第3回 「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」議事録

日時

平成31年3月20日(水)15:30~17:30

場所

Forum S 5東洋海事ビル1階 会議室D
(〒105-0004 東京都港区新橋3-2-5)

議題

(1)眼の水晶体の等価線量限度について
(2)緊急作業者に係る眼の水晶体の等価線量限度について
(3)除染等業務に係る眼の水晶体の等価線量限度について
(4)その他

議事

  
○永井座長 それでは時間になりましたので、ただ今から「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様にはお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。初めに、本日の出席状況でございますが渥美委員、三井委員、池田参考人、吉川参考人が欠席とのご連絡をいただきました。また、三上参考人の代理として中村参考人がご出席されております。どうぞよろしくお願いいたします。本日は防護眼鏡等の現状と遮蔽能力の改善の見込みについてのご説明と質疑のために防護眼鏡の製造業者、販売業者にお越しいただいております。当初は保科製作所の取締役、保科巧様がご出席の予定でしたけれども、急遽代理の方がご出席されております。東レメディカル株式会社医療材事業部門プロダクトマーケティング室の若林照宗様と、株式会社マエダ副社長、前田賢様に出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。カメラの撮影はここまでとさせていただきます。それでは議事に入る前に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 それではお手元の資料をご覧ください。まずはこの次第がございまして、本日の配布資料は、資料1 眼の水晶体の等価線量限度について第2回検討会の議論、資料2 新たな眼の水晶体の等価線量限度について事務局へ寄せられた主な意見、資料3 関係者へのヒアリング、資料4 欅田委員提出資料「労働衛生の基本的な対策と労働安全衛生マネジメントシステムについて」、資料5 緊急作業者に係る眼の水晶体の等価線量限度について、資料6 除染等業務に係る眼の水晶体の等価線量限度について、参考資料として、参考資料1 用語一覧、参考資料2 本日の論点、参考資料3 医政局提出資料「診療用放射線の安全管理に係る医療法施行規則改正について」、以上です。
○永井座長 ありがとうございました。資料の不足等ありましたらお申し出ください。それでは本日の議事に入ります。第2回に引き続きまして、眼の水晶体の等価線量限度についてご検討いただきたいと思います。それでは事務局の資料の説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 はい。まず参考資料になりますが、参考資料の2をご覧ください。本日の論点ということで、第1回の検討会でお示しした主な検討事項とその他の検討事項の中で、今日の議題をお示しした内容となっております。資料1をご覧ください。眼の水晶体の等価線量限度についての第2回検討会の議論ということでございます。まず1枚めくっていただきまして、一つ目として、意見具申に示された新たな眼の水晶体の等価線量限度を超える可能性が高い分野として、東京電力福島第一原子力発電所廃炉作業と一般医療というところと、診療科の中で特に懸念のある診療科、看護師については、内視鏡、外来に関わる部分で新たな等価線量限度を超える可能性があるということが確認されています。また2番目として、それへの対応可能性ということですけれども、廃炉作業の関係は自主的な取組によりクリアできる見通しであること、医療分野におきまして、防護眼鏡の遮蔽率は約60%、防護板の遮蔽率は約40%であるということを研究資料などで確認しております。また、併せて医療分野については99.9%の医療従事者は対応可能であるということまで確認できております。今回、第3として、意見具申通り眼の水晶体の等価線量限度を見直すことについて、高度医療、救命救急等における被ばくと被ばく限度との関係については議論が必要、2番目として、教育及び研修が重要であり議論が必要ということになっております。本日の論点として、意見具申通り眼の水晶体の等価線量限度を見直すことについてということになります。今回の開催にあたりまして、資料2をご覧いただきたいのですけれども、前回、座長から各学会や委員等に対して事務局に意見があればお寄せくださいということを受けまして、事務局の方で聞き取りを行った主な意見をご紹介いたします。1枚めくっていただくと主な意見ということで、1つ目が、複数の専門医がいても、熟練した特定の医療従事者による診療が必要となる現状がある。熟練を要する治療を多く実施する医療機関では、特定の医療従事者が被ばく限度に達し、治療が実施できなくなることが懸念される。2つ目として、都市部以外の地域では、1人の医師が救急を含む診療を行っている医療機関があるため、このような医療機関にも一律に線量限度を適用されると必要な診療ができなくなることが懸念される。3つ目として、熟練者が線量限度を超えないための対応として、線量を下げるための現場の工夫と線量限度を超えるおそれのある熟練者への管理者側の対処が必要である。以上3点になります。
○永井座長 ありがとうございます。今お話しがありましたように、本日は意見具申通り眼の水晶体の等価線量限度を見直すことについて、ご議論をいただきます。また、第2回で高度医療や救命救急等における被ばく限度の考え方、更に教育や研修について議論を深める必要があるという意見が出ていたかと思います。その後、各学会から意見をいただいておりますので、学会から1、2分程度で手短に補足説明をいただければと思います。それでは、日本整形外科学会 中村参考人、お願いいたします。
○中村日本整形外科学会理事(三上参考人代理) はい。資料1の項番2.の方で、日本整形外科としましては、透視下で行う手術というのは脊椎の先生方が主に行います。また、最近は低侵襲手術と言いまして、なるべく皮切を大きく取らずに透視化でスクリューとかですね、金属を入れる手術が多くなってまいりまして、そういう手術ができる先生方というのは技術的には相当レベルの高い技術を持った先生方で、誰でもできる手術ではございません。どうしてもそういう手術をやる先生は限られてきてしまうということで、1人の方にどうしても同じ手術、同じ透視下でという形になる場合がある。もう一つ、地方の場合ですと外傷中心に手術をする場合が多い。医師が少なければ、やはり1人の先生が頑張ってやらざるを得ないという状況がありますので、あまり厳しくなると、ある程度のところでもうこれ以上手術はできなくなるというような可能性もあるのではないかということが懸念されると思います。以上です。
○永井座長 はい。ありがとうございます。続いて日本消化器病学会、持田参考人、お願いいたします。
○持田参考人 消化器領域ですと、内視鏡室での被爆が問題で、胆膵領域でのERCPなどを用いた治療手技と、門脈圧亢進症領域でのEISなど食道胃静脈瘤の治療でリスクが高いと考えられます。これら手技は実施できる施設は限定しています。また、その施設の中にも熟練している医師が中心となって、全ての検査、治療に参加しているのが現状です。我々の施設を例にとると、EIS、BRTOなど門脈圧亢進症の対象となる患者さんは埼玉県内のみならず、県外からも紹介されてきます。日本門脈圧亢進症学会は、これら手技の技術認定を行っており、全国で約100名が認定されています。我々の施設では3名の認定者が在籍していますが、難治例が多いため、チーフは基本的に全例の治療に参加しています。このためチーフの医師が被爆線量の上限を超えると、埼玉県のみならず県外の診療にも影響がでてしまいます。ERCPのハイボリューム施設の先生に伺っても、状況は同じようです。
○永井座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。今は整形外科、消化器医療関係からお話を伺いましたけれども、他の作業現場の状況を踏まえてご意見をいただきたいと思うのですが。漆原委員、日本労働組合総連合会としていかがでしょうか。
○漆原参集者 連合の漆原でございます。放射線も幅広く工業的分野で利用されております。例えば材料検査ですとか非破壊検査といったところでも利用されておりまして、医療の暴露ほど高くはないですが、放射線審議会の第5回審議会の資料によれば50mSv程度に達することもあり得るというところが実情です。そういった方については、防護眼鏡等で保護を図ることが妥当であると思います。また、法律的に考えますと、電離則の場合は業種業態に関わりなく暴露の上限を決めており、そこで働く人の健康を保護するという観点からのものですので、そこの上限に違いがあるということ自体おかしいのかなと思います。仮に例外を設けたとすれば、それは特定の業種だけではなく全ての業種に及んでしまうということになりますので、そういう意味では例外を設けるべきではなく、意見具申の通りに見直す必要があるのではないか、加えて後ほど多分ヒアリングで各会社様からお話しがあると思いますが、いただいたパンフレットを拝見しましたけれども、まさにそのJIS規格の0.5鉛当量以上の鉛レンズを使って左右からの回り込みを防ぐ製品がすでにありますので、こういった製品を使うことで懸念されている点は解消できるのではないかなと考えているところです。
○永井座長 ありがとうございます。続いて、萩原委員、お願いいたします。
○萩原参集者 電力総連の萩原でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。私共は、第2回で事業者として渥美委員がご発言された通りということでございますが、労働組合の観点から、やはり作業環境が医療従事の関係の皆様と福島第一原子力発電所廃炉作業で決定的に違うのは全面マスク、防護服で作業をしているということでして、いわゆる散乱線等ということで議論も中にはありますけれども、そういったところではない形で、全身的に防護しています。繰り返しになりますが、β線が主体であって、γ線等も若干ございますが、そういった中で作業をしているということと、医療関係従事者様の眼の水晶体の放射線防護というところとの違いはあろうかと思いますが、基本的には今連合の方の漆原委員がおっしゃったような話を踏まえますと、我々としては最終的にはこれが法上の中に入れば、全ての事業者にかかってくる、電離則の中においては。そういったことも考えますと、結果的に我々としてはやはり労働者の安全ということが最優先です。医療の関係では医師、看護師の他にも、いわゆる患者さんにも視点が当たっているだろうと思っておりますので、私の立場から申し上げますと、やはり意見具申の通りに進めていくものかというふうに思ってございます。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。続いて、電気事業連合会の渥美委員にお願いしたいと思うのですが今日はご欠席ですので、事務局から意見をご紹介ください。
○川越放射線室長補佐 はい、事務局から電気事業連合会からの回答をお伝えします。今回、特段の意見はないということでした。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。次に医療現場の意見を伺いたいと思います。まず、日本診療放射線技師会の富田委員、いかがでしょうか。
○富田参集者 先般も資料を提出させていただきましたが、防護というところからの観点を考慮しますと、適正な防護をすることによって水晶体の被ばく限度が抑えられるのではないかというふうには考えております。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。日本看護協会 奥村委員、いかがでしょうか。
○奥村参集者 法の本来の目的が、働く方の安全を守るということであれば、是非この限度基準の見直しは進めるべきであるというところですし、今回いろいろお話しを伺いまして、適正な防護を行うことによって被ばく自体を減らすことができるということであれば、それは法の本来の目的に合致すると思います。
○永井座長 ありがとうございます。続いて、日本歯科医師会 三井委員、お願いいたします。
○川越放射線室長補佐 本日ご欠席ですので、事務局の方で意見を確認しておりますが、意見なしということでございました。
○永井座長 次に日本医師会 松本委員、お願いいたします。
○松本参集者 主な意見ということで、資料2の①、②、③と学会の方からいただきましたけれども、全てその通りと思います。特に①、②の意見は私が常にこれまでの検討会でも発言していることでございまして、50mSvを超える方々が一定程度数百人いらっしゃる。今までの議論でも60%までは防げるかも知れない、それ以上についてははっきりとしたエビデンスがないということを踏まえれば50mSv以上の被ばくを受けている医療従事者の方を全て20mSvに引き下げるということまでは、はっきりとした確証が得られていないという現状で、今、医師の働き方でも同じ議論がされていますけれども、従事者の健康とそれから地域医療を守るという観点で、やはり両立を図るという面からすれば、ある程度の配慮はやはり必要ではないかと強く思います。そういった点では、やはり一律に年を区切って、これまでの意見具申通りに見直すことについては明確に反対いたします。従って、きちんとしたエビデンスが得られるまでは、一定程度の、例えば年数についての配慮をするとか、あるいはまず引き下げの限度を一度に下げるのではなくて、ある程度の段階を経るとか、そういった配慮が必要ではないでしょうか。そうしないと、実際に命に直結するような現場ですので、果たして一律にそれをやった時に、医療現場や患者さんに影響がこないという保証は本当にあるのでしょうか。それが明確に示されない限りは日本医師会としては反対したいと思います。
○永井座長 ありがとうございます。これまでの労働政策審議会安全衛生分科会でこの労働安全衛生法令の改正の審議に関わってこられました山口委員、いらっしゃいますでしょうか。公益財団法人労災保険情報センター 山口委員からご意見いただきたいと思います。
○山口参集者 はい。山口です。原則論から言いますと、新しい規制が導入されることで、治療が必要な患者さんが治療を受けられないということはやはり望ましくない。患者さんを制約するか医師を増やすかということですが、先ほどの参考人の先生のご意見だとそんなに簡単に増やせるものではないということを理解できました。そういったことを考えますと、今、この20mSvという新しい規制を機械的に導入することは、医療の現場に大変な混乱を引き起こすのではないかなということを危惧いたします。ただ、甘い基準でずっとやっていってもいいのだということではないと思います。そのためには、今日、企業の方もこれから情報提供してくださると伺いましたけれども、やはり一つは技術革新がさらに進んでほしいと、防護の道具等々、あるいは将来的には遠隔操作みたいなことが、夢みたいな話ですけれど、可能になればいいなということも考えますが、そういうふうな技術革新でいずれはクリアしなくてはいけないのだろうなというふうに考えます。そういうふうに考えますと、20mSvがいつ実現できるのかというのはなかなかそんなに簡単に、2年後とか3年後とか言いにくいのが現状ではないかなと思います。そこの見極めをした上で、なるべく早くそこに到達するようなロードマップを描いていくということが、多分今一番現実的なのではないかなと思います。それから技術革新について、先生方は非常に特殊な技術だと思いますので、その技術が制約を受けて低下するようなことは、是非避けなくてはいけないことだと思います。工学系の先生方と医学系の先生方が、全力を尽くしてくださって、どのくらいで20mSvにいけるのかというあたりを、是非、見通しを立てていただけたらなというふうに考えております。以上です。
○永井座長 ありがとうございました。いくつかの論点を挙げていただいたと思います。一つは防護策の強化、防護眼鏡を含めて、いろいろな防護方という視点、また、健康確保措置の強化、さらに猶予措置、この辺が今いただいたご意見ではないかと思います。それぞれにつきましてさらにご意見いただきたいと思うのですが、先ほどお話があった防護眼鏡の保護機能の強化について、本日は製造販売をされていらっしゃいます2社から遮蔽性能の現状、また、今後の向上の見込み等についてご意見をお聞きしたいと思います。本日は株式会社マエダさんと東レ・メディカル株式会社、2社にお出でいただいておりますので、では最初にマエダさんからお願いいたします。
○前田氏 株式会社マエダの前田と申します。よろしくお願いいたします。現在、製造販売を行っている防護眼鏡などの特徴と遮蔽率につきまして、まず先に防護眼鏡について、その後でERCP時の防護具について述べてまいります。まず防護眼鏡について、現在当社で製造販売している防護眼鏡は防護効果の高い鉛当量0.75mmや0.5mmの鉛ガラスを遮蔽材に使用しています。これからご説明いたしますが、遮蔽材料そのものとしましては98%以上の遮蔽率を有しています。ではその遮蔽率について説明いたします。基礎実験のデータでございますが、お手元にお渡ししておりますこの赤い方の表紙のカタログ、緑の付箋で示しております、31ページ、下の方をご覧ください。測定について概略を説明します。31ページ右下の図をご覧ください。下の方に楕円で記されているX線管から、図では上の方向へ1000mm、つまり1m離れた患者さん代わりの、図では四角形の水色で示しておりますが、水ファントムに向けてX線を照射し、進行方向から135度、患者さんからの跳ね返りで見ますと45度の後方散乱線を、65cm離れた場所の線量計で測定しております。このような設定で、図ではピンクのラインで示しておりますが、線量計の直前の位置に鉛当量の違う数種類の遮蔽材を差し入れた場合の等価線量、漏洩線量の違いについて管電圧を変えながら測定しております。測定結果を左の表に示しております。表には0.5mmまでしか掲載しておりませんが、それでも98%以上の高い遮蔽効果が得られております。当社の防護眼鏡の鉛当量0.75mmの方では等価線量がとても少なくなり測定が困難な領域となります。防護眼鏡の製品面で評価すると、これは重たくはなりますが防護効果的には高い製品になります。今日、この検討会では、製品の遮蔽率について今ご紹介したような基礎実験データではなく、医療現場での実測値によるものが望ましいというご指示でしたので探してみたのですが、このような論文は私の方では見当たりませんでした。ですが、今まで発表されている学術研究などでの発表方法について危惧している点がございますので、この場をお借りして触れさせていただきます。防護眼鏡の遮蔽効果に対する測定において、今回ご要望されておられる医療現場での実測値による測定の他に、頭部の模型を使用した測定が多く見受けられますが、その測定において遮蔽効果を過小評価されている可能性を危惧しております。学術研究などでよく使用される頭部の模型の一例をここに持ってまいりました。材質は発砲スチロールで、ホームセンターなどで比較的手軽に入手できますので実験でもよく使われております。一方、こちらは当社で製造販売している最もコンパクトなタイプの防護眼鏡です。今、回していただいたシルバーの色の方です。当社としましては、側方面からの散乱線に対しても防護効果が得られるように、フレームが湾曲したデザインの物を使っているのが特徴なのですが、このように、頭部の模型に装着してみますと、ご覧のように頬との間に大きな隙間が生じてしまっていることがお分かりになると思います。では実際のご使用にあたってもこのような大きな隙間が空くのでしょうか。もちろんこの頭部の模型のような小顔の方が着用されれば、このような傾向が生じるわけではございますが、カタログの方のブルーの付箋で示しております、21ページの下の方をご覧いただきたいと思います。同じ製品をモデルさんが着用した画像でございますがいかがでしょうか。そのような大きな隙間は生じておりません。また、さらにちょっと私が着用いたしますが、このように、隙間がこれと比べて明らかにない状態がお分かりになられるかと思います。この検討会では、これらのことを考慮の上、医療現場の実測値によるものが望ましいとされていることとは思いましたが、頭部の模型を使用されての実験データのお取り扱いには十分ご注意いただきたく、改めて発言させていただきました。さて、当社では、今申し上げたように、眼鏡を着用されての隙間についてはその評価に多少納得感が低いとは言え、人の顔の形状は様々でございますので、さらに隙間をなくすべく製品を開発いたしまして、昨年、2018年1月から提供を開始しております。先ほど開いていただいているカタログの左側、20ページのPT-COMETでございます。こちらに商品をお持ちしております。今、回覧させていただいているのはブルーの商品でございます。この製品は、正面の鉛当量0.75mmの鉛ガラスに加えて、側方向と下方ですね、下に0.5mmの遮蔽シートを張り付けております。これが特徴でございます。私が着用した場合には、ほぼ隙間はないと断言させていただいてもよろしいかなというような状態にはなることが確認していただけると思います。ところが先ほど、しつこいですが、同じようにこの模型につけますと、これで実験するとどういうことになるかと言うと、結構な隙間がどうしても空いておりますので、私が着用した時よりは散乱線が入ってしまうという実験データが出てしまうのではないかと思われます。防護眼鏡の次にもう一点、水晶体被ばく低減対策として紹介しておきたい防護具がございます。従来、医療従事者の眼の水晶体被ばくの線量は、IVR手技時の被ばくが特に意識されていましたが、近年、普及してきましたERCPにおいても、患者さんの近くで長時間に及ぶ手技であることや、各医師の方々の件数の多さからその被ばく線量の高さが指摘されております。当社では2008年から、お手元の今度はピンクの付箋のページでございます。28、29ページでご案内しております防護製品を提供しております。これはX線装置のX線管カバーの上から鳥かごのような形状の防護シートを被せて、照射野から生じる散乱線を遮蔽する防護具で、撮影室内全体の空間線量が低減できます。術者のみならず室内で作業される全ての従事者に対しての被ばく線量低減効果が、医療従事者の身体的ご負担がなく得られる、効率の良さが大きな特徴です。多くの施設で80から90%程度の遮蔽効果があると評価されておりまして、防護眼鏡の代わりに、または防護眼鏡と併用されてすでに活用されております。当社では今後も鉛当量0.75mmや0.5mm程度の高い遮蔽効果を有した遮蔽材を主体にして、ご指摘される隙間をさらに埋めた設計思想の製品開発をしていき、特に高い線量下で医療行為をされていらっしゃる医療従事者の方々のお役に立てる製品の開発を進めてまいる方向でおります。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。質問は後ほどいただきますが、続いて東レ・メディカル株式会社からお願いいたします。
○若林氏 東レ・メディカル 若林と申します。よろしくお願いいたします。弊社が販売するパノラマシールドという軽装のタイプ、こちらにございます、販売をさせていただいております。今ご覧いただいているパノラマシールドは、今はこんな感じでシンプルでございますけれども、発売当初はほぼフルフェイスでカバーするようなものを販売しておりました。鼻から上を全部ガラスでカバーするものです。ただその頃は、ご要望があって販売をしたものの、医療機関におきましては販売しても一週間、もしくは一か月くらいつけていると、首が痛くなってくる、使いたくないということでご指摘をいただいた経緯があり、なかなか装着率が高まらなかったという経緯がございます。その意味で、今、第5世代、第6世代くらいですね、どんどんどんどん軽量化されて今の形状になっているという経緯がございまして、やはり弊社といたしましては、いろいろ過去の経緯で、先生方とのお付き合いの中で、装着率が高く、皆が使って装着率が高まるものというご要望をいただいておりましたので、保科製作所様のご協力によりましてこのパノラマシールドになっているという状況にございます。ですので、唯一でございますけれども、含鉛、鉛が入っているアクリルレンズを使っていることによりまして非常に軽量化されているという軽装タイプの被ばく防護用の眼鏡になっております。実際の臨床でのデータということでご要望いただきましたので、今回お手元の方に2つご提示をさせていただいております。1つは東北大学の医学系研究科保健学専攻放射線検査学分野の千田教授先生の方に出していただきました論文の心臓IVR従事者の水晶体被ばく線量と防護というものでございます。こちらは、弊社がお願いしてということではなく、先生が独自にご研究された、論文発表された後に、実はこうした論文を書きましたよ、というところでご連絡いただいたものでございまして、実臨床で、実際の東北大学、そして東北の中では一番心臓のカテーテル治療、心筋梗塞とかですね、そういった実臨床での症例が一番多い仙台厚生病院での、実臨床での測定のデータがこちらの論文になっているということでございます。実際のところで0.07mmPbの当量のものであっても6割カットできているというものでございまして、弊社は従来、こちらの最後にもありますけれども、千葉救急のですね、小林先生、病院長先生からも当初から言われていたことですけれども、散乱線によって水晶体の被ばくが起こるということでございますので、直線の被ばくだけではなくて、眼の横、眼の下、頬骨に当たって入ってくるような線量もカットしなければいけないというところで、眼の後ろ側までカバーできるようなアクリルレンズを採用しています。こういった形で、実臨床で取っていただいたデータにおきましても6割をカットしているということでございます。これだとちょっと十分ではないのではないかというご指摘をいただくごともございますけれども、基本的にこういった被ばく軽減につきましては、多くの先生方がおっしゃっているように、防護眼鏡だけで全てをカットすることはできないという認識でございますので、できましたらこうした眼鏡と併せて、他のものも含めたトータルで被ばく線量を軽減するような措置をとっていただけたらというふうに考えております。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。それではご質問をいただきたいと思いますがいかがでしょうか。前回の資料で、眼鏡を装着することで半分くらい減るというデータだったと思うのですが、先ほど前田さんの資料ですと97、98%遮蔽できるとありますが、その数字の違いについてご説明いただきたいのですが。
○前田氏 はい。前回の議論がどうして60%だったか逆に私にはわからないところですが、今申し上げましたように遮蔽材としては98%以上の防護効果がございます。後はこの周りの隙間ですね、ここから入ってくる漏れ線量が測定されるということでございます。
○富田参集者 前回、当方で測定した眼鏡に関しましては、鉛当量が0.07mmの当量であります。その時も発言させていただきましたが、0.1mm以上の鉛を使用するのであれば、さらに強力な遮蔽が期待できるというところで、これは議論の本線とはちょっと違うかもしれないですけれども、非常に検査の多いIVRの先生方に関しては、高い遮蔽の鉛眼鏡を使用することでかなりの散乱線の除去というのは可能というふうに前回も考えておりますので、そこのところが、元のマテリアルが、そもそも鉛当量が全然違うのでそこを踏まえるといろいろな厚みの鉛当量のものが今現在市場にはありますし、当院でも0.07mmを使っているというのもあるのですけれども、やはりこれは手技をする先生方がさすがに重いとか、あとは眼のかけるところに圧がかかる、それが不快になってしまう、そういういろいろな要因があってそれぞれの施設で今眼鏡を選んでいるところではあるのではないかなと思っております。
○永井座長 鉛当量が違うということですね。
○富田参集者 はい。
○永井座長 それと、もう一つ、眼鏡をかけている方にさらにこの遮蔽眼鏡を使った場合の遮蔽なり、効果があるのかどうか、それは検証されましたでしょうか。前田さんいかがでしょうか。
○前田氏 はい。眼鏡をかけていらっしゃる方用の防護眼鏡というのは、カタログの23ページのところに2点掲載しております。PT-90というタイプ、黒っぽい眼鏡と、FG50-770というシルバーの防護眼鏡、これは2つとも眼鏡をかけられている上からオーバーグラス、カバーグラスとか言いますが、上からかけるような防護眼鏡でございます。このために、やはり上にかけるということで、余計な隙間が生じやすいという難点はありますので、それについては今後のテーマ、課題だと思っています。ただ、遮蔽材としての防護効果はやはり同じように高いものがありますので、隙間を埋めていきさえすればかなりの遮蔽効果が出る、もしくはCTの介助とか、胸部の撮影の時の介助者が患者さんを見ながら介助されているような場合には、患者さんが散乱源ですからほぼ正面を向いているわけですね。そういうような手技の時には正面の鉛当量がしっかりしていれば、極端な話、サイドはなくても水晶体に届く線量は非常に少ないものになっていくのではないかなと。どういう手技の時にどういう角度から散乱線が入ってきているのかということで考えていく必要があって、使い分けてもよろしいのではないかなというふうに思っております
○永井座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。
○持田参考人 私たちの施設の実態を確認しましたが、血管造影室と内視鏡室の何れにも防護眼鏡がございました。同じ医師が血管造影でBRTOを、内視鏡でEISを行っていますが、血管造影時には防護眼鏡を使うのですが内視鏡時には外すと言っています。その理由は、防護眼鏡が曇ることで、特に内視鏡検査時には問題になるようです。遮蔽率とか重量の問題だけではなく、眼鏡につきものの曇りの問題が、現場での被爆防御の妨げになっているようです。この観点からの、開発の努力とかはないのでしょうか。
○前田氏 曇りについてもやはり一般眼鏡と同じようにテーマでございます。一般的にお願いしているのは曇り止めを塗っていただいてというような形、もしくはその深海、潜水をするような、潜水眼鏡に使うような曇り止めですとかなり効き目が長持ちするということもあります。いずれにしても塗るものなので、ずっと半永久的に効果が出るかというとそうではないのですけれども、あとはガラス眼鏡自体に曇り止めを加工するとか、いろいろな曇り止めについては今後もテーマだと思います。あと、内視鏡の場合には先ほどもご説明申し上げましたが、ERCPの手技でしたら、装置そのものにつける防護具もございますのでそういったものもよろしいのかなというふうにご案内させていただきました。
○持田参考人 我々の施設でも防護具は用いていますが、眼鏡の使用には抵抗があるようです。両者を用いるのがベストですので、学会としても会員に啓発していく必要があるかと思います。
○富田参集者 当院では診療放射線技師が、今おっしゃったように曇り止めを塗っています。どうしても曇るというのは、先生のおっしゃる通り、現状、現場でもございまして、それを完全に取るというのはなかなか長時間の手技では難しいとは思いますけれども、ある程度、除去というか、なかなか曇らない状態にすることは現状できる時もあります。全部が全部というわけではありませんがそういうふうには対応しています。
○永井座長 他にいかがでしょうか。
○若林氏 弊社のゴーグルでございますけれども、こちら基本的に裸眼の方々も、そして眼鏡をかけている方々も両方お使いいただけるタイプになっております。2種類ありますのは、1つはこういったフレームレスの眼鏡をされている方、もしくはフレームが薄いか、小さい方々はこのままはめていただけるというものでございますし、中には鼈甲のようなフレームの厚いものでございますと、なかなかこちらで入らないのでオーバーグラスというタイプが必要でございますので、この2種類で今、展開をさせていただいているという状況でございます。ただ、今後ですけれども、今私共が考えておりますのはやはり散乱線から防護するという観点で、隙間がありますと被ばくの率が高くなりますのでそれを軽減するための開発、改良を進めておりまして、近々にそういったものを販売できればいいかなということで保科さんと今進めているという状況でございます。曇りにつきましては、本当に皆さん、顔、千差万別でございますのでこうすれば絶対大丈夫というようなものはないものでございますので、我々が販売上ご説明しているのは、なるべくマスクのこの鼻に当たるところに金具が入っておりますので、それで鼻に当てていただいて、なるべく息が出ないようにということ、それから当然曇り止めをしていただくこと、そういったことを含めてですね、トータル的に先生方、皆、顔の形が違うのですからそれに合う形でお試しいただいて、納得いただくものを、なるべく使いやすいものをということでご提案させていただいているところでございます。
○永井座長 いかがでしょうか。他にご意見はございませんか。そうするとまだまだこの性能は改良の余地があるというふうに考えてよろしいのでしょうか。
○若林氏 はい、継続して改良を進めているというところでは、間違いなくそういった状況にございます。
○永井座長 ありがとうございます。そういたしますと、これまでの発表、議論を踏まえまして、先ほどの論点に戻りたいと思います。意見具申通り眼の水晶体の等価線量限度を見直すことについて、ご議論をいただきたいと思います。特に本日ご指摘いただきました防護眼鏡等の放射線防護の強化、また健康確保措置の強化、さらに猶予措置の必要性について、このあたりについてご議論いただきたいと思いますが。いかがでしょうか。
○松本参集者 先ほどの防護眼鏡、拝聴しておりまして一生懸命取り組んでいただいていることに対して敬意を表したいと思いますし、またこういった努力によって、被ばく線量を減らすことにつながればより素晴らしいことですけれども、やはり医療現場でそれを使われた結果ということを少し見ていきたいと思います。それによって明らかに、例えば今回の意見具申の通りに、実行できるのかどうか、やはり検証した上で進めるべきだという基本姿勢は変わらないと思いますので、それをどう捉えるか、したがって患者さんの命とか、あるいは健康を守るということと、それからやはり医療従事者の方の健康確保、両方でバランスをとって考えるということであれば、一定程度の何かの時間軸での配慮、あるいは段階的な配慮がやはり必要ではないかなと思います。
○永井座長 事務局、いかがでしょうか。現場の意見が重要だと思いますが、特にたくさんの症例を実施される先生たちの意見をどこかで聞いてみる必要があると思うのですが。もしこういう眼鏡も実際使うことが可能であれば使っていただいて、どの程度本当にプロテクトできるのかですね、また、使い勝手が本当にいいのかどうか。すでにメーカーの方でいろいろデータはお持ちでしょうけれど、スター的な医師にもちょっと意見を聞いてみたいと思います。日本のトップレベルの技術を持って、また件数の多い方の意見というのは聞かれたことはおありでしょうか。
○若林氏 東レ・メディカルからお話しをさせていただきますと、件数が多いというのが、何をもってというところがあるのですけれども、例えば心臓カテーテル検査が非常に多い施設、そういった方々を招聘してということは1つありなのかもしれませんし、また、診療科が違いますと方法が全く違いますので、やはりいろいろな診療科の先生方にご意見を伺いすることは非常に大事かなと思います。手技の内容が全く違いますので重要かなというふうに考えます。
○永井座長 その辺の現場の感想が非常に大事だと思いますので、事務局でも情報を集めていただくようお願いしたいと思いますが。
○川越放射線室長補佐 事務局でございます。委員の先生方、それから参考人の先生方からもご推薦などいただきながら、進め方についてはご相談させていただきたいと思います。ありがとうございます。
○永井座長 他にいかがでしょうか。
○細野参集者 細野でございます。先ほどから非常に真摯なご議論をいただいておりまして、放射線診療従事者としての医師ですとか、看護師の方を守るという観点からやはりですね、今回の等価線量限度の見直しについて前向きにやった方がいいという反面、実際に患者さんに対する医療に支障も生じてはいけないという、そういう懸念から非常に真剣なご議論をいただいていると思いますが、一つにはですね、医療現場で起きていることというのは、それこそ法令化していただかないと動かない面もあると。これはなかなか各病院ともですね、例えば経営が厳しかったりということがありますと、法令上お墨付きがないと、例えば防護眼鏡を十分に買うとか、防護策を十分に取れるのか、非常に高いものですね防護眼鏡にしても数万円ですとか、防護のいろんな遮蔽版ですとか非常に高いものであったりする。そうしますと、ある程度法令がないと動いてこなかったという面もあるかと思います。それで例えば防護眼鏡につきましてもこれまで使用経験がどうだとか、スーパーエキスパートの方がどんな使用感を持っていらっしゃるのかということもございますけれども、実はおそらく十分に工夫された防護眼鏡が行き渡っていないというのも現状ではないか、つまりそれがマストにならないと世の中が動いてこなかったという面があるように思います。ですから防護眼鏡も非常に使いやすいものが、最近工夫されているということですけれども、比較的に最近だと思うのです。私、実際に透視下手技に携わっていた時はそんなに気持ちのいいものはございませんでしたし、今も普及しつつあるところだとは思うのです。それから先ほど来話題がありましたけれども、眼鏡をされた方が上からする防護眼鏡というのも、どなたに聞いてもあまり現状ではちょっと不足だという感触の方が多いようでございまして、そういう観点からですね、どうしても何らかの猶予措置等というご意見もあるのでしょうが、ここで何か、ここで踏み出さないと世の中が進まないという現実もあるのではないかと思いまして、今回の等価線量限度というのも国際的にも進んでいるということは、それなりに非常に大きな重みのあることでもあり、何か関係者挙げて進んでいけるような枠組みというのは、やはり明確にした方が動いていくのではないかというふうに思う次第でございます。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。はい、漆原委員。
○漆原参集者 今、ご説明をいただいた2社様以外にも、この業界ですと同様の製品を作っている会社もあろうかと思います。例えば鉛ガラスを作っている会社から供給を受けて作っているところと、ガラス本体やアクリル板を作っているところもあると思います。そこでの開発競争というのは今後どんどん激化していくのではないかなというふうに思います。今、お話になりました、今日来られている会社様ではないですけれども、眼鏡もブランケット状態ではめ込める製品とか、様々な製品が競争の中で開発されており、かけ心地が良く、先生方に使っていただける、しかも防護力の高い製品が期限内に出るということをなんとか政府も支援していただければと思っております。
○永井座長 2点目の健康確保措置の強化について、どなたかご意見いかがでしょうか。具体的にどういうところが方策としてあるのか、事務局からもう一度おさらいしていただけますでしょうか。
○川越放射線室長補佐 はい。今回、眼の水晶体の等価線量限度が仮に引き下がったとしても、引き続き高い線量を受ける方がいる可能性があるという状況の中で、例えばどういった健康確保措置ができるかという点について、何か皆様からご意見があればというふうに考えておりますが、現在、電離放射線障害防止規則においては健康診断の義務がございます。それは年2回、第1回でご説明したような制度がございます。こういった中で現在、医師による判断で健診項目を省略して良いということになっておりますが、その省略可能なものとして眼の水晶体の検査というものが位置付けられておりますので、こういったところについて高い線量の方については省略することはどうなのかといったところで皆様から何かご意見があれば賜りたいと思います。
○永井座長 いかがでしょうか。もしこの意見具申通りになれば、高線量の方には省略は難しいのではないのでしょうか。たとえ猶予を置くにしても、基準を超えている場合には省略してはいけないというような通知を出すことはできるわけですね。それはあまり問題ないと思うのですが。いかがでしょうか。はい、山口委員、どうぞ。
○山口参集者 健康診断というのは早期発見して早期に対応をするということだと思いますので、何らかの水晶体の所見が見つかった場合にどのような就業上の処置をするかというところまでですね、健康診断を実施するところと、その実施の結果によってどういう対応をするべきなのかというところまで、全体の流れも含めて健康確保措置を是非作るべきだと考えます。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。はい、松本委員。
○松本参集者 その辺につきましては山口委員のおっしゃった通りかなと思います。かたや、ある程度、細野委員が法令で決めてしまわないとなかなか取り組めないと、これもある意味現実的なところがあろうかと思いますが、あまり無理な設定を現場に作るということに私は反対で、逆にそういった設定をすると無理をすることが現場では起きてくる可能性があるわけで、やはりある程度、実現可能なラインをきちっと設定するべきだということで私の主張は変わりません。
○永井座長 それは、基準値及び執行猶予という。
○松本参集者 片方か、又は両方かどちらかわかりませんけれども、やはり実際の働く方々の実際面を見て考えるべきではないかということです。
○永井座長 いかがでしょうか。
○横山参集者 よろしいでしょうか。
○永井座長 はい、横山委員。
○横山参集者 先ほどからご意見伺っていると、やはり医療の現場はなかなか難しいなというところがあるのですが、今までの中の話で線量限度を超える恐れがあるというような話がありましたが、実際にそこまで高い方という事例が出てきていないと思うのです。これぐらいの手技をするとこれぐらいの線量という具体的なものが出てなかったと思います。したがって、今どれくらいの線量の方がいらっしゃるかというところの情報をいただけるとありがたいなというふうに、議論する上で。
○永井座長 前回の資料にありませんでしたか。0.1%くらいの方が超えると記憶しているのですが。
○川越放射線室長補佐 はい。第2回の資料で、お手元に配付されている分があるかと思いますが、資料8をご覧いただきたいのですけれども、これはあくまで現在、防護眼鏡の遮蔽効果の部分を考慮した測定はなされていませんで、そういった前提で出てきている線量、眼の水晶体の等価線量分布でございまして、その中では50mSv、年あたり50mSvを超える方が369名いらっしゃって、これが遮蔽率60%、防護眼鏡の遮蔽率が仮に考慮されたとすると、0.4掛けで20mSvを超える方ということになると推測されますので、そういった意味で、防護眼鏡だけの遮蔽率を考慮すると今現在369名の方が超える可能性があります。この方々のその他、防護眼鏡以外の防護の措置の状況は一切分かっていないという中での数値でございます。
○横山参集者 すみません、よろしいでしょうか。今おっしゃられた、第2回の資料は良く分かっているのですが、防護眼鏡に関しても今60%というような値を使っているというところとか、あと、他に防護具を使っているかどうかというところに関しましては、この中の情報として得られていないところだと思います。ですからなかなか、個人を特定することになってしまうので情報を得るのは難しいのかも知れませんが、実情というところでどうなのかというところが、できれば分かると良いということでご提案させていただきました。
○永井座長 いかがでしょうか。でも実験してみれば簡単ですね。どなたかどこかの病院で、1週間あるいは2週間着けていただいたら大体予想ができます。そういうトライアルというのは難しいのですか。臨床研究法の対象になるかもしれないですけど。いかがでしょうか。
○横山参集者 いろいろなところでやられているので、そういう中でやっていただけると。多分そんなに時間をかけて、例えば1か月、1か月で足りないのかもしれないですけれども、数か月くらいのことでできるのではないかと思います。
○富田参集者 私の方から前回、ファントム実験のデータは0.07mmの方で出させていただきました。また、遮蔽板に関してもどれくらいの防護力があり、使用に関しても、どういうふうに使用すれば的確な効果があるということもお示しいたしました。したがって、実際の臨床の先生に着けていただくというのが一番正論というか、確実な方法だとは思うのですが、ある程度の眼鏡の防護に対するものの推論値というのは実験データからも推測できるのではないかというふうに思います。今回、メーカーさんに来ていただきまして、0.07mmの遮蔽率60%程度というようなカタログ値も出ておりましたので、その辺も我々の実験値から比べて大幅にずれるような数値ではございませんでしたので、もちろん我々が実験した後その鉛当量のデータを、メーカーさんのデータとか他の学術大会、学会などの発表の資料と見比べまして大幅にずれていないということで、この実験に関してある程度の妥当性はあるのではないのかなというふうに思います。例えば0.07mmではなく、0.5mmあるいは0.75mmの眼鏡を使用する、プラス、今議論になっているのは眼鏡というところが本日の議論になっているところでございますが、基本的に放射線防護、IVRに関しましては眼鏡だけではなく防護板が非常に大きな役割を果たすということも現状承知しております。従いまして、複合した防護というところで、厚い眼鏡をかけてさらに防護板を使った状態でどうなのかというところで物理的な検証をするというのも一つの案じゃないかなと思いました。
○永井座長 でも、鉛0.5mmとか0.75mmで99.9%と書いてあるわけで、やはり6割の遮蔽とは随分違っているのではないかという気がするのですが。それは同じようなものだということなのでしょうか。
○富田参集者 鉛当量が違うと遮蔽率が全く違うというところがございまして、当院で主に使っているのが0.07mmのものですので、だいたい他の病院とかでも、もちろん厚手のものもあるのですけど、なかなか先生がご利用するというところのシチュエーションがなかったりするので、前回に関しては0.07mmというところで出させていただいているところです。
○欅田参集者 今の議論に関連して、前回の時もお話ししましたように、先ほど富田委員が言われたように、やはりいろいろな組み合わせをして防護措置をとるというのは非常に重要になってくるというところはとても重要な件かなというふうに思います。今のところは防護眼鏡を中心にした議論だけでしたけれども、やはりX線発生装置の操作そのものについても。
○永井座長 もちろんそうです。そのことを踏まえた上で、ベストを尽くして今の実態を知りたいということなのです。
○欅田参集者 いくつかそういったものを今、組み合わせた対応策でどこまで対応できるのかということは私たちの研究班でも実施しているところですけれども、先ほど議論がありましたけれども、スーパードクター的なところが、限度がどこまで大丈夫なのかというデータに関してはまだそれは十分集積されていないところがあるかと思います。
○永井座長 多分最後に残る問題はそこなのだろうと思います。持田参考人、いかがでしょうか。トップレベルの医師に影響が出るのではないかと思うのですが。
○持田参考人 そうですね。消化器領域でもごく一部の施設の一部の医師が問題になりますが、その医師が診療できなくなると、全国レベルで医療が回らなくなる可能性があります。どの程度の影響になるかを、実際に検証することは重要と思います。
○富田参集者 基本的に物理実験もそうなのですけれども、何パーセント程度の遮蔽ができるというのは実情分かりますので、スーパードクター、本当に件数の多い先生、地方の先生がどの程度の時間手技をされるのかという、そこの定義付け、例えば日本で一番マックスの手技をされている先生の時間数で想定をしないと、多分ここの部分はどれぐらいといっても分からない。
○永井座長 その議論は必要です。一般的な話と同時に、トップレベルの方についても議論しないといけないのです。
○富田参集者 そうです。なので、そこをご提示していただけるというか、議論の中で分かればというか、そうすればある程度、予測値というのも出せますでしょうし、測定も可能ではないかなと思います。
○永井座長 それはさほど難しいことではなく、中核病院の本当にトップでやっている人の、日本でも有名な人にちょっと着けてもらえればよいので、そういう研究が必要ではないかという提案なのです。そこを抑えた時に、地域医療から救命救急まで影響が出る可能性があるということなのです。それは日本の医療全体を揺るがすことになりかねないのでどうなのでしょうかということです。データを得るのはそんなに難しくないと思うのですが、松本委員、いかがでしょうか。
○松本参集者 私は永井座長がおっしゃることに非常に賛同いたします。例えばカテーテル治療が医療機関でどの程度やられているかという、そういったところはもう分かっているわけですから、データとしてあるわけですのでそういったところ、先ほど中核病院とおっしゃいましたが、そういうところで実際にやっていただければおそらく実感として非常に分かりやすいと思いますので、本当に良いことではないかと思います。
○永井座長 事務局、いかがでしょうか。
○川越放射線室長補佐 そういった意味では学会様からのご協力をいただきながら、そういった病院、先生に直接ご協力いただけるような形が取れれば、具体的に調査をこちらでかけて情報を収集、分析させていただくということで是非検討させていただきたいと思います。
○永井座長 疫学でもポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチとあります。今問題になっているのは、ポピュレーションは大体コントロールできる、しかし本当に一部のスーパースター的な方々の行っている医療に影響が出るかどうか、これは日本全体として非常に大きな問題になってくると思うのです。いかがでしょうか。是非その2つの視点を持って議論していただきたいと思うのですが。それと松本委員からご提案があった執行猶予の問題ですね、この辺についてはいかがでしょうか。データがないと問題はあると思いますが、是非、現場の調査、1回の手技でも分かると思うのです。非常に難しい症例に対応した時にどのくらい被ばくしているか、限られたデータでもよいですからどこかで協力得られる病院があれば調べていただければと思うのですが。場合によっては特定臨床研究になるのかもしれないのですが、パイロット的なデータがあると議論の参考になると思います。いかがでしょうか。また後で全体的な議論でも、その時にご発言いただければと思います。また、今の意見を踏まえてこの等価線量限度等について、あるいは執行猶予をどう考えるのか、場合によっては事務局からご提案いただいても良いと思います。松本委員、どのくらい猶予があればよいでしょうか。データがあれば話は早いのかもしれませんが、どうお考えでしょうか。
○松本参集者 永井座長のおっしゃる通りで本当に結局データがなかなかないというところですよね。前回も50mSvを超える方というのが一定程度いらっしゃって、確か人数的には数百人と思いますので、そういった数百人の方々が果たして実施された時に、一定の期間でこの方々がどうなるかというところの検証がどうやって得られていくのか、その方法は何かということになると思います。
○永井座長 事務局にお聞きしますが、結論はいつぐらいまでにまとめる必要がありますでしょうか。
○高山電離放射線労働者健康対策室長 現在のところ、その後の法令改正になりますので、皆様の意見を伺ってそれから手続きに入るのを考えますと、今年前半には結論を得たいというふうに思っているところですので、ご指摘の点を踏まえて、どのようにできるか検討して、またご提案させていただきたいと思います。
○永井座長 実際今までの検討から99.9%は大丈夫だと思うのです。残りの0.1%が、これが単なる外れ値ではなくて、日本の医療の最先端にいる方々だということなのです。実はそこが日本の医療の先端を支えて、場合によっては地域を支えているという面があります。そこに影響が出ると0.1%の影響では済まなくなってくる可能性があるという、多分松本委員がおっしゃったことはそういうことだと思うのです。これは後でも議論になる救命救急にも実は関わってくるのです。是非、そこを踏まえてご議論いただきたいと思いますが。いかがでしょうか。それでは、今の問題につきまして、また事務局とも相談して今後の対応を考えたいと思います。できればパイロット的なデータでも得られればと思います。それから、教育、研修の問題があります。労働安全衛生法上の事業者の責務を果たすための労働者に対する教育等を含む取組と、それから参考資料3にあります、医療被ばくの適正管理のために医療法施行規則を改正し、診療用放射線の安全管理の一環として放射線診療を行う医師を対象とした研修等が始まるということです。事業者が組織的に対応するべき、基本的な労働衛生対策と労働安全衛生マネジメントシステムについて、これは欅田委員からお願いいたします。
○欅田委員 今のご議論にもありましたとおり、こういった環境を作っていくためにはどのようにすれば良いのか、まず医療の現場だけではなく一般の労働衛生管理を含めて、現状の仕組みはどうなのかということについて比較検討していきたいと思います。1ページめくっていただいて、労働衛生の基本的な対策というのは、資料に記載されているとおり労働衛生の3管理と言われるもの、「作業環境管理」、「作業管理」、「健康管理」に「労働衛生教育」を加えたもの、さらに「労働衛生管理体制を確立」して総括管理を行うといったもとで実施していくということが労働安全衛生法で求められています。労働安全衛生法では、これらを実施する主体が事業主の責任のもとで実施していく、さらにそれは基準行政としてまんべんなくやっていくなかにおいて基準を超えたものに関しては罰則規定があるということが特徴です。そのために、達成できなかったらどういうことになるのかということが問題になります。これを実施する上においては、さきほどの3管理あるいは5管理といったものを改善していくために労働安全衛生マネジメントシステムというものも広く使われるようになっているところです。1枚めくっていただいて3ページですけれど、労働安全衛生マネジメントシステムというのは安全衛生水準の向上を図ることを目的として事業者が一連の過程を定めて自主的な活動を促進するものということで、労働安全衛生法規則の第24条の2において厚生労働大臣が指針を作ることが求められています。平成11年に労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針がだされていますが、その中で規定されているのが資料の黄色枠で囲まれたところに記載されているようなことであり、事業場において安全衛生方針の表明を行うということ、これはトップいわゆる事業主が基本方針の表明を行うということ、そのもとで危険性又は有害性の調査(リスクアセスメント)を行うことによりその結果に基づいて講ずべき措置を提示していく、またそれを労働安全衛生の目標に設定し、計画に基づいて実施、評価、改善をしていく、いわゆるプラン、ドゥー、チェック、アクトというPDCAサイクルを回して継続的に改善していく場を作っていくことが非常に重要であるということが言われています。次のページにありますけれど図に落とし込んでみますと、事業主が安全衛生方針を表明する第5条とありますとおり、この条項は先ほどのマネジメントシステムに関する指針の中の項目になります。基本指針のもとでPDCAサイクルを回していく、さらにそのPDCAサイクルを回してゆくための基本要素としては、図の右に考え方を示していますとおり体制の整備ということで、人材、予算を確保するとともに教育を実施していく、労働者の意見を反映する場を設ける、さらに文書にしたためて明文化していく、記録を残していく、といった作業を3管理、5管理を実施しながら行っていく、PDCAサイクルを回していくことが求められているところです。具体的な3管理とはどのようなものなのかということを次の5ページに示しています。これは放射線に限らず、一般の有害作業における3管理の状況を示していますけれど、何らかの製造工程等におきまして有害な化学物質を使用するという際には、一番には有害ではないものに置き換えてしまう、有害物質の使用を中止するということが求められるわけですが、すぐにそのような対応はできないところであります。今の議論におきましては、放射線・放射性物質というものがこれに該当します。それらを使用する環境において労働者が発散されたものを拡散して有害物質に晒されるということになると、それを防ぐために封じ込めを行う、また局所排気装置等を用いて人が有害物質に晒されないようなより良い環境を作っていくのが作業環境管理ということで、その環境を評価していく作業環境測定も実施しながら対応をとっていくことが求められています。そういう対応をとった上においても有害物質が入ってきて健康影響を損なうおそれが色々なところで発生するので、その際においては保護具を使うといったことあるいは作業方法を改善して暴露を減らすといったことが求められる、これらが作業管理になります。さらにその上において健康影響が出ていないかということを評価チェックしていく健康管理、また事後措置として必要に応じて人の配置を考えるといったことが求められます。これらの内容というのは基本的には上流からやっていくということが議論になり、先ほど保護具のことが議論の中心になりましたけど保護具は必要な場合に使うということで、本来は保護具が必要ない環境を作っていくことが求められるわけであります。このような一般的な有害作業について述べたところですけれど、これを放射線作業に落とし込んだらどうなるかということで次の6ページに示しています。作業環境管理ということでは、放射線の遮蔽ということで防護板を使用するであったり、1Fサイト等原子力事業においては放射性物質の封じ込めであったり環境の評価や周辺環境の監視といったことが作業環境管理として行われています。また、作業管理としては作業手順の検討を行う、1Fサイトにおきましては遠隔作業やロボットの導入を行うことで人への暴露を少なくするような環境を作っていく、それらの上に保護具を付けるということで、さきほど議論があった防護眼鏡を使用することなどが行われています。その上で健康管理を行っていくということになります。これら3管理に加えて右下にありますような就業前、就業後に定期的な労働衛生教育を実施する、さらにそれらを総括管理する体制として全体の管理体制を確立していくことが求められています。次7ページですが、前回、富田委員から具体的な放射線防護においてどのようなことが対応できるのかということで、放射線防護には色々な種類があり、医療被ばくの最適化によって職業被ばくの低減が期待できるということで具体的な対応策を示していただいたところですけれども、それらの中で今申し上げました作業環境管理、作業管理に相当するものがどのようなものなのかということを星印で示しています。時間の関係がありますのでここはパスさせていただきます。これらを実施していく上で、先ほど述べました労働安全衛生マネジメントシステムということが現在、言われるようになってきているところですけれども、システムを構築した上でマネジメントシステムの運用をどのように進めるのか8ページでございます。最初に年間目標を設定するということ、さらにその目標に向けて年間計画を策定してそれを実施する、PDCAサイクルでいうところのプラン、ドゥーというところ。さらにその実施した結果を評価、システム監査を行っていき、マネジメントレビューの改善計画を策定するチェック、アクトといったところを実施していくことが求められます。この中におきましても組織トップのリーダーシップということが非常に重要な位置付けになってくるということがあります。具体的にこれらのシステム運用について①から⑥に記載していますが、これらのことをどのようにイメージすれば良いかということで、次の9ページをご覧ください。年間目標の設定ということですが、目標の設定におきましてはモニタリング指標と共に目標値を設定するということが重要になってきます。モニタリング指標というのは具体的な措置を評価するために数値化して示されるような指標を選択し、それを目標値に落とし込んでいくことが求められます。具体的には下の表で示していますとおり、例えば現在の議論におきましては、被ばく限度を超えた人数を目標値0人にするというような形で示していく、あるいは各検査の1回当たりの水晶体等価線量を何mSvに抑えるといった形でアウトカム評価指標と目標値を設定します。あるいは放射線防護教育の参加率として何%にするとか100%にするとか、防護具の着用率を何%にするといったプロセス指標と目標値を設定します。数値目標を設定することにより、後の評価においてその目標が達成できているか否か明確に評価することができます。次10ページをご覧ください、運用におきましてはいつまでに誰がどのように運用するかということを明確にするとともに、安全衛生委員会等で情報を共有していくことが求められますので、それぞれの管理計画とか改善計画を年間計画の中に落とし込んでいき実施プランを作り、その実施状況について適宜評価を行っていくことが求められます。これを実施するためには体制を整備し、必要に応じた資源の投入、資源というのは人と物をそれぞれ投入していくことが重要になってくるわけであります。次11ページをご覧ください。計画を策定した上でそれを実施していき、その実施状況をモニタリング、記録していく、それらに基づいて最終的にどのような状況になるのかということを評価することが求められます。評価はさきほど設定した目標に対して達成できているか否かを見ることでパフォーマンスの評価、何らかの問題事象が発生していないかインシデントの確認を行うとともに全体の実施状況の評価を行っていくということで、法令順守ができているか、そういったことについても順守状況の評価を行っていくことが求められます。最終的にこれらのシステム監査を行うわけで12ページをご覧ください。監査を行う目的は、実施してきたことの妥当性、実行性、有効性を確認して、グッドプラクティス・良好事例を抽出するとともに改善必要事項を指摘する、改善推奨事項を提言するといったような流れが必要になります。これらはPDCAサイクルを実施していくなかで最強なツールになるもので改善のための強力な機会になってきます。下に記しているように監査メンバーを確定し、事前の研修を行って文書として残すことをしながら評価します。この際にも先ほど述べたとおり組織トップが重要な位置付けになってくるということが、最終的な改善措置に組織トップが署名し、内容を十分に認識して全体として動かしていく環境を作ることが求められます。13ページですが、このマネジメントレビューの運用において考慮すべき事項としては①から⑦に記していますけれど、前回までのマネジメントレビューの結果及び対処の状況に対して今回どのように進んでいくのかということ、また、マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化、安全衛生方針及び安全衛生目標の達成状況、労働安全衛生パフォーマンスに関する情報、マネジメントシステムの有効性を維持するための資源の妥当性、利害関係者との関連するコミュニケーション、継続的改善の機会・提案、こういったことを行い、PDCAサイクルを回してさらに良いものにすることを順次繰り返して進めることが求められます。最後14ページをご覧ください。これらを実施していく上で、特に医療の場におきましては院長等がリーダーシップを発揮することが非常に重要になってくるわけで、そのための誘因と、従事者が手順や基準を遵守するための誘因を含めた設計をしておき、目標と評価、システム監査とマネジメントレビューを組み合わせてPDCAサイクルの運用のもと、関係者が連携を図って継続的改善を図っていくことが重要になってきます。放射線防護に関しては、目標達成のための管理方法が明確になっており、個人の暴露量の評価に関しても化学物質防護におきましては評価するのがなかなか難しいのですが、放射線に関しては個人暴露がきっちり評価されており、管理方法も明確になっているところでマネジメントシステムに落とし込んでいくことは非常にやりやすい環境ですので、そういったことを含めて対応をとっていくことが重要です。先ほど、細野委員のほうから法令に落とし込んで対応をとっていくということも求められるという、労働安全衛生法では労働者の健康確保と、快適な環境を作っていくということで医療従事者も労働者としてその健康を確保していくことが重要だということがありましたけれど、それを実施するための体制としてこういったことが求められるということをご報告させていただきました。
○永井委員 ありがとうございます。ただいまのご説明についてご質問等いかがでしょうか。これは基本的に大事なことですから特にご異論は無いと思いますが、いかがでしょうか。今後、こうした取り組みを着実に進めていただくということ、現場で対応いただくということ、また事業者と国の教育が大事だということを、ぜひ報告書に記述したいと思います。それでは続いて診療用放射線の安全管理に係る医療法施行規則改正について、医政局地域医療計画課からご説明お願いいたします。
○稲木課長補佐(医政局地域医療計画課) 医政局地域医療計画課でございます。この眼の水晶体の検討会のなかで、こういった職業被ばくのご議論をいただく中で、医療ですので医療従事者ではなく医療を受ける患者さんに対する被ばく防護について、というご意見が色々な先生から何度かございましたので、それにつきまして参考までにということですけれど、地域医療計画課で進めている参考資料3として診療用放射線の安全管理という形でご説明したいと考えております。1枚めくっていただきまして右上の方に記しておりますけれど、医政局地域医療計画課では医療放射線の適正管理に関する検討会を平成29年4月から実施しているところです。その中で大きなテーマになりましたのが医療被ばく、つまり患者さんの被ばくです。これにつきましては、被ばくの3種類として職業被ばく、医療被ばく、公衆被ばくと分類されておりますが、特に医療被ばくについて議論が進んでいたところです。その背景としましては、3ページです。医療被ばくの現状といいますのが世界的にみて平均値が高いという傾向が日本の現状であることを踏まえて国際放射線防護委員会ICRPのほうで医療被ばくについて一定の配慮をするといったことで見出しを入れております。医療被ばくの特徴としましては4ページですが、被ばく防護としましては正当化、最適化、線量限度という3つの原則がございますけれど、医療被ばくに関しましては線量限度の規定は設けられない形になっています。すなわち、医療での被ばくはある程度やむを得ないという観点があります。その一方で、正当化、つまり適切に診療を行う、放射線診療を行うか行わないかをしっかり選択していただくといったプロセスと、放射線診療を行うとなった場合に照射線量を設定する最適化のプロセスがございまして、医療被ばくの場合、この正当化、最適化をしっかり確保していといったことが特徴です。そういった中で、既に公布されておりますが、医療放射線の適正管理に関して先週3月11日付けで省令改正がされたところです。改正前の議論が5ページにございます。改正前の時点では医療被ばくの適正管理について法律の規定はございませんでした。その一方で基本的な考え方に記していますとおり、医療被ばくの適正管理は正当化においては、一義的に診療をする医師・歯科医師の判断によりますが専門家による情報提供が有用であるとされています。また、最適化につきましては診断参考レベルと申しまして適切な線量設定値に基づいて設定すれば達成できるということです。そういったことからこの検討会の中では具体的な対応方針として医療被ばくの正当化・最適化のための研修を行う、研修を行いつつ診断参考レベルという一定の数値に基づいて適正に管理を行うといったことが議論されたところです。これを踏まえまして先週3月11日に省令改正を行い、管理者が確保すべき安全管理の体制の措置として診療放射線に係る安全管理というものが医療法施行規則の第1条の11第2項第3号の2という形で規定されたところです。この中では責任者を配置し、その責任者の管理の下で指針を策定していただき研修を実施していただき、医療被ばく・患者さんの被ばくについて線量管理の記録を行っていただくという仕組みになっております。それぞれの内容につきましては7ページから9ページにございます。7ページでは責任者を配置していただき指針を作成していただいて、8ページでは研修を実施していただいて、9ページのようにある一定の機器に関しましては線量の管理と記録をしていただくという体制になっているところでございます。今回、この議論の走り出しとしましては患者さんの被ばくについてどういう線量管理をしていくかというところで議論をスタートしておりまして、必ずしも職業被ばくの議論とは一致していないこともございます。その一方で、ここに示している研修の実施ですが研修の内容について基本的には医療施行規則上は医療被ばくに対しての研修となっているわけですが、この中で安全管理に係る研修については他のものでも、例えば院内感染についても医薬品安全管理などもございまして、それらを一体的に行うことも差しつかえないことになっておりまして、労働安全衛生法上で明確に被ばくに関する研修を実施することがあるならば、こういった研修と一体的に行うことについて何ら妨げることはないということを考えております。以上です。
○永井委員 いかがでしょうか。医療法施行規則が改正されれば診療用放射線の安全管理が導入されるということですね。
○稲木課長補佐(医政局地域医療計画課) 先週に公布されまして、施行は平成32年の4月から施行されます。
○永井委員 それによって職業被ばくも低減されるということですか。
○稲木課長補佐(医政局地域医療計画課) 一対一対応ではございませんが、低減されることはあり得ると思います。ただ、その点に特化された内容ではないということです。
○永井委員 それでは、よろしいでしょうか。そうしますとこの件は特に問題なしということで、続いて緊急作業者に係る眼の水晶体の等価線量限度について、事務局から資料5について説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 資料5をご覧ください。電離放射線障害防止規則における緊急作業ということで、まずICRPにおける考え方についてご説明いたします。下の表にございますとおり、職業被ばくには2つの被ばく状況があるということで整理されています。1つは計画被ばく、もう1つは緊急時被ばくです。計画被ばくでは、職業被ばくの中で線量限度が定められておりますが、ICRPにおいては緊急時被ばくの状況における職業被ばくとして参考レベルという形で示されているという状況がございます。電離則におきましては緊急作業として第7条において具体的な定めがございますが、その状況としましてはICRPで言われている緊急被ばく状況について具体的に電離則第42条第1項各号において、基本的には不測の事態が生じた場合に誰かが汚染された放射性物質を片付けなければいけないようなことが想定されますので、被害を最小限に抑えるための応急作業ということで一時的に緊急作業時の被ばく限度が設けられているということです。次のページをご覧ください。現行法令で緊急作業時における等価線量限度はどうなっているかということですが、こちらは放射線審議会が平成10年に示した意見具申を踏まえて電離放射線障害防止規則で300mSvが適当であると規定しているところです。以前までは眼の水晶体や皮膚の等価線量限度は定めがございませんでした。その次のページをご覧ください。東電福島第一原発における緊急作業時の被ばく実態を調査した結果です。最初の平成23年度の状況を見ますと、この年に特例省令を定めて、通常時の緊急時の実効線量の限度は100mSvでございましたが、一時的に250mSvまで引き上げた中での作業でございました。そういった中でも最も高いもので眼の水晶体の等価線量は200mSvまでの範囲に収まっているという現状がございます。次のページをご覧ください。平成30年3月2日付け眼の水晶体の放射線防護の在り方についての意見具申の中での記述です。緊急時について1つ目のパラグラフですが、緊急時被ばく状況における職業被ばくについて、ICRPやIAEAの関連文書においては、水晶体の等価線量限度を設けるべきとの勧告等はなされていない、ということ。また、少し前になりますが放射線審議会で平成30年1月に示された見解において、緊急被ばく状況において職業被ばく又は公衆被ばくに適用する参考レベル等について、今後とも最新の知見や国際動向などを注視し、必要に応じて検討を行うということが示され、これらを踏まえれば、現時点で緊急作業者に係る水晶体の等価線量限度を変更する必要性は薄く、当面は現行の制度を維持しつつ、最新の知見や国際動向等を注視し、必要に応じて検討を行うことが適当である。とされております。といったことから、委員の皆様におかれて緊急作業者に係る眼の水晶体の等価線量限度を意見具申どおりとすることについてご意見を伺いたいと思います。
○永井委員 ありがとうございます。ここで想定しているのは原子炉事故のような事を考えて緊急作業としておられるのでしょうか。
○川越放射線室長補佐 資料の2ページの上の方囲みに記していますのがICRPでの緊急時被ばく状況についての考え方で、これには原子力事故、輸送事故、産業界や病院での線源に関係する事故、放射性物質の悪意ある使用、及び衛星衝突の可能性など、その他の事象が含まれるということが示されておりまして、基本的には不測の事態で生じるような事故を想定しているものです。
○永井委員 その時には、電離則で規定される300mSvにするということが意見具申の内容ですか。
○川越放射線室長補佐 平成10年の意見具申を踏まえて、平成13年に施行された眼の水晶体の等価線量限度として300mSv、これは現行も300mSvでございまして、今回の放射線審議会からの意見具申ではこの300mSvという数字を維持するという方針が示されているところです。
○横山委員 放射線審議会の部会の時にも議論があったかと思うのですが、実効線量で抑えておけば眼の線量だけが高くなるような事態というのは想定しにくい。例えば内部被ばく、例えばるβ線での被ばくということで高くなる可能性というものがあるのですけれども、そういう場合には防護マスク、これは内部被ばくの防護ということで眼を守っているわけではないのですが、結果的にはそれで線量が下がるということで、国際的な考え方としてまずは実効線量を抑えておけば、眼の線量としても同じくらいになるだろうというところがあります。
○永井委員 よろしいでしょうか。これについては、ご異論無いと思いますので意見具申どおりということにしたいと思います。続いて、除染等業務に係る眼の水晶体の等価線量限度について、事務局からご説明をお願いいたします。
○川越放射線室長補佐 資料6をご覧ください。1ページめくりまして、除染電離則における眼の水晶体の等価線量限度の現在の取扱いについてご説明します。除染作業につきましては、東日本大震災により生じた除染作業に従事する労働者の健康障害防止のために、平成24年1月1日にこの規則が施行されております。この規則の中では、放射性物質の濃度に応じた一定の措置義務を義務付けておりますが、眼の水晶体の等価線量限度については定めていません。これらが適用される現場としては、下の囲みにあります福島県内の浪江町を中心とする除染特別地域その他の場所も含めて一定の汚染が認められる場所での除染を行う場合に当該規則の適用がございます。また、除染電離則の義務は下に記してあるとおりで、この中で眼の水晶体の等価線量限度を特別定めていない理由として、除染等の作業では指向性の高い線源がないため、眼のみが高線量の被ばくをすることは考えられないことから、除染電離則第3条の実効線量限度を満たしていれば、眼の水晶体に対する等価線量限度を超えるおそれがないことから、定めていないということが記載されています。次のページをご覧ください。除染等業務の実態として、除染等業務では主に外部被ばくと内部被ばくの被ばく経路が考えられます。直近5年においては下の表をご覧いただければわかるとおり、実効線量で年20mSvを超える方はいない状況となっております。次のページをご覧ください。放射線審議会の意見具申で示された内容でございます。除染等業務の現場の特性として、東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則では、除染等業務で眼のみが高線量の被ばくをすることは考えられず、実効線量50mSv/年を守っていれば眼の等価線量限度を超えることはないとして、除染電離則の話が紹介されています。これを踏まえて(2)に記しています、除染等業務従事者は原則として全身で均等に被ばくしており、実効線量と水晶体の等価線量の数値に大きな違いはないと考えられることから、眼の水晶体についても年間20mSvを超えていないと考えられる。そういったことから除染等業務従事者について、水晶体の等価線量限度を規制に取り入れなければならない状況にはない、という結論になっております。委員の皆様には、除染等業務に係る眼の水晶体の等価線量限度を意見具申どおりとすることについて、ご意見を伺いたいと思います。
○永井委員 ありがとうございます、いかがでしょうか。現実問題として大きな問題は出ていないということですね、これも意見具申どおりということでよろしいのではないでしょうか。
○横山委員 まさに、この意見具申の検討をさせていただいたわけですけれど、もしおわかりになればということで事務局にお聞きしたいのですけれど。除染業務をされる時の被ばく防護という観点からではなく、労働安全の観点からどのような防護をなさっているのでしょうか。
○川越放射線室長補佐 基本的には、除染電離則の中で放射線防護が必要な場合については内部被ばくを防止するための防塵マスクや、皮膚等に直接付かないようにするための保護具の着用が義務付けられています。それは汚染された土壌の線量などに応じて必要な義務が定められているところです。現場でどうなっているかと申し上げますと、例えば、草を刈るような場合ですと石が飛び跳ねてくることを防ぐために、これは電離則上の話ではなくて労働者の安全を確保する場合の防止措置として防護具を付けるといった場合もありますが、基本的には除染電離則で考えられるような現場において眼を直接防護するための防護めがねの着用などは想定されないだろうと考えています。また、眼の直接汚染された土壌が入ったような事故例は報告されていないことを紹介いたします。
○横山委員 ありがとうございます。労働安全の面から汚染された物が飛んでくるようなことを想定しなくても、そういうもので十分に防護されているということで眼に関する被ばく・内部被ばくの防護はされていると考えてよいと思います。
○永井委員 全体を通して、何かご発言ありますでしょうか。よろしければ、私から一つ、これは私と事務局で個人的に議論したのですが、先ほどの緊急作業者というのは原子炉事故のような場合を想定しているわけですが、例えば職業被ばくの限度に達しているような方が救命に当たるときはどうなのかということを議論しました。例えば、患者さんが急性心筋梗塞で大変な状態になっている、しかし患者さんに対応できる人がいない、一人エキスパートがいるけれど被ばく限度に達している。そういう状況に対してどのように対応すればよいのか、さきほどのスーパーエキスパート話に通じるのですが、そういう方は緊急作業に従事する方とは言えないわけですね、一人の命に対応するのは緊急作業者ではないと、そうすると放置しておくのかカテーテルを入れた状態で他に回っていただくのか倫理的な問題が発生するわけですね。そういった事態に対して施行規則がどのような社会へ説明ができるのか。これはおそらく持田先生の領域でもあるのでしょうか。
○中村日本整形外科学会理事(三上参考人代理) 医師法では、求めがあった場合は医療を断ってはならないという規定がありますので、それとの兼ね合いでどちらを考えるということではないでしょうか。つまり法律論ということではないでしょうか。
○永井委員 法律とは別の議論ということですか。
○中村日本整形外科学会理事(三上参考人代理) 私は逆に法律の問題だと思うのです。どちらを優先するのか。
○永井委員 そこの見解について、事務局にお聞きしたいというのが私の質問なのですが。
○高山放射線室長 永井先生がおしゃっている医療の現場で人命を救助するために働いている医師が被ばく限度ギリギリの方しかいない状態で救急に対処するという内容のご発言かと思いますが、先ほどの緊急被ばく状況の整理から申し上げますと医療というのは一般的に計画被ばくの中に入っていまして、収集がつかない状態の中ではないと整理されているのがICRP事務局からもそのように確認されているところです。その上で先ほどのご質問に対してどのように考えるのかは、私どもで一旦整理させていただいて、また次回にご説明させていただきたいと思います。
○永井委員 ぜひよろしくお願いします。限界を超えたが故に罰則が適用されるようなおかしなことにならないようしなければならないと思います。その辺りの配慮が必要と思います。これをしっかり踏まえて議論したということにしないと後で混乱が起こると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。他にご発言等ございませんでしょうか。それでは、第4回の検討会について事務局から連絡事項等お願いいたします。
○川越放射線室長補佐 次回の予定ですが、第4回の検討会について事務局から調整させていただきますので、よろしくお願いいたします。また、本日の議事録につきましては各委員の方々にご確認いただいた上でホームページにより公開させていただきますのでよろしくお願い申し上げます。
○永井委員 どうもありがとうございました。これで終了いたします。