技能実習評価試験の整備に関する専門家会議(第34回)議事要旨

                           人材開発統括官海外人材育成担当参事官室

○日時 平成31年4月26日(金)10:00~12:10

○場所 厚生労働省 共用第9会議室

○出席者
  岡本委員、大迫委員、岡野委員、椎根委員、下村委員、冨高委員、羽柴委員
  厚生労働省人材開発統括官海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課
  外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構、公益財団法人国際研修協力機構
  (コンクリート製品製造職種関係)全国コンクリート製品協会、経済産業省
  (宿泊職種関係)宿泊業技能試験センター、観光庁
  (カーペット製造職種関係)日本カーペット工業組合、経済産業省
 
○議題
 (1) コンクリート製品製造職種(コンクリート製品製造作業)の追加について
 (2) 宿泊職種(接客・衛生管理作業)の追加について
 (3) カーペット製造職種の3号整備について
 
○議事
  1 コンクリート製品製造職種の追加について
  ○ 全国コンクリート製品協会より概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 前回の専門家会議での指摘事項への対応として、学科試験の試験基準において「一組までに限る」等の
   記載を削除した。実技試験で使用する試験用試料の公平性の確保については、マニュアルを整備して、専門級
   及び上級で使用する試験用試料はバリが必ず付いたものを確保する。
    安全衛生に関する問題の作成能力を担保すべきとの指摘に関しては、安全衛生の課題に詳しい専門家を活用
   しつつ、委員会組織として安全衛生に関する知識を共有し、問題作成能力の継続性を担保する。提案のあった
   研修ビデオの活用についても非常に有効と考えており、その作成を検討したい。
    試験監督者が異なってもバラツキなく評価できるかという指摘に関しては、判断基準まで入れたチェック
   リスト形式の採点表を整備し、また、個別作業の安全評価のチェックリストを安全衛生の課題に詳しい経験者
   等により作成し、さらに、講習会等で試験監督者の審査能力を確認することなどで公平性を担保したい。
  ・ 試行試験を4月10日に埼玉の工場で行った。初級、専門級、上級で、それぞれ3人ずつ学科試験、実技試験
   を実施し、実際に評価を行った。その結果として、問題の読み上げ速度の調整や設問ごとに質問を受け付ける
   点を徹底する必要があると感じた。これは専門級の学科試験も同様である。実技試験は、試験に使われない
   試料等が付近にあって受検者が混乱しないよう、準備を徹底する必要があると感じた。
  ・ 専門級の実技試験は非常に高い点数となったが、業務経験年数が大変長い者等が受検者だったためで
   あり、難易度を変更する必要はないと考えている。
  ・ 上級の学科試験は、全ての受検者で試験時間に余裕があったため100分から60分に変更し、実技試験は
   試験時間が足りずに減点となった受検者がいたため75分から100分に変更する。
 
  ○ 同団体からの説明に対して、概ね以下のような質疑があった。
   委員)今後毎年、何人程度が技能実習評価試験を受検すると想定しているか。また、その人数を評価する
     ために試験監督者は何人程度必要と考えているか。
   説明者)受検者は300人程度を見込んでいる。全国10地域で試験を行う予定であり、各地域に少なくとも
     4、5人程度の試験監督者を確保したい。
   委員)安全を含む評価項目について、試験監督者によって評価のバラツキが生じないよう、本番までに
     採点マニュアル等を整備すること。
   説明者)本番までに整備したい。
   委員)問題の読み上げの速度について、速く読む者と遅く読む者で不公平とならないよう、例えば原稿用紙
     これだけの内容は何分で読み上げるということを決めておかれたらよい。
   説明者)了解した。

  ○ 検討の結果、コンクリート製品製造職種(コンクリート製品製造作業)の追加について了承された。
  
  2 宿泊職種の追加について
  ○ 宿泊業技能試験センターより概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 前回の専門家会議での指摘事項への対応として、送出国の一般的な現状及び課題を把握すべきとの指摘
   について、再度把握するためにベトナムとミャンマーに赴いて調査を行った。
  ・ その際、現地のホテルでアンケート調査を行ったが、ホテルのマネージャーに対して、スタッフを日本で
   技能実習させたいかと質問したところ、「はい」という答えが93%以上となった。また、どのような技能を
   習得させたいかという質問には、日本のホスピタリティー(接客の心得)、チェックイン・チェックアウト
   作業、会場準備等が回答として挙げられた。
  ・ これらの国の課題として、技能を学ぶ場所がないという声を非常に多く聞いた。現地調査の際に、観光協会
   やホテル協会から、観光関係の大学はあるが技能を学ぶ場所がないので、ホテルに就職してトレーニングを
   受けながら働くため、技能のレベルがなかなか上がらない、と言われた。また、衛生管理や利用客の安全
   確保については、そもそも衛生管理の概念が乏しい、地震なども余り起こらず建築基準なども非常に低く安全
   に対する概念が非常に乏しい、とのことだった。このようなことを踏まえ、利用客の送迎のレベルアップ、
   フロント作業の効率化等、接客作業の技術向上・考察力の強化、安全衛生及び食品衛生に関する知識の
   習得が実習のニーズとして挙げられた。
  ・ 送出国の課題と実習ニーズが一致しておらず、課題のリストアップを再度行うべきとの指摘があったが、
   先ほどのアンケート調査等により把握した送出国の現状・課題と、これらから考えられる技能実習生の
   実習内容を整理した。この実習を行うことで、技能をきちんと修得いただけると考えている。
  ・ 必須業務について、1号と2号の差や、1号、2号それぞれで求められる水準(3年かけて修得する内容か
   どうかなど)を明確にすべきとの指摘があった。
   技能実習の目標及び水準は、技能実習1号は、上司の指示を受けて様々な業務ができるようになることで
   あり、2号は、それらの業務を主体的に自らが応用して実行できるようになることである。なお、チェック
   イン・チェックアウト作業は、2号から作業補助を行う。
   どの程度のスピードで技能を習得できるかだが、日本人の高卒の新入社員では、利用客の送迎作業を入社
   後すぐに半年間かけて学び、また、衛生管理作業はお客様の安全、安心に係わる重要な作業なので入社後
   すぐに2年間かけて学ぶが、チェックイン・チェックアウト作業は入社1年後から学び、それ以前に滞在中の
   接客作業や会場準備・整備作業を学ぶ、という2年間のスケジュールとなっている。一方、技能実習生は
   コミュニケーションに必要な日本語の習熟が必要なため、3年間の修得期間が必要と考えている。
  ・ 1号ではチェックイン・チェックアウト作業は行わないが、小規模なビジネスホテルではこれを外すと他に
   作業があるのかとの指摘があった。これについて、小規模なビジネスホテルの朝から夜中までの実際の業務を
   整理したが、食事の準備・片付け、会議室の設営・片付け、滞在中の利用客へ貸し出すための準備、提供、
   片付けなど、様々な時間帯で色々な業務が行われている。
  ・ 安全衛生業務は1号と2号で差がないのかという指摘について、安全衛生は重要な業務であり、かつ、法令
   も改正されるので、1号、2号で差をつけるのではなく常に遵守すべきものである。
  ・ 宿泊施設の作業内容について必ずしも全施設で実施されないものがあるので、どの受入施設でも必ず実習
   が行われ、試験で確認する必要がある項目か整理すべき、との指摘があった。これについて、宿泊施設の
   作業内容を改めて確認し、各業態によってやること、やらないことを区分したので、これに基づき技能実習を
   実施したい。
 
  ○ 同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
   委員)技能実習2号の「タイミングよく」や「臨機応変な」について、水準はどのようなもので、誰が、
    どのように判断するのか。これらの試験について、客観的・定量的な採点基準を定めておく必要が
    ある。
  説明者)例えば、「タイミングよく」は、お客様の食べるスピードや飲むスピードに対応できることであり、
    「臨機応変な」は、お客様の体調やアレルギーに対応できることである。
  委員)定量的な基準がなければ、試験監督者によって採点の基準が変わってしまう。
  委員)客観的・定量的な採点基準を設けることが非常に難しいものは、受検者のレベルだけでなく、試験監督
    者のレベルが適切かどうかや試験監督者に対する指示が適切かどうかも重要となる。このため、試行試験
    では試験監督者を3人程度は確保にしていただき、これらの評価にばらつきがないか確認していただき
    たい。
  説明者)受検者の人数等にも関係してくるが、なるべく多くの者の目で受検者の合格を判断したい。
  委員)2人の評価で結論が平行線となることを防ぐため、試行試験では最低3人の試験監督者は確保して
    いただきたい。実行段階になったとき、常に複数の試験監督者が必要かは業界の中で判断いただきたい。
  説明者)指摘事項について対応を検討したい。
  委員)技能実習2号で利用客に満足してもらうためには、通常の日本人が理解できるレベルの日本語が要求
    される。特に、利用客が不満を持って要求している内容を正確に理解して、利用客を怒らせることなく
    ホテルが提供できる内容を説明することは、日本語のレベルとして相当高いのではないか。
  説明者)技能実習2号ではお客様との会話が成り立つように、日本語を習得していかなければならないと承知
    している。
  委員)利用客から想定外の質問が出たとき、上司を呼びに行くか、自分で考えて対応するかの判断が重要と
    なってくるのではないか。
  説明者)自分で分かることは自分できちんと対応する、分からないことはすぐに上司や他の日本人に聞いて
    対応できることも技能であると考える。
  委員)こうしたことは学科試験や判断等試験の技能実習生の力量評価で確認していくべきものなので、水準
    をもう少し明確にして、試行試験を行う前に業界内で議論しておいていただきたい。
  説明者)御指摘を踏まえて試行試験を考えていきたい。
  委員)技能実習1号の、誰かいないと何もできないレベルと、2号の、自分で判断して対応できるレベルでは
    大きな違いがあるので、その違いを明確にした方が良い。
  委員)自分で判断できるなど技能実習2号で求められる技能の水準を明確にして、3年かけて修得すべき
    内容かどうか分かるようにしていただきたい。
  委員)資料2-2の「実習生に求められる水準」について、修正して提出しただきたい。
  説明者)御指摘について対応する。
  委員)宿泊業は特定技能1号の対象業種となっているが、特定技能1号の試験のレベルは、今検討している
    技能実習の試験のレベルと比べてどうか。
  説明者)特定技能の実施要領に記載されている基準によると、ホテル・旅館業で2年間働いた方が7割
    合格できるレベルとされており、技能実習に置き換えると2号の途中レベルということになる。
 
  ○ 検討の結果、宿泊職種(接客・衛生管理作業)について、厚生労働省、法務省において、省令の改正案
   に係るパブリックコメントを実施し、その結果を踏まえ、審査基準案や技能実習評価試験案等について
   引き続き議論が行われることとなった。
  
  3 カーペット製造職種の3号整備について
  ○ 日本カーペット工業組合より概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 前回の専門家会議での指摘事項への対応について、試行試験の結果を踏まえた改善点について3点ある。
   織じゅうたん製造作業については、綛をうまく捌くという課題に関して、当初、捌いている外見の作業動作
   だけで判断しようとしていたが、糸がらみの有無など最終成果物でうまく捌けていたかで判断することと
   した。
    タフテッドカーペット製造作業については、5名のうち3名が作業の標準時間を超過したので、後で検証
   したら、基布の保管場所と機械との距離があったことが原因だった。このため、機械のそばに新しい基布
   を用意しておき、基布つなぎとタフティングマシンに送り込むという作業がすぐにできるように改善すること
   とした。
    ニードルパンチカーペット製造作業については、調整作業の課題でパンチ深度を受検者に必ず調整させる
   ために、試験監督者が設定値を予め変えておき、出来上がった頭出し反が規格どおりとなっているか受検者
   に確認させることとした。
  
  ○ 同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
   委員)今後も適切な試験が安定的に実施できることが重要である。まず、試行試験において、試験監督者
     2名の判断は全項目で一致していたか、違うものがあったか、整理していただきたい。また、各採点項目
     が「できた」、「できなかった」とする判定基準が全て用意されているか、また、「できた」、
     「できなかった」の判定基準が試験監督者によりばらつきが生じないための方策について、今後、具体的
     にどのような検討をしていくのか、それぞれについて提出いただきたい。
   説明者)対応について検討したい。
   委員)今後、どのような試験準備をすれば試行試験で上手くいかなかった点が是正できるのか文書で整理し、
     当該文書を将来、試験監督者となる者に渡して、試験実施機関の勉強会やワーキンググループなどで
     検証していただきたい。その際には、試験監督者は必ず3名以上として、個々の試験監督者の判定基準を
     記録に残して、ばらつきの生じた理由を業界内で議論していただきたい。
   説明者)対応について検討したい。
   委員)今後、3号整備が認められて運用が開始されると、初年度に、受検者は何名程度になると見込まれ、
     試験監督者は何名程度用意しておく必要があるのか、それぞれについて整理した上で提出していただき
     たい。
   説明者)了解した。
   委員)実技試験は技能実習生が働いている所で行われているが、受検者数が少ない場合に他の企業で受検
     することも有り得るのか。
   説明者)そのようなことは考えていない。
   委員)今後も安定的かつ公平な試験が実施できるよう、技能実習生が実習を行っている企業において、いつも
     使用している機械で実技試験を行う旨を試験実施要領等に記載した上で提出していただきたい。
   説明者)提出させていただきたい。
   委員)資料3-4の「専門級・上級学科試験比較表」において、「求められる水準」がかなり定性的で、専門級
    と上級の間の技量の差を明確に説明する内容としては不十分であり、また、「問題の例」も不要である
    ため、上級の場合はどのような基準で学科試験の問題を作成するのか、正確に記載して提出していただき
    たい。
    また、試験実施要領の中には、試験監督者に関する記載しかないので、試験問題を作成する者について
    も、選任の基準や手続きを整備するとともに、適正に評価が行える力量を確認するための方法を組織として
    整えて提出していただきたい。
   説明者)了解した。
 
  ○ 検討の結果、カーペット製造職種の3号整備については、次回以降、引き続き議論が行われることと
   なった。
 
(以上)