第6回働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会議事録

日時:令和元年5月31日(火)10:00~12:00
場所:全国都市会館
議題
(1)働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する諸論点について
(2)その他
議事
○遠藤座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第6回「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」を開催したいと思います。
構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席を賜りまして、ありがとうございます。
本日の懇談会ですが、酒向構成員、山田構成員より御欠席との案内をいただいております。また、大澤構成員が御欠席のため群馬県より小林参考人、岡崎構成員が御欠席のため高知市より村岡参考人にそれぞれ御出席をいただいております。
なお、平川構成員は少しおくれて御出席をされるということでございます。
それでは、本日の資料につきまして、事務局から確認をお願いしたいと思います。
○山下年金局年金課企画官 本懇談会ですが、今回もペーパーレスによる開催とさせていただきます。
タブレットの操作方法につきましては、お手元に取扱説明書をお配りさせていただきますので、何かありましたら事務局にお伝えいただければと思います。
続きまして、本日の資料でございます。
お手元でございますが、議事次第、座席表、構成員の皆様の名簿のほか、資料1から資料4をお配りしております。
資料の不備がございましたら、事務局までお申しつけください。
なお、本日、御欠席の酒向構成員及び山田構成員よりメモが提出されております。座長の許可を得て、構成員限りとして別にこれを紙で配付しておりますので、そちらのほうもごらんいただければと思います。
事務局からの案内は以上でございます。何か不備があれば、よろしいでしょうか。
以上でございます。
○遠藤座長 それでは、これから議事に入らせていただきます。
冒頭のカメラ撮りの方は、これまでにしていただきたいと思います。
(報道関係者退室)
○遠藤座長 それでは、まず、議題(1)「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する諸論点について」に入りたいと思います。
資料が出されております。資料1「短時間労働者の就労行動と社会保険適用の在り方について」、資料2「被用者保険が適用されていない雇用者の多様性について」につきまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。
○山下年金局年金課企画官 まず、タブレットで資料1をお開きいただきたいと思います。
1枚目のスライドですけれども、これまでのヒアリングにつきまして、人手不足や就業調整に関する意見をまとめております。慢性的な人材不足に加え、適用拡大によって働く意欲をそがれる。そうすると、廃業に持っていかざるを得ないという意見。また、継続的な人材不足が続いているという意見、さらに、短時間労働者の1週間の所定労働時間について、20時間未満が69%となった。前回と比べて非常に多くなった。これは適用拡大の影響によって、第3号被保険者に影響を強く及ぼしているという意見。シングルマザーだから、被扶養の範囲内で働く必要はないものの、労働市場に用意されている仕事が被扶養(者向け)の仕事でここに吸い込まれていくという意見。短時間勤務の組合員が時間調整をした結果、結果的には正社員の組合員に荷重がかかっているという意見がありました。
次に、スライドの2枚目なのですけれども、パートタイムの有効求人倍率が年々上昇していて、長期的に見ても非常に高い水準にある。さらに、企業規模が小さくなるほど人手不足感が強いというものを資料として用意しています。
また、スライドの3枚目ですが、短時間労働者による就業調整の現状としまして、100万円前後と120万円台にパート労働者の年収分布の「山」が見られますけれども、そのうち一定割合の方が就業調整を行っているということが出ております。
次に、スライド4でございまして、社会保険の適用区分と短時間労働者の分布ということでございます。縦軸に年収、横軸は時間であらわしまして、それぞれ年収や時間の要件に合わせると、国民年金1号の方、国民年金2号の方、国民年金3号や1号の方の範囲がこのように分かれている。色分けで示しているというものでございます。
続きまして、スライド5なのですけれども、短時間労働者の賃金が時給単価で非常に上昇しているというスライドでございます。左側は1時間当たりの所定内給与の推移で、中央値が1,000円を超えているというもの。右側は最低賃金の推移でありまして、それぞれ最高額、全国加重平均、最低額とありますけれども、2019年以降については仮に年率3%で上昇してきた場合の試算値として点線で示しております。
続いて、6枚目のスライドなのですけれども、月額8.8万円を挟んで、週所定労働時間20時間以上の短時間労働者の加入状況が変わるということでございます。具体的に言いますと、円グラフにありますように、月額賃金8.8万円以上になると、国民年金1号の被保険者の割合が多い。一方で、8.8万円未満になると、国民年金第3号の被保険者が多くなるということでございます。
続きまして、7枚目のスライドで、税制でございます。主たる生計維持者、この方の配偶者控除の対象となる配偶者の給与収入の上限額が103万円から150万円に変わった。その一方で、配偶者自身の給与収入の非課税限度額は103万円。これは変わっておりませんということでございます。
次に、8枚目のスライドは配偶者控除の見直しに伴う働き方の変更の意向状況なのですけれども、配偶者控除が103万円から150万円に上がりました。そうすると、これまで配偶者控除を意識して就業調整を行っていた方が、どういう意向を持っているのかといいますと、3分の1以上が働き方を変える意向を有している。その場合、次の壁として、130万円、社会保険の被扶養者認定基準を意識している場合が多いということが出ているという資料でございます。
続きまして、スライド9、国民年金第3号被保険者にとって被扶養者認定基準の130万円と被用者保険の適用基準のところと、どう違うのかということをあらわしたものでございます。まず、左側の絵なのですけれども、第3号被保険者は、今まで保険料の負担はない。一方で、年収130万円を超えると国民年金1号被保険者になる。その瞬間に、国民年金の保険料、さらに、国民健康保険の保険料を負担しなければいけない。一方で、今まで3号のほうで得られた給付のところについては、国民年金1号で言うと、ほとんど給付の変化はないということでございます。
その一方で、右側なのですけれども、国民年金3号被保険者から2号被保険者に変わった場合。その場合の負担なのですけれども、この負担は給与に応じた保険料率でございますので、一気にどんと上がるのではなくて、給与に応じて、保険料率ですから徐々に給与に応じた保険料額がふえていくということになります。さらに、給付の面でも変化がありまして、基礎年金に加えて報酬比例の厚生年金も保障されますし、さらに、傷病手当金や出産手当金ということで、健康保険のほうからの給付もあるということでございます。
その上で、次の10枚目のスライドなのですけれども、仮に短時間労働者の時給単価の上昇、先ほど1,001円というふうに中央値を言いましたが、その中央値の1,001円が仮に引き続き上昇していく場合、今まで年収130万円未満で抑えることが可能だった労働時間が、時給単価が上がっていきますから、130万円未満に抑えようとすると、労働時間は徐々に減っていく。仮にそのようにやると、そうなっていきます。それが下の左側の図になります。
その一方で、適用拡大を実施する。適用拡大の関係での2号被保険者となる基準についても、同じように時給単価が上がっていくのですけれども、現在、時給単価が1,001円を中央値が超えていますので、2019年、2018年を見てみると、ほとんど週法定時間の20時間になれば、大半の方々が2号に入るようになっている。そのようになると、もし適用拡大を実施すれば、大半の方々がそのままの時間であれば、国民年金2号被保険者に変わる。ところが実は、2号に変わると、それでもう被用者保険になりますので、今まで考えていた130万円の壁を意識した就業調整は不要となるということを図式化したものでございます。
ちなみに、仮につくっている将来の数字につきましては、とりあえず所定内給与が1,001円という中央値を使っていまして、2018年、対前年度実績で上昇率が2.5%でありますので、それがずっと続くということを仮に置いて、こういうグラフをつくっているというものでございます。
また、次の11枚目のスライドなのですけれども、前回の改正で、適用拡大が既になされている501人以上の企業に対するアンケートの答えの中から、適用拡大が雇用・就労にどう影響を与えたのかをまとめたものでございます。
マル1なのですけれども、社会保険加入のメリットについて、パンフレットを作成して説明した。退職後にどの程度年金が受け取れるのか個別に相談に乗った。その結果、会社としての総労働時間の減少を食いとめた。次にマル2なのですけれども、日本年金機構のリーフレットを配布して、制度の周知を図って、社会保険加入を機に、1日の所定労働時間の延長を提案した。また、マル3は、加入したくないという人が多い一方で、その人の分、かわりに勤務しなければならない人が出てきてしまい負のスパイラル状態だったということが寄せられています。
それを踏まえて、資料1の関係で御議論いただきたいポイントがスライド12なのですけれども、1としまして、働きやすい環境をつくる観点から考えると望ましい社会保険制度のあり方はどうあるべきかと。2番としまして、賃金要件が実際には就業調整ラインとして意識される場合がある一方で、最低賃金が今後も上昇を続ける場合、20時間働くことで自動的に賃金要件を超えてくる地域が今後広がっていくことが見込まれることや、月収8.8万円未満を挟んで短時間労働者の属性が違うということを踏まえて、最低賃金の見直しの必要性やその優先度についてどう考えるのか。3番目としまして、被用者保険適用の効果を適切に理解いただいて、適用拡大を短時間の労働者の能力発揮につなげていく。こういった事例も踏まえまして、企業や行政としての取り組みの意義や必要性についてどう考えるのかということを御議論いただきたいと思います。
続きまして、資料2をおあけいただきまして、1枚目のスライドは、まず、パートの多様性について、ヒアリングで出てきたところを抜き出しております。
短時間組合員の属性で、男性は若年層、30代未満と60歳以上が多いという意見。女性のほうは、30、40、50代といった、いわゆる主婦層が多い。シングルマザーの場合、配偶者控除の壁、社会保険適用の壁、児童扶養手当の全部支給の壁、住民税非課税ラインの壁、児童扶養手当の一部支給の壁のために収入が押し下げられてきた現実があるという意見。また、短時間労働者の属性として、外国人とか高齢者の方に加えて、最近では精神障害者の方も多くなっているというような意見がありました。
次の2枚目のスライドは、今度は501人未満の企業。この企業は短時間労働者強制の適用ではないのですけれども、自主的に短時間労働者に社会保険、被用者保険の適用をしてきた。そういった企業に対するアンケートの結果で、パートの多様性に対して意見を出してきたところを示しております。
子育てとか、孫の見守りとか、家事などで、フルタイムで働けず、パートタイムで働く人がふえてきたという意見。また、短時間で働きたい障害者や難病、諸々の事情がある人がいるということ。さらに、従業員の給与が高水準であるため、パートでも扶養に入れず、国保に入っている従業員がいる。次に、60歳以上の方がいるというようなところがマル5で書いてあります。
それを踏まえて、3枚目のスライドを見ていただきたいのですけれども、週の実労働時間が20時間から30時間未満の雇用者の社会保険の加入状況。これは全体を1,000人いらっしゃったとした場合、それぞれ公的年金の加入状況、縦で医療保険の加入状況の中で、その1,000人が一体どこに何人いらっしゃるのかということでございます。一番大きい371につきましては、いわゆる国民年金3号であり、健康保険の被扶養者という方が371人いらっしゃるということ。その次に、国民年金2号で、健康保険の加入者本人という方が208人いらっしゃる。続いて、右上になりますけれども、もう既に60歳を超えています、もしくは二十未満ということで公的年金に加入していない方。この方は国保の加入になりますが、その方が116名。次に、国民年金1号、これは自営業とかシングルマザーのような形で1号、そして、国民健康保険の方という方で111名いるということで、いわゆる主婦パートというふうに言われていましたけれども、短時間労働者の社会保険の加入状況を見ると、結構さまざまなバラエティーがあるということでございます。
続きまして、4枚目のスライドで、国民年金1号の被保険者の就業状況としまして、人に雇われて働いている方ではあるものの、厚生年金に入っていない方で国民年金1号の方々が4割ほど国民年金の中に、1号の中にいらっしゃるということでございます。
続いて、5枚目のスライド。まず、国民年金1号の保険料の納付状況が左の棒グラフにありますが、自営業主やその家族、従事者に比べて、人に雇われて働いている方の国民年金の保険料の完納者の割合が少なくなっている。右側のスライドなのですけれども、前回の適用拡大によって、短時間労働者が厚生年金に加入になりました。その方が、その前のステータスは、国民年金第1号被保険者である中で国民年金の保険料は実際にどのような納付だったのかということでございまして、51%が納付。その一方で、未納が15%、そのほか、免除が残りというようなことになっている。こういう方々が現在は厚生年金に加入するようになったということでございます。
続きまして、6ページに移りまして、同様に人に雇われて働いている国民年金1号の被保険者が、働く時間で見てどういう属性にあるのかということでございます。まず、左側、週20時間未満の場合には学生が多いということと、女性の有配偶者が多いということでございます。週20時間から30時間になると、女性の有配偶者がぐんと大きくなると同時に、一方で、学生のほうは少なくなる。その一方で男性の未婚、女性の未婚、女性の離別というような属性の方々がふえる。特に女性の離別のほうは、最多所得者としての割合が高くなっているということでございます。次に、週30時間以上になると、今度は男性の有配偶者、特に最多所得者の割合がふえるということでございます。
続きまして、7枚目のスライドです。母子世帯の就業状況を見ますと、8割の方々が就業しておりますが、パート・アルバイト的な働き方が約半数ということでございます。正規の職員で働く母子家庭の平均的な年間の就労収入は305万円、一方で、パート・アルバイトの場合は133万円ということ。さらに、社会保険の加入状況で見ますと、7割ぐらいが雇用保険に加入している。その一方で、公的年金、特に被用者年金に加入しているものは6割に満たないということでございます。
続きまして、8枚目のスライドで、女性全体の3割、配偶者あり女性の約半数が国民年金3号になっている。その一方で、次の右下の縦の棒グラフなのですけれども、20代、30代の方は、国民年金3号の就業状況と就業希望なのですが、就労を希望しているにもかかわらず、何らかの理由、出産・育児などの理由で就労をしていないという方、この緑の割合が多いのですが、40代、50代の方は、就労をするという方が多くて、さらに、労働時間も徐々に長くなる傾向があるということでございます。
それを踏まえて、最後のスライドになりますけれども、人に雇われて働いているというようなステータスでありながら、被用者保険が適用されていない方。その方が、非常に多様性があるということについて、どう考えればよいかということを用意しております。
事務局からの説明は以上であります。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、ただいま御説明がありました資料につきまして、御意見、御質問等をいただきたいと思います。特にそれぞれに議論いただきたいポイントがありますので、これを考慮した上での発言であることを大変歓迎いたします。いかがでございましょうか。
それでは、永井構成員、どうぞ。
○永井構成員ありがとうございます。
資料1の「ご議論頂きたいポイント」の1つ目、「働きやすい環境をつくる観点からの望ましい社会保険制度の在り方」について、就業調整のところで御意見を申し上げます。
雇用形態の違いや企業規模の大小により、社会保険の適用の有無が異なることは、働く者にとって不合理であると考えております。130万円の壁を初め、税・社会保険制度等における各種の年収基準があると、その壁の手前で就労抑制効果が生じてしまうということが事実としてあると思っております。私どものUAゼンセンの調査でも、短時間勤務で働く方々の年収を見ますと100万円、そして、130万というところに2つの山があるということは確認されているところでございます。
日々の生活がありますので、現在の可処分所得に重きを置くのは当然のことではありますが、老後の生活保障を初め、障害・遺族年金の受給等の被用者保険適用による給付メリットの観点などをわかりやすく納得感が得られるように周知し、適用拡大を進めていくべきだと考えております。また、将来的には、被用者には被用者保険が適用されるということを前提とし、第1号被保険者及び第3号被保険者のあり方も含め、ビジョンを示して全体としての就労促進につながる制度とすべきだと考えております。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
田中構成員、どうぞ。
○田中構成員 私も同じく大きな観点から、どのような制度を目指すかということで発言させていただきたいと思います。
多くの働くお母さんたちが、正社員であっても一度はやめようと思ったりとか、違う働き方に変えないと続けられないということで悩んでいる。まだまだ同じような状況は続いているという中で、このような制度のあり方を考えていきますと、短時間で働きたいから130万の壁とか150万の壁を越えられないのではなくて、生活に支障があるほどの時間の数を働きたくないということであるというものを読み違えてはいけないと思います。
また、時間を抑えて働きたいということではなくて、損をしてまで働きたくないということなのではないかと思います。もらえないものはもらわない。もらえるものがそこにあるから、そこが日々の損にならないように働き方を抑えるということを続けているのではないかと思いました。
今は、今までの残業つきのフルタイムということのみが働き人であるという価値観を変えていく最後のチャンスなのではないかと思います。ちょうど働き方改革で、多くの企業が残業禁止とか、みんなで働く時間を抑えようと言っているこの流れにきちんと乗って、10年後、20年後を見据えて、今の若者たちがどのような働き方をすることで安心してきちんと働き続けられるかどうかということを考えた上で、制度をつくっていきたいと思います。さまざまな事情で専業主婦だけではなく小さな働き方をせざるを得ない方々は多くあり、その方々の能力も発揮することで、ようやく社会が成り立っていく。そういうことをつくっていかないと、高齢化社会を担っていけないのではないかと思いますので、小さく働いても、その分だけきちんと報われる。そのような制度を整えていけたらと思います。
以上です。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
では、河本構成員、お願いします。
○河本構成員 ありがとうございます。
先ほどおっしゃった論点の2点目の賃金要件について、資料1の5ページにある、最低賃金の推移を見ますと、2020年には月額8.8万円を超えてくることも想定されるということでございますので、この8.8万円の要件は、今回、見直す必要はないのではないかというふうに考えます。もともと国民年金保険料とのバランスを考慮すべきというお話もございましたので、そういうことも踏まえて、今回、賃金要件の見直しは不要なのではないかと考えます。
以上です。
○遠藤座長 どうもありがとうございます。
いかがでございましょうか。
それでは、荒井構成員、お願いします。
○荒井構成員 ありがとうございます。
○荒井構成員 ありがとうございます。
就業構造や就労意向について、厚生労働省で分析いただいて、まさに短時間労働者の方は多様なのだということが非常によくわかりました。これをどうやって考えていくかということだと思いますけれども、まず、1号被保険者として働いている方はどんな人なのかというと、資料2の6ページにありましたが、これも実は多様なのだということです。週20~30時間で働いている1号被保険者の方で、女性の有配偶者率は40%となっており、一番多くを占めています。この方々は扶養の範囲が余り関係ないと思うので、多く働ければ多くの収入を得ることが可能になるわけですけれども、子育てとか介護とかいろいろな事情があるので、働ける時間に制約があるということだと思っています。この方々がより多く働けるようになれば収入も増えますし、将来の安心にもつながっていくということだと思います。
一方で、シングルマザーの方は、ヒアリングにもございましたけれども、貧困率も相対的に高いという分析がございました。本来、扶養の範囲を意識しないで済むはずなのですが、それ以外にも、税金もありますし、児童扶養手当は満額をもらうと金額的にもかなり大きいので、こういうものを意識する方が多いということで、同じ1号被保険者の中でも色々な方がいらっしゃるのかなと思っています。
それから、3号被保険者は、扶養を外れていいと思えばより多く働こうということにつながるわけですが、こちらも子育てとか介護とか事情があり、1号被保険者と同じく働ける時間に制約があるのかなと思います。他方、配偶者の扶養の範囲内で働きたいと思っている人たちがやはり必ず一定程度いらっしゃって、この方々は世帯として収入を考えるので、就業調整しながら働いているということであります。
これほど多様な方がいらっしゃるということでありますけれども、求められるべきは本人あるいは世帯の収入を安定させて、将来の安心につなげていくことです。それをどうしていくのか。ただ、これだけ多様な方々がいるので、その多様な方々が柔軟に対応できるような社会の仕組みを考えていくことが必要かなと思っています。
それを適用拡大という一つの解で解決するというのは、非常に難しいのかなと思います。子育てとか介護の制約があるわけで、それを克服していくために何をしていくのか。それでより多く働いて安定した収入が得られるような形を考えていく、そのための柔軟な仕組みを考えていくべきではないかと思います。
長くなって申しわけありませんが、最後に1点、3号被保険者にはどうしても就労調整の問題が残ってしまうので、これは3号被保険者の制度自体をどうするかという大きな課題なのかなと思います。
以上でございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
それでは、原構成員、お願いいたします。
○原構成員 資料と御説明をありがとうございました。
資料1からということで、論点に沿ってそこの部分でちょっと整理したいと思うのですけれども、短時間労働者の方とか、被用者の多様性と社会保険適用ということで、まず、大きく考えたときに、社会保険の場合は適用事業所の要件があって、そこで強制適用か任意適用かに分かれているわけですが、適用事業所で働く人が被保険者になる。法改正後の短時間労働者の方について見れば、法人であれば企業規模要件が今、501人以上ですけれども、そういう線引きがなされたということで、今までの経緯があったと思うのです。
働く側から見ると、将来の、例えば公的年金であれば厚生年金というものが出て、厚生年金加入は大きいかと思いますし、また、健康保険においても、病気とかけがとかで働けなくなった場合の所得保障という傷病手当金が健保から出る。社会保険制度なので当然負担があって、給付にも反映されるという仕組みはまず、整理としてあると思います。
個人だけの給付とか、そういった問題だけではなく、年金制度とか、そういう社会保険制度全体で考えたときに、特に年金制度ではあるのですけれども、今後の場合においても、雇用者でありながら社会保険に加入できていない人たちが、労働時間の一定の要件とかはあると思うのですが、雇用者にふさわしい保障を広く受けられるようにしていくということが本来のあるべき姿なのではないか。つまり、適用拡大は進めていくべきではないかと私は考えます。
例えば資料1の6ページの円グラフで見ると、これは20時間以上という前提で見て、左側のほうなのですけれども、月額8.8万以上ということで、44.6%の人が国民年金第1号被保険者の人ということだと思うのですね。この方々は週20時間以上で、かつ賃金も8.8万円以上であるけれども、第1号被保険者のままです。これは雇用者というか被用者に近いということだと思うのですが、恐らくここでどうしてかというのは、推測するに、企業規模要件とか適用事業所の要件によって、第1号のままになっているということかと思います。そういった解釈でよろしいかということがあるのですが、したがって、現在で言えば、端的に言ってしまうと、501人という企業規模の要件が、改正によって入りましたけれども、やはり段階的に、いきなりは難しいかと思いますので、会社の負担もございますので、徐々にそこの部分を引き下げていくということは必要なのではないかと思います。
ただし、中小企業など、中小企業だけによらず、そういった負担面を考慮した経過措置とか、そういったもので段階的にやっていくことも必要かと思います。そして、何らかの支援が必要であれば、そういったことも検討されていくべきではないかと思います。
もう一つ、ここの論点の中に、賃金という要件がありましたもともと大枠の短時間労働者の適用については、労働時間とか労働日数がポイントになってきたわけです。何時間以上働くということで、30時間以上とか正社員の4分の3以上とか、そういったことがあったわけです。確かに後のヒアリングで出てくるかと思うのですけれども、賃金要件との二重の要件となると複雑になるというような声もヒアリングであったようなので、また、ほかにその他さまざまな問題、例えば賃金要件があると就業調整のラインとしてより強く意識されるということであれば、この加入要件は、私は、シンプルにもともとの時間という形で考えていってもいいのではないかというふうに思っていますので、その辺はまた今後、検討していかなければいけないのではないかと思っております。
以上でございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
そのほかに何か御意見はありますか。
それでは、平川構成員、平田構成員の順でお願いいたします。
平川構成員、どうぞ。
○平川構成員 ありがとうございます。
議論いただきたいポイントということに関して発言します。1ポツでありますけれども、やはり短時間労働者への適用拡大を確実に進めていくことは極めて重要だと思います。この間、社会保障を支える側に回るということが大変重要なポイントだと思います。それが社会の持続可能性を高めていくことにも大きく貢献をしていきますし、個人の立場に立っても、老後の安心ということも含め、こういうことがまずは大変重要になってくるということでありますので、基本的には適用の拡大は本当に積極的に進めていくべきと考えているところであります。
その上に立って、1つ目の賃金要件でありますけれども、原則全ての雇用労働者に社会保険を適用すべきということが、基本的に考えるべきことでありまして、その上に立って、では、適用基準として実務的に何が可能なのかということについてもしっかりと検討していくべきだと考えているところであります。年収要件としては、給与所得控除の最低保障以上のいずれに該当すれば社会保険を適用させるようにすべきだということも含めて、しっかりと検討していくべきと考えているところであります。
また、3ポツの制度施行に当たっての企業や行政としての取り組みでありますけれども、スライド11にもありますとおり、企業において、適用拡大のメリットに対して従業員にしっかりと説明したというところについては、会社としての総労働時間減少を食いとめたというアンケート結果もありますし、今後、企業もしくは労使による取り組みの意義は大変大きいのではないかと思っているところであります。行政としても、社会保険の適用の意義であるとか、改正法の趣旨、労働条件不利益変更の禁止についての効果的な周知ということについても、大変重要ではないかと考えているところであります。
同時に、適用拡大に加えまして、何回も言っておりますけれども、実務としての適用の促進も大変重要と思っています。制度的な適用の拡大によって、40万人ほどの方が新たに適用拡大になったというふうになっていますが、最近の調査で、厚生年金の適用の可能性がある者ということで、国民年金被保険者実態調査という推計が出されております。この間、年金機構の適用の促進によって、数十万人の方が新たに適用、加入指導によって被保険者がふえたという結果が出ておりますし、適用事業所に対する事業所調査をすることによって、適用事業所であっても未適用従業員がいるという実態もあり、それに対して適用の促進をした結果、数万人の方が新たに被保険者になったというようなこともありますが、そのほかにもまだ156万人の方が厚生年金の適用の可能性がある者がいるのではないかという調査もありますので、ぜひとも実務としての適用の促進も重要だということについても、意見として言わせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、お待たせしました。
平田構成員、どうぞ。
○平田構成員 資料1、2に関しては、働く側の観点から、適用拡大をどう考えるかということだと思います。働く側で適用拡大の対象になるのは、1号の方と3号の方ということですが、まず、1号の方については、本来1号被保険者として想定されていない方がこれだけ増えているということをきちんと考えていかなくてはいけないなと思います。その意味では拡大のほうが、これからの社会においては望ましいのではないかと考えています。
また、既に拡大が行われていて、例えば都市部であれば、働く場所を短時間労働者でもいろいろ選ぶことができますが、地方に行くと、働く場所が限られるので、例えば被保険者数501人以上の職場を物理的に選べない場合が出てきます。都市部だとそれが選べる。そのような差が出るのはどうかというようなことを思っています。
一方、3号の方に関しまして、これからの社会のあり方を考えると、一人一人が自分の足で生きていく。もちろん一人で生きよ、ということでなく、支え合いの仕組みとしていろいろなものがあるし、パートナーがあると思うのですが、家庭内の役割分担に引きずられるのではなくて、自分でどう生きていきたいのか。その中で、うちのパートナーのあり方はどうなのかと考えていく。そのようなことが長寿化に当たってはとても大事なのではないかと思っています。
実際、若いパートの方にお話を聞いていると、自分の保険に入りたいという方も一定数いらっしゃいます。企業の人事をされている方で、パートをたくさん雇用されている企業の人事の方も存じ上げていますが、女性が多いところですけれども、近年の流れとして、むしろ保険、年金に自分で入りたいという人が増えていると、実際の声としてお伺いしました。
その意味でも、私は、働く側の観点からは、適用拡大なのだろうなと思うのですけれども、一方、3号の中でも、少数かもしれないのですが、目の前の新たな保険料負担がとても大変だという家庭環境にある方もいらっしゃるのではないかと思います。それは適用拡大という観点ではなくて、みんなで生きていく社会という意味において、そこは別のなにがしかのフォローが必要だと思います。
最後に、制度施行に当たって、企業や行政としての取り組みに関してなのですが、一人一人が自分で立っていくに当たって、能力の向上や発揮はとても大事です。ただ、一方で、企業の側からすると、短時間であればあるほど、パートさんに対して本当に教育研修をたっぷり施しているという会社は非常に少数であるのが実際だと思います。
ですので、そこは行政がなにがしかの支援であるとかをすること。企業に対してかもしれないし、行政が直接そういったこれから適用拡大になっていく方々に対して施すかはわからないのですが、能力アップ、能力発揮のための支援というものが必要なのではないかと思っています。
以上です。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
それでは、菅原構成員、お願いいたします。
○菅原構成員 ありがとうございます。
これまで各構成員の方々がおっしゃっていたことも踏まえて、私もほぼ同じような意見なのですけれども、恐らく短時間労働者、パート・アルバイトといっても、その属性とか背景は非常に多様であることが、まずは非常によくわかったということだと思います。また、その属性によって、適用拡大に対する評価も大きく変わってくることも、もちろんわかったということだと思います。
無論、大前提として、個々人がみずからの意思に基づいて、みずからのライフスタイルに合わせた雇用や働き方のスタイルを選択して、かつ、その選択によって他者に比べて社会的に不利にならないような制度設計をしていくことが、もちろん社会政策上望ましいということも大前提としてあるのだと思います。
かつてのように、多くの男女が婚姻をして子供をもうけ、男性は働いて女性は専業主婦といったティピカルな標準型世帯、あるいは正規かつ長期雇用に支えられたような標準的な働き方をベースにして、我が国の社会保障制度はできてきたわけですけれども、先ほど荒井構成員もおっしゃっていましたが、こういった比較的均質でばらつきが小さい集団に対して、統一的・画一的な適用基準をもって運用してきても、大きな問題には恐らくこれまではならなかったのでしょうけれども、これまでのたくさんのヒアリング、議論の中から、各世帯の状況や背景、働き方に対する考え方、それから、雇用する側の企業側の多様性は非常に広がってしまったので、一つの適用拡大の基準をもってしても、その評価や影響については評価が非常に分かれてしまうということも、ごく自然なことだなと思いました。このような賛否や影響が相半ばする、ある意味では利害が錯綜する状況において、我々がどういう政策を今後考えていくべきかということについて、私自身は3点恐らく大事な点があるのだろうと思っています。
1つ目は、これは既に各構成員が指摘されていますけれども、恐らく現状ではなくて社会構造の変化やこれからの社会、働き方に対応した、将来に向けた政策、制度設計を議論するべきだという点がまず、1点目でございます。
2点目は、社会保障政策の一環としての社会保険制度、被用者保険ということを考えた場合に、相対的に社会的に厳しい状況に置かれている方、状況下の方々のメリットをそうではない、比較的恵まれた方々に対するデメリットよりもある一定程度優先することは、政策上許されるのではないかという点であります。
3点目は、生産年齢人口の急減とか、あるいは逼迫する非常に厳しい財政状況、世帯の変化ですね。そういった状況を考えますと、社会保障の前提として、機会主義的に制度に依存するということではなくて、原点として個人の自立を引き出す、個人の意欲を引き出すような人々のの就業意欲を妨げない制度にしたいということでございます。
前回、私、欠席させていただいたのですけれども、JILPTの調査等も子細に見ていきますと、これまでの適用拡大によって基本的には、全体として見れば手取り額維持のために労働時間をふやしたとか、就業調整ももちろんありましたけれども、全体としては労働時間をふやした方により大きく働いたという意味ではインセンティブが強く働いたような印象を持っております。
また、これまでのボリューム層として想定されている専業主婦、第3号被保険者を中心とした短時間労働者に関する制度のあり方は、これからの将来志向の政策としては、現状の変化あるいは将来的な変化を見越して見直していくべきではないかと思っております。
先ほど申しました2点目ですけれども、適用拡大の効果は、全体として相対的に低所得者の方、あるいは社会的困難層の方々の就労増加、メリットにつながったこと等を総合的に勘案しますと、「慎重に」という留保はもちろんつきますが、適用拡大の方向性に私は賛成でございます。
以上です。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
お待たせしました。土井構成員、どうぞ。
○土井構成員 ありがとうございます。
私のほうでは、企業の立場から発言させていただくのですが、まず、就業調整の部分なのですが、資料1の9ページ、10ページで、国民年金3号から1号、2号に移行した場合のシミュレーション的な資料をつけていただいているのです。当然ながらそれなりの収入を得られるためであれば、1号に行くよりは2号に行ったほうがいろいろ有利であるということは自明であって、むしろ就業調整で気になっているのは、主婦層が旦那さんの扶養に入ることを前提に就業調整をしてしまうということなので、恐らく手取りの減少であるとか、扶養に入っているときの健康保険とか、そういったところと比較しないと余り意味がないかなと思っております。
実際、現在、特に首都圏などでは、パートの時給は人手不足もあって非常に上がっております。その中で、パートさんの就業の時間を見てくると、東京ですと、ここ3年でパートの平均労働時間は下がっているのですね。例えば最低賃金の低い九州の都市であると、パートの就業時間は余り変わっていないといったこともありますので、このあたり、人手不足の中、あるいは多様なパートの方がいらっしゃる中で、就業時間がむしろ減っているということは、ある程度就業調整の影響も、如実にまだあるといったことであるのかなと思っております。
そういったこともございますし、確かに各構成員がおっしゃるように、将来的には主婦層のパートは減少していくのは間違いないのですが、現段階では非常に大きな戦力として、企業にとって活躍をしていただいているといった現状も踏まえた上で、慎重に御検討いただければと思っております。
また、賃金上昇ということで、3%で引き続き上昇するといったシミュレーションも出していただいております。現下の経営状況で、我々中小企業、小規模事業者のほうも一生懸命生産性を上げて従業員の処遇改善を行いたいと思っておりますが、やはり景気の先行きも、日銀短観を見れば非常に不透明な状況にもなっておりますので、政府の方針は方針として、3%で今後もずっと続いていけるといった予測だけで、この制度を考えるのは非常に危険なのかなと思っております。
実際問題、最低賃金は東京などでは非常に高いですが、まだまだ最低賃金の中央値、平均値ではなく中央値はまだ806円で、ようやく30年度で800円を超えたばかりでございますので、その点、特にどうしてもこういった労働の議論は、首都圏等の状況だけで行われることでありますが、地方の現状等も勘案いただいて御議論いただければと思っております。
以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
佐久間構成員、どうぞ。
○佐久間構成員 ありがとうございます。
私も皆さん方の御意見を拝聴させていただきまして、まず、資料ナンバー1と2の関係でいけば、やはり壁が幾つかある。そこの中で、結局は年収制限とか、金額的なものをつくっても、そこに合わせてきてしまうということは必ず出てくるのだろうなと。資料ナンバー1の8ページに掲載されています、いろいろ具体的な就業調整の理由。これは一覧になって、本当に見やすい資料になっているのです。社会保険の関係、それから、税の関係、配偶者、配偶者特別控除の関係とか、非常に見やすい資料なのかなと思います。やはり幾つになっても、幾らになっても就業調整の金額はどこかで出てくるのだろうなと。ですから、ここはやむを得ないのかなと。
賃金要件については、先ほども出ていましたとおり、年収8万8000円というのは、過去の国会での議論等々もあります。ここはいじらずに、このままの金額でお願いをしたいなと思います。
3番目の制度施行についてですけれども、やはり今、501人以上、また、500人以下の企業ですと、労使の合意によるわけですが、ここをどのような形にしていくのがよいのか。急激な変化は、中小企業にとって影響が大きいので、やはり猶予をお願いするとか、あとは段階的な適用をお願いする。そこによって、労働者の生活、また、これは企業としてもいい人材を集めるということにもつながってくると思うので、そういう面で、ここは段階適用または猶予措置とかをお願いしていくということなのかなと考えております。
以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
それでは、大体御意見を承ったということで、この議論についてはこれぐらいにさせていただきたいと思います。
続きまして、資料3「適用拡大が企業の経営や労務管理に与える影響について」の内容について議論したいと思います。
事務局から資料の説明をお願いします。
○山下年金局年金課企画官 ありがとうございます。
資料3のスライドを開いていただきたいと思います。「適用拡大が企業の経営や労務管理に与える影響について」ということで、今回、この資料は、企業の面から見た資料になります。
2枚目のスライドになりまして、まず、短時間労働者の適用に関する要件の中に、企業規模要件というものがあります。この企業規模要件の位置づけでありますけれども、中小の事業所への負担を考慮して、前回の改正で激変緩和の観点から段階的な拡大を進めていくために設定されているものでございます。このため、法律上、本則に書くということではなくて、当分の間の経過措置ということで規定されているというものでございます。
これに対してのヒアリングで出てきた意見なのですけれども、まず、500人という要件は実態に合っていないという意見があった一方で、社会保険の適用拡大は今の時点で考えてみると非常に困難。企業負担を軽減する措置とかいう切り口も必要なのではないか。それから、地方に多い中小企業者への企業負担の増大があるとか、地方の短時間労働者の雇用機会を失わせる可能性があるというような意見がありました。
次に、3枚目のスライドになりますけれども、501人以上、既にこの要件の結果、短時間労働者に対する被用者保険の適用を強制的にすることになった企業のアンケートから出てきているところなのですが、マル1で、社会保険の加入を望まないスタッフが転職してしまった。マル2で、同じ働き方をしたとしても、他社だと社会保険に加入しなくてよいとなると他社を選択するというようなケースもある。マル5、昨年1年間で費用負担は約2億円増加した。同じ小売業の中で、企業との間で費用負担の違いがあるのは懸念ですとの意見。マル7、同じグループ企業であっても規模によって社会保険の加入基準が異なっているから本人から不満の声が出てきたということがあります。
スライドの4が中小企業の経営環境ということで、さまざまな資料のデータから、中小企業の経営がどうなっているかということを示したデータでございます。
続きまして、スライドの5なのですけれども、労働の法律では、中小企業の適用を少し猶予するようなことをしているという例として、労働基準法。これは法定労働時間が週40時間になるというような例とか、次世代育成支援対策推進法、高年齢者の雇用安定の法律の中で、少し企業の規模によって変えているということを資料として用意しております。
今度は短時間労働者の他の要件のところについて、企業の労務管理からどう見ているのかという資料を用意してあります。7枚目のスライドなのですけれども、短時間労働者に対する適用の要件がマル1からマル4であります。
これについて、次の8枚目のスライドで、どういう意見があったかということで、既に強制適用となっている企業のアンケートから出てきたものでございます。賃金要件に関して出てきた意見としまして、マル1、時給改定によって対象になった場合に、本人の希望で勤務日数や時間を減らすということが出てくるのだと。マル3は、月額賃金を加入基準とすることは地域差もあって非常にわかりづらいという意見もありました。マル4で、労働時間と賃金と、二重の要件を考えなければいけないので、非常に複雑だという意見がありました。そのほかの要件に関しては、下のほうにありますが、学生かどうか個別確認をしなければいけないのですけれども、それが煩雑だという意見がありました。
次に、スライドの9枚目に移っていただきまして、ほかの要件について、その要件の実態をお伝えしている資料でございます。まず、1年以上の勤務期間要件の実態でございます。この勤務期間の要件なのですけれども、契約上の雇用期間が1年以上ある、そういった短時間労働者に対して適用しますよというだけではなくて、たとえ契約上の雇用期間が1年未満であったとしましても、その更新の可能性がある場合には、1年以上の見込みとしまして、その方にも健康保険・厚生年金保険の適用をしていくということとされています。
具体的には左下の適用拡大Q&Aをごらんいただきたいのですけれども、答え、アンサーのところで、雇用期間が1年未満である場合であっても、ア、その他の書面において契約が更新される旨または更新される場合がある旨が明示されている場合や、イとしまして、同様の雇用契約で既に働いている人が更新などにより1年以上雇用されている実績がある場合には、たとえ1年未満であったとしても、雇用期間が継続して1年以上見込まれるということで適用してくださいというようにやっているということでございます。
ちなみに、今、言った1年以上の勤務期間要件とは短時間労働者のことであって、現状、厚生年金保険上、フルタイムも含めて臨時で使用されている人は、2カ月以上使用されるのであれば被保険者として適用される。そういう規定が既にあるということも、参考までにお伝えいたします。
続きまして、10枚目のスライドで、学生アルバイトの就労状況と学生除外要件です。学生アルバイト、左下の円グラフをごらんいただきますと、時間とそれぞれ賃金で見ますと、例えば週労働時間が20時間以上で、かつ月額賃金が8.8万円以上のアルバイトをしている、パートをしている学生は、赤のところなのですけれども、3%程度でございます。
これはどうしてそうなるかといいますと、1つの背景としまして、扶養控除の控除額というものがあって、右側を見てみますと、特定扶養控除としまして、学生を扶養している親御さんが63万円の控除ができるのですけれども、その場合の学生自身の給与収入の上限は103万円となっていまして、これを超えてしまうと、扶養している親御さんから扶養が外れることになってしまって、親御さんの扶養控除ができないということになっていますが、こういったこともあるのではないか。
そのように見ると、逆に、20時間以上かつ8.8万円、それでも、8.8万円以上稼いでいる、もしくは稼がざるを得ないような学生の長期アルバイト、この3%の方々はどのような保障をすべきかというようなことも考える必要があるということで、こういう資料を用意してあります。
続きまして、12のスライドになりまして、今度は変わりまして被用者保険の適用事業所の話。今度は時間ではなくて、働く場所として被用者保険の適用があるものとないものがありますということでスライドを用意しております。
既に法人であれば、1人以上法人で働いているのであれば、どんな業種にもかかわらず強制的に被用者保険に入るということになっています。これが青色のAのところでございます。一方で、個人事業主の場合は、常時5人以上使用している事業所であり、かつ、法定16業種、これは1から16ということが個別に法律に書かれているのですけれども、この業種の場合には強制適用になる。その一方で、常時5人以上の者を使用する事業所であったとしても、左下の非適用業種のような業であれば強制適用ではないということでございます。同時に、個人事業主でも常時5人未満の人が働いている事業所であれば適用ではないということでございます。その一方で、こういったところであっても、自分のほうで社会保険に入るような、任意でこういった用意をすればできるというものがありまして、それが9万事業所あるということでございます。
これにつきまして、ヒアリングの結果、13枚目のスライドが出ていまして、全国社会保険労務士会連合会のほうでは、社会保険労務士事務所としては、5人以上働いているところは収入的にも安定しているのではないかという意見があった一方で、全国生活衛生同業組合中央会のヒアリングでは、適用拡大によって事業主の保険料がふえるということは、その経営実態から見るとなかなか非現実的な負担だということなので、現在の生活が脅かされないように検討が進むことを祈っていますという意見もありました。
続きまして、14枚目のスライドでして、被用者保険の適用事業所の範囲に関して、過去の国会答弁を用意しております。昭和60年の国会答弁でございますが、5人未満の事業所をどうして今回適用の対象とできなかったのか、その理由を問うたことに対する政府の答弁としまして、こういった事業所の場合には、雇用されているかどうかの事実の確認、把握が大変難しい。なぜなら、厚生年金をやる場合には、非常に長期間にわたってその方の標準報酬を決定して記録をずっと持っていくということで、その事務処理の体制がなかなかとりがたいという要素があるのではないかというふうに答弁している。
その一方で、では、法人に限った理由は何ですかという質問に対して、政府の答弁としまして、法人になっていると、帳簿を備えているとか、事務処理上もある程度の明確さがあるのではないかということ。その一方で、5人未満の個人事業所であれば、御家族中で仕事をやっているとか、例えば御夫婦で御商売をやっているような場合、それはちょっと明確ではないのではないかと。働いている人と御家族ということが明確ではないのではないかというような答弁をしています。
その一方で、法人の場合には、雇用実態の把握が比較的容易であり、また、事業所としての事務処理能力が一定程度期待できる、帳簿などのことで確認ができるということを答弁していまして、個人事業所については、法人の事業所の適用が円滑に行われました後の将来の検討課題として引き続き研究させていただきたい。そういう答弁をしているという事実を御紹介いたします。
続きまして、15枚目のスライドなのですけれども、非適用業種において、個人事業所となっている場合の規模について、多くの業種は従業員10人以上となっているこういった事業所は余りなくて、5%未満となっております。それぞれの業種ごとにどれだけの従業員がいるのかということをあらわした資料でございます。
これを踏まえまして、最後の16枚目のスライドで、今回、御議論いただきたいポイントとしまして、まずは働く時間の関係で言うと、その対象企業の範囲について、中小企業の経営に対する影響や、今後の対応のあり方を踏まえてどう考えますかということ。2番目としまして、働く時間の関係で、その他の要件としまして、時間要件、賃金要件、勤務期間要件、学生除外の要件とありましたが、その運用の実態を紹介しましたけれども、それを踏まえて見直す場合の企業への影響などについてどう考えるのかということ。最後に、今度は働く場所の関係でございますが、現行このようになっている制度の妥当性や見直す場合の事業主への影響についてどう考えるのかということを御議論いただきたいポイントとして用意しております。
事務局からの説明は以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの報告につきまして、御質問、御意見等をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。
○海老原構成員 質問させてもらってもいいですか。
○遠藤座長 もちろんです。
それでは、海老原構成員、どうぞ。
○海老原構成員 生活衛生営業の件ですけれども、事業所数だと確かに5人以上のところが少なくなっているのですが、従業員の働いている者だとどのぐらいになりますか。例えば事業所数が少ないけれども5人、10人、100人と働いていると、従業員数だとかなりの人数になると思うのです。これはどうですか。15ページです。
○山下年金局年金課企画官 従業員総数ということですね。
○海老原構成員 そうです。
○山下年金局年金課企画官 現在、手元に資料は資料がありませんけれども、それは事業所数がすごく多いところでございますので、それだけ従業員、たとえ1事業所の従業員は少なくあっても、事業所数が多いわけですから、結構な人数がここのところにいらっしゃるということでございます。
○海老原構成員 そうすると、ここにもし適用拡大をすると、かなり加入者拡大すると同時に労働者の保護にもなるのではないか。そう思うのですか。
○山下年金局年金課企画官 一方で、今、海老原構成員からありましたけれども、これは個人事業所だけですから、この中には例えば法人になっている飲食店、法人となっている床屋さんとかは除いていますので、個人のものですから、そういったものもあるということでございますが、確かにおっしゃるとおり、こういうところで働く、フルタイムで働く方も、それなりにいらっしゃるということでございます。
○海老原構成員 もう少し話してもいいですか。
○遠藤座長 もちろん、どうぞ。
○海老原構成員 地方で中小企業と話をするのですけれども、100人を超えるともうその土地の大企業なのですね。かなり大きくて名士なのです。商工会とかでも幅をきかせている人たちが多いのです。そういう状況の中で、500人未満の企業を中小だと一くくりにしてしまうのはちょっと違う気がするのです。今、調べると、民間従業者のうち100人以上の事業所で働いている人たちが大体半数。民間に限ってですがね、公務員、公的事業を除いてね。そうすると、n100人未満の事業所がまた半分。だから、50%がちょうど100人以下か、以上かになるわけなのです。
こういう形になると何がいいかと私が考えるのは、その本人の特性に応じて、半々だから、どちらに行こうかと選べるようになるのです。今、短時間労働者の社保適用は500人以上ですね。これだと、かなり定員が少ないので、例えば短時間だけれども保険に入りたいとそういう事業所を探しても、なかなか当たらないわけなのです。ちょうど半々ぐらいの線だと、個人の希望に応じて、どちらも洗濯できるから、そういう線引きが多様な働き方実現にはいいかないみたいに考えているのです。
もう一つなのですけれども、働き手に年齢や子供がいるか、いないかということを保険適用の一つ要件にすべきではないかとも思っております。例えば正社員就業をしようと思って、高いお金を稼ごうとしても、やはり50歳とかで、しかも育児による職務ブランクがあって、10年間子育てをしていたとしたら、男でもなかなか雇ってもらえないご時世です。そう考えると、そういう方たちは、やはり短時間労働で、3号でという形を選ばざるを得なくなるということがあるから、年齢という要件も一つありそうな気がするのですね。
また、育児期の子供がいる人たちに対しては、将来の年金財政を子供らが賄ってくれるということもあるし、また家庭内では育児費用もかかるということもあるので、彼・彼女たちに対して、社保の免除とかも考えたらどうかとか思うのです。つまりこうした人たちには3号要件を緩和するという考え方ですね。そうやっていくと、例えば子供を産むと3号保険に入り易くなるとか、100名未満の中小企業に行ったほうが3号のままでいられるとか、ハンデある人・企業の救済策になるかもしれないし、いい誘導になるかと思うのです。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。あるいはただいまの海老原構成員の言われた御意見についての御意見でも結構でございます。
事務局、どうぞ。
○伊澤年金局年金課長 事務局でございます。
済みません。その前提として、少し事務局のほうで補足させていただこうと思いましたのが、海老原構成員がおっしゃっているのは、恐らく個人レベルの話が最後のほうに入っていたように思いますので、そこを整理させていただければと思います。
○海老原構成員 ごめんなさい。そうですね。確かに個人が選ぶという観点はそうですが、そのように分かれていると選べるのではないかという企業の問題でもあるかと思っています。
○伊澤年金局年金課長 ただ、企業がどういう人を選ぶかということは事前にこちらも把握のしようがありませんので、適用事業所として短時間労働者の適用対象とするか否かという議論をまずは整理していただいた上で、事業所があるAさんを雇ったときに、Aさんを具体的に適用の対象にするかどうかという議論の順番かと思います。
○海老原構成員 最後のところですね。
○伊澤年金局年金課長 我々の世界だとオプトアウトみたいな言い方をするのですけれども、そこの部分を構成員は最後におっしゃっていたのかなというふうに思っていますので、御議論に当たっては、両者を整理して議論しないと、ちょっと混乱を来す可能性がありますので、事務局的に少し議論を整理させていただければと思います。
○海老原構成員 そうですね。失礼いたしました。
○遠藤座長 海老原構成員、何かありますか。
○海老原構成員 おっしゃるとおりだと思います。
企業の側、最後のところを抜かして前のほうの話ですけれども、例えば100人未満が不適用に、適用拡大されないままになったとすると、それをうたい文句にする企業も出ると思うのです。うちなら、週20時間以上働いても保険に入らなくて済むのですよと。それはそれで一つの人員獲得策になるのではないかと私は思っています。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
それでは、荒井構成員、どうぞ。
○荒井構成員 ありがとうございます。
適用拡大の議論の中で、企業側の、中小企業の負担という議論を当然考慮しなければいけないわけですので、今日はこういう形でいろいろと分析をしていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
けちを付けるわけではないのですが、御説明いただいた中で、企業の景況感等の認識は一致する部分もあるのですけれども、例えば、倒産件数が減っているような御説明がありましたが、今、倒産はずっと減ってきているのですが、個人保証の問題とかがあって、倒産まで頑張ると自分の財産が全部差し押さえられてその後の生活ができないことから、代わりに廃業が非常に増えているということであるとか、経常利益を実額で比べていますけれども、やはり我々が考えるときは利益率とかで見ていくのが普通だと思いまして、利益率は全体としてはよくなってきてはいるものの大企業と中小企業の差は拡大しているということとか、こういったことが実態なのだと思っています。
あと、資料にはありませんけれども、労働分配率を見ると、大企業は4割ぐらいですけれども、中小企業は利幅が少ないため、7割を超えており、かつかつの状況という中で、実際、保険料増加のインパクトはどのぐらいあるのかなということです。
以前の資料に、前回の適用拡大のときの人数と事業主負担の額の御紹介がありましたが、これを1人あたりで割り戻すと、年間で24万円ぐらい増加することになると思います。特にパート比率の高い小売業の利益率は、資本金1億円以下のところで1%から1.5%ぐらいというのが大体のところだと思いますので、1億円の売上があっても、利益が100万円しかないわけです。ちなみに、売上1億円というのは、実はそんなに大きくなくて、町なかのコンビニとかが多分、そのぐらいの売上だと思います。したがって、1人当たり24万円の増加というインパクトをよく認識をした上で議論をしていくというか、共通の認識を持たないといけないのかなと思っています。
また、今、最低賃金の議論が出ていますけれども、他にも消費税の軽減税率とかキャッシュレスとか、企業が対応しなければいけない課題は色々とあります。今は人手不足ですから、企業も人件費に回せる額を増やすことに一生懸命取り組んでいかないといけないわけですが、それは本来、生産性の向上等が伴わないといけないということだと思います。
社会保障のためとはいっても、負担には限度というものもありますので、生産性を国全体として上げていく、そういうことをやっていかないといけないので、企業の実態、負担の実態をよく御認識いただいた上での議論というものが必要かなと思っています。
それから、個別の要件はそれぞれいろいろな過去の事情や経緯があってできているものだと思いますけれども、一点だけ、学生要件の話についてです。学生は近い将来社会人になって、社会人になれば社会保険の適用を基本的には受けるはずなので、そこでしっかり働いて収入を得て、将来の安心を確保していくということで、パートの方と一緒に議論するというのはちょっと無理があるかなという感じがしています。先ほど御説明の中で、学生さんで親の扶養手当の問題があって、それでも多く働いているという話がありました。苦学生みたいな方なのかもしれませんけれども、もしそういう方がいるのであれば、そういう学生さんをどのように社会としてサポートしていくかというアプローチであるべきで、適用拡大で解決を図ろうということではないのかなという気はしています。
あとは社会保険の手続の問題もありますので、学生さんは夏休みにたくさん働くけれども、試験の前になると急に働けなくなるといった問題や、大学生は同じところで働いても、普通は最長で4年間であるといった、定着の問題もあります。学生に限った問題ではないのですけれども、事務負担ということもしっかり考えていかないといけないのかなと思っております。
以上でございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
菅原構成員、どうぞ。
○菅原構成員 私も大学の教員をしているので、学生さんの普段の生活などを通じてアルバイトの実態を見聞きすることが多いのですけれども、今の荒井構成員のお話で言うと、まず、本当に学生さんの属性も多様化していまして、苦学生ではなくても、昔よりも夜間の大学院に通われたりとか、あるいは通信教育の学生さんだったり、学生という資格を持つことは、いろいろなやり方があるということで、大分変わってきているということもあります。
昼間で、4年間で卒業する大学生だけが単純に学生ではないということがまずは第1点です。この学生を適用対象外とすること、7枚目のスライドで、なぜ対象外になったかが赤字で書かれていますが、短期間で資格変更が生じる、手続が煩雑となるというのが一つの大きい要件になっているわけですけれども、例えば今の大学生は、大卒で3年以内の離職率、3年以内にやめてしまうという者が大体30%を超えているのです。つまり、そもそも企業に入っても長く勤めないという人がふえている。1年以内に離職をしている人たちは、企業によりますし、ばらつきはあるものの10%から30%ぐらい現実にいるということもございます。
ですので、その点に関して言うと、短い期間でどんどん変わるから、アルバイトは適用除外というところに関しての合理性は、少し慎重に見ていかなければいけないかなと。要するに、今、アルバイトに限らず、転職を若い人たちは非常に頻繁にやるという現状もありますので、それがこのアルバイト学生、短時間労働者の適用除外の要件の理由になっているということに関しては若干違和感があるということです。
それから、8枚目のスライドを見ますと、その他の要件に関するものとして、一番下に「学生かどうかの個別確認が煩雑だ」ということがあるわけです。確かにそうなのですが、例えば定期を買うときでも、ボーリングをするときでも、映画のチケットを買うときでも、学生証をぱっと見せて確認するというのは、日常生活の中でどこの事業所でもそれほど手間をかけないでやっていることなので、ここの部分だけ学生かどうかの個別確認が煩雑だという論理はちょっと何となく違和感がございます。
以上です。
○遠藤座長 どうもありがとうございます。
ほかにいかがでございますか。
それでは、土井構成員、お願いいたします。
○土井構成員 ありがとうございます。
資料で言うと15ページになるのですが、非適用業種の拡大のところで一言申し上げたいと思います。具体的に拡大したときの影響ということで、端的に我々の組織の会員の状況で申し上げますと、代表的なもので、飲食店であると、会員のうち81.5%が個人事業主、あるいは宿泊業でも61%が個人事業主。娯楽業以外のサービス業でも65%ということで、主に理美容、クリーニングとか、そういった業種です。そこが従業員をどれぐらい抱えているかといったデータをきょうは持ち合わせていないのですが、それなりに我々の地域でそういった業をなされているという方たちですので、しかもサービス業ということなので、従業員がゼロと、家族だけでやっているというパターンだとなかなか成り立たないということもあって、多かれ少なかれ従業員を抱えていると思っております。
そういったことと、業種的には恐らく昔は離職、就職が非常に激しい業種であったといったようなことで、こういった形で適用除外という形にはなっているのだと思います。確かに現在の状況は、割とこの辺も近代化をされておりますので、なかなか社会政策上、ここだけ何でといった議論はあるのは承知しておりますけれども、やはり今までずっとやってきた経緯もございますので、その辺、どれぐらいここに影響が出るのか、具体的な雇用実態であるとか、そういったところもお調べいただいた上で、もうちょっと突っ込んでこちらは議論していただければと思っております。
以上です。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
○海老原構成員 ちょっとお聞きしてもよろしいですか。
○遠藤座長 先に永井構成員ですね。
永井構成員、海老原構成員の順でお願いいたします。
○永井構成員 ありがとうございます。
中小企業に関することで御意見を申し上げたいと思います。
我々、私どもの組織といたしましては、被用者であれば被用者保険に適用されるべきと考えておりますし、どの業種でも、どんな事業主のもとでも適用されるべきだと考えております。よって、企業規模要件は、今は経過措置、激変緩和措置であるという認識を新たにしたいと思っております。社会保険は、被保険者としての要件を満たす者には一様に適用されるべきであると考えておりますし、転職する場合や再就職する場合、企業規模の大小で選択肢を狭めるようなことは合理性がないのではと考えております。
例えば主婦向けの再就職セミナーのようなものに顔を出しますと、今では501人以上のところでは、適用拡大がされていますというようなことをしっかり講師の方が再就職を求める主婦の皆さん方に教えているといった現状もありまして、かなりこの辺については検討を急ぐべきではないかなと思っております。やはり500人というところについては早くするべきではないかと思っております。
一方で、中小企業の負担がふえるということについてはしっかり支援がされるべきだと思っております。社会保険は社会連帯の仕組みでございまして、中小企業への支援は経済政策、税制、雇用政策などといった別の形で行うべきだと考えております。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、お待たせしました。海老原構成員。
○海老原構成員 適用拡大の件、業種の件で先ほども私が申し上げた、そこの話で、お答えになった方は何とおっしゃいましたか。白髪の男性。
○遠藤座長 土井構成員です。
○海老原構成員 土井構成員に少し伺いたいのですけれども、生活衛生営業の個人事業者はフルタイマーでも今、入っていないわけですね。従業員数5人を超える、かつフルタイマーでも個人事業主の場合は、この業種にかかわった人たちは入っていないわけですね。そうすると、これは例えば健康保険も年金も全部自分で払っているわけだし、もう少し行くと、遺族年金もしくは障害年金なども今の状態だと非常に乏しい状態ですね。普通の業種は5人を超えたら入っているのは当たり前で、なぜここだけ労働者がかなり乱雑に扱われているのかということがちょっとわからないのですけれども、質問です。
○遠藤座長 土井構成員。
○土井構成員 これは私がお答えするよりは、制度の問題ですので。
○遠藤座長 それでは、事務局、何かコメントがありますか。
○山下年金局年金課企画官 この業種につきましては、政策上、個々の、これまで健康保険、厚生年金、全てにおいて、戦前からある制度ですので、新しく事業がなったときに追加していったのですけれども、これまで最新で追加したときの年は昭和28年。そのときに社会福祉というものを入れたという以降は、作業の進展に伴って、本来そういうことを見ていかなければいけないのですけれども、行っていなかったということがあります。
逆に言うと、だからこそ、そのときに、もう既にあった事業というものがずっと残っている。そういった経緯がございます。
○海老原構成員 労働者保護とか、もしくは労働者の老後の安定とか、そういうことをいろいろ考えたときに、今の状態はかなり危険ではないですか。
○山下年金局年金課企画官 確かにそこで働く方々の保障というと、ほかの産業で働くような方々と比べると大きな違いが出ている。まさにそういった状況について、今のままでいいのかという考えもありますので、まさに働き方の多様化は、時間だけではなくて働く場所で被用者、同じような働き方をしているにもかかわらず保障が違うということを議論いただきたいということもあって、これを論点として出させていただいているということでございます。
○海老原構成員 ありがとうございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ぜひこの場で議論したいと思います。
それでは、平川構成員。
○平川構成員 ありがとうございます。
適用拡大が企業の経営や労務管理に与える影響というところでありますけれども、基本的には、経営の問題であるとかいうことに関しては別な政策、支援策の問題であって、社会保険という誰もが支え合う、両手で支え合う制度の中で、例えば企業規模であるとか中小企業であるとか、業種であるとかいうことによって差をつけるような仕組みはなくしていくということが原則なのではないかと思っています。
また、勤務期間の問題でありますけれども、1年以上と見込まれるということが要件とされておりますが、これは雇用保険の適用基準、多分、2007年ごろだと思いますが、それを参考にしたものだと認識しておりますが、先ほど説明がありましたが、実務として2カ月ぐらい勤務が見込まれるような状況であってもしっかりと適用されるということもありますので、ぜひともこれについては、少なくとも雇用保険法並びの要件ということで、緩和していくべきではないかと思っているところであります。
また、学生でありますけれども、今、さまざまな御意見がありましたが、これからはリカレントであるとか学び直しということが大変大きなテーマになってくるということであります。学生像が多様化しているという状況もありますので、一律に適用除外とするのは問題だと思っていますので、見直すべきだと思っています。
それから、強制適用事業所の範囲でありますけれども、常時5人未満の個人事業所を含めてしっかりと適用対象ということを基本的に実施していくべきだというふうに思っているところであります。5人以上の個人事業所についても、現状適用されていないところがあるということについては、これはしっかりと撤廃をしていくということもありますし、5人未満であってもしっかりと適用の対象に向けて検討していくということは重要だと思っているところであります。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
海上構成員、お願いします。
○海上構成員 企業経営者の観点から、再度、先ほどの資料に戻ってみたいのですけれども、資料2の8ページ、国民年金第3号被保険者の就業状況です。これを見て、改めてといいますか再認識する点は、女性全体の3割、配偶者ありの女性の半数が第3号ということで、潜在的な労働力が厚く控えている。しかも、右側のグラフでみると、40代~50代の方々は、なるべく長めに働きたくて上限に張りついているようなイメージに見えます。年代が上がるにつれて、不就労、就業希望がありながら働けない人が減っていくのはいいが、やっと希望がかなって働き始めた人は天井に張りついて自制している。なにか非常にもったいない状況に見えます。また、資料1の8ページを見ても、制度改正で配偶者控除が150万円になって、働き方を変える意向をもつ人たちも、基本的には就労時間を増やす方向で考えていらっしゃる。上限に張り付いて、それが開くのを待っている方々が数多くいるということです。
言うまでもなく、今、日本は人手不足ですよね。人手不足で企業経営者は本当につらい状況です。人件費はコストだから増えるのは困るという見方があるのは当然ですけれども、人に掛けるおカネは投資でもある。今はもう受注が取れないのです。人がいないから。つまり、人がいれば仕事を受けることができて、売り上げが上がる。売り上げが上がり、掛けた人件費以上の利益が上がるわけですね。その状態に入れない。それで今、企業は非常に困っている。このことを思えば、この潜在的な労働力の状態が非常にもったいないなと考えられます。人件費というものは、教科書的には、確かに利益の圧迫要因ではありますが、それを置いても人をとりたいという経営者は、基本的に、増える人件費を上回る見込みや価値があるから、人をとろうという気持ちがあるわけですね。
今、中小企業者の人手不足は、先ほどお示しいただいた経済指標や、調査機関各社の指標を見ても、例えば、中小企業の大卒求人倍率が10倍近い。そんな状況になっている中で、今、経営者は何を望んでいらっしゃるのか。
私もこういう委員を拝命しましたし、いろいろな場面で、経営者の方々と本音の話をする機会をもっています。そうすると、彼らはやはり、もちろん人件費は負担だけれども、パートの方々とも、もっと長く同志として一緒に仕事をして頑張りたいと。これから責任を持ってもらいたいし、頑張ってもらいたいと思うけれども、「ごめんなさい、時間ですので、ここで帰らなければいけないのです」と言って帰られてしまうのが残念ですと。特に女性経営者の方と話をすると、女性の幹部をもっと登用したいそうですが、そういう状況ではなかなか難しいとか、そんな声を聞きます。今回の適用拡大が、すなわち直接的にその問題を改善するとは限りませんけれども、仕事に対する意識を働き手とお互いに協調したい、共有したいというか、そうした環境になることを望んでいらっしゃる経営者さんもいらっしゃるのですね。
だから、両面があって、コスト圧迫要因で大変だという方もいらっしゃるし、逆の方向性で考えていらっしゃる方も確かにいるということで、巷の経営者の声を御披露させていただきました。以上です。○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
それでは、原構成員、それから、藤井構成員の順番でお願いいたします。
○原構成員 ありがとうございます。
私からは、企業の規模の部分については、先ほどの発言の中に含めていますので、今回はそれ以外のところで、適用事業所ということで言った場合に、まず、先に法人以外といいますか、最後のほうで出てきた非適用業種について、働く人の側に立ってみると、どこで働くか、どういう事業所で働くか、強制適用事業所なのか、任意適用事業所なのかによって、自分が社会保険に入るか、入らないかが分かれてしまうということがあるかと思います。もちろん一定の時間とかの要件はありますけれども。 先ほどおっしゃったとおり、フルタイムで働いていても、そこが非適用業種であれば、社会保険に入らないということだと思うのですが、そういったところで見てみると、ヒアリングでも、例えば5人以上で見た場合は、個人事業所といってもかなり収入的には安定しているのではないかというようなヒアリング回答があったというように先ほどご紹介がありました。
やはりそういった意味で、非適用業種の個人事業所についてはずいぶん前に定まったままで、そのままずっと手がつけられていない状態です。家族でやっている所もあるかと思いますが、一方で、5人以上となってくると、かなり雇用的な人が多くなってくると思います。
雇用保険には入っていても、社会保険は入らないというようなことが生じているわけですので、そういった意味では、やはり、5人以上ということで考えると、かなり雇用的な方、家族以外の方が入っているだろうと思われます。時代も変わってきていますので、また、法人化されているところも今はあると思いますので、個人事業所については、法定16業種とか5人とか、そういう線引きは大分前に決められたということも考えて、このあたりについては、やはり現代に合ったような形で、特にフルタイムで働いているような雇用者の方もいらっしゃると思いますので、そういった意味では、ここの部分も見直し、検討が必要ではないかと思います。
また、それ以外の要件で言うと、先ほども出てきましたが、1年以上の見込みの要件。9ページとか学生要件の10ページのところですけれども、やはり1年以上の見込み要件は先ほども出てきましたが、9ページにあるとおり、契約上の更新される場合があるとか、雇用契約書に書くと思うのですが、ただ、実際は上のほうにありますが、1年未満の人の多くが契約更新の結果として1年以上在籍していたり、なかなか読めない部分が最初はあると思うのです。
なので、1年以上の見込み要件という部分は、要るのかなということがあります。最初でわかるのかなという部分があるので、この辺も見直してもいいのではないかと思いますし、学生の要件についても、このグラフを見ると20時間未満の人が多いです。また学生については、社会人になって大学院に入ったとか、そういう人も今はいるので、学生だからというだけで適用を外すという部分も、もう少し今の時代風に見直してもいいのではないかと思います。結果として余りたくさん働いていないと言ったら変ですが、20時間未満の方が多くなっています。円グラフを見る限りは多いので、ちょっとここも違和感があるというか、違う意味で違和感があるので、そういった意味では学生要件の除外も広く今の時代に合わせて見直してもいいのではないかと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、藤井構成員、お待たせいたしました。
○藤井構成員 私も、先ほどの資料1、資料2も含めて大変工夫した資料をいろいろ出していただいて、また、ほかの先生方の御意見をいろいろ拝聴しておりまして、私も短時間労働者の就労状況とか、あるいは働き方の多様化とか、改めて認識をした次第でございまして、ありがとうございました。
私も適用拡大という方向が、政策的な一つの方向として当然あり得るというのは理解をしていますけれども、具体的に議論をしていくに当たっては、いろいろな切り口があるなということも改めて認識をさせていただきましたので、以前にも申し上げたことですけれども、個別の要件のあり方等々を議論するに当たりまして、それぞれの要件をどのように動かしたらどんな影響が出るのか、どんな組み合わせでやったらどんな影響が出るのかというところを、医療保険財政はもちろん含めて、ぜひ丁寧に試算なりシミュレーションなりをしていただければありがたいと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
それでは、佐久間構成員、お願いします。
○佐久間構成員 ありがとうございます。
まず、中小企業への短時間労働者に対する適用拡大ですけれども、これは先ほど申し上げましたとおり、段階的に対象にするとか、何かしらの猶予をお願いしたいと思っております。先ほど海老原先生が発言されましたけれども、本当に地方においては、100人規模になれば地域の有力企業となります。こういう企業は、厚生年金にはほとんどの企業が入っていると思います。その中で、パートタイマーを利用する小売、スーパー関係には影響が出ることが予想されますので、先ほど申し上げたとおり、段階的に、急激に実施していくと影響も出てくるので、その辺の猶予措置をお願いしたいと考えております。
あと、2番目に学生除外の関係です。個人の就労状況等に着目したということを述べられていましたが、学生の中には苦学生なども当然いらっしゃると思います。また、外国人の留学生の関係とか、そういうものでフルに働いていて、年収が多いということもあると思います。
ただ、一般的に学生、8万8000円という月額ですと、かなり就業していないと、そこの基準まで行かないのかなというふうに思っていますので、それなりに留意しながら適用をされるのもやむを得ないのではないかと考えます。これはちょっと、私のこの場で、個人的なことを言って申しわけないのですけれども、ちょうど私には、大学生の子供がおりまして、これから二十になったら国民年金を払わなければいけないということになったときに、これから数年後、適用になったときに、会社から、8.8万円を超えればアルバイト先から天引きでもらうので、天引きなので親の負担は個人的には減るかなとかいうふうには思ったのですが・・。これは余談になりまして申しわけございません。ちゃんと厚生年金も払った上で、国民年金も適用されるということになるわけですから、基準を超えて収入がある場合には、そういうものもあるのかなと。
それから、一番重要なところは12ページにありました5人以上の者の個人事業主の関係でございます。これは最初の会議体から私も特に心配していて、意見で申し上げたと思うのですけれども、そこの中で、ヒアリングの際には、全国の生活衛生同業組合連合会にいらっしゃっていただいて、基本的には現在の基準等を守ってもらいたい。このままの適用で進んでもらいたい。ただし、やはり人手不足や人材育成のためには、労働者を集めなければいけない、従業員の方を集めなければいけない、世の中の流れだということで、全国生活衛生同業組合連合会は、社会保険への加入を勧奨する中で、いい資料をつくられて呼びかけていると思います。
この中には18業種、ラーメン屋さんとか旅館・ホテル、それから、クリーニングとか、本当に従業員規模等の小さい業種が入っております。そこの中で5人ぐらい抱えていればそれなりの企業体としての効果が出てくるのではないかと思っていますけれども、やはり18業種の、これも一つひとつに全国組織があるわけです。この意向を私は非常に気になるところでございます。私たちの会員でも、旅館・ホテル業の組合があります。厚生年金保険料等をこれ以上、上げられては経営が厳しいという意見を結構、聞いております。そこの中で、全国生活衛生同業組合連合会のヒアリングでは、まあまあ厳しいけれども最終的にはやむを得ないのかなというのも傾向としてお声があったのではと思います。
この辺の業種を十分考慮していただいて、そして、先ほど議論がありましたとおり、これらの生活衛生業種は、古くから厚生労働省の所管業種でございます。なかなかできにくいというところもあると思いますので、こういうものがあれば、やっていただきたいと思っています。
ただし、これは法人の場合ですと、適用業者は法人の経営者も厚生年金に加入ができると思います。個人事業主が、適用となり加入した場合、個人事業主に雇用されている労働者は厚生年金に入っても、個人事業主は国民年金のままだと、やはり将来の生活に不安があると思いますので、そこは個人事業主も厚生年金のほうに、労働者性とかそういうものがあると思うので、なかなか難しいかもしれませんけれども、ぜひ個人事業主自体も、5人いれば労働者と一緒に入れるような工夫がお願いできたらというふうに思います。
以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
まだ御意見があるかと思いますけれども、もう一つアジェンダがありますので、本日はこれぐらいにさせていただいて、次の課題に進みたいと思います。
次は資料4「働き方の多様化と社会保険における対応について」です。これについて、事務局から説明をお願いいたします。
○山下年金局年金課企画官 今度は資料4のデータをおあけいただきたいと思います。
働き方の多様化ということでございますが、スライドの1なのですけれども、関係団体のヒアリングの中で、例えばプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会のほうからは、シニアの方も誰もがフリーランスになり得ることもあるし、子育て中の女性とか介護と両立する男女を問わず、そういった中でもフリーランスになる可能性があります。そのために、働き方に中立な社会保険制度の実現をしていただきたいという意見がありました。
また、兼業・副業はいろいろな事業者のほうで、働いている方の中で起きていますということ。さらに、副業・兼業について、一つの企業で15時間、また、もう一つの企業で15時間働ければ通算30時間働くということで、そういった通算するということを含めて仕組みを構築していただきたいという意見もありました。
続きまして、資料のスライド3ですけれども、最初に、複数の事業所、いわゆる兼業・副業の状況について資料をまとめております。3枚目のスライドですけれども、近年では複数就業者のうち本業も副業も人に雇われて働いているという方は増加傾向にある。複数働いているという方の中には、比較的所得が低いところと、また、比較的所得が高いところがあるということでございます。
続きまして、4枚目のスライドです。複数の事業所で被用者保険の適用要件を満たす方に対して、事務はどうなっているのかといいますと、健康保険・厚生年金の適用要件は事業所ごとに判断をしておりまして、合算はしていない。そのときに、適用はどうしているかといいますと、被保険者の本人がそれぞれのどちらかの医療保険者や管轄の年金事務所を選択して届け出を行う。その結果、選択された側で、各事業所の報酬月額を合算して標準報酬月額を定めて、今度は案分をしてそれぞれの働いている方の事業所に通知をしまして、それぞれの事業所が保険料を支払う。つまり、報酬から天引きをする。そういう手続になっているということでございます。
その次の5枚目の資料なのですけれども、こうした方々、複数事業所で厚生年金の適用となっている方々につきましては、8万8000人いらっしゃるということでございます。
次に、6枚目のスライドで501人以上の企業に対してのアンケートの中で、この2以上の事業所で働く勤務者に関してどういう意見があったのかということでまとめたのですけれども、総じて非常に複雑で時間がかかるし、また、やった仕事がひっくり返るというようなことがあって煩雑だし負担だというような意見が出てきているということでございます。
次に7枚目のスライドで、今度は通算をすることについての話でございます。副業・兼業それぞれで働く、複数で働くことについて、特に国民年金1号の方々は、一つの場所で働いても日々の生活を維持できないという方が多い。その一方で、国民年金3号の方々は、そういった割合がちょっと低くなるということでございます。
そこで、労働時間を通算して社会保険を適用されることについてどう考えるのかというと、国民年金1号の方々は44.3%の方が望ましいと思う。その一方で、国民年金3号の方は、大半の多くの58.5%の方は、それについてはちょっと何とも言えない、わからないという回答をしているということでございます。
複数の事業所で雇用される人に対してどのように社会保険上扱うのかということは、厚生年金・健康保険だけではなくて、雇用保険のほうでも課題になっていまして、8枚目のスライドは雇用保険のほうでもこういう検討会を開いているということでございます。
9枚目のスライドはその報告書の概要なのですが、右下の考察で、そうはいっても検討した一方で、複数の事業所でやるというのは、まず、本人の申し出が起点となって合算するか、しないかとなってしまいますので、逆に言うと、申し出をしない、するということは本人で決まってしまう。強制適用の社会保険からすると、逆選択とかモラルハザードが懸念されるのではないかということなので、これをどうするかということは、試行的に何らかの制度導入ができないかということを考えてはどうかという報告書があるということを御紹介いたします。
続きまして、11枚目のスライド以降は雇用類似の働き方、いわゆるフリーランスのような働き方をしている人についての資料でございます。
12枚目のスライドなのですけれども、独立の自営業者等を続ける上での問題点としては、収入が不安定、仕事を失ったときの失業保険や、あとは労災がないというようなことで心配しているという方が多いという資料でございます。
続きまして、13枚目の資料なのですが、雇用類似の働き方をしているというけれども、それぞれ自営業者もしくは個人でやっているという方を、どういう働き方で、どれぐらいの人数がいらっしゃるのかということを整理したものでございます。下のほうにありますけれども、発注者から業務や作業の依頼を主に受けて行っている仕事をしている人たちが228万人いまして、そのうち一般の消費者を対象にしている方が58万人。一方で、主に事業者を直接の取引先としている者が170万人いるということでございます。
また、この雇用類似の働き方について、労働部門のほうでも検討会をしていまして、その検討会での主な意見が14枚目のスライドにあります。そのうち社会保障の関係、社会保険の関係で出ている意見なのですけれども、年金ではなくて健康保険のところなのですが、休業時の傷病手当金について、健康保険と国民健康保険との間で取り扱いに差異があるというような指摘があったということでございます。
最後に15枚目のスライドなのですけれども、社会保険制度上、事業主とはどういう取り扱いになっているかということでございます。先ほど構成員のほうからもありましたけれども、厚生年金の被保険者資格は、適用事業所に使用される者ということで法律に書かれておりますので、個人事業主の社会保険の適用は、現時点では厚生年金の被保険者資格を有しないというふうに解釈されて、そういう取り扱いになっている。
その一方で、法人の経営者についての被用者保険なのですけれども、これはたとえ経営者であっても法人に使用される者ということですので、適用事業所である法人に使用される者ということでありますから、経営者についても厚生年金の適用の対象となっているということでございます。
飛ばしまして、最後の資料でございますが、18枚目の資料なのですが、御議論いただきたいポイントとしまして、複数事業所で勤務している、兼業・副業をしている被用者保険の適用としまして、現在の適用の枠組みや事務手続のあり方についてどう考えるのか。また、2番目としまして、雇用類似の働き方をしている方に対して社会保険はどうあるべきかということについて御議論いただきたいと思っています。
事務方からは、以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等をいただければと思います。いかがでしょうか。
それでは、永井構成員、どうぞ。
○永井構成員 ありがとうございます。
副業・兼業のことで御意見を申し上げたいと思います。
私ども労働組合でございますが、今、政府が非常に副業・兼業を促進、推進されておりますけれども、今の御説明にもあったように、まだいろいろな状況がきちんと整備されていない中では、我々は副業・兼業を積極的に促進するという立場に立っていないということでございます。
3枚目のスライドにありましたように、複数就業をされている方々は、比較的所得の低い方も多いですし、私どもの組織ですと、パートタイマーとパートタイマーをかけ持ちして働いている方も一定程度いるということを把握しております。多重就労によって、そうやって生活をせざるを得ない方々がいるということと、社会保障を確立するためにも、実態に合わせた運用とすることが必要だと考えております。被用者として働いた分は合算していただいて、総収入に応じた負担、被用者保険による保障に反映させるべきと思っております。
労働基準法上は、今でも異なる事業主のもとでも労働時間は通算するということになっておりますので、その徹底もあわせて考えていかなければならないと思っております。
また、事務手続ですけれども、現行、複数の事務所、事業所で適用要件を満たす場合の適用事務の手続については、負担の軽減ということからも見直しを検討すべきと思っておりますし、標準報酬を合算するという仕組みは、雇用保険の側にはそういうものはないというふうに認識をしておりますので、今後、労働時間や賃金の通算のときには、そういうことも含めて検討していただきたいと思っております。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
それでは、藤井構成員、お願いいたします。
○藤井構成員 複数事業所の関係で、雇用保険の関係資料を提示いただき、ありがとうございました。
やはり向こうもなかなか悩ましいのだなということは、問題意識は共有できるのではないかと思いますけれども、いずれにしましても、労働時間とか賃金の通算、先ほど永井構成員からもありましたが、実務面ではかなりいろいろ論点があるのかなというふうに、私どもも思わざるを得ない。特に中小企業の、企業自身も含めて、私ども保険者もそうですけれども、大分しっかり議論しなければいけないのかなと思いました。
政策的な議論ももちろん大事だと思いますし、こういった方々に対してどのような適用をしていくかということは本当に重要な論点だとは思いますけれども、ぜひ実務的な論点も忘れないように御検討をお願いできればありがたいと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかにいかがでございましょうか。
村上構成員、どうぞ。
○村上構成員 町村会を代表して来ておりますが、私たち町村は地域、農村、林業などを守っている立場でもあります。限られた人と資源で地域を持続させながら、従来の常識にとらわれない働き方が当たり前のものとして社会に認知されながら、適切な社会保障により人々の生活が担保されることが望ましいと思っているところであります。
特に、副業・兼業についてであります。産業構造、人口構成の変化によりまして、地域における働き方も年々変わっております。特に私たちの農村部でありますが、林業を持ったり、農家を持ったり、温泉場もあったりと、複数の仕事を組み合わせて生計をやっと立てている人もいます。それが国民年金1号の方に入ってくると思っております。
このような生計の立て方をしている人が少なくないので、より多くの人を支えられるようなセーフティネットが求められます。そのために、あらゆる働き方に対して、それを手厚く支援できるような、幅広い社会保障のあり方を引き続き検討していただきたいと思っております。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかにいかがでございましょうか。
それでは、荒井構成員、どうぞ。
○荒井構成員 ありがとうございます。
多分、これから、副業・兼業をするという方は増えていくのだと思いまして、この方々をどうするかということは大きな論点ですが、先ほどいろいろお話がありましたように、御説明を聞いていても、事務の手間が相当かかるような状況になっています。したがって、事務の効率化はしっかり実務的に考えていくということが大事なのですが、そのときに、働いている本人や企業、組合、国など、どこかに負担を寄せて楽になる人が出るということではなくて、世の中全体が効率化していくような観点で、それはマイナンバーを使うのかどうかわかりませんけれども、全員が、社会がよくなって効率的になっていくという方向で御検討いただくのが大事かなと思っています。
誰かに負荷をかけて、誰かが楽になるという形ではなくて、全体でよりよく効率的にしていく、そういう観点が大事かなと思っております。よろしくお願いしたいと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかにどなたかございますか。
それでは、平川構成員、海老原構成員の順でお願いします。
○平川構成員 ありがとうございます。
雇用類似の働き方をする方に対しての社会保険のあり方ですけれども、これについても、今後の老後の生活保障という観点からも含めて、雇用関係によらない働き方をしている方にも十分な給付を受けられる仕組みは、本当に検討すべき事項だと思っているところであります。
ただ、一つ質問があるのですけれども、13枚目のスライドで「発注者から仕事の委託を受け、主として個人で役務を提供し」という表現があります。
実は世の中にいろいろな会社、経営形態や雇用形態があるのですが、ある企業では、法人ですけれども、30人ほど正職員を雇って、残り300人は事業委託という形で仕事をしている会社があります。実態としては形式的には委託契約となっているのですが、実態は会社の指揮命令下のもとで働いているということがあります。その場合、実態として仕事の委託ではなくて、指揮命令下で働いているという実態があれば、その辺は適用とするのか、どうなのかということを質問したいと思います。
多分、この企業は法人ですので、会社の社長は当然厚生年金に入っているのでしょうけれども、形式的な委託という形で働いているような方々は多分、国民年金等になっていると思います。その場合、実務としてどのように判断されるのかということを少しお聞きしたいと思います。
○遠藤座長 事務局、コメントをお願いいたします。
○山下年金局年金課企画官 実務としては、そういう場合には、働いているというか給与を払っているわけではないので、厚生年金・健康保険の保険料という形では徴収できていないので、その方々は、ステータスでは国民年金1号という形になるのではないかと思います。
○遠藤座長 よろしいですか。
それでは、お待たせしました。
海老原構成員、どうぞ。
○海老原構成員 事務局に質問が3つあるのです。
1つは、副業者が2012年から2017年に急にふえたのは、ひょっとすると、これは適用拡大によって要件に達してしまう人たちが2つに仕事を割ったということは可能性がないのか。これは本来の趣旨に反するから、こういうことがないように、確かに何か防止策をつくらなければいけないのではないかということが1つ目の話です。
2つ目は、この雇用類似の働き方の中に、自主的ではなくて、いわゆる雇用逃れというのですか、こういうものはどの程度入っているのかということ。つまり、社会保険に入れたくないから業務委託に、という形の雇用逃れが入っていないかという話なのですね。こういうものを調べたものは、データがないかという話。
この2つをお聞きしたいです。
いずれにしろ、これは本来の趣旨に反することだから、撲滅するための何かの方策があるのか。これが3つ目の話です。
○遠藤座長 事務局、お願いします。
○山下年金局年金課企画官 ありがとうございます。
まず、資料4の3枚目のスライドで、確かに2012年から2017年にぴょこっと上がっているというところについて、分析はわかりませんが、もしかすると、言い方は悪いけれどもパートの社会保険適用を逃れるためにそういった形でなっている可能性もあるし、そういった話も実際に聞いているというところでございます。
次に、今度はスライド13のところで、先ほど平川構成員からもありましたとおり、自分で雇って、従業員として作業をさせるという場合には厚生年金・健康保険の保険料を払わなければいけないのだけれども、それを切り離して業務委託というような形をしていて、それが結局保険料逃れというようなことがあるのではないか。そういう可能性も当然あるのではないか。つまり、望んでフリーランスをやっているのではなくて、事業を受託したいがためにそうせざるを得ない扱いに陥っているという可能性もあるのではないかと思います。
こうしたこともあり得ますので、社会保険という形でそれを防ぐかどうかはちょっとあれですけれども、こうしたことのためにどういう保障をすべきかということもあって、これは社会保険に限らず労働政策の場面でも、こういった状況についてどうあるべきか。その一方で、どうやって給与の額を把握するのか、どうやって労働者性を確保するのかということを考えていかなければいけないというところが今の状況でございます。
○海老原構成員 アメリカ並みに、ソーシャル・セキュリティー・ナンバーでしたか、銀行口座をつくるのでも、人を雇うのでも、こういうものを全て必要にするという方向はあり得るのですか。
○山下年金局年金課企画官 マイナンバーカードというものが。
○海老原構成員 さらに雇うときも、例えば銀行で口座をつくるときも、振り込み履歴がわかるように、何もかも全部あのように、アメリカみたいにはできないのですか。
○山下年金局年金課企画官 効率的な行政をやっていく中で、一方でこういったいろいろな働き方がある中で、当然効率的な行政をやる手段として、そういったものをいろいろ活用できないかどうかを考えながら、例えば時間の通算も、今の段階ではどうやったらいいのかということも当然あります。ですけれども、そういった今までのシステムではない形でシステムが発展していった場合にどうやっていくかということも、社会保険が今後発展していく中でも考えていかなければいけない課題だと思っております。
○海老原構成員 ありがとうございます。
○遠藤座長 予定した時間になりましたので、少し効率的にお願いしたいと思います。
平川構成員、どうぞ。
○平川構成員 済みません。今の発言、議論のとおり、本当にこれが適用逃れに使われるという状況が、可能性が大変強いですし、基本的には雇用問題だと言われるかもしれないのですけれども、社会保険としての適格性という問題もありますので、契約上委託契約だというふうになったとしても、実態として指揮命令下で働いているということであれば、厚生年金等を含めて適用すべきだと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
大体予定していた時間になりましたので、多分、まだ御意見はおありになるかと思いますけれども、また今後の議論の中で反映させていただければと思います。
それでは、本日の議事は以上で終了させていただきたいと思います。
次回の予定等につきまして、事務局から何かありますか。
○山下年金局年金課企画官 次回の議題や開催日程は、追って皆様方に御連絡を差し上げます。
なお、この後、事務局より本日の懇談会の模様につきまして、事務局の責任においてブリーフィングを行う予定でございます。あらかじめ御了承をお願いいたします。
○遠藤座長 よろしくお願いします。
それでは、これをもちまして懇談会を終了させていただきたいと思います。
積極的な御審議をどうもありがとうございました。