第3回 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会(議事録)

日時

平成30年12月27日(木)10:00~12:00

場所

労働委員会会館 中央労働委員会612会議室(6階)
(東京都港区芝公園1-5-32)

出席者(五十音順)

 
(いわ)(むら)(まさ)(ひこ)    東京大学法学部教授
 
(かき)(うち)(しゅう)(すけ)    東京大学大学院法学政治学研究科教授
 
鹿()()()()()  慶應義塾大学大学院法務研究科教授

議題

解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する主な論点の整理

議事

  

○岩村座長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第3回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を始めることにいたします。
委員の皆様におかれましては、年末のお忙しい中を御参集いただきまして、まことにありがとうございます。
本日の出欠状況でございますけれども、神吉知郁子委員、小西康之委員、中窪裕也委員が、それぞれ御欠席でございます。
また、法務省からオブザーバーといたしまして、前回に引き続きまして、法務省民事局の笹井朋昭参事官にも御参加をいただいております。
どうぞよろしくお願いをいたします
それでは、初めに事務局から、きょう配付いただいている資料の確認をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 それでは、お配りしております資料の御確認をお願いいたします。本日はちょっと資料が多くなっておりますけれども、資料としましては、A3の資料が4種類と、参考資料が3種類ございます。
まず、本体資料のほうですけれども、資料1としまして、A3の資料で「解雇無効時の金銭救済制度に係る主な法技術的論点シート」、これの12月27日版でございます。
資料2につきましては、こちらもA3ですけれども「解雇無効時の金銭救済制度を導入した場合における解雇紛争時の主な解決方法について」でございます。
資料3ですけれども、こちらもA3で「解消金の性質について」というものでございます。
資料4もA3ですけれども「解消金の算定について」という白黒のものでございます。
参考資料は、基本的には前回お配りしたものと同様のものでございますが、参考資料1が「解雇無効時の金銭救済制度に係る主な法技術的論点について」。
参考資料2が少し厚いもので「検討事項に係る参考資料」。
参考資料3が前回お配りした論点シートでございます。
その他、座席表もお配りしておりますので、不足がありましたら、事務局のほうにお申しつけください。
○岩村座長 ありがとうございました。
それでは、早速議事に入りたいと存じます。お手元の議事次第をごらんいただきたいと思いますけれども、本日の議題は「解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する主な論点の整理」でございます。本日の進め方でございますが、事務局から先ほど御紹介のありました御提出いただいている資料についての説明をまずいただきたいと思います。その上で、それらの資料を踏まえて委員の皆様方に御議論をいただくという進め方でまいりたいと存じます。よろしくお願いをいたします
まず、事務局からきょうお配りいただいている資料につきましての説明をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 それでは、お配りしております資料1~4、ちょっと開きづらくて恐縮ですけれども、A3の資料に基づいて説明をさせていただきたいと思います。
まず、資料1でございますけれども、こちらは法技術的論点シートで、前回お配りしたものにつきまして、前回の議論を踏まえてアップデートをしている12月27日版です。したがいまして、半分から上の部分は前回と同一の記載でありまして、半分から下の①~⑰まで番号を振っています論点が、前回からのアップデートをしたものになります。
順次、左のほうから説明をさせていただきますと、まず「対象となる解雇」でございますけれども、こちらは前回の御議論におきましても、一定の解雇等を対象から除く実益はないのではないかという御意見がありましたので、全ての解雇・雇い止めを対象とすることを論点として掲げております。
次の「権利発生要件」にいきまして②ですけれども、裁判外での権利行使を可能とした場合には、これは前回も御意見がありましたが、解消金の額について労使合意がないままに使用者が金銭を支払ったときに、一体いつその契約が終わったのかというような新たな紛争が発生することですとか、使用者が一方的に支払うことも想定されますので、労働者の地位が不安定になるなどの弊害が想定されるという御意見が出ておりました。このため、意思表示の方法につきましては、まずは裁判の訴えの提起や労働審判の申立てに限って認めることとするかという論点を入れております。
この関係で、その下にあります資料2をごらんいただければと思います。こちらもA3のものでございます。
資料2につきましては、解雇紛争時の主な解決方法で、左側のところに4つの柱を立てておりますけれども、基本的にはメニューとしては「ア 自主解決」、次に都道府県労働局でやっているものですが「イ 個別労働紛争解決制度」、あと裁判として「ウ 労働審判制度」「エ 民事訴訟」と、4つのカテゴリーを入れております。
それぞれ右側に、上半分の「現行」と書いてあるところが今の解決の仕組みでありまして、その下の赤枠で囲っている部分が、仮に金銭救済制度を導入した場合に取り得る選択肢ということで入れております。
ちょっと時間の関係もありますので、アとイの部分だけ先ほどの論点との関係で御説明をさせていただきますと、両方一緒ですので併せて説明をいたしますけれども、まず、現行の場合は双方で合意ができるのであれば和解ということで、復職か一定の金銭の支払いによる合意解約をしていく、もし解決ができない場合は、それ以外の手段のに移行していく形になっております。
仮に裁判外においても、金銭救済制度を利用できる形で入れた場合ですけれども、これは下の赤枠のところで、前回もこちらは御議論ありましたけれども、裁判外で解消金制度を入れた場合であっても、解消金の金額について合意ができる場合のみワークをするという形になりますので、そうしますと、結局、裁判外で入れた場合であっても、一定の金銭の支払いによって合意をして解約をするということですので、あまり現状の合意解約との差異は出てこないのかなと考えております。
その下の解決できない場合ですけれども、こちらは吹き出しをつけておりまして、先ほど御紹介したとおり、結局、金額についての労使の合意がないまま、使用者が金銭を支払えば、労働契約がいつ終わったのかというような紛争等が発生する弊害が出てくるのではないかと考えられます。
このように見ますと、下の労働審判、民事訴訟と比べた場合であっても、相対的にメリットは少ない一方で、訴外で認めた場合のデメリットは顕著に出ているので、まずは訴えないし労働審判に限って認めることで、問題提起をさせていただいております。
資料1にお戻りください。
先ほど②まで説明しましたので、次が③でございます。こちらは請求の撤回の関係でありまして、前回の論点シートでは御参考としまして訴えの場合、それから、労働審判の申立てにつきましては現行の訴訟法上において訴えの取り下げですとか、労働審判の取り下げが規定としてあるという御紹介をさせていただきました。
今回、③で問題提起をさせていただいているのは、あくまで今回は実体法上の請求権として、権利の創設をする前提で検討をしておりますので、訴訟法も一応参考にしつつも実体法上、例えば撤回の根拠規定を置いた上で、撤回をいつまで認めるのかという点につきまして、御議論をいただければと思います。
そうしますと、こちらも前回御指摘がありましたけれども、例えば訴えの取り下げであれば、これは相手方が準備書面等を準備した後については、相手方の同意がないと訴えの取り下げはできないことになっております。一方で今回、③で御検討いただきたい実体法上の規定を置いた場合には、理論上は相手方の同意がなくても撤回できる規定も置けますので、そうしたことも踏まえて御議論をいただければと思っております。
④でございますけれども、こちらは請求権の事前の放棄の関係でありまして、あらかじめ労働契約や就業規則において、解雇紛争が生じた場合に、解消金請求を行わずに合意解約で解決しなければならないといったような定めを置くことが認められるかどうかという論点でございます。なお、御参考までに、現行労働契約法に定められております無期転換ルールがございますが、こちらにつきましては、あらかじめ契約前に無期転換権を放棄するような労働契約ですとか、就業規則を締結することについては公序良俗に反して無効と解されることを解釈通知でお示ししているところでございます。
④の「また」以下でございますけれども、この解消金の権利が発生した後に和解等で当該その権利を放棄することが可能か、具体的には解消金の権利が発生している中で、例えば労使双方で和解をすると、和解の場合は和解をする文書の中で清算条項という形で、以後債権債務関係がないことを確認するような規定を入れることが一般的かと思われますが、そうした場合に事後的な解消金の請求権の放棄ができるかどうかが論点です。
⑤は解消金請求権と他の債権との相殺の関係でございます。こちらも御参考までに申し上げますと、今、賃金につきましては、労基法の賃金全額払いの原則の解釈としまして、相殺が禁止されております。それから、不法行為の損害賠償請求権につきましても、民法上の規定によりまして、相殺が禁止されている状況でございます。
次に真ん中に行きまして「解消金の性質等」でございます。まず、⑥で解消金の定義でございますが、前回の御議論を踏まえ、これは事務局としての例えばの案でございますけれども「無効な解雇として確認された労働者としての地位を、労働者の選択により解消する対価」という解釈、ないし定義づけができるのではないかと考えております。
⑦でございますけれども、こちらは上にありますとおり、解消金の性質を解するときに、システム検討会のときには解消対応部分の中に損害賠償部分を含めるような形で検討を進めておりましたけれども、前回の御議論を踏まえまして、解消金関係の債権については3つのもの、具体的には解消金請求権、これは今回新設するものですし、2つ目としてはバックペイの請求権、これは民法上、既にある権利でございます。それから損害賠償請求権、こちらも民法上認められている権利です。この3つに区分をした上で、それぞれの関係性ですとか、併合提起について検討してはどうかというような問題提起をしております。
この3つの債権の関係につきましては、資料3で少し詳しくお示しをしております。資料3もA3のものでございますけれども、青とオレンジの部分に大きく分かれております。
青い部分はシステム検討会で検討したA案です。こちらは解消金の請求権を1つの債権としつつ、別途バックペイの債権も1つの債権として構成をする。ただ、先ほど申し上げたとおり、解消対応部分の中に損賠部分を含めるという形のものでございます。
B案につきましては、こちらは債権としては労働契約解消金の請求権という1本の債権の中に、解消対応部分とバックペイに相当する部分、これはバックペイ債権そのものではありませんけれども、あくまで相当する部分を入れ込む形の案でございます。
これらを一応前提にしまして、前回の御議論を踏まえて3つの請求権を少し分けるような形で検討したものが、下に規定しておりますパターン1~4までであります。
まず、パターン1につきましては、これは最もシンプルですけれども、解消金の請求権とバックペイと損害賠償という3つの債権をそれぞれ分けた上で、構成をするものであります。労働契約はオレンジの部分の労働契約解消金の支払いによって終了します。なお、次のところにもちょっと出てきますけれども、パターン1につきましては、この3つの債権を併合して提起をすることは義務づけではなく、一応任意という前提に置いております。
下にメリット、デメリットを記載しておりますけれども、まず、パターン1のメリットとしましては、これは現行の実務に与える影響が少ないので、制度設計もわかりやすいというメリットが想定されるところであります。
デメリットの部分につきましては、先ほど申し上げたとおり、併合提起が任意という形になっていますので、例えば解消金だけ先に請求して、後からバックペイを請求する形で一回的な解決にはならないおそれも生じる可能性がございます。ここは矢印で書いておりますが、あくまで任意であっても、併合提起の推奨という形で対応ができると考えられるかどうかも論点かと思われます。
それから、その下のくさびのところも前回、委員の方から御指摘がありました。このように債権を3つに分けた場合、まとめて提起をされて、使用者側が一度にこれらの全ての金額を払う場合には特段問題になりませんけれども、使用者側の支払いが一部であった場合、一部弁済の場合にどのようになるのか。これは今の民法の規定を前提にしますと、まずは債務者である使用者がどの部分に充当するかを指定できることになっております。債務者である使用者がそれを指定しない場合は、弁済の受領者である労働者側が指定をする。労働者も指定をしないのであれば、債務者である使用者側にとって、弁済の利益が大きいものについて充当されるような規定が今の民法のルールでございます。
このように考えますと、まず、一般的に考えられるのは、使用者側としては、一部弁済した場合には、まずは解消金に充当される形で指定をしまして、解消金が全額払い終われば、そこで労働契約が終了しますので、バックペイもそれ以後は発生をしなくなるということで、そのようなことが想定をされるところであります。
そうしますと、次の案ともちょっと関係しますけれども、バックペイの履行確保が十分にできるのかというところがありまして、現在であっても例えば地位確認とバックペイの支払いを命じる判決確定後、履行がなされない場合には強制執行になりますけれども、そうしたことも踏まえて何か特別な措置がさらに必要かどうかも論点として入れております。それから、先ほど民法のルールを御紹介したときに申し上げましたけれども、債務者または弁済の受領者両方が充当される部分を指定しなかった場合に、実際、債務者である使用者にとって弁済の利益が大きいものはどこに当たるのかも、検討が必要なところかと考えております。
右側の部分は、システム検討会のB案を前提にしたものでございます。パターン2につきましては、パターン1を少しアレンジしたものでございますけれども、先ほど申し上げたとおりパターン1の場合は、一部弁済がなされた場合には、まずは使用者側としては解消金に充当させることが一般的には想定されますので、そうしますとバックペイの支払いの確保という点で少し支障が出る可能性があります。
そこを改善する案として、パターン2の絵のところにも書いておりますけれども、民法の充当の規定の特則を置きまして、一部しか弁済されない場合には、まずはバックペイ等に先に充当される。その上で、その充当が終わった後に労働契約解消金に充当がされていって、最終的に解消金を払えば労働契約終了という案でございます。こちらにつきましては、デメリットのところに書いておりますけれども、まずは法制的な部分でこうした規定を置くことが可能なのかどうかというところも、例がない中で検討することになりますので、懸念としては考えられるのかなと思います。
それから、矢印で2つほど追加的な論点を書いております。1つ目のところは前回御指摘がありましたけれども、解消金とバックペイだけの債権しかなければ、先にバックペイに充当して、その後解消金ということでシンプルです。それが例えば退職金債権のような、それ以外の債権が存在した場合に充当の順位をどう考えるかという論点でございます。
その下の部分は、仮に充当の特則を置くとして、先に充当されるバックペイは、一体どの範囲の部分までのバックペイを言うのかというところも検討が必要かと思います。括弧の中に考え方を少し書いておりますけれども、例えば判決によって支払いを命じられたバックペイ部分が先に充当されると規定した場合には、当然判決で支払いを命じられた分が先に充当されますので、労働者側としては併合提起をするインセンティブが高まってくるのではないかと考えております。
もう一つの考え方としては、解消金の支払時までに発生しているバックペイを全て払うようなものも、理論上は考えられるのではないかと考えております。
次に説明の都合上、パターン4を先に御説明しますと、パターン4につきましては、3つの債権に分けた上で、3つの債権を広義の労働契約解消金という形で、いわば袋詰めをするような形の案でございます。この場合全体3つの債権分を全部支払ったことによって労働契約が終了するということでございます。当然ながら広義の労働契約解消金を計算するためには、3つとも全て提起がなされていないと計算がうまくできませんので、※で記載をしておりますけれども、3つの請求権については、併合提起の義務づけを想定した案でございます。
こちらのメリットとしましては、バックペイ等を支払わなければ、労働契約が終了しないということで、労働者保護の観点から、より手厚いような形になっております。
デメリットですけれども、1つ目は先ほども御説明したとおり、併合提起の義務づけで、こちらもなかなか例がないようなものをつくることになりますので、義務づけをするための理論的な説明が必要となってくる。
2つ目としては、併合提起を義務づけた上で、それでもバックペイ等を併合しない場合につきましては、これはバックペイの債権が失権するような仕組みをすることも考えられますけれども、併合しなかった場合に、そのような権利制限がなぜ行われるのかについても理屈が必要かと思います。
最後にパターン3でございますけれども、こちらはパターン2とパターン4の中間的な案としまして、まず、労働契約解消金の部分を、ネーミングの問題ですけれども、解消補償金という名前で置きまして、解消補償金の支払いだけでは契約は終了しないけれども、バックペイと合わせて両方支払ったときに労働契約が終了する仕組みのものでございます。この仕組みにつきましては、バックペイの併合提起はあくまで任意という前提で置いております。
このようにしますとデメリットのところにありますけれども、バックペイの併合提起の義務づけをしないので、バックペイを併合しなかった場合について、整理が必要と考えられます。これは例えば考え方ですけれども、バックペイが併合提起されなかった場合でも労働契約解消補償金自体の請求と支払いがあれば、それによって就労の意思が喪失するような解釈ができるのではないかと、そうしますとバックペイが支払われていないので契約は終了しませんけれども、就労の意思がなくなったということで解消補償金が払われた段階で労働契約が終了してバックペイがとまって、以後のバックペイは発生しないという考え方もできるのではないかと考えております。
パターン3と4の下はパターン2とも共通するところでありまして、このように袋詰めしたりとか、解消補償金とセットで措置をするバックペイの範囲について、どこまでと考えるかが問題でございます。
ちょっと長くなって恐縮ですが、資料1にお戻りをいただきますと、先ほど⑦まで説明をしましたので⑧以降でございます。
⑧は前回も同様の論点を記載しておりましたけれども、当初、地位確認を提起していたが、途中から解消金に訴えの変更をすることができるかどうかという論点でございます。
⑨⑩はバックペイの関係でありまして、⑨は実体法上どこまでバックペイが発生するかという話で、⑩は訴訟法上1回の訴訟手続でどこまでのバックペイの請求が認められるかというところでございます。
⑨は就労の意思はあくまで解消金の支払いによって喪失するという御意見をこれまでいただいておりましたので、その考え方を基本として、原則としては解雇されてから解消金の支払時までのバックペイが実体法上発生すると解してはどうかという論点です。
⑩は1回の訴訟手続によってそれがどこまで認められるかですけれども、これは現行の運用ということで、現行でしたら地位確認とバックペイを併合提起した場合には、判決確定時までのバックペイが認められておりますので、そうした運用を変更するための何か特別の規定が必要かどうかという論点でございます。
解消金の中身の部分が次の⑪以降でございます。
⑪は⑥に書いております解消金の定義を踏まえて、解消金を算定する際の考慮要素をどのように考えるか、その際、諸外国の制度におきましては、勤続年数、給与額、年齢、企業規模、解雇の無効事由等を考慮していることとの関係をどのように考えるかという論点でございます。こちらにつきましては、A3の資料4を御参照いただければと思います。
諸外国の関係につきましては前回も御紹介しておりますので、ポイントだけ復習のために説明させていただきます。
まず、イギリスの制度は基礎裁定額と補償裁定額の大きく2つに分かれておりまして、基礎裁定額は算定式が入る形になっております。勤続年数に週給をかけた上で0.5~1.5の調整率のようなものをかけるということです。
ここは注意書きで記載をしておりますけれども、前回、委員の先生からこの調整率の値が正しいのかという御指摘がありました。確認をしたところ、まず※1で年齢によって21歳以下であれば0.5、22~40であれば1.0、41歳以上であれば1.5という形の調整率です。
この考え方として、但し書きで書いてあるとおり、勤続年数に算入できるのは最小で2年、最大で20年です。そして基礎裁定額を算定するときには、この最大で20年の勤続年数を年齢別にまず区分をしまして、各区分の算定式に従って計算した額の総額と、ちょっと日本語がわかりづらいのですけれども、例えば年齢50歳で20年勤続している場合であれば、41歳から50歳の部分までについては調整率1.5がかかってきますし、30歳から40歳までの部分については1.0という形の調整率がかかってくるというものでございます。このように見ますと、イギリスの基礎裁定額については、この算定式の中に実質的な上限ないし下限がビルトインされているという仕組みでございます。
補償裁定額の部分につきましては、解雇によって生じた損害のうち、使用者の行為に起因すると認められる額の補填としての考え方がなされているところであります。ここにつきましては、※の2つ目の最後に記載しておりますけれども、解雇原因が労働者側にある場合については減額をしていくような仕組みの運用がなされているところでございます。
ドイツにつきましては、ちょっと見づらいのですけれども、3行目に上限額というものがありますが、まず法定の上限額が決まっております。一番右を見ていただきますと原則的な上限は賃金の12カ月分であります。
左に行きますとその例外的なものですけれども、50歳以上で勤続が15年の場合は賃金の15カ月分、55歳以上で勤続20年の場合は賃金18カ月分で、年齢と勤続年数が上がると少し上限が高まることになっております。一応この上限額を前提にしまして、基本的には裁判官の裁量によって決定をする。ただ、運用上は勤続年数×月給×0.5という算定式を基本にしまして、それとこの上限額を見ながら、裁判官が裁量で決定するということであります。
主な考慮要素のところは労働者の年齢ですとか勤続年数、4つ目に書いてありますけれども解雇の社会的不等性の程度といったものを考慮していくものでございます。
最後にフランスでございますけれども、こちらは表形式のようなものになっておりまして、勤続年数に応じて賠償金の下限ないし上限が月給の何カ月分かで決まってくる仕組みでございます。
下限の部分につきましては括弧書きで、例えば勤続1年のところであれば(0.5)と書いてありますけれども、こちらは従業員が11人未満の企業については下限が少し引き下げられるという形で、上限下限の額の中に企業規模といったものを勘案している仕組みでございます。
資料1にお戻りをいただきまして、先ほどの説明が⑪でございます。ちょっと長くなって恐縮ですが、あと6個ほどございます。
⑫は解消金の算定に当たって先ほど御紹介したとおり、イギリスのような何か算定式のような算定方法をあらかじめ定めておくべきかどうか、その上で上限下限を設けておくべきか。設ける場合につきましては、どの部分にどのように設定することが考えられるかという論点でございます。
⑬は解消金の考慮要素としまして、これは諸外国でも入っておりますけれども、解雇の無効事由ですとか労使の帰責性といったような、これは客観的に線引きがなかなか難しいものでありますけれども、これを盛り込む場合に算定をどのように行うか、ここは算定式にこれをそのまま入れるのは少し難しいかと思いますけれども、その場合の方法についての論点でございます。仮にこうした要素を入れる場合にあらかじめ考慮要素ですとか、考慮要素ごとの算定の割合、算定するときの上限下限といったものを定めておくべきかどうかを論点として挙げております。
⑭は労使合意の関係でありまして、仮に⑪⑫で一定の算定式のような方法を定める場合に、あらかじめ労使合意を行うことで算定式とは違う別段の定めを行うことを認めるかどうか、認める場合には算定式の方法による水準を上回るもののみ認めるのか、それとも下回るものも含めて合意に委ねるかどうか、「特に」以下は企業の支払い能力の考慮ですけれども、こちらについて労使合意による別段の定めで認めるのかどうか、それとも先ほどありましたとおり算定式や上下限の変更という形で設定をしていくかどうかという論点でございます。
⑮も前回御意見がありましたけれども、仮に今回裁判上の請求に限って解消金請求を認めたとした場合であっても、それ以外の裁判外で行う和解等に対して何かしらよい影響を及ぼすような形で参照基準になるようなモデル書面の例示をしてはどうかという論点でございます。
最後に権利行使の期間でございますけれども、⑯⑰と2つあります。
まず⑯は、これも②のところで仮に権利行使の方法を限定した場合につきましては、実質的な出訴期間制限といったものになると考えております。これを踏まえますと、前回お示ししたとおり、裁判原因の発生から訴えの提起までの期間は統計データでも平均で1.6年、労働審判の場合は紛争原因の発生から解決までの期間でありますけれども平均6カ月というデータがありますので、これらを踏まえて具体的にはどの程度の期間が適当かどうかというものでございます。
⑰はこうした権利行使期間の起算点の部分で、解雇がなされていてそれが無効であることを知ったときの主観的起算点か、解雇があったときという客観的起算点のいずれがよいのかという論点でございます。
長くなりましたけれども、以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございました。
それでは、これから議論に入りたいと思います。ただ、検討すべき論点が結構ございますので、前回と同様に資料1の5つの項目ごとに、つまり「対象となる解雇」「権利発生要件」「解消金の性質等」「解消金の算定」「権利行使の期間」という項目ごとに、順次議論をしてまいりたいと存じます。
それでは、1つ目の「対象となる解雇」でございますけれども、これにつきまして何か御意見がありましたら、お出しいただきたいと思います。
鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 前回お休みしましたので、前回の議論を十分には把握していないのですが、私も①で書かれているように対象を限定する必要はないのではないか、むしろ全ての解雇・雇い止めを対象としたほうがいいのではないかと考えております。
理由は、一つはここに書いてありますように一定の禁止解雇とかを除外したとしても、例えば訴訟外で和解をするようなことは妨げられないので、結局実益がないですし、もう一つは現在検討している金銭救済制度は解雇が不当で無効である場合において、現実的にはそれにもかかわらず労働者が職場に戻ることに事実上の困難があり、かつ金銭的な補償も十分には得られない場合があるという現状を踏まえ、労働者の利益保護の観点から、このような新たな選択肢を設けようということではないかと思います。そのような観点からしても、例えば禁止解雇の場合にこれを除外するというのは、その場合に労働者の選択肢を狭めることにもなりますので、対象の限定は必要ないのではないかと思います。
○岩村座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 私自身は結論については、いずれがよいか強い意見はないのですけれども、今、鹿野先生が言われた点はいずれももっともかなと感じております。これは主として資料の書き方の問題にはなるのかもしれませんけれども、仮に例外を認めないと申しますか、全ての解雇・雇い止めを対象とするとした場合に、もちろん実益の問題も重要かと思いますけれども、それに加えて制度の趣旨として労働者に選択肢をふやすところからして、そのほうが望ましいといったような、もう少し制度趣旨からの説明が加わっていたほうがいいのかなという印象を持ちましたので、その点だけつけ加えさせていただきます。
○岩村座長 貴重な御意見、御指摘をありがとうございます。
きょうは労働法学者がどういうわけか私しかいなくて非常に心もとないのですが、前回の議論でも大体労働法の先生方も全部でいいのではないかという御意見でありましたので、ここはこの方向性でいいのかなと思っております。よろしいでしょうか。
では、2番目の「権利発生要件」に移りたいと思います。これにつきまして御意見等ありましたら、お願いをしたいと思います。
笹井さん、どうぞ。
○笹井法務省民事局参事官 ②ですけれども、現時点で法務省といたしまして、意思表示の方法を限定すべきかどうかについて、何か特定の意見があるわけではございませんので、どちらが実効的にこの制度がうまく機能するかというような点も勘案して、御判断いただければと思っております。
ただ、②の記載で、もし裁判外での権利行使を可能とした場合には、労使合意なく使用者が金銭を支払った場合に新たな紛争が発生するのではないかという御指摘をいただいておりまして、確かにそういった面もあるのかなという感じがする一方、これは裁判上の行使に限った場合でも同じ問題が起こり得るのではないかという気がいたします。
すなわち、訴状等による意思表示を行ったといたしましても、まだ最終的に解消金の額が幾らなのかという結論が出ていない段階で、バックペイ等の発生を阻止するために使用者が少し多目に金銭を払うということはあり得ることでございまして、もちろん訴訟になっている場合には弁護士さんがついているとか、ある程度抑制が働くことはあるかもしれませんが、理屈の上では裁判上での権利行使に限った場合でも起こり得る問題ではないかなと思いますので、少し資料の書き方などを工夫していただければと思っております。
そうすると、こういった紛争の防止という点、それから新しい制度がうまく機能するためにも、ある程度予測可能性が高まるような形で金額が算定できるようにすることも重要ではないかと思いまして、この問題は「解消金の算定」のところで発言するべきものかもしれませんが、一応ここで申し上げておきたいと思います。
以上です。
○岩村座長 ありがとうございます。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 今、御指摘のあった部分は、私が前回発言した裁判外で認めた場合の弊害に関する御指摘で、大変的確な御指摘ではないかと思っております。ただ、裁判上の行使に限った場合を考えますと、その場合については既に請求権の存否、あるいは金額を確定するための手続が現に係属している前提ですので、控訴、上告と行けばそれなりに時間がかかることはあり得ますけれども、当該手続内で請求権の存否、金額が確定することが予定されている点では、相対的には問題は少ないのではないかと考えております。
しかし、いずれにしてもそのような問題が生ずるということは、裁判外であれば顕著でありますし、裁判上行使した場合でも、防げるものであれば防ぐ必要がある問題であるのかなと考えております。
それはなぜかと申しますと、結局意思表示がなされていて、しかし、まだ解雇が無効かどうかもわからないので請求権があるかどうかわかりません。 また、金額もわからない、という段階で、使用者の側が一定の金額を一方的に支払った場合に、それによって客観的には一定額の請求権が成立していて、それに対する満額の弁済がされたはずであるので、労働契約はその時点で終了したはずであるという事態が発生すると、やはり前回申しましたように、当該労働関係がそもそもの解雇によって終了したのか、その弁済によって終了したのか、それともその弁済によってもなお終了していないのかということについて、わからない状態が発生しますから、労働者の労働契約上の地位という非常に重要な地位について、そのような不安定な状況が生ずることが問題はないかということが一つあろうかと思います。
もう一つには、使用者がそのような支払いをすることによって、うまくいけばそのときに労働契約が遅くとも終了し、以後のバックペイの支払いを免れる利益を享受できる。それがそういう支払いをするための使用者のインセンティブになるのだろうと思いますけれども、労働者の側の視点に立って考えてみますと、この場合、なお請求権が成立したかどうか、また金額もわかっておりませんので、金額が例えば自分の口座に振り込まれていたとしても、そのお金に手をつけることができないのではないかと思われます。
幾ら使ってよいのかが全然わからない状態でお金だけが来ているにもかかわらず、その段階で労働契約がもう終了してしまってバックペイも発生しませんといったような不利益を労働者の側に生じさせることは、この制度を導入したときに、仮にそういうことが生ずるとすれば問題なのではないかなと考えておりますので、可能であればそのような事態が生じないような制度設計が望ましいのだろうと思います。
ただ、裁判上の行使に限っただけでは全ての穴を塞ぐことはできないというのは、先ほどの御指摘のとおりで、仮にその点について考えてみたといたしますと、いろいろな考え方があり得るかと思いますが、私自身は3つぐらいの可能性が考えられるのかなと思っております。
あくまで現時点での私見ですけれども、1つは意思表示で請求権が発生するという考え方を捨ててしまって、判決確定によって請求権が初めて成立するという、したがってこれは形成訴訟の構成をとるという考え方で、ここまで行けば請求権そのものが判決確定まで発生しませんので、その種の問題は一切生じないことにはなろうかと思います。
ただシステム検、あるいはそれに至る検討の過程において、形成判決という構想についてはさまざまな問題点が指摘されて、現状では選択肢として前面には出ていない状況ですので、そこまで戻ってもう一回議論というのはなかなか難しい面もあるのかなと思われますし、また、請求権を発生させる形成の訴えという制度が、なかなかほかでぴったりくる先例があるかというと難しいところもあるのかなと、そこのあたりがこの第1の構成との関係ではハードルというかネックになってくるのかなと考えております。
2番目の考え方としましては、形成の訴えではなく、意思表示を起源として請求権が発生するという考え方をとりつつ、しかし、その効果の発生を一種の停止条件にかからしめるような考えのもとに制度をつくることはあり得るのかなと考えておりまして、具体的には意思表示だけではなく、その意思表示に基づく請求権の金額が裁判上確定した場合に、その請求権が成立する、あるいは裁判外での行使を認める立場に立った場合には協議によって確定した場合にも、請求権は成立するような構成をとることによって、金額未確定の間には請求権が成立しないという説明をすることはあり得るのかもしれません。
3番目の考え方としましては、請求権そのものは意思表示によって発生する前提に立ちつつ、しかしながら先ほど指摘しましたが、いつ労働関係が終了したかがわからない問題への対応といたしまして、労働関係終了の効果は金額が確定した上でないと発生しない。請求権は成立しているのだけれども、金額が確定した後でないと幾ら弁済をしても、労働関係終了の効果は生じないような構成をとる考え方もあろうかと思います。
私自身が現在思いついているところはその程度でありますが、今3つ挙げましたうちの最初のものですと、これはもう訴訟手続でやるしかないということになりますけれども、あるいは内容的に裁判所が裁量的に請求権を形成していくという考え方に立つとすれば、非訟事件という構成もあり得るのかもしれませんが、いずれにしても裁判上ということになるかと思います。
後二者の構成、実質的には金額が確定しないと労働契約終了の効果が生じないものとすること、それをどういった法律構成で表現するかということかと思いますけれども、もし後二者のような構成をとるとすれば、これは原理的には裁判外での意思表示を認めたとしても、それ自体によって直ちに、従来私が指摘しております弊害が生ずることにはならないので、そういう意味では裁判外で意思表示を認めるという構成にもつながり得る考え方かと思います。
ただ、この点は繰り返しになりますけれども、裁判外での意思表示を認めることの実益と申しますか意義は、これも事務局が整理いただいたとおり、実際には和解が成立しない限りワークしないのかなと考えますと、そこがはっきりしないところがあります。
あと、この点も実際には相当重要なのかなとも思いますけれども、法的にここでぎりぎり検討すれば、裁判外でもできて弊害も生じないことになるのかもしれないのですが、実際にこの制度を使う労働者、あるいは使用者が制度の効果等について十分に法的な知識を持って理解して行動することが期待できるのかというと、そこは実際上難しい点があったとしますと、裁判外で認めることによって、あるいは思わぬ混乱を招くというようなことも、政策的には懸念するべき問題としてはあるのかなとも感じますので、そのあたりを考慮の上で最終的には判断をしていくことになるのかなと現時点では考えております。
長くなりまして恐縮ですが、以上です。
○岩村座長 大変詳しいコメントと御意見をありがとうございました。
私もどちらかというと裁判外でこの行使を認めることについてはかなり問題が多いだろうと思っていて、裁判上のほうがいいだろうと考えています。ただ、裁判上で今度は使用者のほうが手続の中でもう払ってしまいましたというようなことをやった場合も、やはり垣内委員が今御指摘されたように、それによって平穏に終わるかというと、かえって混乱を招くことは同じように想定されるかなと思います。使用者側が一方的にやっているだけであるので、金額も確定しない段階でそれをやられると、結局のところ紛争はより複雑化し、拡大する可能性があるのかなと思っています。
そういう意味では何らかの法的なテクニックを使って、できるだけ裁判上でいろいろなものを完結させるほうが適切だろうと思います。
垣内先生がおっしゃったように、最後の2つの御提案については、これを入れると多分裁判上でもそれで、裁判外でもできるのではないかということがあるのですが、そうなると多分、合意をすればよいという話になって、合意のところで結局、あとでよく考えると不当に低い額で合意させられたとか、その手の問題が裁判外では結局また起きる可能性があって、それはまた振り出しに戻るという議論になってしまうかなとも思います。ですので、方向性としてはなるべく裁判の中で解決するような形で法律構成その他を検討するほうがいいかなと私は思っております。
「権利発生要件」については、ほかにはいかがでございましょうか。請求の撤回がやや難問なのですが、前回も笹井参事官からも御指摘をいただいたように、裁判上撤回してもそれが実体法上の撤回ではないという問題があります。
他方で、実体法上の請求権の撤回といった場合に労働事件でもよく起こるのが、そのとき熱くなって撤回してしまったのだけれども、2~3日たったら「あ、しまった」と思ったというのがよく出てくるのです。これは労働事件では特に辞職の場合に多いのですが、そういった場合を考えたときにどうするのかというのがどうしてもあるかなと思います。だから裁判上の撤回の問題と実体法上の撤回の問題をどう整理するのかというのは、どうしてもそこを整理しておく必要があるかなと思うのですが、私も余りいい知恵が浮かばないのが実情であります。
例えば裁判上の撤回をもって、実体法上の請求権の撤回もしたのだというように何らかの仕組みを入れてしまう。あるいはそういう解釈なのだとするのはあるのかもしれませんけれども、それが従来の民事訴訟法上の一般理論と整合性があるのかです。特に後者のように解釈をやるというのが整合性があるのかどうかは気になるところだと思います。
もう一つは一旦撤回した後、冷静になって考えたときに消費者契約のクーリングオフみたいに8日以内だったら撤回の撤回もあり得るような仕組みを考えるのかどうかという論点も実はあるのかなと思います。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 内容的には大変難しい問題で、どの時点がいいのかはなかなかすぐに申し上げにくいところがありますけれども、その方向として御指摘が前回もありましたように、基本的には実体法上の形成権、あるいはそれに類する権利なのだと考えたとしますと、実体法上それがいつまで撤回できるのかについては考えておく必要はある問題なのだろうと思います。
その上で、幾つか選択肢があり得るところで、一番遅く考えると労働契約終了までは、つまり解決金の支払いが実際なされるまでは撤回ができるという考え方も一つあり得て、これが撤回の可能性を労働者に留保し、それによって最終的には不当で無効であった解雇に起因して労働関係が終了するという選択をしない余地を最後まで認める点では、労働者保護には厚いところなのかもしれません。
裁判上の行使に限った場合に、判決等が確定した後でも撤回できることがいいのかどうかはいろいろ考え方があり得るところなのかなと思いますが、判決で解消金の請求権が認められたとしても、もう要らないということであれば撤回していけないのかというと、原理的にはいけないことはないのかなという感じもいたしております。ただ、勢いで撤回したというような弊害をどう考えるのかという問題はあろうかと思いますので、現時点で私自身は結論が出ておりませんけれども、そのあたりを考えて終期について考えることになるのかなと思っておりまして、いずれにしても余り早い段階で撤回ができなくなることは望ましくないのかなという程度には、現段階では考えているところです。
○岩村座長 ありがとうございます。
では笹井参事官、どうぞ。
○笹井法務省民事局参事官 今、岩村先生から御指摘があった以外のところで細かいお話ですけれども、まず④のところで今の事務局の御説明によると無期への転換等の例を出されまして、恐らくあらかじめの放棄というか、あらかじめこの制度は使いませんよということはできないようにしていくことになるのかなと思います。
ただ、これは裁判外での権利行使を可能とするかどうかにもかかわってまいりますが、仮に裁判外での権利行使はできないことにしたとしましても、事前の裁判外での和解での解決は、実際には多く行われるだろうと思いますので、そういった道もあり得ることを考えた上での制度設計をしておくべきだろうと思います。
そうしたときに④の問題ですけれども、就業規則とか労働契約みたいなところであらかじめ制度の利用を制限していくことはできないといたしましても、実際には裁判上の権利行使がされないまま問題が解決される余地は残しておかないといけないと思われまして、事前の制度利用の道を閉ざすことは禁ずるといたしましても、ではいつまでがその事前なのかを検討しておかないといけないだろうと思います。
それは恐らく労働契約の終了とか裁判の確定ということではなくて、不当な解雇の意思表示がされたことを基準にするのではないかと思いますので、私の理解でよろしければ、そういったことであるということを確認しておきたいのが一つです。
それから、⑤で相殺がどうするかということで、不法行為に基づく損害賠償請求権を受動債権とする相殺が民法上禁じられていることとの関係が問題になるかもしれませんが、今回の債権法改正によりまして、この受働債権の制限が積極加害意図がある場合などに限定されており、その施行が平成32年ですので、それの施行時期との関係を考えますと、大きな問題にはならないのかなと思います。
ただ、他方で、あくまで積極加害意図がある場合の損害賠償請求権を受働債権とすることが禁じられますので、例えば本当に嫌がらせみたいなことで解雇をしたとか、差別的解雇とかそういった場面での、これまた損害賠償請求権的なものが解消金の中に入ってくるかどうかという後の論点とも関連しますけれども、そういった損害賠償請求権的な性質をあわせ持つことになりますと、それと例外的に害意がある場面での相殺の可否が民法との関係で問題になるかもしれないことだけ申し上げておきたいと思います。
以上です。
○岩村座長 ありがとうございます。
鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 今、④と⑤について御指摘がありましたので一言申し上げますと、私も④の前半のあらかじめ放棄するということは認めるべきではないと思っております。例えて言うと、民法でも時効の利益の放棄はあらかじめすることはできないとなっておりまして、その趣旨の一つに、この場合、強い立場にある債権者が債務者に対してその立場を濫用してあらかじめ放棄させることが類型的に予想されるので、その濫用を防ぐという趣旨があるのだといわれていますが、同様の理由がここに妥当するのではないかと思います。一方で、あらかじめでない放棄については、訴訟外で和解をすることは実際に多く行われるでしょうし、それを妨げる必要はないのかなと思っておりまして、その基準時は解雇の意思表示の時とするべきだということについても、同意見であります。
相殺については、そもそも損害賠償と捉えていいのかどうかというのが一つ前提としてありまして、それは次の「解消金の性質等」とかかわるところだろうと思いますけれども、私個人は損害賠償とは別の性質のもので、解消金は解消金と純化して捉えたほうがいいのではないかと考えているところであります。
それを前提とすると、不法行為の損害賠償と同列に扱うということは必ずしも必要ではなくなります。ただ一方で賃金等の請求権と同じように、果たして労働者にこれを現に受け取らせる必要性が高いかどうかというあたりで検討が必要なのかと思います。私はその点に定見はありませんけれども、そういうことを考える必要があると思いました。
請求の撤回については、本当に難しいところです。まず解雇の通告があって、しかしそれは不当で無効な解雇だったということを前提にして、だけれども、労働者のほうで相当額の解消金の支払いがあれば、労働契約関係を終了させましょうという請求ですから、支払いがセットになっているものと思われます。そこだけを捉えると解消金の支払いがあるまでは労働者に撤回を認めることが、労働者の利益の観点からもいいのかなと思うのです。
一方で、この請求を裁判上の請求等に限るとなったときに、判決が既に出たけれどまだ支払いはなされていないという段階まできて撤回を認めるということが果たして妥当なのかどうかについては、別途考える必要があるのだろうと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
まず④については、私もあらかじめ労働契約や特に就業規則で、要するにこの制度は利用しない別途の仕組みで、会社独自のものでやっておくことは、やはりこれは公序良俗というような理由で、そもそも無効であると考えるべきだと思っています。理由はもう既に皆様方がおっしゃられたとおりだと思います。
問題は事後的なものですけれども、事後的というのはやはり解雇がなされた後で、解雇をめぐる紛争が発生する、解雇が契機だと思いますから、解雇が始点なのだと思いますけれども、そこから後で、和解なので結局解決をしてこれを放棄すること自体は、私は塞がないほうがいいだろうと思っています。それは何でもかんでも裁判所に持っていくとなると、恐らく裁判所がパンクする可能性が高いし、自主的に解決できるのであれば、それはそのほうがいいだろうということかなと思います。
それから、請求の撤回はなかなか難しいのですが、多分、判決が出るまでは撤回してもいいというのが一つの整理の仕方かもしれないという気はします。ただ、実際には判決が出た後でも、当事者間でさらに話し合いをやって、実は訴訟外で和解をしてしまってということもあるのかもしれません。その辺がちょっと微妙かなという気はしますが、実体法上の請求権との兼ね合いでも、やはり判決が出るまで、あるいは口頭弁論終結時ぐらいまでは撤回もあってもいいのかなという気はします。
あとは多分、その判決が出た後にさらにやめるという話になると、これは何らかの形で恐らく後ろで訴訟外で話し合いがついて、判決の執行は求めず、一定の別の金銭の支払いというような形でもって最終的に当事者間で決着がついているケースなのかなというのをちょっと考えると、そういった場合、これも否定する必要は余りないかなという気はしていますけれども、それは撤回ということで整理するのかどうかは、ちょっとまた別の話なのではないかという気がします。
相殺は労働事件でときどきあるのは、労働者を解雇して地位確認訴訟とか何かを起こしてきたときに、昔のいろいろな過失による損害とか何かをいろいろ探し出してきて、嫌がらせ的にと言うと語弊がありますけれども、それで損害賠償請求してくることがないわけではないのです。そういったときに、果たして今の新しい民法の規定だと、必ずしも相殺の禁止に抵触しない可能性もあって、そこをどうするのかという問題として考えることなのかなとは思います。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 請求の撤回の時期について、今、先生方からも御意見があったところを踏まえてもう少し私の考えを敷衍させていただきますと、労働者の側から考えると労働契約終了時までが一番長いことになるのです。
他方、使用者の側の立場も考えたときに少なくとも判決が確定して、特定の金額を支払えば労働契約をそれによって終了させることができるという地位が、相手方使用者にも確定的に生じた時点で、なおその労働者の一方の意思のみでその関係を消滅させることができるのかを考える必要があるのかなと思われますので、判決確定後について、そのような使用者の側の利益も一定の保護に値すると考えるのであれば、撤回は一方的にはできないという考え方は十分あり得るのだろうと思います。
また、訴えの取り下げについては、これは同意云々はとりあえず別としますと、判決確定までできるというのが訴訟法上の規律でもありますので、それとも平仄が合うことにはなるのかなと思います。
それから、④のところですけれども、今まで御発言があった先生方の御意見はいずれも私も賛同するところで、御参考までにまた少し場面は違う話になりますけれども、仲裁法上、労働者と使用者の間の仲裁合意については、将来の紛争に関するものは無効だという規律が現在仲裁法上の附則に置かれておりますので、それなども参考にして考えますと、解雇がこの場合には問題となると思いますが、将来の解雇について制度が使えないというのは問題があるだろうということですけれども、既にされた解雇については、和解等の合意によって処分をすることはあり得ていいのではないのかなと思っております。
⑤の相殺について私自身は定見はないのですけれども、関連して検討しておくべき問題といたしまして、差し押さえができるかどうかという問題もやや似た問題としてあろうかと思います。これは賃金・退職金等については差し押さえ禁止とされている部分があるわけですけれども、解消金の性質等に照らして、どこまでそれと同様の規律をすべきなのかといったことを少し考える必要があるのかなと考えております。
以上です。
○岩村座長 ありがとうございます。
「権利発生要件」については大体よろしいでしょうか。
それでは次に「解消金の性質等」に移りたいと思います。こちらにつきましても何か御意見等あれば、お出しいただければと思います。
恐らく出発点的なものとして⑥が挙がっていまして、定義をどう考えるかということで、きょうの資料では無効な解雇として確認された労働者としての地位を、労働者の選択により解消する対価と考えるかどうなのかという形で問題が提起されています。そんなに物すごく大きく違うものではないのですが、きょう御欠席なのですけれども、神吉委員が「違法な解雇によって本来存続しているはずの契約を将来にわたって解消する対価」というような言い方も前回おっしゃっていたところなので、その辺をどう理解するかということかと思いますが、ただ、余り実質は変わらないのではないかという気はするのですけれども、何かコメント等あればいただければと思います。
ちょっと肝心の御本人がいないのであれなのですが、感覚としては表現の問題で、言わんとするところは基本的には同じなのかなという感じがします。結局、きょうの資料で書いていただいているのも、労働者としての地位を労働者の選択により解消するということなので、本来であれば続いているはずのものを、解消金をもらうことによってこれで切りましょうという、それに対する対価だとなると、結局、前回神吉委員がおっしゃっていたような本来存続しているはずの契約を将来にわたって解消するというのを、どこに視点を置いて表現するかという問題かという気がするので、それほど実質に大きな違いはないのかなと思います。
問題は、それが具体的に効果に差が生じるということであれば、そこはかなり大きい問題だということにはなるのですが、前回の議論を聞いていた記憶では、少し表現が違うことによってこの点についての考え方に、何か大きな効果の違いが出てくるほどのことではなかったのかなというようには記憶しているところです。
一番大きな問題は⑦、資料3になりますが、事務局でもかなりいろいろ整理していただいているわけですけれども、私の印象ではA案の下につながっているパターン1については、どちらかというとデメリットのほうが多いよねというのが、ここの検討会での方向だったかなとは思います。B案の中で幾つかパターンが2、3、4という形でできていて、ただ、ここになるとそれぞれが一長一短というところではあります。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 大変難しい問題かなと思いますけれども、今、岩村座長も御指摘があったようにパターン1は、デメリットは幾つかここで挙げられていることではあるのですけれども、ただ、メリットとしては、やはりこれは理論的に一番すっきりしていると申しますか、これで行けるのであれば、これでもあり得る選択肢なのかなと私自身は思っておりますけれども、デメリットとして実質的に何に重きを置くのかということが政策判断としてはきっと重要になるのだろうなと思っております。
この中で特に問題となっているのはバックペイの履行確保の問題で、これは非常に重要だと考えるのであれば、B案の下に挙がっているパターン2とか3とか4といった考え方の可能性を模索していくことになる。そこは強制執行等ができるのだからそれほど問題ないと割り切るのであれば、パターン1もあり得て、その際、併合強制等は難しいかとは思いますので、ばらばらの訴訟というのもあり得ることはあり得るのかもしれないですけれども、それもやむを得ないと考えるかどうかというあたりなのかなと思います。
パターン2以降については、いずれもそれぞれにまさに御整理いただいたとおりメリットとデメリットという課題はあるということで、私自身は前回パターン2のようなことを一案として申し上げたところで、もし充当について何か適切な特則等が置けるのであれば、これも一つの可能性かなとは考えております。
パターン3についても、これはこれであり得るのかなと考えております。
ちょっとこの説明の中で、バックペイが併合請求されなかった場合に労働契約解消補償金の請求と、その支払いのみで就労の意思が喪失したものとする考え方が述べられているのですけれども、ここはパターン3に至った場合でもあり得るのかなと考えております。
というのは、上のところの効果の説明の枠組みとしては、あくまでバックペイも支払ったところで労働契約終了になっておりますので、労働者としてはそういう意思で意思表示をするのだと考えますと、バックペイが全部支払われるまでは就労の意思は失わないのだという考え方もあるいはあり得るのかなと思われますので、そのあたりも幾つか組み合わせはあり得るのかなと感じているところです。
余り定まった方向性がなくて恐縮ですけれども、現時点では以上です。
○岩村座長 ありがとうございます。
パターン1はおっしゃるようにメリットもあるのですが、やはりバックペイの問題が政策的考慮としては一番大きいのかなと思うので、そこのデメリットのところがパターン1だとどうしても解消できないということで、ある意味B案のパターン2と入っていますが、それはパターン1が抱えている問題点を一種の法定充当のやり方を導入することによって解消しようという案だと思います。私自身はこれはなかなか魅力的かなと思っています。
パターン3はバックペイの問題ですけれども、私もバックペイ請求訴訟が併合提起されなかった場合について、バックペイがいつまで発生するかというのは、ここで書かれている考え方もありますけれども、今、垣内委員がおっしゃったように、少なくとも補償金の請求の判決が出るまではやはり労働の意思は継続していると理解するということも可能だろうと思いますので、そういう可能性も含めてここは考える必要があるのではないかなと思っています。
通常考えると、このパターン3の場合で労働契約解消補償金なるものとバックペイの併合請求をしないことは余り考えられないのですが、弁護士がついていればまず大丈夫だと思うのですけれども、本人訴訟の場合だと、場合によって解消補償金なるものの請求しか立ててこない、裁判官がいろいろ説諭しても理解してくれないということが起こり得るかなと。もちろんそれは逆に使用者のほうがバックペイについて反訴を提起すれば、それでいいということではあるのですけれども、そういう問題はどうしても、一応頭の中で考えておく必要があるかなと思っています。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 先ほどパターン4について余り言及しなかったのですけれども、現状でこの4つのパターンを並べて見ている限りでは、パターン4が一番課題は多いのかなという印象を今の段階では持っております。
まず、実体法上は別の請求権であるという前提に立ちつつ併合提起を義務づけるところが、一つハードルとしてあるように思いますし、その際に併合提起を義務づける併合強制ということも、効果というのは恐らく併合提起しないと失権するということなのだと思われますが、実体法上成立しているバックペイの請求権をそれで失わせてしまっていいのかという、既に御指摘のあった点はかなり大きな問題かなと考えておりますので、この中で相対的には少し難しいのかなという印象を持っているところです。
○岩村座長 鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 余りつけ加えるところもないのですけれども、私も当初パターン1が一番すっきりしていて、理屈の上では矛盾なく説明できるので魅力的だなとは思ったのです。ただ、この労働契約の分野において、やはりバックペイの履行確保がとても重要だということであり、そのような政策的な考慮からすると、パターン1には課題が大きいということで、パターン2、3あたりを検討されたということで理解しました。
ただ、パターン4については、今も垣内委員がおっしゃったように、やはりこれはちょっと選択肢から除外されるべきだと思っているところです。訴訟法的にもそうかもしれませんが、最後に言われたように、これが義務づけとなると、この段階で請求をしなかったら、結局バックペイはとれなくなってしまうという失権効が労働者にとっては非常に大きな影響を与え、それはバックペイに関して言うと、従来の仕組みよりマイナスに働くことにもなりますので、パターン4は考えにくいかなと思っているところです。
パターン2の充当について、これも私は前回の議論をお聞きしていないのでよくわからないのですが、民法の充当の規定が原則としてあって、それについての充当のいわば特則を置くことが、法技術的な観点も含めて可能であるかどうかにつきちょっと整理が必要だろうと思います。それが可能であるとすると、こういう形もあり得るのかなと、今のところ感想めいたことしか言えませんけれども、考えている次第です。
○岩村座長 ありがとうございます。
パターン2については、私は非常に魅力的だと思うのですが、民法の一般原理との間の調整がつくのかという問題があることはおっしゃるとおりだと思います。
パターン3は損害賠償、これも一つの有力な案だと思いますけれども、他方で損害賠償のところは、損害賠償を請求するケースとしないケースとあり得て、必ず損害賠償がないとだめというのはちょっと難しいかなというような気がしているので、パターン2、パターン3ともに損害賠償は一応括弧の中に入れておくという扱いでいいのかなと、今のところ私は考えています。
パターン4は既に御指摘のあったように、これはちょっとハードルが高過ぎて現実的には非常に困難だろうという気がしております。
よろしければ次に行きたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
次が「解消金の算定」でございます。これについても何か御意見等があればと思いますがいかがでございましょうか。
鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 ちょっと前提がわかってないのかもしれないのですが、算定のいろいろな考慮要素とか、あるいは一定の基準を考えようということなのですけれども、これは裁判上の請求になったときには、普通の例えば損害賠償請求の場合と同様に、原告となる労働者が、これこれで幾らの解消金の請求権があるのだというような形で主張していく、そのように理解してよろしいでしょうか。
○岩村座長 事務局のほうで、何かその点についてお考えがあればお願いします
○坂本労働関係法課課長補佐 基本的にはどのような考慮要素、ないしその算定の方法を設けるかに深くかかわってくるかと思いますけれども、仮に客観的な形で算定式のようなものができたりするのであれば、基本的には先生がおっしゃったとおり、請求のときに労働者側で金額を明示した上で請求をしていただく形のものを想定しております。
○岩村座長 よろしいでしょうか。
○鹿野委員 はい。
○岩村座長 ありがとうございます。
では垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 今の点ですけれども、私も基本的には普通の給付の訴えかと思いますので、訴額として幾らということを明示して判決を求めることになるのだと思います。その関係で申しますと、考慮要素等はまさに労働法の先生方のお知恵が必要なところかと思っておりますので、私自身は特に申し上げることもないのですけれども、裁判外はともかくとして、少なくとも裁判上その金額を確定していくに際しては、可能であれば客観的な算定式のようなものがあればそのほうが望ましいでしょう。
その際、先ほどの請求の特定のことも考えますと、できれば上限がわかるような算定式があって、後はそれに対してどういう減額事由があり得るのかということを考えて減額があり得るという、損害賠償請求で申しますと損害額が上限で、そこから過失相殺等で減額はあり得るのだと思いますけれども、それと似たような形でないと、増額も減額もいろいろあり得る形になってきますと、なかなか労働者としても訴え提起の際にどういう金額で訴え提起するのかと、それが過小であった場合に一々釈明をして請求の趣旨を訂正してというような話になってきますので、余り好ましくはないのかなと思います。
ただ、ここはこの制度のまさに中核をなす部分でありますので、政策的にこの場合には増額をしなければいけないというようなことがあるのであれば、それを前提に考えなければいけないことではあるのかなと感じているところです。
○岩村座長 ありがとうございます。
笹井参事官、どうぞ。
○笹井法務省民事局参事官 私も、垣内先生から今御指摘がございましたように、ある程度予測可能性を確保ができるような形にしていただけるとよろしいのではないかと思います。と申しますのは、全くのフリーハンドになりますと、裁判所にとってどういう形で算定していけばいいのか,その判断基準が明確でないということがあろうかと思います。
また、労働者がこの制度を使うことがメリットになるのかならないのかの判断が、この制度がうまくワークするのかどうかというところで重要なのではないかと思います。
これは私が申し上げることではないのかもしれませんが、やはりある程度の予見可能性が確保されたほうがいいのではないかと思っております。その上でこれも労働法の先生方、あるいは事務局の皆様方のほうがお詳しいことだと思いますけれども、どういった考慮要素があるのかということを、制度趣旨との関係で整合的にうまく説明していただけるようにお願いしたい。すなわち、なぜこの要素がこういう方向で機能するのかということについての理論的な整理をしていただければと思っております。
もう一つは前回と同じようなことを申し上げて恐縮ですけれども、やはり慰謝料的な部分が考慮されるのか、されないのかということで、これは解雇の不当性が考慮されるかともかかわってくるかもしれませんが、損害賠償請求権が別訴で起こされるといったときに、それとの重複感をどう処理するのかという問題は、やはり残るのかなと思っております。
先ほど鹿野先生がおっしゃいましたように、解消金は解消金、損害賠償請求権は損害賠償請求権ということで、理論的には分けられるのだろうと思っておりますが、そのときに同じような考慮要素が、慰謝料的なものが二重に請求できると、やはり問題だろうと思います。解消金のほうは政策的に不当な解雇を禁圧するための抑止手段みたいな形で考慮するのであり、損害賠償請求権とは趣旨が異なるのだということで、もしかすると説明がつくのかもしれませんが、ちょっとそこは私の思いつきみたいなところで、それが妥当かどうかということも含めて、先生方の御知見をいただければと思っております。
以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございます。
私自身は、やはり少なくともこの解消金なり何なりほかの用語でもいいのですが、これについては諸外国の例をきょう資料4で御紹介いただいたように、大体上限と下限を設けているようなこともあり、また、笹井参事官も今おっしゃったようにある程度当事者、とりわけ労働者、そして他方で使用者の予見可能性を一応見せてあげるという観点からしても、上下限を置くのは必要というか適切なのかなと思っております。
上限のほうはやはりそれをある程度決めておかないと際限なく請求されて、訴訟が結局非常に複雑になってしまう可能性がある。下限のほうはやはりある意味で解雇無効が前提になるので、解雇される労働者のそういう意味での最低限の補償というものが必要ではないかというようなことから下限が求められるのだろうと思っています。
その枠の中で、労働者側としては、こうこうこういうことだから上限いっぱいよこせということを主張、立証して訴訟活動を行う。使用者からすると労働者が解雇されたについては、こうこうこういう理由があるので100%ではなく50%にすべきだというような議論になるのかなと考えていて、最終的には裁判所がそれを評価して、どう額を算定するかということかとイメージとしては思っています。
損害賠償との関係ですが、従来の解雇訴訟で損害賠償で主として認められてきたのは、人格権侵害が伴っている場合で、解雇の不当性そのものから慰謝料なりを認めている例はないわけではないのですが、余り多くないのかなと思っています。それは金銭、つまりバックペイが支払われることによって、基本的には慰謝されるという理解をこれまで大体してきていると思いますので、そういう点で解雇の不当性という程度を考慮することから、直ちに損害賠償、特に慰謝料との関係で重複が生じることにはならないかなと個人的には思っています。
あと、もう一つの手としては、非常に不当な解雇の場合は、そもそも100%で張りつけてしまうような、つまり、例えば余りいい例ではありませんけれども、明々白々の女性であることを理由とする解雇などは、それが立証されれば100%で張りつけてしまっていいのではないかというような感じを持っていて、それにさらに人格権侵害が伴えば、労働者の側は慰謝料請求をするということなのかなと漠としては考えております。
どういう考慮要素かということは、きょうのこの資料1だと、例えば一定の考慮要素で年齢とか勤続年数とか入っていますけれども、年齢とか勤続年数は恐らくは先ほどの「解消金の性質等」の下の⑥をどう見るかと関係していて、解雇が解消金によって解消される時点において、本来であればまだ続くのにそれを切る選択をした場合、本来ならばまだ続く部分のところを金額で評価するといったときに、一つの重要な要素としては、そういう意味では年齢とか勤続年数が入ってくるでしょうというのは、ある意味労働関係を見ているものからすると、非常に自然なものだろうという気がします。
同じようなことが、例えば再就職に要する期間も、一応実証的には年齢が上がると再就職が難しくなることもあるので、その辺がやはり契約を解消するのであれば、それも考慮しましょうということかなと理解します。
他方で、精神的損害をここで入れるかどうかは多分、ここには書いてありますけれども、そこはその辺の整理、特に損害賠償との整理がきちっとついていない中で列挙されているものだと理解した上で、今後どう整理するかという中で、場合によってはこの精神的損害は消えることもあるのかもしれないとは思っています。
もう一つお尋ねしておきたいのは、論点の⑭でありまして、一定の算定方法を定めたときに、他方でしかし、労使の合意による別段の定めである程度柔軟にやっていいのかという論点も挙がっているのですが、これはいかがでございましょうかということであります。
直感的に微妙なのは、先ほどの論点でもありました事前にそもそもこの解消金の制度を使ってはいけない、うちの社内制度でやるのですというのはだめだという話だったので、ここはそうではなくて、この制度を使うのだけれども、しかし、解消金のところについては労使で特段の合意を定めていれば、それを使いましょうという話であるわけですが、それをお認めするかということかと思います。
これを認めるメリットは、企業の実情に応じた解消金なりの水準を定めることができるだろうというのが一つのメリットなのですが、他方でデメリットは、労使合意なるものをどういう要件でどういう形で認めるかにかかっています。
これは御承知のように我が国の場合は事業所内に過半数組合がある場合は、その協定でいろいろなものを決めるやり方をしていますけれども、実は事業所内に過半数組合があると企業は、今や圧倒的少数になってしまっていて、多くの場合は従業員の過半数の代表者でやっているのが実務だと思います。ところが従業員の過半数の代表者については、いろいろな問題点が指摘されているところなので、それに乗っかってこの労使合意を認めていいのかどうかというのは、一つの論点としてあるだろうと思います。
他方で、別のものがあるのかと言われると、現行法上、少なくとも労働法制の中ではちょっと見つからない。裁量労働のところの労使委員会はありますけれども、それぐらいしかなくて、ちょっと替わるものが見つからないのが実情ですから、従業員の過半数の代表者という人がよほどしっかりしていないと、結局話は先ほどの事前の合意の話と同じようなことになってしまって、事業主側の言いなりで解消金の算定方式についての合意が決められてしまうのではないかという懸念が当然出てくるだろうと思います。ですから、そういったことにならないような担保を何か考えた上で、一定の要件のもとでは労使の合意による算定方式を認めるのもあるのかもしれないという気はします。
では、どういう要件のもとでというのは、具体的な制度設計をしようとすると、結構難しいかなという気がしますから、例えば上下限については上方向にだけ修正できるというやり方もないわけではないのですが、そうすると今度は上下限が下方向に、そもそもデフォルトが下がってしまう可能性もあって、非常に微妙なところかなという気はします。あとは企業規模別に算定式を少し考えるかというような形で対応するというのもあるかもしれません。
鹿野委員、どうぞ。私だけがしゃべっていて申しわけありません。
○鹿野委員 ここでの考慮要素については、私は労働法ではないので、主に労働法の先生方に御検討いただくことになると思うのですが、外部の人間から見て、やはり予測可能性ということから考えると、ある一定の客観的な要素ではじき出されるものをまずは上限として、そこから一定の減額事由を、これは垣内先生が先ほど言われたこととも重複すると思いますが、そういうものを設定することがいいのではないかと私も思います。
もう一つ、ここには、年齢、勤続年数、あるいは再就職に要する期間というようなことが書かれているのですが、これについては、これらが考慮要素になるというだけであれば、なるほどと思うのですが、一定の計算式をとるということになったときには若干重複するものもあるのかなと思います。例えば年齢によっては再就職に要する期間が違ってくることにもなりましょうし、あるいは勤続年数でも年齢が考慮され、事実上影響関係にあるということにもなりましょう。ですから、計算式方式を採る場合には、そこら辺は余り重複がないような形で客観的な要素をピックアップするのがよいのではないかと思います。
それから、先ほど笹井参事官からも御指摘があったように、やはり損害賠償を別立てで置くとすると、そちらに本来行くべき要素は、とりあえずここから抜いて置いてということになるのではないかと思われます。
もう一つ、以前に使用者側とか労働者側が入られた検討会のときに、使用者の方から、結論的には解雇は無効だったかもしれないけれども、その中には労働者にも一定の帰責性があるような場合もかなりあるのだというようなお話が繰り返しなされました。そこで、そこら辺の事情をこれに入れるのかどうかということについても、検討が必要なのかなと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
最後の点について言うと、私も労働委員会などやった感覚では、よく解雇は無効だけれども、しかし、ポイント制でもしあらわすとすると、労働者51の使用者49で解雇無効というのはあることなので、その場合はそれをどういう形で考慮するかと裁判所に投げると、それは困ると言われるのかもしれませんが、資料1で挙がっているもので言えば、解雇の不当性の程度のところにそれが織り込まれていると考えるのかなと思っています。
よろしければ、あと最後の1点「権利行使の期間」が残っております。大体前回の議論まででは、やはり一定の期間までということで、権利行使の最長期間を置いたほうがいいのではないかというのが、私の記憶では前回大体そういう議論だったように思っています。
ただ、その期間をどこに置くのかというのは難しい話で、やはり⑯で挙がっているような裁判の提起までの期間とか労働審判、労働審判は当然早いのですが、そういったものを考慮して考えるということだと思います。平均で1.6年だと、適切なのは本当は中位値なのかもしれないのですが、余り短いとそれはそれで問題を生じせしめるし、余り長いとそれはそれで問題を発生させるということもあり、1.6年を考え方の一つの出発点としてどこまで猶予を認めるかというところなのかなという気がします。
大体すぐに裁判所と考えるわけでは必ずしもないので、幾つかいろいろな、紛争期間とか相談とかをやった上で、最終的に裁判所に到達するようなことだと思いますから、もう少し長目の期間が落としどころとしては模索するところだと思います。
あともう一つ、⑰の権利行使の起算点ですが、これは鹿野先生いかがですか。
○鹿野委員 まず⑯について発言してもいいですか。
⑯について申し上げますと、一つは無効な解雇のときに解雇無効で地位確認ということについては、このような期間の制限がないですよね。
○岩村座長 ないですね。
○鹿野委員 それを考えると、こちらの請求権だけ非常に短くすることには余りメリットがないように思われます。ただ実際には、金銭解決をしようというのは、雇用関係はもう終了させて再起を図ろうというような行動であると思われますので、そうすると再起を図るということを促すような意味でも、ある一定の合理的な期間を設けることが適切かと思います。
ただ、最初にも申し上げましたように、今回このような労働者に新たな選択肢を設けるということであるとすると、そこに持ち込むための準備に必要な相当な期間は保障されるべきだと思います。今、岩村先生からも御発言があったように、労働者としてすぐに裁判所に訴えを提起し、あるいは労働審判に申し立てるというような行動は普通はとりにくく、やはりほかの解決をいろいろ模索して、最終的に訴訟外では和解も含めて話し合いがつかなかったときに、あらためてここに持ち込むということになるでしょう。
そういうことを考え、また資料にも書かれていますようにより一般に裁判原因の発生から訴えの提起までの期間が平均で1.6年ということも考えますと、最低2年ぐらいはその期間がないと、十分な期間を保障したことにはならないのではないかという気がしているところです。
それから、起算点についてですが、御存じのとおり民法改正では一般的な債権の消滅時効について、主観的な起算点をとる期間と客観的な起算点をとる期間の2本立ててという形で整理をしたわけです。ただ、ここで問題となる場面では、解雇されたということは、本人は知っているということですよね。そうすると、解雇はされたのだけれども、不当な解雇だとは知らなかったという事態がどれほどにあるのかということが、ちょっと気になるところです。もちろん法的に無効だとかまでは専門家ではないので知る必要はないと思うのですけれども、やはり不当な解雇であることを基礎づけるような事実についての認識がおよそないということがあるのでしょうか。
○岩村座長 ないと思いますね。
○鹿野委員 それがもしないとすると、解雇の通知を受けたときを起算点とするということでよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
○岩村座長 ありがとうございます。
恐らく解雇無効とかいう訴訟につながるケースは、解雇された時点で労働者自身がそもそも不満で、つまりおかしいと思っていることが大体のケースで、おっしゃるように法的に評価して、それが無効かどうかという問題ではないとすると、ほとんどのケースは解雇された時点で、これは何で自分が解雇されなければいけないのかおかしいと思うのが通常だと考えていいと思います。そうすると、余り主観的起算点を考える意味はそれほど考えなくていいのかなと、むしろ客観的起算点でよいのではないかと思っています。
ただ、やや問題なのは解雇されたとは思っていないケースが全くないわけではなくて、会社に来なくていいと社長に言われたと、それでしばらく来なくていいという意味だと思って1週間たってのこのこ行ったら、お前はもう首になっているのだからというような、そういうケースが全くないわけではないだろうと思います。
あとは本人が辞職届を出さされた、だけれどもこれは無理やり出さされたのであって、解雇だという主張に組み立ててくることもあり得て、その場合、契約の終了時点ととるのか、それとも解雇ということで主張していたところで考えるのかという問題は、ぱっと考えると適切な例かどうかは余り自信ないのですが、あり得るのかもしれないという気はいたします。
笹井参事官、どうぞ。
○笹井法務省民事局参事官 今、岩村先生から、例外的な事例を除いて余り主観的起算点を考慮する必要がないのではないかという御指摘がございまして、紛争の実態としては、先生がおっしゃるとおりなのかなと感じました。
ただ、民法は債権者による権利行使の可能性を手厚く保護する形になっておりまして、消滅時効のほかにも、例えば担保責任、あるいは詐害行為取消権の行使期間等につきましても、権利者が権利を行使することができることを認識した時点を起算点とするような制度設計になっております。
これは労働紛争の実態に照らしたときに、客観的な解雇があったときからの時効期間のみでいいのだという合理的な理由があれば、そういった制度設計は可能かと思いますけれども、それなりに合理的な説明が必要になってくるのではないかということだけ申し上げておきたいと思います。
以上です。
○岩村座長 鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 先ほどのお話を聞いている限りでは、結局多くの場合は主観的起算点と客観的起算点は一致しますよねということであって、例外的にもしかしたら一致しないこともあるかもしれないようなことであるとするならば、一応2つ立てておいてということも考えられるのではないか。
先ほど言いましたように、民法で主観的起算点からと客観的起算点からの二重の期間を今回統一的に一般的な形で設けたのですが、これについても、一般的には特に契約に基づく債権などの場合には、多くは主観的起算点と客観的起算点は一致しますよねということを前提に、だから実際に機能するのは主観的起算点からの短いほうの期間ではあるのですが、ただ、それが一致しない場合もありうるということで、あのようなたてつけになっているものと思います。
それから、私も詐害行為取消権のところがちょっと気になったのですが、ただ、詐害行為については、債権者を害する行為がされたことを債権者が直ちには知らないのが通常なので、債権者を害する行為があった時を起算点にするというわけにはいかなくて、取消債権者が、債務者が債権者を害する行為をしたことを知った時を起算点とせざるをえないので、ちょっと問題となる事態が、こことは違うのかなとは思います。もっとも、一般的には今申しましたように、一応二重の期間みたいなことを考えても、つまり知った時ということを別に設定しても、それほどの不都合はないかもしれないと思います。
○岩村座長 ありがとうございました。
ほかには何かございますでしょうか。
事務局のほう、何か全体を通してあればですが。
○五百旗頭労働関係法課調査官 本日はいろいろと御議論くださいまして、ありがとうございます。
今後の検討に際して1点だけ方向性を確認させていただきたいのですけれども、解消金の算定のところについて、本日いろいろ御意見をいただきましたものを総じて、私どもの受けとめとしては、このように考えることでよいかという確認でございます。
まず、上限がわかるような何らかの式といったものを置いた上で、何らかの要素でもって減額を考慮していくような方向性、そしてその何らかの減額を考慮する要素としては、特に解雇の事例においては、労働側の帰責性が問題になる場合があるというようなことですので、このあたりの検討をするかどうかを考えていくということです。
そして、禁止解雇の場合は二重評価の問題も御指摘があったところでありますので、このあたりを配慮して、禁止解雇が明確な場合は100%というようなことで張りつけるというような御示唆もあったかと思われます。
大体このような方向をもう少し掘り下げていくようなことでよろしいかどうかということと、考慮要素については諸外国の例やシステム検のときに掲げられていた考慮の要素のうち、重複するものがありそうだということですので、この重複のところを整理をしていくという、この2点の方向性で今後さらに御検討を進めていくようなことでよろしいかどうか、確認させてください。
○岩村座長 皆様、いかがでございましょうか。
大体おっしゃった方向かなと思います。多分、労働者側としても100%、上限いっぱいほしいのであれば、やはりその根拠となるようなことは訴訟活動としてやっていただくものなのかなと、私はちょっと考えていて、当然200%要求できることにはならないのではないかと思っています。他方で、使用者側として、当然これは100%ではないよねということがあるのであれば、それに向けての訴訟活動はやっていただく。それを最終的に裁判所のほうで見て判断し、算定していただくというつくりなのかなと、その中である意味プラスで評価するもの、減額要素となり得るものを、ある程度列挙できればということかなとイメージとしては考えています。
禁止解雇については、先ほどおっしゃったとおりのことだろうと思います。
もう一つ、考慮要素については先ほど鹿野委員が指摘されたように算定式を決めるときのどういう要素を考慮するかという話と、それから、上限下限の枠の中で裁判官が幾らに算定するかというときに何を考慮するのかという2つの問題があるので、そこを整理しておく必要があるだろうと思います。そうしませんと、算定式の段階で考慮したものをもう一度、今度は具体的額を裁判官が算定するときに、また考慮することになってしまうと、ちょっとやはり整合性に問題が生じる可能性があるので、そこは整理しておく必要があるだろうというのは、きょうの御意見だったと思います。
それでよろしいでしょうか。
垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 これはこの先の細かい検討の内容になるのかもしれませんけれども、今、増額方向で作用すべき事情と、減額方向で作用すべき事情みたいなものの整理についてのお話がありまして、それはそのとおりかと思いますけれども、その際に、例えば訴訟でこの点が問題になる場合には、要件として解雇はそもそも有効かどうかが問題となるわけです。
その際には、解雇の有効性をめぐる審理があるわけですので、現状でどういう主張、立証責任の分配をされて、どういう事情について、どちらの側で主張、立証すべきものとされているのかといったようなことも、あわせて整理した上で、それとの関係でこの論点が加わることによって、さらにどういう事情が加わってくるのかといったようなことを、全体として少し一度整理しておく必要があるのかなという気がしております。
○岩村座長 大変有益な御指摘をありがとうございます。
ほかにはいかがでございましょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、きょう大体この資料1にあります5つの大きな論点の中の検討すべき事項について、ほぼ御意見を頂戴できたように思います。ということで、時間でもございますので、本日の議論はここまでということにさせていただきたいと思います。
次回の日程等につきまして、事務局のほうから説明をお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 次回でございますけれども、年明けに有識者からのヒアリングを予定しております。日程につきましては1月下旬をめどに現在調整中でございますので、確定次第御連絡させていただきます。
○岩村座長 ありがとうございます。
次回はヒアリングということでございますので、またよろしくお願いをいたします。
それでは、これをもちまして、第3回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を終了したいと思います。
本日は本当にお忙しい中を御参集いただいて、活発に御議論いただきまして、まことにありがとうございました。
 

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