第4回 「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」議事録

日時

平成31年4月17日(水)13:30~15:30

場所

TKP新橋カンファレンスセンター新館 11階 ホール11C
(〒100-0011 東京都千代田区内幸町1-3-1)

議題

(1)眼の水晶体の等価線量限度について
(2)眼の水晶体の等価線量を算定するための実用量について
(3)その他

議事

  
○永井座長 時間になりましたので、ただ今から「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」を始めさせていただきます。委員の皆様方にはお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日の出席状況でございますが日本循環器学会 池田参考人、日本整形外科学会 三上参考人はご欠席とのことでございます。また、本日は日本眼科学会から佐々木参考人にご出席いただいております。どうもありがとうございます。カメラの撮影はここまでとさせていただきますのでよろしくお願いいたします。では議事に入ります前に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 お手元に配付されております資料をご確認いただければと思います。1枚めくっていただきましして、議事次第がございます。本日の議題の下に配布資料一覧がございます。資料1 眼の水晶体の等価線量限度について第3回検討会の議論、資料2 欅田委員提出資料「十分な放射線防護を行っても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者に関する実態調査について」、資料3 佐々木参考人提出資料「眼の放射線障害の機序と実態」、資料4 労働安全衛生法における健康確保措置について、資料5 横山委員提出資料「水晶体等価線量算定のための意見具申と追加測定位置について」、資料6 水晶体等価線量算定のための意見具申と追加測定位置に係る検討について。参考資料です、参考資料1 用語一覧、参考資料2 眼の水晶体に係る被ばく実態と被ばく低減可能性に関する調査、参考資料3 東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会報告書、参考資料4 電離放射線障害防止規則第56条に規定する健康診断における被ばく歴の有無の調査の調査・評価項目及び健康診断の項目の省略等の可否について、参考資料5 外部被ばく及び内部被ばくの評価法に係る技術的指針、以上です。
○永井座長 はい、ありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは議事に入ります。最初に前回に引き続きまして、眼の水晶体の等価線量限度についてご議論をいただきます。事務局で第3回検討会の議論についてまとめていただきましたので、説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 資料1をご覧ください。1枚めくりまして、第3回検討会の議論についてです。オレンジ色の枠囲みが前回の、意見具申どおり眼の水晶体の等価線量限度を見直すことについて、に関する意見の概要でございます。A)といたしまして、一般的な医師については問題ないが、地域医療が守られるとのエビデンスやトップレベルの医師についての情報が提供されるまでは、一律に引き下げることは妥当でなく、調査して示すことが必要。B)として、防護眼鏡等の放射線防護の強化について、関係者へのヒアリングにより、防護眼鏡の改良は今後とも見込まれるとの報告。C)として、教育・研修については、医療法施行規則に規定する労働者本人に対する研修のほか、労働安全衛生マネジメントシステムなどの取組を着実に進め、事業者が安全衛生管理体制を確立することが必要。D)として、医師法における応召義務と安衛法における危険防止措置・健康障害防止措置との関係性を整理することが必要。E)として、防護眼鏡等の放射線防護の強化、猶予措置の必要性、健康確保措置の強化の3つ論点について検討が必要、とされております。2つ目として、緊急作業者に係る眼の水晶体の等価線量限度に関しましては意見具申どおりとすることが適当とされました。3つ目として、除染等業務に係る眼の水晶体の等価線量限度につきましても意見具申どおりとすることが適当とされたところです。以上から論点を再度整理いたしますと、1つ目としまして、防護眼鏡等の放射線防護の強化、2つ目として、猶予措置の必要性。こちらについては十分な放射線防護を行っても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者に関する実態調査について、本日ご説明をいただく予定です。3つ目として、健康確保措置の強化についてですが、こちらについては眼科学会の方から眼の放射線障害の機序と実態についてご説明をいただきます。また、労働安全衛生法における健康確保措置についてご説明し、議論をいただければと思っております。以上です。
○永井座長 はい、ありがとうございます。今、ご説明がありましたように、本日は眼の水晶体の等価線量限度に関する論点のうち、第3回でご意見をいただきました2点、すなわち、十分な放射線防護を行ってもなお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者に関する実態調査、それから、健康確保措置の強化について、2点ご検討いただき、その後で眼の水晶体の等価線量を算定するための実用量についてご議論いただければと思います。それではまず欅田委員から、労災疾病臨床補助金研究班で実施される実態調査についてご説明をお願いいたします。
○欅田参集者 はい。それでは資料2をご覧ください。今、ご議論ありましたように、対策をとっても高くなり得る医療従事者がおられるのではないかということで、その確認をとれないと線量限度の引き下げというのは難しいのではないかということが前回まで議論があったところです。まず、その実態の調査、それと、それに対する対応策について検討するということで、資料2を1枚めくっていただいて2ページ目をご覧ください。現在、つけていただいている防護措置に関しましては、眼鏡に関しても鉛当量が軽いものから重たいものまでいろいろありますけれども、等価線量限度を引き下げることによりまして、今つけている眼鏡ではなかなか限度をクリアしない可能性が出た場合に、さらに重たい眼鏡をつけていただいたりすることが実際診療行為に影響を及ぼさないかということ、その効果をチェックするために、上の青で囲ってあるところですけれども、防護眼鏡の実際の遮蔽効果、使用感の調査ということを行っております。もう一点は、実際医療現場で、下の赤の方ですけれども、被ばく実態と被ばく低減可能性に関する調査ということで、この検討会に参考人として参加いただいています各学会のご協力をいただいて、実態調査を今、準備を進めているところでございます。簡単にそれぞれについてご紹介させていただきますけれども、上の青の方、防護眼鏡の実際の遮蔽効果、使用感の調査ということに関して、これは特定の病院において放射線診療に従事する医師、10名程度の方にご参加いただきまして、現在使っているような眼鏡、それとさらに鉛当量の高い眼鏡、最新のものですね、そういうもの数種類を各10人程度につけていただきまして、その状態で線量を測っていくと。後でご供覧いただきますけれども、私たちのところで実際調査しておりますが、測定用の素子を眼鏡の左右、それと表裏、それぞれ4か所につけていただくことによって防護眼鏡の外の状態での線量、また、防護眼鏡をつけた後の線量というものを確認すると。それとともに、使用感、重たい、それで作業しにくくなるのではないか、あるいは視野を妨げるのではないか、そういったことについての負担感について、それぞれ使用者の人にご意見をいただくというようなことを現在進めております。もう一つは、赤の方ですけれども、使用実態の方で、国内数病院の方で、地域で基幹となるようなところ、どうしてもそこに患者さんが集まってきて従事者の線量が高くなってくるような地域医療の中心的な担い手になるような人たち、量的に代替できないような医師がおられるような基幹病院、それとともに、施術、技術のトップランナーとしてどうしても対応する症例が年間非常に多く抱えておられる先生方で、その人が等価線量限度になるから制限してもらうことにはいかないような人たち、そういった状況の方がクリアできるのかということについての調査を実施しております。現在、後で述べますけれども、参考資料2の方で示していますように、依頼をお願いしているところでありまして、過去3年間、事前の状態で個人モニタリングの方から水晶体の等価線量が一定量を超えたところの人たちに参加いただくと。その高い集団ということで、過去3年間の中から、年間としては50mSvを目処とした数値で推薦いただくということを行っております。過去3年間としているのは、直近1年前だけですと各担当の先生方も変動があるものですから、なかなか実態が拾えない可能性がありますので、過去3年間と広げた中でご推薦をいただくようにしているところであります。その状態でご参加いただく方々には介入前として通常使用している放射線防護下におきまして、先ほど言いました防護眼鏡の内側、外側につけた素子で実際の作業を測っていただくと。素子は感度が高いものですから1例ごとの線量が評価できますので、作業内容とその実際の線量を評価することによって、対応症例数や、実際のその人の年間被ばく線量を推定できるという形にしているところです。その状態でクリアできる環境であれば問題ないのですが、さらに低減が必要となるような状態であれば右の介入を行うということで、被ばく低減措置を助言します。その過程におきましては、私たちの研究班の方から各病院の診療放射線技師の人や参加いただく先生方と協力いただいて、防護措置をさらに加えていただきます。必要に応じて、上で、青のところで調べたような重たい眼鏡も提供して、それをつけることによってクリアできるような状況になるのかということを調べてもらいます。その状態で同様に被ばく線量を評価することによって、課題となっています限度をクリアしているものということが示されるようなデータを作っていきたいと思っているところです。次、3ページ目を見ていただきましたら、今の進行状況ですけれども、現在の状態で一番左の4月の調査予定となっているところで、質的評価及びフィージビリティスタディというところで、さっきの上段で示した青の部分ですね、それと参加機関の推薦をいただいているというようなところでございます。防護眼鏡を一日装着した時の使用感等を10名ぐらいの方々に確認しながら、それで作業した時の線量評価を行っているところであります。右側が先ほどで言えば下の赤で書いてあるところですけれども、地域医療を担うトップの方々、それと各診療科でトップランナーになっている先生方で眼の等価線量が高い方、量的に代替できない方、あるいは質的に代替できないような方、それぞれ10施設、10名程度を各学会の方からご推薦いただきまして、調査としましてはさっき述べましたように通常の防護下でまずは施術を行っていただきまして、その時の眼の外側、内側、それの左右の線量を評価していくと。それでクリアしている状況であれば問題ないのですけれども、どうしても高くなり得るような方も当然おられるはずですので、現在の法令ではクリアしているけれども今後改正しようとしている等価線量限度をクリアできない方もおられるはずですので、そういった方に関しては新たな防護措置を助言、指導して、さらにその下で作業いただきまして、そこから遮蔽率等計算して、実態がクリアできるのかどうか、過去の施術数等からクリアできるのかということを評価していくということを計画しているところであります。下に書いてありますように新たな防護により意見具申どおりの被ばく低減が可能であるということを確認するということを目指しているわけですけれども、もしこの新たな対策をとっても高い線量がおられるという、右の赤になっているような時においては規制導入までの年数についての配慮を必要とするのか、段階的な限度の引き下げを必要とするのかといったことについて今後も議論していただくことになる、その基礎資料を早急に、上に予定を書いていますけれども、4月、5月に対象者の選定を各学会の方からご協力いただき、私たち研究班の方で5月~7月に調査を実施するというようなところであります。それに関しまして、さっき少し述べましたが、参考資料の2の方で依頼を各学会の方、今回参考人としてご参加いただいている各学会の代表の方々に流して、すでに推薦者の方を今調整いただいているところであります。実際使用する線量計素子とそれの説明マニュアルについては今回覧いただいてちょうど一巡したところかと思いますのでそれを参考にいただければと思います。以上です。
○永井座長 はい、ありがとうございました。それではただ今のご説明にご質問、ご意見をいただきたいと思います。
○細野参集者 細野でございます。大変緻密な実態調査をご計画いただきまして、また詳細なご説明ありがとうございます。一点だけ、対象となる医師の方、領域について、でございますけれども、ご参加いただいている4つの学会等からのご推薦ということで、循環器、消化器、整形、放射線領域ということなのですけれども、脳血管についても専門とされる先生を対象にしてご参加いただけると良いのではないかということで、脳血管内の手技というのは、ある程度専門性、特殊性のある領域でございまして、この透視下手技の在り方が他の領域と少し違うケースも考えられます。その専門の先生についても、できれば対象に含めさせていただければより網羅した調査になるのではないかと思います。以上でございます。
○永井座長 はい、ありがとうございます。今の点、いかがでしょうか。
○欅田参集者 はい、ありがとうございます。ご指摘いただいた件に関しましては日本放射線学会の方からそういった領域の方に声をかけていただくということもあるのかもしれませんが、脳神経血管内治療学会の方が専門的にそういうことをやっておられますので、そういった先生方の方にも理事会等を通してまたお声がけして、研究班の方でも関係している先生もおりますのでその辺にご協力いただきながら進められたらと思います。
○細野参集者 ありがとうございます。
○永井座長 はい、どうぞ、松本委員。
○松本参集者 細野委員の提案は非常に私もいいかなと思います。お願いしたいと思いますけれども、ここの調査対象の先生方の②の地域医療と③のトップランナーの違いが実際によくわからないというところがあるので、これを学会にお願いする時に何か違いが説明できるのでしょうか。これがよくわからないというのがあります。
○欅田参集者 地域の基幹病院の方におきましては、どうしてもそこの医療を担うということで数多くの症例を対象にしないといけない方もおられると思いますし、一方では非常に技術的にスペシャリティの高い方がおられて、数をこなすというような地域医療だけではないところでですね、それぞれについて担当が拾い起こせられるようにという計画でこのように書いてあるところです。場合によってはオーバーラップする人たちが人選される対象になってくるということも大いにあるとは思っているところです。
○松本参集者 はい、そういうご説明でしたら了解いたしました。それで各学会の方で了解していただければよろしいかなと思います。
○持田参考人 日本消化器病学会の持田です。検査、治療の件数が多い施設をリストアップし、全国全ての地域が含まれるように10施設を選ぶとの理解で進めていますが、それでよろしいでしょうか。
○欅田参集者 はい。大丈夫だと思います。
○持田参考人 2つが区別は困難ですので、そのように進めさせていただければ助かります。また、消化器領域では門脈圧亢進症関係のEISと胆膵関連のERCPが対象になりますが、症例数の多い施設、エキスパートの医師が異なっています。それぞれ10施設ずつ選ぶということでよろしいのでしょうか。
○欅田参集者 10施設を選んでいただいて、事前に先生方を推薦いただくときに過去3年間の被ばく線量を評価いただいて、50mSv超えているとかが選択できれば限定された数でも大丈夫だと思うのですけれども、実際はそこの情報まで得た上で各機関に依頼をかけていくというのが、この短期間でお願いするのが難しい可能性があると思うのです。その場合には数多く、とりあえず推薦いただければこちらから各病院の診療放射線技師の方たちに実際の施術状況と被ばく線量を確認いただいて、高い人に参加いただくということを了解取って実施できればと思いますので、数多く推薦いただくということに関しては問題ないと思います。
○持田参考人 それぞれ10施設ずつ選んで、そのリストを提出させていただきます。
○欅田参集者 数多く推薦いただいた場合には、さっきのタイムスケジュールで7月までに実施するということですけれども、その期間内に所定の数を実施した上で、まだご推薦いただいて高くなりそうな方で残っているような方に関しては、私たちの研究班があと2年あるわけですけれどもその中でも引き続き測定させていただき、次の改善につなげられるような情報は提供できるようにしていきたいなと思っているところですので、ご協力いただければと思います。
○永井座長 はい、どうぞ。
○吉川参考人 日本医学放射線学会の吉川でございます。松本先生からもご指摘ありましたように、地域医療とトップランナーというのを線引きするというのは実際難しい点もあると思うので若干オーバーラップするような形で、日本医学放射線学会とあとIVR学会がIVRの症例登録等行っておりますので、協力して2学会から各10施設ぐらいを、まずは推薦をさせていただこうと思い、今選定を進めているところですのでよろしくお願いします。
○欅田参集者 はい、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○永井座長 いかがでしょうか。はい、横山委員、どうぞ。
○横山参集者 横山です。調査方法というか、防護方法なのですが、ここに書かれているのは防護眼鏡ということが全面的に出ているのですが、前回の議論の中でも、防護眼鏡だけではなくて組み合わせで、防護板等を用いることでやはりもっと被ばく低減できるというところもあるかと思います。手技によっては当然、そういうものが使えないような状況もあるかと思うのですが、そういう部分の調査というところはどうされるというふうに考えればよろしいのでしょうか。
○欅田参集者 今ご指摘いただいたように、いろいろ併せた対応をとってクリアする環境というのは非常に重要だと思っております。その点に関しましては前回の時にも簡単に私の方から紹介させていただいたところで、どうしても一番目につくというか対応しやすいのが眼鏡になるので、防護眼鏡という議論になっていますけれども、遮蔽板の利用であったりとか、照射、線源の方の管理というようなところを含めて対応をとっていくのが非常に重要になってきますので、そういったものを前回、労働衛生マネジメントシステムに落とし込みながらという話をしましたけれども、総合的な対応がとれるように進めていきたいと思っております。今ご指摘いただいたことの具体的な点に関しましては先ほど回覧した分の中にマニュアルとしてつけておりますけれども、実際の実施状況の写真を撮ってくださいというふうな形にしていて、その写真の中に防護板の使用状況とかが写るような形でお送りくださいとしています。それが、位置とかが適切な位置になっているのかどうかということも踏まえて、線量を評価し、それに課題がある場合には一緒に実態を見せていただきながら対応をとっていくということを踏まえた全体の枠というふうにご理解いただければいいかと思います。
○横山参集者 ありがとうございました。
○永井座長 はい、松本委員。
○松本参集者 この調査、永井座長のご発案で実施することになるわけですが、非常にやはり大きな意味を持っていると思います。一つは結果によって今後の取扱いの配慮をどうするかということにもなります。もう一つは何よりもきちんとしたやり方をすれば線量を減らせるということが、こういった地域医療やトップランナーの方々、トップレベルの方々がそれをきちんとやっていただいて、良い結果が出れば、非常に参考に資することなので、2つの面があると思っております。是非、先ほど持田先生がおっしゃいましたけれども、ある程度人数を少し頑張っていただいて、やっていただければより良いのかなと思いますので是非よろしくお願いしたいと思います。
○永井座長 ありがとうございます。今フィージビリティスタディとして少し始められたところですね。その辺の状況をお話しいただけますでしょうか。
○欅田参集者 はい。今この検討会のメンバーの医療機関の方にもお願いして、すでに実際参加いただいておりますし、私たちの機関におきましても施術に応じて、先ほど横山委員の方からもありましたけれども、複合的な対策を取るということで、ERCPにおきましても防護眼鏡等、あと線源の方の遮蔽カーテンですね前回紹介があったような、ああいったものの利用、そういったことの組み合わせによって非常に下がってきますよということ。それで、実際の、現在実施している症例数に平均的な1回あたりの線量を掛け算することで十分クリアできるような状況というのが予想されるといったものについては着手しているところですので、それを私たちの機関であったり、フィージビリティで入っていただいている限られた施設だけではなくて、先ほど紹介いただいた各学会からのご推薦いただいている施設で数多く対応できるようにしていきたいなと思っております。
○永井座長 よろしいでしょうか。できましたら次回、フィージビリティスタディの予備的な検討だと思いますが、何か結果がでましたらご報告いただければと思います。また、この調査につきましても、今日いただきましたご意見を参考として調査を進め、結果がまとまり次第、検討会へご報告いただきたいと思います。この論点については次回以降あらためて取り上げたいと思います、よろしいでしょうか。では続きまして、十分な被ばく保護を行っても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者への健康確保措置の強化についてご議論をいただきたいと思います。本日はご専門の立場から日本眼科学会の佐々木先生に参考人としてお出でいただいております。眼の放射線障害の機序と実態についてご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○佐々木参考人 日本眼科学会の佐々木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。今日は私、眼の放射線障害の機序と実態ということで、簡単にお話しさせていただきたいと思います。それでは1枚めくっていただきまして、写真のある、左の上に白内障の写真が載っていると思いますけれども、皆さんご存知かどうかわかりませんけれども白内障というのは水晶体が濁る病気の総称であって、実は80くらい混濁病型があるのです。濁っているもの全てをまとめて白内障と言っているだけで、それぞれ危険因子とか、発症年齢とかいろんなものが全く違うわけですけれども、この中で加齢に伴って頻度が高くみられる病型というのは、ここに挙げる5つの混濁病型があります。左から皮質白内障、核白内障、後嚢下白内障、また最近注目されている副病型、今の最初の3つが主病型と言われているものです。副病型と言われているRetrodots、Watercleftsというこういったものが、これ55歳以上の石川県の住民ですね、私共疫学調査をした中での有病率なのですが、これぐらい見られるわけです。日本人はこの一番左の皮質白内障というのが非常に多くて、これは紫外線がそのリスクの20%くらいだというふうに言われているものです。白人だとこの2番目にある核白内障というのが実は一番多くて、人種によっても違いがあります。どれも高齢になればなるほど有病率は上がってきます。真ん中にある後嚢下白内障というタイプが放射線と一番関係があると言われているタイプで、実際加齢で見られるタイプの中では一番頻度が低いものです。放射線以外ではステロイドでこのタイプの白内障が、ステロイドの全身投与ですけれども、起こるということが分かっております。その他、Retrodots、Watercleftsに関してはまだ危険因子も分かっていないというか、あまり調べられていない状況であります。まず右に放射線白内障の発症機序ということで、シェーマがありますけれども、その説明をこの左側に書きました。水晶体というのは放射線感受性が非常に高い組織でございます。赤道部にあるGerminative Zoneという、水晶体のこのちょうど地球の赤道にあたるところですね、一番右側の方にGerminative Zoneと矢印で示してあると思いますけれども、ここの部分は極めて細胞分裂能が高く、水晶体というのはこの細胞が水晶体線維になり、玉ねぎのようにどんどん外側から内側に向かって新しい水晶体線維が毎年できるため、水晶体というのは一生成長する組織です。Germinative Zoneの水晶体上皮細胞というのは、放射線被ばくを受けることで細胞内にフリーラジカルが産生されてDNAの損傷が生じると言われています。水晶体のタンパク、これはクリスタリンというものがあるのですが、それの構造変化をきたしまして水晶体上皮細胞とか、あるいは有核の水晶体線維が変性してきます。変性した細胞が、水晶体の赤道部から後嚢側に移動、迷入してきます。後嚢というのは水晶体の一番後ろの部分です。この図で言うと一番下の部分になりますけれどもPOSTERIORサイドです。後嚢中央部まで迷入することで混濁ができると後嚢下白内障というものになってまいります。後嚢下白内障の初期の変化といたしまして、後嚢部にVacuolesという水疱のようなものとか、あるいは顆粒状の物質ができてくるのですけれども、そういったものが放射線白内障の初期変化として注目されている所見でございます。初期変化として赤道部付近にはWaterclefts生じることがあると言われていますけれど、まだ放射線との関係ははっきり分かっておりません。それでは次のページに移らせていただきますけれども、放射線白内障に限った診断基準というのは実は完璧なものはありません。加齢白内障の診断基準はたくさんあります。ただ、それはいずれも先ほど申しました主病型の皮質、核、後嚢下、3種病型に関する診断基準であって、放射線に特化したものではございませんので、放射線白内障で見られるような初期の変化、VacuolesとかDotsのようなものというのは全く診断基準には入っておりません。Merriam-Focht分類という1962年に作成された非常に古い診断基準なのですが、最近の色々な放射線白内障に関する調査では、いまだにこの分類あるいはこの修正版のような分類が使用されているのが実状でございます。Merriam-Focht分類を簡単にご説明いたしますと、水晶体の混濁の初期変化といたしまして、後嚢下に認められる多染性の物質とか、あるいは10個以下の不連続のDotsとか、あるいは5個以下の独立したVacuoles、これが右の写真の上の部分で微小混濁と言われるのです。こういったものが水晶体の徹照像の中央部に黒い点とか小さい水疱として最初に現れて、その後、進行していきますと下の視覚障害性の後嚢下白内障に徐々に進行してくると言われております。初期変化の次にステージ1と丸で囲んだところがありますけれども、こういったものは先ほどのDotsとかVacuolesが少し増えた状態とか、あるいはCortical Spokesという、皮質白内障の初期のようなものとか、あるいはWatercleftsとかですね、そういったものができてくるのが初期変化で、このステージまではあまり視力に異常が出てないと考えて良いと思います。そこから下のステージ2、ステージ3になると混濁が増えてきて、強くなってですね、これは皮質混濁と書いてあって後嚢下混濁とは書いていませんが、これも後嚢下混濁が実は含まれているのですが、こういったものに進行してくるということになると思います。進行してきたものに関しては従来ある加齢白内障のいろいろな診断分類を使うことは可能になりますけれども、初期変化に関しましてはやはりMerriam-Focht分類を使って検討をしていく必要があるというのが現状でございます。次のページに移っていただきまして、それでは実際医療従事者でどのくらいこの白内障があるかということに関しまして、左の表とメタアナリシスの表も右側に載せてありますけれども、医療従事者における放射線被ばく量と後嚢下白内障、先ほど申しました放射線と関係している可能性のあるタイプの白内障について、放射線被ばくのない方に対する医療従事者のオッズ比というものを出しております。それぞれのスタディに関しまして、平均職業線量は0.数Gyから一番高いのは6Gyまでございますが、後嚢下白内障に関してオッズ比が高くなっているというのが分かると思いますし、それから右の表に関しましても、皮質と核白内障に関してはRisk Ratioが被ばくしている方で必ずしもリスクが上がるというわけではないのですが、後嚢下白内障に関しましては、ほぼ全てのスタディでリスクが上がっておりまして、平均でも3.21倍ということで、3倍以上リスクが上がっているということになります。やはり医療従事者では非常にこの後嚢下白内障に関してはハイリスク群であることは多分間違いと考えていいと思います。次のところに移っていただきまして、文章だけでございますが、放射線白内障には微小混濁としての顆粒状の混濁、Dotsと言われるものですけれども、それからVacuolesというものがありますけれども、これは視機能への影響はほとんどありませんし、私共、日常の白内障診療であまりこういうものに注目して診ていることは少なくて、眼科医は、普通あまり着目していないのですが、ただ放射線の白内障の中で非常に大事な所見であるということです。視覚障害性の白内障、視力の下がった白内障としては後嚢下白内障というものが放射線では非常に特徴的になります。皮質白内障、Watercleftsというタイプも放射線被ばくによって発症する可能性があるということも言われておりますけれども、これに関してはまだまだエビデンスが十分ではないという状況でございます。医療従事者は後嚢下白内障の発症リスクが高い可能性は十分にあると思いますし、微小混濁というものが全て視覚障害性白内障に進行するかどうかもまだ十分に分かっておりませんし、その進行過程も実はあまり分かっていないのです。そういったことで長期的な前向き調査というものは非常に大事で、これからもそういった調査は続けていく必要があるかなと考えております。以上が放射線白内障に関してなのでございますが、もう1つだけ、最後のページ、ちょっと見ていただきまして、話題が変わりますけれども、電離放射線健康診断実施時の一般的な白内障に関する眼の検査ということで、電離放射線障害防止規則 第八章 健康診断 第五十六条というところから抜粋して文章を持ってきました。対象となる方は放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入るものと緊急作業に係る業務に従事する放射線業務従事者ということになってございます。①と②、少し健診の頻度とかは違いますけれども、だいたい6か月に1回程度の健診をするということになっているのですが、それぞれ①と②の対象に関して、下に挙げたような検査項目をしなさいということにはなっております。ただですね、①に関しては必須でございますけれども、(2)から(5)、あるいは(6)に関しましては、医師が必要でないと認める時は全部または一部を省略できるということになっております。ただし、前年1年間の線量が5mSvを超えず、かつ、当年1年間の線量が5mSvを超える恐れのない者に関しては、医師が必要と認めないときには行うことは要しないということも書いてございます。ということで、白内障に関する検査も省略していい項目の中に含まれているわけで、実際ちゃんと調査されていない、検査されていない方も多分たくさんおられるのではないかと思います。もう一つ、検査が実際どういうふうに行われているかということに関しまして、もう少しだけご説明したいと思うのですが、右のところを見ていただきますと、眼科で一般的に白内障の診断をする場合にはどうするかと言いますと、まず視力が下がっているかどうかという検査はどうしても必要なので屈折とか矯正視力の検査というのは必ず行います。それから、通常は瞳孔が小さくなっておりますのが、水晶体は直径10mm以上ありますので、2mm~3mmの瞳孔を通してしか見ないと水晶体全体の所見を診ることはできません。従って散瞳点眼剤を使って散瞳し、水晶体全体を6.5mm以上散瞳することで観察するのが望ましいと言われております。細隙灯顕微鏡という顕微鏡を使って水晶体の観察をして、白内障の混濁程度とか混濁病型というものを判定するわけですけれども、その所見が右下にある散瞳と書いてある写真です。散瞳することで水晶体全体の所見を診ることができるわけです。ところが電離放射線健診での眼の検査というのは、まずほとんど無散瞳でやっています、散瞳剤を使わずにやっていますし、こういった状況で白内障の正確な判定というのは僕らがやっても非常に難しいのですが、眼科医がやっているということもむしろ少ないということも聞いております。眼科医でない先生がこういう無散瞳で水晶体を見たところで多分何の情報も得られないのではないかと危惧しておりますけれども、ただ現状は多分こういうことなのではないかと思います。ですからやはりしっかり検査をするということであれば、散瞳して眼科医がちゃんと検査をするということが重要ではないかなと感じております。以上でございます。
○永井座長 はい、ありがとうございました。いくつか大事な点をご指摘いただきましたがいかがでしょうか。今の健診の問題ですね、これ専門の先生に診ていただくのが一番いいと思いますが、ただ膨大な数の健診を眼科の先生が全部可能なのか、その辺いかがなのでしょうか。あるいはある程度の方をしっかりと眼科の専門医が診察させていただくということでどうなのでしょうか。
○佐々木参考人 はい。やはりですね、それは全部診るというのは大変難しいことと思いますので、ある程度の被ばく線量以上の先生方を、基準はどこで引くかということはちょっと決めていただかないといけませんけれども、そういった方を選んで診るということは非常に意味があるのではないかと思いますので、1%、あるいは0.1%になるかわかりませんけれども、そのくらい、全体の中でその程度の割合になるのではないかと思います。
○永井座長 はい。いかがでしょうか。山口委員、どうぞ。
○山口参集者 ありがとうございます。ちょっと教えていただきたいのですが、この微小混濁というものは眼科の先生はあまり重視しないというお話でしたが、やはり散瞳して眼科の先生が評価しないと分からないというふうなものと考えてよろしいのでしょうか。
○佐々木参考人 そうですね、後嚢下白内障に特化して言いますと、微小混濁の中でも瞳孔中心の後嚢下に出るものがもちろん一番大事なのですが、それはやはり光を入れると瞳孔は通常の状態よりさらに縮瞳します。それを正確に診るというのは非常に難しくて、あとはその光を直接当てて診る斜照法と、眼底からの反射光を使って診る徹照法というのがございます。この写真で言うと、散瞳の写真を見ていただくと、右側の徹照法での写真はオレンジ色の反射が返ってきています。これは視神経乳頭からの反射を介して見るのですが、左側のものが斜照法での写真になりますけれども、微小混濁を診るためにはこの徹照法で見ないとはっきり分からないのです。しかし縮瞳してしまったものに光を入れて徹照像を見るというのは眼科医でも非常に難しいと思いますので、そうなってきますと、縮瞳状態で真ん中に仮にあったとしてもなかなかその所見を取るというのは難しいのかなというふうに思います。
○永井座長 他にいかがでしょうか。はい、欅田委員。
○欅田参集者 今の検査の実態というお話でしたけれども、実は8年前の震災後もこういったものに関して1Fサイトで従事されている方に関しては、等価線量限度の引き下げに応じて早めに対象として実施いただいているところだと思うのですが、その際には、佐々木先生たちがきちんと専門的なクライテリアの基で診て頂いているというふうに伺っておりますが、その他の放射線業務従事者のところの実態というのは、まさに何にも専門性もなく診られてきているのが多くじゃないかなと思うところで、そういったことについてもやはり、含めた上での議論が今後必要になってくるのではないかなと。場合によっては細隙灯とか全然使わずにペンライトで眼を照らしてそのまま見るくらいの状況で所見を書くというふうなこともあり得るというところかと思いますので、本当にもう視力障害が非常に臨床的に強くなっているようなものしか見えないところだと思いますので、そういったことも踏まえた議論が必要だと思いました。またそういう目で見た時には、この検討会とはちょっと違いますけれども、先ほどの省略可能項目というところで血球検査も入っていますけれども、血球検査に関しても別に放射線障害で血球が下がる、あるいは何らかの異常が出て増減しているということを診るという、その変化の起こり得る線量というのはもっと高いところですので、そういう意味ではないというところも踏まえたことを皆さんが共有していくことが必要になってくるのかなというふうに思いました。血球検査に関してはまた別の機会でもいろいろ議論されているところかと思います。
○永井座長 はい、ありがとうございます。いかがでしょうか。それでは、続きまして事務局から資料4の説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 資料4をご覧ください。労働安全衛生法における健康確保措置のご説明をいたします。1枚めくっていただきまして、労働安全衛生法における健康確保措置の考え方としまして、第一には労働安全衛生法における一般の健康診断がございます。青で囲っているところの項目につきまして、健康状態を把握するための健診を行っております。こちらの方、原則として1年以内に1回と書いてありますけれども、※1に特定業務従事者の場合は6月以内ごとに1回、この特定業務の中には放射線業務が含まれているということで、実質的には6月以内ごとに1回の健診を行うということになります。また後に詳細説明いたしますが、一定の有害業務を行う場合については特殊健康診断を実施することになっております。3ページ目をご覧ください。こちらは福島第一原発の事故で緊急作業に従事した方の健康確保措置について検討会を実施しまして、その報告書がまとまっているものでございますが、こちら、報告書がまとまる前にICRP声明2011で眼の水晶体の声明がすでに出ておりまして、しきい値0.5Gyの考え方でありますとか、それを受けた等価線量限度についての勧告が出たものを踏まえた議論を行っております、その中の結論をご紹介いたしますと、白内障に関するしきい値として示されている0.5Gyについては、これだけで生涯線量として管理すべきまでとはいえないが、健康診断及びその結果に基づく事後措置を適切に実施することで管理すべきとされているところでございます。次のページをご覧ください。電離放射線健康診断でございます。こちらは電離則第56条第1項で、6月以内ごとに1回、定期に白内障に関する眼の検査を実施するように定められております。また、先ほどもご紹介ありましたが、この第3項で、医師が必要でないと認めるときには全部又は一部を省略することができるとされているところです。この省略の考え方でございますけれども、次のページをご覧いただきたいと思います。この省略の可否につきましては、この下の囲みの通達の中で、検査項目を省略することが適当でないものとして、眼の場合は4つの類型が示されておりまして、例えば、業務上、眼に大量の放射線を受けたことがある者などにつきましては検査を省略することが適当ではないというふうにされているところでございます。次のページをご覧ください。電離健康診断の結果の意見聴取と結果に基づく措置ということで、電離則第57条の2では、電離放射線健康診断の結果に基づく医師からの意見聴取について規定しており、また、第59条では、放射線による障害が生じており、若しくはその疑いがあり、又は放射線による障害が生ずるおそれがあると認められた者に対する就業場所等の転換などの健康の保持に必要な措置を講じなければならないということが規定されているところでございます。こうしたことで一定の枠組みはすでに整備されているところではございますけれども、健康確保措置の強化といたしまして、十分な放射線防護を行っても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性がある労働者に対して、先ほどご紹介した電離則第56条に規定する健康診断における健康診断の項目の省略を認めないこととする考え方に関してどう考えるかということでご議論いただきたいと思っております。以上です。
○永井座長 はい、ありがとうございます。ご意見をいただきますが、まず、しきい線量の考え方等について補足等がございましたら、意見具申をまとめられた横山委員からお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
○横山参集者 しきい線量に関しましては、ICRPの方に、こちらの3ページのところにございますけれども、注1のところに書かれておりますけれども、白内障に関するしきい線量として示される0.5Gyについては白内障の発症率が年齢とともに高まることを踏まえると、これだけで生涯線量として管理するべきとまでは言えないという、平成27年度の東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会の報告書にもございますけれども、これは意見具申の中でも同じような考え方でして、生涯線量として0.5Gyを超えるからと言って、それに関して生涯線量として管理を進めるというところまで考えなくてもいいのではないかというふうに考えております。ただし、なのですがICRPの声明の中にも書かれておりますように、防護の最適化という意味で被ばく低減というところに関しましては進めていくべきであろうというような、意見具申の中にもそのようなことを書かせていただいているというところでございます。
○永井座長 はい、ありがとうございます。ご質問、ご意見いかがでしょうか。今の事務局の資料4の5ページ、改正電離則の眼のところですが、この大量のという定義はどうなっているのでしょうか。
○川越放射線室長補佐 はい。これが示されたのは平成13年でございます。当時は眼の水晶体の等価線量限度は、1年150mSvの等価線量ということでございますので、それに合わせて大量という考え方があったものと思います。そういう意味で今回、まだ議論が続いておりますけれども、意見具申通り眼の水晶体の等価線量限度を、1年50mSv、5年で100mSvという考え方になった場合には、当然この大量の放射線という定義が変わり得るというふうに考えております。
○永井座長 線引きの案はどういうことでしょうか。
○川越放射線室長補佐 そういった意味ではまず1年に50mSvというのは限度でございますので、5年100mSvから考えると1年20mSvというのが比較的多くの放射線を浴びている方ということになるのではないかと考えております。そういった点で皆さんにご議論いただければと思っております。
○永井座長 はい、ありがとうございます。いかがでしょうか、赤羽参考人どうぞ。
○赤羽参考人 医療被ばく研究情報ネットワーク 参考人の赤羽です。電離則の場合というのは、施設ごとに管理をするということで、この健康診断の項目、そして省略の要件につきましてもこのような形になっていると思います。一方、先ほど眼の水晶体の白内障の機序についてのご説明がありましたけれども、一人の人間として見れば、全ての要因が重なって白内障が生じるということになってくるかと思います。ただ放射線由来の白内障は確かに後嚢下が数%ということで因果関係の可能性は非常に高いということが言えますけれども、例えば眼の水晶体を照射野に受けるX線検査を患者さんとして受けている場合、その患者さんが電離則の適応される放射線従事者である場合、白内障になると、その場合どういうふうに因果関係を考えるかということが問題になってくるかと思いますので、健康診断の場合、眼を診る時にあくまでもその施設だけの業務ではなくて、因果関係のあるところの被ばく、特に眼の水晶体の被ばくをX線検査で受けたかどうかとか、あるいは他施設で働いている、複数の施設で働いている場合の被ばくについてもやはり考慮しないと水晶体の白内障との因果関係を考える上においては問題があるかなというふうに思いました。以上です。
○永井座長 はい、ありがとうございます。いかがでしょうか。これまでのご提案として十分な放射線防護を行っても、なお高い被ばく線量の眼の水晶体における可能性のある労働者は、電離放射線障害防止規則に定める健康診断の項目の省略は認めないという、そういうご提案だったと思いますが、この点についてご意見を、臨床の立場の方からお聞きしたいのですが、医学放射線学会の吉川参考人、いかがでしょうか。
○吉川参考人 そうですね、やはりそういう大量の被ばくの可能性がある方に関しては検査を実施するという方向性で良いのではないかと思います。
○永井座長 消化器病学会 持田参考人のご意見もいただきたいと思います。
○持田参考人 やはり同じように被ばくの多い対象者に関しては受けるべきではないかと思います。
○永井座長 眼科学会 佐々木参考人。こちらは当然受けるべきであるというお考えだと思いますが。
○佐々木参考人 そうですね、ただこれ医師の診断と書いてあって眼科医って書いてないのですが、そこらへんはどうなのでしょうか。眼科医以外の医師が診断したところでやはりちゃんと水晶体を診ることのできない、専門でない方が診ても多分あまりはっきりした所見というものを捉えることは難しいと思います。そうであれば眼科医が診るのか、あるいは、最近は徹照カメラみたいなものがありまして、そういうものは看護師とか検査技師が撮影できますので、それを眼科医が読影するとか、何かしらそういった方法で、やはり精度の高い検査をするというのが大事なのではないかというふうに思います。
○永井座長 これは、事務局いかがでしょうか。かなり細かい話になってきますが、どこまで書くかということですね。いかがでしょう。
○川越放射線室長補佐 ご意見をいただきながら検討させていただきたいと思っておりますので、他の方の意見もあればこの際伺っておきたいと思います。
○永井座長 特に対象となる方が高い被ばく線量を受ける方ですね、これは当然ある意味ハイリスクの方ですので、これはきっちり健康診断を受けるというところはよろしいのだろうと思うのです。そうすると、どうしても眼科の先生に診ていただくのがよろしいように思いますが、特にそういう病院というのは総合的な病院で院内にも眼科の先生がいらっしゃることが想定されると思うのですが、規則としてどこまで書くかは別として、基本的には眼科の専門医の診察を受けてくださいということをリコメンドするということではないかと思うのです。書き方についてはまた事務局と相談させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。また現場の状況を踏まえて漆原委員、いかがでしょう。
○漆原参集者 先ほど赤羽参考人のご意見に近いところがあるのかもしれないですが、副業・兼業ということもあろうかと思います。この場合、複数の現場を持っている方については、そこで受けた線量が通算できるか。もし可能であれば複数の現場の線量を通算した上で高いというふうに言えるかどうかという観点もあるのかなと思っております。健康診断を考える際に副業・兼業の観点も必要ではないかという点が気になるところでございます。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。
○細野参集者 よろしいでしょうか。
○永井座長 はい、どうぞ。
○細野参集者 細野でございます。非常に重要な累積線量も考慮すべきという観点、全く仰せの通りでございます。今、少し議論ありました、眼に大量の放射線を受けた者に対しては省略できない、省略することは適当でないということに関してなのですが、私も、私自身の勤務先で放射線診療に従事している方の線量管理に携わっていますけれども、これは非常にはっきりしていまして、大多数の方はほとんど受けないのです。そして、受けられる方というのはまさに今回の議論にもあったような、診療に深く従事されている方で、ということはですね、ここの業務上、眼に大量の放射線を受けたことのある者の定義としまして、先ほど事務局からも言われましたように、年平均20mSvとすれば、そのあたりが非常に適当である、つまりそういう方というのは引き続きですね、線量を受ける可能性のある方でして、そういう方については省略しないようにする、そしてこの健康診断というのが6か月以内ごとに1回していくわけですから、そういう方をフォローアップすべきであるという観点から、この大量の放射線を受けたことのあるという方の考え方はですね、やはり積算ということも大事なのですが、まず実務面からすると、やはり20mSvというのはずっとフォローアップすべき対象者としまして、かなり妥当な考え方のように思います。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。続いて看護協会の奥村委員、ご意見いただけますでしょうか。
○奥村参集者 この省略ができるということを初めて伺った時に、ああそうなのかとちょっとびっくりしたようなところがあったのですが、今の先生方のご議論を伺っておりまして、今のお話のような形で線引きをしていただいてご対応いただけるのであればというふうに思っております。あと、先ほど検査においてナースの関わりについてもご言及いただきましたけれども、そういった形で読影をご専門の先生がしていただけるのにお手伝いをするという形で関与ができれば、それもまた一つ関われることとしてはいい方向かなと思って伺っておりました。ありがとうございます。
○永井座長 あと、現場のお立場から渥美委員、ご意見いただけますでしょうか。
○渥美参集者 基本的には皆さんのご指摘で問題がないというか、その方がいいというふうに思います。原子力の場合はおおよそほとんどの方は省略しないでやられているのですが、やはり一部、省略されている方はいらっしゃるのですけれども、当然そういう方はあまり被ばくされていない方が多いのですが、方向としてはそういう方向で原子力発電所の方も対応できるかというふうに思います。
○永井座長 萩原委員は特にご意見ないということです。ありがとうございます。それでは、歯科医師会の立場で三井委員、いかがでしょう。
○三井参集者 ここの部分に関しまして、歯科に関しては本当にそういう被ばく線量というのは低いわけで、そこにはあまりこだわりはないのですが、今、電離則のこの部分の56条3項の項目、その部分に眼科医のという部分があったのですけれども、この資料の5ページで眼のところだけがクローズアップされていますけれども、実は4ページが電離則の3項に規定されている部分であると。ですから、ここに関しては、除外規程に関しては医師という記載がなされているのではないかなというふうには考えております。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。続いて、松本委員、ご意見いただけますでしょうか。
○松本参集者 はい。先ほど他の委員の先生方もご指摘ありましたけれども、やはりここの電離則の第56条の3項のところですか、一部省略のところですけれども、やはりここの医師が必要でないと認める時はという、この項目が非常に大事なところだと思っております。こういうことはないとは思いますけれども、やはり安易な省略が行われないように、一般健康審査でもそれは通じることでございますのでここのところは非常に重要かなと思っております。それから、先ほど4の白内障に関する眼の検査、医師と書いてありますけれども当然眼科の先生にやっていただく、5番のところの皮膚の検査、これは皮膚がんとかのことになりますけれども、やはりできる限り皮膚科の専門医に診ていただくということは大事なことだろうと思っております。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。労働衛生の立場からもご意見いただきたいと思いますが、欅田委員、いかがでしょう。
○欅田参集者 なかなか労働衛生を担当されている方々も非常に幅広いところを担わないといけないということで、そういう意味では各領域、専門の方々、先ほど議論がありましたように眼科の先生、皮膚科の先生方の協力をいただいてやるということが求められると思います。ただ、大半の人たちが非常に線量が低いところですので全員をやるというのはなかなか限界があると思いますので、先ほど少し議論がありましたように、眼であったり、皮膚であったり、そういう不均等ひばくがある時の対象線量に応じた対象者ということに関しては今後も議論していく必要があるのかなというふうに思いました。
○永井座長 はい、ありがとうございます。山口委員、ご意見いただけますでしょうか。
○山口参集者 私もあるレベル以上の被ばくの可能性のあるドクターについては省略せずに、というふうなことに賛成いたします。もう一つ先にちょっと進めて申し上げますと、科学的な知見の蓄積が極めて大事だと思うのです。それはいろいろな意味で、先ほど因果関係という言葉もございましたが、一体、医療被ばくでどのくらいの被ばくをどのくらいしたらどういうふうな自然史の進行があるのか、みたいなことは多分確実性がまだそんなに確立していないと思いますので、やはり疫学的なフォローアップを是非やっていただいて、その辺の知見を是非蓄積して欲しいと思いますのと、その成果に基づいてだと思うのですが、眼の所見がどの一線を越えたらまずいと、ドクターにドクターストップというのも変ですけれど、止めた方が絶対いいみたいなですね、あるいはもしかしたらこの一線を超えるともう被ばくを止めても進行するみたいなことがもしもあるならば、その辺のレベルからいろいろなアクションを取らざるを得ないと思いますので、その辺のことを、もう眼科の領域ではエビデンスの蓄積はあるのかもしれませんが、是非明らかにして、やはり世界に範を示せるようなエビデンスを是非日本で蓄積できたらというふうに考えます。
○永井座長 はい、ありがとうございます。そういたしますと、この検討会としましては水晶体への被ばくが非常に高い状態を余儀なくされる方に対しての健康確保措置は、これまでよりも強化するということでまとめたいと思いますがよろしいでしょうか。ありがとうございます。続いて水晶体の等価線量を算定するための実用量についてご議論をお願いいたします。最初に横山委員から、放射線審議会での議論をご紹介いただけますでしょうか。
○横山参集者 資料5に基づき説明させていただきます。資料5ですが、水晶体等価線量算定のための意見具申と追加測定位置についてということで、この会の1番最初の時に意見具申のご紹介をさせていただきました。その水晶体の等価線量を算定するための実用量に関するお話と、追加測定の位置についてという部分に関しましては平成29年度、平成30年度に原子力規制庁において放射線安全規制研究戦略的事業としまして原子力医療分野の水晶体標準モニタリング防護と管理の在り方ということで研究を進めて参りました。その中で実態調査とともに海外・国内の動向の調査を行い、意見具申を出した後、意見具申を補完するというようなものがこれから法令に落とし込む上で必要なのではないかということで、この研究の中で提案させていただいた部分ということになります。それではまず、等価線量の算定ということで実用量のことについて説明させていただきます。2ページ目に意見具申の抜粋となりますけれど、水晶体の等価線量を算定するための実用量ということで、まず場に係る測定という部分に関して、3mm線量当量、これは水晶体の等価線量を算定するために用いる線量、実用量ということになりますけれど、場所に関しましては現時点では3mm線量当量を法令に取り入れる必要性は薄いと考えられる、というふうにとりまとめてございます。この理由としましては、現在、まだ十分に場の3mm線量当量を測定するような測定器がないということ等を踏まえてということになります。ただし、青字で書かれていますように、今後の国際規格の整備状況等を注視する必要があるということで、今後、こういうものが整備されていく、換算係数等も整備されていく上でこういうものを取り入れる必要があるということであれば、そういう見直し等は必要だと思いますけれど、現時点においては場に係る測定ということは、それを法令の中に取り入れる必要性は薄いというふうに示しております。続きまして3ページ目になりますけれど、では個人線量のほうはどうなのか、個人の外部被ばくに係る測定及び水晶体の等価線量の算定ということに関しましては、今後、正確に水晶体の等価線量を算定することが事業者等にとって必要となる場合があると見込まれることを踏まえれば、現行規定を見直し、個人の外部被ばく線量の測定方法として3mm線量当量を位置付けるとともに、3mm線量当量で水晶体の等価線量を算定することを可能とするべきである、というふうに取りまとめさせていただいております。こちらにつきましては、3mm線量当量で測定しなければいけないのかというわけではなくて、この書きぶりとしては、70μm線量当量、1cm線量当量といったものの他に3mm線量当量も用いて測定できるように法令の中に位置づけるべきであるというふうに示したところでございます。必ずこれで測定しなさいと、この中で書かれているわけではありません。次に4ページ目になりますが、こちらのほうが先ほど申し上げました追加測定の位置ということを示したものです。こちらの資料ですが右肩のところに、第144回総会、放射線審議会ということで3月の放射線審議会においてこれまでの安全研究の中で水晶体の研究について成果報告をさせていただきました。その中でこの提案をさせていただきまして、審議会の委員の皆様からも賛同を得たところでございます。どういう内容かと申しますと、5ページ目を先に見ていただくとよろしいかと思います、参考として現行規制の実効線量と等価線量の測定位置ということで前回の会議の中でも出てきたかと思いますけれど、測定部位についてどのように法令に記載があるかということで、法令によって少しずつ違いますけれど、基本的にはまず胸部に線量計を着用して1cm線量当量及び70μm線量当量を測定しなさいと、その次に体幹部といわれる頭部・頚部、胸部・上腕部、腹部・大腿部という部分で不均等な被ばくをするような場合に関しましては最も多く放射線に晒される部位に線量計を着用して1cm線量当量、70μm線量当量を測定しなさいと、さらにそれ以外の部位ということで図に示しました斜線部分になります末端部という部分が最も多く放射線に晒される場合には、最も多く放射線に晒されるおそれのある部位に線量計を着用し、70μm線量当量を測定しなさいと、これは皮膚の線量を算定するという意味でこのようなことになっていると、こちらを見ていただきますと、例えば眼鏡を着用した場合、眼が一番高くなるような状況にない場合、この法令の記載だけでは眼鏡をかけた時の線量、最も多く晒される部位ではないような部位という部位になりますので、その内容が盛り込まれないということになってきます。そこで、提案といたしまして4ページに戻りますけれど、事業者等にとって水晶体の等価線量を正確に算定することが必要になると見込まれる場合、この書き方として必要になると見込まれるとはご議論いただいているように、線量限度に近くなるような場合ということになりますけれど、現行法令に義務付けられている装着部位に加え、眼の近傍で測定した結果を用いて眼の水晶体の等価線量を算定することをできるように法令の中で取り扱うできではないかということを提案させていただいております。こちらのほう、意見具申の中にも書かれていますが、より具体的にここで補完するような形ということで提案させていただいております。さらに、眼の近傍で測定した結果を水晶体の等価線量として算定すべきといった場合に、その位置というのがどういう場所が眼の近傍なのかというところが明確になっていないということがございましたので二つ目の段落に記載させていただいております。眼の近傍とは、頭頸部のうち、眼の水晶体が受ける放射線量を直接測定するために適切な位置のことをいう。これは他の書きぶりと同じような書きぶりになっていますけれど、適切な部位とはどのような部位かということですが、両眼で受ける線量が最も高い位置から、当該線量と有意な線量率勾配がないような部位で測定をすることが望ましいのではないかというような提案をさせていただきました。この書き方としては明確にどこからどこまでというような書き方はできないということでこのような書き方をさせていただいております。特に防護眼鏡を装着している場合にあっては、防護眼鏡の遮蔽効果を考慮して判断する。そうしないと実際の眼の線量を正確に測定するということにならなくなってしまうので、こういう防護をした状態での線量の評価というものができるように、今後法令に落とし込む上でこういうことに着眼していただければ、というように考えております。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。それでは、ご意見をいただきたいと思います。最初は、3mm線量当量による測定ですが、横山先生のご意見では法令に取り入れる必要はないけれども測定方法として3mm線量当量を位置づけるということでしょうか、位置づけるとは、どのように位置づければよろしいのでしょうか。
○横山参集者 場所に係る測定に関しては現行法令に取り入れる必要性は薄いというでございます。もう一つの個人の外部被ばくに係る測定ということに関しましては、現行法令では1cm線量当量又は70μm線量当量という書かれ方をしていますけれど、やはり3mm線量当量を水晶体の線量として測定すべきというわけではなく、それで算定することもできるというふうにすべきということでございます。
○永井座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。細野委員、前回ご発言いただいたと思いますが、この点についていかがでしょうか。
○細野参集者 今、横山先生からご説明があったとおりで、これまでの検討会でも対象とする放射線ですとか放射線のエネルギーによって、1cm線量当量、70μm線量当量、3mm線量当量が実際にどのような数値になり得るかというのが既に話されていて、そのような事を勘案しますと、まさに個人の水晶体の等価線量の算定にあたって3mm線量当量も算定することを可能とすべきであるということは非常に合理的な考え方であると思います。ただ、これが法令になった場合に丁寧にご説明していただくことが必要で、必ず3mm線量当量を測定しなければいけないわけではなく扱う放射線に応じた合理的な手立てということがご理解いただけるような伝わり方ということが大事なところだと思います。算定することが可能、とするべきこと自体は妥当であると思います。
○永井座長 ありがとうございます。事務局からの追加の資料6について、放射線のエネルギーで吸収が変わってくるということですので説明をお願い致します。
○川越放射線室長補佐 それでは資料6をご覧ください。こちらは眼の水晶体等価線量算定のための意見具申の補足と追加測定位置に係る検討についてということで資料をまとめております。まず2ページ目でございますが外部被ばくによる線量の測定・算定の関係では、平成11年に放射線審議会基本部会が「外部被ばく及び内部被ばくの評価法に係る技術的指針」を発出しております。この中で3mm線量当量の測定義務を原則として課さないことが適当であるということが示されておりますが、事業者等が3mm線量当量を測定することを排除させる意図ではないということが意見具申の中で書かれているところでございます。また、平成30年度の意見具申では、現行規定を見直し個人の外部被ばく線量の測定方法として3mm個人線量当量を位置付けるということが記されています。また、ページの下には当該意見具申の抜粋を記しておりますのでご参考いただければと思います。次のページですが、γ線が主になると思いますがエネルギーに対する換算係数をグラフで示したものです。青い実線が3mm線量当量についてそれぞれのエネルギーに対する換算係数を示したものです。この青い実線を跨ぐように1cm線量当量の換算係数と、70μm線量当量の換算係数が示されております。グラフの黄色い線、100keVより上になってきますと、ほぼこの3つの換算係数の値が同じような値を示しています。一方、左側のエネルギーの低い領域では1cm線量当量と70μm線量当量の値は大きく乖離していく状況がございます。70μm線量当量が3mm線量当量より大きいことを記している赤い枠からもう少し左寄りのところですが、30keVから40keV辺りを境にクロスして逆に1cm線量当量がより高い値になる領域が一部あるということです。それぞれの医療現場で行われている撮影における実効エネルギーの領域を青い囲みで示しておりますが、それぞれの撮影状況によって実効エネルギーも変わってきますし、これは直接線の実効エネルギーですので散乱線になるともう少し低エネルギー側に寄ってくるようなエネルギー領域になってくることが考えられます。以上のように3mm線量当量より非常に乖離する部分があるということで意見具申に対する対処方針としまして、現行の電離則の体系、意見具申、放射線審議会における直近の議論などを踏まえまして、意見具申や提案のとおり眼の水晶体について、眼の水晶体の等価線量として3mm線量当量の算定を可能とする。また、二つ目として3mm線量当量の算定を行う場合に3mm線量当量の測定を義務付ける。三つ目として眼の近傍を測定位置とすることを可能とする、ということに関してご議論いただきたいと思います。
○永井座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。
○萩原参集者 今の事務局のご説明につきまして確認でございますが、先ほど横山委員、細野委員がおっしゃいました内容を踏まえまして、資料6の2ページ目ですが3mm線量当量の記載についてのただし書きのところ、(2)の事業者等において水晶体の等価線量を適切に評価できることを示せる場合、いわゆる保守的に現場で測定をしているということであれば今の簡便な測定という扱いになるかと思いますが、1cm線量当量又は70μm線量当量で保守的に評価できる場合というのがそこだと思っております。また、保守的とはいえない場合であってもあきらかに新たに水晶体の等価線量限度を下回る場合には、1cm線量当量又は70μm線量当量の測定による水晶体の等価線量の算定も認めるべきであるということが示されています。したがいまして、最後の対応方針のところに記載されていますが、今のただし書きの部分についてどのような形で電離則の法令文に記載されるのかについて確認をさせていただきたいと思います。私ども原子力関連産業の現場で働く者といたしましては、福島第一原子力発電所以外の実用炉の原子力発電所での作業、いわゆるγ線ではなくβ線の中での作業という部分にあっては、ただし書きのように認められることが重要ではないかということで、この部分に関しては既に意見具申のなかで読み込みは整理されているものと思っておりますが、本事項を反映していただくということと併せてどのような反映の仕方をするのかということが、まず一点目でございます。それと4ページ目の3mm線量当量の算定をする場合に測定を義務付けるとの記載があるのですが、義務付けるということについて改めてご説明をいただければと思います。
○永井座長 事務局お願いします。
○川越放射線室長補佐 2点質問があったと思いますが、最終的に法令にどのような書きぶりとするかについては行政の方で検討させていただければと思いますので、萩原委員からありました、ただし書きに記されている運用の考え方が当然認められるべきであるということにつきましては皆様からも意見をいただいて、その方向で検討会としての結論を得ていただければと考えております。また、対応方針の二つ目に3mm線量当量を算定する場合に3mm線量当量の測定を義務付けるという書き方をしている部分につきましては、3mm線量当量を算定するということになれば当然根拠となる測定も3mmを測定しているのではないかということでこのような記載をしています。こちらについてもご意見をいただければと思っております。
○細野参集者 一つ確認させていただきたいのですが、4ページ目の3mm線量当量の算定をする場合3mm線量当量の測定を義務付けるということですが、放射線計測の世界でよく議論になるのですが、測定という意味が、それ専用の測定器なのか他の測定手法から評価するということも含んでいるのか、測定とは何を意味しているのかというのは実務上かなり色々な議論が生じる場合もあり、ここでの記載を測定としてしまうと、しかるべき専用の測定器で測定することになると思うのですが、他の測定器を使っても合理的、科学的に評価できるのであれば、それも良いという考え方もあり得ると思うのですが、その点を実際に法令となった場合に現場で実行可能な書き方にしていただければ円滑なのではないかと思います。つまり、ここに測定と記載されていることは妥当に記載されていると思うのですが、リアルワールドを考えた場合にこの測定が何を意味するのか、合理的であれば評価の手法で得られた数値でも良いような、そういう書き方もあり得るのではないかと思います。
○永井座長 いかがでしょうか。算定という言葉と測定という言葉、測定も色々な方法があるということですね。
○川越放射線室長補佐 今のご意見の確認をさせていただきます。前のページでご紹介したグラフを見ていただきたいのですが、通常γ線の支配する領域で働いている場合に線量を測定する場合について、エネルギーが高い領域であれば3mm線量当量も含めて1cm線量当量、70μm線量当量は同じ値になるということで、1cm線量当量を測定し、3mm線量当量もその値で評価できるというような運用のことを先生はおっしゃったのかなと思いますが、実際そういった運用がなされているということも当然考慮されるべきではないかというご意見であるということでよろしいでしょうか。
○細野参集者 はい、その通りです。つまり、測定ということを厳密にしすぎると非常に運用しにくい、という面もあるように思いますので、測定という意味について、科学的に合理性があれば直接的な測定でなくともきちっとした評価ができるのであればそれもよいとできるような定義のしかたで取り入れられては良いのではないかと思いました。
○川越放射線室長補佐 事務局としましては、委員の皆様の意見を踏まえて、最終的には法令にどのように落とし込むかということに関しては責任を持って検討させていただければと思いますので、その前提となる考え方につきましては細野委員のご意見も含めまして、実際に運用にあたって行われていることがしっかりと現場で混乱しないような形で取り入れるということで検討させていただければと思っております。また、他の委員からも何かご意見があれば賜りたいと思っております。
○横山参集者 今の測定という言葉はなかなか難しいのですが、今の電離則の中に既に取り込まれているものと私は認識していまして、電離則の中に線量の測定という項目がありまして、その中に「測定器を装着させて行わなければならない、ただし、」というただし書きがありまして「測定器を用いてこれを測定することが著しく困難な場合には計算によってその値を求めることができる」という文章がありますので、ここだけ特に取り上げることでもないのかな、今回のものを例えば中に入れたとしても義務付けるという書き方がこの資料の中の記載として、もうこれでしか測定できないという印象を持つのですが、そのように考えれば良いのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
○細野参集者 横山先生がおっしゃった通りのことを私も申し上げたところでして、電離則に記載されているのは「著しく困難な場合は」とあるのですが、著しく困難なとは何かということが問題になるケースがありますので、そこを今回整理していただけるとすっきりするのかなと、そういう趣旨でございました。
○川越放射線室長補佐 さきほど、横山委員からご紹介がありました「著しく困難な場合」の考え方としまして、現在は解釈が示されておりまして、「その放射線に対する放射線測定器がまだ開発されていない場合などをいう」との例示がございます。そういった意味で簡便な方法として3mm線量当量を直接測る測定器が、現在は一応開発されているとの状況で、これで全て読むというのはなかなか難しい面があると思いますが、現状そういった保守的な評価や結果として同じ値になるような場で働かれている場合に線量測定を他の測定結果に当てはめるという評価をされている現状があるという御指摘ですので、そういったことを踏まえて検討していくべきものかと認識しております。
○富田参集者 3ページ目のエネルギーに対する空気カーマのグラフを見ますと、今までの先生方のご説明に関して妥当性があると私も思っています。一般撮影領域あるいはX線CT、血管撮影領域のエネルギーこれは直接線のエネルギーであり、我々が水晶体で被ばくを考慮するというところの散乱性に関しては、このエネルギーより若干低い値になろうかと思います。ということでIVRあるいはX線CT等で今回大量の被ばくが想定されているというエネルギー領域に関しては全ての3mm線量当量、70μm線量当量、1cm線量当量というところで大きな誤差はないというところです。それから10keVから20keVの図の一番左の方の低いエネルギー領域があるかと思いますが、このように低いエネルギーで撮影する検査というのは放射線検査に関しては、通常の医療機関の中では今のところ乳腺撮影以外存在しておりません。したがいまして、乳腺撮影は元々低いエネルギーであり散乱線も非常に低いエネルギーになりますので少し距離をおくだけで、ほぼバックグラウンドに近くなるということもあります。いずれにせよ計算で求めるにせよ1cm線量当量と70μm線量当量に関しては現状の測定器でも両方を測定できておりまして、高いほうが表示されているということですので合理的であるというように放射線技師のほうでは考えます。
○永井座長 ありがとうございます。赤羽参考人、いかがでしょうか。
○赤羽参考人 今のご意見のとおりだと思います。ここに書かれているとおり、これまで1cm線量当量、3mm線量当量、70μm線量当量で評価してきたので3mm線量当量も評価できると思いますが、今回特に問題になっているIVR透視下での術者の被ばくの場合というのは通常の場合と異なって、これまで話にあったように防護眼鏡を着用します。防護眼鏡を着用すると通常の1cm線量当量と70μm線量当量の値とかなり異なる数値になってくる可能性がございます。逆に防護眼鏡で防護していて実際に被ばく線量が少ないにもかかわらず、1cm線量当量と70μm線量当量で評価すると過大評価になって、実は限度を超えていないにもかかわらず限度を超えたということで働けなくなる可能性も出てくるわけなので、そのことを考えますと特に防護眼鏡等で防護されている場合等に関しましては実際の線量を推定する必要性が高くなってくると思います。さらに防護眼鏡も様々なタイプがありますので、現在、下からの散乱性も遮蔽できるタイプのものもありますし、下からの散乱性は全く遮蔽されないタイプのものもあります。望むらくは法令精神の、測定が原則、そして測定が困難な場合は算出できる、ということが望ましいかなと思いますし、そこまで厳しくなくても測定値がかなりの過大評価あるいは実際と乖離しているおそれがある場合には合理的な方法で確認する必要があるという考えを導入しても良いのかなと思いました。
○永井座長 ありがとうございます。他にご意見ございませんでしょうか。それでは検討会としましては、基本的に意見具申通りということでまとめたいと思いますが、書きぶりについては事務局とも相談させていただきたいと思います。本日の議題は以上ですが、次回の予定等について事務局からご説明をお願い致します。
○川越放射線室長補佐 次回ですが、今回議論がございました調査を実施するということになりましたので、その調査結果が出た後、検討会でご議論いただく必要があると考えておりますので、8月頃までの日程を各委員の皆様、参考人の皆様に日程を確認させていただきますので、事務局への回答につきましては大変恐縮ですが4月23日までに回答をいただければと思っております。その上で第5回以降の検討会の日程についてご連絡したいと思います。また、本日の議事録ですが各委員の方々、参考人の方々にご確認をいただいた上で公開をさせていただければと思いますので、あらかじめご承知置き願います。
○永井座長 ありがとうございます。それでは第4回の検討会をこれで終わらせていただきます。