第8回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

平成31年2月21日(木)9:30~11:30

場所

厚生労働省 18階 専用第22会議室

議題

(1)前回の議論のまとめについて
(2)具体的研究事項について
(3)横断的事項について
(4)その他

議事

 
 
○健康局がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、何名かの先生が若干御到着がおくれているようですが、ただいまより第8回「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催させていただきます。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 本日でございますが、新延構成員と細井構成員から御欠席との連絡をいただいておりまして、細井構成員の代理といたしまして、檜山構成員代理に御出席をいただいております。
 また、羽鳥構成員と宮園参考人が若干おくれての御到着という状態でございます。
 本会議におきましては、前回に引き続き、3名の参考人に参加いただいておりますことと、その他、事務局からの出席者については、座席表をもってかえさせていただきます。
 続きまして、資料の確認でございます。まず、座席表と議事次第。その後に資料1、パワーポイントの資料として資料2-1から2-4まで4つ、その後に参考資料1を御用意しております。
 構成員の皆様におかれましては、机上に前回の資料などを御用意しておりますことと、島田構成員から御参考となる資料を頂戴しておりますので、あわせて机上に置かせていただいております。
 それでは、以降の進行を中釜座長、よろしくお願いいたします。
○中釜座長 それでは、本日もよろしくお願いいたします。
 早速、議事に入りたいと思います。議題の「(1)具体的研究事項について」、それから「(2)横断的事項について」を続けて議論したいと思います。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 事務局でございます。資料1と参考資料1をごらんください。
 参考資料1の2ページ目にございますけれども、前回(1)から(5)の議論の際にいただきました御意見を資料1としまして柱ごとにまとめております。事前に御指摘いただいたところが反映できていない部分もあるかと存じますので、現段階で指摘したいところがございましたら、御意見をお願いしたいと存じます。
 また前回、上田構成員、神奈木構成員、郡山構成員におかれましては御欠席でございましたので、追加すべき意見等がございましたら御発言をお願いできればと存じます。
 続きまして、参考資料1とあわせまして資料2-1をごらんください。資料2-1から2-4に関しましては、いずれも同じような構成になっておりますので、2-1をもって御説明をさせていただきます。
 前回の「具体的研究事項」の資料と同様の構成となっておりますけれども、最後の5ページをごらんください。最後のページには、前回の会議での御意見のうち、この柱に記載するのが妥当ではないかと考えられる意見を記載させていただいております。
 なお、資料2-2、2-3。(7)(8)の部分でございますが、この2つは密接に関係することから、構成員の先生方がよろしければ、御一緒に御議論いただいてはどうかと考えております。
 事務局からは以上になります。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、まず資料1についてでありますが、前回御欠席の上田構成員、神奈木構成員、郡山構成員に追加での御意見をいただきたいと思います。
 まず、上田構成員、お願いいたします。
○上田構成員 上田でございます。前回は欠席いたしまして、失礼いたしました。
 よくまとまった討論がなされているのではないかと思います。
 全体にというのはなかなか難しいのでございますけれども、がんの本態解明に関するところに関しましては、いわゆる化学予防のことに結びつくような本態解明のほうをもう少し整理していただけるといいのかなということを思いました。
 それから、小児がんとか希少がんとか、この辺の取り扱いのことに関しては随分お話があったように思います。これは小児がん、希少がんというものをいわゆる希少がんと希少フラクションをどういうふうに扱うかということで、別個に扱う、一緒に扱うとかという議論があったように思いますけれども、病態とか政策的な対策のときは別個に扱ったほうがいいですが、創薬とか、そういうものの研究開発とかに関しては何も別個にする必要はなくて、今の時代は一緒に取り扱うべきではないかというふうに私は思っております。
 創薬に関して、専門の方がたくさんいらっしゃるかと思いますけれども、だんだんPrecision MedicineとかPersonalized Medicine、それに免疫療法が次第に進んでくると、ますますIndividual、Specificになると思います。ですから、企業とかTRの研究者にとってもブロックバスターを目指すだけでなく、小さくても科学的にはっきりした枠組みを定めながら、小さく生んで、それを横展開して、アンブレラとかバスケット・トライアルなどのゲノムの方法論などを利用して大きく横展開していくという開発のAttitudeを、企業も、それから、TRを研究する人たちももう少し再認識しないといけないのではないかという事を議事録を読んで思いました。
 それに関しまして、また後ほど追加発言したいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、神奈木構成員からお願いいたします。
○神奈木構成員 私は非常に狭い分野で研究しているもので、今回のことで癌学会の何人かの先生方にもちょっとコメントをいただきました。出口志向ということで、今、研究サポートの体制というものは非常に成功しているという評価を皆さんおっしゃっていますが、ただ、より基盤的な研究というものを強化することも非常に大事で、氷山の上に浮いている部分だけを得ようとしても、それは無理な相談である。このままですと、がん研究の衰退というような危機感を持っているという御意見もありました。
 私自身はウイルス性の白血病の研究をしておりまして、垂直感染で免疫寛容が起こるという基礎的な根拠でもって、今、だんだんにそれを臨床に展開して、ワクチン療法というものの臨床試験まで行って、これから発症予防というところまで発展させようという段階におりますので、どちらかというと、本当に出口志向のところに今いるのですけれども、もともとは非常に基礎的な研究であったわけです。もしごく初期の基礎研究のときにサポート体制のほうが出口志向であったら、果たしてそれがファンドされていたかということを考えますと、やはり基礎的なところの強化は大事だと思います。
 それと、私は免疫のところが専門ですので、免疫に関して今後、どのようなことに取り組むべきかということに関して少しだけ触れさせていただきます。
 免疫チェックポイント阻害剤というものが出てきて、非常にこれは効果を上げているということなのですけれども、よくも悪くも免疫の破壊力といいますか、威力といいますか、特にT細胞免疫の力がクローズアップされています。これはうまくいくとがんの治癒というところにまでいけるけれども、一方で自己免疫を誘発してしまう。深刻な副作用もあるということがあります。
 それは、結局は腫瘍に対する特異性を免疫チェックポイント阻害剤が欠いているという欠点があるからです。腫瘍特異的な免疫ということになりますと、それは従来の腫瘍免疫の研究がそれに相当していたわけなのですが、腫瘍ワクチンに関しては免疫抑制で抑制されてしまうという欠点があった。そういう意味では、免疫チェックポイント阻害剤というものと腫瘍ワクチンの研究は両方が欠点を補えるような関係にあると考えます。だから、両方を融合するような研究を推進するといいと思うのです。
 今、CAR-T療法が話題ですけれども、CAR-T療法はある意味この問題の一部を解決するような方向にあるわけなのですが、御存知のとおり、非常にコストがかかるとか、あるいは標的が限られているということがあります。これまで日本の研究者は幾つものがん抗原を見出してきているわけで、日本は割と得意な分野であろうと思いますので、ぜひ、できれば安価で、T細胞の腫瘍特異的な免疫を活性化、維持させるような方向の研究を強化していただけたらと思います。
 
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、続きまして、郡山構成員、お願いいたします。
○郡山構成員 鹿児島大学の郡山です。前回は欠席して、失礼いたしました。
 私の専門は疫学、予防医学の分野でございますので、どちらかというとがんの発症を防ぐところに疫学者は重きを置いております。前回お話しされているところは、どちらかというと基礎とか治療のほうが重点的であったと思いますけれども、予防の考え方の中でも一次予防、二次予防、三次予防とございますように、治療以外の生活習慣などの指導によるがん患者さんのQOLの改善や再発予防といった三次予防というところはもう少し研究が不十分なところがあるのではないかというところは感じております。
 実際、標準治療ということで、臨床のほうではガイドラインがつくられておりますけれども、その中に例えばもっと、多分、これは反対される方は少ないと思いますが、たばこを吸っていらっしゃったがんの患者さんに対する効果的な禁煙治療のあり方とか禁煙教育のあり方とか、そういうことも本当にどれくらい効果があるのか。それから、実際にどれぐらい効果的な禁煙治療というものが提供されているのかとか、実際、即、実行可能で、ある意味、費用対効果も大きいといったものもガイドラインの中に盛り込めていける研究といいますか、いいとわかっていることをいかに取り込んでいくかというところにもう少し、焦点を当てていかれてもいいのかなと感じました。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 今、郡山構成員の最後の部分は恐らく、普及と実装のための研究にも含まれるかと思います。
 それから、神奈木構成員が御指摘の基礎・基盤研究の重要性。これは確かに出口を見据えたTR研究が推進されて、非常にその成果があったのですが、やはりそれを支える基礎よりも若干、応用に近いところの基礎的な研究のゆとり、幅といいますか、そこがないとなかなか将来的な展望も厳しいという意見があったということだと思います。
 それから、最初、上田構成員からもTRの進め方、創薬研究のあり方について御意見がありました。前回の会議の中で希少がん・難治がんの話があり、後藤構成員からだったと思いますが、上田構成員はATLの研究を含めて、希少・難治がんに関しても非常に御経験があるということで御意見を伺えるのではないかという御指摘があったのですが、その観点から追加で御発言はありますでしょうか。
○上田構成員 希少がんに関してサイエンスが急速に進んできて、いろいろなことが明るみになってきました。日本でこの希少がんをどういうふうに取り組むかというときに、一番大事なことは、希少がんとか小児がんの、小児がんは随分頑張ってきているのですけれども、発生時にきちんと利活用できるネットワーク・システムを構築してブロックごとにきちんと把握することです。そういう患者さんが日本や地域にどのくらいいて、治療法がどうなっているか。希少がんでも世界や日本でどういう治験が進んでいるかなどのインフォメーションが、的確にオンタイムで伝わらない限り患者さんに役に立ちません。がん登録が今、やっとできて、これは役に立つのは5年後にがんの発生や死亡が何人いたという話であって、今の患者さんには直截的には役に立たない。
 それから、いわゆる新薬開発にしても、そういうネットワークがなければ企業のほうにきちんとした情報や試料が集まらない。今は拠点病院がありますし、都道府県の連携拠点病院がありますね。そして、地域の病院がある。そのネットワークからすると、地域ごとの拠点病院がそれをきちんと把握して、それをオンタイムで中央に報告する。なぜ地域ごとというのは、私自身は九州地区とか中国・四国とか近畿とか、それぐらいの大きなブロックを考えているのですけれども、そこでどういうふうに、そこの今のがん対策やがん医療が行われているかというのは、やはり地域ごとにきちんと把握することが重要であって、それを各患者発生病院から直接、国がんに報告すればいいというものではないわけですね。
 ですから、地域に、地に足のついたネットワークを作る。これは必ずしもお金が要らないのではないかと思うのですよ。がんの拠点病院を中心にすればそういうネットワークにすぐ乗れる状況が今はあるのではないかと思うのです。そういうことを早く動かさないと、議論ばかりして、現実的な方向性が進まない事を危惧しております。私があえて言いたいのは、病気の発生時とかオンタイムの登録ネットワークの構築ということをぜひ政策的に早く進めることが、これが本当に希少がんや小児がん患者さんに薬を近づける一番早い手だてであるといつも実感しているものですから、強調させていただきました。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今の御指摘の点は非常に重要で、前回の議論の中にも少し欠けていた部分かと思います。疾患レジストリのあり方、それの全体のコーディネート、しかもそれがオンタイムでアクセスできて、診断・治療の開発につながる。この仕組みはやはりまず動かさなければいけないという御指摘だと思いますので、記録として残させていただきたいと思います。
 以上、前回御欠席された3名の先生方から御意見を伺いましたが、ほかの構成員の先生方から何か追加での御発言・御意見はございますでしょうか。
 天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。資料1の5ページについて、細かい書きぶりに関する指摘で恐縮なのですが、2点、意見を申し上げたいと思います。
 まず1点目ですが、小児がんの項目の5つ目で「小児の治療法と成人の治療法が異なるがん種においては、AYA世代の患者に適した治療法が明らかになっていない場合があり」と書いていただいています。この部分については、私より前回指摘申し上げたところでございますが、これの趣旨としては、いわゆる治療成績の改善率が他の世代と比べて明確に低いという現状があるわけですので、治療成績の改善が必要であることを明確にする書きぶりに変えていただければというのが1点目です。
 2点目が、希少がん・難治がんの部分で、3ポツ目で「希少がんや難治性がんについては、特に、スキルス胃がんやATLといった日本やアジア地域に多いがん種の研究において、日本が世界をリードできるのではないか」と書いていただいています。これは申し上げるまでもなく、スキルス胃がんもATLも難治がんであり、日本人に多いことに加えて、スキルス胃がんについては5年生存率は10%程度ですし、ATLについても化学療法が必要な急性型などのタイプについては、CCR4抗体などの日本発の創薬による治療薬があるとはいえ、いまだ生存期間の中央値は1年弱という状況で、ともに難治がんとして極めて代表的ながんと言えるかと思いますので、これについては「リードできるのではないか」ではなく「リードしなければならない」と変えていただければと思います。
 以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。重要な御指摘と思います。
 そのほか、ございますか。
 どうぞ。
○檜山代理人 ありがとうございます。きょう、細井の代わりに来ました檜山でございます。よろしくお願いします。
 先ほど天野構成員から申されたAYA世代の治療成績が向上するという、確かにそうなのですが、今、上田構成員が申されたように、やはり小児のフラクションとAYAのフラクションと成人のフラクションが全く同じとは限らないので、まさしくその辺のレジストリをきちんとやることと、いわゆる画像、あるいは病理、さらにゲノムのデータをきちんとレジストリとリンクさせた形で蓄えていきつつ、治療法を開発していくという方法で研究を進めていかないと、小児と成人で治療成績が異なるから、小児のほうがいいから小児の治療法を使いましょうという簡単なスキームでは難しい点もあるのではないかと思うので、その辺の研究の進め方のあり方を少し考えていただければと思っております。
 つけ加えると、今、小児がんの領域ではJCCGというグループができて、ほとんどの症例を全て登録させて、レジストリをつくっております。それに全て中央病理診断を付け加えているということと、固形がんについては、ほとんどの、8割ぐらいの画像を全てクラウドの中に保存しているというところまでができていて、もう一つの課題はやはりゲノム情報とかというバイオバンクの問題だと思うのです。その辺もやはり希少がんにおいてはバイオバンクのデータをきちんとレジストリとリンクさせて保存させていくというところが重要なのではないかと思うので、追加させていただきます。
 ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それから、加えて、中央病理診断を小児がんのチームで非常によくやっていると思うのですけれども、これの財政的基盤が十分ではないという問題はやはり残っているかなと思います。そのあたりもぜひ体制の強化という意味では重要かと思います。
 そのほかにご意見がありましたらお願いいたします。
 私から、先ほどの天野構成員の御指摘での、希少がん・難治がんについて、文言の点での修正案です。先ほどのスキルス胃がんやATLのところが、難治性のがん種の研究において世界をリードすると書かれているのですが、研究でリードすることだけが重要ということではなく、その成果として、患者さんとこの疾患の克服というところがわかるような、伝わるような書きぶりにしていただければと思います。
 ほかによろしいですか。
 ありがとうございます。
 では、この資料1に関しては、またもし追加の御意見等がありましたら、事務局にお寄せいただければと思います。以上とさせていただきたいと思います。
 続きまして、前回、具体的な研究事項で残っておりました「(6)がんの予防法や早期発見手法に関する研究」のところに移ります。ここのところでまた御意見をいただければと思います。
 予防に関しては、先ほど郡山構成員のほうから三次予防のお話がありましたし、その予防法をしっかりと、ガイドラインができた後にそれがしっかりと実装できているかという、いわゆるD&I研究の重要性について御指摘があったかと思うのですが、そのほか。
 天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。私からは3点ございます。
 まず1点目ですが、いわゆる受動喫煙の防止の部分に関してです。先般、健康増進法が改正されましたが、その際に国会において附帯決議が出ていまして、指定たばこ、いわゆる加熱式たばこによる受動喫煙が人の健康に及ぼす影響に関する調査研究を一層推進し、可能な限り早期に結論を得て、その結果に基づき、紙巻きたばこと同様に取り扱うなど、必要な措置を速やかに講ずることという趣旨の決議が出ていることに鑑み、加熱式たばこに関する研究については重点的に行っていただく必要があるのではないかというのが1点目です。
 2点目が、既に資料の中で御指摘いただいている点であり、私からも重ねてお願いしたいのが、いわゆる膵がん等の難治がんの早期検出方法の確立については集中的に研究を行うべきではないかという御意見が出ています。この部分については私も特に、ぜひ集中的に研究をお願いしたいというのが2点目です。
 3点目は、御意見で出ていないので質問になるのですが、いわゆるHPVワクチンについて、今回、がん研究10か年戦略に対する中間評価ということの場と理解しておりますので、現状、過去5年間、どういった研究がなされていたかについて教えていただければというのが3点目でございます。
 私からは以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 電子たばこ等の、紙巻きたばこ以外のたばこに関する研究の重要性、それから、膵がん等の難治がんの早期診断、最後にHPVワクチンですが、まず最後のHPVワクチンの中間評価時点での研究の現状について、事務局からお願いします。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 事務局でございます。
 HPVワクチンに関しましては、厚労科研、AMEDのほうで、接種を受けた方と受けていない方を比較するような形での効果の検証等を行っております。少し論文等、その中の成果として出てきておりますけれども、まだ引き続き推進していく必要があるのではないかと考えております。
○中釜座長 ありがとうございます。
 先ほどの膵がん等の早期診断・早期発見技術に関しては、恐らく非常に高感度なマーカーの開発とともに、その有効性の検証ですね。感度を含めた有効性が問題で、しかも長期的なフォローによって、その有効性を検証できる体制を一体化する必要があるだろうと思うのです。同時にサロゲートマーカーの開発も重要かと思うので、そのあたりも書いていただければと思います。
 ほかに御意見は。
 では、藤原構成員。
○藤原構成員 臨床腫瘍学会の藤原でございます。2点ございます。
 この資料2-1のスライドナンバーで言えば2と3のところで、1つ目は2ページ目のほうです。この1番、2番、特に2番には「Implementation Science(実証科学)」と書いてありますけれども、最近、ガイドラインの整備とかさまざま、例えば健診とか予防についてはできていますが、それをいざ診療現場で実施しようとすると、例えば私は乳がんの専門ですけれども、乳がん検診の受診率は欧米に比べたら非常に低い現状がありまして、きれいなガイドラインとかができても、患者さんの予備群の方々、あるいは一般の市民の方々は健診に行かないところが非常に問題視されているので、そういう実装の部分を、例えば行動変容をどうやって起こしたらいいのかとか、これまでの科学的手法に加えて行動科学とか、さまざまな手当てをして受診率を向上させるような手技。そこの研究がまだ余り今まで、AMEDさんとかもお金を入れていないところであると思いますので、それをぜひ入れていただきたいというのが1つ目です。
 2つ目は3ページ目の一番下、8番のところにも関連しますけれども、今日は郡山先生も来られていますが、コホート研究というものは非常に時間の長くかかるものでございます。今のAMEDの研究費とか厚労科研とかを見ても、大体3年から5年が一番長い研究期間だと思いますけれども、コホート研究というものは大体10年ぐらいとか20年たたないとその成果は明らかになってきませんので、こういうコホート研究については長い目で見た研究期間を設定するようにしていただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 ただいま藤原構成員のほうから行動科学等の重要性、それからコホート研究、長く続く研究をいかにサポートするか。そんなあたりについて、AMEDから参考人として岩佐参考人、何か御意見をいただけますでしょうか。
○岩佐参考人 ありがとうございます。
 いずれの御意見も、我々AMEDのほうにもいろいろといただいているところでございます。特に前者のほう、Implementation Scienceの部分につきましては、実は厚労省さんともいろいろと話をしているところでございますけれども、特に受診率を向上させること自体は既に行政として施策を打っていくべき領域になってきている。その中で一方で、では、科学として研究の対象とするべき範囲がどういうあたりにあるのだろうか。AMEDが担っていく部分はどういうあたりになるのだろうかということでいろいろと議論をさせていただいているところですけれども、そのあたりについても先生方、御知見・御所見等がありましたら、教えていただきたいと思っております。
 また、後段のところ、10年間程度の研究期間が必要とされる。そこの部分は領域の特性として理解をしているところです。一方で、政府のほうからお金を入れていくというふうな中で、10年間何も評価をせずに進めていくのはなかなか難しいだろう。それをどういう区切りで見ながら評価をして、より適切な形で進めていくのかというところに関しては、ちょっと運営の形なども含めて、厚労省さんとも相談をしながら進めていくのかなと思っております。
○中釜座長 ありがとうございました。
 最初の政策の効率的な運用・実施に資する研究のあり方については、また委員の先生方からも適宜御意見をいただければと思います。非常に重要なポイントと思います。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 では、米田構成員。
○米田構成員 医薬基盤・健康・栄養研究所の米田と申します。
 がんの予防とか早期発見に関して、これまで喫煙とか食事などに関していろいろされてきているかと思うのですけれども、腸内細菌叢というものをきちんと調べるのはかなり大事ではないかと感じています。
 私どもの研究所で少しスタートしている研究の中で、やはり食事を変えると腸内細菌叢が変わっていくことが見えてきています。そういうものを長期間にわたって研究すると、がんの予防なり早期発見というところに、サイエンティフィックなエビデンスが見えてくるのではないかと思います。
 ただ、これはやはりかなり時間がかかる研究ですので、そういうものをスタートすることも大事ではないかと感じています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 腸内細菌叢と疾患との関係の重要性は非常に重要なポイントだと思います。同時に、腸内細菌叢の非常に多様な集団に対して、それを効率的に、表現型との関連性をどうつなげるかというところの研究も重要かなと思います。
 ほかに御意見はございますか。
 では、島田構成員。
○島田構成員 現在は量子科学技術という分野が非常に進んでいます。がんの早期発見のための診断技術の開発研究、例えば、工学・理学の分野との連携によって、診断のための量子センサであるナノダイヤモンドが開発研究中です。また、CTやMRI、PETについても、さらなる低線量のCTとか超偏極のMRI、PETにつきましても診断核種の開発とコンプトンカメラを利用したイメージング技術が開発中です。それらを医学応用できれば、安心で精度の高い診断につながるのではないかと考えます。
○中釜座長 ありがとうございます。
 がん研究のさらなる推進のための異分野との融合というふうに設けていくか。そういう御提案かと思いますので、非常に重要な視点かと思います。
 ほかに。
 予防という観点から、本日御出席の堀田参考人、AMEDの視点からいかがでしょうか。
○堀田参考人 現在のがん研究10カ年戦略は具体的研究事項として8本の柱から成っていて、6番までがAMEDが所掌し、あと、7番、8番は今、議論しているところは政策研究ということで厚労省に残っている部分です。ですから、私どものスコープにはこれまで入っていないのですが、実は今後、例えばサバイバーシップにしても、いろんな意味で科学的な分析とか、あるいは大規模な調査とか、いろんなことがあるときに、研究手法としては余り差のないことをやらなければいけないのではないかと認識しています。いつまでもナラティブなものを集めてきて語っている時代ではないだろうということから言いますと、この部分に関してもAMEDが前向きのコホート研究などは関与してもいいのではないかと私は思っています。
 予防に関しては、確かに日本は健診率が上がってきたとはいえ、まだまだ先進国の中で低い状態です。それはいろんな要素があって、診療行為の中で行われていることもあったりしますので、正確な数字ではないのです。今の健診項目は、死亡率の減少効果が確認された項目について、5つのがんについてやっているのですが、世界でのこれからの流れは、その5つだけではなくて、できるものはしっかり早期発見して対応していくという流れにあります。5大がんの検診項目は死亡率減少効果があり、国際的に比較をするためにも重要なのですが、それプラス、リキッドバイオプシー等を利用して、もっと幅広い対象に対して低侵襲なスクリーニングシステムとの同時並行的に調べていって、いつか、それが死亡率減少効果、もしくはそのサロゲートにつながるというエビデンスを日本からも示していけるといいと私は思っています。
○中釜座長 ありがとうございます。重要な御指摘かと思います。
 それから、死亡率低減に加えて、より短期で評価できるサロゲートの開発。これが恐らく新しい効率的な早期診断法の開発には重要かなという御指摘と思います。
 ほかはよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、この資料2-1に関しては以上といたします。
 続きまして、資料2-2「(7)充実したサバイバーシップを実現する社会の構築をめざした研究」ですが、先ほど冒頭に事務局から、この点については資料2-3「(8)がん対策の効果的な推進と評価に関する研究」と一緒に議論してはどうかという提案がありましたので、その形で特に問題なければ進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、この(7)(8)、2つのテーマに関して委員の御意見をいただければと思います。
 河野構成員。
○河野構成員 がん治療学会の河野です。
 がん治療学会に今、患者さんの治療をナビゲートするナビゲーター制度というものと、それから、患者さんと患者さんファミリーが一緒に考えていくPALというシステムの2つあるのですが、これはそれぞれボランティアとか、あるいは学会のサポートがあるのですが、それをぜひ施策としてサポートしていただいて、患者さんのサバイバーシップ、あるいは社会生活を維持する面で推薦していただきたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
 これは学会が取り組んでいるナビゲーターシステムとPALというシステムですね。これらを今は別の枠組みで進めている診療連携によるがん相談支援などの体制とどういうふうにつなげていくか。この点に関しては、恐らく厚労科研の中で少し試みとしては続けていると思うのですけれども、それをもう少しダイナミックに動かせるような仕組みは非常に重要なポイントかなと思います。
 そのほか、御意見はございますでしょうか。
 檜山代理人。
○檜山代理人 ありがとうございます。
 では、サバイバーシップのところですが、5ページの上から4つ目、小児・AYAがんに対する長期フォローアップ体制とその後の晩期障害・二次がんの罹患リスクということなのです。先ほどの予防とも関係するのですが、今、小児のがんは大体10人中8人が治癒する状況にはなってきています。とはいえ、治ったからいいというものではなくて、今、大きな問題はやはり二次がんです。
 ただ、二次がんといっても、がんがもう一度、何かの化学療法あるいは放射線療法によってがんが起きることもあるのですが、長い目で見ると、その人たちが普通の成人がんのリスクも高めているのではないかという論点もありまして、今は2人に1人ががんに罹患する時代なので、同じがんに何回もかかるわけではなくて、違うがんにかかられる方も、2回目、3回目の方もおられるわけです。そういうリスクも含めて、やはりがんになりやすいリスクということをきちんと、ゲノムも含めて検討する体制を構築していただきたい。
 もう一つは、晩期障害といいますか、晩期合併症、いわゆる聴力障害や心合併症あるいは呼吸器合併症等を起こす素因を持っている患者さんをうまく抽出して、治療法のほうに結びつけて、うまくいい治療法を提供して、晩期合併症を少なくするということを考えないといけない時代になっていると思うので、そのあたりの研究も進めていただいたほうがいいと思います。
 一番大きな問題はフォローアップの体制なのです。小児の人たちが大きくなる、あるいはAdolescentの人たちが成人になったときに、では、どこが受け皿になってくれるのかというところが今、大きな問題になっていて、フォローアップと言っているのですが、成人になったときにどこの科がどうやってフォローアップしているのかということもあります。そのあたりはきちんとしたモデルみたいなものをつくっていただいて、どういう形でフォローアップしたらいいのか。がん以外の診療科、カーディオオンコロジー、サイコオンコロジー、あるいは内分泌領域の方々も加わった、いわゆるモデル事業みたいなものを研究として立ち上げていただけるといいのかなと思っています。
○中釜座長 ありがとうございます。この点、長期フォローアップがいろんな意味で非常に重要かと思うのです。
 天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。
 今の檜山代理人の御指摘、まさしくそのとおりだと思っていまして、小児がんの経験者の方、10年、20年、30年と長期生存されている方で二次がんを発症されて、二次がんに対して治療したり、場合によってはそれが原因となって亡くなられる方も出てきている方もいらっしゃいます。特に小児がんの場合は非常に強い治療をしているので、強い治療に伴う影響が大きいと思います。
 また同時に、小児がん以外においても、若年がんであるとか一般の成人がんでも長期生存される方々がふえてきていて、二次がんやさまざまな晩期合併症、心疾患等も含むと思うのですが、そういったものを発症される方々が徐々にふえてきていて、そういったことに対する研究が、例えば米国臨床腫瘍学会(ASCO)等においてもかなりふえてきていますし、例えば生活習慣を改善することも含めて、さまざまな研究が出てきていると理解しているのですが、日本においては、まだまだそういった長期生存される方々に対する研究等が少ないように感じますので、この部分については今後注力していく必要があるのではないかということを申し上げます。
 また、このサバイバーシップの領域について、2点目ですが、私から申し上げたいのは緩和ケアの部分でございます。緩和ケアについては、従来、厚労科研も含めてさまざまな研究が行われてきましたが、例えばですが、がん医療における緩和ケアの実装であるとか、医療現場における実施の困難感等をはかるとか、そういったことについてはさまざまな障壁や課題があることは従来の研究で十二分にわかっているとは思うのですが、では、具体的にどうするのか、どうすべきなのか、アクションは何をすべきなのかというところにいま一歩進んでいないところが非常に問題だと感じておりまして、この部分についてはしっかり研究をやっていただく必要がありますし、また、緩和ケアの一部とも言えますが、患者さんの精神心理的な支援の部分も研究が不十分です。
 例えば過去の研究課題等を見ると、せん妄等に対する対応であるとか、そういったものを研究するというのは出ているのですが、いわゆるサイコオンコロジーを含む領域であるとかピアサポートを含む領域についての研究がいまだ不十分なので、その部分については研究が必要ではないかというのが2点目です。
 最後、3点目ですが、いわゆるがん患者さんの就労支援ということが国のがん対策で取り組まれてきたところでして、第2期のがん対策推進基本計画から就労支援に関する施策が入った際に、最初は医療機関を中心とした支援から施策が始まったと理解していて、拠点病院に設置されている相談支援センターを通じて就労支援を行うところから、現在はより広がって、医療モデルから社会モデルに広がりが出てきているところであると理解しています。
 しかし、就労支援に関する研究の部分がいま一歩、そういった社会モデルに対応できていない部分があると理解していて、例えば医療関係者等を中心とした支援ももちろん重要ですが、今後は医療関係者のみならず、企業関係者であるとか、さまざまなステークホルダーの方々が加わった形での研究を実施するであるとか、あとは厚生労働省においてもさまざまな複数の研究が走っていますが、いわゆる厚生省側と労働省側で同様の研究がそれぞれ行われているといった部分がありますので、そういった研究を有機的に統合して、本当に必要な研究に結びつけていただきたいと考えています。
 私からは以上でございます。
○中釜座長 いずれも重要な御指摘と思いました。
 先ほどの最初の2つに関しては、恐らくこれも広くは実装研究をいかに広げていくか。それから、最後の社会モデルという視点からの医療のあり方も重要な御指摘です。幅広いステークホルダーを含めた議論の場、研究の場を設置すべきではないかという御意見かと思いました。
 では、鈴木構成員。
○鈴木構成員 今、発言しようと思っていた大部分を天野構成員に言っていただいたのですけれども、言っていただく中で、やはり精神心理の部分の、せん妄状態などの研究は進んでいるということですが、自殺であったり、鬱の併発であったりとかという、具体的なデータはなかなか小さな研究でしかないと考えているので、それをもっと具体的に、どれほどがんが精神心理に与える影響があるかということも含めて、もっとアプローチができるような研究を進めて、そこに対する解決を図ってほしいというのが1つ。
 もう一つ大きなところは、やはりがんになったときの暮らしであったり、社会の変容を、本当に同じなのですけれども、これまでのがんにかかわっている医療者や患者側のみならず、企業や、本当にコレクティブインパクト、たくさんの人たちがかかわりながら、がんになることが普通に当たり前に、その後、暮らしができるように、企業側も一緒に研究を進めて、一緒に社会課題の解決に取り組むことができるように進めていただきたいと思っています。
 その2点は重なっているのですが、もう一点、がん情報についてなのですけれども、14番から17番までが基本的にそういうことだと思うのですが、ヘルスリテラシーを向上するところにおいて、やはり今、たくさんの情報があふれる中で、どういった情報を選んでいいのか。そこの患者側の治療の選択に物すごく課題があると考えています。それぞれの当事者が最適な方法、治療を選択できるような仕組みであったり、患者の教育であったり、国民の教育を進めることがすごく大事であると考えます。
 また、その上での情報の整備。いい治療が進んでいても、それが受けられなかったら意味がないですし、また、全く科学的根拠がないものが広がっていて、それに苦しめられている患者さんをたくさん見ているので、そこの部分の情報の精査と発信の部分を整備することを進めていただきたいと考えています。
○中釜座長 ありがとうございます。
 重要な御指摘を幾つも上げていただきましたが、先ほどのサバイバーシップの社会的課題に関しては、それらをいかに抽出するかという仕組みの重要性の御指摘もあったかと思います。それから、治療の選択と、あるいは情報の整備・精査。これも従前から指摘されている点で、正しい情報を国民、患者からアクセスしやすい環境をいかに整えるか。その点も重要な課題であると思います。
 では、郡山構成員。
○郡山構成員 こちらに該当するかどうかも私自身、自信がないのですけれども、例えば日本ではJPHC Studyなどで明らかになっているように、欧米諸国と比べると感染症というものが一つの大きながんの要因として挙げられます。その中にはもちろん、ピロリ菌の感染もあったりとか、肝炎ウイルスもあったりとかすると思うのですが、実際にがんを発症した後のケアについてはいろいろ議論されていると思います。
 それで、C型肝炎など、ある程度、ウイルスキャリアであるとわかった後に治療が可能なものに関しては、医療で対応できるようになってよいと思うのですけれども、そうではないキャリアの方、特にHTLV-1はそうなのですが、治療がなかなか難しい、でも将来、がんを発症する不安を抱えている方々に対しての支援体制を、特に我が国はそういう将来がんを発症する可能性のあるウイルスキャリアの方を抱えている国ですので、そういうところも社会として充実させていくような研究の仕組みがあってもいいと思います。もちろん、将来的には発症しないという予防的な治療方法の開発ももっと充実していければいいのかなと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 その点について、上田構成員、お願いできますか。
 では、神奈木構成員から。
○神奈木構成員 HTLV-1の感染者に対する発症リスクの予知とか発症予防とかというところは非常に重要で、我々はまさにそれに取り組んでいる者なわけですけれども、その方向への研究開発は少しずつ進んでいます。
 ただ、現状では妊婦健診等で、あるいは献血というところで感染が判明したときに告知することが現実に行われていて、全く健康であるのに、自分がキャリアであるということを宣告される。そこから、気にしない人もいるかもわからないのですけれども、多くの人が非常に不安に陥るという状況が徐々に拡大していると思います。
 感染者の、キャリアさんの団体もありますし、患者登録やバイオバンク等に取り組んでいる大学、研究グループが、できるだけ正しい情報をそういうところに流してという努力を行っている状況もあります。今後、研究開発が進んで、非常によい方法が開発され、治療とか予防とかというところにまで来た時点で全てのもののつじつまが合うということであろうと思います。
 
○中釜座長 では、上田構成員、お願いできますか。
○上田構成員 今、ATLに関して神奈木構成員がお答えしたとおりだと思います。
 ただ、このサバイバーシップのときに、いわゆるどういうことをどこまでサバイバーシップとして取り扱うかということを少し整理しないと、これは端から端まで全部入ってしまい過ぎてしまって、そこで私が申し上げたいのは、このサバイバーシップを定義としてどういうふうに自分たちで納得しているかが物すごく問題で、そこの定義が明確かどうかということで議論の広がりが随分、狭義にいくのか、広げるかというと、先ほどのお話を聞いても、予防から医療から治療まで全部入る話にここですべきかどうかというのが少し気になっているのです。
 要するに、がんになっても患者さんの尊厳が保たれ、社会参画できるということがサバイバーシップの本質だと私なりには思うのですけれども、そのときに、皆さんで今までも議論してきたように、サバイバーシップをin generalに捉えても焦点がぼけると思うのですよ。患者さんの病態というものは、ステージスペシフィックでいろんな状態にあるときにどういう社会参画ができるかということをもう少し議論すべきことと、政策的には今度は働いている場所において、例えば本当に産業医がちゃんとそこにコントリビュートしているのかどうかとか、社会的な世論とか、企業の雇用体制とかという政策的なことを分けて話をする必要があると思います。 研究のあり方も、ステージスペシフィックな患者さんが、社会復帰といいますか、社会に復帰ではなくても、尊厳を保ち社会に貢献したいときにどういう範疇と、どういうことが科学的に求められるかということの研究ならここにぴったりするのではないかとか、その辺、ちょっと議論の仕方を整理していただけると、いいのではないかと思いました。
○中釜座長 ありがとうございます。
 先ほど構成員が御指摘になったように、社会的な課題を抽出し、それに優先順位をつけていくことが重要と思います。現在でも社会参画の問題であるとか、長期フォローとか、例えば精神心理的な問題の一つとして自殺の対策とか、これらのものが取り上げられていると思うのですけれども、そういうものを整理しながら、さらには拾われていない重要な課題をいかに拾い上げていくのか。それをいかに対策につなげるのか。そういう仕組みづくりも非常に大事かなと思いました。
 それから、ハイリスクに関してはサバイバーシップの予防にもかかわると思うのですけれども、今は感染症というかなり特定した原因によるハイリスクでしたが、今後、ゲノム情報が明らかになってくると、それ以外のリスクも恐らく国民が広く等しく意識しなければいけない問題かと思います。いかにそういうリテラシーを広げていくのか。それに対して、ハイリスクの方などにどういう対策をされていくのかということもテーマとして御指摘かなと思いました。
 では、南構成員。
○南構成員 済みません。それに関連して、私も全く上田構成員がおっしゃるとおりであると思います。特に小児・AYA世代のがんの長期フォローアップに関しては、古い話で言えば、もともと国立成育医療センターができるとき、20年以上前の議論だったかと思いますけれども、子供のときにどういう病気をしたかは、重い病気であればあるほど、長期的フォローが必要になる。幼児期の病気を各ライフステージにわたり一生フォローアップできるようにする医療という意味で「成育医療」という言葉が生まれたと私は聞いておりました。
 ただ、そういう構想でできたものの、子供のときの病気をそのまま一生、小児科医が診ることは現実には不可能なことで、キャリーオーバーとかトランスファーとかという言葉で言われますけれども、その後、とくに成人後の問題を具体的にどう対応したらいいかということはその後日本小児科学会でも真剣に議論しました。私も参加させていただきましたが、子供のときになった重大な病気、がんに限らないと思いますけれども、それを患者が一生、その病気のその後を意識して一生を送れるようにするということは、医療の制度として実はきちんと考えないといけないことなのです。
 こういう医療全体の問題までも、がん対策に入れるとなると整理整頓をしないと非常に難解になると思います。上田構成員がおっしゃるように、がん対策のこの領域で、具体的にどういうことを絞り込んでやるのかということは、やはり効果的にするためにもきちんと整理をしたほうがいいというのは全くそのとおりであると思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
 成育医療に関しては、昨年の暮れに法律が、成育医療等基本法も成立しましたので、すみ分けをしつつ、同時に連携をとりながら進めていくことが必要と思います。
 それから、やはり長期フォローアップのためにも患者さんがアイデンティファイしやすいような、フォローアップできるような仕組みですね。IDの問題で、こういう問題はやはり早期に解決すべきかなと思いました。
 では、羽鳥構成員。
○羽鳥構成員 上田構成員のいうキャンサーサバイバーの問題は大事です。社会参画できる、企業に復帰できることも一つのテーマだと思うのです。
 それに関しては、この厚生労働省だけではなくて、厚労省と経産省、それから、企業と保険者団体で、健康スコアリングやホワイト企業を応援しようということで、どれだけ復帰した人を支援できているか。日本医師会も産業医という立場からぜひ応援したいと思っているのですけれども、そういう会社の評価の仕方も変わってきているということもあるので、そういう情報も得ながら社会全体で、みんなで応援しているということをみんなで共有していってほしいと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、三津家構成員。
○三津家構成員 企業におりますと、身近でがんに罹患されて、治療しながら会社に行きたいという方が相当数いらっしゃる、そういう場面を目にしております。
 私も十分に理解しきれていないところがあるのですが、いろいろな研究がなされているということを今回、初めてお聞きしました。出口戦略といった観点で、せっかくこれまで研究をされているわけですので、この研究の成果を企業に、例えば産業医ですとか人事担当者に対して、どうやって広めていくかという点についてご検討をお願いしたいと思います。
 私どもの職場でも比較的最近、「自分はがんに罹患し、治療中である」と御自分で申告され、周りで助け合いながら仕事を続けるケースが多くあるのですけれども、そういうときにもう一段進んで、産業医あるいは人事担当者も含めて、職場としてどうフォローできるかについてファクトに基づいた研究成果を御紹介いただけますと、すごくやりやすいということであります。
 また、先ほど羽鳥先生が仰ったように、それがホワイト企業というように、企業の評価にもつながるということになりますと、なお一層、歯車が前に進むのではないかと感じました。
○中釜座長 今の御指摘に対しては、厚労省も今、一定の試みをしているかと思うのですけれども、現状を御説明いただければと思います。サバイバーシップに関する企業向けのものであるとか、そういうガイダンスでしたか。
 どうぞ。
○健康局がん・疾病対策課長 ありがとうございます。
 企業に対してということで、サバイバーに限らず、実際に今、治療中の方も含めてということまで広げて申し上げますと、私どもは今、通称、企業アクションという形で、企業の方々にどういう形でがんとともに生きるということの切り口で、さらには企業が健診に行きやすい環境づくり。こういったことも含めて取り組みを進めております。そうした中で、当然ながら、がんの治療を、その後、過ぎた方も含めて対象になりますので、今、申し上げた包括的な取り組みの中で企業に対しての働きかけをしております。
 一方で今、産業医の方へということも御指摘いただきました。私ども厚生労働省は労働部局も持っておりますので、これは治療と仕事の両立という形で産業医の方に向けての働きかけを進めております。こういった政策を組み合わせて、今、三津家構成員御指摘の点については取り組みをしております。
○中釜座長 加えて、三津家構成員が御指摘のように、研究成果がいかに社会に実装されているか、そのプロセスが見えるような形、見やすいような形も非常に重要かなと思います。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 藤原構成員。
○藤原構成員 がん対策も含めてでよろしいですか。
○中釜座長 はい。大丈夫です。
○藤原構成員 臨床腫瘍学会の藤原でございます。
 (7)(8)を含めてですけれども、私どもの学会などでいろいろ会員の意見を聞いておりますと、全国がん登録が発効して、罹患は正確に患者さんが把握できるようになったにもかかわらず自治体病院さんとか都道府県がん拠点以外の病院さんとか、いろんな階層のスタッフの方たちが、重層的な対応をがんの患者さんに対してはしているのですが、一体、どのぐらいの職能の方々がそれぞれのがんのケアに当たったらいいのかという正確なデータがないという意見が非常に多うございます。
 また、都道府県がん拠点などに、例えばいろんな、この基準を満たしてくださいと言うと、お金がないですからとか、今、整備中ですからとかと言って、きちんとした体制が整備できずに、都道府県がん拠点という名前はついていますけれども、例えば希少がんとかAYAがんとかを見てみると、専門にしている医師とか看護師とかソーシャルワーカーさんとか、さまざまな職種が少ないという実態もあるのです。
 New England Journalで、去年ぐらいですか。Evidence-Based Health PolicyというPerspectiveがありましたけれども、調査研究事業として、通常の研究とは異なりますけれども、希少がん、AYAがん、小児がんなどに、難治がんも含めてかもしれませんが、それぞれのがん種に一体どのぐらいの職能の人たちがどういうチームをつくって、例えばその中には自治体の方も含まれますけれども、どう対応していけば質の高いがん医療ができるかというものを次の半期でしっかり調べて、それをもとにがん対策推進課がお金をつけるとか、都道府県がん拠点とかの認証をするとかというふうにしていただければと思うのです。
○中釜座長 ありがとうございます。
 幾つもの御指摘をいただきましたが、この時点で何かございますか。特に厚労省のほうからはよろしいですか。
○健康局がん対策推進官 事務局でございます。
 おっしゃるとおり、こういった研究を進めていくべきという話ですので、ほかにもありましたら、ぜひいただければと思います。
○中釜座長 ほかに、前半のほうはサバイバーシップにかなり集中しましたが、では、堀田参考人。
○堀田参考人 参考人として少しコメントしたいのですけれども、今、サバイバーシップというがようやく日本でも普通の言葉に定着してきたのですが、まだ数年前まではサバイバーシップはがん治療に成功して生き残った勝ち組のこととの誤解もあった時代を乗り越えて、今はがんになった人がその後の人生をどうやって生きていくかというプロセス全体であるという捉え方になってきています。治療中であっても、あるいは治療後、終末期であっても、それぞれの人たちが尊厳のある生き方ができるというのがサバイバーシップの根源であって、切り口はいろいろ千差万別でありますが、ここで取り上げていくにはある程度の切り分けと重点化が研究としてやっていくには必要になると思うのです。
 その点で、先ほど上田先生がおっしゃったことは至極全うで、これまでも例えばがんと就労ということであれば議論はかなり詰めてきましたし、それなりの対策もとってきております。ただ、晩期障害の長期のフォローアップとか、再発の不安とか、こういったものは確かにあるので、これはこれで非常に重要なポイントであると思うのと、それからもう一つは、患者さんが真に社会的な存在として、あるいは生きがいとか、そういうことも含めて深めていくことが求められています。こうした課題はAMEDが対応する範囲から難しいものがありますが、患者団体とかピアサポーターとか、そういう人たちのグループとの連携が必要なのだろうと思います。体験者の役割は私はとても大事だと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
 今、御指摘の就労支援に関しても、恐らく大きな企業においてはかなり普及が進んできた。これから中小企業や、あるいは社会の中でいかに支援していくのか、その仕組みづくりは何かというところもあわせて今後議論し、どう実施していくのかということは、2つ分けて話す必要があるかもしれませんけれども、重要な御指摘かと思いました。
 ほかに、特に政策的な部分「(8)がん対策の効果的な推進と評価に関する研究」を含めての御議論です。特にこの(7)(8)に関しては、現在、厚労省の科研費の中で対策が打たれていて、非常に多くの課題が研究事業として取り組まれていると思うのですけれども、これまでの成果、あるいはこれまで進めてきた事業における課題は現状でどのように厚労省としては把握されておりますでしょうか。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 事務局でございます。
 やはり先ほどから御指摘いただいているとおり、例えば相談支援の内容、それから、患者さんがどういうニーズを持っていて、それに対して、例えば正確な情報を上げられる部分もあれば、やはり提供できていない部分もある。いろいろそういう課題が出てきたものに対して、今度はそれをどう解消していくかという形で進めております。
 もちろん、パーフェクトな解消というところまで至っておりませんけれども、やはり種々出てきた課題、これは体制整備も含めてだと思いますが、そういうところに対して解決策をまた厚労科研の中で練るという形で進めているところでございます。
○中釜座長 加えて、それらを社会的に見える形にするためには、先ほど来議論されている実装研究の重要性がやはりあるのかなと思います。ぜひ、そういうものも、このがん対策全体の中で進めていければと思います。
 ほかに御意見はよろしいでしょうか。
 では、鈴木構成員。
○鈴木構成員 1点、多分出ていない論点だと思うのですけれども、3ページの13番の家族について、どこまでがサバイバーシップに含められるかなのですが、私、がん患者さんと家族のための相談支援のセンターをやっているところの4割が家族で、家族が相談できる場所がなかなかないところで、家族も職を休まなくてはならなかったり、やめてしまったり、また、遺族になったときの精神的ショックも含めて、なかなか研究もそこまではたどり着いていないのが現状だと思うので、できれば家族にどんなニーズがあるのか。また、どう家族の支援をしていけるかというあり方についての研究も進むといいなと考えています。
○中釜座長 重要な御指摘、ありがとうございました。
 そのほか、よろしいでしょうか。
 南構成員。
○南構成員 がん対策の効果的推進ということで言えば、日本は、政策的に色々な対策や予防策が本当に丁寧になされていると思うのです。ただ、自治体などがいろいろ用意しても、十分な受診率につながらないとか、非常に皮肉な現状もあって、そういうことを考えると、やはり効果的な対策の推進を狙うために、学校教育というものは非常に大事なのです。そういうこともあってがん対策基本法には、「教育現場でこれをちゃんと教育するように」ということが書き込まれたために文科省には「がん教育のあり方検討会」まで設けられ、随分議論も進んでいるわけです。
 ただ、先ほどのサバイバーシップということとも重なるのですけれども、それはやはりがん対策に特化された話ではなくて、基本法が今、成育基本法もそうなのですが、次々にできるのですが、それがいちいち全部、教育現場にこれを教育しろと言われると、教育現場はもうお手上げになってしまうのです。ですから、そういうことを考えても、がんを通して見る健康づくりであったり、健康全体の教育につながることを学校教育では検討して頂きたいと思うのです。どの疾患でも、効果的な対策推進のためには、教育の現場で基本的な健康教育をしておくことが不可欠です。がん対策はせっかく大きな、法律も早くできて、こうやって対応が進んでいるわけですから、そこを通して健康教育の重要性を訴えていただきたい。
 個別に基本法ができるたびに、「循環器病」はどうだとか、自殺対策基本法にも関与して「心の病気」はとか、その都度、学校教育に求めては、教育現場が非常に大変であり非効率でもあるということも申し上げておきたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今の南構成員の御指摘はまさにそのとおりで、がんというものは全ての要素を含んでいます。疾患の成り立ちの理解から健康を実現するためには、生活環境や、ゲノム、あるいは社会的な環境などを考えなければいけないと思います。課題全体をコーディネートする必要性はいろんな疾患に関係することであると思うので、そこをどこで議論するのか。個別に議論していても恐らく余り効果的ではないという御指摘なので、そのあたりは大きな視野で、どういう場でのどういう議論、どういう政策的な反映が可能かというところを議論していければという意見としてつけ加えさせていただきたいと思います。
 ほかはよろしいでしょうか。
 米田構成員。
○米田構成員 今の問題に関して追加して、私どもの医薬基盤・健康・栄養研究所のほうでは食育という問題を捉えて、食をどう教育するかというのが非常に大事であると捉えた研究をしています、なかなか教育の現場に持っていくところは難しいですので、そういうものも含め、トータルで教育をどうするかというのは大事な問題かなと思います。
○中釜座長 同時に、恐らく食をいかに科学的なレベルに引き上げていくのかということもあわせて重要かなと思います。
 上田構成員。
○上田構成員 一連の流れの話を聞いていて、ワクチンの問題、それから、AYA世代の人のフォローアップの問題。これは本委員会からどこまで提言するかは別問題としても、現在は個人の健康記録、パーソナルヘルスレコードというものはボランティアで行われている。今、米田構成員のおっしゃっている食育などというものは、その人の個人のデータがない限り続かないわけです。AYA世代の方々もボランティアリーにでもそういう自分のヘルスレコードをきちんとつくる必要性があると思います。一遍に政策的に国民に施行するのはなかなかバリアが高いことは私も十分承知しているのですけれども、小児疾患の方々なども個人情報保護法を守りながら、一歩踏み出しをしないと、いつまでたっても長期フォローはできないのではないかと思うのです。
 それで、自分がそういうレコードを持っていて、しかるところできちんと相談できるシステムをつくらない限り、ずっとお話がそこで毎回、3年ごとに同じところで空回りをするのではないかということに関して危惧しております。がんは炎症、老化、免疫、代謝、内分泌、ゲノム研究の総合として、理解しようとしているわけですから、これは先ほどのお話にあったように、感染症であったり、循環器の病気であったり、そういうヘルスレコードを国民の納得が得られるような方策を出しながら、上からの押しつけでなくて、フォローアップをずっとしたい人は自分でそういうパーソナルヘルスレコードを持つ。それにはどういう仕組みが必要かとか、そういう考え方で進めていく機が熟してきているのではないかと思って発言させていただきました。
○中釜座長 ありがとうございます。非常に重要な御指摘かと思いますので、これをテーマとして残したいと思います。
 では、檜山代理人。
○檜山代理人 ありがとうございます。
 今の上田構成員のお話なのですが、ヘルスレコード、特に小児の場合は小学生あるいは幼稚園児で、もっと小さなときに治療を受けた子は自分ががんであることを知らないまま大人になっているのが10年、20年で、今はほとんどの場合、小学生高学年から中学生になるときちんと告知をするということがやっと定着してきたのですが、それまでの人たちは、自分はがんの治療を受けたことを知らない人もいるので、私は上田構成員が言われるように、やはりヘルスレコードをきちんと置いておくということも重要です。
 それをある程度、自分のものであるということを認識して、どういう治療を受けたからどういうフォローアップが必要なので、どういうことが今必要なのかということを自分が認識しながら行くという形のフォローアップ体制にしないと、みんながみんな同じフォローアップというのもやはり無理だと思うので、どういうことに注意が必要かということをきちんと見ていけるような研究なり事業なりをやっていただければ、これは小児の難病に全て共通する問題なのかもしれませんが、そういうところを御検討いただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかはよろしいでしょうか。
 では、最後に郡山構成員。
○郡山構成員 済みません。とても今まで御指摘のあった、データベースをきちんとすることはとても重要なことだと思います。それを充実化させることによって、予防にしろ、治療にしろ、個別化のより丁寧な対策が可能になってくると思いますので、ぜひそういう基盤整備ができれば幸いです。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、以上でこの資料2-2、資料2-3の議論は一応おしまいにしたいと思います。もし何か追加で御意見等がありましたら、また事務局へお寄せください。
 続きまして、資料2-4「横断的事項」についてに移りたいと思います。
 この部分については、事務局が項目ごとに分けておりますので、1つずつ分けて議論したいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、まずシーズ探索であります。これについて、既に委員の方々から事前にいただいた意見をまとめておりますが、追加等で御意見がございましたら、お願いいたします。1~2ページにまとめたものがあります。
 よろしいですか。
 がんのシーズ探索に関しては、研究事業としても出口を見据えた今の取り組みとして着実に成果が上がってきている状況かと思います。この点について、皆さんの参考になると思いますので、AMEDの取り組みとして、このシーズ探索において現状を岩佐参考人から教えていただければと思います。
○岩佐参考人 ここは今回、シーズ探索ということで、いずれも先生方の御意見に関しては再掲という形になっております。
 AMEDの中でも、シーズ探索につきましては、まずは次世代がん事業、文科省さんからお金をいただいております事業の中で進めさせていただいているところでございます。
 その中でしっかり治療薬、それから、診断薬等のもとになるシーズを探索し、それを応用研究をして、創薬としての位置づけを明確にし、それを企業への導出、もしくは革新がん事業へ出していく。そういった形で事業を進めさせていただいているところです。
 ただ一方で、革新がん事業の中でも実際の臨床現場で得られたサンプルなどを用いて、そこから本態を解明していくところで領域1という形でやらせていただいておりまして、その中でも新しいシーズというものは次々と出てくるような状況にはなっているかと思っておりまして、そこからまた、本来であれば次世代がんの事業に回していく。そういったことも含めて今後は進めていく必要性があるのではないかと考えております。
○中釜座長 ありがとうございます。
 加えて、冒頭に上田構成員、神奈木構成員からありましたが、研究成果の出口を見据えることは非常に重要ですけれども、氷山の一角だけを見ているのではないかというご指摘です。もう少し底辺を広げる必要性、その重要性、それは将来的なシーズ探索研究の発展性を考えた場合の重要性が指摘されていました。そのあたりについて、現状でのお考えはありますでしょうか。
○岩佐参考人 AMEDでの事業につきましては、基本的にはある程度シーズの探索など、方向性を持った基礎の段階から支援をするような形になっております。その前のより基盤的な基礎の部分に関しては、科研費のほうで自由な発想に基づいてやっていただくというところで整理をされているところでございます。
 そのあたり、今後、どのような形でやっていくべきなのかというところに関しては、さまざまな御意見・御議論はあるのかなと考えておりますけれども、現段階ではそのような整理でさせていただいているところでございます。
○中釜座長 ありがとうございます。現在のAMEDの取り組みについて御説明がありました。
 では、後藤構成員。
○後藤構成員 参考資料1の2ページ目に議論の方向性について「また、シーズの探索的研究、ゲノム医療や免疫療法などの新たな治療法に係る研究といった各柱にまたがる研究については、『横断的事項』として議論する」と書いてあるので、私の考え方を述べます。1番目のがんの本態解明に関する研究という部分がまずあり、これが次の新規薬剤開発、新規医療技術開発、新規の標準治療、小児・高齢・AYA、希少・難治性がんなどの対策研究、あるいは予防診断・早期発見などにどのようにつながってきていて、それが今回の議論を経て今後のがん研究にどのような形で発展していくのかということが大事かなと思いました。
 そういう意味で1個目の、シーズと書いてありますが、単にシーズというとすごくぼやっとしてしまいます。此処でいうシーズは、がんの本態解明研究から得られてくるような、先ほど岩佐参考人のほうからおっしゃったように、診断とか治療につながるための標的を呼び、多くの標的があることを書いてあります。
 がんの本態解明に関わる研究というものはいろんな方向性があるので、先ほど言いましたように、いろんな基礎研究の結果がどういう形でもって応用研究、そして治療、診断につながっているのかという観点のまとめもしていただけたらわかりやすいのではないかと思いました。
○中釜座長 わかりました。
 中間評価時点において、どのような成果があって、どういう方向性に向かっているのかというところも整理していただけると、そこで不足している部分あるいは課題がより明確になるのだろうと思っていますので、それはよろしくお願いいたします。
 シーズ探索に関して、ほかによろしいですか。
 この部分が将来の新しい創薬開発においては非常に重要な部分であり、そのシーズ、科学的な根拠、あるいはターゲットのしっかりとしたバリデーションを踏まえたものを、シーズとして育てていくことの重要性は、後藤構成員が指摘されたとおりだと思います。ぜひAMEDさんとも協力して、そういうものを進めていければと思います。
 よろしいでしょうか。
 では、シーズ探索は以上といたしまして、続きまして、ゲノム医療に移りたいと思います。
 ゲノム医療に関して、3ページ、4ページに委員の先生方から既にいただいた意見をまとめておりますが、追加の御発言、あるいは関連した御発言がありましたらお願いいたします。
 三津家構成員。
○三津家構成員 どこの部分でお話ししようかと思っていたのですけれども、医療データベースの利活用について、業界としてどういうことを考えているかという点で発言させて頂きます。現在、C-CATを中心として進めておられる本当にすばらしい研究がございまして、そこには臨床情報とかゲノムやオミックス情報が集められているわけです。ここの部分において、将来的な課題が2点あると考えております。一点目は、データの時間的な継続性です。と申しますのは、これまでいろいろなデータベースが、例えば予算措置がなくなったところで切れてしまって、結局、継ぎはぎみたいになっていないのか、という点です。こう申し上げると、当局の方から大変お叱りを受けることではありますけれども、データベースがあちらこちらに散逸しているという状況をつくらないためにも、データをどうやって継続させるかという仕組みを整備しておく必要があるのではないか、という点が第一点でございます。
 二点目は、このがん領域におけるC-CATの取り組みは、我々製薬業界からいたしましても、今後の医薬品開発において、医療データベースを用いて、より効果的に、より的確に、より安価に創薬活動を行っていくための一つの先端的な取り組みと考えております。おそらく、その次に走っておりますものが認知症に対するデータベースの構築。それから、今業界で要望しておりますけれども、国立精神・神経医療研究センターを中心とした神経難病についても、こういうデータベースを構築してもらえないかというお話をしておるところです。申し上げたいのは、過度にがんに特化したデータベースの構築ではなくて、第2、第3の領域へデータベースの基本構造が横に広がるような構造にしていただきたいということです。日本の国の医療水準に対して、いろいろなデータベースが、常に根っこの基本構造は一緒のところで使えるといったような工夫もぜひお願いしたいと思います。
 製薬業界としましては、現時点では、治験のブラインド試験のように、プラセボ投薬のアームを設定することにより、ある意味で患者さんに薬が投薬されない群が出てきているわけですが、データベースがしっかりすれば、場合によっては投薬ありのシングルアームだけで、既存のデータとの比較によって薬効を証明することができるといった、本当に次の世代に移るようなこともできるのではと考えております。 申し上げたかったことをまとめますと、データベースの長期性の担保と、C-CATは先端を走っているプロジェクトですので、横展開ができるようなデータベースの構造の整備の二点について、御考慮をお願いできたらと存じます。
 ○中釜座長 いずれも重要な御指摘だと思います。
 一方で、疾患横断的なという意味では、恐らくAMEDが取り組まれていたMGeNDという仕組みがあります。これは研究ベースでの疾患を超えたデータの共有を始めたものです。がんに関してはMGeNDの臨床的な展開とC-CATが挙げられると思うのですけれども、そのあたりをいかに継続し、しかも横断的なデータが構築できるか。これはまさにAMEDさんに期待するところですが、現状でのお考えをお願いします。
○岩佐参考人 恐らくデータベースをつくって、それを維持していくというところに関しては、かなり政策的な部分の要素も強くなってくるところです。
 現状で、先ほど中釜座長のほうから御発言がありましたように、MGeNDというものを疾患横断的な形でつくって、それの、どういう位置づけなのかというのは明確にはないのですけれども、発展系という位置づけでC-CATというものができて、C-CATに関しては臨床データ、情報についてデータベースに入れていくという形になっておりまして、ある意味、研究で得られたデータを入れるMGeNDと、物としてはちょっと違うような位置づけになっています。
 特にC-CATの部分に関しては、一応、私のほうの理解では、厚労省さんのほうで事業として進めていっていただいているやに聞いておりますので、その辺は済みません、厚労省さんに御確認いただくのがいいかと思います。
○中釜座長 済みません。ありがとうございます。
 では、もし厚労省さんから追加で、この点についての御発言をお願いします。
○健康局がん対策推進官 おっしゃっていただいたとおりで、直近としましては4月以降、センター自体は設置させていただいておりますので、保険診療に遺伝子パネル検査が入ってきたら、そのパネル検査の結果と、そのパネルを受診された病院での臨床情報をあわせて、三津家構成員がおっしゃっていただいたとおりのような、要は遺伝子情報と臨床情報をあわせて効率的な医薬品開発を進めていく。こういう体制を整備させていただいたところであります。
 さらには、C-CAT自体が情報の中核でありますけれども、これ自体をどうやってゲノム医療を推進していくのか。その施策的な部分については、がんゲノム医療推進コンソーシアムの運営会議を設置させていただいておりますので、こちらでも施策の進め方については引き続き検討させていただきたいと思っています。
○中釜座長 ありがとうございます。
 同時に、こういうデータベースの継続性は非常に重要です。本日は文部科学省からも出席されていますので、ぜひ省庁を超えて共同して、こういうデータをいかに維持するかというところも御議論いただければと思います。
 羽鳥構成員。
○羽鳥構成員 このデータベースはやはりとても大事であると思うのですけれども、先ほどから三津家先生からも御指摘ありましたが、いろんな研究が、予算が切れてしまうとどこかへ行ってしまうということはやはり本当にもったいないことであると思いますし、何とか統合する仕組みをつくっていかなければいけないと思います。
 きのうも難病・小児慢性疾患のデータベースをどうつくるか、あるいは登録するに当たって個人情報保護法をどうするかという話でずっと議論されていたのですけれども、恐らくここでやっている希少がんとか、ここでやっている極めて珍しい疾患、遺伝子疾患などもかなり重なるところもあると思うので、マイナンバーとか医療等IDとか、いろんな仕組みがあると思いますけれども、必ずひもづけをする。将来、5年、10年たって、例えば先ほどの小児・AYAがんのこと、あるいは小児がんが将来どうなっていくかということ。そういうことをやはりちゃんと系統的に見ていくためには、データベースを上手に活用しないと、もったいないと思います。
 日本はがん治療の部分が進んでいると思いますので、これを世界標準となるように、ほかの疾患についてもがん治療に学べと提言していっていただけるとありがたいなと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
 そのほか、御意見はございますでしょうか。
 檜山代理人。
○檜山代理人 ありがとうございます。
 今の点で、やはりデータベース、特にゲノムの話になりますと、二次性所見というものは我々、小児あるいはAYAを扱っている人たちには一つの大きな問題で、がんの罹患のリスクだけではなくて、ほかの疾患のリスクが遺伝子を網羅的に調べてしまうとわかってくるということがあります。先ほど申されたように、やはり横の広がりという面も含めて、それを開示するとか開示しないとかというお話ではなくて、データベースとしてきちんと構築して、どこかに置いておくといいますか、先ほど言われましたように、統合していくというシステムも考えないといけない時代ではないかと思っています。
 それを今までいろいろと多方面でゲノム研究としてそれなりにやらせていただいてきたのですが、恐らく継ぎはぎになっているのではないかと私は予想しているのです。やはり基盤としてそういうものをきちんと統合して支える仕組みを考えていただければと思うのが我々の意見です。よろしくお願いします。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。ゲノム医療について2点ございます。
 1点目が、現在ゲノム医療を強力に推進していただいていて、ゲノム医療中核拠点病院等が指定され、また、先進医療で遺伝子パネル検査が現状行われているところですが、一方でかねてより指摘があるように、現状の遺伝子パネル検査では、その結果が治療に結びつかない患者さんがかなりいて、現状、1~2割程度の患者さんにおいて治療薬の候補が見出される可能性がある状況だというふうに認識しています。
 そういった治療薬が見出されるような患者さんをふやしていくことについては、がん研究全体でもちろん取り組むべきことではあるとは思うのですが、一方で治療薬が見出されない患者さんに対してがん研究としてどのように応えていくのかという方向性についてディスカッションが必要ではないかと考えています。例えば資料を拝見しますと、治療標的のないがん種に対してホールゲノムシークエンスを行い、それを臨床情報と統合的に解析してはどうかなどの提案も出ていると思うのですが、今後5年間、そういった治療薬が見出されない患者さんに対して、どのように研究の方向性として行っていくのかということについて議論が必要であると意見を申し上げます。
 もう一点が、若干、国が主体となって行うがん研究というテーマからは外れるかもしれませんが、ゲノム医療について指摘しなければいけないのが、免疫療法等についても同様の状態があると先ほども構成員から御指摘があったところだと思うのですが、ゲノム検査などと称して科学的根拠が十分明らかでない検査などが民間等で行われている現状があって、患者さんはかなりそれに惑わされている現状があると思いますので、そういった部分について、どのように対策を考えていくのかということについても恐らく検討が必要ではないかと考えます。
 私からは以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
 ゲノム医療・個別化医療の推進において非常に重要な視点かなと思いますので、これは新しい医療を進める段階においては常に意識をして議論を進めながら並行して展開していくことが必要と思いました。ありがとうございました。
 それから、ゲノム医療で救われない残りの患者さんに関する新しい方法論の開発。これに関しても、冒頭に上田構成員から御指摘のありました代謝とかの視点とか、統合的な解釈もまだまだ不十分だと思いますので、現状の技術を複合・統合することによって、また新しいものが出るかもしれません。
 加えて、ゲノム医療の新しい切り口をどういうふうに展開していくのか。それを議論する場の一つにはゲノム医療コンソーシアムかもしれませんし、そのほかの仕組みなどをつくりながら、より前向きに新しい医療を展開し、国家的な医療が個々の患者さんに届けられる仕組みについては継続して議論していければと思いますし、そういう御指摘かと思いました。
 ほかに御意見は。
 藤原構成員。
○藤原構成員 臨床腫瘍学会の藤原でございます。2点ございます。
 この(8)の横断的事項の3ページの1、2のあたりに関連するところで、1つはパネル遺伝子検査等がこれから導入されていきますけれども、天野構成員が懸念されていますように、治療薬あるいは治験薬等に行き着かない、ひもづかない患者さんの増加、がんゲノム難民と言ってもいいかもしれませんが、その人たちをいかに発生させないかというのが大事なフェーズに今から入ると思いますので、例えばアメリカであればASCOのTAPURとかNCI-MATCHとか、産業界が抗がん剤とか治験薬とかを無償で提供して、臨床試験の枠組みの中でお薬を使って、それを承認につなげていくということを長らくやっていますので、厚労省も今、患者申出療養を使った仕組みを提案しているところだと思いますけれども、そういう研究のフェーズでも非常に出口に近いところは産学連携でしっかり進めていくような構造を一つつくったほうがいいかなと思います。
 2つ目は、先ほどから診療情報の活用というものを皆さんおっしゃっていますけれども、我々臨床家からすると、今、非常に忙しい診療の中で、さらに診療情報をゲノム関連のデータベースに入力する手間を考えると、とてもではないけれども、勘弁してほしいというのが現場の声であると聞いております。例えばC-CATもテンプレートというものを臨床家が、あるいはメディカルスタッフが診療終了後に1時間近くもかけて患者さんのいろいろなデータを入力するということが想定されていまして、では、それを誰がやるのかとか、やる人たちの人件費はどうするのかというのが大きな課題になっているところです。
 ですから、診療情報活用というふうにおっしゃるのであれば、例えば総務省さんとか経産省さんとかとちゃんと組んで、データを入力する方々の人件費とか体制をしっかり整備しないと、形はつくったけれども、ふたをあけてみたらゲノム情報と検査情報と画像情報だけ集まって、肝心なカルテの中の2号用紙という、患者の愁訴であったりとか、所見であったりとかが全然フォローされていない状況になることが予想されますので、今のAMEDの研究費ですと非常に限られていると思いますけれども、ほかの省庁からしっかり予算を入れて、信頼性のある診療情報をどう入力するかというところに事業費あるいは研究費をつけることを次年度の予算等では考えていただければと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 非常に重要な御指摘で、信頼性のある診療情報が入力され、しっかりとしたクオリティーの高いデータベースができれば、三津家構成員からありましたように、それが産業界にとっては非常に利活用性が高いものになると思います。ぜひそのあたりも検討していただければと思います。
 ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、ゲノム医療については以上といたしまして、続きまして免疫療法に移ります。こちらについての御意見がありましたら、お願いいたします。
 冒頭に神奈木構成員のほうから、これは免疫学的な生物学、その理解に基づいた新しい医療の可能性については御提言がありました。まだまだ明快でない部分、明らかにすべき部分があることは理解しましたし、同時に科学的なエビデンスに基づいた治療をいかにこの中で展開していくのかということも御指摘がありました。
 ほかによろしいですか。
 では、河野構成員。
○河野構成員 がん治療学会ですけれども、免疫療法は製薬業界さんを中心に盛んに治験が行われていて、標準療法の組み合わせとか、すごく展開しているのですが、例えば手術との組み合わせ、術後アジュバントとか、その辺においては非常に製薬業界さんも少しヘジテイトしていますので、そこを医師主導型臨床試験をサポートしていただけるような基盤も整備していただけたらありがたいと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいですか。
 もし、また何かお気づきの点が後ほどありましたら、後半のほうで御意見をいただければと思います。
 では、続きまして、リキッドバイオプシーのところに移ります。このリキッドバイオプシー、10~11ページになりますが、何か御意見はございますでしょうか。
 このリキッドバイオプシーに関しては言葉が若干先行しているイメージもあるのですが、恐らくある特定のがん種に関してはこれがリキッドで病勢を評価でき、治療薬あるいは臨床試験に移ることも実際行われている状況です。患者さんに対する侵襲を考えたときにはリキッドバイオプシーはまさに重要な技術で、その開発は論をまたないわけですけれども、ここに記載された内容に加えて、あるいは新しい視点としてご意見ございますでしょうか。
 では、皆さんのご参考のために、開発側の担当の宮園参考人のほうから現状の状態とAMEDでの取り組みの状態について簡単に御紹介いただき、参考人としての課題をいただければと思います。
○宮園参考人 済みません。リキッドバイオプシーについては、私も今、AMEDの中で、特に例えば国立がん研究センターの落谷博士を初めとして、いろいろな取り組みがなされておりまして、着実に進行していると思います。
 あとは、リキッドバイオプシーと言っていいかどうかわかりませんけれども、最近、線虫ががんの患者さんを見分けるとか、そういったことが大学あるいはベンチャーで行われていまして、報道等が先行しておりますが、そういったものに対しても時期を見て学術的なエビデンスを明らかにした上で、本当にこういったものが重要かどうかもいずれ検証していく必要があるということは議論しております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。このリキッドバイオプシーに関しては、AMEDの事業としても着実に進められているという御意見でした。
 よろしいですか。
 では、岩佐参考人。
○岩佐参考人 少しフォローさせていただきます。
 リキッドバイオプシー、先ほど中釜座長のほうからもちょっと言葉が先行しているということがございました。やはりこれは何のためにやるものなのか。健診に使うためのものなのか、もしくは診療、それから、病状の把握、病勢の把握。そういったところに使うようなものなのか。その辺のところも若干明確になっていない中で研究が進められている状況ではあると認識しています。
 ただ、現状から申し上げますと、どちらかというと、やはり診断時に使えるもの、それから、病勢の把握等に使えるもの。そういったもののほうが承認申請などには非常にやりやすいというところもありまして、そちらからまずは開発が進んでいる状況であるというふうに理解しています。
 一方で、例えばこれを健診などに応用していこうというふうになると、そこには今の段階では健診の有用性の評価のためには死亡率減少効果がどれぐらい認められるのか。それを確認するためには、やはりかなり長い期間でのフォローアップが必要であるというところもございまして、そのあたりについては、ある程度、出口をどういうところに持っていくのかということで、これはまさに厚労省さんとも相談しながら進めていかないといけないことかなと思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。
 非常に簡潔かつ重要なポイントをまとめていただいたかと思います。岩佐参考人の御指摘は、リキッドバイオプシーがまだ非常にぼやっと捉えられているので、出口を明確にしながら、その意義を明確にし、その方向性を明確にして進めていく必要があるという御指摘かと思いました。ぜひ、そのあたりが明確になるような形での研究あるいは開発の展開は必要かなと感じましたので、よろしくお願いいたします。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 檜山代理人。
○檜山代理人 ありがとうございます。
 リキッドバイオプシーについて、我々も小児なので、患者さんに低侵襲であるという意味ではかなり研究には積極的に取り組んでおります。まだ先ほど言われたように、やはりぼやっとしているところが多くて、いわゆる遊離核酸あるいはマイクロRNAというふうに、リキッドの中に遊離している核酸あるいはそういうものをターゲットにするものと、それから、いわゆる循環腫瘍細胞(CTC)という細胞自体を取ってくるという、大きく2つに分かれるのではないかと私は今、認識していますが、後者についてはかなり、まだ研究レベルが高いのかなと思っています。
 我々も文科省の先端技術のほうのプラットホームを使って、いわゆるCTCを取って、そのままいきなりメタボロームをかけるというところの技術も開発しているので、そういったところの、あるいは工学や理学の技術も、イメージングの技術もきちんと取り入れながら、やはり研究のレベルをもう少し底上げしていただかないと、恐らくこれから臨床にすぐ持ってくるのは難しいのかなと思います。
 それはある意味でCTCの使い方、先ほど言われましたように、何を目的にやるかということで、いわゆる薬がちゃんと細胞の中に行き届いているのかとか、今は先端的には細胞の中の核だけを見ようとか、オルガネラを取ってみようとかというところまで来ているような段階なので、そういう技術もとにかく取り入れながら進めていくことをお願いしたいと思っています。
○中釜座長 ありがとうございました。
 先ほど、リキッドバイオプシーがぼやっとしているという、座長としては不適切な表現を使いましたけれども、より明確に言いますと、出口を明確にして戦略的に進めていくべきであるということですので、修正させていただきます。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 郡山構成員。
○郡山構成員 先ほどリキッドバイオプシーをがん検診に使えるかどうかというお話があったかと思うのですけれども、例えば既に走っているコホート研究で生体試料を保管していて、10年、20年とフォローしているようなものを活用して評価することも可能ではないかなと、今、ちょっと思ったりしたものですから、そのあたりも御検討できればいいかなと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。
 堀田参考人。
○堀田参考人 今の件については、マイクロRNAなどでは既に保存検体で数千例規模の検証をやっているものもあります。
 ただ問題は、正常との区別。がんになった人と健康な人をただ比べるだけではなくて、健常人を対象とする検診では、1万例に何例しか見つからないようながんの可能性のある人を効率的に見つけ出せるかというのは、早期診断とは全然違う話なのです。そういう意味で、これから健常人を対象に前向きのコホートをしっかりやっていかなければなりません。恐らくはもし本気に健診に使うのであれば、今の健診に付随として大きなコホートをやって検証していくしかないのかなと私は思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 そのほか、リキッドバイオプシーに関する御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 堀田参考人。
○堀田参考人 ゲノム解析、リキッドバイオプシーも、それから、これから議論になるAIもそうなのですけれども、これは基本的には技術です。これ自体が目的ではなく、これをどう使って何をかというところの議論をしっかりやらないといけないのだろうと考えています。恐らく、この3つは物すごい勢いで進歩していくので、今、やっていることが5年先に常識かどうかは全然わからないぐらいのスピードだと思います。解析の時間、あるいは費用もそれこそ桁違いに下がってくる可能性もあるとすれば、将来、例えばこうした技術を使ったスクリーニングはワンコインでできる時代になって来る可能性もあると思います。技術に振り回され過ぎないように目的とゴールを念頭に置いて研究を進めることが大切ではないかと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
 恐らく岩佐参考人の御指摘と同様に、出口を明確にし、それに見合う技術のクオリティーを毎回保証し、展開していく必要があるということと理解しました。そのあたりをやはりメッセージ、コンセプトとして明確にしておく必要があるのかなと思いましたので、ぜひ、その整理をよろしくお願いいたしたいと思います。
 ほかにはよろしいですか。
 では、リキッドバイオプシーに関しては以上といたしまして、続きまして、その次のAI等の新たな技術についてであります。資料は12ページになりますが、こちらについて何か追加の御発言・御意見はございますでしょうか。
 先ほど三津家構成員から、このデータが膨大化し、また、さらにそれを利活用することによって新しいシーズ開発ができるという御指摘もありました。臨床試験のあり方も大きく変わるだろうという御指摘で、この点は非常に重要であると思います。その膨大化するデータを効率的に解析するためにはAIの開発を待ちません。
 そのためには、やはりある程度統一化されたフォーマットのデータ集積のあり方がこれはAIの開発課題においては日本にとっても必須な領域かなと思います。それは恐らく別途の会議等で議論されていることと思いますが、そういうものとの連携をとりながら進めていくべきかなと思います。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 あわせて、病理あるいは画像診断のAI診断なども必要な領域かなと思います。
 では、特にないようでありましたら、続きまして、基盤整備等についてに移ります。こちらについて、何か御意見がございましたら、お願いいたします。
 天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。前回も指摘申し上げた点ですが、もう一度申し上げます。
 前回の会議において、国のがん対策推進基本計画にあるように、海外の研究体制と同様に、我が国でも患者やがん経験者が研究のデザインや評価へ参画できる体制を構築することが定められていて、いわゆるPPIの推進が定められているわけですが、現在、AMEDにおいて先行して取り組みが検討されているところだと理解しています。このPPIの推進について、AMEDが主体となって行うか、厚生労働省が主体となって行うかは議論があるかと思いますが、資料を見ますと、資料2-3のがん対策の「(8)がん対策の効果的な推進と評価に関する研究」という個別項目的なところにPPIの推進が入れられていましたが、そういうことではなく、恐らくさまざまな研究においてPPIは推進されるべきと考えますので、やはりこれについては横断的事項として取り上げていただきたいということが1点でございます。
 2点目がPPIに関連して、いわゆる臨床試験等において、医療者による評価だけではなく、患者さんの評価、患者による報告に基づくアウトカムであるPROも注目されていると理解しておりますので、PPIと同様にPROについても、さまざまな領域において恐らく検討されるべきと思いますので、これも可能であれば横断的事項に含めて検討いただきたいと考えております。
 私からは以上でございます。
○中釜座長 重要な御指摘、ありがとうございました。
 このPPI、PROの問題は重要な視点であろうと思います。研究から開発のところ、あるいは政策を含めて、このあたりの強化は非常に重要な御指摘だと思います。
 ほかに御意見はございますか。
 神奈木構成員。
○神奈木構成員 どこで申し上げていいかわからなかったのですが、臨床試験に関することです。臨床試験は非常にコストのかかるものでありますし、こういった臨床試験に対するAMED等の支援がどの範囲までというのは非常に難しい問題だと思います。例えば希少疾患でありますとか、余り企業が積極的に行わないようなものですと、折角シーズがあって、かなりのところまで来ていても、その先に行くには臨床試験は必須のことでありますので、支援が無ければそこで止まってしまうことが起こり得ると思います。対象疾患が多いとか、薬剤がある程度確立しているとかという場合は企業主導で行われるのが一番理想と思うのですけれども、アカデミア発で希少疾患というような場合には、やはりある程度サポートする体制が望ましいと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 臨床試験については、例えば基盤に関しては臨床研究中核拠点病院やゲノム医療中核拠点病院などで、さまざまな取り組みが行われているところでありますが、それでも依然として希少なものや難治性のものに対する対策、あるいはレジストリのあり方はまだ改善の余地があるかなと思います。それらを強化するための仕組み、さらにそれに企業や産業界がいかに国家的な施策に参画できるか。そのためにも、やはりデータのきちんとしたものをつくることが重要です。そのPRO、あるいは藤原構成員から御指摘のあった診療情報をいかに精度の高いものにしていくか、そのための仕組みづくり。そういうものもあわせて重要かなと思いますので、基盤整備の一つとしては重要かと思います。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 では、神奈木構成員。
○神奈木構成員 済みません。これは癌学会の先生方のコメントの中に1つあったのですけれども、アカデミア発のシーズを研究していく上で、GMPレベルで製造することの必要性が出てきたときに、非常にコストがかかる。それをGMPで製造するような拠点のようなものがあるといいという御意見がありました。どの程度、実現可能なことかはわかりませんけれども、そういう御意見があったことをお伝えしておきます。
○中釜座長 ありがとうございます。
 アカデミアシーズをいかに市場に持っていくかは非常に重要なテーマで、恐らくAMEDの中でも既に取り組まれておられ、創薬基盤支援の中でもグレードの高いものをつくっていくという方向性は共有されていると思うのです。けれども、なかなかそれを全てを賄うのは難しいと思うのですが、そのあたりは産業界との連携も必要かなと思います。
 ほかに御意見はございますか。よろしいですか。
 では、堀田参考人。
○堀田参考人 今、神奈木構成員が御指摘の点は私どもAMED内部においてもとても頭の痛いことで、もう少し潤沢に研究予算があればよろしいのですけれども、なかなかそうはいかなくて、例えば革新がん事業では研究予算の半分は領域3の創薬研究開発に充当し半分を他の5領域で分けて使っているような現状なのです。AMEDとしてアカデミアがやらなければいけないものを優先的に支援させてはいただいているのですが、できるだけ早期から企業との連携もしくは導出を目指した研究を後押ししています。研究期間は3年間を原則的にしていますが、進捗の優れた課題は継続も可能です。 重要な点は、最初に計画されたことがきちんと実行されたかどうか。そこが継続の大きなポイントです。そういう意味では、最初に採択するときにやはりかなり吟味しないと、途中でだめになってしまうリスクがあります。臨床試験は、患者さんが参加されているわけですから、研究者は責任をもって進めたいただきたいし、AMEDのそれぞれの部署が支援をできるだけさせていただいております。
○中釜座長 加えて、神奈木構成員の御意見は、AMEDの非常に厳しい厳格な評価から漏れたものに関して、いかにそこから育てていけるかという仕組みも必要ではないかということだと思います。そこはまた広く、公的研究だけではなくて、さまざまな別の方法を使って、いかに支援できるかという点で、重要な御指摘ですので、検討していただきたいと思いました。
 ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいですか。
 では、上田構成員。
○上田構成員 この横断的という格好で、先ほどから藤原構成員の、臨床データをしっかりしろとか、ゲノムのデータもみんなそうしないと利活用できないというのはみんなわかっていると思います。例えばがん登録から院内登録、それから疾患登録が、書き方とかいろんなフォーマットが一定化しておくことがまず1つは大事なこと。それから、先ほどのAIの話があって、構造化のデータは必ずすぐに利用できるのですが、非構造化データをどうやってAIにするか。いわゆるカルテに書いたようなデータをどうやってコンピューター化するかというのが今、いろいろなところで物すごく進んでいると思うのです。
 オールジャパンでカルテの共有化を進めないと、今、一生懸命データを集めるといっても、後でほとんど突合できないシステムになっているのが現状です。そうして結果的には、そのデータは必要なときに、先ほどのいろんな例にあったように、途中で切れている。そろそろ、省庁を超えてきちんとしていかないといけないと思います。先ほどの、カルテを書く人に1時間、誰が費用を払うなどという話をしていて外国に勝てるはずがないと思います。ですから、その辺のことは視野に入れていることは委員会からも提言しておいていただきたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。重要な御指摘でした。
 ほかはよろしいでしょうか。
 それでは、以上で基盤整備を終わらせていただきます。
 ところで、当初、この会議の予定時間は11時半までとなっておりますが、まだ議題の半ばとまでは言いませんけれども、少し残っておりますが、少しお時間を超過させていただいてよろしいですか。
 それでは、申しわけないですが、少し時間を延長させて、残りの議題に入りたいと思います。
 議題の「(3)これまでの議論の整理について」ですが、参考資料1の(1)から(8)と横断的事項について、いただいた御意見をもとに事務局に報告書の案を作成していただいているわけです。報告書に盛り込む事項で、全体を通じて何か追加すべき御意見がありましたら、お願いしたいと思います。参考資料1を見ていただければと思います。
 事務局から簡単に説明していただけますか。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 参考資料1の2ページ目をごらんください。前回御議論いただいた(1)から(5)、それから、本日御議論いただいた(6)から(8)、また、右側にございますけれども、横断的事項として、きょう御議論いただきましたが、これらを通じて何か追加すべきような御意見、少し御発言が、言い忘れたといいましょうか、そういう部分がございましたらいただけたらと思っております。
○中釜座長 この2回にわたった項目ごとの議論は、事務局から説明がありました8つの柱と横断的事項について議論を進めさせていただきました。既に多くの御意見をいただいたと思うのですけれども、ここに追加すべき視点について、何か御意見がありましたらということですが、よろしいですか。
 檜山代理人。
○檜山代理人 済みません。前回参加していないのですが、前回の会議で、先ほどの資料2-4の最後に、小児がんや希少がんでは治験が十分できない。ずっとそういうお話を今、されていたと思うのですが、確かに全国的なレジストリをつくって、全国として一つの体制としてオールジャパンでやりましょうということはとりあえずウエルカムだと思うのですが、さらにそれを一つ超えて、やはり国際共同ということは掲げていただきたいと思います。
 といいますのも、小児がんでは既に北米はCOGというグループがありまして、北米全体を含めてオーストラリアも全て含めたグループをつくっていますし、ヨーロッパもSIOP-Europeということで、EU全てが同じ臨床試験に入れるシステムになっていて、アメリカとヨーロッパが今、手を組んで臨床試験をやろうとしているところです。そこに、我々日本はアジアを取り込みながらそこに加わっていくようなシステムをつくって、なるべく数が少ないというデメリットを何とか克服する方策と考えますので、研究費は海外で使えないとか、いろいろな制限が少しあったりするので、その辺も御考慮いただいて、できればグローバル試験を推進するような体制をつくっていただければと追加させていただきます。
 ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
 ほかに御意見はございますか。
本日議論になった、いわゆる実装研究は恐らく多くのものにかかわってくると思うのです。主に(6)(7)(8)にもかかわってくるものだと思うのですが、この実装研究に関しては、この中にどの辺に盛り込まれていくのか。それについて、事務局からお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 先生おっしゃるように、やはり予防の部分を念頭に置きつつも、患者さんの生活に近い部分でも、この実装研究は当然入ってくると思いますので、実際、報告書でどのあたりに書くのがいいのかというのは、次回、我々のほうで案を差し上げますので、その部分を含めて御議論いただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 そのほか、御意見はございますでしょうか。
 米田構成員。
○米田構成員 これはどこに書き込むのがいいのか、わからないのですけれども、やはりこれからのがん研究とか開発を進めるための人材をどう育てるかという観点の何か項目というものが一つ含まれるのは大事なことかなと感じております。
○中釜座長 確かに重要なポイントでした。人材育成のことが余り重点的には議論されなかったのですけれども、それも非常に重要なポイントですので、ぜひどこかに盛り込んでいただければと思います。
 基本計画の中には人材育成が書き込まれていますけれども、それをどういうふうに、研究という視点で書けるかということだと思うのですが、事務局からお願いできますか。
○健康局がん対策推進官 事務局です。
 そういう意味では、本日の最後の横断的なところの13ページの基盤整備等の中でいただいた御意見を整理させていただいておりますので、報告書の中でも同様に考えております。
○中釜座長 ありがとうございました。
 お願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 1点だけちょっとお伺いしておきたいのですけれども、人材育成の部分というものは、今回は13ページのいただいた御意見のところでは特に若手育成という観点で御意見をいただいたのかなと認識しておりますが、そういう理解でよろしいでしょうか。それ以上に若手育成の部分以外でもという話になりましょうか。
○米田構成員 主として、もちろん、若手研究者の育成が大切だと思っているのですけれども、先ほど鈴木構成員が言われた、例えば情報発信するような人材をどうするかといったことも含めて、今後のがん研究やがん対策に必要な人材をトータルでどう育てていくかというのは大事ではないかなと思います。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 ありがとうございます。
○中釜座長 なかなか現状では、この8つの領域の横断的を俯瞰した人材育成の論点は難しいのではないかと思うのですけれども、これからのがん医療の展開を考える上では非常に重要なポイントですので、もしどこかに書き込むのであれば明確に明示していただければと思います。
 ほかに御意見はございますか。
 堀田参考人。
○堀田参考人 今回の見直しは、大枠は変えないで、中身の充実という方向であると理解しておりますが、10カ年戦略ができるときにはその時点での問題意識がかなり色濃く出ていて、今、5年たったところで、これでいいのかどうかというのは、内容的には吟味する必要が多分あると思います。
 特にライフステージというものをここに持ってきたのは、その当時の非常に社会的な要望も強かったからですが、この(5)だけが全体の流れからいくとちょっと異質なのです。ほかの領域は大体、開発の手法とか、そういったところで切られているのですが、ライフステージのところだけ特出しで、がんの特性とか、あるいはライフステージということになっています。
 これはほかの研究項目と、重複する部分が結構あります。その件に関しては、この数年間やってくる中で整理はつけてきたのですが、今の小児がん・高齢者・希少がん・難治がんという項目でよいのかどうかというのは一応どこかで御議論をいただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
 恐らく、今はこのライフステージというテーマに関して、研究費という視点からの御意見かと思うのですけれども、もう少し違った視点からライフステージというテーマを扱い、どういうふうに議論するか、開発するか、研究するかというところに関して、何か御意見はございますか。
○堀田参考人 私としては、戦略が創られた当時よりももっと必要性が高まっているのではないかと思います。同じ病名のがんであっても、小児で起こるのか、AYA世代、あるいは高齢者ではそれぞれ臨床症状や経過が違いますし、治療成績も違います。本当の意味でそれはライフステージに合った本質的ながんの解明といったものはまだまだ遅れています。
 同じがんでも、例えば高齢者のゆっくり進んでいくがんと、若い人の急に進行するものには本質的になにが異なるのか。がんそのものの生物学的な老化や、あるいはゲノムの変化、また、その微小環境さらには個体としての環境といったものを視野に入れた研究が進んでいくとよいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 これまでのいただいた構成員の意見の中にも、細胞老化の研究、あるいは個体老化の研究、さらにはそこに対策的な視点を含めながら、このライフステージというものをどのように取り扱っていくのかという重要性は御指摘されているかと思うのです。そういうところは非常に重要な視点ですし、さらに堀田参考人の御意見にありましたように、ますます、重要性が増してきているのも事実ですので、そういう視点にかなり重きを置きながら展開する仕組みを考えていければと思います。それを今後の3年間のテーマとして上げていただければと思います。
 天野構成員。
○天野構成員 今の堀田参考人の御指摘に関連してですが、私の理解では、確かにこの(5)の項目は異質といえば異質なのですが、一方で、がん対策基本法が改正された際に、第19条の第2項で「罹患している者の少ないがん及び治癒が特に困難であるがんに係る研究の促進について必要な配慮がなされるものとする」という部分が新たに追加されたことに対応する項目としてこの項目を設けていただいたと理解していますので、ライフステージということもあるのですが、特に難治がん・希少がんについては重点的に公的研究費で手当てしていただきたいという思いを持っております。
 一方で、細かいことを言えば、例えば実際にAMEDの個々の研究を見ていくと、これが難治がんの研究や対策に資する研究なのだろうかとか、本当に希少がんの研究や対策に資するのだろうかという研究もあるのではないかと感じる部分がありますので、より一層の充実を図っていただきたいと考えております。
 私からは以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今のポイントは非常に重要で、やはり研究がどういう対策に資するのかという視点を含めた研究の立て方も重要であるということです。
 お願いいたします。
○三津家構成員 これまでの経緯を知らないので、質問になりますが、リキッドバイオプシーとかデータの話とかがいろいろ出たのですが、患者さんの御厚意によって提供していただいている、いわゆる病理組織自身の扱い方、あるいはそこからいわゆるゲノムを超えたようなホストゲノムといいますか、エピジェネティクスですとか、翻訳後修飾とか、そういったものを今後どうやってサンプルを使って解析しようかということは、これまでどのように議論されてきているのか。あるいはこのターゲットとしては先が遠過ぎる話なのか。その点はいかがなのでしょうか。
○中釜座長 重要な御指摘なのですが、今の御指摘は、いわゆる病理検体のバンキングされた試料をいかに利活用するか。その仕組みづくりということですね。
○三津家構成員 はい。
○中釜座長 これはかなり診療に近いところのデータですが、恐らくバンキングの一部としては取り扱われている、文科省さんが進めているいわゆるクリニカルバイオバンクというものはそういうものでしょうし、恐らくがんゲノムに付随する組織もそれに通じるもので、その利活用はある一定のルールがやはり必要だと思うのです。それをきちんとした上で、さらに利活用しやすい環境を整える。そういう御指摘かなと思うのですが、そういう理解でよろしいですか。
○三津家構成員 そうです。
 あと、今後のがん研究に活かすことができるかということが、どこかに入ってくるのか、今回の視野の外なのかという質問です。
○中釜座長 私の理解では視野の中だと思うのですが、そのあたり、厚労省の事務局、お願いいたします。
○健康局がん対策推進官 事務局でございます。
 当然、がんゲノムの中でも同じような課題がございますので、がん研究の中でも考えている課題でありますが、これ自体、患者さんからいただいたものをどう使うかという意味では、がんに限らない、患者さんの同意をどうとって、患者さんの同意のもとに、この検体情報をどう使わせていただくかということですので、そこは含めて議論を個々にさせていただきたいと思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、特にないようですが、また何か、この会議後にお気づきの点がありましたら、事務局へお寄せいただければと思います。
 では最後に、議題の「(4)その他」に移ります。事務局から何かございますでしょうか。
○健康局がん対策推進官 実はございません。
○中釜座長 よろしいですか。
 それでは、本日の議事は、少し予定の時間を超過しましたが、以上とさせていただきたいと思います。最後に、事務局から連絡事項等についてお願いいたします。
○健康局がん対策推進官 事務局でございます。
 本日も、さまざまな視点からの御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。本日いただきました御意見ですが、先ほど座長からいただきましたとおり、報告書の案を事務局のほうでまとめさせていただきますので、次回、それをもとに御議論いただきたいと思います。
 次回の会議の日程につきましてでございますが、追って御連絡させていただきますので、お忙しい中、大変恐縮ですが、日程の御調整のほど、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。
○中釜座長 では、本日の会議を終了したいと思います。構成員の皆様におかれましては、活発な御議論をいただきましてありがとうございました。
 以上です。
 

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健康局がん・疾病対策課

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