2019年2月20日 薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会 議事録

日時

平成31年2月20日(水)18:00~

場所

TKP新橋カンファレンスセンター ホール1A

出席者

出席委員(13名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人2名
 
欠席委員(4名)五十音順
行政機関出席者
  
 宮本真司(医薬・生活衛生局長)
 森和彦(大臣官房審議官)
 中井清人(医療機器審査管理課長)
 矢守隆夫(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 森口裕(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 鈴木章記(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他

議事

○医療機器審査管理課長 ただいまより薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会を開催いたします。先生方におかれましては、遅い時間に御多忙の中、御出席いただきまして、どうもありがとうございます。

 現時点で部会委員17名のうち13名に出席いただいておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告申し上げます。

 部会開会に当たり何点か御連絡がございます。最初に本年1月25日付けで薬事・食品衛生審議会委員の改選が行われ、それに伴い本部会の委員についても新しく委員の任命が行われたところです。つきましては、タブレットにございます再生医療等製品・生物由来技術部会委員名簿のファイル、先生方はタブレットですが事務局は紙でございまして、お手元に配布した資料の上から2枚目にある座席表の裏面にあります委員名簿に則しまして、先生方を御紹介申し上げます。大変申し訳ありませんが、新任の先生方におかれましては、一言御挨拶を頂ければと思います。今回から新たに6名の先生に委員として御就任いただいております。北海道大学病院臨床研究開発センター教授の荒戸照世委員です。

○荒戸委員 北大の荒戸でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理課長 鹿児島大学共同獣医学部附属越境性動物疾病制御研究センター、センター長の小原恭子委員です。

○小原委員 小原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理課長 国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター第一室主任研究官の竹内隆正委員です。

○竹内委員 竹内でございます。よろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理課長 国立感染症研究所エイズ研究センター第二室室長の立川愛委員です。

○立川委員 立川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理課長 神戸大学医学部附属病院臨床研究推進センター、センター長の永井洋士委員です。

○永井委員 永井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理課長 また、本日遅れて来られるかもしれませんが、東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター、センター長の大橋十也委員にも御就任を頂いています。

 続いて、退任された先生方の御紹介をさせていただきます。荒川義弘委員、神田忠仁委員、斎藤泉委員、俣野哲朗委員、森川裕子委員、横田恭子委員におかれましては、御退任されたことを報告申し上げます。

 続いて部会長の選出です。委員の改選に伴い、1月25日に行われた薬事分科会において各部会の部会長の選出が行われています。本部会については、奥田晴宏委員が改めて部会長として選出されていますので、御報告を申し上げます。一言、御挨拶を賜りたいと思います。

○奥田部会長 国立衛研の奥田でございます。よろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理課長 次に副部会長の選出についてです。これまで副部会長をされていた神田委員が退任されたことに伴いまして、薬事・食品衛生審議会令第7条第5項の規程により、部会に属する委員のうち部会長があらかじめ指定する者が、その職務を代理するとされています。奥田部会長に御指定をお願いしたいと思います。

○奥田部会長 副部会長については、楠岡委員にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは楠岡委員、よろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理課長 楠岡委員、副部会長席に御移動のほどお願い申し上げます。

 今年の1月付けの機構の組織改編に伴い、新たに着任した医薬品安全対策第二部長の井口を御紹介させていただきます。

 次に事務局から本部会の運営方法について、特に御留意いただきたい事項について御説明申し上げます。改めまして、本部会の御参加に当たって留意事項3点ほど、御説明申し上げます。第一に守秘義務の関係です。

○事務局 事務局から御説明申し上げます。第一に守秘義務の関係です。国家公務員法第100条におきまして「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」と規定されています。本審議会の委員、臨時委員、専門委員は非常勤の国家公務員であり、この規程の適用を受けますので、職務上知り得た秘密につきまして漏らすことのないようお願いいたします。

 第二に薬事に関する企業等との関係です。当日配布資料フォルダの中の参考資料1~3に沿って御説明します。紙資料に関しましては、下の方にありますので御確認いただけますか。まずは参考資料1「薬事分科会規程」を御用意ください。タブレットが置かれている先生方の席には、当日配布資料のフォルダがありますので、そちらを御確認いただければと思います。参考資料1「薬事分科会規程」の6ページを御覧ください。薬事分科会規程第11条におきまして、「委員、臨時委員又は専門委員は在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない。」と規定されています。審議の中立性、公平性を確保する観点から規定されていますので、これらに該当する場合、また任期中に該当することとなる場合には、速やかに事務局まで御連絡いただきますようお願い申し上げます。

 続きまして、参考資料2「薬事分科会における確認事項」を御覧ください。タブレットの場合は、左上の「戻る」から1つお戻りください。参考資料2「薬事分科会における確認事項」の10ページを御覧ください。審議事項について御説明します。再生医療等製品という見出しの表の右側、部会、分科会と書かれている欄に区分ごとにの印が付いています。印は審議、印は報告、印は文書配布による報告、×印については審議・報告はなしとなっています。基本的にはこれに基づき、部会、分科会において御審議をお願いしています。

 参考資料3「薬事分科会規程」を御用意ください。5ページを御覧ください。第7条におきまして、「部会における決定事項のうち、比較的容易なものとして分科会があらかじめ定める事項に該当するものについては、分科会長の同意を得て、当該部会の議決をもって分科会の議決とする。ただし当該部会において、特に慎重な審議を必要とする事項であるとの決定がなされた場合はこの限りではない。」と定めています。先ほどの表に記載している事項以外にも、この但し書きにありますように「部会において特に慎重な審議を必要とする事項」であると決定された場合には、分科会において御審議をお願いすることとなります。委員の皆様におかれましては、このような規程を御承知の上、御審議いただきますようお願いいたします。説明は以上です。

○医療機器審査管理課長 議事に先立ちまして、先ほど事務局が御説明申し上げました薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果です。本日、全ての委員の先生方から適合している旨を御申告いただいています。委員の先生方には、会議の都度、このような確認をさせていただいています。御負担になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

○事務局 本日の議題の公開・非公開の取扱いについて御説明します。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日予定している全ての議題は再生医療等製品の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容などが含まれるため、非公開とします。

 頭撮りはここまでとさせていただきますので、記者の皆様には御退室いただきますようお願いいたします。

 それでは、以降の進行については奥田部会長にお願いいたします。 

○奥田部会長 それでは最初に、事務局から配布資料の確認と審議事項に関与された委員と利益相反に関する申出状況について報告をお願いします。

○事務局 配布資料の確認をさせていただきます。本日、委員の先生方の机にはタブレットを配布させていただいています。また事務局の席には紙の資料を御用意しています。

 タブレットの構成から御説明します。最初のフォルダの一番上に、階層1と書かれたページを御覧ください。階層1、配布資料一覧と書かれたページが、最初のページになります。そちらの下に資料1「コラテジェン筋注用4mgの承認の可否等について」、資料2、資料3、資料4。その下にPDFが2つ、委員名簿、座席表、当日配布資料のフォルダがそれぞれあります。御確認いただけますか。

 本日のフォルダ構成ですが、各フォルダの一番上に○印で階層を示す資料が付いていますので、例えば資料1のフォルダをクリックしていただくと、階層2と進みまして、本日説明で使用させていただきます資料1(説明用)という資料があります。

 議題2については、階層1に戻っていただき資料2のフォルダの中の資料で説明をさせていただきます。こちらの操作に関しまして、御不明な点がありましたら挙手をお願いいたします。また事務局の紙資料ですが、お手元の左側に分厚い資料として事前配布した資料1から資料4までの資料があります。事務局の資料については、省略させていただきます。御不明な点があれば御連絡ください。本日のタブレットの資料について、1つだけ操作方法の説明をさせていただきます。資料1「コラテジェン」のフォルダのうち、資料1(説明用)と記載のあるファイルをお開きください。諮問書のページが表示されると思います。本日のタブレットですが、スクロールする機能が指での操作になります。左下の3本線の所をタッチしていただくと、その上に5つ欄が表示されまして、一番下のファイル、印刷に注釈を付けるというボタンをクリックしてください。下にサムネイルが表示され、表示されたサムネイルをタッチしていただくとページのジャンプをすることが可能になります。ページの移動の際には、こちらの機能をお使いいただければと思います。このページから戻る時ですが、左上に「閉じる」がありますので、そちらを押していただければと思います。表示されない場合は、画面を何度かタップしていただくと表示されるかと思います。よろしいでしょうか、配布資料に関する説明は以上となります。何かございましたら、議事の途中でも構いませんので事務局までお知らせください。

 次に、本日の審議事項に関する競合企業・競合品目について、当日配布資料に沿って御報告します。階層1の中にあります当日配布資料のフォルダを開いていただき、当日配布資料のPDFを御覧ください。2ページからが競合品目・競合企業リストです。「コラテジェン筋注用4mg」ですが、標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)における潰瘍の改善を予定効能・効果又は性能としており、競合品目として資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 続きまして、通し番号で2ページ「キムリア点滴静注」ですが、B細胞性急性リンパ芽球性白血病及びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を対象疾患としており、競合品目として資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 通し番号で3ページ「Cx601」ですが、クローン病患者における肛門周囲複雑瘻孔を対象疾患としており、競合品目として資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。以上です。

○奥田部会長 よろしいでしょうか。ただいまの事務局の説明について、特段の御意見、コメントなどはありますか。

○医療機器審査管理課長 追加で補足を申し上げたいと思います。本日の議題1に関しまして、関西医科大学附属病院血管外科の診療教授の善甫宣哉先生に御出席いただいています。議題2に関連して、聖路加国際病院小児科副医長の長谷川大輔先生に御出席いただいています。どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

○奥田部会長 よろしいですか、参考人の先生方もよろしくお願いいたします。今の競合品目の御説明について、特に御意見がないようでしたら本部会の審議事項に関して競合品目・競合企業リストについて、委員の皆様の御了承を頂いたものといたします。

 次に委員からの申出状況について、お願いいたします。

○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。委員の皆様から、寄付金、契約金等の受取状況をお伺いしたところ、議題1~3のいずれの議題についても、薬事分科会審議参加規程第12条議決不参加の基準に基づく審議に参加できない委員はいらっしゃいませんでした。ただし、薬事分科会審議参加規程第13条に基づき、議題3におきまして議決に参加できない委員が永井委員となっています。この際、御退室いただく必要はありません。以上、御報告します。

○奥田部会長 ただいまの事務局の説明について、特段の御意見、コメントはありますか。よろしいでしょうか。それでは皆さんに御確認を頂いたものといたします。

 本日は、議題1~3が審議事項、議題4が報告事項となっています。それでは、議題1に移ります。再生医療等製品「コラテジェン筋注用4mg」の製造販売承認の可否、条件及び期限の要否並びに再審査期間の指定の要否についての審議に入ります。機構から説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 よろしくお願いいたします。議題1、資料番号1「コラテジェン筋注用4mg」の製造販売承認の可否等について、機構より御説明させていただきます。

 本品は、体内でヒト肝細胞増殖因子、以下「HGF」と略しますが、これをコードする、cDNAを含むプラスミドDNAを有効成分とする再生医療等製品です。虚血病巣部付近の筋肉内に投与することにより、細胞内に取り込まれ、産生・分泌されたHGFにより血管新生を誘導することで、下肢虚血状態の改善が期待できると考えられています。今般、本品は重症化した慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)における潰瘍及び安静時疼痛の改善に係る効能・効果又は性能として、承認申請されました。

平成3011月時点において、本品はいずれの国及び地域においても承認はされておりません。また、本品の専門協議に御参加いただきました専門委員は、当日資料2にあるとおり5名の委員です。

 以下、臨床試験成績を中心に審査の概略を説明します。お手元の紙資料又はタブレットを御覧いただければと思います。今般の承認申請では主な臨床成績として、標準的な薬物治療の効果が不十分で、血行再建術の施行が困難な重症虚血肢を有します閉塞性動脈硬化症の患者、以下「ASO」患者と略します。それと標準的な薬物治療の効果が不十分で潰瘍を有するバージャー病の患者、以下「TAO」患者と略します。それぞれ対象として、ASO第III相試験及びTAO一般臨床試験の成績が提出されています。

 初めに本品の審査の方針について御説明します。紙の審査報告書では、46ページ下段から47ページ中段まで。タブレットでは、50/137ページの同様の箇所を御覧ください。

○医薬品医療機器総合機構 タブレットの50/137ページ下段から51/137ページの中段までを御覧ください。重症虚血肢に対する評価におきまして、真のエンドポイントは下肢切断の回避であるわけですが、このASO第III相試験及びTAO一般臨床試験においては、下肢切断を評価できる試験の計画とはなっていませんでした。一方で、重症下肢虚血患者における潰瘍の治癒、安静時疼痛の軽減は、患者の生活の質を向上させ得るものです。特に標準的な薬物治療の効果が不十分、あるいは血行再建術の施行が困難な重症下肢虚血患者においては、臨床的には意義があると考えられます。したがいまして本品では、潰瘍の治癒(潰瘍の完全閉鎖)、これと安静時疼痛の軽減を期待する効果として、有効性を評価しました。

 まず、ASO患者の潰瘍における有効性について御説明します。タブレット31/137ページの表22を御覧ください。ASO第III相試験では、感染制御等の皮膚が有している生体バリア機能の回復が期待でき、臨床的意義があると考えられる潰瘍の完全閉鎖、すなわち表の中では変化率-100となっていますけれども、これについて、本品群で11例中4例、プラセボ群で5例中1例に認められました。

 タブレット37/137ページ、表29を御覧ください。こちらはTAO患者を対象としたTAO一般臨床試験では、完全閉鎖に至る潰瘍は9例中5例に認められています。潰瘍消失の維持については、TAO患者において15か月後に評価が得られた3例において、全例で消失が維持されていることが確認されています。これらの成績を踏まえまして、潰瘍に対しては一定の有効性が期待できると判断しています。

 一方、安静時疼痛については、タブレットの54/137ページの中段を御覧ください。TAO患者、ASO患者いずれについても、現時点では有効性が確認できるほどの十分な検討ができておらず、現時点では一定の有効性が示されたとまでは結論付けられないと判断しています。

 次に安全性については、タブレット57/137ページの表45を御覧ください。本品の使用時におきましては、本品の作用機序である血管新生作用から良性又は悪性新生物、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性及びそれらに関連すると思われる有害事象の発現リスクが考えられます。臨床試験におきましては、本品投与とこれらの事象の発現の関連性は明らかとなっておりませんが、これらについては添付文書、使用上の注意において注意喚起することとしています。

 以上のような審査の結果、タブレットの75/137ページを御覧いただきたいと思います。総合評価の項に示しますとおり、機構は改めて本品の有効性及び安全性の評価を適切に行うことを条件に、条件及び期限を付した上で承認して差し支えないと判断し、本再生医療等製品・生物由来技術部会で御審議いただくことが適切と判断しました。また、製造販売後、承認条件評価計画についてはタブレットの73/137ページの表49に示すとおりです。有効性評価の実施に必要な期間を考慮しまして、承認の期限については5年とすることが適切と考えています。説明は以上となります。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

○奥田部会長 ありがとうございます。審議の前に参考人の善甫先生から、追加の御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○善甫参考人 関西医科大学附属病院の血管外科の善甫でございます。ただいま機構から御説明がありましたように、閉塞性動脈硬化症並びにバージャー病、ASOとTAOと略させていただきますが、それに対するHGFという血管新生の遺伝子治療です。本邦において、血管外科医が携わっている慢性動脈閉塞症の、いわゆるカテーテルインターベンション若しくはバイパス手術の患者さんは、大体年間1万5,000人程度おられます。そのうち約1割の患者さんがインターベンション若しくはバイパス手術をしても壊死がどんどん進行して、いわゆるマイナーアンプテーションといいまして、足の指、足部、若しくはメジャーアンプテーションといわれる膝下、膝上の切断に陥っております。特に、膝上の切断をした患者さんは、術後30日以内の手術死亡が約10%と、かなり予後が悪くなっております。

 このHGFは、ASOとTAOの骨と腱が露出していない潰瘍に対して投与して、潰瘍の治癒率が、ASOでは約36%、プラセボが20%、バージャー病で、TAOでは約55%と、バージャー病の方が良好となっております。その理由は、バージャー病は下腿の血管閉塞が主でありまして、動脈硬化症の方は腸骨、大腿・下腿動脈という、かなり広範囲の虚血に陥っているものですから、このHGFの血管新生のパワーが若干弱いということで、TAOの方が潰瘍治癒率が良くなっております。

 しかしながら、ASOに対してもある程度の効果は期待できまして、例えば小さな潰瘍の患者さんに、インターベンションをしてもバイパス手術をしてもなかなかよくならない患者さんに対して、こういうHGFの遺伝子治療により、潰瘍が治れば、その後に潰瘍からどんどん壊死が進展して、先ほどお話したような、膝下、膝上切断になった場合、生命予後もかなり悪くなってきます。そういう意味で、遺伝子治療の治療意義があるのではないかと考えています。そういうことで、先般、専門協議を行いまして、臨床的にもHGFは治療意義があるのではないかと判断しました。以上です。

○奥田部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から、御質問、御意見をお願いいたします。

○長島委員 この血行再建術の施行が困難な状態というのは、具体的にはどのような状態が想定されるのでしょうか。

○善甫参考人 特に、閉塞性動脈硬化症の患者さんは、長期にわたり下肢の虚血に陥っておりまして、主にバイパス手術には患者さんの同側の大伏在静脈、自家静脈を使ってそれを反転若しくは弁を破壊してバイパス手術に使うのですが、その自家静脈の径が小さく、若しくは性状が悪くてバイパス手術に使えない場合があります。膝下膝窩動脈までは人工血管を使って行いますが、脛骨、腓骨動脈、特に最近は年間1,000例以上の症例で、足関節レベルの血管径が1~1.5mm程度の細い血管にバイパス手術する場合には、どうしても静脈を使わなければいけませんので、そのバイパスグラフト材料がないという場合もあります。また、いい静脈がありましても、例えば大腿、膝上または膝下膝窩動脈をドナーアーテリーとして、その末梢側動脈の血管抵抗が非常に高くて、いくら良い静脈を使ってバイパス手術をしても、早期に閉塞してしまうという病態もあります。そういうのが、いわゆるバイパス手術をしても全く効果がないということです。

 あと、血管外科医のみならず、循環器内科の先生、若しくは放射線科の先生が、カテーテルインターベンションで浅大腿動脈から下腿の動脈の治療をされますが、カテーテルインターベンションをした場合は、血行再建のパワーがバイパス手術よりは弱いのです。それと、カテーテルインターベンションの一番の問題は、再狭窄の問題が起きます。施行後3か月から2年以内に血管内膜肥厚が起きまして、再狭窄によって、また下肢の虚血が再燃してしまうということがありますので、そういう患者さんは何回もできるものではありません。3回程度はできますが、先ほどお話しましたような末梢の血管が悪くなり血管抵抗が増して、結局インターベンションも駄目と、そういう患者さんもおられますので、そういう意味からも、このHGFを使った血管新生治療は意義があるものと考えます。

○奥田部会長 ほかに先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○楠岡部会長代理 機構にお伺いしたいのですが、この疾患の場合、トゥルーエンドポイントといいますか、目的とすべきは下肢切断の回避ということになるかと思うのです。今回の評価で長期フォローアップしている例数がそれほどないので難しいと思うのですが、潰瘍の縮小効果は下肢切断のサロゲートエンドポイントになり得るかどうかに関して御意見をお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構から回答させていただきます。サロゲートになるかと言われると、そこまでにはなっていないと考えています。特に、下肢切断は10年、20年ぐらい前は、ほかに治療法がない場合には、下肢切断を選択していたと思っておりますけれども、昨今、先ほど参考人の先生からも御説明いただいたように、カテーテルインターベンションなど色々な手技の発達等がございますので、潰瘍が悪くなり、それが即下肢切断に至るわけでもないと思っていますので、必ずしもサロゲートとまでは言えないのかなと思っております。

○楠岡部会長代理 そうすると、今回は潰瘍の縮小という、比較的限局的な効果に注目してということで考えていいわけですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。下肢切断がもともとトゥルーエンドポイントではあるのですが、潰瘍の縮小自体は、昨今この領域の診療ガイドライン等でも委員がおっしゃるとおり、疼痛の管理や潰瘍の管理というものでも、患者さんのQOL、ADLの管理という面でメリットがあるということは書かれておりますので、そういった意味で潰瘍の管理に関しても臨床的意義があると考えましたので、今回承認して差し支えないのではないかと考えております。

○奥田部会長 ほかにいかがでしょうか。

○永井委員 製造販売後調査のフィージビリティについてコメントがあります。今回、あたかも臨床試験のような形で症例数の設計をしているのですが、そのコントロールとする数字がPhaseIIIのデータとTAOの一般臨床試験ということで、これはどちらも10年以上前のデータで、その当時に比べて大分治療成績が向上していると思うのです。例えば先進医療Aでも自己細胞治療を使ってやっていますし、CD34細胞治療といったようなものもあります。そうすると、10年前当時のデータをコントロールにするのが現実的なのかというところが、疑問なので御説明いただきたいと思います。

 それから、本品が投与されない患者さんが実際にどれぐらいいるのか、そういった人たちは、今申したような色々な治療法を受けていってしまうので、結局解析対象から除かれてしまうのではないかという懸念もあります。当時から症例数を集めるのに苦労した研究、果たしてコントロールの80症例というものが集められるのかどうなのかが懸念です。

○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えいたします。1つ目の質問ですが、成績が向上したとしても、やはり標準的な治療がされて血行再建が一通りされて、もう手がないという患者さんに対して行う治療です。今回の試験の成績を踏まえて、市販後においてどのぐらい評価をすれば有効性が検証できるかというところを踏まえて算出されたものということになります。

 次に、市販後にどのくらい対照患者がいるのかということですが、これは条件及び期限付き承認された再生医療等製品であれば同意を取って治療を行うわけですが、同意されない患者さん、あるいは市販されるまでの間に時間がありますので、この辺りを踏まえて対照患者を取ることで、コントロールの集団を得ていくというところを想定してデザインされたということになっています。

○永井委員 標準治療の話は分かるのですが、実際に現場ではもう色々なことがされているので、思ったほどのきっちりした結果が出るのかというところが懸念なのです。

○奥田部会長 荒戸委員の御質問は、今の市販後のことと関係していますか。

○荒戸委員 はい。

○奥田部会長 では、お願いいたします。

○荒戸委員 私も市販後についてお伺いしたいのですが、先ほど来、承認申請までのデータとして、真のエンドポイントは切断だけれども、潰瘍の縮小で評価されたということでした。市販後では、真のエンドポイントで見る必要はないのかという点と、あとは市販後には完全閉鎖率で見ることになっていると思うのですが、完全閉鎖と切断との関係について参考人の先生あるいは機構に教えていただきたく思います。

○奥田部会長 善甫先生いかがですか。

○善甫参考人 私から少しお話させていただきます。この血管新生療法は、私も前任地の山口大学で骨髄細胞移植というのを結構やっていたのですが、そこまでのパワーはないのです。実験レベルで、ラットやラビットの後ろ脚と人間の何キログラムという脚というのは全然ボリュームが違います。ですので、もちろん沢山の細胞を、その当時は10掛ける8乗ですね、億単位の細胞を打っていたのですが、バージャー病は、ある程度効果はありましたが、やはり閉塞性動脈硬化症は、少数例、今回のASOの第III相試験と同じような、3割から4割程の治癒はあったのですが、先生がおっしゃるような下肢の切断を回避するようなパワーはございません。

 ですから、インターベンションやバイパス手術を凌駕するものではないと思います。エンドポイントをどこにするのかというのは難しいと思うのですが、やはり潰瘍が治癒して痛みがなくなり、それ以上壊死が進行しない患者さんはもちろんおられるわけですから、そういう患者さんを対象に投与したらいいかなと思います。

 しかしながら、先ほども少し言いましたが、骨や腱が露出していない潰瘍が、果たしてどのぐらいおられるかという問題があります。そういう潰瘍というのは、比較的薬物治療をしても、例えば禁煙して入院しただけで治るような患者さんもおられます。ですから、このプラセボでも2割の患者さんは治っているわけです。そういう患者さんは、確かにこのHGFを投与しても治るのかもしれませんが、骨や腱が露出して、それで何もしなかったらどんどん壊死が進行し、メジャーアンプテーションをしなければいけないような患者さんを救肢できるわけではないというように私は考えております。

○森尾委員 善甫先生に対する質問です。荒戸委員や永井委員のフォローアップのような質問です。承認後の市販後の評価項目ですが、例えば血管の新生あるいは血管の太さというのを画像的にダイレクトに評価するような指標あるいはそのサロゲートのようなものはあるのでしょうか。

○善甫参考人 専門協議の際も、「いわゆる無侵襲の診断で、客観的な下肢の血流がよくなったという評価はできないのか」と言われました。もちろん、一番は上肢と下肢の血圧比(ABI)がよくなればいいのですが、それを上げるほどのパワーはございません。あと、経皮的酸素分圧やスキンパーフィジョンプレッシャー(SPP)を上げるだけの効果はないと思います。ただ、実験レベルではレーザードップラーを使った血流解析などができますが、果たして患者さんにおいてそれができるかどうかというのは、なかなか難しいのではないかと私は思います。

○医薬品医療機器総合機構 市販後の計画で、血行動態の指標というのも12週後の評価指標に入っております。先ほど善甫先生からおっしゃっていただいたABIや経皮酸素分圧等の血流の指標も見て、対照群と比較する計画にはなっております。

○奥田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。永井委員の御質問は、対照群を集めるフィージビリティについての御質問と私は思ったのですが、80例を集めることができるかということです。この点について、もう一度回答を整理してお願いしたいのです。

○医薬品医療機器総合機構 対照群は、本治療に同意されなかった方であったり、あるいは市販される前に時間がありますので、その期間において集めていくというような方法論で、80例を集めていこうという形で計画されております。

○善甫参考人 日常臨床において、バージャー病は若い男性の喫煙者に多く、特にアジアの人に多いと言われています。以前に比べましたら、かなり患者さんは減っていますが、必ず1施設に年間1人か2人はバージャー病の患者さんが来られます。そういう患者さんは必ず足に潰瘍を持っておられて、それほどひどい潰瘍ではありませんので、そういう患者さんを対象にすれば、80人の患者さんは十分に集められるのではないかと思います。

○永井委員 リクルートはできると思うのですが、本薬を含めた治療のオプションが現にあるので、色々な治療を受けていってしまうと、結局解析には合理的なコントロールとして入ってこないのではないかということも考える必要があるのかと思います。

○善甫参考人 もちろん、抗血小板薬、血管拡張薬は当然、内服治療若しくは入院して点滴治療をしてもらいますが、このコラテジェンという製品が出ましたら、まずこれをやってみようということになると思うのです。ですから、そういう意味では集めようと思ったら全国で80例というのは容易に集められるのではないかと私は考えます。

○奥田部会長 80例というのは対照群なのでコラテジェンが入らない患者さんですね。

○善甫参考人 入らないものですね。勘違いしていました。

○医薬品医療機器総合機構 やはりこの製品は条件及び期限付承認ですので、市販後の有効性の検証が重要になってきます。ここの実施可能性は、やはり審査の中でも申請者と時間をかけ協議しました。方法論として、実際に対照となる患者はいらっしゃるのかということに関しては、本品の治療を望まない同一の患者さんであったり、80例は実施可能だというところで、この案を固めてきたという背景です。全くできないのではないかという話ではなくて、ある程度実施は可能というところで計画を立てたところです。

○奥田部会長 佐藤委員、何か追加でありますか。

○佐藤委員 フォローアップの12週間という期間についてなのですが、これは80例のコントロールを集めるための現実的な線ということで、潰瘍の縮小を見るためには12週間と考えておられるのでしょうか。といいますのは、そのほかにも下肢切断や生命予後、血行動態など、もう少し時間がかかるような印象があるのです。この辺はどのようにして12週間というように決められたのでしょうか。その辺をもう少し詳しく教えていただきたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 まず、臨床試験の方は12週で主要評価項目は評価されていたところですので、12週での潰瘍の完全閉鎖率という形で出しております。当然、対照群であれば12週でどうかというところですので、対照の方は12週になります。それと、投与した後に潰瘍の完全閉鎖以降も、当然フォローアップをしていただいて、その後色々な評価項目も情報収集するというようなデザインになっております。

○奥田部会長 かなり市販後のことについて議論を進めておりますが、ほかに御意見はございますか。

○小原委員 機構の方にお伺いしたいのですが、本品が日本以外で今のところは承認を取得していないということで、今後、例えば臨床治験などは米国等でもやられているようですが、ほかの国での承認というのは御予定としてあるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 このコラテジェンに関しては、現時点で海外での開発が進んでいるというのは聞いておりませんので、本邦での製品という形になります。

○中岡委員 何度も申し訳ないのですが、市販後調査という面での対照群のところがすごく気になるところです。80例というのが現実的に集まるだろうというお話でしたが、患者さんの立場に立ってみると、この製品が出て以降はすごく集めにくくなるような気がするのです。やはりこういう製品が出た以上、患者さんは藁にもすがるような思いで打ちたいと。これをあえて拒否されるというのはかなり希なケースではないかと想定できるのですが、その辺りの倫理的な問題などをきちんと議論されているとは思うのですが、それも踏まえた上で、きっちりとPMSのプロトコルを構築されているのかどうかというところをお聞きしたいのですが。

○医薬品医療機器総合機構 まず、本品は条件及び期限付承認になりますので、承認されたからすぐに誰もが使えるという話ではないです。当然、更なる有効性と安全性の検証が必要になってくるというところで使われる製品ということが前提になります。それと、本品の対象となる患者さんですが、潜在的には全国合わせて5,000人ぐらいが見込まれていますので、当然その中で慎重に使っていくというスタンスになりますので、その中で一定程度の対照となる患者が出てくるということは十分に想定できると考えております。

○善甫参考人 先ほど私は対照について言葉を間違えていまして、私は専門協議の際に、先生がおっしゃった倫理上のことを述べました。HGF、コラテジェンが出たら、皆これに飛び付いて、潰瘍治療を希望されるのではないかと私も思ったのですが、ほかの専門委員の先生は、そこに関しては全く特段の問題はないとおっしゃっていましたので、私はそこで引き下がりました。先生がおっしゃるコントロールという意味では、倫理上は私も、臨床医として若干問題があるかなと思いました。

○奥田部会長 今の件について何かございますか。

○永井委員 これは臨床試験ではなく調査ですので、コントロールという概念と違うと思うのです。むしろ、医療を受ける患者さんで、「私は別の治療法を受けたい」となったら、もうその時点でスタディオフとなり、この12週間後の評価もできなくなってしまうわけです。その辺も踏まえて、80例入れればいいというのではなく、プライマリエンドポイントを評価できる症例として80例がないとこのデザインは成り立たないのです。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。対照群、倫理的な面は、実は条件及び期限付承認の対照群を置いた比較調査というところに関しては、常に課題と言うか議論になるところです。実際は、やはり臨床試験のような無作為的に割り付けるということになりますと、治療を受けようと思って入ったのに対照群になってしまうということもあって、そういったことで割り付けは難しいのであろうと。

 ただ、こういった外部対照ということでも、実際に比較可能性というところは十分に議論しまして、一定程度、市販後にどこの病院でも使えるというより、トレーニングも必要になりますので、使用においてはある程度限定的に、だんだん拡充していくという見込みです。申請者の方も医療機関と協議して、そういった、まだ治療ができない段階、若しくは治療している中でも、ある一定程度、本品の使用を望まない、使用をしないという患者さんにおいて、同意を得て12週までの潰瘍の大きさを評価可能な患者さんというのは集められるだろうというところで、ここまできているというところです。

○奥田部会長 期限を切ってということですから、その時、また対照群の80例、それは色々な治療法が入っているのだろうと思いますけれども、そこを含めてこのコラテジェンとの実力差を、その際にまた正に評価するということになるのだろうと思います。

○楠岡部会長代理 市販後の調査は通常のPMSのレベルなのか、もう少し再評価のところの信頼性にかかるので、モニタリング監査なども要求するような厳しい調査なのか、その適用されるルールというか、それはどういうような扱いになっているのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 調査といえども市販後調査になりますので、GPSPという省令の下で、データのモニタリングや監査に関しても、そのGPSPに則って実施し、実際の再度条件及び期限の中での申請においては、そこの信頼性を確認し、評価できるかどうかというところも考慮して審査することになります。

○楠岡部会長代理 そうすると、再評価の時点においては、通常の新規の申請と同じ程度の信頼性保証の調査を行うと考えてよろしいのですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○奥田部会長 ほかにいかがでしょうか。

○荒戸委員 この品目の承認の可否とは関係がないのですが、資料の取扱いについてお伺いしたく思います。今回、先進Bの結果が評価資料として扱われているのですが、確かにGCP調査もやられているのですが、今後こういった資料は承認申請の際の評価資料として漏れなく使うことが可能なのか、それともケース・バイ・ケースで評価するのか、今後にもつながりますのでお尋ねしたいと思います。

○事務局 事務局からお答えいたします。本審査においては、先進Bの結果については評価資料として取り扱っております。臨床試験の成績においても、その評価の重要性を考慮した上で評価の対象として考えられ得るのであれば、GCPに基づく信頼性が得られているかという観点も含めまして、評価資料として取り扱うことを検討いたします。

 ただ、本審査の事例が一般的な取扱いとなるものではなく、ケース・バイ・ケースの対応となる旨申し添えます。以上です。

○奥田部会長 よろしいでしょうか。そろそろ議論も出尽くしたかと思います。それでは、議決を行いたいと思います。再生医療等製品、コラテジェン筋注用4mgについては、本部会として承認の期限を5年として、製造販売承認を与えて差し支えないものとしてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、そのように議決いたします。本件は分科会にて報告を行うこととします。これで議題1を終了します。善甫先生、長時間ありがとうございました。

○善甫参考人 どうもありがとうございました。

○奥田部会長 それではよろしいですか。議題2、再生医療等製品「キムリア点滴静注」の製造販売承認の可否、条件及び期限の要否並びに再審査期間の人への要否について、審議を開始します。事務局から説明をお願いします。

○事務局 今資料1のファイルを皆様開いているかと思いますが、1つ戻り資料2「キムリア点滴静注の承認の可否等」のフォルダをお開きください。本品は関連する医薬品がありますので、資料の構成をまず御説明いたします。資料2「キムリア点滴静注の承認の可否等について」のフォルダを御覧ください。資料2--1が諮問書です。本議題では、再生医療等製品キムリア点滴静注の製造販売の可否、条件及び期限の要否、並びに再審査期間の指定の要否について、御審議をお願いいたします。

 キムリアについてはこの後機構の担当者より審査の概要を御説明しますが、キムリアによる治療に当たってはリンパ球除去を目的として、細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤が前処置薬として使用されます。前処置薬としてシクロホスファミド水和物、フルダラビンリン酸エステル、シタラビン、エトポシド、ベンダムスチン塩酸塩を疾患及び患者の状態に応じて使い分けることになります。しかし、これらの抗悪性腫瘍剤の既承認の効能・効果、用法・用量の範囲外となることから、キムリアによる治療の前処置としての効能・効果、用法・用量の追加が必要となりました。前処置薬の具体的な用法・用量は、キムリアの用法及び用量又は使用方法に記載されるため、これらの前処置薬の効能・効果、用法・用量の追加については本部会でキムリアと一括して審議し、22日に開催される医薬品第二部会では報告事項として取り扱うことといたします。これらの前処置薬の審査報告書と添付文書を資料2-2として付けており、前処置薬の効能・効果、用法・用量の追加についても、この後機構の担当者より御説明します。

 また、キムリアによる治療後、サイトカイン放出症候群が発症した場合に、その治療のためトシリズマブが使用されます。そのためトシリズマブについても効能・効果、用法・用量の追加が必要となりますが、こちらはその有効性等の評価をキムリアとは別に行う必要があることから、通常の新効能の医薬品の申請として行い、22日の医薬品第二部会で審議することといたします。本部会では、参考として資料2-3、トシリズマブの審査報告書と添付文書をお出ししております。それでは、キムリアの審査の概要について機構の担当者よりよろしくお願いいたします。資料2(説明用)キムリア点滴静注の承認の可否等についてのPDFを開いてお待ちください。

○医薬品医療機器総合機構 それでは議題2、資料番号2「キムリア点滴静注他」の製造販売承認の可否等について、機構より説明させていただきます。まずは本品の説明ですが、本品は遺伝子組換えレンチウイルスベクターを用いて、CD19を特異的に認識するキメラ抗原受容体遺伝子、以下「CAR」と略しますが、CARを患者由来のT細胞に導入した再生医療等製品です。本品に導入されたCARは、CD19を発現した細胞を認識しますと、導入T細胞に対して増殖活性化、標的細胞に対する攻撃及び細胞の持続・残存に関する信号を伝達することにより、CD19を発現するB細胞性の腫瘍を死滅させ、治療効果が長期に持続することが期待されます。なお、本品の投与1週間前の末梢血リンパ球数が1,000/μL以上の場合にはリンパ球除去化学療法と呼ばれる治療を本品の投与前に行うことで、CAR発現、T細胞の生着と生体内の増殖が促進され、本品の抗腫瘍効果が増強すると期待されております。

 今般、本品はCD19陽性、再発又は難治性のB細胞性急性リンパ芽球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に係る効能・効果又は性能として承認申請されました。なお、本品は当部会における審議を経て、希少疾病用再生医療等製品に指定されております。平成3010月時点において、本品はB細胞性急性リンパ芽球性白血病、以下「B-ALL」と略しますが、B-ALL及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、以下「DLBCL」と略しますが、両疾患に係る効能・効果で、4つの国又は地域で承認をされております。

 本品目の専門協議に参加いただいた専門委員は配布資料3、お手元のPDF資料にありますように、6名の委員になります。以下、臨床試験成績を中心に審査の概略を説明いたしますので、お手元のタブレットの審査報告書の御準備をお願いいたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績としてB-ALL患者及びDLBCL患者を対象とした国際共同第II相試験であるB2202試験及びC2201試験の成績が提出されました。まずB-ALLに対する有効性について説明いたします。タブレットの資料の32ページの表22を御覧ください。再発又は難治性のB-ALL患者を対象としたB2202試験において、主要評価項目とされた寛解率は82.0%であり、あらかじめ設定された閾値寛解率である20%を上回りました。

 次に、DLBCLに対する有効性について説明いたします。タブレットのファイルの35ページの表25を御覧ください。再発又は難治性のDLBCL患者を対象としたC2201試験において、主要評価項目とされた奏効率は58.8%であり、あらかじめ設定された閾値奏効率である20%を上回りました。更に、リンパ球除去化学療法についてはタブレット42ページ、下に42/145と、青字のページ数の42ページです。

○事務局 資料2(説明用)と書いてあるPDFを御覧ください。こちらで説明をしています。こちらの説明用のPDFには各ページに、青字で145ページ分の何ページと、ページ番号を振っています。今、説明用のPDFの42/145ページ、表31について説明をしています。

○医薬品医療機器総合機構 リンパ球除去化学療法については42/145ページの下から8行目以降に詳細な記載がございますが、本品の投与前にリンパ球除去化学療法を行うことの一定の有効性及び安全性が期待できる結果が得られております。

 続きまして安全性については、タブレットの47ページの下から8行目以降を御覧ください。7.R.4「安全性について」と太字で書かれた所以降にあります。本品の使用時に特に注意を要する有害事象としてサイトカイン放出症候群、神経障害等が認められております。これらの有害事象については有害事象の発現に対応できる設備の整った医療施設において、B-ALL及びDLBCLの治療に対して十分な知識と経験を持つ医師による観察や管理等の適切な対応により、忍容可能と判断いたしました。ただし、国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後には全症例を対象とする調査を実施する必要があると判断しております。

 以上のような審査の結果、機構は、タブレットでは、4ページの下から8行目以降に記載しました効能・効果又は性能及び用法・用量又は使用方法で、本品を承認すること、並びにリンパ球除去化学療法に用いる各薬剤についても承認することは可能と判断いたしました。本品は希少疾病用再生医療等製品に指定されていることから、再審査期間は10年とすることが適当であると判断いたしました。なお、事前に配布いたしました「審査報告書」に誤記がありました。3ページをお開きください。そちらの正誤表にありますように、誤記の御確認をお願いいたします。大変申し訳ございません。なお、当該誤記による審査内容への影響はございません。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○奥田部会長 進め方ですが、前治療に関わる医薬品は一度この審議を終えて、また次ということでよろしいですか。

○事務局 この先ほどの説明の中で、前処置の医薬品についても触れていましたので、それをもって御審議を頂くことになります。

○奥田部会長 触れていましたね。はい、分かりました。

 それでは審議に入ります前に、参考人の長谷川先生から追加の御説明を頂きたく存じます。よろしくお願いいたします。

○長谷川参考人 聖路加病院小児科の長谷川と申します。よろしくお願いいたします。まず、主にB-ALLについて述べさせていただきたいと思います。小児の急性リンパ性白血病は小児がんで最も多いがん種になっておりまして、年間で約600人おります。最近ではかなり治るようになってきており、無病生存率は大体8090%となっておりますが、残りの1020%はやはり再発をいまだにしております。再発例に関しては予後因子が幾つか分かっており、再発までに時間が掛かるような晩期再発例は比較的助かることが多いのですが、今回の対象になります複数回の再発例や再発後の化学療法に対して抵抗性を示すような例に関してはかなり厳しい状況で、その中でも造血細胞移植など行って、治癒を目指すのですが、満足いく成績が得られていないという状況があります。

 その中で2014年、アメリカの方からこのCAR-T療法が報告された時はかなりの衝撃といいますか、福音のような形で現れまして、普通で考えれば救命することができないような患者さんたちがかなりの確率で寛解に入られ、その後移植を受けて生存されていることが実際に報告され、またNew England Journal of Medicine誌などにも複数報告されております。そのお薬、我々はまだ使ったことがなかったのですが、早く日本でも使ってみたいという思いはありました。

 最近、今回のキムリアの競合製品として、この急性リンパ性白血病の主に再発例に対して幾つかのお薬が承認をされてはいるのですが、恐らくキムリアが切り札、一番の有効性があるのではないかとは考えております。ですので、恐らく再発例全例に使うことはないのではないかとは考えておりますが、やはり今まである薬、又は新たに承認されたようなお薬を使っても寛解に至らないような患者さんに関しましては、このキムリアを使って寛解に到達させる。そして必要に応じて造血細胞移植を使って長期生存を得るというのが理想ではないかと考えております。有効性に関しては私からは以上です。

○奥田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、コメントをお願いいたします。

○佐藤委員 承認条件の中で、「造血系悪性腫瘍及び造血幹細胞移植に関する十分な知識・経験を持つ医師の下で、サイトカイン放出症候群の管理等の適切な対応がなされる体制下で本品を使用すること」となっていますが、かなり神経障害が出ているように思うのです。恐らくこの医師の条件として神経障害をしっかりと管理できる方とこれは読むと理解してよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構から回答させていただきます。神経障害も含めて本品で起こり得る有害事象に対して対応できる施設、若しくは医師に使用していただきたいと考えております。

○佐藤委員 分かりました、ありがとうございます。

○奥田部会長 他にいかがですか。

○小原委員 用法について教えていただきたいのですが、先ほどの括弧には、その使用するT細胞の量、数というのがもう規定されていたのですが、それは患者さんの年齢であったり、例えば状態などで使用するT細胞の量であったり、そういったものは変わってくるものなのですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、御指摘のとおりでございます。実際に用法・用量の中で、まず小児のB-ALLの患者さん、白血病の患者さんでは体重が50kg以上を超える方と以下の方で、用法・用量を変えています。リンパ腫の方は基本的にはほとんど成人の患者さんですので、体重を問わずという形にはなります。

○奥田会長 よろしいですか。他に、私から1つ教えてください。患者さんからTセルを取り出して、最終的に10日間ぐらいかけてCAR-Tを作製して、また戻すということです。それぞれ患者さんごとによってTセルのその状態も違うと思うのですが、今までの実績として必ずきちんとした製品が出来上がっているのですか。そういうばらつきがあって、スペックアウトというのは変な言い方ですが、そういうことというのはなかったのか。もしあったら一体どうするのかということについて、何かそういう実例があれば教えていただきたいのですが。

○医薬品医療機器総合機構 過去の例ですが、実際に御指摘のように製造に失敗する例というのが、今回の2試験では、それぞれ7%、6%程度認められています。その場合の対応ですが、全然製品が作れないというのであれば再度アフェレーシスをして、再度製造することとなります。また、OOSの場合に関しては、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○だと伺っております。

○奥田部会長 実際に使う際は、もちろんそういったリスクがあることも含めて患者さんに説明をして同意を取るということになるわけですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○奥田部会長 森尾委員、お願いします。

○森尾委員 採取施設についてお伺いしたいと思います。最適使用推進ガイドラインを厚労省が作られて、この今の資料だと138/145ページに施設について書いてあります。この再生医療等製品の特徴は、その原材料は医療機関が行うという形になっていて、恐らく十分QMS体制のもとで採取をされるということが非常に重要なポイントになるのではないかと思います。施設について()()に書いてありますが、このくらいのレベル感が恐らく企業が求められているものなのか、もう少ししっかりした管理というのが求められているのか。この辺のすり合せ感というのがどうかなと。恐らくここで良い原材料が得られて、しっかり凍結されていないと良い製品が出来ないという、かなりクリティカルなポイントだと。そのための質問です。

○医薬品医療機器総合機構 機構から回答させていただきます。この施設の基準というのは、関連各学会、今回は血液に関する学会の先生方にお集まりいただきまして、そういった先生方から現場の声や体制について御検討いただきまして、現状の案に落ち着いているというところです。企業がこれをしたいと言ったわけではなくて、こちら側から、こういった管理をする場合にはこういった施設が必要だと思うのですがということでお伺いして、学会の先生にもこの辺りが現状で望ましいのではないかということで記載させていただいております。

○森尾委員 製造工程の一部なので、これからすり合せという感じでよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 実際には、治験の段階でも本品に関してはかなり限られた施設だけで行っておりますので、この今回記載させている条件、治験実施施設ですとか、本品市販直後も限られた施設で実施することになりますが、そういった施設であればこのレベルはクリアできると考えております。

○奥田部会長 よろしいですか。他に御意見等ございませんか。もしこれで意見が出尽くしているということであれば、議決に入りたいと思います。再生医療等製品キムリアの点滴静注については、承認を可としてよろしいでしょうか。また、条件及び期限付承認に該当せず、10年間の再審査の指定の対象としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、そのように議決いたします。本件は、分科会にて報告を行うことといたします。次の審議に移る前に、議事の途中ですが、資料2-4の最適使用推進ガイドライン()について、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 事務局より、最適使用推進ガイドラインについて、御説明させていただきます。今、資料2(説明用)のPDFを開いているところかと思いますが、そのままそのファイルで御説明いたします。125/145ページをお開きください。資料2-4、最適使用推進ガイドライン()についてです。最適使用推進ガイドラインは、医薬品で行われている取組みにならい、試行的に作成するもので、新規作用機序の再生医療等製品について最適な使用を進めていくため、この再生医療等製品を真に必要とする患者や、使用する医師や医療機関の要件についてお示しするものです。ガイドラインの案については、現在、日本血液学会、日本小児血液・がん学会、日本輸血・細胞治療学会、日本造血細胞移植学会、日本血液疾患免疫療法学会、日本遺伝子細胞治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床内科医会の8学会の御協力を頂いて検討しているところです。本部会の委員からも御意見、御指摘がございましたら、それも含めて検討させていただきたく、案をお示しする次第です。

 ガイドライン全体の構成から説明いたします。126/145ページに目次がございます。まず、「はじめに」で、このガイドラインがどういったものであるか、どういった内容が含まれるのかを御紹介しています。次に、「2.本品の特徴、作用機序」で、この製品の基本的な情報を記載しています。「3.臨床試験」で、今回の承認に使いました2つの臨床試験の成績を御紹介しています。「4.施設について」では、最適使用のための施設や医師についての要件をお示ししています。「5.投与対象となる患者」で、有効性と安全性の観点から、これまでに得られているエビデンスの下、どういった患者さんに投与するのが最適かということをお示ししています。最後に「6.投与に際して留意すべき事項」で、これまでにお示ししているような施設、患者さんで実際に使う場合、どういった点に気を付けるべきかをお示ししています。

 具体的な要件について、特に「4.施設について」以降を御説明いたします。説明用PDFの138ページを御覧ください。「4.施設について」ですが、まず5つの施設の要件を示しています。()造血細胞移植学会が定める移植認定施設のうち、カテゴリー1又はそれに準ずる施設として、医師や看護師の配置が充実している診療科で治療を行うこととしています。()投与後に重篤な副作用が発現する可能性が高く、ICUやPICUにおいて集学的対応が必要となることから、ICU等を有していることを要件としています。()本品は患者さんからアフェレーシスした細胞を所定の方法で凍結し、製造販売業者の工場に送ることになります。その工程が適切に行えるよう、細胞調製ができるスタッフの配置を求めています。()アフェレーシスを安全に行うための要件です。()本品は承認後に全例調査が予定されています。それを適切に行うための要件です。

 次のマル1-2に、医師の要件が書かれています。こちらも白血病やリンパ腫の専門的知識や診療経験を重視し、更に製造販売業者が実施する本品の使用に関する講習を修了した医師が複数名配置されていることを要件として求めています。また、複数名の医師のうち1人は治療の責任者として、次のページの表にあります()()までの要件全てを満たす人を責任者として配置することを求めています。

 次の140/145ページを御覧ください。5.投与の対象となる患者についてですが、ここは有効性に関する事項のマル1で治験の組入れ基準に、マル2で治験の除外基準に該当する患者の要件を記載しています。安全性に関する事項のマル1には、添付文書の禁忌に該当する事項を、マル2には治験での除外基準に該当する患者を記載しています。B-ALLについての構成を御説明しましたが、DLBCLについても、同じような構成で作成をしています。

 次に143/145ページ、「6.投与に際して留意すべき事項」を御覧ください。ここには添付文書の重要な基本的注意の欄を基に記載しています。特にマル3の2ポツ目、サイトカイン放出症候群(CRS)への処置については、こちらの表7に示しますアルゴリズムに則って管理することが重要ですので、添付文書よりも詳細な記載としています。最適ガイドラインの今後としては医薬品と同様に、保険適用上の留意事項としての活用を検討いただくこととしています。説明は以上です。

○奥田部会長 委員の先生方から、このガイドラインについて御質問、御意見ございましたらお願いいたします。

○楠岡部会長代理 長谷川先生にお伺いしたいのですが、施設要件の中で、アフェレーシスや細胞調製の条件を求めているのですが、これは血液がんをやっている、小児の血液がんの専門的な施設では大体満たすことは可能な条件と考えてよろしいのですか。

○長谷川参考人 小児がんを診る施設に関しましては、小さい小児のお子さんから時々自家末梢血を採取することがありますので、小児がんの診療を行っている施設であれば、こういった要件は満たすのではないかと考えております。

○奥田部会長 他にいかがですか。もしなければ、このガイドラインについては御報告を頂いたということで、これはもうこれで最終稿ということですか。

○事務局 まだ検討を行いまして、分科会でも御報告させていただきます。また、中医協でも御報告して、最終的にフィックスすることになります。

○奥田部会長 よろしいでしょうか。それでは議題2を終了いたします。長谷川先生、長時間ありがとうございました。

 それでは、議題3「Cx601」を希少疾病用再生医療等製品として指定することの可否について、審議を開始します。事務局から説明をお願いします。

○事務局 議題3について、事務局より御説明いたします。今、開いているファイルをお戻りいただきまして、階層1の方に戻っていただいて、資料1、資料2、資料3と資料がありますが、資料3「Cx601の希少疾病用再生医療等製品としての指定の可否について」というフォルダの方をタップいただきまして、その下にあります資料3-1、3-2、諮問書、事前評価報告書というPDFをお開きください。最初のページは諮問書になっておりまして、このページ1ページをスクロールいただきますと、次ページの資料3-2の方に機構の希少疾病用再生医療等製品該当性事前報告書がございますので、こちらを御覧ください。

 このページの中段ですが、本品の名称はCx601、予定される効能・効果は又は性能は、クローン病患者における肛門周囲複雑瘻孔、申請者は武田薬品工業株式会社です。クローン病は長期にわたって寛解・再燃を繰り返す原因不明の慢性炎症性疾患であり、指定難病に指定されています。病変は口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位で発生する可能性があります。肛門周囲瘻孔は直腸又は肛門と肛門周囲の皮膚でトンネル状に通じた状態で、その中でも複数存在する場合、そして内視鏡で活動性の直腸疾患が見られる場合などは、肛門周囲複雑瘻孔に分類されます。

 本品は、健康成人の皮下脂肪組織に由来する間葉系幹細胞を単離・培養して得たヒト同種脂肪由来幹細胞を構成細胞とする再生医療等製品です。既存の治療法とは異なって、肛門周囲複雑瘻孔の瘻管内壁に直接投与することが、炎症性サイトカイン産生の抑制やT細胞増殖抑制及び制御性T細胞の誘導等の免疫調節作用により、肛門周囲複雑瘻孔に対して有効性を発揮すると考えられています。

 希少疾病用再生医療等製品の指定要件への該当性について順に御説明いたします。まず、同じページ下段にあります事前評価結果の1.にある対象患者についてですが、こちらは指定難病であるクローン病の特定疾患医療受給者証所持者数と肛門周囲複雑瘻孔を合併するクローン病患者割合の文献報告から、本品の対象患者数は12,500人程度と推定されておりまして、指定基準の5万人以下であることから条件を満たしています。

 そのままスクロールしていただきまして、次のページですが、2.医療上の必要性について御説明いたします。本邦において潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針では、肛門周囲複雑瘻孔が中等症以上の場合には、シートン法と呼ばれるドレナージ術、そして人工肛門増設術が行われまして、これらの治療に加えて、インフリキシマブ等の内科的治療が患者さんの状態に応じて追加されます。しかしながら、シートン法におけるドレナージは長期間の治療期間を要すること、人工肛門増設では、患者のQOLが低下するという問題点があること、そして、クローン病に伴う瘻孔へのインフリキシマブの効果が限定的であるという報告がされていることから、クローン病患者における肛門周囲複雑瘻孔に対する新たな治療法の開発が望まれていまして、本品の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、同じページ下段にあります3.開発の可能性について御説明します。本品について海外で実施された第III相試験の結果ですが、治療後24週時点の寛解率は、プラセボ群では34.3%に対し本品群では49.5%でありまして、プラセボ群と比較して本品群で有意に高い結果が得られました。現在、本邦で非盲検非対照第III相試験が実施中です。なお、本品はEUにおきまして、クローン病患者に伴う肛門周囲複雑瘻孔に係る効能・効果で昨年3月に承認されておりまして、以上から本品の開発の可能性は高いと考えております。したがって、希少疾病用再生医療等製品の指定の3要件を満たしていると判断しております。本品の希少疾病用再生医療等製品の指定の可否について、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○奥田部会長 ありがとうございます。それでは委員の先生方から御質問、御意見などお願いいたします。

 開発の可能性は、海外の第III相試験で有意に高い結果が得られている。また、EUでは既に承認されているということで高いだろうというこの品目ですが、特段御意見がないようでしたら、議決を行いたいと思います。よろしいですね。Cx601については本部会として、希少疾病用再生医療等製品に指定することとしてよろしいでしょうか。御異議ないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次の薬事分科会において報告することとします。議題3を終了します。

 引き続きまして、それでは議題4「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第4条に基づく遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認及び同13条に基づく遺伝子組換え生物等の第二種使用等の拡散防止を措置の確認を行った品目について」に入ります。事務局から説明をお願いします。

○事務局 議題4について、事務局から御報告いたします。まず、今、お開きになっている資料3のファイルを階層1までお戻りいただきまして、資料4、カルタヘナ法に基づく第一種使用、第二種の確認を行った品目についてというフォルダをタップいただきまして、その下にあります資料4のPDFファイルをお開きください。この法律、カルタヘナ法では、ウイルスを含む遺伝子組換え生物の治験等を目的として特段の拡散防止を執らない開放系で使用する場合には、カルタヘナ法に基づいて承認された第一種使用規程を遵守する必要があります。また、医薬品や遺伝子治療用製品を製造するために、遺伝子組換え生物等を用いる場合には、カルタヘナ法に基づく拡散防止措置を執った閉鎖系で使用する必要があります。

 まずは、第一種使用規程の承認を行った品目について、御報告をいたします。1ページからスクロールいただきまして、次ページ、横のPDFです。第一種の使用規程の承認を行った品目という表を御覧ください。こちらは前回の部会での報告以降で、平成3011月から平成31年1月までに第一種使用規程の承認を行った品目ですが、こちらの4品目になります。これらは機構での評価、学識経験者からの意見を踏まえ、本申請における第一種使用規程に従って、本遺伝子組換え生物等の使用等を行う限り、生物多様性に影響が生じるおそれはないと判断したものです。

 引き続き次ページへスクロールいただきまして、第二種使用等をする際に執る拡散防止措置の確認を行った品目の表を御覧ください。こちらは平成3011月から今年の1月までに第二種使用等の拡散防止措置の確認を行った品目ですが、こちらの6品目となります。これらについても機構の評価、学識経験者からの御意見を踏まえ、いずれの遺伝子組換え生物等についても執られる拡散防止措置は適切であると判断したものです。事務局からは以上です。

○奥田部会長 ありがとうございます。委員の先生方からこの点について御質問、御意見をお願いいたします。よろしいですか。それでは御報告いただいた内容を確認したということにさせていただきます。議題4を終了いたします。本日の議題は以上ですが、事務局から連絡事項などがございますか。

○医療機器審査管理課長 本日は遅くまでどうもありがとうございました。次回の部会につきましては、また日程調整の上、御連絡申し上げたいと思います。連絡事項は以上です。

○奥田部会長 どうもありがとうございます。それではこれをもちまして本日の再生医療等製品・生物由来技術部会を閉会いたします。ありがとうございました。

( 了 )

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室

再生医療等製品審査管理室長 田中(内線4226)