2018年12月26日 第151回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

平成30年12月26日(水) 13:00~15:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム

出席者

【公益代表委員】
    荒木委員、安藤委員、川田委員、平野委員、水島委員、守島委員、両角委員
【労働者代表委員】
    川野委員、櫻田委員、柴田委員、中川委員、八野委員、村上委員、弥久末委員、世永委員
【使用者代表委員】
    秋田委員、早乙女委員、佐久間委員、杉山委員、松永委員、輪島委員
【事務局】
    坂口労働基準局長、田中審議官、富田総務課長、黒澤労働条件政策課長、石垣監督課長、久知良計画課長
    中嶋調査官、竹野企画官

議題

(1)「労働基準法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」等について
(2)その他

議事

 

○荒木会長 それでは、定刻少し前ですが、御出席予定の皆様もおそろいということですので、ただいまより、第151回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員としまして、公益代表の黒田祥子委員、使用者代表の齋藤貴久委員、佐藤晴子委員と承っております。
では、議題に入る前に、事務局より定足数について報告をお願いします。
○労働条件政策課企画官 定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
○荒木会長 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
本日の議題に入ります。本日の議題は、「『労働基準法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱』等について」です。
まず事務局から資料の説明をお願いします。
○労働条件政策課企画官 事務局でございます。
本日、お手元に資料を2種類御用意してございます。まず資料No.1「労働基準法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」、資料No.2「労働基準法第41条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針案」でございます。
これらにつきましては、12月14日付で労働政策審議会宛て諮問をいたしまして、前回の本分科会で御議論いただいたものでございます。内容につきましては前回と同様でございますので、恐縮でございますが、説明は省略させていただきます。
以上です。
○荒木会長 それでは、本日は取りまとめに向けた御議論をいただきたいと考えております。公労使三者委員より、総括的な御発言も含めまして、御意見があればよろしくお願いをいたします。
村上委員。
○村上委員 ありがとうございます。
前回諮問されました高度プロフェッショナル制度に関する省令・指針案について、労働側委員としての意見を述べます。
10月以降、高度プロフェッショナル制度に関する省令・指針案について議論を重ねてきました。その基本的な立場は、このような労働基準法の労働時間規制を外す制度をつくるべきではないという考え方は変わるものではないけれども、法改正がなされた以上、法の趣旨に沿わないような運用を許さないよう、省令・指針で必要な事項を定めていくというものです。
そして、審議会委員の多くが、2015年法案の建議取りまとめの議論に参加していない中で、国会での質疑や附帯決議も十分に受けとめて、この議論に臨んできました。労働側委員も会合を重ねてきましたが、高度プロフェッショナル制度の運用を懸念される方々からも多くの助言をいただき、省令や指針をより不安のないものにしたいとの気持ちで議論に参画してきたところです。
国会でも議論があり、多くの附帯決議がなされたように、この制度は労働基準法に規定されている労働時間の規制が適用されない制度であり、過重労働につながることが懸念されます。対象者がどれだけ限定され、ごく一部の人たちに限られる限定的なものであったとしても、命と健康を脅かす懸念があります。そのため、厳格な手続が適正に行われ、本人が同意した場合のみ適用が可能となる特別なものであるとの認識で意見を述べてきました。
今回諮問された省令・指針案では、労働側委員が指摘した事項も多く盛り込まれたと考えます。一方で、対象労働者の年収要件については、前回も労働側委員から意見を述べたところです。年収1075万円が前提とされてきたという経過は承知しております。しかし、具体的にどのような労働者が対象となり得るのかと考えてみますと、前回も公益委員、使用者側委員からも御発言があったように、最低基準を1075万円としつつも、実際は年収1075万円をかなり超える方々なのではないか。そうであれば、算定基準となる平均給与額は、パートタイム労働者の分は除くのが妥当ではないかと考えます。
また、省令・指針案の議論を行うに当たり、そして、この先の施行に当たっても労働側委員が健康への懸念と同時に最も懸念しているのは、過半数労働組合がない職場での運用です。高度プロフェッショナル制度は、労使委員会の決議と本人の同意が要件となっています。国会の修正では、同意の撤回に関する規定も盛り込まれました。しかし、どんなにすぐれた専門的な能力、技能を持つ労働者であっても、使用者との間では相対的に力が弱いということは、時代が変わっても変わらない現実です。
そして、憲法で保障された団結権を背景とした労働組合がある職場での労使委員会と、そうではない職場での労使委員会とでは、実際の運用においては異なってくることが想定されます。労働組合のある職場であれば、組合員の意見や実態を把握して、議論して、方向性をまとめる活動が日常的に行われ、会社側とも話し合うベースがありますが、そうではない職場ではどうなのでしょうか。また、労使委員会が適正に運用されたとしても、大切なのは対象労働者が制度を本当に理解した上で、管理職や上司からの同意の働きかけに対して交渉、協議ができるのかという点も懸念があります。
以上、述べた観点から、労使委員会の手続や健康管理時間の把握、対象業務などについても不適切な運用にならないようこだわって意見を述べてきたところです。今後の制度の施行に当たっては、私たちも留意点などを組織の中で呼びかけていきたいと考えておりますが、厚生労働省の皆様におかれても、監督指導に関する多くの附帯決議がなされたことを踏まえて、労使委員会の設置から始まるプロセスについても、対象業務などについても、労使委員会任せにならないよう、丁寧かつ徹底した監督指導を行っていただくことをお願いして、労働側委員の意見といたします。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかに意見はございましょうか。
佐久間委員。
○佐久間委員 佐久間でございます。
今回のこの取りまとめに当たりまして、本当に厚生労働省の事務局の皆様、ありがとうございます。
高度プロフェッショナル制度導入に当たりましては、これだけの時間を公労使の間で具体的な定めというか、手続とか事柄、年収の要件、業務の内容等について、意見を出し合いながら整理されたものと認識をしております。妥当なものであると考えております。
これから来年の4月の施行に向けて、大企業の集合体である経団連さん、そして、私ども中小企業の関係でも、製造現場、個別企業になれば、どうしても労働者が実際に年収要件等が合わないところや、小規模の事業者において、例えば証券会社の方々とか金融の関係なども小さい人数規模でやっているところもあると思います。せっかく皆で取り決めた制度でございますので、対象となる企業や労働者の方々が、何とか活用できればよろしいと考えます。これもまた厚生労働省の事務局の皆さん方へのお願いなのですけれども、なかなか制度としては、非常にわかりにくいところもあるかもしれませんので、中小企業も確実に理解できるような要点を整理した薄目のパンフレットとか、厚労省から労働局、働き方改革推進支援センターなどを通じて本当にわかりやすい説明をいただければと思います。
この労働条件分科会のテーマだけではなく働き方改革関連、また、今さまざまな分科会、部会で議論されていて、中小企業にとっても負担になると言ってはいけないのかもしれませんけれども、そういう事柄がだんだん多くなってきています。ハローワーク、労働基準監督署、労働局の方々も、なかなか人数的に厳しいところがあると思うのですけれども、本当に人の確保だけではなく質というか、その内容を説明できるような方をぜひとも用立てていただければと考えております。
以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
今回、この分科会に示されました高度プロフェッショナル制度の省令・指針の中身についてでございますけれども、制度を実際に導入するに当たって、企業の労使が具体的に定めていかなければならない事項とか、手続とか、対象業務、年収要件について、労使双方の意見が取り入れられるという形で整理がされたと認識しておりまして、今、佐久間委員がおっしゃいましたけれども、使用者側としても妥当な内容だと考えているところでございます。
本分科会では、働き方改革実行計画を受けて、2017年4月から法改正の審議を行ってきた。また、働き方改革関連法が可決、成立したことを受けて、本年7月から国会での審議や附帯決議の内容を踏まえた改正法の省令・指針の事項について審議を進めてきたと私どもとしても理解しています。
この一連の審議の中で、企業で働く方々の健康を確保し、過労死をなくすこと。そして、多様な人材の能力を発揮することによって労働生産性の向上を図ること。そういうことをこの分科会での共通の目的として議論してきたと認識しているところでございます。
これまでずっと分科会で申し上げてきた点でありますけれども、我が国の企業を取り巻く環境、国際競争の強化、デジタライゼーション、AIなど、新技術を利用した企業の新規参入、人口減少に伴う国内市場の縮小など、これまでにない大きな変化に見舞われていると考えているところでございます。企業がこうした環境変化に対応するためには、イノベーティブな経営を一層追求していく。この道しかないと考えておりまして、そのためには最先端分野の研究者など、イノベーションの担い手である高度専門職がその持てる能力を最大限発揮できるように環境を整えることが大事だと考えております。
このような問題意識から、上限規制などの導入により、過重労働、過労死を防止しつつ、企業の生産性向上を実現するための高度プロフェッショナル制度が盛り込まれた働き方改革関連法、そういうものが国会で可決、成立をしたと理解しているところでございます。今後につきましては、施行まで3カ月プラスアルファという本当に短い時間だと思っておりますので、労働側の委員もおっしゃいましたけれども、周知啓発に万事尽くしていただきたいと思っております。
これも審議会で申しましたけれども、できましたら、高度プロフェッショナル制度についても専門の担当者を、各監督署に設けていただくなど、そのような体制の整備というものも図っていただければとお願いをしたいなと思っています。
私からは以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
川田委員。
○川田委員 ありがとうございます。
公益委員の一人という立場で若干意見を申し述べたいと思います。
まず、現在審議されております省令案要綱、指針案につきましては、当分科会において真摯に審議がなされたところを反映した内容になっていると思いますので、そのようなものとして妥当なものだと考えております。
先ほど労使それぞれの委員の御意見の中にも出てきた点ではありますが、高度プロフェッショナル制度は新しい制度という面を多分に有していて、施行の前後を通じた今後の制度の実施の段階も重要なところだと思います。
この制度は、基本的には高度な専門知識や職業能力を生かして働く労働者を対象として、一面において、そのような働き方に合った形で原則的な労働時間規制とは異なる内容のものとして、健康被害につながってしまうような働き過ぎに対する歯どめをかけるということをしつつ、そうした前提のもとで先ほど述べたような高度な専門知識等を生かして働く労働者の働き方について、原則的な労働時間規制と比べると働き方の自由度を高めるというのが基本的な趣旨であろうと考えております。
そのような趣旨が適切に実現される形で制度が実施されていくということが、これからの過程においても大事だと思いますので、当分科会で述べられた御意見を踏まえるような形で、行政当局あるいは制度の実施に当たる職場における労使の関係当事者を初めとする関係する全ての方が今後とも尽力するということが重要であろうと考えております。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、本日は労側、使側、公益側からそれぞれに御発言をいただきました。省令案要綱につきましては、労側委員より御意見を頂戴したところでございますが、この省令案要綱、指針案そのものにつきましては、おおむね意見の一致が見られたのではないかと考えております。
そこで、当分科会としましては、労側委員の御意見を付記する形で労働政策審議会長宛ての報告としてまとめてはどうかと考えておりますが、よろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、事務局に報告文案を用意してもらっておりますので、これを配付の上、説明していただくことといたします。
では、配付をお願いします。
(報告文案配付)
○荒木会長 それでは、説明をお願いします。
○労働条件政策課企画官 それでは、読み上げをもちまして説明とさせていただきます。
 
(案)
平成30年12月26日
労働政策審議会
会長 樋口 美雄 殿
労働条件分科会
分科会長 荒木 尚志
 
「労働基準法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について
 
平成30年12月14日付け厚生労働省発基1214第7号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本分科会は、下記のとおり報告する。
 

 
厚生労働省案は、おおむね妥当と考える。
なお、労働者代表委員から、対象労働者の年収要件は高度専門職に相応しい水準であることに鑑みれば、要綱第一の五の1に掲げる基準年間平均給与額について、パートタイム労働者を除外した額として考えるべきとの意見があった。
 
続きまして、2枚目でございます。
 
(案)
平成30年12月26日
労働政策審議会
会長 樋口 美雄 殿
労働条件分科会
分科会長 荒木 尚志
 
「労働基準法第41条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針案」について
 
平成30年12月14日付け厚生労働省発基1214第8号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本分科会は、下記のとおり報告する。
 

 
厚生労働省案は、おおむね妥当と考える。
 
以上でございます。
○荒木会長 ただいまお手元に配付し、読み上げた報告文案により、労働政策審議会長宛てに報告したいと考えますが、よろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木会長 ありがとうございました。
それでは、そのように取り計らうことといたします。
ここで、労働基準局長から御挨拶をいただきたいと存じます。よろしくお願いします。
○労働基準局長 基準局長でございます。
10月に議論を開始していただいて以来、これまで5回にわたりまして御議論をいただきまして、ただいま「労働基準法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」等につきまして御報告をいただきましたことに、心から感謝を申し上げます。
また、本日、夕刻に安全衛生分科会でも御議論をいただくことを予定しておりまして、両分科会での御報告を踏まえまして、答申ということでいただくということとなっておりますが、それを踏まえて、私どもとしましても省令等の公布に向けました準備を進めてまいりたいと考えております。
先ほども委員の方々からもお話がございましたとおり、働き方改革関係法案につきましては、当分科会でも夏に御審議いただいて、省令等の公布を先にさせていただきました上限規制あるいは年次有給休暇等の関係につきましては、今も労使の皆様方の御協力をいただきながら、私どもも周知に努めておるところでございます。
本日御報告もいただきましたこの高度プロフェッショナル制度につきましても、施行に向けまして労使の皆様に正しく理解していただいて、しっかりと周知をさせていただくということ。そして、円滑な施行に向けて取り組んでまいりたいと思いますので、どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます。
本日はありがとうございました。
○荒木会長 この間、非常に密なスケジュールで議論してまいりましたけれども、公労使三者の委員におかれましては、大変真摯に議論に参加していただき、御協力いただいたことに、分科会長としても御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
それでは、本日はここまでとさせていただきます。
最後に次回の日程等について、事務局から説明をお願いします。
○労働条件政策課企画官 次回の労働条件分科会の日程・場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木会長 それでは、以上で第151回労働条件分科会を終了いたします。
なお、議事録の署名につきましては、労働者代表の弥久末委員、使用者側代表の輪島委員にお願いをいたします。
本日は年の瀬も押し迫った時期に御参集いただき、ありがとうございました。以上といたします。