【照会先】

労働基準局安全衛生部

 化学物質対策課化学物質評価室

室長
川名 健雄 (内線5508)
室長補佐
増岡 宗一郎 (内線5511)

(代表電話) 03 (5253) 1111

(直通電話) 03 (3502) 6756

報道関係者 各位

「平成30年度化学物質のリスク評価検討会報告書」を公表します

~1,2―酸化ブチレン等の化学物質について初期リスク評価を実施~

 厚生労働省の「化学物質のリスク評価検討会」(座長:名古屋 俊士 早稲田大学名誉教授)では、毎年度、事業場で使用されている化学物質による労働者の健康障害のリスク評価を行っています。このほど、ヒトに対する発がん性が疑われるなどの9物質に関する初期リスク評価(注1)の結果を、報告書としてまとめたので公表します。

 今後の取組として、「1,2―酸化ブチレン」については、詳細リスク評価(注2)に着手することとし、「ビフェニル」「ジフェニルアミン」及び「レソルシノール」については、経皮ばく露に係るリスク評価を行うこととします。また、こうした検討や調査などに先立ち、関係団体に対し、今回の報告書に基づく労働者の健康障害防止対策の徹底について要請します。

【リスク評価結果】

■ 「1,2―酸化ブチレン」
 初期リスク評価の結果、一部の事業場でリスクが高いと判定されたことから、詳細なリスク評価を行い、ばく露の高い要因等を明らかにする必要がある。
 
■ 「ビフェニル」「ジフェニルアミン」及び「レソルシノール」
 初期リスク評価の結果、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられるが、経皮吸収が指摘されている物質であることから、経皮吸収の観点も含め、リスク評価を確定させるべきである。
 
■ 「ノルマル―オクタン」「酢酸イソプロピル」「ジメチルアミン」「ビニルトルエン」及び「メチレンビス(4,1―シクロヘキシレン)=ジイソシアネート」
 初期リスク評価の結果、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられる(経皮吸収に関する情報も得られていない)。
 
※ リスク評価を実施した9物質は有害性の高い物質であることから、リスクアセスメントを行い、その結果に基づき、労働安全衛生規則第576条、第577条、第593条及び第594条(経皮吸収がある場合)等の規定に基づく措置を講ずることにより、リスクの低減に取り組むことが必要である。
*報告書(全文)は、以下の厚生労働省ウェブサイトに掲載しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04155.html
【参考資料1】リスク評価物質(9物質)に関する情報[PDF形式:98KB]
【参考資料2】検討会参集者名簿及び開催経緯[PDF形式:64KB]

<注1・2>
●化学物質による労働者の健康障害のリスク評価について
 事業場で使用されている化学物質の中には、その取扱いによっては労働者に、がんなどの健康障害を生じさせるおそれのあるものがあります。厚生労働省では、こうした物質について、「化学物質のリスク評価検討会」を開催し、「リスク評価」を行っています。「リスク評価」は「初期リスク評価」※1及び「詳細リスク評価」※2からなり、リスクの判定や対応に関する提言を行っています。
 
※1 「初期リスク評価」は、「化学物質のリスク評価検討会」の下に設けられた「有害性評価小検討会」や「ばく露評価小検討会」がそれぞれ行う「有害性の評価」と「ばく露の評価」を基に行います。
「有害性の評価」として、文献調査等から得られた情報を基に有害性の有無や程度等を評価するとともに、個人ばく露を評価するための基準値として「二次評価値」を定めている。「二次評価値」は、労働者が勤労生涯を通じて週40時間当該物質にばく露した場合にも健康に悪影響を受けることはないであろうと推測される濃度として、原則、日本産業衛生学会等の勧告するばく露限界値を採用している。
「ばく露の評価」は、「有害物ばく露作業報告」(労働安全衛生規則第95条の6の規定に基づく報告)の提出があった事業場のうちばく露が高いと推定される事業場を対象として実態調査を行い、労働者の「個人ばく露」の測定及び推定を行います。
「二次評価値」と「個人ばく露」を比較することにより、労働者に健康障害の生じるリスクの高低を判定します。
※2 「詳細リスク評価」では、初期リスク評価でばく露が高いと判定された物質について、問題となる作業工程を対象として追加的にばく露実態調査を行い、各事業場などに共通するリスクの有無を判定しています。

<参考条文>
●労働安全衛生規則
第576条 事業者は、有害物を取り扱い、ガス、蒸気又は粉じんを発散し、有害な光線又は超音波にさらされ、騒音又は振動を発し、病原体によって汚染される等有害な作業場においては、その原因を除去するため、代替物の使用、作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない。
 
第577条 事業者は、ガス、蒸気又は粉じんを発散する屋内作業場においては、当該屋内作業場における空気中のガス、蒸気又は粉じんの含有濃度が有害な程度にならないようにするため、発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置を設ける等必要な措置を講じなければならない。
 
第593条 事業者は、著しく暑熱又は寒冷な場所における業務、多量の高熱物体、低温物体又は有害物を取り扱う業務、有害な光線にさらされる業務、ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所における業務、病原体による汚染のおそれの著しい業務その他有害な業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない。
 
第594条 事業者は、皮膚に障害を与える物を取り扱う業務又は有害物が皮膚から吸収され、若しくは侵入して、健康障害若しくは感染をおこすおそれのある業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、塗布剤、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履はき物等適切な保護具を備えなければならない。