技能実習評価試験の整備に関する専門家会議(第24回) 議事要旨

                               人材開発統括官海外人材育成担当参事官室

〇日時 平成30年10月12日(金)10:00~12:00

〇場所 厚生労働省労働基準局第二会議室

〇出席者
 大迫委員、岡本委員、岡野委員、椎根委員、高野委員、冨高委員
 厚生労働省人材開発統括官海外人材育成担当参事官室、法務省入国管理局入国在留課
 外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構、公益財団法人国際研修協力機構
 (医療・福祉施設給食製造関係)公益社団法人日本メディカル給食協会、農林水産省
 (そう菜製造業関係)一般社団法人日本総菜協会、農林水産省

〇議題
 1 医療・福祉施設給食製造職種の追加等について
 2 そう菜製造業職種の3号整備について

〇議事
 1 医療・福祉施設給食製造職種の追加等について  
 〇第23回専門家会議における指摘事項への対応について、日本メディカル給食協会より概ね以下のとおり説明が
 あった。
 ・献立表や業務指示書におけるアレルギーなどデリケートな部分は、ひらがなやローマ字だけでなく、実習生の
  母国語でも表記をするよう検討できないかとの指摘を踏まえ、今後、協会として、医療・福祉施設の給食製造の
  現場で使用される専門用語に関する対訳集について、主としてベトナムからの実習生受入れを考えていること
  からベトナム語から作成し周知する予定である。
 ・食札を見て計量・盛付することを実技試験とすることが考えられるが、食札に使用される色が施設によって
  異なるのであれば、今後、同試験の実施に当たっては、どの施設の実習生にも共通した不公平とならないような
  対策が必要との指摘を踏まえ、医療・福祉施設の食札は様々な色が使用されているため、試験の実施に当たって
  は、食札の色分けは行わないなど実習生が平等に試験を受検できるよう十分に検討していく。
 ・一般的な給食とは異なる、医療・福祉施設で製造する給食の特殊性や重要性について実習生に理解させるよう
  にすべきとの指摘を踏まえ、試験基準の学科試験の内容に、医療・福祉施設の給食の意義、調理作業において
  特に慎重な対応が求められること等について含めることとする。
 ・送出国の実習ニーズについて、送出国で高齢化が進むというデータに加えて、高齢化に伴って医療・福祉施設が
  どの程度増加し、給食に係る人材がどの程度不足するかといったデータを示せると分かりやすいとの指摘を踏ま
  え、このような内容を示す直接的な統計資料は現時点では把握できていないことから、現地の施設等に対して
  ヒアリングを行うこと等を含め対応について検討することとする。

 〇業界団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
  委員)食札の色分けが施設によって様々であるため、実習生が平等に試験を受検できるよう十分に検討していく
     との説明であるが、具体的にどのような形の試験を考えているのか。
  説明者)実技試験については、食札を使用することを考えているが、食札については、色分けを行わず、記載
     内容を理解しているかどうかを問うことを考えている。
  委員)「栄養士等の指導に基づく調理」に関し、栄養士等は、日本語能力が十分でない実習生がいることを必ず
     把握した上で指示を出すことになるのか。
  説明者)実際の技能実習の現場では、基本的に栄養士等が指導員になることが想定されることから、栄養士
     等は、指導員になるための実習生を指導する方法や、このような状況を把握することが前提である。
  委員)個々の施設の中で、そのようになっているはずと思っているところが実際には行われておらず、想定外の
     事故が起こるリスクが懸念される。患者さんが重大な事故に遭わないための仕組みについて、試験とは
     別に考える必要があるのではないか
  説明者)十分に検討したい。
  委員)専門用語に関する対訳集について、今後いろいろな国から実習生を受け入れる場合、平等の観点から、
     特定の国に対してのみ手厚い対応をすることがないよう注意すべき。
  説明者)注意する。

 〇検討の結果、医療・福祉施設給食製造職種(医療・福祉施設給食製造作業)については、次回、審査基準案
 や技能実習評価試験案等に関し議論が行われることとなった。

 2 そう菜製造業職種の3号整備について
 〇そう菜製造業職種の3号整備について、日本総菜協会より概ね以下のとおり説明があった。
 ・技能実習制度におけるそう菜製造業職種(そう菜加工作業)の定義、職種・作業の範囲について説明。
 ・技能実習1号において習得する内容については、惣菜は消費者がそのまま食事として喫食するため、衛生的な
  安全が第一優先となる。従業員の衛生管理、施設・設備の衛生管理等とある中で、実習生にはまず本人の衛生
  管理の習得、すなわち、作業時の服装・身だしなみ、正しい手洗いの方法、自己健康管理等を身につけさせる
  とともに、食中毒の三原則を覚えさせる。
 ・また、調理作業においては、標準作業書が現場にあることから、その標準作業書に沿って作業が行えるかという
  ことが、1号における技能となる。
 ・技能実習2号において習得する内容については、1号で身につけた一般的な衛生管理のほか、大量調理の幅が
  加熱作業3種類から7種類に広がるとともに、品質管理に影響のある項目の正確な測定手法を習得する。
  温度計の使い方等の技能を習得し、調べた記録を記録表に記入するという一連の作業を全て習得する。さらに、
  最終確認として、ラインの担当として、自分がつくったものがしっかりと社内の規格基準に合ったものになって
  いるか、異物が入っていないか目視確認する作業まで行うこととなる。
 ・今回整備する技能実習3号において習得する内容については、1号及び2号で身につけた一般的な衛生管理や
  大量調理の技能を生かし、HACCPのシステムに基づく安全衛生管理の一翼を担う作業を習得する。さらに、
  製品が品質管理基準で示された値を逸脱した場合に実施すべき是正措置の内容を習得する。例えば、中心温度
  をはかったときに所定の温度に達していなかった場合には、機械の不具合なのか、それとも製品が規格以上に
  ばらつきがあったのかを特定し、品質管理基準の範囲へ戻るよう是正措置を選択し、これを実施する作業で
  ある。中心温度は規格基準に達しても、例えばフライ物であれば、焦げついていたとか食べたときに中身が
  ぱさぱさしていたということになれば、安全上は担保されても、品質上は商品として使い物にならなくなること
  から、あらかじめ是正措置マニュアルが作成されている。是正措置マニュアルに沿って是正する、さらに、是正
  が効率よく実施できるように判断していくというところが技能になる。
 ・製品ごとに標準作業書を作成し、具体的な品質管理基準を示している。品質管理基準の項目例としては、加熱
  作業時の加熱温度、製品の品温や加熱時間。さらには、調味料の濃さ、例えば、酢の物であれば酢のpH濃度、
  塩分が濃いものであれば塩分濃度、これらはある程度規格基準があり、それを維持しないと所定の日持ちが
  しないことから、非常に重要なファクターになる。非加熱作業時においては、殺菌剤の希釈濃度や、どういう
  温度帯で殺菌するかが重要になる。いずれも微生物の抑制に影響のあるファクターであり、多くの惣菜において
  品質管理基準として設定されているものとなる。
 ・是正措置については、例えば、実際の惣菜加工作業において、機器の整備不良や素材状態(水分含有量等)の
  変化等の製品設計時とは異なる条件下に置かれた場合、標準作業書に示された作業手順に従ったにもかか
  わらず、品質管理基準の範囲から逸脱する場合がある。このような場合、作業手順どおりに調理を続けても、
  管理基準から逸脱し続けることになるため、品質管理基準の範囲へ戻るように、作業内容の是正を行うことが
  必要となる。これが、今回、3号に求められる技能となる。具体的には、是正マニュアルに示された措置の中
  から、自己判断によって品質管理基準の範囲へ戻るよう是正措置を選択し、実施することとなる。
 ・審査基準案については、今回、3号を設け、HACCPシステムに基づく管理まで追加することに伴い、一言で
  作業マニュアルと言った場合混同してしまうので、「標準作業書」と「是正マニュアル」に書き分ける。3号で
  追加となる作業としては、加熱調理の温度管理作業と非加熱調理の殺菌・記録管理作業に関して、品質管理
  基準に沿ったHACCPシステムに基づく基準逸脱是正措置作業になる。また、衛生管理作業に関しては、
  作業着、マスク等の点検作業、洗浄・消毒及び殺菌作業に加え、これらの作業について指導ができるよう
  習得させる。
 ・試験基準案についても、上級に関し審査基準と同様の内容を加えるなどの修正を行うこととする。

 〇業界団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
  委員)技能実習2号と3号の重要な違いが基準逸脱是正措置作業なのであれば、試験基準の上級の学科試験
    に関する記載内容に、3号実習で行うHACCPシステムに基づく基準逸脱是正措置作業に関する知識の
    習得を明示すべき。 現在の案でも、その要素は記載されているのかもしれないが、前面に出して違いを
    明確化すべき。
  説明者)HACCPシステムに基づく基準逸脱是正措置作業については、試験基準上、実技試験同様に学科試験
    でも明示することとする。
  委員)審査基準の必須業務において、1号実習、2号実習の調理作業で、「蒸す等」の「等」を使用するのは
    適切でない。揚げ煮など、調理作業を組み合わせて行うことがあるのであれば、「調理を組み合わせて行う
    ことは可能」などと記載すべき。
  説明者)記載について検討する。
  委員)安全衛生については、3号実習になるとその指導ができることまで求められるが、試験においてはどの
    ように対応しているのか。
  説明者)安全衛生については、1号から3号まで共通して実技試験(判断等試験)において、安全に係る表示
    等の認識、事故発生時の緊急措置について試験している。指導に関する試験については、次回の会議で説明
    したい。
  委員)上級の実技試験の採点基準について、是正措置が出来ないと大幅な減点となり、これが出来るか否かで
    実技試験の合否が決まってしまう。このような大きな差を設けるのではなく、もう少し細かく採点する
    ようにしてはどうか。
  説明者)対応について検討する。
  委員)試行試験の結果、実技試験では全員不合格であったことについて、考え方の整理が必要。また、これに
    対して、受入企業で携わっていた調理作業とは別の調理作業であったからという理由で、 本来企業が
    求める生産性を考慮して設定すべき試験時間を長くするということでは、適切と言えないのではないか。
    受入企業で携わっていた調理作業とは別の調理作業の試験で不合格になる可能性があることについて、
    どのように考えるか。
  説明者)惣菜製造の技能を見るためには、実習生が全ての調理作業の一定の知識を持ってもらうことを基準と
    して試験を行っている。受入企業にはその旨を伝えた上で試験を行っている。
  委員)初級、専門級の加熱調理の実技試験の作業内容(調理方法)について受検を申し込んだ受検生に個別
    に知らせるという現行の取扱いでは、受検の申込み時期に応じて有利・不利が生じるのではないか。
  説明者)対応について検討する。
  委員)3号の実習内容は、1号、2号に追加するだけの高度な技術といえるのか。特に、基準逸脱是正措置
    作業について、どういった点が専門性があるのか。
  委員)上級の実技試験について、是正措置マニュアルが提示されているのであれば、そのマニュアルに示され
    た範囲で作業をすればよいことになってしまうため、問題の難易度が低いのではないか。
  説明者)それぞれの指摘について、次回、説明させていただく
  委員)上級の加熱調理の実技試験については、是正措置ができるかを問われることになるが、同措置の実施
    には経験等が必要となるので、実習生が受入企業で実習した調理方法で受検できるように、調理作業を
    選択制にすべきではないか。 3号の場合には是正が入ってくるので、受入企業で携わった調理作業と別の
    試験が出た場合の有利・不利の差は、1号、2号より格段に大きくなるのではないか。 運用上のことを
    優先するか、公平性を優先するか、検討が必要。
  委員)上級の加熱調理の実技試験について、仮に、調理作業を選択制にした場合には、難易度が低くなることが
    懸念されるが、専門性を試験でどうやって担保するのか。
  説明者)試験の運用サイドとすれば、ある一定期間の中で何種類も試験をやっていくというのは、非常に難しい
    部分があるが、選択制にした場合の専門性も含めて、対応について次回説明させていただきたい。 
  委員)上級の実技試験について、大量製造用調理機械・器具等を使用する実際の実習よりも少量の材料等を
    用いて作業を行うことになるが、それができたということが、実習生の技能について確認することができる
    試験になっているかどうか、もう一度検討する必要がある。 技能実習制度の趣旨に鑑みれば、実習生が
    専門性を有しているかきちんと試験によって確認できるようにすることが重要である。
  説明者)日本人での試行試験をやったときに合格者がいなかったということは、経験のない人では合格しないと
    いう結果でもあり、実習生にとってはかなりハードルの高い試験内容になっているのではないかと理解して
    いる。
  委員)試行試験で全員不合格であったことについては、試験のやり方に疑義があることから、その結果で議論
    することはできない。
  委員)審査基準の必須業務において、3号実習生には、衛生管理作業における指導が含まれているが、調理作業
    の指導も含めることとしてはどうか。
  説明者)対応について検討する。

 〇検討の結果、そう菜製造業職種(そう菜加工作業)について、審査基準案や技能実習評価試験案に関し引き続き
 議論が行われることとなった。

(以上)