第7回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

平成31年1月23日(水)16:00~18:00

場所

厚生労働省 9階 省議室

議題

(1)座長の選任について
(2)がん研究10か年戦略の中間評価の進め方について
(3)各「具体的研究事項」について
(4)その他

議事

 

○健康局がん対策推進官 それでは、ただいまより第7回「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
事務局を務めさせていただきます、厚労省健康局がん・疾病対策課がん対策推進官の丸山と申します。座長が選任されるまでの間、進行を務めさせていただきます。
それでは、初めに、根本厚生労働大臣より御挨拶申し上げます。
○根本厚生労働省大臣 厚生労働大臣の根本匠です。
「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」の開催に当たり、一言御挨拶をさせていただきます。
本日は、お忙しい中、がん医療や、がん研究を牽引する専門家や、患者の代表の方を初めとして、各界を代表する方々にお集まりいただきました。皆様には、日ごろからがん対策の推進に御尽力いただき、心から感謝を申し上げます。
さて、昭和56年以降、我が国の死因の第1位であるがんは、国民の生命と健康にとって重大な問題であり、がんの研究を進め、がんを克服していくことが求められています。これまで、がん研究には、昭和59年の対がん10か年総合戦略以来、重点的に取り組んでまいりました。そして、平成26年には、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣の3大臣合意のもと、がん研究10か年戦略を策定し、がんの根治、がんの予防、がんとの共生のより一層の推進を目指し、戦略的に研究を進めてきました。この間、免疫療法の普及やゲノム医療の発展など、大きな環境変化を迎えています。昨年3月に閣議決定された第3期がん対策推進基本計画では、このような状況変化に対応して、免疫療法の周知啓発や、がんゲノム医療の実用化の推進などが新たに盛り込まれました。また、昨年10月、京都大学の本庶佑名誉教授がノーベル生理学医学賞を受賞されたこともあり、がん医療の新たな発展に期待が高まっています。
そこで、皆様には、今後も我が国ががん研究分野で世界をリードしていくため、これまでの知見も含め、取り組むべき研究課題について活発に御議論いただき、がん研究10か年戦略の中間評価を取りまとめていただきたいと考えております。皆様におかれましては、忌憚のない御意見を賜りますように、よろしくお願い申し上げます。
○健康局がん対策推進官 ありがとうございました。
なお、根本厚生労働大臣は、公務のため退席させていただきます。
続きまして、事務局より構成員の皆様方のお名前を紹介させていただきます。右側から反時計回りに失礼いたします。
全国がん患者団体連合会から、天野慎介構成員。
日本がん治療学会より、河野浩二構成員。
理化学研究所より、後藤俊夫構成員。
量子科学技術研究開発機構より、島田義也構成員。
マギーズ東京より、鈴木美穂構成員。
国立がん研究センターより、中釜斉構成員。
日本医療機器産業連合会、新延晶雄構成員が本日御欠席のため、代理として、山本章雄構成員代理。
日本医師会、羽鳥裕構成員。
日本臨床腫瘍学会、藤原康弘構成員。
小児血液・がん学会、細井創構成員。
日本製薬工業協会より、三津家正之構成員。
読売新聞東京本社、南砂構成員。
医薬基盤・健康・栄養研究所より、米田悦啓構成員です。
なお、上田龍三構成員、神奈木真理構成員、郡山千早構成員からは、本日御欠席との御連絡をいただいております。
また、本会議におきましては、3名の参考人をお呼びしておりますので、こちらも御紹介させていただきます。
AMED、日本医療研究開発機構の戦略推進部がん研究課長の岩佐景一郎参考人。
同じくAMED革新的がん医療実用化研究事業プログラムスーパーバイザーの堀田知光参考人。
なお、AMED次世代がん医療創生研究事業プログラムスーパーバイザーの宮園浩平参考人におかれましては、17時前後の御到着という御連絡をいただいております。
事務局からの出席者につきましては、座席表をもちまして割愛させていただきます。
続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。お手元の資料につきまして、座席表と議事次第。続きまして、資料が1番から5番の5つ、資料6-1から6-5の5種類、合計10種類。その次に、参考資料として参考資料1を御用意させていただいております。
また、机上に5種類、1と5が黄色のファイルにとじさせていただいておりますが、残り2、3、4、冊子となっている資料を御用意しております。
資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出いただきますようお願いいたします。
それでは、議題1「座長の選任について」に移りたいと思います。資料1をごらんください。
資料1の3.(2)におきまして、「本会議には、構成員の互選により座長をおき、会議を統括する。」とされておりますので、本規定に基づきまして、構成員の互選により座長を選任いただきたいと思っております。どなたか御推薦はございませんでしょうか。
○羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥です。
この分野で最も経験の豊富な、そして多くの会を有意義に進めていらっしゃる中釜斉先生にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○健康局がん対策推進官 今、異議なしといただきましたので、それでは、中釜構成員に本会議の座長をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○健康局がん対策推進官 それでは、中釜構成員は座長席への御移動をお願いいたします。
(中釜構成員、座長席へ移動)
○健康局がん対策推進官 それでは、中釜座長より一言御挨拶をいただけますでしょうか。
○中釜座長 ただいま本会議の座長を御指名いただきました中釜です。会議に先立ちまして、一言御挨拶させていただきます。
先ほど大臣からもお話がありましたが、日本のがん対策は10年3期、30年にわたるがん対策、がん克服計画に次いで、2001年にがん研究10か年戦略がスタートしたわけです。国を挙げてがん対策に取り組むということであり、2014年に引き続き2015年には、その研究を一括して管理するようなAMEDが立ち上がり、さらに2016年からは、全国のがん登録がスタートしたわけです。また一昨年の3月には、第3期のがん対策推進基本計画が策定され、ますます国を挙げて、2014年に作成されましたがん研究10か年戦略に基づいて、がん研究が進められてきました。
その中で、大きな8つの基本的な施策、柱として、がんの本態解明から、がん研究の効果的な推進、あるいはその評価等という8つの領域にわたり進められてきたわけです。その成果の一端としては、先ほどお話がありましたがんの免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤という新しい薬の開発であったり、がんゲノム医療は、まさに実装を目の前にしている状況でありますし、そのほか、いろいろな取り組みが進められてきているわけです。一方で、やはり大きな課題の1つである小児、AYAがんというような、希少ながんに対する対策が十分であるのかどうか、それから、均てん化と同時に集約、ネットワーク化ということも言われていますが、それが十分に進められているのか、この10か年戦略のちょうど中間年です。中間評価に当たって、そのあたりをきちんと委員の先生方に御議論いただいて、次の5年間に向けて、さらに強化する。あるいは不足の部分を補う、あるいは先ほど大臣からありましたが、世界をリードするような戦略、加えて、患者目線、患者本位の医療の実現に向けて、どのようなものが可能であるのか、そこで皆さんのお知恵を借りて、よりよい対策として進めていただければと思います。微力ではありますが、本会議の推進に務めさせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。
それでは、早速、議事に従って進めさせていただきます。
議題2になります。「がん研究10か年戦略の中間評価の進め方について」であります。
事務局から資料2から5を使って、その内容をそれぞれ御説明いただき、その後、まとめて、構成員の方々から御意見や御指摘をお受けしたいと思います。
それでは、資料2から、事務局より説明をお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 資料2の説明に先立ちまして、以上をもちまして撮影は終了していただきまして、カメラをおさめていただきますようお願い申し上げます。
それでは、資料2をごらんください。
本会議のスケジュール案について御説明いたします。本会議でございますけれども、がん研究10か年戦略を策定するに当たり、計6回の会議を行っておりまして、本日が第7回となります。第7回では、がん研究のこれまでの経緯と支援状況、中間評価の議論の進め方、「具体的研究事項」の議論マル1、第8回では、「具体的研究事項」の議論マル2、「横断的事項の議論」、第9回では、報告書の案について御議論いただけたらと存じます。
続きまして、資料3をごらんください。
1ページ目でございますけれども、がん研究の経緯を御説明いたします。1984年の「対がん10か年総合戦略」に始まり、2004年の「第3次対がん10か年総合戦略」まで、10カ年ごとに総合戦略を策定し、がん対策・がん研究を進めてまいりました。
2006年には、がん対策基本法が成立いたしまして、その後、第1期、第2期がん対策推進基本計画が策定されました。
「第3次対がん10カ年総合戦略」が2013年度で終了し、翌年2014年度からは、本会議での議論を踏まえまして、「がん研究10か年戦略」に基づき、がん研究を推進しております。
また、2017年度には、机上配付資料1に御準備しておりますけれども、第3期がん対策推進基本計画を策定し、がん対策を推進しているところでございます。
2ページ目をごらんください。がん研究10か年戦略の概要をお示ししております。戦略目標、今後あるべき方向性と研究開発において重視する観点、一番下でございますけれども、重点を置いて研究する事項といたしまして、(1)から(8)までの具体的研究事項を定めております。
スライド3をごらんください。平成30年3月に閣議決定されました第3期がん対策推進基本計画におきましては、「がん予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」の3本の柱を支える基盤といたしまして、「がん研究」が位置づけられております。
スライド4をごらんください。第3期がん対策推進基本計画におきましては、資料にございますように、10か年戦略の中間評価を行うこととする旨の記載がございます。
続きまして、資料4をごらんください。
スライド1でございますけれども、2014年以降のがん研究の支援体制についてお示ししております。具体的研究事項(1)から(6)につきましては主にAMEDで、(7)(8)については厚労科研で支援をしております。
スライド2をごらんください。まずはAMEDでございますけれども、基礎から応用研究前半を担う次世代がん医療創生研究事業、それ以降を担います革新的がん医療実用化研究事業、また、医療機器・システム研究、データベース整備などを並行して進めております。
スライド3、4をごらんください。ここでは主に具体的研究事項の(1)から(6)に該当いたしますけれども、AMEDにおける研究支援の件数をお示ししております。
続きまして、スライド5から8でございますけれども、ここはAMEDにおける成果の例を一部お示ししております。ごらんいただければと存じます。
また、スライド9をごらんください。平成31年度のAMEDのがん研究でございますけれども、一部事業の変更等ございますけれども、予算案といたしましては、全体で約163億円となっております。
スライド10をごらんください。厚労科研でございますけれども、昨年策定されました第3期がん対策推進基本計画の枠組みで、具体的研究事項の(7)(8)について推進しております。本年度予算は4億円、来年度予算案は5.5億円となっております。
続きまして、スライド11をごらんください。厚労科研では、本年までの5年間で73件の研究を支援しております。
スライド12及び13に厚労科研の成果の例をお示ししておりますので、ごらんいただければと存じます。
続きまして、資料5をごらんください。
スライド1枚目でございますけれども、昨年度、厚労科研の藤原班におきまして、がん研究10か年戦略の進捗評価に関する研究を行っております。
構成員のお手元には、机上資料5といたしまして、本研究班の報告書を置かせていただいております。
スライド2をごらんください。評価の手法といたしましては、報告書の調査・分析に加えまして、AMEDのPD/PS/POへのヒアリングや、評価委員会、患者団体、がん関連学会等へのヒアリングを行っております。
スライド3から6をごらんください。まず、具体的研究事項の(1)から(6)を主に支援しているAMEDでございますけれども、スライド3に文部科学省の事業、スライド4に厚生労働省の事業、スライド5に経済産業省の事業、スライド6にプロジェクト全体の評価を記載しておりますけれども、いずれも順調に進捗しているとされております。
続きまして、スライド7、8をごらんください。AMEDジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトでは、2020年までに達成すべき5つの達成目標を設定しておりますけれども、「N」としてございます目標以外は既に目標に達成している状況でございます。
スライド9をごらんください。次に、具体的研究事項の(7)(8)を支援している厚労科研でございますけれども、これにつきましても一定以上の成果が挙げられていると報告書でいただいております。
スライド10をごらんください。このように評価いただいていることも踏まえまして、今後の進め方でございますけれども、がん研究全体として、おおむね順調に進捗しているとしてはどうか。
10か年戦略の枠組みである8つの「具体的研究事項」、我々は柱と呼んでおりますけれども、これは維持いたしまして、第3期がん対策推進基本計画で「取り組むべき施策」への対応を含めまして、柱ごとに現状の課題と、後半期間で取り組むべき研究の方向性について議論することをもって中間評価としてはどうか。
また、右下の青い四角部分をあわせてごらんいただきたいのですけれども、シーズ探索、ゲノム医療や免疫療法、リキッドバイオプシー、AI等の新たな科学技術の利活用、基盤整備等といった、各柱にまたがるような研究につきましては、「横断的事項」として議論してはどうかという点について御議論いただければと存じます。
説明は以上になります。
○中釜座長 ありがとうございました。
今、資料2から資料5を用いて、事務局から10か年戦略の中間戦略のスケジュール、これまでの経緯、この10か年戦略でどのような成果を上げてきたか、それから、中間評価の進め方についての説明です。特に最後のスライド10に示されたように、基本的にこれまでの5年間の10か年戦略の取り組みを引き継ぐ形で、ただし、現状の課題を抽出し、後半期間で特に取り組むべき課題について議論する、そういうことであったかと思うのですが、全体を通して、今後の議題の進め方について何か御意見等ございますでしょうか。
天野構成員。
○天野構成員 御説明ありがとうございました。私から意見を申し上げるのは、資料5の最後のスライドに掲載されている横断的事項についてでございます。この部分に、いわゆるPPIの推進を横断的事項として入れてはどうかとの提案でございます。
その理由は2点ございまして、1点目が第3期のがん対策推進基本計画においても、AMEDは海外の研究体制と同様、我が国でも患者、がん経験者、研究のデザイン、評価に参画できる体制を構築するため、平成30年度より患者及びがん経験者の参画によってがん研究を推進するための取り組みを開始する。また、国は、研究の計画立案と評価に参画可能な患者を教育するためのプログラム策定を開始するという記載が新たになされたという経緯がありますので、その部分について反映させることが必要ではないかという点。
もう一点が、実際、研究を進める際において、既に海外の医学誌等において、PPIの項目がないと、日本からの研究が一旦リジェクトされるという事態も生じていると聞いておりますので、この部分については今後の5カ年で横断的事項として検討が必要だと考えます。
以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
今の御指摘について、何か御意見ございますか。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 天野構成員御指摘のとおり、PPIについて、横断的事項で基盤整備等とあわせて御議論いただく形でどうかと思います。
○中釜座長 では、そういう形でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
そのほか御意見ございますか。よろしいですかね。
それでは、今後ですけれども、資料6-1から6-5にありますように、具体的な研究事項に沿って議事を進めていく形にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、事務局より、資料6-1から資料6-5についての御説明をお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 資料6-1から6-5について御説明申し上げます。資料6-1から順に、先ほどの具体的研究事項、柱でございますけれども、各柱についての資料となっております。いずれも同じ構成になっておりますので、資料6-1をごらんください。
まず、スライド1枚目でございますけれども、この柱の中における平成26年度から平成30年度までの前半5年間に得られた研究成果の例をお示ししております。
2ページ目は、本会議に先立ちまして、各構成員から事前に頂戴した意見をまとめております。
3ページ目は、この柱に関連する第3期がん対策推進基本計画の記載、先ほど御紹介させていただきました藤原班の報告書において、推進すべきとして記載している提言を御紹介しております。
これらを参考に、各柱において、現状の課題及び来年度からの後半期間に行うべき研究の方向性について御議論いただければと存じます。
なお、資料5の10ページで御紹介したゲノム医療や免疫療法等の研究につきましては、「横断的事項」として、スケジュールにございますけれども、次回、議論をお願いできればと考えております。
以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
では、今の方針で進めたいと思いますが、資料6-1は、「がんの本態解明に関する研究」ということで、きょう御出席予定の宮園構成員が「がんの本態解明に関する研究」にかかわっておられますので、6-1に関しては、宮園構成員が到着以降に進めたいと思いますが、よろしいしょうか。
少し順番を変えまして、それでは、6-2、(2)の「アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究」について、意見をお伺いしたいと思います。先ほどの事務局の説明から、各委員に事前に提出いただいた御意見については、この資料の2ページ目にまとめております。では、構成員の方々、御意見ありましたら、よろしくお願いいたします。このアンメットメディカルニーズは、従来、どうしても製薬企業主導で、なかなか薬の開発がしづらい、その部分に関して、AMED、研究者主導でシーズ開発、医薬品、医療機器の開発を進めるというものでありました。前半5年間の成果も書かれていますし、代表的なものが書かれています。
お願いいたします。
○細井構成員 日本小児血液・がん学会から参りました細井でございます。
がん研究10か年戦略の柱の1つとして、小児がん、AYAがんを取り上げていただきましてありがとうございます。小児がん、AYAがんの患者は、成人がんに比べますと希少がんでございますが、年々、生存者はふえておりまして、その人たちはいずれに成人になり、高齢者になってまいります。今後も引き続き取り上げていただけるようお願いいたします。
具体的なことでございますが、2番の患者数の少ない希少がんに対する新規薬剤の開発が極めて困難と書いてございますけれども、臨床試験・治験に当初予想したとおりの症例がなかなか集まらないというところで苦労しております。ただ、セカンドオピニオンに来られた患者のお話を聴いておりますと、まだまだ標準的治療をもとに考案された臨床試験プロトコルとは違う治療を受けられて再発・進行してから相談に来られるというケースが少なくございませんので、皆さんが治験や臨床試験に参加していただけるような仕組みができないかと考えております。
 
以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
これまでの5年間の希少がん、希少フラクションのがんに関しては、一定の進捗があったかと思うのですけれども、引き続き、この領域に注力いただきたいと、そういうものです。
ほかに御意見ございますか。天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。今の細井構成員の御指摘に関連して1点、あと別の件で1点申し上げます。
まず、1点目ですが、小児がんについては、細井構成員御指摘のように、臨床試験がなかなか進めがたいという現状があると理解しておりますし、また、小児科という、研究も臨床も非常に厳しい環境にある現場において、現場の先生方が大変な尽力をされていることはよく承知しております。一方で、海外で開発されているような、例えば、成人の領域等において一定の有効性、安全性などが示されているような新規治療薬がなかなか小児がんの領域に入ってきていない、特に固形腫瘍等において、そういう現状があると考えておりまして、これは後の分野で申し上げるべきかもしれませんが、まずは標準的な治療にアクセスできるようにして、救える命を救うことももちろん重要でございますが、一方で、やはり新規治療薬は小児においてはなかなか入ってきていないという現状があるわけでございますし、いわゆるネットワークの構築においても、複数あった小児がんの研究グループが統一されて、ようやく研究が動き出していると理解していますが、進歩はしているとはいえ、歩みは非常に遅いと感じますので、その部分については、学会等においても、ぜひ前向きに進めるための施策等をお願いできればというのが1点目です。
2点目でございますが、これもアンメットメディカルニーズに合致するかどうかわからないのですが、いわゆる患者の支持療法に関する部分です。私も初回治療を受けたのは18年前でございまして、その当時に比べれば支持療法の進歩は著しいものがあるわけでございますが、一方で、いわゆる殺細胞性の抗がん剤であるとか、新規の分子標的薬や免疫療法薬等においても固有の副作用があり、患者はいまだ身体的苦痛が大きくい治療を経験せざるを得ない状況があるわけでございまして、この部分については、後半5年で、支持療法の推進について、より重点的に取り組む必要があるのではないかと考えます。
私からは以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
いずれも重要な御指摘だと思いますが、関連して、あるいは新たに何か御意見ございますでしょうか。
お願いします。
○三津家構成員 製薬のほうの立場から2点ほど御意見申し上げたいと思います。
希少がんにつきましては、製薬業界としましても可能な限りの貢献をしたいと考えております。しかしながら、何分、研究材料が少ないですとか、患者様のレジストリデータが少ないという課題がございます。特に希少がんの研究材料としての培養細胞株に関して国としての整備を御検討お願いできないか。それから、患者のレジストリ研究でのデータの整備をお願いできないかという点が、まず基盤整備のところで御検討をお願いしたい1つ目でございます。
それから、もう一つは実行上の課題でございますけれども、何分、臨床研究を進めるための患者の数が少ないということがございます。そこで、その裾野を広げるために、標的となる遺伝子変異が同一であるような希少がんに対しましては、がんの種類に関係なく参加できるバスケット型の臨床試験が可能になるような取り組みについても御検討をお願いしたいのが2つ目でございます。この2点をお願いしたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
今、2人の構成員から御意見がありましたように、また、この資料にもありますように、事前提出の御意見でも、希少がん、あるいは小児がんに対する開発研究をより加速してほしいということが挙げられています。今、御指摘があったように、やはり症例が少ない。いわゆるコモンながん種の希少フラクションに比べて、患者そのものが非常に少ない症例、がん種に対して、どう開発研究を進めるかというのは、依然としてまだ課題として残っているというのが事実だろうと認識しています。そういう中で、レジストリの重要性、それから、評価系の構築、そういうものがこの5年間で立ち上がってきているとはいえ、まだまだ十分とは言えない。そういうところで、公的な研究費に加えて、企業との連携をさらに強化しながらこの領域を進めていければということですが、これはまさにそのとおりだろうと思います。
羽鳥構成員。
○羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥です。
私も難病対策委員会とか小児慢性疾患対策委員会に出ているのですけれども、そこの議論を聞いていると、個人情報保護とか、疾病が知られると、家族の方、お子さん方にも迷惑がかかってしまうことがあるので、余りオープンにしてほしくないとか、それから、ナショナルデータベースとか、そういうものも余り活用してほしくないという意見も出るのですけれども、希少疾患の方の数が集まらないと治療に結びつかないこともあるので、個人情報には十分配慮しながら、個人情報を漏らすことがあるような仕組みは避けながらも、しっかりしたレジストリをつくって、製薬メーカーも新薬に挑むきっかけをつくっていくのがとても大事ではないかと思うので、その辺の仕組みも連携をうまくとってやっていただけるといいかなと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
この資料の3ページ目の下にある「アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究」の中でゲノム医療のことが触れられていますけれども、恐らくゲノムを含む、バイオマーカーによる希少ながん患者の層別化、こういうことがきちっとレジストリできることによって、いわゆるバスケット型のトライアル、そういうものも効率的に行えるのではないかということは、まさに今、立ち上がろうとしている一つの流れかなと思います。それをさらに強化するということですが、藤原構成員、何かこの点に関して御意見ございますか。
○藤原構成員 臨床腫瘍学会としては、1番、3番のあたりのことを申し上げている中にも、バスケット試験は国がんでやられていますMASTER KEYプロジェクトが多分、代表的だろうと思いますけれども、いろいろなバイオマーカーをもとにバスケット試験をやるものです。今のAMEDとか、厚生労働科研費とか、大半のサポートは、個別の試験に行き、全体の枠組みを支える研究費がありませんので、希少がん、AYA世代の方々にバスケットトライアルを広く進めていこうという事態のときには、この辺の基盤的研究費の増額とかは必要かなと思います。
それに関連して、これまでのがん研究で弱いところは、PMDAとか、厚生労働省の中の医薬局との連携がどうしても弱いというか、AMEDも、厚生労働省の医薬局も、研究に関して口を出すのは遠慮されるとは思うのですけれども、アメリカを見てみれば、NCIとFDAは月に1回ぐらいのミーティングをして、どういう戦略で研究開発をやるかを緊密に考えているわけですし、ガイドライン等もそこで連携しながら考えているわけなので、例えば、PMDAとの連携で想定されるのは、これから予定されているであろう抗悪性腫瘍薬のガイドラインの改訂にもっといろいろなプレーヤーが意見を出していくとか、多分、これも予定されていると思いますけれども、クリニカル・イノベーション・ネットワークのレジストリ研究の承認申請の活用に関しては、先月、FDAが既に白書を出しましたけれども、PMDAもちゃんと、希少がん、難治がんとかの少ないポピュレーションでのエビデンスをどう使っていくかという方向性をちゃんとプログラムとして出すべきだと私は思いますので、そことの連携は大事になると思いますし、医薬局との連携という観点から考えると、EUとかアメリカは小児がんの開発に関しては法律をつくって、成人の開発と同時に小児の開発をやれと義務づけをしていますけれども、まだ日本はそこに追いついていないので、もう既に方向性は決まっていると思いますけれども、薬機法の改正の中に、小児がん、あるいは希少がん、希少疾患も含めて、そういうものの開発を成人の開発と同時にやりなさいと義務づけすることも、ちょっとフォーカスはずれますけれども、そういうのを総合的にやっていかないと研究開発は振興できませんので、考えていただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
今、重要なポイントは幾つかあったかと思うのですけれども、リアルワールドのデータをどう開発研究に使えるような形に持っていくのかということ、それから、規制の問題、そういうものも国として、あるいは新しいモデル系を世界に先んじて提案していく、そういうものも必要かなと思います。
それから、先ほど小児がんの新薬の開発の問題、そこはまだ進んでいないではないかという御指摘がありました。これも非常に重要な課題で、アンメットニーズの領域を開発するためには必要なのですが、特に小児がんに関して言うと、ほとんど全ての薬剤の開発が特定臨床研究になってくるという高いハードルがある中で、小児がんでつくられた臨床研究グループ、JCCGの役割も大きいと思うのです。一方で資金的な問題もあるかなと思うので、そのあたりを確保されないと、なかなかこの部分が強化されないと思うのですが、その点について、細井構成員。
○細井構成員 細井でございます。
造血器も含む小児がんの臨床研究統一グループということで、今、中釜座長から御紹介がありました日本小児がん研究グループ、Japan Children Cancer Group (JCCG)というものが結成され、立ち上がって活動を開始しておりますけれども、経済的基盤は会員施設が会費を出し合って維持している現状があります。また、AMEDの助成によりまして臨床試験を走らせていただいているわけですけれども成人癌に比し、症例数は少なくても小児がんのがん種がメジャーなものだけでも10種以上ありまして、同一がんでも層別化治療するリスク群が複数ありますので、がん種ごと、リスク群ごとの臨床試験すべてにAMEDが当たるわけではないので、臨床研究法施行下の特定臨床研究にあっては審査費用や維持費用など高額なものが必要になって参りますので、御指摘のように、経済的には非常に困っているということでございます。
 
○中釜座長 そのあたりが恐らく非常に重要なポイントになってくるのかなと思います。これは小児がんにかかわらず、希少がんの開発研究をするときに、そのあたりの基盤は、競争的な研究費とか、企業の連携だけでは解決できない問題で、これをきちっと支える仕組みをつくることによって、今、複数の構成員から御指摘のあった希少なフラクションのアンメットニーズの開発は非常に加速できるのではないかと期待しますので、そのあたりも今後の課題かなと思います。
それから、まとめにある支持療法に関する開発研究も非常に重要な部分であります。この点に関して、あるいは追加をして何か御意見ございますでしょうか。私の理解でも、厚生労働省、あるいはAMEDの革新的がん医療実用化研究事業や、次世代がん医療創生研究事業の中でも、新しい支持療法の部分のシーズ開発は力を入れているというのは最近感じるのですが、いいモデル系が、そのほかの薬開発に比べて少し弱いところがある。このあたりは覚悟しながらも進めていく、そういうことも非常に重要かなと思います。非常に重要な領域だという認識はあるかなと思いますので、この部分はより強化していくべきと思います。
ほかに。藤原構成員。
○藤原構成員 支持療法に関連してですけれども、最近はPatient reported outcome、PROを使ったいろいろな評価が盛んになってきていますけれども、支持療法をやる際にはそこが非常に大事になりますので、そのデータの収集については、ウェアラブルデバイスですかね、いろいろなITを使ったデータ収集が簡便かつ確実ということも、だんだんとアメリカなどの臨床試験結果も出てきていますので、情報分野とかとの連携をしっかり図って支持療法の臨床研究を進めていくことも視野に入れていただければと思います。
○中釜座長 ほかに御意見ございますか。
それから、研究費的な支援という意味では、アンメットニーズのところは、アカデミアのシーズをベッドサイドに持っていくという意味では、AMEDのこれまでの努力は非常に大きいと思います。がんの領域においては、次世代がんと革新がんの連携も非常に順調に進んでいると思うのですが、本日の構成員の御意見としては、さらにこの部分は強化すべきだという御意見ですが、AMEDのJCRP担当の岩佐課長から何か一言いただけますか。
○岩佐参考人 ありがとうございます。AMEDとしましても、まさにここの部分は本当に重点的に力を入れてやってきているところです。次世代がん、それから、革新がんという2つの事業がございまして、次世代がんでは応用研究よりも前半の部分、革新がん事業に関しては応用研究以降、前臨床からという形でやっているところですけれども、そこの間をしっかり連携していくために、今年度に関しましては、ちょうど次世代がん事業、中間評価をやる年であったこともありまして、中間評価の中で、既に革新がん事業に出してもいいような成果が前倒しで得られているものについて、積極的に革新がん事業へ導出させていくという取り組みも実施したところです。そういったことを含めて、我々としては、より成果がしっかり出るような形で取り組みを進めているところでございますけれども、引き続き、さまざま御意見をいただきながら、より効果的な形で進められるよう検討していきたいと思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。ぜひ引き続き御支援いただければと思います。
そのほか、このアンメットニーズの領域に関して、何か御意見ございますでしょうか。キーワードの中で、免疫療法についてもこの資料では書かれていますが、これはあえて言うまでもなく非常に重要な領域であり、大きな成果を生んでいます。一方で、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤に限って言うと、効果のある方々がまだまだ10~20%前後。この問題の解決は、今後、さらに強力に進めることによって、この領域がさらに進展するかなと期待しますので、免疫療法に関しては、この時点ではこれ以上の議論はないかと思いますが、何か、免疫療法に関して御意見ございますでしょうか。よろしいですか。
お願いいたします。
○河野構成員 がん治療学会の河野ですが、当然、バイオマーカーによって奏功例を比較するというストラテジーはぜひ進めていただきたいと思いますので、横断的なところで入ると思いますが、強調していきたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
そのほか御意見ございますか。堀田参考人、お願いいたします。
○堀田参考人 堀田です。
参考人ですので、振られないと発言できない立場すが、発言させていただきます。アンメットメディカルニーズに応える新薬開発といったものは、AMEDが始まるころは研究者の意識がそこにほとんどないと言ってもいい状態で、研究して論文を書くとそれでおしまいみたいな感覚の中で、研究成果を本当に実用化していくためにはどうしたらいいかということについて、この間、研究者の意識といいますか、方向性は随分変わってきたと私は実感しています。例え基礎研究であっても、将来、それがどのようなことに役立つかを認識し始めているというところが、この5年間の大きな成果ではなかったかと思います。
あと、希少がんとか難治がんの定義自体がどうなのかという点です。何でも少なければ希少がんかというと、対策上はそうではなくて、希少かつ医療の供給が届きにくいところ、あるいは開発がしにくいところを重点的に研究対象とするということで、数だけで言いますと、希少がんの分類では大枠だけでも50、詳細にすると200種類以上ありますので、その辺は戦略的にどう考えていくのかが1つのポイントです。それから、希少フラクションというのがありますね。胃がんにしろ、肺がんにしても、非常に細かく遺伝子異常を分けていくと、相当数のフラクションに分かれる。その一つ一つに薬の開発は必要なのですが、そこは基本的に診療体制が整っている領域の中のフラクションであるという位置づけをする必要があります。これは希少がんとは違うということをこれまで随分詰めてまいりました。そういった方向でいいのかどうかも検討の余地がありますし、ゲノム医療の進展というときに、ざっくりと胃がん、大腸がんというわけにはいかない時代が来ているので、そういったものに対応できるような仕組みが、今、国家レベルで進んでいることに期待したいと思いますし、ぜひその整備が行われることが重要かと思っています。
結局、私どもが5年前に有識者会議で取りまとめたときには、各領域の課題は明確ですし、これが今日そうそう大きく変わる状況でもないのですが、この間に技術的な進歩がすごくあります。例えば、ゲノム医療にしてもそうだし、それから、新しい免疫療法もそうでありますし、リキッドバイオプシーがこれからどんどん広がっていって、予防、あるいは早期発見・診断、治療後のフォローアップ、あるいは治療の効果判定といったところにどんどん入ってくるので、そういったものをどう組み込んでいくかがこれからの大きな課題にはなると思っています。ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございます。
ただいま堀田参考人からありましたように、AMEDの強力な支援のもとで、特にコモンながん種、及びその希少フラクションに関しては、開発研究のスキームが割と整ってきたかなと思います。一方で、本当にレアながんに関する開発研究の推移は、これから注力する必要があるかなとは感じるところであります。
ほかはよろしいでしょうか。ありがとうございました。いずれにしましても、アンメットメディカルニーズの部分に関しては、引き続き、さらにそれを強力に進めていくのが妥当であろうという御意見だったかと思います。
では、続きまして、資料6-3に移らせていただきます。これは「(3)患者に優しい新規医療技術開発に関する研究」についてであります。取りまとめの資料をごらんいただきますと、この5年間に新しい技術革新、あるいは高精細の放射線治療の技術革新、そういうものがいろいろ出てきたわけです。一方で抗がん剤を適切に、あるいはがんの適切な場所に届ける、DDS、Drug Delivery Systemの抱える課題や細胞膜透過性の課題があります。ミクロなレベルの技術革新、それから、外科的な意味でのロボット支援下内視鏡手術であったり、そのほかの新しい放射線技術開発、こういうものも始まっていますが、より低侵襲な診療技術、治療技術の開発が求められるところであろうというところです。
それから、最後の4ページですが、加えて、より低侵襲な診断法としてのリキッドバイオプシー、あるいはより早期にがんを診断する早期技術の新たな技術革新、それから、治療のみならず、予防、あるいは転移の予防にまでかかわり得る免疫療法のさらなる革新、こういうものも新規医療技術の開発としては挙げられているところでありますが、この資料に記載されている事項を含め、何か御意見ございましたら、よろしくお願いいたします。
細井構成員。
○細井構成員 小児血液・がん学会の細井でございます。
ここに取り上げていただいているリキッドバイオプシーは、横断的なところでの検討ということかもしれませんが、小児がんや小児がんではメジャーな「希少がん」の1つである肉腫は、比較的未分化な腫瘍細胞からなっておりまして、形態学的な病理診断が非常に難しいということで、比較的早期から遺伝子診断、がんの遺伝子異常による鑑別診断が行われておりました。遺伝子の増幅、欠失、キメラ遺伝子等がそれでございますが、同じがん種でも、キメラ遺伝子のあるなしのサブタイプによっても予後が非常に変わるということから、現在すでに、臨床に使われております。ただ、必ずしも全てが保険収載はされておらず、外注検査でできるわけではなくて、特定の施設での研究費ベースで実施された結果で診療が行われているということがございます。
申し上げたいことは、がんの組織を取ってこないと、これまでは診断がつかなかったわけですけれども、非常に取りにくい場所にある、あるいは診断時に非常に進行していて、患者の状態が悪いということで、無理に手術にいくと患者を非常にリスクにさらすというときに、血清中に腫瘍細胞から遊離したDNA断片、あるいはマイクロRNA、そういったものをもとにがんの遺伝子診断ができることは、患者にとって侵襲の少ない非常に優しい有用な手段だと思います。そういったものは一部は臨床にも使われておりますけれども、まだまだ未開発な部分がございまして、その点にも研究の支援をいただければありがたいと思っております。
以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
皆さん御存じのように、がんの多様性、あるいは治療抵抗性という性質を考えると、より低侵襲な診断技術としてのリキッドバイオプシーの重要性は論をまたないわけですが、一方でまだまだ、感度、精度の問題、克服しなければいけない問題はあって、この技術的な革新は喫緊の課題だろうと思いますし、今の細井構成員の御意見もそういうところを意識したものであったと思います。これは次世代のがん医療としては、我々としても強化しなければいけない部分かなと思いますので、この点に関して何か追加で御発言ございますでしょうか。よろしいですね。血液に限らず、体液を使った診断技術はぜひとも評価していきたいと思います。
先ほど放射線診断に関して、この5年間でさまざまな技術革新、陽子線治療にしてもあると思うのですが、この点に関して、今後の5年間でさらに強化すべき点、あるいは課題という点では、島田構成員、何かございますでしょうか。
○島田構成員 ありがとうございます。放射線治療は御存じのようにIMRTを初め、革新的に非常に精度のいい治療法が開発されています。加えて、我が国においては、プロトン並びに重粒子線治療が進んでいます。ただ、重粒子線の場合はコストの問題がずっと言われてきました。我々の研究所では、物理工学のグループに加えて、2年前に日本原子力研究開発機構のレーザーとか超伝導をやっている核融合のグループも参画し、重粒子線治療の小型化研究開発を始めました。また、従来は炭素線オンリーで治療していたのですけれども、これに加えて、酸素とか、ヘリウムとか、幾つかの元素を加えて、副作用の少ない線量分布の精度の高い治療法の開発も今、進めております。
加えて、最近は放射線治療に関しましては、放射性物質を使った、特にアルファ核種を使った核医学治療が注目され始めています。特にアクチニウムは、転移した前立腺がんをきれいに消すという報告が2年前にされまして、各国もアクチニウムによる転移がんの治療の研究開発を始めています。ただ、これはもともと規制が係る核燃料物質が原料でありますので、薬の開発には放射線の規制というところは非常に頭打ちになっていて、ここをどうブレークスルーするかを、今、核医学会が規制庁と検討を始めているところです。
そういう意味では、放射線治療につきましては、我が国の独自性を発揮できるプロトン、重粒子線については、より施設を小型化することによってコストを下げることと、いろいろな元素を使うことによって、より精度の高い治療法を進めているところ、かつ放射性核種を使って、転移、また血液がんについても新たなアプローチが始まっているという現状であります。
○中釜座長 ありがとうございます。
今、御指摘のように、例えば、アルファ粒子等々を使った新しい放射線治療の技術は、転移病巣、あるいは微小病変のターゲッティングという意味でも非常に重要な技術だろうと思いますけれども、今、御指摘の規制の問題はかなり大きいかと思います。そこはハードルとしてはかなり高いのか、でも、何とかなりそうでしょうか。
○島田構成員 我が国では高いですね。
○中釜座長 なるほど。そこの問題は、今後、恐らく新しい領域として、新しい核種を使った治療というのは非常に有効で期待が持てる領域であるので、規制の部分に関する問題の解決に向けたアプローチもあわせて進める必要があるのかもしれませんね。
ほかに何か。米田構成員。
○米田構成員 医薬基盤研究所の米田と申します。
ドラッグ・デリバリー・システムをいいものに変えていく、これは非常に大事なことだと思って、私どもの研究所でも、そういうことを目指して研究している研究者が数名おります。例えば、人工核酸が細胞膜を透過できるようにするだけでも、すばらしい研究につながる可能性があると思っています。このドラッグデリバリーに関しましては、まさに異分野融合、本当に日本全体のサイエンスを結集させて進めていくことができる分野だと思っています。工学、物理、化学、いろいろな分野の方々が寄り添って研究することによって、これまでの概念にはないものが生まれていく可能性があると思っております。そういう形で、ドラッグ・デリバリー・システムの開発に取り組むのは大事な研究ではないかと思っています。
○中釜座長 ありがとうございます。
その際、最近注目されている、実際にがん組織にデリバリーするだけではなくて、細胞内のデリバリーの継承が非常に重要だという話もあるのですが、そのあたりの技術的な問題はハードルは高いのでしょうか。
○米田構成員 それぞれの細胞の中での、例えば、ある特定のオルガネラにデリバリーすることは、まだ一工夫が要るかと思います。ただ、核というオルガネラに関して言いますと、分子量が1万ぐらいですと素通りします。それぞれのオルガネラによって特徴がありますので、そこは幾らでも工夫ができると思いますが、まだそこまでは進んでいないと思います。
○中釜座長 ただ、DDSもいろいろと海外主導で進めているものがあるので、日本の強みを発揮するという意味では、新たな切り口としては可能性があるのかなという御意見です。
ほかに御意見ございますか。藤原構成員。
○藤原構成員 臨床腫瘍学会の藤原でございます。
先ほども量子研のいろいろなプロジェクトの話をおっしゃっていましたけれども、ここの領域は非常に大事でして、内用療法といって、RI製剤を使った臨床試験が昨今は非常に盛んなのですけれども、アメリカでは核医学会とNCIが主導して、核医学領域の臨床試験をする臨床試験グループを整備して、この領域は余り承認された薬剤がなかったのを、先ほどのアクチニウムの製剤を含めて、どんどん開発を進めているので、ぜひここのところは、後半のところでも内用療法の臨床試験を進行することを、量子研などと組んでやっていただければと思います。
それから、ロボットは後の標準治療のところでも出てきますけれども、ロボット手術に関しても、去年の11月には「ニューイングランドジャーナル」に子宮頸がんでミニマム・インベーシブ・サージェリーをやるとラディカルなヒステレクトミーよりも予後が悪くなるというデータが出て、ちょっと反省期に入っているかもしれませんけれども、ロボット手術のようなミニマム・インベーシブ・サージェリーが本当にいいかどうかは、保険適用もされていることですから、今後、ランダム化比較試験のようなものを保険診療課でちゃんとやって、評価できるようなことも考えていかないと、いつまでたっても夢が先行して、現実は予後が悪くなったり、安全性が落ちるとかいうことになっては困るので、そういうところも後半でやっていただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
これは機器開発の3という領域と、標準治療の5の領域の連携を進めながら、よりよい適切な技術を開発していこうということだと思います。
ほかに、医療技術に関して。島田構成員。
○島田構成員 先ほど言い忘れたのですけれども、重粒子線の効果はエックス線と同じ線量でも高いので、X線治療の場合は20回から30回の照射になり、かなり治療日数がかかるわけですけれども、例えば、1期の肺がんであれば、1日の照射で済むということが可能です。現在、1期の肺がん患者については1日の治療で治療が可能だということがわかりましたので、患者さんの社会復帰が非常にしやすくなっているところは1つの特徴です。ほかのがんにつきましても、例えば、肝がんとか膵臓がん前立腺がんにつきましても、極力、照射回数を減らすことで患者さんの負担が少なく社会復帰がしやすいような治療法を検討しております。
○中釜座長 ありがとうございます。
それでは、この新規医療技術に関して、AMEDのPDの立場から、堀田参考人、何か御意見ございますでしょうか。
○堀田参考人 堀田でございます。
新規技術で、モダリティが違うもの同士を臨床試験で比べるのは実はなかなか大変なことです。薬物療法、放射線療法、免疫療法、そういったものがあるのですが、これらをモダリティを横に比較してエビデンスを出していくのが本来は必要なのですけれども、余りやれていないのが現実だと思います。しかも、それぞれの技術が進歩していくものだから、その時点でどっちかがよくても、少し進歩が加速すると、また逆転するということがあるので、これは集学的治療という大きな枠の中で評価していかないと、なかなか評価しにくいのではないかと思います。その辺のサイエンスのあり方といいますか、特に承認とか、そういったほうに結びついているときの考え方として、今までと違う発想が必要なのかもしれないと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
これも先ほどの御指摘で、3の機器開発の部分と標準的な治療へのつながりをきちんと連携をとりながら、より適切、最適な治療法を確立していくと、そういうことかなと思います。ありがとうございました。
ほかに、この新規医療技術に関して御意見ございますか。これまでにリキッドバイオプシー、あるいはドラッグデリバリーに関する新たな技術革新についてのご意見がありました。どうぞ。
○米田構成員 先ほどの中釜座長の御質問に答え切れていませんでしたので、少しつけ加えさせていただきます。最近は分子レベル、細胞レベルのイメージング技術が物すごく発達しています。分子イメージング技術を応用することによって、薬剤の動態が細胞の中でも見えるような時代になってきていますので、そういうところは活用できるのではないかと思います。
○中釜座長 そういった意味で、AMEDの中でも進めている異分野融合の事業、研究開発、そういうものもまたさらに進めていただくことによって、全く革新的なコンセプトを導入することによって、がんの領域の技術革新はあるのかなと思います。
その点に関して、現時点で、岩佐参考人、何か答えていただけますか。
○岩佐参考人 ありがとうございます。DDS直接ではないのですけれども、特に医療機器の開発等に関しましては、ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトの中でも、先進的医療機器システム等技術開発事業、これは経済産業省の来年度の事業になっておりまして、これまでは未来医療という形でやっておりました。そういったところとコラボレートしながら進めているという状況はございます。やはり異分野の融合を進めることによって、現状の課題に対して打開策を求めていくことは1つのポイントになるのかなとは思っておりますが、どういうあたりに絞ってやっていくのがいいのか、もしくは絞らないほうがいいのか、そういったところも含めて、また方向性を出していただければと思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。
これまでにキーワードとしては、リキッドバイオプシー、あるいはDDSの技術革新、それから、分子イメージング、RIの新しい核種を使った内用療法、こういうものが新規の医療技術として、さらに強化すべきかの候補として挙がってきました。ほかに何か、こういうものが少し欠けているのではないかとか、そういうものがございますでしょうか。
島田構成員。
○島田構成員 DDSの材料としては、今、ナノマテリアルが非常に注目されています。ナノのいいところは、運ばれた先の組織の微小環境のいろいろな物理パラメータもはかれるというメリットがあります。例えば、低酸素とかpHです。それに加えて、今、量子科学技術がかなり進歩しています。例えば、量子コンピューターとか、量子暗号とか、量子計測とかです。その中で、ダイヤモンドナノセンサー、これは、ナノスケールのダイヤモンドですが、細胞の中の、いろいろな磁場とか電場の様子を観測できる特徴を持っています。同時に、細胞の温度とか、pHとか、酸素濃度をはかれるので、ダイヤモンドナノセンサーをうまく診断領域に持っていければ、ナノ材料とともに使用することによって、いろいろなポテンシャルを発揮できる可能性があります。量子科学技術の分野においてはダイヤモンドナノセンサーをうまくがんの診断等に使えないかを検討が始まっています。
○中釜座長 ありがとうございます。量子科学との異分野融合は新しい領域かなと思いました。
ほかに御意見、お願いいたします。
○河野構成員 がん治療学会の外科医としての立場で、先ほど藤原先生がおっしゃっていただきましたように、ことしはロボット手術元年でありますので、外科医としても、今、導入に躍起ですけれども、どのがんでいいのか、あるいは長期成績としていいのかは依然としてわかっておりませんので、臨床試験を支援すべきサポートをお願いしたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
ほかに御意見ございますでしょうか。ぜひ、この領域、技術革新で日本が世界をリードできるようなシーズ開発が進められればと思いますし、それはより低侵襲な医療の実現という意味では非常に重要なテーマかなと思います。ありがとうございました。よろしいですかね。ありがとうございます。
では、宮園参考人が御到着されたばかりで恐縮なのですが、(1)のがんの本態解明の部分を先に延ばしておりましたが、もしよろしければ、「(1)のがんの本態解明に関する研究」についての議論に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。宮園参考人、大丈夫でしょうか。
これは8つの大きな柱の中で1番目の柱で、「がんの本態解明に関する研究」ということで、JCRPの中でも、次世代がん、革新がんが連携しながら、お互いの領域でのがんの特性を解明し、その医療技術開発につなげるという部分であります。この部分に関して、資料6-1にこれまでの成果がまとめてあります。
前半5年間の成果は、この資料によりますように、さまざまな成果がある。腸内細菌叢のがん化への関与であるとか、それから、アジア固有のがん種に関するゲノム解析の成果により、新しい融合遺伝子の発見であるとか、それから、ATLの予後予測因子の同定、こういうものが進んできたわけです。一方で依然として、課題としても、次の2ページにいただいていますが、次の新しいシーズを開発するためのPDXモデルとか、まだまだ十分に普及し切れてはいないので、そういったものを使ったモデル系の構築、評価系の構築が重要であろうと。それから、ゲノムだけではなくて、ほかのオミクス情報との統合。とはいえ、がんは非常に多様で、不均一で、可塑性に富んだものであるので、これをいかに克服するか。先ほどの技術的な意味でのリキッドバイオプシーも重要ですが、そもそもこういう多様ながんをいかに克服するかが基礎的な側面から、あるいは臨床的な試料を使ったアプローチが非常に重要だと思います。また、ドライバー遺伝子であることはわかっているのだけれども、なかなか薬の開発が進んでいない領域をどうしていくのか、そういう問題が挙げられています。それから、がんの微小環境の問題、がん組織内でのさまざまな細胞間のネットワークの問題、これが多様性、すなわちがんの治療抵抗性にもかかっている。こういうことが引き続き研究テーマとしては、より強力に進めていくべきだろうという御意見であり、加えて、この中にはシングルセル解析も挙げられております。
以上、この資料の中にまとめられているキーワードをピックアップしましたが、がんの本態解明について、構成員の先生方、何か御意見ございますでしょうか。
今、私の説明の中にもあったのですけれども、本態解明、がんは非常に多くのことがわかってきて、さらにはゲノムの解析の結果から、さまざまなドライバー遺伝子、しかしながら、低頻度な、ロングテールとなるような頻度の遺伝子変異の組み合わせによってできていることから、非常に複雑であることもわかってきたわけであります。そこにどういうアプローチで効果的、効率的なターゲットを見つけていくのかは、機能的な評価法の開発とともに非常に求められるわけです。そのあたりについては、ゲノムが先行していく形ですが、さまざまなオミクス技術を融合したような解析も必要になってくるかと思います。ゲノム医療に関しては、今年度から本格的に稼働しようという状況でありますが、これは基礎研究と臨床研究をうまくマージした非常によい例かと思うのですけれども、こういうものをさらに強化する。さらには、まだゲノムに関してはパネルを中心とした解析ですけれども、将来的には、そこで解決できないような症例がまだまだ5割、6割、7割いるわけで、特に小児希少がんに関しては、パネルだけでは解決できない問題があるので、例えば、ゲノム、エクソーム、そういう領域への展開、あるいはほかのオミクスへの展開が必然の流れとしてあるわけですが、それ以外に本態解明部分で何か御意見ございますでしょうか。
お願いいたします。
○三津家構成員 事前の御意見の中にも幾つか書かれていることではございますが、シングルセルを使ったマルチオミクス解析の研究がここ数年、本当に進んできているわけですけれども、得られたデータをどう解析するか、あるいは解釈するかという課題に対して、もう一段の技術的な取り組みが必要かと思っております。昨今のAIの技術の進展を活用し、得られた膨大なデータをどう解析すれば、出口に対しての糸口をどうつかめるかという観点で、もう一歩先の解析の検討に、AIの活用ということも今後必要ではないかと、このように考えております。
○中釜座長 ありがとうございます。
今、AIの活用という非常に重要なキーワードが出てきましたけれども、まさに膨大化するデータを効率よく解析するためのAIの活用は非常に重要で、そのためのデータのフォーマット化も、これから日本にとっては非常に重要なテーマかなと思いますので、そういうところもキーワードとしたいと思います。
では、議論の材料にするために、宮園参考人から、本態解明について、JCRPの取り組み等について、お願いいたします。
○宮園参考人 資料に幾つか、非常に重要なキーワードを書いていただいておりますので、コメントさしあげたいと思いますが、先ほどからお話があります、シングルセルの解析がどんどん、どんどん進みまして、がんの研究も新しい解析ができるようになったという印象を持っております。その関連で、がんの治療抵抗性の原因と考えられる多様性、あるいは不均一性の理解がどんどん進んでまいりまして、私どももさまざまな情報をまた一段と得られるようになったという印象を得ております。
最近では、今週の「ネーチャー」に小川誠司先生が、加齢に伴って食道がんにいろいろなドライバー遺伝子の変異が起こるといった論文を書かれたり、非常にさまざまな遺伝子の異常が報告されるようになりまして、理解が非常に進んだと思います。
治療に関しましては、やはり免疫チェックポイント療法、あるいは分子標的治療の研究が進みまして、がんの臨床も大きく変わったという印象があります。それに伴いまして、先ほどのシングルセルの解析その他から、がんの多様性、不均一性と関連いたしまして、治療抵抗性になったものに対して、どのような薬剤を使うかということがこれからの大きなポイントとなりますし、それから、委員からいただきました意見の5番目のRASの変異をどのようにこれから治療に向けて開発していくかが今後の大きなポイントとなるかと思います。RASは、ここにありますように、膵臓がんで95%、大腸がんで45%と、さまざまながんで非常に重要ながん遺伝子ですが、これに対する顕著な薬剤はなかなか見つかっていないというのが今の一番の大きなポイントかと思いますが、こういったことにつきましても、今後、新たな治験が出ることを期待しております。
それから、がんのゲノム医療に関連しまして、オンコパネルその他、今、どんどん解析が進んでおりますと、これまで教科書に書かれていたようながん遺伝子、あるいはがん抑制遺伝子の異常が全く別のがんで見つかったり、全く新しいことがどんどんわかってきているというのが現状であります。また、それに関連しまして、AIがオンコパネルにつきましても導入されまして、実際の診断や治療、特に抵抗性になったがんに対する治療についても、AIの技術が非常にうまく導入されている例もありまして、私ども、これから5年間というか、もっと近い将来に大きな治験がいろいろと見つかってくるのではないかと期待しております。
私からは以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
今、宮園参考人から、がんの本態解明が非常に強力に推進された結果、がんの本態が少しずつ解明されていき、その成果として、さまざまな分子標的薬であるとか、免疫療法の開発につながっていったと。ただ、一方で、多様な、不均一ながん細胞に対して、新たなアプローチをさらに強化することによって、打開する可能性はあるのではないかというご指摘でした。それから、既知の非常に有名なRASオンコジウムに対しても、この治療標的は非常に重要な位置づけであるのですが、まだまだダイレクトにターゲットとした治療薬が開発されていないので、こういうものを強化していったらどうかというお話でありました。
どうぞ。
○細井構成員 日本小児血液・がん学会の細井ですが、今、ゲノム研究は非常に進んでおるわけでございますけれども、がん細胞は正常細胞とは異なる代謝を使って生存に必要なエネルギー、代謝性要求を産生していることも最近わかってきておりまして、この現象は1920年代にドイツの生理学者のワーレンべルグがワーレンベルグ効果として主張はしておったのですけれども、近年、がん細胞に特異的な代謝性要求をたたく新たな治療戦略にも提案されておりまして、小児がんの研究の中でも、そういった可能性を報告するものが学会でも出てきておりますので、代謝調節剤が抗がん剤として可能性があるという発表もございましたので、この分野についても目を向けていただければありがたいと思います。
以上です。
○中釜座長 重要な御指摘ありがとうございます。
米田構成員。
○米田構成員 がんの本態解明はいろいろな意味で進んできたと思っています。がんゲノムに関しましてもそうですし、がん細胞を取り巻く微小環境も含めてです。ただ、がんの本態解明という意味では、がんを個人として見るのではなくて、社会として見ると言いますか、がん細胞を取り巻く環境の中でどうがん細胞が生きているのかを捉えるという視点での研究はこれからますます発展していくのではないかと思います。がん細胞が隣にいることによって正常な細胞も変化する、そういうこともわかってきつつありますので、シングルセルの解析もそういうことの理解につながっていくのではないかと思います。例えば、膵がんを治すのが難しいのは、恐らく、がんを社会として見ることができていないからだと思います。がん細胞を取り巻く全ての環境をどう捉えるかということで膵がんを見直していかないと、膵がんの本態を理解したことにはならないのではないかと思います。そういう意味で、がんを社会として理解するというのはこれからの一つの方向性になるのではないかと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
今、御指摘のように、がんを細胞、単一な集団と捉えるのではなくて、社会、あるいはがん組織内の非常に多様なネットワークという理解のもとで、新しい切り口での開発が必要だということですした。実際にAMEDの事業の中でもこの取り組み進められていると思うのですが、この件に関して、今後、社会の理解、ネットワークの理解に基づいた開発研究はどう取り組まれるのか、岩佐参考人から一言お願いします。
○岩佐参考人 AMEDの中では、ネットワークであったり、微小環境とも言ったりはしておりますけれども、そのあたりの理解も含めて、しっかりと進めていく必要性があるのかなと思っております。特に次世代がん事業のほうでは、ある程度幅広く募集しながら進めていく。革新がん事業のほうでは、臨床からのフィードバックを含めて、こういった環境も含めて、公募をしながら事業を進めているところです。
1つ、我々として、今、注目している点を挙げさせていただきますと、実際の臨床の中でも、免疫療法であったり、ゲノム医療という形で大きく動いてきている。それに対して、効果がある場合、ない場合、さまざまあるわけなのですけれども、それが実際、どういうものに基づいて起こっているのかを解明していくことによって、しっかりと開発を回していくことが重要なのかなと思っておりまして、リバース・トランスレーショナル・リサーチを進めていくことも非常に重要なポイントかなと思っています。
○中釜座長 そういった意味では、いわゆるトランスレーションとリバーストランスレーションは相互に強力にマージすると、新しい切り口の展開が見えるかなと思います。
では、堀田参考人からもお願いいたします。
○堀田参考人 今の発言に関連して、これはまではどちらかというと、ゲノム医療にしても、あるいは新しい免疫療法にしても、いわゆる成人を中心にして開発していて、小児とか高齢者はどうしても置いていかれるという現状があったのですが、これから先は、ライフステージを単に年齢で区切るのではなく、その世代の特性をどうやって明らかにして、がんの進展と治療効果を得ていくかを考える必要があると考えます。米田構成員が言及されたようにがんを取り巻く環境すなわち社会の中でとらえなおすという点でライフステージが重要になってくると考えます、例えば、高齢者のがんと言うと、通常の成人の治療がなかなかフルにはできないので、減量して行うというのが大体のコンセンサスになってはいるのですが、本当にそれでよいのだろうかと疑問に感じます。高齢者には高齢者特有のアプローチがもっとあってしかるべきではないか。高齢者のがんは、治療への耐用性が低いので治療が難しいだけなのかというところをもっと明らかにすべきだし、小児、AYA世代についても同様のことが言えるのではないかということも考えますと、ゲノム医療というキーワードは、最先端という言い方はおかしいですが、新薬開発のいわゆるメジャーなところだけではなくて、もっと広げられる。さらに言えば、支持療法とか緩和医療も何となく症状の対応という形に留まらず、これを本当にゲノムの切り口で明らかにすることはできないだろうか。これからの5年間はその方向にも行くべきではないかと私は思っています。
○中釜座長 ありがとうございます。
では、お願いいたします。
○天野構成員 どなたか研究者の方が御指摘されるかと思ったのですが、先ほど資料5で御紹介いただいた、がん研究10か年戦略の進捗評価に関する研究、いわゆる藤原班の研究の中の項目を見ますと、2014年のがん研究費の配分の国際比較が掲載されていて、手元資料には記載はないと思うのですけれども、そちらを見ると、いわゆる本態解明、生物学の部分が、米国が全体のがん研究費の中で24.6%、カナダが45.8%、英国が37.9%、フランスは33.2%であるのに対して、日本の革新がんは3.0%で、日本の次世代がんは17.0%という状況になっていると書いてありました。もちろん、いわゆる出口戦略ということで、私たち患者や家族に届く医療を研究していただくことは非常にありがたいことなのですが、そういった本態解明の部分が予算配分として海外と比較して十分なのかという点は議論されないのかということで指摘させていただきます。
○中釜座長 ありがとうございます。
この部分、重要な御指摘だと思いますが、一方で、本態解明の部分に関しては、より基礎的な科学研究費との連携、そういうものを総合的に見ていく必要があると思うのです。御指摘のように、革新がん、あるいは次世代がんの中での本態解明部分を、リバース・トランスレーショナル・リサーチという点から強化していくことは非常に重要で、今、米田構成員が御指摘のように、がんという複雑な社会を解析していくためには、シングルセル解析が非常に重要な力を発揮しているのは事実ですけれども、これには非常に研究費もかかる。そういうところは強化すべき点で、研究費、財源的な強化も必要だろうとは思います。御指摘ありがとうございました。
藤原構成員。
○藤原構成員 臨床腫瘍学会ではなくて、班のほうの藤原で補足しますけれども、先ほどの中間評価の班による研究費の配分分析なのですけれども、JSPSとか、文部科学省の一部の研究費が今回のまとめの中には入っていないのですね。多くの基礎科学研究は文部科学省の研究費で入っているので、必ずしも3%ではなくて、そこもきちっと見ていけば、もっと大きな額になるとは思いますので、そこだけ御注意願えればと思います。
○中釜座長 後藤構成員。
○後藤構成員 理研の後藤でございます。
今のお話と関連して、特に本態解明の部分については、先ほど来、議論がありますように、ゲノムあるいはエピゲノム情報が希少がん、あるいは希少フラクションと関連がつき、治療法につながるケースが今後もふえてくるだろうと思います。
また、先ほどお話があったRASついては、米国NCIで、RASイニシアチブで結構パワーをかけてきて、大分それらしい蛋白構造標的、あるいは化合物が見えてくるような時代になってきております。両PSが次世代がんと革新がんという形で来ておられますので、特にがんの本態解明に関する研究に基づいた新たな治療ターゲットがどんどん出てくると思われますので、それを革新がんにおける非臨床、臨床試験の部分にぜひつなげるように、次世代がんにおける創薬研究を促進するような施策を強化していただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございます。
今の御指摘に関して、宮園参考人から何かございますか。
○宮園参考人 どうも御指摘ありがとうございます。それから、天野構成員からの御指摘もありましたとおり、次世代がんで10%ぐらい、革新がんはもっと少ない基礎研究となっておりますけれども、基礎研究は学術振興会の科学研究費等で研究をやっておりますので、そことうまく連携をとりながら、シーズが見つかった場合には、あるいは本当にシーズを探すところを次世代がん等でやっていくということで、文部科学省の科学研究費とは切り分けるようにしてやっております。今、御指摘がありましたとおり、RAS等を初め、いろいろと新しい治験が出てきておりますから、それに対して、シーズが出てきたら、ぜひ次世代がん、あるいは革新がんと連携をとりまして、創薬につながるようなサポートをしていきたいと思いますので、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜座長 先ほどの後藤構成員の御指摘も、事業間の連携を効率的に進めることによって、さらに新しい、よりよい革新的なシーズがある可能性があると。ぜひ、そこは、事業体としてよろしくお願いしますという御指摘と思います。
それから、先ほど宮園構成員が御指摘されていた最近の食道がんの事例、これもシングルセル解析が非常に強力な力を発揮した部分であって、そこで見えてきたことは、がんになる前の病変から既に変異が蓄積していると。これが何を意味するかというと、がん化に向かうハイリスクな集団をシングルセルで解析が可能になった、そういう時代ですので、単にゲノム解析や治療だけではなくて、今後、予防への層別化(プレシジョンプリベンション)という方向への可能性も指摘してくれた、そういう事例かと思います。この後の議論になるかもしれませんけれども、予防という観点の重要性におけるゲノム解析、あるいはオミクス解析の展開は非常に重要な視点かと思いますので、つけ加えさせていただきます。
ほかに御意見ございますか。島田構成員。
○島田構成員 今の中釜座長の予防についての御指摘は私も全く賛成であります。がんの発生初期における正常細胞と前がん細胞との関係は、今、トピックスとなっています。これはがん予防にもつながる可能性があり、そこら辺に力を入れていくことも重要だと思っています。
例えば、放射線生物学研究において、低線量の放射線で組織を照射することによって、正常細胞が前がん細胞に細胞死を誘導するバイスタンダー効果が知られています。また、最近はセルコンピュテーション(細胞競合)が注目されていますけれども、免疫系の活性化だけではなくて、がん細胞の周囲の正常細胞を元気にすることによって前がん細胞がはじかれるという研究もあります。
それから、ゲノム解析は、まさしく非常に重要な解析ツールであることはまちがいありません。それに加え、量子科学技術を用いることにより、細胞の増殖・分化が、微小環境の物理的パラメータで規定されることもかなりあることがわかってきています。例えば、微小環境のかたさ、スティフネスが細胞の増殖や分化に関係する。iPS細胞なども、周りの微小環境のかたさによって分化の方法を変えることもわかってきています。そういう意味では、ゲノム研究の大切さに加え微小環境の変化による細胞の物理パラメータを測定することによって、新しいがんの本態解明道が開かれるのではないかと感じております。
○中釜座長 ありがとうございます。
非常に重要な御指摘で、ゲノム、微小環境だけではなくて、非常に広い意味での環境、そういうものとの相互作用、そういう視点も、予防、早期発見という意味では非常に重要なのかなという御指摘だと思います。どういう具体的なアプローチが適切か、詳細は議論していきたいと思うのですけれども、非常に重要な御指摘かと思いました。
ほかにございますでしょうか。よろしいですかね。
それから、先ほどの細胞間の細胞競合みたいな話は、実際、今、AMEDの中で取り組んでいる事業かと思いますので、まさに御指摘の点が、AMEDの事業としても立ち上がっていると思います。これは基礎研究と臨床応用がうまくつながり得るシーズをいち早く取り組んでいるのかなと。そういうふうに、新しい、世界をリードしているようなものをいかに効率的に、早期にピックアップしていくのか、これが非常に重要な活動かと思うのですけれども、その点について、現在のAMEDの取り組みとして、どのようなものがあるか、岩佐参考人から説明いただけますか。
○岩佐参考人 まさに新しい課題をAMEDの中で見つけながら、それをシーズという形でどう実用化に向かって進めていくのかというところだと思っております。現状としましては、特に革新がん事業のほうで、臨床などで出てきた課題を本態解明という形で、課題の抽出、その実態の解明を進めておりまして、そこから恐らく、本来であれば、次世代がん事業のほうでシーズを探索してという形にくるので、そこにつなげていくような形で望ましいのかなと思っております。ただ、逆に革新がん事業から次世代がん事業に還元していくような流れはまだ十分にできていないかなと思っておりますので、次の課題の一つかなと考えております。
○中釜座長 ありがとうございます。ぜひ、そのあたりはよろしくお願いいたします。
ほかに、この本態解明部分に関して、何か御意見、議論が不足している部分はございますでしょうか。よろしいですかね。印象としても、参考人の御意見をお聞きしても、あるいは3人の御意見を参考にしても、非常に効率的に事業間の連携を進めているかと思います。加えて、JCRPと異なる事業との連携を効率的に進めることによって、より効率的に、あるいは新しいシーズ創出に向かっていくのか、サイエンティフィックなエビデンス創出に向かうのかは、ぜひ意識をしながら進めていただければと思います。ほかはよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、続きまして、資料6-4に移ります。「(4)新たな標準治療を創るための研究」についてであります。これは標準治療ですので、しっかりとしたエビデンスを構築するということでありますが、これまでの成果として、肝臓がんに対するラジオ波熱焼灼療法であるとか、それの乳房への応用、それから、QOLを低下させないような運動療法、栄養療法に関する介入研究、それから、CMLに対する新しい治療薬、その予後に関して、どのような内服治療が可能であるか、これまでの標準化された治療をより最適化するような試みは着実に進められていると思うわけであります。
一方で課題として、めくっていきまして2ページ目、3ページ目には、がん患者一人一人が非常に多様な病態を示す中、より最適な治療法を解決すべきだと。標準治療を凌駕するような新しい治療開発の標準化が求められるのではないかということ。それから、粒子線、陽子線、これまでも議論がありましたけれども、そういう新しい治療に関して、市場拡大、あるいはその適用拡大、治療の最適化、そういうものが必要ではないか。それから、治療評価として、ここに書いてある5年生存率だけではなくて、QOL、あるいはQALY、そういうものを導入した新たな評価法の構築の重要性も書かれております。それから、治療だけではなくて、冒頭に天野構成員から御指摘ありましたけれども、支持療法、緩和療法に関する標準化も非常に重要な治療の一要素ですので、進めていただきたい。それから、緩和ケアに関しても同様であります。
革新的医療機器の著しい進捗に加えて、その均てん化に資するさらなるコストダウン、効率化、そういうものの推進、あるいは医療経済的な視点、こういうものも求められるのではないかということで、プレシジョンメディシンだけではなくて、プリベンション、あるいはプレシジョンな支持療法、緩和療法、こういうものも個別化という視点が求められます。先ほど堀田参考人から、そこにもゲノムオミクスというものが介入してやれるのではないかという提案がありました。可能性として指摘され、引き続き推進すべきだという御意見ですが、この標準治療をつくる部分に関して、何か御意見ございますでしょうか。
天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。緩和医療についてですが、AMEDの事業並びに厚労科研でもそれぞれ手当てがされている領域だと思うのですが、AMEDの領域で、単純に研究の数で言うと、緩和医療に関する研究が非常に少なくて、かつ研究の方法論などがまだ確立していないことなどが原因であるという指摘が出ていたかと思いますが、この部分、研究の方法論が未確立であるということで、放置するのではなく、患者がいまだに緩和医療を十分受けられないという現実があるので、これはもっとイニシアチブをとって、しっかり緩和医療に関する臨床試験等を進めていただく必要があるように思います。
以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
この部分に関して、堀田参考人、お願いします。
○堀田参考人 御指摘のとおりだと思いまして、ほかの新薬の開発とか、標準治療の確立に比べると、まだ研究ポリシーがはっきりしない。どういうことを明らかにするか、どういう手法を使うべきかが整理ができていなかったのですが、2~3年前からそんなことに注目して、研究ポリシーをつくる、あるいは臨床試験をどう組み立てるかということを緩和医療とか、あるいは支持療法の中でそれを明らかにできるような研究課題も募集して、ようやくスタートラインに乗ったということですから、これからふえてくると思いますし、今回はまだ評価中ではありますが、応募課題の中には、臨床試験をきちんと組んでやるようなものも提案が幾つかございます。
○中釜座長 そういった意味では、緩和療法、支持療法に耐えるような、きちっとした評価に耐える指標の構築、それに基づいたしっかりとしたコンセプトの構成、それがようやく立ち上がった状況ですので、さらに引き続き推進していただけるとよい、そういうところであります。
一方で、例えば、緩和、がんだと悪液質みたいな場合に、なかなかよい評価系、モデル系がないのも事実なのですけれども、このあたりに関しては、いろいろなモデルの構築というのは研究者から提案されると思うのですけれども、とはいえ、必ずしも広く満足いくものは得られていないと。この部分に関しては、どのようなスタンスで、今後、AMEDとして取り組まれる予定なのか、お聞かせいただければと思うのですが、岩佐参考人。
○岩佐参考人 まだまだ確立していない分野ということで、先ほど堀田参考人からもありましたが、AMEDとして、まずはしっかりとここの分野を重点的にやっているのだということで、フラグを掲げさせていただいて、本当に満足できる高いレベルの研究が必ずしも集まっているわけではないのですけれども、継続的にそこに重点化しているのだということを示し続けることが重要なのかなと思っております。実際にそういったところが功を奏してなのかどうかはわからないのですけれども、特に若手研究者の中では、そういった分野に注目して臨床研究を立ててきている先生方もいらっしゃいますので、そういった取り組みで進めていければとは思っております。評価系の確立ということも含めて、広く取り組みを進めるような形の公募の体制を我々としてはとっていきたいと思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。
では、細井構成員。
○細井構成員 日本小児血液・がん学会の細井でございます。
小児・AYAがんの一定の患者は、治療のかいなく亡くなっておられる患者がいるのも現実でございまして、最近は在宅看取り、終末期医療をして亡くなっている患者も増えてきておりますが、担当していただけるかかりつけ医がほとんど小児がん、AYAがんに関しては地域にはおられないのが現実でございまして、私どもの例では、保護者がたまたま医療者であったとか、地域の診療医と家族ぐるみのつき合いであったというところで在宅終末期医療ができているという現状がございまして、小児がんにつきましても、そういった点も研究といいますか、考えていただければと思います。
 
あと一点は、4番の治療評価についてでございますけれども、ここに書かれているとおり、生存期間中のQOLは非常に重要でございまして、小児がんの場合は、乳幼児期に治療が完了して治癒したとしても、その後、10年、20年、もっと長い年月がございまして、その間に小児期に受けた治療による影響が顕在化してくることがございます。特に放射線治療などでは、成長期に放射線治療を行ったために、再発は防げたけれども、左右不対照の体になるとか、内分泌障害等、いろいろな問題が出てきておりまして、そういったデータを収集して、次の治療にフィードバックをかけていくのに、10年、20年というスパンがございまして、場合によっては研究者の世代を超えて、数世代にわたって研究を続けていかないといけないということがございます。そういった点も考慮いただける長期的な治療研究もひとつ考えていただければありがたいと思います。
以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
今、御指摘の小児がんの場合、希少性、あるいは成長過程によって非常に特殊性があるので、しっかりとした登録制の確立と、それを用いた開発研究、あるいは標的治療開発、そういうものが求められて、基盤が非常に重要だろうというところがまずあるのかなと思いました。
ほかに。どうぞ。
○藤原構成員 日本臨床腫瘍学会の藤原でございます。2点ございます。
先ほどのがん性悪液質ですけれども、私どもの学会も要望書を出したりしておりますけれども、昨年、国内の製薬企業でグレリン様の作用物質でがん性悪液質を治療する医薬品に関しての承認申請をしておりますので、そこの評価の中で一定の臨床評価の方法は今後日本でも固まってくるのではないかとは思っております。
それから、もう一点、これは学会としての意見というより、私が個人的に思うことですけれども、AMEDの研究費も、文部科学省、経済産業省、厚生労働省からの研究費だけだとなかなか頭打ちなので、今後、こういう標準的治療の開発の領域で、私は食品によるいろいろな予防とか治療とかが大事になってくると思いますので、食品を使った科学、特に大規模な前向きの介入試験、例えば、ほかの疾患領域では、スペインが地中海食といって、オリーブオイルが生活習慣病を予防するという大規模な比較試験をしていて、「ニューイングランドジャーナル」などに時々結果を出していますけれども、そういうものをがんの領域で、例えば、イソフラボンという大豆の成分が日本人の乳がんを予防するかどうかを介入試験として、おみそ汁を飲んでもらって、それが将来的に発がんを抑えているかどうかという比較試験などを組んでいくという研究も必要かなと思っていて、そういうところへの研究費の出どころとしては、農林水産省などを巻き込んでいけば、今のAMEDの研究費がさらに広がるのではないかと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
これも予防研究の重要性を御指摘されたと思います。予防研究を効率的に推進するために、先ほど来議論のある適切なバイオマーカーを開発して、集団に対して、きちんと、バイオマーカードリブンな工夫、開発、そういうものが必要なのかなと思いますので、そのあたりもぜひAMEDとしても推進していただきたいと思います。
では、鈴木構成員、お願いします。
○鈴木構成員 鈴木と申します。
2つありまして、今の藤原先生に関連して、運動だったり、栄養については、本当に科学的根拠のないさまざまな情報が飛び交っていて、わらにもすがる思いの患者さんたちが余りにそういうところに手を出してしまうというのがあるので、ちゃんとしたエビデンスに基づくデータが少しでもあればいいなというのはずっと思っていました。それは、今、藤原先生のお話を聞いて追加したかったことなのですけれども、先ほどの支持療法だったり、緩和療法に戻るのですけれども、この点について、治療の評価だったり、指標が今、できつつあるところということで、これは期待したいところなのですが、標準治療がないと言われた後の段階の患者が、標準的に受けられる緩和療法だったり、支持療法は本当に求められていると考えられます。
また、それとは別で、終末期になる前の、がんと診断された時点からの支持療法、緩和療法の標準化された提供もまだまだ進んでいないと思っておりまして、それは患者側の、社会側の理解も進んでいないと思っています。緩和療法と言われた瞬間に、ああ、もう自分は治癒できないのだと思ってしまうという患者がすごく多くいらっしゃって、また、標準治療後の緩和療法も、そこに指標がないがために、それをやって意味があるのかどうかといって、また怪しいほうに行ってしまったりしている患者もたくさん見ています。なので、本当に科学的な根拠に、エビデンスに基づく、標準化された緩和療法を進められれば、治療側にとって進めることも大事なのですけれども、それとともに、社会側が、また医療施設側がいかにきちんと導入していけるかということもともに進めていっていただきたいと考えます。
○中釜座長 ありがとうございました。
大変重要な御指摘だと思います。標準的な緩和、治療法の開発というところにおいて、開発に資するような、きちんとした客観的なマーカー、指標、あるいはQOL、そういうものに基づいた、しっかりしたエビデンスが出るような開発研究を進める、そういう重要性の御指摘だろうと思います。それが治療だけではなくて、緩和、支持、そういうところにも求められるという御指摘かと思います。
ほかに御質問ございますか。お願いいたします。
○山本代理人 産業界、医機連から参りました山本でございます。

粒子線の話についてコメントがあります。治療機器ですので、治療ができることのみならず、安価なものをつくらないといけないことは先程議論いただいた通りとの認識です。
これに加え、治療機器として成熟して参りますと、これらに加え、ワークフローや治療計画等に代表される機器の使い勝手を改善していく研究が盛んになっていくと思われますし、実際欧米の研究ではそこに力をいれているところがあります。また、これらの治療機器で治療したあとの評価に関しても、データをどのように残して分析していくかの研究も大事でありますので、今後の研究の中でそのあたりを強化していただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。重要な御指摘かと思います。
ほかに、この標準治療について。
では、私から1点、先ほど開発研究の重要性を御指摘されたかと思うのですけれども、開発研究の場合は、より層別化された集団に対する開発となってきて、標準的な治療と恐らく相連携するのでしょうけれども、標準治療とは少し視点が異なるのかなと思います。そういった意味で、標準的治療をつくるという領域の研究と、開発的な部分の研究が、現在のAMED支援課題から言うと、標準治療のところにもたくさん課題があるのですけれども、お互いの開発研究との連携という意味で十分なのか、そこはまだ工夫のしようがあるのか、その点に関して、現時点でAMEDとしてどういうお考えなのか、あわせて聞かせていただきたいと思うのですけれども、まず、岩佐参考人。
○岩佐参考人 現段階では、開発中のものと、それを標準的治療にという部分に関しては、ワンクッション置いているような状況があるのかなと思っています。具体的に言いますと、今、ちょうど免疫療法が盛んに行われているという状況ですので、標準的治療の開発の中では、各領域で免疫療法をどう取り込んでいくとより効果的なのかというのが、ある意味、一つのトピックスになっていると。なので、まず実用化できるような形になった上で、次にそれをどう組み込んでいくのかという形になっているのが現状なのかなと思っています。ただ、特に幅広く、しかも効果的に組み込むことができるような新しい薬剤などに関しては、開発中から標準的治療を見越してやっていくことの重要性もあるのかなと思いますので、そこの連携をどうできるのかは、今後少し検討していきたいと思っています。
○中釜座長 そういった意味では、先ほど藤原構成員が御指摘されたリアルワールドデータとか、リアルワールドエビデンスをうまく駆使しながら、開発研究と標準化の優越性をうまく評価する、そういう仕組みは重要かと思うので、そういうデータベースの構築は今後さらに強化すべきなのではないかと思いますが、その点、藤原構成員、何か御意見ありますか。
○藤原構成員 リアルワールドデータは夢ばかり先行しているので、しっかり集めるように、IT環境も日本で整備するとかも踏まえて、総合的にいかなければいけないし、あと、次世代医療基盤法ができて、本当にいろいろなビッグデータが使えるとは言っていますけれども、まだ使い勝手がどうなのかわからないので、健康医療戦略室とかがちゃんと方向性を示していただくとかしていかないと、我々としても、使いたいと思っても、個人情報保護とか、倫理の問題とか、まだ締めつけ感が大きいので、リアルワールドデータをしっかり活用するためには、全府省、いろいろなところが協力して、本当に使えるような体制も一緒にやっていただきたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
そういった意味では、規制というところを意識しながら、開発研究の進め方、データの構築が重要だと思うのです。
では、堀田参考人。
○堀田参考人 今の問題に関しまして、恐らくリアルワールドデータが使えるのは、例えば、エビデンスを前向き臨床研究で出して、それがガイドラインに反映されたものが実際に一般診療の中でどこまで浸透しているのか、アウトカムを見るというところにはすごく効果を発揮するだろうと思いますが、その前段階のところはまだまだ未成熟と思います。私は、いわゆる新薬の開発と、薬事承認後の横展開としての適応拡大とでは開発の性質は全く違うと思っています。むしろ横展開的な適用外薬は、標準的な治療を確立するところに組み込むべきではないかと思っています。いわゆる適用外使用を含めて標準治療をつくるという発想にそろそろ切りかえないと、承認されたもの同士の比較試験では、もう時代についていけないのではないかと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
南構成員、お願いいたします。
○南構成員 今のことと違うことでもよろしいですか。先ほど細井構成員が言われたことに戻ってしまって申しわけないのですが、ここで申し上げるべきかどうか、考えていたものですから。小児とかAYA世代のがんのことでひとつお願いがあります。標準治療というのは、、時代とともに変わっていくわけです、進歩して。現在、二次がんの問題は結構大変な問題で、子供のときにがんをした方が、成人してから、あるいはさらに長じてからがんになったときに、昔受けた治療の影響ではないのかということで、親御さんも含めて大変悩まれるケースをよく伺います。そのときの考え方や患者さん、家族への対応などを、がん対策の中である程度講じていかないといけないと思います。非常に気の毒なケースをよく見ますので、そういうことをぜひこの標準治療のところに入れていただけたらと思いました。
 
○中釜座長 ありがとうございます。
重要な御指摘ですが、この点について、細井構成員。
○細井構成員 小児がんでは標準的治療は、いわゆるエビデンス・ベースド・メディシンということになりますと、まず、臨床試験に時間がかかります。症例数が少ないので、1スタディで5年とか6年間症例登録をして同一プロトコールで治療した症例を集積し、その後さらに、症例登録をクローズしてから観察期間3年くらいはあるということで、最初にデザインした試験結果が出るのが10年後とかいうのはざらにございまして、そういう意味で、標準的治療を現在の小児がん患者に提供しますと、10年、20年前の治療を提供することになってしまいまして、ほぼ全ての小児がん患者は、そういった標準的治療をもとに、現在の薬剤や医療環境で、我々専門医や研修者が、よりよい治療であろうと推測する臨床試験に参加していただいて、患者であるこどもはその恩恵を被るとともに、次の世代にデータを残していただく、そういったことの繰り返しで成り立っておりますので、成人がんの標準的治療と少し意味合いが違うかもしれません。
それが1点と、あと、二次がんは、おっしゃるとおり、抗がん剤治療によって、固形腫瘍でも二次性の白血病が出たり、私自身の経験でも、軟部肉腫の患者に局所治療として放射線を当てたところに、数年後にそこから別のがんである骨肉腫が発生して、それも何とか治したのですけれども、さらに10年後に治療関連性白血病を発症して、結局、亡くなられたと。また、その間にお母さんが若くしてがんで亡くなられ、お父さんも40代でがんで亡くなられた。これは家族性腫瘍の問題でもあるのですけれども、そういったことで、小児がんの場合は、最初のがんが終わって終わりではなくて、治療の影響によって、さらに若年成人になってからがんが発生することがございまして、そういったことも含めて研究をして、よりよい治療体制を提供していかないといけないとは考えております。
 
○中釜座長 ありがとうございました。
先ほどの堀田参考人の御発言で、臨床試験のあり方に関する今後の考え方、あわせて、先ほど岩佐参考人が御指摘のように、これから、いろいろな薬の組み合わせや組み合わせのタイミング、これを全て臨床試験でやっていくのはなかなか困難かなと思うので、そうしたときのデータをいかにして利活用するような仕組みをつくっていくのかが重要かなと思うのです。その点については、堀田参考人、どういうお考えでしょうか。
○堀田参考人 今の法体系の枠の中で、適用外薬を使った、いわゆる標準的治療をつくるような研究はなかなかやりづらいのが正直なところですね。これはもちろん臨床研究法という法律の枠の中でやる必要があるわけですが、今、本気でやろうと思ったら、先進医療Bでしかやれないことになっています。ところが、先進医療は詳細な評価をきちっと審査するので、とても時間がかかって、年にそうたくさんは動かせないという状況の中で、私はこのシステムそのものを見直す必要があるのではないかと思っています。例えば、臨床研究中核病院にはきちっとしたプロトコル作成を支援する仕組み、あるいはARO機能を持っているのですから、そこに予備審査を預けるということを取り入れてはどうかと考えています。最終的にはもちろん先進医療会議で承認しなければいけませんが、そういった仕組みを少し考えていかないと、スピードの面で日本の臨床研究は世界に大きく立ちおくれると思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
ほかに御意見ございますでしょうか。まだまだこの領域は活発な御意見が尽きないかと思うのですけれども、とりあえずここで「(4)新たな標準治療を創るための研究」については議論を閉めたいと思いますが、よろしいでしょうか。
次に、資料6-5、(5)なのですが、この部分は「ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域」で、今度のがん研究10か年戦略が始まったとき、新しい切り口としてスタートした領域かと思います。この領域はかなり議論が沸騰する可能性があると思いますので、少し時間的に余裕がないのかなと思うので、もしよろしければ、十分な時間を残したほうがいいかなと思うので、次回に回させていただけるといいのかなと思うのですが、事務局、いかがでしょうか。少しでもこの議論に入っていったほうがよろしいですか。
○健康局がん・疾病対策課課長補佐 お時間を過ぎておりますけれども、もしも構成員の先生方のお時間がよろしければ、少し御議論いただければと。恐らく、次回の横断的事項の部分もかなり議論が深まるかなと思います。
○中釜座長 わかりました。少し時間は超過してよろしいようなのですが、では、(5)のライフステージの議論に入ってもよろしいでしょうか。では、入らせていただきます。
資料6-5は、「ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域」ですが、ここでは、皆さん御存じのように、小児がん・高齢者のがん・希少がん・難治性がん、こういう非常に重要な課題が扱われております。加えて、最近、AYA世代のがんも重要なテーマとして挙がってきているのですが、資料6-5についての御意見を伺いたいと思います。
資料に目を通していただきますと、先ほど来、議論のありますように、小児がん、希少がん等に関しては、AMEDの研究支援も受け、かなり進んできた部分もありますが、一方で、症例の集約化、あるいはネットワーク化というところで、まだまだ課題もあります。先ほど来、ご発言がありますように、開発研究の難しさもあろうかと思います。さらには、高齢者のがんに関しては、全く新しい切り口も必要ではないかという御意見も出されましたし、難治性がんという非常に広い範囲をカバーするような、しかも現状において適切な治療法が見出せていないがんに関する新たな切り口、革新的医療の開発は非常に重要なテーマであります。4つを一遍にというのはあれですので、まず最初に、小児がんに関して御意見を伺いたいと思います。構成員の先生から、小児がんの取り組みについて、現状での課題、あるいは今後の5年間の目標について御意見いただければと思います。もう既に幾つかは出ているかと思うのですが。
では、細井構成員から、繰り返しになるかもしれませんが。
細井構成員 そうですね。既に申し上げたことが多いのですけれども、この表でいきますと、1番に書いてございますように、小児がんは結構、鑑別診断が難しくて、成人がんの後半5カ年の研究の方向性に書いていただいておりますように、成人がんの複数の遺伝子パネルに、分散されて、ちょっとまた裂き状態になっているようなところもございまして、臨床的に鑑別が必要になることが多い小児がん、AYAがんも入ってくるかもしれませんけれども、それを一括して対象とした遺伝子パネルがあれば便利かなと、小児がんをやっている者の立場では、そういった意見もございます。
それから、2番ですけれども、診断、病理も、画像も、治療方針を出すのもなかなか難しい。症例数が少なくて、経験している医師が少ないということで、方向性のところに書いてございますように、小児がん診断・治療のエキスパートによる中央病理診断、あるいは中央画像診断、治療コンサルテーションシステムといったものを、先ほどのJCCGの中でも運用しております。そういったところで、臨床試験に参加した施設の医師がコンサルテーションして、リアルタイムで答えを出していくということを運営しております。ただ、これも経済的基盤がなくて、一旦施設で診断したものにさらに診療点数をつけることもできませんし、それに加わっているエキスパートの小児がんの病理とか、あるいは画像診断の放射線医、治療医といった方々はほとんどボランティアで本来の職務外にやっていただいているという状況で、システムはつくったけれども、今後、継続的に運用していくのに課題もございます。
 
あとは、先ほど申し上げた二次がん、家族性、遺伝性腫瘍といったところは、我々も今後の課題かと考えております。それぐらいでよろしいでしょうか。
○中釜座長 ありがとうございました。
小児がんに加えて、最近、第3期の計画の中から、AYA世代のがんが課題になってきて、これは恐らく小児がんと成人がんのちょうど間に入ってくるもので、実数の把握を含めて、あるいは対策を含めて、なかなか困難もあるかと思うのですけれども、その部分に関して、現状はどのようになっているのでしょうか。
○細井構成員 AYAがんにつきましては、小児がんとして一般的ながんがAYAの思春期・若年成人に発症した場合と、いわゆる成人の癌が早く若年の方に発症した場合とで、治療については、我々小児血液・がん専門医は前者にはかかわれるのですけれども、後者は成人がんの方にかかわっていただかないといけない面があります。ただ、支援とか、そういった部分では共通の年齢特有の支援がございますので、そういったものは、がん種にかかわらず共通のものがあると思いますので、その辺をどのように切り分けて、成人がんのエキスパートの方と連携していくかというところで、今、私どもの学会、あるいはJCCGでは模索をしているところでございます。
○中釜座長 わかりました。小児・AYAがんに関しては、小児がん、成人がんの連携によるフォローアップの体制の重要性を踏まえた研究の推進が問われる。そういう意味では、しっかりした基盤を持つことが重要かなと思いますが、AYAがんを含めた小児がんの課題について、何か御意見ございますか。
では、天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。今、御指摘いただいたとおりですが、あえて重ねて強調申し上げますと、いわゆるAYAがんは、診療の場においても、小児のプロトコルで治療すれば、より高い確率で治癒が期待できるにもかかわらず、漫然と成人の診療科で成人のプロトコルが行われて命が失われるという例が現状まだまだありますし、また、そもそも、どういったプロトコルを用いるのがいいのか、海外の研究は出ていますけれども、国内では研究の結果が余り出ていないと承知していまして、小児・AYAと、領域的に一緒ににくくられますが、AYAは国内のがん対策でほぼ、精神・心理的、社会的な支援については議論されていますが、治療開発についてはほぼ議論がないというか、研究がされていない状態ではないかと思いますので、この部分は特出ししていただいたほうがいいのではないかと考えます。
○中釜座長 ありがとうございます。
この開発的な部分に関して、特にAYAがんに関する開発に関して、AMEDとしてどのようなお考えなのか、堀田参考人、お願いします。
○堀田参考人 最近の流れとしまして、小児の治療法が成人の治療成績を上げるといった、非常にインパクトのある成績も出ていまして、少なくとも若年成年の白血病については小児プロトコルが有効であることが明らかにされたことから考えますと、小児から若年成人一つのまとまりとして対応する方向性も考えられます。この世代特有の問題点を整理して、例えば、白血病で言えば、JCCG、JALSGCの共同研究はどんどんこれから進めていくべきではないかと思います。それから、フォローアップをどうするかという問題がもう一つあります。ある程度年齢が高くなってくると、小児科の先生はそんなにストレスなく診られるのでしょうけれども、患者さんが小児病院に入るのはどうかという年齢に達したときの対応、両方でどうするかということはこれからきちんと整理して、それを科学的に明らかにした上で切り分けていくのが大事かなと思っています。
○中釜座長 ありがとうございます。
がんの特性という観点からも、AYA世代がんの本態という意味では、研究という視点から何か可能性があるのか、強化すべきなのか、この点について、宮園参考人、何か御意見ございますでしょうか。
○宮園参考人 基礎研究で、ある種のAYA世代のがんなどには、ゲノム解析等で新しいデータが出ておりますので、次世代がんでもいろいろと可能性はあるかと思いますが、こちらは革新がんと連携をとりながらやっていったほうが、やはりどうしてもサンプルを集めるとか、そういったことでハードルが高いと思いますので、そういった工夫を考えていきたいと思います。
実は、私、後藤先生と一緒に骨に関する薬の研究をしていましたが、それが小児の脳腫瘍に効くことがわかったのですが、やはり症例が非常に少なくて、どうやって臨床に持っていくかがなかなか難しいので、そのあたりの体制づくりが非常に重要かと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
ほかにAYA世代がんを含めた小児がんの課題として。細井構成員。
○細井構成員 細井でございますが、ある種の肉腫は、小児といいますか、20歳までが6割なのですけれども、80歳まで、成人の方を含めますと、4割は成人で発生している。しかも、その区切りで生存率を比較しますと、明らかに高齢の方が悪くて、しかも、ここ10年、20年の治療成績の進歩もないということがございまして、小児のほうからは、そういった方は、先ほど言っていただきました小児のプロトコルを成人の方にも適用することで上げられるのではないかという議論と、今、成人高齢者で発する同じタイプの肉腫でも、生物学的に何か違うのではないかと言われる方があって、まだ結論は出ていないところで、その辺は研究の対象になるかもしれないとは思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
ほかに。島田構成員。
○島田構成員 先ほどのJCCGなどのフォローアップのデータベースにつきましては、アメリカのCCSSがきちっとフォローアップし、多くの成果を発信していますので、日本もしっかり長期的に支援するようにしていただきたいと思います。
それから、AYA世代でいいますと、もう8年前になりますけれども、福島の原発の後、超音波検査をしたときに、甲状腺の結節を持ったお子さんがたくさん見つかった。でも、実際は、がん登録などを見ますと、年間大体10名から20名ぐらいの方が死亡しているということですので、明らかに、甲状腺を持ったお子さんの中には、生涯そのまま悪性化せずに、命を奪わないがんがたくさんあると推測できます。そういう意味では、若い世代のときに見つかったがんについて、今後どうフォローしていくのか、治療していくのか、特に、この結節は将来的に悪性になるとか、ならないとか、そういう判断基準ができると、特にAYA世代の場合は、親御さんのこともありますので、非常に重要な研究テーマではないかと考えます。
○中釜座長 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。細井構成員。
○細井構成員 何度も済みません。細井ですが、甲状腺がんのように、早期発見しても治療せずにそのまま天寿を全うする方もあるとかいうがんももちろんございますし、小児がんの中では、神経芽腫ですね。乳児期に、昔、マススクリーニングをやって、大量に診断したときに、ほとんどのものは自然退縮したり、治療しなくても良性化するというものであった。ただ、2%ぐらいなのですけれども、がん遺伝子の増幅があって、治療しないと命を取られるといったものがその中に含まれておりまして、そういったものを無視するのではなくて、見きわめるために、先ほどのリキッドバイオプシーでがん遺伝子の増幅を血清診断するとかいったことを、今、臨床研究でやっているという部分がありまして、そういったものがほかのがん腫にもひょっとしたらあるかもしれないとは思います。
○中釜座長 岩佐参考人。
○岩佐参考人 AYA世代の研究が余りできていなという御指摘がございまして、実際にAMEDのほうでも、AYA世代に特化した研究は非常に数が少ないという状況でございます。ただ、一方で、先ほど来、いろいろな先生からも御意見いただいているのですが、結局、AYA世代特有の病態であったり、そういったものが必ずしもあるわけではないという中で、薬事承認上も、大体は成人と同じ用量等で投与ができる形になってくると、AYA世代に絞ってしまうと、その対象が少なくなり過ぎて、研究として成立しなくなってくる。逆にAYA世代を含む形でいいよと広くすると、どのがんも対象になってき得るという形で、我々、実務上からすると、AYA世代に絞った形での公募は非常にやりにくいなというのが実務的な課題としてあるところで、少し補足をさせていただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。今までの議論にありましたように、AYA世代がんを含む小児がんの開発研究の重要性は御指摘のとおりだと思いますが、これまで十分に手が行き届かなかった部分に関して、どういう対応をとれるかに関しては、研究支援の視点、あるいは小児の症例把握、そのあたりのところから始めて、しっかりと進めていければいいのかなと思います。ただ、重要なテーマであり、このデータでも5年生存率が十分に改善が見られない部分であるので、そのところは登録データベースを踏まえて、改善のほうに進めていければと思いますので、よろしくお願いします。
ほかに、このテーマに関してよろしいでしょうか。
それでは、次のテーマとしては、高齢者のがんですね。これについて御意見伺いたいと思います。高齢者のがんに関しても、3ページ目に委員の先生からの事前の御意見をまとめてありますが、これに関して、どのような研究、あるいは開発が不足しているか、課題として残っているかという部分に関して、御意見をいただければと思います。
この点に関して、AMEDの事業の中でも、高齢者に関する研究支援はやってこられたと思うのですけれども、研究支援の立場から、この領域の課題、困難さについて何か御意見いただければと思うのですけれども、まず堀田参考人からいかがですか。
○堀田参考人 高齢者の研究は成年と違っていろいろ不利な条件があって、併存疾患とか、あるいは身体機能、あるいは認知機能、日常動作、こういったものが必ずしも優れない人が少なくないということです。fitという健康な高齢者でしたら、それは成人の延長で治療できるのですけれども、そうでもない、中間的な病態にある人をどう治療するかが今日の一番の焦点になっています。そういったときに、どういう考え方で研究をやっていくのかは、AMEDの支援で研究ポリシーとして作成されました。それから、高齢者を対象にした臨床試験、比較試験も出てきています。中には非常に進捗がよいものもあるのですが、全体としてはやはり、症例登録が遅延して研究期間が長くなってしまうという問題があります。高齢者の場合は、レジストリと言ってもなかなか難しいところがあって、希少がんや小児がんのような形にはなかなかいかないので、このあたりが研究の課題だと思います。
一方で、先ほどちょっと申し上げましたけれども、高齢者はあくまで年齢を重ねて弱くなった人というだけの位置づけではなくて、高齢者特有のがんの生育・進展のあり方、あるいはがんを取り巻く微小環境、あるいはもうちょっと広い社会環境といったものを深く追求することも一方では必要なのではないかと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
重要な御指摘だと思うのですけれども、そういった観点から、高齢者のがんの特性、あるいはその環境はどの程度解明されて、わかっているという状況なのか、まだまだ全く研究の端緒についただけなのか、そのあたりについてはどうお考えですか。宮園参考人、何かございますか。
○宮園参考人 済みません、私も余りよくわかりません。多分、これもゲノムの研究とかを続けていくと新しい知見が出るのではないかと思っております。AMEDができて大変よいことは、いろいろなプロジェクトが進行しておりまして、今度、老化に関してAMEDでシンポジウムをやられる際に、がん研究から見た老化についてコメントするように私は言われておりますが、逆に我々も老化から見たがん研究ということで、いろいろなプロジェクトの間での交流を深めることによって、新しい視点からの研究ができるのではないかと思いますので、そういった切り口が今後必要かと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
では、岩佐参考人。
○岩佐参考人 少し実施面からの補足をさせていただきますが、先ほどのAYA世代でも、組み入れの部分であったりとか、対象が難しいという話をしましたが、先ほど堀田参考人からも言いましたけれども、高齢者といった場合に、定義をどうするのかというところもあるのですけれども、例えば、組み入れを多くしようと思うと、65歳以上とかという形になると、ほぼほぼ成人と同じような対象が入ってくる。一方で、より高齢、なおかつ臓器障害を持っている方などに限定すると、非常に組み入れに難渋するところで、そこは非常に苦労しているところでございます。ただ、実際に通常の研究開発では、基本的には臓器障害を有しない20歳から65歳ぐらいのところを対象として研究をされていることが多いので、逆に腎障害、肝障害があるような方、80歳以上の方に関するエビデンスはまだまだ、どの領域もないと考えておりまして、そこをどう進めていくべきなのかは非常に課題があると思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。
いずれにしても、今後、高齢化が進む中で、高齢者のがんはどうしても避けられないテーマかと思いますし、それに対して、先ほど堀田参考人が御指摘のように、若い成人のがんと同一のプロファイルなのか、特異的な特性なのかということも含めて、新たな切り口が重要かなと。そのあたりはまだまだ解明し切れていない部分もあるのかなという印象ですので、この部分に関しては、スキームのことを含めて、また検討していければと感じたところです。
ほかに、高齢者のがんに対して、よろしいですかね。ありがとうございます。
それでは、最後のテーマですが、希少がん、難治性がん、この2つの重要な課題についての御議論をいただければと思います。
どうぞ。
○天野構成員 ありがとうございます。1点目は、先ほど堀田参考人からも御指摘あった、いわゆるコモンキャンサーにおいて、頻度が少ないドライバー遺伝子を有している希少フラクションの課題が指摘されたと思いますし、また藤原構成員の研究班の研究結果からも、当然ながら、AMEDの研究費で手当てができていない希少がんが多数存在することは指摘されています。先ほど堀田参考人からの御指摘の趣旨としては、どの希少がんに収録するのかを決めるのはなかなか難しい面があるという御指摘だったと理解しているのですが、例えば、この領域において本当にミゼラブルな状況にある疾患があって、希少かつ難治であるがんがあるわけですので、例えば、がん種を具体的に挙げる形で、全く研究の走っていない領域について研究を進めてはどうかという、素人ながらの考えですが、1点目でございます。
2点目が、本当に希少ながんになると、国内で、実臨床にかかわっている医師ですら数人程度しかいないというがんがあって、そういったがんの患者は研究の成果を得ることもなく、また研究の推進体制も非常に脆弱というか、そもそも研究を進めることさえ困難であることから、ほぼ放置されている状況だと思うのですけれども、そういったがんの中で特に難治のがんについては、AMEDで課題設定をする際に、臨床研究をする上でのサポートも含めた課題設定をしていただくなどして研究を促進していただいてはどうかという提案でございます。
私からは以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
今の御指摘の点、希少がん、難治性がんに対しては、ある程度がん種を特定して、それに関する開発研究、あるいは本態解明研究を推進するというアプローチに関してどうかということですが、AMEDから、まず堀田参考人、いかがでしょうか。
○堀田参考人 数年前から対策上重要性の高い具体的な希少がんを特定して研究課題を募集したので、その点では、かなり手当てできたかと思います。今後どういう希少がんを対象にするか、細かく個別に挙げるのは難しいところがあります。私どもの視点としては、少なくとも患者レジストリができているものを優先すると、こういう考え方です。というのは、患者数が把握できていない、どこに分布しているかわからない、専門家がまとまっていないという状況では開発研究はなかなか困難だろうと考えます。そこで、患者さんが組織化されているとか、あるいはレジストリができているものを優先して採用すると、今回から募集要項に書かせていただきました。さらに少なくて、日本に数例しかないものに関しては、恐らく日本だけでは解決しなくて、国際共同でレジストリをつくっていくことを今後進めていくべきと思っています。
○中釜座長 ありがとうございます。
その際に、レジストリをつくる基盤の費用をどう捻出するかという問題がもう一つ残るかと思うのですけれども、そのあたりは、国全体としての何らかの方針を掲げていく必要があるのかなと感じますので、ぜひ考慮していただきたいと思います。どういう体制が可能なのかということです。恐らく、公的研究だけではなくて、企業の参画とか、さまざまなステークホルダーの協力をもって構築していく必要があるのかなと思います。
ほかに、希少がん、難治性がんに関して、何か御意見ございますでしょうか。後藤構成員。
○後藤構成員 昨年度のPMDA科学委員会で、希少疾患、特に希少がんについての定義、人数や希少フラクションなどをどういう形で考えていくのか、色々と議論をしてその結果を科学雑誌に投稿しております。きょうは上田参考人が来ておられないので、次回にこの部分もご紹介していただくと、もう少しディスカッションが進むのではないかと思います。基本的に当時話し合ったのは、「どういう形でレジストリを作成し患者ゲノム情報とリンクさせていくのかという話と、希少ということは人数が少ないということなので、臨床試験に対する統計学的手法をどういう形で持っていって、有用性、有効性を規定するか」などです。そこら辺についてはまた次回に議論させていただければと思います。
○中釜座長 重要な御指摘ありがとうございます。議論できる範囲については、次回以降で議論したいと思います。
ほかに。藤原構成員。
○藤原構成員 希少がんの開発に関しては、せっかく全国がん登録がこれからデータを出し始めますので、その辺とちゃんと連携して、あとは私どもの中間評価で使ったCSO分類も恒常的にAMEDで活用していただいて、どのがん種にどのぐらいの患者数があって、どういう地域分布をしているかをリアルタイムに把握しながら、どこに研究のリソースを振り分けていくかを考えていただければと思います。
それから、レジストリ研究について言えば、事業は違いますけれども、CINの事業で、今、国立国際の國土理事長を中心とした班が全国のレジストリを把握されていますから、そこできっちりと把握した上で、こういう開発に使えるものはどこか、そっちの事業と革新がんの事業が連携しながら進めていけば、より効率的に進むと思います。
あと、先ほど堀田参考人がおっしゃっていましたけれども、こういう領域は国際共同が非常に大事で、例えば、肺がんであればロスワンダーズというROS1の変異を持った人たちが全世界から集まって開発に参加するということが前例としてありますので、希少がん、難治性がんの領域でもしやっていくのであれば、国際共同研究にちゃんとサポートできるような研究費の確保が大事かなと思います。
最後に、この領域は、AMEDは、IRUDでしたか、非常にまれな疾患をいろいろ詳しく解析する仕組みをほかの事業で持っていらっしゃるので、例えば、希少がんの中でも超希少がんに限って言えば、ホールゲノムとか、メタボロームとか、全部やるようなプロジェクトも包括的につくっておいて、それを恒常的にやっていけば、10年後、20年後につながるのではないかとは思います。
以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
ほかに御意見ございますでしょうか。
希少、あるいは難治性がんに関しては、特にアジア地域、日本に固有な、ATLもそうですし、胃がんの中でもスキルス胃がんもそうですが、そういうものに関して、日本が世界をリードできる開発研究をして、そういう患者に適切な薬を届けることができる、そういう領域かと思うので、そういうものに関して、先ほど天野構成員から御指摘あったような、AMEDの事業の中でも一部がん種を特定して、戦略的取り組みなども必要かなと思いました。
そのためには、希少がゆえに、難治がゆえに、レジストリを構築するのが重要だろうと思います。恐らくそれには、ことしから構築されるがんゲノムのデータベースと診療情報をうまく結びつけていくことによって、患者、症例の把握がやりやすくなってくるときに、希少、難治の症例を持った研究者、医師が、そのデータを使うことによって、レジストリとして展開していくことは可能性としてあるのかなと、思った次第です。
ほかによろしいでしょうか。希少がん、難治性がんに関して、これまでの5年間を振り返って、課題として残っている部分、あるいは取り組んでいる部分。よろしいですかね。
それでは、どうもありがとうございました。以上で本日用意させていただきました資料1から資料6までについて、いろいろ活発な御議論をいただきました。本日の議事に関しては、ここまでとさせていただきたいと思います。
最後に、事務局から連絡事項等、お願いいたしたいと思います。
○健康局がん対策推進官 本日は長時間にわたり御議論いただきまして、まことにありがとうございました。本日いただいた御意見につきましては、座長と御相談の上、事務局でまとめさせていただきたいと思っております。その際、構成員の先生方にも御連絡することもあろうかと存じますので、改めてよろしくお願い申し上げます。
次回の会議の日程につきましては、追って御連絡をさせていただきますので、これもよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
○中釜座長 本日はどうもありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

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