第2回働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会議事録

日時:平成31年2月26日(火)15:00~17:00
場所:厚生労働省 省議室
議題
(1)関係団体からのヒアリング➀
(2)その他
議事
○遠藤座長 それでは、定刻になりますので、ただいまより第2回「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」を開催したいと思います。
 皆様におかれましては、お忙しい中、御出席を賜りましてまことにありがとうございます。
 本日の出席状況について御報告をいたします。
 岡崎構成員より御欠席との御案内をいただいております。
 大澤構成員につきましても御欠席のため、群馬県より堀越参考人に御出席をいただいております。
 それでは、議事に入る前に、本日の配付資料につきまして事務局より説明をお願いします。
○山下年金局年金課企画官 事務局より皆様のお手元にお配りいたしました資料につきまして御案内いたします。
 まずお手元でございますが、議事次第、座席表、構成員の皆様の名簿、そして、本日ヒアリングに御出席いただきました皆様のお名前と御所属の一覧表、さらに資料1としまして一般社団法人日本フードサービス協会様からいただいている資料、資料2といたしましてUAゼンセンさんからいただいています資料がございます。
 さらに、皆様方のお手元に参考資料としまして、前回第1回のときの懇談会の資料としまして、資料2という形で御用意をしておりますが、御確認をいただきたいと思います。また、不足がありましたら、お手を挙げていただいてお申し出いただきましたら御用意いたします。お願いいたします。
 もしなければ事務局からは以上でございます。
○遠藤座長 それでは、議事に入りたいと思います。カメラの撮影の方はここまでとしてください。
 本日は関係団体からのヒアリングの第1回目を行います。本日、ヒアリングをお願いいたしましたのは、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会、一般社団法人日本フードサービス協会、日本チェーンストア協会、一般社団法人日本スーパーマーケット協会、UAゼンセン、以上の5団体でございます。
 それでは、各団体から御出席いただきました皆様を御紹介いたします。
 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会より、理事の菊池様。
 一般社団法人日本フードサービス協会より、常務理事の石井様と共済事業担当部長の栗城様。
 日本チェーンストア協会より、専務理事の井上様、執行理事の田沢様、労働委員会委員の渡邊様。
 一般社団法人日本スーパーマーケット協会より、専務理事の江口様。
 UAゼンセンより、常任中央執行委員で政策・労働条件局長の松井様、常任中央執行委員で総合サービス部門事務局長の原田様、流通部門執行委員の宮島様。
 以上の皆様にお越しいただいております。本日はお忙しい中、ヒアリングに御出席いただきまして、まことにありがとうございます。御礼申し上げます。
 これより御出席いただいた皆様から、雇用や就労の実態、これまでの被用者保険の適用拡大の実施状況、今後の制度見直しに関する御意見や御要望といったことにつきまして、1団体につき20分程度お話しいただければと思っております。
 その後、お話しいただいた内容につきまして、質疑応答の時間を1団体につき10分程度とりたいと考えております。限られた時間ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず公益社団法人全国ビルメンテナンス協会からヒアリングを行います。菊池様、どうぞよろしくお願いいたします。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 全国ビルメンテナンス協会で理事をしております菊池でございます。よろしくお願いいたします。
 今回、こういった場を設けていただきましてありがとうございます。
 関係団体といいますか、全国ビルメンテナンス協会に加盟されております会員数ですと約2,700、労働人口にして110万人ほどの雇用がございます。110万人全ての方からの背中を押されてというわけではないのですけれども、この適用拡大に向けては反対の意思表示をするように仰せつかって、こちらの出席になりました。
 現在、110万人とお話させていただいたのですけれども、この中に適用の見直しにかかわるパートさんが80万人ほどおります。ビルメンテナンス業界の特徴として非常に高齢の方を受け皿として業界は成り立っており、受け皿としての活躍の場という格好で評価をいただいておるのですけれども、昨今、環境の変化があって、夏場のすごく暑い時期、40度を超えるような暑さの中で働かれている高齢者の方たちであったり、日没、皆様のお仕事が終わった後、清掃にかかわる方であったり、非常に労働環境としては、仕事の内容に応じて賃金に上乗せして雇用関係が成り立っていかなければならないところなのです。そのような環境の中で今回の適用拡大によって、各社の経費負担が非常にふえていくであろうという流れがあるものですから、当然ここから先、最低賃金の大幅なアップがあって、今年度も多分3%ぐらい上がるのではないかという予測をすると、各社の費用負担が異常にここのところ、この3~4年にかかって高くなってきているというのが現状です。
 この会議に出席させていただくにあたって、業界の中で501人以上の従業員を雇用している企業にアンケートをお願いしたり、私どもの業界で毎年、行っている実態調査というものがあるのですが、そこから業界の平均的な企業の推計をしてみました。シミュレーションでは常勤が120名でパートさんが217名、パートさんが常勤の方より2倍多いということです。そういった中でこの適用拡大が図られるとなると、実質のところ経費負担としては労使折半のうち、使用者側だけでも月額で1万3000円程度、ふえるであろうというような試算が出ました。
 先ほどもお話したように、65歳以上の方が43%と、雇用の形態が偏っていて高齢の方が多いものですから、実際のところ1万3000円が給料から天引きという格好になったときに、月額の総収入が8万8000円以下の人というのは非常に多いわけです。7万であったり、6万であったり、そういった方たちから、働く意欲の喪失というのが結果につながり、このことが発生するとやめられる。この仕事をしてこれだけの収入しかないのであれば、やめてゆっくりとしていたほうがいいのではないかというようなことにつながる危惧があります。
 どこの業界も一緒だと思うのですけれども、慢性的な人材不足というのはとめようがなくて、最低賃金であったり適用拡大であったり募集にかかわる費用。地方から来ている私の身からすると、新聞広告を1行出すのに6,500円かかるのです。これが最低でも2行ないと募集にならない。1日、1紙面に載せるだけで1万3000円の経費をかけて募集をするのですけれども、各社さん一緒だと思うのですが、1人も電話がかかってこないことが常態化している。ここに来て適用拡大によって働く意欲を削がれるような格好のものが起こったときに、労働者がこれだけ減ってきているところにやめられると補充がきかない。そうなるとこの業界としては身売りをすると言ったらおかしいですが、M&Aとかそれこそ廃業に持っていかざるを得ないという企業さんがこれから多数出てくるのではないか。
 業界としてはぜひともそういったものはとめたいという思いが強いものですから、できるだけ皆さんこちらに今回構成されている方々と共同歩調で、法整備というのが、我々の業界は官公庁からの仕事を請け負う場合、年間契約の入札であり、1年間の収入が決まっている中で経費ばかりが膨らんでくると、赤字に転換してしまうということにもなりかねない。そもそも官公庁の入札では最低制限価格などの設定がない地方自治体であったり国であったり、そういったところがまだまだあるものですから、最低賃金以下で契約をしなければならない物件もまだまだたくさんあります。
 申し上げましたとおり、請負でしているこの業界なのですが、最低制限価格というものを設けてもらえないと非常につらいところがあって、1年間のお仕事をいただくために入札をして、より一層金額の安いところに落札をする。そうなると、それは自己責任ではないかと言われるかもしれませんけれども、仕事を確保するためにはそこまで踏み込まなければならない。最低賃金が上がる、こういった格好で社会保険全般の適用拡大、見直しがあると、取り巻く環境が余りにも経費の負担にかかわっての事柄が大き過ぎるものですから、できるだけ法整備を皆さま方にお願いして、発注者責任、発注者側に経費負担をどこまでお願いできるかということの法整備は困難だと思うのですが、そういった環境を整えていただかないと、これに対して真面目に向かい合って議論する環境にない。我々の業界に対してはまだそういった関係にないのかなと思います。
 多分、このビルメンテナンス業界のことは余り詳しく御理解がなかなかできないかなと思うのですが、最低賃金がこの4年間で780円から874円といった格好で上がっていっています。先ほどお話したように今年度も3%ぐらい上がっていくだろう。そして、できれば地方と大都市間の格差をなくして、時給にしたら1,000円近くまで引き上げていこうというお話まで聞かれる中で、地方に至ってはそこまでの契約更新をしていくだけのオーナー側にも余力がないと思います。そういった環境の中で、そこのいろいろな経費負担をどこにお願いしたらいいものなのか。もう既に利益率としては過去最低という業界の統計が出ておりまして、悲鳴に近いお話をそこここで聞いております。
 ここでお願いという格好のお話になってしまうのですけれども、今501人という格好でくくりをつけていただいているのですが、できましたら501人で進めていただくか、セーフティーネットといいますか、発注者責任、発注者がそういった格好で御協力いただけるような方向づくりをしていただけたら、こちらの一方的なお願いになるのですけれども、よろしいかなと思ったりもします。
 とりたてて一方通行でお話しているのがいいのかどうかちょっとわからないのですけれども、こういった格好でお話してよろしいでしょうか。第2回目ということなのですが、第2回目から初めて参加させてもらって、非常に緊張しておりまして、余り皆さんに御理解できるような御説明になったかどうかわからないのですけれども、2,700社余りは総意でこの適用拡大に向けては待ったをかけたいなといった御意見です。
○遠藤座長 率直な御意見ありがとうございました。大変よく事情が理解できました。
 それでは、これから構成員の方々との間の質疑とさせていただきたいと思います。ただいまの御発言に基づいて御質問、御意見等おありの方は挙手をお願いしたいと思います。菅原構成員、お願いします。
○菅原構成員 大変厳しい現状を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 概して人手不足は非常に深刻だということを指摘されておりましたけれども、外国人労働者の募集とか採用の実態ですね。具体的にどのような工夫を行っているのかについて、少し御意見を聞かせていただければと思います。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 外国人雇用に関しては既に始まってはおるのですけれども、全体的には大都市圏が非常に多く採用されているケースがあります。
 先ほど来、地方からの声をということで皆さんからお受けしているのは、当然この厚生労働省もしかりなのですが、非常に大きな建物が東京であったり、大阪であったり、愛知であったり、大都市圏は非常に大きな建物が建っているものですから、1日働ける場所というのは非常に多いのです。地方に行くと非常に階高の少ない、半日で済むとか2時間で済むとか、そういったところの物件といいますか、建物が非常に多いものですから、外国人の方を雇用したときに、2時間で外国人の方が来てくれるのか。雇用形態として成り立つのかといったところがまだまだ課題としてあるものですから、当然、雇用形態でこちらで2時間、あちらで2時間、こちらで3時間というような格好のつなぎをつけたらいいのではないかというお声も聞くことがあるのですが、実際にそれが可能かどうかということを考えていくと、まだまだ地方には働くところの環境が、我々がまだそこまでのレベルに達していないのか、もっと違うやり方があるのかもしれないということも考えると、ここでは明確な答えはできないのですが、窮状としてはそんな感じです。
○菅原構成員 もう一つよろしいでしょうか。今、短時間労働者の社会保険適用では、現在において従業員が501名以上の企業とそうでない企業との間に若干の差が今あるのですけれども、その差について短時間労働者の募集とか採用の面で何か影響が出ているということはあるのでしょうか。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 従来、短時間労働者をパートさんで募集したり、アルバイトで募集するというやり方というのは、面接をさせていただいたときに、雇用保険とか健康保険をかけていただきたいという環境にないような雇用を、当然2時間であったり3時間であったり、扶養者に入られて扶養の範囲内で働きたいという方の数が圧倒的に多いものですから、先ほどお話したように、これで仮に厚生年金、健康保険の費用がかかってくるという格好になってくると、パートさんで当然費用を抑えたいという雇用側の思いもあって、仮に月額6万円、7万円という格好の賃金が発生したときに、当然労使折半になるのですけれども、そういった格好が起こったときには多分雇用形態がより生まれにくくなっていくのではないか。
 既に短時間で雇用されている方に、厚生年金の適用になるというお話をして、これだけのお金がかかるというお話をすると、多分5人に3人はやめていくのではないか。高齢者というお話もあって、実際のところこれが理解できるかどうかわからないのですが、わずかな5万、6万円の収入を得て、この稼ぎの中からお孫さんにおこづかいをあげたいとか、何かを買ってあげたいという思いで働いていらっしゃる方というのは、まだまだいっぱいおるわけです。当然、法的に拘束されるようになったときには、それはしなければならないのですけれども、ただ、そうなったときには業界としては立ち行かないというか、成り立たない業界になってしまうのかなという思いはいたします。これがお答えになっているかどうかあれなのですが。
○遠藤座長 ありがとうございます。菅原構成員、よろしいですか。
 ほかに何かございますか。平川構成員、お願いします。
○平川構成員 いろいろ厳しいお話もございましたけれども、特に公契約、自治体との公契約についてです。一部の自治体では公契約条例つくって人件費分を算入するというところもありますけれども、多くの自治体は、地方自治法に基づいて入札価格が安ければいいという契約をするのは問題で、改善しなければならないなと思います。
 ただ、一方で今、厳しい労働力不足の時代の中にあるのですが、例えば社会保険の適用がありません。月5万、6万の範囲内の収入で働いてくださいという募集の仕方をしているということなのでしょうか。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 当然労働内容によって労働対価というものがあらわされると思っておるのですが、仮に朝8時から2時間での労働をお願いする場合に、最低賃金で考えますと800円としましたら1,600円ですよね。それが20日間であれば3万2000円。これが面接のときのお話での雇用関係、パートさんでの雇用という格好になるものですから、お互いにわかっての話し合いでの雇用関係になると思うのです。厚生年金であったり、社会保険であったり、そういったところの雇用にかかわって働きたい場合は1日仮に8時間働くであったり、7時間働くであったり、そういった環境の中での話し合いになると思うのです。現状でいきますと。
○平川構成員 逆に、この厳しい人手不足状態の中で、例えば社会保険がありませんという形で募集して、それが原因で人が集まらない。女性の意識が大きく変化し、長く働こうという方が多くなっていますので、そういう社会保険がありません、短時間で働いてもらいますという募集の方法が、逆に人が集まらないという原因につながっているのではないかと思うのですが、その辺はどう考えていますか。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 そういった方面から考えたことがなかったものですが、先ほど申し上げたとおり、高齢の方がお孫さんにお小遣いをあげたい、家計の足しにしたいという思いと、2時間とか3時間の清掃現場で人が足りないと言うような働きたい人と働いて欲しいという、いわば、需要と供給がマッチしているのが現状です。通常、我々の業務というのは、先ほどもお話したように、時間での賃金の支払い方という格好で考えていまして、半日以上、仮に1日6時間であったり7時間であったり、そういった格好の時間で働いていただく方に対しては、社会保険であったりそういった説明をして雇用契約を結ぶのですが、2時間、3時間の方が厚生年金に入りたい、社会保険に入りたいというケースはあるのでしょうか。逆にお話をお聞きしたいのですが。
○平川構成員 長く働いてもらうということです。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 既にこの業界に関しては、5年、10年と働いている方が非常に多くおりますので、そういった格好で考えると、社会保険がネックになって新しく採用ができないということはないと思っているのですが、これはまた考え違いでしょうか。ちょっとわからないのですが。
○遠藤座長 それでは、先ほどから手を挙げておられた榎本構成員。
○榎本構成員 私どもは中小・小規模事業者の団体でございますので、菊池理事のプレゼンテーションは非常に感じ入るところがありまして、ありがとうございました。
 そこで理事のプレゼンテーションと若干重なる部分があるのかもしれませんが、人手不足による廃業や倒産が増えている傾向にあるのかというのが1点と、中小企業の場合、人が集まらなかったら経営陣がその分をカバーリングしなければいけないという事情が多分にあると思うのですけれども、そういった非常に厳しい労働環境に置かれているような経営者の方がさらに出てきているのかという2点について、教えていただきたいのですが。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 私は徳島から今回こちらのほうにお邪魔させていただいているのですけれども、この業界というのはまだまだ浅い業界で、50年、60年ぐらいの、長くても60年ぐらいの創業を重ねているところが今、主流なのですけれども、たちまち世代交代が進んで、早いところだったら3代目の方、世代交代で血縁関係の中での事業者の継承ということでいくと3代目になる。もう既に3代目の方で30~40ぐらいの方になるのですけれども、常に現場で穴があくといったら欠員状態ですね。おやめになったり、病気でお仕事を離れなれなければならなくなったときに、経営幹部の方たちが朝の2時間、3時間のお仕事にかかわって、事務所に戻ってデスクワークする。そういったことが普通に起こっているというのが現状です。
 ですからこれを何とか変えなければならないという思いはあるのですけれども、既に後継者がいないところは身売りをするというか、大手に回収していただくという地方の業者さんというのはことしも話を聞いていますし、去年の段階でも話を聞いている。こういった流れがそこここで出てくるのかなと。経営が立ち行かなくなっていくかもしれないという思いはあるのですけれども、ただ単に人手がいないので、コンビニエンスストアと一緒ですね。夜間のアルバイトがいなくなってきたら、自分たちが夜間レジの前に立たなければならないという状態とほぼ似通った流れが、今この業界にも出てきているのかなと。大手の社長さん、これこそ東京の我々の業界の中でも大手の会長さんであったり社長さんがそういった環境の中にあるとは私は思っていないのですけれども、地方の業界の中では、そういったところがまだまだあると御理解していただけたらと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 先ほどお手を挙げになっておられた原構成員、お願いします。
○原構成員 簡単に2点だけ確認させていただきたいのですが、お聞かせいただいてありがとうございました。大体働いている方の働き方というか、週にするとどのぐらいの時間を働いている方がいるのでしょうか。多分まちまちかと思うのですが、20時間とか10時間とか、どのぐらいで働く方が多いかということと、もう一つ、年齢で先ほど高齢者といいますか、60代と60代後半の方もいらっしゃるということで、つまりは年金を受け取りながら働いているという方もいらっしゃると考えてよろしいでしょうか。
 以上です。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 今、我々業界の中で実態調査というものを2,700社で、回答率に毎年違いはあると思うのですけれども、その中でいきますと65歳以上というのは43%ぐらいおいでになります。この方たちが年々歳を重ねていくわけですから、その次の団塊の世代の方という格好でいくと、55歳からの雇用関係というのは今、一番若いほうの部類に入るのではないか。当然、30代も40代もいるのですけれども、圧倒的には65歳以上の方がこの業界には多い。
 そして、労働時間としては、先ほどお話したように2時間であったり3時間であったり、パートタイマーさんでいくと最長で4時間から5時間。5時間になるとパートさんになるのかどうかというのはちょっと疑問符がつくのですけれども、最長で4時間。ただ、ビルオーナーさんもいろいろな部分で経費がかかっていて、仮にここの部屋を毎日お掃除してくださいということが契約上あったとしたら、この部屋は2日に1回でいいですということになってくると、労働者の方たちが3時間働いていたところが2.5時間になったり、2時間になったり、そういう格好で仕様が抑えられてきているというのも現状なものですから、会社がそこの部分を吸収できたらいいのですけれども、労働者の方たちの雇用労働時間に仕様を変更されるためにかかってくるというのも現状にあります。
○遠藤座長 よろしいですか。それでは、大体お時間になりましたので、このぐらいにさせていただきたいと思いますけれども、もしどうしてもという方がいらっしゃれば。手短にお願いいたします。
○海上構成員 手短な質問で恐縮ですが、先ほど冒頭、110万人の雇用で2,700社、単純に計算すると1社400人ですけれども、これはパート80名を含んでの110万人ですか。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 そうです。
○海上構成員 そうすると、平均的な正社員数は110名ぐらいということですけれども、1社当たりそのぐらいですか。
○全国ビルメンテナンス協会菊池理事 先ほど来、お話したように大都市圏というのは非常に抱えていらっしゃる従業員の数が多いものですから、そういった格好を押し並べて平均するとそうなるということで、先ほどお話したように徳島から私は出てきているのですけれども、総従業員が100名、150名というのは普通の規模なのです。当然、全国展開をしていらっしゃる企業さんなんかは、総従業員でいくと何千人とか何万人という格好になるものですから、従業員の数としては格差が余りにもあるものですから、ですから一概にパートの比率がこうである、ああであるという格好では申し上げにくいのですけれども、全体的に押し並べていくと、110万人の中の80%ぐらいがパートさんであろうと思っております。
○海上構成員 分布には山があるにしても、平均的な人数で1社あたり100人ぐらいが多いが、なかには何万人もいる企業もあるというイメージですね。ありがとうございました。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、これにて公益社団法人全国ビルメンテナンス協会からのヒアリングは終了させていただきます。菊池様、本日はお忙しい中、お時間をとっていただきましてまことにありがとうございました。
 続きまして、一般社団法人日本フードサービス協会からのヒアリングを行いたいと思います。石井様、栗城様、どうぞよろしくお願いいたします。
○日本フードサービス協会石井常務理事 日本フードサービス協会の石井と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 私どもの協会でございますけれども、昭和49年に設立されまして、今年で創立45周年を迎える協会でございます。協会の概要でございますが、チェーン展開を志向する企業が集まっている協会でございまして、今、外食産業の市場規模が約25兆円と言われておりますけれども、私ども会員企業の年商額を合算いたしますと推計で7兆5000億円という数字になっております。
 本日、事前にいただきました御質問に沿って、あるいは沿えない部分もあるかもしれませんけれども、御回答を申し上げたいと思います。きょうは資料を提出しておりますので、それをまずお目通しいただければと思います。
 1つ目の質問でございますけれども、短時間労働者の雇用を取り巻く環境変化、企業経営に与える影響についてでございます。
 まず外食産業の特徴を申し上げます。御高承のとおり、外食産業というのは労働集約型産業でございまして、人的サービスの比重が大きく、質の高いサービスを提供するためには、すぐれた従業員の確保、人材育成が必要であります。生産性の向上とともに労働環境の改善と活力のある職場づくりが今、外食産業にとって欠かせません。
 少子高齢化が急速に進行している現在、労働力の確保、特に短時間労働者の確保は一段と厳しくなっております。外食各社に人材確保として外国人留学生、就学生を含む学生や主婦のみならず、シニア世代など就労ニーズに合わせた就業形態の開発、業務プロセス全体の見直しによって、フルタイムで働けない人にも働けるような仕組みづくりを行い、こうした人材の豊かな知識あるいは経験を有効活用している企業が増加しております。
 特に外食産業は、女性スタッフに支えられていると言っても過言ではございません。これからも女性活躍の推進は重要な取り組みでありまして、出産、子育てを終えた主婦層に継続して働いてもらえるよう、短時間労働者の正社員化の推進など、さらなる戦力化に向けた取り組みも増加しているところでございます。
 また、シニア世代には能力を発揮して活躍してもらえるよう、本人の希望などを踏まえて働き方の仕組みを工夫することも必要で、既に企業においてはシニア世代が働きやすい店舗開発、職場環境の整備等にも着手しているところでございます。
 企業経営に与える影響といたしましては、私ども協会の外食産業経営動向調査によりますと、今後の経営の圧迫要因として96.3%の企業が人件費の増加を回答しております。
 質問2でございますけれども、これまでの適用拡大が働き方の変化も含め、短時間労働者や企業にどのような影響を与えたかでございますが、昨年7月に私ども協会では会員企業を対象とした調査を行いました。それによりますと、短時間労働者の比率は従業員数の91%を占めております。その内訳ですけれども、学生が46%、主婦が32%、フリーターや65歳以上の高齢者等が22%となっております。主婦の年齢層でございますけれども、20~40歳代が69%で、子育て年代がその中心を占めているような結果になっております。
 平成28年10月以降の短時間労働者の1週間の所定労働時間でございますけれども、20時間未満が69%となっております。平成23年度に私ども同じように調査したのですが、その当時は56.1%という結果になっております。ということは平成28年度10月以降、20時間未満で働く短時間労働者の方々が増加していることになろうかと思います。
 短時間労働者の月額賃金でございますけれども、協会調査によりますと8万8000円未満が71%となっております。仮に適用要件の賃金要件の引き下げなどが行われた場合ですけれども、適用拡大の対象者は相当の人数に上ることが予想されます。ちなみに短時間労働者の勤続期間でございますが、1年以上が58%、3カ月未満が13%、3カ月以上6カ月未満が11%、6カ月以上1年未満が18%となっております。
 平成28年10月以降の適用拡大が就労調整を生み、結果として労働力不足の原因になったかどうかについても質問いたしました。その結果でございますけれども、➀労働力不足の原因となっている」と回答した企業が36%、➁といたしまして、「どちらかというと労働力不足の原因となっている」が42%、労働力不足に影響はないという回答が21%という結果になっておりまして、➀と➁を合計した約8割の企業で労働力不足の原因になったと回答しております。
 短時間労働者が社会保険の適用拡大を望まない理由といたしましては、「手取り収入が減るから」が90%、「健康保険の扶養から外れるから」が79%、「配偶者控除を受けられなくなるから」が51%、「配偶者の会社から家族手当が支給されなくなるから」が47%という結果になっております。
 また、これらを反映してか、平成29年4月からの労使合意による適用拡大の選択肢に対して、93%の企業が適用事業所にならなかったと回答しております。その最大の理由といたしましては、「2分の1以上の合意がなかった」ということになっております。企業側といたしましては、人手不足の現状下でできる限り長く働いてもらうことを望んでおりますが、短時間労働者のほうが適用拡大を望んでいないというような状況が窺えます。
 さらに、これ以上の適用拡大については「反対」が81%、「どちらともいえない」が17%で、「賛成」は1%という結果になっております。
 質問3でございますけれども、現在、設定されている要件によって生じている問題や改善すべき点について申し上げます。
 就労調整の理由につきましては、先ほど御回答申し上げましたが、厚生年金保険は保険料負担に対して老後の年金額もふえる一方で、パートで健康保険に加入していても既に配偶者の健康保険に加入している場合も多いということが挙げられますが、この場合、保険料負担が増えるだけになってしまうことが多く、健康保険料を含めた社会保険料の負担と受益のバランスについて、否定的に捉えているということが窺えます。
 就労調整の理由の一つに、配偶者控除の適用を受けられなくなるというのがありますけれども、配偶者控除については平成30年から税制が改正され、いわゆる103万円の壁は緩和されたと言えますが、適用拡大はこうした総合的な政策と一体で就労調整インセンティブの解消と歩調を合わせて慎重に検討すべきであると考えています。社会保険の適用拡大を厚生年金、健康保険の一体で考えるのではなく、例えば健康保険については、引き続き夫の扶養となることを認めることや、適用拡大に伴う健康保険料負担増に対する軽減措置なども必要だと考えております。協会といたしましては、就労調整インセンティブの解消を伴わない適用拡大には反対という立場です。
 まず適用拡大ありきで議論を行う前に、国民年金の未加入・未納問題、国民年金の空洞化対策など、抜本的な取り組みが必要だと思います。年金制度には国民の根強い不信感もあり、国民年金の空洞化対策など抜本的な議論もお願いしたいと思います。
 質問4でございますけれども、事業主負担の増加について、これまでの適用拡大においてどのように対応してきたのか。今後さらに適用拡大していく際の課題について申し上げます。
 私ども外食産業は、飲食業から外食産業と言われるような産業化をたどる過程で、これまでさまざまな課題に対して多様な取り組み、多様な手法を取り入れて、技術革新、経営革新への努力を行い、人件費、食材費、物流費など、さまざまなコスト増に対応してきたところです。しかしながら、接客、調理など、外食産業は冒頭申し上げましたけれども、人的サービスがその根幹にございますので、特に人件費の削減は限界に来ているというのが現状でございます。これ以上の適用拡大による事業主の負担増は、企業収益の大幅な落ち込みや赤字経営を強いられることにもなりかねません。
 前に申し上げましたとおり、外食産業は従業員数の約9割以上が短時間労働者であり、協会調査によると、その7割強が月額賃金8万8000円未満に抑えているということでございますが、これ以上の適用拡大を行った場合、一気に社会保険の適用者が増加し、企業収益にも極めて大きなダメージをもたらすことは確実な状況でございます。仮に適用拡大を行うとすれば、短時間労働者の多様な働き方や雇用機会を奪いかねません。
 それから、短時間労働者の家計を圧迫し、個人消費にもマイナスをもたらし、景気にも悪影響を与えかねません。さらに出産に対する抑止力も働き、少子化を助長することにもつながりかねません。
 保険料のさらなる増大により、特に中小企業が大宗をしめる地方の外食企業は、経営危機に追い込まれ、ひいては地方の雇用にも大きな打撃を与えかねます。
 外食産業は、日本農業の最大のユーザーであり、農業のパートナーとして欠くことのできない産業であり、適用拡大による外食企業の経営悪化あるいは疲弊は、日本の農業や食品産業など、関連産業にもマイナスの影響を及ぼしかねません。
 標準報酬月額の低い短時間労働者が健康保険に加入することにより、健康保険組合の財政悪化ということも十分懸念されるという状況でございます。
 以上でございます。
 補足説明で栗城から御説明申し上げたいと思います。
○日本フードサービス協会栗城共済事業担当部長 補足させていただきます。やはり外食業界にとって一番大きな適用拡大の問題というのは、人件費増加による企業収益への圧迫ということで、決して外食産業は利益率の高い産業とは言えない部分がありますので、現に近年、人件費増加によって企業収益が赤字に転落するといった事例もございます。
 ただ、もう一点、大きな話として質問2でございますけれども、外食産業は9割超は短時間労働者で支えられている業界でございまして、学生が一番多いのですけれども、2番目に主婦層が32%を占めています。その属性まで詳細に把握はできていないのですが、恐らくは、その大半がいわゆる国民年金、第3号被保険者であろうということで考えますと、社会保険の適用でなければ健康保険は夫の扶養に入っている。年金のほうは夫の厚生年金保険料の範囲で基礎年金の受給ができる。これが社会保険の適用になると一気に自分で負担をしなければいけないということで、年金は基礎年金に加えて報酬比例部分がもらえるという受益があるわけでございますけれども、健康保険に関しては単に負担が増えるだけ。
 協会の方でモデル的な形ということで内部で試算をして、週22時間勤務をしている第3号被保険者、年収で週22時間、首都圏の大体最低賃金ということで時給が900円、これでいきますと年収が約95万円。ここから社会保険適用になりますと年間でほぼ16万円、社会保険料の負担が出てくる。非常に大きな負担だと思います。
 これをやはり手取り収入が減るのは困る、何とかカバーしようとなると、週5時間、ですから週22時間を週27時間に就業時間を増やしますと、この16万円の手取り減が何とかカバーできる。ただ、第3号被保険者は専業主婦でございますので、子育てであったり家事、いろいろなところで何とか時間を捻出しながら夫の収入、家計を補助している。こういう方々が非常に多くいらっしゃるという中で、週5時間単純に時間をふやせばいいではないかと言っても、なかなか現実はそうはいかないということがあって、そうなるとそういった方々が、では時間を減らそうと、若干収入が減っても社会保険料の負担がないという状態にすれば手取り収入は大きくは減らないではないかと。むしろ就労時間短縮の方にインセンティブが働いてしまうというのも現実ではないかと思います。
 先ほど石井の説明で、平成23年の調査では週20時間未満というのは56%しかなかったのですけれども、直近の調査で69%、13%、20時間未満の方々が増えてしまっている。やはり28年10月からの適用拡大の影響が、この第3号被保険者に影響を強く及ぼして、就労調整の強いインセンティブを与えてしまっていることの顕れではないかと考えてございますので、税制等も含めた総合的な枠組みの中でそういった就労調整のインセンティブを解消することが、適用拡大には非常に必要なことではないかと考えてございます。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの話に関して御質問、御意見等を承りたいと思います。いかがでございましょうか。海老原構成員、どうぞ。
○海老原構成員 大変な事情、よく存じますけれども、1つ聞きたいのは、学生が一番短時間労働者で多かったのですよね。学生って、国民年金とか猶予者になっていて、卒業するときにどかっと払わなければいけないではないですか。とすると、これは加入をしておいてちょっとずつ払ってくれる。企業と折半になっているというのは、うれしいことではないかと思ったのですが、それはいかがですか。
○日本フードサービス協会栗城共済事業担当部長 第1号被保険者の話が漏れましたけれども、第1号被保険者につきましては、おっしゃるとおり適用拡大というのはメリットだと感じる方々もいらっしゃるのではないか。今の御指摘で学生についても猶予してやるよりも、むしろ適用になって払ったほうが将来の年金が多いのではないかと考える方々がいらっしゃるというのは事実ではないかと感じます。
○海老原構成員 そこのみにうまく適用できるのだったら、これはWin-Winになる可能性があるということですか。
○日本フードサービス協会栗城共済事業担当部長 おっしゃるように就労調整も学生、主婦、専業主婦、いろいろな層がいらっしゃいますので、それぞれの層にとって適用拡大はメリットのほうが非常に大きいんだというような制度であれば、検討し得るのではないかと考えてございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでございましょうか。それでは、田中構成員。
○田中構成員 私は働くお母さんたちを集めていろいろ声を聞いている活動をしている田中といいます。昨今、働く女性を応援しようという向きの中で、私自身も周りのお母さんたちの向きを見ていますと、小学校高学年以上でまずパート、アルバイトに出ていって、だんだん子供の手を離れてきた40代に入って45歳ぐらいの間に仕事へのやる気が出てきて、パート、アルバイトからフルタイムになっていくという傾向があるようです。もっと言うと子供もどんどん手が離れていくので自分の時間がとても出てきて、自分の働くモチベーションを考えていきたいという風潮が世の中の雰囲気としても成り立ってきているかなと思えます。しかし、どうしても先ほどの雇用調整をしながら1日4.4時間の中におさめる。週27時間にすると5.4時間、1時間ちょっとふえるということが壁というふうに多分、平均でとると統計上はそうなのだと思うのですが、そこを超えてフルタイムで働いてみませんかと促し、そうすることで自分の将来の安定ですとか、夫側の給料に頼らずとも自分でも自立し、もっと働きましょうという働きかけは女性に対して、業界として後押ししていくような向きはあるのでしょうか。
○日本フードサービス協会石井常務理事 年齢別に主婦の方々を調べてみたのですけれども、今お話にありましたように、子育てがひと通り終わった50代の方、これが大体21%で、60歳代が9%で、さらに元気で頑張っていらっしゃる70歳代の方が1%、そのような内訳になっているのですが、実はパートさんの中にもいろいろな方々がいらっしゃると思います。例えば家計を支えるためにフルタイムあるいはそれに近いような形で働く方、あるいは子供の教育費を捻出するために働く方、あるいは家計にゆとりをもたらすために働く方、いろいろな方々がいらっしゃると思います。そうした中で企業といたしましても、これは業界の共通認識ですが、人手不足の時代ですから一度、採用したらできる限り長く働いていただきたいと考えております。
 平成28年の10月の適用拡大に際しましても、この枠を超えて働きますか働きませんかということをお一人お一人に店長、あるいはスーパーバイザー、本部が面接などを行い確認をしたわけなのですけれども、結果としては就労調整を行うというような方が多かった。ただ、企業としてもできる限り長く働いていただきたいということから、例えばいわゆる103万あるいは106万、130万円の壁。これらの3つの壁を越えてこれぐらい働くと実質賃金が増えますよということを丁寧にシミュレーションしながら、それで御本人の選択していただいたという、丁寧な説明はしているかと思います。
 以上です。
○遠藤座長 田中構成員、どうぞ。
○田中構成員 今おっしゃられていたヒアリングは、平成28年度に実施されたということですね。希望としましては、刻一刻と女性の気持ちというのが社会的に変化していくので、今、調査されると、またさらに違った結果が出てくるのではないかなという感想ですけれども。
○日本フードサービス協会石井常務理事 今、御説明申し上げたのは、平成28年10月の適用拡大あたり、半年ぐらいのスパンをかけて丁寧に説明を行って、その結果がこういう結果になったということでございます。
○田中構成員 あと一つだけ、これも感想で恐縮なのですけれども、多くの少子化の話で言うと、子供を産まない理由の一番に経済的な理由、経済的な安定というのを女性だけではなくて、若い男性のほうも持っているというのが理由の一番になっているということと、次の第二子の壁というものが経済的な理由で、安定した収入がないということが一つの理由になっているので、働く母たちの希望としては、なるべく安定した収入と将来の保障をいただけるということが、長く雇用をさせていただける条件になってくるかなと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでございましょうか。原構成員、お願いいたします。
○原構成員 今のことに関連して確認させていただきたいのですが、先ほど女性の主婦層が短時間の多くを占めている。主婦が32%ということで調査を行っているということですが、これは20代、30代、40代の主婦の方についても第3号の方は結構いらっしゃるのかということと、そういった方々もそのヒアリングにおいて、先ほど50代からと聞こえたのですが、若い方々についても調査については時間を短くする傾向、就業調整をする傾向が働いたかということをまた確認させていただければと思います。いかがでしょうか。年齢別に何か差があったか、。第3号の方の適用拡大のときのアクションというか、行動について年齢別に違いがあったかをお願いします。
○日本フードサービス協会栗城共済事業担当部長 第1号被保険者、第3号被保険者、その内訳とか詳細に調査を深掘りしようとすると、回答率が下がるという問題もございますので、そこは詳細には捉えてございませんけれども、いろいろ実態のヒアリング等々を踏まえますと、むしろ20代から40代、7割近くがこの年代が占めてございますが、この中にむしろ第3号被保険者の方々が多いのではないかとは推測をさせていただいています。
○日本フードサービス協会石井常務理事 加えて申し上げますと、私どもの協会には健康保険組合がございまして、そちらのほうでも平成28年10月の適用拡大に当たって、どれぐらいの方々が対象になるのだろうかということを調査しまして、その結果、約2万5000名というような人数が挙がりました。現在、28年10月以降、適用拡大によって社会保険の被保険者になったという方々が大体7,000名ということでございまして、その加入比率はやはりまだ7割程度ということで、これが実態だと思います。
○遠藤座長 ほかにかがでございましょうか。
○佐久間構成員 きょうはどうもありがとうございます。業界の率直な厳しい状況、そして、人件費負担がかなり厳しいという状況を伺いできました。ありがとうございます。
 そこの中でパートさん、今、問題になっていますけれども、いわゆる壁というのは年代年代というか、それによって百何万とか、時間の関係とか、人数規模によってもそれが一つの壁というもので、そこに合わせてくるというのは労働者というかパートタイマーは当然のことだと思います。
 そこの中で今の外食産業、飲食業になりますと、外国人の新しい特定技能のほうでも外食業が来ています。この新たな外国人の方を入れた場合、どちらにしても直接雇用ですから、やはり社会保険の関係というのは負担が増加してくることがあると思うのですけれども、その辺でパートさんを皆さん方これから現状の時間数を維持しながら入れていこうとしているのか。人手不足も外国人の関係で入れていこうとしているのか。それともパートさんが集まらないのだったら外国人を入れていこう。それによってまた社会保険料が負担増になってくると思うのですが、その辺の方向性というか、これからなのでわかりませんけれども、考え方を教えていただきたいです。
○日本フードサービス協会石井常務理事 まず特定技能1号に関してでございますけれども、今お話にありましたように、この4月から今まで工場ですとかセントラルキッチンで技能実習生という形でしか受け入れができませんでしたが、店舗でも働けるということで、私ども業界としては重く受け止めており新たな外国人材の受け入れというのは、安価な労働力を補うためのものではないというふうに私どもは申し上げております。
 5年間で最大で5万3000名という上限数値、これが受け入れの最大数値と言われておりますが、これは何も協会のほうで試算したわけではございません。これは役所のほうで試算した数字だと承知しておりますけれども、いずれにしても5万3000人程度、この方々が入ってきたとしても人手不足の解消にはならないと思いますし、これから試験を受けて外食産業に入っていただく方々には、外食産業の職場を愛情あふれる職場にしていただきたいと国会議員の先生方からもエールを送られているところです。つまり安価な労働力として受け入れるのではありませんよということを外食企業の方々に周知しております。
 具体的に正社員と同等あるいはそれ以上の報酬でお迎えすることになりますので、企業としては給料、賞与あるいは渡航費も必要になるかもしれません。それから、雇用保険、社会保険、そして残業代、住居手当がある企業には外国人の方々にもきちんとお支払いしなければいけない。それから、目に見えないコストとしては外国人材を受け入れるためには日本人の方の教育コスト、これも相当かかってくるということで、外食産業としてはお一人の外国人の方を受け入れるためには、相当な覚悟を持ってこの問題に対応しなければいけないと考えているところでございます。
○遠藤座長 佐久間構成員、よろしいですか。
 そうしましたら、酒向構成員から永井構成員の順番でお願いいたします。
○酒向構成員 被用者保険の適用要件における企業規模要件について、協会の中でどのように受けとめられているかという点をお伺いできればと思います。
○日本フードサービス協会栗城共済事業担当部長 申しわけございません。御質問をもう一度、お願いできますでしょうか。
○酒向構成員 企業規模の要件で501名のラインがあることについて、協会の中で様々な会社がおありになると思いますが、どのように受けとめておられるのでしょうか。
○日本フードサービス協会石井常務理事 現在、501人以上という企業規模の要件についてですか。
○酒向構成員 はい。
○日本フードサービス協会石井常務理事 これをどう評価するかということですか。
○酒向構成員 そうです。
○日本フードサービス協会石井常務理事 正直言って、働き方に中立なのかどうかというと、非常に協会としては疑問を持っているところです。501人というバーを引くこと自体が、前回の適用拡大のときに問題だったと思います。そもそもパートで働いていらっしゃる方は、自分の会社が501人以上かどうかというのはなかなかわかりません。これで勤めて初めて適用拡大の対象の事業所あるいはそうでないのかということでわかるわけなのですが、そもそも501人以上という規模が適正かどうかというのは、正直問題だと思います。
○遠藤座長 それでは、お待たせしました。永井構成員、お願いします。
○永井構成員 3号被保険者であったり、パートタイマーの働き方が多様化しているというお話があったと思いますけれども、私の理解では、外食産業では、例えば副業・兼業を見たときに、外食産業と外食産業を掛け持ちして働かれている方がそれなりにいらっしゃると聞いておりまして、そういう現状があるのかということと、そういうことがある中で、そういう人たちに対して、多様な正社員も含めて社会保険に入るような働き方としての正社員化をするような動きがあるのかどうか、お伺いできればと思います。
○日本フードサービス協会石井常務理事 恐らく掛け持ちの実態というのは当然あるかと思いますけれども、協会としてはその数値は残念ながら把握できてないところです。
 それから、正社員化の問題です。これは実は外食産業としては正社員化の道を開いている企業というのが、協会の調査によると約8割ということでございます。そこまで道を開いていながらなかなか正社員になっていただけないというのは、御本人が正社員の責任を負ってまで働けない、あるいはそれぞれ働ける時間ですとか勤務できる曜日ですとか、そういったものが狭まってしまうということで、恐らく短時間労働者の方々がみずから多様な働き方を選択しているのではないかと考えております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 まだ御意見あるかと思いますけれども、予定していた時間になりましたので、このあたりで一般社団法人日本フードサービス協会からのヒアリングは終了させていただきたいと思います。石井様、栗城様、本日は本当にお忙しい中、お時間をとっていただきましてありがとうございました。
 続きまして、日本チェーンストア協会と、一般社団法人日本スーパーマーケット協会からのヒアリングを行いたいと思います。井上様、田沢様、渡邊様、江口様、どうぞよろしくお願いいたします。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 チェーンストア協会の井上と申します。
 本日はこのような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 チェーンストア協会は、地域あるいは全国にチェーン展開をするスーパー、ホームセンター、専門店が集まっているところでございます。
 きょう私のほうからは、まず企業の視点に立っての特色あるいは環境、適用拡大についての考え方、その後にパート労働者の視点に立っての話ということで進めさせていただきます。
 小売業は御承知のとおり労働集約の産業です。のみならず、従業員の4分の3以上がパートさんということで、パートさんが実際のお店を動かしていると言っても過言ではないわけであります。
 そして、そのパートさんですけれども、お住まいの近くにあるお店の中から、御自分の御事情に合ったところを選んでパートをするということが通常であります。働き手の方々、これはさまざまな御家庭の御事情があるわけでございまして、週1日なら働ける、あるいは子供が学校から帰ってくるまでなら働けるという方から、フルタイム働けるという方もいらっしゃいますし、また、その仕事の内容についても難しいことはやれない、あるいはやるつもりがないという方もいらっしゃれば、何でもやりたいという方もいらっしゃる。したがって、企業側としてはこういうさまざまなニーズを踏まえて柔軟、多様な労働条件あるいは正社員への登用制度、こういったさまざまな労働条件を用意して、したがって、チェーンストアはちょっと口幅ったいですけれども、働き方改革の先頭を行く産業だろうと自負しております。
 そのようなチェーンストアですけれども、最近の状況を申しますと、日々のお客様が我々を支えていただいているわけでございまして、日常の消費を担うわけです。日常の消費ですけれども、長引くデフレを背景として、少しでも安いお店に行きたい、あるいは特売しているところを探して買い物をする。こういう節約志向が常態化しておりまして、したがって、チェーンストア協会のほうでも昨年の売り上げは2年続けて前年割れという厳しい状況となっています。
 そういう中にあって、人手不足を背景とした人件費アップは各社の経営を圧迫しています。特にパートさんの賃金など、労働市場の需給状況に敏感に反応いたしますから、例えば都市部では時給千数百円というところも少なくないわけでありまして、それでも企業側からすればパート労働者の方々の確保は事業遂行上、必須ということです。実際にパートさんが採用できずに店の開店を延期したとか、そういうケースも出てきています。
 したがって、人件費などのコストアップが経営を苦しめているということはあるわけですけれども、それ以上に何としてもパートさんに来ていただくことが喫緊の課題になっている。こういう人手不足の厳しい状況ということでございます。もちろんセルフレジであるとか、ITの活用を模索する動きは当然あるわけですが、それが現実に普及するというのはまだまだ先の話だろうと思います。
 よくアベノミクスで日本経済は回復したということで、マクロ的には誤っている話ではないと思うのですが、それは円安などの恩恵を受けた輸出企業が中心の話でございまして、我々のような内需型産業あるいは消費者の方々は、円安はかえって輸入物価の上昇ということで向かい風になるわけですし、消費は力強さを欠けたままなので、なかなか我々のところまでこの経済回復の恩恵が及んでいないということでございます。また、業界の利益率も、1~2%程度という薄利多売で息をつないでいるという業界でございます。
 そういう中で2年前の適用拡大ということでございます。もちろん各社の対応はいろいろでございますので、一律には言いがたいところがございます。しかしながら、さきに述べたように小売業界は人件費などのコスト上昇に苦しんでいる以上に人手不足、これを何とかしなければいけないということでございますので、企業として人件費負担を回避するために全員を短時間化させる。こういう対応というのはとるはずがない、とれるはずがないわけでございまして、保険料負担はもちろん痛いわけでありますけれども、働ける人、働いてほしい人たちには長時間働いてもらいたい。こういう対応というのも少なくなかったわけでございます。
 一方で、しかしながら働く側ですね。これは働きたくても御家庭の事情等々でなかなか働けない、あるいは保険料を負担してまで働く気持ちはないという方も少なからずいらっしゃって、多様なわけであります。ですから企業側としては働き手の事情、希望といったニーズと企業側のニーズ、これを一つ一つ丁寧に調整をしていくわけですけれども、当然ミスマッチも起こってくるわけでございまして、したがって、業務効率というものが落ちますし、人事管理面での手間暇もばかにならないということでございます。
 また、適用拡大に伴って企業、働き手側双方に保険料負担が重くのしかかったということは言うまでもございません。当然、企業によって従業員の構成なども違いますので、ここで定量的あるいは統計的なことは申し上げられないのですが、非公式に聞くと、数億円あるいは数十億円の単位でコスト増になっている企業も少なくないようでありまして、これは利益率ぎりぎりでやっている中、極めて厳しい経営圧迫要因となっております。もしこの時間あるいは金額というものに着目して、さらなる拡大というものがされたら、小売業界にとって極めて深刻な事態を招くものと言わざるを得ません。
 加えてこの金額の多寡はいろいろでしょうけれども、企業の社会保険料負担増については、これが仮に適用拡大がなければ、これらを賃金のほうに回せたわけでございますので、働く側にとってみても適用拡大というのは、給料をもらう機会のロスになったということもできるのだと思います。
 前回の適用拡大で、もう一つ、501人という要件が設けられましたが、これは大問題と思っています。企業側から見たら501人というところで競争条件がゆがめられますし、働く側から見て従業員の規模、その大小によって社会保険の扱いが異なるというのは合理的ではないだろうと思います。仮に政府が言われるように、働き手にとって厚生年金に加入するほうが将来の保障の充実につながるいいことだということだとすると、501人のところで線を引くというのは、500人以下の企業で働くことはそうではないというメッセージにもなってしまうわけですから、変な話だなと思います。
 また、仮にと申し上げましたが、現実起こっていることは、その逆でございまして、多くの働き手の方々はその逆のほうを向いています。すなわち、これは後ほどにもつながってくることなのですけれども、多くの働き手の方々、パートさんは目の前の負担を嫌うということが現実です。ですからその501人以上は社会保険の強制加入となったことに伴って、パートさんはむしろ500人以下のお店でのパート労働を望む。501人以上の企業にとっては500人以下の企業に人をとられてしまって、人手の確保が一層困難になってしまったという声も寄せられています。
 繰り返しますけれども、人手不足の中でパート労働者の確保というのは小売企業にとって死活問題であります。501人以上という線引きはコスト面での競争というのもありますが、人が逃げていってしまうということでございまして、従業員要件についてはまずもって見直すべき課題だと思います。
 この501人の要件設定の背景には、恐らく中小企業の経営負担への配慮だろうと思うのですけれども、そうであれば、それは適用要件に差をつけるというのではなく、適用に伴う経営負担について支援をするという別の政策ツールを考えることがあってもよいのではないかと思います。また、どうしてもどこかで裾切りが必要だということであるのであれば、普通イメージされる中小の小売店、これはパパママストアとか、商店街とか、そういうところの従業員の方がせいぜい数人とか数十人というところではないかと思われます。500人規模となると相当地域でも代表的な企業ということでございますので、メルクマールとしてどこかで線を引かなければいけない。仮にする場合であっても、この500というのは実態に合っていないなと思います。
 企業の視点からして、最後に一つ加えますと、会員さんからは適用拡大の議論、とりやすいところからとるというふうにしか思えないという不満が非常に強くございます。もちろん年金制度というものをどう支えていくのか。これは非常に重要な問題でございますけれども、その観点からすれば未納問題初め、501人の問題も初め、もっとプライオリティーの高いところがあるのではないだろうか。これは被害者意識と思われるかもしれませんけれども、真面目にやっていて負担を求められる。そういう小売業界の不満も強いということは御理解いただきたいと思います。
 次に、パート労働者の方々の視点に立ってでございますけれども、統計というかアンケートが古いのですが、前回の適用拡大の議論が始まる、ですから7年ぐらい前になってしまうのですけれども、そのときにアンケートをとったときに、60%以上の方が適用拡大に反対ということでした。こういう結果やパートさんの声を聞きながら、一方で政府を初めとして適用拡大の議論を聞いていると、どうも現実についての認識が違っているなと感じますし、下手をすると初めからパート労働者は厚生年金に加入すべきという固定観念から議論が始まってしまっているのではないか。そこで実際に働いている人の現実や認識と乖離が生じているのではないかと思われるわけです。
 チェーンストア協会、配偶者控除については引き上げというのをずっと要望してまいりまして、昨年から150万になりました。しかし、働き手からすればあちらの壁が遠のいても、こちらの壁が残っていれば結局、就労調整が動くということは変わらないわけですから、協会としては制度間の整合性を持って、例えば社会保険について150万に引き上げるということの要望を行っています。この辺のことは残念ながら今のところ実現していないのですけれども、制度間の整合性についてどうして税と社会保険が違うのだろうかということを考えてみますと、恐らく社会保険というのは将来のリターンがある。だから適用拡大が社会保障の充実、したがって、働き手の方にとってもハッピーという発想に立っているのではないかと思いますけれども、実際の多くのパート労働者はそうは考えていないということです。
 すなわち、厳しい家計の中で健康保険料とあわせて身の回りの負担、これも嫌うというのが現実であります。もちろん将来の年金給付の確実性について確信が持てない。こういう問題もあるでしょうけれども、それだけではなく自分のライフスタイル、家族構成、こういうものに照らしても健康保険と合わせて月々1万数千円なる負担というのは望まないと考えるパート労働者が多いというのが実際でございます。
 だからこそ現実に社会保険に加入しないで済むお店でパートをしようという動きになるのであって、これはもしここでまた時間や金額に着目して、さらなる適用拡大ということになってしまえば、さらに少ない手取りの人々に対する負担の追加ということになって、そこまでして働かなくていい。労働をむしろ減らす誘導になってしまうのではないかと考えております。
 もう一つ、労働政策研究・研修機構の調査で、前回の適用拡大で労働時間を延長する向きが見られるという見方もあるようですけれども、調査の詳細は知りませんし、人の心の中まではよくわからないのですが、所得を減らされたことに対してやむなき自衛の行動と見るべきではないかと考えています。少なくとも先ほど申しましたように適用拡大なかりせば得られた人件費を給与アップなどに活用するというほうが、働き手にとってもハッピーなのだろうと思います。
 以上でございまして結論を申し上げますと、この金額、時間に着目したさらなる適用拡大については反対。就労調整防止の観点からは、例えば現行の106万を150万に伸ばすなどして就労調整の壁を気にせず自由に働いていただく、可処分所得、家計を豊かにするようなことを検討してほしいということでございます。
 何より、その501人という従業員差でつけるのは合理性がなく、競争条件、さらには人手確保にも悪影響ということで廃止すべきと考えます。
 さらに補足で1つだけ申し上げますと、現行制度を拡大して強制加入ということにこだわらず、任意の加入というものを広げていく選択肢も政策としてあり得るのではないかと思っています。特に人手不足は労働者から見れば売り手市場の時代でございまして、仮に社会保険ありということがパート労働者のためになるということであれば、何も強制加入を義務づけなくても今の時代、企業はこぞって人手確保のために任意加入を進めるということになるはずでございまして、この任意加入を進めていくということも一つ検討に値するのではないかと考えてございます。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、今お話のあった内容につきまして、山田構成員、河本構成員。
○山田構成員 御説明大変ありがとうございました。状況がよくわかりました。
 最後におっしゃった任意加入の話が出て、それは一つのアイデアだと思うのですけれども、現状でも前回の適用で501人未満、500人以下は任意適用になっているのだけれども、任意に適用している事業所というのはございます。もし協会さんの中でそういう企業のことを御存じで、どういう考えで任意に適用されているのか、もしそういう形でするのであれば、要はどういうインセンティブを付与すれば任意適用企業というのはふえていくのかという、そういう問題意識があったものですから、もしそういう情報がおありでしたら教えていただきたいと思います。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 ちょっと頭でっかちなことを言ったかもしれませんが、チェーンストア協会は割と大き目のところが会員でありまして、501人以下というところはないものですから、そこの実態はわかりません。
○山田構成員 追加でもう一点よろしいですか。御説明の中で少し出たJILPT、労働政策研究・研修機構のアンケートは一つの資料ということで、私どもも見ているのですけれども、前回501人以上を適用したときに、ちらっとおっしゃいましたが、多くの企業がそのときに雇用の区分の見直しをやっているわけです。当然負担はある程度抑えたいということですので、20時間以下の人をふやしているのと同時に、一部の人の労働時間はむしろ長くしていく。それは御本人が収入をふやしたいというのもあるのかもしれませんが、恐らく企業の戦略として、今人手不足ですから、コアの人材で長く働いていただくという考えをとっているからなのではないかと思うのです。恐らくこのときよりもっと人手不足の状況は進んでいるわけです。そうするとこれは可能性だけなのですけれども、さらに適用拡大したときに500人未満でも、そういう意味では、だんだん労働時間の短い人を多くローテーションで採用して、やめていって、また採るというと採用コストが物すごくかかりますから、むしろ長く働いてもらって、コア人材としてやっていただく。そういうことを考える可能性というのは、これは感覚なのだと思うのですけれども、そういうことは考えられますでしょうか。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 ここも感覚論ですけれども、あると思います。おっしゃったように、あるいは先ほど申し上げましたように人件費負担というのは多いのですが、それ以上に人手不足のほうが深刻です。
 一方で働き手側の方、これは本当にいろいろです。長く働きたいし、働けるという方もいらっしゃれば、働きたいけれども働けないという方もいらっしゃれば、そもそも働きたくないという方もいらして、これは十把一絡げにこうだというレッテルがなかなか張れない。ですから企業のほうとしてはもちろん長く働いて、かつ、働く意欲のある方、こういう方に、人手不足という中においてできるだけ長く働いていただきたいというようなことですけれども、むしろ働き手側にはそこにマッチする人も当然いますが、そうは言われてもと家庭の事情もある人もいるでしょうし、負担を健康保険と合わせて1万数千円払うというのはねという方もいる。そこはミスマッチもあるし、たまたまマッチングすることもある、こういうことだと思います。
○山田構成員 ありがとうございます。
○遠藤座長 それでは、河本構成員、お待たせしました。
○河本構成員 詳細な御説明ありがとうございます。
 先ほどのフードサービス協会さんのお話の中にもあったのですけれども、適用拡大と言っても厚生年金の場合は保険料を払ったら、その分戻ってくるという御本人のメリットになる部分があると思うのですが、健康保険の場合、要するに被扶養に入っておられる方が適用拡大ということになると、給付は一緒で負担はふえるため、それが就労の妨げになるようなことが懸念されるような話がありました。その辺の実態というのはチェーンストア協会さんの場合はいかがですか。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 そこを健康保険と厚生年金と分けて聞いたことはないので、これも推測になりますが、おっしゃっているように健康保険は特に配偶者がいらっしゃって、そちらで健康保険に入っている場合にはメリットはほとんどないわけです。したがって、より健康保険のほうがある意味、負担とリターンとの比較において、より入るメリットがないというほうに傾くのだろうと思います。
 厚生年金のほうとて、これも年代によって、人によっても捉え方は違うのかもしれませんけれども、ここで働いた分だけ厚生年金をさらにもらおうという方ももちろんいらっしゃるとは思いますが、多くの方々はそういうことよりは月々の1万数千円の負担が重い。ここも20年、30年働こうという人と、とりあえず数年働こうという人との発想も全然違うと思うのです。ですからもちろん20年、30年働こうという人は比較していろいろ計算して、将来のリターンがということを考える方のほうが多いのかもしれませんけれども、5年とか3年とか、とりあえず今の家庭の中で自分が家計を補助するために働こうという発想でやっている方は、20年入ったらどうですよと言われても多分、ピンと来ないということではないかと思います。
○遠藤座長 ほかにいかがでしょうか。それでは、平田構成員、海老原構成員、平川構成員の順番でお願いします。
○平田構成員 今お話を伺っていて、同じパートさんといっても人それぞれ、全然状況が違うということを肌身に感じているものです。
 その中でなのですけれども、こんな事例があったら教えていただきたいということで御質問です。皆さん一人一人が就労調整をするのか。つまり例えば20時間以下にするのか、それ以上にするのかというのは、一人一人が選んでいるということがあると思います。そういう中でいろいろな企業の取り組みによって、この企業は結構被保険者になるほうを選んだみたいな、そういうマネジメントをされているような企業あるいは事例があったら参考になるのではないかと思ったということで御質問です。
 その意図なのですけれども、私は企業のコンサルティングをしていて、いろいろな企業様の中に飲食さんもあります、小売さんもありますし、パートさんが多いところもあります。いろいろな方、パートの方にもお話を伺っていて、働くということをどう選ぶかというのに、今の保険に入る入らないとか、目の前の賃金が天引きされるされないということも一つ大きいのですけれども、それ以上にその会社で働いている喜びであるとか、その会社で働いてその先の未来が見えるとか、そういったことのぎりぎりのラインの方は、結構そういったところでころっとするような、ころっという言い方はよくないですけれども、あるという実感を持っているのです。なので、人手不足であるとか、そういう方々がモチベーション高くやることで、先ほどフードサービス協会さんもおっしゃっていた人材育成とか、生産性向上ということに結びついていくと、直接的な適用拡大をするかどうかという議論とは違うかもしれないのですが、今の皆さんが持たれている問題を解消する1つの視点になるのではないか。そういったことは現状あり得るのだろうかということで御質問をさせていただきました。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 そういう意味からすると、結構多くの会社はそういう対応だろうと思います。というか、一律ということはどの会社もないです。しかも働き手も多様ですので、短時間化だけをやるという企業は多分考えられないし、人手不足の中でできるだけ長時間化をお願いする場合もある。そういう中で実際の例でも、働き手側のほうから見て本当は長く働きたくないのだけれども、会社愛、そういうもので働くんですよということで、長く働くことをしたという事例も実際に耳にしております。だからおっしゃるように秘訣があるというよりは、一般的に企業は先ほど申し上げましたけれども、長くできるだけ働いてもらいたいとか、人手を何とかしなければいけないということでございますので、そこに向けていろいろ、もちろん労働条件もそうですし、福利厚生もそうですし、そちらに向けてやっているというのが実態です。
 繰り返しますけれども、そうであるのだったら、できたら保険料に払っている部分を賃金に回したほうが多分ハッピーなのだろうなと思います。
○平田構成員 ありがとうございます。
○遠藤座長 それでは、お待たせしました。海老原構成員、どうぞ。
○海老原構成員 平田さんの話とも関係がありますけれども、私も取材をたくさんしていて、おっしゃるとおり本当に働き方改革の旗手みたいな、いろいろないい制度をつくっているではないですか。短時間正社員もどんどんつくっているし、あとはパートのまま役職者になられる制度を持っている企業も多いと思うのですが、そうすると短時間で正社員やパートタイマーで役職者になるという形で106万の壁、130万の壁を越えるという適用拡大は起きていませんか。時給がアップしたので、パートのままでも130万を超えてしまう。こういうことでWin-Winの適用拡大は起きていませんか。
○日本スーパーマーケット協会江口専務理事 日本スーパーマーケット協会の江口と申します。
 今の御質問ですけれども、大体時給が毎年このところ最低賃金が上がっている関係で上がっているわけですが、最終的にそれが起きると何かというと、年末の労働時間の調整というものがどうしても起きてきているのです。年収を一定の枠の中で抑えるというのが起きています。
○海老原構成員 そこは存じていますけれども、例えば役職者とか特別待遇している人たちが出ているという会社が多いではないですか。
○日本スーパーマーケット協会江口専務理事 まだ短時間のほうで役職者の方は出ていませんので、そういうのは今のところ例として余り聞いていないです。
○海老原構成員 非正規のままでも昇進ができるという制度を売りにしている会社もたくさんあるのを私は取材してきましたけれども、そういうところで役職者になれば当然時給アップで130万を超えると思うのです。途中でなってしまっているから年末調整ができませんという話だと思うのです。
○日本スーパーマーケット協会江口専務理事 一般的には役職者になる段階で、そういう壁は全て越えているといいますか、労働時間も長いというのが一般的なことが多いので、なので余りそういう事例はお聞きすることはないです。
○海老原構成員 少々残念です。私は短時間でも役職者になれる制度があれば、知らないうちに3号に留まれる年収上限を超えていたというWin-Winの関係で適用が広がるのではないか、その旗手なのではないかと思って聞いてみたのですが。取材や各種記事などでそうした情報は多々お聞きしていたにもかかわらず、まだそれはないようとおっしゃりますか。見聞していた内容と違っている状況、残念に存じます。
○遠藤座長 それでは、もし何かあれば追加でお話してください。
 お待たせしました。平川構成員。
○平川構成員 目の前の現金を節約するというか、確保するために保険料は払わなくてもいいという御意見に聞こえたのですが、それは例えば任意適用という話もそうなのですが、皆保険制度が日本の社会保険制度の原則ですが、任意を入れるということは、皆保険制度は見直したほうがいいという考え方なのかということを一つお聞きしたい。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 そういうことではなくて、今、強制適用がされていない部分がございますね。そういったところについての任意加入の促進というのもあってもいいのではないかということです。また、就労調整の点からは、我々は制度間の整合をとってむしろ150万に適用の範囲を狭めてはどうかということも考えています。
 我々の考え方というのは横に置いて、現行で強制適用でない部分について任意適用を進めていく。例えばそういったところの政府広報なのかもしれませんし、推進の仕方とか政策展開はいろいろなツールがあるかと思いますけれども、必ずしも強制適用にこだわる必要もないという考え方もあるのではないかということで申し上げたということです。
○遠藤座長 平川構成員、よろしいですか。
○平川構成員 少し考え方がまとまっていないのですが、別の観点で質問をさせていただきます。今150万以上として配偶者控除を緩くする発言がありました。要するに適用拡大ではなくて適用を縮小すべきだという考え方ということで捉えてよろしいのでしょうか。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 就労調整防止の観点からは、例えば配偶者控除と平仄をとってほしいというのが我々の考え方です。
○平川構成員 適用を縮小することによって、先ほどのビルメンさんと似たような質問になるのですが、将来的にチェーンストア協会としては労働力確保は全く問題ないと考えていらっしゃるのか。近年の雇用状況は女性の雇用状況が大幅に変わっている中で、そのモデルがずっと続いていくというふうに思っているかどうかというのをお聞きしたいと思います。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 確実に就労調整については緩和されると思っています。もちろん働く方も非常に多様化していますので、今までパートという形で働いていたのがフルタイム化するということも当然あろうかと思うのですが、別にそれを阻害することでも、働き方にねじを巻くということにもつながるものでもないと理解をしています。
○遠藤座長 では、原構成員、お願いします。
○原構成員 小売業界ということで人手不足が深刻ということでお聞きしたのですが、そういった中で経営上、若干の負担になるかもしれないのですが、社会保険の適用ということを含めて、そういったパートの方も含めた、あと正社員の方とかを含めた形で小売業こそが働きやすい環境を整えるということで、人材を確保することが必要ではないかと個人的には思うのですが、この辺はどのようにお考えかということと、あと、短時間労働者が多いと思いますけれども、例えば今の基準になっている週20時間以上を例にとると、大体そのぐらい以上で働いている人の意識と、20時間未満で働いている人の意識とか業務とか責任とか、そういったことに何か違いがあればお聞きしたいのですが、お願いします。
○日本チェーンストア協会井上専務理事 20時間で意識が違うということはないと思っております。人手不足は本当に深刻。これは小売業界だけではないと思います。ただ、どうも議論が仮にすれ違うとすると、働き手の方は本当に多様ですから、一言でくくれないのですけれども、実際には負担を嫌うというほうが多いのです。ですからそこのところで現状認識がずれる、ベクトルが逆に向いていると、多分これはお話をしても全く理解が得られないということだと思うのですが、きょうビルメンテナンスさん、フードサービスさんもみんなそうですけれども、むしろ目の前の負担を嫌う。負担と受給の関係がどうも適用拡大をしている方々の現状認識と、現場の現状認識というのが違っているのではないかというのが根本的なところではないかと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 まだ御意見あるかもしれませんけれども、予定した時間になりましたので、これにて日本チェーンストア協会及び一般社団法人日本スーパーマーケット協会からのヒアリングを終了させていただきたいと思います。井上様、田沢様、渡邊様、江口様、本日はお忙しい中、お時間をとっていただきまして、まことにありがとうございました。
 続きまして、UAゼンセンからのヒアリングを行いたいと思います。松井様、原田様、宮島様、どうぞよろしくお願いいたします。
○UAゼンセン松井政策・労働条件局長 UAゼンセンの松井でございます。
 まず私のほうから概要を御説明させていただきたいと思います。
 本日はこのような意見を述べさせていただく場を設けていただきまして、ありがとうございます。
 お手元の資料2をごらんいただければと思います。UAゼンセンでございますが、現在、組合員は178万人おりまして、うち100万人強がいわゆる短時間組合員となっております。短時間組合員とは申していますが、契約社員等も一部含まれております。
 そして、大きく3つの部門に分けて組織を運営しておりまして、製造産業部門、流通部門、総合サービス部門がございます。流通部門はほぼ小売業の業態をカバーしており、総合サービス部門は外食、食品製造、介護、派遣、レジャー等々の労働者を組織しております。
 短時間組合員の100万強の実態でございますが、こちらは、詳細にはつかめておりませんが、私どもが2017年に行っております意識調査、これは抽出調査で厳密には無作為抽出ではございませんので、正確な実態ではないのですが、おおよそイメージをつかんでいただけるかということで御説明させていただきます。
 男性の平均年齢は記載のとおりでございまして、独身が多い。年齢層で見ますと若年層、30代未満と60歳以上の方が多いということでございます。女性は平均年齢47歳で、勤続年数は8.6年ということですが、ここは逆に30代、40代、50代といったいわゆる主婦層が多いということで、既婚者も6割強でございます。労働時間、賃金は平均の数字でございますが、記載のとおりでございます。
 短時間組合員の働き方ということですが、働く理由としては記載のとおりでございまして、特に女性の場合は主婦のパートタイマーが多いことを反映しているかと思います。いわゆる不本意非正規、正社員として働けなかったから短時間で働いていますという方は記載のとおりでございまして、独身女性ですとかシングルマザーですと割合が若干高くなっているということ。そして、年収調整の状況ですが、既婚女性で夫が正社員の場合は3分の1ぐらいが調整をしているということでございます。ひとまず組合のイメージとしてつかんでいただければと思います。
 適用拡大の後、緊急アンケートをしたものがございますので、適用拡大の対応について簡単に御説明します。これは組合調査ですので、「労働時間を増やした人が多い組合」という聞き方なのですが、「労働時間を変更しなかった人が多い組合」、「労働時間を減らした人が多い組合」、それぞれ3分の1程度の割合だったということでございます。
 そして、この適用拡大に際して労働時間を変更した人がいる場合、ほぼ希望どおりだったというところが多いということでございます。
 それから、このアンケートの自由記入欄ということで、これはパートさん本人ということではなくて、回答した組合役員の声となりますが、やはり扶養範囲を超えないように働くために労働時間を減らして、いわゆる年末に休みを調整したりして、人手不足と業務負担増につながっているという意見や、適用拡大自体は理解するけれども、税制との違い等々で現場では非常にわかりづらいという意見。それから、長時間働けるようになってよかったとか、寡婦の方には新しい働き方の選択の機会がふえてよかったというような意見もあったということでございます。
 連合でも同じような調査をしておりますが、記載のとおり適用を避けるための政策として企業で行われたことのうち、特に適用を避けることはしていないということが半数以上だったのですが、若干労働時間を短縮したようなところもあったということでございます。
 ここで、それぞれの部門の実態等を宮島、原田から簡単に御説明をさせていただきます。
○UAゼンセン宮島流通部門執行委員 UAゼンセン流通部門の宮島と申します。
 私は流通部門ということで、主に小売業でパートタイマーとして働く組合員の声の立場でお伝えいたします。
 私のほうは先ほど説明がありました緊急アンケートの結果の補足ということで、説明をさせていただきます。
 まず、適用拡大にあたっての労働時間の変化について、3分の1ずつで分かれたといったところの認識でございますが、企業における働かせ方として、パートタイマーの活用に業界特性があるのですけれども、「いわゆる正社員並みに働かせたい」、「または一部を正社員並みに働かせたい」、「大半を補助業務で働かせたい」、そのような3分割がありまして、こういった業態特性によって働き方が分かれているのではないか。また、いわゆる補助業務は働く時間は短いという認識でございますので、働く時間、つまり求められる責任に応じて変わってくるのではないか、責任の程度で働く時間を選択しているというパートタイマーの意識があるのではないかと理解をしております。
 また、人手不足といったところですが、資料にありましたように、年末年始を中心にしてとっておるものなのですけれども、恐らく現場のパートタイマーとして働く方におきましては給与明細を10月ぐらいに見まして、そこで年収幾らになるかという目安をとるというのが通例でございます。特に小売業は12月が繁忙期でございますので、店舗の人たちから聞きますと、パートタイマーの声としては、店舗の運営上、人手不足の対応のために協力したいとは思っているのだけれども、扶養の範囲内で働かざるを得ないということで、時間を延ばして働けないんだという声があると聞いております。そういった意味で、年末年始の人手不足感が非常に影響したのではないかと理解をしております。
 また、こちらにも記載があるように、制度の理解度というのは、「よくわからない」といったところが多くございまして、今回は社会保険の適用拡大というキーワードでございますが、現場では例えば年金ですとか、健康保険ですとか、雇用保険ですとか、そういった言葉の意味が理解できていないのではないかといったところと、主に小売業ではスクラップ、店舗閉鎖等々もありますので、雇用保険は入りたいのだけれどもというような声もあります。
現場の声といたしましては、こういった人手不足に対応したいといったところと、制度の理解がなかなか進まないといったところがアンケートに反映されているのではないか、ということを現場の補足とさせていただきます。
 私からは以上です。
○UAゼンセン原田総合サービス部門事務局長 総合サービス部門の原田と申します。
 総合サービス部門は、先ほどもありましたけれども、外食産業、フードサービス、ホテル・レジャー、医療・介護等、サービス産業の組合員が所属しています。
 部門としての組合員は53万6000名でありますが、63%が短時間の組合員です。そして、短時間組合員の半数以上の方が週20時間未満の働き方という状況になっております。
 もう少し業種別に申し上げますと、いわゆるフードサービス業では、組合員は15万8000名ほどおりますが、週20時間未満で働いている組合員が8万8000人、55.7%程度ということ。また、ホテル・レジャーの関係では組合員は4万8000人おりますが、そのうちの2万5000人、53.5%程度が週20時間未満で働いている組合員であります。
 こういった短時間の働き手が私たちの産業の中核的な担い手になっているということなのですが、前回、2016年10月の適用拡大の中で、現場の感覚としてどのような現象が起こった、あるいはことがあったのかということについて少しお話をしたいと思っております。
 現実的には、新たに被保険者になった方というのは少数であったということでありまして、いらっしゃるのかな、という状況だったということはあるかもしれません。けれども、新たに被保険者となった中で、働く時間を長くした方も出てきたということですから、そういった中では、同じように今まで仕事をしてきた方に長い時間働いていただくということの中で、現場としては円滑な業務運営ですとか職場を回していけるというようなことがあり、非常に助かったという意見が出ていたことがあります。
 一方で就業調整をして、週20時間未満で働いている組合員と、その職場で働いている方々からの意見ということの中で、週20時間未満で働いている組合員の方という意味では、最賃の上昇ですとか通常の昇給ももちろんあるわけですので、そうした中で就業時間を調整することを繰り返す中で、勤続年数の長いベテランの皆さんが、労働時間が逆に短くしてしまっている。これ以上働く時間を短くすると、今度は職場に迷惑がかかるということもありますから、時給を上げなくても結構ですというようなことをおっしゃるような方も出てきていることがあります。
 また、同じ職場で働く組合員は、短時間勤務の組合員が時間調整をしたということの中で、それを補うために正社員組合員たちに荷重が非常にかかっているという話も出てきているということです。
 あわせて、短時間組合員を業績考課で評価する立場の方としても、さらなる労働時間の調整が行われるということを非常に恐れる中で、昇給を少し控えるような判断をしていくこともありまして、非常に矛盾した事象が起こっているということだと思います。能力とかスキルに基づいて、本来その人が得られるべき時間単価で、ということになりますけれども、正当な対価を得ることを制度自体が妨げているというような現象が起こっているのではないかと懸念をしております。
 以上です。
○UAゼンセン松井政策・労働条件局長 資料2の2ページ目の4に戻っていただきまして、UAゼンセンとして今回検討されております適用拡大についての意見でございますが、組織内で十分に検討したわけではないのですが、現状の考え方を御説明させていただきたいと思います。
 (1)でございますが、UAゼンセンとしましては、年齢や性別、家族構成等の違いにかかわらず、個々人の意欲と能力に応じて働くことができ、そして必要な人に適切な支援を行える社会とするという考えでございますので、基本的には収入がある方にはしっかりと社会保険の適用をしていただきたいという考えでございます。現在の社会保障制度には就労抑制をする機能があるということかと思いますので、被用者には被用者保険が適用されることを前提として、年金で言えば1号被保険者、3号被保険者のあり方を含め、将来ビジョンをしっかりと検討していただき、全体として就労促進につながる制度を構築していただくことを望んでいるということでございます。
 (2)でございますが、適用拡大については、厚生年金と健康保険、それぞれ違いがございますので、それぞれに合わせてなぜ適用拡大が必要なのかということをしっかりと論議をしていただきたい。現場で非常に混乱が見られるということがございますので、厚生年金はこういう、健康保険はこういう、それぞれ適用拡大に伴って必要な対応があるのであれば、それぞれ御検討いただきたいということでございます。
 そして(3)ですが、具体的な要件について、まず企業規模要件については撤廃すべきであるという考え方でございます。やはり労働者の側に立ってみますと、同じ収入、労働時間で働いていて、勤め先が変わることによって年金に加入できるとか加入できないということについては、納得性がないのではないかと考えております。あわせて、現在非適用となっている5人未満の事業所についても、同じ考え方からすると適用していくべきではないかという考えでございます。
 (4)の収入要件でございますが、ここについては基本的には所得がある方には全員加入をしていただくという考えではあるのですが、現状の制度を前提としますと、最低賃金ですとか、1号被保険者、3号被保険者とどういう整合性をとっていくのかということを整理した上で、そこに整合的な金額となるよう慎重に検討をしていく必要があるのではないかと考えているということでございます。また、決まった際には扶養者の基準も同じ基準にする必要があると考えております。
 (5)労働時間要件、勤務期間要件、学生の適用除外等々については、これも適用拡大をしていく方向性で、ただし、いろいろ実務面で障害がないような仕組みにすることを前提に検討をしていただきたいということでございます。勤務期間について言えば、ここの適用拡大者のところだけ1年で、一般の方は2カ月となっていますが、なぜそういう違いがあるのかということとか、学生についても先ほど論議があったようなこともございますので、拡大していく方向で、ただ、実務面で障害がない仕組みを検討していただきたい。
 副業・兼業についてでございますが、これも検討されていることは承知しておりますが、これも労働時間を通算して、働ける人の立場からすれば一つの企業で15時間、一つの企業で15時間働けば30時間働くわけですので、そういった仕組みを構築していただくことを望んでおります。
 3ページ目、企業の負担軽減ということも必要だと思います。いわゆる収入調整の問題等のことも踏まえて、ここではキャリアアップ助成金の拡充を挙げておりますが、広く税制との関連、給付つき税額控除等々のアイデアも示されているということだと思いますので、税・社会保障一体として、就労抑制がなくて、就労促進につながる仕組みで適用拡大を図っていただきたいという考えでございます。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのお話に関して藤井構成員、どうぞ。
○藤井構成員 詳細なプレゼンテーションありがとうございます。
 1点だけお伺いしたいのですけれども、健康保険については既に被保険者になっていらっしゃる方御本人にとっては、適用拡大が余り意味をなさないのではないかという議論がありましたが、UAゼンセンのお立場としてどのようにお考えでしょうか。あるいは何かアイデア等々ありましたらお聞かせいただければありがたいと思います。
○UAゼンセン松井政策・労働条件局長 そこについてUAゼンセンとして考え方を決めてはいないのですが、別々に検討していただきたいという趣旨でございまして、健康保険については今まで被扶養者だった方が新たに入るという場合については、その本人については負担が大きくて、マイナスのイメージに捉えられるということですが、保険制度全体で考えたときに、現状の被扶養者の方が医療リスクで保険を受ける場合は、誰かが負担をしているということには間違いないわけですから、その負担をどういう形でしていくのかということを慎重に御検討いただきたいと思っております。適用拡大して低い保険料の保険者がふえてしまう健康保険組合もあれば、その被扶養者が外れて財政的にはプラスになる健康保険組合もあるでしょうから、全体で考えていただいて、我々としては基本的には所得がある方は適正な負担をした健康保険制度にすべきだという考えでございます。
○遠藤座長 ほかにいかがでしょうか。海上構成員、お願いします。
○海上構成員 どうも詳しい詳細な調査、御披露いただきましてありがとうございます。
 注目しましたのは、資料中の2(1)➀の男性・女性別、しかも独身・既婚別のパートさんの数字なのですけれども、驚いたのは、女性で既婚の方は3分の2しかいなくて、そのうちさらに夫が正社員という方は7割しかいない。つまり、女性全体の半分ぐらいしかいないということですね。その他に男性のパートさんもいる。そうすると、どうしてもこういう議論になると女性のパートで旦那さんの庇護にいるという方たちを中心にイメージして考えていますけれども、将来に不安を残す独身の男性や第3号被保険者以外の女性の方が結構いるということになるのですね。そういう意味では年金の充実などの将来的な不安を取り除くものが必要だというお考えになるのでしょうか。
○UAゼンセン松井政策・労働条件局長 この割合については、先ほども御説明したように全くの無作為調査ではないので、正確に私どもの組合員の構成を示しているわけではないのですが、実態としていわゆる正社員の夫がいてという主婦パートの割合が減ってきているのは実感としてございます。やはり男性が非常にふえているということと、女性についても独身者で、この調査のときに明らかになったのが、シングルマザーの方が全体の5~6%いるということでございまして、そういった方もいらっしゃる。我々として1号被保険者の方にとっては適用拡大することはほぼプラスの要因しかないということだと思っていますので、どこまでの収入の方を適用するのかという難しい問題がありますが、そこについてはしっかりと説明して適用拡大の意義を理解していただいて、拡大していければなと思っています。
○遠藤座長 ほかにございますか。それでは、菅原構成員、お願いします。
○菅原構成員 御意見の2ページの(5)に学生の適用除外について少し話がありましたので、それを踏まえて少しお話をさせていただきたいのですけれども、先ほど来御説明があった中で、学生というのは短時間労働者のかなりの割合を占めていることは明白なのですけれども、学生の意見を聞く機会はなかなか代表している団体もないのでないと思います。私は大学の教員で日ごろ非常に多くの学生さんに接していて、感じることが結構ありますので、少しそれを踏まえてお話させていただければと思います。
 まず、今の学生さんは御家庭の経済環境が悪いものですから、かなり多くの学生さんがアルバイトをしています。先ほど来さまざまな団体様からお話があったように、非常に人材の逼迫感が高まっているものですから、学生は引っ張りだこで、長時間労働だとか、あるいは私はゼミもやっているのですけれども、ゼミを休んだ学生に問い詰めたところ、私が行かないと店が開かないと、半分冗談みたいな本当の話なのですが、まるで店長並みの仕事をしている学生が結構います。実際にこういった形で学生生活に支障をきたしてしまうような例も、散見されていて教員としては心配をしているような状況があります。
 また、最近では就職活動のあり方も変わってきまして、中長期の就労体験型インターンシップも広がってきています。そういった意味では単純に短期でころころ職を変えるというよりは、学生も割と企業の中に入り込んで実務的な内容を中長期間、一労働者として参画する機会が随分前よりも増えているのかなという気もいたします。
 それから、適用拡大に伴って先ほど言ったパートの女性が多いでしょうけれども、そういった方々が就労調整したために、そこのバッファーが学生に来てしまっているという側面も正直ありまして、一緒に働いていた主婦の方が休まれたので、その分、私が行かなければいけないといった話もちらほら耳にしたことがございます。
 いろいろあるのですけれども、学生の適用除外規定が正直、理にかなっているのか。さまざまな理論的な整合性に照らしたときに合っているのかどうかということについては、少し再考する必要があるのではないかというのが、今日の話を伺った上での私の一つの意見でございます。
 また、学生と言いますけれども、今、社会人の学び直しということもありまして、何も若い学生だけではなくて、高齢者だとか、なかなか就業の機会に恵まれなかった私ぐらいの団塊ジュニアの世代がもう一回、チャンスをということで頑張って非正規雇用の中で学校に来て学生をやっているようなケースもございます。一律に学生というところだけで適用除外にしてしまいますと、そういったさまざまな歪みが出ているということを少し御理解いただければいいのかなと思います。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。大体よろしゅうございますか。
 それでは、これにてUAゼンセンからのヒアリングを終了させていただきたいと思います。松井様、原田様、宮島様、本日はお忙しい中、お時間をとっていただきまして本当にありがとうございました。
 以上をもちまして、本日のヒアリングは全て終了いたしました。したがいまして、本日の議事は以上で終了したいと思います。
 本日ヒアリングに御出席いただきました皆様におかれましては、貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございます。改めて御礼申し上げたいと思います。
 それでは、今後の懇談会の予定につきまして、事務局からお願いします。
○山下年金局年金課企画官 次回でありますが、引き続き関係団体の皆様方からのヒアリングを行う予定です。開催日程につきましては、3月12日、2週間後になりますが、そこで行う予定であります。また追って詳細を皆様方にお伝えいたします。
○遠藤座長 これをもちまして本懇談会は終了したいと思います。本日は御多忙の中、お集まりいただきましてまことにありがとうございました。