技能実習評価試験の整備に関する専門家会議(第27回) 議事要旨

                               人材開発統括官海外人材育成担当参事官室
 
○日時 平成30年11月26日(月)10:00~12:00

○場所 厚生労働省 専用第21会議室

○出席者
  大迫委員、岡本委員、岡野委員、椎根委員、下村委員、高野委員、冨高委員
  厚生労働省人材開発統括官海外人材育成担当参事官室、外務省領事局外国人課
  外国人技能実習機構、公益財団法人国際研修協力機構
  (宿泊関係)一般社団法人宿泊業技能試験センター、国土交通省

○議題
 (1)宿泊職種の追加等について
 (2)その他 

○議事
  1 宿泊職種の追加等について
  ○ 宿泊職種の追加について、宿泊業技能試験センターより概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 国内業界の概況だが、国内の観光消費額は、近年、増加傾向にあり、2017年(平成29年)の訪日外国人
   旅行は4.4兆円となった。
  ・ 宿泊施設数の現状と推移だが、平成30年3月現在の厚生労働省のデータで、全宿泊施設数は8万2,150施設
   だった。
    このうち、ホテルが1万402施設、旅館が3万8,622施設だった。なお、本年6月15日に改正旅館業法が施行
   され、ホテル営業、旅館営業の区分がなくなり、旅館・ホテル営業と一括りにされる
   ことになった。
    また、簡易宿所が3万2,451施設だった。簡易宿所は、多数人で供用する構造及び設備を主とする施設で
   あり、民宿、ペンション、山小屋、ユースホステル、カプセルホテル等が該当する。
    さらに、下宿が675施設だった。下宿は、1か月以上の期間宿泊する施設であり、ウィークリーマンション
   等は下宿に該当しない。
    そして、旅館・ホテル営業の中には、ラブホテル、モーテル、レンタルルーム等の店舗型性風俗特殊営業
   (4号営業)が含まれる。この4号営業は以前のデータで6,000強の施設があった。
  ・ ホテルと旅館の軒数・客室数の推移を示すグラフ、都道府県別のホテル営業、旅館営業の客室数を記載
   している。
  ・ 宿泊業の作業の概要だが、主な工程は、チェックイン、チェックアウト、館内案内・ルームサービス等、
   料飲提供とその準備、衛生管理等となっている。
  ・ 宿泊職種の「定義」だが、実習生が行う業務は、下記の<1>~<3>の全ての条件を満たす旅館・ホテル等
   の宿泊施設において、宿泊、飲食、会合等で施設を利用されるお客様に対し、施設の案内や誘導、客室等
   での接客サービス、整備・整頓、調理補助等の業務を行うとともに、施設・サービスの安全・衛生の確保
   のための支援業務を行うこととする。
    <1> 客と対面して接遇を行うことを主とする宿泊業で、旅館業法に基づく営業許可を得た宿泊施設
    <2> 食事を提供する場合は食品衛生法に基づく営業許可を得た宿泊施設
    <3> 消防法に基づく防火基準を遵守している宿泊施設
    なお、現在、記載していないが、旅館・ホテル営業のうち店舗型性風俗特殊営業を除くこととする。簡易
   宿所及び下宿も除かれる。
    また、「作業」だが、チェックイン、館内・ルームサービス等、料飲提供とその準備・衛生管理、チェック
   アウトとする。
    さらに、「作業概要」だが、「チェックイン時の接客作業例」は、玄関での出迎え、荷物の運搬、チェック
   インの作業として、コンピューター等への顧客情報の入力・ルームキーの貸与・滞在中の安全確保、
   外国人客に対しては、パスポートのコピー・外貨の両替である。他には館内設備・施設の案内、
   フロントの電話番号の伝達等である。
    「滞在中の接客作業例」は、客室への誘導・その際の非常口の案内、又は館内・周辺等の案内、
   料理提供を含む客室での接客、館内・客室等の衛生管理である。
    「料飲提供時の接客作業例」は、椅子、テーブル、食器類等のレストラン等での整備である。また、
   レストラン等での衛生管理、料理の事前配置、調理場とレストランの間で料理を運搬する配膳がある。
   さらに、料理や飲食を客に直接運ぶ接客がある他、料飲提供のための衛生管理である。
    「チェックアウト時の接客作業例」は、精算、必要であれば外貨の両替、ルームキーの受領、玄関での
   見送り、周辺観光地などの案内、荷物の預かり、宅配等の手配がある。
  ・ 技能実習1号の目標・実習内容だが、1号修了時には、指示を受けて接客・衛生管理業務ができる
   こととする。主な実習内容は、宿泊接客作業補助、レストラン等での会場整備・配膳作業、安全衛生
   業務等とする。
  ・ 技能実習2号の目標・実習内容だが、2号修了時には、主体的に接客・衛生管理業務ができることと
   する。主な実習内容は、宿泊接客作業、レストラン等での会場整備・配膳管理、料理等提供接客作業、
   安全衛生業務等とする。
  ・ 技能実習(1号・2号)の具体的な目標・実習内容の比較だが、1号は指示を受けて接客・衛生管理が
   できることを目標とする。実習内容(必須業務)は、大きく分けて、宿泊接客作業と、必要に応じてだが
   レストラン等での接客作業の2つである。宿泊接客作業は、チェックイン時の接客作業補助、チェック
   アウト時の接客作業補助、滞在中の接客作業補助であり、補助としての作業を実習していただく。
   また、必要に応じてだが、レストラン等での接客作業は会場整備作業補助と配膳作業補助である。
    2号は、補助ではなく、自主的に作業ができることを目標とする。実習内容(必須業務)は、同じく宿泊
   接客作業とレストラン等での接客作業に分かれている。宿泊接客作業は、チェックイン時の接客、チェック
   アウト時の接客、滞在中の接客作業である。また、必要に応じてだが、レストラン等での接客作業は、2号
   修了時に、料理・飲料提供接客作業のほか、会場整備作業の指導、配膳作業の指導までできるように
   する。
    安全衛生業務も必須業務であるが、雇入れ時等の安全衛生教育などの8つの作業を考えている。
   特に、宿泊接客における事故・疾病予防や火災・地震等緊急事態対応のための訓練及び発生時の対応
   が非常に重要になってくる。
  ・ 技能実習の追加の意義だが、現状、全体を把握できているわけではないが、年間約500人の1号技能実習
   生がいる。実習期間が1年間であるため、基礎的な技能を身に付けたところで帰国している。
  ・ 職種追加により、日本文化の根底にある「おもてなし精神」をベースにした「接客・衛生管理」を日本の
   宿泊業の技能として途上国へ移転できないかと考えている。
  ・ 途上国では観光が主要産業である場合が多く、現在、ベトナムとミャンマーから職種追加の要請を受けて
   いる。
    ベトナムは、2020年には1,700万人~2,000万人の数値目標を立てて外国人客の誘致に取り組んでいる。
   日本からの旅行者も約90万人を超えている。
    ミャンマーは、今後の経済発展に向けて観光を基幹産業にしたいと考えている。ミャンマーには温泉が
   あるため、日本文化と融合させた宿泊施設の新設を検討しており、日本のサービスを是非とも学びたい
   とのお考えである。
  ・ 試験実施機関として、本年9月27日に一般社団法人宿泊業技能試験センターを設立して必要な体制を
   整えている。
 
  〇 同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
  委員)カプセルホテル、マンガ喫茶、ビジネスホテルは技能実習の受入施設となるのか。
  説明者)カプセルホテル、マンガ喫茶は対象とならないが、ビジネスホテルは対象となる。
  委員)実習生が最低限身に付けるべき技能は何かという議論になったときに必要となるので、宿泊施設の
    類型を網羅的に示した上で、実習生を受け入れる施設の線引きを明確にすべき。
  説明者)御指摘について対応したい。
  委員)ホテル、旅館の都道府県別の客室数の資料について、調査の名称、調査年等の出典を明らかに
    すべき。
  説明者)御指摘について対応したい。
  委員)「作業概要」は「作業内容」とし、宿泊施設の作業を洗い出した上で、各作業に付随する「~ができる
    こと」という技能を具体的に示すべき。また、必須の作業と選択する作業に区分し、一覧表を作成すべき。
  説明者)御指摘について対応したい。
  委員)受入施設に規模の要件が課されていないが、規模が異なっても共通の実習を行うことが可能なのか。
    受入施設の規模によって、作業は異なるのではないか。
  説明者)どのような規模の宿泊施設でも行う作業を必須業務として整理している。
  委員)例えばポーター業務など、受入施設の規模によって、実習生の経験値が異なるのではないか。
    実習を行った後に試験を受けることになるが、実習場所によって実習生に有利・不利が生じないように
    すべき。
  説明者)御指摘を踏まえて検討したい。
  委員)必須業務に客室清掃作業は含まれるのか。
  説明者)ほとんどのホテルで外注化しているので、必須業務には入れていない。
  委員)必須業務の会場整備作業、配膳作業について、1号の場合は補助、2号の場合は指導と、一足跳び
    となっている。1号と2号の関係を再整理すべきではないか。例えば1号は作業ができる、2号は指導が
    できると整理することも考えられるのではないか。
  説明者)御指摘を踏まえて検討したい。
  委員)日本人の場合には、指示を受けて行うという1号から主体的に判断できるという2号まで、どの程度の
    期間を要するのか。
  説明者)高卒の新入社員は、通常、約1年間、「実習生」のバッジを付けて、先輩社員と一緒に接客している。
    なお、技能実習生も、先輩社員に付いて補助的に作業することで、日本人とほぼ同等か、言葉の問題も
    あるのでもう少しケアをしていきたいと考え、技能実習1号、2号の実習内容を整理した。
  委員)必須業務の安全衛生業務を充実させたほうが、宿泊施設で共通部分が増加するのではないか。
  委員)消毒など施設の「衛生管理」が労働者の安全確保などの「安全衛生業務」に含まれるという説明は
    不適切ではないか。
  説明者)衛生管理は安全衛生業務の「整理・整頓・清掃・清潔・習慣の遵守」に含まれると整理していた。
    御指摘を踏まえ、衛生管理を安全衛生業務から取り出し、必須業務に入れることを検討したい。
  委員)安全衛生業務に「火災・地震等緊急事態対応のための訓練及び発生時の対応」があるが、どのような
    実技試験を行うのか。
  説明者)試験内容は検討中であるが、消火器、非常サイレン、非常ボタンの使用方法に関する試験が考え
    られる。
  委員)「接客に必要とされる日本語能力を3年目の実習終了時までに身に付ける」とあるが、実習を行うに
    当たって、実習生にはどの程度の日本語能力が求められるのか。
  説明者)対面で接客するのが今回の実習内容であるため、実習生には基本接客用語を身に付けていただき
    たいと考えている。
  委員)日本人から技能を教わるために必要なのか、日本人客が宿泊施設で気持ち良く過ごすために必要
    なのかなど、実習生の日本語能力の習得目的を整理していただきたい。
  説明者)御指摘について対応したい。
  委員)ビジネスホテルなどでは夜もフロントにスタッフがいるが、実習生のみが業務することはあるのか。
  説明者)実習生が夜勤業務を行うことは考えていない。
  委員)実習生が夜勤を含めて指導者がいない状態で業務を行うことがないように対策を練っていただきたい。
  説明者)御指摘を踏まえて検討したい。
  委員)安全衛生業務の「雇入れ時等の安全衛生教育」のみ使用者が主語となっているので、記載方法を
    再検討すべき。
  説明者)御指摘について対応したい。
  委員)おもてなしの精神を試験することは困難と考えられる。技能であれば、マニュアルの作成が可能で、
    試験監督者が定量的に評価することも可能である。このため、試験においては、業務マニュアルに記載
    されている内容が確実に出来ているかどうかで評価すべき。
  説明者)おもてなしの精神という文化が土壌にあるが、実際にはサービスなど具体的なものを試験すること
    を考えている。
  委員)おもてなしの精神について試験しないのであれば、説明資料の記載も見直すべき。
  説明者)御指摘について対応したい。
  委員)開発途上国においても「標準的なサービスは提供されている」とあるが、この中身がよく分からない。
    「標準的なサービスが提供されている」のだったら、日本に実習に来る必要はない。
  委員)開発途上国のサービスは、どのような評価基準で見て、どのような項目が日本と比較して低いのか
    明らかにすべき。その上で、足りない項目を作業に分解して、実習すべき内容を整理すべき。
  説明者)御指摘について対応したい。
  委員)現在受け入れている1号実習生は何人程度いて、どこで、どのような業務を行っているのか、現在、
    何か課題はあるのか。
  説明者)正確に把握できているわけではないが、現状、毎年500人程度が1号技能実習として入ってきて
    いる。また、取り扱っている監理団体が5団体あると聞いている。必須業務を統一的に決めて技能実習を
    行っているのではなく、個別に実習計画を立てて対応していると考えられるが、具体的な実習内容まで
    調べきれていない。
  委員)1号実習生の実態を可能な限り把握すべき。その上で、課題があるとすれば、2号移行対象職種に
    追加することで解決できるのか整理すべき。
  説明者)監理団体に対して更にヒアリングを行うなど、御指摘について対応したい。
  委員)本年9月27日に試験実施機関として一般社団法人宿泊業技能試験センターが設立され、社員総会
    や理事会が設置されているが、これらの組織の費用はどこが支出し、理事長はどのように選出された
    のか。
  説明者)試験実施機関であるため、基本的に運営費は試験の手数料で賄うが、技能実習評価試験は職種
    追加されて約1年後に実施することになるため、当面の資金は、宿泊関係の4団体が各1,000万円
    ずつ拠出する予定である。また、同4団体の合意により、全国旅館・ホテル生活衛生同業組合連合会
    会長が理事長に選出された。
  委員)同じ宿泊という職種であってもホテルと旅館によって求められる具体的な作業や技能が異なるので、
    作業や試験を分けることや選択制試験の導入も検討すべき。ただし、温泉旅館で実習を行っても母国
    ではホテルで働く実習生もいるので、最大公約数をなるべく大きくすることが必要ではないか。
  説明者)御指摘を踏まえて検討したい。
 
  〇 検討の結果、宿泊職種(接客・衛生管理作業)については、次回以降、引き続き議論が行われることと
   なった。
 
 
  2 その他
  ○ 技能実習評価試験の適正性・公平性等の確保について、委員より概ね以下のような意見があった。
  委員)本専門家会議では毎月多くの案件を審議しているが、技能実習評価試験の認定基準への適合など
    職種追加の基本的な要件について、試験実施機関が自己点検を行い、その結果を提出させることとすれば、
    専門家会議の審議もスムーズになるのではないか。また、専門家会議で審議されるに当たり試験実施機関も
    何を用意すればよいかが分かる。なるべく早い時期に対応を検討していただきたい。
  事務局)御指摘いただいたのは、認定時の取扱いか、それとも認定して何年か経過後の取扱いか。
  委員)認定時と認定して何年か経過後の両方を考えている。まず、認定時には、試験実施機関が検討している
    技能実習評価試験が適切なものか専門家会議で審議する際に、重要な確認項目をもらさない上で有効で
    ある。
    また、認定して何年か経過後には、試験制度を設計する当初は非常に優秀で意識の高い方が担当していて
    も、後任の方々の力量が時間の経過に伴い徐々に落ちてくる懸念がある。制度設計時の状態を維持して
    いく上でも、専門家会議での更新審査の仕組みが必要である。
  事務局)認定して何年か経過後の立入検査は、現状、職種追加の事務取扱要領にその旨の記載もなく、行って
    いない。また、職種追加の確認表(チェックリスト)は、試験実施機関に記入いただき、専門家会議の資料
    として配付していたが、確認表(チェックリスト)を御議論いただくようには明示的になっていなかった。
 
  〇 検討の結果、技能実習評価試験の適正性・公平性等の確保については、事務局で対応案を作成し、次回
   以降、引き続き議論が行われることとなった。
 
(以上)