第4回労働政策審議会労働施策基本方針部会 議事録

日時

平成30年11月14日(水) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 省議室(9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館)

議事

 
○樋口部会長 ただいまから第4回労働政策審議会労働施策基本方針部会を開催いたします。本日の委員の出欠状況は、公益代表の阿部委員、土橋委員、使用者代表の今木委員、小林委員が欠席です。なお、小林委員の代理として、日本商工会議所産業政策第二部副部長の杉崎様に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。事務局から定足数の報告を頂きたいと思います。
 
○職業安定局総務課長 本日の出席委員ですが、労働政策審議会令第9条で定める委員全体の3分の2以上の出席又は公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますので御報告申し上げます。
 
○樋口部会長 それでは議事に入る前に、本日の部会の説明はタブレットで行います。事務局から説明がございましたらお願いいたします。
 
○職業安定局総務課長 本日もペーパーレスで開催いたします。お手元に使用方法を書いた操作説明書を配布しております。御不明な点は、事務局職員までお申し付けください。
 
○樋口部会長 議事に入ります。本日の議題は労働施策基本方針(案)についての諮問となっております。本件については、11月14日付けで厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛てに諮問が出ております。事務局より説明をお願いいたします。
 
○職業安定局雇用政策課長 まず、タブレットの左上の「戻る」のボタンを押していただいて、資料No.1をお開きください。労働施策基本方針(案)というものがあり、その下のほうに諮問の文書、更に下のほうにスクロールしていただくと表紙がありまして、目次といった形になっています。今回の資料については諮問させていただく文書ということで、これまでのような変更点について下線を引いたものにはなっていません。分かりにくい点があるかと思いますが、御容赦いただければと思っています。
中身について御説明いたします。今回、閣議決定を行う文書ということから、法制的な観点からの字句の修正等も行っているところですが、委員の皆様からの御指摘事項を中心に、御説明いたします。スクロールしていただくと、本体の「はじめに」が出てきます。本体の1ページです。1ページの上から3段落目に「このように」という段落がございます。その2行目の後段から、「特に、中小企業・小規模事業者(以下「中小企業等」という。)」という文言が入っています。こちらは佐久間委員からの中小企業等の定義を書くべきだという意見を踏まえて、修正したものです。
次が「長期的に」という段落、その次が「こうした課題」という段落、その下に「労働者がそれぞれの事情に応じた」という文言が記載されています。ここの文章については、もともともう少し短い理由を書いていたところですが、こちらについては働き方改革関連法の目的を引用する形での理由という整理をした修正をしております。
次に、2ページの一番下に、3、労働施策基本方針に基づく働き方改革の推進という項目があります。こちらの最初の1行目ですが、「基本的な考え方や中長期的な方向性に基づき」とあります。こちらは、前回の佐久間委員からの御指摘を踏まえて、中長期的なというように、期間の概念を追加しているものです。
また、その下の段落ですが、「本方針に基づく施策の推進に当たっては」という所があり、「必要なKPIの設定を行い、PDCAサイクルを回すことにより、各施策の実効性を確保しつつ、実施するものである」という形で、前回は客観的な言い回しをしていたのですが、主体的に実施するものであると、こちらの基本方針全体が国を主語としているところでして、国が実施するということを明確に書いているものです。
3ページの中段から「第2章」が始まります。一番下の段落の少し上の所から、「なお、重ねて改善を促しても是正されないもの、違法な長時間労働により」といった文章があります。こちらは、以前はここの箇所ではなくて、中小企業の所に記載していたものですが、こちらは中小企業に限らず長時間労働の是正ということの位置付けということで、こちらに位置を変更したもので、中身について変更しているものではありません。
続いて、6ページの(8)職場のハラスメント対策及び多様性を受け入れる環境整備です。こちらについて、3段落目に「加えて」という部分があります。「セクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントについては、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律等に基づき、こうしたハラスメントはあってはならない」という文言を記載しており、こちらは荒木委員からの御指摘で、法整備がなされていることを明確化するということで記載しているところです。
また、同じ段落の最後の所に、「あわせて、その防止対策の実効性を確保するための検討を進める」といった文言が入っております。こちらは前回の御議論の中で、樋口部会長からも検討することを明記するようにという御指摘があったところで、そちらを踏まえて記載しているところです。
7ページの(3)柔軟な働き方がしやすい環境の整備を御覧ください。こちらの2行目からですが、「このため、相談窓口の設置・運営や助成金等による導入支援を行っていくとともに」といった文言が追記されております。こちらはパブコメの中の御意見として、こういった取組について具体的に記載したほうがいいのではないかという御意見を頂いたところで、それを踏まえて記載しているところです。
同じく(3)柔軟な働き方がしやすい環境の整備の中で、下から2段落目に雇用類似の働き方の記載があります。こちらは中身は変わっていないのですが、以前は副業・兼業よりもう少し上に記載していたのですが、位置を少し下に変更しているものです。
続いて、7ページの下のほうから3、多様な人材の活躍促進が始まります。(1)は女性の活躍推進となっています。この中で、8ページの5行目の後ろ側から、「また、長時間労働の是正やワーク・ライフ・バランスの実現に加え」といった文言とか、マザーズハローワーク事業の拡充、「子育て安心プラン」、「新・放課後子ども総合プラン」といった施策について、具体的な記載を追記しているところです。こちらについても、パブリックコメントの中で、こうした施策について盛り込むべきではないのかといった御意見を頂いたところで、それを踏まえて追記したところです。
その下の(2)若者の活躍促進の項目です。こちらの一番最後の文章ですが、「これら若者の就職支援等に当たり、都道府県や市町村等の地方公共団体が実施する支援施策とも連携しながら、総合的かつ体系的な対策を推進する」とあります。こちらについては、自治体から、地方公共団体が実施する労働施策との連携について追記してほしいといった御意見があり、そちらを追記したものです。
次に、9ページの(5)として、外国人材の受入環境の整備という項目があります。こちらの2段落目の下から3行目の後段から始まる所ですが、「外国人と共生できるような社会の実現に向けて」といったことを記載しており、これは先般の安河内委員からの共生社会についての記載を盛り込むようにという御指摘を踏まえて、記載しているものです。
また、一番下の段落の下から4行目の「卒業後の日本国内での就職」ということで、こちらは佐久間委員から卒業後の話ということが明確になるようにという御指摘があり、そちらを追記しています。
次に、13ページの一番最後の項目で、3、学校段階における職業意識の啓発等の項目です。こちらにおいて、相原委員から教育の質の向上について書き込めないのかといった御指摘を頂いたところです。こちらについては、抜本的な追記は調整が難しかったところですが、「若者に働く意義や労働市場の実態の理解を促す等の教育は、適性・能力に応じた就職の実現の基盤であり」といった形で、教育の重要性について記載しているところです。
また、2段落目に「インターンシップ」という用語が入っていて、これは前回はありませんでした。こちらについては、椋田委員からのインターンシップについては明確に記載すべきであるという御指摘を踏まえて、記載しているところです。私からの説明は以上です。
 
○樋口部会長 これまで皆さんから活発な御議論を頂きまして、その御意見を反映した形で、こういった諮問案を用意していただきました。これについて、皆様から御質問、御意見がございましたら、お願いしたいと思います。どなたでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
 
○柴委員 私からは、これまで何回か議論になったKPIの設定とPDCAサイクルを回すということについて申し上げます。2ページ目から3ページ目で話がありましたが、このことについてはこれまでも議論があって、今回も必要な修文がされていると思っています。その上で、第1章の3の労働施策基本方針に基づく働き方改革の推進にも記載されているとおり、「各分科会の意見を踏まえ、必要なKPIの設定を行い、PDCAサイクルを回す」とされていますが、そのためにもこの基本方針部会と、各分科会との連携が重要になると思います。
ここからは質問となりますが、各分科会において、PDCAサイクルがしっかりと回っていると判断した事実を基本方針部会としてどのように知るのかということです。PDCAサイクルが回っておらず、施策の変更が必要だと判断された場合には、部会が開催されることになると思いますが、PDCAサイクルの状況などについて、基本方針部会がどのように把握するのか、問題があったときにだけ知らされるのかという認識でよいのかについて確認したいと思います。以上です。
 
○樋口部会長 これに関して、皆様から何かありますか。なければ事務局からお願いします。
 
○職業安定局雇用政策課長 御指摘のように、今回のPDCAサイクルにおいて中心に回していくことを想定しているものです。各分科会においては、もちろん今回参加している事務局のメンバーとしては、各分科会のメンバーが参加させていただいており、事務局としてもしっかりとその状況については把握していきたいと考えているところです。
また、委員の皆様におかれましても、各分科会長の皆様にも御参画いただいて、この基本方針部会を設置させていただいているという中で、そうした実施状況については把握していくことを想定しているところです。基本的には、委員が御指摘のように、何か変更の可能性とか、これはうまく回っていないといったような場合には、改めてこの基本方針部会の開催について検討させていただきたいと思います。このように考えているところです。
 
○樋口部会長 どうでしょうか。
 
○柴委員 定期的に報告を受ける形ではないという認識でよいですか。PDCAサイクルについて、ここで何かを議論するのではないという認識だけ確認させていただければいいと思いますが。
 
○職業安定局総務課長 本部会の所掌事項に関わりますので、総務課からお答え申し上げます。本部会は運営規程に定めたとおり、基本方針そのものの制定や改廃について御議論いただく場として、各分科会、職業安定をはじめとする専門の分科会を横断する立場として設けたものです。PDCAについては、これが適切に回ることは労働政策の推進にとって重要なことでありますが、基本的には各施策に分解して、そのPDCAが回っているかどうかを見ていただく場としては、各専門の分科会がふさわしいのではないかと思っています。
各分科会で見ていただいているのが、うまく回らないという事態は私どもとしては想定しておりませんで、事務局が考えているPDCAがちゃんと回っているかどうかを、各分科会で公労使の皆様に見ていただくということであると思っていますので、PDCAサイクルの各施策の進捗状況そのものを、この部会の議題として挙げてくるということは考えておりません。
 
○政策統括官(総合政策)付労働政策担当参事官 一言付言させていただきます。労働政策審議会には本審議会がありまして、各分科会、部会の担務分野においてPDCAサイクルをどのように回していただいているかということに関しては、本審議会へ定期的に御報告を頂き、認識を共有しながら深めていただいていることもありますので、先ほど岸本課長からあったような、本部会と各分科会、さらに本審との有機的な連携が図れるように、私ども事務局としても部局横断的にしっかりと対応していきたいと考えております。以上です。
 
○樋口部会長 かつては労働政策審議会の中に評価部会を設けて、そこで各KPIの進捗状況を毎年チェックしていくというような仕組みを持っていたのですが、それを各分科会に譲るというような形で変更してきたと思います。各分科会にしっかりやっていただいて、本審で報告を頂くということです。ほかにいかがでしょうか。
 
○中川委員 私からは、4ページから5ページの(3)中小企業等に対する支援・監督指導について、意見ということで発言させていただきます。中小企業等への支援について、本方針の中でも数多く触れられていることについては大変高く評価させていただきます。労働者、事業主、それから家族の皆さんが、いかに安心して働き、暮らせる社会づくりが今後必要になってくるかというところですが、その点、4ページにも記載されている「周知」が重要となると思います。
実は、私ども宮崎県でも10月24日に第3回「みやざき働き方改革推進会議」が開催されました。2時間の会議のうち1時間半以上が、来年4月1日に施行される働き方改革関連法についての周知にあてられました。時間の関係もあって、宮崎で働き方改革をいかに社会的な運動にしていくか、そして36協定も含め、どのようにして取り組んでいくのかというところまでにはいかなかったのですが、是非ともこうした会議体を実効性のある取組にしていただきたいという要望です。
また、中小企業は大企業に比べると、人事や総務の人員が少なく、労務管理業務の負担が大きくなりがちです。是非、この労務管理体制についてもバックアップをお願いしたいと思います。
一方で、中小企業で働く労働者自身にも、働き方改革は誰のためのものなのか、また、何のために行うか、そして働き方改革の先には何があるのかということを考えることが求められていると思っているところです。限られた人的資源の中で、働き方改革を実効性のあるものにしていくためには、経営者のトップダウンによる変革に加えて、国や自治体、好事例を含む新しい働き方、補助金をはじめとする支援制度に関する情報提供が大変重要になってくると思っています。
また、5ページの「監督指導」について、働き方改革関連法の中には罰則付きの法律もありますが、地方では監督指導に精通した人材が不足していると言われています。大変かと思いますが、是非とも監督指導の強化もお願いさせていただきたいと思います。実効性の高い制度の運用に向けて、政労使が協力して取り組むことが大変重要であると考えています。意見ということで、よろしくお願いいたします。
 
○樋口部会長 御意見を頂きましたが、何かありますか。
 
○労働基準局総務課長 労働基準局です。御意見をありがとうございます。基本方針にも縷々書かせていただきましたとおり、私どもとしても今回の働き方改革の法案は非常に大きな法案でして、中小企業の方をはじめとして非常に大きな影響を受ける方がおられます。もちろん、労働者の方も含めて非常に大きな影響を受けるということがありますので、実効性のある取組がなされるよう、ここにも書いていますが、働き方改革推進支援センターが全国47都道府県にありますので、そこを通じて丁寧に周知もしていきます。また、コンサルタントのような御相談も行っていますので、労務管理が大変という御意見もありましたが、丁寧に対応していきたいと思います。それから、助成金もありますので、そういったものも活用しながら中小企業の皆様の視点に立ちながら、周知していきたいと考えております。
 
○樋口部会長 それはよろしくお願いします。ほかにございますか。
 
○佐久間委員 中央会の佐久間です。本当にありがとうございます。今回、部会を通して過去に検討された意見等を踏まえて、全体の答申は非常に適切、かつ妥当なものだと私は評価しております。特に、今、中川委員もおっしゃっていましたが、4ページの(3)中小企業に対する支援・監督指導ですが、御存じのとおり、従業員数、そして事業者数も、中小企業は本当に大部分を占めております。そこの中で、まず長時間労働に当たっての是正の取組、またその周知・監督指導等、その後に長時間労働が多い業種別のところをどのように捉えていくかという、これからの働き方改革に向けての施策の在り方というものをコンパクトにまとめていただけたのではないかと思っています。
これが本当に土台となって、各働き方改革推進に向けての取組というのも、もちろん無事にスタートしていく、また取り組んでいくわけですので、先ほどの何年後か分かりませんが、これの見直し、それがどれだけ評価できているかという形で、もちろん評価制度も重要だと思います。しっかりとこれを推進していきながら、私ども支援機関も取り組んでいけたらなと考えています。以上です。
 
○樋口部会長 ほかにいかがでしょうか。
 
○山中委員 私からは、7ページ目の(3)柔軟な働き方がしやすい環境の整備について、1点確認させていただきます。先ほど事務局から御説明があったとおり、今回、雇用型テレワークの普及にあたり、相談窓口の設置・運営や助成金等による導入支援について、パブコメの意見から追記されています。
既に厚生労働省において、テレワーク相談センターや、時間外労働等改善助成金のテレワークコースといった施策が講じられておりますが、今回の追記は、これらに加えて追加的な措置を講じられるという認識でよいのでしょうか。以上です。
 
○雇用環境・均等局総務課長 今回の追記について、雇用型テレワーク普及促進のために考えているものの主な柱としては、今、正に山中委員がおっしゃったテレワーク相談センターにおける相談等や助成金の活用等を念頭に置いております。
一方で雇用型テレワークについては、適正な労務管理下で、良質なものを普及促進させていただく必要がありますので、今後の様々な議論によって施策展開を図ることもあり得べしと思っておりますが、現時点で実施としている事業の代表例として、今のようなものを想定し、引き続き活用促進を図っていきたいと考えております。以上です。
 
○樋口部会長 ほかにいかがでしょうか。
 
○小林委員代理(杉崎様) 今回の基本方針ですが、今後おおむね5年程度を期間とし、個別の労働政策について、この方針に基づいて企画、立案、実行されることになるため、この方針自体は非常に重要な方針ということで受け止めております。今後、各企業が働き方改革とか、個々の労働の取組に当たるときに、参照とすべき、正に羅針盤となるような存在の方針かと思いますので、事務局におかれましては、今回の方針を是非分かりやすい形で幅広く周知していただければと思います。
もう1点、中小企業への周知など様々な支援についてです。今回の方針の中にも記載していただきまして、非常に有り難いことだと思っております。現在、47都道府県に設置された働き方改革推進支援センターが、各地の中小企業、中央会、商工会議所と連携していろいろな支援に当たっていただいておりますが、こういった取組は是非強化していただくとともに、中小企業に対する支援の周知ということに万全を期していただきたいと思っております。以上です。
 
○樋口部会長 分かりやすい形でというのは、具体的に何か考えていらっしゃるのですか。
 
○職業安定局雇用政策課長 委員が御指摘のとおり、皆様に分かりやすい形で示していくということは重要だと思っておりますので、概要を作成するなど、そういった形で、また積極的にPRしていきたいと思っております。
また、同時におっっしゃったように、中に盛り込まれた各施策についても、それぞれ周知といったことも盛り込んでいるというでことあり、そちらについてもしっかりと対応していくことは、基本的な考え方として持っているところです。
 
○水本委員 IHIの水本と申します。今回の基本方針はこれまでの議論を反映していただいて、非常にいいものになっていると思います。私自身は女性の活躍を推進していく立場にありまして、その中で1つ参考までに教えていただけたらと思うのですが、7ページに多様な人材の活躍促進という項がありまして、この中で(1)女性の活躍推進とあって、若者、高齢者、障害者は「活躍促進」となっているのですが、「女性の活躍推進」という所に込められている意味などがあるのでしょうか。
 
○樋口部会長 これは事務局からどうでしょうか。
 
○雇用環境・均等局総務課長 雇用環境・均等局です。今、私が申し上げる考えが全体として正しいかどうか分かりませんけれども、正直、私も水本委員の御指摘を伺って、「なるほどな」とちょっと認識をしました。女性の活躍の部分が「推進」と書いてあることの意味合いを想像しますと、今、時限法で国を挙げて女性の活躍を進めている女性活躍推進法という法律がございます。それで「女性の活躍推進」というワーディングをここの標題に持ってきたのかなとも考えておりますが、もし違うようであれば、ほかの方に御指摘いただければと思います。以上です。
 
○樋口部会長 ほかの方というのは、どなたがよろしいでしょうか。要は、統一したほうがということで、活躍だったら活躍で、あえて「促進」という言葉と「推進」という言葉で、使い分けているのかどうかという御質問だと思うのですが。
 
○荒木委員 恐らく法律が女性活躍推進法で、若年の場合は青少年者雇用促進法と法律の名称が「推進」と「促進」と書き分けているので、それに対応したワーディングで、意味が違うというよりも、そういう法律の文言に倣ったのではないかと推測いたしますが。
 
○樋口部会長 なぜそうなったかはよく。元の法律が、なぜそういうタイトルを付けたのか。どうしましょうか。
 
○職業安定局雇用政策課長 基本的には委員がおっしゃったように、法律の用語を基本として使わせていただいているといったところです。
 
○樋口部会長 同じ意味ですか。法律の名前を付けるときに、そこを何か意識して「推進」と「促進」と付けているのでしょうか。
 
○職業安定局雇用政策課長 どちらかと言いますと、「促進」の場合には、今なかなか厳しい状況に置かれている方々を更に促進していくということで、「推進」については、そういった現状から更に進めていくというニュアンスのほうが強くなると認識しています。
 
○樋口部会長 いかがですか。基本的には違わないということですよね。
 
○職業安定局雇用政策課長 違いとしては、今、厳しい状況に置かれている方を促進することによって、そういった状況を解消していくということを念頭に置いているのが「促進」です。現状について特に厳しい状況に置かれているか否かということではなくて、更にそちらの活躍等を進めていくということに重きを置いた表現というのが「推進」という形で使い分けをしているといったものです。
 
○樋口部会長 いかがですか。
 
○水本委員 変なことを申し上げて申し訳ありません。
 
○樋口部会長 いえいえ。
 
○水本委員 私としては、どちらでなくてはいけないということはなく、ここに書いてくださっていることが推進していく上で非常に必要ですし、御説明のあったとおり法律用語に準じているというのであれば、別にこのままでも特段の問題はないかと思っています。
 
○樋口部会長 労働側は何かありますか。どちらでもいいですか。
 
○相原委員 よろしいのではないでしょうか。
 
○樋口部会長 では、このままで。ただ、ちょっとやはり気になりますねということなのでしょうね。
 
○水本委員 「推進」だけ特別なのかなと思って。
 
○樋口部会長 「推進」のほうが強い。事務局はどうなのですか。
 
○職業安定局雇用政策課長 申し上げていますように、法律に基づきまして若干のニュアンスの違いがございまして、非常に説明が分かりにくいかもしれませんが、そういった中で、厳しい状況に置かれている方々については「促進」を基本的には使わせていただいているところで、「推進」という言葉は「進める」ということについて使わせていただいているということで、現行の表現と御理解いただければと考えております。
 
○奥宮委員 両項を見ますと、本文は「促進」と「推進」と両方入っていて、特に使い分けはないように思いますが、それでよろしいですか。タイトルは法律の用語に合わせたという理解でよろしいでしょうか。
 
○職業安定局雇用政策課長 そのように御理解していただければ何よりと思っています。
 
○樋口部会長 では、これは原文のままということでいきたいと思いますが、よろしいですか。英語にしたら、「encourage」と「promote」でしょうね。だから、ちょっと違ってくるのですよね。ただ、そこまでの認識で法律のタイトルを付けているようでもなさそうだなということで、取りあえずは法律にのっとってということで、このようにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。
 
○中西委員 第3章の「3学校段階における職業意識の啓発、労働関係法令等に関する教育の推進」ですが、大変重要な内容を含んでいると理解しています。既に、具体的に高校生段階で推進しておられると私は聞いておりまして、具体例として、どのようなことを既に実行しておられるのでしょうか。その事例について、もし伺わせていただけるようでしたら教えていただきたいと思います。
 
○樋口部会長 何ページの所に関連するものですか。
 
○中西委員 13ページの第3章の3です。
 
○人材開発統括官付人材開発総務担当参事官 若者雇用対策を担当している青山です。若者の職業意識啓発ということで、文部科学省などとも連携しながら、学校段階でさまざまに取り組んでおりますが、例えば高校生ですと、ジュニア・インターンシップと呼んでいますが、高校生を対象とした就業体験を推進したり、高校生に限らずやっている中で、職業ガイダンスといって、職業に関する情報提供などをセミナー的に行うといったことを講じておりますので、引き続き推進していきたいと思います。
 
○政策統括官(総合政策)付労働施策担当参事官 ただ今青山参事官から説明があった取組が中心なのですが、特に高校生段階でというお尋ねでしたので、高校生を対象とした取組をご紹介します。まず、都道府県労働局の幹部が大学、専修学校のほか、高等学校に出向いて、基本的なワークルール、労働法制に関する基本的な知識、あるいは留意点、身近な相談窓口としてどういう機関があるのか等について、各県あるいは各市町村の教育委員会などと連携しながら、講師として説明するという事業をやっています。
また、労働条件に関して、非常に法制が複雑化してきているということがありますので、高校の中でも、卒業後就職される方が多い高校などを対象に、放課後の場合もありますし、何らかの授業の中に組み込んでいただいている場合もありますが、セミナーの場を設けさせていただき、我々のほうから委託事業の形で専門的な講師を派遣する事業もございます。
その一環として、過労死防止対策が昨今求められる中で、議員立法された法律に基づいて、身内の方が過労死された方とか、その弁護活動をされた方、そういった方が痛切な体験をお話されて、それが公民等の教材になっているというような事例などもあるところです。
また、労働法教育に関するシンポジウム等も開いており、その中には学校の先生方も含めて対象としているものもございます。
取り分け、本部会の中で御議論を深めていただいて、記述を追加してきた中で、最後の3章に込められている一番大きな内容としては、やはり公民の科目が大きく再編される中で、もちろん一定の教育委員会なり高校の選択の中ではありますけれども、社会保障であるとか、労働関係法令について一定の時間を割くカリキュラムを立てていただく道が出来つつあります。そうした場で使える教材を開発していくことも必要ということで、これは省庁間で人事交流も盛んに行う中で、文部科学省から厚労省に知見を持った方に何年か続けて来てもらって、そういった方々のネットワークの中で、社会科の先生方、公民科の先生方が労働法について教えていただくときに、そうは言ってもその方自身がこれまで労働法を勉強していたかどうかという実態もありますので、そういった先生でも使いやすいような、マニュアルを作り、さらに教材の開発も、そういった先生方と一緒にやるというようなことも、ここ何年か取り組んでおります。今後の中等教育課程の科目の再編の中で、職業教育について、改めて労働法の周知徹底という観点から取り組んでいきたいということを、お求めもありましたので具体例を交えて御紹介いたしました。今後ともしっかりとやっていきたいと思います。
 
○樋口部会長 今は中学と高校でやり出していますね。大学も遅ればせながら、いろいろなところからの寄付講座という形で、ワークルールについてオムニバスの授業を用意している大学がかなり出てきているのではないでしょうか。連合などが寄付をして各大学でなさっているというのが、私が承知しているところです。
 
○奥宮委員 この点については、私は余り事情は分からないのですが、弁護士ですので、弁護士会でも、主には小学生ぐらいの子供について、消費者教育を法律的な観点から教えるということで、弁護士会がプロボノ活動としてかなり協力していると思います。
恐らく、それが労働法制とか、そちらのほうにも広がっていくと思われますので、弁護士等の活用も含めて、文科省と連携していただければと思います。よろしくお願いします。
 
○荒木委員 13ページで学校教育との関係も出ましたので、少し発言させていただきます。法律の分野でも「法と教育学会」というものが立ち上がりまして、公民の先生たちが中心となって、学校において法教育をどうしていくかということで、いろいろな教材の開発などがなされております。法律家、法学者も協力して、そのような活動がなされております。
そのプロセスで、私も公民の教科書を拝見して、特に労働法、労働基準法の所を見まして、一番大事な条文が載っていないと思いました。労働基準法の第13条には労基法の基準に達しない契約は無効となるという最低基準効が書いてあります。つまり労働基準法に8時間以上働かせてはいけないという規定があっても、自分は残業を厭わずやりますと約束したら仕方がないかなと、知識のない労働者は思いがちなところがあります。しかし、そういう合意をしても、法律を下回る合意は無効であるということが、労働基準法で一番大事な条文だと思います。しかし、その労基法13条について公民の教科書では条文としては掲載されていませんでした。そういう点は改善していただく必要があるというように思いました。
それから、もう一点ついでに申し上げますと、今回の13ページの3という所は、「職業意識の啓発と労働関係法令等に関する教育の推進」ということが挙がっております。これは小杉先生のほうがご専門かと思いますが、恐らく教育から職業へのプロセスを円滑にするために、今後はジョブ型の雇用、あるいは職務内容を特定した雇用というものが増えていくとすると、教育の職業レリバンスが非常に重要となると思います。大学教育でも、一般的な教養の発展のようなことをやるのが正しいのか、あるいはもっと職業に密接に関連したことを教えるべきかという議論があると思います。
今回は御議論いただきまして、こういう修文になっておりますので、この文章自体は私はこれで結構だと思いますが、今後は労働政策としても学校教育との連関について、更に検討を続けていただければと希望しています。
 
○相原委員 13ページの3ポツは修文いただきまして、ありがとうございました。意見を申し上げたことを反映していただいておりますので、感謝申し上げます。今、部会長からも少し御紹介もありましたので触れさせていただきますが、国公立の大学に向けて、ワークルールなどの寄付講座を私ども連合としても進めています。全国の20を超える私立大学、国公立大学で実施させていただいております。
その中で感じることは、今の委員の御紹介とも重なるところなのですが、私どもはワークルールを労働者保護の観点から、転ばぬ先の杖として身に備えておくことは必要だというような観点も踏まえて、寄付講座を進めておりますが、それ以上に大事な観点は学生とやり取りすると、健全な労働観や、働くことの意義について、早い段階から承知する、若しくは大企業のみならずとも、様々な働く場があり、そこで自己実現できる機会があるのだということを企業の規模を問わず、若しくは働く地域を問わず、様々な門戸を一旦広げてみて、自分の可能性を最大限に発揮することも人生においては大変大事なのだということも、寄付口座をやっていると年々深まってきまして、知見も積み上がっているところです。それが1点御紹介できる点です。
もう一点は、高校生や中学生と対応する際には、これも委員からご意見がありましたが、消費者としての態度ということを備えていくことも大事だと痛感するところです。相対する、カウンターの向こうにいる人、物を包んでくれている人も「働いている人」だと、その人に対する消費者としての態度も私たちが一考すれば、社会全体の生産性も高まっていく、その人の働き方を消費者として支えていくという面も幅広くあるのだということも、積み上がってきているところで、今後とも微力ですが、連合としても進めていきたいと思っております。
 
○樋口部会長 経団連からも、広報センターを通じていろいろな大学に類似の講座を提供いただいていまして、いろいろな所でそれらが活用されてきていると思いますので、そういうものも含めて、労働政策の基本的なところになっていると思いますので、普及をしていけたらと。そこまで書いているというように読んでよろしいのですかね。ほかにいかがでしょうか。
 
○柴田委員 国の施策としてまとめた重要な方針という位置付けの下、私からも働き方改革に対する国民の意識ですとか、モチベーションを保つために、幅広く周知広報活動を行っていただきたいということをまず申し上げます。
その上で、先ほども少しご意見が出ましたけれども、この方針は5年を目途に改正するとなっていますが、雇用を取り巻く環境というのは変化が著しいと思っておりまして、5年後と現在というのは、果たしてこのままなのかというように思っていまして、大きく景色が変わる可能性があります。
そういう意味では、年数にこだわることなく、必要に応じて方針の見直しを行って、働き方改革自体を陳腐化させないようにすることも、大事なのではないかと考えておりまして、その点について見解があればいただきたいと思います。
 
○樋口部会長 それでは、厚労省からただいまの御質問について。
 
○職業安定局雇用政策課長 委員が御指摘のとおりです。経済、雇用情勢、その他、基本方針に定めた前提となる事項、また取り巻く環境というのは様々に変わっていくということを前提に、こちらの見直しについては行うということを書かせていただいているところで、その前提条件が変わった場合に必要な見直しを行っていきたいと考えているところです。
 
○樋口部会長 正に雇用情勢は生き物で、刻々と変わっていく可能性もありますから、それに応じて必要なところについては、ここから発信するということもあるという考えでよろしいと。
 
○小杉委員 せっかく振っていただいたので、このことはちょっと離れることなので一言だけ申し上げておきます。職業レリバンスというのがこれから重要になってくるのは間違いないところで、今回は「AI等の技術革新」と1行だけ入っていますが、こういうものも含めて学校段階における教育内容に職業的な観点が、ますます必要になっているという状況だと思います。さらにリカレント教育で、高等教育もやっとリカレント教育について動き始めそうですので、そこも含めて、是非文科省との連携を強く取っていただきたいなと思います。
 
○樋口部会長 ほかにいかがでしょうか。
 
○安河内委員 JAMの安河内です。今回、基本方針案は大変すばらしいものができたと思っております。取り分け、中小企業に関する記載は多数にわたって紙面を割いていただいて、あるいは外国人労働者についても多文化・共生という視点が記載されたという点について、大変高く評価させていただきたいと思います。
一方で、この部会と平行して、これは官邸主導ということになるかと思いますが、未来投資会議が今秋以降3回ぐらいは開催されているのではないかと思っていまして、その中ではイノベーション、雇用、地方対策、これを三本柱とする新しい成長戦略についての議論がされています。先ほど、インダストリー4.0のお話もありましたが、そういったことについても議論されていると認識しています。
取り分け雇用に関しては、会議の中では生涯現役社会の実現の側面から、65歳以上の継続雇用年齢の引き上げや、70歳までの就業機会の確保というような発言があったかと認識しておりますが、中途採用の拡大、新卒一括採用の見直しの議論等も含め、安倍内閣最大のチャレンジという形で来年の夏までに具体的な実行計画がまとめられようとしていると思っています。
この議論には、連合からも神津会長が参加しておりますが、せっかくすばらしい基本方針が出来上がっておりますので、この成長戦略の策定に当たって、今回の労働基本方針の精神や、あるいは雇用対策法を改正して本方針を策定する重みを十分に踏まえていただきまして、政府全体として雇用政策が一貫性のあるものになるように、是非御尽力をお願い申し上げたいと思います。以上です。
 
○樋口部会長 御要望ということでお受けいたします。ほかに、何か事務局からありますか。
 
○大臣官房審議官(職業安定担当) これから来年の骨太の制定に向けていろいろな議論が進むと思いますが、我々もそういった動きをよく見ながら、必要な対応をきちんと取っていきたいと思っております。
 
○樋口部会長 ほかによろしいでしょうか。
 
○相原委員 先ほどの教育のところで大学の寄付講座等を御紹介申し上げましたが、もう1つ労働基準法、36協定の重要性を世の中の多くの皆さんに訴え掛けていきたいと思っています。3月6日は語呂を合わせて「36(サブロク)の日」と日本記念日協会にも申請して、御承認を賜るような運びになっております。
これだけ大きな働き方改革の法案が前に進み、変化させていきたいことは、もっと人的資本を積み上げて、生産性の豊かな労働市場を作っていくことであり、これはみんなの共通の願いであるということです。
それと、思いもよらず、その変化がしわ寄せとなって、例えば大企業から中小企業への仕事の渡し方や納期ということも、今も進んでいますが、民間の大企業は労働時間の短縮が急速に進むと思われますので、それがしわとなってそのほかの所にダメージを与えるようなことがないよう、今回の法改正の意義を浸透させ、更には36協定をしっかりと締結していくことで、セーフティネットを世の中に施していく。これも大変重要な点であるということも、キャンペーンとして打ち出していきたいとも思っていまして、全体としてこの方針を後押しするような立場で努力していきたいと思っておりますので、御紹介だけ申し上げたいと思います。
○樋口部会長 ほかに御質問、御意見はございませんでしょうか。特にないようでしたら、当部会としては、提示されている厚生労働省案を妥当と認め、その旨私から御報告申し上げたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
 
(異議なし)
 
○樋口部会長 ありがとうございます。それでは、報告文案の配布をお願いいたします。
 
(報告文案配布)
 
○樋口部会長 御覧いただきまして、お手元に配布されたような報告文案により、労働政策審議会会長宛てに報告することにしたいと思います。よろしいでしょうか。
 
(異議なし)
 
○樋口部会長 それでは、そのように報告させていただきます。ここで事務局から御挨拶がございます。
 
○大臣官房審議官(職業安定担当) 大臣官房審議官の田畑です。本日は局長が国会業務のため出席できませんでしたので、私から御礼の御挨拶を申し上げます。基本方針部会委員の皆様方におかれては、労働施策基本方針案について活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。また、「妥当と認める」との答申を賜りましたことにも、厚く御礼を申し上げます。
この基本方針案につきましては、今後閣議決定に向けたプロセスを進めてまいりますが、この基本方針に沿って、働き方改革の実現に向け、私どもも努力してまいりたいと考えておりますので、委員各位の引き続きの御指導をよろしくお願い申し上げます。誠にありがとうございました。
 
○樋口部会長 本日の会議に関する議事録についてですが、労働政策審議会運営規程第6条により、部会長のほか2人の委員に署名を頂くことになっております。つきましては、労働者代表の相原委員、使用者代表の水本委員にお願いしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

照会先

 

職業安定局総務課

係 長 :山﨑 珠美
主 任 :加藤 晋也 (5742)

(代表電話) 03 (5253) 1111

(直通電話) 03 (3502) 6768