第2回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会 議事録

日時

平成31年3月15日(金)10:00~11:52

 

場所

全国都市会館 第1会議室

議題

  1. 妊産婦に対する医療(構成員によるプレゼンテーション)
  2. 妊娠と薬情報センターの取組(参考人からのヒアリング)

議事

 

○宮崎課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第2回「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。着座したまま失礼いたします。
本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして、まことにありがとうございます。
井上構成員がおくれていらっしゃる予定です。井上構成員を除きまして全ての構成員の皆様に御出席をいただいている状況でございます。
また、参考人として国立成育医療研究センター、妊娠と薬情報センター、村島センター長にお越しいただいております。
本日もペーパーレスという形でお願いをさせていただいておりますけれども、資料としてお配りしておりますのは資料1から5。これにつきましては、本日お話をいただく皆様から御提出いただいた資料でございます。タブレット上で言いますと、04から08までが各構成員の発表資料ということで、搭載をさせていただいております。
また、参考資料1として今後の進め方を示した資料、参考資料2として前回構成員の皆様方からいただいた主な御意見をまとめた資料、参考資料3として妊産婦にかかる保健・医療の現状と関連施策の資料を事務局から提出させていただいております。また、机上にアンケート、未定稿というクレジットを打ったものをお配りしておりますので、後ほど御説明をさせていただきます。参考資料は以上でございます。
では、これから議事に入らせていただければと思います。
ここからの議事運営につきましては、五十嵐座長にお願いをさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○五十嵐座長 ありがとうございました。
皆さん、おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。
きょうは、この検討会の本来のミッションである妊産婦に対する保健・医療体制について検討することを鑑みまして、前回の検討会において、社会的なリスクのある妊産婦に対する支援の取り組み等について、資料提出のお願いがありました。それに対しまして、きょうは追加資料がありまして、事務局から紹介をしていただくことになっておりますので、初めにこの資料の御紹介をお願いいたします。
○平子課長 母子保健課長でございます。
まず、参考資料3を見ていただけたらと思います。「妊産婦にかかる保健・医療の現状と関連施策(追加資料)」というものでございます。この検討会のミッションとしては、保健・医療体制のあり方ということでございますけれども、関連するものとして、福祉の関係のものも含め、追加資料の指示がございましたので、きょう説明させていただきたいと思います。
2ページ目、子育て世代包括支援センターでございます。これは、「妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供できること」ということを目的として、各市町村で今、設置が努力義務化されているというものでございます。これは2018年4月1日現在で761市区町村、1,436カ所に設置されておりまして、2020年度末までに全国展開を目指すというものでございます。下を見ていただきますと、さまざまな関係機関の包括的な窓口ということで、関係機関と連携しながら対応するというものでございます。
1ページをおめくりください。養育支援訪問事業でございます。これは乳児家庭全戸訪問事業、いわゆる「こんにちはあかちゃん」ですけれども、それなどにより把握いたしました、特に養育支援が必要であると判断される家庭に対して、保健師、助産師、保育士などが居宅を訪問して、養育に関する指導、助言などを行うというものでございます。
実施率は、左下の3のところを見ていただきますと、1,476市町村が行っており、右のイメージ図で見ていただきますとおり、市町村の保健師などが、支援が必要な家庭などに訪問支援を行いまして、例えば望まない妊娠、育児ストレス、虐待リスクなどに対応していくというものでございます。
次のページに行っていただきまして、母子生活支援施設でございます。これはひとり親家庭への支援ということで、母子家庭生活の自立を促進するということを行っている施設でございます。これは都道府県、市町村が児童福祉法に基づいて、入所契約により入っていただくということですけれども、施設の数につきましては、左下、施設数227カ所。今、現員としては3,789世帯が入っておられるという状況でございます。
次のページに行っていただきまして、乳児院等多機能化推進事業というものでございます。これもその名のとおり、乳児院や児童養護施設等の高機能化及び多機能化、機能転換などを図る。その事業に要する費用を補助するというものでございます。まる3は、赤になっておりますが、産前・産後の母子支援事業ということがこの中に含まれております。
次のページに行っていただきまして、下のほうの図は、都道府県、児童相談所などから乳児院、母子生活支援施設、産科医療機関等に委託いたしまして、コーディネーターが配置される。そこで相談窓口を設置していただいて、支援計画の策定、居住支援、生活支援、就業支援などを行っていくというものでございます。
次のページに行っていただきまして、養子縁組民間あっせん機関助成事業でございます。これも赤字になっていますけれども、特定妊婦に対する支援体制構築モデル事業というものがありまして、これは産科医療機関とも連携をして、特定妊婦からの相談に応じるといったこと。また、看護師を配置して、産科医療機関と連携した妊娠期のケア、出産後の母子への養育支援、自立に向けた関係機関と連携した就業支援などを行うことによって、特定妊婦への支援体制を構築するというものでございます。
もう一ページ進んでいただきまして、女性健康支援センター事業でございます。これは思春期から更年期に至る女性を対象といたしまして、各ライフステージに応じた身体的、精神的な悩みに関する相談指導、また、相談員の研修などを通じまして、女性の健康保持増進を図っていただくというものでございます。
主な対象者ということで、例えば相談内容としては、不妊相談であるとか、望まない妊娠、メンタルヘルスケア、性感染症などへの対応も含まれるというものでございます。ここの実施担当者としては、医師、保健師、助産師等が主なところになりますが、実施場所といたしまして、全国73カ所、47都道府県には全て設置済みというものでございます。
1ページおめくりいただきまして、この女性健康支援センター事業の中に平成31年度からの拡充を現在予定しているものでございますが、特定妊婦と疑われる者と。先ほど説明を省かせていただきましたが、特定妊婦と申しますのは、出産後の養育について、出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦ということで、虐待などのリスクも疑われる方でございます。
この方について、例えば予期せぬ妊娠、望まぬ妊娠ということで女性健康支援センターのほうに御相談があった場合に、必要に応じて面接、訪問相談を実施して、例えば経済的な事情などにより受診が困難といった特定妊婦と疑われる者がいる場合には、妊娠判定などの支援、あるいは産科受診に同行支援をし、その判定に係る費用なども補助することによって、医療機関あるいは関係機関へとつなげていくという事業でございます。
1ページおめくりいただきまして、体外受精、顕微授精の状況でございます。これは最近数がふえてきておりますが、平成28年の実績といたしましては、日本産科婦人科学会の資料をおかりしておりますけれども、5万4110人ということで、割合といたしましては5.54%ということで、18人に1人が体外受精、顕微授精でお生まれになっているという方でございます。
1ページおめくりいただきまして、不妊に悩む方の特定治療支援事業でございます。こういった特に体外受精あるいは顕微授精については費用が高額ということもあり、特定治療支援事業において補助をしているというものでございます。これは法律上の婚姻している夫婦に対しまして行うものですが、給付の内容としては、初回治療が30万まで、その後については1回15万円行うというものですけれども、基本40歳未満であるときは通算6回まで、40歳以上43歳未満は通算3回までの女性となっております。
男性不妊がある場合には、夫婦ともの治療が必要になる場合がございますが、そういった場合には別に初回治療30万円までの助成を、平成31年度予算において上乗せを検討しているというものでございます。所得制限が730万円(夫婦合算の所得ベース)と定められているものでございます。
簡単ですが、私のほうからは以上です。
○五十嵐座長 どうもありがとうございました。
それでは、何か御質問等ございましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。
○福本構成員 質問というか、資料の提出をお願いした下関市の福本でございます。
大変わかりやすい取り組みの資料を出していただいて、ありがとうございました。
特に9ページ目の女性健康支援センター事業は、我が市ではまだ取り組んでおりませんので、こういったことは必要なのだなと改めて思った次第でございます。
相談内容のところを見ると、第1位が女性の心身に関する相談。2つ目に多いのがメンタルケアですね。産婦人科、精神科、そして行政の連携をきちっと取り組んでいかないと、ここで拾い上げても解決にはつながらないのではないかと改めて思いましたので、きょうお集まりの委員の皆様からそこら辺のコツとか好事例とか、そういったものを御紹介いただけると、またよいシステムができるのではないかなと思いました。
どうもありがとうございました。
○五十嵐座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、御説明どうもありがとうございました。
続きまして、早速議題に入りたいと思いますが、きょうは妊産婦の医療の問題についてヒアリングをしたいと思っています。次回は妊産婦の保健を中心にヒアリングをさせていただきたいと考えています。
実際の医療現場で妊産婦の方々に対する診療などにかかわっていらっしゃる5名の先生方から、妊産婦の医療に関する現状についてお話をいただきたいと考えています。その後、意見交換をしたいと予定しております。
初めに、中井構成員、井上構成員、牧野構成員から御説明をいただいて、一旦意見交換を行います。その後、薬剤に関しまして、髙松構成員、村島参考人から説明をいただいて、お二人の先生のお話に関して意見交換をしたいと思っております。その後でまとめて全体を通じた意見交換も予定しておりますので、そのような予定で行きたいと思っております。
それでは、初めに中井構成員からお話をいただきたいと思います。先生方には事前にお願いしておりますけれども、お一人当たり7分程度で御説明をいただきます。では、中井先生、よろしくお願いいたします。
○中井構成員 よろしくお願いいたします。
お手元の04、資料1というPDFをお開きください。右下にページ数があるので、それに沿ってお話ししたいと思います。私からは妊婦の診療の現状と課題を御説明したいと思います。
2ページ目は、皆さんよくご存じの母体の年齢別出産数の割合を示したものです。年齢の高齢化、現在では35歳以上が3割近くを占めております。細かな数字で恐縮ですけれども、この割合がすごく変化している2000年から2010年に焦点を絞って、実際の合併症の状況などを検討いたしました。
3ページは、私どもの日本産科婦人科学会の周産期登録データベース、2001年から2010年のもので、単胎、お一人のお子さんの妊娠を58万例集めた、多分国内最大のデータベースになると思いますが、まず初めに、これは妊娠に伴う合併症、つまり、産科合併症ということです。切迫早産であるとか早産、あるいは発育の不全、そういった代表的な疾患の推移を左側のグラフに示して、産科合併症があったか、なかったか、重複なしで見たものが右側の小さなグラフであります。
産科の合併症というのは、貧血とかささいなものも含めますと54.8%、半数以上の方に合併症が起きているのですけれども、出産年齢がすごく変わった10年間でごらんいただくと、余り変化がないということが見てとれると思います。
4ページは、今の産科合併症ではない、妊娠していなくても発症する疾患、いわゆる偶発合併症と呼びますけれども、それの頻度の年次推移です。左側の疾患ごとで見ますと、子宮の疾患、呼吸器疾患、糖尿病、精神疾患、甲状腺疾患といったものが比較的頻度が高く、かつ増加傾向だということがおわかりいただけると思います。
右の偶発合併症全体の頻度をごらんいただきますと、2001年に比較してこの10年の間に10ポイント以上、極めて増加しているということ。これは先ほどの年齢構成の変化に相関性がありまして、高齢化に伴って年齢依存性に偶発合併症がふえているのだということがおわかりいただけるかと思います。
5ページは、産科診療では、こういった事態は避けたいわけですけれども、周産期死亡率。これは22週以降の死産と生後7日以内の新生児死亡を合算した割合のものでありますが、年齢ごとにこうしてプロットしてみますと、45歳以上になりますと、20歳代に比較して3倍近く、年齢とともにリスクが上がるということ。また、加齢に伴う周産期死亡率の増加は、主に死産、つまり、生まれてきさえすれば新生児の死亡率は余り高まらないということがおわかりいただけるかと思います。
6ページは、産婦人科医として我々が最も避けたい合併症である妊産婦死亡であります。これは日本産婦人科医会が妊産婦死亡報告事業を2010年から立ち上げておりまして、そこで集積されました338例。これはかなり詳細な検討を行ったものでありますけれども、そのデータをおかりしてお示しします。左側が死亡率ですが、やはり年齢依存性に増加していることがわかります。40歳以上では20歳代前半の5倍近くになっております。
右側のほうはその死亡原因でありますが、直接と間接産科的死亡と国でも分類されています。そうして見ていただくと、緩やかな変化ではありますが、脳出血であるとか、心・大血管疾患などによるいわゆる間接産科的死亡の割合が近年増加してきているというのは、先ほどの合併症がふえているということとも連携した結果ではないかと思います。
7ページ目は厚労省のデータで、児童虐待相談件数であるとか、厚労科学研究で報告されております社会的ハイリスク。これは先ほど母子保健課のほうからお話が出た特定妊婦などを含むものでありますけれども、そうした妊産婦が増加しているということ。
右上もその研究班のデータですが、メンタルヘルス介入が必要と考えられる妊婦が年間4%ですから、4万人ぐらい全国にいるというデータ。そして、これは大阪のある市の2年間のデータでありますが、特定妊婦となりますと、児童が要保護、要支援になる割合が半数近くに及ぶということを示したもので、先ほどお話しした医学的ハイリスクに加えて、こうした社会的ハイリスクも現在増加しているという状況をお示ししました。
8ページは、それを支える私どもの周産期医療・産科医療の体制を示したものでありますが、産婦人科常勤医師数、緩やかではありますが、このようにやや増加はしていますが、一昨年などは昨年に比較しますと減少に転じてしまっております。
右の上のほうは施設数を示したものでありますが、これも産婦人科医会の調査でありますが、調査を始めた2006年から比較すると、全体では785施設が減少しております。医師がふえない結果、下段にあります1カ月の推定在院時間というのは、御存じのように、産婦人科はかなり厳しいものがありまして、時間外80時間というのは、現在働き方推進本部からも出ております960時間を月当たりに勘案したものでありますけれども、その時間を全国の平均が超えているという状況でございます。
9ページ目は、現在私どもが行っている妊婦健康診査の妊娠の検査項目を参考までにお示ししました。14回程度の妊婦健診。産後健診は今、1カ月のものと、施設によっては2週間の健診が導入され出しているという状況の資料でございます。
10ページがまとめでありますけれども、妊産婦の状況としては、高齢化に伴いさまざまなリスクが上がっているということ。産婦人科医療機関の現状としては、分娩を取り扱う施設が減少していて、全ての医師の数ということで言えば、医学部定員も増加しているのですが、他の診療科に比べ産婦人科の増加率は極めて低いということ。他の診療科に比べ、病院に勤務する産婦人科医師の労働時間が非常に長いという現状がございます。
これに対しまして、産婦人科診療では、通常の健診に加えて、お示ししたようなさまざまなハイリスクが増加していますので、母親と児への対応がさらに必要になるということ。偶発合併症の増加により、産科診療では他の診療科、産婦人科ではない診療科との連携の拡充が求められています。社会的ハイリスクに対しては、先ほどもお話しになった子育て世代包括支援センターなど、行政とのさらなる連携が必要だと考えられます。また、診療を担う産婦人科医師の負担軽減ということも検討していかなければいけない課題だと思います。
最後のページになりますが、妊産婦の診療に関する現場での課題としては、産婦人科の診療になじみの少ない医療機関。これは他の診療科の医療機関が存在しているということ。また、風邪やインフルエンザ、花粉症などといったいわゆるコモンディジーズの場合、他の診療科にかかった場合でも診療情報が提供されることはまずありません。これが非常に問題の一つだと思います。そして、地域によっては産婦人科の医療機関までのアクセスが非常に不便なところもあります。したがいまして、産婦人科以外の診療科においても、産婦人科診療への配慮や理解を深めていく必要があるのではないかと考えます。また、疾患の専門性や妊婦さんの利便性、アクセスなどを考慮すると、より多くの医療機関で妊産婦の診察が可能になるよう、そういった他の診療科においても研修などの仕組みを考えていく必要があるのではないかと考えます。産科診療上、診療科間の情報共有は必須であります。ですから、これは現在あります診療情報提供書などだけではなく、例えば母子手帳を利用する、あるいは国が進めておりますセミオープンシステムの際に用います共通の手帳、こういったものを用いるなどより簡便な方法も御検討いただければと考えるところであります。
私からは以上でございます。
○五十嵐座長 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、2番目に井上構成員からお話をいただきたいと思います。
○井上構成員 浜松医科大学の井上でございます。
資料5とあるものをごらんください。資料2に該当します。プライマリ・ケアにおける妊産婦診療と連携ということで、お話をさせていただきます。
2枚目のスライドです。プライマリ・ケアでは3段階の妊産婦診療があると考えられます。1つ目はコモンプロブレム。急性の疾患、急性の症状に対する対応。この中で産科的に状態が緊急であるものは、産科への速やかなコンサルトが必要になります。2番目には非産科の合併症、また、慢性疾患の管理がございます。これは内科的なもので、高血圧、糖尿病、喘息、甲状腺機能異常等がございます。
3番目に包括的な妊産婦支援ということで、先ほどご紹介がありました社会的にハイリスクな妊産婦さんに対する支援。また、全般的に必要な予防や健康教育、禁煙やワクチンに関するもの。そういった対応がございます。3番目がベースとなっていて、その上に必要に応じて適切なケアを行っていくというモデルを考えております。
少し詳しく見てまいります。妊娠中によく見られる急性の症状。これでプライマリ・ケアの医療機関、内科の開業医さんですとか、病院の内科外来、救急外来等を受診されるケースです。つわりに代表されるような嘔気・嘔吐、腹部の症状、上気道の咳、皮膚の症状、また、尿路系の症状としては排尿時痛、筋骨格系としては腰痛や発熱、頭痛、便秘、貧血等さまざまなものが見られますけれども、この中で特に妊娠中に重症化しやすい疾患、インフルエンザや腎盂腎炎、虫垂炎等、また、母子感染に注意する疾患、そして母子が重症化する疾患等がございますので、こういった疾患を念頭に置きながら、非妊娠時と異なった観点でも鑑別診断を行う必要がございます。
2番目に、妊娠中から産後にかけて管理が必要な慢性疾患としまして、代表的なものとして高血圧、糖尿病等ございますが、これは妊娠前からあった、高血圧合併妊娠や糖尿病合併妊娠。また、妊娠に伴ってこれらが発症したものとして、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病等がございます。
御存じかと思いますが、妊娠高血圧症候群は、現在7~10%の妊婦さんに見られています。また、妊娠糖尿病は診断基準の変化等がございましたけれども、現在約10%の妊婦さんに見られるということで、この方々は産後にも長期にわたって内科的なフォローアップが必要になってくる方でございます。喘息に関しても、母体の低酸素による胎児への影響を避けるために適切な管理が必要となってまいります。
このようなことから、次のスライドですが、妊産婦診療においては特別な配慮が必要となってまいります。ですので、通常の内科外来において、妊産婦さんが来られると、これらのことを意識しながら診療を行うことになります。妊娠における生理学的変化の理解と、それに基づいたアセスメント。例えば循環血液量が増加している。血圧が変化したり、検査の数値が変化したりしております。また、おなかが大きい状態で腹部の診察をする際には、仰臥位低血圧に注意が必要で、感染症に関しては免疫力の低下についても注意が必要です。
その場合、妊娠週数によって薬剤投与や放射線検査のリスクが異なってまいりますので、妊娠週数に基づいて何が適切な治療であるのかということを踏まえた上で、御本人、御家族とリスク、ベネフィットについてゆっくりお話をして、その上で協働的な意思決定を行う必要がございます。もちろん、適時の産婦人科へのコンサルトが必要となります。このような配慮を適切に行いながら、プライマリ・ケアで診療していくということになってまいります。
3番目については、妊娠前、妊娠中、産後にかけての包括的支援を図に示しておりますけれども、妊娠中は産婦人科の先生方が中心的になってケアをしていただくことになりますが、妊娠前、産後、育児期、更年期、老年期とその後も包括的に支援をしていくという視点を持って、かかりつけ医は地元の身近なところで診てもらえる医療機関との関係が必要になってくると思われます。
これらの3段階を踏まえて考えてみました連携モデルでございますが、第1段階としましては、先ほどの急性疾患、コモンプロブレムへの対応は随時行うというものでして、この場合に診療情報提供書が書かれることは少ないのですけれども、先ほど中井構成員がおっしゃっていましたように、母子手帳等を利用して情報共有ができればよいのではないかと考えております。
これを基本のモデルとしまして、次のスライドでございますが、第2段階としましては、妊娠前、妊娠中、産後にわたって慢性疾患があった場合には、そのフォローを継続的に行っていくという連携のモデルが考えられると思います。
第3段階としましては、次のスライドになりますが、医学的・心理社会的にハイリスクの妊娠のケースに関しては、他の診療科、精神科、歯科ですとか自治体との連携を行いつつ、包括的に継続的にサポートしていく必要があると考えられます。
これら3段階のモデル等を用いて今後連携体制を構築していくことが望ましいのではないかと考えておりますが、10枚目のスライドで、周産期医療体制の構築・維持のためには、他の診療領域との連携が必要であると以前の厚労科研の報告書で指摘されています。海野先生の研究班報告書ですが、産婦人科医の負担軽減が非常に重要であると。そのためには、他の診療領域との連携が必要であり、特に僻地・離島や産婦人科医が1人、2人といった極めて厳しい状況で対応されている医療機関がございますので、そういったところでは地域ごとにどのような連携体制をとるかということをあらかじめ決めておく必要があるのではないかと思います。
11枚目以降は参考資料でございます。僻地・離島医師の抱える課題ということで、妊産婦ケアにかかわりたいけれども、どのような課題があるのかということで、教育システムが乏しいとか、サポートシステムが欲しいといったことがございます。
12枚目、現在総合診療専門医の研修が始まっておりますが、この中でも経験すべき領域として妊産婦のケアが挙がっております。ですので、産婦人科以外の診療科、内科や総合診療科におきまして妊産婦のケアに関する適切な教育が行われ、かつ産婦人科の先生方のサポート体制が十分にあればこのような連携も可能になっていくのではないかと考えられます。
以上です。ありがとうございました。
○五十嵐座長 どうもありがとうございました。
それでは、3番目に牧野構成員から御説明をお願いいたします。
○牧野構成員 日本歯科医師会の副会長の牧野でございます。
資料の06、資料3をあけていただいたらと思います。本日は、妊産婦における口腔健康管理の重要性ということで、お話をさせていただきます。お口の健康を守ることによりまして病気のリスクが下げられるということは、国民の皆様方に普及してまいりました。
2枚目のスライドは、8020推進財団作成のものでございまして、8020運動というのは、80歳で20本の歯を残して、人生の最後まで自分の口で食べ、笑い、話すということを目標に始めた運動ですが、平成元年にスタートいたしまして、昨年30周年を迎えたわけでございます。当初7%にも満たなかった達成率も、目標よりも数年早く、一昨年に50%を超えることができました。ですから、今は80歳の方の半分以上が20本以上の歯をお持ちでございます。成功した国民運動の一つに数えられております。このように歯を残すことの重要性が浸透してまいりましたが、歯周病は残念ながらまだ減少していません。程度の差こそあれ、国民の80%が歯周病にかかっている状況でございます。
左上から見ていきますと、歯周病により分泌されますサイトカインと呼ばれる炎症物質、インスリンの分泌が抑えられる。逆に高血糖による血管へのダメージで歯周病が悪化する。お互いが危険因子となって負の連鎖に陥ります。肥満についても同じようなことが言えますし、認知症についても影響がございます。また、心筋梗塞を起こしました心内膜に歯周病菌が付着しているということも確認されております。それから、誤嚥により口腔内細菌が誤嚥性肺炎という肺炎を起こすということも皆さん方よく御存じであろうと思います。
3枚目のスライドは、女性のライフイベントでの歯周病の関与でございます。骨粗鬆症への関連も注目されていますが、本日のテーマでございます妊産婦と歯周病について述べてまいります。
4枚目の図でございます。歯周病によりまして分泌される炎症性の物質が子宮の収縮を誘発することがございます。そこで、早産とか低体重児出産につながることがある一方、女性ホルモンが多く分泌される妊娠中は、歯周病や炎症が起きやすくなると言われておりまして、相互に影響してまいります。
5枚目にありますように、歯周病の早産に対する危険率が2.01倍、低体重児出産に対する危険率は2.20倍、早産及び低体重児出産に対する危険率が4.68倍との分析も出ております。
6枚目のスライドですが、ホルモンの急激な増加だけでなくて、口腔内の環境の変化を起こすものがつわりでございまして、嗜好の変化でありますとか、歯磨きが困難になることによってむし歯や歯周病になりやすくなりますが、御自身は初期症状に気づきにくい。また、気づいても、つわりによる体調不良などで受診を先延ばしにするということがございます。
ですから、つわりがおさまる4カ月をめどに、4~5カ月のところで安定期になりますので、そのあたりで歯科健診を受け、必要な歯科治療を受けることをお勧めしております。そのためにも、市区町村やかかりつけ歯科医による妊婦歯科健診の充実が必要ですが、7枚目にございますように、妊婦健診の受診者に対しまして、妊産婦歯科健診を受けておられるのが5.8%しかないという状況にございます。
8枚目、都道府県の歯科医師会でもパンフレット等で啓発活動を行っておりますが、やはり妊婦への歯科健診の義務づけ、その費用は公費で負担するということが必要だと考えております。
9枚目の妊婦の歯科治療でございますが、母子健康手帳を提示してもらいまして、産婦人科からの注意事項を共有して歯科治療を進める必要がございます。治療時はできるだけ楽な姿勢をとっていただきます。座ったほうが楽な方は座って、寝たほうが楽なら寝て、また、膝を曲げたほうが楽だという方がいらっしゃいますので、そういう方にはその姿勢で行います。
歯科においては特にレントゲン検査が非常に有用なのですが、防護用エプロンをすればほぼ影響はないと言われるものの、胎児への影響を心配される方が多く、拒否をされることが多いのが実情でございます。麻酔も精神的な負担でありますとか、薬剤中の血管収縮薬など慎重に対応しなければならないために、本格的な治療は産後に延期いたしまして、対症療法の範囲でとどめるということもしばしばございます。
後ほど出るのでございましょうが、薬物の投与も有益性が危険性を上回ると判断した場合のみにいたしますが、それでも指導どおりになかなか服薬していただけないという実情がございます。
妊娠は、もちろん病気ではありませんが、今、申しましたホルモンの変化でありますとか、胎児の成長による母体への負荷でありますとか、体内の動態変化によりまして既存の病気の悪化や症状の発現が起こります。ですから、埋伏歯の抜歯でありますとか歯周外科の手術などは妊娠前に済ませておくことをお勧めしております。第1回のこの検討会で妊娠から出産までと仰せの方が多いけれども、私たちはその前から妊娠中のリスクを訴えて日々の診療に当たっていると申しましたのは、このことでございます。
平成30年の診療報酬改定におきまして妊婦加算が導入されましたが、歯科においてはこのような加算はございません。これまで既に述べましたように、加算に値する配慮は当然行っております。ついては、歯科において妊婦さんへの対応でありますとか、配慮でありますとか、また、妊産婦歯科健診の実施状況も踏まえて、そのあり方について中医協等で検討、御議論いただけたらと思っております。
10枚目のスライドは、左が妊娠性歯肉炎と言われるものでございまして、今まで申しましたように、ホルモンによる口腔内の環境の変化によって歯茎の炎症が起こってまいります。内毒素を出す細菌が増えてきますが、プロフェッショナルケアと患者さん自身のセルフケアで右のように良好な状態になります。この状態を保つためには、11枚目にありますように、回転器具を使って歯面の清掃処置、これは歯科衛生士が行うことが多うございますが、これも大きな効果をもたらしております。ただ、今までは2カ月に1回しか診療報酬で算定できないということでございましたが、平成30年度の診療報酬改定におきまして妊婦に対しては毎月この処置が行えることになりました。こういう診療報酬上の配慮も今後必要となってくると思っております。
ところで、皆さんは歯がいつごろからでき始めると思われますか。胎生6週間、授精後6週目にはその兆しが出始めまして、2カ月になりますと、歯胚ができてまいります。すなわち、受胎が確認できたときには、もう既に乳歯のつぼみのようなものができております。
12枚目が顎の断面図でございますが、出生までにカルシウムなどが沈着してまいりまして、歯の頭の部分が顎の中でもう既にできております。それだけでなくて、出生児には既に永久歯の前歯の部分の歯胚の兆しみたいなものが出てきております。ですから、歯にとって妊娠中の母体の健康が非常に重要になってまいります。妊婦さんにはマイナス1歳から赤ちゃんの丈夫な歯を育てるという意識を持っていただきたいと思っております。
先ほど妊娠中は対症療法しかできないこともあると申しましたが、このため、産後3カ月をめどに歯科健診を受けていただきたいと思っております。出産時に食いしばることで歯を痛めることもございます。また、産婦の方の口の中というのは、ほとんどの成人にはむし歯菌というのがあります。新生児の口の中にむし歯菌はないので、母親が口移しで物を与えるということから、そのときに食べ物だけでなく、むし歯菌を一緒に移してしまうということもございます。そのような知識を持っていただくための産婦健診、産婦教室を公費で義務づけていただければと思っております。
人生100年時代の100歳。新生児ですともっと延びているかもしれませんが、その方が一生を終えるときに何本の歯で人生を全うできるのか。それは生まれる前から始まっておりまして、かけがえのない子供たちの笑顔のためにも、その先にある笑顔を守るためにも日本歯科医師会は活動を続けてまいります。
御清聴ありがとうございました。
○五十嵐座長 どうもありがとうございました。
それでは、ここまでの3人の先生方の御説明につきまして、御意見、御質問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。
○松本構成員 3人の先生方から妊婦さんの情報管理で、母子手帳を持ってから受診するということをお勧めされていましたが、実際うちの家内や娘たちも、健診のときは持っていきますが、日ごろから持っていませんでしたので、そうすると、情報管理のツールとしては限界があるのかなと感じております。あるいは妊婦以外の方でもお薬手帳の活用については、健保組合でもいろいろ指導していますが、実際問題としてなかなか日ごろから持っていないと思います。ただ、特にこれから先、妊娠・出産される若い方が、まず命の次に大事なものはスマホということでありますから、スマホの中にどういう治療を受けているか書き留めておいたり、飲んでいる薬の写真を撮っておいて、内科などを受診したときにこういう薬を飲んでいますと医者に見せたりするほうがより実際的に情報が伝わるのではないかという気がしますが、いかがでしょうか。
○五十嵐座長 どうぞ。
○髙松構成員 日本薬剤師会の髙松です。
お薬手帳につきましては、災害のときなどでも、携帯することで薬の継続的な服薬に役立ちました。今、日本各地で電子お薬手帳が普及しております。電子お薬手帳の活用方法の一つとして、妊産婦さんの様々なデータ確認や、情報提供に活用できるのは確かですので、今後そういうことも御検討いただければいいのかなと思います。
○五十嵐座長 どうぞ。
○中井構成員 大変よい指摘だと思うのです。ただ、薬だけでなく、実際我々産科医としては診断も知りたいのです。一体どういう診断をつけて、どういう治療をした。その薬はその一端にあると思うので、包括的には例えば母子手帳の電子化の話もございますし、そういった方向で進めば、そこに集約していただいたほうが産科医としてはわかりやすいと感じています。
○五十嵐座長 どうぞ。
○井上構成員 おっしゃるように、母子家庭やお薬手帳の電子化によって、スマホがあればあらかたの情報がわかるというのは、これから非常に理想的なのではないかと思っております。診療情報提供書は、毎回紙で書くのは時間もかかりますので、簡便な方法で情報共有ができるツールができることを期待しております。
○五十嵐座長 どうぞ。
○牧野構成員 今、皆様方がおっしゃったことは全く賛成でございまして、そういうことで情報共有は必要だと思います。いずれにいたしましても、私たち歯科に対しまして、妊婦さんの考え方もあるのかもしれませんが、母子健康手帳を持ってこられて、健診のところを開いてここに書いてくださいと言われ、では、ほかの産婦人科の先生方の情報も見たいと思ったら、そこは見ないでくださいと拒否をされることもございます。健診さえしてもらえばいいのですと。そのあたりを産科の先生方から歯科ではこういう情報が要るのですよということを言っていただいたら、我々にも情報が入ってくるのですが、ちょっとお預かりしてなどと言うと、預かるなどというのはとてもだめだということもございますので、妊婦さんに対する啓発もお願いしたいと思っております。
○五十嵐座長 どうぞ。
○戸矢崎委員 先生、ありがとうございました。
母子健康手帳については、電子化というお話もあるのですが、お母さんの情報だけではなく、子供さんの情報も一括して記入されるというところがありまして、その点の取り扱いというところで、電子化というのがスムーズに行くかどうかというところは、ちょっと判断として迷うところがあります。
母子健康手帳の実際というところでは、先生のほうから今、診断のお話もありました。薬もございました。あと、お母さんの体調を書く項目というのが項目のスペースとしてかなりふえていったりしますので、母子健康手帳の交付時にそういったことも記入するような形で一声添えるということは現実的にできるかなと思っております。
そのほか何か必要なことなどありましたら、現場のほうで生かすということも可能かなと思いますので、アドバイスをいただければと思います。
○五十嵐座長 どうぞ。
○石井構成員 母子健康手帳なのですけれども、私が実際妊娠していたときを思い出すと、意外といつでも持っているというのが実感としてあります。産科の先生から、例えば倒れたときに自分で説明ができないとき、それがあることで救急のときに役立つからいつも持っていたほうがいいよと言われていたので、携帯していることが多いのではないかなと思うので、妊婦の立場からだと、すごく賛成といいますか、やりやすいなと思います。
電子化はどうしても時間がかかると思うので、今の妊婦さんができるということを考えると、もう既にあるものを活用するというのが一番手っ取り早いかなと思いました。
産科の先生から言われると、素直に納得できるといった部分があるので、例えば風邪を引いたときでも歯医者さんに行くときでも、母子手帳を診察券と一緒に出すようにという一言があると、結構素直に、あ、そういうものなのですかと感じる妊婦さんが多いのではないかと思いますので、そういったところで先生方とか助産師さんの一声みたいなものがあると、すごくやりやすいと感じました。
母子手帳の話から離れるのですけれども、妊婦健診のときに、社会的リスクや精神的なもののチェックを医療現場で産科の先生がやるということではないと思うのですが、そういったチェック機構みたいなものがあると、先ほどの別のリスクについてもそこで拾えるのではないかと感じたのですが、そういったものは難しいでしょうかという疑問です。
○五十嵐座長 どうぞ。
○中井構成員 メンタルに関しては、僕の先ほどのスライドにもあったのですが、妊娠初期あるいは妊娠期間中に評価をしようということで、ガイドラインにも今、入って、徐々に広がりつつあるということ。それから、子育て世代包括支援センターなどとの連携ということでは、これは医師もそうですが、特に助産師たちが非常に注力しておりまして、かつてよりはずっといい状況になりつつあります。ただ、自治体によって受け皿がまだソートされていませんので、2020年目標ということでしたので、それに向けて整っていけばいいと思うので、その辺は大分いい方向になっていると思います。
マイクを入れたついでにあれですけれども、もう一つ、産婦人科ではない診療科が妊婦である方の疾患を診るのを控えるというか、積極的ではないことをしばしば経験するのですが、そういうところもぜひ議論、検討していただいて、できれば研修のシステムであるとか何かも構築していっていただけると、さらにいいのではないかなと思っています。
○五十嵐座長 それでは、先に福本構成員、お願いします。
○福本構成員 保健所のほうでも産婦人科の先生からの情報提供というのは有用でして、そういった社会的なリスク、精神的な背景、家族関係とか、非常にきめ細やかに見ていただいているなという印象がございます。ですので、通常母子手帳をもらって、きちんと診察を受けていらっしゃる方というのは、非常にきめ細やかに配慮を受けて、しかもその情報がきちんと行政に伝わっているのではないかと思います。ですので、ちゃんと母子手帳をとりに来ない、もしくはもらっても受診をしないとか、健診を受けないといった方々のところを今後どうやって酌み取っていけるのかなというのが行政としては一つ課題だなと考えております。ですので、産婦人科の先生には非常に御協力いただいていて、ありがたいなと思っております。
○五十嵐座長 どうぞ。
○中西構成員 妊婦さんをモデルに呼んだりすることが結構あるのですが、そういう方々に聞くと、意外と母子健康手帳を持っていないという人が多くて、妊娠9カ月、臨月が近い人でも持っていない人がいて、すごく驚いた経験があるので、持ちましょうねというのは、産婦人科の先生とかに言われると説得力が大変高いので、常々言っていただけるといいのではないかなと思いました。
自治体によって母子手帳の大きさが3種類ぐらいあると思うのですけれども、大きいタイプのものを持ち歩けというのは、なかなかハードルが高いなと思う大きさのものだったりするので、もうちょっと統一で、持ち歩きやすいものにするとか、電子化というのは、一番持ち歩きやすくていいと思うのですが、妊婦さんは余り大きい荷物を持ちたくないと思うので、そこら辺も御配慮、検討とかしてもらえるといいかなと思いました。
○五十嵐座長 母子手帳には医療側が書くのだと思うのですけれども、電子化ということになると、一体誰が正しい時期に正しい情報をどうやって記入するかが重要です。それを医療側がやるとなると、従来の母子手帳への記載項目の他に記載する項目がふえてくると時間もかかりますから、対価などの問題があるのではないかと思います。
 
妊婦さんにとっては母子手帳ももちろん大事なのですが、スマホをもっと有効に使えるのではないかという御指摘がきょう戴きました。
そのほかいかがでしょうか。どうぞ。
○井上構成員 母子健康手帳の活用に関しては、かかりつけの医療機関を記載する欄を設けておくとか、妊娠中に産婦人科以外の診療科を受診した場合に、一言ドクターまたはナースに書いてもらう欄があれば、かなり徹底して記載が行われるのではないかと思います。
といいますのは、私たちは乳児健診や予防接種も行っておりまして、その際には必ず母子手帳に記載を行いますので、その習慣ができているということがございます。ですので、妊娠がわかった時点で、コモンプロブレムの場合にはここの医療機関にかかりますということがある程度明確になっていて、いろいろな科にかかることはあるかと思いますが、そこで記載する欄があるとよいのではないかと思いました。
もう一点、妊産婦さんの診療に積極的でない診療科や医療機関があるというのは事実だと思います。どうしても温度差は生じてしまうかと思いますけれども、一部には積極的にかかわりたいという医師がいるということも事実でございまして、そのような医療機関を何らかの形で評価していただけましたら、積極的な医療機関、特に僻地等、産婦人科へのアクセスが困難な地域においてはうまく機能するのではないかと考えます。
○五十嵐座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○松本構成員 私も今、井上構成員がおっしゃったことに非常に関心がありまして、実際に産科の先生方から手とり足とり教育してもらうのが一番いいと思いますが、妊産婦の診療に熱心な方だけれども、研修場所が遠くてなかなか時間がとれないという方々のために、教育用のビデオを用意して、わずか数分ぐらいでポイントだけ見せるような、そういう映像を見てから診療に当たってもらったほうが安心感も違うと思います。
妊産婦の診療に積極的でない方については、一部診療報酬で評価する必要もあるかもしれませんが、そのためにはきちっとした教育が大事ですので、教育のためのビデオやeラーニングを活用した仕組みをつくっていただけると、熱心な方々の手助けになるし、僻地にいる被保険者も安心して、妊娠したときに、内科などの産婦人科以外の診療科にかかれるのではないかという気がいたします。
先ほどお薬手帳や母子手帳の電子化というご意見がありましたが、現実的に一番やれるのは必要な情報をスマホに撮って、持ち歩くということだと思います。
若い人たちは、美術館などに行ったとき、説明の部分を一々読むより、それを撮って、帰ってからゆっくり読むということをされているようです。私も実際そういうことをやっていますが、かなり細かい字でも今は解像して見えますので、そういう使い方をするのは情報管理のツールとしては非常に有効な方法だと思います。そうすると、母子手帳は持たなくても、スマホを持っていない方はいらっしゃらないはずですので、自分の母子手帳やお薬手帳を撮ってから持ち歩いてもらうだけでもかなり違ってくるのではないかという気がいたします。
○五十嵐座長 ありがとうございます。
妊産婦さんのコモンディジーズを診る上で教育が必要だという御指摘をいただきましたけれども、平川先生、医師会としてはそういう取り組みとかお考えはございますか。
○平川構成員 ありがとうございます。日本医師会の平川でございます。
お話がありましたように、今回の妊婦加算の件でも、妊婦さんからの訴えとして、自分は産婦人科以外の科に行っても、診てもらうのだけれども十分妊娠として配慮されていない、どちらかというと遠ざけられるという感覚を持つ方々が、お金だけ加算されてというふうな御意見があったと思います。
その裏には医療機関として妊産婦さんに対する医療のあり方が非常に特殊な領域であって、配慮が必要だけれども、なかなか研修の機会がないので、自信を持って診療ができないと。あるいは今からお話があると思います妊産婦さんに対する薬の考え方も大きく変わってきている時代にあって、正確な情報を伝えるのに自信がないということから、ちゅうちょするような例もあったかと思いますので、医療者が妊産婦さんをどうやって診るかということに対しての研修は非常に重要だと考えています。その裏づけがないと、妊婦加算という本当の意味が伝わらないのではないかと思います。
ともすれば、それが今まで十分でなかったということも否めないと思います。日本医師会では医師向けの研修として、先ほどeラーニングという話がありましたけれども、生涯研修におけるeラーニングの活用、それから雑誌あるいは特集号を通じての紙媒体での御提供、あるいはかかりつけ医の研修制度の中でのさまざまな取り上げ方、あるいは産業医の皆さんに対する地域でのいろんな研修会等々、いろんな形での研修を持っておりますが、今後はその中に妊産婦さんへの診療ということについて、専門の各科、総合診療の先生であるとか、あるいは薬剤の専門の方であるとか、いろんな専門の先生たちの御意見をいただいてそういった研修ツールを考えていきたいと思っております。
その初めとして5月号の日本医師会雑誌で「妊娠と薬の使い方」というテーマで特集を組んでおりまして、村島先生にも御教示いただきながら始めているというところでございます。
○五十嵐座長 ありがとうございました。
それでは、ちょうどお薬の話が出てまいりましたので、薬のほうの話題に移りたいと思います。まず、髙松構成員からお話をいただきたいと思います。
○髙松構成員 日本薬剤師会の髙松です。
07、資料4をごらんください。「妊産婦に対する薬剤師の関わり方について」ということで、少しお話をさせていただくのですが、私たち薬剤師というのは、薬というものを扱う職業でもありますが、実際に薬を使う相手は人ということで、薬に対しての細かな話をしてしまいますと切りがありません。今回のテーマに沿って利用される方々の視点に立ってお話をしたいと思います。
2枚目をお開きください。これは私が衝撃を受けた事例だったのですが、2013年11月のNHKの夜のニュースで、医師から処方されたある薬が原因で妊婦に副作用が出たり、胎児が死亡したと見られるケースが過去10年間に20例あるということが取り上げられました。
これは高血圧の治療薬でありますARB、ACE阻害剤。このときよく出ていたのはエナラプリルだったと思います。このニュースの中で、婦人科の先生はこういう薬を使うと妊娠に影響があるというのは十分知っているから、これを使うことはない。ただ、そういうのを理解していない医師がいるということが、こういうことになってしまったのだろうというお話でした。
もう一つ、実はこういうところを見逃しても誰かがもう一つチェックをするシステムが必要だと言われていたのですが、実際このニュースの中で「薬剤師」という言葉が1回出てきたか、出てこなかったかなのですよ。本来それは薬剤師がやる役割だと思っています。ですので、これに対して、しっかりと薬剤師が妊娠中には使えない薬というのを理解する。その場合に、妊娠されている方に全く薬を飲んだらだめだよという話でなくて、こちらの薬だったら安全だよという話を医師にも提供しながら、治療も妊娠も継続できればと考えます。
次のスライドは、私たちが行っている調剤の流れになります。左側が一般的な流れです。まず、処方箋を受付け、記載事項その他、お薬手帳、薬歴等も確認するのですが、その後に患者情報の収集です。ここがすごく大事になっています。アレルギーや副作用歴などをチェックして聞き取りをし、適正な処方内容であるか確認した後で調剤に入っていくわけですが、複数の人間がいれば、それを違う人間で監査をする。そして服薬指導をする。服薬指導の時点でお薬の副作用の御理解とか、体調の変化についてアドバイス等々もしております。その内容を薬歴に残して、継続的な薬物治療につながるような記録としております。
右側に吹き出しで書いてあるのが、妊産婦さんの場合ですが、私たちがこの辺も注意して対応しているという内容です。まず、妊娠されているかどうか、授乳中かどうか、その辺の確認がすごく大事です。アンケートをとってチェック欄を設けていても、うっかりチェックし忘れる方もいらっしゃるのです。妊娠初期ですと、体型を見ても気づかないこともあります。ですので、その辺りのチェックをしっかりとしていく。それから、先ほどもお話がありましたが、妊娠中であってもしっかり使わなければいけない薬かどうか、それをちゃんと理解されているかどうか。飲んだ後、経過状況の確認をしたり、妊婦さん、授乳婦さんはほかに心配事がたくさんあります。薬局は医療機関を受診した最後のゲートになりますので、そこでいろんなことを質問される。今まで相談できなかったことを相談される。そのような事例が多々あります。ですので、そういうときに私たちが切り離してしまいますと、解決しないまま御自身で悩まれることになりますので、いろんな質問を受けて、それにきちんと対応するということです。
その下のスライドになりますが、薬の指導のときには、疾患というよりも、この患者さんがこの病気に使ったときにどうなるかということも視野に入れながら多角的に指導をしつつ、いろんな質問を受けつける形にしてあります。継続して来ていただかないとその経過がわかりませんので、異なる薬局に行かれてしまうと、安全な薬物治療から遠ざかっていくのかなという印象を受けます。
私たちは、妊婦さん・産婦さんは患者さんではないのだろうなと思っております。自然なことでありますし、通常の病名がついて治療されるものだけではない、健康な妊娠もございます。そういう視点を持って対応するということ。あとは、妊産婦さんの状況、正常妊娠であるか、異常妊娠であるか。望んだ妊娠か、望まない妊娠か。妊娠がきっかけの疾患が起こっているのか、それともそもそも持病なのか。正常分娩なのか、異常分娩なのか。産後の状態はどうなのだろう、どういう状況で子育てをされているのだと。こういうのは一々聞き取りはできないのですが、会話の中でだんだんわかってくることなのです。
薬の提供だけが薬局の薬剤師の仕事ではないと思っておりますし、妊産婦さんの状況に配慮して情報提供したり、相談対応したり、さまざまな業務を行うのですが、私たちだけで解決できないところは、婦人科の先生だったり、医師の方々に御相談をしていくというところで、コンシェルジュみたいな形の仕事もあるということです。
次のスライドは、妊婦さんへの対応ということでまとめました。処方箋に基づく調剤のところですと、婦人科の先生から出ている処方に関しては、完全に妊娠されていることを把握されていると思っております。ですので、そのお薬の使い方に関しては、有益生が危険性を上回る状態で使われているかどうか、安全な薬かどうか、その辺をチェックしてから調剤してお渡しすることになります。ただ処方箋だけですと、有益性が危険性を上回るという判断をされたかどうかというのはわからないのです。ですから、御本人様からの聞き取りであったり、ちょっと心配ですと、処方された先生に疑義照会をして確認するということをします。
産婦人科以外の診療科にかかられるケースも多々あります。そういった場合、その先生が妊娠をちゃんと把握されているかどうか。その辺の有無をしっかり確認しておかないと、知らないで出されているケースもあります。
また、その下に書いてあるのですが、とりあえず処方をしておこう、薬剤師がきっと気がついてくれるだろうと思って処方される先生がいらっしゃるのも確かなのです。そのような視点も処方箋調剤については気をつけております。
私たちとしてみますと、処方箋を出す前に薬局、薬剤師のほうに一度御相談いただけると、その時点で薬をしっかり調べて、この薬だったらこれぐらいのリスクがありますよという話もできますので、事前に事故を防ぐ、また、私たちのほうからもいろいろ詳しく調べて御提案できるという面では、ぜひそういうことも進めていただけるといいのかなと思います。
次のスライドです。今度はOTC医薬品の販売ですが、実際に妊娠前のところから排卵検査薬や妊娠検査薬を相談されたり、販売、受診勧奨等々がございます。妊娠後も、軽い症状であれば、安全性の高い薬であれば薬の服用の必要性を判断でするのですが、心配であれば婦人科の先生に御相談していただいたほうがいいよというアドバイスはします。
薬を販売する場合でも妊娠時期を考慮し安全性の高い医薬品を選択する。必要最低限の量で必要最低限の期間ということもきちんと説明をするようにはしております。
何かあったときにすぐ相談できるように、かかりつけ薬剤師であれば、緊急時、24時間連絡をとれる体制をとっておりますので、そういうことも利用していただければと思っております。
比較的な安全な薬、実は時期によっては使えない薬等々もありますということを下に示しております。
次のスライドです。今度は授乳婦さんですが、これは処方箋調剤であろうが、OTC医薬品販売であろうが、結局、授乳される場合に、薬のことが心配であれば断乳という手もあるのですが、授乳中に安全性が高い薬がわかっていれば、そういうものを紹介することができます。母乳に移行しにくいもの、もしくは乳児に有害事象を起こしにくいものを必要最低限の量・期間ということで説明をします。
ただ、日本の添付文書上、薬剤投与中は授乳中止とか授乳を避けるという文言が入っているのが7割ぐらいあるのですが、海外のデータ等々を見ると、これが逆転しているような状況です。授乳は問題ないとされる資料も出ております。そういうデータをもとに考えていくのですが、添付文書につきましても、妊娠と薬情報センターの蓄積データをもとに、平成28年度から添付文書の改定がされているということですので、徐々にそのような内容が私たちの仕事にも役立ってくるかなと思っております。
次のスライドは薬剤師会の取組例ということですが、妊娠・授乳サポート薬剤師の養成ということを愛知県薬剤師会で平成22年に開始しております。これは年に6回の日程で養成講座を実施しているのですが、「妊娠中の女性と胎児の生理・先天異常」や「母乳分泌の生理、母乳、乳児の生理」などを婦人科の医師や、名城大学の医薬品情報学の大津教授らが中心になって継続的に実施していらっしゃるのです。妊娠・授乳サポート薬剤師は、この研修を受けた後に事例報告を毎年行い、報告事例をもとに蓄積データを解析しながら情報を整理されています。
サポート薬剤師の研修については、きちんと修了試験がありまして、ペーパーテスト、情報源の活用や判断、コミュニケーションに関する実技等をやっております。事例の提出もしているということです。5年ごとに更新とし、毎年5事例の提出と講座受講の必要性があります。
自分たちがそれをわかっていただけではだめなので、ステッカーやポスター、缶バッジなどで国民に向けての周知をしております。現在350名ほどがサポート薬剤師として認定を受けているというお話でした。
次のスライドが妊娠・授乳サポート薬剤師について、国民に向けての啓発のポスター等々になります。こういうことをやれる薬局、薬剤師の見える化というのが重要かなと思います。
最後のスライドは妊産婦さんと薬局の関わりということですが、薬局というのは地域の中に根差していまして、そこにいつもの薬剤師がいるということが安心につながると思います。妊娠から育児までのことが書いてありますが、実際妊娠する前のところからのかかわりもあるはずです。継続的なかかわりの中で、顔の見える、患者さんとの連携もあります。そこで安心していろんな相談ができるような立ち位置であればいいのかなと思います。出産後の育児に関しましても、お子さんたちが大きくなるまでの間、小児科にかかり、薬が必要な場合もあります。子育てに必要な物品等々の販売もあります。そうすることで、妊娠、出産、育児をする方にとって、かかりつけ薬剤師、薬局との継続的なかかわりが安心・安全な暮らしの支えの一つになっているのかなと思います。
日本薬剤師会の会員のみならず、日本には5万9000の薬局があるのです。そこの薬局が全て同じようなかかわりができるとは申しませんが、地域地域でそういう意識の高い薬剤師が出てきてくれると、妊産婦さんの不安もある程度解消できるのかなと思います。
私からは以上です。
○五十嵐座長 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、参考人として村島先生においでいただいております。村島先生、御説明をお願いいたします。
○村島参考人 では、早速始めさせていただきます。
資料5をおあけいただければと思います。前回の資料を拝見いたしましたら、妊娠と薬情報センターの紹介、ポンチ絵もありましたので、そちらは御理解いただいているとは思うのですが、私自身は産科医でもありませんし、薬剤師でもありません。もともと内科医です。内科医がなぜこういうことをやっているかということで、母性内科から御紹介させていただきたいと思います。
2ページ目の「A sound baby in a sound maternity」というのは、1982年、日本で初めて母性内科という科が大阪にできたのですが、その創始者の先生がおつくりになった言葉で、「健やかな子どもは健やかな母性に宿る」ということです。少し語弊があるという先生もいらっしゃるのですが、とにかく母体の管理において産科以外のサポートが必要な状況も少なくないというのは、先ほど井上先生から御発表があったとおりかと思います。
3ページは母性内科を宣伝させていただくようなポンチ絵になってしまいましたが、先ほどの井上先生とかなりオーバーラップしていることは皆さん御理解いただけるかと思います。しかし、どちらかといいますと真ん中の黄色いところ、すなわち病気を持つ女性が妊娠したいといったときに、それをサポートしようということでスタートしたのが成育の母性内科ですので、このあたりが中心にはなっております。これまで臨床をやってきた中で、妊娠前から産後も含めて、若い女性が将来健やかなエージングを行うためのサポートをするのも母性内科の役目という思いでおりますので、そういう意味では井上先生がお示しになったプライマリケアとかなり重なっていると思います。
母性内科の診療の中で一番キーワードになるのは妊娠中の薬の使い方だろうということで、母性内科の設立から3年後の2005年、安全対策課の事業の委託を受けまして妊娠と薬情報センターを立ち上げたわけでございます。この吹き出しは何かといいますと、後ほど出てきますので簡単に御説明しますと、母性内科学会を4年前に開設いたしまして、その中のプロバイダーコースというのをやっております。妊娠中の薬に関しましては、妊娠と薬情報センターの研修会、並びに先ほどの髙松先生とちょっとオーバーラップしますが、保険薬局の薬剤師向けの研修会も拠点病院のスタッフの協力を得て始めたところでございます。
次のページの漫画は、さんざん話題が出ましたのでいいかと思いますけれども、産科医とその他の科の先生方が押しつけあっているのか、逃げているのか、そんな状況かと思います。
その中でも薬について臨床の先生たちがどういう思いでいるか大体3通りに分類されるのではないか思います。リスクを負いたくないという先生は今後行動変容が難しいのかなと思いますが、自信がないという先生につきましては、いろんな教育の機会が考えられるのではないかなと思います。忙しくて一々調べていられないよという先生も多いのですが、こういう先生の場合は、薬剤師さん、薬局とのコラボのようなものが一番いいのかなと考えております。
患者さんの思いは深刻かと思います。慢性疾患を持つ女性が疾患管理のために必要な薬剤を中止してしまうとか、妊娠を先延ばしにしてしまう。よく聞くのは、花粉症のお薬を飲んでいるがために先延ばししていたら、とうとう40歳を迎えてしまったと。そういう話を聞きますと、何と、と思うわけですが、そういうケースはまだまだ少なくないという現状がある。もっと悲劇なものとして、たまたま薬を飲んでから妊娠が判明した場合に、人工中絶を選んでしまう例が少なくないだろうということが予想されるのですが、日本ではこれを正確に把握するすべがございませんので、これはあくまでも推測でございます。
これはポンチ絵でございますが、前回出ましたので、これは飛ばさせていただきます。
当初、妊娠と薬情報センターを立ち上げるに当たって、リスクのあるお薬はスキルを持ったスタッフがフェース・ツー・フェースでカウンセリングすべきだということでスタートしましたので、都道府県に拠点病院をお願いしてきました。2017年度で一巡しまして全ての都道府県に設置が終わったのですけれども、地理的にもスタッフ的にもまだまだのところがございますので、今、二巡目に入ったところでございます。
このポンチ絵で、申しわけないのですが、2019年から参加する熊本病院は、「熊本大学」の間違いでございます。
妊娠と薬情報センターのミッションは、飛ばさせていただきます。
今まで1万以上の相談を受けてまいりましたが、どのような内訳かというのを簡単に集計したものがありましたので、お持ちいたしました。相談薬剤、その方が何のお薬を心配してということです。中には精神科系のお薬とアレルギーのお薬を飲んでいる方もいらっしゃるので、メインのお薬で分類したわけですが、精神科系薬剤が半分近くで、一番多いという現状でございますけれども、それを除くと、感冒関連であるとか急性期疾患のお薬の相談が多いということになります。ということで、プライマリ・ケアの現場でかなりニーズがあるのかなというのは感じております。
これは妊娠と薬情報センターの研究を紹介させていただいて、いかにこの分野のカウンセリングが患者さんの行動変容につながるかというのを御紹介させていただきます。昨年プレスリリースもいたしましたので、御存じの方もいらっしゃるかと思いますが、大変意義のある研究だと思いますので、このお時間をおかりしたいと思います。
妊娠と薬情報センターのうち成育医療センターでやっております外来では、このように妊娠前に、あなたはこのお薬で主に奇形を心配していらっしゃると思うので、奇形のリスクはどのくらいと思いますかというのを、Visual Analog Scaleで測定しております。そのような中で、あなたは妊娠を継続したいのか、中断したいのか、どの程度に思っているのかというのを見ています。これらを相談前後で比較して解析してみました。
これは634人を対象としたのですが、左上の相談前のリスク認識は、わからないから相談に来るわけですから、五分五分という方が一番多いのですけれども、左下の相談後は、ああ、何だ、そんなにリスクはないのだという方向に移動しております。
また、そういう状況で妊娠継続の意思はどうなのということを聞きますと、妊娠前は、やはり相談に来るような方ですから、妊娠は継続したいと思っている方も多いわけですが、五分五分という方も結構います。こういう分布だったのが、相談後には妊娠継続のほうに大きく移動している。実際妊娠と薬情報センターでは妊娠転帰も追っておりますので、相談に来た方々がどういう妊娠転帰になったかというのを調査しています。それでは実際に出産まで至った方がほとんどであるということで、カウンセリングによってリスク認識が軽減し、妊娠継続につながったということがわかりました。これは妊娠と薬情報センターがやるからということではなくて、どこの医療機関でもこのような相談によって救われる命があるのではないかと思い、御紹介させていただきました。
もう一つは、妊娠と薬情報センターができたことによって意思の行動変容はどうかという御質問がありましたので、ちょっと調べてみましたが、なかなかそれを知るすべはございません。ただ、妊娠と薬情報センターでは、主治医から紹介された場合には、主治医に回答書をお送りして、主治医からカウンセリングしてもらう場合もあるのですが、主治医からの紹介は全相談の6割ぐらいで、その割合はずっと横ばいでございます。これがどういう意味があるのか、ちょっと解釈は難しいのですが、下は紹介元の医療施設の紹介回数の分布になります。もちろん、1回きりという先生もいらっしゃいますけれども、50回以上紹介してくださる先生もいるということで、妊婦診療に対する積極性の差なのか、需要の差なのか、認知の差なのか、よくわかりませんが、先生によっていろいろだなという現状がかいま見えるという程度でございます。
これが最後のスライド、15ページになります。妊娠と薬情報センターの仕事をしていたり、母性内科の仕事をしていてわかるのは、妊婦さんの診療に前向きな先生も少なくない。その根拠というのは、科学的ではないのですが、母性内科のプロバイダーコースをやりますと、あっという間に満杯になるとか、医師会とか学会などでこの分野の講演を依頼されますと、「いつもよりすごい大盛況ですね。先生、満杯で立ち見が出ました」というお声を聞いたりして、関心が高いなと感じております。
今までいろいろお話ししましたけれども、医師による妊産婦の診療を支援する取り組みが始まっていますし、薬剤師さんのほうにも働きかけをしておりますので、これらの取り組みをより推進していって、妊婦さんないしは赤ちゃんが救われる社会ができていけばいいなと願い、私の紹介とさせていただきます。
ありがとうございました。
○五十嵐座長 どうもありがとうございました。
それでは、お薬に関するお二方のお話に対しまして、御質問、御意見等、いかがでしょうか。どうぞ。
○中島構成員 中島です。
先ほどの髙松構成員のお話などでも思ったのですが、妊娠と薬の問題は、ふだん以上に不安の高い妊産婦さんの不安をいかに解消するかということだと思うのです。それは妊婦さんへのかかわり方が非常に大事で、せっかく課題として。これはデータは余りないのですけれども、実は妊産婦さんに処方された薬というのも、結構残薬の問題があると思うのです。今だと例えば花粉症とか、とてもつらくて何とかしてほしいと思って受診して、薬を処方されたにもかかわらず、次回受診のときに先生が伺うと、結構飲んでいないケースがあるというのもよく聞きます。それはなぜなのか。背景はいろいろあると思うのですが、不安が解消されていない、不安が高まってしまう原因として、例えば調剤薬局で、先ほどの丁寧な説明を伺っていると、安全かどうかということも含めてしっかり確認をするということで、御本人にも確認をしますし、処方箋を出した先生に確認とか、お電話とかでなさっていると思うのですが、そういうところを見ただけで不安になってしまうという方もいらっしゃるので、そこに何かしらの一言なり、こういうことでやっていますということがあれば解消される問題もあります。もちろん、やっていらっしゃる薬剤師さんはたくさんいらっしゃると思うのですが、先ほどのサポート薬剤師さんのようなコミュニケーションスキル等も研修されていると思うのですけれども、この取り組みでぜひボトムアップを図っていただきたいなと思っています。
○髙松構成員 御意見ありがとうございます。
おっしゃるとおり、薬剤師も全国に30万人いるわけですが、薬局に勤めている薬剤師はそのうちの3~4割だと思います。薬剤師の約6割が女性なのです。薬剤師として妊娠・出産にかかわるところというのは、そういう経験をした女性の薬剤師がいると、なおさらそういう話をしやすくなったということもあります。おっしゃられたとおり、薬剤師も数が多いので、この辺のボトムアップというのは確かに重要なことですし、紹介した研修を見ていても成果があり評価が高いのですね。ですので、これを全国展開していくというのはすごくいい試みですし、成育医療センターのほうで今やっていらっしゃるようなことを広げていくということについて、私たちもいろいろと御協力できればいいかなと思います。とにかくふだんから話しやすい、相談しやすい関係性を持ち、あとは私たちがこれからどういうことで医師に相談するのかを事前説明してから問い合わせをする、そんな配慮も確かに重要だと思います。ありがとうございます。
○五十嵐座長 どうぞ。
○松本構成員 ありがとうございます。松本です。
髙松先生にお伺いしたいのですが、愛知県薬剤師会の妊娠・授乳サポート薬剤師の取り組みは非常にいいと思いますけれども、全国展開はどの程度されているのですか。
○髙松構成員 実は全国展開はまだできていないです。これは愛知県としての取り組みで、継続して行うには意識や能力の高い方々のかかわりがすごく大事で、ぐいぐいと引っ張る方が続けてやっていらっしゃるのですね。同様に大分県でも妊娠・授乳に関しては取り組みが進んでいるところもあります。ですので、都道府県単位だけでなくて、広げていくような試みというのは、先ほど村島参考人からお話があったようなことをきっかけにしていければいいのかなと思います。
○村島参考人 私もお話ししてよろしいでしょうか。
○五十嵐座長 どうぞ。
○村島参考人 先ほど拠点病院のお話をしましたけれども、今までどちらかというと妊娠と薬情報センターは成育が中心で、拠点病院に協力をお願いするという形だったのですが、拠点病院がその地域の主役になっていただくという次のステージに入りました。薬薬連携という意味でも、拠点病院がその地域の中心で、その地域の調剤薬局屋さんと切磋琢磨してこの分野の裾野を広げていっていただきたいと切に願っておりますので、今後ぜひ薬剤師会の先生方と一緒にやらせていただければと思っています。
○五十嵐座長 どうぞ。
○中井構成員 産科側でしばし問題なのは、もちろん妊娠中に服薬されている方もそうですけれども、それ以前に、例えば膠原病みたいなものであるとか、もともと持病がおありの人がいわゆる妊娠許可基準、この状態ならいいでしょうというのが非常に曖昧なまま妊娠されてきたり、あるいは我々にコンサルトされるのです。器質的な疾患ですと、ある程度の基準を我々も説明できますが、一番困るのは精神疾患なのです。いっぱい薬を飲んでいる方に、妊娠中、どうでしょうと。これとこれはどうだねという説明はできますけれども、それをやめていいという判断は産科医には到底できないことで、しばしば問題になる。
私自身の経験では、てんかんの薬をずっと飲まれている方が自主的にやめてしまって、妊娠中激しい発作を起こされて体内死亡になったなどという経験もありますので、ぜひその辺の周知も今後進めていただきたいなと思います。先ほどの研修にかかわるかもしれませんが、妊娠前のことも含めて御検討いただければと思いました。
○五十嵐座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○鈴木構成員 髙松先生のお話を聞きながら身近に感じたのですけれども、私も産科外来をやっていますと、1日何件かは内科でこんなお薬を出されたのですが、飲む前に産科医に確認してくださいと言われたと。もらった後ですと、どうしようもないですけれども、そこで禁忌薬などがありますと、その先生との信頼関係も損なわれますし、妊婦様がもう一回もらいに行くということもありますので、先ほど研修の話がありましたが、どういったお薬が危ないかとかに関しましての研修は非常に時間もかかりますし、例えば処方する前に産科医もしくは薬剤師のほうに確認するということを研修としてやっていただければと思っています。
○五十嵐座長 どうぞ。
○平川構成員
薬のことにつきましては、現場では現在出ている添付文書の「妊婦、産婦、授乳婦への投与」という欄にある記載と、現在学術的に許容されている内容との間で非常に大きなギャップがあって、そこが現場の医師、産婦人科医師に限らず、全ての科の医師に共通して混乱になっているかと思います。
村島先生も教科書をお書きだと思いますけれども、そういったギャップで混乱することをできるだけ避ける。現場に即した情報を全ての医師がアクセスしやすい形で提供される。そういった体制を整えていただきたいと思います。添付文書の書きぶりについていま一度検討していただきたいと思います。
○五十嵐座長 どうぞ。
○村島参考人 本当におっしゃるとおりなのですが、ずっと妊娠と薬にかかわってきてやっとわかってきたのは、添付文書はあくまで取扱説明書なのだということです。あれは製薬会社さんがつくるものであって、臨床側がそれを全てうのみにすることではないということはわかったのですけれども、いろんな裁判事例等から、世の中が添付文書どおりにしないと何かあったときにということで、医師の処方権であるとか医師の裁量権ということを横に置いて、添付文書に縛られる現状になってきていると思うのです。そういう中で、妊娠と薬情報センターはエビデンスに基づいた情報を提供していますし、私たちが出している本も添付文書に決して依存しない、エビデンスに基づいた内容で書いているのですが、幾らそのようにやっても大病院ほどそこのコンプライアンス室が妊婦さんへの禁忌のお薬の処方は許さないとか、ある学会誌などは、妊婦さんへ禁忌の薬を使った症例報告をしたところ、却下されたという話も聞いています。妊娠中の薬について法的にどう扱うかというところまで含めて、臨床現場で本当に整理し切れていないのではないかと思います。
では、それはどこがするのか、非常に難しい。製造責任という意味では製薬会社さんになるのでしょうけれども、使うのは臨床の現場ですので。やっとこの間、禁忌解除ができ、今も進めてはいますが、一度禁忌になっている薬を外すというのは大変なことで、そのメソッドを使ったとしても決して全部の薬が救われるわけではないということを実感しております。今後これをどうしていったらいいかということについて、むしろ先生方にお知恵を拝借して妊娠と薬が何かお手伝いできることがあればしたいとは思っているのですが、御意見をいただければと思います。
○五十嵐座長 どうぞ。
○牧野構成員 今、村島先生がおっしゃったとおりで、これは事務局にお伺いしたいと思うのですけれども、妊婦と小児に対する安全性は確立されていないとしか書いていなかったものを、今度添付文書の書きぶりが変わると思うのですが、それについて御解説いただいて、どういう考え方でそういうふうになったのかということを解説いただけたらありがたいのですけれども。
○森光課長 その点につきましては、きょう担当局が来ておりませんので、次回資料を用意して御説明させていただきたいと思います。
○五十嵐座長 そのほかいかがですか。どうぞ。
○井本構成員 村島先生に御質問させていただきたいのですが、妊娠と薬情報センターが全国展開していくという流れを拝聴して、大変いいことだなと思いました。ここに記載されている各地の拠点病院は現在の成育医療センターの対応と同じような枠組みで展開していく、妊婦の相談を受け入れていると認識してよろしいでしょうか。
○村島参考人 ありがとうございます。
本当に複雑なのですけれども、今のところまだうちがセンターとしてコントロールしているので、申し込みは成育なのです。例えば鹿児島の方が相談してきた場合には、鹿児島の市立病院へ行ってくださいとか、主治医がいれば主治医に送ったり、全てうちでコントロールしているのですが、大変人手がかかるし、時間もかかる。相談者にとっても非常にハードルの高い状況なので、テクニカルにどうにかならないかということも含めて、次のステージに向けて今、いろいろ検討中でございます。この数年以内にすぐにできることは、安全性情報というのは添付文書とかでなくて、先ほど言いましたエビデンスに基づいたレビューしたものなのですが、それを拠点病院とウエブ上か何かで共有して、一々申し込まなくても、例えば鹿児島の患者さんが鹿児島の病院に行ったら、その先生がその薬の安全性情報を見てお答えできるような、わざわざ成育まで申し込まないで、現場で済むような方法を模索中で、多分数年以内にそういう形で移行できるかと思います。
ただ、全てやることには予算というものがかかってまいりますので、今、一生懸命頑張ってはおります。これまで、安全対策課がサポートをずっとしてくださっているのですけれども、これは薬の安全対策だけでなくて、少子化対策でもあり、社会全体がサポートすべきプロジェクトだと思って、ずっとじくじたる思いでおります。ぜひほかの課、局の方々にも御理解いただければと思います。
○五十嵐座長 ありがとうございます。
よろしいですか。
○井本構成員 現場におりました折に、電話や外来等で、妊産婦さんにファーストタッチで対応するのは主に看護職です。医師と薬剤師と連携してすぐ解決するものはいいのですが、成育医療センターさんに問い合わせをするという方法のときに、妊婦さんにとってはちょっとハードルが上がる感がありまして、そのときに不安がより募り、内服をやめてしまうということを後にわかるようなことも経験しておりますので、そういったハードルが少なく、全国で展開されると、より安心なサポートになるなと感じましたので、質問させていただきました。
○五十嵐座長 井上先生、どうぞ。
○井上構成員 ありがとうございます。
妊娠と薬情報センターの情報を活用させていただいておりますけれども、科学的エビデンスがどうかということと、実際に目の前の患者さんとお話をして、その薬を使用するかしないかといったところではリスクコミュニケーションが非常に重要になってくると思います。妊娠中の処方に関して、非妊娠時よりもリスクに関して過敏になっているということは言うまでもありませんが、安全ですよと言っても、1%のリスクであっても、1%も10%も同じようにとられる方もおられます。ですので、研修等の際には、個々の薬がエビデンス上比較的安全であるとか、そういった知識はもとより、コミュニケーションに関するトレーニングは非常に重要になってくるのではないかと思います。リスクコミュニケーションや協働的な意思決定に非常にエネルギーを要するものですから、多くの医師が少し消極的になってしまうということがあると思いますので、そこの部分を補う必要があるのではないかと考えております。
○村島参考人 私が言わなければいけないことを先生が今、おっしゃってくださったのですが、そのためにわざわざ拠点病院をつくったわけです。それなりのスキルが必要なので、研修は全国から集まっていただいて年に3日間やっているのですが、そういうものでスキルをキープしながら、カウンリングをしないと、とんでもない結果になりかねません。リスクコミュニケーションのスキルを身に着けることが大事で、簡単に情報が共有できたらそこで済むというものではないと思っています。
ありがとうございます。
○五十嵐座長 どうぞ。
○野口構成員 村島先生の妊娠と薬情報センターのお話を伺っていて非常に感銘を受けたのですけれども、ちょっとあさっての方向の質問かもしれませんが、今、井上先生からもお話が出たのですが、例えば日本人というのは、100万人に1人、1000万人に1人でも、何か事が起こると、特にマスメディアの社会的責任というのもあると思うのですけれども、例えば子宮頸がんワクチンですね。科学的エビデンスというのは、あくまでも確率なわけです。だから、今、井上先生がおっしゃったように、0.05%、1%と。ただ、自分の子供に起こってしまうと、それは100%なわけです。なかなか人間というのは確率というものと現実のすり合わせが難しいと思うのですけれども、村島先生が社会の中のこういう科学的エビデンスのあり方をごらんになっていて、どう。ごめんなさい。すごく抽象的な質問なのですけれども。
○村島参考人 私もカウンセリングをすると、ああ、大丈夫なのですねと言われます。しかし、大丈夫、すなわちリスクがゼロというのは悪魔の証明であって、できないわけですね。なので、それはうまく説明しなければいけないと思っているのですが、日本人は100%を求めるというところがあると思うのです。100%大丈夫ということではないということを理解しなくてはいけないと思います。でも、それを変えることはなかなか難しいと思います。目の前に来た患者さんには、赤ちゃんが100人生まれれば、3人ぐらいは何らかの異常を持って生まれるのですよというお話をします。身近に心臓が生まれつき悪い赤ちゃんとか、聞いたことはないですかと言うと、ああ、そういえばと。それは100人に1人ぐらいいるのよというお話をするのです。
確かに1人のお母さん、赤ちゃんにとってはオール・オア・ナンですから、100%なのですが、そういうお話をしていくうちに、だんだん子供を持つということはリスクを背負うことであって、数%でもみんなリスクを背負って赤ちゃんを産んでいるのだとわかってくださる。そのお薬を飲んでいるあなたと飲んでいない女性がほぼ同じなのよというお話をしてあげると、皆さん、大変安心するのですね。もしもそういう状況の女性が先天異常のお子さんを産んだとしても、すんなり受け入れられると思うので、そういう意味でカウンセリングは大事だと思います。
先ほどのお話ではないのですが、例えばパキシル(パロキセチン)というのは、一時期心奇形がニュースになりましたけれども、あれは心奇形が普通だったら1%のところが、1.7%になるというエビデンスがあちこちから出た。それは統計的に有意差があるのですが、では、あなたが飲んでいても、普通だったら100人に1人が、100人に1.7人ぐらいになるのよというお話をしたときに、いや、ちょっとでも上がるなら私は嫌だという方と、そのくらいならこの薬は私にとって大事だから続けますという方もいらっしゃるので、そこはカウンセリングスキル、リスクコミュニケーションというところなのかなと思います。ですから、大変丁寧にやっていかなければいけない分野だと思います。
○野口構成員 皆さん、先ほどから医療供給側の教育がすごく重要だとおっしゃっていますけれども、今の村島先生のお話から患者の教育も重要だなということをすごく感じました。
どうもありがとうございました。
○五十嵐座長 ありがとうございます。
大分時間が過ぎてまいりましたが、全体を通して何か御質問、御意見ございますでしょうか。
きょうは大変内容のある活発な議論ができたと思います。参考人の先生も含めまして、構成員の先生方、どうもありがとうございました。
それでは、きょう構成員からいただきました御意見を踏まえまして、今後の議論の進め方については事務局と相談しまして進めさせていただきたいと思います。
次回のテーマは、妊産婦の保健について扱っていきたいと思います。
事務局から何かございましたら、御説明をお願いいたします。
○木下課長補佐 事務局でございます。
お手元にアンケートのご協力のお願いというカラー刷りの資料を配付させていただいているかと思います。現在未定稿とさせていただいておりますが、第1回検討会でアンケート調査を行うということにつきまして御報告させていただいて、アンケートの具体的な中身につきましては、各構成員の先生方の御意見を踏まえて、今、最終稿に向けて準備を進めているところでございます。それを固めまして、ここにありますように、スマートフォンとパソコンからのウエブのアンケートも現在準備を進めているところでございます。今月中にアンケートを行いまして、次回の検討会に速報の形で御報告できればという形で準備を進めているところでございます。アンケートが届く医療機関の先生方、また、その先にいらっしゃいます妊産婦の方々にアンケートに少しでも御協力いただけるようにという形で、こういったパンフをつくって準備を進めているところでございます。
経過の御報告になります。
○五十嵐座長 ありがとうございました。
このアンケートにつきまして何か御質問ありますか。よろしいですか。
では、最後に事務局から連絡事項を説明してください。
○宮崎課長 次回の開催日時は、改めまして各構成員の皆様に事務局から御連絡をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○五十嵐座長 ありがとうございました。
では、これをもちまして第2回の検討会を終了したいと思います。御協力どうもありがとうございました。