第13回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事録)

日時

平成30年6月29日(金)10:00~12:15

場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)

議事

 
 ○阿部座長 それでは、ただいまから、第13回「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。
本日は、全委員の皆様に御参加していただいております。
それでは、早速ですが、議事に入りたいと思います。
本日の進め方ですが、資料1の前半、法定雇用率関係について事務局から説明をしていただいて、意見交換の時間をとらせていただきたいと思います。その後、資料1の後半部分、納付金財政について事務局から説明をしていただいて、意見交換の時間とさせていただきたいと思います。
まず、事務局から資料1の前半部分について説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、早速ですが、資料1の前半、法定雇用率関係についてのところを御説明したいと思います。3ページで「その他、制度の在り方について」ということで、前回後半から調整金の関係を含めて御議論いただいておりますけれども、今回は法定雇用率関係と、後半は財政についてということで、それぞれ議論いただきたいと思っております。
4ページでございますが、法定雇用率制度については、これまでのヒアリングなどにおいて次のような意見が出ているところでございます。1つ目として、法定雇用率が急激に引き上げられていくことによって、障害者雇用に対する事業主の意欲をそがれるようなことのないようにすることが必要であるとか、雇用率について、現行制度では機械的に引き上げられることとなっているものの、企業等への影響が大きいことから、達成企業割合に一定の要件を課すなど、柔軟な調整を認める必要があるというもの。加えて、法定雇用率の検討、設定に当たって、就労継続支援A型事業所の利用者については一般雇用とは異なることから、その分子の数値から除外することが考えられるのではないかという御意見をいただいているものでございます。
5ページは障害者雇用率についての設定の考え方を記載したものでございます。真ん中の民間企業における雇用率設定基準のところを御説明しますが、これは制度が義務化された昭和51年から同じ考え方でありますけれども、労働市場全体に障害者の方がどれぐらいいらっしゃるかということをもとに法定雇用率を決定するものでございまして、分母は常用労働者数足す失業者数、障害者の方で常用労働者の数と失業者の数を分子に置いて割り算するというものでございます。この障害者というところの対象については、平成30年から精神障害の方が入るなど、義務としては対象を拡大しているわけですが、考え方としては、全体労働市場における障害者の方がどれぐらいいらっしゃるかを見ていくというものは変わっていないということでございます。
失業者を入れていることの趣旨としては、全体として一般の労働市場における失業者と同じぐらいの失業の程度は障害がある方にも当然受け入れてもらう必要があるという前提で設定しているものですが、逆に言えば、一般の労働者と同じぐらいの確率で障害者の方も雇用機会が得られるようにしていくということを目指すことで設定されているものでございます。
そのほか特殊法人、国、地方自治体については、一般の民間企業の障害者雇用率を下回らない率をもって定めるということで、従前より国、地方においては、例えばプラス0.3ポイントということで設定しているものでございます。
6ページは、そうした中で直近の法定雇用率の設定についてでございますけれども、ここは御存じのように、平成30年から精神障害者を雇用義務化するに当たって激変緩和措置を設けているというものでございます。法案審議中においては、平成25年6月の議事録においても書いてございますが、激変緩和を設けることによって企業の障害者雇用の状況であるとか行政の支援状況等に対応したものにしていくというものでございますし、昨年、平成29年5月において、平成30年からの法定雇用率を決める際にも簡単に説明しておりますけれども、全体としてどの程度を目指し得るかということをもとに今年度からの2.2%、あるいは3年たつ前に2.3%に引き上げるということを数字としては設定したものでございまして、全体として計算どおりであれば2.4%であったところ、2.2%、2.3%ということで段階的に引き上げていく形にしたというのが今回の措置でございます。
そうした法定雇用率の設定については、特に平成25年の段階では事業主が着実に取り組むことができるようにということで事業主の視点で取り上げているわけでございますが、実際には平成30年4月に向けた議論を平成29年、昨年冬ごろに行っていた際には、障害者関係団体であるとか支援団体の方々からも全体として激変緩和については必要だと、あるいは一定程度やむを得ないのではないかということを御意見としてはいただいているものでございます。
例えば、マル1の全国団体Aについては、知的障害の特性を十分に配慮できないまま雇用したことによって、当事者たちが離職に追い込まれた事例が散見されたであるとか、団体Bのところにもありますが、ここは雇用率についていきなり引き上げたとしても、それで雇用して実際に働けるだけの障害者の方が十分にはいないということで、徐々に引き上げていくのがいいのではないかという御意見。団体Cということでマル3については、これまでどおりの率、例えば0.2%程度であればやむを得ないのではないかという御意見があったということ。マル5ですが、就労支援全国団体の代表の方からも、就労支援団体において、結局、数合わせのような形で就職させることになってしまう。就職準備のできていない人を紹介するだけになっては定着できないという課題もあるのではないかということで、これはあくまでも平成30年4月からの激変緩和を導入することについては、全体として賛同であるという御意見をいただいたものでございます。本日御議論いただくのは今後ということでございますので、必ずしもこれと同意見ということではないかもしれませんが、今回、平成30年においてはそういった御意見が、事業主だけではなくて当事者団体、あるいは支援機関の方々からも多く見られたということで御紹介させていただいています。
8ページは数字が2つ並んでいますけれども、左側の数字が並んでいるほうは、一番下に2.421%となっておりますとおり、平成29年5月に平成30年4月からの法定雇用率をどのように設定するか御議論いただいた際に、2.421%という結果が出たものでございます。
今回、御意見の中でA型事業所の数字を引くべきではないかという御意見があったこと、あるいは前回の御議論の中でも調整金等の関係でA型事業所についてそれぞれ御意見があったことから、我々のほうで推計をしたものが右側でございます。分子と書いてありますが、障害者として雇用されている方からA型の利用者を除外した場合にはどの程度の数字になるかというと、推計ですけれども大体2.329%になるということで、雇用率に対してはおおむね0.1ポイント分の影響を及ぼしているということが言えるのではないかと思ってございます。
次に、9ページは障害者の方で実際に手帳を持っている方が18歳から64歳でどの程度いらっしゃるかを整理したものでございます。平成23年、28年、これは5年間ではございますけれども、生活のしづらさなどに関する調査によりますと、手帳を持っている方の内訳が大きく変化していることが見てとれるかと思います。一番下の青いところですが、身体障害の方は平成23年が111万人であったのに対して、平成28年においては101万人ということで10万人の減。知的障害の方は40万8,000人が58万人、これは偶然ですけれども数字が全く一緒でして、精神障害の方も40万8,000人が58万人ということで、全体で190万人から217万人にふえているというものでございます。
全体として手帳を持っている障害者の方は増えているわけですが、傾向としては、身体障害の方が減って、知的障害、精神障害の方がそれぞれ手帳所持者ということでは増えているというものでございます。背景としましては、身体障害の方の場合には、もともと50代後半から60代にかけて手帳を新たに取得する方が多い中にあって、団塊世代が65歳を超えていったことで若干ボリュームゾーンが減ったということと、実際に医療技術の進展などもあって、新たに手帳を取得される方自体、障害を負われる方自体が若干減少傾向にあるというところも福祉部のほうから確認しております。
一方で、知的障害の方については療育手帳を取得される方が増えていることだとか、精神障害の方も手帳を取得される方自体がふえていることと、実際に新たに発症される方も増えているというところが背景としてはあろうかと思っております。
いずれにしましても、手帳を取得される方自体、持っている方自体が大幅に変化している中にあって、法定雇用率の算定にもこれは当然、一定の影響を与える可能性があるわけですけれども、他方でどの程度の方が実際に障害があって働くことを希望されているかということを現時点で確定的な割合として言うことがなかなか難しいということも背景でもあろうと思っております。
10ページ、11ページはそれぞれ全体像をあらわしたものでございますが、こちらは15歳から64歳で整理していますので若干数字がずれますが、全体として約220万人のうちの一般就労をされている方が、雇用以外にさまざまな働き方を含めると約95万人ということで推計が出るものでございます。そのほかに就労系福祉サービスに通っている方として、移行支援が3万人、B型が20万人程度ということで、合わせて120万人程度の方が何らかの生産活動あるいは就労活動に従事されているということであろうかと思っております。
その下、11ページ、就労支援施策の対象となる障害者数ということで、これは障害福祉サービスのほうから見たものでございますけれども、数字が並んでいるところを見ていただきますと、年々障害福祉サービスから一般雇用に移行される方は増えておりまして、平成28年は1万3,000人の方が年間で一般雇用に移行しているというものでございます。また、特別支援学校からは毎年6,000人程度の方が就職しているということで、福祉あるいは教育からは毎年2万人程度が一般雇用に移行しているということが言えるかと思います。
ただ、実際には障害福祉サービスについては、このうちの一定割合の方がもともと手帳を取得していて、一旦離職されて、かつ、その上で移行支援を通ってまた戻っていく方がいますから、労働市場で見たときに2万人が純増ではないという点について、そこは当然留意する必要があろうかと思っております。
そうした意味で、もちろんこれ以外のルートで就職される方もいらっしゃるわけですが、全体の移行支援の能力として、大体このぐらいだということが言えるのかと思っております。
12ページでございますが、そうしたことを踏まえますと、法定雇用率制度に関する対応の方向性として、これまで出されたものも踏まえますと、どのように考えるかということで論点を3つ示しております。1つ目ですが、法定雇用率について、障害者の方の働き方の質の向上を図りつつ、長く安定して働き続けられる環境を整備し、企業側に法定雇用率の早期達成を求めていくためには、移行する障害者本人の職業準備性の確立、企業側の就業環境の整備や職域の確保、ハローワークや支援機関等による一般就労への移行支援の対応能力の向上といったさまざまな要素が適切に組み合わされる必要があるのではないか。
2つ目ですが、こうした周辺環境を十分に整備していくためには、法定雇用率の算定式の結果は前提にしつつも、算定式どおりに引き上げるのではなく、企業、支援機関などの状況を勘案しつつ、徐々に法定雇用率が引き上げられていくような激変緩和の仕組みを設けることについてはどのように評価することができるか。また、こうした仕組みを次回見直し以降も継続していくとすれば、どのような考え方に基づき法定雇用率を見直すことが考えられるか。
就労継続支援A型事業所の利用者についても、雇用契約を結んでいる関係にあることから、そのまま法定雇用率の算定に含まれることとなるが、そうした仕組みについてはどのように評価することができるかということでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○阿部座長 ありがとうございました。
それでは、議論に移りたいと思いますが、事務局の説明につきまして、御質問や御意見があれば御発言いただきたいと思います。その際、毎回お願いしてはおりますが、必ず挙手をしていただいて、お名前を名乗っていただいてから御発言をお願いしたいと思います。
それでは、どなたでも結構ですので、御質問、御意見があれば御発言ください。
本條委員、どうぞ。
○本條委員 みんなねっとの本條です。
資料の8ページの左端の下から3行目、除外率相当労働者数が1マイナス0.056となっておりますけれども、実数であらわしたら、計算すればわかることでありますけれども、どのぐらいになるのか。
また、この除外率の制度というのは、平成14年の法改正によって16年に廃止されていると思うわけでありますが、経過措置としてはいつまで続くということなのでしょうか。まず、それをお答えいただいて、少し意見を申し上げたいと思います。
○阿部座長 それでは、御質問ですので、事務局からお願いします。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。
済みません。今、手元に全体の数字がありませんが、単純に言えば、この計算のとおりだと思いますので、3,499足す220ということで3,700万ぐらいだと思いますが、3,700万の5%ぐらいということになろうかと思っております。
あと、除外率制度についてでございますけれども、現状、法定雇用率は引き上げられることが断続的に続いているということもございますが、全体として、いずれ当然、産業界の状況等も見ながら考えていくべき課題であると思っております。
○阿部座長 それでは、本條委員、どうぞ。
○本條委員 ありがとうございます。
恐らく、理念的にはノーマライゼーションということから、こういうものは廃止すべきであるということから法改正がされたと思うのです。ただ、実態的には、急激にそうはしても廃止にすればそれだけ雇用するのが難しいところに押しつけるのはやはり経過措置が必要だという観点だと思います。しかしながら、雇用率というのは45.5人以上には一律のパーセントが課せられるわけですね。そういう意味からいうと、確かに障害者の人が働くのが非常に困難な業種もあるとは思いますが、例えば医療法人等であれば、全て国家資格が要る人だけで構成されているわけではありませんので、やはりそのあたりはもう少し積極的に統一されて、除外率制度などはなくなるように努力すべきではないかと思うのです。
もう一点は、果たして雇用が難しいというのは障害のある方だけの問題なのか。障害があっても環境面を整備することによって働くことはできると思うのです。1点申し上げれば、40年ぐらい前までは、もっと後かもわかりませんけれども、ボイラー技士などは女の人はできなかったのです。なぜかというと、当時はボイラーというのは、石炭を放り込んでするような重労働には耐えないということだったと思いますけれども、40年ぐらいにはボイラーでボタン一つでできるわけですから女性でもできていた。そういうことからいいますと、固定観念によって、これは障害者にはできないという業種であっても、工夫することによって、かなり障害のある方でもできると思うのです。そこら辺を議論していきたいと思うわけです。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
では、工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 今と関連する発言になりますが、日盲連の工藤です。
私も除外率、平成24年に廃止の方向が決定されて、これまでに10%ずつ2回しか下がっていないのですね。少なくとも今、30%以上の設定業種、除外率がかかっている業種については今後の見通しですね。ゼロに向かってどういうスケジュール感で行くのかというのは、ぜひ議論して、明らかにしてほしいと思います。
もう一つは、今、本條委員がおっしゃった雇用率だけではなくて、除外率にちょっと戻りますと、例えば運輸とか通信業などでも今、農業分野で結構事業を拡大して、産業構造も随分変化していますので、かつてと今とでは働く環境も職域も随分広がってきていると思います。この除外率が撤廃されていくことによって、働ける視覚障害者、視覚ではないですね。障害者全体ですけれども、そういう意味では雇用が進んでいくのではないかと思います。決して雇用率を上げることだけではなくて、まず除外率をしっかりゼロに持っていくということ。
それから、やはり環境の整備ですね。雇用率だけではなくて、もう一方では環境の整備をすることで、雇用管理も含めてそちらのほうにずっと手厚くきめ細かにやってほしい。例えば視覚障害者は、雇用率制度があったからといって、決して雇用は進んでいないと思うのです。実は、5月20日に神戸アイセンターという眼科、大きな医療機関ができまして、ネクストビジョンというところと一緒に日盲連が「神戸発、視覚障害者雇用の未来を考えるフォーラム」をやったのです。そこで出た意見は、やはり視覚障害者の雇用は本当に停滞して進まないということが出されて、竹下会長も含めて、会場のほうからクオータ制を導入すべきだという意見があったのです。雇用率を障害の種類別に決めろという意見が出て、それは、それだけ視覚障害者の雇用が進まないからだということなのです。竹下会長もそれを受けて、決してそれは現実的ではないけれども、そこまで主張せざるを得ないほど、今、視覚障害者は厳しいのだと。平成24年のハローワークの就職状況を見ると2,255人なのです。29年度の就職状況は2,035人なのです。220人減っているのです。毎年毎年減っています。この数は本当に少ない数ですよね。その中で半分以上はあん摩・はり・きゅう。ただ、事務職の仕事も1割ちょっと、10から15%あるということは、今後に可能性も残していると見てとれると思うのです。そういう意味で、決して雇用率だけではなくて、ぜひ雇用管理も含めたきめ細かな支援策も検討してほしいと思います。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
本條委員、工藤委員の御意見は、承りたいと思います。
それでは、ほかにいかがでしょうか。
栗原委員、どうぞ。
○栗原委員 栗原です。法定雇用率の一般就労の中でA型を除けば0.1ポイント減るということでした。今、A型は、2時間から3時間、3時間から4時間というような時間で区切られているという話を聞いたのですが、その辺をまず1つ伺いたい。もしそういうことで、短時間で雇用の状態になるのであれば、これは本当に一般就労なのか、福祉的な就労ではないのだろうか、かえってB型との垣根がなくなってしまうのではないかという気がしてしようがないのですが、その辺をどのようにお考えでしょうか。
○阿部座長 御質問だということで、事務局、お願いします。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。
済みません。こういうことを言うのは申しわけないのですが、A型自体は所掌が別部局になりますので、詳細はあれですけれども、ただ、分けるといいますか、おっしゃるのは報酬を分けているということだと思うのです。A型の働き方がどういうものかはともかくとして、雇用契約を結んでいる以上は労働者であるというのが前提であると思いますので、実態としてA型の働き方がどうかという御意見だと思いますが、何か時間によって直ちに雇用労働が福祉的なものになるというのは、少なくとも法的にはそういうことではないのかなと思っているものでございます。
○阿部座長 ただ、栗原委員がおっしゃりたいのは、A型を含めて考えるということなのか、そうではないのかということにつながっていくのだろうと思うのです。
○障害者雇用対策課課長補佐 ただ、逆に申し上げると、ここで書いてあるのは当然20時間以上の雇用ということになりますから、おっしゃるような週2時間の話であれば、ここにはもともと入らない話になりますので、そこは法定雇用率の話と1日2時間ぐらいの働き方のA型の方は、少なくとも議論としては別なのかなと思っているところでございます。
○栗原委員 栗原です。
でも、A型はA型ですよね。それで働いている、雇用契約を結んでいるわけですから、そういうことになりますね。それは時間が長い、短いというのは別問題ではないかなと。でも、短いというのは、私の考えからいけば一般就労とはちょっとかけ離れてきているという疑問で先ほどお話をさせていただいたわけです。
○障害者雇用対策課課長補佐 A型が短いのがどうかという御議論だと思うのですが、ここの法定雇用率に入る人というのはあくまでも週20時間を超えていないと入ってきませんから、仮にA型事業所で週5時間で働いている方がふえていったとすれば、それはA型かどうかということに関係なく、もともとここには入ってこないという意味において、おっしゃるようなA型の短時間が雇用と言えるかということと、法定雇用率の計算上どうかというのは別であることを御説明したかったというものでございます。
○栗原委員 ありがとうございます。
○阿部座長 確認ですけれども、8ページ目でA型利用者を除外した場合と書いてありますが、このA型利用者を除外しているA型は、A型で20時間以上働いている人の人数を除外しているという理解でいいのですね。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局です。
推計ではありますけれども、そういう趣旨であります。
○阿部座長 ほかに、どうぞ。
○塩野委員 塩野です。
論点についてですが、現状でも障害者雇用についてさまざまな課題に直面している企業はかなり多いと思います。今後も大幅な法定雇用率の引き上げが行われるのであれば、取り組み意欲の減退や諦めの風潮を助長するおそれがあり、やはり法定雇用率のあり方を見直すべきだと考えます。
具体的に、1点目としては、現行の算定式が企業現場の取り組みと乖離しないように、一般就労とは必ずしも言えない実態が多いA型事業所で働いている障害者の数については除外するということ。2点目には、一時的な激変緩和措置はあるものの、機械的に算出する現行の仕組みを改め、法定雇用率の決定に当たっては、一定の場合は、その引き上げ幅について、厚労省審議会での議論を通じて柔軟な調整が可能となる仕組みに変更するということ。この2点について、見直しをお願いしたいと思います。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。それでは、御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。
では、工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 日盲連の工藤ですが、私は資料を見ながらということが難しいので、多分論点から外れている部分があるかもしれないです。先ほど説明いただいた、頭に残っているそれに基づいて、今、思いついたことを発言します。
いわゆる手帳の所持者の推移だとか、先ほど説明がありまして、その中で特別支援学校から就職しているとか、福祉から一般市場にこんなに拡大していっているとか、そういう説明があったと思うのです。私が、やはり一番視覚障害者の雇用が厳しいということは先ほど申しまして、実際これは第3回目の日盲連からのヒアリングに対する回答です。こちらで意見を述べたとき、その資料の中に大体私たちの主張は凝縮されているので、ぜひもう一度見直していただければと思うのですが、中途で就職後に企業の中で手帳をとった人、要するに中途障害者ですね。できればそこだけは別に抽出して支援するような方法があってもいいのではないかと思っているのです。ということは、その数だとかをどこかで把握しておく必要があるのではないか。特に視覚障害の場合には、中途で見えなくなって40、50代、その継続雇用支援というのが非常に重要なのです。ところが、現状では、雇用率ということで全体の中でくくられてしまいますので、本当にマイノリティーの中のマイノリティーということで、制度はたくさんあるのです。職業訓練する場所も、訓練制度、能力開発もあるし、ジョブコーチの支援もある。でも、視覚障害にとっては、実際にそれにアクセスできないのです。そういうことを考えると、中途で在職中に障害者になった人がやめないで済むようなきめ細やかなというか、障害の実態に合わせた制度設計というか、そういう検討もぜひしてほしいと思います。
これは第3回の日盲連の意見の中では触れていなかったのですけれども、例えば私たちにとって一番大事なのは能力開発なのです。その能力開発をする場所が極めて限定的、地域的に偏りがあって、遠くからそれを受けようと思っても受けられない。それを受けさせるためにはどうすればいいのかということをぜひ検討してほしいのです。例えば、職業訓練を受けるときにハローワークの所長が受講指示というのを出しますね。でも、一般にやられているのは雇用保険法に基づく、これから就職する人の受講指示なのです。でも、雇用対策法というのがもう一方でありまして、これは広域的な求職活動を支援する法律でもあるわけです。その中に、求職している人だけではなくて、在職者を失業させないということも雇用対策法の中でカバーしていただけると、例えば在職して中途で障害になった人でも、ハローワークの所長の受講指示があれば、遠方から国立の職業リハビリテーションセンターに入って訓練を受けるとか、就職を目指す人だけではなくて在職の人がその受講指示で離職しないで済むということも考えられると思ったのです。
今までそういう発想は多分なかったと思いますので、いい機会だと思って、せっかくこの研究会があって、視覚障害者の厳しい雇用が少しでも進んでいくようにということを願っての発言です。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。
工藤委員がおっしゃったのは、主に視覚障害ということでお話しされていると思いますが、視覚障害関係なく全体として中途障害の方たちに対するケアをどうしていくか、そして就業の断絶をどうやって取り除いていくかという御意見だと思います。これは非常に大事なポイントかと思いますので、御意見として承りたいと思います。
○工藤委員 工藤です。
座長の発言を聞いて思ったのですけれども、やはり一つそういう枠組みをつくっておけば使えるということなのですね。なければそこで今までどおり。
それから、あわせて前回、前々回、障害者の雇用の分野でも産業医の役割が非常に重要だと認識されたと思うのです。そういう意味では、産業医は従来どおりの安全・衛生だとかそちらのほうだけではなくて、障害者雇用促進法の中でも障害者の雇用と産業医の役割みたいなところをもう少し明確にバックアップする枠組みみたいなものがあってもいいと思いました。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。
それでは、ほかの点からはいかがでしょうか。
漆原委員、どうぞ。
○漆原委員 連合の漆原でございます。
論点の12ページに記載いただいております激変緩和措置については、安定した雇用を伸ばしていくという観点から必要であると思いますが、激変緩和がある理由の一つが、障害者雇用の周辺環境を整備していくための猶予をもうけるためだと思いますので、環境整備については、政府としても激変緩和措置がなされている間に企業への対応を行っていただければと思います。そうした周辺環境整備の中には、先ほど工藤委員の言われていた産業保健とのかかわりや、地域での連携強化もあわせて実施していただければというところです。
そうした意味では、次回の法定雇用率の見直し以降も、法定雇用率を見直すタイミングで、激変緩和措置はどうあるべきなのかを引き続き検討する必要があると思っているところです。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
加賀委員、どうぞ。
○加賀委員 加賀でございます。
障害者雇用で本当にいろいろな法律をつくってもらってありがたいのですけれども、障害者によっては、自分の障害によって長く働けない人もおるわけです。だから、それこそ何時間にしてやろうとか、何々というふうに会社が思っていても、本人自身が本当に3時間とか5時間でいいという人がおるものですから、なかなかその辺のところは本人に合わせた時間的なことをつくらなければならないということです。私のほうはそういう障害者を扱っておるものですから、障害者の子に対して、この時間はいいな、ここからは働けるのか、この辺まではいいのかということを聞いて働かせております。何時間といって、これは決めないでもいいわけですけれども、障害者には、一応そういう形でうちのほうはやらせていただいております。
ありがとうございます。
○阿部座長 ありがとうございます。
長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。
8ページのところで、先ほども議論になっていましたけれども、A型の利用者の方を法定雇用率を計算する際に除外するかどうかということで、0.1%でも非常に影響は大きいと思いますし、A型の利用者の方々の人数を除外していくほうがいいのかなと。影響力が大きいからというよりも、やはりA型での働き方は一般企業での働き方と違う点も多いと思いますので、そういった意味でも法定雇用率の計算式から抜くというのは考えられる方法だと思います。
ただ、その場合に、法定雇用率の計算式だけ抜いて、それでよしとするのか、それとも、雇用義務制度の対象そのものから外してしまうのかというのも、あわせて検討する必要があるのかなと思っています。A型に支給されている調整金とか報奨金の額もそれなりにあると思いますので、法定雇用率が下がってしまうと、その分、納付金も支払うところが減るけれども、A型はそのまま調整金、報奨金を得続けるというと財政的にどうなのかというのもあわせて検討していくべきかと思います。
先週の資料を見たのですけれども、どれぐらいのお金がどう動くのかというのが、私は今、よくわからないので、またそれも教えていただければと思います。今でなくても構いません。
以上です。
○阿部座長 わかりました。
では、影響については、すぐには難しいですよね。
○障害者雇用対策課課長補佐 はい。
○阿部座長 またいずれということでいいですか。
どうぞ。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。
1点だけ。A型事業所ということで、A型事業所自体は株式会社が行っている場合もあったり、いろいろあったりしますし、必ずしも主たる事業で行っていない場合もあるので、総額という意味ではなかなか出せないところはあります。ただ、少なくとも前回お示しした資料の中でも、例えば、A型とは限りませんが、社会福祉法人で300人以下のいわゆる中小の中で見た場合に、より多くの人を雇用している法人といいますか、1法人当たりに固まって調整金が多く出ている傾向が一般の中小に比べれば見られる。そういう意味では、多くの方が固まって調整金が出ているという意味で、絶対にA型とは限りませんが、基本的にはA型事業所をやっている法人ということで、結果としてかなり大きな額が調整金によって一つの法人に固まって支給されているということは実態としてはあるかと思います。ただ、全体の総額が幾らかというのは、今すぐというよりは、なかなか現状のデータだとわからないところもありますが、そのあたりはまた可能な範囲で御説明していきたいと思っております。
○阿部座長 ありがとうございます。
ほかにいかがですか。
志賀委員、どうぞ。
○志賀委員 横浜やまびこの里の志賀です。
具体的なお話ではないのでなかなか発言しづらかったのですけれども、1点、11ページの資料がいわゆる障害福祉の分野から見た一般就労へ向けての数字ということで、数が伸びているという資料だと思います。こちらは先ほど説明もありましたとおり、特別支援学校から六千何百人ということで、これは多分、初めて雇用ステージに上る方たちで、雇用率のことを考えると純増になっていく部分。障害福祉のほうは1万3,500人少々ということで、こちらは再就職を含みますので、必ずしも雇用ステージに初めて上るいわゆる前職のない人とは限らない数字になると思います。
ロクイチ調査を見ると、民間企業のほうは毎年、最近、実数でも2万人以上の方がふえていることを考えると、これを足し算すると2万人になるのですけれども、知り合いの就労機関18事業所ぐらい、移行支援事業所に聞いてみたところ、前職なしの人が40%ぐらいという数字でした。大きい規模の調査でもないので、さらに雇用先がいわゆる雇用のカウントに入っているのかどうなのかも確かめているわけではないので、それほど根拠のあるものではないのですが、4割だとすると、特別支援学校と障害福祉系を2つ足すと1万人ということで、民間企業の二万数千人ふえていくところの半分はないのですね。ということを考えると、こちらのほうのハローワークとか就業生活支援センターであったりジョブコーチ、そういった施策並びに、場合によっては先ほど工藤委員が言われたように社内での産業医等、これまでの従業員の方で新たに障害者になられる方とか、そういった方が過半数を占めているということは非常に大きいなと。待っていて、他の分野からという言い方はおかしいですけれども、どんどん新しい人が来るという状況では今ない中で、何らかの整備とか制度を見直さなくてはならない大きい数字なのだなというのを、この数字を見させていただいて、個人的にここ数週間聞いた中での話の印象でしたので、かなり大きいものだなという話だけをさせていただきます。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
多分、志賀委員がおっしゃったことと皆さんがいろいろとお話しいただいたことを考えると、法定雇用率だけが伸びていても、実際に障害者の方たちが就労の場への供給がなければ、結果的には法定雇用率は達成できないということですので、そのあたりをどのように考えていくかということですね。その中には、中途障害者に対するケアをしていって、就労を促進するというのもあるでしょうし、従来のような、11ページに書かれている障害福祉サービスや特別支援学校からの供給もあるだろうと思います。そうはいっても結局、今後どうなっていくかわからないですけれども、法定雇用率が伸びていく可能性があるとしたら、多分、皆さんの御意見としては違和感ないと思いますが、やはり一定程度の激変緩和措置はあってもいいのだろうと。ただ、その中でA型をどのように考えていくかというのは議論の余地もありますし、さらに除外率についても言及があって検討する余地はあるのだろうと、ここでまとめる必要もないかもしれませんが、一定程度皆さんの御意見を伺うと、そのようになるのかなという気がいたします。
またこれについて、その他、御意見がありましたら後ほど戻ってくるとしまして、後半部分についても議論する必要がありますので、納付金財政について、まず事務局から御説明をいただいて、またその後に皆様からいろいろと御質問や意見を伺いたいと思います。
それでは、事務局、お願いいたします。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。
納付金財政についてということで、13ページから資料を用意いたしましたので、御説明申し上げたいと思います。
納付金の関係については、前回の研究会の中でも大企業を中心として調整金の上限を設定するということで、必ずしも財政への影響ということだけで議論しているわけではないですが、結果として財政にも影響が出る話としてそういった論点も上がったわけです。加えて、全体的な財政健全化ということでも幾つか論点が出ていますので、御議論いただきたいと思っております。
納付金財政については幾つか論点が出ていますが、13ページを御紹介しますと、障害者雇用が進展すればするほど納付金財政が改善されないという矛盾が生じているのではないか。支出超過が続いて積立金が目減りする一方で、法定雇用率の引き上げに伴う納付金の増加によって補う財政状況は健全とは言えないので、抜本的な見直しが必要である。調整金の水準を引き下げるとともに、支給期間と支給対象者数の上限を設定するなど、運用面の改善を図るべきというようなところを御意見としてはいただいております。
また、この中には書いておりませんが、前提として御説明しますと、納付金財政を決定するというか、納付金の額、調整金の額については、法律上においてそれぞれ障害者の方をお一人追加的に雇う場合にかかる特別な費用をもとに決定されるとなっておりまして、5年に1度の見直しで納付金と調整金の額が決定されているというものでございます。直近では、平成29年5月に法定雇用率を決定した際に特別費用調査を御説明しまして、現状維持ということで5万円と2万7,000円が設定されておりますが、調査としては、ハローワークのほうで各事業所に確認をしまして、障害者の方を雇う際に特別にかかっている費用としてどういうものがあるかをもとにしまして、調整金と納付金を算定しているものでございます。それぞれ納付金は納付金、調整金は調整金ということで決定される仕組みになっております。
14ページですけれども、これまでの障害者雇用納付金財政の推移ということで、昭和52年から御説明しているものです。色で御説明することになって若干申しわけないのですが御説明しますと、過去、昭和から始まりまして、年度が塗られている3期間が赤字であった期間でございます。昭和55年から57年、平成5年から平成10年、平成19年から平成25年ということで、過去3回赤字の期間がございましたけれども、その内訳といいますか背景としては全く異なるものでして、棒グラフを見ていただきますと、棒グラフの内訳が下から順に調整金、報奨金、助成金となっておりますが、過去、昭和55年から57年に赤字だった際にはかなり高額な助成金が出ていたもので、当時、重度障害者の方を雇用する事業所などを設置する場合にかなり高額な助成をしていたこともありまして、助成金が全体のうちかなりを占めている。一方で、調整金や報奨金のようないわゆる実質上の固定的な支出に関してはかなり少額であったというものでございます。昭和58年にかけて助成金の額を減額させたことによって、全体としてはフローが黒字になったというのが1回目でございます。
2回目、平成5年から平成10年につきまして、これも平成5年段階では助成金の額が相当出ていたものをだんだん絞っていくということと、あわせて平成10年7月に法定雇用率が1.8%に引き上げられたことで、結果として翌年度から納付金の額、報奨金の額も若干目減りしたということで、フローが黒字に戻ったというものでございます。
また、平成19年から25年においては、徐々に法定雇用率を達成する企業の割合自体が全体としてふえていく中にあって、調整金及び報奨金の額が毎年ふえていく中で、19年から25年は赤字であったと承知しています。
結果として25年から26年にかけては、納付金の額を全体として減少させたことと、もう一つは法定雇用率が1.8%から2.0%に引き上げられた効果によって調整金の額が減ったこと、あとは助成金の額も減ったことによって、結果としてフローとしては26年から黒字になっているというものでございます。
緑の折れ線グラフが積立金の額ですが、過去、昭和57年と平成25年の2度は、枯渇という言い方が正しいかわかりませんが、積み立て自体がなくなりかけたというのが過去2回ございます。そうした経験であったり、あるいは平成26年度以降においても推計上かなり厳しいのではないかと言われたこともありまして、今回、財政状況についても幾つか御意見をいただいたということだろうと思っております。
全体の支出としても、過去、昭和50年代と現在を比べますと、その中で調整金、報奨金の額自体がかなりを占めていまして、実質上固定的な費用ということで出ているものが大多数を占めているという意味では、過去、制度が創設された当時の想定とは結果として大きく変わっているということかと思っております。
そうした中で、平成25年を含めて財政がかなり厳しい状況に置かれたわけですが、15ページ、障害者雇用納付金制度は社会保険制度ではございませんので簡単に比較できるわけではありませんけれども、他の積立金のような仕組みがどういう形で財政を調整させているかということを幾つか御紹介させていただきます。例えば、年金制度については、当初の設定としては支給額を見ているわけですが、いずれにしましても保険料率の上限が現状は決まっていまして、保険料率の上限の中で入ってくる収入をもとに支出を行っていくことに単純に言えばなるということでございます。実際に支出額については、マクロ経済スライド等を用いて調整するわけですが、少なくとも、基本的には収入分に関して保険料率を設定した上で支出が決定されているという意味においては、入ってくるお金は上限が設定されていて、出ていくお金を調整する仕組みになっているということかと思います。
労災については、積立金の額をもとにして保険料率が決定されるというもので、原則、3年に1回改定されるという仕組みでございます。
また、その下の雇用保険についても、積立金の財政状況に照らして保険料率が決定されるという意味で、これも入りのほうが変化する仕組みであると理解しております。
左側の健康保険については、準備金を法定準備額まで積み立てていただくものでございますが、単年度であるということで、基本的にはどういう仕組みでやるということが、財政調整機能があるかという意味では準備金があるだけでございますが、基本的には毎年度保険料率を設定することになりますから、こちらも入りのほうを設定する仕組みであろうと思います。そういう意味では、年金以外のものについては基本的には入ってくる保険料率のほうを設定することによって支出との関係を調整するものでございますし、年金については、保険料率は既に上限が設定されている上で、その中で支出額がある程度決定されていくというものでございます。
16ページを見ていただきますと、他国の納付金調整制度ということで申し上げれば、これまでも御説明してきていますとおり、フランス及びドイツについても日本と同様に法定雇用率制度に基づく納付金制度があるわけですが、フランス、ドイツともに調整金という仕組みはないということになっております。したがって、フランス、ドイツともに納付金ということで納めていただいたものについては、当然、助成金ということで政策的に個別に事業所に対して支出する費用はそれぞれメニューが用意されています。あるいは以前も御説明したとおり、個別に見れば違うところがございますが、おおむね日本の助成金の仕組みと全体としては同じようなものを用意してございますが、調整金は用意していないということで、固定的に出ていくものはフランス及びドイツには制度上用意されていないということでございます。
そうしたことを踏まえますと、論点として、17ページに3点ほどお示ししているとおりでございます。先ほども御説明しましたとおり、納付金財政については、まず納付金と調整金、報奨金の額がそれぞれ独自に決定される仕組みになっているというものでございまして、かつ財政状況に応じてこれらが変動する仕組みにはなっていないものでありますので、財政の継続性の観点から支出か収入と納付金財政の状況が連関して決定される仕組みを盛り込んでおくことも考えられるのではないかと思っております。また、そういった前提で幾つかの御意見をいただいたと承知しております。
2つ目でございますが、大企業等の調整金の支給額をあらかじめ一定程度抑制することが考えられるが、加えて、現在の調整金制度が制度創設時と比較しても相当程度広範囲に支給される仕組みとなっていることからすれば、ドイツ、フランス等では調整金の仕組み自体が設けられていないことなども踏まえると、財政状況に応じて調整金の額を変動させることが考えられるのではないかと。
3つ目ですが、これまでも納付金財政の単年度収支がひとたび赤字になると、制度要因等が大きく変動しない限りにおいて、その状況が継続する傾向が見られることから、単年度財政が赤字になった段階で、赤字額の程度に応じて翌年度以降の調整金の額を減額させる計算の仕組みをあらかじめ規定しておくことなどが考えられるのではないかと考えております。
事務局からは以上でございます。
○阿部座長 ありがとうございました。
それでは、皆様から御質問や御意見を承りたいと思いますが、また同じように御発言をしていただく際には挙手をしていただいて、お名前を名乗ってからお願いしたいと思います。では、どなたからでも結構です。よろしくお願いします。
栗原委員、どうぞ。
○栗原委員 栗原です。
前回もちょっとお話をさせていただきました納付金と調整金の件なのですが、調整金については、ここにも書いてありますように、上限を決めるか、または人数で上を決めるということで、何らかの方策をとらないとまずいのではないかと考えております。そして今度、50名以上に対して納付金が発生します。納付金については、50名というと中小企業になりますので、そのままイコールの金額はいかがなものか。ですから、少し減額をするということもあってもいいのではないかと思っておりますが、その辺はいかがでしょうか。
○阿部座長 御意見として承りたいと思います。
その他、いかがでしょうか。栗原委員がおっしゃった、前回の議論の引き続きというか、上限を決めるとか、頭数の上限を決めるというお話ですが、これは主に前回は中小企業対策ということで、中小企業における障害者雇用の促進という観点からそうした制度が必要ではないかということで議論しました。ただ、今回は、調整金制度全体でどのように財政を維持していくかという議論でございますので、さらに調整金の上限あるいは頭数以外にもアイデアがあれば御発言いただきたいと思います。
では、長谷川委員、工藤委員の順番でお願いします。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。
アイデアではなくて、ちょっとお聞きしたいなと思ったことなのですけれども、調整金を得ている会社というのは、障害者をしっかり雇用している会社だと思うのですけれども、そういった会社の方々にとって、調整金の金額というのは非常に重要なのでしょうか。いろいろな考え方があると思うのですけれども、調整金がもらえるから障害者を雇用しているのだという場合もあるかもしれないですし、そういうのは関係ないのだけれども、やはりお金がかかるから調整金はどうしても必要としているのだというのかもしれないですし、他方で、特に調整金目的は全くなくて、法定雇用率をしっかり守っていった結果、調整金をもらえるような状況にあるのだけれども、もらえてももらえなくてもどちらでもいいのだとか、会社によって状況は違うと思うのですが、どういう会社が多いのかとか、どのように考えていらっしゃるのかがわからないので、教えていただければと思います。
○阿部座長 それでは、塩野委員、栗原委員、お二人でお答えいただければ。また、さらに追加で事務局から御発言があればと思いますが、お願いします。
○栗原委員 栗原です。
私どもの全重協、障害者を多数雇用している事業所の団体でも、やはり雇用する上で非常に効果があるという話は聞いております。ですから、なくなって、こんなの要らないよという企業さんは多分ないのではないかという気がいたします。
ただ、この前も言いましたように、何でもかんでも上限なく出すのは問題ですね。やはり中小企業さんが該当するような金額なり人数は決まってきてしまうので、そのところにある程度ターゲットを絞って出していただければ非常に効果があると思っております。
○阿部座長 もし、塩野委員から御発言があれば、お願いします。
○塩野委員 塩野です。
所謂大企業の方の意見を聞いていると、どの企業も、障害者雇用に関しては、法定雇用率を達成することが非常に重要であると考えています。調整金をいただけるのはありがたいですが、大企業の場合は、法定雇用率達成の方を重視していると思います。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
事務局から何か追加でありますか。ないですか。いいですか。
長谷川委員、よろしいですか。
○長谷川委員 はい。
○阿部座長 その上で何か御意見はありますか。
○長谷川委員 もう少し考えてから発言します。ありがとうございます。
○阿部座長 わかりました。
それでは、工藤委員、お願いします。
○工藤委員 日盲連の工藤です。
本当に企業さんが調整金、報奨金を欲しいと思っているのかなと、私もそう思ったのです。ただ、前回の説明の中で、結局、中小企業に未達成企業が多いと。そちらで集めた納付金を大企業のほうにほとんど分配。分配という言い方はよくないかもしれないですが、されてしまうということで、前回は青天井の話をしたのですけれども、そういう意味では少し規制をするというか歯どめをかける。それから、金額そのものについても、今、2万7,000円と2万1,000円でしたか。それをもっとすっきりと2万5,000円と2万円に固定するとか、そのように下げることもあってもいいのかなと思いました。
それと、平成28年度の納付金の状況だけは私も調べてもらったのですけれども、先ほどの説明の中には具体的な金額が出てこなかったのですが、収支を見ると、集めた金額が312億円、調整金で払われたのが155億円、報奨金が40億円と。実は先ほど調整金と報奨金だけでしたけれども、この中で、このほかに納付金に基づく助成金というのがあるのです。助成金の金額は幾らかというと12億円なのです。全体から見ると本当に少ない金額なのです。その助成金、例えば施設整備の設置等助成金であるとか、実際はなかなか視覚障害者の場合、拡大読書器であるとか、パソコンの音の出るスクリーンリーダーだとか、そういうものがある意味では必須なのだけれども、それが意外と申請しても制限がかかってだめであったとか、非常に使いやすくない、申請手続上難しいということです。それから、職場介助者制度などにしても、視覚障害者の介助者はどれぐらい活用されているかというと、本当に少ないと思います。
そして、この12億円というのは、むしろ雇用環境とか雇用管理のためにということであれば、これを倍増ぐらいするような形で、今の時代に合った活用の仕方を検討してもいいのではないかと思うのです。例えば手話通訳といっても、本当に人が通訳するだけではなくて、今はアプリケーションソフトで、しゃべったことが手話でも出るかもしれないですけれども、文字化されて出てくるのです。そうすると手話通訳にかわるわけなのです。文字で出るということは視覚障害者にとっても非常に有効なのです。今の技術は非常に目まぐるしいのですので、そういうことにも臨機応変に、本当に就労を支援するということであれば、今のようないろいろなことに対応できるようにしてほしいと思いました。
もう一つは、助成金のところで、これはやはり民間企業から集めているということがあって、国家公務員であるとか地方公務員だとか地方自治体、そういうところは適用にならないのです。実は昨日もある国家公務員の方から、国立病院から紹介されたということで日盲連に電話があったのですが、中心暗点、真ん中が見えない、身体障害者手帳5級、その方にとって拡大読書器は非常に効果があるのです。それから、音声パソコン、音声ソフトというのも効果があるのです。それを職場で、合理的配慮ということも義務づけられていますので。ただ、国家公務員は適用除外ということなのですね。職場と話し合ったら断られたということなのです。国立病院の眼科の先生からは、それはおかしいのではないかと、とにかく相談してみなさいと。
実際問題としてどうかというと、予算がないということで断られたりして、それを実際に導入してもらうのに物すごく時間と労力をかけているのです。眼科の先生から必要であるという意見書を書いてもらったりとか、そういう苦労をしながら職場と調整して、それも今言ったようにすんなり認めてくれるところとそうでないところがあるのです。ですから、やはり公務員であっても同様に助成金に相当するものが使えるようにしてほしいのですということを考えると、民間企業からただ納付金を取るだけではなくて、国税というか一般財源を導入する。そうすると、今言ったような問題も解消できるのではないかと思いました。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。
障害者雇用納付金制度という理念を考えると、なかなか国家公務員や地方公務員のところまで範囲を広げられるかどうかというのは、またちょっと大きな話として考える必要があるかと思いますが、工藤委員の御意見は承りたいと思います。
なお、もう少し議論を進めていただくために、私のほうからお話をさせていただきますと、納付金財政を考える際に、一時点一時点でどのようなことを考えていくかという問題と、もう一つはダイナミック、将来的にどのように動いていくかということを考慮しながら財政制度というか納付金制度を考えることは大事かなと思うのです。特に14ページでごらんいただいているように、雇用率が上がれば上がるほど財政は逼迫するようになるわけです。これは制度上そのようになっているわけです。今後も多分、法定雇用率は上がっていくわけですけれども、さらに多分それを目指して雇用率も上がっていくのだろうと思うのです。むしろ雇用率が上がるということは、我々は望ましい世界なわけですから、そうなると財政は厳しくなっていくのをどのように制度として安定させる方向で考えるかということだと思うのです。
そうすると考えられるのは2つあって、1つは、雇用率が上がっていって、多くの企業が障害者雇用を促進していく中にあって、いまだに納付金を払うということは、ある意味障害者雇用促進に対しては、ネガティブと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、余り貢献していない企業だということを考えると、例えば納付金を上げるという考え方もありますし、一方で、障害者雇用率が上がってきて、どの企業も障害者雇用を促進しているということは、もしかしたら調整金の必要性が少なくなるということにもなるかと思うのです。ということになれば、調整金は下げるという方向でも考えられると思うのです。だから、納付金を上げるということと調整金を下げるという2つのやり方があるのかなと思います。あるいは、フランス、ドイツではもともと調整金制度がないということで、そちらのほうを目指して、工藤委員がおっしゃるように助成金制度を拡充していくというタイプもあるのかなと思うのですけれども、それについて、皆さんどうお考えですかというのがここの趣旨だろうと思います。
その上で、中小企業対策としては、先ほど栗原委員がおっしゃっているように、上限額を決めるとか頭数を決めるというのは前回お話ししたとおりかと思っておりますが、いろいろな仕組みを考えていかないと、多分、これからいい世界に向かっていけば財政が破綻する、財政的には問題になるということだと思うのです。現行制度のままで言えば、財政が破綻するのが望ましいと、ここをどのように考えるかということだろうと思います。
志賀委員、どうぞ。
○志賀委員 志賀です。
今、座長が言われた、余り大きい話ではないのですけれども、納付金財源、就労支援の現場でこれまでかかわってきたところで一番気になるのは、一般財源なのか、雇用保険の事業財源なのか、あるいは納付金財源なのか、結構同じような事業が、例えば職場適応援助者であったりとか、トライアル雇用であったりとか、単年度で窓口が変わって事務手続がちょっと変わってというのを何度も経験しております。そういった意味では、こちらのほうの調整金あるいは報奨金だけではない助成金の問題が安定的にということで、この助成金に本当にふさわしい事業であったとしたならば、制度ができたときに、その制度を支えるいろいろな人材がこの制度をこういうふうに使って障害者雇用を促進していきましょうと、みんなが一致団結して頑張っていきましょうというふうになるまでは少し時間がかかって、途中でまた変わってしまうというのは結構つらかったような記憶があります。
そういった意味では、どこの財源がというとなかなか難しいかもしれませんけれども、特に14ページの助成金の絵を見ると、確かに全てここの納付金財源からなくなったのはよくわかりますので、そういった面では安定的に、先ほども言いましたけれども、新たに障害者雇用をふやすために必要な制度について、どこかにある程度の期間ちゃんと財源があるというのは非常に大切だと思いますので、そういう面では長期的な財源を考えるというのは非常に重要な問題なのかなと思って聞かせていただきました。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
志賀委員の御発言は、どちらかというとワンストップサービスみたいなもので、制度がちょっと変わってもわかりやすくしてほしいということかと思います。それはそれで重要な論点だと思いますので、御意見として承りたいと思います。
その他、いかがでしょうか。
塩野委員、どうぞ。
○塩野委員 塩野です。
先ほどのご質問に対する回答にも少し関連しますが、雇用政策が安定的に遂行されるためには、やはり一定の財源の確保が求められます。論点にある納付金財政の健全化に向けた財政調整機能のあり方については、中期的な課題として引き続き検討していただきたいと思います。その際、まずは支出面に着目して、優先的に調整金、報奨金の見直しに取り組む必要があるのではないかと思います。
具体的な調整金、納付金のあり方についても発言をさせていただきます。調整金については、企業規模を問うことなく、支払われる額を引き下げるとともに、例えば同一障害者への支給期間を最長10年間にするなど、上限を設定する必要があるのではないかと思います。
一方、助成金については、ニーズにかなった新設や拡充をぜひ行っていただきたく、そのためにも十分な予算の確保が求められると思います。
納付金について、現行は一律で額が設定されていますが、例えば、法定雇用率の達成に近づいている場合には減額し、一方で、3年連続雇用ゼロなど一定の場合には増額する。このような実雇用率に応じた納付金額の変動も障害者雇用を一層促進していくためには必要なことなのではないかと思います。
最後ですが、先ほど長谷川委員からも少し関連のある発言がありましたが、A型事業所について、やはり一般就労の実態とは乖離していることから、制度としては納付金・調整金、報奨金の対象外とすべきだと考えます。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。
その他、いかがでしょうか。
では、長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 長谷川です。
先ほど、質問に答えていただいてありがとうございました。それも踏まえて考えたのですけれども、今の納付金とか調整金の金額の根拠になっているのが障害者を雇用するとどれぐらいのお金がかかるかという特別費用を実態調査して計算して、それに基づいて金額が決まっているとは思うのです。ただ、その考え方はどちらかというと、身体障害者の方を雇用するにはこの設備を変えなければいけないねとか、何か購入しなければいけないねということで、目に見えるコストがどれぐらいかかっているかというので計算していることが多い。そういったことを中心に計算式で出してきているのかと思うのですが、知的障害者や精神障害者の雇用がふえてきている中で、必ずしも目に見えない、お金に換算するのはなかなか難しいのだけれども、周りの従業員の負担増とかいろいろな意味でのコストがかかっているというのが反映されてきていないのではないかと私自身は思っています。
そうだとすると、今の納付金の額とか調整金の額は必ずしも実態を反映したものとはなっていない可能性もあるのかと思っていて、ここで、方針を転換して、これまでの5万とか2万7,000円に縛られないような形で大きく考え方を変えるというのもいい時期なのかなと思います。一つの考え方としては、先ほど塩野委員がおっしゃったように、達成に向けてすごく頑張っているところは納付金の額を減らしてもいいかもしれませんし、そうでない、やる気のないところにはもっとペナルティーの意味で納付金の額をふやすというのもあってもいいのかなと思います。
調整金に関しては、先ほど御意見をおっしゃってくださいましたけれども、大企業としては必ずしもそこを目的としているわけではないということですし、どちらかというと中小企業のほうがそういったものを必要としているのであれば、企業規模に応じて金額を変えていくのも有効だと思いますし、一定人数以上の部分はもう出さないというのもあってよいと私は思うようになりました。
最後にもう一つだけ、今、助成金の話が出ていますが、どうしても助成金は、納付金と調整金の収支を計算して残ったお金でどうするかということに今はなってしまっていますが、その結果、この間まで使えていたものが今年は使えないということで、すごくそれは不合理というか、現場の人がとても混乱することだと思うので、もっと助成金のところを安定させて、継続してそういったものが使える。時代が変わって必要なくなるようになってくれば、また考える必要があると思いますけれども、制度としてしっかりつくって、お金もしっかり出せる、それをわかりやすく提供していくということが求められているのかなと思います。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。
本條委員、御発言はありますか。どうぞ。
○本條委員 具体的な提案がなかなか出てきておりませんので、あくまでも一つの提案でありますけれども、申し上げたいと思います。
納付金と調整金によってできているわけでありますけれども、したがいまして、調整金を減らすか納付金をふやすかということになると思うのですが、納付金をふやすということをもう少し考えたらいいのではないか。確かに雇用率を達成していないところが納付するという制度でありますけれども、個々の企業にとっては雇用率を達成することが責任というか使命ではありますが、社会全体でいえば、全体として雇用率を達成するという、既に達成している企業にとりましても、社会的責任はあるのではないかと思います。
したがいまして、雇用率を達成しているところも広く浅く納入していただく。今の制度からいうと根本的に違う制度にはなっておりますけれども、そういうことも考えていったらいいのではないかと。その根拠は、大企業で多数障害者雇用をされているところ、より多くの雇用をしたならば、1人当たりの経費は低くなってくると思います。したがいまして、一定割合の納付をしていただくということは、企業イメージも上がるわけでありますし、社会全体、日本全体の雇用率、障害者の社会参加を促進するという社会的な責任を果たすことにもなるのではないか。その社会的な責任は全ての企業が負うべきであるという考えであります。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
その他、いかがでしょうか。
では、眞保委員、どうぞ。
○眞保委員 法政大学の眞保です。
ちょっとお聞きしたかったのですが、先ほどの長谷川委員のお話にもあった前回の資料で提示されたものなのですけれども、特別費用調査です。こちらでちょっとお伺いしたいのですが、先ほど長谷川委員から、どちらかというと障害者の雇用に伴う費用は身体障害者中心で算出されているのではないかという御発言があったのですが、これはそのような形で算出されるものなのでしょうか。どちらかというと、例えば身体障害者の方がもとの基礎データの中に多く雇用されている企業さんのデータが多いですとか、そのあたりのこのデータの中身を少しお聞きしたいと思います。これだけですと、特に身体障害者というふうには見えなかったものですので。
○阿部座長 では、お願いします。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。
済みません。ちょうど手を挙げようと思っていたところだったのですが、先ほど長谷川委員から、身体、精神、知的ということでお話があって、直感的にはそういう感覚は私もよく理解するのですが、調査上は当然、身体、知的、精神それぞれ雇用されている事業所に調査をしていますし、額としてもそれほど変動しないというのが調査結果です。おっしゃるとおり内訳が違うということで、身体障害の方を雇用する場合には施設整備を行うわけで、それを減価償却といいますか、耐久年度で割ってももちろん一定の額にはなるわけですが、施設整備にお金がかかる。
一方で、知的障害の方とか精神障害の方を雇っている会社を中心に、おっしゃった言葉をそのまま使うと、見えないコストみたいなものがないわけではないのかもしれませんが、少なくとも人的な配置というのはこの計算上には入っていまして、知的障害の方、精神障害の方を雇用する場合にどういう配置を行っているかということで費用のほうは出していまして、結果として、身体、知的、精神の中でそれほど大きく変わってこないというのが一つです。
あと、最終的にこの5万円あるいは2万7,000円という数字を出すに当たっては、雇用者の割合を割り戻しているところがありますので、そういう意味では身体の影響がかなり大きく出る額ではあります。ただ、少なくとももとになるそれぞれの数字がどれぐらい違うかというと、そんなにこの体制に影響するほどの変化はないと理解していますので、大体それぞれ同じような額になるということではあります。
○阿部座長 ありがとうございます。よろしいですか。
では、眞保委員、どうぞ。
○眞保委員 今のお話ですと、この納付金・調整金の制度そのもの最初の考え方は、これまで説明されていた議論は、基本的に一定程度雇用するにはコストがかかるでしょうと。それについて、雇用している企業さんに対しては、そのコストの分を雇用していない企業さんから納付金を集めて調整金、報奨金としてお支払いしましょうという考え方で設計されていると理解しているところです。そうしますと、今、言ったように、このように特別調査をして、大体このぐらいの費用がかかるという金額が決まっている以上、納付金を引き上げるというのは、全く違う議論を持っていかないと納付金の引き上げということにはなかなかなりづらいのかなと。ですので、やはり調整金のほうをどのようにしていくかということで、先ほど栗原委員からもお話がありましたけれども、人数で切ってしまうのがいいかというのはあるのですが、少なくともこのグラフを見ますと、人数が多くなるにつれてコストは逓減してくるということがありますので、人数において逓減して、出口のほうを少し見直していくということは考え方としてあるのかなと思います。
また、もう一つ、先ほど塩野委員からも出ましたけれども、企業規模に応じて見ていくというのも一つ、考え方としてあるのかと思います。コストということで考えますと、大企業のほうがコストがかかるのか、それとも最初の一歩、あるいは小規模な企業の中で工夫してたくさん雇用するほうがコストがかかるのかということは議論の余地がありますけれども、中小企業のほうを見ていくというのは今の時代のデータからして考えられることなのかなと考えております。
○阿部座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 日盲連の工藤です。
繰り返しになりますけれども、やはりどうしても公務員の国、地方自治体等の場合について発言しておきたいと思います。雇用促進法の中で事業主というのは、何も民間企業ばかりではなくて、当然、国とか地方自治体の長も入っているわけです。当然そこには雇用率も義務として課せられている。納付金だけで議論していくと、先ほど私が言ったように公務の場面で働く労働者の人たちには使えないということで、非常に矛盾が来ていると思うのです。これはある意味では、雇用率制度ということで義務づけていながら、もう一方の支援策というところで、事業主を経由して間接的に働く障害者の就労の支援、サポートしていくということなのですけれども、どうしても公務の部門については抜け落ちてしまうのではないかということです。そうすると、改めて先ほども言ったように、一般財源を導入するとか、それを考えないといけないのではないかと私は思います。
あと、事務局のほうで、公務のほうで雇用率が未達成の場合は勧告をしたり、そのように指導したりするわけなのですけれども、もう一方で、先ほど例に出したようないろいろな支援機器だとか職業訓練を希望しても、ジョブコーチに職場に来てほしいと言っても、そもそも公務員だからだめだということになってしまうと、ではどうすればいいのかと。これは障害者雇用対策課として、公務部門の事業所は、今言ったようなところでの指導は全然ノータッチでよろしいのでしょうか。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。
済みません、もう一度確認させていただきたいのですが、今言った指導というのは具体的に。
○工藤委員 例えば地方自治体だとかの職員が、今言ったように就労支援機器を導入してほしいと言っても、いろいろな理由で断られたりとか、そういう事例が少なからずあるのです。後を絶たないのです。そうすると、それは公務員だから総務省なのか、人事院の問題なのかという話になっていくのですけれども、障対課として、今言ったような矛盾しているというか、そういうことを解消するような方策を持っているのかどうか。そこをお聞きしたいと思ったのです。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。
障害者雇用促進法の合理的配慮については、例えば地方公務員の方であれば適用されることになりますので、そういう意味では指導の対象になると思います。ただ、一方で、どういう財源を使うかという話と指導というのは少し別であるかと思っていますが、指導自体は、事業所あるいは本人からの相談に応じて、どういった解決策があり得るかということを含めて御相談に応じていくことと、結果として、必要に応じて指導を行うこと自体はハローワークの所管ということになると思います。
○工藤委員 指導は了解しました。やはり財源というところで、予算がないとかそういうことで何年も措置してもらえないということがあるわけです。そうすると、やはりそこは納付金が適用されないとすれば、もう一つの公務部門に対する財源措置というのはあってもいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○障害者雇用対策課課長補佐 なかなか御説明の仕方は難しいのですが、障害者雇用促進法上の合理的配慮の義務がかかるかどうかということと、財政上の措置をどこが講ずるべきかということは、議論としては別の議論であると思っておりますし、特に地方公務員の場合には、当然にして地方公務員の処遇ということで考えていただくべき問題であるということもありますし、一般財源ということであれば、これは当然、国民の税金を使ってということになりますから、そういったことも含めてそれぞれの自治体なり措置を講ずるべき省庁において考えていただく以外にはないのかなと思っております。
○工藤委員 でも、一般財源ということであれば、やはり障対課が主導権をとって動くしかないのではないかと思うのですが、地方自治体に任せていいのかどうか。
○阿部座長 この場はいわゆる民間部門での雇用を前提に議論しておりますので、以前も私からお話を差し上げましたが、公務雇用と民間の雇用というのは性質がやや異なる面もありますので、ここはぜひ民間の雇用という場で議論をしていただきたいと。
ただ、納付金財政のところに国家公務員及び地方公務員まで含めて考えろということであれば、それは話としてはあるのかなと思いますけれども、今回、そこまで議論するつもりはないと私は思っております。
○工藤委員 でも、そういう問題があるということは、やはり押さえておいて。
○阿部座長 それは、先ほども御意見は伺っていますので、それ以上はここでは議論しないというふうに考えているということです。
漆原委員、どうぞ。
○漆原委員 前回、欠席いたしましたので、前回の論点に絡めての発言となってしまいますけれども、今回の論点の17ページに○が3つありますが、それぞれ書いてあることは、財政をどう健全化していくか、あるいは赤字になったときの対応も含めての記載だと思います。それとは直接関連しないかもしれませんが、○の2つ目にもありますように、大企業の調整金を一定程度抑制するということについて、その手法の是非はともかくとして、納付金財政の「出口」において「抑制」しつつ、その原資をどう生かしていくかが重要であると思います。例えば、週20時間未満就労のための環境整備ですとか、あるいは、まだ多くの障害者雇用のゼロ企業がございますが、そうした企業が障害者を雇用するための環境整備の促進に活用していただくことはいかがでしょうか。
これは多分、前回もこのような論点があったかと思いますが、発言できなかったので、今回改めて発言をさせていただきました。
○阿部座長 ありがとうございます。
その他、いかがでしょうか。
長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 長谷川です。
先ほどの発言で、眞保先生、御指摘していただいてありがとうございました。身体障害者だけを調査の対象にしているものだと言ったつもりはなくて、身体障害者を最初に雇用義務の対象で、そのところからの特別費用という考え方から来ているのだとすれば、やはり目に見えるようなコストを調査の対象にしているのではないかという懸念から、身体障害者の場合は目に見えるコストで計算がしやすいのではないか。必ずしもそうではないというのもあるのかもしれませんが、それに対して知的障害とか、特に精神障害者の方々は、外部から人的支援を得るといった目に見える形のもの以外に職場の中でいろいろな配慮をしていて、それが実はかなり職場としては負担感があるというものをコストとして見ることがなかなか難しいのではないかというような趣旨で発言をさせていただいて、そうだとすると、納付金とか調整金の額を計算することにもかかわってくるかもしれませんけれども、そういった負担感をどこでどうやって考慮すれば、特に精神障害者の雇用が進んでいくのかなということもあわせて考えなければならないなと思います。
以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○障害者雇用対策課課長補佐 念のため申し上げますと、人的配置ということで申し上げれば、例えば精神障害の方の雇用管理者みたいな方がいるとして、その方がどれぐらい実際にその方の雇用管理といいますかサポートに時間を割いているかということも、少なくとも計算上は出していただいていますので、負担感というレンジがどの程度かによって変わってくると思いますけれども、実際に雇用管理に当たっている時間の賃金であるとかそういったものは外部的なものだけではなくて、内部でサポートを行っている場合にも計算していただくようにお願いしている調査ではありますし、実際に入っているということかと思います。
その上で、負担感というもののより広い広がりという意味で言えば、しごとサポーターの広まりであるとか、そもそもの障害者雇用のノウハウがどう広まっていくかとか、あるいは理解がどう進むかという、まさに費用的な計算ができないものであったり、あるいは政策的にも具体的におっしゃるとおり物とか人ということではない、もう少し理解みたいなものも含めてやっていくべきという意味では、当然、中身というか、必要な政策が変わっているというのはおっしゃるとおりだと思います。見えるものだけではない費用があるというのもそのとおりだと思いますが、一応、単純な費用としてぎりぎり見えるものという意味では、内部的な人材配置の雇用管理費用みたいなものも入れてはいるということで御理解いただければと思っております。
○阿部座長 どうぞ。
○長谷川委員 あわせて聞いてしまっていいですか。例えば、これは精神障害者の方には限らないと思うのですけれども、急な欠勤とかそういった理由で、障害者の仕事を周りの人が分担してやらなければいけないとか、そういうイレギュラーな形ですね。そういったものも特別費用には算定されていると考えておいていいのですか。
○障害者雇用対策課課長補佐 周りの人がやる場合の費用まで入っているかというと、そこはどういう出し方を。少なくともルールとして我々から入れるということにはなっていないと思います。周りの人がその仕事をやった場合というのが、費用なのかどうかというのはなかなか難しいかと思います。
○阿部座長 理屈としては、機会費用という考え方もありますので、費用。
○長谷川委員 長谷川です。
負担感というものと費用がどのように関連しているのかはよくわからないのですが、例えば周りの人がかわって分担してやったことによって時間外労働が発生して、割増賃金が発生しているとなると、それは費用がかかっていることになるかと思うのです。そういうのも入るのだろうかとか、あと、別に時間外労働にならなくとも、今日はすごく忙しかったみたいな、大変だったねみたいなものは多分入ってこないのではないかと思って、そういうのをどう捉えていくべきなのかという関心から、いろいろ発言させていただきました。
○阿部座長 どうぞ。
○雇用開発部長 そこは非常に大事な議論だと思っています。ただ、一方で、制度の中で議論するにはある程度、どこかで仕切りをつけないといけないので、市場でどこまで費用として評価できるかというところだと思います。
一方で、負担感みたいなことになると、それをコストとして換算するのか、あるいはコミュニケーションがいいとか、お互いさまだねということになれば、どちらかというとベネフィットみたいな色合いも出てくるので、どこできっちりと線が引けるかというと、なかなか難しいなと思っています。どちらかというと議論としては、負担感というのもあるかもしれませんが、そういったことによって組織のコミュニケーションが上がるとか活性化するみたいなところも我々としては考えに入れていきたいと思っております。
○阿部座長 私の理解では、特別費用の調査で特別費用というのが計算されて、それをもとに納付金・調整金というのが制度としてあると。
ただ、長谷川委員のお考えをそしゃくして考えると、特別費用で現在は入っていないのだけれども、実際には負担感だとかいろいろな、もしかしたらそういったものも費用として考えられるのであれば、現在の特別費用調査で行われているようなものから離れて、納付金や調整金を考慮してもいいのではないかというふうにそしゃくさせていただいているのです。だとすると、眞保委員が先ほどおっしゃったように、どこまで厳密にやっているかは別として、特別費用をもとにした納付金・調整金だと限界があって、それをもとに考えなければいけないですけれども、長谷川委員の御意見ですと、それを考えずに少し柔軟に納付金制度、調整金制度を考えてもいいのかなということかと思いました。それでよろしいでしょうか。
○長谷川委員 そのとおりです。ありがとうございます。
○阿部座長 ありがとうございます。
ということで、この制度につきまして、いろいろなアイデアなり御意見を承りましたので、きょうの議論をもとに事務局で整理していただいて、まとめていただければと思います。
ほかに御発言がなければ、今回までで、今後の障害者雇用促進制度のあり方の論点については一通り御議論いただいたと思っております。次回以降、当初の予定どおり議論の取りまとめを考えていきたいと思っております。これまでの議論の中で、もし追加の御意見あるいは質問、確認したい点などがありましたら、この後でも結構ですので、事務局に御連絡をいただければと思います。ただ、どうしてもこの場で確認しておきたい、あるいは御意見があるということであれば御発言いただいても構いませんが、もし後日、御意見、御質問がございましたら、事務局に御連絡いただいても構いません。
それでは、よろしいでしょうか。
○阿部座長 では、次回の日程につきまして、連絡をお願いします。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。
次回、第14回について、開催日時等については改めて御連絡いたします。また、当然、14回目以降の内容についても事前に御相談したいと思いますが、特にということがあれば、申しわけありませんが、なるべく早くいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○阿部座長 ありがとうございました。
それでは、これをもちまして、本日の研究会は終了したいと思います。どうもありがとうございました。