第1回非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会 議事録

厚生労働省健康局がん・疾病対策課

日時

平成31年1月9日(水)17時~19時

場所

厚生労働省 11階 共用第8会議室

議事

 
○安井がん・疾病対策課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより「第1回非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まり頂きまして、誠にありがとうございます。私は事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の安井と申します。座長が決まるまでの間、進行を務めさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。
それでは、初めに、本検討会の開催に当たりまして、健康局長の宇都宮より御挨拶申し上げます。
○宇都宮健康局長 皆さん、こんにちは。本日は年度当初の大変お忙しいところ、お集まり頂きまして、誠にありがとうございます。また日頃より、脳卒中・循環器病対策を初めとして、健康行政に御協力いただいておりますことを、この場をお借りしまして、厚く御礼申し上げます。
さて、先生方も御存知のように、日本人の死因の第2位が心臓疾患、第3位が脳卒中で、両方を合わせますと、介護、要介護になる原因疾患の第1位ということで、大変重要な疾患です。これらに対しまして、一昨年7月の「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」の報告書、あるいは昨年の4月に取りまとめました「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ」の報告書に基づいて、循環器病対策を進めてきたところです。これも先生方が御存知のように、先月14日に、「脳卒中、心臓病その他の循環器病対策基本法」が国会を通り、公布されました。今後、それに基づいて、脳卒中、循環器病対策を進めていくことになったわけです。その法律の中におきましても、基本的施策の1つとして、「情報収集提供体制の整備」が掲げられていますので、本日はそういった診療情報の活用の在り方について御意見を頂戴するということです。是非、忌憚のない御意見を交わしていただいて、より良い「脳卒中、循環器病対策行政」に資するために、御期待申し上げておりますので、よろしくお願いいたします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 なお、宇都宮局長においては、公務のために退席させていただきます。
続きまして、構成員の皆様方の御紹介をさせていただきます。恐縮ですが、お名前を呼ばれた際に御起立いただき、一言御挨拶を頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。なお、御所属等につきましては、資料1の裏面の名簿をもって代えさせていただきます。井上美枝子構成員です。今村知明構成員です。小川久雄構成員です。永井良三構成員です。羽鳥裕構成員です。林修一郎構成員です。丸山英二構成員です。宮島香澄構成員です。山本隆一構成員です。横田裕行構成員です。なお、本日は、小松本悟構成員、山本晴子構成員より、御欠席の御連絡を頂いております。また、本日は参考人として、九州大学大学院医学研究院脳神経外科の飯原弘二先生、国立循環器病研究センター副院長の豊田一則先生、日本病院会副会長の万代恭嗣先生、国立循環器病研究センター副院長の安田聡先生に御出席いただいております。
続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。健康局がん・疾病対策課の佐々木です。同じく丸山です。同じく川名です。どうぞ、よろしくお願いいたします。
それでは、資料の御確認をお願いいたします。議事次第、座席表、資料1~8、参考資料1~4、また構成員には机上配布資料を用意しておりますが、未発表データが含まれるため、お持ち帰りにならないようにお願いいたします。資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申出ください。以上をもちまして、カメラを納めていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いします。
それでは、議題1に移ります。本日は最初の検討会となりますので、座長を選任いただきたいと思います。資料1の本検討会の開催要綱を御覧ください。3.その他(2)におきまして、「本検討会には、構成員の互選により座長を置き、検討会を統括する。」とされております。構成員の互選により座長を選任していただきたいと思いますが、どなたか御推薦いただけますでしょうか。
○羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥です。いろいろな経験、実績を踏まえて、永井先生を推薦したいと思いますが、いかがでしょうか。
○安井がん・疾病対策課長補佐 ただいま、永井構成員の御推薦がございましたが、そのほかいかがでしょうか。
それでは、永井構成員に本検討会の座長をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
全員一致のようですので、永井構成員に、本検討会の座長をお願いいたします。座長席へお移りいただきまして、今後の議事運営をお願いいたします。
○永井座長 自治医科大学の永井でございます。今、大変重要な局面にあるかと思いますので、是非、積極的に御発言いただいて、良い報告書をまとめられればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 ありがとうございました。この後の進行は永井座長にお願いいたします。
○永井座長 それでは、まず議題2に移ります前に、検討会の目的及びスケジュール等について事務局から御説明をお願いいたします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 事務局でございます。お手元の資料1及び資料2を御覧ください。資料1の1.趣旨ですが、循環器病は、先ほど局長の宇都宮からも紹介しましたとおり、国民への影響が大きい疾患群です。さらに、一昨年7月に公表された報告書でも、データベースについては引き続き検討していく必要があるとされています。このような状況を踏まえ、2.検討事項として、(1)循環器病の診療実態の把握の現状と、それを踏まえた診療実態の把握の体制(データベース等)と診療情報の活用の在り方について。(2)既存のデータベースと連携した循環器病の診療情報の活用の在り方について検討いただきたいと考えております。
検討会のスケジュールに関しましては、資料2を御覧ください。本日第1回の検討会を開催しております。今回は議事次第にございます議題について、議論を予定しております。第2回検討会を年度内に予定しており、その際に第1回検討会における議論の整理について、既存のデータベースと連携した循環器病の診療情報の活用の在り方についてを議論する予定案としております。その後、来年度に2、3回検討会を開催し、夏頃をめどに報告書を取りまとめる予定としております。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございました。
それでは、議題2「循環器病の診療実態の把握に関する現状と課題について」に移ります。資料3~7について一括して御説明を頂いた後、議論をお願いいたします。では、資料3の説明を事務局からお願いいたします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 お手元に資料3を御用意ください。こちらは、循環器病の診療実態の把握に関する現状と課題ということで、総論的に整理したものです。スライド2ですが、WHOでは、非感染性疾患NCDsの4つの主なタイプとして、循環器病、がん、慢性呼吸器疾患及び糖尿病を上げており、これら4つの主要なNCDsは、大部分はタバコの使用、不健康な食事、身体の不活動、過度なアルコール摂取といった不健康な生活習慣により引き起こされるとされております。
スライド3を御覧ください。世界では、NCDsで毎年約4100万人が死亡しており、死亡原因の71%を占めます。4つの主要なNCDsの1つである、循環器病は、世界では非感染性疾患の死亡原因に占める割合が最多であり、毎年1790万人が死亡しています。
スライド4ですが、我が国の循環器病に関する統計です。心疾患は我が国の死亡原因の第2位、脳血管疾患は第3位であり、両者を合わせた循環器病は、がんに次ぐ死亡原因です。
スライド5を御覧ください。我が国の介護が必要となった原因として、脳血管疾患が16.6%、心疾患が4.6%であり、両者を合わせた循環器病は21.2%と、介護が必要となった原因に占める割合は最多です。
スライド6ですが、我が国の平成28年度、傷病分類別医科診療医療費は、30兆1853億円ですが、そのうち循環器系の疾患が占める割合は19.7%と最多です。
スライド7を御覧ください。平成30年12月14日に公布されました「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」におきましても、基本的施策の1つとして、情報の収集提供体制の整備があげられております。
スライド8ですが、このように循環器病は社会的な影響、医療費への影響が大きい疾患群であり、循環器病の対策には、正確な診療実態の把握が必要ですが、既存のデータベースでの把握には限界があると考えられます。
スライド9を御覧ください。循環器病の診療実態を把握する体制、データベース等の現状を簡単にまとめたものです。循環器病の診療実態を把握する取組には、患者調査、関連学会、研究者の取組、そのほか診療報酬に関わるレセプトデータや、DPCデータなどがあります。患者調査は、病院及び診療所を利用する患者について、その傷病の状況等の実態を明らかにし、医療行政の基礎資料を得ることを目的としたものです。調査の時期は入院及び外来患者については10月中旬の3日間のうち医療施設ごとに定める1日であり、各疾病の総患者数の推計値等を把握することが可能です。ただし、季節変動については、把握しきれていません。脳卒中領域の代表的な取組として、この後、豊田参考人から御紹介いただく日本脳卒中データバンク、同じく飯原参考人から御紹介いただくJ-ASPECT Studyがあります。また、心血管疾患領域の代表的な取組として、この後、安田参考人より御紹介いただく日本循環器学会の循環器疾患診療実態調査JROADがあり、2013年度以降、全ての学会専門医研修施設・研修関連施設が参加しているものです。このほか、一部施設を対象とした電子カルテ情報を統合したデータベースの開発などがあります。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。続いて、豊田参考人から資料4の説明をお願いします。
○豊田参考人 よろしくお願いします。国循の豊田ですが、日本脳卒中データバンクの説明をさせていただきます。資料2ページに書いてあるように、脳卒中データバンクは患者個票を用いた疾病登録事業であり、全国の中核病院が任意に参加する登録です。1999年、当時、島根大学の第3内科の教授をされていた小林先生が厚生科研として、この研究を始められ、2015年、小林先生の島根大学学長退任に伴い、国循に運営を移管して、フォーマットを新しく整備し直して、現在に至っております。
3ページ、このデータバンクは、もう20年近くになるのですが、これまでにどんな実績があるかと申しますと、まず、これは3、4年ごとに、登録している各施設で成果を分担して執筆して、書籍として出しております。一番新しいものは2015年で、この段階で13万例ぐらいのデータからその結果を示しております。また、国内のこういった書籍とは別に、海外の英文の原著論文としては既に20を超える論文が出ております。書いてあるとおりでございます。
4ページ、ほかに、どういうことに利用されているかといいますと、治験、例えば、臨床試験におけるヒストリカルコントロールとして用いられております。例を挙げますと、我が国では2005年にt-PAが脳梗塞の適用を通りましたが、これは実薬のみの単群の臨床試験でしたので、その際の正常対象群としてはデータバンクの脳梗塞の患者を用いておりますし、また、その下に高脂血症とスタチンの研究が書かれていますが、これもJ-STARSという国内多施設の非常に大型の臨床試験でしたが、その試験を組む際のデータの参考にもなっております。厚労省の検討会等資料などでも適宜データを提供しております。
5ページ、データバンクの推移です。「1999年に島根大学小林先生の厚労科研として発足」と書いてありますが、細かいことを申しますと、その前に国循の山口班で、1年かけて全国の1万7,000名の脳梗塞患者を紙ベースで集めて、J-MUSIC studyという共同研究をやっております。これは紙でやったのですが、それの成果を基に小林先生が、これも電子入力でやろうと言ってやり始めたのがデータバンクの始まりです。2015年に当院に移管するに当たり、新しいものに代えようということで、既存のレジストリを分析して問題点を抽出し、新システムを設計しました。既存のレジストリも簡単に申し上げますが、6ページ、世界全体でいろいろなレジストリがあります。これは、2017年当時に原著が3編以上あるレジストリを世界中から集めましたが、こんなにあります。
7ページ、世界地図で、各地域の人口とアクティブなレジストリの数を見ましたら、アジアはこれ程の人口を抱えているにも関わらず脳卒中レジストリの数としては、他国、特にスカンジナビアなどと比べるとまだ十分にレジストリが行われていない状態です。こういったことを踏まえて、8ページ、新しいデータベースを構築するに当たり、データの収集方法、外部の公的データベースとのリンク、そして、フィードバック、そういうものに気を使って新しいシステムを作りました。
9ページのデータ収集方法です。9ページの一番下に書いてあるように、収集したデータは、国循の4階層ネットワーク内の第3層、かなり安全な深い場所に保存されて適切に管理されています。従来から脳卒中データバンクは、個票で、かなり細かな項目まで書き上げていくデータベースでしたが、新しいシステムに移行するに当たり、その中で特に大事なものだけを抽出して、非専門的な施設も参加できるように、より簡単なデータベースと、従来の複雑なというか非常にデータ量の多いデータベースと、二階建て構造でシステムを運用しようと考えております。10ページ、外部データとのリンクに関しても、十分できる体制を国循の循環器医療総合情報センターで構築しています。
11ページに移りますが、新システムは2015年に当院に移管されて、2016年から新しいシステムを作っております。ホームページでも公表しております。12ページに、ワークシートの最初のページを書いておりますが、詳しい項目としては120項目程度を埋めるような詳しいデータベースです。その中で50項目を埋めれば、このデータベースとしては完了できるということで、この50項目はかなり簡単です。更にその中の12、13項目を抽出した、よりベーシックなデータベースも考案中です。
13ページ、フィードバックですが、参加された施設、2016年以降アクティブに動かれている施設に対して、まず全体のデータ解析結果をホームページで公開しております。また、参加施設の中で、今、それぞれの施設がどれぐらいのアクティビティーを持っているかというベンチマーク情報を各施設に提供しております。登録数ですが、大体100施設ぐらいから年間1万件程度が登録されており、2018年段階では19万件の急性期脳卒中の患者が登録されております。
最後、15ページです。このデータバンクのストロングポイントと弱点を書いておりますが、良くも悪くも個票を使ったデータですので、良い点としては、正確で詳細なデータが集められます。ただし、個票ですので、入力に関しては一定の作業量を要するので、それが問題であろうと思います。以上ですが、御報告させていただきました。
○永井座長 ありがとうございます。続いて、資料5について、飯原参考人からお願いします。
○飯原参考人 皆さん、こんにちは。九州大学の飯原でございます。本日はJ-ASPECT Studyの概要を説明いたします。スライド2に、これまでのJ-ASPECT Studyの経緯を一覧として書いております。これは2010年に厚生労働科学研究事業として、日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会の学会協力の下に開始しております。その後の流れについては、追って御説明させていただきます。
スライド3を御覧ください。私たちは最初に、日本版の脳卒中センターの推奨要件を策定しました。この推奨要件はスライド3の右半分に記載しておりますが、この25項目を各施設が各々何項目を充足しているかを算出して、Comprehensive Stroke Center Score(CSCスコア)と名付けました。このスコアは施設の包括的な脳卒中の診療能力と考えられます。このスコアを地域別、経時的に検討することで、スライド4に示すように、地域別の脳卒中医療の均てん化の推移を可視化することが可能となります。さらに、私たちは本邦初のDPC情報を活用した脳卒中データベースを継続的に構築しています。スライド6では、CSCスコアで示される施設の脳卒中の診療能力が脳卒中患者の死亡率に関係することを報告しました。さらに、スライド8に示すように、都道府県別に参加施設のDPC情報を解析することにより、急性期脳卒中死亡の可視化を行うことができます。登録施設は毎年約400施設程度、累積登録件数は2012年の時点で約30万件です。机上の配布資料のスライド3には、2016年時点での累積登録数を書いていますが、これでは71万件に及んでいます。
スライド10を御覧ください。我々は脳卒中の医療の質に関する文献のシステマティック・レビューを行い、本邦の実情に応じた評価指標を策定しました。スライド11がその策定した結果です。
スライド12を御覧ください。策定した指標の継続的な収集を可能とするプログラムを開発し、我々はこれをClose The Gap-Stroke Programと命名しました。これは、イメージとしては、アメリカのGet with the Guideline Strokeに相当するものです。脳卒中センターの認証に特化した評価指標を収集するために、もともと収集したDPC情報をプリセットして、指標の算出に必要な情報のみを追加入力する収集プログラムを開発しております。スライド13に示すように、昨年、まず脳卒中領域で施行しております。rt-PA静注療法と血栓回収療法を行った脳梗塞症例のみを約8,800例収集しました。スライド14に示すように、評価指標を測定することで、今後、脳卒中医療の質の改善が強く望まれる項目を明らかにすることができました。同時に私たちは、計測した臨床指標を参加施設にフィードバックすることで、2010年以降、自発的な改善をもたらすベンチマーキングを毎年行っております。スライド16に示すように、現在、超高齢社会の到来に伴い、日本の救急搬送件数は激増しております。それに伴い、病院収容までの時間が大幅に増大しているという問題点があります。
スライド17を御覧ください。皆さん御存じのとおり、脳卒中は時間との戦いです。病院前救護情報と院内情報とを連結することによって、脳卒中医療のアウトカムを向上させるためのボトルネックがどこにあるかを明らかにすることができます。幸い、我々は総務省消防庁の病院前救護救急搬送データを頂き、これとJ-ASPECT Studyの院内データを連結することで、脳卒中医療のあるべき集約化について提言を行っています。脳卒中と循環器領域とは、大規模データベースを活用することで、両領域の専門家が、より効率的にクロストークすることが可能となります。これはスライド18に記載しております。
最後です。J-ASPECT Studyの特徴は既にお話したとおりですが、スライド19、20にまとめております。私たちは、これまで脳卒中医療体制の整備、医療の質の改善をもたらすために多様なデータベースを構築しております。DPC情報以外の情報との連結可能性を既に示しており、データの拡張性は検証されております。一方、limitationとしてはselection biasが存在すること、DPC情報に含まれていない検査情報、画像情報などは別途収集する必要があること、また、長期フォローアップデータが欠損していることなどが挙げられます。以上です。御清聴ありがとうございました。
○永井座長 ありがとうございます。続いて、資料6について、安田参考人からお願いします。
○安田参考人 国立循環器病研究センターの安田です。JRORD/JROAD-DPCについては、私から紹介します。我が国における循環器病疾患が大きな問題であることは既に資料3に示されているとおりです。その死亡・後遺症は、大きな社会的問題であり、その発症予防、重症化予防のために循環器疾患の登録の整備が求められてまいりました。
スライド3です。循環器疾患診療実態調査、略称JROADですが、大きな特徴としては、日本循環器学会と国立循環器病研究センターが共同でこの研究を行っている点です。かつ、調査への回答が施設要件となっているため、循環器専門医研修施設・研修関連施設1,300余りからの回答率は、この数年、100%を達成しています。
スライド4に、JROADデータの一部を示しております。心筋梗塞症の年間入院患者数は約7万人前後で推移していること、心不全の入院患者数は増加傾向にあり、2017年度には26万人を超えていること、これらの院内死亡率は約8%であること、さらに、中ほどにありますが、急性大動脈解離の年間入院患者数は2万人を超え、院内死亡率は10%と、心筋梗塞あるいは心不全を凌駕しているという全国レベルの実態を明らかにしてまいりました。患者レベルの調査が課題でしたので、スライド5に示すように、2014年度よりJROADの枠組みを使ってDPC情報を収集し、新たなデータベース、JROAD-DPCを構築しました。これも日本循環器学会と国循との共同研究として行ってきております。先行研究としては、先ほどの飯原先生からのJ-ASPECT研究があります。
スライド6に示していますが、JROAD-DPCでは4年間延べ360万件に及ぶ診療録情報の解析データセットが蓄積されてきており、心筋梗塞症例は計16万件、心不全は50万件が、各々データとして含まれております。これらのビッグデータを活用した研究課題がAMEDの研究事業として数多く採用されてきております。
スライド7です。DPCは日本版Case Mixに相当し、診療報酬と紐付けされるとともに、このスライドに示すように、多様な診療録情報を有しております。さらに、2014年4月からは、外来のE/Fファイルも加わっております。
スライド8です。医療の質をquality indicator(質指標)により定量的に評価し、改善のサイトに載せる試みが、既に欧米を中心に行われております。スライド9になりますが、これは米国における心筋梗塞診療におけるquality indicatorです。我が国においては、これまでに全国的な調査はなく、JROAD-DPCを用いて検討しました。
スライド10です。アスピリン、β-遮断薬、レニン-アンジオテンシン系の阻害薬、スタチンの退院時処方率を低いものQ1から高いものQ4まで、病院ごとに4つのグループに分けて、院内死亡率との関連性を検討しました。ガイドラインで推奨されている薬剤の処方率が高い病院(Q4)ほど院内死亡率が低いという結果が得られております。
スライド11です。これまでに各ご施設、学会会員からデータを提供いただき、事務局(国循)にて解析という段階を経てまいりましたが、その後、データをフィードバックし自施設の位置付けを可視化していただく、あるいは、学術公募研究にデータを活用していただくという次の段階に現在は進んできております。スライド12になりますが、これはJROADを各ご施設にフィードバックするようになってから、4年間のガイドライン推奨薬剤の処方率の推移を示しております。アスピリン、β-遮断薬、スタチン、これら重要な薬剤の処方率が年々上昇傾向にあることが示されております。
スライド13です。各都道府県にもJROADが認知されるようになってきておりまして、それらの医療政策にそのデータが活用されるようになってきております。岡山県、兵庫県、神奈川県、岩手県などにデータの一部を提供し活用していただいております。
スライド14です。このように、JROAD/JROAD-DPCのデータ活用が進んでいる一方で、課題もありますので、最後にまとめさせていただきます。第1に、同一病院の入院による再入院に関してはDPCによる追跡が可能と考えられますが、他施設に移動した場合に関しては困難である点が挙げられます。スライドに示すように、この循環器疾患では、軽快と増悪を繰り返しながら進行するということが癌との大きな違いですので、横断的な分析に加えて縦断的なデータが非常に有用だろうと考えられます。
そのほか、2番目の項目ですけども、DPCにおいては、一般的な臨床分類と、DPCにより可能な分類に解離がある点。症候バイタルサイン、臨床検査データが欠如している点。そして、DPC以外の病院・クリニックに関しての情報については別途、収集する必要性がある点。重症度の指標についての情報に乏しい点。これらが現状の課題として挙げられるのではないかと思います。私からは以上です。ありがとうございました。
○永井座長 ありがとうございました。ここまでは、既存のデータペースを中心に御紹介いただきました。続いて、電子カルテを用いてデータベースをいかに集めるかについて、資料7を用いて、私自身の取組を御紹介いたします。「ImPACT」というのは、現在も行われている内閣府のプログラムで支援されているプロジェクトです。電子カルテを使って患者さんの予後を、できるだけ個別に予測したいということで、ビッグデータ収集を始めております。2ページの図ですが、循環器疾患とがんの違いについて、先ほど安田先生から御説明がありました。循環器疾患の場合は、入院、外来を年余にわたって縦断的に診ていく必要があること。さらに、重篤な発作を予測するには、様々な前提条件。我々の場合には特にカテーテル検査の所見を含めて、血液検査あるいは処方を分析しようということで研究してまいりました。
次に図の3を御覧ください。対象としているのは、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)で、年間数十万人、数百万人が発症しています。特に、冠動脈検査が年間50万件、カテーテル治療が25万件で、1回の費用が120~230万円ということで、この辺りの位置付け、意味、意義、あるいは医療経済的な評価が必要になります。こうした病気の場合には、どうしても冠動脈の状態を踏まえての話になりますので、カテーテル検査のレポートをしっかりデータベース化しないといけないわけです。私たちは、日常の仕事をしながらレポートが集まる仕組みを、私自身、東大病院にいたときに作ってまいりましたが、これを今は5大学、7病院で展開をしております。それが5ページです。
カテーテル検査のレポートやカテーテル治療の内容は非常に複雑で、各病院で全く標準化されておりませんので、それを標準化すること。そして6ページにありますように、主なベンダーがいろいろありますが、今は異なる電子カルテがつながらない状況ですが、これをつなげる仕組みにSS-MIX2を使っておりますが、それと異なる電子カルテレポートを標準化してつないでいき、多目的な臨床データ登録システムに入れていきます。これは悉皆調査を目的としたものではなくて、専門病院で非常に細かいデータをできるだけたくさん集めて、そして心臓病のハイリスク者の可視化・層別化、予測、個別医療に結び付けることを目的としています。
次に7ページです。検査情報としては検体検査だけではなくて、心電図、心エコーも、日本循環器学会で標準化した仕組みで集めるようになりました。その他、処方情報、更にアウトカム情報、イベントが起こったかどうかもフォローできるように、専門病院で体制を組むということです。取りあえず、今日報告するのは図の8ですが、2013年4月から2018年5月までに5施設のカテーテル治療症例を集めております。9ページが、カテーテル治療を行った症例数です。この表には国立循環器病センターも入っておりますが、かなり簡単に8000件ぐらいのデータが集まってまいります。匿名化をして、時系列分析ができます。資料10は、一部のデータに実に様々なデバイスが使われています。しかし、これはほとんど評価されないままで、新製品が出ると使っている状況です。この辺りも、こうしたデータをいつか分析をして、本当に意味のあるデバイスを使わないといけないと思います。
11ページは、5つの病院で、BMSというのはベアメタルという薬の塗っていないステントで、DESと書いてあるのは、Drug Eluting stentで、薬の塗ってあるステントで、治療の方法がA~Eの施設間で非常にばらついています。その辺りの標準化も、今後必要だと思います。12から14の図については、傍聴の方にはお配りしていませんが、少しデリケートな内容があります。例えば、被曝量について2つの病院の比較ですが、かなりの被曝が起こっていますので、この辺りも評価が必要です。図の13は造影剤の使用量で、これによっても腎障害が起こり得ますので、この点も標準化をどうしていくかということです。さらに、図の14には、カテーテル治療を受けた患者さんの処方薬の種類ですが、何と32種類の方もいるという実態が見えています。さらに、図の15は、データが時系列化できますので、入院期間中だけではなく年余にわたって、どういう検査所見の経過を示すかとことで、例えばBNPという心不全の指標、あるいは16ページの図は、コレステロール管理に重要なLDLコレステロールのレベルですが、これは波線の間が理想とされていますが、それを超えている方々がたくさんいることが分かります。さらに図の17を見ますと、これは製薬企業の方にとっては関心があると思いますが、コレステロール治療薬が、どんな種類のものがどのぐらいの頻度で使われているか、マーケットリサーチが可能です。さらに、18、19ページを見ていただきますと、カテーテル治療を行って1年後以降で様々なイベントがどういう前提条件の下だと起こるかという確率が定量化できます。最後の図の20は、こうした評価、予後予測が確率として出てきますと、これまでのような集団で見ていく方法ではなくて個別に、この方は何パーセントぐらいの確率でこういうことが起こり得るだろうということを予測して更に先手で治療していくこともできます。また医療システムのコントロール、あるいは医療経済の評価にも活用できます。悉皆調査とは違ったものではありますが、心臓病の特異性を考えますと、少数の施設でたくさんの症例を集めて深く分析するというアプローチとして、特に電子カルテから自動的に集めるという仕組みとして御紹介いたしました。以上です。
いかがでしょうか。これまでの発表を踏まえて、循環器病の診療実態の把握に関する現状と課題についての議論を進めます。
本日は、特に意見集約ということではなく、幅広く様々な視点を共有できればと考えておりますので、御質問、御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
○今村構成員 御発表いただいた中で、事情の分からないものがあるので教えていただきたいのですが。最初の脳卒中データバンクとJ-ASPECTは、非常によく似たデータを集めていると思うのです。起源としての研究班が違うのはよく分かるのですが、この2つは同じようなものが動いているのか、どういうところが違うのかを教えていただけると有り難いのですが、いかがでしょうか。
○豊田参考人 私が思うには、本編でも申しましたように、データバンクは個票を使った収集であって、個票システムになるということでしょうね。それでJ-ASPECTは、また飯原先生からお話があるでしょうが、DPCをベースとしているのが最大の違いであろうとは思いますが。ただ、いろいろ統合できる箇所は多い2つのシステムだと思っています。
○飯原参考人 私のほうは厚生労働科研で、もともと脳卒中の救急医療の整備という題目で始まりました。最初に御説明いたしましたように、脳卒中センターをどう整備するかということで、構造指標から始まって、翌年からDPCを集め出しました。ですから、今、豊田さんがお話されたように、私たちはそのような医療情報を使って、その後に新しい試みとしては、医療の質の改善を図るために臨床指標を策定してみると、やはりDPC情報だけが足りないということが分かったわけです。できるだけ参加施設に負担を掛けないように、DPC情報もプリセットしたものをお渡しして、そこに指標の算出に必要なものだけを追加で入力していただくというようなシステムを作りました。それが、Close The Gap-Strokeというプログラムです。
○今村参考人 分かりました。
○永井座長 ほかに御質問、御意見はいかがですか。
○横田構成員 私は救急医療が専門ですので、その視点から質問させていただきます。データを登録するというのは、医療機関にとっても作業的にはかなり負担になると認識しています。登録をすることによって、施設でデータを共有できるというメリット、例えば学術的なメリットがあるのは理解できるのです。それ以外の参加することによるメリットは具体的にはあるのでしょうか。例えば救急の領域で言いますと、救急関係のデータバンクに登録することによって、救命センターの充実段階評価の中で点数が加算され、それが診療報酬にも関わってくることになっています。そのようなメリットは、このデータバンクにはあるのでしょうか。
○豊田参考人 脳卒中データバンクは、もう20年ぐらいやっておりますので、古くからやっている施設は、これを診療情報として、例えば退院サマリーにそのまま転用しているとか、診療に直結して使っている病院が多いです。それ以外の特典といいますと、先生も最初におっしゃってくださったように、これに参加することで、またこのデータバンクの情報を用いた独自の研究を担えるといったことが、うちの利点になるだろうと思っております。
○永井座長 むしろ事務局にお聞きしますが、がん登録の場合は法律がありますが、今後循環器疾患に関する登録が行われた場合に、例えば施設認定であるとか、何か参加する施設にとってのメリットは、いかがでしょうか。もちろん、学術的には様々なメリットがあるのは分かりますが、負担が大きいがゆえに、施設としてどういうメリットがあるかということですね。
○佐々木がん・疾病対策課長 現時点において、直ちにそのような金銭的なものも含めたメリットは考えているものはありません。ただ逆に言えば、この検討会で御議論いただく内容を、どうすればいいかという方法論をその次に考えますので、その方法論として考えていく課程で、今、座長が御紹介いただいたような立法的なものがよいのか、それとも他の経済的なインセンティブのほうがよいのかについては、二次的に考えていくべきテーマだと考えております。まずは、どういう情報が診療、若しくは公衆衛生上の目的にかなうものなのかを御議論いただいた上で、また二次的に考えたいと思っております。
○永井座長 恐らく、きちんとしたデータが出れば、患者さんだけではなくて、施設にとってもメリットが出てくるはずだということだと思いますが。いかがでしょうか。先ほどJROADでDPCの分析が報告されましたが、奈良県でもいろいろな取組が行われており、地域全体として分析しているとお聞きしました。林構成員は御存じかもしれませんが、実態はいかがですか。
○林構成員 御指名ですので、お伝えいたします。私と今村構成員が、たまたま奈良県で一致していますが、奈良県で循環器や脳卒中に関して特別なことが行われているから呼んでいただいたというよりは、それぞれ私は衛生部長会から推薦を受けて参加させていただいている状況です。データの分析については、比較的取り組んでいるほうの県だと考えております。ただ、実際に使っているデータは、一番よく利用しているのはKDBのデータで、各市町村から集めたKDB、つまり医療、介護のレセプトを県で一旦お預かりした上で、今村先生の奈良県立医大や京都大学と一緒に分析をするという形で、いろいろなことに取り組んでおります。医療費の分析、あるいは医療提供体制の分析、疾患ごとの医療の状況の分析といったことをやらせていただいております。
学会のデータを県で使わせていただいていることについては、私どもはあまり認識がありませんでした。そこについては、県ではなかなか進んでこなかったのではないかと思っております。
○今村構成員 奈良県と協働で、今、様々な分析をしています。県庁が必要となるような指標なり、データをレセプトから拾おうと思うと、最初にあれをデータベース化しなければいけないのです。行政機関では、こういうことをデータベース化するためのスキルがあるわけではないということで、それをデータベース化して分析できるところで持ち上げることを我々がさせていただいております。そして、プロトタイプとして何種類かをお示しするのですが、そこから先、ある程度の分析をすることができるようになったら、行政でどんどん分析をしていただくと。その上で、今度はまたそれを我々にも見せていただいて、この分析の仕方はよくないのではないかとか、こういう方法があるのではないかといったキャッチボールをしながら、数字を育てていくようなことを今、奈良県ではさせていただいています。ただ、同じようなことを、他の県ではなかなかやりづらい環境にあるのだろうなとは思っております。
○永井座長 ありがとうございます。このセクションで議論いただきたいのは、循環器データベースの現状と課題として、どんなデータベースがあるのか、またどういうことがデータベースとして求められるかについて御意見を頂ければと思います。特に、がん登録のデータベースは非常に多くの実績があります。先ほど安田参考人から、がんのデータベース、あるいは予後と循環器の違いということで、資料6の図14のご説明をいただきましたが、これには非常に重要な視点があります。がん登録の実績をそのまま脳卒中や心臓病の登録、あるいはデータベースに転用すればよいということではないのだとおっしゃりたいのだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
○安田参考人 御指摘いただきまして、ありがとうございます。これも永井先生の御発表とも共通するところですが、循環器疾患の特徴として、寛解と増悪を繰り返すので、非常に長期間のデータベースを必要とすることが大きな特徴かと思います。かつ一方では、やはりデータを収集する手間も考えないといけませんので、長期にフォロアップしつつ、効率的にデータを収集するという2つの仕組みが望まれるのではないかと思います。したがって、既存のデータベースであるDPCのようなものを活用していくこと。それにリンクするような形で、あるいは更に効率的に電子カルテ情報を収集していくというような方向性が、特に循環器領域においては望まれるのではないかということで、このような図を付けさせていただきました。
○永井座長 ありがとうございます。がんの場合は、5年生存率と言いますが、大体5年、あるいは長くても10年単位だと思うのです。循環器疾患、脳卒中、心臓病の場合には、もっと長い期間を見ていかないといけないところが、1つの特徴だということを御理解いただければと思います。
○羽鳥構成員 がんと違って、循環器の場合は、脳卒中、心筋梗塞、その他循環器疾患の場合も、長い目で見ていくと病院とかかりつけ医の地域の医療機関にかかってくることが多いと思うのです。今日御提示されたのは、急性期のお話が多かったと思います。心不全のナチュラルコースとして徐々に悪くなっていく心不全未明を追っていくとすると、いわゆるかかりつけ医も、しっかりこのデータベース作成に関わっていかなければいけないと思います。
先ほど、一番最初に豊田先生がお示しになった12ページの「運用を開始した新システム」ですが、大変な所は120項目ですが、必須項目は50項目ぐらいです。更に、12項目ぐらいの簡略したデータベースを考えているということでしたが、電子カルテには、必ずしも統一された仕組みになっていません。例えば、それをWebで登録するとか、いろいろな仕組みを考えていくと、必ずしも既存の電子カルテを利用しなくてもできる可能性もあると思いますので、そういうところにも入れるようなことを考えていただけると有り難いなと思います。
○永井座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。
○万代参考人 私の専門は消化器外科ですが、今日は、小松本構成員の代理でまいりました。消化器系では御存じのように、NCD(National Clinical Database)というものがあります。そのデータの登録については、基本的な項目を登録して、なおかつ学会によっては、もっと詳細なものを入力してほしいというような考え方でやっております。豊田先生の資料4の12ページに、先ほど御紹介があった新システムの項目が幾つかあります。
非感染性疾患は、WHOの定義によっては、生活習慣が非常に関係しますので、ひとつ生活習慣的な要素を是非データベースの中に組み込むべきだと思います。べきだと思って言うのは簡単ですが、実際のデータの収集やデータの解析、データクリーニングが難しいのは承知しておりますが、やはりそのようなことを含めなければならないのではないかと思っております。
その際、入力の手間という議論がありましたので、豊田先生にお伺いしたいのは、先ほど12、3項目のベーシックデータを抽出したと。抽出、絞るのはかなり苦労されると思うのですが、その辺りはどのような考え方で絞られたかを教えていただければと思います。
○豊田参考人 12、3項目に絞るというのは、まだ運用しているわけではありませんが、準備はしています。12、3項目ですから、本当に簡単なのですが、脳梗塞か脳出血かという大きな病型の分け方であるとか、あるいは来院されたときの神経学的な重症度、あるいは転帰が、専門家がやるときには42満点という専門家のスケールがあるわけです。ですが、それでは非専門家の先生には普及が進みませんので、例えばごく大雑把に軽症、中等症、重症という分け方を、ただ一定の基準でルールにのっとって統一できたスケールにすることを考えております。転帰に関しても、お亡くなりになったかどうか、家に帰れたかどうかというような簡単な指標です。要するに、医師でなくても登録できるというレベルを考えて準備はしておりますが、まだ運用しているわけではありません。
○永井座長 データは、どういう目的で使うかによって集め方が変わるわけですね。そうすると、急性期を知りたいのか、慢性期や年余にわたって知りたいのか、あるいは断面で知りたいのか縦断で知りたいのか、さらに集団で知りたいか、できるだけ個別化したいかで、いろいろな切り口があります。特に循環器疾患の場合はそこが複雑になってくるのだと思うのです。先ほどの万代先生の外科のデータですが、あれは考えてみると入院中のデータなのですね。そうすると、外来に行ってからはどうなのか、翌年はどうか、ほかの病院へ移った後はどうかというと、これはつながっていないわけです。循環器の場合には、そうした慢性期の管理状況から変化を抑えていかないといけないという、もう少し別の視点があるのだと思います。
○山本構成員 今、永井座長のおっしゃったことは非常に重要で、循環器疾患は年余にわたって、がんではない、もっと長い期間のフォローアップをしなければいけない。そのときに、急性期と慢性期の差がかなり大きい疾患だと思うのです。そういう意味では、慢性期に診療所の先生方を巻き込んで、ずっとフォローアップできるようなデータを収積していこうと思うと、慢性期の場合は項目を相当絞って、それこそ本当に必要な項目に絞って現場の先生方に負担をかけない状態、その負担だけの問題ではなくて、今もいろいろな所で電子カルテがつながらないみたいなことが言われていますが、実際は電子カルテだからの問題ではなくて、実は施設によって検査の基準が違ったりとかで、実際にはそれほど簡単に比較できないようなデータが結構多いのですが、それをある程度ケアしながら集めていかないと、多分、長期のフオローでは非常に問題になってくると思うのです。
そういうケアまでしなくてはいけないことを考えると、それこそ項目は相当厳選したほうがいいと思います。施設を超えて比較できるデータを厳選して集めることを考えていくべきと思います。今日、話していただいたのは、基本的には急性期のデータで、急性期のデータはそれなりにたくさんのデータが要るのは、よく理解できるのですが、その間の慢性期のデータは本当に必要なものを厳選して集めないといけないので、そういう仕組みを提案していくべきではないかと思います。
○永井座長 もう1つの視点は、地域の面で、いかに把握するかということで、地域によって随分診療の内容は違うのです。この辺も、今度は自治体と一緒にデータを集めないといけないだろうと思うのですが。
○今村構成員 我々の研究グループが地域医療計画の指標の作成をずっとやっており、その関係ではNDBs、レセプトの分析をやっています。今、各都道府県別、少なくとも二次医療圏別には、どのような医療行為が行われているかを姓名・年齢・階級別に分析できるようになってきて、今、それをデータとしてつなぐことには成功してきていますので、1人の人を追いかけていくことはできるところにきています。
例えば、心カテをした後に、その方が他のどの外来に行かれても、その方がどんなふうな医療行為をその後に受けられたかを追いかけていくこともできて、眼科を受けても、耳鼻科を受けたとしても、追いかけることができると思います。ただ、NDBsの情報は、先ほどのJROAD-DPC、J-ASPECTといったリスク情報とか、転帰情報とかと付けることができなくて、それを付けることができればたくさんできるのですが、今のルールの中ではそれが難しいので、NDBsのような匿名化された1つのクローズの中で得られる情報と、そこで得られない部分について厳選してレジストリーで集めていく情報とを分けていくべきかと思います。
地域医医療計画のほうで、この地域は循環器のためにこういうことをしてはどうですか、そのためにどのような指標を作るべきですかということは、また別途、地域医療計画の側と詰めていくべきことだと思いますし、それに足りないリスク情報とかアットプット情報をレジストリーで集めていくことを分けて考えていくのがいいのかと考えています。
○永井座長 今、今村構成員が言われた転帰情報ですが、これは予後ということです。お元気なのか亡くなられたのかとか、どのぐらい重症なのかということです。実は循環器疾患の場合には非常に重要な情報です。無理をしなければ元気だということもあれば、急に亡くなられたということもあります。この転帰情報をいかに収集するかということは、自治体とも連携しないとかなり難しいと思うのですが、林構成員、いかがですか。
○林構成員 転帰の情報、がん登録の場合は、これは法律になっていますので、住基台帳を使って5年後に生きていらっしゃるかどうかを全て調べておりますし、亡くなったときには、亡くなったという情報をがん登録のデータと付けることをやっております。がん登録は5年生存率を出すという大きな一番明確な目的に沿ったような研究デザインを法律として組み上げているということかと思います。今、お伺いしていて、循環器の長い経過をずっとデータベースにして入れていくというようなものを、どう作り得るものなのかということは、私の想像の中ではなかなか難しいと思いながらお伺いしておりました。自治体だから何でも分かるということでは決してなくて、がん登録のように明確に、このポイントということになって、それがしかも法律レベルでルール化されて初めて実現していることかと考えました。
○永井座長 といいますのは、いわゆるEvidense Based Medicineというのは、循環器疾患を中心に展開してきたのですね。それはなぜかと言いますと、短期的に良い治療が長期的に悪いという結果がたくさん出てきたわけです。そういう意味で、短期的に、1か月、2か月の間は良くても、1年、2年、あるいは5年になると、かえって悪いという治療もあるのだということです。そういう意味で、転帰をしっかり把握することはデータベースに非常に重要になってくることだと思います。
○今村構成員 今の自治体が転帰の情報をどれだけ持っているかということで言うと、その保険者は保険の資格を失うときに、死亡で失うとすれば、「資格喪失事由死亡」を持っていて、国保という面で見れば、大概の市町村が「資格喪失事由死亡」を持っているのです。それを協会けんぽは協会けんぽで持っていて、ただ、それはレセプトとかにある情報とはまた違う所にある情報で、それをレセプトと付ける、若しくは今回のレジストリーと付けることができれば、死亡を集めるということは、保険者から集めることができれば死亡を集めることはできるのです。そうすると、今回集める情報と名寄せをしなければいけなくなって、その部分が一番ハードルが高い部分になるのではないかと思います。
○永井座長 いかがですか。
○宮島構成員 私は医療関係ではないので、すごく素朴な質問をしてしまうかもしれないのですが、1つは、今、死亡は組み合わせればできるというお話だったのですが、その場合に、いろいろな理由で死亡があるわけですよね。病気の理由で死亡かどうかというところは、まず一義的には簡単に分かるのでしょうか。
○今村構成員 今、奈良県からはマスターの死亡票をもらってやっていて、医療機関で亡くなっている方の場合はレセプトが存在するので分かるのです。でも、1割ぐらいの方はレセプトが存在せずに亡くなっていて、恐らく検死に回っている方がいて、なぜ死んだかは分からないのですが、医療の面からの分析で言うと、その方々は別の理由で亡くなっている可能性が高いので、医療面からの分析では、ほぼ分かる状況だと思います。ただ、病名が分かるわけではなくて、そのレセプトがあるかどうかは分かるということです。
○宮島構成員 つまり、全然違う病気で突然亡くなったこともなくなはないというか、階段から落ちましたとか、そういうこともなくはないということですね。
○永井座長 補足させていただきますと、心臓病の評価に、いかなる理由であれ、亡くなったということは非常に重要な項目になります。それは別に病気が原因でないと思われても、思わぬところで関係があるかもしれませんし、そもそも亡くなったことが重大なわけですから、それによって医療はどうあるべきかを考えることができるわけですね。そういう意味で、厳密でなくても「亡くなられた」という情報は非常に重要です。
○宮島構成員 あと、参考人の方々に質問させていただきたいのですが、多分、がんよりも広く、診療の人たちも含めて、かなり広いお医者さんにデータを集めることになりますと、その負担は心配になるのですが、今やっていらっしゃって、お医者さんの負担のほかに、患者さん側への負担とか、そういうものは有り得るのかどうかということと、より地域の方々を慢性的にフォローする上では、今よりももっとハードルが高くなるような課題はありますか。
○豊田構成員 まず私からですが、登録に当たって患者さんに負担になることがないかという質問は、脳卒中データバンクに関して言えば、急性期入院での起こっているいろいろな出来事を記録しますから基本的には、医師や医療関係者の負担です。ただ、これは飯原先生も安田先生も指摘されたと思いますが、こういったデータベースは長期転帰、本来は長期予後を入れなければいけないわけです。長期予後を組み込むとなれば、例えば一定期間後に直接のビジット、診療所に来ていただくか、あるいは電話、郵送などで患者さんに状況をお尋ねして、そういうもののフィードバックを得なければいけない。そういうのは患者さんへの負担にもなるであろうと思います。それよりも、まずそういった長期的な病状を電話で問い合わせたり、郵送で問い合わせることが、まだ余り根付いていないというか、患者さんに普通ではないように見られるところが多いので、それを十分に説明することに私たちはかなり相当の時間を割いていることはあります。そういった質問でよろしいですか。
○宮島構成員 はい。
○飯原参考人 私たちのほうは、安田先生と一緒でDPCを使っているので、医師に対する負担はほぼないのです。追加情報を入れるときだけで、厳選した所だけ項目を入れていただくので、一応、医療現場に対する負担は最小限にしているのが1つ特徴です。おっしゃるとおり、急性期以後の予後は分からないのです。私のスライドの8枚で、これは日本地図を出しているのですが、人口動態統計は公の統計で、脳卒中でどれぐらいの死亡が各都道府県で起こっているのかが出ているわけですが、参加病院で、まだまだSelection biasがあるという前提の下に、例えばこれがDPCだけでも全ての急性期病院が日本全国で入れば、30日死亡と人口動態の死亡との間に、もしかしたら乖離があるかもしれないのです。ですから直接、90日のModified Rankin Scaleとかを出すのは難しいと思うのですが、もし今村先生のNDBsとかで、各都道府県の急性期の地図と人口動態統計の死亡個票の比較などをすると、もしかしたら急性期から慢性期へのシームレスな医療の中での死亡とか、そういうのは各都道府県でどんなふうに違うとかいうことが、もしかしたら分かるかもしれないという発想で、その乖離を地図上に可視化してを作って見ました。詳細な検討は、まだこれからというところです。
○永井座長 資料7の心臓病データベースですが、これは限定された病院にずっとかかっていらっしゃる方です。あるいは、地域に戻られた方もおられるのですが、我々は別に研究としてというよりも、診療の一貫として1年に1回ぐらい「お元気ですか」というコールの電話をさせていただいており、それは研究というのか、臨床の一環、医療の質の管理の一環と考えています。
○安田参考人 私からは、まず患者さんの御負担になるようなデータベースかということになりますと、基本的には医師が関与するもので、患者様には、私たちが得たデータを医療側に還元することによって、より標準的な、永井先生はエビデンスのお話をされていましたが、要するにエビデンスに基づいた医療がどれだけされているかを知っていただいて、間接的に患者様のほうに、より確率の高い医療をしていただくという方向付けをするための基礎的な資料としてのデータという形で考えております。
データに関しては、特に循環器領域は非常に緊急も多くて、多忙ですので、データの入力に関してはできるだけその手間を省きたいということで、既存のデータであるDPCを極力活用するという方向で、JROAD、JROAD-DPCは進んできているということになります。ただし、何を目的としたデータであるかが非常に大事かと思いますが、私たちJROADはJ-ASPECTと同様、日本の循環器医療を俯瞰的に見る、網羅的に見ることを目的としています。日本の医療全体、各都道府県の医療、あるいは各ご施設の医療に関して、データに基づいて可視化していただくという目的のためのデータ収集であり、DPCを活用させていただいているということです。
○永井座長 ありがとうございます。次の議題にも関係しますので、全体的な議論として議題(3)に移りたいと思います。「循環器病の疾患特性を踏まえた診療実態の把握と診療情報の活用を見据えた今後の方向性について」です。これは何のためにデータを集めるのかということにも関係があります。では、資料8について事務局から説明していただいて議論したいと思います。
○安井がん・疾病対策課長補佐 お手元に資料8を御用意ください。スライド2を御覧ください。論点案として、1.循環器病の診療実態を把握する目的、2.目的を踏まえた循環器病の診療実態の把握の在り方、後者については、実態の把握に必要な項目、対象疾患、把握方法があるのではないかと考えております。
スライド3を御覧ください。循環器病は、「経過」にあるとおり、急性発症し、再発や増悪等を繰り返し徐々に身体機能が悪化するといった疾患特性があります。このような特性を踏まえて診療実態を把握する必要性としては主に2点、まず診療として、再発した場合の急性期診療への活用や診療の質の向上、次に公衆衛生としては正確な患者数や罹患率を踏まえた医療体制等の構築などを考えております。さらには、研究開発の推進と、大きく分けて診療、公衆衛生、研究といった3つの目的が考えられるのではないかと考えております。
スライド4ですが、目的を踏まえ、診療実態の把握に必要な項目を考える際に求められる特性はなにか。急性期診療への活用や診療の質の向上、公衆衛生の向上に十分な母集団設定、正確性と最低限必要な項目の設定が必要ではないかと考えております。更に将来的に、NDB、介護DB等の既存の公的データベースや新たなデータと連携することができる拡張性が必要ではないかと考えております。
スライド5を御覧ください。先日、成立、公布された法律では、循環器病として「脳卒中、心臓病、その他の循環器病」と記載されております。第18条では、情報の収集提供体制の整備等として、「国立研究開発法人国立循環器病センター及び循環器病に係る医学医術に関する学術団体の協力を得て、全国の循環器病に関する症例に係る情報の収集及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする」と記載されております。また、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患は、医療法の医療計画に規定される5疾病のうちの2つであり、それぞれ医療体制構築に係る指針において、脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に大別され、心血管疾患は代表的な疾患として、急性心筋梗塞、大動脈解離、慢性心不全が挙げられております。
スライド6は、対象疾患と項目のイメージを示しております。1ポツの対象疾患は、医療計画に規定される6疾患を対象として始めてはどうか。ニーズの拡大や研究開発の推進等に対応するための拡張性が必要ではないか。2ポツの項目は、診療や公衆衛生の向上に最低限必要な項目を設定するとともに、研究開発の推進等に対応するための拡張性が必要ではないかと考えております。具体的には、循環器病に共通の基本項目を設定し、さらに、各疾患の特性に応じた項目を疾患ごとに設定されることを考えております。1)、2)までを最低限必要な項目として設定し、さらには、任意で拡張性を持つことができるようなイメージを考えております。
スライド7を御覧ください。診療への活用や公衆衛生の向上の目的に十分な母集団設定、正確性のある診療実態の把握をどう担保するか、地方自治体とどう連携するかと記載させていただいておりますが、診療情報の収集・利活用の現状のイメージを示しております。医療施設より関連学会や研究者等が情報を収集し、研究等に利活用されているとともに、先ほど安田参考人からも幾つか御紹介がありましたが、一部の地方自治体においても利活用されていると認識しております。
スライド8に診療実態の把握の体制のイメージを示しております。公共性が高い診療実態のデータをどのような主体が管理すべきか。医療計画や消防・救急体制を担当する都道府県等自方自治体との連携が必要ではないかと考えております。以上です。
○永井座長 ありがとうございます。それでは、幅広に御意見を頂きたいと思います。特に、論点としては、診療実態を把握する目的であるとか、そのために必要な項目、対象疾患とか、あるいは把握の方法等、幾つか論点があろうかと思います。いかがですか。先ほども少し議論がありましたが、診療実態といっても、これは急性期なのか慢性期なのか、急性期病院か、基幹病院か地域での実態か、いろいろな視点があるのではないかと思います。さらに、これを考えてみると、生活習慣病対策全体とも関係するわけですね。生活習慣病対策が本当に意味があるかどうかは、循環器疾患の予後やQOLと関係があるのだと思いますが、そこを厚労省としては、どういうふうにお考えなのでしょうか。
○佐々木がん・疾病対策課長 もともと、この検討会をお願いしているテーマ、この検討会の題名そのものが、将来的にはNCDs、非感染性疾患をにらんでおります。その意味では、我が国においては多くの場合、NCDsは、今、永井座長から御指摘いただいたように、大体は生活習慣病という形での括り方になっておりますので、最終的には循環器を切り口にしてNCDs、生活習慣病全体に広げていくという、そこまでフォーカスを考えての検討会ですので、永井座長から御指摘いただいたように生活習慣病を最終的には考えているという状況です。
○永井座長 そうすると、長い時間のスパンを考慮しないと、本当はいけないと。それがすぐにできなくても、いずれはそういう方向へ全体のデータをつないでいくことだろうと思いますが、いかがですか。
○横田構成員 今、事務局から説明のあったように、スライド3とスライド4がまとめだと思うのですが、心疾患あるいは脳卒中の登録の意味は、診療の質の向上や公衆衛生の向上に直接結び付いていくことは間違いないと思います。
もう1つ大切なのは、スライド4にある「急性期診療への活用」は非常に重要だと思うのです。なぜかと申しますと、永井先生の資料の2ページと、安田先生の資料の14ページに、正に同じグラフが載っているのですが、心疾患も脳卒中も特徴的なのは、先ほど羽鳥先生がおっしゃったように、長いスパンで見て行かなければいけないということです。すなわち、図の谷の部分、すなわち悪くなる急性期の部分がたくさん存在するということです。悪くなったときに同じ医療機関に受診するということであれば、それほどデータベースの活用は必要ないのかもしれません。しかし、谷の部分がたくさんある中で医療機関が全部異なっている場合が、むしろ多いと思うのです。スライド4に戻りますが、そういった場合に、急性期診療の活用という部分で効率的なデータベースの運用、そこにアクセスすれば患者さんの履歴が分かるというような登録システムが永井先生の自治医大が主導してやっているデータベースだと思うのです。そういうところに登録、データベースの意味があるのかと思って聞いていました。いかがでしょうか。
○永井座長 慢性期の集団を診ていく場合と、限られた専門の所で丁寧に診て、きちっとフォローアップしていくという二つのアプローチは大分違う視点ではありますが、恐らくそうした違う視点を組み合わせていく必要があることが循環器病の対策に重要なのではないかと思います。
○横田構成員 特徴的なのは、脳卒中や心疾患の場合は何回も急性期があることと思うのです。
○永井座長 繰り返すということですね。病気の谷を超えたときは、健康が回復します。でも、運の悪い方はそこで亡くなってしまう。そこが非常にダイナミックだということが、がんの場合とは少し違うと思います。もちろん、がんでも急変することはありますが、脳卒中、心臓病の場合には、それが極めて多いということだと思います。
○羽鳥構成員 私は神奈川の川崎の地元で内科医会の会長をやっていたので、地域で心房細動症例をずっと登録していました。国立循環器病研究センター小川先生にも御指導いただきながら、地域で3,500症例ぐらいをかかりつけ医と病院の先生方とIDコードをふって登録して、年ごとに生死、イベントの発生の有無などを登録しています。ある日突然、目の前から患者さんが来なくなることもあり、そういう方の中に心房細動が原因で心内血栓巨大な脳梗塞を起こしている例もあります。先生がおっしゃるように、1年に一遍コールするとか、そういうことをしないとこのような患者さんは追跡できません。ご自宅に電話をしてみると、実は介護施設に入っていたりとか、心房細動から大きな脳梗塞を起こして、そういうイベントを起こしている人もいらっしゃるので、逆に、そういうことが追い掛けられることが診療の実態を明らかにするということで、とても大事なことだろうと思います。
今回、せっかく脳卒中・循環器病対策基本法ができるので、是非これを活用して、そういうレシストリー研究ができる仕組みを、厚労の方と専門家の方々と、医師会も協力しますので、是非、そういう仕組みをつくっていただきたいと思います。医療とIDも、あるいはマイナンバーなどを活用して悉皆性のあるデータベース、レシストリーをつくって欲しいと思います。先ほど北欧の例がありましたが、疾患の数に対して100%追跡できているような地域、日本全部でつくるのは難しいでしょうが、是非、前向きに取り組んでいただきたいと思います。
○永井座長 繰り返しになりますが、心臓とか脳卒中、心臓と血管の病気ですね。これは破れたり詰まったりすると突然変化する。実は非常に重い病変があっても、何でもないこともあります。そこが非常に対応に苦慮するところです。それから、良かれと思った治療が、ときには裏目に出てくることもある。そこがまた非常に難しいところです。ペースメーカー友の会副会長の井上構成員においでいただいていますが、お願いします。
○井上構成員 循環器病の患者生活は長く、その多くは高齢者です。先ほど、病院が変わってしまうと追跡ができなくなってしまうというご指摘もありました。様々な理由、例えば転居する、通っていた病院が遠くて通いきれず近くの病院へ移るとか、患者自身の生活の様子も変わります。患者は、その度に大きな不安を抱きます。
今回、データベース等について、行政、関連団体、研究者等が協力して検討していく必要性があるとして、その作業を進められるということは、循環器病患者や家族に限らず、多くの国民に安心をもたらす、大変意義深い取組と思います。
患者としては、病院や先生方からお問い掛けくださるということは、とても有り難いことであり、患者も家族も、積極的に先生や病院と関わっていきたいと考えてはおります。しかし、長い患者生活の中では、生活環境の変化や体調の急変もあります。しっかりとしたデータベースがあれば、患者自らが積極的に動かなくても、自分はどこかで捉えられているという安心が得られると思うのです。
○永井座長 ありがとうございます。問題は、どのくらいの項目を、どういう疾患について集めたらよいかという、少し具体的な御意見をお聞きしたいと思います。先ほど資料4、5、6で、脳卒中及び心臓病について、いろいろなデータベースを御紹介いただきましたが、いかがでしょうか。脳卒中のデータバンクの場合、これはこれで当面続けていくということでよろしいのでしょうか。
○豊田参考人 参加施設や他からのニーズに合わせてどんどん変えていこうとは思っていますが、ここにも書きましたように、詳しいデータベースで集めるなら、やはり100項目を超えて、その中で必須項目というか、これを入力しないと登録できませんよというのを50ぐらいにすると、専門家の先生方が登録する分にはそれで十分耐えられると思います。
脳梗塞や脳卒中の問題点は必ずしも日本の脳卒中の全ての患者さんが、専門性の高い病院や、例えばDPCを取り入れている病院にだけ入院しているわけではない。なるべくそういう所に集約すべきだとは思うのですが、現実としてはDPCの病院ではない病院とか、あるいは脳卒中学会や神経学会などの専門学会に入っていない病院も診ている所が多いので、そういった所まで悉皆性を高く拾い上げようと思ったら、かなり項目は簡単にしなければ難しいだろうなと思います。
マイクを頂いたのでついでに、先ほどからお話が出ておりますが、患者さんがどんどん転院していくとかといったお話に関連して、脳卒中の特徴を改めて申し上げますと、心臓疾患とは大分違うかもしれませんが、脳卒中の場合は発症した急性期の2週間くらいは急性期病院。それから、過半数の方は機能回復のリハビリテーションが必要ですから、いわゆる回復期施設などのリハビリテーション病院。そこを経て自宅に帰られた場合も、急性期病院の外来で診られる患者の数というのは自ずと限られていますから、ほとんどの患者さんは地元のクリニックに戻り、そして、また急性期発症、再発をしたら急性期病院に行くというサイクルになっています。
そのサイクルが、いつも同じ急性期病院に戻るわけではない。再発したときに、また別の急性期病院に行くこともあるということがありますから、なかなか1人の患者さんの急性期から慢性期までを、1つの医療施設、1人の医師がずっと追っているということは非常にまれで、むしろ病気のステージごとに応じて、診療施設の機能分化が進んでいる疾患ですから、登録のきっかけになるところは急性期病院で、新規に発症した患者を登録することでいいと思うのですが、その方の長い間の身体機能とか、認知機能の流れを見ようと思ったら、やはりこういった今回の基本法のような法律の下での、ある程度強制的なと言ったらおかしいですが、いろいろなタイプの病院が全て参加できるような法律を作ってやっていただくと、1人の患者さんの長い流れを追えると思います。ちょっと長くなりました。
○永井座長 国全体として、どのくらいの患者さんが発生しているのか、増えているのか減っているのか、そういうことを、まずは基本として進めないといけないのでしょうけれど、そのあとのQOLや治療の効果ということになると、また別のアプローチからたくさんの項目が必要になってくる。
○豊田参考人 そうですね。認知機能などを言い出すと、途端に項目を専門化したり、項目数を増やしたりしなければいけないので、大分質が変わってくると思うのですが、まずは生存なさっているか、お亡くなりになったか、そういう非常に大きな転帰がとれるような全国的なデータベースは要るだろうと思っています。
○永井座長 おおよその実態をマクロで見ていく場合には、簡単で幅広に、できれば悉皆性に。でも治療効果等の場合には、むしろ限られた所で、サンプリング的に、しっかり見ていくというアプローチも必要になってくるということでよろしいでしょうか。
○豊田参考人 そうですね。だから、飯原先生がされたようなJ-ASPECTのDPCの病院、ある程度の専門性の高い病院で細かい項目を見るとかですね。データバンクもアクティブに入れてくださっている100の施設では、かなり専門性の高いスケールでの評価を私たちも求めていますし、それに応じていただいているので、100、200、300というレベルの登録であれば、かなり細かくできると思います。全国の脳卒中の全数を把握しようと思ったら、繰り返しになりますが、項目をかなり簡単にしなければ無理だと思います。
○永井座長 安田先生、心臓病についてはいかがでしょうか。
○安田参考人 今回、資料8に、心血管疾患に関して、心筋梗塞、大動脈解離、心不全という3つの大きな疾患を挙げていただいています。1つめの急性心筋梗塞、これは非常に定義も明確ですし、それに対する治療行為ということに関しても、非常に拾い上げられやすい明確な急性期疾患であるということになると思います。ですから、これは定義が非常に明確ですので、データとしていろいろな評価もしやすいのが心筋梗塞ではないかと思っています。
大動脈解離に関してですが、これは地域の医療体制、あるいは内科から外科へという診断から治療というプロセス、あるいは術後のケアということを評価することが非常に大事な、今なお、様々なことを考えないといけない疾患であるという特徴があると思います。
一方で、非常に大事で、かつ現時点で難しい疾患は、心不全ということになるかと思います。永井先生もお話されていた実態ということに関しては、今、我が国で毎年1万人ずつ入院患者が増えているというのがJROADからのデータであります。JROADの価値は、循環器の専門医が心不全と診断して入院した患者さんが26万人いるということを明らかにした点にあります。心不全をどのよう定義をしていくかということに関して、今、学会を中心に、定義あるいは疾患の概念ということで、さらに検討を続けています。そこに心不全の難しさもあると感じています。
○永井座長 これは脳卒中も心臓病も同じだと思うのですが、データの活用ということを考えますと、地域での病院や診療所の連携がうまくいっているか、あるいは受入体制がよいか、あるいは病院ごとの医療の質がどうか、そういう視点もありますし、それから医師と患者レベルで、個人としてどうかということですね。もう1つ、恐らく厚生労働省にとっては、今の医療政策がこれでよいのか、医療経済評価はどうかということが問題になるのだと思います。そういうミクロなところからマクロをカバーしないといけないわけですが、安田先生のJROADの場合には、その辺の3つの視点で、どの辺が一番得意なのかを教えていただけますか。
○安田参考人 やはりJROADは、日本循環器学会というネットワークと密接に関わっていますので、全体を俯瞰するという点で実態調査でもあり、あるいは一部DPC等を使いながら個人データも網羅するという点では、非常に特徴を持ったデータだと思います。かつ、DPCを使っている中核的な病院が基本ということになりますが、今、地域にもそういったデータをお返しするということでより患者さんに近い形で活用していただいているということになると思います。
それから、もう1つは希少疾患ということに関して、やはりこれもDPCの病名から拾い上げて活用していくということに関しても、今、学会として、あるいはJROAD-DPCのグループとしても携わってきていますので、そういった展開もできるような体制を作っているところです。
それから、やはり最終的には医療経済ということに関しての検討というのは、なかなか簡単なものではありませんが、DPCを使った検討ということも、今、一部行われてきていますので、永井座長がおっしゃったように、全てに関してこれから検討していく必要が非常に高いものと思っています。
○永井座長 脳卒中について、飯原参考人、どうぞ。
○飯原参考人 今、先生がおっしゃったとおり、エビデンスに基づいたポリシーメイキングというのは、おそらく今、一番求められていると思います。私たちが最終的に集める指標が、やはりそれが患者さんのアウトカムにどれぐらい影響しているかということが明確になれば、より厳選しやすいと思うのですが。今、私も厚生労働科学研究費を頂いて、非常に厳選した指標、地域のレベルで作成できる指標作りというのを今、検討しているところなのですが、DPCを使っても、もともとそれは急性期病院のデータではありますが、アウトカムが入っておりますし、追加情報でいろいろなプロセス指標も取れますから、そういう急性期病院のデータを基にしながらも、それがどういうアウトカムに影響しているかというのが可視化できれば、その厳選した指標に合理性が出てくるというか、そういう方向性もあるかなと考えています。
○永井座長 ありがとうございます。
○小川構成員 先ほどからいろいろ御意見をお伺いして、実際、永井先生が冒頭におっしゃいましたが、どのくらい登録ができるかというのが一番のポイントになってくると思うのです。その場合は、やはり登録によって、登録した所にある程度インセンティブがないと、なかなか登録できないし、そのデータが完全にそろって初めて医療政策にも役立ってくると思います。
安田先生がおっしゃっていたJROADなのですが、これはインセンティブといいますか、強制といいますか、これに登録しないと循環器学会の専門医研修施設になれないということがありまして、それで1,350の病院が全部登録してくれているというメリットがあります。
そして、学会でそういう強制力を持つのですが、そのデータを学会が処理することはできませんので、国立循環器病研究センターに事務局を設けて、データをどんどん蓄積しているという、学会とセンターの連携というのが非常に大事だと思うのです。その一番の根本は、やはり登録率をいかに上げるかということが一番大事ではないかと思います。そういう意味で、循環器で急性期の疾患というのは割と決まった病院に行きますので、集めやすいというメリットはあると思います。
もう1つ、これは現場の意見としまして、この法律は非常によかったと思うのです。どうしてかといいますと、脳卒中、循環器疾患対策基本法ですが、初めは脳卒中だけで作ろうとしたのですが、なかなか範囲が狭いということで一緒になったのです。私はもともと心臓の専門なのですが、心臓の患者さんが脳梗塞を起こしたとき、心臓の専門とは違う病院に行ってしまうのです。脳梗塞の患者さんが心筋梗塞になった場合、違う病院に行ってしまうのです。その場合、たまたま国立循環器病研究センターは脳も心臓も一緒にやっていますから、そういう患者さんを一遍に診られるのですが、そういうことで予後が分からなくなるということも結構あるのです。
ですから、この法律により登録率をものすごく高めることによって、難しいでしょうけれど、人が特定できるようになれば患者さんに対してのメリットはものすごく大きいと思いますので、それを一言追加させていただきたいと思います。
○丸山構成員 事務局に質問です。資料8の6ページの基本項目として、生年月日と被保険者番号が入っているのですが、これは先ほどから多くの先生方が指摘されているように、複数の医療機関に患者がかかり、長期にわたるというところの、その追跡を何とかするための手掛かりが、この辺りから得られるという趣旨で入れられたものなのですか。
○安井がん・疾病対策課長補佐 事務局です。基本項目として示させていただいている部分は、あくまでたたき台として案を書かせていただいているのですが、丸山構成員が御指摘のとおり、将来的にほかのデータベースなどと連携できるようにという考えで、このような項目を例示させていただいております。
○丸山構成員 先ほどから、がん登録のことについて言及されているのですが、がん登録は、がん登録推進法が出来るまでは健康増進法を根拠として死亡個票のデータなどで、健康増進法が出来るまでは特に根拠なくというか、公衆衛生の向上というところで死亡個票、死亡届のデータを得て転帰を、そして病院で予後を調べるということをしていたのですが、そのためには名前が必要なのですね。今回は名前までは踏み込んではいけないというところで、先ほど質問させていただいた生年月日と被保険者番号に留めているという御趣旨なのですか。
○安井がん・疾病対策課長補佐 おっしゃるとおりの趣旨で、顕名ではなく氏名、性別、年齢、被保険者番号等でハッシュ化などをして同じ人物を連結できたらということで考えています。
○永井座長 そうすると、保険が変わった場合は、どういう対応が可能なのでしょうか。
○安井がん・疾病対策課長補佐 これだけでは限界があることも承知はしているのですが、今、考え得る案としてお示しさせていただいております。もし、より良い案などがありましたら、是非、御議論いただいたり、御提案いただきたいと思います。
○永井座長 そこが、長期フォローするときに難しいところなわけですが、いかがでしょうか。
○山本(隆)構成員 2021年から被保険者番号が1人1番号化されるという、そのことを前提にしてお話をしますが、それ以降は被保険者番号だけで個人が識別できるようになりますし、被保険者番号は保険者が変われば変わりますが、被保険者番号の履歴は追えるようになりますので、被保険者番号を手に入れた時に、その人の最初の被保険者番号を問い合わせることによって、確実に同じ人を接続できるようになるとされています。
2021年まではどうしているかというと、例えばNDBと介護総合データベースを突合することが今、準備されているわけですが、その場合はやはり氏名なのです。仮名氏名と生年月日と性別で突合することになっていますから、2021年以前のデータとして利用する場合は、やはり氏名を外してしまうと、突合は厳しいです。2021年以降であれば、被保険者番号はマイナンバーと最終的には接続可能ですので、個人を確実に識別できる仕組みに同じですから、それをそのまま使うかどうかは別問題ですが、そういう意味では患者さんや施設をまたがって追跡できますし、例えばNDBや介護総合データベースとも突合できるようになりますから、ある人がある時点から介護保険の支給を受けているというようなことも知ろうと思えば知ることができる。誰が知っていいかという問題は別問題ですが、それが解決されればできるようにはなると理解しています。
○永井座長 ありがとうございます。
○今村構成員 今の点で是非、留意してもらいたいことがあって、これは保険者番号を生でもらっていたら、今、山本先生のおっしゃっていることができるのですが、今、一般的に厚生労働省からもらうときは、ハッシュ化してもらっていることが多くて、ハッシュ化された保険者番号をもらっても保険者番号が変わったときに追跡ができないということで、ハッシュ化が前提であると、やはり名前をもらわない限りはつなぐことができないと思いますので、今は多分ハッシュ化してもらうことが前提に置かれているように思うので、そこのところの留意は必要だと思います。
○林構成員 別の話題です。何人もの先生がおっしゃっているように、縦断的に見るのか横断的に見るのかというところを論点として大きくといいますか、明確にすべきだと思います。6ページの「把握のイメージ」の所で、「対象疾患」と「項目」となっていますが、それにも増して、いつ把握するのか、何をトリガーとして把握するのか、どう追い掛けていくのかというところを論点としていただけたらなと思います。
併せて、7ページに自治体での利活用について書いてあるのですが、ここでお話されているのは縦断研究としてどうやっていくかという話が多かったのですが、自治体が何を必要とするかという観点から言うと、そういう点はあまり必要としていなくて、横断研究といいますか、ある時点でどれだけの患者さんがいらっしゃるのかというようなデータがざっくりと分かるということが非常に有り難いと思います。
ただ、そのときには高い悉皆性が必要で、といいますのは地域ごとの比較ができるかどうかというところが自治体にとっては大きなポイントですので、把握率がそれぞれ違っていたりしますと、うちの県が少ないように見えるのは把握率が少ないのか、病気が少ないのか分からないということになってしまいますので、悉皆性について高い水準が求められるということと、あと、できれば都道府県の立場からは、医療機関が同定できるということが有り難いと思います。
非常に基本的なことで、例えばt-PAの治療が病院ごとに何件ずつ行われているのかということを把握しようと思っても、今は把握する方法がレセプトも含めてないように思います。急性心筋梗塞の治療が何件ずつ行われているのか、少しだったら分かるかもしれませんが、医療計画を書く中で、どの医療機関がどの治療が得意で、何件やっていらっしゃって、それで足りているのか足りていないのかという議論をすることが多いので、ここで項目がたくさん並んでいる、100項目とおっしゃっていますが、そういう項目は恐らく都道府県の立場からだとあまり必要がなくて、悉皆性が高くて、どの医療機関が何件の治療をやっていらっしゃるかということが明確に分かれば、都道府県の立場からは使いやすいものになるかなと思います。それが同じ仕組みでできるのかどうかというのは、また別の議論で、今、議論されているものとは違う方法でやらなくてはいけないということかも分かりません。
DPCのデータも、今は同意を得て集めていらっしゃるという話ですが、NDBと同様に第三者利用がだんだんできるようになってくると思いますので、そういう意味ではDPCのデータを悉皆的に集めることで、私が申し上げたようなことがどこまで実現できるかということを、併せて、横で検討すべきかなと思います。
○永井座長 ありがとうございます。事務局が出された資料8の図6に、対象疾患が書かれています。脳卒中、心血管疾患、何もかもというのは難しいので、まずはこの辺りの疾患からということでよろしいでしょうか。いずれいろいろ拡張はされるのでしょうけれど、基本的な疾患としてはこの辺かと思いますが、これについて御意見をお願いします。
○小川構成員 基本的にはそれでいいのですが、今おっしゃった一番大事なのは、悉皆性を持った体制作りが一番大事で、例えばJROADでも、初めは心不全、大動脈解離はなかったのです。でも、どうも臨床していると、心不全が非常に多くなってきて、今は大動脈解離がものすごく増えているのです。考えられないぐらい増えていて、実際に毎晩、緊急オペを見ているような状況ですので、それで項目を加えるとこのようになりました。
ですから大体、おおまかな項目は、しばらくは変わらないでしょうけれども、できたら組織をそのまま使って、疾患をもう少し増やせるようなこともできるようにしておくほうが、将来的には一番役に立つと思います。
○永井座長 これは今後もいろいろ議論を続けないといけないと思いますが、それともう1つ、こういう悉皆性をもってマクロで見ていくデータと、先ほど私がお話したような細かいデータですね。例えばペースメーカーが、どれが本当にいいのか、有効性がどうか、副作用がどうかという細かいデータを見ていくためにはどうしても電子カルテや検査レポート、いわゆる医療情報を活用してデータを収集する仕組みですね。これは山本先生がいろいろ御検討されていらっしゃいますが、現在の課題や状況はいかがでしょうか。
○山本(隆)構成員 永井先生が、imPACTで作られたMCDRSなどのシステムを使うことによって相当楽にはなってきて進めやすくなっているとは思います。ただ若干、まだ問題があるのは、そういうシステム側の問題ではなくてコンテンツ側の問題で、中身の質の担保みたいなことがまだ課題になっています。
それから、MCDRSのサーバーをどこに置くかみたいな話も、多少は弊害になっているので、これは我々が次世代医療基盤法の仕組みを使って、その中にMCDRSを組み込んで、SS-MIXのデータを送っていただいたら自由に使えるような仕組みも考えていますので、それなりに楽にはなってきているのだろうとは思っています。
○永井座長 私自身の経験でも、かつては電子カルテをつなぐというのは極めて難しかったのですが、作業をしてくれる人を見つければ、大体できないことはなくなってきたと思います。ただ、山本構成員が言われたように、質ですね。細かいことを見ようと思えば、当然、質が高くないと間違った結論になりますから、我々の場合には、各病院にデータマネージャーを1人置いて、データのクレンジングをしながら進めています。それでも決して十分ではありませんが、これはある意味では悉皆性ではなくて、限られた専門病院で研究的に行っていく。そして、そのデータを基に全国でいろいろ推測していくという、もう1つの方法ではないかと思います。脳卒中、心臓病については、いろいろな切り口がありますので、今後推進していく必要があるのではないかと思います。
最後に、こうした公共性の高い診療実態のデータの管理は、どこに委ねるのがよいのかです。それぞれの病院、研究者が持っている時代ではもはやなくて、データシェアとかデータプラットホーム、さらに管理のセキュリティと透明性ですね。そういうことも必要になってくると思うのですが、その点についていかがでしょうか。
○山本(隆)構成員 やはり、ある程度の公的な性格を持つ所がやらないと、うまく回っていかないという気はしています。ただ、昨今の事情で、例えば厚労省がやるという話も、これも相当難しいのだろうと思うのです。
したがって、例えばNCDに関して言うと、NPO法人が作られて、そこで管理をしている。あれよりもう少し公的な性格を持つような。というのは、やはり個人情報の取扱いに関して、若干、制度的裏付けがあったほうがやりやすい面がありますので、そういったことも含めて、この検討会で提言を作っていただけるといいのではないかなと思っています。
○永井座長 データベースを作るのはもちろん大変ですが、維持をするのがまた難しいわけです。万代先生に伺いますが、ナショナル・クリニカル・データベースの場合には、その資金は各学会のみで負担しているのでしょうか。
○万代参考人 ええ、各学会と、さらにそのデータを利用する病院です。例えば専門医としてドクターが所属していたら、その病院から使用料を徴収するのです。例えば具体的に申し上げますと、私の病院で15万円払っているとか、そんなレベルを払って、年間で億の単位が必要になりますから資金の面も相当考えないとまずいなと、山本先生のお話を聞いて思いました。
○永井座長 もう1つは民間から、産学連携の枠の中でも、少しデータベースの維持を考えるという考え方はいかがなのでしょうか。
○小川構成員 おっしゃるとおり、どこに持っていくかというのは非常に大事と思うのですが、透明性、公共性、そういうので私ども、国立循環器病研究センターは、脳も心臓もやっていますので、大きなことを言って、すぐにどうのこうのというのは不可能かもしれませんが、今のところ一応、やれる準備は着々と進めているところです。
幸い、新しいセンターも出来ますし、スペースも十分出来ますので、現在やっているのは国立循環器病研究センターの研究費と、JROADに関しては日本循環器学会の会員からの会費の徴取の一部、その2つでやっていまして、非常に価格的にはNCDよりもかなり安くできていると思っています。ですから、そういう継続性を考えるのであれば、一応、やれと言われればやる準備は整えています。
○永井座長 公共性の高いデータベースについては、公的支援は必要だということでしょうか。ありがとうございます。大体時間になってきたのですが、全体を通じて、更に御発言されたい方はいらっしゃいますか。
○今村構成員 先ほどから政策的に使えるデータをということで議論があったと思うのですが、今、我々の研究班が、厚生省の5疾病5事業の指標作りというのをやっておりまして、そういう意味では脳卒中、心血管疾患のデータを作ってきた実績があります。その中でどんな問題があるかをちょっとだけ説明させていただきますと、まず脳卒中で言うと、脳卒中は脳卒中という大きな括りで見ていますので、この3つには分かれていないのです。その中で、例えば脳梗塞、脳出血と、やはりくも膜下出血というのは、脳外主体にやるか、両方の診療科が出来るかという大きな差があって、それをうまく区別化していくような指標というのは、なかなかうまく出来ていないという状況があります。
まず、3つの病気がちゃんと分かれていくような指標というのが、うまく作れていない。それともう1つ、医療行為として分かればNDBなどで分かるのですが、脳卒中や脳梗塞は特定された医療行為が全然ない、若しくは治療していないようなケースもたくさんあって、本当のところ何人の人に起こっているのですかというのが分からないというところがあります。という問題点があるかなと考えています。
心血管疾患に関して言うと、今までは心筋梗塞が中心だったものが、今回、解離性大動脈瘤のほうも加わってきたということで幅が広がっていますが、心不全に関しては余りアプローチがされていないということがあります。今回、この大動脈瘤解離が加わったのですが、これを指標化するというのがなかなか困難な作業で、これが起こっているのが何人の人かということさえも把握のしようがないという状況があって、そちらの5疾病5事業側で言うと、解離性大動脈瘤のようなものはかなり手詰まりになっているということです。是非、こちらの議論の際に、そういった今まで手の届かなかった部分にも光を当てられるような議論にしていただけると有り難いかなと思います。以上です。
○永井座長 ありがとうございました。この議論は非常に範囲も奥行きも深いものですから、十分な議論は尽くせていないかと思いますが、活発な御議論をありがとうございました。また御発言が足りない部分については、後ほどメール等で事務局にお寄せいただければと思います。今後の予定等について、事務局から説明をお願いします。
○安井がん・疾病対策課長補佐 構成員の皆様方、ありがとうございました。次回の検討会の日程ですが、決定次第、御案内申し上げます。机上配布資料につきましては、お持ち帰りにならないように御注意願います。また、ペットボトルはどうぞお持ち帰りください。事務局からは以上です。
○永井座長 それでは、本日はこれで終了します。長時間、どうもありがとうございました。