第4回 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会(議事録)

日時

平成31年1月25日(金)15:00~17:00
 

場所

厚生労働省共用第6会議室(3階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 )

出席者(五十音順)

 
(いわ)(むら)(まさ)(ひこ)   東京大学法学部教授
 
(かき)(うち)(しゅう)(すけ)   東京大学大学院法学政治学研究科教授
 
鹿()()()()()  慶應義塾大学法務研究科教授
 
(かん)()()()()  立教大学法学部准教授
 
()西(にし)(やす)(ゆき)   明治大学法学部教授
 
中窪(なかくぼ)(ひろ)()   一橋大学大学院法学研究科教授
 

議題

解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する主な論点についてヒアリング

議事

  

○岩村座長 それでは、予定していた時刻になりましたので、ただいまから、第4回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を開催したいと存じます。
委員の皆様方におかれましては、御多忙の中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日の出欠状況でございますけれども、全員の方に御出席をいただいております。
また、法務省から、オブザーバーということで、法務省民事局の秋田純局付に御参加をいただいております。よろしくお願いを申し上げます。
本日の議題でございますけれども、事前に委員の皆様にお伝えをしましたところでありますが、資料1の解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点につきまして、労使団体から御推薦を頂戴しました、法律実務の専門家の方々から、ヒアリングを行うということとしたいと存じます。
本日の進め方でございますけれども、労側、使側それぞれで40分ほど、お話しと質疑応答の時間ということにしたいと思います。そのうち、ヒアリングをさせていただく皆様からは、15分ほど御意見を頂戴しまして、残る25分ほどの間、委員との質疑応答をさせていただきたいと思います。最後に、40分ほどお時間がありますので、そこで、委員の皆様のみで、ここまでのやりとりを踏まえた議論を行えればと考えているところでございます。
それでは、早速でございますけれども、事務局から、きょう、ヒアリングにお越しいただいております、先生方の御紹介、それから、配付いただいている資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 それでは、本日、ヒアリングをさせていただきます先生方につきまして、紹介させていただきます。
本日のヒアリングに先立ちまして、日本労働組合総連合会及び日本経済団体連合会に御推薦をお願いしております。
日本労働組合総連合会からは、古川景一弁護士及び岡田俊宏弁護士の御推薦をいただいております。
日本経済団体連合会からは、中山慈夫弁護士及び石井妙子弁護士の御推薦をいただいております。
なお、石井弁護士につきましては、本日、急遽、御欠席ということで、伺っております。
続きまして、本日、お配りしております、資料の御確認をお願いいたします。
資料は、本日も少し大部になっておりますけれども、まず次第をごらんいただければと思います。
配付資料と真ん中に書いてあるところに、資料につきましては、資料1から資料6まで、参考資料につきましては、参考資料1、参考資料2、参考資料3と、3種類用意しております。
まず冒頭に申し上げますと、本日、ヒアリングをさせていただきます先生方から御提出いただいています、資料5及び資料6以外の資料につきましては、昨年12月27日に開催いたしました、第3回の本検討会の資料と同一のものとなっておりますので、大変恐縮ではございますが、この部分につきましては、本日、説明は割愛させていただければと思います。
配付資料としては、資料1につきましては「解雇無効時の金銭救済制度に係る主な法技術的論点シート(12月27日版)」A3の資料でございます。
資料2は「解雇無効時の金銭救済制度を導入した場合における解雇紛争時の主な解決方法について」ということで、こちらもA3の資料でございます。
資料3も同じくA3の資料でありまして「解消金の性質について」というものでございます。
資料4が「解消金の算定について」ということで、諸外国の制度をまとめたものでございます。
資料5につきましては、古川弁護士から御提出をいただいた、縦置きの資料でございます。
資料6につきましては、中山弁護士及び石井弁護士から御提出をいただいた資料になります。
参考資料1、参考資料2、参考資料3は、12月27日のときにもお配りした3種類の資料になります。
もし不足等がございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。
以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございました。
それでは、順序といたしましては、まず労側の方から、お話しを伺いたいと思います。
古川弁護士、岡田弁護士、大変恐縮でございますけれども、お席をあちらに移っていただければと思います。
きょうは、お二方、お忙しい中をありがとうございます。
それでは、早速、御意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○古川弁護士 私のきょうの発言につきましては、資料5でレジュメを用意してございますので、それをごらんいただきながら、お願いしたいと思います。
順番に申し上げます。一昨年5月に発表されました検討会報告書に記載されております、労働者申立制度の基本的枠組みの中の例3、及び、これに関して、この検討会の事務局が作成した論点シートにつきまして、意見を述べ、問題点等を指摘するよう求められておりますので、この範囲に限定して、意見を述べるようにいたします。
第一に、労働契約の終了原因について、指摘いたします。解雇の無効の場合における金銭解決に関して、最も初歩的かつ基本的な論点は、解雇無効であり、労働契約が存在しているにもかかわらず、この有効な労働契約が終了する原因は何かという問題です。ところが、これに関して、論点シートには全く記載がありません。
報告書の例3、及び、論点シートの冒頭、上から3行目には、制度の基本的枠組みについて「無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が労働契約解消金を支払い、それによって労働契約が終了する仕組み」と記載されております。
ここでいう「労働者の請求」の法的性質は、使用者の解消金支払義務を発生させるだけでなく、労働者の一方的な意思表示によって、労働契約終了の法的効果を生じさせる辞職の意思表示をも包含しており、この辞職の意思表示には解雇無効という前提条件が付され、さらに契約終了という法的効果の発生について使用者の金銭支払という停止条件が付されていると解することが可能です。このように解することは、法律構成としても無理がないと考えます。
これに対し、使用者の金銭支払をもって労働契約の終了原因とすることには、法律構成として極めて無理があります。あえてこの法律構成を積極的に御採用されたり、あるいは、この論点の検討を行わずに、契約終了原因という重要な論点を曖昧にした場合には、使用者の発意による金銭解決制度を将来追加するための布石であるという批判を免れ得ないと考えます。
第二に、労働者の労務供給義務の帰趨について、指摘します。解雇無効の場合、労働契約は存在し続け、労働者は労務供給義務を負います。ところが、これについて、論点シートに記載がありません。
解雇無効の場合、労働者から解消金請求を受けた使用者は、解雇無効であることを認め、労働者に労務供給を求める権利を持っております。この権利行使がなされた場合、労働者が労務供給しなければ、その債務不履行を理由とする第二次解雇が可能という解釈もあり得ます。これとは逆に、労働者が就労を選択した場合、労働者は、解決金の支払がなされて労働契約が終了する時点まで就労するのか、それとも、解消金の請求を撤回して復職するのかを選択しなければなりません。ただし、解消金請求の法的性質につきましては、これを撤回することが可能かという問題があります。いずれにせよ、就労の要否の見込みがつかない制度を利用する労働者が果たしているのか、疑問であります。
第三に、権利発生要件について、指摘いたします。論点シートでは、「権利発生要件」の2番目に「解雇が無効であること」を挙げています。しかしながら、解雇無効というのは、権利発生要件ではありません。権利発生の前提条件であるにすぎません。
例えば、解雇について、「合理的な理由」に該当する事実の存否が争点となって、労働者が解雇無効を主張し解消金請求を行う場合、「合理的な理由」という要件に該当する事実の有無を判断した上で、さらにこれに重ねて、「解雇無効」という要件に該当する事実の有無を判断することはあり得ません。「合理的な理由」に該当する事実の有無は、解消金請求権の発生の有無を左右しますが、「解雇無効」に該当する事実の有無が解消金請求権の発生の有無を左右することはあり得ないのです。よって、この論点シートに書かれている解雇無効を権利発生要件と位置づけているのは、明らかな誤りであります。
第四に、解雇の有効性要件について、指摘いたします。無効な解雇の金銭解決について検討するのであれば、その前提として、解雇の有効性要件を整理しておく必要があります。期間の定めのない労働契約に関して、解雇の有効性要件は、次の4つです。
1つ目は、就業規則作成義務のある事業所において、就業規則所定の解雇事由に該当する事実が存在すること。
2つ目は、労働協約が存在し、解雇要件と解雇手続の定めがある場合、解雇要件を充足する事実が存在し、かつ解雇手続が履践されることです。
3つ目は、労働契約法16条所定の解雇権濫用に抵触しないことです。
4つ目は、労働契約法16条以外の強行法規、すなわち、差別禁止等の法令に該当しないことです。
ところが、今回の論点シートの左端に記載された「対象となる解雇」では、就業規則と労働協約に関する記述がなく、解雇権濫用と差別禁止の記載しかありません。解雇の有効性要件とは何かという基礎的な論点整理が欠落しているため、この論点シートでは、証明責任分配をめぐる致命的な誤りが生じています。
この点について、第五として、具体的に指摘申し上げます。労働者が地位確認を求めて訴訟を提起した場合、就業規則所定の解雇事由に該当する事実の存在について証明責任を負うのは、使用者です。ところが、労働者が地位確認を求めるのではなく、解消金の支払いを求めた場合、論点シートによれば「解雇無効」が「権利発生要件」とされていますから、労働者が解雇無効の証明責任を負うことになり、証明責任の分配が逆転してしまいます。
また、労働契約法16条所定の「合理的な理由」に該当する事実の有無、労働協約所定の手続に違反する事実の有無等をめぐっても、同様に証明責任分配の責任が生じます。
そもそも解雇権濫用法理を定める労働契約法16条は、最初に労働基準法18条の2として条文化され、その後に労働契約法に移されました。最初に厚生労働省がつくった法案は、衆議院厚生労働委員会において、権利濫用に関する事実の証明責任を労働者に負わせる誤りを犯しているとの厳しい批判にさらされました。この批判を受けた坂口厚生労働大臣は、答弁に窮して、立ち往生いたしました。厚生労働省作成の法案の問題点は、第一に、就業規則による解雇規制を否定するのかという点。第二に、労働協約による解雇規制を否定するのかという点。第三に、日本食塩製造事件の最高裁判決で確立した解雇権濫用法理における証明責任分配の事実上の転換に関して、これを覆すのかという点でありました。これら3点を総合して、解雇無効の原因となる事実の存否について、その証明責任を労働者に負わせるのは正しくないという批判でありました。厚生労働大臣が立ち往生するに至った状況のもとで、与野党の協議がなされ、与野党の一致した議員の共同提案によって、修正案が出され、これが可決され、現在の条文ができたのであります。
しかるに、今回の論点シートに記載されている「解雇無効」を「権利発生要件」とする考え方は、立法経緯を全く踏まえず、平成15年に国会で葬り去られた厚生労働省案と同じ誤りを繰り返すものです。そして、この考え方は、解雇法理との整合性を完全に欠くものであると考えます。
第六に、労働者と家族の生存権保障に関する問題を指摘いたします。民法627条に基づく辞職であれば、辞職の意思表示から2週間が経過した時点で、労働契約は終了し、労働者は、雇用保険の給付を受けながら、求職活動を行い、新たな使用者との間で労働契約を締結することができます。また、労働者が解雇無効を主張して、地位確認を請求した場合には、雇用保険法に基づく失業保険の仮給付を受けることができます。
しかし、今回の基本的枠組みでは、解雇無効が前提ですので、労働者が失業給付の仮給付を受けるのは困難ではないかと危惧されます。なお、この点については、私のレジュメには、×をつけていますが、×ではなく、クエスチョンマークのほうが正確だろうと思いますので、そこは訂正いたします。ダブル・ジョブを禁止している企業との間では、新たに労働契約を締結することができません。今回検討されている制度は、労働者と家族の生存権保障という労働法の根本原理との整合性を欠くものと言わざるを得ません。
さらに、これに関連して、労働者が解消金請求の意思表示を行った後に、さらに、民法627条に基づく辞職の意思表示を追加して行い、失業給付を受給した場合において、先行する解消金請求の意思表示の効力が維持されるのかという問題が生じることをつけ加えておきます。
第七に、対象となる解雇の範囲について、指摘いたします。法技術的論点シートでは、強行法規違反・公序良俗違反の解雇を対象から除外するか否かという論点を挙げています。
しかしながら、これは論点とはなり得ない性質のものであります。なぜなら、使用者の解雇の意思表示は、労働者の辞職の意思表示の誘因、きっかけ、動機、契機にすぎません。もし、これが強行法規違反や公序良俗違反に該当するとしても、そのことは、労働者が退職の自由を行使して、辞職や解消金請求の意思表示をすることに関して、何の影響も及ぼさないはずのものです。
第八に、解消金の構成要素について、指摘いたします。法技術的論点シートでは、構成要素に関して、「解消対応部分」「慰謝料的な損害賠償的部分」「バックペイ」をどのように組み合わせるかが提起されています。
「解消対応部分」なるものについては退職手当とそれ以外の解決金的なもの、「慰謝料的な損害賠償的部分」なるものについては損失補塡とそれ以外の解決金的なもの、「バックペイ」には賞与と月給部分があります。しかし、これらが、所得税法上の退職所得、給与所得、または一時所得のどれに該当するかによって、労働者が負担する所得税の計算方法が異なります。また、雇用保険に基づく失業保険の仮給付の返還の要否も異なります。賃賃金支払確保法に基づく立替払いの対象か否かも異なりますし、民法上の先取特権の対象か否かも異なります。
したがいまして、これらの解消金の構成要素をどのように組み合わせるにせよ、その要素ごとに、具体的内容、計算方法、計算結果が示される必要があります。これを明確にせずに、ごちゃまぜにした場合には、使用者側には大変都合のよい便利な制度であっても、労働者側には、大きな混乱、不利益、不都合を生じさせる制度になります。さらに、総額の上限を設けたときには、混乱が一層深まることになります。
最後に、紛争の一回的解決の問題について、指摘いたします。解消金の性質に関する資料3の中で、A案、パターン1とも記載されています、これについて、「デメリット」の欄の筆頭に「併合提起はあくまで任意であるため、一回的解決にならないおそれ」との記載があります。
この記述は、誤りであるとまでは言えませんが、A案に否定的な印象を与えるための印象操作といっても過言ではありません。なぜなら、民事訴訟法には、紛争の一回的解決のために、反訴の制度があります。労働者が併合提起しない場合、使用者は債務不存在確認の反訴を提起することによって、事実上、労働者を併合請求に追い込むことができます。
したがいまして、「一回的解決にならないおそれ」と指摘されているものが現実化するのは、使用者側の代理人弁護士が民事訴訟法について不勉強である場合に限定されます。使用者側の代理人弁護士が不勉強であることを前提に制度設計をするのは使用者側の代理人弁護士に対して失礼ですし、また、その必要もないと考えます。
以上です。
○岩村座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御意見につきまして、委員の皆様から、御質問、あるいは御意見がありましたら、お願いをしたいと思います。
1点、一番最後の点ですけれども、我々も議論の中では、今、御指摘のあった紛争の一回的解決との関係で、資料3のA案のパターン1の場合にも、もちろん使用者側が反訴を提起するということは、当然あるだろうと思っております。
ただ、しばしばここで議論している際に、気をつけなければいけないというのは、必ずしも明示的に議論をしていないのかもしれませんが、どうしても本人訴訟の可能性があるので、これは労側だけではなく、場合によっては、使側も当然あるとなると、反訴請求ということを常に期待できるかというと、必ずしもそうでもないというところは、ちょっと考えなければいけないだろうと思っていることを、つけ加えさせていただければと思います。
○古川弁護士 その点につきましては、御指摘のとおりで、絶対大丈夫だったら申し上げません。ただ、事実上、今、本人訴訟の場合、裁判所が相当に職権的に指揮権を行使したり、助言したりしているのが実情でございますので、それで相当な部分は、カバーできるであろうと考えております。
○岩村座長 ありがとうございました。
その点も、我々も理解した上での話だということでございます。
ほかにはいかがでございましょうか。中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 一番最初の点で、辞職の意思表示と理解するのが無理はないということなのですけれども、私は、こういう制度を新しくつくって、裁判所が判決を下すことによって、労働契約が形成的に解消される、そのための要件として、労働者がこういう訴訟を通じて申請をする、ということだと思っていたのですが、先生は、辞職の意思表示として、ある意味、終了原因は判決よりも以前にあるとお考えなのでしょうか。そうすると、通常のものと余り区別がよくわからない気がするのです。
○古川弁護士 なぜこの点にこだわるのかと申し上げますと、現在の日本の法律制度で、有効な契約であるのに、お金さえ払えば解消するというものはないわけです。そこにも書きましたように、賃貸借契約であれば、正当な理由が必要だけれども、それが不十分な場合に、お金を乗せることによって、初めて契約解除が可能になることがある。お金はあくまで正当理由の補完事由にすぎません。お金そのものが直ちに正当化事由にはならないわけです。
今回の法律制度ですと、なぜお金を払えば契約解除ができるのか、解消するのか、そこのところの根本的な法律構成の説明が極めて難しいと思っています。もちろん立法論ですから、先生の御指摘のように、そういうものをつくるのだ、憲法違反でない限りは、立法はできますから、中窪先生がおっしゃるようなものが直ちに憲法違反だとは思いませんから、法律論としては、憲法違反ではないから、可能だという理屈は可能だと思います。
しかしながら、これまでこういうもの、民事的な契約ルールで存在しなかったものを、あえて無理してつくる必要があるのか。それよりは、辞職の意思表示で構成したほうが、法律論としては素直ではないか。
もう一つは、このように構成するのであれば、使用者による金銭解決の申出は、理論的にあり得ないということなのです。これがもう一つの私が考えている理由です。
○中窪委員 あり得ないというのは、現行法であり得ないというだけではなく、制度としてつくる場合も、そういうことはあってはならないということですか。
○古川弁護士 ハードルはかなり高くなります。つまり、労働者本人が辞職の意思表示をしているのだから、契約を解消させる。これは極めて素直な、現行法に即した考えです。だけれども、使用者がお金を払えば解消させるというのは、極めてハードルが高くなると思うのです。
○岩村座長 いま一つ、私もよく理解できていないのですが、少なくとも今までこちらの委員会で検討してきたものについては、幾つかのパターンがありますけれども、その当否は、先生のほうでいろいろ御議論があるにしても、基本的には解雇無効ということを前提としつつ、その上で、労働者側がこの会社に勤める気はないので、むしろこの後の仕事が場合によっては見つかっている、あるいはこれから早く見つけるということで、もうこれで契約は打ち切ってということで、解消金の支払いの請求をします。
その先の構成はどうするかという問題はありますけれども、物すごく大ざっぱに考えると、それで使用者が解消金を払う、それにバックペイを乗せるのか、何とかというのはありますけれども、そこを捨象して考えたときに、使用者側が解消金を払えば、それで裁判所の判断として、そこで労働契約は終了する、決着の形としますというのが今まで委員会で検討してきたものです。先ほどお話し頂いた先生のお考えは、先生のお話とご提出頂いたペーパーとから少なくとも私の理解した限りでは、労働者側が辞職をします、その意思表示をするとともに、解消金の支払いを請求する、そして使用者が支払うことによって、労働契約は解消することになるという構成なのかと思います。
しかし、そうすると、労働者はそもそもいつでも辞職できる。かつ辞職そのものは、単独行為ですから、意思表示をすれば、それですぐに効果としては、現行では2週間ですが、それで発生するし、単独行為なので、一般の理論からいうと、それに条件をつけることはできないということになる。そうすると、解消金を支払ってくれれば、辞職しますというのは、成り立たないのではないかという気がしていて、2つの構成で、実質どこが違うのかは、私のほうでうまく理解ができていないのですけれども、そこの点を御説明いただければと思います。
○古川弁護士 契約終了の効果の発生原因がお金の支払いであるということであれば、労働者の発意に基づくものでなく、使用者の発意のものについても、同様に認めなければならなくなる。ここが一番大きい違いです。それが危惧されると言ってもいいです。
○岩村座長 垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 今の点に関してなのですけれども、御指摘のように、前回のシステム検での検討の際におきましても、もとの解雇そのものは、使用者が一方的にする意思表示でありまして、この議論が前提としている状況というのは、しかし、その解雇は、法律上、無効であるということですから、そこに幾ばくかの金銭の支払いを追加することによって、最終的に使用者の一存で、使用者のみの意思によって、契約を終了させてしまう制度を仮につくるとすれば、それは現行法の規制から見て、かなりハードルが高いと申しますか、乗り越えなければいけない課題が多いだろう。
それに対して、労働者が金銭の支払いと、いわば引きかえに労働契約を終了してもよいという意思を示している場合には、使用者側の一存だけでお金を払えば、追加すれば、正当事由の場合は、まさにそういう構造をとっているわけですけれども、そういう制度と比べると、現実的なのではないかという意見が、私も含めて、多かったのではないかと思います。そういう経緯で、今回の法技術的論点の検討に際しても、基本的には、労働者側でそのような意思を持っている場合ということを前提として、議論しているのだろうと理解をしております。
そのこととの関係で、今、岩村座長からも御指摘がありましたけれども、確かに労働者の意思が何もないのに、最終に労働契約の終了の効果が生ずるのは、どうもハードルは高いだろうと思われるわけですが、この制度では、したがって、一定の労働者の意思が前提になっている。ただ、それを辞職の意思表示と呼ぶのか、それとも、辞職とは異なる、この制度ができた場合には、この制度を前提とした、労働契約終了に向けた意思表示と考えるのかというのは、いろいろ議論の余地があるのかと思われますので、先生の御意見は、最終的には、労働者の意思によって説明しないと、こういう制度は正当化できないのではないかというところを強調されていて、それは辞職の意思表示という形で表現されていると感じましたけれども、これまでの検討会の議論では、必ずしも辞職の意思表示という構成ないし表現はとっていなくて、ただ、実質的に考えていることがそれほど大きくずれているのかと言えば、そこは必ずしもそうではないという印象を持っているところです。
その点と関係するのですけれども、仮に辞職の意思表示だと考えた上で、後のほうでも、生存権の問題等、御指摘がございましたが、そういった点を考えますと、1つの考え方としましては、意思表示があれば、労働契約は終了して、解消金の支払いは、請求権としては生ずるけれども、実際の支払いを待たずに、労働契約そのものは終了してしまうという考え方も、辞職という構成をとると、十分あり得るところだろうと思います。
その場合には、4ページの6で指摘されているダブル・ジョブ等々の問題は、一応解消されることになるかと思いますので、そういたしますと、先生の御意見の御趣旨としては、むしろこの制度を使うという意思表示があった場合には、直ちにそれによって、労働関係の終了の効果が生ずるほうが、むしろ望ましいという結論になるのでしょうか。それとも、その点については、また別の御議論がおありなのでしょうか。
○古川弁護士 私の結論は、そもそもこの制度は、必要がないということが結論でございます。ですから、先生の御指摘のような、効力の発生を早めるということについては、全く考えておりません。
それから、先生が御指摘された一昨年の検討会の報告の経過につきまして、私は、当時から全部読み込んでおりますので、そういう新たな立法論であったことは承知の上で、申しあげております。
○岩村座長 ありがとうございます。
ほかにもいかがでございましょうか。小西委員、どうぞ。
○小西委員 同じく4ページの労働者と家族の生存権保障をめぐる問題というところなのですが、辞職と検討されている金銭解決制度と比較をなされていますけれども、これまでの地位確認訴訟の場合と、金銭解決制度とを比較した場合、レジュメでは、×ではなく、クエスチョンマークがつくのではないかというようなお話しがあったと思うのですが、ダブル・ジョブをめぐる問題等について、何か違いは出てくるのでしょうか。
○古川弁護士 ダブル・ジョブをめぐっては、直ちに大きな違いは出てこないと思います。
ただ、問題は、労働契約の終了時期が金銭解決の支払いの条件になっていますので、極論すれば、3年先、4年先になります。これまでであれば、もちろん地位確認を求めながらも、途中でダブル・ジョブの就労可能性が出てくれば、自分で身を引いて、地位確認を取り下げるなりして、就労することは可能だったわけです。ところが、今回、ずっと引っ張られている間、自分の意思で契約は終了しないのです。もう一回、辞職の意思表示をしない限りは無理だろう。そうすると、金銭解決の請求はどうなるのであろう。ここでの違いが出てくるのではないかと思っております。
○岩村座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでございましょうか。神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 今の上の部分で、雇用保険法に基づく失業給付、基本手当の仮給付は困難であろうというお見立てについて、その中身を質問させていただきます。これは解雇無効だという主張を前提とながら、かつお金が支払われればやめるという意思表示となることから、自己都合退職とも、会社都合の解雇とも位置づけられないという、その点に関する問題意識でしょうか。
○古川弁護士 もともと仮給付の制度は、法律上に根拠がないのです。あくまで実務的な運用の制度にすぎません。ただ、理屈とすると、通常の訴訟の場合と違って、契約があるのか、ないのか、争いになっています。それに対して、無効が大前提だということを、労働者が言っているわけです。そのときに、仮給付というのは、理屈の上ではつけにくいだろうという程度の指摘です。
○神吉委員 現在の解雇無効を争っている状態よりも、さらに難しくなるということでしょうか。それは雇用保険法の法改正ないし運用で、対応も可能でしょうか。
○古川弁護士 それは多分可能だろうと思います。
○神吉委員 ありがとうございます。
○岩村座長 ほかにはいかがでしょうか。
恐らく今の問題は、実際の訴訟手続の中で、この後、仮にこういう制度ができたときに、実務がどう転がっていくかという、その問題と関係するのです。解雇無効のところで、1回、中間判決をやって、それから解消金請求の審理をやりましょうとなるのか、それとも、どこかで解雇無効でよろしいですねということにした上で、解消金のお話しをしましょうということで、その手続を進めるのかということによっても、ちょっと違うと思っていて、つまり中間判決を出してしまうと、その時点で、一応当事者間は、解雇は無効ですという話になってしまいます。それが今度は、失業保険給付というか、基本手当にどういうふうに跳ね返るかという問題で、今度は、雇用保険当局でどう整理するかという話だと思うのです。
他方で、中間判決を絡ませずにいくと、結局、解消金判決が出るまでは、少なくとも解雇が有効か、無効かというのは、判決の上では確定していないことになり、判決が出た時点で、解雇無効ということで、そこに既判力が生じるのかという別の論点があるのですけれども、そこの時点までは、解雇が有効とも、無効ともわからないという状態になるので、その場合については、これもあくまでも憶測ですが、今の実務を変える要素は、余りないと感じてはいます。そこはいずれにしろ、雇用保険との間で調整をして、考えを整理する必要はあるところだと思います。
ほかはいかがでございましょうか。垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 最後に、紛争の一回的解決との関係で、御指摘のあった点に関連してなのですけれども、資料3のパターン1とA案に関して、デメリットとして、この点が指摘されているのですが、それが本当に現実的であるのかという御指摘で、そういった疑問からすると、これも先ほどの御意見の中でおっしゃっておられたかと思いますけれども、パターン1について、不都合に見せるというために、こういう書き方がされているのではないかという見方を御披露されたと思いますが、そうしますと、先生の御意見としては、むしろパターン1のやり方が、このパターン1からパターン4まで並んでいる中で見ると、合理性が高いという評価をされていらっしゃるということなのか、そのあたりについて、もし御意見を伺えるようでしたら、お願いできればと思います。
○古川弁護士 私は、パターン1を薦めるつもりは毛頭ございません。パターン1からパターン4、どれをとるのも適切ではない。つまり解雇の金銭解決制度を設けるべきではないということが結論だからです。
○垣内委員 ありがとうございます。
○岩村座長 ほかにいかがでしょうか。中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 今回、少なくともこの検討会を進めるに当たっては、使用者からの申し立ては考えずに、労働者の請求によって解消する制度をつくる場合に、どういう論点があるかということを検討し、そのときに、こういう考え方やこういう問題がありますということを整理しているつもりなのですが、先生は、そこを御理解の上で、そもそも労働者からの制度をつくること自体、問題が多いし、すべきではないという御意見だと思われます。根本はそこだということなのでしょうか。
○古川弁護士 そうです。労働者側の申し立てだけを認めるとしても、きょう、申し上げましたように、多々困難な問題が生じます。ですから、むしろ制度としては、つくらないほうがいいというのが結論で、いかなる工夫をしても、うまい制度はつくれないのではないか。
○岩村座長 ありがとうございます。
それから、解雇無効訴訟との関係ですけれども、少なくとも検討会の前提としては、現在の労働契約法の16条の規定を前提とした上で、この仕組みを入れようとするのかどうか、どういう制度を入れるのかという議論をしていますので、そういう意味では、解雇権濫用法理なり、それに就業規則とか、労働契約を加えてもいいのですけれども、そこのところの手を変えよう、手をつけようとか、そういうことは一切議論していない、そこは今のものを前提としつつ、その上で、解雇無効という何らかの形で、訴訟上、一定の判断が下った上で、労働者はどうしますかという制度として、考えているということなので、我々としては、この制度を入れることによって、解雇の無効の場合の証明責任とか、そういったものの分配が変わるとか、そういったことというのは、基本的にはそこは想定していないということでは、申し上げておきたいと思います。
○古川弁護士 ただ、そうであるのであれば、資料1の書き方は、全く違ってくるはずであります。資料1のここに、権利発生要件という言葉が使われ、(2)で解雇無効であるということは、先ほど申し上げましたような、平成15年に厚労省が出した法案と全く同じ構造です。ですから、もしそういう心配がないとおっしゃるのであれば、抜本的にここを整理し直さないと、そういう批判を免れないと申し上げているのです。
○岩村座長 ありがとうございます。
ただ、こちらとしては、訴訟手続は、労働審判をも前提として考えているので、その中のどこかで、解雇無効というところがある程度決まって、そこからの出発点という理解ですので、そこで権利の発生要件という、少なくとも解消金のところに絞った意味での権利の発生要件という意味だと、我々としては考えています。ですので、その段階では、裁判所なり、何なりの見解がある程度何らかの形で示されているでしょうから、労働者としては、そのことを主張すれば、解雇無効のところの権利発生要件の証明はできているという理解だと、前提としては考えてきたということであります。
○古川弁護士 この点が法制審議会などにおける法務省の議論の仕方と全く違う点なのです。つまり法制審などであれば、きちんと要件と効果を明確にした議論が行われます。ペーパーに書かれている字面で、それがわかるようになっています。
ところが、今の岩村先生の御指摘は、字面からは読めないのです。行間を読むしかないのです。それで、こういうことの議論をするときは、字面の上で、趣旨が明確になっていないと、議論が間違った方向へ行くことを、私は大変危惧します。
○岩村座長 御指摘ありがとうございます。
あと、私がよく理解できなかったのは、労務供給義務との関係が、いま一つ、ぴんとこなかったのですが、確かに労働者側には、契約上は労務供給義務が存在しますけれども、実際上は、使用者が具体的に労務提供を命じることをしない限りは、通常はいわゆる弁済の提供に当たるような行為をすれば、それでいいということになっています。とりわけ解雇の無効が争われているような事例について言えば、使用者側が一般的には労務供給を拒否するということが一般なので、通常、ほとんどはこの問題は出てこないのです。したがって、少なくとも最終的に裁判所の判決が出るまでを考えたときには、その問題を考える必要があるのかと言われると、私は余りないのではないかという気がしています。
他方で、裁判所判決が出たときにどうかという問題はありますけれども、使用者として見ると、解消金判決が出てということで、それに応じるのであれば、速やかに金銭を払って、それで契約を解消させるということに、恐らくはなるでしょうから、よほど意地悪なことをしない限りは、たとえばいじめてやれというのであれば別ですが、そういうことになるので、これがおっしゃっている本当のところというか、いま一つ、まだよく理解できていないのですけれども、いかがでございましょうか。
○古川弁護士 経営法曹の皆さんが書かれた本でありますとか、社会保険労務士の書かれた本の中に、頻繁にこの問題が出てくるのです。従来であっても、解雇無効の場合に、使用者としたら、傷口を広げないために、解雇無効であることを認めて、就労させなさいというのが頻繁に出てきます。かつ現実にそういう事件が起きております。ですから、まずそういうことはあり得るという、現在の制度のもとでもあるということを前提にしています。
次です。この制度ができたときには、就労しなさいという言い方はもっとふえるだろうと考えています。それはなぜかというと、解雇無効であることを認めた場合に、従来型であれば、定年まで勤めさせなければいけません。ところが、今度の制度ができると、解消金の支払い時点で終わるのです。だから、定年まで勤めさせなくても、解消金の支払いの時点までだけなら勤めさせてしまおうということで、そうすれば、バックペイも少なくなりますし、あらゆる点で有利です。だから、そういう意味で、そういう問題は、今以上に誘発するのではないかと思っています。
○岩村座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでございましょうか。
それでは、今の古川弁護士、岡田弁護士からの意見については、委員の先生方からの御意見、御質問は、大体出たかと思います。
岡田弁護士、どうぞ。
○岡田弁護士 発言の機会がなかったので、一言、最後に述べさせていただきたいと思います。この制度が必要ないという点、それから、解消金の性質について、パターン1からパターン4まで、いずれも問題点が多くて、実現困難だという点については、古川弁護士と同じ意見です。
一言、バックペイの扱いについて、意見を述べさせていただければと思います。パターン1で一回的解決が仮に可能だとしても、バックペイを除いて、狭義の解消金の支払いだけで労働契約関係を終了させるという制度は、私としてはあり得ないのではないかと考えております。
確かに、現時点でも、バックペイが払われないということはありますし、和解して、解決金をの支払いについて合意したのにもかかわらず、それが払われない、踏み倒されるというケースはあります。しかし、今回は、解雇が無効であるにもかかわらず、労働契約関係を終了させるという新たな制度をつくるという場面ですので、今もそういうことがあるからといって、それで構わない、同じように考えればよいということにはならないだろうと思います。和解で解決できるようなケースであれば、こういう制度をつくらなくても、解決ができるわけです。今回の制度で念頭に置かれているのは、そういう和解、合意が成立しないケースですから、バックペイの履行は、きちっと確保しないといけないと考えております。そういう点から、パターン1は、実現が難しいのではないかと思います。
また、バックペイの履行の確保という点を考えて、パターン12からパターン4まで挙がっていると思いますけれども、これについては、この検討会でも議論されているとおり、充当の特則をおけるのか、併合提起の強制が可能なのかなどいろいろな問題があって、私としては、いずれも導入は不可能ではないかと考えております。そのことを最後に述べさせていただければと思います。
○岩村座長 ありがとうございました。
1点、私からですが、労側の弁護士さんの立場、要するにこういう制度は要らないというお立ち場は十分わかった上で、仮にやるとして、こちら側でかなり検討しているものとしては、基本的に解消金の請求は、労働審判なり、通常の民事訴訟に限定をする、そこだけとしていて、当事者間ではやらないほうがいいのではないかということも議論しているのですが、お立ち場はよくわかっていますが、あくまでも仮の話として考えた場合に、もしお考えがあれば、その点について、お伺いできればと思います。
○古川弁護士 御指摘にように、裁判手続のみというのは、理屈からして、極めて難しいのではないかと思っています。
○岩村座長 それでは、お二人様、大変ありがとうございました。
一度、あちらの席にお戻りいただければと思います。
それでは、引き続き、使側から御推薦いただいております、中山弁護士から御意見をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○中山弁護士 よろしくお願いいたします。中山でございます。
お手元の資料6「『解雇無効時の金銭救済』の論点について」ということで、これは私と石井弁護士で、メモ的にまとめたものです。そして、2人でコメントする予定でしたが、きょう、急遽、体調不良で申しわけございませんが、石井弁護士が出席できなくなりました。このため、私のほうで、このペーパーを中心に御説明させていただきます。
昨年の12月27日の第3回の検討会の配付資料1につきまして、先日、事務局から御説明をいただきました。資料1の論点を中心に、使用者側の意見を出してほしいということでございましたので、このメモをまとめました。
順に読んでまいりますが「第1 はじめに」というところで、資料1で記載されております、基本的視点では、労働者保護の観点から、紛争解決に関する労働者の選択肢をふやすこととして、労働者に労働契約解消金という実体上の権利を付与して、金銭解決の申し立てを認める。一方で、使用者には、このような申し立てを認めないとしている、この点については大きな問題で、私どもは、反対でございます。特に金銭解決制度は、解雇紛争についての適切な解決方法であるがゆえに、認めるべきなのであって、一方の当事者の労働者保護を図る制度という形で、片面的に考えることは合理的ではないと言わざるを得ません。
さらに司法における紛争解決手段において、片面的な申し立てしか認めないというのは、公平性に欠けて、司法制度のあり方として不適切ではないかとも思います。
以上の指摘をした上で、資料1の論点について、このうち、大きな問題として、まず2点について意見を申し上げまして、その余の論点につきましては、全てではありませんが、必要な範囲でコメントをさせていただくということにいたします。
以下の丸番号につきましては、資料1の論点番号に対応してございます。
「第2 大きな問題となる2点について」ということで、1点目は、労働契約解消金の請求手続は、本案訴訟手続だけに限定すべきであるということです。これは論点②で、裁判外、労働審判、訴訟という場面で、どの時点で請求を認めるのが適当かということでございますが、裁判外ということであれば、労使合意でもともと雇用を終了することはあるといたしましても、これが合意できない場合に、解消金請求権を行使して、雇用終了とする。新しい制度だということを踏まえたとしても、これは無用の混乱を招かないように、慎重な対応が必要だと考えられます。
ここに書いてございませんが、解雇の有効・無効という問題では、労使双方がお互いに無効だという例もなくはありませんが、通常、使用者は有効だと思って解雇しているわけですから有効と考え、労働者は無効と考える訳です。無効ということを要件とする請求権を訴訟外で認めることになりますと、金銭が幾らかという手前の解雇が有効かが大いに争われるわけで、一般的にいえば、到底裁判外で解決できるケースではない。まして金銭の算定について、司法機関を経ないで算定するというのも、また難しいわけでして、そういうことであれば、解消請求権を裁判外で認めず、労使の話し合いで、これまでも行われている解雇紛争の解決で十分であろうと思われます。
次に、労働審判についてですけれども、御承知のとおり、労働審判は、簡略で迅速な3回の手続ですから、確定的に解雇の有効・無効の判断を行うようなことは、通常は困難ではなかろうか。これも御承知のとおりですが、3回の期日といっても、東京地裁を中心として、労働審判の実務では、第1回目に労使・代理人双方の言い分を聞いて、おおむねの心証をとって、第2回、第3回は、調停ができるかどうかという形をとるのが通常でございます。したがって、解雇が無効であることを要件とする請求権が、果たして認められるかどうか、要件が具備するかどうかを、3回の審判の中で一般的に判断できると言えるかというと、それはとても困難でして、むしろ24条終了の事案になることが多いのではなかろうかと思います。
また、解消金と労働審判の調停における和解金というのは、ダブルスタンダードになるはずでして、これまでの労働審判の極めて迅速な調停手続、和解金額の水準を崩す懸念もある。
この点については、1ページの下から3行目でございますが、労働審判制度は、司法改革のうち、最も成功した施策と考えられており、労使いずれの立場からも評価されており、現在の運用を崩すようなことは、使用者側としてももちろんしたくないわけです。現在の労働審判の運用では、解雇が仮に有効と認められるような場合であっても、あるいは無効と断定できない場合でも、金銭支払いで紛争を解決する。おおむね7割以上が調停等で終了しているわけです。したがって、白黒をつけないまま、迅速に解決する制度としてニーズもあって、評価もされていると思われます。金銭解決制度が、解雇無効の判断をした上での解決制度ということであれば、これを労働審判に持ち込むということは、労働審判の運用や調停の金額水準を崩すことにもなり、非常に不都合であろうかと思われます。
2点目は、解消金関係の3区分ということで、これは先ほど古川先生からもお話しが出ましたが、資料3にもあって、A案とB案、このB案が3パターンになっております。
これについてですが、まず解雇が無効でも、直ちに不法行為にはならないので、この枠組みでいう損害賠償金というのは、解消金とはもともと別にすべきであるということです。
次に、バックペイと解消金の関係ですけれども、バックペイを解消金の中に加算するということは、過大な負担を使用者に負わせるので、解消金だけのシンプルで現実的な金額による制度を考えるべきである。この点は、欧州の制度を参考にすべきではなかろうかと考えております。
御承知のとおり、バックペイを加算すれば、訴訟の中で、控訴・上告もあるわけで、長期化すればするほど、バックペイが高額となる。解消金額の中にバックペイが入れば、予測可能性は希薄となって、迅速解決の要請のインセンティブにもならないのではなかろうか。
3つ目ですが、バックペイは、地位確認判決により認められるわけですけれども、金銭解決の選択をした労働者にも、同じバックペイを認めるのは過剰であると考えます。労働者がバックペイを満額もらいたければ、解雇無効判決を選択すればよいのであって、金銭解決の選択をした場合にも、同様のバックペイを認めるべきではない。つまり地位確認の確定判決ルートの上に金銭解決制度を乗せる、そういういわば2階建ての考え方は、認めるべきではない。つまり別々の2本立てでいくべきです。金銭解決といったところでは、転職市場がより活発化して、人手不足も拡大しつつある中で、解雇の金銭解決制度について、高額のバックペイを加算することは非常に不都合・不合理だと理解します。そして、仮にバックペイを認めるとしても、社会通念上、再就職が可能となるまでの数カ月間の期限に限るべきだろうと思います。
バックペイや損害賠償、特にバックペイが中心ですが、これらを含む解消金となると、地位確認訴訟と同様の審理が必要となって、新しい救済制度を設けた意味が半減するのではないかという疑問もありますし、バックペイを考えるのであれば、従来の訴訟を選択すればいいわけで、新しい制度については、金額の予見可能性も含めて、迅速な解決を重視した制度設計とすべきです。
その観点からは、解消金に限定して、勤続年数掛ける何カ月分を支払う、あるいは上限・下限の範囲内で決められた額を裁判所の裁量で決定するという形で考えるのが1つではなかろうか。従来の地位確認訴訟より、金額は少ないかもしれませんが、早期の解決になるという制度をつくる。結局、時間もかかるというのであれば、利用もされないであろう。労働者だけが金銭解決の選択権をもつという前提ですから、それであれば、地位確認のバックペイと契約解消金の両方、プラスのものは全部乗せて請求できるかのような金銭解決制度というのは、認めるべきではなくて、簡潔に契約解消の対価に特化した制度を構築すべきです。
なお、パターン3というのは、資料3のB案のパターン3のことです。
これについては、解消金を支払っても雇用が終了しない場合があって、それでは何のために支払いを命じられるのか、わからないのではなかろうか。
今、御説明したところですが、資料3でいうと、A案、B案、いずれのパターンも賛成できないことになります。
パターン1の解消金だけで契約が解消して、バックペイについて、先ほどのように、社会通念上、再就職が可能な範囲に限るという設計であれば、検討することはあろうかと思いますが、このままでは、いずれも賛成できないということになろうかと思います。
次に、3ページ「第3 その余の論点について」ということで、これは簡単に書きましたし、石井弁護士の意見も入っておりますが、私からコメントさせていただきます。
1つは、対象となる解雇を制限すべきではない。労働者申し立てというたてつけの設問の整理でいけば、そういうことになるだろうと思います。労働者の救済手段の選択肢をふやすという点では、対象を制限する必要はないだろう。法律違反の解雇であっても、労働者がそれを選択する以上、これを否定する必要はなかろうかと思います。
請求の撤回については、石井弁護士と議論がありまして、このコメントについては、石井弁護士のコメントを書いてございます。
労働者保護と使用者を不安定な地位に置かないという、使用者側の保護の兼ね合いからすると、口頭弁論終結まで撤回可能とすべきではないのか。なお、上記のとおり、訴訟における意思表示のみを認める場合、被告となる使用者の同意を得て訴えを取り下げすれば、請求の撤回も認められるのではないかということでございます。
3つ目は、論点の④になりますが、労働契約や就業規則において、あらかじめ解消金請求を行わない旨と、合意解約で解消しなければならないことを契約や就業規則で定めることの可否、こういう論点であります。もう一つは、解消金の権利発生後、和解等で権利を放棄することの可否についてという、この2つが④でございます。
この点については、真実、自由な意思によって、あらかじめ解消金請求を行わない旨を合意したのであれば、その効力を否定する必要はないと考えますが、労使の力関係や、労働者のほうで、利害損得を的確に判断するための十分な情報提供があったのかどうかが、疑問視されることも多かろうと思います。結果として、拘束力なしとされることも、裁判所では多いのではなかろうか。こういうところもありますので、この点については、否定的でございます。就業規則に定めて周知していただけでは、難しいだろう。
それから、裁判上の和解であれば、権利放棄も否定する理由はないということです。
4つ目、解消金請求権と他の債権との相殺は可能かという、⑤の論点につきましては、解消金の中にバックペイとか、損害賠償を含まないで、契約の解消の対価の金銭のみとすべきだという、先ほど申し上げたところを前提にしますと、相殺も可能でいいのではないかと考えます。
⑧の論点につきまして、5、地位確認請求の途中から、解消金請求の訴えに変更することの可否ということで、解決の一回性を重視するという点から、変更を認めてよいのではないかということでございます。
6として、解消金の考慮要素です。これは⑪ですが、この点についても、石井弁護士と議論して、このコメント、つまり無用の争点をふやさず、早期に解決するという観点から、契約解消の対価として、勤続年数と給与額を考慮要素とすべきであるとありますが、これはこの2つに限定するという趣旨ではなくて、そういうところを中心にすべきだという趣旨でございます。
企業規模を考慮するかという点について、ヨーロッパのように、企業規模にかかわらず、職務給が同一という制度ではないので、企業規模の考慮要素は、給与額の中に組み込まれているのではないかということです。この点は、石井弁護士のコメントを載せてございます。
中山のほうは、論点にあります、諸外国の制度の考慮要素と基本的に同様でよい、つまりこれ以外の年齢とか、解雇無効事由、労使の帰責性、企業規模を考慮要素として考慮し、その濃淡については、裁判所の広い考慮要素の中で、検討していただけばいいのではなかろうかと思っております。
7につきましては、計算方法をあらかじめ定めておくべきである。これは⑫と⑬の論点についてのコメントでございます。迅速な解決、予見可能性の付与、解決手段として選択すべきかどうか、当事者がその是非を判断するためには、予見可能性が必須であるという点から、解消金について、計算方法をあらかじめ定めておくべきで、上限・下限も必要だ。
また、迅速な解決、予見可能性の付与という点から、曖昧な要素は排除すべきで、仮に盛り込むとしても、例えば基本の計算式に解雇無効の程度、労使の帰責性で、3段階程度の大くくりの算定割合とすべきではないかということでございます。
8は、モデル書面等の15の論点につきましてです。これは予見可能性を高めるという点で、有用であれば、開示することを特に否定する必要はなかろうかと思います。
消滅時効については、論点の⑯⑰で、これは結論だけコメントしておりますが、早期解決という観点からは、1年が相当と考えられる。付加金等の申し立てができる期間などに照らすと、2年も考えられるということです。
権利行使期間の起算点ですが、主観も考慮するかということですが、客観的に明確な解雇時からとすべきだろう。これはもともと解雇の意思表示が、労働者に到達していないと、解雇の効力は発生しないわけですから、客観的に解雇の意思表示が到達したと判断されるところで考えればよろしいのではなかろうかという理解でございます。
以上、御説明させていただきました。
○岩村座長 ありがとうございました。
それでは、今の使側の弁護士の方からの御説明・意見につきまして、御意見あるいは御質問がありましたら、お願いしたいと思います。
小西委員、どうぞ。
○小西委員 資料の2ページ目のところです。「金銭解決を選択した労働者にも同じバックペイを認めるのは過剰である」と記載されています。
○中山弁護士 4段落目ですね。
○小西委員 はい。
これは従来の民法536条2項の議論との関係で、それは認められるべきでない、もしくは金銭解決を選択した場合には、労働者側に就労の意思がないから、それは支払うべきでないとか、そういうこれまでの民法536条2項の議論を踏まえた上での過剰という御議論なのか、そうではないのか、その辺をお聞かせいただけますでしょうか。
○中山弁護士 地位確認訴訟判決のプロセスでいきますと、当然判決の中にバックペイが出ていますから、金銭解決も一定の時期までは契約が存続するので、その間のバックアップというのは、出るではないかということは、当然検討いたしました。ただ、金銭解決の選択のときに、終了までのバックペイを全部認めた上で、金銭解決の金銭を考えるのか、どの程度考えるのかというのは立法論の問題ですが、金銭解決の制度として、その点を否定して、例えばバックペイはないと仮に否定しても、それは労働者がいずれかの選択ができるわけですから、そういう点で、仮に地位確認判決との対比で、それを認めないことが、法的には不可だということではなかろうかという理解です。ですから、ここに書きましたように、そういうものを求めるのであれば、金銭解決です。地位確認のバックペイと契約解消金、二兎を追って、二兎とも得るような制度にすべきではないです。
選択といっても、このたてつけでいくと、いずれも労働者が選ぶわけですから、先ほど言いましたように、確定判決ルートのバックペイを1階とすると、金銭解決はその上の2階建てとする。したがって、1階が前提だという考え方は、立法論の中ではとらなくても、少なくとも可能ではなかろうかという考え方なのです。
○岩村座長 ありがとうございます。
よろしいですか。
○小西委員 はい。
○岩村座長 ほかにはいかがでしょうか。神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 1ページの労働審判においてこういった制度の行使を認めるかという点について、お伺いしたいと思います。現在、労働審判が非常にうまくいっていて、非常に迅速な問題解決に役立っていることは各方面から伺いますし、うまくいっている運用を妨げるようなことがあってはならないというのは、私も同感です。
実際に労働審判で使えるようにしたときに、どういった問題が起きるかということについて、実務の印象を教えてください。例えば解雇の有効・無効の判断を必要とすると、要件具備の判断が非常に困難ではないかとおっしゃられましたが、仮に要件の具備が明らかで、判断が3回でできそうなケースであれば、それはそこで終了する。仮に非常に難しい場合、審判は終了して訴訟に移行することもあろうかと思います。一方で、労働者側としては、仮に訴訟で争えば、もっと高い解消金が入るだろうとしても、労働審判の枠内で、調停などを使って早目に紛争を解決させたいというニーズもあるのではないか。そういったスクリーニングとして働いて、運用が複雑なケースは労働審判は使いづらいということで、自然と使われなくなるのではないかと考えておりまして、労働審判の制度自体がうまくいかなくなるとは、必ずしも限らないと思うのです。それはちょっと甘い見込みでしょうか。
○中山弁護士 、労使で解雇の無効を争わないので、契約解消の金銭額を定めてくれとか、そういう申し立てであれば、それはできないわけはないと思いますけれども、むしろ例外的な場合であって、一般的には労使で争いがあるので、大部分は24条終了の可能性が高いため、制度のたてつけとしては難しい。
運用を考えないといけないので、例えば解雇無効については、信憑性がどうだということになると、証人尋問を経なければいけないとか、いろいろあります。そういうことを労働審判ではできないので、ちょっとちゅうちょしますというところなのです。ですから、解雇無効に争いがなく金銭だけということであれば、訴訟をやっても、すぐに金銭で試算してくださいという訴訟になります。労働審判でも可能ですが、それは例外です。ここに書いたように、解雇紛争の中で解雇無効が前提の解決制度は一般的には労働審判に適さないのが大部分であろうと思われます。
それから、これは労働審判員の皆さんにもヒアリングをしていただかないといけないのですが、労働審判の実務では、そもそも有効か、無効かの白黒をきちっとつける手続ではないし、恐らくそういう点まで踏みこんでいないと思います。大体濃淡で、これは相当こちらに非がある、こちらはこういう事情だということを、第1回のいろいろな資料と当事者のヒアリングで見て、大体このぐらいだということで、調停の金額がはじかれるというのが、実際、我々が実務に出ていて、そういう感じなのです。ですから、もともと無効を確定させていただく前提の請求権を労働審判へ持っていくこと自体が、基本的に適さないのではなかろうか。支障がない事案もあろうかと思いますが、一般的に見て、労働審判で入れていいのではないかというのは、非常にちゅうちょするし、制度の運用は、これまでどおりに、そういう案件は不適ではないかと思われますが、いかがでしょうか。
○神吉委員 ありがとうございます。
○岩村座長 私は、今、先生がおっしゃったように、1つは、残念なことに、使用者は余り考えないで、首だということをやるのです。
○中山弁護士 そうとも言えないと思います。
○岩村座長 それで労働審判へいくと、初回でこれは無効だというケースはあるのだろうと思います。そのときに、労働者の側が解消金請求という形で持ってきたときに、それを労働審判ではやりませんというのは、ないだろうと思っています。
もう一つは、おっしゃるように、解雇無効かどうかというのが、直ちには見きわめにくいというケースについては、1つは、24条終了に持っていっても、本訴にいかせてしまう。早々に本訴のほうで、解消金請求の問題で扱うのだったら、そちらでやってくださいというのと、もう一つは、1回目のものは、白黒つかないけれども、心証としては、お金を払って終わりにしたらどうですかということで、解消金の制度とは離れたところで、最終的に労働審判でもってやることもあるというイメージは持っていまして、そういうことを考えると、アプリオリに労働審判を除外するということではないというイメージではいます。
○中山弁護士 解消金の水準とこれまでの労働審判の白黒まで確定的にしないで和解するという、和解金額水準というのが、ダブルスタンダードになるといえるかどうかまではわかりませんけれども、労働審判で扱うとしても、両者の違いも審判の中で反映しなければいけないです。
○岩村座長 これはあくまでも私の個人的なイメージですけれども、要するに有効か、無効かよくわからないということで、解決しようという話になるので、それは解決金の仕組みとは別の世界の話なのではないかと思っています。解決金の仕組みそのものは、解雇が無効であるということが前提になるので、そうではなくて、51対49かもしれないし、その逆かもしれないというようなところで、いかがですかという話になったときには、それはそれで従来の労働審判の考え方、実務でやるということだというのが、個人的なイメージではあります。
○中山弁護士 そこら辺は、無効を前提に金銭解決制度の金額が提示されているのか、その手前、判然としないけれども、従来の調停の中の和解金で提案されているのか、そこは労働審判委員会のほうで区別して、提示しないといけないことになります。
○岩村座長 解消金ということになれば、これは無効ですということです。しかし、1回、2回で無効までたどり着かないということであれば、24条で終了させて、本訴に持っていくという、そういうイメージを持っています。
○中山弁護士 その点は、仮に無効だという心証がとれたとしても、今度は金額をどのぐらいにするか。金額の設計ももちろん難しい。仮に上限・下限があった場合、いろんな考慮要素の中でやりますが、審判の手続の中で、第三者を呼ぶわけにもいかない事情の中で、適切に金銭の算定ができるのかというところがあって、これは事案が全く違いますが、例えば付加金の請求というのは、労働審判でできないことになっている。裁判所でやれということです。ああいう感じで、基本的にすみ分けたほうが、いいのではなかろうかというのが意見でございます。
○岩村座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。鹿野委員、垣内委員ということで、お願いします。
○鹿野委員 先ほど小西委員から質問があった、2ページのバックペイに関するところなのですけれども、バックペイについては、1つは、解消金の制度にのったとして、どこまでバックペイの支払い義務が生じるのかということと、もう一つは、バックペイを支払わないと、労働契約関係が終了しないのかという2つの問題があると思いますが、前者については、先ほど小西委員も御指摘になったように、今回の中山先生の御報告・御意見では、解消金の制度をとる場合には、そこにバックペイを加算するということは、不都合だという趣旨のことをおっしゃったと思います。
先ほどの小西委員の質問に対するお答えを聞いていました限り、これは誤解があったら、訂正していただきたいのですけれども、地位確認だったらつくようなバックペイが、こちらで否定されるというのは、理屈の問題ではなくて、新しい制度を導入するときの一種の政策的な考慮によって、加算が否定される、あるいは減額されるべきだということを考えていらっしゃるとも聞こえたのですが、そのように理解してよろしいでしょうか。
○中山弁護士 そうです。政策的というか、バックペイすべて加算するような解消金の制度とするなら、必要ないということです。また、地位確認判決で認められるようなものと全く同様のバックペイが金銭解決の解消金の中に含まれないと、そもそも設計上おかしい、あり得ない、こういう考え方をとることは必然的ではないということです。結局、金銭で契約を解消しますけれども、そのときに、金銭で契約の解消を認めますが、過去の分をどうするのかというところが出てきます。そういう点については、もともと地位確認判決の原則の選択肢をとれば、バックペイは全額請求できます。
一方、選択肢としては、金銭解決を選択したら、金銭解決の金額がどのぐらいになるかといったら、ケース・バイ・ケースだとしても、少なくとも地位確認と同様のバックペイ、全額は含まれないという設計を考えるべきだということです。そういう制度として、極めて迅速に判断が出るということで、どちらを選択するかという形で、やれるのではないか。そういう政策的視点から立法論として考えるべきではないかという意味です。
○鹿野委員 迅速解決の要請という観点についてなのですが、バックペイがこちらの解消金の制度でも、終了までは原則バックペイがつきますという形をとった場合、迅速解決のインセンティブが働かないのかというと、そうではない。むしろ長期化すると、バックペイをどんどん支払わなければいけないことになるわけですから、早く解決したほうがいいということに、使用者としてはなって、そのことは、ある意味、早期解決のインセンティブにもつながるのではないかとも考えるのですが、いかがでしょうか。
○中山弁護士 それは石井弁護士と、そういう見方もあるということは議論しました。ただ、先ほど冒頭にあったように、基本的視点の中で引用した部分と、もう一つ、迅速解決というものがあって、金銭解決制度というのは、そちらの要請も十分に踏まえた制度にするという前提があるのだから、地位確認訴訟よりは迅速なのだということで、今、申し上げたのですけれども、そこら辺は、確かにどちらが迅速なのか、あるいは迅速になる要素なのかということは、見方が違ってくるかと思います。
我々、実務でやっていますと、例えば解雇無効だろうというものでも、基本的にバックペイを何十何円まで全部計算して、和解金に盛り込むということはしない、経験もありません。もちろん判決が出たら、バックペイは金利も含めて払いますけれども、和解のときは、バックペイが幾らというよりも、和解金で全部解決するのです。そういう解決の手法で、我々は実務でやっていますから、和解ではバックペイはありませんという感覚なのです。金銭解決制度はもちろん和解ではない、双方の合意ではないのですが、裁判所の裁量で、合理的な金銭を提示すれば解決するということなので、そういうところで、バックペイというのは、地位確認の場合と全く同様に認めるような考え方でなくても、施策として、設計が可能ではなかろうかと思っているのです。
下に書きましたけれども、バックペイがゼロということではなくても、例えば社会通念上、再就職が可能となるまでの日数については、加算しましょうかとか、それは裁判所が個々の事案を見て、解消金の膨らませる金額として見ることはあるでしょうが、単純にバックペイをそこへつないで、金額を払わないと解消できないというのは、使用者の立場、実務でやっているところからすると、受け入れがたい。バックペイが欲しいなら地位確認の判決をもらってください、そちらを選択しないけれども、それももらったと同じものが加算されるという解決というのは、選択肢として適切でないと思います。
労働者のお立場では、先ほど別の観点から、反対もありましたけれども、実際に和解も多いですし、確定判決でも、なかなか会社へ戻れない、いろんな事情で戻るケースが少ないという実態も踏まえて、地位確認のルートと金銭解決のルートで、後者は解消金1本の制度としての選択肢を設けて考えるべきではなかろうかということで、先ほど申し上げたところでして、理論的にあり得ないということだと困りますが、立法論として、選択肢の1つとしてはあり得るのではなかろうかと考えて、御説明したところです。
○岩村座長 鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 お答えありがとうございます。
一言だけ、現実には、従来の制度でも、和解ではこういう解決を図っているのだという御説明がありました。恐らく解消金の制度を新たにつくったとしても、和解を否定するということではないと思われます。現実には、和解で解決する率も高いのではなかろうかと思います。それは私の単なる想像ですけれども、そう思います。だから、その限りでは、それほどの影響を与えるということではなく、ただ、解決金の制度をつくって、ある程度の予想される金額について、算定式までいくのかどうかはわかりませんが、基準が示されるとすると、和解等においても、合理的な話し合いが促進される要素にもなると、個人的には考えているところです。
○中山弁護士 そういうお考えは、もちろん十分にあるのだと思うのですが、解決金の中に、地位確認と同様のバックペイが入るという前提でいきますと、従来の和解の水準からすると、大きくかけ離れるのではなかろうかと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 これは御質問というよりは、コメント的なことになるかもしれませんけれども、1つは、今のバックペイの取り扱いに関するところで、中山先生あるいは石井先生の御主張は、政策的あるいは立法論としてということでありましたが、今回の検討に当たって、出発点として、制度の大枠としては、解消金の支払いによって労働契約が終了する仕組みを念頭に置いているということではあるのですが、なぜこのように解消金の支払いによって労働契約が終了する仕組みとしているのかということを考えますと、実質的な意味で最も大きいのは、バックペイの問題があるのではないかと思われます。労働契約が解消金の支払いを待つことなく、労働者側の意思表示によって直ちに終了するということになりますと、それ以後、バックペイが発生することは、法律上あり得ないということになろうかと思いますので、そうならないための構成として、こういう枠組みを前提にされているところもあろうかと思います。
そうした観点から、きょうの御意見を拝聴いたしますと、法律構成はいろいろあり得るのだと思われますが、1つには、中山先生のお考えというのは、むしろ意思表示によって、直ちに労働契約が終了すると考えたほうが、この制度のたてつけとしては、望ましいのではないか。その場合には、それ以後の期間について、従来、民法536条2項との関係で想定されていたようなバックペイが発生する余地というのは、なくなるのだけれども、仮に労働者保護等の観点から問題が生ずるというのであれば、数カ月分の給与といった加算を解消金の中に含める形で認めるほうが、制度として好ましいのではないかという御意見を述べられたという受けとめができると感じたところです。そのあたりは、この制度が導入された場合のバックペイの取り扱いについて、まさに政策的に何が望ましい解決なのかということとの関係で論じられるべき必要が、最終的にはあるのだろうという気がしております。
それから、その前に議論がされておりました、労働審判との関係ですけれども、御指摘のように、労働審判手続で十分な心証形成ができないということも、十分にあり得ることだろうと思われますが、他方で、岩村座長からも御指摘がありましたように、相当程度心証が形成される場合もあり得るだろうということで、これは前のシステム検でヒアリング等を行いましたときにも、そういう御発言をされた御経験者の方もおられたと記憶をしております。
そうしますと、結局、労働審判の枠内で調停的な解決をする場合には、どの程度、解雇は無効という心証が確固としたものとしてあるのかということに応じて、金額的な水準等も、他の要素も考慮して、さまざまに変わり得るということだと思われますので、労働審判が訴訟におけるほどに、確固とした心証形成が常に可能であるとは言えないからといって、労働審判で一切だめだということになるのかどうかというと、そこはいろいろ考え方があり得るという感じがいたします。
この問題と関連して、もう一つ論点になり得るだろうと感じておりますのは、労働審判に限らず、訴訟に限った場合でも、訴訟上の和解によって解決をすることはあり得るわけですけれども、和解とか、あるいは審判手続での枠内での調停で解決するといった場合、そこで出てきた金額というものに、法的にどういう意味づけを与えるかという問題は、常に念頭に置いておかなければいけないと考えておりまして、そういう観点から見ますと、労働審判手続で行使を認めるのかという問題は、調停的な解決がされたときに支払われる金銭が、この制度における解消金として法的に意味を持つのかどうかという問題とも関連しているところがあろうかと思います。
同じ問題は、訴訟の和解で解決する場合にも生ずる問題かと思われますけれども、この点は、最終的にこの制度が仮にできたときに、解消金について、先ほど労側の先生から、取り扱い、税金等々との関係で、さまざまな問題点があるという御指摘もありましたが、そのあたりの取り扱いがどうなって、和解で解決をした場合とで、どのような効果の違いが生ずるのかというあたりを整理していった上で、改めて労働審判で解決した場合、この制度を利用した結果と評価するのか、そうでないのかといった点を考える必要があるという印象というか、現時点での感想を持っているところです。
以上です。
○中山弁護士 その点は、むしろ教えてもらいたいのですが、仮に労働審判でも請求できますというたてつけにしたときに、労働審判委員会の3回の中で、調停ができなかった。そうすると、審判するときに、実体的請求権に基づく解消金を労働審判委員会が算定して、審判で幾ら払えという形まで想定しないと完結しない。審判委員会でやるといっても、調停のときはいいけれども、そうでなければ、全部24条終了というのも問題で、解雇無効で争いがない場合には、審判で金額を算定するということになります。審判にそこまで役割を持たせていいのかという懸念もありますが、いかがでしょうか。
○垣内委員 私個人の現時点での考えですけれども、審判手続での行使を認めるという前提に立つのであれば、要件が全て備わっているという心証が形成できる限りは、そのような処理も排除はされないのではないかと、私自身は考えております。もちろん解雇無効等が、どちらとも判断がつきかねるということであれば、そういう内容の判断にはならないだろうと思います。
○中山弁護士 ありがとうございます。
○岩村座長 中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 解消金について、迅速な解決と予見可能性が必要で、曖昧なところは排除して明確な形にすべきだというのはわかるのですけれども、他方で、そういうものは総合的に裁判官の裁量でということをおっしゃっておりました。そうすると、ある意味、使用者にとって予見可能性が薄れるところもあると思いますが、付加金のような感じで、裁判官にゆだねるということも考えておられるのでしょうか。
○中山弁護士 4枚目の6とか、7に書きましたように、ここで言っている解消金というのは、例えば上限・下限を決めて、その中の諸事情を考慮して、合理的な裁量で幾らと決めるという、そういう意味合いです。そんなものが何もなく、裁量で鉛筆をなめるように決めるとか、そういう意味ではございません。
○中窪委員 枠を決めてということですね。
○中山弁護士 上限・下限を決めて、あるいは3段階にして、裁判所の中で枠を決めて、裁判官がその枠の中で、ケース・バイ・ケースで諸事情を考慮して決めるという趣旨です。最後は裁量ですが、つまり単純にこのケースは幾らという、機械的にならないという意味です。
○中窪委員 ありがとうございます。
○岩村座長 あとは、よろしいですか。
それでは、御質問はここまでということにさせていただきたいと思います。
中山先生、それから、きょう、御欠席ですが、コメントを起案していただきました、石井先生、大変ありがとうございました。
○中山弁護士 どうもありがとうございました。
○岩村座長 予定していたヒアリングは、ここまでになります。
今のヒアリングを受けて、委員の先生方から、御意見あるいはコメントがありましたらと思いますけれども、いかがでございましょうか。質疑応答の中で、皆様、お述べになったという感じはするので、このあたりでよろしいでしょうか。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 感想みたいなものですけれども、今、使用者側から出ました、労働審判にこれを導入したときに、どういう効果が予想されるのかというのは、私たちとしても、ちゃんと検討しないといけないと思いましたので、その点は、言うまでもないですが、私の個人的な感想として、述べさせていただければと思います。
○岩村座長 ありがとうございました。
きょう、労使それぞれの弁護士の先生方から、いろいろ御意見を伺いまして、また、きょういただいた御意見も踏まえつつ、検討を進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
きょうは、ここまでということにさせていただければと思います。
きょうのヒアリングの関係で、事務局から何かありますか。よろしいですか。
○坂本労働関係法課課長補佐 はい。
○岩村座長 それでは、次回の日程につきまして、事務局からお願いできればと思います。
○坂本労働関係法課課長補佐 次回につきましては、現在、2月の上旬をめどに調整をさせていただいておりますので、確定次第、開催場所とあわせて連絡をさせていただきます。
以上です。
○岩村座長 ありがとうございました。
それでは、次回は、きょうのヒアリングでの質疑応答なども含めて、事務局のほうで、これまでの議論を少し整理していただいて、さらに論点について検討を深めていきたいと考えております。事務局におかれましては、恐れ入りますけれども、資料等の準備をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、これをもちまして、第4回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を終了いたします。本日は、お忙しい中、大変ありがとうございました。
 
 

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