2019年3月19日 第6回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会 議事録

政策統括官付参事官付雇用・賃金福祉統計室 政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

平成31年3月19日(火)15:30~17:30

場所

中央合同庁舎第4号館12階 共用1208特別会議室
(東京都千代田区霞が関3-1-1)

出席者

構成員(五十音順、敬称略、○:座長)

  石原 真三子
  稲葉 由之
 ○今野 浩一郎
  樋田 勉
  山田 久

事務局

  吉永審議官
  中井参事官(企画調整担当)
  瀧原統計管理官
  細井統計企画調整官
  田中審査解析官
  村木雇用・賃金福祉統計室長補佐

議題

(1)中間的整理に向けた論点の整理について
(2)その他

議事

 

○細井統計企画調整官
 本日の出欠状況でございますが、神林構成員、野口構成員から御欠席の御連絡をいただいております。
 それでは、早速でございますが、ただいまから第6回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会を開催させていただきます。進行につきましては、座長よろしくお願いいたします。

○今野座長
 それでは、始めたいと思います。
 まず本日の議題ですけれども、中間的な整理に向けた論点の整理をしたいと思っております。

○今野座長
 それでは、中間整理に向けた論点整理をしたいと思いますが、その前に今日、山田さんから資料をいただいておりますので、それについてお話をいただいて、少し議論をまずしたいと思います。
 それでは、お願いします。

○山田構成員
 半分メモでつくったものなので、間違っているところも入っていると思いますので、あくまで問題提起というか、たたき台ということで、ここはおかしいというところをいろいろ議論させていただければと思います。
 最初に全体像を私なりに整理をさせていただいておりまして、そもそも共通事業所という話が出てきた経緯というのは、これまでいろいろ議論する中で、こういうことなのかなということで確認をまずさせていただきたいと思います。
そもそも前提となるのは、本系列との関係ということなのですけれども、いわゆる毎勤の本系列というのは、従業員5人以上の全事業所の全常用労働者の賃金や労働時間等の状況を時系列データとして示そうとしているものだということだと思いますけれども、これが母集団ということだと思いますが、実務的にはサンプルをとってやる手続的には、いわゆる経済センサスが基本的には5年に1回発表されるということでしょうけれども、それで得られる情報をベンチマークとしてこの5年間、産業別・規模別の事業所数を固定する。いわゆるセルをつくっていって、そこに全数調査と抽出調査を組み合わせながら実際にサンプル調査をしていく。そのうち回答されたものを使って全数への復元推計をやっているということなのだと思います。
 その具体的なプロセスは、後ほど4のところで確認をさせていただきたいと思います。
 基本的にはこうなのですけれども、当然、調査をしていく間に、もともと調査対象の事業所としてリストアップしたものの中に回答がされないものが出てくる。何らかの形で倒産なり廃業をしたということで、脱落したということを確認できた段階で、同じセル、グループの中から新たな事業所を追加していく。したがいまして、経済センサスの次が出てくるベンチマークが変わるまでというのは、事業別・産業別のセルの中の事業所の数は変えないということでやっているということかと思います。
 ところが、これは結局、産業構造とか雇用構造、本来は全数を調査するので反映しないとだめなのですけれども、こういうやり方をしている以上、どうしても全体が反映できない。なぜかというと、本来、何らかの形で廃業なり事業所の閉鎖ということがあった場合は、それはまさに産業構造の変化によって、ある規模別・産業別のグループ自体が減っているかもしれないのだけれども、そういうところは無視して同じように追加することになっていますので、そういう大きな構造変化を十分反映していないということになっているということかと思います。ですから、そもそも推計した母集団から当然乖離が生じてくるので、それを経済センサス、これは基本的には全数調査ということだと思いますけれども、ここで1回、反映させる作業ということで、規模別・産業別の事業者数の数をもう一回ここで再定義し直すということをやっている。これをベンチマーク更新と言っているということかと思います。
 ただ、こうすると当然、前回ベンチマークと新しいベンチマークの間でギャップが生じてくるわけで、当然、賃金なり雇用数もそうですけれども、それぞれに断層が生じてくるということだと思います。
 それから、断層の問題に関しては18年の見直しの前に、前後でやり方が変わっているということで、以前は30~499人に関しては、抽出サンプルは3年ごとに全部入替ている。ですからギャップが3年ごとの抽出サンプルの入替時期と、経済センサスによってベンチマークそのものを変える、その2通りで発生するということだったと思います。そのときのギャップの埋め方として、俗に三角修正方式と呼ばれているわけですけれども、ベンチマークの更新時点あるいはサンプルの入替時点の賃金、労働時間等の水準はそのままにしておいて、その2点の間がなめらかになるよう修正していくという形をとっていたということかと思います。これは一つのやり方ということだと思いますが、特に時系列の動向を気にする人たちからは、過去の伸び率が何年かごとにがらっと変わってしまうので、これはちょっとどうかという問題提起なんかはされていたということであります。私自身も民間のエコノミストとしては、若干これに関してはうーんというところがあったのは、実感のところです。
 そういう背景で2018年に見直しが行われたわけですけれども、そのときに関しましては30~499人についての全数入替というのを、いわゆるローテーション・サンプリングということに切りかえて、これによって3年に一度の断層というのは、完全にもちろん解消されるわけではないのですけれども、かなり小さくなっていくということで、これは理屈上、解消されるというものにして、ただ、ベンチマークのところが残るのですけれども、この部分はこのまま残す。これも過去、前の事務局の話ですと、このベンチマーク更新というのは年によって違うのだけれども、必ずしもそんなに断層が大きくないという判断だったということだと思いますが、ただ、やはり断層の影響が残ってしまうということですので、従来のような修正をしないわけなので、何らかの形での代替系列が必要なのではないかということから、この共通事業所というものが出てきたという経緯というふうに理解をしております。
 そうした上、次のページなのですけれども、共通事業所を具体的にどういうふうにつくっているかということですが、これはコンセプトとしてどういうものかというよりも、具体的なつくり方というところの形態面からの確認なのですが、産業別・規模別の事業所数をベンチマークで固定した上で、1年前と当年の双方で回答のあった事業所の賃金等を企業別・産業ごとの代表したものとみなして、復元・集計方法を本系列と基本的には同じにして母集団の賃金などを推定しているというものだと思います。
 これに関しては、これまでの議論の中で私は実はこれ自体の意味合い、違う言い方をすると母集団は一体何なのかということについては、実は2通りの想定ができるのではないかと感じております。1、2とありますが、2のほうから説明をしていきますけれども――ある意味これが恐らくは当初こういう形で考えられていたのではないかと思うのですが――あくまで全体の本系列と同じもの、代替手段ということですから、あくまで本系列と同じものだと。したがって、母集団に戻すときも構成に関しましては、構成というか集計方法を、本系列と同じ形にして戻すということにしているということで、そもそもはそういう発想なのではないかと思います。
 ただ、これに関しては次のところに書いておりますけれども、やや定義上というか、形式を見たときに若干ずれが生じるように思われます。というのは、もともと共通事業所ということですから、当然これまでの事務局の説明にもありましたように、新規に生まれてくる事業所は全く考慮されないわけですから、当然この全数とは言えないのではないかということです。それから、そもそもこれを本系列との代替、ある意味これを見るためのものというふうに考えたときに、一定のバイアスが生じてくるのだろう。これがここでサバイバル・バイアスという言葉で結構議論が出てきたのではないかと思います。それは具体的に言うと、やはりどうしても回答率が高くなる大手であったり、異動、倒産とか廃業の確率の小さい大手のところに本系列と比較してサンプルがどうしても偏ってくる。そうすると当然、賃金水準には上方バイアスがかかるということなのではないかということだと思います。
 ですから、こういう定義によるのであれば、少なくとも使う場合にはどういうバイアスがかかるのかということに関して明らかにしておかないと、そもそもの定義、2のほうで使うというふうにしても正確な把握ができないということだと思います。
 青い文字で書いていますけれども、そういう意味ではサバイバル・バイアスのかかり方を何らかの数値で示す必要があるのではないか。これまでも回答事業所と非回答事業所の賃金水準の違いのような形で示されていると思いますけれども、こういった形で特性を明確にしていくことが少なくとも必要だということだと思います。
 ただ、実は別の可能性もあるのではないか。それはこれまでも申し上げてきたところですが、そのアイデアというのは折に触れて説明させていただいていますが、小売関係だと既存店と全数店の2種類の調査があって、いわゆる既存店に概念が近いということが言えるのではないかということです。
 「第1に」というところに戻っていただきますと、1年前と当年の双方の回答があった事業所という基本コンセプトということで言えば、母集団はいわゆる既存の事業所、前年から存続している事業所、すなわち既存店というもののアナロジーに近いものになるのではないかということです。ただ、これということであると、実は本系列の、全数に戻すときの推計比率というところの戻し方が、本系列とは当然変わってくる。明確に新しい事業所は入ってこないわけですから、そういう意味ではそこの調整をする必要がある。もしこういうふうに定義を明確にするのであれば、定義し直すのであれば、それが必要だということではないかなと思います。
 これはそもそもの論点1の共通事業所ということの特性をどう考えるのかということに対しての私自身の捉え方であります。
 もう一つの問題は、それとやや独立して存在する問題。特に第1のケースにかかわるのかもしれませんけれども、やはり共通事業所自体の制度の問題というのは、ずっとこの中でも議論が多かったと思います。普通に考えてサンプル数が非常に小さくなってきますので、これを復元・推定するに当たって、どの程度それが正確に復元されているのかというところをしっかりここは把握する必要があるということかと思います。
非常にナイーブに考えれば、共通事業所における標本誤差というものが計算できれば、それではっきりするということでしょうけれども、なかなかこれは実務的に難しいということであれば、前回、樋田先生がおっしゃったところだと思いますけれども、単純に共通事業所のサンプルの賃金だったら賃金の標準誤差を計算し、例えば95%の信頼区間を計算すればどのぐらいになるかみたいなところを示すというような、これはやればできる話ではないかなと思います。
 それとはまた別に、前回せっかく事務局のほうで計算をしていただいていたので、こういうやり方もあり得るのではないかということなのですけれども、例えば具体的に言うとウェイトです。全数に戻すときの労働者ウェイト、常用労働者のウェイトを共通化していく。それでもって戻す。その前の前提として要は共通事業所の系列のややコンフュージングなというか、特性ということだと思うのですけれども、実は1年に対して2系列生まれてくるというところがこれまでずっと説明されてきているわけですが、それは本来、当然何らかの母集団をサンプリングして取ってきているものなわけですから、本来は真の値、母集団の数字ということがあるはずであって、2系列つくったとしても、その数字というのは一定の誤差の範囲内に本来は収束していくという考えが普通ではないかということであります。
 そうすると、この2系列あるものが共通すれば、ウェイトの違いによる集計値の違いの値が控除されますから、そういう形で計算し直したもので、具体的にはここにありますように平成29年の2系列のものが同じウェイトで計算した28年の数字を比較したときに、例えば伸びで言うと、この伸びというのが一定の誤差の範囲内におさまるのであれば、共通事業所というもののサンプリングというのが一定の精度でできているということは言えるのではないか。逆に言うと、これがあまりにも差が大きいということになりますと、実はこのサンプリングというのはかなり偏りが生じているので、その数字ということはかなり幅を持って見ないとだめになるというふうに考えられるのではないかということです。
 そこで実際、計算をしているのですけれども、計算間違いがないと思いますが、手で打っているので御確認いただきたいのですが、これでやってみると、これはどう考えるかですけれども、年平均というところで見ていただきますと、実は28年、29年の系列では0.9%という伸びになるのですけれども、29年、30年で見ると1.4となっていて、間に0.5も差が出てくる。そうすると、もともとの賃金の変動自体はかなり小さくなる中で、ばらつきが0.5もある系列はどうなのかなと。これは個人によっていろいろ判断はあるかなと思うのですが、私の個人的な感覚ですと、かなりサンプルにバイアスというか、偏りがあって、なかなか使うにしてもかなり慎重に使わないとだめだなというふうに、私は個人的に印象を持ったということであります。
 基本的にはそれまでなのですけれども、最後にこれは確認をさせていただいております。集計とか推計プロセスで統計の専門家はΣの式で見ると明々白々ということですけれども、なかなかそういうものになれていない人たちには直感的にわかりづらいということで、私なりに4ページの推計方法を直感的に書き直しているのですが、要はもともと言うまでもないですけれども、こういう調査というのは母集団――母集団というのは言い方をもっと具体的に言うと全数調査をしたときの何らかの数字だと。例えば賃金の平均的な数字だというふうにするわけですが、当然この全数を調査するということは、実務的にも難しいということで、そこから抽出調査、幾つかのサンプルを選んでくるということをするわけですけれども、この毎勤の場合は500人以上は全数調査ですが、それ以下の場合は抽出調査でやっている。そのときに産業別・規模別にグルーピングをしていって、その中で例えばある産業、ある規模であれば全数のうちの10分の1をとってくるとか、20分の1をとってくるというふうなことをしている。ここでそれが抽出率と言われているものだと思います。
 そうした上で、実際にこの調査票を抽出した事業所の名簿に沿って送るわけですけれども、当然ここから回答が返ってくる。ただ、実際は100%回答が返ってくるわけではなくて、回収率というのは一定の水準で来るということです。そういう集計されたサンプルを当然もう一回、母集団に復元集計していくわけですけれども、そのときのプロセスとして下のΣの入った図表で言いますと、最初にdというものが出てくるわけですが、これが抽出率逆数ということで、当然あるセルから10分の1しか持ってこないのであれば、それを10倍して戻すという作業をここでやっているということです。それから、2のところは何をやっているかというと、推計比率というのは正確ではないのですが、非常にざっくり言うと回収率のところを常用雇用者数に焼き直したもの。それ以外のところも少し入っているということのようですけれども、基本的にはそういうもので戻しているというところだと。こういうことで全体を母集団推計しているという理屈になっているということだと思います。
 ちょっと長くなりましたけれども、以上でございます。

○今野座長
 ありがとうございました。
 それでは、まず瀧原さん、何かありますか。事実誤認とか、ここは違うとか。

○瀧原統計管理官
 事実というか、基本的にこういう形です。細かいことを言いますと、1ページの最初のところで「全事業所(従業員5人以上)」と書いてありますが、毎勤自身は常用労働者でやっているところではあるのですけれども、その辺は捉え方ですので、基本的にはこういう感じでまとめていただいて、私としては非常にわかりやすいと思います。

○今野座長
 それでは、どうぞ御質問、御意見がありましたら。

○石原構成員
 2ページ目のところなのですけれども、共通事業所の意味合いについて2つ考え方があるのではないかということだったのですが、基本的には2のほう、復元方法を考えれば今の計算方法でいけば、本系列になっているのです。これをどう考えるか。私は基本的には共通事業所は意味があるのか疑問だという立場なので、そう思って聞いていただきたいのですけれども、共通事業所だけを取り出して、それを膨らませて本系列の数字に戻しているわけですから、想定としては経済全体が共通事業所であるということです。経済全体がもし脱落とか新規がない状態だったらどうなるかというような仮想の数字をつくっているというふうに考えられるので、私の理解はそういう、何でそんな小さいサンプルでそんなものをつくって何の意味があるのかというふうに思ってしまうわけです。
 1番のほうなのですけれども、既存店と新規出店みたいな話は前回、神林さんがちょっとおっしゃっていた本系列で既存事業所と新規と脱落を分けることができるので、それを今、私も毎勤をチェックしてみたのですが、現在はやっていないので、大きなサンプルで経済全体をカバーするサンプルがあるのであれば、わざわざ共通事業所、偏りのある小さいサンプルからつくるのではなく、この検討会の範囲を超えているかもしれないのですけれども、そちらをまずつくるべきではないか。そちらのほうが正確な数字をつくることができるのではないかというように前回思いましたので、それもちょっとこの検討会のどこかに、こういう数字をつくるべきだというのを入れていただきたいなと思っています。

○今野座長
 何となく皆さんの意見が共通しているかなと私が勝手に思っていたのは、第2はないのではないか。つまり、共通事業所でオールジャパンの数字に戻すというのは意味があるのか。それだったら本系列のデータでやればいいではないかというのと、ということは戻すとすると、オールジャパンの共通事業所というのに戻すということはあり得るかなと思いますけれども、そのように私は理解していたのですが、わかりますか。オールジャパンの中の共通事業所の母集団を推定することが重要。戻すときにはその母集団に戻す。そういう話。

○石原構成員
 既存事業所ですよね。

○今野座長
 だから、これで言うと第1のほうでしょう。というふうに何となくみんな思っていたような気がするのだけれども。だからそれは山田さんの言ったように、オールジャパンの中で既存店というのはどういう状況にあるのかというのを知るというのは、意味があるかもしれないということと関連しているのかなと思っていました。つまり、それはオールジャパンを知るためではなくて、オールジャパンの中の既存店の状況を知る。

○石原構成員
 それを見るためには、本系列の既存事業所の数字がまずないといけないと思うのです。母集団がオールジャパンの既存事業所なわけですよね。それを見る数字としては、本系列の大きなサンプルで何かセルの復元の問題とかもないような数字がまずあって。

○今野座長
 でも実質上、本系列を出すためにオールジャパンのデータからサンプリングをして、サンプリングしたデータの中の共通事業所を引っ張ってきているから。

○石原構成員
 でも共通事業所は偏っているのですよね。

○今野座長
 いや、偏っているのですけれども、今おっしゃられたオールジャパンの共通事業所の母集団のデータというのは、どこにあるのですか。

○石原構成員
 オールジャパンの既存事業所のデータは本系列。

○今野座長
 サンプリングされたデータの中でしかないわけですよね。

○石原構成員
 そうです。

○今野座長
 それを共通事業所とここで言っているのではないですか。

○山田構成員
 だからそこは違うのかというのが、私は一緒なのではないかと。先生がおっしゃることはよくわかるのですが、サンプリングをしたときに明確に既存事業所の全数調査をするときに、具体的なサンプリングをするときに残るのは、結局ここで言っている共通事業所ということをとらざるを得ないのではないか。サンプリングしたものは。

○石原構成員
 既存事業所のうち半分落ちたりしているわけですよね。サンプルが変わったりして、半分ちゃんと真面目に提出していても落ちたりしているわけですよね。共通事業所は母集団から持ってきたサンプルのうちの7割ぐらいなので、サンプルが小さいわけです。その本系列の脱落はわからないですけれども、新規ではないものが既存事業所ですね。なのでちょっと違う。

○今野座長
 よくわからなかったです。

○石原構成員
 前に図を書いたと思うのですが。

○今野座長
 いや、そうなのですけれども、実際上、作業をするときに例えば平成30年と31年の既存店ですよね。

○石原構成員
 既存店と共通事業所は違いますよね。

○今野座長
 同じで使っていました。せいぜい違うとしたら、既存店と言っていたのは母集団としての共通事業所で、共通事業所というとサンプリングされたデータの共通事業所という、そのぐらいの分け方だと思っています。

○石原構成員
 そうか。サンプリングされたときに、その事業所は前からありますというのがわかるのだと私は思ったのです。

○今野座長
 それはわかります。

○石原構成員
 それが既存事業所ですよね。

○今野座長
 例えば30年と31年。両方サンプルしたデータがあります。それと共通したのはここからここまでですというのはわかります。

○石原構成員
 何て言ったらいいかな。サンプルしてきたもののうち、ほとんどは前からある会社。

○今野座長
 でも組みかえているからね。サンプル組みかえをしている。

○石原構成員
 たとえ新しくサンプルに入ってきたものであったとしても、その事業所は前からある事業所です。

○今野座長
 そういう意味ね。

○石原構成員
 というものと、本当に新しく新設された事業所が区別できると神林さんは言っていた気がするのです。

○今野座長
 それは対前年の前月末。でも前月末の賃金データは入りますね。前年のはない。

○瀧原統計管理官
 新しく入ってくるとないのです。

○今野座長
 前月だったらわかる。

○山田構成員
 サンプリング上はとれないのではないですか。

○瀧原統計管理官
 最初のとき以外。

○今野座長
 前月の最終の従業員数と賃金を聞いていますからね。調査票上、聞いていなかったっけ。

○瀧原統計管理官
 スタートのときですか。

○今野座長
 毎月の調査の中で。

○瀧原統計管理官
 調査票自身ではその月だけです。

○今野座長
 前年のことは全く聞いていなかったでしたっけ。ということは、わからない。

○石原構成員
 では、この間、神林さんが言っていたのは何ですかね。既存事業所と新規を区別できる。

○山田構成員
 私の理解は、神林さんが言っていたのも同じことを言っているのかなと思ったのです。そう理解していたのです。だから逆に言うと、母集団に戻すところは当然既存事業所なので、ここで言っているように今の本系列に戻すような推計比率を使ったらだめなわけです。

○今野座長
 第1のほうでいけばね。

○山田構成員
 だから逆に言うと、石原先生がおっしゃるので区別することができるとすると、今のサンプリングで、今の共通事業所のとり方とは違うデータをとることによって、いわゆる既存事業所に戻すという作業ができるかということですね。

○石原構成員
 そうです。

○山田構成員
 でも、それは結果的にできないということなのではないのかなと。

○今野座長
 あれはできるよね。30年に事業所があって、それを31年にサンプリングしたときに31年のデータがこちらにあるわけですね。そうすると、そのときに30年に答えた事業所の中で、31年でサンプリングしたときに答えなければいけないのに答えていない事業所というのはわかりますね。それは未回答事業所か。さらに名簿がもしあるとすると、そこから消えた事業所はわかる。潰れてしまったとか。

○瀧原統計管理官
 そうですね。廃止事業所はわかります。

○今野座長
 新規もわかりますね。

○瀧原統計管理官
 毎勤上は新規に入れたというのはわかりますけれども、新規にできた事業所かどうかというのはわからないですね。

○石原構成員
 その事業所の歴史みたいなものは聞いていないのですね。設立年とか。でも経済センサスでわかりますね。

○瀧原統計管理官
 ただ、そこは毎勤のサンプリングには全然使わないところです。確かに今回、意見を出していただいたときに、神林先生からは全部で6枚ほどのペーパーを出していただいたのですが、そこの最初の論点1をちょっと御紹介させていただきますと、神林先生のペーパーには実質化を検討するに当たり、本系列と共通事業所の集計値の特性をどう考えるかというところに関して、まず最初、前提として書かれているのが、「毎月勤労統計の本来の集計値は、各時点の賃金水準の平均値を推定することにあって、賃金変化率は平均値を推定することにはない」というのがまず第1にあって、その上で、「以下の議論の過程において、賃金水準の平均値を推定に関する議論か、賃金変化率の平均値の推定に関する議論かを区別する必要がある。」通常の話と変化率の話があるということです。
 その上で傍論という形で、「賃金変化率の平均値を求める場合、共通事業所のみを選択して賃金変化率を求めるのは、同一事業所に勤続し続けることを前提とした賃金変化率を近似するに等しい。日本の労働市場は一般に転職を通じた賃金上昇が欧米ほど見られないという特徴はあるが、共通事業所に限った賃金変化率は、統計的に特徴を有するという論点以外に、計測対象とする労働市場を実質的に限定していることは意識する必要がある。」これは前もおっしゃったことです。
 その上で、「したがって、毎月勤労統計は賃金支払総額の変化を、継続就業事業所における賃金支払総額の変化と、新規開業事業所によって新たに発生した賃金支払総額と、廃止事業所によって失われた賃金支払総額に完全に分解することができるという本来の機能を有していることがわかる。」と書いてあるのですけれども、これが多分おっしゃっていた話ですよね。

○今野座長
 前回か前々回も言っていましたね。できると。

○瀧原統計管理官
 それはもしかすると、山田先生のペーパーの2ページの下に書いていただいている図表1、左のほうですけれども、今、山田先生がおっしゃった共通事業所のデータは、上の○2の全常用労働者を母集団にするのではなく、横に伸びている1の1年前から存続する全事業所の全常用労働者を母集団としているというふうに仮定して考えるとすると、共通事業所を正しく復元すると、この間に入っている1年前から存続する全事業所の常用労働者数に正しくやれば復元できるかもしれない。これを復元できたとすると、本系列で復元したものは、これに加えて新規と廃止という考え方なのでしょうかね。

○今野座長
 そういうことね。できればね。なるほど。でも、それは新規と廃止を差し引きしたネットしかわからない。

○瀧原統計管理官
 そうです。ですから何らかの方法で廃止のほうは、まだ毎勤の中ではわかる。新規が全くわからないのですけれども。

○今野座長
 でも計算方法がどうかというのはあるのと、できるかどうかということもありますけれども、サバイバル・バイアスみたいなものを考えているので、ですからどっちにしてもどの程度潰れていくのかとか、どの程度新規に入ってくるのかということは、どこかで検討しなければいけないということだと思います。そういうときにどういう計算方法とか推計方法をするかはまた別途考えるにして、あるいは神林さんが帰ってきたらもう一度言ってもらうにしても、課題としてはあるということだと思います。
 あと、山田さんのこれの3ページ目なのですけれども、28、29と29、30のときの29年の賃金ですね。一応、ベンチマークというかウェイトは一緒にしておいて、そのときに問題だなと思うのですが、この表のすぐ上のパラグラフの最初にあるのですけれども、共通事業所の母集団の真の値は定義上、一つあるということなのですが、この母集団の真の値は28、29の真の値と29、30の真の値は違うのですね。母集団が違うのです。これは一緒ということを前提で議論されていますね。違うと思うのです。だってこれ28、29は28、29に共通して存在するものでしょう。

○山田構成員
 その前の仮定として2ページの話があって、だからどちらかわからないのですけれども、どちらかというふうにこういう話に、今野先生がおっしゃったのは定義上の話だと違うのです。でもこれはあくまで共通事業所というのは何らかの真の値を戻すための。

○今野座長
 それはいいのです。それはそのとおりで、ここで山田さんが言うところで言うと、○1の真の値ですね。

○山田構成員
 どちらでもいいです。

○今野座長
 いや、○1でないといけないのではないかと思うのですが。

○瀧原統計管理官
 2ページの○1ですね。

○山田構成員
 だからいわゆる既存店ということですね。

○今野座長
 共通事業所の母集団が28、29のときの母集団と29、30のときの母集団はもともと違う。どの程度違うかはわからないけれども。

○山田構成員
 私の理解は同じと考えていて、2ページの1というのは既存店、既存事業所なのです。要は去年と今年で言ったときに、去年も今年も存続しているというのは1つのグループしかないですね。ここで言ったときに、そのときの例えば平成28年と29年で既存店のグルーピングは1つしかない。そのときで3ページの(3)○3で書いている平成28年の系列というのは、平成28年の2年間で共通している事業所の去年の値、28年の値で、平成29年というのは29年の値、同じ事業所で。ただ、サンプリングによってその数字が2つとれている。だから本来はこの2つの数字は同じで。

○今野座長
 ○3と○1の母集団は一緒ですね。それは28年と29年に同時に存在していた事業所を母集団とします。それはいいですね。

○山田構成員
 実は○3と○2も本当は母集団は一緒ではないか。サンプリングは違うのですけれども。

○今野座長
 いや、母集団は違う。新規に入ってきたり出ていったりしているから。

○山田構成員
 だから新規に入ってきたものは除外し。

○今野座長
 でもこれ29、30の母集団は29に存在し、30に存在する。同時に両年で存在する。だから28、29の両年に存在する母集団と29、30両年に存在する母集団は必ずしも一致はしない。その違いは多分新規にどの程度、潰れるのがどの程度ということに依存するのではないかと思うのです。と思ってお聞きしていたのです。だからサンプリングの誤差かもしれないけれども、もう一つは、もともとの母集団のずれの誤差と両方入っているという理解でいいですか。

○山田構成員
 そうですね。サンプリングの段階でそうなってしまうということか。1年ごとに既存事業所は変わっていくからですね。

○今野座長
 そういうことです。

○山田構成員
 そうか。そうするとこれだけだとそうは言えないのですね。

○今野座長
  この問題は前から事務局が出している前月と比べましょうというときに、前月と今月がまた母集団が違うのです。だから前月、今月で系列をつなげようとしたって、母集団は1カ月違えば違うという問題が起こるのと同じかなと。そんなのでつなげていいのかという話なのですが。というか、何の意味があるのだろうということですかね。だから既存店の意味が、時期がずれると違ってくるということです。そういうことですね。だから対前年だけだったらいいのですよ、ということになる。
どうぞ。

○稲葉構成員
 非常に重要な点なので、私の解釈の確認をしたいところがあります。山田先生の2ページ目のところに関連して、現在、共通事業所に含まれている事業所というのは、平成30年の3年前に抽出された事業所が基準になっているということです。ですから現時点で言うと共通事業所は4年以上継続している事業所が主であって、今後、ローテーション・サンプリングによって変わるときに共通事業所は今4年以上継続ですけれども、2年以上継続という事業所が入ってきます。現時点での共通事業所の母集団にはいろいろ議論はありますけれども、今後考える共通事業所の母集団というのはかなり推移してくるということが考えられます。非常に重要なポイントですので補足させていただきました。

○今野座長
 だからそういう点からすると、いろいろなバイアスとか偏りがあるぞということを検討するときに、いいデータが今ないということなのです。もう少し定常的な状況になってもらわないと、そういう問題はありますね。

○樋田構成員
 1つよろしいでしょうか。3ページの第2パラグラフについての意見を補足させていただきたいと思います。私が先ほど申し上げた信頼区間というのは、継続事業所と脱落した事業所が、例えば、賃金水準について、差があるのかないのかを見るときに、信頼区間を比べればいいのではないかという話なので、ここでの話題とはすこし意味合いが違うかなと思います。
以上です。

○今野座長
 これは山田さんに、いい材料を出していただきたいのですが、復元する先が2ページ目の第1と第2の第2ではなくて、第1だとすると、復元先はオールジャパンの既存事業所が母集団ですよね。このデータはあるのですか。そのことと、それに関連してサンプリングされた共通事業所のデータの誤差を出すときにどうするんだろうと思ったのです。標準誤差を出すときに、どうやるのですか。大丈夫なのですか。でもここでは、というかちゃんとした統計にしようと思ったら標準誤差をちゃんと考えなければいけませんよね。これはどういうふうにするかですね。

○山田構成員
 私のイメージは、例えばある月の共通事業所の29年1月だったら1月の数字のいわゆる定期給与、この数字自体を計算する。

○今野座長
 直感的なのですけれども、共通事業所の母集団があって、サンプルされた共通事業所集団にどの程度の抽出率でサンプルされたデータがあるのかってわかるのですか。どうやったらわかるのですか。

○稲葉構成員
 これは推定の方式がかなり複雑になっているので、基本的に理論式で標準誤差を求めるというのは極めて難しいと思います。リサンプリング法であるブートストラップ法のようなものを使用して、シミュレーション的に推定値を導き出すという方法が一般的な方法であると思います。ただし、以前の検討会でも申し上げましたが、抽出の層としている産業がかなり細かく設定されているため、現状でリサンプリング法を用いるのは、なかなか難しいのではないかという印象を持っています。
 樋田先生、いかがですか。

○樋田構成員
 リサンプリング法を使う場合でも、母集団サイズの情報がとウェイト等の計算には必要です。仮に○1の母集団を想定して、リサンプリング法を適用する場合には、何らかの方法で継続店の母集団を設定し、そこからランダムサンプリングしたものとみなして、共通事業所の計算をすることになります。そうすれば理論式やリサンプリングで、形式的には標準誤差が計算できると思います。
 ですけれども、形式的に計算した数字というのは、あくまでも共通事業所の母集団のようなものを想定し、ランダムサンプリングしたとみなした仮定の上で計算をしているので、誤差が過小評価される可能性があります。誤差が過小評価されると、平均値や比率などの結果が過大に評価されることになるので、それは危険だと思いますので、どこまで計算が可能なのかというのは慎重に考える必要があるかなと思うのです。

○瀧原統計管理官
 今のお話を聞いていて思ったのですけれども、山田先生の2ページに書いた○1の母集団というのを共通事業所の母集団として考えたときに、これは例えば先ほどあったように経済センサスで1年前以上から存在している事業所というのは、一応母集団として想定はできますよね。そういうものをちゃんととっていれば。そういう母集団ということですか。

○今野座長
 経済センサスが毎年調査してくれればできるけれども、5年ごとだから。

○瀧原統計管理官
 そうですね。ちょっと仮想的なのですけれども、調査年だけとかに限定したときに、もしそういうものが、もしくは経済センサスがとれたとした場合に、共通事業所はその事業所を代表しているかもしれないのですが、ただ、一方で毎勤のデータには共通事業所にはならなかったけれども、1年以上存続している事業所というのはありますね。つまり1年前にたまたま答えなかったということで、でもそれも本来なら代表するところですね。母集団の中の一部ですから。ただ、母集団の中の1年前から勤続していて、毎勤の中の調査対象になっている事業所、その中のかつ1年前に答えた事業所というのは、さらにサブグループですね。それは、その2つのグループというか、包含されているものというのは、どういう扱いの違いになるのでしょうか。

○今野座長
 それは検討しましょう。ただ、ここで一番基本的な合意は、山田さんが言う第1を考えるのか第2を考えるのかというもので、何となく今の復元の仕方は第2を考えていたのではないですか。でもあまり意味がなくて第1でなければいけないというふうになれば、我々委員の間ですけれども、これははっきりしておいたほうがいいよなという感じですね。やるのだったら第1だと。

○瀧原統計管理官
 今の方法は、少なくとも第2を想定しているやり方と言えるのかなと思います。

○今野座長
 やはり山田さんが言う既存店です。

○山田構成員
 既存店の場合は石原先生が言ったように、実はこういうやり方ではなくて違うやり方で推計して、共通事業所と言いかえたほうがいいかもしれないということですね。そこは保留ということで。

○今野座長
 第1にしたときには推計方法は変わる。今、お二人がお話になったようないろいろな難しい問題があったとしても推計方法が変わるので、その問題はちゃんと推計方法が成立するかどうかは、また別の課題として点検したほうがいいということでよろしいのではないですかね。
 それでは、今日事務局に用意していただいた中間整理案についてまず説明をしていただいて、議論をしたいと思います。お願いします。

○瀧原統計管理官
 それでは、資料1、資料2、資料3の説明をさせていただきますけれども、まず最初に資料3につきましては、これは御議論のために用意させていただいておりますが、前回、第5回のときに用意させていただきました資料と同じものでございますので、今日は説明いたしませんけれども、もし議論の中で振り返りのために御利用いただければありがたいかなということで、資料3としてつけております。ということで、御説明のほうは資料1と資料2を御説明させていただきます。
 まず資料1ですけれども、これが本検討会の中間的整理の案という形で提示させていただきました。これは前回、第5回のときに、これまでの議論の整理という形でさせていただいたものを少し、そもそもの共通事業所の集計値の整理という形の1ページ目から2ページ目にかけてつけたものに、3ページ以降で実質化に向けた論点の検討状況という形で、これが前回のときの議論の整理をポイントにしたものでございます。
 まず最初の1ページの「共通事業所の集計値」とは、というところですけれども、これは先ほど山田先生のほうで整理いただいたものと同じような形でございます。「共通事業所の集計値」とは、という形で、最初に毎月勤労統計には本系列として我が国の常用労働者5人以上規模の全ての事業所を母集団として無作為抽出に基づいて算出されて、日本経済全体の賃金、労働時間等の水準やその動きをあらわしている指標だということで、時系列比較も可能な統計としてやっている。ただ、一方でサンプル入替とか労働者ウェイトの見直し等でギャップが発生しますので、その影響を除去した動向を見るという形で、同一事業所の前年同月比を参考値として公表しているものが、今回ここの検討会で議論している共通事業所の集計値ですということで、まず大前提がその○4つで書いてございます。
 その後、具体的な方法というのが共通事業所の定義に当たるものになりますけれども、調査対象事業所の部分入替とウェイトの変化を除くということで、1年前と同時に存在しているもので、かつ、ウェイトをそろえているものです。そのために共通事業所の集計値というのは限定的な集計を目的としているので、前年と比較するか翌年と比較するかで当月の集計対象事業所が異なる。そのために各月間で2つの実数が併存するとか、あるいは当月と翌月との比較において一定の制約があるというような基本的な性格の部分を理解のために最初に書かせていただいております。
 その関係で本系列のような長期的な時系列比較が可能な指標とはなっていない。指数をつくっていないというのが現状のものでございますし、そのために実際、共通事業所について現在公表しているのは名目賃金額と前年同月比のみという形で、名目賃金指数や実質賃金指数についてはつくっていないということでの最初の前提として整理をさせていただきました。具体的な数値が2つあるというところがわかるような形で表も入れさせていただいております。
 その上で3ページから実質化に向けた論点の検討状況ということで、論点を3つにかけて整理をさせていただいて、かつ、まず論点1のこれは本系列と共通事業所の集計値の特性、ここの部分をこれまで皆さん方にかなり御議論いただいてきたところでところでございますけれども、まずこれまでの議論と、さらに検討すべき課題という形で整理させていただいております。
 まず最初のところですが、これまでの議論の最初のところ、特性として先ほど申しましたように、1年前と当月の両方を回答しているということでサンプルに偏りがあるというのが下の表ですけれども、大企業が82.7%に対して5~29については3割になっているというところの話があります。
ここで実はちょっと事務局のほうで手を加えております。といいますのが、サンプリングに偏りがあるというところで実は切っていたのですけれども、500人以上規模の事業所の割合が高くて小さいところが低いという書き方だけだったのですが、実はその話をすると、一般の方は大企業割合が高いから、賃金が例えば高目に出ているのではないかという誤解があって、ここは復元が母集団労働者数の労働者ウェイトに合わせていますので、決して共通事業所の中のサンプルに大企業が多いからといって大企業中心の値にはなっているわけではない。では一体、大企業の割合が高くて5~29が小さいことは何に影響するかというと、こちらで議論していただいたように精度です。5~29はぶれが大きいのではないか。大企業のほうは大体母集団と同じような形になるのではないかというのがポイントかなと思って、結果の精度に影響を与えている可能性があるというところをちょっと追記させていただきました。
 次はバイアスの話でありまして、バイアスについてはまだ表でお示ししただけですので、バイアスは可能性があるという形で表現させていただいておりますが、少し賃金が高い可能性があるということで、参考として提出させていただきました共通事業所と未提出の事業所の比較の表、現金給与のところとウェイトを同じにした場合の本系列の比較というのを参考までに表にさせていただいております。
その他、前年同月比の時系列を見る場合に標本数が少ないという話でありますとか、新規の反映がされていない。それから、○の3つ目のポツですが、開始されて12月のデータで蓄積が乏しい、かつ、先ほども議論がありましたけれども、ローテーション・サンプリングの経過措置期間ですので、今後、平準化したときに比べて数字が変わってくる。今のところ指標としてまだ安定していないという課題があるのかなということでございます。
 その他、ここからは今まで出てきた議論を書かせていただきましたが、ここの部分を御紹介いたしますと、神林先生から出てきたものでございまして、共通事業所の賃金変化率は、同一事業所に勤続し続けることを前提とした賃金変化を近似する。計測対象とする労働市場を実質的に限定しているという、先ほど紹介していた部分でございます。
 それから、その次のところも神林先生からいただいた部分でございまして、継続就業者の平均賃金の変化率を本系列よりも正確に求められると思われるのですけれども、ただし、継続事業所においても採用や退職等がありますので、労働者は変わってくるので、あくまでも個人ベースの変化率というところが推定できるわけではない。毎月勤労統計調査はあくまでも事業者側からの情報だというところは、十分認識する必要があるだろうという御指摘を入れさせていただきました。
 その上で、さらに検討すべき課題というところで、これもそもそも共通事業所の集計値がいかなるものを代表する数値であるか、その意味するところを考える必要があるということで、これは先ほどまでの議論のとおりのことかなと思っておりますし、また、その母集団というところで、ここは山田先生のお話から出た部分を次の2つ、この2つ目の○のところについては母集団をどう考えるか。母集団が仮に後者のようないわゆる既存店の部分を母集団としたものというふうに考えた場合には、母集団への復元・集計方法については、本系列とは違うものに変える必要があるのではないかという御指摘でございます。
 サンプルには一定の偏りがあるということがありますけれども、この辺につきまして事業所規模や産業、都道府県等の利用可能な情報でコントロールして、賃金水準の平均的な水準に偏りがあるかどうかを計算すべきであるということで、ここは神林先生が以前、モデルをつくって回帰式によりコントロールして分析してはどうかという部分を書かせていただいたものであります。
 引き続き、その次も神林先生の話でございますけれど、仮に賃金水準には偏りがあるとなったとしても、賃金変化率について偏りがあるのかどうかというのはわからないというところで、そういう部分も賃金水準の偏りをもとに賃金変化率の偏りを補正できるかどうかというところも検証が必要であろうというものでございます。
 その次のところは、これは以前にありましたように、5~29が先ほど申しましたように3割ぐらいしか共通事業所には本系列から入っていないという状況ですので、ここの部分の動きが全体に対して影響を及ぼす可能性があるというところでございまして、3割が何で3割になっているかというと、これは5~29がローテーション・サンプリングで半年ごとに3分の1変わっているためにこういうことが起きているということで、そのため精度に影響を与えているのではないかということで、これは以前の議論のものを書いてございます。
 次の部分は山田構成員からお話があった部分で、サンプルが少ないのだけれども、精度というものが大事なので、何らかの形で検討するべきではないかという御意見を書かせていただいております。
 それから、これは樋田先生からいただいたものかと思いますけれども、共通事業所と非共通事業所の集計値の差を分析した場合に、望ましいウェイトを検討する必要がある。これは以前にあったのですが、その上で非共通事業所には廃業による脱落と未回答のために対象外になっているものを、分析においては分けて考える必要があるのではないかという話を前回いただいたものかと思っております。
 サバイバル・バイアスにつきましては、次のページに行きますけれども、事業所、産業の区分ごとのサンプルの安定性というところの違いが、賃金に及ぼす影響について検討する必要があるのではないかというのが、以前から出てきたのでございます。
 それから、これは前回、稲葉先生から前々回のときに話があったことで、樋田先生や石原先生からもお話がありまして、事業所規模・産業別の単位集計区分について、推計比率を乗じるという形をやっているのですけれども、共通事業所はサンプルが少ないので、セル、区分ごとで区分内の事業所がゼロになる可能性というのが相対的に高くなることの影響については、検討する必要があるだろうという御意見をいただいております。
 あと、共通事業所が本系列に比べてサンプルの偏りとか、あるいは集計結果にバイアスがあるという可能性があることから、利用に一定の限界があるので、この検討会自身は共通事業所の部分を検討するところではあるのですが、本系列においての工夫というのも考えるべきではないかというのをいただいたところでございます。
 論点2は、実質賃金指数なり指数をつくっていくところの部分で、ここについては、これは共通認識かと思いますけれども、先ほどから出ていますように1つの月に2つの実数があるという基本的な性格から、経年変化を見る指数化にはなかなかなじまないのではないか。また、隣の月、当月、翌月の比較においても、事業所群が異なるのでなかなか単純には比較できないのではないか。あと、前年同月とは比較可能なのだけれども、連続的にずっと長期的に見ていくという意味では、今のままでは難しいのではないかという話でございます。
 4つ目の○は、石原先生からお話しいただいた部分ですけれども、共通事業所、実際にウェイトの影響なりサンプル入替の部分を除去しているのですが、ただ、そのウェイトの除去した部分というのはどこに行っているかというと、各月において前年と翌月それぞれに比較する2つの事業所群があるのですが、そこの差というのが結局除去したはずのウェイト更新やサンプル入替の影響というのが入ってくるのではないかと考えられるので、もし長期的な指数をつくった場合には、結局、本系列のギャップというのは共通事業所の数値にも入ってくる可能性があるのではないかという留意を書いております。
 その上でさらに検討すべき課題という形で、もともとが短期的な1年前の比較というためにつくった限定的なものなのですけれども、指数化をするのであれば、それに応じた作成方法を考えていかないといけないのではないかということでございます。
 母集団労働者の復元においても、先ほどから議論がありましたように、母集団を本系列と同じような想定のもとで労働者ウェイトを使っておりますので、もし時系列可能な指数を作成するに当たっては、その辺の特性等を踏まえて復元方法を検討すべきであろうというところを整理させていただいております。
 あと、実際に非共通事業所というところの分析を通じて補正というのも考えることができるのではないかということでありますとか、そもそも何らかの形で指数化となったときには、今の共通事業所の集計値とは異なるものとなる可能性があるというか、結果になってくるのかなと思われますので、それは一体いかなる意味を持つものかというのも整理する必要があるだろう。
論点3は、さらにそれの実質化の話で、最初は実質化の定義なりを書いていますけれども、2つ目の○は神林委員が前回のときにおっしゃっていた、実質化と言っても今、毎勤でやっているような月々の動向を見るための消費者物価指数で割るということと、物によっては年収ベースで見るという長期的なものと、両方の視点があることの御指摘がありましたので、そこの部分を書いております。
 あとは実際に実質化が持つ本来の意味を踏まえつつ、その計算というのは考える必要があるのかなというところと、ここはヒアリング等でも出た話ですが、本系列で消費者物価指数の帰属家賃を除く総合というものを使っているのですけれども、共通事業所の集計値に合わせたデフレーターというのも考えられるのだけれども、なかなか難しいのではないかというお話があったということを書かせていただいています。
 あと、さらに検討すべき課題は、実質化のところは今のところは実質化するのであれば、その前提としてそもそもこういう共通事業所の集計値がいかなるものか。それを実質化するのはどういう意味があるのかというのを示すべきではないかというところを書いております。それらを踏まえてさらに検討すべき課題として挙げたものを今後、必要な作業、いろいろ分析なりのお話が出ておりますので、それを具体的に今後進めていくということでこの整理をさせていただいております。
 以上が資料1で、資料1の部分を抜粋した形で資料2という形で、全体的な定義の部分は1ページですけれども、後ろのほうでこれはかなりはしょった感じでこれまでの議論と、さらに検討すべき課題を書いておりますが、ここも何をポイントで選ぶかというのは若干ありますが、一応、先ほどの資料1の抜粋という形でさせていただいております。
 資料としての説明は以上ですので、今までの御議論あるいは今回、第5回から第6回の間に各委員からいただいた意見を、できるだけ反映した形にはしておりますけれども、まだこれを見てさらなる御議論もあろうかと思いますので、これをベースに引き続き御議論いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○今野座長
 それと、これは私、事前に読ませてもらって、特に論点1が一番重要なのです。だからスペースも一番多いのです。ここに書いてあることは、皆さんが議論された重要な問題とか課題をずっと整理していただいたのですが、このままだと単にざっと並んでいるので読みにくいというので、少しグルーピングをして読みやすくするにはこうしたらどうだというのが、私が今日持ってきた「構成について(今野)」というものなのです。
 それで今、説明していただいた資料の3ページ目がまず最初、これまでの議論というので整理されているのですけれども、ここも結局サンプル特性にこんなバイアスがあるぞとかいう問題と、集計値の問題と、共通事業の賃金変化率の問題が入っているので、こういう見出しにして、サンプル特性でこんな問題があるというのを集めて、集計値の問題があるというものを集めて、賃金変化率の問題を集めるという形で整理をしたらどうかということです。中身はあまり変えていないです。
 それを踏まえて、さらに検討すべき課題というのがいっぱいずっと並んでいるのですけれども、今、言った方式で整理をするとこうなるのではないかというのは、私の資料のさらに検討すべき課題というところです。
 1番目は、共通系列の意味って何だということです。アンダーラインを引いていないものは、ここに書いたものを短縮して書いただけです。例えば共通系列の意味については、共通系列の意味って何だともう一度再考したほうがいいという趣旨が書いてあるのですけれども、さらにもう少し踏み込むと、先ほどの議論と同じなのですが、経済全体の状況を知るための指標ではない。経済全体の中の共通事業所、つまり既存店の状況を知るための指標なので、その指標はどういう意味があるのかという観点から考えたほうがいいというふうに限定したほうがいいというので追加をさせてもらいました。アンダーラインは追加です。
 2番目は、サンプル特性については、まず現状のサンプルの精度の評価は絶対に必要なので、これはちゃんと明示したほうがいいということと、これは先ほど稲葉さんからあった話ですけれども、入替方式の変更があるので、その都度ちゃんと精度評価はしなければいないし、さらにこれに本当は追加してほしいのですけれども、現在はいいデータがないというのもここに入れておいたほうがいいかなと思います。
 さらに特性については、いつも問題になっているのは、脱落事業所がサンプル特性の偏りにどういう影響を及ぼすかということなので、これを確認しなければいけないことと、神林さんがやるぞと言っている、どういう企業が脱落するのか。つまり未回答、廃止なのかということの分析もちゃんとしたほうがいいなというのを追加しておきました。
 3番目は集計値の復元等の集計方法ということで、ここに書いてあることそのままです。ただし、ここには先ほどの議論を踏まえると、母集団の設定をどうするかとか、復元・推定方法をどうするかということは、ちゃんと検討しなければいけないなということは追加したほうがいいかなと思います。
 その次のページを見ていただきます。裏のページは今度、集計値の偏りの問題を3つほど選んでいます。その次が賃金変化率についての課題を書いています。最後は共通系列の活用についての課題が書いてあって、これもみんな既に入っているのですけれども、偏りについてはちょっと修正させてもらって、サンプルとか集計値の偏りがあることから、利用に一定の限界があり、正しく活用してもらうためにはどのような情報提供が必要かということもここでは検討しなければいけないのかなということで、ここだけ修正をさせていただいた。というふうに、私の趣旨はこのようにグルーピングしたほうが、お客さんが読みやすいので、こうしたほうがいいかなという提案です。
 ということで、事務局からの提案と私からの提案を踏まえて御自由に議論をしていただきたいと思います。あるいはこれを追加しろでも結構です。どうぞ。

○石原構成員
 かなり大幅にいろいろな話をしてきて、前回もお話したのですが、目的は何ですかということです。共通事業所の意味を考える上でも、いまいちあやふやなところがあるので、稲葉先生が第1回目の会議のときに、統計委員会で議論されているはずで、例えば三角修正方式をやめるとか、そういう話は統計委員会で出てきたと思うのですが、どういう議論があってやめたのかとか、それで何を見つけるために共通事業所をやりましょうというのを教えてくださいという質問をなさって、それがまだいただいていないような気がするのですけれども、その統計的なお話を議論なさっているので、そこはちょっと今回は間に合わないかもしれないのですが、どういう統計的なお話からこれが出てきたのかというのを教えていただき、もしかしたら同じ議論をしているかもしれないなという気もしましたので、稲葉先生の質問はどうなっているのかという質問です。

○瀧原統計管理官
 その点の部分、十分丁寧にお答えできていない部分があるのかなと思いますけれども、そこの詳細、実際に統計委員会等でどこまで細かく、特に共通事業所という部分の概念について議論されたかというのは、また改めて整理してからとは思いますけれども、ただ、全体的な大きな流れとしては、今日参考資料として山田先生が整理していただいた部分の1ページのところでポイントを書いていただいているのかなと思っております。
 1ページのところの3つ目のポツから3つほどございますけれども、サンプル替えは今までですと3年に1回総替えをやっていた。それから、ベンチマーク更新と言っています労働者のウェイト変更というのは経済センサスの更新時に合わせてやるということで、どちらも数年ベースで1回やるという形をやりますので、これはどちらもウェイトのほうは構造変化を正しく、今の日本、オールジャパンの構造変化をしっかり反映させるということですので、必要な手続、必要な統計としての必要なものだと認識しておりますし、あと入替も3年に1回という入替が適切かどうかという議論がありますが、何らかの形で抽出調査である限りは入替をするということになりますので、それが毎勤の場合は3年程度でやっていたということで、一度にその変化があらわれるという形でギャップがあらわれるということになっております。
 そのギャップに対する対応として、山田先生の4つ目のポツになりますけれども、そこを補正する。ギャップの断層をなめらかにすることで、方法としては三角修正方式とかその他の方法も含めて検討なり実施をしてきたわけですが、ただ、三角修正方式をやる場合には、三角ですので大きく動くところと小さく動くところがもちろん出てくるわけですけれども、それを過去に遡及するということになりますので、平行移動する場合とは違って、対前年比が過去のデータが修正されてしまうという部分が、どうしても遡及で修正することが起きることになりますので、例えばある年の賃金の伸び率が1%だと言っていたのが、この修正によって後から、実は0.2%でしたとかいう形で変わってしまうと、ユーザーの方々が前まで1%と言っていたからそれでいろいろな分析とか作業なりしていたのに変わってしまうと困るという、問題点が指摘されていた。
 そこの部分を改善するために、まず入替によるギャップというものをできるだけ小さくするということでローテーション・サンプリング、これをやってゼロにはならないのですけれども、少なくとも1年に出るギャップというのは小さくできるのではないかということ。ただ、その一方でベンチマークのほうはそういう補正ができませんので、仮にベンチマークをそのままにした場合には、断層がそのまま残りますけれども、その断層を排除する何らかの代替系列、代替の方策を出したものがこの共通事業所であったということで、山田先生に書いていただいている部分の認識で私どもとは同じなのかなということになりますので、今の時点で共通事業所がどういう定義のものであると、統計委員会の議論であったかというところまでは、そんなに明確ではなかったのではないかということになりますけれども、ただ、考え方としてはこの流れであったのかなと思っています。簡単ではございますけれども。

○今野座長
 違和感があって、別にギャップ修正するのが大切ではなくて、現実を正しく表現することが大切なのです。ギャップがあるのが現実なのだから、そこをごまかしてもしようがないということと、ローテーション・サンプリングをするようになったのは回答者の負荷の問題もありますけれども、サバイバル・バイアスを除去できるとか、したがって、より正しい数字が出てくるとかいうことでやっているということだと思うので、単にギャップを減らすためにやっているのではなくて、より正しい情報が欲しいからやるのだよね。

○瀧原統計管理官
 そうですね。そのあたりは樋田先生からも御指摘をいただいていた部分かと思いますけれども、それはおっしゃるとおりでして、ギャップという観点で見ると、ローテーション・サンプリングをやると、そこは平準化されて薄まるかなというのはありますけれども、ただ、一方で3年間固定するとサバイバル・バイアスが1年目は薄い、2年目は少し強くなって、3年目はより濃く出てくるというところの3年間の濃淡がはっきりするのが、1年ずつずらすと濃いと中くらいと薄いが毎年毎年並びますので、サバイバル・バイアスの出方が年度によって違いが出てきにくくなる。そういう意味ではおっしゃるとおり、よりよくなったのではないかという感じがございます。

○今野座長
 どうぞ。

○樋田構成員
 今、ギャップ修正の話があったのですけれども、私も厚生労働省で毎月勤労統計調査の改善に関する検討会のメンバーとして議論に加わっていました。その際には、部分入替か総入替かという議論と、ギャップ修正をどうするのかという議論は別に行われていました。もちろん連動する部分はあったのですけれども、私は、別の議題として扱っていたと認識しています。
ギャップ修正についても、サンプル入替によるギャップ修正と、ベンチマーク変更によるギャップ修正も別に扱っていて、それぞれについて平行移動修正がいいのか三角修正がいいのかという議論をしていたのです。今回は全てを一緒に扱っているので議論がしにくくなっているところがあると思います。
 そのような経緯を踏まえると、この検討会の議論の範囲外なのかもしれませんけれども、ギャップ修正を復活させるということも将来的には検討してもいいのではないかと考えています。毎月勤労統計調査の改善に関する検討会のときにも、部分入替をしてもギャップが残るということは議論していたのです。部分入替をすると、サンプル入替時のギャップは1回当たりでは小さくなる。だけれども、ギャップ自体がなくなるわけではありません。一回一回のギャップが小さくなるからギャップ修正をしなくていいのかという問題は慎重に検討をしたほうがいいと思います。
 もう一つ意見なのですけれども、今回、共通事業所についていろいろ検討していくと、どうやらバイアスがあるようだということがわかってきました。もしも母集団を推定するという点で、自然なやり方で適当な数字を共通事業所のデータからつくれないのであれば、共通事業所系列の公表を控えたほうがいいのではないかという議論も必要かなと思います。
以上です。

○今野座長
 どうぞ。

○稲葉構成員
 関連して2点ほどあるのですが、1点目が今の樋田先生の意見に関連してのことです。共通事業所は産業別にも公表していると思うのですが、産業別に公表するのに必要な事業所数が確保されていないのではないかという疑問があります。先ほどのお話とあわせて、公表については検討するべきことがあると思います。
 2点目は、本日の資料2に関することです。この資料2自体は非常に重要な資料であると思います。中間的整理案の概要を示したものです。私自身は概要を見て、その中で興味を持ったことについて本文に戻って読むということをよくするのですけれども、今回の状況について知りたい方は、まず初めに概要から見るのではないかと思います。
 そういった際に、2ページ目をごらんください。これまでの議論の中の○の2番目のところ、内容を読みますと「『共通事業所の集計値』は、前年同月との比較は可能だが、時系列として連続的に指数化することは、現在の定義のままでは困難と考えられる」。これの根拠となるべき事項がこの概要には含まれていないのではないかと思いました。
 そして、この2番目の項目「時系列として連続的に指数化することは、現在の定義のままでは困難と考えられる」というのは、この検討会の出発点となった「実質化」といったものを考える際にも関連する非常に重要な項目です。
 1ページの点線の枠の中をごらんください。上のほうが根拠となっておりまして、矢印以降に、共通事業所について名目賃金指数や実質賃金指数はこれまで作成していないといって、矢印前のところに共通事業所と本系列の前年同月比の計算、推定の式が違うということをここに書いておかないと、共通事業所であっても本系列と同じように前年同月比を実質化できるのではないかというような意見が出てくるのは仕方がないのかなと思います。
 我々は資料において今回、資料3のいつも見ている項目ですが、2ページ目に労働者のウェイトというものを当年のウェイトを使っている、つまり、本系列のウェイトとは違う計算式で算出していることを理解しています。ただし、この概要だけを見た方ですと、そこの部分の理解がすぐにはできない可能性があります。概要部分に本系列と共通事業所の系列の前年同月比の推定式は異なる。できれば、その異なることを明確に示して、2ページ目のところの「指数化することは現在の定義のままでは困難と考えられる」につなげる。共通事業所の定義の根拠となるものを1ページ目に示しておく必要があるのではないかと思いました。

○今野座長
 瀧原さん、何かコメントはありますか。

○瀧原統計管理官
 はい。今のことを受けとめて。

○今野座長
 他にいかがですか。全体的にはあれですよね。どうするかというのはもう少し検討させてほしいという感じだよね。全体的にはね。やはり確認をしなければいけないこととか、いろいろなことがあるということですよね。その前提には共通系列のサンプル特性もそうですけれども、いろいろな誤差を含んでしまっているので、はいどうぞというわけにはなかなかいかないですよね。でも我々のこの検討会の中間的なまとめのミッションは、何が問題で、その問題を解決するにはどのような課題があってということを整理するということですので、ですからそういう点ではいろいろな意見を出していただいていいかなと。

○瀧原統計管理官
 今いただきました意見も非常に重要なポイントでありますし、今までの議論として出てきた、整理されて明確になってきたものという意味では、まさにこれまでの議論の中で出てきたことで、そこがうまく書き切れていないのではないかというお話だと思いますし、定義式も、まさに定義式があってそういうところが見えてくるところがあるので、すごく重要なポイントではあると思います。
 ただ、悩ましいのは、こういう概要の中でこの式というのはなかなか受けないといいますか、これを1個書くことによって皆さんが一斉に読まなくなるというか、概要に書くものではないだろうというような、実際にこれは今、本体の整理案にもこの式はさすがに遠慮させていただいていて、この資料として最終的にはつけるのかなと思っておりますけれども、そこがどこまで正確に書くかというところと、逆に書いてある趣旨なり考え方がわかる書き方にするかというところのはざまといいますか、そこを考えなければいけないかなと思います。

○山田構成員
 まさにユーザーから見るとそこなのです。何度か申し上げたのですけれども、最初に今の発表だと説明がないので、例えば時系列的に比較できるものだと思い込んでいるのです。でも、これをやるとまさにそうで、実は毎回、サンプルが異なっているので時系列的には厳密には比較できない。そこの部分をメッセージとして入れたほうがいいのだと思うのです。まさに系列が実は同じとしても2つあるとか、だからそこが誤って伝わってしまっているので、いろいろな派生して混乱が生じている。そこはちょっと丁寧に、数式になれている人は数式で一発なのですが、多くの人はそうでないので、文学的な表現で何となく直感的でわかるような説明を入れていることが大事だと思います。

○今野座長
 オールジャパンのことを表現するのは無理だと書きたいですね。オールジャパンの既存店の状況は示すかもしれないけれども、復元の方法はいろいろ問題があるのでやらなければいけないにしても、何となくみんなそう思っているのですが、その表現をどうするかですが、なかなかそこはオールジャパン、つまり本系列の代替というのは難しいということですね。
 既に何回か前の議論でありましたけれども、本系列の代替と言うのだったら本系列でやれよということですね。何で共通系列でやらなければいけないのか。そういう気持ちがみんな共通してありますので。ただ、山田さんが言っているように、既存店の統計というのはユーザーとして非常に重要だとするのだったら、それはどう出していくかは考えたほうがいいということですね。結局ね。でもさっきから何度も言いますが、長期系列でつなげるなんて無理ですよ。それは難しいです。
 それでは、他に何かございますか。

○石原構成員
 すみません、話がちょっと違うかもしれないのですけれども、今、共通事業所の話をしているので、ギャップをなくすというか、ギャップを隠すという方向、どうやってギャップを排除して滑らかな形にするかというほうで共通事業所が出てきたと理解しているのですが、一方でギャップは非常に重要な情報を含んでいるもので、ダイナミックに経済が産業とか規模とかどう動いているかというものとか、どこで賃金が変わっているかというものを見ることが、そのギャップの中身を分析することによって見ることができるので、ギャップ自体を、このギャップはこういうふうに分解できますとかいう情報がもし一緒にあれば、別の意味で使えることはないですか。ギャップのことをもう少し情報を出すということも、ここの議論の範囲かわからないのですけれども、必要なのではないかと今回いろいろギャップについて考えているうちに思いました。すごく重要な情報を隠してしまっているのではないかという気が少ししました。

○山田構成員
 確かにギャップと言うとネガティブなイメージで捉えているのだけれども、それ自体が情報を持っているわけで、逆にベンチマーク修正によってこれぐらいギャップが修正しているというか、それだけこの5年間で構造変化が起こっているという、もっと中立的なメッセージにもなる。その示し方によって印象も変わってくるし、プラスの情報の価値のあるものにもしていけるというのは、そのとおりだと思うのです。一方で時系列で比較したいというニーズはあるので、そこはどうするのかというのはあるのです。それとは別に私もユーザーとしてはそのとおりだと思います。

○今野座長
 他にございますか。いろいろ今日議論いただいたので、御意見いただいたので、それを踏まえたので、これを修正していただいて、全面的に直せというよりか、こういうことを追加してくださいということだと思いますので、あるいはこう修正してくださいと、それで修正をしていただいて、修正した案を一度見てもらいますか。メールベースか何かで、どうしますか。

○瀧原統計管理官
 そうさせていただければと。あと、今日の部分の出たものについて、それを取り入れた形で本文なりを直させていただくのと、あと、今日御欠席の委員の方もいらっしゃいますので、当然そこのお二人にもお示しして、御意見をいただく。あともし場合によっては今日、後から、家に帰ったら思い出したというものがあれば、そういうのもいただくことも可能ですけれども、基本的には今日いただいた意見を反映させる作業をさせていただければと。

○吉永審議官
 1点ですけれども、この検討会は非常に関心が高くて、一昨日の昼のNHKニュースでも検討会の取りまとめという話が出たりもしている状況であります。本体については引き続き御相談させていただければと思っておりますが、概要につきましては、中間的整理案の概要という形で私どもからいろいろなところで説明する場合がございますので、今、修正のお話がありましたけれども、そういったものを修正した上で御相談させていただいて、座長と御相談させていただきながら少し早目に使わせていただく。本体につきましては次の検討会までに修正をした上で、またいろいろ御相談をさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○今野座長
 いずれにしても、今日の議論を踏まえて何かウェイトの置き方がもしかしたら変わったかもしれないので、これを見直していただいて、お使いいただければと思います。
 これもあれですよね。もう一度つくり直しですね。最終案が確定したときに、もう一度。変わらないかもしれないけれども、変わるかもしれない。

○吉永審議官
 中間的整理案の概要ですので、中間的整理の概要とはまた違うものになるかとは思います。

○今野座長
 よろしいですか。今日お休みの2人にも意見を聞いてください。
 それでは、今日はこの辺ですけれども、ほかに事務局から。

○瀧原統計管理官
 その他のところなのですが、実は1点だけお願いしたい事項がございます。
 今回の毎月勤労統計に係る検討会という形でお願いしているところですけれども、毎月勤労統計は御承知のように今回、不適切事案がわかったということで、それに対して適切な対処ということで我々としてさせていただいているところでございますが、これに関して国会対応でございますけれども、野党のほうからいろいろ合同ヒアリング等で御指摘等をいただいているところでございます。
 その際に、実は先日行われましたヒアリングの際に、立憲民主党の長妻議員から要請というか要望がございまして、この検討会の委員の方に次のようなことをお聞きしたいと。内容は、前提条件とか利用上の注意の条件をつけても、なお共通事業所系列の実質賃金を作成、公表すべきでないと考えておられるかどうかというのを意見聴取いただきたいという話が出ております。
 我々も野党に対してもいろいろ御意見ということで真摯に受けとめたいところがございまして、大変恐縮ですけれども、そのような質問といいますか、意見が出ているということに関しまして、残された時間ではございますが、この場で少し御意見をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○今野座長
 まず私の意見でいいですか。これまでここでやってきたことというのは、サンプル特性のバイアスの問題とか、集計値のバイアスの問題とか、言ってみれば共通事業所の集計値というのはどういう特性と問題があるのかということと同時に、実質化するときにどういう問題があるのかということを整理して、その問題に対応するにはどのような課題があるのかということを整理して、その課題を一つずつ片づけながら、いろいろ今後どうしたらいいかを考えようということです。今のところ課題まで整理ができた段階ですので、どういう前提条件をつけたらいいかはまだわからないです。それと、利用上の注意点も、どういう利用上の注意点をしたらいいのかというのは、先ほど言ったような課題を一個一個検討しながら明らかに出てくることなので、したがって、そういう検討の段階ですので実質化ができるかできないかということについては、その後に改めて考えるということになるというのが、私が考えている今の御質問に対する答えなのですけれども、どうですか。

○稲葉構成員
 座長の意見に賛成です。まだ検討段階でありますので、結論というところには至らないと思います。

○瀧原統計管理官
 ありがとうございます。そういう形でこの検討会として、今の質問に対して意見交換いただいた結果ということで受けとめさせていただければと思います。

○今野座長
 そうすると、今日はここで終わりかな。

○瀧原統計管理官
 はい。その他は特にございません。

○今野座長
 ありがとうございました。
 では、事務局から修正案が来ると思いますので、また読んでいただいて、赤で書いて戻していただければと思います。
 そうすると、スケジュールとしては多分、次ぐらいで上がりですかね。

○吉永審議官
 中間的整理につきましては、次ぐらいで取りまとめをいただいて、次のステップのこれまで先ほど今野先生からの宿題事項を逆に整理していただいて大変ありがたかったのですが、それをどうこなしていくかというあたりの作業に入っていければなと思っております。

○今野座長
 私の感じとしては、ここでは課題をざっと我々一生懸命議論をして、整理して、リストをつくったので、あれ全部をやるのは無理なので、次の段階ではあの中から何をやっていったらいいのかということの作戦を練らなければいけないかなというふうには個人的には思っていますので、そのときはまた御協力のほどよろしくお願いします。
 それでは、終わりましょうか。ありがとうございました。

○細井統計企画調整官
 本日も長時間にわたりまして御審議いただきまして、ありがとうございました。
 次回の開催でございますが、日程調整の上、改めて御案内をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、これをもちまして第6回検討会を閉会させていただきます。お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。


                                                                                                                                                                                       (了)

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