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第5回 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会(議事録)
日時
平成31年2月8日(金)15:00~17:00
場所
厚生労働省専用第15会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 )
(東京都千代田区霞が関1-2-2 )
出席者(五十音順)
岩村正彦 東京大学法学部教授
垣内秀介 東京大学大学院法学政治学研究科教授
鹿野菜穂子 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
神吉知郁子 立教大学法学部准教授
中窪裕也 一橋大学大学院法学研究科教授
垣内秀介 東京大学大学院法学政治学研究科教授
鹿野菜穂子 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
神吉知郁子 立教大学法学部准教授
中窪裕也 一橋大学大学院法学研究科教授
議題
解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理
議事
○岩村座長 それでは、定刻でございますので、ただいまから、第5回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を始めさせていただきたいと思います。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日の出欠状況でございますけれども、小西康之委員が御欠席ということです。また、中窪裕也委員が20分ほどおくれて来られるということでございます。
また、法務省から、オブザーバーということで、法務省民事局の笹井朋昭参事官にも御参加いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速、議事に入りたいと思いますけれども、議事次第にありますとおり、きょうの議題は「解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理」ということになっております。
事務局のほうで、資料を用意いただいて配っていただいておりますので、まず、その確認をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 それでは、お配りしました資料の御確認をお願いいたします。本日、資料が3種類と参考資料を3種類、御用意させていただいております。
まず、資料1ですけれども、A3の横置きの紙でありまして「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関するこれまでの検討会における主な議論の整理」というものでございます。
それから、資料2がA4の横置きのものでおりまして「解消金の性質について」でございます。
資料3が、こちらもA4の横置きのものでありまして「地位確認請求訴訟における主張立証責任について(普通解雇の場合)」というものでございます。
参考資料が3種類ありまして、参考資料1が「解雇無効時の金銭救済制度に係る主な法技術的論点について」、参考資料2が「検討事項に係る参考資料」、参考資料の3がA3でございますけれども、「解雇無効時の金銭救済制度に係る主な法技術的論点シート(12月27日版)」というものでございます。
なお、参考資料につきましては、前々回の12月27日の第3回検討会でお配りしたものと同一の資料となっております。
その他、座席表をお配りいたしておりますので、不足などございましたら事務局のほうまでお申しつけください。
以上です。
○岩村座長 ありがとうございました。
資料のほうは、よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。
それでは、本日の議事に入りたいと思います。進め方でございますけれども、事務局から先ほど御紹介がありました、提出していただいている資料の御説明をいただいた上、その後、資料を踏まえて御議論をいただくという形で進めさせていただきたいと存じます。
それでは、まず、事務局から資料の説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 それでは、基本的には資料1のA3のものを使いまして、適宜、資料2及び資料3を参照いただきながら、説明させていただければと思います。
まず、資料1のA3のものでございますが、こちらの構成としましては、一番左側の列に大項目を記載しておりまして、一番右側の列につきましては、これまでの検討会における主な議論ということで委員の先生方に御発言いただいた内容を中心にまとめさせていただいております。それから、真ん中の部分につきましては、これまでの検討会における主な議論を踏まえまして、少し考え方として整理をしているものでございます。
順に御説明をさせていただきますと、まず、1ページの一番上が「対象となる解雇」の部分でございますが、ここは従前より「全ての解雇・雇止め」ということで、御意見を伺っておりまして、前回のヒアリングにおきましては、その下の真ん中の「全ての解雇・雇止め」の下の括弧の部分ですが、就業規則とか労働協約に定める解雇事由に基づかない解雇もこの制度の対象にするのかどうかという御指摘がございました。こちらは、当然、そういったものも排除する趣旨ではないと考えておりますので、括弧書きの中に、就業規則・労働協約に定める解雇事由に基づかない解雇を追記させていただいております。
次に「権利の発生要件」のところですが、まず、真ん中の列の1つ目の四角で、権利の発生要件は、解雇がなされていることが①、②としましては解雇が無効であること。こちらにつきましては、青い枠で論点を書かせていただいております。以下、同様な形で、全部で13個の論点を記載させていただいております。
論点①としましては、使用者は一度行った解雇の意思表示を撤回できるのか。これも前回のヒアリングで御指摘があった関係でございます。下の※で書いておりますけれども、今回、権利の発生要件としては、解雇が無効であることというものを入れていますので、無効解雇であるということで、そもそも撤回する解雇自体が存在しないことも十分考えられますけれども、仮にその事実行為として解雇の意思表示をしたことを撤回ができるとしたとしても、そうしたことが労働契約解消金の権利の発生後又は行使後の権利の帰趨に影響するのかどうかというところを論点として記載しております。特に問題となるケースとしましては、一度使用者のほうで解雇をして、その後、労働者が解消金の請求を既にしている状態であるにもかかわらず、事後的に使用者が解雇を撤回するといった場合に、果たしてどのような帰趨になるのかというところが問題になってくるかと考えております。
論点①の2つ目ですが、こちらは無効解雇の場合ですと当然ながら労働契約自体は継続しているわけでありますけれども、撤回の可否にかかわらず、そうした場合に使用者としては労働者に対して就業命令を出すことができるのか否か。ここは、前回のヒアリングですと、使用者が無効な解雇ということを認めた上で就業命令を出すという御発言がありましたけれども、当然、無効な解雇と認めている場合については、就業命令を出せることになると解されますが、その後に書いていますとおり、使用者が解雇は無効であることを争っている場合であっても就業命令を出せるのかどうか。これは、裁判上では使用者としては解雇は無効ではない、有効だという争いをしながら、実際、現実世界においては、労働者に対して就業命令を出す。若干、矛盾する行動がとれるのかどうかということを論点にしております。
その下でありますけれども、就業命令を出せるとした場合に、それを労働者が拒否した場合にバックペイの発生をどのように考えるか。ここは具体的には、そのように労働者が就業拒否した場合に就労の意思がなくなったと言えるのかどうかということを論点にしております。
次のところで、論点①の上の四角ですけれども、権利行使の方法につきましては、これまでの議論を踏まえまして、制度創設時は権利の行使の方法を訴えの提起及び労働審判の申立てに限ってはどうかということを記載しております。
その関係で論点②でございますけれども、意思表示の方法を訴えの提起及び労働審判の申立てに限った場合であっても、使用者が労働者に対して一方的に労働契約解消金として相当と考える金額を支払うことは、前々回の議論におきましても想定されるということでございました。場合に、そうしたことを防止するために、具体的には一番右側の下のほうに(A)と(B)と書いていますが、このいずれの措置で対応することが適切かどうか。具体的には、(A)の措置につきましては、労働者の権利行使の意思表示の効果の発生は、判決などで解消金の額が確定したという停止条件にかからしめる方策。(B)につきましては、労働契約解消金の支払いの効果である労働契約の終了は、判決等でその額が確定した以後に発生するということで、効果としては(A)も(B)も同じ形になるかと思いますが、措置としてはいずれの措置が適当かどうかというところが論点②であります。
論点②の関係で次の論点③でございますけれども、こちらは一度労働者のほうで訴えの提起等を行った後に、裁判上または裁判外で和解して解消金としての一定の金銭の支払いを行うことができるかどうか。ここは、権利行使の方法という入り口の部分を訴えの提起ですとか、労働審判の申立てに限った場合であっても、出口の部分として必ず判決が出ないと解消金としての支払いにならないのか、それとも判決がなくても裁判上の和解ですとか、場合によっては裁判外で和解して解消金としての支払いを行うことができるのかどうかという論点でございます。括弧書きで書いておりますのは、例えば、一度訴えの提起をして解消金を請求した後に、裁判外で当事者が和解をすることを認める場合には、解消金の金額によっては、もしかすると最後まで裁判をやった場合の金額とは異なる可能性もございますので、そういった場合には請求権を一部放棄していることになる場合もあり得ると書いております。そうした形で出口のところを少し柔軟に考えて裁判外の和解等も認めたとした場合に、この後、出てきますけれども、労働者からの権利行使の意思表示の撤回は、当事者間の合意の成立後はできないと考えてよいかどうかというところをさらに論点にしております。
論点④につきましては、先ほど申し上げたとおり、意思表示の方法を訴えの提起と労働審判の申立てとしておりますけれども、これは前回のヒアリングでも労働審判の申立てを含めるべきかどうかという御意見がありましたので、労働審判の申立てを意思表示の方法に含めるメリット・デメリットをどのように考えるかという論点でございます。その下の点線の下の部分でございますが、こちらの労働者の意思表示の撤回は、実体法上の根拠規定を置いた上で、一応ここは仮置きでありますけれども、判決確定時まで認めるという記載をしております。
その関係が論点⑤でありまして、意思表示の撤回を認める時点につきましては、前回のヒアリングでありましたとおり、口頭弁論終結時までか、判決の確定時までか、または解消金の支払い時までかということで、3つの選択肢が考えられるわけですが、これらの中でどの時点にするのが適切であるか。この関係は一番右側の列のアンダーラインを引いたところにも書いておりますけれども、撤回の時期につきましては、労働者保護という観点で労働者の選択肢を増やすという形にしますと、解消金の支払い時までということも考えられますが、他方でそのようにしますと、使用者側から見ますと判決等で解消金を支払えば契約を終了させられる地位が確定的に生じたにもかかわらず、労働者の撤回によって一方的にその地位を失うことになりますので、その辺の問題をどのように考えるか。「加えて」以下の部分は、訴訟法上の話ではありますけれども、訴えの取下げ自体は、民訴法上は判決の確定時までできるとなっておりますので、そうしたものとの平仄を考慮する必要があるかどうかということを記載しております。
さらに点線の下にいきまして、今度は権利の放棄の可否でありますけれども、これまでの議論を踏まえまして、権利の発生前に、労働契約や就業規則であらかじめ解消金の請求権を放棄させることは、公序良俗に反して無効と解されるのではないかという記載でございます。他方、実際に権利が発生した後に、合意解約等で既に発生した労働契約解消金請求権を放棄することは認められるのではないかと記載をしております。さらに点線の下でございますけれども、「相殺・差押え禁止の要否」につきましては、立法技術的には解消金の請求権を相殺・差押え禁止という形にすることは可能であると解されますけれども、その要否ですとか、また、どの部分までを差押えないし相殺の禁止にするかという点につきましては、解消金の性質を踏まえて政策的な判断が必要であるという書き方をしております。
次の項目に行きまして、労働契約解消金の位置づけでございます。まず、1つ目の四角は、労働契約解消金の定義でございますが、これも前々回お示ししたとおり、無効な解雇として確認された労働者としての地位を労働者の選択によって解消することの対価という記載をしております。その下の解消金の法的効果でございますけれども、こちらは、その支払いによりまして労働契約が終了するという効果を考えております。
次に3ページでございます。上のほうに論点⑥がございまして、解消金の性質の関係でございますので、こちらは資料2を使って御説明をさせていただきたいと思います。A4横置きの資料2でございます。前々回お示ししたときには、パターン1からパターン4までということで、4つのパターンを用意しておりました。4つ目のパターンにつきましては、広義の労働契約解消金の中に狭義の解消金、バックペイ、損害賠償と3つの債権を全て含めた上で、3つの請求につきましては、併合提起の義務付けをするという案でございましたけれども、こちらにつきましては、現実的にも課題が多いのではないかと御指摘をいただいておりますので、今回、資料からは省略をしております。
残りの3つのパターンでございますけれども、パターン1につきましては、これまでお示ししてきたものと同様でありまして、3つの債権を全て分けた上で労働契約の終了という効果は、労働契約解消金の支払いのみによって生じる形でございます。若干、追記しておりますのが、デメリットの1つ目のくさびの矢印の部分でありまして、これも前回のヒアリングで御指摘がありましたとおり、パターン1の場合は、併合提起はあくまで任意でありますけれども、それが一回的解決にならないおそれがある。矢印の下に追記をしておりますのが、「また」以下の部分でございますけれども、仮に併合提起がなされない場合であっても、使用者の側から反訴として債務不存在確認の訴えを提起することは考えられますので、こうした形で少しデメリットが低減することはあり得ると考えております。
パターン2でございます。パターン2につきましては、今回、新たに3つの論点を追加で記載させていただいております。パターン2につきましては、もともとの考え方としては、民法の充当の特則を置きまして、基本的にはバックペイの部分に先に弁済の充当をした上で、その後に、労働契約解消金のほうに弁済の充当がされる形でございます。
論点の1つ目につきましては、労働契約解消金より先に充当する債権、場合によっては解消金とバックペイだけではなくてほかの債権がある場合もありますけれども、まずはシンプルに考えるという意味で、解消金より先に充当する債権というのは、バックペイのみという形にしてはどうかという論点でございます。上の絵もそのような形で先に充当される部分、青い部分ですけれども、ここはバックペイだけにかけております。
論点の2つ目でありますけれども、そうした形で考えたときに、先に充当するバックペイの範囲につきましては、判決で支払いを命じられた分ということで記載をしております。このようにすることによって、メリットの2つ目にありますけれども、先に充当するバックペイの範囲が判決で支払いを命じられた分ということになれば、基本的には併合提起をすることを促す形になるかと思いますので、併合提起のインセンティブという意味でメリットが出てくるのではないかと考えております。
最後、3つ目の論点でありますけれども、先に充当するバックペイの範囲につきまして、解雇前に生じていた未払い賃金ですとか、バックペイの遅延損害金も含めるかどうか。これはパターン3も同様の論点を記載しております。
次にパターン3でありますけれども、こちらも少し前回までのものからアレンジを加えておりまして、まず、論点の1つ目でありますが、これは前回も記載をしておりますけれども、パターン3の場合は、労働契約解消補償金とバックペイ両方の支払いがなされたときに、労働契約を終了する形でありますけれども、なぜ解消補償金だけではなくてバックペイも払わないと労働契約が終了しないのかという理屈をどのように考えるかを論点に入れております。
2つ目ですが、これは前々回こちらで資料をお示ししたときには、例えば、バックペイが併合提起されずに解消補償金だけが支払われたときにつきましては、契約は終了しないのだけれどもバックペイがとまる形で提案をさせていただいておりましたが、今回、さらに変更を加えておりますのが、労働契約解消金に含まれるバッグペイもパターン2と同様に判決で支払いを命じられた分という形で設定をしてみてはどうかということであります。このようにしますと、基本的には併合提起をした場合には、労働契約解消金の中に解消補償金とバックペイの2つが含まれて、それが払われたときに契約終了という形になりますし、仮にバックペイを併合提起しないことで解消補償金部分だけの判決が出て支払いがなされたということであれば、それで契約が終了する。このように考えますと、メリットの2つ目に記載をしておりますけれども、こちらもパターン2と同じように併合提起のインセンティブがもたらされるのではないかと考えております。
パターン3の論点3つ目は、パターン2と同じでありまして、バックペイの中に解雇前の未払い賃金や遅延損害金を含めるかという論点でございます。
資料1のほうにお戻りください。先ほど御説明させていただいた内容が論点⑥であります。この3つにつきまして、それぞれ議論を深めていただきたいという点と「これに加え」以下で少し記載をしておりますけれども、紛争の一回的解決という観点からは、地位確認請求訴訟についても併合提起を促していくべきではないかと考えておりますので、そこもあわせて論点にさせていただいております。
その論点の下に※が2つありますけれども、その※の2つ目でありますが、これは訴えの変更でありまして、当初、復職を希望して、例えば地位確認請求訴訟を提起した場合であっても、途中から労働契約解消金請求に訴えの変更をしていくことも、民訴法の条文の解釈によりますけれども、一般的には可能ではないかと記載をしております。
点線の下につきましては、バックペイの関係でありまして、1つ目の四角がバックペイの実体法上の発生期間で、2つ目の四角が訴訟法上1回の訴訟手続で認められるバックペイの範囲でございます。こちらも前々回までと同様でございますけれども、バックペイの発生期間については、原則的には労働契約解消金の支払いがあるまでは、労働者は終了の意思を有していると解することが合理的でありまして、そう考えますとバックペイの発生期間は解雇から金銭支払い時までが原則ではないかと考えております。
その下の1回の訴訟手続で請求が認められるバックペイの範囲につきましては、現行の運用を変更するための特段の規定を設ける必要はないということでありまして、仮に現行の運用と似た形になるのであれば、判決確定時までのバックペイが1回の訴訟手続で認められる形かと思われます。
右側に論点⑦を記載しておりますけれども、こちらも前回のヒアリングで御提言がありましたとおり、労働契約解消金の請求と併合提起されたバックペイについては、その範囲を仮に制限するとすれば、必要性とか合理性は考えられるかどうかというところを論点⑦で記載をしております。
次に大項目で労働契約解消金の算定方法でございますが、こちらは四角のところで前回までの御議論を踏まえまして、労働契約解消金については、一定の算定式により算出された基準額をベースにしまして、解雇の不当性とか労働者の帰責性の度合いを勘案して算定する方法が考えられるのではないかと記載をしております。
4ページでございます。4ページの一番上の四角に、算定方法において考慮される考慮要素、あくまでこれは例でありますけれども、記載しております。(例)の下にアンダーラインを引いて書いておりますけれども、例えば客観的な考慮要素としては、勤続年数とか給与額、その他の調整率が、諸外国の例を踏まえても考えられるのではないか。それ以外の一定の評価が必要な考慮要素としては、解雇の不当性とか労働者の帰責性が考えられるのではないか。
その下の論点⑧につきましては、そうした考慮要素につきまして解消金の定義との関係で、関係性とか整合性をどのように考えるかという論点でございます。その右側に、これも例えばの案でございますけれども、2つの考え方を少し載せておりまして、1つ目は解消金の定義を分割して、その分割した定義から要素を導いてくる考え方。これは具体的に申し上げますと、まず、定義の前段部分でありますが、無効な解雇として確認された労働者としての地位、つまり、これまで続いてきた労働者としての地位を評価する考慮要素ということで、ここから勤続年数、給与額、その他調整率を導き出し、定義の後段でありますけれども、労働者の選択により解消する対価、すなわち労働者としての地位が将来も続いていくはずのところを、労働者の選択によって解消することを評価する考慮要素として、解雇の不当性、労働者の帰責性を導き出してくる形でございます。
その下の定義を分割しないで要素を検討する案は、あくまで定義としては一文で考えた上で、客観的なものとそれ以外の一定の評価が必要な考慮要素という形で先ほどの幾つかの考慮要素を導き出してくる考え方でございます。この2つにつきまして、定義との関係でどちらのほうが適当であるのかというのを、御意見をいただければと思っております。
左側のところで点線の上に※がありますけれども、考慮要素の検討に当たっては、各要素間の重複がないように留意をする必要があると考えております。さらに、なお書きで書いておりますのは、これも前々回まで御議論がありましたけれども、労働契約解消金をあくまで損害賠償とは異なる位置づけという形で考える場合には、考慮要素の中に精神的損害を入れると重複をしてしまいますので、考慮要素に精神的損害を入れることは適当ではないという考え方を記載しております。その点線の下につきましては、それぞれ客観的な考慮要素とそれ以外につきまして具体的に書いておりまして、一番右側の客観的な考慮要素の3つ目のポツのところでございます。勤続年数や給与額につきましては、その詳細をどうするかというのが、今後、検討が必要かと思いますが、比較的その算定は明確なところでございます。
その3つ目のポツにあります、その他調整率につきましては、理論上はさまざまなものが考えられまして、どういった要素を入れるかは政策的判断からの検討が必要である。諸外国の例も参考にしますと、例えば、その下のチェックでありますが、年齢といったものも、当然、ここでは考えられるであろうと。少しこれまでの御意見を踏まえて考え方を書いていますが、諸外国の制度におきましては、年齢を考慮要素に入れている例が一般的にございますけれども、他方で我が国の雇用慣行を見ますと、新卒一括採用、終身雇用、年功序列型賃金という形になっておりますので、年齢といった要素につきましては、基本的には勤続年数及び給与額の中に反映をされているはずだと考えられますので、少し慎重な検討が必要なのではないかと記載をしております。
5ページでございます。その他調整率の中には、先ほどの年齢だけではなくて企業規模といったものも考えられるのではないか。勘案する場合には論点⑨で記載をしておりますけれども、具体的には右側に記載のとおり、①-1から②-2まで5パターンぐらいの考え方があるのではないか。大きく分けると、①は企業規模を算定式に調整率として組み込む方法、②のほうは算定式に調整率は組み込みませんが、事前の集団的労使合意によって算定式についての別段の定めを認める方法。それぞれにつきまして、例えば、①-1であれば調整率自体は計算式に入れた上で変更ができない形、その下の-2、-3につきましては、事前の集団的労使合意によって調整率を上回るものとか、一定の範囲内であれば下回るものも含めて認めていく形。②のほうにつきましても、算定式による基準額を上回るものだけ認めるのか、下回るものも一定の範囲内で認めていくのかという考え方でございます。その下の※に書いておりますのは、先ほど説明した内容はその他調整率の要素として企業規模をどうするかという論点でしたけれども、※のところは事前の集団的労使合意については、企業規模の勘案だけではなくて、そもそも労働契約解消金の算定方法全体についての別段の定めも可能かどうかを検討する必要があると考えております。
その関係が論点⑩でございますけれども、ただし、ここにつきましては、先ほど前のほうで出てきました請求権の事前放棄を認めていないことと、この事前の集団的労使合意でどこまで別段の定めを認めるかというところが、関連性があるかと思われますし、仮に算定式を上回るものだけ事前の集団的労使合意を認めるとした場合であっても、実際に独自につくられた集団的労使合意が算定式を上回っているのか、下回っているのかといったものが明確になるかどうかという技術的な問題もございますので、その辺も含めて検討していく必要があると考えております。
点線の下でありまして、こちらは続いて一定の評価が必要な考慮要素でございます。論点⑪の関係ですけれども、右側に2つポツを書いておりますが、まず、解雇の不当性でございますけれども、こちらにつきましては、禁止解雇に該当することが明らかな場合につきましては、不当性が高い典型的な類型として扱われ、基本的には算定式で出てきた金額の基準額満額またはそれに近い金額となる可能性が高いと思われますけれども、基準額の増額までは予定をしないことが考えられるという御意見がこれまでも出てきております。
「その上で」以下は、先ほども少し説明しましたが、精神的損害など解消金で考慮できない損害がある場合には、別途損害賠償請求によって対応することも考えられると思われます。その下のなお書きにつきましては、解消金の定義とはまた若干異なる部分ですけれども、不当な解雇を抑止するという、いわゆる制裁的なものとしての意味合いで金額を増額する考え方もございますけれども、その必要性・合理性についても整理が必要だと記載をしております。
その下のポツのところで労働者の帰責性でありますけれども、労働者の帰責性につきましては、その程度に応じて算定式に基づく基準額を減額する要素として組み込むことも考えられますが、その必要性・合理性についての整理が必要だと記載をしております。
点線の下につきましては上上上労働契約解消金上下限でございますけれども、論点⑫の関係で右側に書いておりますが、例えば考え方としては、算定式に基づく基準額につきましては、算定式の各係数に上限・下限を入れる。これによりまして算定式全体での上限・下限も自動的に決まってくるというやり方もあろうかと思います。
その下の基準額をもとに個別事案ごとの状況を考慮した算定ということで、例えば、労働者の帰責性に応じた減額、上の記載の関係で減額をする場合については、その減額幅についても一定の下限を設けるといったことが考えられると考えております。
最後、6ページでございます。まず、権利行使の期間につきましては、前々回までで先生方からデータ等もお示しをいただきまして、例えば、裁判であれば裁判原因の発生から訴えの提起までの期間は平均1.6年というデータもございますので、権利行使期間については実質的な出訴期間となることから、少なくとも2年程度の期間を確保する必要があると考えられる。具体的な期間につきましては、政策的な判断が必要だと記載をしております。その起算点につきましては、解雇があった客観的起算点とそれを労働者が知った主観的起算点につきましては、基本的には一致するケースがほとんどと思われますので、客観的起算点とすることが適当と記載をしております。
その他の部分につきましては、これも前々回までにお示しをしておりますけれども、解消金を使わずに裁判外で自主的な和解等を行う場合についても、解消金制度の趣旨が参考となるようにモデル的な書面等を作成・周知することが適当だと記載をしております。
最後ですが、論点⑬のところで、こちらも前回ヒアリングで御指摘がありましたけれども、現行の地位確認訴訟と比較して労使の主張立証責任に変化があるのかどうかということでございます。こちらは資料3を使いまして少し補足的に説明をさせていただきます。資料3、横置きのものでございます。
資料3につきましては、内容的にかなり専門的な話もありますので、全体の説明は若干省略させていただきますけれども、(1)から(3)までありまして、あくまで現行の制度を前提とした場合に、解雇権濫用法理が争われる場合が(1)で、(2)が就業規則上の解雇事由の定めが争われる場合で、(3)は強行法規違反という形で、それぞれ現在、労使の主張立証責任がどのようになっているかを図示したものであります。一例としまして、(1)の解雇権濫用法理が争われる場合を見ますと、まず、原告である労働者側のほうで請求原因として労働契約の締結、それと使用者が解雇をした旨を主張しているという確認の利益を請求原因として主張した上で、被告である使用者としては、その抗弁としまして解雇の意思表示で、その意思表示をした後30日が経過していると主張される形になります。実質的には論点たり得るのはその後かと思いますけれども、それに対して原告としては解雇権濫用の評価根拠事実ということで、実際に解雇権濫用があったという事実を労働者のほうで主張をされる。それに対して使用者からは、解雇権濫用の評価障害事実ということで、解雇権濫用の評価はおかしいということで、解雇権濫用がなかったということを主張される。これが今の形でございます。
前回、ヒアリングで御指摘がありました点については、例えば解消金の権利発生要件を解雇が無効であるという形で捉まえたときに、今でしたら原告の側は解雇権濫用評価根拠事実、これは具体的には、そこからちょっとひもづいていますオレンジのところを見ていただきますと、オレンジの四角の2つ目のところにアンダーラインを引いていますけれども、今の裁判実務上は、原告が再抗弁として主張する解雇権濫用の評価根拠事実としては、労働者から何ら落ち度がなく勤務してきたこと等の概括的主張があれば、解雇権濫用の評価根拠事実として具体的事実の主張があったものとされるという運用をされておりますので、さらに労働者のほうで解雇権濫用について主張しなければいけないのではないか。具体的に言うと、今でしたら被告である使用者の側で解雇権濫用の評価障害事実を主張するわけですけれども、前回、御懸念があった点は、この使用者が主張する解雇権濫用の評価障害事実がないところまで労働者がさらに主張しなければならないのではないかという御懸念と考えております。ただ、ここは我々ももし条文をつくるということになれば、そこは要件をどのように書くかということにも大きく依拠するかと思いますし、できる限り現行の主張立証責任が変わらない形で要件の書き方を検討できるかと思いますので、そうした前提で何か解消金を入れたときに、この主張立証責任において変化があるのかどうか、または留意すべき点があるのかどうかというところについて御意見をいただければと思っております。
長くなりましたけれども、資料の説明は以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございました。
それでは、早速、議論に入りたいと存じます。今、御説明がありましたけれども、検討すべき論点が結構ございますので、これまでと同様に資料1で挙げていただいている6つの項目ごと、つまり、対象となる解雇、それから権利の発生要件、労働契約解消金の位置づけ、労働契約解消金の算定方法、権利行使の期間とその他という項目ごとで議論をいただければと存じます。
まず、1つ目の対象となる解雇でありますが、改めてというか今さらということでもあるのですが、何か御意見があればと思いますけれども、いかがでしょうか。
これについては、大体、今まで御議論いただいて、全ての解雇ということでコンセンサスは得られていると思いますが、それでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。
論点①については、それで行きたいと思います。
次が2番目で権利の発生要件になります。論点①という形で資料1の左側に四角囲みで出ています。論点②、論点③と出ているわけでありますけれども、それも含めて御意見等いただければと思いますが、いかがでございましょうか。
解雇の撤回は、実務上は中労委とか都労委でもよくあるのですが、法的にはどうなのかというのがあって、単独行為で効果が発生してしまった後に撤回が法的にはあるのですか。いかがでしょうか。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 あるいは鹿野先生にお答えいただいたほうがいいのかもしれませんけれども、前のシステム検討会の際にもその点は言及されたことがありまして、基本的には既に効果が生じている解雇を一方的に撤回することはできないという前提で議論がされていたと私は理解しております。
ただ、ここで問題となっておりますのは、本制度の対象となる解雇ということで、これはそもそも解雇が無効であるという前提でありますので、私は議論の整理としては、このペーパーに書かれていることになると思います。表現の点について申しますと、論点①のくさび形の1つ目のところの※のところで、無効解雇のためそもそも撤回する解雇自体が存在しないと解されるとあるのですけれども、解雇の意思表示はあったわけで、しかし、それは効果を生じないということですので、それをもって解雇自体が存在しないというかどうかというのは、やや議論の余地はあるという感じもいたしますので、より厳密には撤回の対象となる解雇の効果自体が発生していないとか、そういうことなのかと思われます。いずれにしても解雇の意思表示があっても解雇の効果が発生していない状況で、その意思表示の法律効果を撤回しようという行為をしたとしても、それは法的には無意味なのではないかと基本的には考えられるかと思います。それは解雇という効果がそもそも発生していないからということです。
それとは別に本制度の対象となる事例として、一旦、解雇の意思表示が無効なものであれ、されていれば、それで解消金請求権が発生し、その後、使用者のほうが撤回のような事実行為をしても影響を受けないと解するのか、それとも使用者側のそういった撤回の意向が、この請求権の消長に反映するのかどうかということは、別途議論の対象にはなり得るところかとは思いますけれども、基本的に解雇の意思表示が事実としてあれば請求権が発生すると考えていけば、基本的には後で撤回しても、だからといって請求権がなくなることではない。状況は全く変わっていない、法的には変わっていないという評価は十分あり得ると私自身は考えているところです。
○岩村座長 鹿野委員、何かありますか。
○鹿野委員 もう言っていただいたので、余りつけ加えるところはないのですけれども、解雇の効力が生ずるような通常の場合であれば、もちろん効力が生じた後に一方的な意思表示によって撤回するというのは、法的には認められないということです。ただ、当事者の合意によって職場に復帰することにするのは、当然あり得るのだろうと思います。
それで、ここの議論の対象となっているところの、実は無効だという、効力が発生していないというものについて、その事実上の解雇の意思表示を撤回することができるかということなのですけれども、この撤回は、結局は労働者のほうでの権利行使を妨害する行為になるわけです。無効な解雇の意思表示がなされたときに、この制度を導入するとすると、それは労働者のほうでは、一つは、解雇は無効だから職場に復帰する、地位を確認するという主張をする可能性があり、もう一つは、復帰は諦めて金銭救済を選択する、解消金を払ってくれるのを条件として職場から離れますという権利を行使するという、2つの選択肢ができる。今までになかった新たな選択権を労働者に付与しようということなのだろうと思います。
それで、その労働者のほうが、解消金のほうの選択権を既に行使した場合。この行使方法は、訴えの提起等によるといまは考えられているようですが、それで行使した段階になったら、既にその選択権が行使されたのですから、それを妨害する形での使用者の撤回は認めるべきではないのではないかと、個人的には考えているところです。
ただ、気になるのは、これは実際上あり得ないとは思うのですけれども、かっとなって使用者が解雇をすると言ったときに、直ちに解消金だと労働者が言ってきたときに、使用者側の撤回を認める必要はないのかということです。ただ、一つは、これも先ほど言いましたように、労働者側のこの解消金請求については、労働審判も含めて訴えの提起等によることになった場合には、実際上はそこまでにある程度の期間が費やされることになるでしょうから、それは、それほど気にする必要はないと思います。
もし、その問題に対処する必要があるのであれば、一定の予告期間といいましょうか、訴え等を提起する前にこれを撤回してくださいという、それで撤回しないのであれば、審判の申立てあるいは訴えの提起をしますという形で期間を置く。一種の催告みたいな感じですけれども、そういうものを置くことも制度的には考えられないわけではないかもしれません。ですが、これは、あくまでも使用者が軽率な解雇の意思表示をする事態があって、それを撤回できないのはおかしいのではないのかという心配があるのであれば、ということに過ぎません。
○岩村座長 ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。
大体、私も垣内委員、鹿野委員がおっしゃったところと思っているところではありますけれども、いずれにせよ、使用者が撤回と言い出して労働者がわかりましたと言って合意すれば、そのこと自体は問題ないので、そこはそうなると思っています。
2番目の解雇が無効で契約が継続しているけれども、使用者は労働者に対して就業命令を出すことができるのかというのですが、もし解雇が無効だと理論的には就業命令は出せることになるのだと思います。それができないのは、ちょっとおかしい。
ただ、後段の解雇が無効であることを争っている場合は、少なくとも労働契約はないと使用者は主張しているので、そうすると当然業務命令権もないはずなので、その場合に就業命令を出すことはできないのではないかというか、行為自体が矛盾した行為なのではないかという気はしますが、条件つきというか、留保つきで就業命令を出すのはできるのか。
どうぞ、垣内委員。
○垣内委員 そこは確かにおっしゃるように、矛盾している側面を含んでいると思います。ただ、労働者のほうは、解雇は無効だと主張をしているシチュエーションでありますので、この解消金請求はされる場合を考えますと、裁判、労働審判、あるいは訴訟でその点が係争中である。その段階では、使用者としては解雇をしたつもりではあるけれども、しかし、裁判所上、その点は確定していないので、そうだとすれば、当面、労働者の主張を尊重して、決まるまでは就業してくださいという態度をとることが、一概にあり得ないとも言い切れないという感じもしておりまして、そこは明らかに労働者に対する嫌がらせのような形でそういうことを言ってくるということであれば、それは否定的に評価されるべきものだとは思いますけれども、場合によって全くあり得ない行為態様なのかというと、そこはいろいろ微妙な評価もあり得るという感じがしていて、悩ましいところだと感じているところです。
○岩村座長 ありがとうございます。
係争中であるけれども、他方で労働者もそういう言い分があるので、就業してくださいと言って、労働者がオーケーするのだったら別に問題ないのですが、そうではなくて就業命令になると、ちょっと話が違うのかという気はするのです。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 遅れて来てこの辺のお話は聞いていないので申し訳ないのですが、どういう趣旨で使用者としてはこれを命ずるのでしょうか。本当に働いてほしいと思ってやっているのか。それとも出すことによって、バックペイの額がふえるのを防止しようという、そちらのほうに主眼がある場合。このシナリオはどちらを想定しているのでしょうか。
○岩村座長 私の理解では、前回のヒアリングのときにそういう話が出て、要はバックペイを払いたくないので、それよりは就労させて、労務の提供は受けて賃金を払うほうがまだいいとアドバイスをする人たちがいる。その話からきょうのこの論点が出ていると理解します。
○中窪委員 実際問題として解雇したような人に、改めて職場に戻して働いてもらうことのリスクはかなり大きいと思うので、使用者がどれだけこういうことをやるのかというのは疑問ではあるのですけれども、そういうときに解雇を有効と主張しつつ、他方でそういうことを命令するのは矛盾している気がします。この制度をつくるときに、もしそこを解決する必要があるのであれば、命令に応ずる必要はないとか、バックペイは阻止できないとか、何かそういう解決をしておくほうがいいという感じはします。
○岩村座長 ありがとうございます。
有効であることを主張しつつ、しかし業務命令を出して就労を要求することはだめですという考え方はあるとは思うのです。垣内委員が先ほどおっしゃったように、使用者側が提案して労働者側がそれに応じるという形で、つまり業務命令ではない形だと、そこは確かに当事者間の話し合いなりをもって任意ベースであると言える気はします。
最後のところになると、就業命令がもし出せるという話になると、拒否すればバックペイは発生しないことに恐らくなってしまうと思います。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 岩村座長のおっしゃるお話はよくわかるところなのですけれども、他方でこの制度を利用したときに、あくまで解消金の支払いがされるまでは労働契約は終了しない前提をとっており、その前提でありながら、しかし使用者のほうでは就業命令を出すことはできないと。争わなければいいということかもしれませんが、事実上撤回すればいいということかもしれませんけれども、裁判上、自分の解雇の有効性を主張するとなると、それができないということでは、バックペイは、結局、就業命令は出せないわけですので、労働者としては就労していない状況でも、使用者としてはその発生をとめる手だてがないことになるとも思われるのですけれども、そのあたりをどう評価するかということも、議論の対象にはなり得ると考えております。結論としては、私自身はどうこうということではないのですけれども。
○岩村座長 ありがとうございます。
現実問題として余り聞いたことがないのです。ただ、最近、そういうアドバイスをしている人たちがいるということなので、これから出てくるかもしれない。特に解消金が問題になって、バックペイの支払いがあわせて問題になると、そういうことを実際にやる例は出てくる可能性はあるかと思います。
解雇は無効ですということが、この前の議論でありませんが、中間判決や何なりで、ある程度、一定の判断が出た後に解雇無効になると、当然、その前提だと契約はあることになりますから、今度は業務命令が出ると労働者としては応じざるを得ないことになって、しかし、もうこんな使用者のもとでは働きたくないということで解消金という理屈に恐らくなるのだろうとは思います。
また、返っていただいて結構ですけれども、1ページ目の論点②のところはいかがでしょうか。
結局、右側の欄の(A)か(B)かという話になるのですが、これも余り具体的な違いはない気がしますけれども、どうですか。
あとは法的な、規定の美しさのような関係で、停止条件にかからしめるよりは(B)のほうがいいのか。余り理屈はないのですが、(B)のほうがいいという気はします。
あわせて論点③もいかがでしょうか。これは既に御議論いただいて、論点③については、これができないことにはならないのではないかというお話で、ある程度、御意見はいただいていた記憶はあります。
特段、よろしいですか。また、戻っていただいて結構です。
2ページ目にまいりまして、論点④になります。
労働審判の申し立てを含めるか含めないかというのは、前回のヒアリングで御議論のあったところでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 前回、最後のところでちょっと言ってしまいましたけれども、私は裁判に準ずるものとして労働審判を並列的に考えていたのですが、弁護士の方がおっしゃっていましたように、労働審判そのものが3回という短い中で調停を置きながら解決するという一つのメカニズムで動いておりますので、そういう中に解消金の制度を入れることによって、そちらに思わぬ負担をかける可能性もあると思います。その上でも、そこは入れるべきだという議論はあり得ると思うのですが、実際上の実行可能性について確認した上で、ここは論じないといけないと思いました。
○岩村座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 確かに実際労働審判で認めた場合に、どういう影響が及んでいくかということは検討しなければいけない問題と思います。ただ、訴訟に限定されることになりますと、控訴・上告と徹底的に争っていけば、それなりに期間も非常にかかる制度でしか、この解消金は使えないということで、間口としてはかなり限定的なことになるわけですので、全ての事件で労働審判が解消金請求の場として適切だとは言えないのかもしれませんけれども、一定部分、労働審判の場でも、この制度をうまく使うことによって解決が促進されるものがあると言えるのであれば、少し間口は労働審判にも広げておくことは、十分考えられると私自身は考えております。それも実際動いてみてどうかというのはもちろんあるのかもしれません。
○岩村座長 私も裁判だけとすると間口が非常に狭くなってしまって、結局、本来は解消金の手続でやるものが、恐らく裁判所にいきなり来ないで、当事者間でもって実際上行われる形になることが多くなってしまう気がします。
そうすると、それはそれで結構デメリットが大きいのではないかというように、とりわけ労働者側にとってのマイナスが大きいと思っていて、そういう観点からすると、労働審判にも一応間口としてはあけておく。ただ、ヒアリングのときにも申し上げましたように、3回という形でやるとなっているとすれば、例えば解雇の効力についての実体的判断が、とてもではないけれども3回では決着がつきませんということであれば、それはもう24条終了で後は訴訟でやってくださいという形で処理をする。あるいは、解雇の実体的効力については、当事者間である程度もう合意ができてしまうというのであれば、むしろ解消金制度そのものではなくて、まさに労働審判の申し立ての枠の中で調停という形、あるいは和解という形で決着をつけるやり方があるのではないかと推測をしています。
ですので、確かに労働審判のあり方に影響があるのかもしれませんけれども、しかし、余りそれを心配して労働審判という間口を閉じてしまうのは、ちょっといかがと私自身は思っているところです。
○中窪委員 私も別に、だから外すべきだということでは全然なくて、そこは検討した上で加えるべきだということです。
○岩村座長 ありがとうございます。
神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 私も岩村先生と同じように考えつつ中窪先生のおっしゃる懸念もすごく感じております。労働審判がこれだけうまく運用されていることに鑑みますと、この金銭解決が労働審判になじむのかどうかというのは、結局その算定式の明確さとか、運用による相場観の形成によるところも大きいと思っておりまして、かつ、一旦間口を広げたものを狭めることができないことに鑑みますと、最初は間口が狭くても訴訟だけにしておいて、ある程度運用が固まってから、これなら審判でもできるのではないかとなってきてから広げることもなくはないと、選択肢として考えてはおります。
○岩村座長 鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 私は、後で広げるより、この制度をもしつくるのであれば、最初からある程度は使えるものをという観点から、先ほど垣内委員とかあるいは岩村座長がおっしゃったように、労働審判まで含めたほうがよいのではないかと考えております。
訴訟だけでしかできないということになると、労働者個人としては、非常にハードルが高いことになってしまうと思われます。
それから、最初に裁判だけに限って、後でこれだったらやれるということで間口を広げる案についても神吉委員から示されたのですけれども、計算式がどうということもあるかもしれませんけれども、それだけではなくて3回なら3回という期間の間に、そもそも解雇が無効かどうかという判断に十分な事実認定がはっきりできるかどうかというところが、通常の訴訟の場合とは違う限界として、どうしても残るのではないかと考えているところです。
そこで、それが認定できないときには結局訴訟に行かざるを得ないことも出てくるでしょうし、あるいはそうではなくて、労働審判の申し立ての場をきっかけとして和解等が促進されることもあるのではないか。そこまで含めて考えると、最初、非常に間口を狭くしてというのは適切ではないと私自身は考えています。
○岩村座長 ありがとうございます。
もう一つ、これの関連で意思表示の撤回があるのですけれども、論点⑤とその上の黒四角のところでありますが、これはいかがでしょうか。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 大きく言えば、口頭弁論終結時ないし判決確定時と解消金支払い時という2つの立場があり得ると思っておりまして、その点に関して私自身はこのペーパーでも整理していただいておりますけれども、使用者側の立場についても考慮しますと、解消金支払い時というのは少し遅すぎるのではないかと思っておりまして、したがって、判決確定時ないし口頭弁論終結時と考えております。
ただ、口頭弁論終結時と判決確定時のどちらがいいのかという問題は、いろいろな事例を考えると難しいところがありまして、このペーパーでも書かれておりますように訴えの取り下げそのものは同意があれば判決確定時まで可能ですから、そこと合わせるというのも簡明な規律、考え方と思います。反面、こういうケースは余り考える必要はないのかもしれないのですが、判決言い渡し後、確定前に撤回をした、撤回をして取り下げもして同意もあればきれいにそれで終わることになるのだと思いますが、撤回はしたのだけれども取り下げはしないとか、相手方があえて同意をしないことになった場合に、判決はそのまま確定をすることになりますので、相手方としては、撤回は実体法上口頭弁論終結以後の事由として効果を生じているので、請求異議の訴えを提起するなどの方法をとる必要が出てくるということで、労働者側が訴えをきちんと取り下げてくれなかった場合を仮に考えると、そういった後の処理の問題が出てくることがあると思います。
他方、取り下げは確定時までできるのだけれども、撤回はできないことになった場合には、取り下げを言い渡し後にして同意もされたときに、しかし実体法上の撤回はないという事態になります。この場合、解消金請求の再訴は、判決言い渡し後の取り下げですからできないという再訴禁止の問題になってくると思うのですけれども、使用者側で判決言い渡しどおりの金額を支払うことによって終了させることがあり得るのかどうかみたいな話が出てまいりまして、そのときに取り下げ自体は効果を生じておりますので、確定判決によって解消金額が確定されている状況ではないことになりますので、なかなか難しい状況が生ずることも考えております。
そうしますと、どちらかと言えば確定時でそろえるのがいいのかなと現時点では私自身は考えているのですけれども、いろいろどういう事例でどうかということも細かく分けて最終的には判断をする必要があることを考えているところです。
○岩村座長 ありがとうございます。
かなり技術的に難しい問題だと思いますが、直感的には垣内委員がおっしゃったように、判決確定時を基準時という形に考えて請求の撤回、それから訴えの取り下げの平仄を合わせるのが一番混乱はしないだろうという気はしますが、ただ、訴えの取り下げが出てきたときに、使用者側が同意するに当たって請求も取り下げてくださいと言ったら、それは嫌だと言われたときにどうするかとか、よくわからない行動は時として起こるので、そういうところをどうするのかは考え出すと頭が痛いことではあります。
訴えの取り下げをもって請求の取り下げとするというのは難しいのですか。規定を置いてしまえば別ですが。
○垣内委員 その場合には、結局、訴えを取り下げができる限りは撤回ができるという、実体的にはそういう規律ですので、そのように説明をすればよいと思いますけれども、実質的にその規律が合理的であれば、確定時まで撤回できるという整理かと思います。
○岩村座長 他方で、その議論が余り一般論として全部に展開できるとなると影響が大き過ぎるかもしれないので、あくまでもこの問題に限った話でということにしないと難しいという気もします。
○垣内委員 つけ加えますと、確定時まで撤回は実体上できるという前提をとりつつ、取り下げがあって同意があった場合には、これは意思解釈として実体的な撤回があったと評価するという考え方は、十分あり得ると思います。
○岩村座長 それはもう取り下げの意思表示をどう解釈するかという、その問題だと思いますので、それは常にあり得ることだと思います。
よろしいでしょうか。ほかにこの権利発生要件につきまして何か。よろしいでしょうか。
笹井参事官、どうぞ。
○笹井参事官 論点⑤の1つ目の四角のところに、権利の放棄の可否についての記載がございまして、権利発生の前後で区別するとなっているのですが、この権利が形成権だということを前提にすると、解決金を請求するという意思表示の前後で放棄の可否が区別されると理解してよいのでしょうか。仮にそうだとすると、事実上の解雇の意思表示がされた後でも、解決金を請求するまでは放棄をすることができないことを意味しているように見えるのですが、それはちょっと厳し過ぎるという気がいたします。
解雇の意思表示がされたのだけれども、話し合いの結果として、もう金銭救済の制度は使わないで紛争自体を終了させましょうということも可能だと思います。そういう理解でよろしいのかどうかを確認させていただければと思います。
○坂本労働関係法課課長補佐 基本的に理解はずれていないと思うのですけれども、権利発生要件自体は1ページのところに書いてあるとおり、解雇がなされていて解雇が無効であることで権利発生しますので、ここで言っている「権利発生前に」は、解雇の意思表示をする前にあらかじめ請求権を放棄することは認めないのですけれども、実際、権利発生後ですので解雇の意思表示がなされた後に、当事者で合意をして合意解約をする。その場合は解消金を使わないことになるわけですけれども、当然それは否定されないと考えております。
○笹井参事官 この権利は金銭救済制度の解消金の請求権ですよね。その金銭請求権は、金銭解消制度を使いますという意思表示によって発生するわけですよね。
だから、解雇がされていることは必要要件ですが、十分条件ではなくて、実際に発生するためには、金銭救済制度を使いますという労働者側からの意思表示も必要なわけです。その要件が満たされる前であっても放棄はできるという理解でよいかどうかという確認と、そうであるとすると、この記載が若干ずれているのではないかということなのです。
○岩村座長 垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 確かに記載ぶりが少しわかりにくいところがあると私も感じたのですけれども、先ほど御説明の中であった1ページの権利の発生要件というところで、①、②が挙がっていて、その右のところに権利の法的性質は形成権であると書かれておりまして、このペーパーで権利と呼んでいるのは、基本的には形成権のことを指していて、したがいまして、後のところで御指摘の箇所の権利発生云々というのは、形成権としての権利が、解雇がなされかつそれが無効であることによって発生したことをどうも意図されているのではないかと思ったのです。ただ、権利という言葉はいろいろなところで出てきていて、少しそこは最終的には精査をして適切な記載ぶりにする必要があるのではないかと思いました。
○坂本労働関係法課課長補佐 記載ぶりを整えたいと思います。
○岩村座長 要するに、紛争が起きる前に、就業規則とか個別の労働契約といったもので、こういう特約を入れてしまうというのを典型的には想定している。
解雇がなされて労働者がどうしようかと駆け回っている間に、使用者側から和解を持ちかけてというのも当然あり得るわけです。それは必ずしも妨げることではないだろうと思います。
よろしいでしょうか。
先ほどの垣内委員の御説明のとおりだと思うので、事務局のほうで書きぶりの点を御検討いただければと思います。
よろしければ解消金の位置づけにまいりたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
3ページの論点⑥は前から議論していて、紛争の一回的解決という観点からすると、もちろん地位確認請求が併合提起されるのが望ましいことは、前からこの検討会でも言ってきたところだと思います。
ただ、義務づけるのはなかなか難しいので、後は労働者側が言ってこなければ、使用者側が反訴で対抗してもらうか。前回のヒアリングでちょっと出たのは、本人訴訟であっても裁判官がかなり介入するのでというお話でしたけれども、それだったら、むしろ逆に反訴を起こしてもらえばいいことだとは思うし、使用者側が最終的に起こしてもらう、あるいは労働者側が裁判官の勧奨に応じて地位確認請求の併合をしてもらえればいいと思うのですが、それ以上に何かありますか。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 実はこの問題についても一回的解決という要請があって、当然、重要な観点だと思うのですけれども、似たような問題は民事訴訟のいろいろなところでありまして、例えば、所有権に基づく引き渡し請求等の訴訟で所有権は確定されないときに、所有権確認の提訴を併合しないといけないことにはなっておりませんので、そこは必要があれば当事者のほうで併合するでしょうし、裁判所が必要と思えばそれを促すこともあり得るのかもしれませんけれども、事案に応じて適切にというのがほかの場面での現状かと思います。それを考えるとこの場面で義務づけることはなかなか難しいので、もし併合されていない場合に後でまた紛争が蒸し返されるおそれがあることを周知する、場合によっては促すことで考えると私自身は思っております。
○岩村座長 ありがとうございます。
次が論点⑦になっていて、この前のヒアリングで使用者側の弁護士の方から出た御意見で、解消金の請求とバックペイとの関係についてというのがありますが、これはいかがでしょうか。
○笹井参事官 よろしいでしょうか。
○岩村座長 お願いします。
○笹井参事官 こういった範囲を制限する必要性・合理性があるかということにつきましては、専門の先生方で御判断いただければと思っておりますけれども、一般論として申し上げれば、バックペイ、つまり536条2項に基づいて発生する一つの同質の債権のうちの量的な一部について、ある種の特別な効果を与えているように見えまして、この点に全く違和感がないわけではないという感じがいたします。
ただ、労働契約の終了という効果に直結するものでもございますので、その権利関係の明確性という観点から、こういった形で区分する必要性があるという議論は、理解をすることができますので、うまく説明ができるかどうかということかと思います。
ただ、仮にこのような規定を設けた場合に、判決が確定した後もバックペイが引き続き発生している状況で、使用者がバックペイの一部分を支払ったときに、判決が確定した部分について充当されるのか、それ以外の部分に充当されるのかといった問題が出てこようかと思います。
バックペイを全体として一つの債権と見たときに一つの債権のある部分と他の部分のいずれに対する支払を見るかについて、民法の弁済の充当の規定が適用されるのかどうかは、議論の余地があるのではないかと思いますけれども、いずれにしましても、どういうルールにするのかということもあわせて検討しておかなければならないのではないか。問題の指摘だけではございますけれども、そういった点を感じました。
○岩村座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
解消金という全く新しいタイプのものをつくり出して、そこに地位の解消についての補償とかそういった部分と、解雇時からそれまでの間のバックペイを全部まとめた解消金の請求権という新しいものをつくり出すということであれば、それをどういう形で構成するかというのは、立法政策の問題という気はするのです。他方で、今までの議論ではむしろそうではなくて、従来型の地位確認訴訟プラスバックペイ訴訟と解消金訴訟の併合提起をイメージして考えているとすると、従来型のところは、先ほど笹井参事官がおっしゃったように、536条2項に基づく請求になるので、何か新しく解消金請求権をつくったことによって、それが縮減される法的な結果は当然には出てこないし、かつ、解消金を請求すると、従来認められていた536条2項のバックペイの範囲が縮減する効果を持つものを新たにつけ加えるとすると、それはそれで結構ハードルが高い話と私個人は考えているのです。
また、仮にそういう形で解消金を請求すると、バックペイの範囲が今までとは変わるのだ、つまり併合提起した場合であっても今までとは変わるのだという話になると、むしろ労働者の選択としては解消金請求する方向に行かないのではないか。どの時点からバックペイの範囲が縮減されるかという問題はありますけれども、とりあえずは、とにかく従来型の地位確認プラスバックペイで行く。段々、らちが明かなくなって、このくらいになったら、もう解消金請求に切りかえてという戦略をとる可能性もあって、これは制度設計どうするかによりますけれども、必ずそうなるとも言えませんが、なかなかうまい制度設計にならないのではないかという気はします。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 3ページの論点⑦について、岩村座長の整理があったとおりかと思いまして、前回、使用者側の参考人の方からこういう御提言があったと理解しておりますけれども、民法上独自の権利としてあるものについて、解消金の請求がされたときに特別に範囲が制限されるのは、なかなか難しいのではないかと思われます。
前回の席でも申しましたけれども、その種の考え方は、基本的には解消金の請求の意思表示をした段階で労働契約が終了する効果のほうが望ましいのではないかという問題意識とつながっていると思われますので、仮にその前提をとらずに支払いによって終了するという考え方をとるのであれば、バックペイについては従来どおりの考え方で発生するのは整合的と私自身は考えております。
先ほど笹井参事官の御発言はその点とあわせて、資料2で説明のある解消金の性質に関係する御指摘も含まれていたと思います。特にパターン2の場合には、充当の関係で一定の規律を実現しようとするものですけれども、その際に解決すべき論点についての御指摘をいただいたと感じているところです。
私自身は、パターン2とパターン3、きょうお配りいただいた資料ですと、実質的な方向性はかなり固まっていて、それをどういう法律構成で実現していくのかというレベルの違いになってきていると思われますので、さまざまな技術的な論点について考えた上で構成がより難点の少ないほうを選んでいくことになっていく。その上でパターン1的な割り切った考え方とどちらのほうが政策的によいのかという判断になっていくと理解をしているところです。
○岩村座長 ありがとうございます。
ほかには何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 私もお二人のおっしゃったのと同じなのですけれども、パターン1の形で分けるほうが簡明だろうというのが、ここの議論だと思いました。先ほど岩村座長がおっしゃったように、両方あわせて一つのものを新しくつくるというのであれば、それをどこで切るかという問題が出てきますが、それ自体が非常に難しい議論になりますので、私もパターン1で、これについては特段制限しないほうがいいのではないかと思っております。
○岩村座長 ありがとうございます。
ついでに資料2が出ましたが、資料2で出ているパターン2、パターン3の論点の最後のバックペイの範囲はどうなのだというのがありますが、紛争の一回的解決という観点からすると、解雇前の未払い賃金とか遅延損害金も含めてしまったほうが望ましいことは望ましいのです。
普通は解雇前の未払い賃金も含めて、あれば請求するか。どうなるのだろう。バックペイは536条2項か。請求権が違ってしまうのですよね。バックペイも536条2項ではなくて、通常の労働契約に基づく債権だとすると請求原因は一緒になるけれども、普通、バックペイは536条2項で構成するような気がする。
どうぞ、笹井参事官。
○笹井参事官 536条2項は、御承知のとおり、債権者の責めに帰すべき事由によって不能になった場合には、債務者は反対給付を受ける権利を失わないという規定ですので、法的な性質としては賃金請求権になるのだと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
そうすると請求権としては同じだとすると、結局、当事者がそういうものがあったときに一緒に請求してきたからどうかという話になるので、そうなると論点③の答えとしては含むのではないのですか。
どうぞ、鹿野委員。
○鹿野委員 法的性質として労働契約に基づくという共通性があるとしても、請求原因は同じなのですか。バックペイの根拠は最初におっしゃったように536条2項です。通常であれば、労働契約がありまして、基づく労務の提供をしまして、それで賃金債権が生じますという形だけれども、バックペイの場合、労務の提供がないのだけれども、労務の提供のかわりに536条2項で、賃金債権が失われないというよりそこで発生するということだと思います。失われないというのは、従来は売買みたいな契約類型をイメージして語られていたのですが、労働契約に関してはこの規定に基づいて発生すると考えられていたように思われます。いずれにしても本当にこれは狭義の解消金と一緒なのかという気がします。余り要件事実的なことをちゃんと考えたことはありませんが、何か違うような気がします。
○岩村座長 事務局にここは精査いただいて、細かい論点なのですが、整理した上でここに入るのか入らないのかを議論したほうがいいという気がしますので、申しわけないですけれどもお願いできますでしょうか。直ちに私もどうだったかというのが、すぐには浮かばないのでお願いいたします。
鹿野委員、先にここだけは言っておきたいというのがおありでしたらお願いできればと思います。
○鹿野委員 ついでに今の資料2についてです。これについては結論を持っているわけではないのですが、悩ましいところです。理屈の上ではパターン1が一番すっきりしていると前も同じようなことを言ったかもしれませんけれども、そう考えるのですが、ただ、バックペイまで確実に履行確保させる要請があるからこれを工夫しようということなのですね。
それで質問なのですけれども、パターン3は、この前のものから少し変えましたという話があったのですけれども、パターン3によると、バックペイをこのときに請求しなかった分は後で別途にとれると理解していいですよね。
○坂本労働関係法課課長補佐 そういう理解でございます。
○鹿野委員 そうすると、このとき一緒に請求した分についてだけ、狭い意味での解消金にプラスしてバックペイも「解消金」に含まれるという考え方なのですね。
それで先ほどから議論になっているように、そうなってくると性質が違うものがここに入ってくることにもなりそうです。また、パターン2だと弁済の充当について、どういう理屈でこのような充当が正当化されるのか、民法の充当と同じように考えていいのかということが極めて悩ましいところです。解答を持っているわけではないのですが、単なる感想ということです。
○岩村座長 ありがとうございました。
もしよろしければ4ページに進みたいと思いますけれども、論点⑧が一番大きなものとして挙がっていますが、それに付属して4ページの下線部があるところについても、何か御意見等があればお出しいただければと思います。
個人的には、定義を分割して要素を検討するのは、一見すると非常に明確でいいなという気もするのですが、他方でこんなに全体としてきれいに分かれるかという問題がある気もしていて、そういったことを考えると、むしろ定義は分割しないで要素を検討するほうがいいという気がします。
ほかの考えもあると思いますので、もし御意見があればと思います。
4ページの下の客観的な考慮要素のところの勤続年数と給与は、私はこういう位置づけでいいと思うのですが、問題は年齢なのですが、これはいかがでしょうか。
ほかの論点でももちろん結構です。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 新卒一括採用、終身雇用、年功序列といった点が、えらく強調されている気がするのですが、このような慣行自体、変わらないといけないというか変わりつつあるのでしょうし、また、この制度の対象になるのはこういう人たちばかりではありません。他方で再就職のしやすさという点から見て、年齢はかなり大きいわけで、だからこそ雇用保険でも年齢で枠が定められています。ですから、それで片づけられる問題ではないのではないかと、私は聞いていて思いました。
○岩村座長 ありがとうございました。
神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 年齢については、中窪先生がおっしゃったとおり、勤続年数と給与額では重複する要素ももちろんありますけれども、尽くされない部分もあって、恐らく海外で考慮されているのは、ダメージの大きさだと思うのです。分割している2つの要素だと上のほう、これまでの地位を評価するものと将来を考えたときの将来のほうにかかってくる。解雇の不当性と労働者の帰責性だけではなくて、将来的なダメージの大きさとか、再就職のしやすさとかを評価する要素なのではないかと思っています。
ただ、諸外国は、損害賠償的なものを別途予定しないで、その中で入れ込むというところもありますので、もし日本で損害賠償で別途対応できるのであれば、考慮しないこともあり得るとは思います。が、別枠での損害賠償として精神的な損害が主に考えられていて、こういったダメージの大きさを考えないのであれば、この解消金の計算の中に入れることも考慮の余地はあると考えています。
○岩村座長 かなりこじつけですが、私が思っていたのは、神吉委員がおっしゃった労働者の選択により解消する対価を考えたときに、いわば本来であったら続いていく、将来も続いていくのだけれども、これをもうやめると。新しく労働市場で私は次の仕事を探しますと。ただし、年なので結構それは難航すると思いますという、そういう選択に対する対価という説明はある。そういう意味での性格づけとして、年齢という要素をこの中に入れ込んで、解消金の算定要素としてカウントするのはあるという気もちょっとしていました。
損害の塡補とかそういうものよりは、むしろ将来のことを考えたときに、そういう難しい選択を自分から選ぶのだから、その分ちゃんとした対価をよこせということで年齢を説明するのはあり得るという気はちょっとしています。
中窪委員がおっしゃったように、私も先ほど事務局の御説明を聞いていたときに、新卒一括採用とか終身雇用とか、ちょっとこれはと思ったので、年齢として考えるとすると、年齢によって再就職の難易度が違ってくる、それが結局、本来であれば労働契約を解消するかどうか、例えば今の会社をやめてほかに仕事を探すことに影響する要素のはずなので、それを加味するかどうか、そういう観点かと思っています。そう捉えると、勤続年数とか給与額とは違う要素として年齢を考えることにもなるだろうとは思います。
よろしいでしょうか。ほかになければ、次に行きます。
5ページであります。論点⑨で企業規模の問題であります。前回のヒアリングのときには、企業規模は給与でもう反映されているのではないかという御指摘もあって、そこをどう考えるかというのがあるのですが、それについてはいかがでしょうか。
他方でこれもよく考えると、先ほどの議論と同じで、給与に反映されているのではないかというのは、結局、今までの正社員タイプを想定した話で、そうではない非正規だと給与水準が規模を反映しているかというと、恐らくそういうことは余りないだろうという気はします。だから、むしろそこをどう考えるのかという気はします。
神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 企業規模をどういう理屈で算定式に入れるかという、その理由によると思います。もし、支払い能力を考慮する、その代理指標ということであれば、その給与額などに重複する要素となるので難しいと思うのですけれども、例えば大企業の労務管理能力が高いことに鑑みて、無効な解雇をしてしまった不当性が高まるということであるならば、その大企業のほうを高い調整率にすることもあり得る。ただ、その場合にも人数が機械的に区切られてしまうものなので、人数が多少前後することで金額が大きく変わり過ぎない調整率の設計に考慮が必要と考えています。
ここに具体的に挙がっている調整率として組み込む「基準額を上回る別段の定めのみ可」は、排除する必要はないと思うのですけれども、余り現実的ではないような気がします。
以上です。
○岩村座長 事務局側の発想としては、もちろん、どういう集団的合意を考えるかということにもよるのですが、仮に今までのような従業員代表とか、そういったことを考えて事前の合意をしますと。そのときに当然あり得る考えられるものとしては、法律で定めている基準よりも上回るものだけを認める、あるいは下回るものであっても一定の下限までは認めるというチョイスが実際上あって、きょう書かれているわけですが、実際に合意の内容が単純に法律で定めている調整率をいじるだけだったらいいのですけれども、そうではなくて、独自の要素とか何かをいろいろ入れこんでしまうと、法律で定める、あるいは法令その他で定める調整率より有利なのか、上なのか下なのかということ自体がわからなくなってしまう問題もあるでしょうという、それがここに出てきていると理解いただければと思うのです。
○神吉委員 その場合は、個人の属性によって変わってきますよね。結果を見て上回っているかどうかを判断するという趣旨なのでしょうか。
○岩村座長 そこは、最終的には、ひょっとすると私はそれしかないのかなという気はしているのですが、事務局のお考えがもしあればですが。
○坂本労働関係法課課長補佐 ここは先ほど岩村座長から御指摘ありましたとおり、そもそも現実的に見たときに上回っているかどうか最終的に判別がつくのかどうかという、全く異なる算定要素を盛り込まれて、企業独自のものをつくられた場合に、結果の金額はもしかしたら上回るかもしれませんけれども、個人個人で上回らない場合というのも出てきますし、そういった場合に、それを毎回上回っているのか下回っているのかによって解消金の額を判断していくのは、実務的には困難なところが多いのではないかと考えております。
○岩村座長 そう考えると、認めないというのが一番シンプルな解決方法なのですけれども、一番難しいのは人によって計算してみると、Aさんは上に行くのだけれども、Bさんは下に行ってとか、Dさんはちょっと上に行くとか、Eさんはちょっと下とすると、総体として企業内でつくった基準は上回っているのか下回っているのかの判定は、非常に難しいことになるだろうという気はするのです。
だから、やるとすると、一定の縛りをかけた上で、数値の変更を認めるぐらいしか考えられないという気はするのです。考慮要素そのものを新たにつけ加えるとか、そういうことはしてくれるなと。別に削っても構わないけれども、つけ加えるのはよしてくれとか、率を動かすぐらいは構わないけれども、それ以上はだめですとか、そういうものしか想定できないという気もしなくはないのです。余り自由にやられると本当に判定のしようがないということになってしまう。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 今、御議論になっているのは、直接には論点⑩の右についている※のところということですかね。集団的労使合意で基準そのものを変えるということの可否という問題なのでしょうか。
○岩村座長 論点⑨も含みますし論点⑩も含むし、両方とお考えいただく。まとめて議論してしまったほうがいいかなという気はいたします。
○垣内委員 論点⑩のほうの点につきましては、岩村座長からも御指摘がありましたように、そもそもどういう算定方法になるのかということは個別事例によってさまざまになってしまうということで、統制が非常に難しいこともありますし、また、そうだとしますと、もともと事前の処分は認めないという考え方との間との整合性もなかなかとりにくいかと思いますので、完全に労使合意で基準そのものを決めてしまうものについては、慎重に考えたほうがよろしいのではないかと思います。
他方、その上に書かれている算定式を前提とした上での調整率の変更だけであれば、これは上回るのかどうかということは形式的に判定はできる事柄かと思いますので、これはどこまで認めるのかというのは政策判断によってはいずれもあり得るのではないかという感じがしております。そもそも企業規模を盛り込むかどうかということに関しては、私は労働法が専門ではありませんので特に専門的な知見はないわけでありますが、前の4ページに書かれている労働契約解消金の性質あるいは定義に照らして考えたときには、本来であれば続いていくべき地位の評価として、さまざまな要素が個別事案では考えられるわけですけれども、しかし、実際に全てのあり得る事情を全ての事件で個別に勘案することでは、これは予測可能性も立ちませんし、判断そのものも非常に困難なものになることですから、ある程度、代表的な要素を考慮し得る、かつ算定が可能なものとして、例えば企業規模に着目することは、十分合理性があるのではないかと思います。
企業規模が何を代表しているのかという点については、先ほど御指摘のあった支払い能力という点もありますし、将来における雇用の安定性とかさまざまな事情があろうかと思いますけれども、それを個別に全て評価することにかえて企業規模で代表させ、それを調整率という形で反映させる考え方もあり得ると素人的には感じたところです。
○岩村座長 ありがとうございます。
私も企業規模を勘案するのであれば、それは将来に向けた雇用の安定性という指標なのかと思っています。別に中小企業が一般的に雇用が安定的でないとは言いませんけれども、相対的に安定的でないことは確かなので、そういう意味で将来に向けた雇用の安定性という角度から企業規模を勘案するのは、一応説明はつくのではないかと思います。
ほかはいかがでしょうか。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 私も今のところは賛成でありまして、支払い能力というと若干語弊があるのですけれども、労働者にとって大きな企業に勤めているほうが、ある意味将来に対する雇用の期待度が大きくなるのは、一般的にある、ということしか説明できないのではないかと思うのです。逆に全てを企業規模を問わずに一律というのも酷といいますか、やや現実的ではないところがありますものですから。ただ、その説明を報告書の中でどのくらい書けばいいのかというのは、ちょっと微妙な感じもします。結論としては、企業規模を考慮するのはやむを得ないと思うのですが、その説明の仕方について工夫が必要かなと思いました。
集団的労使合意については、前から言っていますけれども、日本においてこういうものが余りイメージできないというか、産業別の組合との協約のイメージではないのかと思うのです。日本でやるとしたら労使協定、事業場の過半数組合あるいは過半数代表者ということになりそうですが、今の制度のもとでそういう形でさらに負荷をかけることがいいのかというのは若干疑問があります。特に今度、派遣先労働者との均衡・均等の関係で、労使協定はいろいろとまた大変なことになっているところで、さらにこういう形で新たな例外をつくって本当に合理的な協定ができるのか、疑問があるということです。
○岩村座長 ありがとうございます。
よろしければ論点⑪ですが、こちらはいかがでしょうか。
今までの議論ですと、不当性が高い場合の基準額の増額は、どちらかというとやらないほうにしましょうというのが大体のコンセンサスだった気がしていますけれども、それでよろしいかということです。
労働者の帰責性がある場合はどうするかというのは、これはどうですか。勘案要素として書く程度しかないという気がするのですが、論点⑫もございますのであわせて御意見があれば、あるいはコメントがあればと思います。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 前にこれについて議論していたときには、ある程度、労働者の帰責性みたいものは考慮せざるを得ないだろうという話になったと思います。解雇が無効になるわけですから、最低が50で、そこから100の間ではないかと言っていた記憶があるのですけれども、そういうあたりが相場かなと思いました。
○岩村座長 私も恐らくそういうことだろうと思います。感じとしては、50より下というのはちょっとない。石川吉右衛門先生以来、51対49とよく言うのですが、そういうところなのかという気がしますので、そのあたりが下限なのかという気がします。
よろしければ最後の6ページ目になります。権利行使の期間と前回のヒアリングで労側の参考人から出た論点ですけれども、解雇無効の点、地位確認訴訟の点の要件事実という主張立証責任の問題であります。
権利行使の期間については、今までの議論で大体これもコンセンサスをいただいていると思っていますが、論点⑬については、前回のヒアリングのときに私のほうからも一応説明は差し上げたところだと理解しています。ただ、確かに解消金発生のための要件事実の書き方は、ちょっと工夫をする必要があるだろうというのは、前回の指摘を踏まえるとそうなのかと思います。
よろしいでしょうか。ありがとうございました。
何か全体を通しまして、もし御意見、コメントがあればと思います。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 先ほど議論になりました、いわゆるバックペイと解雇前の未払い賃金等との実体法上の性質の整理等に関してなのですけれども、御整理いただくということで大変ありがたいことかと思っておりますが、あわせて賃金ということですと一定の期間の労務に対応して賃金債権が発生し、それが支払われていくということで、時を追って順次成立していく権利というところはあろうかと思います。そのことが、例えば時効の関係などでは、成立時期がいつかということで、全体としては同じ賃金請求権でも部分部分によって取り扱いが違うこともあり得ようかと思いますので、そのあたりの観点も含めて解雇前の未払い賃金とか、あるいは判決確定後のバックペイとその判決で確定されているバックペイ部分についての区別が可能なのかどうかといったことを検討する必要があると思いますので、整理の際の視点の一つとして御考慮いただければと思いまして発言させていただきました。
○岩村座長 ありがとうございます。
それは先ほど笹井参事官からも、その点について充当の問題のところで御指摘もあったところでありますので、事務局のほうで整理をよろしくお願いしたいと思います。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 先ほど権利について議論になったので、そこでカバーされているかもしれませんが、資料1の右側の2つ目の枠のところで、この権利の法的性質は形成権であって解消金の請求により労働契約解消金に係る債権・債務関係が発生する、と書いてあります。ここは中身として、労働契約の解消と解消金の請求という2つのことが起きるわけですが、これをもう少しかみ砕いて、2つを分けて説明していただければと思いましたので、よろしくお願いいたします。
○岩村座長 ありがとうございます。
事務局のほうで何か追加的にできればこの点をきょう確認しておきたいとか、そういったところがあれば、いかがでしょうか。
お願いします。
○五百旗頭労働関係法課調査官 資料2のパターン3でございますけれども、この2つ目の論点のところに書いてありますように、判決で支払いを命じられた分という形で、これまでお見せしていたところとちょっと見せ方を変えている部分なのですけれども、先ほど議論の中では、笹井参事官のほうから、一つの債権なのに一部に特別な効果を与えることは少し違和感があるということも御提起されました。そのような中ではございますが、次回以降もこの新しいパターン3のスタイルで御議論を深めていただくことでよろしいかどうか。
○岩村座長 まず、第一に事務局のほうで、先ほどの笹井参事官からの御指摘を踏まえて、内部的にこれを整理し直していただいて、その上で今回と同じ形で出せるということであればそれで結構ですし、もう少し何か補足説明とかそういったものが必要であれば、次回またお出しいただく形でしていただけるのがいいと思います。
趣旨が、労働契約解消金に含まれるバックペイは判決で支払いを命じられた分とするというのは、それ自体としては確かにわかるのですが、この判決で支払いを命じられた分というのは一体何を意味するのかが、これ自体としては必ずしもよくわからないところがあるという気も私自身もしますので、そこを少し整理していただけるといいという気がいたします。
笹井参事官、先ほどの違和感があるというのは、もし可能であれば敷衍しておっしゃっていただけると、とは思うのですが。
○笹井参事官 先ほどの発言は、むしろパターン3のところですべきだったのかもしれません。先ほどは一つの債権だと申し上げたのですが、その後の議論を聞いておりまして、賃金請求権は月々ごとに発生する支分権だと考えると、一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合だと考えて充当の規定を準用することもあり得ると思います。そういう意味で一つの均質の債権という捉え方に固執する必要はないとその後の議論を聞きながら思いました。
ただ、発言した時点で考えておりましたのは、ある一つの債権だといたしますと、ある一つの債権があったときにその一部分に充当することによって、労働契約の終了という法律上の効果が与えられることになりますが、このような制度は余りほかに例がないことが一つと、また、ある一つの均質な債権のうちのどの部分なのかということの弁済の問題が出てくるのではないかということを申し上げたつもりでございます。
冒頭申し上げましたように、これは支分権ということで、中身がもう少し区分されるものであるとすれば、充当の問題であるとか、一部分について特別な効果が与えられることも、政策的な必要性等ございましたら説明はできると感じたところでございます。
以上です。
○岩村座長 ありがとうございました。
事務局のほうで、もう一度整理していただいてということで、次回お願いできればと思います。
時間でございますので、あと特にということでなければ、きょうはこのあたりで終わりにさせていただければと思います。
それでは、次回の日程につきまして、事務局のほうからお願いをしたいと思います。
○坂本労働関係法課課長補佐 次回の日程につきましては、現在3月中旬から下旬ごろをめどに調整をさせていただいておりますので、確定次第、また御連絡をさせていただきます。
○岩村座長 ありがとうございます。
それでは、これをもちまして第5回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を終了とさせていただきたいと思います。
本日はお忙しい中、御参集いただいて御議論いただき、まことにありがとうございました。
照会先
労働基準局労働関係法課
(代表電話) 03(5253)1111 (内線5370)
(直通電話) 03(3502)6734