第81回労働政策審議会障害者雇用分科会(議事録)

日時

平成30年12月25日(火)10:00~12:00

場所

中央労働委員会 労働委員会会館 講堂

議事


○阿部分科会長 おはようございます、定刻となりましたので、ただいまから「第81回障害者雇用分科会」を開催いたします。
本日の出欠状況についてですが、中川委員、長谷川委員、松為委員、石田委員、塩野委員、三輪委員、阿部委員が御欠席です。なお、石田委員の代理として、日本商工会議所の高野氏、阿部委員の代理として日本身体障害者団体連合会の佐藤氏にお越し頂いております。
それでは、早速ですが議事に入りたいと思います。頭撮りはここまでとなっておりますので、カメラ取材の方については御退出頂くようお願いいたします、よろしくお願いいたします。
資料1と2につきまして事務局から説明をお願いいたします。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長でございます、私から本日の資料につきまして御説明させて頂きます。まず前回、12月18日の分科会におきまして、分科会長より今後の議論を進めるに当たり、論点整理を提示するよう御指示がございました。本日はお手元の資料1として論点整理(案)をお配りしております。これに基づきまして御説明をさせて頂き、また御議論を頂ければと考えております。
まず、資料1の論点整理を御覧頂きたいと思います。中身について説明させて頂く前に、まず今回、1ページ~4ページまでですが、「民間企業における障害者雇用の促進について」という論点を整理させて頂いております。また5ページ以降ですが、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針の概要ということで、これまでもお示しさせて頂いておりました概要の資料を付けております。また、この概要のところでは赤字の部分は、制度改正の検討対象となり得る箇所です。
御覧いただいてお分かりのように、5ページ以降の公務部門における論点につきましては今回、制度改正の内容につきまして検討を行っているところです。次回の分科会におきまして、改めて論点という形で公務部門の関係提示をさせて頂きたいと考えております。そのため、本日の分科会におきましてはこの資料1の1ページ~4ページまで、民間企業における障害者雇用の促進についてを中心に御意見・御議論を頂きたいと考えておりますのでよろしくお願いを申し上げます。
それでは、具体的に中身について説明をさせて頂きたいと思います。まず、資料1の1ページです。左側に現行制度に係る課題・提言・指摘、それに対応する形で今後の対応・方針ということで右側、矢印のほうに分けて整理をしています。まず左上の箱ですが、論点として、これは先日の分科会で説明をさせて頂きました、昨年1年間研究会を回して頂きまして、今年の7月30日に報告書が取りまとめられております。その中身を受け論点を整理、また前回の分科会の御議論も踏まえながら論点を整理させて頂いております。
週所定労働時間20時間未満の方に対する支援の部分を提示させて頂いております。具体的にはその左上、2段落目の「また」のところ、週所定労働時間20時間未満の就労であれば働ける者や、働く意欲を持って前向きに就職に取り組めるようになる者が一定程度見られ、結果として週所定労働時間20時間以上の勤務に移行していく者、安定的に長く働き続けられる者等も多く見られるところであるといった課題・提言とされているところです。
こうしたことを踏まえて右側の対応・方針のところ、週所定労働時間20時間未満の障害者の雇用に対して、納付金制度において評価・支援する仕組みを創設してはどうかという提言をさせて頂いております。「その場合」、具体的な制度設計の中身にも入ってきますが、支給額の単価についてどのように考えるか、また支給期間についてどのように考えるか、週所定労働時間の下限をどのように設定すべきかというところで、20時間未満の障害者の雇用に対する支援といったものを考えてはどうかということで、対応を記載しております。
続きまして2段目の箱のところです。これは中小企業における障害者雇用の後押しをするという観点から提言がされているものです。左側につきましては、中小企業における障害者雇用を進めていくためには、従来からの制度的枠組みだけでなく、個々の中小企業における社会的関心、障害者雇用に対する社会的関心を喚起し、障害者雇用に対する理解を深めていく。こうしたことを後押ししていく支援策を考えていってはどうかと提言・指摘がされております。
右側の対応・方針のところ、障害者雇用に関して優良な取組を行う中小企業事業主を認定する制度を創設してはどうか。その際、認定のメリットとして、例えば公共調達におけるメリットの付与等、どのように考えていくのかというところで整理させて頂いております。
3段目の一番下のところ、これは前回の分科会でも御議論頂きましたが、法定雇用率設定の在り方についてです。2021年4月の前に2.3%に引き上げられた後も、激変緩和措置の適用期限が到来する2023年4月の見直し等において、大きく上昇していく可能性があることを踏まえて、今後の雇用率の設定の在り方についてどのようにしていくか。
右側の対応・方針です。法定雇用率を計算式の結果に基づき設定するというこれまでの考え方がある一方、法定雇用率を段階的に引き上げることができるようにすることについて、どのように考えていくのか示させて頂いているところです。
2ページです。これは納付金、調整金の適用範囲、適用される企業の範囲の考え方について提言・指摘がされている部分です。現行、100人超の企業に対して納付金・調整金が適用されておりますが、その部分について適用範囲を50人以上という形で広げていくということは考えられないかと提言がされております。
右側の対応・方針のところ、調整金・納付金の対象企業の範囲の拡大に向けた課題を3つ提示しております。マル1企業規模や経営基盤等を勘案する必要、マル2納付金財政の持続可能性を踏まえつつ、納付金の額を引き上げる等の猶予措置の在り方、マル3報奨金の要件緩和について総合的に検討する必要がある中、対象企業拡大についてどのように考えていくのか整理しているところです。
2段目の箱のところ、調整金の支給上限額の設定についての課題・提言です。左に書いてありますように、経営基盤が比較的安定している大企業であったり、利用者ごとに障害福祉サービスの報酬が支給されるA型事業所について、支給上限額を設定することも考えられるのではないかという提言です。
右側の対応・方針のところ、調整金の支給上限額の設定について、障害者雇用に当たって特別にかかる費用と企業規模の関係、調整金とA型事業所に支給される障害報酬の関係など整理する必要性がある中で、こうした支給の上限額の設定についてどのように考えていくのかということで整理しております。
3番目、一番下の箱です。これは納付金財政の関係で提言がされているところです。納付金財政につきましては、過去におきまして単年度で収支が赤字になった時代があります。こうしたことを受けての課題・提言です。単年度収支が赤字になった場合において、赤字額の程度に応じて翌年度以降の調整金の額を減額させる仕組み等を導入することも考えられるのではないかという提言・指摘です。
これにつきまして右側の対応・方針として、調整機能が働くような制度改革を行う場合の納付金財政に与える影響等を踏まえつつ、納付金財政の持続可能性の確保に向けた方策をどのように考えていくのかということで整理しています。
3ページは除外率制度です。除外率制度につきましては御承知のとおり、法律におきまして将来的には廃止することが決まっております。こうした中で、今後の引下げについて提言をされております。左側の提言につきましては、研究会報告の中身を抜粋してきているところですが、除外率制度については特定の業種の障害者雇用に対する意欲を削がないようにするためにも、現在適用されている除外率の更なる引下げについて慎重に対応すべきとの意見も多いと書いています。
そうしたことを踏まえて、除外率制度については将来的に廃止することが決まっている中で、該当業種においても障害者雇用に対する先進的な取組が様々に見られるということも踏まえ、どのように考えていくのか、ということで対応・方針を整理しています。
2段目の箱は、雇用率制度におけるカウントの関係です。長期間にわたり雇用を継続してきた障害者について、カウントを上積みするということも考えられるのではないかということで提言がされております。
右側の対応・方針です。長期間にわたり雇用を継続してきた障害者について、カウントを上積みする措置を講ずるべきという意見がある一方で、新たに障害者雇用の促進に向けた取組を進めていく企業にとって直ちに恩恵が生じない仕組みであるといった意見がある中、どのように考えていくのかと整理をしています。
3段目の箱、在宅就業障害者支援制度についてです。施設外就労の形で業務を発注する場合の特例調整金、発注する事業主に対しての支援を行う調整金の額を上乗せしたり、一般雇用の転換に積極的な在宅就業支援団体に対する助成措置の創設でこの制度の活用・促進を図ってはどうかという提言です。
この部分につきまして、右側の対応・方針です。障害者雇用率制度が直接雇用を基本としていること、そうした中でこの在宅就業支援制度をどのように位置付け、考えていくのかと整理をしています。
4ページ目です。雇用率制度の対象となる障害者の要件ということで、障害者手帳という線引きをしておりますが、障害者の範囲について、今後は手帳ではなく、就労能力の判定等によるものとすることも考えられるという提言が研究会報告の中でもされています。
こうしたことを受けて現行の雇用率制度では、法的公平性と安定性の観点から、対象障害者を明確かつ容易に判定できるようにするため、手帳の所持ということで現行制度を行っている。こうした現行制度の取扱いを踏まえつつ、今後の対応についてどのように考えていくのかということで、対応・方針を整理しております。
続きまして真ん中の箱です。障害者に対する差別の禁止又は合理的配慮の提供に関して、苦情の申出を行ったことを理由とする不利益取扱いを禁止することが考えられるのではないかというところです。
対応・方針といたしまして、こうした苦情を申し出たことを理由とする不利益取扱いの禁止についてどのように考えていくのかということで、状況について議論をすべきと整理しております。
一番下、短時間勤務制度を設けることが考えられるのではないかという提言がされております。育児・介護休業法に規定する短時間勤務制度と同様の制度を障害者のために創設することについてどのように考えていくべきかということで、対応・方針を整理しています。
5ページ以降は先ほど申し上げましたように公務部門における概要を付け、制度改正につながっていくと考えられる部分について赤字で整理をしているというところです。以上が資料1の内容です。
資料2につきまして簡単に御説明をさせて頂きます、資料2は今後の検討スケジュールです。前回自由討議を頂き、本日が論点整理ということで、先ほどの資料に基づきまして御議論・御意見を頂くという形にさせて頂いております。また次回は、1月の中旬ごろを予定しておりますが、論点整理の2回目として、先ほど申し上げました公務部門における論点の整理も加えた形で、2回目の御議論・御意見を頂ければと思っております。また、2月にかけてか引続き開催するということでスケジュールを資料として提示させて頂いております。資料2につきましては以上です。
資料3について簡単に御説明をさせて頂きます。資料3は、本日公表をさせて頂きました「国の機関等における障害者雇用状況の集計結果」の資料を提示させて頂いております。毎年、この12月の時期に国の機関等における及び民間を含めた障害者雇用の状況の集計結果を公表させて頂いております。これにつきましては御案内のとおり、毎年6月1日現在の国・地方公共団体・独立行政法人あるいは民間企業を含めてですが、その状況について厚生労働省のほうで取りまとめて公表をしているところです。この集計結果につきましては障害者雇用促進法に基づく規定に沿って対応しているところです。
なお、今回、資料3の表紙のところにもありますが、民間企業における障害者雇用の状況につきましては大変恐縮でございますが、データ入力の作業ツールの不具合が生じておりまして、今回のこの取りまとめには民間企業の部分は入っておりません。このため、民間企業における障害者雇用の状況につきましては、今年度末までに作業を行って公表をさせて頂きたいということで対応を進めているところです。
また、今回の集計結果の状況ですが、資料の2ページです。総括表として、それぞれ国の機関、都道府県の機関、市町村機関、都道府県の教育委員会、独立行政法人を2~3ページに整理しています。
2ページ、まず1(1)国の機関をそれぞれ行政機関、立法機関、司法機関ごとに分けて整理しています。マル1からマル5として、職員数、障害者の数、実雇用率、法定雇用率達成機関の数、達成割合と整理をしております。こうした中で、全体の合計数を申し上げますと障害者の数、国の機関におきましては3,902.5人となっております。その下の括弧のところ、3,711.0人とあり、これは昨年の平成29年6月1日の状況の数値となっております。それから若干障害者の数が増えております。
実雇用率につきましては1.22%、法定雇用率が2.5%ということですので、法定雇用率よりも低い数字となっております。昨年の平成29年6月1日の状況は1.17%ということです。
次に(2)都道府県の機関ですが、これにつきましては障害者全体、都道府県知事部局とその他の都道府県機関を合わせた障害者の数が8,244.5人となっております。これは昨年の平成29年6月1日の状況と比べまして若干人数が増えております。実雇用率につきましては2.44%ということで、法定雇用率は下回っておりますけれども、平成29年6月1日の数値よりは上回っているという状況です。
続きまして3ページです。(3)市町村の機関です。障害者の数につきましては2万5,241.5人で、下に大変小さな字で※がありますが、東京都の特別区の状況については、その内容について現在確認を行っているところであり障害者の数には入っていないという状況です。実雇用率につきましては2.38%という状況になっております。
(4)都道府県の教育委員会ですが、都道府県と市町村を合わせまして実雇用率だけ申し上げますと1.90%、法定雇用率が教育委員会は2.4%となっておりますが、それより下回っているという状況です。
次に2の独立行政法人等における雇用の状況です。実雇用率の部分だけ紹介させて頂きます。実雇用率2.54%で、法定雇用率を上回っている形になっています。
一点、5ページは、詳細表になっておりまして、先ほど申し上げました国の機関における個別、もう少し具体的にそれぞれの障害者の数等を整理しているところです。この部分で5ページの下のところ、今回初めて国の行政機関における障害の部位別の雇用身体障害者数を記載させていただきました。
あわせて、それぞれ詳細な表を付けさせて頂いております。また、10ページ以降もそれぞれ国の機関ごとの状況であったり、都道府県の機関ごとの状況といったものも記載をしておりますので、御覧頂ければと思っております。簡単ですが以上です。
○岸本総務課長 お配りした資料の15ページから、各独立行政法人等の状況が文字化けしております。正式の公表版は適切なものになっておりますが、お配りしたバージョンに不具合がありました。申し訳ございません。会議中に配り直します。
○阿部分科会長 それでは、ただいま御説明いただいた点に関して、質疑、応答に移りたいと思います。御質問、御意見がありましたら、視覚、聴覚障害者の方々の皆様への情報保証の観点から必ず挙手をしていただいて、私の指名したあとにお名前を名乗ってから御発言いただくようお願いいたします。
それで今資料1~3と、それぞれ説明を受けたわけですが、ちょっと順番を逆にさせていただきまして、まず資料3のほうに関して何か御質問や御意見がありましたら、承りたいと思いますがいかがでしょうか。竹下委員どうぞ。
○竹下委員 ありがとうございます。竹下です。資料3の先ほど課長が、今回国の機関については部位別の障害者雇用数を出しているというけども、見方、一生懸命見ているのですが、どれを指すのですか。例えば私は、部位別で言えば例えば視覚・聴覚・肢体とか身体でいえばですね、いうことが当然前提かと思うのですけど、ちょっと見つけられないのですが、どれを指しているのでしょうか。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長でございます。資料3の、ページ数で言いますと5ページ目を御覧いただきたいと思います。5ページ目の一番下の参考と書いている部分がありまして、国の行政機関における障害部位別の雇用身体障害者数です。行政機関ということで計1,943人、視覚障害者が121名、聴覚、音声機能等障害者が118名、肢体不自由者が890名、内部障害者が814名です。実人数で整理をさせていただいております。
○竹下委員 分かりました。確かにありました。どうもありがとうございました。
○阿部分科会長 ほかに。佐保委員どうぞ。
○佐保委員 労働側委員の佐保です。各市町村の状況については、都道府県労働局のほうに25日付けで公表されているのかどうかということを、1点確認させていただきます。よろしくお願いします。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長でございます。おっしゃるとおりでございます。各市町村の状況については、それぞれの都道府県の労働局のホームページに記載をしています。
○阿部分科会長 ほかにいかがですか。本條委員どうぞ。
○本條委員 みんなねっとの本條でございます。この度の都道府県、市町村の資料が出てきたわけですが、前回、市町村とか都道府県のほうは比較的雇用率を達成しているということでありましたけれども、そのときは詳細な結果が出ていないということでありましたので、今日改めまして質問させていただきます。この結果を、まだ分析はされていないと思いますが、感想だけで結構ですが、国が非常に大きく下回っているということについて、御感想をお聞きしたいと思います。
○阿部分科会長 では事務局お願いします。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長でございます。先ほどもご説明の際に申し上げたところですが、国の今回の実雇用率が国の機関全体で申し上げますと、1.22というところですが、都道府県の機関の実雇用率が2.44、市町村の機関が2.38、また、都道府県の教育委員会については、1.90で少し地方公共団体の中では低いところではありますが、こうした数字を見ますと、国の機関よりは実雇用率が高い状況となっているところです。ここの分については、それぞれ自治体、各自治体のこれまでの御努力ということで、成果の部分もあってこういう数字が出ているところです。他方で法定雇用率を達成していないという状況は変わりありませんので、これは国よりは数字は高い状況でありますが、都道府県、市町村においても、今後とも法定雇用率の達成に向けて御努力をしていただくことが必要かと思っているところです。他方で国の機関におきましては、今申し上げましたように1.22ということで、状況としてはかなり法定雇用率を低く下回っているところですので、これも基本方針が今年10月23日、関係閣僚会議の中で決定されていますので、公的機関法における基本方針に記載されている内容をしっかりと取り組むことによりまして、まずは法定雇用率の速やかな達成、その後の障害者雇用の方の定着ということをしっかり対応してやっていくことが肝要になってくるかと思っております。以上です。
○阿部分科会長 ほかに質問よろしいですか。資料3については、また最後に時間があれば御質問、御意見を承りたいと思います。
それでは、本日事務局に整理していただいた論点がありますので、資料1に関連して御質問、御意見があれば御発言をお願いいたします。遠藤委員どうぞ。
○遠藤委員 ありがとうございます。経団連の遠藤と申します。資料1の1ページについて2点申し上げたく思います。3つの囲みがありますが、上段の部分です。週所定労働時間が20時間未満の雇用についてどう考えていくかということですが、20時間未満の雇用の状況が、どのようなものであるのか、未だ不明の部分が多々あります。したがって当面は給付金という形の新たな制度創設で対応していくことは、妥当ではないかと考えます。
では下限をどこまでにするのかということですが、例えば有識者研究会の中で週4時間の事例が出てまいりました。1週間のうちに4時間となってまいりますと、それは、そもそも他の労働者が対応できる時間数ではないかと考えるのが経営者ではないかと思います。雇用政策として考えていく必要があると思います。その場合には、短時間のトライアル雇用が10時間から始まっていますので、その数字を見定めた形での下限設定が必要ではないかと思います。
続けまして、3つ目の囲みですが、法定雇用率の在り方です。現行で申し上げれば、所定の計算式に基づいて小数点第2位以下をカットする形で法定雇用率が5年ごとに決まってきております。このような考え方については、見直しが必要であると思います。どのように変えていくのかということですが、2018年4月以降の1回限りということで導入された激変緩和の仕組みを、恒久的にしていく必要があるのではないか。具体的には、一定の場合に限って、柔軟な対応をこの審議会の中で決めていくという仕組みが必要ではないかと思います。
では、一定の場合とはどのような場合なのか。少なくても3つほど想定しております。1つ目は、全体としての法定雇用率の達成企業割合が5割に達しているかどうか。19年ぶりに5割に達したというのが2017年6月1日の時点ですが、今後、高い水準を考えていきますと、5割は並大抵な数字ではないと思います。今までは1,000人規模以上の企業が牽引役となっておりましたが、この高い水準にあっては、牽引役を担うのも難しい状況にきているというのが企業の声であります。今後は、雇用ゼロ企業などの底上げが、是非必要になってくると思います。
2つ目ですが、2期続けて2018年4月以降は引き上げられました。2023年4月以降は、まさに3期続けてということになるのではないかということで、企業側としてはとても心配しています。一定の準備期間が必要だということを考えれば、2期続けて連続で引き上げていく場合についても、激変緩和の仕組みが必要ではないかと思います。
3つ目ですが、向こう5年間の実雇用率として、どの程度まで引き上げられるのかという見通しを立てていくことが、今後の展開の中では必要ではないかと思います。今申し上げたのはあくまで例示ですが、一定の場合に限って、激変緩和という仕組みを発動できるように法定していく必要があると思います。
○阿部分科会長 ありがとうございました。遠藤委員から、大きくは20時間未満の短時間労働について、それから法定雇用率に関しての激変緩和措置を恒久的にという御意見を承りました。竹下委員、どうぞ。
○竹下委員 竹下です。まず遠藤委員の指摘された法定雇用率が上昇する場合の激変緩和については、私はそれ自体は必要なことだろうと思っています。なぜかといえば、企業にとって準備期間というものもありますが、予測ということを考えた場合に、どういう状況が生まれるかは、当然現在の計算式ではじき出すというか、算定された数字が出た段階でしか見えてこないわけです。それが出た時点で、そこにどういう状況が予測されるかを分析しながら、激変緩和すべきだろうと思っているわけです。したがって、ただそれを法定化するということには、少し疑問を持ちます。
なぜかと申しますと、法定化するというのは、嫌な言い方ですが固定化してしまうことになりますから、それ自身が窮屈であって、果たして算定した時点での内容とのバランスの問題でまた議論が出てくるというのは、余り合理的ではないと思えるわけです。したがって、今回のように激変緩和を政令ないしは法律事項以外で処理したことは、極めて妥当性があったのではないかと考えるのが、1点目です。
2点目は、除外率制度のことが非常に気になります。除外率制度は、ノーマライゼーションの観点から、正に廃止すると一旦決めたわけです。これを、いわばもう一遍方針を変えるとなるなら、正に国の方針がそう簡単にひっくり返っていいのか、朝令暮改と評価され兼ねないようなことをしていいのかと思うわけです。その点で、除外率制度を下げていくのに、何が問題になっているかを議論することこそが必要で、さらには除外率を下げたときに出てくる問題点に対する手立てというか手当を併せて行うことが必要であって、除外率制度を廃止する方向性を変えてはならないと思います。
3点目は、調整金の上限というのは、何となくそうだなとは思います。怖いのは、A型就労事業所の問題です。現在でも、A型就労事業所がどんどん潰れています。この間、厚労省も発表しておりますが、1年間、単年度にハローワークが報告した障害者の解雇率は、去年の1.5倍に達しているわけです。多分この要因は、私が全て分析したわけではありませんが、大半はA型事業所の事業廃止ではないかと、率直に思うわけです。そうすると、この上限を設けることには反対というまでには強くは思っていないのだけれども、A型事業所が更に加速度的に潰れる、あるいは障害者の就労場所が失われていくのではないかということを懸念しています。
それから、長期間にわたり雇用された障害者のカウントの問題です。これは、本当に慎重に考えていただきたいと思うのです。なぜなら、常勤雇用で雇われた障害者が長期に就労することが当たり前、いわば前提とされているはずですよね。まさか、障害者の雇用は5年、10年が前提であって、少なくともそこは有期というもので考えている人はいないと思うのです。それなのに障害者に限っては、長期就労者については、例えばカウントを1.5にするという話になるというと、果たしてそれは理念的にどうなのかというのは、1つ思うわけです。さらには、そういうことをやってしまうと、逆に障害者の就労の場が減っていくわけです。すなわち、例えば長期就労している人が増えてきた。それによって、それが全部1.5倍に簡単になっていけば、それだけ新規の障害者雇用の機会が減っていくわけです。それは、やはり政策的にまずいのではないかと思うわけです。以上です。
○遠藤委員 竹下委員から御意見を頂きました。どうもありがとうございます。まず激変緩和の部分ですが、これは13年改正のときに附則という形で法定化したことによって、18年4月以降に1回限りで対応できたことは事実ですので、恒久化するのであれば政令だけで見直すのは難しいと思います。
除外率の部分については、以前から御指摘されていますように、廃止という方向性、これはノーマライゼーションであれ、技術革新であれ、いろいろ背景があってのことと理解しております。ただ現状を見てまいりますと、高い所での作業、暑い所での作業、あるいはお客様を運ぶ運転手といった形で、障害者の方々がその職に就くのは難しいであろう職種が現状も残っていることは、事実です。そういう中にあって、経過措置も、一定割合残しておくというのは、政策として必要ではないかと思います。ただ、竹下委員がおっしゃっているように、将来的にどう変えていくのかということについて議論していくのは、必要かと思います。
3点目は、長期継続雇用についてです。これは私どもが従来から主張していることですので、その中身についても説明させていただければと思います。資料1の3ページの真ん中です。「カウントを上積みする措置を講ずることも考えられる」ということですが、反対の御意見も強いですので、簡単に仕組みだけを説明いたします。障害種別を問わない政策と、障害種別に応じた政策の2本柱で御提案させていただいております。障害種別を問わない政策については、週30時間以上で一定期間以上雇用された場合、更なる長期継続雇用を図っていただくために、職場環境をより改善していく必要があることを、事業主側に促していくという意味合いで、カウントの上積みが必要ではないかと申し上げているわけです。
この一定期間というのは政策によって、ある程度目指すべき長い期間を置くことができると思います。実態調査の平均勤続年数の倍といった数字を置いてもいいのであり、企業はそれに向かって更なる職場環境の改善に取り組むといった効果が見込まれると思います。
次に、障害の種別に応じて、分けて御提案させていただいております。精神の場合は、状態が安定しないので、どのような状況下においても30時間以上働いていた人が30時間を下回っても、1.0のカウントにすべきではないかと思います。18年4月以降の時限的な対応ではなくて、これは恒久的に必要であると思います。現場から聞こえているのは、精神障害者の方の労務管理というのは、時間の長さでは測れない。時間が短いからといって簡単なものではないという声が、強く届いているところです。身体、知的の場合については、実態調査の平均勤続年数でいえば10年、8年ですが、これを更に長くすることを考えたときに、高齢期を向かえて、あるいは障害の状態が変わって、週30時間以上の労働ができなくなったという場合は、本人の承諾を得た上で短時間の労働に移ったとしても、従前のカウントのまま働き続けることができるようにすべきではないか、これが御提案させていただいている中身です。
いずれの場合についても、障害者の働き方の選択肢を拡大し、拡大に向けて事業主が職場環境を整える、そのための政策の方向性として打ち出しているものです。
○桑原委員 労働側の桑原です。今、除外率について竹下委員、遠藤委員からご意見ありましたので、そこに関して意見を述べさせていただきます。労働側としても、やはり将来的な廃止に向かっていくべきだろうと考えております。ただ、将来的な廃止とうたっていながら、これだけ長い期間廃止に至っていないということでいえば、竹下委員がおっしゃるとおり何が課題なのかとか、それに対してどう対応するのだという議論をしていかなければいけないと思っています。また、諸外国等の除外率に該当する業種での対応なども参考にすることも必要だと思います。遠藤委員も、議論をしていくことは必要だとおっしゃっておりましたので、やはりこれだけでも議論の対象にして、しっかり時間をとってやっていかなければいけないと思います。これを議論するというような予定表、タイムスケジュールをとって、進めていければ良いのではないかと思っております。以上です。
○内田委員 労働側の内田です。1ページ目の箱の1つ目と2つ目について、意見を述べさせていただきます。短時間でも就労することは、障害者の社会参画促進の観点からは、大変有用だと考えます。先ほど遠藤委員からもありましたが、障害者短時間トライアルコースでは、週10時間以上から勤務が認められておりますので、週10時間以上の勤務について検討してはどうかと思います。
2点目は、真ん中の箱になりますが、認定制度の創設自体については、特段の異論はありませんが、研究会の報告においても具体的な内容は示されておりませんので、今後事務局が想定されている制度の基準やメリットなどの具体的な内容をお示しいただければと思います。以上です。
○岡本委員 労働側の岡本です。先ほどの竹下委員と遠藤委員の議論に関連して、少し発言をいたします。まず1ページの激変緩和の件についてですが、前回も意見をさせていただいたとおり、受け入れる職場の観点からも、恐らく障害を持って実際に働く方の観点からも、急激に人数を増やせば良いということではないという意見は持っているところです。そのため、法定雇用率の段階的な引き上げなどの激変緩和措置については、ある程度の考え方を整理する必要はあるだろうと思います。ただ本日、激変緩和措置の恒久化についてのご意見が遠藤委員から出されましたが、恒久的ということで、法令などで固定化するということについては、実際にどのような形で雇用率が推移をしていくのかということも見なければいけませんので、そこについては慎重にすべきだろうということです。
もう1点は、長期間にわたる雇用継続のカウントについてです。私どもとしても、例えば高齢化などの時間的推移によって、企業側に追加的な配慮の努力が求められるといったことが想定されることについては、理解をしているところです。しかし、いたずらに雇用期間が長ければ大変なのだということではないのだろうと思います。先ほど、遠藤委員が2点ほど整理をされておりましたが、後段のほうの、いわゆる働いていく中で本人の状態が変わっていくということについてどうするかについては、議論が必要ではないかと思います。いずれにしても、カウントの変更は大変慎重にすべき問題なので、意見書の取りまとめのために2月までに意見をまとめるといったようなことではなくて、きちんと時間をとって議論すべきだと思うところです。以上です。
○佐渡委員 使用者側代表、愛媛県ビル管理協同組合の佐渡です。先ほどの新たな認定制度に関してです。当然、認定制度を作るに当たっては、取得要件等が出てくると思います。その中に、是非とも20時間未満の雇用数の加味。また、それぞれ中小企業団体では、就労につながる独自の取組をしている企業団体もたくさんあろうかと思いますので、その辺りのことも十分に加味していただきたいです。
認定制度の新たな創設ということになると、そこに優先調達法の絡みも出てまいろうかと思いますので、優先調達先に新たな制度を取得した企業団体を入れる。また、入札制度の中で、案件によって参加資格要件の中に、そういった制度を取得した企業団体を取り入れていくといったようなことを、是非お願いしたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 ほかにいかがですか。
○本條委員 みんなねっとの本條です。先程来、短時間労働といいますか、超短時間労働について御意見がありましたが、皆さんの意見と同様です。やはり、10時間程度以上は、何らかの制度化をしていくべきだと感じております。ただ問題点は、納付金制度よりも、むしろ現在のところは週20時間以上30時間未満を0.5としておりますが、その辺りを根本的に考えていって、きちんと雇用と見なすという方向性のほうがいいのではないかと思っております。
それから、週20時間以上30時間未満については、議論の論点に入っていないわけです。先ほど、遠藤委員からもお話がありましたように、精神障害者の場合は訓練、あるいは支援をすることによって、必ずしも向上していくものではなくて、訓練をしても長時間働けるようになる方もいらっしゃいますが、そうならない方もいらっしゃるわけです。その辺りを、20時間がいいかどうかは別にして、恒久的な制度にしていくべきだと思っております。
それから、4ページの育児・介護休業法に規定する短時間勤務制度について、質問です。この短時間勤務というのは、当然そうだと思うのですが、週20時間以上30時間未満なのでしょうか、当然そうだと思うのですが。
もう1つの質問は、3ページの一番下の枠に書いてある障害者支援施設というのは、ここには出てきていないのです。出典までは指摘できないのですが、ここの対象は主に就労移行支援をやっている所が中心で、B型であってもそのような就労移行に熱心といいますか、成果を上げている所が対象であるというようなことをお聞きしたのですが、その確認です。
もう1点は、除外率が下がっているとか下がっていないという議論がありました。この制度そのものを、もう少し素人でも分かるように、除外率というのはそういう職種については除いて計算するという意味なのか、そういう職種がある所は結果的には同じぐらいになると思うのですが、除外率を下げるのか、いや、雇用率を下げるという制度なのか。つまり、障害者が非常に難しい仕事そのものに携わっている人を減らすだけなのかどうかを、御質問いたします。
○阿部分科会長 本條委員から質問が3点ありましたので、事務局から説明をお願いいたします。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長です。短時間勤務制度ですが、これは育児・介護休業法ということで、論点の所に規定されております。この育児・介護休業法に規定する短時間勤務制度でいいますと、原則、週の労働時間として6時間程度を見込んでおります。先ほど委員から御質問がありましたが、20時間以上30時間未満とは必ずしもリンクするということではありません。
2点目は、在宅就業者支援制度の施設の就労の関係です。この部分は、データ等を次の分科会に向けて整理をさせていただき、どういう所が対象になっているのかをしっかりお示ししたいと思っております。
3点目の除外率制度の関係です。恐縮ですが、参考資料2、障害者雇用対策の基本事項を付けております。その中の除外率制度の27、28ページを御覧ください。この参考資料に、除外率制度についての説明を記しております。ここに書いてありますが、除外率制度の2を御覧いただきますと、「機械的に」という所で「一律の雇用率を適用することになじまない性質の職務もあることから、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について」、実際に雇用率をそれぞれの企業、会社、事業主の方が計算をする際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度を設けているところです。実際の労働者数に除外率を掛けるということで、除外者数になってくるわけです。それを分母として計算する際に、控除して計算を出していただくという仕組みです。
また除外率の関係ですが、実際に28ページにそれぞれ除外率が設定されていますが、業種ごとに率が違っているという状況があります。この率については、引き下げが行われてきていることも少しありますが、平成16年4月と平成22年7月に、それぞれポイントの引き下げを実施してきているところです。考え方、計算式としては以上になります。
○阿部分科会長 本條委員、よろしいですか。
○本條委員 はい。
○小出委員 育成会の小出です。週の所定労働時間20時間に関してです。かつて、自立支援法でA型、B型、悪しきA型事業所という呼ばれ方がありました。要は、使用者側で制度を悪用するということがありました。ここで少し懸念するのは、所定労働時間が20時間未満ということになると、これは安易に雇用者側が雇用をするということになってしまわないかなと。というのは、週の労働時間によっては社会保険を課さなくてもいいということで、雇用者側にしたら安易な雇用につながると。この20時間未満での雇用対象となる人たちは、精神が増えたり良い方向にいきますが、片やそういう所が出てきはしないかと。当事者としては、今までの経緯でちょっと心配するところがありますので、その辺りをどう監視していくか。健全な雇用につなげていくような形で、制度を作っていっていただきたいと思っております。
それから、激変緩和は今までもありました。この4月からの民間の雇用率が2.2になったことで、いろいろな問題が発生しております。数だけそろえるというようなことも、その都度生まれてきますので、当事者側としては余りにも高い数値を示すのは、どうかなと思っております。その辺りの御検討を、よろしくお願いいたします。
○高野代理 石田委員の代理でまいりました、日本商工会議所の高野です。中小企業の雇用促進に向けて、本年4月の法定雇用率の引き上げを1つのきっかけに、商工会議所でも情報提供に努めているところですが、まだまだ中小企業経営者の意識改革が一番難しいと思っています。その中で、資料1、2ページ目の最初の箱の雇用調整金や納付金について、意見を申し上げます。こちらの納付金制度の対象拡大については、慎重に検討していただきたいと思います。障害者雇用の土壌づくりから丁寧に意識改革を促していかないと、経営者は雇用できない、納付金を払えばいいやと諦めてしまって、本来目指すべき雇用が進まないのではないかということを、大変心配しております。
例えば、未達成企業であっても、障害者雇用に関する研修を受けるとか、職場実習を受け入れる。またハローワークに求人を出して紹介を受けたですとか、採用には至らないものの採用に向けた行動を取っている中小企業に対しては、納付金を免除するといった配慮も御検討いただきたいと思います。以上です。
○佐保委員 労働側委員の佐保です。先ほど、竹下委員が御発言された中で就労継続支援A型がつぶれていっているといった御発言があったと思います。それについては、私も問題があるのではないかなと考えていますが、この要因の1つとして、今年4月に行われた障害福祉サービス費の報酬改定、こういったものが挙げられるのではないかなと考えています。いずれにしても、つぶれていっている原因については、私どもとしてもしっかり検証したいと思っています。私の出身組織である自治労においても、この改定の検証等を行うこととしています。
そういったことを前置きした上で、2ページの2つ目の箱の部分ですが、研究会報告書にも記載された納付金の財政上の制約の問題や就労継続支援A型が障害福祉サービス報酬の対象とされているということ、事業所数が近年の傾向として急増していることも踏まえれば、給付金の支給上限額の設定といったことや、支給の対象となる事業所の見直しを行うといったことは妥当ではないかと考えています。以上です。
○遠藤委員 経団連の遠藤です。ただ今、佐保委員からお話がございました項目についてですが、資料で言うと2ページの部分、2つ目の囲み、3つ目の囲みです。単年度の収支状況に応じて、調整金の額を変えていくということですけれども、納付金の財政に多大な影響を与えているのは調整金の支出です。直近でも支出の6割、過去を見ると8割といったような時代もありました。今後とも調整金が、支出割合の中で大層を占めることを考えれば、やはり上限設定といったものが必要ではないかと思います。研究会報告書の中で、調整金の額の根拠になっている一人当たり雇い入れる場合の特別費用は、一定人数を超えれば低減していくという考え方自体は妥当ではないかと思いますので、上限を設定するということは、是非、今回の見直しの中で実現すべき内容ではないかと思います。
○桑原委員 労働側の桑原です。今、調整金、納付金の話がありましたので、そこについて関連して意見を言わせていただきます。いずれにしましても、雇用促進に対する資金的な支援というのが調整金ということで、納付金制度の中でしかないということで言えば、そういう制度を維持するためには、何らかの上限などを含めて調整をしていかなければならないということは、やむを得ないと思っています。ただ、本来は障害者雇用の支援をするということであれば、納付金制度だけに頼るのではなく、国も予算を確保して雇用を推進していくということが、必要なのではないかと考えています。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。ほかに。
○村上委員 労働側の村上です。先ほど本條委員から、御質問があった資料1の4ページ目の育児・介護休業法に規定する短時間勤務制度と同様の制度というところについて、私が前回も申し上げた話ですので、どういうことをイメージして発言したのかということを申し上げます。
現在の雇用率制度の週所定20時間以上30時間未満というような短時間の基準とのリンクは考えておりませんで、例えば、中途で障害になられた方がフルタイムで働いていたのだけれども、6時間勤務にしたい、週3日勤務にしたいといった場合があることや、あるいは障害をお持ちでその程度が変化されて重くなって、より短く働きたいというようなときに、合理的配慮の提供の所で実際の運用上では対応されていることだとは思うのですけれども、法律上、仕事と治療の両立というようなことも併せて、短時間勤務の制度を申し出ることができることを記載しておくことで、今後、よりたくさんの方々が働き続けられるようになるのではないかという問題意識から申し上げたことです。
2点目に、本條委員、遠藤委員からもありましたけれども、精神障害者の方の短時間勤務のカウントの問題についてです。様々な御指摘があるところは、理解はできるのですが、今回、精神障害者の方について、定着の状況が悪いということこら、時限的な措置として入れたところです。定着率への効果が実際にどうだったのかということを見ないと、それを恒久化するという話にはなかなかならないのではないかと思っています。もう少し様子を見たらいかがかということです。
また、納付金の問題で資料1の2ページの一番上の箱の所です。調整金・納付金の対象企業の範囲の拡大の部分については、商工会議所の高野代理から御指摘がありました。私どもも確たるものを持っているわけではないのですが、納付金の対象範囲を拡大すれば、すぐ障害者雇用が進むということになるのかならないのかということは、少し慎重に考えたほうがよいと思っています。将来的には適用範囲を拡大していくというということが必要かと思っていますが、おっしゃるように意識の問題もあります。まずは、中小企業での受入体制の整備が、重要だと思います。
障害をお持ちの方と一緒に働いていていく職場にしていくのだということの理解がないとなかなか進んでいかないのではないかと思います。支援機関などとの関係の構築や就労支援の機器などに対する周知啓発も必要です。まず、先ほどおっしゃっていたような職場見学など、様々な機会がありますので、それらのことを、障害者を雇用するノウハウを持たない企業の皆さんに、より支援をしていくといったことをやっていくべきではないかということで、今回の議論とは別に、もう少し時間をかけて議論をしていくことが必要ではないかと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがですか。
○遠藤委員 経団連の遠藤です。4ページで、ただ今、複数の委員からお話がありましたが、2つ目の囲み、3つ目の囲みについて、見解を申し上げたく思います。苦情の申出に対する不利益取扱いの禁止については、皆様、御存じのとおり、自主的な解決に向けた努力義務が法定されているので、更にこのような枠組みを上乗せしていく現状があるのか、正直、実態が分かっておりません。どのような場合が不利益取扱いなのかといったことも含めて、今後、継続的に見ていく必要があるのではないかと思います。前提として、不利益な取扱いがあってはならないというのは、労使双方一致してのことかと思います。
次に、3つ目の短時間勤務ですけれども、始業・終業時刻の繰上げ、繰下げも含めて、合理的な配慮の枠組みの中で現状行われている事例が幾つも紹介されています。就業規則の中に書いていくと、ある程度ルール化されてしまう、柔軟性が奪われることになり、現場の中で状況を見定めて対応していくのが、むしろ有り様としては必要ではないかと思います。ただ、この件についてもそういう柔軟な仕組みが、現場の中では浸透していないといったことがあるのであれば、さらに進んだ政策を打っていくことが必要ではないかと思います。
今回の論点には具体的に挙がってきてはいませんけれども、有識者研究会の中で提案されたことを、1つ御紹介させていただければと思います。それは地域の就労支援ネットワークの再構築です。障害者就業・生活支援センターをハブという形で機能を拡充して、連携をさらに強化するという枠組みです。私どもとしては、大賛成です。
ただ、その場合に幾つか追加的に御提案をさせていただければと思います。1つは、どんなにネットワークを構築してもその仲立をしていくコーディネーター役といった人材が足りなければ、十分機能しないということです。例えば高齢者施策を見ても言えるかと思います。コーディネーターを育成していく、コーディネーター役を地域の企業が買って出た場合については、そういう方々を支援していく枠組みも必要ではないかと思います。さらには民から民への協力体制です。ノウハウを持っている企業からノウハウを持っていない企業に対して、支援していく。支援つながりの中で民間支援していくというのが、新たな展開としては必要ではないかと思います。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。
○村上委員 どなたからも御発言がないのですが、資料1の4ページの一番上の箱の部分についての意見を申し上げます。手帳所持者の雇用義務についての話ですけれども、私どもとしては手帳のみにかかわらず働きづらさを抱える方々に対しても、一定の支援が必要だと考えています。ただ、研究会の中でも議論があったようですけれども、障害者手帳制度によらない雇用促進、支援の方策については、専門家などの方々も入っていただく中での検討会などを設置して、中長期的な議論をしていただく必要があるのではないかと思っています。今回、どう考えるかと言われてもなかなか答えは出しづらい問題ではないかと思っていますので、是非、一段落したところで検討の場などを設置していただいて、その問題に特化して議論していただくことが必要ではないかというところです。またその際に併せて、今、働いていらっしゃる障害のある方の不利益にならないように配慮しつつ、働きづらさの程度に応じた支援も可能になるように、就労能力や職業適性に関する判定の在り方についても、併せて御検討いただければと思います。以上です。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長です。先ほど、遠藤委員からお話がありました地域の支援機関のネットワークの関係です。この関係について、研究会報告の中で遠藤委員がおっしゃられたとおり、地域の支援機関、ネットワークのハブということで、障害者就業・生活支援センターの支援の強化といったことが提言もされているというところです。厚労省としても、障害者就業・生活支援センター、障害者就業・生活支援センターの機能強化といったところについて、予算ということで、対応を考えているところです。具体的にはその障害者就業・生活支援センターにおいて、生活困窮者の方の中でも障害を伺われる方もなどもいらっしゃる。そうした間口もちょっと広げながら、就労促進に当たって関係機関との間の連絡も含めた、そうした取組を行う担当者も配置をし、それと先ほど話がありました他の地域の支援機関に対して、その障害者就業・生活支援センターが持つノウハウを提供していくと。そうした観点からの取組も、今後、進めていきたいということで予算も含めて対応を図っている、進めているというところですので御紹介をさせていただきました。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。では、遠藤委員、小出委員の順番でいいですか。
○遠藤委員 経団連の遠藤です。先ほど、小出委員がおっしゃった20時間未満の雇用に対して、特例的な給付という仕組みを進めることについて、懸念が示されました。この点については、私どもも会合の中では指摘がされております。本来は20時間以上で働くことができるにもかかわらず、20時間未満という雇用の枠に押し込められてしまう恐れがあるのではないかという指摘でした。対応として、医療機関あるいは判定機関ということでもよろしいのかもしれませんけれども、現状は20時間以上の労働ができないという御墨付をもらった形で、対応していくというのが考えられうるということでした。これは徹底すると、そこで費用がある程度、発生することもありますので、その辺をどういう形でバランスを取っていくのか、議論の余地があるかとは思います。
○小出委員 育成会の小出です。村上委員からありました、手帳についてなのですけれども、この4ページで左の四角の中には、雇用制度に対する身体障害者の範囲についてという、身体障害者ばかりではなく障害者手帳ということを、知的障害者ですと療育手張ということになっていますけれども。そういう療育手帳そのものが、国の制度ではないということ。都道府県によって、制度が若干違う点もあるということ。そういったまちまちなところがあるという、そういう上に立って、この原則として障害者手帳を所持していること、そういうことを基準にするということ、そのものがいいのかどうかということです。根底が不安定なところにあって、しっかりしていない制度について、この手帳を所持することということを重視する、そのものが合理的なのかどうかという、そういう気がします。
ちなみに私は静岡県ですけれども、療育手帳B-3というのがあります。B-3は療育手帳ではありますけれども、知的障害ではないという証明なのです。発達障害という証明ということになって、その療育手帳のB-3を持つことによって、特別支援学校の知的障害者の高等部に上がれないということも出てきています。そういうことで、ちょっとこの辺のところをもう少しこの手帳については、慎重審議ということが必要ではないかと思っています。
○本條委員 関連です。みんなねっとの本條です。この4ページの一番上の段は、研究会において私が発言したわけですけれども、小出委員からお話がありましたように、知的障害者の療育手帳というのは知的障害者福祉法に基づくものではないわけです。それから、精神障害者の規定についても、障害者総合支援法でいきますと、必ずしも手帳ということにはなっていませんので、確かに障害者雇用促進法の法的公平性や安定性という観点からすると、右のような御議論になるかも分かりませんけれども、大きく言えば障害者に関する法律の法的公平性や安定性から言うと、かなり問題があるのではないか。やはりここは、きっちり議論をして障害者の定義、これはこの分科会で決めることではないかと思いますけれども、きちっと障害保健福祉部等と話合いをすること、あるいは社保審とも連携してきちっと議論していくべきだと思っています。
私は精神障害者の保健手帳を持っている人は、精神障害者の3割程度でしょうか。そういうことから言うと、自立支援受給者証というほうが実態に沿っているのではないかと、こういう思いから提案したわけです。以上、補足説明させていただきました。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
○小原委員 大阪大学の小原です。議論を伺っていて、私自身はジョブマッチングの研究をしているのですけれども、結局、議論が最後に詰められないのは、実態が把握できていないことが最大の問題だと思います。全てのことにはメリットともちろんデメリットがあります。例えばジョブマッチングにしても、長期的なマッチングのほうが大事か、それとも最初はとにかく就職させることが大事かという、短時間でも就職させることが大事かという議論があります。両立するのかもしれないし、どちらかを取ればどちらかが駄目なのかもしれない。そういう実態がとにかく分かっていないことが、自分自身への戒めも含めてなのですけれども、問題だなと思います。
特にこのテーマに関して言うと、恐らく行政上のデータの開示も、研究上のデータ解析も、それほどたくさん進んでいない分野ではないかと思います。例えば、女性の労働であったり、若者の雇用の問題であるなどは、研究テーマとしても取り上げられることが多く、分析は進んでいるような気がします。障害者については、触れられずにこられたテーマです。私が議論のどこかに1つぐらい答えられるかなと思ったのですけれども答えられない。基礎データとして、先ほどの20時間も何らかの理由で「20」を取り上げたのでしょうけれども、実際はどうなのか、20以外はどうなっているのかも分からない。分科会長も同じ分野でいますけれども、恐らく基礎データとして本当のところどういう実態になっているかが、分からない状態なのかなと思います。分析はとても難しくて、労働需要側と労働供給側の両方を見ないといけない。どちらかの専門家だけの議論では、多分実態がわからないです、仕事のマッチングの話ですから。
今日、伺っていてこういうところを実態調査として詰めていけば、政策を次のステップとして細かく議論するために重要なのだろうなということが少し見えてきました。恐らく厚生労働省の側からも、そういう実態把握を促す取組ができたら良いなと思います。中立的な立場にある人に、データの開示などをすれば適切に研究できるグループが出てくるかもしれないです。
自分自身への反省も含めて、今、言っています。テーマを限定して政策側が実態把握をする努力をすることができればよいと思います。データはそんなに簡単に出てこないですが、企業の中には実態把握のためならば参加してくれる企業が、その調査に協力していいよという企業があるかもしれない、求職活動にかかわる団体や、障害者団体のほうでも協力していいよというところがあるかもしれないです。厚生労働省の仕切りで、そういったものが調査研究として盛り上げられるといいのかなと思いました。すみません、感想までです。
○阿部分科会長 小原委員の御指摘の点は研究会報告にも載っておりますので、これについてはこの審議会の場でも、もっとより詳細なデータをということは委員の皆様からも御依頼はありました。今回、いろいろと皆様のお話をお聞きして、やはり現状が分からないといった御発言も何回かありました。やはり政策を考える上では、現状がどうなっているかという分析をした上でやるべきだろうということだと思いますが、それはそのとおりだと思います。
もし、ほかに皆様からなければ、今日ここで頂いた御意見を、今ここで整理するということではないのですが、ただお聞きしてちょっと時間を掛けて議論していったほうが、よりよい制度につながる面もある論点もあります。ある程度、皆さんが共通理解をしているような論点もあったかなと思いますので、また今日いただいた御意見を基に、私と事務局で相談して、さらに詰めていくということをさせていただきたいと思います。
また今日、余り御指摘がなかったのですが、公務部門の基本方針に関しても次回更に論点を事務局からお出しいただいて、議論をさせていただければと思います。
○武石委員 1点だけ、今日の議論は私もどう答えていいか分からないものがあって、お願いがあります。例えば長期雇用の場合に雇用率にカウントするということがあります。雇用率の話と調整金・納付金の話とが少しいろいろなところで、ごちゃごちゃになっているというのが、話が混乱してしまうので整理いただきたい。また、雇用率に何か新しいカウントをする場合、あるいは調整金・納付金に新しい制度を導入する場合に、すごく難しいかもしれないのですが、どのぐらいの雇用率が変わる、納付金の財政など、どういう影響があるのかという試算的なものが可能な範囲で出していただけると、有り難いのでその点をお願いします。難しいと思うので、可能な範囲で結構です。
○阿部分科会長 では、そのようにしていただければと思います。今、武石委員の御発言があったとおり、確かに障害者雇用率あるいは安定した障害者雇用というのを支援していく上では、雇用率を考えるということと調整金・納付金のほうで対応していくという、考えていけば2つのインセンティブというのがあると思いますので、その辺りのどういう形で支援をしていくべきかというところも、論点になるかと思います。
今回は、雇用率で例えば短時間のところもそうですし、長期雇用のところもそうですし、そういった側面があったと思いますが、その辺りもう一回ちょっと整理をさせていただいて、議論を進めていきたいと思います。ありがとうございました。
まだ時間はあるので、いろいろ御指摘いただければ我々としては有り難いと思いますが、いかがでしょうか。
○遠藤委員 今回、このように民間部門に関わる論点で、お時間を取っていただきありがとうございました。先ほど、分科会長から御説明がありましたように、議論の進め方では大きく2つに分けていくことについては、進めていただければと思います。ただ、それが土壇場になって結論が出てきてしまって、これでいきますというのでは、議論をしたということには、私どもとしては成り得ないものです。次回の会合までにまだ十分お時間があるかと思いますので、現状どういう形でまとめていくのかという粗いものでも構いません、そういったものを御提示いただきながら、次回の会合に臨ませていただきたい。お時間があるのであれば、公務部門の御議論が終わった後、民間に関わる部分についても議論をさせていただければと思います。これは、あくまでお願いベースです。
○阿部分科会長 はい、分かりました。では、できる限りそのような形にさせていただければと思います。
○竹下委員 ちょっとよく分かっていないのですが、ずっと前半の民間部門の話で後半の公務部門の話は、次回、議論すると考えていいのか、今日、意見を出せというのかが分かっていないので。
○阿部分科会長 今日、いただいても構いません。今回は基本方針をなぞっただけといった資料ですので、もう少し論点を絞った形で、次回、事務局から論点を提出していただいて、そこで議論していただいても構いませんが、今の段階でもし御意見があれば御発言いただいても構いません。
○竹下委員 分かりました。竹下です。公務部門の4の所なのですけれども、公務員の任用面での対応です。この中に書いてあること自身の1つ1つに問題や批判があるわけではないのですけれども、これが今回の水増し問題で法定雇用率を割り込んでしまったことを、改善ないし克服するためだけの策だとすれば、これは絶対間違いだと思うのです。あくまでも今回の水増し問題をいわば契機として、障害者雇用を積極的に進めるという観点から、今回ここで示されているものがいわば恒久的な措置として、あるいは制度的な対応としてこの採用面での取組を継続されるべきではないかと、こう思っているのが1点目です。
もう1点は合理的配慮の関係なのですけれども、例えば通勤でフレックスタイム制度、あるいは遅出勤務制度などを作るという話ではなく、通勤における支援というもの自身がこの対策の中で余り見えてきていないと思います。これは、この間の国会での論議も含めて、事業主としての役所が、障害者の通勤における支援についても検討する答弁があったと思います。その点が、この中の基本方針の内容の項目を見ても、余り浮かんでこないのでこの点を、是非、次回に論点として議論できるようにしていただきたいと思います。以上の2点です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、ほかに特段、発言がなければちょっと時間が早いですけれども。
○岸本総務課長 総務課長です。大変、失礼しました。資料3の文字化けしていないものをコピーし直しましたので、今、お手元にお届けします。
○阿部分科会長 15ページ以降、文字化けした部分が修正されたということです。何か特段、御質問等ありますか。よろしいですか。
○本條委員 みんなねっとの本條です。公務部門の採用計画ですけれども、大分、応募があったと聞いています。そのような資料などはあるのでしょうか。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長です。今、御依頼がありました応募の関係についての資料ですが、次回の分科会で提出させていただきたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。特にこれ以上ないようでしたら、本日はここまでとさせていただきたいと思います。本日も委員の皆様から、多岐に渡る御意見を頂きました。次回も引き続いて、論点について議論したいと思います。最後に事務局から、次回の日程等について連絡事項がありましたらお願いします。
○木本障害者雇用対策課課長補佐 次回の日程については、分科会長と相談の上、皆様に御連絡させていただきたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 それでは本日の分科会はこれで終了いたします。本日の会議に関する議事録の署名については、労働者代表は岡本委員、使用者代表は遠藤委員、障害者代表は小出委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。本日は、年末のお忙しい中、ありがとうございました。