさりたい場合には、またお寄せいただくとして、最終的には、字句の修正を含めて、座長であります私に御一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは少し早めですが、本日はここまでといたします。最後に、吉永審議官から一言御挨拶を頂きます。
○吉永審議官 健康局担当審議官の吉永です。遅参いたしまして、大変失礼いたしました。また日頃より、大変お世話になっております。非感染症疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会ですが、本年1月から約半年にわたり、4回御議論いただきました。この間、貴重な御意見を賜り厚く御礼を申し上げます。
 構成員の皆様には今さら申し上げるべきものでもありませんが、心疾患については死因の第2位、脳血管疾患については第3位ということで、循環器病の死因が上位を占めているという状況です。また、疾患予防や急性期から慢性期までの幅広い対策が、喫緊の課題になっているところです。さらに昨年の12月には、長年待たれていたものですが、循環器病対策基本法が成立いたしました。その中の基本施策の1つとして、情報収集提供体制の整備が明記されているところです。このような状況を踏まえ、本検討会で御議論いただいたところですが、循環器病の診療情報の収集・活用の在り方について、幅広い視点から御議論いただいたところです。
 今般、循環器病の診療情報の収集や活用方策について、具体的な方向性をお示しいただくことができたのではないかと考えております。今後、今回取りまとめていただきます報告書を踏まえ、循環器病の診療情報の体制整備を進めていきたいと考えております。コードの振り方を含めて、まだまだ手探りな部分もありますが、引き続きここにお集まりの皆様方の御指導、御鞭撻を賜りながら進めていきたいと思っております。重ねて、今まで、そして本日様々な御指導を頂きましたことに厚く御礼を申し上げるとともに、私からの最後の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
○永井座長 ありがとうございました。それでは、事務局にお返しいたします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 ありがとうございました。では、これをもちまして、本日の検討会を終了いたします。構成員の皆様、約半年間にわたり御協力いただき、誠にありがとうございました。
○永井座長 どうもありがとうございました。