第6回 保健医療分野AI開発加速コンソーシアム(議事録)

日時

平成31年3月20日 14:00~16:00

場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省 省議室(9階)

議題

(1) 医薬品開発における取り組みについて
(2) 手術支援における取り組みについて
(3) AIホスピタルについて
(4) 未来イノベーションWGについて(情報提供)
(5) AIの開発・利活用が期待できる分野/領域(案)について
(6) AMED研究事業における成果報告会の開催について(情報提供)
(7) その他

議事

 
(事務局)定刻になりましたので、「第6回保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を開催させていただきます。皆様方におかれましては、ご多忙中にもかかわらずご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
まず初めに、事務局より構成員の出欠についてご報告をさせていただきます。本日は、松尾構成員、間野構成員より欠席との連絡をいただいております。また、宮田先生が少し遅れてご到着されるご様子でございます。
また、本日ご欠席の構成員の代理出席でございますが、国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター 研究センター長の辻井構成員の代理として市川副センター長、Preferred Networks代表取締役社長 最高経営責任者の西川構成員の代理として、ビジネス開発部門の齊藤様にご出席いただいております。
また、本日は3名の参考人といたしまして、日本製薬工業協会 研究開発委員会 赤塚専門委員長、東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科学分野 村垣教授、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム 中村祐輔プログラムディレクターにご出席いただいております。
次に、オブザーバーでございますけれども、本日も、内閣官房情報通信技術総合戦略室、内閣官房健康・医療戦略室、個人情報保護委員会、総務省、文部科学省、経済産業省、当省のデータヘルス改革推進本部からご出席をいただいております。その他の事務局及び関係部局等からの出席者に関しましても、座席表に記載のとおりございますので、個々の紹介は割愛させていただきたいと思います。
カメラ頭撮りはここまでとさせていただきます。
それでは、以後の議事進行につきましては、座長にお願いいたします。
(北野座長)ありがとうございます。まず、資料の確認を、引き続き事務局からお願いします。
(事務局)本日はペーパーレスにて実施させていただきますことを、ご了承のほどよろしくお願いいたします。資料につきましては、議事次第、資料1~7、参考資料1~4及び過去5回分の資料を、お手元にございますタブレットに格納しております。タブレットの操作方法につきましては、「タブレット操作説明書」をご確認いただければと思います。ご不明な点がございましたら職員が参りますので、挙手をお願いしたいと思っております。
また、参考資料3でございますけれども、前回の議論を、前回と同様に事務局にておいて取りまとめたものとなってございます。構成員の皆さまには事前にご確認いただいておりますが、本日の議論の際に、参考にご覧いただければと思います。以上でございます。
(北野座長)議事に入ります。前々回から、日本における重点開発領域に関しての議論を始めましたが、今日は医薬品開発と手術支援、そして、AIホスピタルについて取り上げていきたいと思います。また、前回、介護関係の議題の中でご説明いただきました「未来イノベーション会議」について情報提供をいただくことになっております。
迫井審議官は用務で途中退席ということですので、まず、資料5の「未来イノベーション会議」に関して迫井審議官からご説明をいただければと思います。そのあとに医薬品開発について、米田構成員と赤塚参考人から続けてご発表いただいてから、自由討議の時間を30分程度設けたいと思います。そのあと、手術支援に関して村垣参考人からご発表いただいて、自由討議を行った後、AIホスピタルに関して中村参考人からご発表いただき、自由討議ということで進めていきたいと思います。それでは、迫井審議官、お願いします。
(迫井審議官)お手元の資料5でございます。時間もございませんので、ごくごく簡単に。
○未来イノベーションWGについて
2ページの未来イノベーションWG概略、これは前回ご説明させていただきました。このような趣旨で3回ワーキンググループの議論を行いまして、昨日、成果物を最終的にまとめまして、座長のほうから根本厚生労働大臣に手交された内容であります。ホームページ等にもアップしてございます。
3ページにメンバー、4ページにオブザーバー等々書いてございます。
○人と先端技術が共生し、一人ひとりの生き方を共に支える次世代ケアの実現に向けて
成果ですが、ごくごく簡単にご説明させていただくために、32ページに1枚紙で3回の議論をまとめています。上半分と下半分に分かれていますが、1、2、3と振ってございます。
上半分の左側、1は現状の概略でございます。基本コンセプトは2040年を目指してということで、2040年を迎えた時にどういった技術開発が必要か。1が現状、2に理想的な絵姿をまとめていまして、その下の3に対応の方向性ということで3つのアプローチを掲げてございます。(1)インフラのスマート化、(2)個人の主体化を支える、(3)共に支える新たな関係の形成。これを実現するためのアプローチを下にまとめてございます。
○3つのアプローチを実現するアクションのイメージ
具体的なアプローチとして3つ、ページ番号だけご紹介しますが、40ページに健康・医療・介護のサービスの提供、42ページに予防、44ページにテクノロジーを活用したインクルージョンについて、今後進めていこうということを掲げております。
○本WGの検討内容の今後の進め方について
46ページに今後の進め方として、このワーキンググループで検討いただいた様々な内容、項目につきましてまとめてございます。
基本コンセプトとしては、健康医療戦略等の改訂、AMEDの次期中期計画へ反映させるというようなことでございます。それから、研究開発・実証プロジェクトを掲げてございますが、テーマごとに研究班を立ち上げ、具体的なサービスの抽出等の実施。様々な既存の、あるいは今後も予定されている政府の取組についてはしっかり連携をしていく。技術インテリジェンス機能につきましても、必要な体制強化も含めて考えていく。このような予定となってございます。
非常に簡単でございますが、以上でございます。
(北野座長)ありがとうございます。それでは引き続き、医薬品開発について米田構成員からお願いします。
(米田構成員)医学・基盤・健康・栄養研究所の米田でございます。資料1に沿ってご説明をしたいと思います。スクリーンを使って説明をさせていただきます。基本的にはお手元の資料と一緒ですけれども、1ページだけ違いますので、その場面が出てきましたら申し上げますので、画面を見ていただければと思います。
【医薬健栄研におけるAI関連研究】
AIを使った医薬品の開発ということで、私どもの研究所が手がけておりますAIに関係する研究を中心にお話をさせていただきます。
○医薬健栄研のAI関連研究 概要
我々の研究所でAIに関連する研究の、これは概要になっております。ご存じだと思いますけれども、薬を作るには非常に多くのステップが必要で、この絵の左から右に進むにつれて薬に近づいていると理解していただければと思います。
最初の段階、創薬のターゲット、どの分子を標的にすれば薬ができるかということを検証する。それに対して相互作用するような化合物を探索し、それをさらに最適化していって、臨床に入る前に前臨床、例えば動物を使った実験等を行うことによって、最終的に臨床試験に入る。こういう流れになっています。
あとでご説明いたしますけれども我々の研究所では、一番最初のステップのターゲットの探索をするという、人工知能の開発を手がけています。次に、化合物を探索するステップに入ります。インシリコでスクリーニングするというプロジェクトが進んでおりまして、リガンドと標的の構造との関係から見つけていくという形で進めています。
次のステップが創薬支援インフォマティクス事業です。これはAMEDから支援を受けております事業ですけれども、薬物の動態を予測し、毒性の予測も行う。それらを統合的にデータベース化して、最終的に前臨床のステップを短縮させる。そういう流れで我々の研究所の研究開発が進んでいます。
○創薬ターゲット探索 新薬創出を加速する人工知能の開発 PRISM事業の背景
これはご存じだと思いますけれども、新薬創出を加速する人工知能の開発ということで、PRISMという事業が進んでおりますけれども、私どもの研究所はそれにも関わっております。
まず、どの分子を標的にするかという最初のステップ。many yearsと書いてありますが、非常に多くの基礎的な研究がここで費やされます。標的が選定された段階で、次に化合物を探索し、それを最適化していくというステップが入ってきます。ここは普通5年程度かかると言われています。そのあと動物実験等を使って有効性とか安全性を確認する。ここも数年かかります。
ようやくヒトに対しての臨床試験に入っていきますが、小規模の患者さんに対して治験を行うところで失敗するということが、今、非常に大きな問題になっておりまして、ここまでせっかくきたのにこの段階で75%が失敗する。そうすると、何が起こるかといいますと10年前にさかのぼらないといけないということになります。
失敗の原因を突き詰めていくと、1つは、最初の標的を選択するところで間違っていたということがわかってきました。従来の手法には限界があって、最終的にはネズミの薬を作っていたということになりかねません。そこを何とかAIを使って乗り越えられないかということで、現在、我々の研究所はPRISMの事業を進めているところであります。
○創薬ターゲット探索 新薬創出を加速する人工知能の開発 PRISM基本戦略
PRISM事業の基本的な戦略ですけれども、最先端のオミックス解析技術を駆使して、ある疾患に関する非常に多くのことをAIで解析させて創薬のターゲットを見つけるとともに、患者さんを層別化できるバイオマーカーもセットで特定するということを、AIを使ってやろうとしています。診療情報、画像データ、メタボローム、プロテオーム、RNA-seq、エピゲノム、ゲノム。こういったものをすべて包括的に解析することによって、信頼性の高いAIの開発を進めています。
○創薬ターゲット探索 新薬創出を加速する人工知能の開発 PRISM推進体制
これが現在のPRISMの推進体制です。最初のターゲットを見つけるだけでもいろんなステップが必要ですけれども、最初にデータ収集、診療情報を収集するところから始まって、それらを解析して、最終的にターゲットの分子を見つける。そして、AIで見つけたものが本当に正しいかどうか検証する。こういうステップをPRISMで推進しているところであります。
これは我々の研究所をはじめ、京都大学、がんセンター、理化学研究所、慶應義塾大学、産総研、九州工業大学、東京大学チームなど、17機関で進めております。
○化合物探索/最適化 インシリコ創薬支援プロジェクト
次に、標的のターゲットに対して結合する、相互作用する化合物を探索して、それを最適化するステップに入っていきます。インシリコ創薬支援プロジェクトいわれるプロジェクトでは、TargetMineというソフトウェアを開発して、タンパクの立体構造の予測をしたり、タンパクとリガンドとの相互作用の予測を含め、医薬品関係データ、転写因子とその作用遺伝子の関係など、情報を統合的に検索することができる体制になっております。
○化合物探索/最適化 創薬支援インフォマティクスシステム構築
そのステップに、AMEDの事業として、創薬支援インフォマティクス事業を支援していただいており、最適化のステップに必要な毒性の予測や体内動態の予測をするシステムの開発を進めているところであります。安全性という意味では、心毒性、肝毒性というのが非常に問題になってきますので、それを予測するシステムを構築しています。
それから、薬がいかに効くか、効かないかというのは、体内動態というのが非常に重要になってきますので、それも含めてシミュレーションするシステムの構築を進めています。開発失敗リスクを減らすためには、医薬品候補化合物の薬物動態、毒性プロファイルを、前臨床、臨床試験に入る前の段階で知ることが必要であるというスタンスで、ここは進めているところであります。
○化合物探索/最適化 創薬支援インフォマティクスシステム構築事業の全体像
システム構築の全体像ですけれども、公開されているいろんなデータベースを活用することによって、まず、データベースの予測システムの基本版を作ります。それに参画企業が持っておられるデータベースを付け加えて、さらに精度の高い予測システムを構築するということを進めています。
○化合物探索/最適化 創薬支援インフォマティクスシステムにおけるエコシステム
今AMEDに支援していただいているのは、基本版と、企業との連携を進める連携版、この2つの予測システムを開発しているところですけれども、最終的に、企業が提出してくださっているデータはもちろん商用版には含まれませんが、予測モデルを連携版という形でライセンスアウトすることができれば、それを資金にして、次のデータベースの維持に使うことでエコシステムを構築するということを進めているところであります。
○ライフインテリジェンスコンソーシアム(LINK)
これがお手元の資料と違うものなのですけれども、ライフインテリジェンスコンソーシアム、LINCと呼んでいるものが立ち上がっていますことをご説明いたします。
これは京都大学や理化学研究所、我々の研究所や都市活研が事務局を担い、アカデミア、ライフ系、IT系の企業、約110企業・団体が加盟しているコンソーシアムです。IT関係の企業、ライフ関係の企業、アカデミアが交流して、産学連携でAIの医薬品開発を進めるということで、新聞にも取り上げられたところであります。
○LINCで実施しているAI開発と目指す究極のIT創薬
LINCの最終的なゴールをここに書いています。これは最後のスライドになります。申し上げていますように創薬には非常に多くのステップが必要ですけれども、それぞれのステップを担うAIをまず開発します。左のほうから順番に、薬が出来上がっていく方向にいきます。
最初、どんな病気に対して薬を開発すればいいかということ知るAIが開発できれば、それによって、Aという病気を標的にすることになります。そして、Aという病気の中のどのタンパク質を標的にすればいいかということを知るAIを開発することができれば、そのAIによって創薬標的のタンパク質Xが見つかる。
その次は、タンパク質Xに相互作用する候補化合物Yを見つけることができる。Yが見つかったら、副作用がないかどうかAIで検証することによって、医薬品としてより有望な候補物質Zを開発することができる。最終的にそれが本当に効くかどうかということも検証した上で、実際にどういう形で治験をすればいいかということをAIで理解する。最終的にそれが薬になったあと、市販後の副作用の危険性もAIによって理解する。
これらのステップをすべてAIで結べば、これまで考えられなかったような薬をAIによって開発することができる。そういう構想で今進めているところでありまして、我々の研究所は2つの丸で囲んだ部分を担当しているところであります。
以上です。ありがとうございました。
(北野座長)ありがとうございます。続きまして資料2に関して赤塚参考人からご説明をお願いします。
(赤塚参考人)日本製薬工業協会の赤塚です。よろしくお願いいたします。私のほうからは「医薬品の開発における取り組み」ということでご紹介させていただきたいと思います。
○医薬品産業におけるAI活用ニーズ(全体像)
製薬協として研究開発委員の専門委員も含めて検討した結果、薬を患者さんに届けるまで、企業活動には研究開発に加え、承認申請、そのあとの生産、そして、薬を販売させてもらったあとは患者さんからの情報等々を収集するというような、いろいろなステップがあります。この様々なステップの中で、AIがどのように活用することが期待されるかということをこの1枚で示しております。
このあと、研究と開発のところにフォーカスしてご説明させていただきますが、業界の中の企業活動としては、いろいろなところにAIを活用できる可能性があるということを示しております。
○医薬品の研究開発におけるAI活用ニーズと検討状況
研究ステージ、開発ステージを、もう少しブレークダウンして分類しました。先ほど、健栄研のほうからもご紹介がありましたように、いろいろなステップでAIを使って検討していこうということであります。我々のニーズは真ん中のオレンジ色のところに書いているもので、その下には、先ほど健栄研からご説明があった、現在進められているプロジェクトを並列して書かせていただいております。
これを見ると、我々製薬企業のニーズで足りてないところがたくさんあるというのが1点。それと並列して進められているプロジェクトに関しても、企業がデータにアクセスできる、できないという問題、あるいは企業の目から見て必要な種類のデータがあるか、あるいは必要な量、必要な品質のものが含まれているかというところに課題を感じています。
○AIの活用目的と必要なデータ
今、申し上げました質とか量に関しては、それぞれのステージ、研究ステージ、あるいは開発ステージにおいて、企業側が求めているデータは異なっているということを示しております。
例えば研究ステージですと、臨床情報に加えてゲノム、オミックスといった深いデータが必要になってきます。右の台形のところに示していますが、診療情報に加えて、ゲノム、オミックス、あるいは画像等々の個人の深いデータが必要になる。開発ステージに進みますとその割合は少し減ってきて、診療情報が必要であり、その均一性や正確度が必要になってきます。一番下の赤枠以外のところになりますと、網羅性の高いたくさんのデータが必要になってくるということをこの図で示しております。
本日は研究開発というところで、このあと議論を紹介させていただきたいと思います。
○製薬企業によるAI利活用の例
現在製薬企業において、ここに示しましたようなAIの利活用が進められています。個別の企業名等々はございませんけれども、こういう取組が実際に行われております。ここでポイントとなるのが、右側に臨床データと赤字で書いていますけれども、ターゲット探索、あるいは化合物探索、臨床試験、すべてにおいてこの臨床データというのが重要で、我々として用いたいデータの1つとして抽出されています。
特に最近、患者さんの情報、あるいは患者さんから提供いただいたサンプル試料を解析した結果を発端として創薬を開始する、いわゆるReverse Translational Researchというものが注目されておりまして、そちらに関しての取り組みが、今後の創薬では必要になってくると思っています。そういう意味で、下の括弧に書いていますが、ターゲット探索など革新的な医薬品を創出していくためには、ゲノムやオミックス、そして、画像データが連結された臨床データ、すなわちこの2つ、データと臨床データが連結されたものが必要だと考えています。
昨今、製薬協から政策提言を1月24日に公開させていただきました。そこにも記載されていますが、業界としては治療・治癒に加え、早期治療や予防にもチャレンジしていきます。それを踏まえますと、先ほどのゲノム、オミックス、あるいは臨床データに加え、行動ですとか個々のライフコースデータが重要になる。今後、予防・先制に取り組むためには、ライフコースデータが重要になってくるということです。
○創薬ターゲット・バイオマーカー探索に向けた検討
これも製薬協の政策提言より作成しました。これはまだできているわけではなく、今、検討中ですが、最初のバイオマーカーや創薬ターゲットを探索する部分に関しては、がん領域ではC-CAT等で進められているのはもちろん存じ上げているわけですけれども、例えば精神・神経領域でもも臨床のデータ、あるいはオミックスのデータを統合するような、真ん中に「連結」と書いているようなデータベースを作り上げたい。
ここでは、例えばMRI・CT、スコア情報というふうに書いていますが、これは必要な領域、あるいは必要な疾患によって異なってきます。ですので、どういう情報が、あるいはどういう解析結果が必要かというところを今後の創薬を見据えた上で、参画する製薬企業と意見交換しながら取り入れていただき、必要に応じて、資金が必要なのか、人材が必要なのかということも踏まえて考えていくべきではないかという議論をしております。
構築しましたデータベースを、例えば健常人のコホートデータ、外の文献データやパスウェイデータなどを入れ込むことによってAIを構築していただく。この時、製薬業界のみでAIを構築するというのは難しいため、いろいろなベンダーさんを含めて協力をいただいて、連携していきたいと思っています。
創薬アイデアをAIに入れますと、場合によっては新しいターゲットやバイオマーカーは、こういう可能性があるのではないかという答えが出てきて、それを検証していく。そこからスタートしていく。基本は、これは患者さん、あるいは臨床現場のデータから出てきたものだということが重要なポイントになります。
○創薬プロセスの高度化・効率化に向けた検討
先ほどの健栄研のプレゼンにもありましたけれども、化合物のデータを使って創薬の効率を上げていってはどうかという検討をしています。
化合物の最適化ステージに関するデータは、基本、製薬企業にたまっていることが多いと思われます。保有しているデータを賛同する企業から提供していただいて、化合物のデータベースを作る。これは複数企業、多数の企業が入ってくることにより、各企業の多様性のある化合物の情報がここに入ってくるのではないか。
そういうふうな情報を用いて学習するAIを構築し、将来的に端緒化合物の情報をそのAIに投げ込みますと、最適化された化合物、あるいはこういう方向で展開していけば、最終に近いものがアウトプットとして出てくるようなことを期待しています。最終的には、それでプロセスの効率化やスピードアップを達成できれば。こういう検討もスタートしているという状況でございます。
○医薬品開発におけるAI活用に向けた課題
今、申しました2つのこと、AIあるいはデータを使った解析をやっていく上で、我々がいま課題ではないかと思っていることを、大きく3つに分けて記載させていただきました。1つはデータ、1つは人材、1つはそれがすべて揃ったあとということになります。
データに関しては、ゲノムやオミックス等々が連結されたデータ基盤がほしい。予防・先制に向けての医療等IDを使ったライフコースデータを集積するような基盤。2つ目のデータ利活用に向けた環境整備に関しては、構築されたデータベースにアクセスできること。あるいは、今、政府等々で進められているC-CATやPRISIM。これに関しても二次利用ができるような環境にしていただければありがたい。
人材に関しては、我々の業界の中に解析する人材は少ないので、ぜひ大学教育も含めて推進していただき、我々も人材交流でやるほうが早いということもあるかもしれないので、人材交流を含めてAI開発に必要な人材の確保が重要と。
こういう状況がすべて整ったのちに懸念していることとしては、AIから出てきた答えは誰のものなのか。利益でありますとか、権利でありますとか、そのへんは明確にしておかないと、企業活動をやっていく上では不具合があるのではないか。それと、医療機関、患者さん、あるいは一次ベンダーさんを含めた連携体制が必要になると思います。
○医薬品産業においてAI活用を進める要素とステークホルダーに期待される役割
最後のスライドですが、データの整備、人材、法整備、あるいはアルゴリズムの開発等々に向けてオールジャパンで、政府あるいは我々製薬企業も協力しながら進めていく必要があるのではないかと考えております。
発表は以上です。ありがとうございました。
(北野座長)ありがとうございます。それでは30分間程度、自由討議を行います。どなたかありますか。
(羽鳥構成員)有意義な発表、ありがとうございました。1つだけ、赤塚さんにお聞きします。製薬協のほうで、ゲノムとオミックスと画像データの連結をして、それらのデータと医療マスターを総合的に解析したいということになると、患者さんの個人情報など機微な情報が入ってくると思いますが、機微な情報をいかに安全にしていくかということはこれから本当に大きな課題だと思います。
5Gになって一瞬でデータが流れてしまって、排出されたデーを取り戻せないという状況もきっと出てくると思うので、データを保護する仕組みを作っていかなければならないと思いますが、製薬協側でデータを守るという発想に立ったらどんなことができそうか、何かお考えはあるでしょうか。
(赤塚参考人)もちろん利用はさせていただきたいのですが、個人情報も含めて、そこは配慮した上で使わせていただくというのが大前提かと思っております。我々が使うところですと、解析の段階では、患者さんに戻る必要ないと思っております。ですので、臨床情報とかオミックスデータから解析して、新しくデータを確保するところでは、患者さんに戻れなくても我々としてはいいのかなと考えております。
ただ、ブロックの仕方にどういうものがあるのか。今の時代、どんどん流れていく中で、そこの知識は製薬協の中で、現場では持ち合わせていないものもありますので、ブロック、あるいは保護するような技術やスキルをお持ちの先生方とそういうことを構築したり、考えていきたいと思っております。
(羽鳥構成員)むしろそのへんが提言できると、医療の側からもある意味で安心して出せるということで、ここが肝だと思うのでぜひ頑張っていただきたい。
(北野座長)解析の段階で患者さんに戻す必要はないという話があったのですが、もちろん今の創薬プロセスは長いのでそうなりますが、今、各社はデジタルヘルスの取り組みをされていて、予防的なことや、予後の管理にウェアラブルデバイスや、スマホを使おうとされています。製薬協の加盟企業でも取り組まれていると思いますが、その場合にはリアルタイムに解析結果がフィードバックされることが必要になります。そこは今までとずいぶん違うという認識を持たれたほうが良いと思うのですが、そのあたりの議論はされているのでしょうか。
(赤塚参考人)アプリも含めて、デジタルのところで通信機器を使ったような、医薬品なのか何か、ちょっと分類は分からないですが、そのへんに関しての議論はまだ製薬協の中ではできていない。新しい技術で、議論する場を業界でも作っていかなければいけないという印象はあるのですけれども。
(北野座長)具体的な計画はあるのですか。
(赤塚参考人)今、政策提言の中にもあるのですが、モダリティに関して検討する必要があるのではないかと記載しております。モダリティというカテゴリーの中にデジタルを入れるのか入れないのか。一部の企業ですので、業界として集まって全部皆さんで議論するところまではいけてないですが、遺伝子治療でありますとか、そういうモダリティの中の1つとして議論したらどうかというところまでですね。
(北野座長)ほかに質問等ございますか。
(保科構成員)お二方に共通する部分だと思いますが、今回のこの仕組みは、様々な企業、特に製薬企業がデータをきちんと提供していただけるということが重要なのかなと考えています。その時に、惜しみなくデータを提供いただけそうなのかというところが実は気になってまして、提供した結果、どういったものが企業側にフィードバックされるのか。生のデータがライバル企業にそのまま渡ってしまうというのは皆さん避けたいと思いますが、例えばAIで学習済みの予測モデルなり何なりが企業側に最終的に提供される。そういうイメージなのかなと思いますが、そこらへん、それぞれお話を伺えればと思いました。
(米田構成員)今、言われたとおり、企業が独自で出したものに関しては、その企業の中で閉じないといけない。予測モデルができた場合には、公共に出せるものであれば公に出して使っていただくというイメージです。
(赤塚参考人)今、米田先生がおっしゃっていたただいたとおりですが、7ページに書かせていただいたのは、データを提供という形で書いております。もう1つ、データを企業間でシェアするかどうかというのはまた違うお話で、先ほどおっしゃったように、他社のデータを別の企業が見るかどうかというところはだいぶ違っていて、どこかに提供してデータベースを作っていただくほうが、ハードルは低いという印象を持っています。ただ、例えば10年前に比べると、そういうのは出してもいいのではないかという風潮が増えてきているのは間違いないと思います。
(北野座長)追加で質問があります。人材についてですが、今の製薬企業の実態からすると、基本的に情報系の人材が弱く、AIに関してはさらに弱いと思います。しかも、部門がないところも多く、キャリアパスがほぼないので、製薬会社の中でリーダーシップを発揮するトップレベルの人材が入社して定着することはほぼないのが実態で、今議論しているような創薬プロセスになると、創薬企業の中でそういう人をきちんと処遇することや、育成をしていく必要があると思います。
例えばAIやITのことだけ分かっていても、薬をつくることはできないので、薬のことが分かった上でAIも分かる必要があります。そういう人々をシステマティックに育成するなり、呼び寄せることが必要だと思います。そういうことに対する課題は挙がっているのでしょうか。これは製薬協としてシステマティックに取り組むのか、それとも、製薬協は課題として挙げ、各社それぞれで取り組むと考えているのか、どういった立場なのでしょうか。
(赤塚参考人)企業内の処遇に関しては、各企業でやっていただかないといけないかなと思います。一方で足りていないというのは共通の課題ということで、ここに記載させていただいています。
もう1つ、いつも議論になるのは、AIとかICTとか、情報系を勉強された方が生物系に入ってくるのか、生物系を勉強した人が情報系を勉強するのか。どちらが早いのか我々も分からなくて、生物系にいると情報系のところはハードルが逆に高いと思ってしまいますし、逆のことが起こっているのではないかと想像しますが、どういうふうなあれがいいのか悩むところです。
(北野座長)人それぞれなのでどちらとは言えないですが、経験から言うと、若手の生物系の人が情報を勉強されたほうが良いです。情報を勉強した人は、生物系ではなく、ほかでもいろいろな仕事はあるので、あえてこの分野に来る必要は必ずしもありません。また、生物や薬に興味を持っていないと本質的には続かないと思います。情報系の人が生物や創薬に興味を持ってくれるのはすばらしいと思いますが、これだけが重要なわけではないですし、ほかにもっと良い待遇の仕事はたくさんあります。その現実をきちんと見つめないと良い人は集まらないです。
(齊藤構成員)まさに情報系側の会社としての意見になりますが、我々も全く同じようなことを考えていて、AIに強い人間が医学や生物学を勉強するのか、逆に医学や生物学を専門にしている方にAIを学んでいただくのかというのは、確率的には北野先生おっしゃるとおりだと思っています。一方、逆がいないのかというとそういうわけでもなく、AIに強い人が生物学に興味を持って勉強する方も弊社にいるので、両方がありえると思っています。
大事なのは、お互いの情報に触れるなり、興味を持つ機会をどれだけ作れるかだと思っていまして、弊社もメディカルAI学会で受講テキストの作成に協力させていただいて、医学や生物学に詳しい方にAIに関する学習を促す動きをやっているんですけれども、逆に製薬企業さんやアカデミアの先生方に教えてもらうことでAIに強い人間を医学や生物学にも強くして頂いているということも協業の中で実感しているので、そういう意味で、お互いがそこに興味を持ち合える機会を作っていく。これはプレイヤーレベルでもできることだと思うので、そういう機会を各プレイヤーが作っていくことが大事だと思います。
(米田構成員)今言われたことはまさにそのとおりだと思います。我々の研究所でAIを中心的に進めているプロジェクトリーダーが今日来ているのですが、水口プロジェクトリーダーはまさに情報系から入ってきて、我々の研究所で研究開発をスタートしてくれました。我々の研究所は創薬をやっている生物系の研究者はいっぱいいますので、毎週のようにディスカッションして、彼がどんどんそれを吸収して創薬に持っていってくれているというのが我々の研究所の実情です。すべてその方向でいいかというのは分かりませんけれども、そういうことは可能であると思っています。
(山内構成員)今ご発表いただいた赤塚参考人の資料の5ページ、要するに、臨床データの重要性を非常に深く感じております。何よりも私は臨床の現場の人間ですので、臨床データに関して、そこがベースにないとAIに教え込めないわけです。今回両方の方からの発表は理想的なAIの活用とは思いますが、臨床データの重要性というか、臨床データの精度の良いものがあることが必要最低限だと思います。
あと、未来イノベーションWGのことでもそうできればいいんですけれども、そのベースになるのが臨床データで、臨床データが間違ったもの、いい加減なものを提供していたら、すべてが崩れてしまうわけです。現状、赤塚参考人がおっしゃった8ページ目の課題に、質の高いデータということで、医療情報の電子化・構造化の推進とありますけれども、これをどういう形で進めようと思っていらっしゃるのかお聞きしたいと思っています。
皆さん実際に電子カルテを使ったことがあるかどうかなんですけれども、電子カルテといっても、まだまだPDFで取り込まなければいけないデータはたくさんあります。外注で返ってきた遺伝子検査の結果とか、簡単に検索できないんですね。山本先生も詳しいかもしれませんけれども、私どもが臨床研究に使いたくても、電子カルテであっても検索ができなかったりとか、臨床データは十分ではありません。
今も1分、1秒、構造化されていないデータが、皆さん使えるのに使えないデータが積み重なっている現状を非常に重く受け止めております。まずは赤塚参考人にどういうふうに考えてらっしゃるのかということ、あと、国としても、これからそれをどういうスピード感でどう進めようと思っていらっしゃるのかということ。
3点目は、病院で今、電子カルテはだいぶ進んでいますけれども、医師会の先生方の中でどう考えていらっしゃるかですが、今、介護とか、病院ではないというところで医療がたくさん行われています。そこからのデータも非常に必要で、開業の先生方もだいぶ電子カルテを入れていらっしゃると思うんですけれども、それもまちまちで、クオリティ自体もそこまで統一できないということで、医師会もそういったことを今後もっと推進していくお考えがあるのか、3部門の方々にお聞きできればと思います。
(赤塚参考人)臨床データが重要というのはご理解のとおりで、先ほど米田構成員もおっしゃっていましたが、ネズミの薬ではなく、ヒトの薬を作るということでいうと、そこからスタートしなければいけないというのが我々の反省点であり、こういう取組をしていると。
構造化に関しては重々承知しています。お医者さんがもう一度入力し直さなければいけないということが、前回の議論であったかと思います。そこは人の手を介すのではなく何らかの方法で、それこそAIなのか機械なのか、そういうところでできればと思っています。
我々がそういうシステムを作ることはできないので、そのあたりは、先ほどオールジャパンと言いましたけれども、国あるいは政府も含めて、お医者さんの過剰労働もニュース等々であるかと思いますけれども、そのへんの改善も含めて何とかしていただければ。どちらかというとこれはお願いになってしまいますが、そういう認識はしております。
(米田構成員)確かに臨床データをどう集めていくかというのはものすごく大事な問題で、まさに、そこを今PRISMの事業でやっているところです。我々、IPFというちょっと特殊な病気なのですが、特発性肺線維症をまず標的にして、大阪大学の先生方と一緒に電子カルテの情報を入れ直さないでいいような形で集められる体制を作る。そうするといろんな病気にもそれが活用できるだろうということで、今ちょうど進めている段階だとご理解いただければと思います。
(羽鳥構成員)医師会の親として電子カルテの情報の共有化はものすごく大事です。病院のほうは東京都医師会東京メディカルネットワークでは、富士通とNECを使用している病院間においても、データの共有ができるような仕組みができています。別の検討会でも、がん対策とか循環器の対策委員会で僕も常々発言しているんですけれども、開業医の先生の使用している電子カルテのデータをそろえていくことが、データ活用することには重要な事項です。
今データをそろえるにはいくつかの方法があります。SS-MIX2が代表的だとは思いますが、一方で、SS-MIX2は古すぎると。データをこれで取っていたのでは、テキストしかデータが取れないので、統計解析が十分にできない。エクセル形式とかコンピュータ解析できるような仕組みにはならないという欠点があると言われています。
実臨床における特定疾患指導料、特定機能疾患指導料、生活習慣病指導料、初診、再診のデータを患者さんのデータをいつか統合できるようにするため最低限これだけは入れなければいけない。血圧の値、体重の値、HbA1c、LDLなどのデータの入力をもとめていくことも必要はないでしょうか?(山本構成員)私も製薬協の6ページ目のスライドを見て、ここにかなり問題が集約されていると思いました。精神・神経領域を例にとられていますが、臨床情報とオミックスデータを連結するという部分、ここが最大の闇というか、ブラックボックスになっていて、臨床情報のほとんどが構造化されてないという問題と、クオリティが保たれてないという2つの問題があって、それを解決する方法がないんですね、現時点では。
もう1つは、この連結の場というのはおそらく医療機関なんですけれども、医療機関はおそらく最大のステークホルダーなんですが、ここは全く経済的なインセンティブがないんですね、これに関して。なので、一部の人にしかやる気が出てこないという問題があるので、それをどう考えるのかということ。
もう1つは、このような活動は完全に研究から逸脱していて、企業行動というか、企業活動をどうやって進めるかという絵になってます。これだと現状の個人情報保護法の範疇でやれば、研究ではないので、医療機関外にデータを動かしていくことはできないという問題もあります。なので、この1枚にすべての問題が集約されているなと思います。
解決策の1つは、山内先生もおっしゃったように電子カルテだろうと思います。私は個人的には、一番の問題は入力形式にあって、電子カルテの入力形式を、例えば音声入力に変えていただくだけで、入力する単位時間当たりのデータ量はもっと大きくなるのでたくさんのデータを入れることができますし、ある程度音声で標準的に動いてくれる。あるいは入力をそろえてくれるようなAIというか、アレクサみたいなやつですね。そういうコンシェルジュがついてくれると、かなりデータのクオリティを上げていくことができるだろうと思うんですが、残念ながら電子カルテは医療機器でも何でもないので、ここにお金をかけるということに皆さんあまりインセンティブが働かないというのが現状の問題かなと思います。
(北野座長)ありがとうございます。議論は山積ですが、今日は議論する内容が多くありますので、残念ながら次にいきます。次に、手術支援の領域に関して村垣参考人にご発表いただきまして、そのあと自由討議を行います。
(村垣参考人)よろしくお願いいたします。今、話題になった電子カルテに関して、手術は最も患者の予後に関わる1つですけれども、A41枚目のスキャンファイルでございます。
【AI Surgeryを実現するスマート治療室 SCOT】
このプロジェクトは5大学11企業でAMEDのプロジェクトを紹介させていただきます。こちらのプロジェクターをご覧いただければと思います。
○SCOTプロジェクトの目的
もともとオペ室というのは滅菌作業を行うためのスペースであって、医者が好きな道具を入れていたということなんですが、そうではなくて、それ自体が1つの医療機器となるものを開発しました。要素としては、機械を選ぶということでパッケージ化して、それから、パッケージ化したものをネットワークでつないで、最終的には、そこから上がってきた情報をAIを利用してやっていく。最終的なアウトプットである治療もロボット化したいと考えています。
○スマート治療室プロジェクト計画
5年間のプロジェクト、まずパッケージ化したBasic SCOTを信州大学に入れておりまして、そのあと、すべての機関をネットワーク化したものをStandard SCOTと呼び、信州大学に入れ、そして、AIとロボットを使ったものを最終形態としたHyper版のSCOTを東京女子医大に、コンセプト版と臨床版が今、入っているということです。
○Basic SCTO@広島大学
Basic SCOTに関しては広島大学で、術中MRIという装置を使って取り残しをなくす。悪性脳腫瘍等を含めて40症例以上行っておりまして、脳腫瘍だけではなく、てんかんの手術、あるいは非常にうれしかったのは骨腫瘍で使っていただいています。医者がやってみると、取れたと思っても残存腫瘍があったということで、継続的に骨腫瘍で使っていただいて、今度は肝がんへの展開と、横展開が図られているということです。
○Standard SCOT@信州大学新病棟への導入
昨年の20の機械がネットワークで接続されたStandard版SCOTで、世界初症例が去年7月に行われております。こちらは、私も信州大学の医局に行って手術支援をしているところですけれども、この画面では、サチュレーション、血圧、ナビゲーション、手術画像、オペ室画像、全部出てきております。
今、私がアドバイスしているのは、その中で10分間ぐらいで、フローサイトメトリーといって増殖期の細胞数の割合が出ているんですが、術者はまだ見れてないんですね。私のほうが見れていて、医局のほうから、セルサイクルの割合が40%ですごく悪性だと、ここの部分はとりましょうというアドバイスをしているところであります。
こちらも13歳で、延髄部の腫瘍で非常に難易度の高い手術なんですけれども、その手術に関しても、こちらのネットワークでいろいろ支援しているということで、医局からの声、上司である本郷教授のアドバイスが出てくるということになっています。
○Hyper SCOT on media
Hyper版のロボット化したものに関してはプロトタイプが2016年に入って、メディア等々で取り上げられて、先日オープンイノベーションということで、多数の企業が共通化して使えるネットワークを作ったということで受賞しておりまして、「フォーブス」等にも紹介されています。
○Hyper SCOT prototype on media
先週末、BBCのワールドニュースで3度放映されたものをお見せいたします。東京の電車の正確さとか、介護での癒やしロボット等の中でSCOTが紹介されています。
ダビンチと違って、術者が自由に動きながらそれをサポートするロボットです。
デンソー、三鷹光器、日立、メディカロイド等々の共通のプレオブです。
今、40以上の機械がつながっています。ここも、運動誘発電位といって、落ちたら麻痺の可能性があるところがどこで起こったかが位置情報でタグづけされています。AIについて聞かれています。
Hyper SCOTに関しては、初の症例を先月行っておりまして、こういった形で臨床版も施行されています。
○スマート治療室SCOTと治療室共通インタフェースOpeLink
ここにご覧いただけるように、下のフィジカル空間においてすべての情報が連結されて、それが戦略デスク等々で解析され、最終的には下のアプリで出る。あるいはロボットを動かすという形になって、データベースとの連携も必要だと考えています。
○AI Surgery(AI未来予測手術)を実行するための戦略デスクと意思決定ナビゲーション
これが我々が考えている外科領域におけるAIの支援ですが、右側にありますように、AIが答えを出すのではなくて、3つぐらいの選択肢を出して、ここでやめれば合併症率は上がらないけれども、生存期間もあまり延びない。しっかりとると合併症率は20%ぐらい上がるけれども、生存期間は2年延びる。ところが、今回我々としては、5%ぐらい合併症率が上がって1年ぐらい生存率が延びるプランBを選んだという形で、外科医が選択すればAIへの懸念がなくなるのではないかと思っています。
○意思決定ナビゲーション技術基盤 効果
ある時、運動誘発電位がパンと落ちたんですね。この場合だと、我々術者は覚えてないといけない。どこを触った時に落ちたかということですが、SCOTでつながっていれば、どこの時間帯で、MEPといって運動誘発電位が落ちたか分かりますので、これをデータベースとつなげていけば、リスクマップ、ハザードマップができるのではないかと考えており、合併症率の上昇が分かると考えています。
○意思決定ナビゲーション技術基盤 リスク
我々ナビゲーションがしっかりしているので、手術の途中で何%ぐらいとれたということが分かります。例えば、今88%とれていると。そうすると、統計上100%とれると、40歳で健康であれば100日ぐらい生存期間が延びることも可能ということで、これは今までのデータベースを使いながら、効果のデジタル化ができるのではないかと思っています。
○AI Surgeryの技術基盤
我々もいろんなAI研究をやっていて、例えば抗がん剤の副作用の予測をするには、左だと、普通に平均値を出すとばらばらですが、Support Vector Machineを使うとある一定の予測はできるんですけれども、なかなか難しいんですね。ところが、例えば抗がん剤投与前の白血球数を入れると非常に予測がよくなる等々、データサイエンティストは必要だろうと考えております。
○人工知能における2人の巨人
このAIを開発したのはMcCullochという外科医の先生と、Pittsという数学者なので、外科医で始まったAIが、ようやく外科に応援してくれるのではないかと思っています。
○SCOTが目指すAI化と必要な本質デジタルデータ
厚労とAMED事業で、こういった形で予後を予測するために、電子カルテのSS-MEXデータと術中のダイナミックなOpeLinkのデータを合わせて、最終的にはBIツール、AIツールを使ってフィードバックをかけて、先ほどのデスクを作りたいと考えております。
実際セキュリティ等を考えて、いろんな機械が入ってくるので、シミュレーターでいろんなデバイスのデータを暗号化してというか、共通化して、最終的にはベンダーフリーでアプリに出すようなシミュレーターの開発を厚労省の科研費で、この機会にやっています。
一番問題なのは、機械学習とか深層学習を入れるためには、デジタル化データ、構造化データが必要ですが、外科はほとんどアナログデータなので、ここの部分をどうやって下に持っていくかということが重要だと思っています。
○今後の課題
こういった意味で、新しい目と手を作るための課題としては、どうやってアナログデータ、非構造データをデジタルand/or構造データにするかということです。実際手術室のデータは孤立化しているので、手術の位置情報がない、タグ付けされてないという問題があります。そういったものをベンダーフリーで、ダイナミックなデータが扱えて、巨大化する画像データも、巨大なデータベースとか5G等々でいければいいのではないかと思ってますし、まずはクラウドや手術データの共有への国民の理解と、セキュリティ強化も必要だと思います。
○海外の状況
海外の状況としては、先週、術中画像国際学会に行ってきましたが、ネットワーク化とか手術AIの試みはいまだにやられていないです。診断支援とかRadiogenomicsで、画像から遺伝子型を解析するとか新しいようなことはありますが、仕組みの一体化とかネットワーク化に関しては、GEはPredix、Phillipsではe-ICU、オリンパスではEasySuite 4K、各社では行っていますが、こういったものを共通化させていくためには、国、アカデミア主体のものがいいのではないかと考えていますし、同じ動きとしてはドイツのOR.netとかアメリカのMDPnPがあって、我々としてはそういったことで打ち勝って標準化していきたいと考えています。以上です。
(北野座長)ありがとうございます。それでは質疑応答に入りたいと思います。どなたかいらっしゃいますか。
(山内構成員)非常に興味深いご発表で、これから本当にどんどん外科の領域が、手術が正確にできるようになっていくのかなと思ったんですけれども、先生がおっしゃっているように、アナログデータを構造データにという、外科の様々なデータはアナログが多いですので、そこのところが人海戦術というか、この部分にもっとAIが活用できないかなと。その先の部分は非常に進んでいるんですけど、ここの部分がとにかく何とかならないかなと思うんですね。
その中で、最近外科医が、自分の視野のところのカメラがありますよね。それも非常に性能がよくなって、小型化されたものが開発されてきていて、例えば外科医が撮っているもののデータを全部集積をして、それをAIが分析をして、先生の領域だったら、例えばこの領域にいくと出血するぞとアラートを出すようなものとか、とにかく電子化できるデータをうまく活用していく方法を、臨床の現場からより効率的に吸い上げる方法を見つけていただきたいと思うんですけど、例えばそういった活用というのはできるんでしょうか。
(村垣参考人)今、AMEDの事業でテストベッドというのがあって、もともとの手術ビデオ画像から、AIを使って危ないところを予測するということはされています。ただ、ポイントは、非構造のデジタル化データなんです。ただ画像だけで、そこからAIを使っていくんですけれども、最終的には何らかの形での3次元の位置情報は必要だと思います。なぜかというと、グーグルがここまで発達しているのは、結局はグーグルマップで位置情報を正確にやると。あそこで自動運転が可能になった。
そういった地図というか、体の、その患者ごとでの位置情報をタグ付けすることが最も重要で、そのためのいろいろな課題はあるんですけれども、それが行われれば、時間軸がネットワークで同期されて、空間情報が患者情報と一緒にタグ付けされれば、時間と空間が一緒になれば、いろんな手術が構造化できて、いろんな意味で、何か起こっても、すべてデータがあるのでうまくフィードバックをかけて、患者さん側含めて、医者側を含めて、よりリスクが減っていくんじゃないか、効果も上がるんじゃないかと思います。
(山内構成員)ありがとうございます。この会に出ていて、AIが学んだあとの活用とか、AIが学ぶところは皆さんブレインがあって非常にあれなんですけれども、その前の段階で皆さん臨床データが必要というんですけれども、そこの部分が効率的にできる方法がないんじゃないかということを常日頃思っておりますので、そのへんのところをまた考えていただければと思います。
(村垣参考人)電子カルテになると、わりとスタティックなデータになるんですけれども、実は波形とか、様々な連続データとか、そこは宝庫なんですけれども、今うまくいってないんですよね。ダイナミックデータの解析に関しても、よく考えていったほうがいいと思います。先ほど出した我々の血液のデータは、30何例でAIを使えているんですよね。なぜかというと、連続データがたくさんありますから。というところも考えたほうがいいかもしれません。
(羽鳥構成員)村垣先生、TWInsでSCOTによる手術風景の見学をみせていただいて、ありがとうございました。今日のお話を聞いてとてもよく分かりました。
この前もテレビでBBCの5Gの話、さらに8K画像、眼科の手術、外科の手術でも使われている。村垣先生がされているような研究もあると思います。先ほどの、ドイツ、アメリカ、中国で相当な勢いで進んできているということがあると思うんですけれども、北野先生がいつもおっしゃるロードブロックについて何がブロックなのか?ここを解決したらもうちょっと早く日本がトップを取れるのかという、何かご示唆はありますでしょうか。
(村垣参考人)1つは、もう少し外科医にも目覚めていただければいいと思うんですね。我々は実質臓器に関しては相当いけると思います。血管内手術の先生方、あるいは管腔臓器、そこらへんの臓器の先生方が、この情報があればSCOT化できる、その情報があれば意思決定できるということがあれば、ぱっと来ると思います。
あとは、クラウドや手術データ共有とか、心理的なブロック。そこの部分をみんなのデータベースで、手術のいろんな、SCOTで行われたことが全部閲覧できれば明日の手術に役立つので、そういった意味でのいい例を見せていくということだと思います。
もう1つは、4Kとか8Kになってくると、画像がとんでもなく大きくなってくるので、それをどうやってデータベースで処理するのか、間引いていくのか、そこの部分の技術的なものだと思います。5Gに関しては非常に我々は期待しているところで、いろんな意味で、時間と場所を選ばずに上級医が、中堅とか研修医レベルの方々含めて、いろんなオペの高度均てん化に役立つと思います。データ等の取り扱いの中での、いいことに使うんだというところのご理解をいただくことが必要だと思います。
(北野座長)このシステムは、手術のかなりの情報を統合的に収集もできるわけですよね。例えば他国からも同様の目的のシステムが出てきた時に、グローバルシェアでこのシステムがトップになるということが最終的なゴールだと思うのですね。
グローバルシェアでトップにならないと、日本国内は良いけれど、海外はほかのシステムが多く使われ、症例も少なくなってしまします。海外のデータベースのほうが良くなってきた場合、AIはデータに依存する部分が多いですから、海外のシステムの性能が良くなり、日本国内にもそれが輸入されるということになると非常に残念なことです。もちろん品質の問題や、どこまで慎重に進めるかはあるにしても、そういうところも加速しながら、最速でこのシステムがグローバルシェアを取るためには、どういう支援政策があったほうがよろしいでしょうか。
(村垣参考人)こちらの表にあるんですけれども、私も医者として、いろんなところでSCOTの良さを言っているんですけれども、導入したい病院があっても最後のところで若干ハードルがあって、お金が足りないとか、国の薬事の問題とか、いろんな問題がある。そこを官学民で一緒にできれば。例えばロシアは最後のところで無理だったとか、アメリカもわりといいんですけれども、ロサンゼルスの地震対策でのお金がどうのこうのとか。医者は入れたい。ですから、民だけではなくて何らかの形で政府の支援があると、相当いくんじゃないかなという予感はしております。
(北野座長)日本は、海外の医療展開をターゲットにした施策のパッケージは、あるのですか。それはまだないのでしょうか。
(事務局)この分野に関しまして、今後どういう方向で国として政策を進めていくべきか、まさにこのコンソーシアムでもいろいろご意見をいただければと思っております。SCOTに関しましても、海外展開を視野に開発されているということでございますけれども、国としての国際展開みたいなものとどういうふうに共同できるかについては、ご相談を続けていきたいと思います。
(北野座長)医療のところでは創薬は非常に大きいですけれども、医療機器のところも非常に大きな分野ですし、製造業やエレクトロニクス、メカトロニクスが強い日本としては、産業競争力を強化する意味でも、ここは極めて重要なところですよね。今議論した話や病院のサポートをしてパッケージングするようなところは、とても重要な政策的なポイントではないかと思うのですけれども、その辺りをまた議論できればと思います。
時間になりましたので、次の課題へ移りたいと思います。次は中村先生からAIホスピタルに関してご説明いただきまして、自由討論を行いたいと思います。よろしくお願いします。
(中村参考人)がん研究会のがんプレシジョン医療研究センターの中村と申します。本日は内閣府の戦力的イノベーション創造プログラムのディレクターとして、人工知能ホスピタルに関してご紹介させていただきたいと思います。資料4に沿ってご説明申し上げます。
【AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム】
○AIホスピタルプログラムの概要
全体の概要を2ページ目に示しましたけれども、先生方、皆さんご存じのように、医療の分野というのは、医学系、工学系、薬学系、あるいはゲノムの研究の進展によって、非常に高度化、複雑化、先進化、また、個人個人の多様化が進んでいます。
このような環境下で、高度で先進的な医療サービスを提供するというのは非常に困難になってきています。1つの問題としては、働き方改革などの問題もありまして、医師や看護師などに非常に大きな負担がかかっているにもかかわらず、新しい情報が先端的な医療現場に届いていない部分があります。このプログラムでは、AIやIoT、あるいはビッグデータ技術を用いて、病院そのものの仕組みを変えて、それを社会実装化したいと考えています。
これらの課題は、日本の迎えている超高齢化社会における医療の質の確保や、医療費の増加の抑制、あるいは医療分野での国際競争力の向上。先ほど申し上げましたように、医療現場での負担が増えている中で、働き方改革という命題に取り組まないといけない医療現場に関して、大きな貢献ができると考えています。
○ビッグデータベースとその解析は何に役立つのか?
ビッグデータを作ると何が役に立つのか。少なくとも病気の背景となる、遺伝的、生活的な要因が明らかになれば、生活指導、特にかかりつけ医による健康指導などが進めば、病気の予防や病気の重症化予防につながって、最終的には健康で長生きする社会の実現につながると考えています。
当然ながら、病気を起こす仕組みが分かれば、新しい診断法や治療法の開発につながりますし、個々の患者さん間の多様性を理解しないと、的確な医療を提供できないというのが実情であります。例えば、がんなど、ゲノムの情報がなければ正しい薬の選択はできませんし、糖尿病といっても、インスリンが作れないのか、インスリンが分泌できないのか、インスリンの反応が悪いのかによって、当然薬の選択は違うわけです。
このような観点からデータベースを作ってそれを有用に使えば、健康寿命の延長、あるいは治療期間が短縮すれば医療費の削減につながりますし、当然早く回復すれば、労働人口の確保という日本が抱えている課題にも対応できると考えています。
もう1つ大事なのは、診療情報をどのような形で管理するかという観点から、大震災時に診療情報がなくなるという経験がかつてありました。このような環境下で、個人個人の診療情報をどう格納して、震災が起こったらどのような形で提供するのかということに取り組んでいかなければならないわけで、そういう観点からも医療の大きなデータベース化というのは必要と考えています。
○医療現場で必要な人工知能機能-1
逆に医療現場で振り返った時に、必要な人工知能機能というのはたくさんあります。例を挙げますと、正確な画像診断、あるいは病理診断の補助というのは極めて重要で、例えばCTスキャン、MRIの機器は、人口密度で考えますと日本は他のOECD諸国の5~6倍の数があります。それに対して放射線科医はOECDの中でも最下位に近い。たくさんの画像が撮られているにもかかわらず、その読み手が絶対的に足らないという環境が生じています。
あるいは病理も、プレパラートの数はどんどん増えてきていますけれども、臨床病理医が足らない。この観点からも、地域格差をなくすためにも、画像診断や病理診断の人工知能に取り組むというのは、医療の質を保つために不可欠であります。
それから、ウェアラブルな装置が増えてきました。例えば心房細動の後遺症、合併症として、脳梗塞というのは非常に大きな課題でありますけれども、心房細動の患者さんが脳梗塞を起こした場合に、それをいち早くウェアラブルな装置で捉えて救急搬送システムに乗せれば、後遺症のない形で治療を行うことができます。
これは日本の現状を考えれば非常に重要で、介護される方が出てくると、医療費、介護費に加えて、家族の負担も非常に大きくなりますので、ウェアラブルな装置をうまく使って、患者さんに治癒をもたらすような医療の供給ができると考えています。
それから、薬剤の誤投与、あるいは人の取り違い、画像を見ないというような人為的なミスはある一定の割合で必ず起こりますので、人工知能を利用して警告を発するようなシステムができれば、医療ミスを最小限にすることができます。
それから、当然ながら、1つの診断名でありましても、その背景は多様ですので、多様な背景を捉えた上で、個人個人に、よりその患者さんに合った治療法・薬剤を提供することも非常に重要な課題であります。
○医療現場で求められている人工知能機能-2
医療関係の情報量は絶対的に増えています。30倍に増えていると言われている中で、我々専門家と医療現場の方、あるいは医療現場から患者・家族に伝える段階での知識ギャップというのは、新しい医療を提供する上で非常に大きな壁となっております。この壁をできるだけ低くするために、最先端の情報を共有するという形で、人工知能を用いたeラーニングシステムというのが非常に重要になってまいります。
もっと大事なのは、医療現場は非常に忙しくなってきております。特に電子カルテ、あるいは看護記録を残すという観点で、実際医療現場では、パソコンとキーボードを見ながら横目で患者さんと話すというような非常に空疎な診療現場が生まれているわけで、診療現場での記録をテキスト化してそれを整理する、あるいは看護記録を整理することができれば、医師や看護師さんがもっと患者さんと触れる時間を保つことができます。
さらに、インフォームドコンセントに非常に多大なる時間が費やされています。その負担を軽減するというのは非常に重要で、説明するといっても、患者さんや家族の理解度には非常に大きな差がありますので、今のようにキーボードと画面だけを見て説明する形では患者さんの理解度を推し量るのは非常に難しく、それがストレスとなって、アメリカなどでは燃え尽き症候群の一因と言われています。
したがって、皆さんに分かるような形で人工知能が相手の理解度を測りながら説明していくようなシステムというのが重要で、将来的には双方向で、ある程度の質問も受け、答えられるような人工知能機能というのが重要で、それができれば医師や看護師の負担の軽減につながって、働き方改革に寄与できると考えています。
○プロジェクトのゴール
今や遺伝子、画像、病理、あるいはバイタルサインなど様々な情報が集められていますけれども、それを総合的に解析して、診断、あるいは治療薬の選択に使うというのはかなり難しくなってきています。最終的な像としては、データベースを作ってAIがディープラーニングすれば、3つぐらい選択肢を与えて、この病気の可能性が高い、あるいはこの治療法、治療薬は最も可能性が高いということが言えれば、より医療の質を確保することができますし、そのような先端的・効率的な医療を提供しながらも、医療従事者の負担を軽減することにつながってくると考えています。
○参加している研究グループ
7ページ目に内閣府のプログラムに参画している研究グループを示しましたけれども、14の機関に参加していただいて、Aは根幹となるデータベースを作り、有用な情報を抽出し、いろいろな創薬や診断技術の開発につなげていくグループ。Bは、会話をテキスト化し、さらにそれを整理していくグループ。Cが新しい技術を開発していくグループ。Dが、それを実装化し、評価し、さらに改善していくためのグループで、小児の病院として成育医療センター、がん専門病院としてがん研有明病院、総合病院として慶應義塾大学と大阪大学に入っていただき、いろいろな知財、あるいはオープン・クローズド戦略なども含めて、グループEで整理していただくということにしています。
○研究グループ間の連携体制
8ページ目に全体のスキームを書きましたけれども、それぞれのプロジェクトが個別で運営されるのではなくて、1つの大きなプロジェクトとしてお互い連携していきながら、このような形でAI病院の開発を進めていくという全体像を示したもので、先ほど申し上げましたように、サブテーマEは国際的な戦略、あるいは患者さんとのネットワーク構築、知財戦略、あるいは、将来的にマッチングファンドを得て企業と共同でやっていくという形を作り上げていきたいと考えています。
○研究グループ間の連携体制
9ページ目は、8ページ目の内容に、それぞれ参画していただいているグループを当てはめたものであります。
○サブテーマA:セキュリティの高い医療情報データベースの構築とそれらを利用した医療有用情報の抽出、解析技術等の開発
個別の課題に移りますと、サブテーマAという大きなプログラムは、とにかくデータベースを作り、有用情報を拾い上げて、最終的にはAI診断につなげていくグループであります。
先ほど医師会の委員の方が指摘されましたように、機微な情報を扱いますので、データを管理する際にどうセキュリティを担保するのかということが極めて重要で、真ん中にありますように、秘密分散方式にし、かついろいろな解析をする場合に秘密計算をする。
ここで1つ大きな課題となってくるのが、医療辞書というか、リファレンスとなる用語集であります。それぞれの言葉とともに、関連する言葉を連結するような大きな辞書を作り上げていく必要があります。それでなければ、診療記録、あるいは看護記録を、きちっと整理された形で記録として残すことができませんので、辞書を作りながら実証化し、どのような形で診療記録を残していくのかという検討を行っています。
○サブテーマB:医療従事者と患者・家族のアイコンタクト診療・説明時間を確保するための人工知能の活用例
先ほど申し上げましたように、今の診療現場というのはほとんどパソコンの画面とキーボードを見て、横目で患者さんと話をしている状況です。アメリカですと、15分の診療期間の間に目と目を合わすのは1分ぐらいしかない。日本は3分間ぐらいの診療で、ほとんど目と目を合わさないという形で、非常に空疎な空間となってしまっています。
何となくAIを使った医療というと冷たいイメージを持たれるかもしれませんけれども、コンセプトとしては、アイコンタクトを増やすことによって、医療現場にもっと心と心が通ったような状況を作りだすというのがゴールであります。
5年後には、一部であってもAIが自動的に診療記録を取って、それのサマリーを作ることを目指しています。実際アメリカでは、テキスト化すること、あるいはそれを整理することが行われていますけれども、テキスト化するところまではおそらくそんなに困難ではないと思います。しかし、他の人が見た時に分かるような形でサマリーを作るというのは結構難しくて、特に日本語の場合、会話では主語がありませんので、主語がない文章をきれいに整理するというのはかなり難しいですので、それも考えて対応していきたいと思っています。
○サブテーマB:人工知能による患者さんへの説明・同意プロセスの補助
インフォームドコンセントですけれども、患者さんに積極的にどの人の説明を受けたいのかということを選んでいただきながら説明をし、方言も取り入れ、多言語にできれば、海外への戦略展開も視野に見えてくると考えています。子どもさんの場合には、漫画の代表的な人気キャラクターを使って説明するということで、子どもさんだから分からなくていいというのではなくて、子どもさんにも分かりやすい説明の仕方ができるようなものを組み入れたいと考えています。
○サブテーマC:リキッドバイオプシーによる超精密医療
サブテーマのCは新しい技術で、リキッドバイオプシーという技術は、血液のように液体を用いてがんを診断するシステムで、日本は非常に遅れていますけれども、アメリカでは実装段階に入っています。
実装を考えながら、どんな課題があるのか、例えば血液を採ってから、血液をどうハンドリングするかによってこの診断方法の成否が決まりますので、それをモニタリングし、データを解析し、解釈・解析する段階で人工知能の助けを借りて正しい解釈をするとともに、どのような形で患者さんや医師に分かりやすく伝えるのかを、4年以内に実装化したいと考えています。
この血液を用いたシステムは、例えば手術のあとにがんが残っているのかどうかということを非常に精密に判定することができます。もしそうなれば、インターベンションが始まるわけですけれども、インターベンションだと、今度は医療用の診断、あるいは介入、臨床試験という非常に難しい問題がありますので、厚労省の協力も得ながら、このような新しい制度でがんの治癒率を上げることに貢献したいと思っています。
日本のがん検診率は50%いくか、いかないかというような低いレベルですので、早期がんがこのような血液診断で行うことができれば、今はがんが進行してから見つかっている方をできるだけ早く見つけるという方向に転換でき、それによっても治癒率が上がると思います。
○サブテーマC:AIを利用した安全で迅速な大腸内視鏡検査
これは、私自身が苦しんだ体験から考えたものです。大腸の内視鏡というのは比較的難しくて、うまい、下手によって全然時間も違いますし、非常にまれですけれども、大腸を突き破るという事故もあります。自動運転システムのようなものを使えば、内視鏡の最先端にセンサーを付けて、どちら側に曲がるのかということが自動的に判断できれば、診断医はただ単に内視鏡を押し込むだけで画面に集中することができますので、見落としが減る。
大腸がんが増えている現状で診断医圧倒的に数が足らないわけで、このような自動化システムができれば、患者さんにとっても非常に福音になりますし、これそのものが海外に導出できる技術につながると考えています。特に、女性のがんの死亡率の1位が大腸がんという状況ですので、簡単に診断できるシステムは非常に重要であると考えています。
○人工知能+医療・DNA情報のデータベース化は国の命運に関わる
人工知能や医療やDNA情報のデータベース化がいかに重要かというものを1ページにまとめました。クラウドに安全にDNA、医療情報、診療情報を保管し、それをうまく人工知能を用いて利用することによって、有用情報の発見から画期的な新薬・診断法の開発につながり、医療現場のエラーを回避できます。
それから、ある病院の方と話しをすると、予約の時間から30分遅れるとクレームがつく。逆に患者さんからすれば、時間どおりに行っているのにいつ呼ばれるのか分からない。トイレに行きたくても、1分後に呼ばれるか、20分後に呼ばれるか分からないというのは非常にストレスがかかるので、スマートフォンにどれぐらい遅れているのかということを知らせれば、患者さんは安心してトイレに行くことができますし、もっと時間があればコーヒーを飲みに行く時間も取れるわけです。
どこかの検査へ行くのに20分待ち、別の検査で20分待ち、支払いに30分待つというのは非常に大きなストレスになりますので、それをうまく流していくことによってストレスを減らすと同時に、いろいろな情報を用いて患者さんに最適で安全な治療法を提供する。
その過程で、説明あるいは診療記録というような形で過度な負担があると、医療現場が疲弊してしまいます。看護師さんの場合、勤務時間の30%を看護記録に使っているというデータがあります。そうすると1時間半、勤務時間の中で記録に費やしていることになります。それを自動化することができれば、間違いなく働き方改革につながると思います。
もう1つ、このプログラムの中では触れておりませんけれども、ゲノム情報に基づく個別化予防、個別化医療というのは非常に重要で、将来的には何らかの形でAIホスピタルに組み入れていく必要があります。また、右にありますように、大震災時に患者さんの診療情報が失われるというのは、非常に患者さんにとって大きな不利益になります。明日にも大震災が起こるかもしれないと言われている中で、診療情報をどう確保するのかということはまだ明確でありません。
私は個人的には、スマートフォンに自分の診療記録を持っていれば、セカンドオピニオンも気兼ねなく行けますし、震災があっても速やかに自分の診療記録にアクセスできると思いますので、これらがうまくいけば、生産性革命や、社会変革や、日本が抱えている社会的な課題の対応につながると信じております。
○計画全体の目標
最後は計画全体の目標です。お時間のある時に読んでいただければと思います。
以上です。
(北野座長)ありがとうございます。それでは質疑応答に入りたいと思います。質問等ありますか。
(保科構成員)非常に多岐にわたる興味深いお話、ありがとうございます。12ページのインフォームドコンセントのところで、ご意見をぜひお伺いしたいのですが、患者さんへの説明、人工知能のキャラクターが直接話すというのは、はたして患者さんとかご家族の納得感があるのかというところ、非常に私は興味がありまして、例えばAIのサポートを得た人間の医師がお話しするという形もありえるのかなと思っています。
一方でAIのほうがいいパターンもあって、私自身の経験でも、例えば人事問い合わせのAIチャットを作った時に、実はLGBTに関する問い合わせは、人間にお話しするよりAIのチャットのほうがよかったという意見も実際に使った声としてあったので、適材適所で使う必要があるのかなと思います。そういった意味で、人間とAIとどちらが、どのような役割が良いのか。特にインフォームドコンセントは、私の感覚では人間が話したほうが納得感があるのかなと思いつつ、そのへんのご意見をぜひ伺えればと思いました。
(中村参考人)決して人工知能がすべて話をするというイメージではなくて、例えばがんの場合だと、診断時に説明し、手術前に説明し、手術後に説明し、抗がん剤が必要だったら抗がん剤の説明が必要ですし、本人に説明し、そのあとに家族に説明し、また知人に説明するというように、かけ算になってきて、非常に過度な負担がかかっているので、それを人工知能に置き換えるのと同時に、患者さんの目を見て、納得されているのかどうかを忖度しながらまた説明を変えるというのは医療側にとっても技術がいるし、難しいんですね。
表情を読み取って相手の納得度を判断して、説明をもっとやさしくしたり、もっと難しくすることもできると聞いていますので、そういうことができれば、最終的にはある程度の質疑応答まで進んで、その後に医師が患者さんや家族と対面で、目を見ながら説明することによって、最終的に納得して治療法を選ぶという2段階が必要だと思います。
もう1つは、例えばずっと目を見ながら話していて、あとでサマリーを作ると、2倍、1.5倍ぐらいの時間が必要になってくるので、そこも含めて、ある程度eコンセントのようなものを取り、最終的には対面でさらに疑問を解決して、患者さんに納得していただくという2段階のシステムになると考えています。
(末松構成員)資料の6ページ、あるいは10ページ、どちらでもいいんですけれども、異なる病院と、企業グループの集合体で1つのプロジェクトを動かすと思うんですけれども、このプロジェクトのIRBのマネージメントというのは、いわゆるCentral IRBみたいなものを使うのか、それとも個々の大学病院、あるいはナショナルセンターで、個々のプロジェクトでIRBの承認を受けて研究開発をやるのか、そのスキームはどのようになっているのかを。
(中村参考人)現時点では、技術開発はサブグループA、B、Cでやって、臨床的に評価する場合には各病院でするという形になっているので、現時点では各病院に委ねています。ただし、もっと広がった場合に、このプロジェクト全体ELSI委員会を今設けてセントラルな形で審査する必要があると思っています。
(末松構成員)もう1点だけ。先ほどのポンチ絵の6ページないし10ページ、このチーム立ての中で、各病院から集めたデータを秘密分散データベースでためこんでというところがあるんですけれども、実際には患者さんはこういう中核的な病院から地域の中核病院に行ったり、開業医の先生のところにお世話になったりということで動きがあるわけですけれども、中央に集められたデータがどういうふうに地域医療というか、それは先の話なのか、それとも、この4年間で、この病院の中でAIの仕組みが動くようにしようというのが目標なのか、それを教えていただきたい。
(中村参考人)現時点では、それぞれの病院の中でクラウドにストアするという形を考えています。ただ、慶應病院に関しましては関連病院もあるので、関連病院と結ぶ形で1つの大きなデータを作りたいとお考えのようですけれども、それに対しては、先生がおっしゃったように、誰がどうアクセスするのかも含めて、今後、倫理的な検討、あるいは誰がデータを利用するのかという検討も必要だと思います。
現時点では、それぞれベンダーが違って、ベンダーニュートラルなシステムを作ろうと思っていますけれども、それぞれ病院の中でのいろいろな制度・仕組みがありますので、参画している病院のデータを全部1か所で集めて、それを解析するところまではなかなかいかないと思っています。
(末松構成員)分かりました。最後にコメントですけれども、国の研究開発で、今、国立がんセンターの間野先生が中心になって、がんのゲノムの事業を推進して、がん拠点病院からデータを集積するプロセスが進んでいます。公的なリソースを使ったプロジェクトが、両方がコラボラティブに、効果的に使われることを念じておりますので、よろしくお願いいたします。
(中村参考人)ぜひ我々もそれは望むところですので、最終的には2つの全く個別のものができるのではなくて、どこかの段階で大きなデータベースができることを、私は個人的には願っています。
(田辺構成員)貴重な情報をありがとうございます。私もAMEDのほうで、プロジェクトを伴走者として拝見して、POの仕事をしているんですけれども、最終的に研究成果を市場に出していくというか、出口戦略のところで悩むことが多くて、今回、先生の資料を拝見しまして、研究グループの連携体制の中にあらかじめ監査法人さんがお入りになっていらっしゃると。これは当初から入っていらして、最初から出口戦略をあらかじめ考えつつ、促進阻害要因を考えるという意味で、各制度をお調べになったり、リリースするにあたってこういう制度を作ったほうがいいということを、ご検討されていらっしゃるということでよろしいですか。
(中村参考人)そのとおりです。例えば、会話に返還するいろんな要素技術が各社にあるので、最初からそれを整理していかないと、抱え込んでしまうと進歩を妨げるところがあるので、知財戦略もはっきりした上でお互い連携していただこうという形で、このような仕組みを作りました。
(田辺構成員)そうしますと、研究の進捗の会議だったり、情報共有の会議にも監査法人さんが入られて、一緒に検討していらっしゃる。
(中村参考人)1か月に一度、マネージメント会議を開催していて、各グループから進捗を報告していただくとともに、例えば連携する際の知財の課題、オープン・クローズ戦略も含めてみんなで話し合うと同時に、利害が対立する同士プラス、このグループで解決策を見つけ出していくという形にしています。
(田辺構成員)なるほど。ありがとうございます。
(豊田構成員)中村先生、貴重なお話しありがとうございます。私は患者・家族の立場で参加させていただいています、それから、15年になりますが病院の中の患者相談窓口を担当していまして、医療事故の対応やトラブル、苦情などにおいても、これまで患者さんのお話を伺ってきました。
先ほどのインフォームドコンセント、患者さんへの説明のところですが、今、私は働き方改革に関する検討会のほうにも参加させていただいているんですけれども、今のままでは医師が過重労働なので、他職種にタスクシフトしていかなければならないと言われているわけですが、ただ、ほかの医療従事者に業務が移ると、その人たちもまた過重労働になることも懸念されていますので、今後は必ずAI等のお世話にならないとやっていけないということを痛感しております。
ただ、難しいのは、人の感情をどうやって受け止めていくかというところだと思うんですけれども、今2段階方式でというお話がありましたけれども、私が実務で感じているのは、例えば診療報酬上では患者サポート体制充実加算ができ、医療安全管理者や医療対話推進者という担当者が誕生して、診療に携わる医師や看護師以外の人たちも患者さんを支援する取り組みが始まっており、人で補うようなサポート体制は既にあります。
そういう中で、ではAIには何をしてもらうことがよいのかといった時に、このような2段階方式で、全部お任せというよりも、基本的なことをやっていただくことが実は良いことではないかと思ってお話を伺っていました。
ただ、やはり1つ懸念するのが、今までの議論の中で、ほかの構成員の方からもご発言が過去にあったかと思いますが、何かに頼ることによって、どうしても人間の対応能力が身につかなくなってしまうのではないかということを心配します。同じ2段階方式でも、基本情報など、どの患者にも必ず説明しなければならないことをAIが担当する、何かそういうことを決めていただかないと必ず弊害が出てしまうということも感じますし、ぜひそういうようなことも知っていただきたいと思いますので、機会がありましたら患者の立場の人たちの意見も取り入れていただき、ぜひより良い形で開発していただけたらありがたいです。
また、今回、寄与するものとしていろいろ挙げられていたんですけれども、安全面のことも中村先生はおっしゃられていたので、医療の質の確保のところに、安全の確保という言葉も入れていただけるとさらに良いのではないかと思いました。
(中村参考人)ありがとうございます。医療現場の方の話を聞いていると、本当に時間が取れない。時間が取れないと勉強もできない。勉強ができないことによって、新しいものを取り入れることができないという悪循環に入っていると思いますので、時間的なゆとりが生まれれば、患者さんにもっとゆっくりと対応することもできますし、勉強することもできる。
それによって正のスパイラルに変えていくことができると思っていますので、働き方改革の中でぎゅうぎゅう詰めになるともっと厳しい状況になると思いますので、そうなると、医療の質、おっしゃったように安全性が損なわれるので、そこをAIが補う形で、診療現場に人間的な温かみを増していくためにも、人工知能の助けは必要だと感じてやっているところです。
(豊田構成員)AIが説明をすると冷たい印象にならないかという議論もあったと思うんですけれども、私も想像しましたが、機械が頑張ってくれているという印象がすごくあって、似たようなことで、チャットでの対応が今はよくありますね、いろんなお問い合わせなどの対応機能ですが、ああいうもので私もチャレンジしたんですけれども、相手が機械だとわかっていると、そんなに頭にこないといいますか、やはり、むしろ機械が頑張ってくれているという印象でした。
ですので、基本的なことはやってもらうんだけれども、どうしても人に聞いてもらいたいという希望や人が説明しなければならない事情が起きた時に、人間の対応能力がなくなってしまうといけませんので、医療従事者がAIと連携し、そしてAIから学ぶことや、人間を教育するためにAIの講師を作ることも、私はむしろあったほうがいいと、聞いていて思いました。
(中村参考人)おっしゃるとおりだと思います。例えば双方向でインフォームドコンセントを取る場合に、患者さんが懸念していた点をサマリーとして残しておけば、お医者さんや看護師さんはそれを見ながらディスカッションすることができると思いますので、それで逆に、私は医療の質は上がると考えています。
(豊田構成員)今後、間違いなく人だけでは足りないという時代になるのは分かっていることなので、ぜひこれを推進していただきたいと思いました。お話ありがとうございました。
(北野座長)議論したい内容はまだありますが、時間もなくなってきましたので、次の議題に移りたいと思います。
次は、このコンソーシアムで第4回から3回にわたって重点領域に関して議論しましたが、資料6の今後の進め方に関する俯瞰図について、事務局からの説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
(事務局)資料6についてご説明を申し上げたいと思います。
参考資料の4に、「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」の議論の進め方ということで、スケジュールをお示しをしております。
第1回から第3回まで、AIの画像診断部門を例に取りまして、開発の各段階ごとにどういうロードブロックがあるか、それに対してどういう対応ができるか、AIの開発を加速するためにどういった取り組みが必要かということについて、前半ご議論いただきました。後半、今年に入ってから第4回以降、過去の懇談会におきまして重点6分野とされた分野につきまして、どういう取り組みが行われているかということについて、それぞれご議論をいただいてきたということでございます。
資料6の俯瞰図に関しましては、AIの開発・活用が期待される分野、国や民間に期待される役割についてご議論いただくための地図のようなものだと考えております。
後半のご議論の中では、例えば医療の分野におきまして、今日ご紹介いただきました手術支援AIの開発の関係でありましたり、画像診断の関係では、医学会を中心に質の高い教師付きデータを全国規模で収集する取り組みが進んでいるということであったり、あるいは今日、AIホスピタルの関係でご紹介いただきましたような、医療従事者支援としてのAIの活用というところも分野としてはあるということでございます。
また、図の下のほうにありますけれども、医療を支える基盤としての、今日もご紹介いただきましたけれども、新薬の開発とかゲノム解析の関係に関しても、AIの開発が進んでいるところでございます。
介護・福祉分野に関しましても、先日のヒアリングの中で、見守りなど高齢者を支援するAIの開発を、民間企業のほうで取り組んでいただいているということをご紹介いただきました。介護の関係で開発されているような技術に関しましては、多様な方が多様な社会参加を行うことが可能なインクルージョン技術としても捉えられるのではないかということで、図のほうにも書かせていただいているということでございます。
健康分野の関係に関しましては、図の左のほうでございますけれども、活動量計のような多くの民間企業によるデータ収集というものがあるわけですけれども、この分野の取り組みをさらに活性化するための取り組みにつきまして、ヘルスケアIT研究会、これは経済産業省さんのほうで、我々厚生労働省も参加している研究会でございますけれども、そこにおきましても議論が行われていて、どういうふうにそれを推進していくかということが議論されております。
次回は健康分野のことに関しましても、ヘルスケアIT研究会における議論の様子なども情報提供させていただきながら、次回以降のコンソーシアムにおきましては、ヒアリングの結果なども踏まえまして、AIの開発・活用が期待される分野ごとに、AIの開発を加速するために国とか民間企業等に期待されること、どういったことが考えられるのかということについてご議論いただければと思っております。
本日のご議論の中でも、分野ごとに、例えばデータの基盤が大事なのではないかというご意見を含め、いろいろいただいているところではございますけれども、後半の議論のまとめといたしまして、次回以降、そういったところの議論をいただければと考えております。その時には、各分野ごとにヒアリングをした時に、各構成員の皆様方はじめ、いただいたご意見を整理した資料に関しましても用意させていただきながら、議論をいただければと思っております。事務局からの説明は以上でございます。
(北野座長)これに関してコメント、議論等あればお願いします。この俯瞰図に書いてあるもの全て、国の予算で取り組むということではありません。民間が行っている部分のサポートや制度を見直すこともありますし、国がプロジェクト化してやるべき部分や取り組む必要はあるが優先順位の関係でまだ手がついていないものは今後取り組む項目に入る話になります。重要な点は、大きな領域で我々が注目しなければいけない項目に落ちがないようにしたいということです。
(葛西技術参与)今日いろいろなお話を伺って、非常に勉強になったことが多々あります。これはあくまで私の個人的な意見で、厚生労働省としてオーソライズされているものではないですが、今日聞いていて、このコンソーシアムはAI開発加速コンソーシアムでございますので、やはり日本は研究の域を出れてないなという感じがしています。
それはなぜかというと、実は1年もたつとAIのアルゴリズムは新しいものがどんどん出てきていて、それをさらに加速的に開発を進めることが必要にもかかわらず、そういうスピード感に全く追いついていない。これを何とか解消しなければいけないと思います。
その時に、1つは、今全部研究開発でやっている事業は、アノテーションを付けるにしてもそうですが、いっぺんつけて終わりという発想に近い。海外の臨床現場で、例えば画像のアノテーションを付けるといったら、臨床の現場で対話をしながら、人工知能が「ここが怪しいですよ」と言ったことについて、専門医の方が「僕もそこがおかしいと思ったけど、ここもおかしいですよ」と対話をしながらアノテーションを付ける。いわゆるフィードバッキングするようなAIの作り方が普通にもかかわらず、どこかに集約して、誰かがアノテーションを付けてそれを返すというやり方は、脱さなければいけないんじゃないかというのが1つ感想です。
ただ、その時、臨床の現場に負担に思わせないようにアノテーションを付けなければいけないので、そのアプリケーション開発とか、インタフェース開発というのは、かなり慎重に作らなければいけないというか、真剣に作らなければいけないと思います。
もう1個が、いろんな事業でやっているにもかかわらず、私自身がいまだによく分かってなくて調査をしなければと思っているんですが、どこでどういうアルゴリズムがどういうふうなコードで書かれているのかがさっぱり分からない。我々人工知能を作る側の人間としてはコードシェアをしたい。ほかで作ったコードでスマートなコードは当然再利用していきたい。これは知財の関係がありますが。
海外ですと、当然ですけどAIに関するマーケットプレイスがあるにもかかわらず、コードシェアをする仕組みが人工知能開発基盤のところで、私自身もデータヘルス改革推進本部で検討していかなければいけないなと思っております。
3つ目が、人工知能モデルに対して、適切なアルゴリズムかどうかの評価ができていないです。普通、人工知能を作る時に、アルゴリズムを評価して、そのモデルを検証するということを何度も繰り返すにもかかわらず、評価プロセスが適切に行われているかというのが、各研究事業でちょっと不安がございます。こういったことについての質の担保ということも考えなければいけない。
私自身は、もう1個は、今日の話を非常に真摯に受け止めておりまして、データヘルス改革推進本部としては、臨床情報は絶対的に、そろそろ電カルを含めて根本的に見直さなければいけない。これは私の決意表明でございます。
というのは、電カルを含めてレセプトから始まった、すべての先生がご存じだと思いますが、そういった成長曲線できているシステムですから、そういった部分から、研究分野に使えるような電カルに根本的にシフトしなければいけない。HL7 FHIRとかいろんな規格が出てきていますので、SS-MIXでない考え方も必要なのかなと。これは私の感想です。
(山内構成員)資料6にあるこの分野の中で1点だけお聞きしたいんですけれども、医療安全という項目に関して、今まで取り上げられていましたでしょうか。医療安全の分野もそれこそ国が主導でやっていって、臨床現場において患者さんにとって直結する非常に大切な分野だと思いますし、国によっても違ってくるので、そこの分野はどこでというようなことを教えていただけますでしょうか。
(事務局)この俯瞰図でございますけれども、もともと6分野とされている分野を実際にマッピングしてみたらどうなるかということで書き始めまして、その時に、明示されていないけれども、こういうものが含まれているんじゃないかというものを、注意書き的に書いたものがこれです。
先生ご指摘のように、医療安全という分野が大きくあるということは我々としても認識をしておりまして、例えばAIの関係ですと、医薬品の関係の情報を整理して確認するというようなことにAIを活用する。がんセンターでそういったことをやっていますみたいなプレスリリースが昨年あったと思いますけれども、そういった取り組みがあるということは認識しておりますけれども、厚生労働省の、我々が直接推進に関わらせていただいている研究事業などでやっているものの中には、直接医療安全を目的として、そこを重点としてやっているものは現在ございません。ただ、分野としてはあるということで、この中に書かせていただいているところです。
(山内構成員)分野として非常に重要な部分だと思いまして、手前みそにはなりますけれども、私どもの大学の公衆衛生のほうで医療者が何かミスをした時のインシデントレポートというものがあるんですけれども、それがテキストの形になっているので、そこからキーワードを拾って、どういったことが起きた時にどういうRCA、根本原因分析が行われて、どうしているかというのをAIで全部分析することを今行っているんですね。
そういったものを使ったり、あと、国際的にもこの分野は、この前オーストラリアの方が講演しに来られたのを聞いたんですけれども、国際的にもこの分野はどういうターミノロジーを拾ってくるとか、AIで今そういったことが行われている分野だと思うんですね。
日本だからこそ起こる医療ミスとか、国際的に比べることとか、そういったことも非常に有意義なことだと思いますので、そこの分野に関してももう少し情報を集めていただいて、この分野であるからこそ開発を国が主導でやっていくと思いますので、検討していただければと思いました。
(宮田構成員)今まで出てきた議論を精緻に整理していただいたと思います。これからのもう1つの課題は、今、各分野においてAI開発がされていますが、今度はこれが情報によってつながることによってどういった相乗効果が出てくるか。例えば今日の手術であれば、手術したあとのリハビリテーションにつなげるAIであったり、あるいは問診というのがあるんですが、問診と、いわゆる早期発見・早期兆候をつなげていくという話。
これは画像診断も同じで、画像診断から今度、治療に入っていって、患者さんの、今、医療安全というキーワードが出てきましたが、医療の質をいかに上げていくか。各クラスターを一気に全部つなげると一番いいんですけれども、筋のいいところをつなげていきながら、葛西参与がさっきおっしゃっていただいた、情報の規格整備をしていくことも、これからもう1つ課題になると思いますので、ぜひこの点も検討していただければと思います。
(北野座長)ありがとうございます。俯瞰図について、気付かれるところがありましたら、事務局か、私にコメントをいただければ、リバイズをかけていきたいと思いますので、よろしくお願いします。また、本日の議論で医療安全についてご指摘頂きましたが、プロジェクトや政府の施策でフォーカスされていないものについて、今後どうするかという議論はこのコンソーシアムからの提案として取り上げていくことも考えられると思いますので、よろしくお願いします。
次、末松先生からご報告お願いします。
(末松構成員)手短に。資料の7をお開けください。過去、足かけ3年ぐらいになりますけれども、臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業を進めてまいりました。
AMEDでは、今日もいろいろ議論のポイントが出てまいりましたけれども、臨床の画像情報に関して、異なる学会の、学会のイニシアチブと、それから共同作業。連携をどうやってやるかということで、非常に大きな貢献をしていただいているのが国立情報学研究所です。そこのマルチクラウドを使い、情報学の若手研究者の方々の多大のご尽力で、1つの情報作業空間を参加している全学会でシェアする仕組みを構築しております。
ここに参画していますのが、日本病理学会、消化器内視鏡学会、医学放射線学会、これが最初の、我々が3兄弟と呼んでいたやつですけれども、それに加えまして、眼科学会、皮膚科学会、超音波学会が連携をして6兄弟として運営しております。それぞれの学会の目的に合わせたAIで、学会間でノウハウをシェアしながら、ようやく今、いろいろ成果が出てきたところでございますけれども、AIを作るだけではなくて、それを地域にどういうふうに、例えば病理診断をフィードバックするか。そういう社会実装の研究事業も含まれております。
ホームページの申し込みが昨日からオープンしておりますので、ご興味のある方はぜひお申し込みいただいて、ご参加いただければと思います。以上です。
(北野座長)本日はここで終了します。次回は4月17日の13時から開催になります。詳細は事務局から連絡をさせていただきます。本日はありがとうございました。