平成30年度第2回化学物質のリスク評価検討会 議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成30年12月6日(木)10:00~11:23

場所

中央合同庁舎第5号館20階共用第8会議室

議題

  1. 平成30 年度初期評価対象物質のリスク評価について
    1. 酢酸イソプロピル
    2. ジフェニルアミン
    3. ジメチルアミン
  2. 特別有機溶剤のリスク評価について
  3. その他

議事

 
○増岡化学物質評価室長補佐 定刻となりましたので、ただ今より第2回化学物質のリスク評価検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 まず、委員の出席状況ですが、本日は内山委員、高田委員から所用により欠席との御連絡をいただいております。
 また、特別参集者といたしまして、圓藤委員に御参加をいただいておりますほか、もうお一人の特別参集者である櫻井委員におかれましては、本日は、御欠席ということで御連絡をいただいております。
 また、本日は、オブザーバーとしまして、ばく露調査を担当いたしました中央労働災害防止協会(以下、「中災防」という)からも御出席いただいております。
 それでは以下の議事の進行を名古屋先生にお願いいたします。
○名古屋座長 それでは、始めたいと思います。
 まず、事務局から資料の確認等よろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 配布資料ですが、議事次第の裏面が配布資料一覧となっております。
 まず、リスク評価書(案)につきましては、本日対象となっております3物質、酢酸イソプロピル、ジフェニルアミン及びジメチルアミンのリスク評価書(案)が、それぞれ資料1-1、1-2、1-3となっております。別添資料につきましては、それぞれタブレットに別ファイルで保存しております。別添1が「有害性総合評価表」、別添2が「有害性評価書」、別添3が「ばく露作業報告集計表」、それから別添4が「測定分析法」となります。したがって、それぞれの物質につき、5ファイルずつあるということになります。
 次に資料2としまして、「特別有機溶剤 10物質に係るリスク評価の進め方について」、資料3として「今後の予定」、それから、委員のみに配布した非公開の資料となりますが、各物質につきまして参考資料1、2、3を添付しております。
 資料は以上となります。
○名古屋座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 では、議題に入りたいと思います。
 第1の議題は、ばく露実態調査対象物質リスク評価についてとなります。まず、酸化イソプロピルについて、事務局から説明をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 資料1-1を御覧ください。こちらの資料に基づいて説明を進めさせていただきます。
 まず表紙があり、次に1ページ目ですが、「1 物理化学的性質」の「(1)化学物質の基本情報」につきましては、記載のとおりでございます。また、こちらは第2種有機溶剤にも該当する物質ということになっております。
 次に「(2)物理的化学的性状」でございますが、外観は特徴的な臭気のある無色の液体です。その他の物理的化学的性状、及び生産・輸入量・使用量・用途につきましては、記載のとおりでございます。
 次に「2 有害性評価の結果」でございます。
 まず、「(1)発がん性」ですが、「ヒトに対する発がん性が疑われる」となっております。こちらの根拠としましては、ラットを用いた2年間(104週間)の吸入試験(32 6時間/日、5日/週、0、1,000、2,000及び4,000 ppm、雌雄50匹/群)において、雄4,000 ppm群の中皮腫の発生が、ヒストリカルコントロールデータの範囲を超えていたということから、雄ラットについて発がん性があり、ヒトに対する発がん性は否定できないと考えられる、という結論に至っております。
 なお、こちらの結果につきましては、日本産業衛生学会(以下、「産衛学会」という)において、「遺伝毒性が認められず、また腹膜中皮腫は、この試験に使用したF344系ラットの雄に特異的に自然発生する腫瘍の僅かな増加であり、人に外挿することは妥当でないと考えられる」という見解がございましたので、こちらも紹介させていただきます。
 また、各機関における発がん性の評価区分につきましては、記載のとおりでございまして、調べた範囲においては「情報なし」ということでした。
 また、閾値の有無につきましては、遺伝毒性の判断を根拠としまして、遺伝毒性が判断できないというところから、閾値の有無についても「判断できない」としております。
 次に、「(2)発がん性以外の有害性」でございます。
 急性毒性につきましては、ラットの吸入、経口、マウスの吸入、経口、また、ウサギの経口、経皮につきましてそれぞれ半数致死量等に係る報告が得られております。
 次に、皮膚刺激性/腐食性でございます。こちらはヒト及びウサギを用いた試験におきまして影響がみられたということから、「あり」と整理をしております。
 次に、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、こちらはヒトではボランティアに用いた試験、あるいはウサギの眼に用いた試験で刺激性がみられたということから、眼に対する重篤な損傷性/刺激性を「あり」と整理しております。
 次に皮膚感作性でございますが、こちらはモルモットを用いた試験において感作性が認められなかったということから、「なし」となります。
 呼吸器感作性につきましては、調査した範囲での報告は得られておりません。
 次に、反復投与毒性ですが、こちらはLOAELを1,000ppmとしております。根拠としましては、マウスを用いた2年間(104週間)の吸入試験(6時間/日、5日/週、0、1,000、2,000及び4,000 ppm、雌雄50匹/群)において、雌雄ともに鼻腔の嗅上皮の萎縮等がみられたということから、LOAELを1,000ppmとしております。こちらに種差等の不確実係数を考慮し、評価レベルは、115行目に示した式により7.5ppmと求めています。
 次に、生殖毒性です。調査した範囲では、報告は得られておりません。
 遺伝毒性につきましては、in vitroのAmes試験等において陰性と報告されておりますが、情報が限られていることから「判断できない」としております。
 神経毒性ですが、こちらはヒト及びマウスの試験において中枢神経の抑制作用の報告などがあるということから、神経毒性は「あり」と整理しております。
 次に許容濃度等です。許容濃度は、まずACGIHがTWAとして100ppmを勧告しております。こちらの根拠につきましては、酢酸プロピル異性体の少数のデータ及び酢酸n-ブチルとの類似性に基づき、眼及び上気道の刺激等を考慮したものとして100ppmを勧告するとされております。
 次に、産衛学会ですが、100ppmを勧告しております。こちらにつきましては、ヒトの健康影響情報は不十分としながら、ボランティアに対する200ppmのばく露で眼の刺激が観察されていることを踏まえ、100ppmという数字を勧告しております。
 また、DFG MAKにおきましも100ppmという値を勧告しております。こちらも同様に、今申し上げましたボランティアに対する200ppmの試験を踏まえ、100ppmという値を勧告しております。
 その他NIOSH REL、OSHA、英国のHSEあるいは米国のOARS WELL等での設定の状況につきましては記載のとおりでございます。
 以上を踏まえまして、次に評価値ですが、まず一次評価値につきましては、発がん性を示す可能性があるが、遺伝毒性が判断できず、閾値の判断ができないということから「なし」としております。また、二次評価値につきましては100ppmとなっておりますが、こちらはACGIH及び産衛学会の勧告している許容濃度等を採用したものとなっております。
 それでは次に、「3 ばく露実態評価」です。
 「(1)有機物ばく露作業報告の提出状況」は、33事業場、64作業から報告がありました。主な用途としては「溶剤、希釈又は溶媒」、「他の製剤等の原料」で、主な作業の種類としては「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「サンプリング、分析、試験又は研究の業務」となっておりました。また、年間製造・取扱量、作業1回当たりの製造・取扱量、また、作業従事労働者数、1日当りの作業時間につきましては記載のとおりです。また、発散抑制措置としましては、密閉化設備が設置されている作業は7%、局所排気装置が設置されている作業は57%、プッシュプルが設置されている作業は1%、全体換気装置が設置されている作業は31%となっておりました。
 次に「(2)ばく露実態調査結果」でございます。報告のあった33事業場のうち6事業場を選定して実態調査が行われております。対象事業場におきましては、労働者9人に対して個人ばく露測定を行ったほか、1単位作業場について作業環境測定のA測定を、12地点についてスポット測定を実施しております。なお、個人ばく露測定につきましては8時間加重平均濃度(8時間TWA)を算定しております。
 測定方法は記載のとおりでございます。
 対象事業場における作業の概要ですが、用途としましては、「他製剤の原料」、「溶剤、溶媒」、「対象物質の製造」、また、ばく露の可能性のある主な作業は、「対象物質の仕込み」、「充填」、「サンプリング」、「配合」等の作業で、1回当たり1分から200分間の作業となっておりました。また、調査した作業は、ローリーからの受入れ・原料タンクへの仕込み等を除くと、その多くは屋内作業で、ばく露対策としては、50%の作業で局所排気装置が設置され、63%の作業で呼吸用保護具が使用されておりました。
 次に、測定結果となります。個人ばく露測定ですが、定量下限値未満の1データ及び短時間ばく露であったローリー運転手のデータを除き、7データを評価データとしております。8時間TWAの最大値は、合成樹脂やコーティング剤等を製造している作業中に測定された4.1ppm、また、推定値を求めたところ、その最大値が26ppmとなりましたが、こちらは、データの中で階層が2つに分かれているところがみられたため、改めて上位5データで推定し直した結果、6.1ppmという推定値を得ております。このことから、ばく露最大値は、区間推定上側上限値の6.1ppmということになりますが、二次評価値に比べて低い値となっております。
 「4 リスクの判定及び今後の対応」ですが、以上のことを踏まえ、酢酸イソプロピルの製造・取扱事業所においては、最大ばく露量6.1ppmは2次評価値100ppmを下回っており、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられます。また、当該物質については、産衛学会、ACGIHによる経皮吸収の勧告は出されておりません。しかしながら、当該物質はヒトに対する発がん性が疑われ、神経毒性、反復投与毒性がある物質であることから、事業者はリスクアセスメントを行い、その製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要である、とまとめさせていただきました。
 以上でございます。
○名古屋座長 ありがとうございました。
 経皮吸収はありません。従来の方法で判断すれば、最大ばく露が6.1ppmに対して二次評価値が100ppmですから、初期リスク評価で終わる物質だと思います。細かいところを含め、皆さんの御意見はございますか。
○圓藤(陽)委員 細かい修正ですが、資料1-1、3ページの72行、LD50が20mgになっていますが、これは20mLの誤りです。有害性評価書はそうなっています。
○増岡化学物質評価室長補佐 修正いたします。
○吉成委員 1ページの5行目、物質名ですが、別名の最後が「Acetic acid、1-methylethyl ester」と途中が「、」で切れていますが、これは1 Acetic acid 1-methylethyl ester」で1つの物質ですから「、」は不要だと思います。
○名古屋座長 修正をよろしくお願いいたします。
○大前委員 やはりささいな点ですが、1ページ、27行目の括弧の中は消した方がよいと思います。
 それから7ページ、269行目、二次評価値の「二」がカタカナの「ニ」になっていますので直された方がよいと思います。
○名古屋座長 ありがとうございます。他にお気づきの点はございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 そうしましたら、従来どおり初期リスク評価で終了ということになります。
 どうもありがとうございました。
 では、次のジフェニルアミンをよろしくお願いします。
○増岡化学物質評価室長補佐 では、資料1-2を御覧ください。ジフェニルアミンのリスク評価書(案)となります。
 1ページ目の「1 物理化学的性質」からでございます。
 化学物質の基本情報における、名称、別名、化学式、構造式等は記載のとおりでございます。こちらは労働安全衛生法施行令別表第9の対象物質であり、SDS等の対象になっている物質です。
 次に、物理的化学的性状につきましては、外観として特徴的な臭気のある無色の結晶であるほか、性状につきましては記載のとおりということになっております。
 次の生産・輸入量、使用量、用途につきましても記載のとおりでございます。
 「2 有害性評価の結果」でございます。
 まず、「(1)発がん性」ですが、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」としております。根拠につきましては、ラットを用いた2年間(104週間)の混餌経口投与によるがん原性試験、また、マウスを用いた同様に2年間(104週間)の混餌経口投与によるがん原性試験におきまして、ラットの雌雄、マウスの雄について血管系腫瘍の発生増加がみられたこと等から、これを根拠として、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と整理しております。
 また、各機関の発がん性の評価の区分については記載のとおりでございます。ACGIHではA4、DFG MAKではカテゴリー3Bと分類されております。
 閾値の有無ですが、遺伝毒性がないと考えられるため、閾値につきましては「あり」としております。
 閾値が「あり」ということになりますので、評価レベルの算定ということになりますが、NOAELは250ppmで、こちらは、雄ラットでは4,000ppm、雌ラットでは同じく4,000ppm、雄マウスでは1,000ppmで血管系腫瘍の発生の増加などがみられたということを根拠とし、NOAELを250ppm、こちらから種差、がんの重大性等の不確実係数を考慮し、2ページ、70行目の計算式から評価レベルを2.44mg/m3と求めております。
 次に、「(2)発がん性以外の有害性」です。
 急性毒性につきましては、ラットの経口、マウスの経口、ウサギの経皮について、半数致死量等の値がそれぞれ記載のとおりとなっております。
 皮膚刺激性/腐食性ですが、こちらはAlbinoウサギを用いた試験で、軽度の皮膚刺激がみられたということから「あり」としております。
 また、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、ウサギを用いたドレイズ眼刺激試験において中程度の結膜刺激がみられたというところから、こちらも「あり」となります。
 次に、皮膚感作性ですが、モルモットで陰性の試験結果があり、また、ヒトのパッチテストでも陽性反応を示さなかったということから、「なし」と整理しております。
 呼吸器感作性につきましては、調査した範囲では、報告を得られなかったことから「判断できない」としております。
 次に、反復投与毒性ですが、こちらはNOAELを2.5mg/kg体重/日としております。これは、ビーグル犬を用いた2年間の混餌飼料による経口投与試験におきまして、25mg/kg体重/日の用量で認められたヘモグロビン含量や、赤血球数の軽微な減少に基づき、NOAELを2.5 mg/kg体重/日と見積もっております。この値に種差による不確実係数等を考慮し、評価レベルを、4ページ、115行目の式から求めますと2.1mg/m3(0.3ppm)となります。
 生殖毒性ですが、こちらはNOAELを40mg/kg体重/日としています。これは、ラットを用いた混餌投与試験においてF0では雄5,000ppm、雌1,500ppm以上の投与群に腎臓等の重量増加がみられたこと、あるいは児動物においては1,500ppm投与群のF1雌に体重増加抑制がみられたことなどを根拠としています。NOAELは500ppmとしており、これが40mg/kg体重/日相当ということになります。この値に種差等の不確実係数等を考慮して、4ページ、132行目の式から評価レベルを求めますと、4.9ppm(33.6mg/m3)となります。
 次に、遺伝毒性ですが、チャイニーズハムスターを用いた染色体異常試験でS9mix非存在下において構造異常を示したものの、ネズミチフス菌を用いた復帰突然変異試験やin vivoにおける小核試験など、多くの試験で陰性の結果であったことから、遺伝毒性につきましては「なし」と整理しております。 
 神経毒性でございますが、調査した範囲では報告が得られていないことから、「判断できない」としております。
 次に、「(3)許容濃度等」でございます。ACGIHが10mg/m3を勧告しております。こちらは混餌投与したイヌで腎臓、肝臓、血液疾患、皮膚や眼及び粘膜の刺激を最小化する値ということで10mg/m3という勧告をしております。産衛学会は設定がなされておりません。DFG MAKは5mg/m3としています。この値は、反復投与からのNOAELが、イヌで2.5mg/kg体重/日、ラットで8mg/kg体重/日、低い方を採用、5mg/m3をNOAELと算出しています。そのほかNIOSH REL、OSHA PEL、UK HSE、OARSにおける設定状況につきましては、記載のとおりとなっております。
 以上を踏まえ「(4)評価値」につきましては、一次評価値は「なし」となります。こちらは「発がん性が疑われ、遺伝毒性がなく、閾値がある場合」ということで評価レベルが求められますが、その評価レベルが2次評価値の10分の1以上であるということから、一次評価値は設定しないということになります。二次評価値につきましては、ACGIHが勧告しているTLV-TWAを二次評価値として採用し、10mg/m3としております。
 次に「3 ばく露実態評価」でございます。
 まず、「(1)有害物ばく露作業報告の提出状況」です。40事業場から計70作業について報告がございました。主な用途は「触媒又は添加括弧剤」、「他の製剤等の原料」、主な作業の種類は「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「サンプリング、分析、試験又は研究の業務」、「ろ過、混合、撹拌、混練又は加熱の作業」となっております。年間製造・取扱量、作業1回当たりの製造・取扱量、作業従事労働者数、1日当たりの作業時間につきましては、それぞれの記載のとおりとなっております。発散抑制措置としましては密閉化設備が設置されている作業は12%、局所排気装置が設置されている作業は46%、プッシュプルが設置されている作業は5%、全体換気装置が設置されている作業は20%でした。
 次に、「(2)ばく露実態調査結果」です。報告のあった40事業場のうち、平成29年度に5事業場を選定して調査を行っております。労働者14人について個人ばく露測定を行ったほか、1単位作業場につきまして作業環境測定のA測定を、20地点についてスポット測定をそれぞれ実施しております。
 測定分析法につきましては記載のとおりでございます。
 対象事業場における作業の概要ですが、用途としては「他製剤の原料」、「触媒、添加剤」また、ばく露の可能性のある主な作業は、「ミキサー内製品の手撹拌及び掻き落とし」、「クーリングミキサーの清掃」、「タブレットの小分け」、「製品充填及び重量微調整」等の作業で1回当たり30秒から2時間となっております。また、調査した作業は全てが屋内作業で、ばく露防止対策としては61%の作業で局所排気装置が設置され、100%の作業で呼吸用保護具が使用されておりました。
 次は、測定結果でございます。2データが定量下限値未満ということで、個人ばく露につきましては、12データを評価データとしております。個人ばく露測定の結果から、8時間TWAの最大値は、ミキサー内製品の手撹拌及び掻き落としと、クーリングミキサーの清掃の作業中に測定された0.10mg/m3、また、推定値につきましては0.11mg/m3となっております。このことから、個人ばく露の最大値につきましては、推定値0.11mg/m3ということですが、二次評価値10mg/m3のおよそ100分の1という値になっております。
 次に「4 リスクの判定及び今後の対応」でございます。「以上のことから、ジフェニルアミンの製造・取扱事業所においては、最大ばく露量0.11mg/m3(区間推定上側限界値)は二次評価値10mg/m3を下回っており、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられる。しかしながら、当該物質はヒトに対しておそらく発がん性があり、かつ経皮吸収が指摘されている物質であることから、経皮ばく露に係るリスク評価を実施して、経皮吸収に関する知見や保護具などのデータを積み重ねた上で、当該物質についてのリスクを確定させるべきである。(※DFG MAKに経皮吸収Hが設定されている。日本産業衛生学会又はACGIHによる経皮吸収は勧告されていない。)なお、当該物質はヒトに対しておそらく発がん性があり、経皮吸収があるほか、生殖毒性がある物質であることから、事業者はリスクアセスメントを行い、その製造・取扱作業に従事する労働者などを対象として自主的なリスク管理を行うことが必要である。」とまとめております。
 以上でございます。
○名古屋座長 ありがとうございます。
 経気ばく露からいうと、二次評価値に比べてばく露最大値は小さいので初期で終わりますが、経皮吸収があるということで少し扱いが違うということだと思います。
 何かお気づきの点はございますでしょうか。
○圓藤(陽)委員 中災防の方に教えていただきたいのですが、この「ミキサー内製品の手撹拌及び掻き落とし」というのは結構大きいミキサーなのでしょうか。溶媒を使って洗いをするわけではないのでしょうか。オルト-トルイジンのときにはトルエンで洗っていたので、このアミンも何か溶剤を使って洗浄するのではないでしょうか。
○中災防 タンクの大きさがわからないので、大きさがどのぐらいなのかという点は分かりませんが、これはミキサーでこねていて、粉がタンクの壁面につきます。それを、へら等で落とすという作業をしているということになります。
○圓藤(陽)委員 ありがとうございました。
○津田委員 発がん性に関する質問ですが、前の物質は「疑われる」となっており、今回は「おそらく」となっているのですが、何か区別をつけているのでしょうか。
○大前委員 いつものルールでこのような表現をしておりますので、ルールブックのいずれかには書いてあると思います。
○宮川委員 追加ですが、動物で十分なデータがあるといえる程度かというところがポイントだと思います。前の物質では、十分とまではいえないので「疑われる」、本物質は2種類で出ているので「おそらく」ということだと思います。
○津田委員 そうしますとIARCでは「probable」と「possible」で区別していますが、IARCで「probable」になったのを、こちらでは「おそらく」になると、以前、そう申し上げたら「いや、両方とも疑いだ」というふうにお聞きしたと思います。
○大前委員 この物質もIARCはいっさい情報なしです。
○津田委員 もちろんそうです。しかし、そういうことがあるので確認したいと思っています。前回はIARCのデータがあって、「probably carcinogenicという評価だった」と私が申し上げたら、産衛学会では全部まとめて「疑いである」とおっしゃっていたので、その辺の整合性についてお聞きしました。
○宮川委員 私の記憶では、あのときはIARCの翻訳をするときの言葉と、こちらはGHSの基準で書きますので、表現が違う場合があるというお話だったと思います。2B相当ですとたぶん「疑い」が付いて、2A相当の場合には「おそらく」になるということだったと思います。
○津田委員 2B相当は、「疑い」になるということでしょうか。そこで区別しているわけですね。2Aだと「probable」となって可能性が高いと。
○大前委員 2Bは「possible」ではなかったでしょうか。2Aが「probable」ではなかったかと思います。
○津田委員 動物の場合、sufficient evidenceがないと2Bにはなりません。そうすると、こちらではsufficient evidenceになる発がん性があるわけですね。
○宮川委員 この物質に関しては、動物実験のマウス、ラットの2群であるかどうか、雄・雌であるかどうかを判断し、総合的に動物である程度十分だといえる場合にはGHSの1B相当ですから「おそらく」で、そこまでいかない場合には「疑い」というのを付けて、GHSの区分に相当の場合には「疑い」を付けるという約束だったと思います。
○津田委員 そのことが最終的な結論に結び付けば問題ありません。前の物質と発がん性については全然違うわけですね。それが最後に反映されていれば、それでよいと思います。
○名古屋座長 よろしいでしょうか。今までどおりということでよろしいでしょうか。
 他にありますでしょうか。
○鷹屋委員 先ほどの圓藤先生の質問について、今、参考資料を見ますと、そもそもジフェニルアミンは、液体として加えていると書いてあります。つまり、参考資料にあるAの工程表は、原料は液体であり、他の粉体を反応させた後、掻き落とし作業をするということになります。そこでばく露があるとすれば、多分当量的に未反応のものが残っており、それがばく露するということだと思います。ですから、経気道的には全く問題のない濃度ですが、もし今後、経皮が問題になるとしたら、その作業そのものは、もう少し詳しく見ていかないと分からないのではないかと思います。
○圓藤(陽)委員 溶媒に溶かしたものを使っているのですか。
○鷹屋委員 溶かしたものを使っています。
○名古屋座長 ありがとうございます。これから経皮吸収をやるときに重要な情報だと思いますので、中災防さん、よろしくお願いいたします。
○江馬委員 4ページ、131行目と133行目ですが、評価レベルが33.6mg/m3となっていますが、計算式の結果が38.6 mg/m3となっています。
○圓藤(陽)委員 これは直していませんね。38.6mg/m3という値は、NOAELを46mg/kg体重/日として計算したときの値です。
○増岡化学物質評価室長補佐 132~133行目の計算式の方が直っておりませんので、修正いたします。
○名古屋座長 修正をお願いいたします。
○宮川委員 リスク判定の結果で、8ページ、256行からの書きぶりですが、「おそらく発がん性があり、経皮吸収があるほか、生殖毒性がある物質であることから、事業者はリスクアセスメントを行い」と書いてありますが、そもそもこの物質は、労働安全衛生法施行令別表第9のものですから、リスクアセスメントは義務です。しかし、これだけ見ると、こういうことがあったから、これからリスクアセスメントをしてください、というような書きぶりになっていますので、そもそも義務がかかっているものだが、こういうことがあるので確実に行えと、そういうことがわかるように書いていただければと思います。
○名古屋座長 書きぶりですね。初期リスクをやっているときに、事業者はそういうことに注意してやりなさいという書きぶりを考えてくださいということですので、そのように修正をお願いします。
 そうしましたら、これは経気ばく露のリスクは低いのですが、経皮吸収のある物質であるということで、本評価は中間報告と位置付け、経皮ばく露に係るリスク評価を行うこととするということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 では、次はジメチルアミン、よろしくお願いいたします
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-3を御覧ください。
 まず、「1 物理化学的性質」です。「(1)化学物質の基本情報」につきましては、労働安全衛生法施行令別表第9の対象物質になっています。その他の構造式等につきましては、記載のとおりということでございます。
 「(2)物理的化学的性状」でございますが、外観として刺激臭のある無色の圧縮液化気体で、その他は、記載のとおりとなっております。
 「(3)生産・輸入量、使用量、用途」につきましても記載のとおりでございます。
 「2 有害性評価の結果」でございます。
 まず「(1)発がん性」ですが、「ヒトに対する発がん性は判断できない」としています。こちらはラット及びマウスを用いた2年間の吸入ばく露試験で、発がん性がみられなかったこと、in vivoでニトロソジメチルアミン、これはおそらくヒトに対して発がん性があるとされているものですが、これに転換する可能性はあるものの、その可能性をヒトの臓器における発がんリスクの増加に関連付けるような試験結果はみられないということから、結論としては「判断できない」と整理しております。各機関の発がん性分類の状況は、2ページ、37行目以下にお示ししたとおりでございます。
 次は、「(2)発がん性以外の有害性」です。
急性毒性につきましては、ラットの吸入、経口、経皮、マウスの吸入、経口、ウサギの経口について半数致死量等の値が、それぞれ記載のとおりとなっております。
 皮膚刺激性/腐食性ですが、こちらはウサギに対する試験の結果、腐食性が示されたというところから「あり」となります。
 次に、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、こちらはヒトに対する影響としてアミンの製造作業者で眼のかすみ等の影響が報告されていること、また、ウサギを用いた試験においても影響がみられたということから「あり」と整理しております。
 皮膚感作性ですが、モルモットを用いた皮膚感作性試験(GPMT)において陽性反応が認められたことから「あり」としております。
 呼吸器感作性につきましては、調査した範囲では報告は得られませんでした。
 次に反復投与毒性です。こちらはLOAELとしては10ppmとしておりますが、Fischer344ラット及びB6C3F1マウスを用いた2年間の吸入試験において、鼻腔組織の病変がみられたということで、この結果からLOAELを10ppmと見積もっております。こちらに種差の不確実係数等を考慮しまして、3ページ、103行の計算式から、評価レベルとしては0.075ppm(0.138mg/m3)と求めております。
 生殖毒性ですが、こちらは、妊娠ラットを用いたジメチルアミンの塩酸塩を経口投与した結果、胎児に何ら形態学的変化が認められなかったことをもって、生殖毒性は「判断できない」とされております。
 次に遺伝毒性ですが、in vitroのいくつかの試験で染色体異常が検出されていますが、in vivoでの信頼できる染色体異常試験又は小核試験が報告されていないことから、「判断できない」としております。
 神経毒性ですが、こちらも「判断できない」としています。ヒトで神経毒性を示唆する報告はあるものの、疾患を持つ患者での結果であって、その影響については明確ではなく、また、動物試験におきましても神経症状が観察されているものの、いずれも高濃度であり、神経毒性を詳細に検討した信頼できる試験の報告がないということから、結論としては「判断できない」と整理しております。
 次に「(3)許容濃度等」でございます。ACGIHがTLV-TWAとして5ppmを勧告しております。こちらは、2年間のラットの吸入ばく露試験の結果、NOAELがほぼ10ppmであったということを踏まえ、この5ppmを勧告しております。
 産衛学会は、2ppmを勧告しております。こちらは79年に10ppmの許容濃度が勧告されていたわけですが、その後、ラットとマウスの2年間の吸入試験において、10ppmで鼻腔内の組織による特徴的な病変が観察されたことから、LOAELを10ppmとして、そこから許容濃度として2ppmが勧告されております。
 次にDFG MAKですが、こちらも2ppmが勧告されております。こちらにつきましては、12ヶ月のラット、マウスの吸入試験で鼻の上皮に病変が認められたということを踏まえ、2ppmが設定されております。
 そのほか、NIOSH REL、OSHA PEL、UKのHSE、また、OARSにおける設定の状況につきましては記載のとおりとなっております。
 以上を踏まえ、「(4)評価値」でございます。一次評価値は、反復投与毒性から求めた評価レベルとして0.075ppm(0.138mg/m3)、また、二次評価値としましては、産衛学会が勧告している許容濃度の2ppm(3.7mg/m3)をそれぞれ設定しております。
 次に「3 ばく露実態評価」でございます。
 「(1)有害物ばく露報告の提出状況」でございますが、41事業場、計60作業について報告がありました。主な用途は「他の製剤等の原料」、主な作業の種類は「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「ろ過、混合、撹拌、混練又は加熱の作業」となっております。年間製造・取扱量、また、作業1回当たりの製造・取扱量、作業従事労働者数、1日当たりの作業時間は、記載のとおりでございます。また、発散抑制措置としましては、密閉化設備が設置されている作業が24%、局所排気装置が設置されている作業が55%、全体換気装置が設置されている作業が20%となっております。
 次に、「(2)ばく露実態調査結果」ですが、報告のあった41事業場のうち7事業場を選定し、実態調査を行っております。労働者11人につきまして個人ばく露測定を、2単位作業場について作業環境測定のA測定を、10地点についてスポット測定をそれぞれ実施しております。
 測定分析方法は記載のとおりでございます。
 対象事業場における作業の概要でございます。主な用途は「他製剤の原料」、「対象物質の製造」、また、ばく露の可能性のある主な作業は「仕込み」、「充填」、「サンプリング」で、1回当たり2分から180分間の作業となっております。また、調査をした作業は、屋内と屋外とそれぞれございますが、ばく露防止対策としては、75%の作業で局所排気装置が設置され、50%の作業で呼吸用保護具が使用されておりました。
 次に、測定結果でございます。11人の労働者に対して測定しましたが、3データが定量下限値未満であったことから、8データを評価データとしております。個人ばく露測定の結果から、8時間TWAの最大値は、仕込み作業及びノズルの洗浄作業中に測定された0.33ppm、また、推定値は0.55ppmとなっております。このことから、ばく露の最大値はこの推定値である0.55ppmとなり、二次評価値2ppmに比べて低い値となっております。
 以上を踏まえ、「4 リスクの判定及び今後の対応」でございます。
「以上のことから、ジメチルアミンの製造・取扱事業所においては、最大ばく露量0.55ppm(区間推定上側限界値)は二次評価値2ppmを下回っており、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられる。また、当該物質について、日本産業衛生学会又はACGIHによる経皮吸収の勧告はなされていない。当該物質は、反復投与毒性等がある物質であり、事業者はリスクアセスメントを行い、その製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として自主的なリスク管理を行うことが必要である。」と、このようにまとめております。
 以上でございます。
○名古屋座長 ありがとうございました。
 この物質に関しましては、経気道ばく露が少ないということと、それから経皮吸収がないということですので、先ほどの酢酸イソプロピルと同じように初期リスク評価で終わる物質だと思いますが、何か御質問等ございますでしょうか。
○大前委員 物理的化学的性状の蒸気圧ですが、2.03×105Pa、これはたしか修正したと思います。これでは1気圧を超えてしまいます。これは10の2乗か3乗か覚えていませんが、確認していただいて、修正をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 わかりました。
○吉成委員 非常にささいなところですが、3ページ、100行目と101行目に、不確実係数と根拠が載っています。LOAEL→NOAELの変換がUFの横に書いてありますが、根拠の方に書く項目だと思いますのでよろしくお願いいたします。
○名古屋座長 それについても修正をお願いいたします。
 他はよろしいでしょうか。
 そうしましたら、ジメチルアミンにつきましては、初期リスク評価で終了ということでお願いいたします。どうもありがとうございました。
 そうしましたら、次に移りたいと思います。では、2つ目の議題、「特別有機溶剤のリスク評価について」ということで、事務局から説明をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料2を御覧いただきたいと思います。
 こちらは「特別有機溶剤10物質に係るリスク評価の進め方について」です。今年度のリスク評価につきましては特別有機溶剤を対象物質としております。特別有機溶剤は、既に特化則を適用しており、その中で規制されているものですが、もともとは有機溶剤として有機則を適用していたものを、発がん性の観点から特化則の適用としたものです。その際に、適用を保留し、リスク評価を経た上で改めて検討するとされていた事項があるなど、通常のリスク評価とは異なる観点で評価を行わなければならず、その評価の進め方について事務局でとりまとめたものが資料2となります。
 それでは、資料の内容に従って御説明をさせていただきます。
 まず、「1.特別有機溶剤10物質に係るリスク評価のポイント」とあります。「(1)有機溶剤業務」について、有機溶剤業務は、特化則で規制するに当たっては、特別有機溶剤を使った一定の業務について規制をしております。これらを有機溶剤業務ということで12ほど区分を設けて指定をしており、これが規制の対象となっております。この有機溶剤業務ですが、現在適用を保留している措置ということで、括弧内に「ぼろ等の処理、設備の改造等、立入禁止措置」等々と記載があります。これらの措置は特化則の中にある措置ですが、現在、特別有機溶剤については適用を保留しており、こうしたものを改めて特別有機溶剤について措置として追加する必要があるのかどうか、この要否を判断するのが1つポイントとなってくるということです。
 また、※欄の記載は、保護衣等の備え付け等については、経皮吸収のある特別有機溶剤を製造し、取り扱う全ての業務について既に適用しているということです。これは、特別有機溶剤を特化則に移行した後に、経皮吸収の観点から規制をし、既に対応が済んでいるということです。したがって、今回のリスク評価の対象からは、この経皮の観点でのリスク評価は不要と整理されるのではないかと考えております。
 次に「(2)有機溶剤業務以外の業務」とありますが、特別有機溶剤は、現在、特化則を適用しているものは、先ほど御説明しましたように、有機溶剤業務に該当する業務となっております。その他の業務、すなわち、有機溶剤業務以外の業務につきましても、改めて特化則の対象業務として追加する必要があるのかどうか、この点についても今回のリスク評価のもう1つのポイントということになってまいります。
 また、「(3)共通」のところですが、既に特別有機溶剤として規制がされているものについては、その規制が十分であるのかという点も含めて評価をするという観点もございます。通常のリスク評価ですと、基本的には高リスクの業務を把握して、その評価を行っていくということになりますが、この特別有機溶剤のリスク評価につきましては、低リスク業務の把握も含めて行っていくものと考えており、共通事項に記載しました。
 次に、「2.ばく露評価小検討会における検討」です。このリスク評価は、ばく露評価小検討会の検討、また、有害性評価小検討会の検討を踏まえて最終的にリスク評価検討会において評価を行うということになっておりますので、この3つの検討会のそれぞれの実施事項という形で2~4に整理をしております。
 まず1つ目として、ばく露評価小検討会における検討について御説明いたします。「(1)検討の進め方」ですが、先ほど御説明しましたように、有機溶剤業務とそれ以外の業務とではリスク評価のポイントが異なってまいります。このため、評価におきましても、有機溶剤業務とそれ以外の業務に分けて評価することが必要であると考えております。また、有機溶剤業務につきましては、こちらも法令上12の区分に分けて指定しておりますので、その区分ごとにばく露抑制措置の追加等の要否を検討する、評価していくことが必要ではないかと考えているところです。
 これを踏まえまして、「(2)事務局の作業」としましては、ばく露作業報告によって報告された作業につきまして、有機溶剤業務とそれ以外の業務に分類、また、有機溶剤業務につきましてもこれを12の区分に細分類いたします。その上で、ばく露実態調査の各データがこの有機溶剤業務の12区分、あるいは有機溶剤業務以外の業務のどれに該当するのかをそれぞれ突合していきます。
 「(3)ばく露評価小検討会における検討」とありますが、(2)の作業で事務局が作成した資料に基づき、ばく露評価小検討会では、以下の検証をお願いしたいと考えております。事務局による有機溶剤業務12区分、また、有機溶剤業務以外の業務の分類、これが適切であるかどうか、また、こういった区分ごとに評価しうるデータ、データ数等も含めて、これが十分にあるかどうかを御判断いただきたいと思います。
 この検証の結果、リスク評価を行うのに十分評価しうるデータが得られている、評価可能であると判断した場合につきましては、有機溶剤業務の12区分、また、有機溶剤業務以外の業務の分類ごとに、ばく露の最大値を決定することになります。一方、評価するに十分なデータがなく、評価不能と判断した場合、追加で収集すべき情報等の内容を検討いただき、追加情報が必要だということになった場合には、改めて追加の実態調査を行うことが必要になってこようかと考えております。
 次に、「3.有害性評価小検討会における検討」について説明いたします。まず、過去の経緯でございます。これまで特別有機溶剤を規制する際にも有識者の皆様に検討会の場で御検討いただいておりますが、平成25年度に「化学物質の健康障害防止措置に係る検討会」というのがあり、この中で様々な問題提起をいただいております。特別有機溶剤につきましては、発がんの観点から特化則で規制しており、評価に当たっても発がんで決まった評価か否かということが問題になるのではないかという点があります。産衛学会、ACGHI等の許容濃度を二次評価値としてもってくるのが通常の考え方ですが、必ずしも発がん性を評価していない場合もございます。こうした場合、他の発がんデータから二次評価値が決まる可能性があるのではないかという点について問題提起をいただいておりました。
 こういった問題提起を踏まえ、事務局の方で改めて検討し、以下の提案をさせていただきます。
 特別有機溶剤につきましては、発がん性の観点から特化則で規制するものですが、その端緒としてはそうであっても、特化則はその他の有害性も含めて対象となります。管理濃度につきましても、必ず「発がん性を根拠とする」ということにはなっておりません。このため、特化則の規制の見直しに係る今般のリスク評価に当たっても、発がん性を根拠としていない場合も含め、管理濃度を二次評価値にすることが適当ではないかと考えております。この点につきましては、御審議いただきたいと思います。
 次に「4.リスク評価検討会における検討」ですが、ばく露評価小検討会、有害性評価小検討会のそれぞれの検討を踏まえ、こちらの検討会でリスクを評価することになります。現在、通常の評価においては、二段階評価として、初期、詳細と分けております。初期でスクリーニング的な評価を行った上で、「リスクが高い」という結論を得た場合には、詳細に移行して、そこで最終的な評価を行うという手順でございます。今回、特別有機溶剤につきましては、通常のものとはポイントも異なるということもございまして、少し違った整理が必要ではないかという観点から提案をさせていただくものでございます。
 提案は2つあり、まず1つ目の有機溶剤業務の各部分、こちらは既に特化則に規制されている部分になりますが、上記2の(3)、こちらはばく露小検討会におきましてリスク評価するに足る十分なデータがあるか否かを検討いただくことにしております。こちらで評価し得るデータが得られていることが確認された場合に、リスク評価検討会の方でリスク評価を行います。逆に申しますと、評価し得るデータがない場合は、追加調査等を行うことになります。いずれにしましても、リスク評価検討会に上がってくる段階で、評価し得るデータが得られていることを確認している状況になります。
 こうしたことから、作業工程に共通したリスクを評価していると考えられますので、当該評価をもって評価を終了、すなわち初期・詳細といった2段階評価にはしないということでございます。
 2つ目は、有機溶剤業務以外の業務ですが、こちらは新たに特化則で規制する必要があるかどうかを判断していくために、リスク評価を行っていくというものですので、こちらは通常の新規物質に対するリスク評価と同様の考え方となります。したがって、有機溶剤業務以外の業務に該当する業務全体として評価することから、高リスクと考えられた場合には、作業工程に共通した問題か否かをより詳細に分析すること等を目的として、詳細評価に移行するということにしております。つまり、通常の場合と同様ということでございます。なお、低リスクと評価された場合には、そこで評価終了ということになります。
 こちらにつきましても、本日御検討いただきたいと考えております。
 説明は以上でございます。
○名古屋座長 どうもありがとうございました。
 1ページ、1.の現在適用を保有している措置というところについて、下の※欄に書いてありますように、平成28年の改正の際、保護具の備え付けについては、一応規則が適用されるようになっており、既に適用済みで、経皮の観点からのリスク評価は不要だと書いてあります。それと同時に、その上のところも同じで、現在適用を保留していることについてもそういう規定ができているので、今回のリスク評価の中では、経皮に関するリスク評価をすることは不要だと考えてよいと、そういうことでよいですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 そうです。
○名古屋座長 今回の場合の特別有機溶剤につきましては、判断する必要はないのではないかというのが事務局からの提案だと思いますが、いかがでしょうか。現行法の中でやっているので、今回の有機溶剤については、あえてそこをリスク評価の中に取り込まなくてもよいということだと思いますが、どうでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、経皮の観点でのリスク評価は不要であって、今回のリスク評価で改めて規制の要否を判断する必要はないということでまとめさせていただきたいと思います。
 本日、議論する中で一番大切なところは3と4ですので、まず3についての議論をしたいと思います。有害性評価の中で、二次評価値を管理濃度にするかどうかという点です。従来からのリスク評価では、二次評価値が出てきた場合、管理運営委員会ではそれを管理濃度にしているという歴史があります。エチルベンゼン等では、もともと管理濃度にACGIHの値を使っていましたが、ACGIHは発がん性を評価していないことから、措置委員会では、最終的にはエチルベンゼンを有機則で規制するように決めました。しかし、結局、法制局から異論があり、特化則で規制することになったという歴史があります。いずれにしても、管理濃度の中には、発がん性を評価しているものと、評価していないものがありますので、二次評価値として管理濃度を使うというのが理にかなっているのではないかと思っております。皆様の御意見をよろしくお願いいたします。
○大前委員 管理濃度を二次評価値とすることが適当だというこの文章は、今、現実に存在する管理濃度を二次評価値とするのか、それにプラスして管理濃度を加えるという意味なのか、あるいはここで決めた管理濃度を二次評価値とするという意味なのでしょうか。どちらのことをおっしゃっているのでしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 基本的には両者の値は一致していると思いますが、御懸念の部分としては、例えば管理濃度を定めているものについて、許容濃度の見直し等がある場合があるかと思いますが、そうした場合には、有害性評価検討会の中でも御検討いただくことが必要であると思っております。そのように許容濃度が見直されているものに関しましては、管理濃度等についても、それを見直さなくてもよいのかという点については、いずれ検討していかなければいけない部分だろうと思います。そのような許容濃度が見直されているものについては、二次評価値についてもその見直したものを採用していくことについて検討が必要だと考えております。
○大前委員 わかりました。そうしますと、この文章は、ここで決めた二次評価値を管理濃度にするという意味の文章ですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 正確に申しますと、管理濃度というのは現在、産衛学会もしくはACGIHの許容濃度を採用して定めているという実態がございますので、基本的にそこは一致しているという前提で書いております。そのように一致しているという前提で書いてはいますが、許容濃度の見直し等があるものにつきましては、その見直しを前提に二次評価値あるいは管理濃度の設定についても改めて検討が必要だと考えているということでございます。
○名古屋座長 管理濃度の場合、たしかにACGIH等の許容濃度を使っていますが、平成26年のときに新しくもう1つ検討項目を増やしました。それは、最新の情報を入れましょうということに変えています。そのことが最初に適用されたのがリフラクトリーセラミックスです。リフラクトリーセラミックファイバーは、もともと二次評価値が0.2(f/cc)でしたが、ドイツの新しい文献では0.3(f/cc)でしたので、医学系の委員の先生に文献等を検討してもらった結果、ドイツの0.3がよいということになり、0.2(f/cc)から0.3(f/cc)の濃度を変えていますので、その辺りも含めて、改正された最新の情報を使って二次評価値にすると考えてよいのでしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 そういうことであれば、おそらくそういう形になってくると思います。有害性評価小検討会の中でも、個別に物質を見ていくことになると、この物質についてはこれが値としてあって、こういったものを管理濃度等にも反映させていくべきではないかというような議論になることもあると思いますので、そういった議論も含めて検討していただけるように考えております。
○名古屋座長 これは大前先生のところで見たデータがくるということですね。
○宮川委員 有害性の評価だけではなく、リスクの判断に関わることなので、「4.リスク評価検討会における検討」のところで議論した方がよいのかもしれませんが、管理濃度を使ってリスク評価をするということになりますと、実際に作業環境測定で管理区分を決めると、あるいはリスク評価そのものだと思いますが、その場合の上側5%値の計算の仕方が、このリスク評価事業でやっているものと作業環境測定で定められているものとは異なります。リスク評価事業でやっている方が、ばらつきの変動を加味した上で少し厳しい値をとるようになっていると思います。そうすると、その辺の差異は許容して、作業環境測定で出た値よりも少し厳しい値であっても、これは目的が違うからよしとするということでしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 御指摘のようなことで整理をしていくしかないのではないかと思います。
○宮川委員 もう1点ですが、二次評価値のことはこれでよいのですが、一次評価値について、今、この問題だけではなく疑問に思っているのは、発がんの懸念がある場合には、そこで評価値がうまく設定できないとそこで終わって、一次評価値なしになります。発がんの懸念がない場合に関して、反復測定などのデータを使って一次評価値を作っているのですが、例えば4.の2番目の○「有機溶剤業務以外の業務」について、のことを考えますと、初期評価の段階で一次評価値がないというのは、発がん以外の毒性の懸念を考えると、本当は望ましくないのではないかという気がしています。つまり、許容濃度などと違って、スクリーニングですから一次評価値もかなり低いところがデフォルトで算出できるようになっています。それで一旦評価するということは、意味があると思いますが、発がんの懸念があるものについては、それをしていないのが現状です。その辺、発がんの懸念があるものも、場合によっては一次評価値をもってきて検討した方がよいような気がしております。特にこの4の○の2番目に該当するようなときに、初期リスク評価で発がん以外のことに関してやる場合に、当初から発がん性の疑いがあるのに一次評価値を作らないことになって、それでやるというのはもう少し考える余地があるような気がしますがいかがでしょうか。
○名古屋座長 いま作っているのは二段階評価の場合で、一次評価値は確かにありますが、それを使っているわけではなく参考値として置いているだけで、もともと二次評価値を使って初期で終わるのか、詳細の評価に行くかを判断することになっていて、評価のところではあまり使われていなかったので、その議論が出てこなかったのではないかと思います。したがって、これからガイドラインを変えるとなったときにどうするかという話として問題提起させていただければと思いますが、いかがでしょうか。
 一次評価値の重要性は、あまりこのリスク評価の中には入ってきておりませんので、これからはそのような形で入れておいた方が、一次評価にどう使うかという議論が出てくるのではないかと思います。
〇宮川委員 今回、4.の1番目の○『「有機溶剤業務」の各区分について』、では、二次評価の初期評価はやらないということですが、有機溶剤業務以外の業務については、やはり初期あるいは詳細をやるということですから、そういうときに始めからがんが問題になったものだとすると一次評価値でやることがなくなってしまいますので、御検討いただければと思います。
○名古屋座長 行政と相談し、今回はガイドラインのところなどで検討するということにしておきましょう。
○増岡化学物質評価室長補佐 はい。
○原委員 法律的なことがよくわかっていないので質問させていただきたいのですが、そして、理解が間違っていたら正していただきたいと思います。有機溶剤の場合は、作業列挙で規制するという構造になっていると思いますが、特化則の場合は、そのものを使用していれば規制するというふうになっていると考えています。今回、有機溶剤業務以外の業務を法律の枠組みの中に入れるということは有機溶剤規則から特化則に完全に移行するという考え方でよいのでしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 現行の規制のあり方が結構複雑なのですが、物質としては、特別有機溶剤は特化則で規制するものと規定されていると思います。もともと有機溶剤として有機則で規制していたものを、発がん性の問題があるという理由で、その時点では、発がん性の観点から規制しなければならないという必要性から、特化則の方にもってきた部分があります。対象としている業務というものが、有機則で規制されていたときの有機溶剤業務については、まず規制をするという方向でもってきておりますし、また、措置につきましても特化則の対象ですが、有機則の規定を準用するということになっており、規制の体系が非常に複雑になっております。
 また、特化則に関しましても、確かに御指摘のように、かなりのものについて、製造・取扱いと大括りに規制しているという部分もあります。ただ、必ずしもそのようなものばかりではなく、特化則の規制に関しても特定の業務について規制をする、特にリスク評価を経て規制するような場合につきましては、特定の業務についてリスクが高いという結論をいただくこともあります。そのような場合、特化則で規制する必要があっても、必ずしも製造・取扱いの全般を規制することにはなっていないということはあります。
 もともと規制をされた有機溶剤業務について特化則で規制をするという形にしたところでございます。それ以外の業務については、リスクが高いものがあれば、それは追加していこうと考えております。その点が1つ。既に規制されているものにつきましても、基本的には有機則の規定を準用しておりましたので、特化則固有の規制につきましては必ずしも適用しておらず、先ほど申し上げましたように保留していますので、これの追加の要否という点が2つ目。その措置の追加の部分と、業務の追加の部分というこの2つの観点から、今回リスク評価を行うことになっております。
○原委員 ありがとうございます。
○大前委員 今回の後半の話は、あくまでも特別有機溶剤10物質に係るものだけという方針なのか、あるいはそれ以外の物質についても、リスク評価をやれば二次評価値が出てきますが、それを管理濃度の方に転用していこうという方針なのか、その点についてはいかがでしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 今回の整理は、あくまでも特別有機溶剤についてということで整理をしております。
○大前委員 これは一般論なのですが、管理濃度よりも許容濃度あるいはTLVの方が新しく決まりますから、管理濃度はどうしても遅れるという側面があると思います。したがって、考え方としてもこの10物質以外の物質についても、ここでリスク評価をやって二次評価値が決まればそれを管理濃度に転用していくという考え方もあると思いますので、後ほどまた検討していただきたいと思います。
○名古屋座長 他にありますでしょうか。
 有機溶剤業務は、有機則できちんとコントロールされています。特化則で規制されるからといって、有機則でもやはりきちんと同じように規制されていますので、問題はないと思います。ただ、そうはいっても有機溶剤業務以外の業務は新しい業務ですから、これは今までどおりにリスク評価をして、リスクが高いと判断されたものについては詳細評価までやるという二段階評価という形で、そのような形でよいのではないかと、私は思いますが、どうでしょうか。
 文章は若干直すところはあると思いますが、こういう形の中で、有機溶剤業務につきましてはこのまま初期リスク、二段階評価は不要だと思います。新しいものにつきましては、今までどおり二段階評価をするということでまとめてもよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 そうしましたら、本日の議論の中では、経皮吸収のところと、管理濃度については若干宿題がありましたが、どちらかというとガイドラインの構成のところ、それから新しいものをなるべく速く取り入れるシステムにしていただきたいという要請だと思いますので、それはお願いしておきたいと思います。それから、リスク評価につきましても、有機溶剤業務では二段階評価をせずに、それ以外の新しい業務については二段階評価をするということでまとめたいと思います。よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。
 資料2まで終わりました。あとは今後の予定ということで事務局の方からよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料3、「今後の予定」を御覧いただきたいと思います。
 次回が1月10日、次々回が1月24日とさせていただいております。1月10日の検討会ですが、午後3時からと記載しておりますが、対象物質が多くなる可能性がありますので、時間の延長をして、3時から5時までの予定を、2時半から5時半までの予定で改めて再調整をさせていただいているところでございます。委員の皆様方におかれましては、この場で恐縮ではございますが、2時半から5時半ということで予定を入れておいていただければと思います。
 また、1月24日につきましては、従前御連絡させていただいているとおり3時からの2時間を予定しております。
 場所等は未定でございます。決まりしだい事務局より御連絡をさせていただくようにいたします。
 以上でございます。
○名古屋座長 どうもありがとうございます。
 8物質ということですからかなり物質があると思いますので、時間の変更だけよろしくお願いいたします。
 そうしましたら、本日のリスク評価検討会を閉会させていただきます。ありがとうございました。