第25回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

平成30年8月3日(金)16:00~18:00

場所

厚生労働省 省議室(9階)

議題

(1)がん検診の現状について
(2)その他

議事

 

○事務局 定刻となりましたので、ただいまより、第25回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本検討会の開会に当たり、厚生労働省健康局長から御挨拶申し上げます。
○健康局長 7月31日付で健康局長を拝命しました宇都宮と申します。よろしくお願いいたします。
第25回「がん検診のあり方に関する検討会」開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。
先生方におかれましては、大変お忙しい中、また、このお暑い中、参集いただきまして、まことにありがとうございます。また、日ごろより、がん対策の推進に御尽力、御協力いただいておりますことを、この場をおかりしまして、厚く御礼申し上げます。
さて、私、着任したばかりですけれども、以前、たしか平成7年、8年ごろに、まだ課長補佐として、がん対策にかかわったことがございました。その後、健康局関係、何回かやりましたけれども、実際、がんを直接やるのはそのとき以来ということでございます。あのころもそうでしたけれども、がん対策として、早期発見・早期治療ということで、検診の重要性ということが言われておりましたけれども、受診率がなかなか上がらないという問題があるということでございます。
その一方で、当時は検診の効率性あるいは費用対効果と言っていましたが、今回、資料を見ると、効率というよりは、メリット・デメリットの比較をいかにきちんとやって、できるだけ利益の多い検診をやるかという視点になっていると理解させていただきました。いずれにしましても、科学的根拠に基づいて、きちんとがん対策として国が進めるべき検診というものについて、忌憚のない御意見をいただいて、実りある議論になっていただければと考えておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
今後とも御協力、御尽力いただきますことをお願いしまして、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 なお、宇都宮健康局長は、公務のため退席させていただきます。
初めに、本日の構成員の出欠状況でございますが、9名の構成員の皆様全員に御出席いただいております。
また、今回の検討会から、公益社団法人日本医師会の道永構成員にかわりまして、羽鳥裕構成員に御参加いただくこととなりました。
羽鳥構成員、よろしくお願いいたします。
○羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥です。よろしくお願いします。
○事務局 続いて、資料の確認をさせていただきます。上から、
座席表
議事次第
資料1 がん検診の基本条件・利益・不利益について
資料2 がん検診の現状について
参考資料1 「がん検診のあり方に関する検討会」構成員名簿
参考資料2 がん検診の経緯等について
参考資料3 がん検診で推奨されている年齢の国際比較
参考資料4 がん検診の推奨のレベルについて
以上でございます。
資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。
以上をもちまして、カメラをおさめていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いいたします。
この後の進行は、大内座長にお願いいたします。
○大内座長 それでは、第25回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
本日の議題としまして2つございますが、まず第1に「がん検診の現状について」と題しまして、資料をもとに事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 事務局より説明いたします。お手元に資料1「がん検診の基本条件・がん検診の利益・不利益」を御用意ください。資料1は、前回の検討会で事務局から提示させていただいたものです。
がん検診の基本条件としては、
1. その部位のがんになる人が多く、また死亡の重大な原因であること
2.がん検診を行うことで、そのがんによる死亡が確実に減少すること
3.がん検診を行う検査方法があること
4.検査が安全であること
5.検査の精度がある程度高いこと
6.発見されたがんについて治療法があること
7.総合的にみて、検診を受けるメリットがデメリットを上回ること
とされております。
続いて、がん検診の利益(メリット)・不利益(デメリット)ですが、メリットとしては、がんの早期発見・早期治療による死亡率減少効果や、がん検診で「異常なし」と判定された場合、安心を得られることが挙げられます。
また、デメリットとしては、がん検診でがんが100%見つかるわけではないこと(偽陰性)。
結果的に不必要な治療や検査を招く可能性があること(偽陽性)。
生命予後に影響しない、微小で進行の遅いがんを見つけてしまうこと(過剰診断)。
検査に伴う偶発症が起こりうること。胃内視鏡検査による出血や穿孔。胃エックス線検査における誤嚥や腸閉塞。マンモグラフィ・胸部エックス線検査・胃エックス線検査に伴う、放射線被曝等があるという指摘があります。
前回の検討会と同様、資料1にあるがん検診の基本条件と、がん検診の利益・不利益に照らし合わせて、どのような方に重点的にがん検診の受診を推奨していけばよいのかという観点から御意見をいただきたいと思います。
資料1についての説明は以上です。
続いて、資料2について説明いたします。なお、資料2の中には、前回の検討会の資料にも含まれているスライドが幾つかあり、これについては、スライドの右上にその旨を記載しておりますので、御確認ください。
資料2の2枚目のスライドは、現在、国の指針で推奨されているがん検診の項目や対象年齢を表に示したものです。
3枚目のスライドに、がんの年齢階級別罹患率をお示しします。
大腸がん、胃がん、肺がんについては、40歳以降、年齢とともに罹患率が高くなる傾向にあります。
一方、乳がんや子宮頸がんについては、大腸がん、胃がん、肺がんよりも若い年齢層で罹患のピークを迎えることがわかります。乳がんについては、40から50代の年齢層がピークで、以後、年齢が高くなるにつれて罹患率が低下していきます。また、子宮頸がんについては、30から40代の年齢層がピークで、以後は乳がんと同様、年齢が高くなるにつれて罹患率が低下することがわかっています。
続いて、4枚目、5枚目のスライドについて説明いたします。これらのスライドは、我が国でがん検診が導入された当時のがんの罹患率と現在の罹患率、当時の死亡率と現在の死亡率とを年齢階級別に比較したものです。
例えば、大腸がんや肺がんについては、罹患率が横ばいの年齢層もあれば、やや増加している年齢層もある一方で、死亡率については、多くの年齢層において減少していることがわかります。
乳がんについては、40歳代前半の死亡率は横ばいである一方、50歳代以降の死亡率は増加しています。
一方、左下の胃がんのグラフを見てみますと、胃がんは罹患率、死亡率ともに、がん検診が導入された当時よりも減少していることがわかります。胃がんの死亡率においては、ほとんど全ての年代において半分以下、特に40歳代の若い年代においては5分の1から6分の1にまで大きく減少しています。
また、右下の子宮頸がんにおいては、罹患率、死亡率ともに50歳代以降は減少している一方で、20から40歳代においてはむしろ増加傾向にあることがわかります。
このように、がんの罹患率や死亡率の変化を考えると、がん検診のあり方もその変化に応じて見直す必要があるのではないかと考えられます。
続いて、6枚目、7枚目のスライドにがん検診の受診率をお示しします。
7枚目のスライドですが、胃がん・大腸がん・肺がん検診については、40代以降、いずれの年齢層でもある程度の受診率を保っていますが、一方で、子宮頸がんや乳がん検診においては、40から50代をピークに年齢とともに受診率が大きく低下しています。
続いて、8枚目、9枚目のスライドですが、地域保健・健康増進事業報告をもとに作成した、各がん検診におけるがん発見率のグラフをお示しします。
まず、8枚目のスライドですが、胃がん・大腸がん・肺がん検診における「がん発見率」を、初回、非初回に分けてお示ししております。地域保健・健康増進事業報告における初回とは、過去3年間にがん検診の受診歴のない者。非初回とは、過去3年間にがん検診の受診歴のある者と定義されています。いずれのがん種においても、非初回の受診者におけるがん発見率は初回よりも低く、年齢とともにがん発見率は高くなることがわかります。
一方で、9枚目のスライドに移りますが、子宮頸がん・乳がん検診においては、胃がん・大腸がん・肺がん検診と異なり、非初回の受診者におけるがん発見率、緑色のグラフになりますが、これは年齢が高くなるにつれて、むしろ減少あるいは横ばいの傾向にあることがわかります。
続いて、10枚目のスライドに各がん検診におけるプロセス指標をお示ししますが、その中でも、各がん検診における精密検査の受診率について、11枚目のスライドにお示しします。
これも前回の検討会で提示させていただいたグラフですが、乳がん検診、胃がん検診については、40歳以降、いずれの年齢層においても、ある程度の精密検査受診率を保っています。
一方、子宮頸がんや大腸がん検診については、一定の年齢を境に精密検査受診率が低下する傾向にあり、がんの早期発見という観点から見た場合、必ずしも早期発見・早期治療につながっていない場合があるのが現状です。
続いて、12枚目のスライドに「第24回がん検診のあり方に関する検討会」の議論の整理をお示しいたします。これは、前回の検討会で構成員の皆様方からいただいた御意見を事務局で整理したもので、構成員の皆様にも事前に御確認いただきました。順番に御説明いたします。
本検討会での議論の進め方については、がん検診の基本条件に立ち返って、検討を重ねていくことが必要であるという御意見をいただきました。
がん検診の不利益については、
1.がん検診を実施すれば必ずよい結果をもたらすとは限らず、また、頻回に行うほどよいとも限らない。
2.がん検診の不利益を考慮した上で、推奨することが必要である。
3.がん検診の不利益の定量的な評価方法については、一定の見解がない。
4.がん検診の不利益に関しては、受診者の理解を得られるように、工夫をして説明する必要がある。
諸外国との比較については、
1.諸外国におけるがん検診は、まず最初に年齢を限定して導入されている。
2.がん検診の事情や背景等は諸外国と異なるものの、推奨のグレードは参考にすべきである。
がん検診で推奨される年齢については、
1.がん検診は、年齢が低すぎても高すぎても不利益を伴う。
2.がん検診に携わる者ががん検診を勧める際には、年齢を考慮すべきである。
がん検診の推奨の仕方については、
1.がん検診の受診者の特性に応じて、推奨のあり方を考える必要がある。
2.がん検診の受診を希望する人の機会を奪わないようにする。
という御意見がありました。
続いて、13枚目から17枚目までのスライドに、各がん検診のエビデンスを整理したものを提示いたしました。
13枚目の乳がん検診におけるマンモグラフィについては、表に示すとおり、40歳前後から74歳までを対象とした無作為化比較対照試験(RCT)が幾つか実施されており、それらのメタアナリシスによって死亡率減少効果があることが、「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン」や海外からの報告で示されています。
14枚目の大腸がん検診における便潜血については、「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」において、3報のRCTが報告されており、便潜血検査による大腸がんの死亡率減少効果があることが明らかとなっています。
また、その後に発表された海外の文献においても、同様に便潜血検査の死亡率減少効果があると示されています。
続いて、15枚目の子宮頸がん検診における子宮頸部細胞診については、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」において、RCTは報告されておりません。その理由としては、RCTという評価手法が確立される前に、子宮頸部細胞診ががん検診の手法として広く浸透していたため、あえて「検診を受けた群」対「受けなかった群」という形で子宮頸がん死亡をエンドポイントとしたRCTを行うことは、もはや必要ないと考えられているためです。同ガイドラインによると、2報のコホート研究において、子宮頸部細胞診による子宮頸がんの死亡率減少効果があると報告されています。
なお、同ガイドラインが公表された後、子宮頸部細胞診の有効性を評価するRCTが1報、報告されていますが、この研究においては、子宮頸部細胞診による統計学的に有意な死亡率減少効果が認められていません。その理由についても文献で指摘されていますが、本RCTは、医療サービスが十分に発達していない地域で実施された研究であり、子宮頸がんにかかっていたにもかかわらず、病院を受診せずに子宮頸がんで死亡した人については把握できていない可能性があるためと考えられています。したがって、本RCTの結果の解釈には留意が必要であるという指摘があることを申し添えます。
続いて、16ページの胃がん検診における胃エックス線検査については、「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」において、胃エックス線検査や胃内視鏡による胃がんの死亡率減少効果を検証したRCTは報告されていません。同ガイドラインによると、3報のコホート研究において、胃エックス線検査により胃がん死亡率減少効果があると報告されています。
また、胃内視鏡検査については、2報の症例対照研究において、胃内視鏡検査により胃がん死亡率減少効果があると報告されています。
最後に、17ページに移ります。肺がん検診における胸部エックス線検査については、4報の症例対照研究において、胸部エックス線検査と高危険群に対する喀痰細胞診併用法による肺がん死亡率減少効果が認められています。
一方、下段の表にあるとおり、RCTに関しては死亡率減少効果がなかったと報告されていますが、RCTのプロトコルが守られていない症例が含まれていること。がんの治療成績が悪いこと。検診の精度が低いこと等の指摘があり、このRCTの結果の解釈には留意が必要と考えられています。
なお、「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」によると、「それぞれの研究がさまざまな方法でバイアスの影響を取り除こうと試みても、肺がん死亡減少の傾向を失わなかったことなどから、現代の日本におけるがん検診のガイドラインに用いるべき証拠としては、むしろ最近の我が国からの報告を重視することが妥当と判断した」と記載されています。
続いて、18枚目のスライドに、参考としてエビデンスのレベルに関する表を提示しております。
続いて、19枚目のスライドには、米国のがん検診の推奨グレードをお示ししております。これは、前回の検討会で祖父江構成員に御提示いただいた資料の抜粋ですが、米国においては、表のとおり、年代ごとに推奨の仕方に強弱をつけています。
20枚目のスライドに胃エックス線検査における偶発症の発生率をお示しします。このグラフは、厚生労働科学研究班の報告書をもとに事務局が作成したもので、平成26年度の胃エックス線検査における誤嚥・肺炎・便秘・腸閉塞・穿孔・検診台からの転落等の偶発症の発生率を、5歳刻みの年齢階級別でお示ししております。40から74歳までの各年齢層における偶発症の発生率と比較すると、75歳以上における偶発症の発生率は高いことがわかります。
資料2についての説明は以上です。
最後に、参考資料4についても触れさせていただきます。がん検診の推奨のレベルをお示ししております。一般的にがん検診の推奨のレベルは、A、B、C、D、Iの5つに分かれています。特に対策型がん検診については、推奨AやBに相当する項目を指針の中で推奨しています。今回の検討会においては、がんの罹患や死亡の現状や、がん検診の利益・不利益を踏まえ、どのような方が推奨レベルAやBに相当するのか、どのような方に対して、がん検診を重点的に推奨していけばよいのかという観点から、構成員の皆様の御意見をいただきたいと思います。
事務局からは以上です。
○大内座長 ただいま資料1と2、それから参考資料に基づいて説明がございました。第24回で配付された資料も一部含まれておりますので、まず確認いたします。
資料1について、これは前回提出済みのものでございます。
資料2ですが、本日のメーンテーマでございますがん検診の現状についてということで、最新のデータに置きかえていただきました。その中で、前回第24回の資料につきましては、その旨、右上に振ってあります。したがいまして、新たな資料としては、資料2の4枚目、年齢階級別罹患率の推移、5枚目の死亡率の推移になります。これで、年齢階級別の各種がん検診のこの30年間における動向がよくわかるかと思います。
それから、10枚目は、平成20年度に策定しました、この検討会の前身に当たります、がん検診のあり方に関する検討会の中で、プロセス指標あるいはアウトカム指標を定めた経緯がございまして、そのときのデータになっています。あれから10年たっておりまして、随分と状況も変わっておりますので、今後の課題でありますが、再検討が必要ではないかということも議論いただくかもしれません。
次の12ページが、前回、第24回の本検討会における論点の整理でございます。皆様からの意見をここに反映しております。
13ページからは、各種がん検診における世界のデータをサマライズしたものでございます。日本国内のデータも入っていますが、13ページは、マンモグラフィによる乳がん検診RCTの概要です。
14が大腸がん検診、便潜血検査です。
15が子宮頸がん検診です。これは、先ほど説明ございましたように、RCTは存在しない。その理由として、子宮頸部細胞診というのがかねて導入されていたということで、効果がもう既に検証されていたということがございます。
胃がん検診については、国内のデータのみになっておりますが、3報のコホート研究についてのサマライズ。
それから、胃内視鏡検査についても、2報の症例対照研究についてのサマライズがございます。
最後に、17の肺がん検診に関しては、胸部エックス線・喀痰細胞診ですけれども、日本における5つのケース・コントロール・スタディがございます。先ほど局長が平成7年、8年のころ、多分老健局で担当されたとのことでした。私も思い出しましたが、95年のころにちょうどこの研究が途中でした。データが出たのが、私の記憶では平成13年、2001年ごろでなかったかと思います。ですので、あのころからは随分さま変わりしまして、まずは肺がん検診についてのケース・コントロール・スタディの結果が出たこと。
それから、最近では、米国のNLST、ナショナル・ラング・スタディ・チーム、5万人以上の低線量CT検診のRCT結果も出ています。日本でも今、AMEDの佐川班でCT肺がん検診の有効性評価について着手したことが背景にございますが、こういったことも改めて議論することになるかと思います。
19は前回の資料にも出ましたけれども、米国のUS Preventive Services Task Forceの推奨グレードで、年齢階級別にA、B、C、D、Iと区分けしておりまして、わかりやすいということで、これに対応するものとしまして、参考資料4にほとんど同じ意味ですけれども、A、B、C、D、Iということで、対策型検診においてはA、Bが推奨されるべきであるということになります。
実は、職域におけるがん検診についても、昨年度、1年かけて十分議論していただきました。このたび日本医師会常務理事の羽鳥先生を構成員としてお迎えいたしましたが、羽鳥構成員は職域におけるワーキンググループのメンバーでもございましたので、この点は御理解されると思いますので、よろしくお願いいたします。
先ほど事務局から最後に、どの年代層に重点的にがん検診の推奨を行うかということ。それから、どのような方が推奨レベルAやBに相当するのかという観点から議論していただきたいということが申されました。そういう意味で、この点を出しました。
最後の20枚目のデータは、不利益の典型例として、胃エックス線検査における偶発症の発生率。出典は、平成28年厚労科研費の研究事業でございます。津金先生が研究代表者でありましたがんの予防と検診の新たなあり方研究班のデータとしまして、胃エックス線検査における偶発症の発生率が、75歳以上で高くなるというデータでございます。
といった資料が提出されましたので、まずは皆さんから御意見いただきたいのは、12ページに戻りまして、前回の検討会の議論の整理です。事務局のほうで皆様の御意見を整理したものですけれども、この点について、何か追加発言等ございましたら。
どうぞ。
○棟重構成員 健保連の棟重です。
改めて議論の整理を読ませていただきまして、職域の観点から少しコメントを加えさせていただきたいと思います。
職域では、どちらかというと、福利厚生という観点から始まっており、検診項目が多いほど、あるいは対象年齢が広いほど、手厚い検診と考えられているところがあります。そういう意味では、本当に必要なことをやっているのかということで、最近、少し見直そうという方も出てきております。今回のこの議論の中で、その判断をするに当たって、どういう場合に不利益があるかということをきちんと示していただくことが非常にありがたい、大事なことかと思います。
また、それを実際に見直すに当たっては、保険者、事業主を初め、受診者にもわかりやすい内容について、我々も含めて説明できるような内容にしていただきたいという要望でございます。
一方で、そうは言っても、個人の判断でどうしても受けたいということを妨げるものではないということについても、改めてお願いしたいと思います。
以上です。
○大内座長 職域におけるがん検診に関するワーキンググループの中でも種々議論があって、がん対策基本計画第3次に向けての要請もありまして、それで議論になったわけですが、結果的には職域におけるがん検診というものが安衛法の中で法的根拠がないので、ガイドライン、いわゆる指針を定めるには難しいということで、手引き書、マニュアルということでまとめさせていただきました。松田構成員、祖父江構成員もおられましたけれども、基本的には対策型検診と推奨レベルはほぼ同じです。
したがいまして、CとIが一応認められているのですけれども、不利益についての説明を十分にすることということが細かく書いてありますので、この参考資料4にあるように、「個人の判断に基づく受診は妨げない」となっていますが、より丁寧な説明も必要です。
ただ、原点に返ってみれば、12ページの2番目のがん検診の不利益についての1から4までの部分は、具体に職域あるいは任意型検診のほうにしっかりと当てはめていく必要があろうと思っています。
どなたか御意見ありますか。はい。
○羽鳥構成員 僕も職域におけるがん検診検討会に参加させていただきましたけれども、その中で職域におけるがん検診には精度管理に問題があるという事です。職域におけるがん検診は、事業主検診であるからということで、事業主検診ですと胸のレントゲンが正面の1枚だったり、二重読影していないということもあるので、それをがん検診とは言えないということです。精度管理の基準を引き上げればがん検診担当になりますので、がん検診受診率も上がったと表現ができるのではないかと思うので、その辺を労働部門のほうに働きかけていただいて、何とかなるといいのではないかと思います。 次に、例えば胃がん検診について、スライド16にあります神奈川県川崎市ですと、胃がん検診において、内視鏡とバリウムの比率が、受診の内視鏡が6.5、バリウムが3.5ぐらいの比率になってきているということもあるので、内視鏡検診の有効率の上昇で、新しい研究結果が出てきたらどんどん追加していただけたらと思います。
以上です。
○大内座長 ただいま羽鳥構成員から、職域において議論のありました精度管理についての意見がありました。実は、職域においても精度管理のためのチェックリストについて議論して、対策型と同じチェックリストを使うこと。それから、事業主に対して、いわゆる仕様書の策定もできるだけ行ってほしいというところまで踏み込んでおります。とはいえ、根拠法がないわけですから、法的に縛れないので、努力義務ですが、そのような形では厚労省としても対応されたと認識しておりますが、課長のほうから何かございますか。
○がん・疾病対策課長 今、大内座長から御説明、御指摘いただいたとおりでございます。お二人の構成員からお話しいただきまして、改めて、そうは言っても、国民が受ける利益・不利益をよりアピールしていく。また、そのための科学的根拠を重ねていく。これは、市町村が行う場合であっても、職域が行う場合であっても、いずれの場合であっても変わらないわけですので、ここで御議論いただいたことは、職域に伝える、国民に伝える際にも使っていく、反映させていきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○大内座長 羽鳥構成員の第2点、これは胃がん検診の新たな研究手法ですか。
○羽鳥構成員 胃がんの内視鏡検診、あちこちでたくさん始まっていると思うので、もしかしたら有効率がもっとよくなっているデータも出てくるのではないかと思うので、できるだけアップ・ツー・デイトしていただきたいという要望であります。
○大内座長 平成27年9月に胃がんと乳がん検診の指針の見直しを行った際に、胃がん検診については、基本的に50歳以上で、隔年でエックス線検査とともに内視鏡検診が推奨されております。ただ、そこに後ほどただし書きがつきまして、当面の間、40歳以上を可とするとか、逐年検診を可とするとなっていて、多分、今、現場でも少し混乱が起こっている。
一方で、羽鳥構成員が言われるように、胃内視鏡検査による検診のデータもかなり出てきていることも事実ですし、それから、胃がんの発生、先ほどのデータをごらんになってわかるとおり、罹患率、死亡率の年齢がかなり上向いております。極端な例でありまして、多分、40代の罹患率は3分の1以下でしたか。4ページに胃がんの罹患率、死亡率は5ページですけれども、胃がんがこの30年でさま変わりしてきているということが読みとれると思います。平成27年、今から3年ほど前にこの検討会であった議論として、50歳以上に対象年齢を制限しているということは、ある程度正しかったのかなということも言えるかと思います。
一方で、ただし書きがまだ残っていますので、恐らく今回の指針の見直しに当たっては、その部分についても検討されることになろうかと思います。
この件につきまして、特に御意見のある方はいらっしゃいますか。どうぞ。
○椎名構成員 今の胃がん検診の対象年齢のことですけれども、座長のほうから御指摘ありますように、ただし書きがついているために、実質的に内視鏡とエックス線を交互に毎年受けるということが、ある意味容認されるような書きぶりとなっているので、現場で少し混乱いたしております。受診者からもわかりにくいというお話もございます。例えば、エックス線は毎年、それも40歳からでいいのに、内視鏡は50歳で2年に一度というあたりがちょっとわかりにくいといったお話もあると聞いております。
○大内座長 大変重要な御指摘、ありがとうございます。
現時点で、平成27年度の指針改正時に、50歳以上としつつも、当分の間は40歳以上、しかも逐年も可としているのです。ここが非常に混乱に至っているのだと思います。その点について、受診率の減少とかも含めて幅広い意見をいただいたのですが、その後どうなったのかということも含めて、もしよろしければ中山構成員のほうから御意見いただければと思います。
○中山構成員 一番直近の値、平成28年度の胃がん検診のデータ、これはまだ発見は出ていなくて受診者数だけ出ていますが、平成27年度のエックス線検診のみのものが368万人、28年度になりますと407万人ということですので、40万人ほど胃がん検診の受診者数がふえています。ということなので、受診率が下がったとか、そういう話じゃなくて、逆に内視鏡検診が始まってふえているということですから、大丈夫だと思います。
○大内座長 貴重なデータでございますので、こういった最新の状況も見ながら、指針の改正に反映していくということでよろしいでしょうか。
では、幅広く皆さんから御意見いただきたいと思います。きょうの議題は、この1題だけですので。原点に返って申しますと、かねてありますように、基本条件、利益と不利益の観点から推奨すべき年齢層、各種がん検診について御議論いただくということになっておりますので、忌憚のない御意見をいただきたいと思います。
祖父江構成員。
○祖父江構成員 この検討会の立ち位置と、科学的証拠をまとめるということと、それからガイドラインというものと、関係を整理しておいたほうがいいと思います。
本来、科学的証拠をまとめる作業というのは、ガイドラインを作成するという中で行うわけで、それに基づいて、このあり方検討会は議論するほうが望ましいと思いますけれども、今回の議題の中心である、年齢によって利益・不利益バランスが異なるので、その推奨の度合いを変えるということをこの検討会で検討するためには、本来はガイドラインのほうで年齢による推奨の度合いが違うということがあってしかるべきなのです。
そのことは、アメリカのUS Preventive Services Task Forceはできているのですけれども、日本のガイドラインはそのことは十分にはできていないということですね。それは、厳密に証拠に基づいてということの立場を守ってきたために、年齢に関しての区分というところになかなか言及できていないということです。一番最新の胃がんに関しては、そこのところに多少踏み込んで、50歳以上ということで推奨を決めたということですけれどもね。
ガイドラインでできていないからといって、指針の中ではそういうことを全く言及しないのかというと、そうではなくて、社会的な要請があるのであれば、このあり方検討会で必要に応じて議論して、ガイドラインには記述がないものについても、エキスパート・オピニオンとして決めていくということは十分にあり得ると思います。ですから、そういう意味での積み上げられた証拠で判断するというだけではなくて、追加的な証拠、例えば罹患率とか死亡率の数字でもって判断するということも含めて議論するという立ち位置であることを理解して、まず進めるのがいいのかなと思います。
要は、推奨の度合いというのは、利益・不利益バランスで決めますということが一番のポイントだと思うのですけれども、それが何によって変わるのかというところについて、一番大きなものは年齢だと思います。ただ、利益と不利益と切り分けて考えると、不利益に関しては年齢ということが一番大きいと思うのですけれども、利益のほうに関して言うと、年齢とともに、もう一つのリスク要因といいますか、年齢以外のリスクファクターの有無で利益の大きさが変わってくる。
特にそれで大きく変わってくる可能性があるのは、胃がんのピロリ菌と肺がんの喫煙ぐらいだと思います。このことを推奨の中に入れ込むということも、もちろん年齢以外にあってしかるべきだと思いますけれども、そのことは一応意識した上で、年齢というのが一番大きいので、利益・不利益バランスの違うファクターとして年齢を取り上げている。それでもって推奨を変えていくというのは、ある程度合理的であるということで議論を進めるということを、まず確認したいと思います。
○大内座長 前提として、本検討会でどこまで踏み込むべきか。ここは、健康局長からの諮問機関として動いているわけですけれども、研究班ではないのですね。がん検診に精通されている構成員をもって、それで幅広い意見をいただいた上で、合意形成の上でガイドライン等についてまとめてきたという経緯がございます。
資料2の19枚、最後のほうですけれども、US Preventive Services Task Forceのリコメンデーションがあります。これは、Task Forceというのは、16名の構成員で、米国議会からの指名によって委員が決められています。多くは公衆衛生学を専門とする方、看護師さん、医師でもいわゆる総合医的な方々です。重要な点は、各学会の代表者は入っていません。その方たちが最後に推奨グレードを投票で決めているのですけれども、祖父江構成員が言われたように、実はデータをつくるグループ、作業班は別なのです。
エビデンス・プラクティス・センター、EPCがあって、各がん種検診の見直しをするときに、そのEPCが各地にございます。例えば、2009年に乳がん検診において、40歳代はマンモグラフィ検診で不利益が多いということでBからCに下げたときには、EPCセンターはオレゴン大学が行っています。そこに祖父江構成員も調査に行った経緯がございますね。
ですから、そういったところで科学的根拠の精査、世界中のデータとか不利益がどの程度あるのかということで、具体的に言うと、The Number Needed to Invite、受診勧奨すべき人から乳がん死を1人減らすのに何人必要かというデータがNNIでした。本来であれば、Number Needed to Screening (NNS)だと思いますけれども、そういう観点から調べられてかなり細かいデータを出されて、推奨グレードが決められていくという構成になっています。これがアメリカの方式で、日本ではそういうことはございません。
強いて挙げれば、今までの厚労科研の研究班の中でも、祖父江構成員とか濱島先生あるいは斎藤先生がかかわってこられたように、胃がん検診あるいは乳がん検診等々の各種がん検診の最新のデータを比較されて、それでアップ・ツー・デイトされてきた経緯がございます。
では、この検討会はどのような位置づけなのかということですが、米国のUSPS Task Forceが、EPCから上がってきたデータに対して投票で決定しているということとは異なるわけですね。
ただ、日本でそれと同じことをする場合に、また改めて研究班を立ち起こして、この所掌は本来であれば、私は例えば国立がん研究センターの部門かと思っているのですが、そうは言っても、1カ所ではなかなか難しいので、米国のように多数の部署を配置して行うのがすばらしいのですけれども、なかなか時間もかかりますし、お金もかかりますので、祖父江先生が先ほど言われたように、いわゆるオピニオン・リーダー的な方々に入っていただいている会ですので、そこでのコンセンサスということでアップ・ツー・デイトしてはいかがかということです。
今までの祖父江構成員の考え方と若干異なりますけれども、よろしいですか。
○祖父江構成員 ですから、ガイドラインの完成を待って議論するというのが本来の筋だと思います。それは、鋭意努力してもらいたいのですけれども、残念ながら、年齢別の推奨にはなっていないですから、その段階においては、必要に応じてあり方検討会で決めていくということも必要かと思います。
○大内座長 この点、重要ですので、ほかにも御意見いただけますか。
では、松田構成員。
○松田構成員 今の年齢に関しての前に、職域のことを一言よろしいですか。職域におけるがん検診のワーキンググループでは、職域の検診も市町村の検診と全く同じ、年齢、そして項目、チェックリスト等を推奨するというものを出しました。きょう、事務局にお示しいただいた資料の中に7、8、9というものがあるのですが、7の受診率に関して言うと、これは職域と地域を全て網羅したアンケート調査になっているわけです。8、9に関して言うと、これは職域の検診は把握されていないですね。しかしながら職域で受けられない人たちが地域にやってくると、その人たちがまじってしまう。
すなわち非常に混在したデータになっていて、日本国内で行われている、特に就労世代の全てのがん検診をしっかり把握してがん発見率が求められているわけではないということは、これは押さえておかないといけないかなと思います。本来は違う数字になっているのかもしれないと思います。
次に、年齢ですけれども、参考資料3で諸外国との比較が出ていて、諸外国で行われている検診は主に3つですね。乳がんと子宮頸がんと大腸がん。その中で、日本は大腸がんに関して言うと、年齢の下限が低くて上限設定がないということが際立っています。諸外国の推奨される年齢というものは、特に大腸がんでは参考になるのだろうと思っています。ガイドラインで日本は推奨年齢、上限は決めていないのですが、それが十分参考にされると、少なくとも大腸がんに関して言うと、私は理解しています。
そこで、もう一つ補足するとすれば、高齢者になると、受診率が決して高くないということと、精検受診率が非常に低いことです。精検に伴う偶発症等の危険性が高いとなると、精検を受けにくい、しかも精検をやりにくいという年齢層が多くなりますので、その人たちに積極的に受診勧奨するというのは問題だと現場で思っているわけです。それなりの積極的勧奨する年齢、上限を設定するためには、この国際比較が十分参考になるだろうと私は考えています。それが、年齢が75なのか、80なのかは、今後議論が必要だろうと思います。
以上です。
 
○大内座長 今、松田構成員から重要な指摘がございました。資料2の中で、7ページは、国民生活基礎調査ですから、対策型あるいは職域も含めた全体像が見えますが、8、9は、地域保健・健康増進事業報告ですので、いわゆる健康増進法に基づく市町村事業によるがん検診ですので、職域は入っていないということですね。ですので、少しデータが違ってくるのではないかという御指摘でした。これは、後ほどまたデータがとれるのであれば、事務局のほうで改めていただければと思いますが。まだ存在しないですね。仕方ないですね。
あと、年齢についてですけれども、まさにこれから議論を始めようと思っていまして、その参考となるのが参考資料3でして、諸外国での対象年齢です。これは、本日、議論を始めるに当たって大変重要なデータになります。
偶発症、不利益、それから精密検査受診率等から見ると、例えば大腸がん検診の便潜血で陽性であって、大腸内視鏡検査の精検になると急激に精検受診率が下がりますね。これは典型的でして、そういったことが大きな要因になるかと思います。
開始年齢についてから行きましょうか。多分、開始年齢で問題となるのは肺がんだと思います。資料2の先ほどのデータ、4と5をごらんになっていただきますと、罹患で50歳から急激に伸びている。死亡率もそうですが、55歳から急に伸びているということがございます。
参考資料3で、肺がん検診について、日本は40歳以上で上限なしですけれども、例えば米国の場合、先ほどのタスクフォースでは肺がんは55歳から80歳がBグレードになっています。そういった観点で、日本の現状も踏まえながら御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。
○中山構成員 何もかも40歳以上という形で、昭和時代につくられた検診という形でやってきたということですけれども、このグラフだと、確かに肺がんは、40歳は低い罹患率ですね。資料2の下のほうのグラフを見ると低いということだけわかるのですけれども、実際の数字で見ると、罹患率は10万分の1桁という非常に低い数字でありまして、大腸もそんなに変わらないです。40歳代になると10万分の20とか10とか、そのぐらいの低い罹患率。
これは、資料1のところにがん検診の基本条件というのがあるのですけれども、これの1番目に、がんになる人が多く、また死亡の重大な原因であることという。だから、基本条件の1番に外れてしまうという考え方になるので、そこのところを考えると、例えば肺がんであり、大腸がんの40歳代というのは、それをこのままのペースで実行し、強い受診勧奨を行っていくのには、かなり問題が大きいと考えます。
○大内座長 がん検診の基本条件の1に該当しないということで、大変説得力のある意見でございますが、いかがでしょうか。
では、祖父江構成員のほうから。
○祖父江構成員 資料2の2枚目のスライドで、現状において、年齢に関しては下限が設定されているということですね。胃がん検診に関して、従来は40歳だったものを50歳に引き上げて、措置はあるにせよ、変更したわけですね。それまでは、胃がん、肺がん、乳がん、大腸がん、全部40歳以上で、何で40歳になったかというと、恐らく老人保健法で40歳以上が全ての検診の対象者だったので、それで40歳以上になったというのが最大の理由であって、それ以外の根拠で決められたとはちょっと思えない。それをずっと守ってきたわけです。胃がんに関しては、それを変えたわけですから、ここで肺がん、大腸がんについて変えない理由は余りないと思います。
先ほど中山構成員、言われたように、罹患リスクとか死亡リスクのレベルでも、胃がんよりも低いのですから、これは50歳に引き上げるということで整理するのが妥当かなと思います。
○大内座長 井上構成員、どうぞ。
○井上構成員 今、ちょうど祖父江構成員がお話しされたことに非常に近いお話です。
2つあるのですけれども、日本の年齢が決まったことというのは、かなり便利にそのように決めてしまったのだろうと思うのですけれども、例えば資料2の19のUS Preventive Services Task Forceの年齢の切り方というのが、部位によってまちまちで、これがエビデンスに基づいてこういうふうな評価をしているのか、それとも国でそういうサービスを提供している関係で、どうしてもこの年齢になってしまっているのか、すなわち、
グレードをつくっているもとの年齢の基準は、エビデンスに基づいて指定されているのか、サービス上便利だからこの年齢にされているのか、もしご存じでしたら教えてください。
もう一つは、先ほどの年齢切りのときに、我々検討会で議論していく上で、先ほど中山構成員が言われましたように、10万対何人以下だったらやめたほうがいいという基準があると、非常に決めていきやすいと思いますので、基準について何かあるといいなと思いました。
以上です。
○大内座長 ただいまの井上構成員の御質問、例えばUS PSTFの肺がん検診の年齢、推奨グレードは何か根拠があるのですかということですが、タスクフォースのメンバーじゃないので何とも言えないですが。多分、過去のトライアルでのデータから鑑みて、このようになったと私は理解しています。
中山構成員。
○中山構成員 今、US Preventive Services Task Forceは、年齢等のことを議論するときに、CISNETという数理統計でモデルをつくって計算するというグループに全部やらせて、それでベストの年齢はどこか、不利益が多くなるのはどこかというのを決めて、エビデンスをつくってガイドラインをつくるということをやっています。残念ながら、日本はまだそこのレベルには至っていないというところです。
あと、後半の部分ですけれども、今、井上構成員から意見が出ましたけれども、何か基準はというところです。実は、子宮頸がんというものが入っていまして、罹患率、死亡率が非常に低いのですけれども、そこと肺がん、大腸がん、乳がんを1つにしてしまうと、すごく難しいことになってしまう。確かに、肺と胃と大腸という男女に共通したがんについてはいいと思うのですけれども、女性特有のがんを入れると議論がちょっとややこしくなるかと思います。
○大内座長 罹患率、有病率に関して、かつてがん検診になじむかということで、もちろん早期発見によって救命し得るということが前提条件になるのですが、人口10万人対20人ということがかつて言われたことがありました。特に、最初のがん検診の有効性評価に関するデータ作成に当たった久道班のときに、そういったことを前提に動いた記憶がございます。ですので、恐らく人口10万人対20というのが大きな目安だと思うのですね。
となると、例えば今、肺がんの件が議論になりましたけれども、手元の資料を見ますと、2013年のデータが一番新しいのですが、それが50歳以上では人口10万人対35人ですけれども、40代では6人です。大腸がんでも同じことが多分言えると思います。大腸がんは、2013年のデータで人口10万人対40歳が21人ですね。ぎりぎりですかね。そういった観点で出すことは可能です。
ただし、今、中山構成員が言われたように、子宮頸がんを20歳に引き下げたとき大変議論になったのですけれども、20歳から24歳までの人口10万人対の罹患率は多分1.5か2ぐらいで極めて少なかったのです。25歳からはふえていくのです。一方で、乳がんの30代は、子宮頸がんの多分4倍以上あるのです。なのに、検診方法がないので入らない。ですから、乳がんは人口10万人対、30代でも、特に35歳からは50を超えているのですけれども、指針に入っていないといったジレンマがあるのです。
なので、全体で同じ基準というのは難しいかもしれませんけれども、一応の目安として出すことはできると思います。そういうことをしてほしいですか。
○井上構成員 アメリカのようにエビデンスをきちんと評価する機関がない中で議論するのであれば、当然一律である必要はなく、がんの部位によっても考え方も違ってきます。ただ、明らかにこれだと無駄をしているなというのがわかるような数字があると、その目安の数字が少しでもあると、最低限、我々も、ただ自分の知識だけで、経験だけで議論しているよりは、年齢決めもしやすいし、その結果を受けた評価に耐えやすいですね。批判などもいろいろ出てくると思われ、そういう意味では、決めた結果に対して防衛できるような、何か客観的な目安があったほうがいいのではないかと思いました。
○大内座長 資料2の4の罹患率の推移が、多分一番わかりやすいと思います。年齢が振ってありまして、ここに、例えば今、議論になっている肺がんですね。今、40歳からやっていますけれども、40代は極めて低いことがわかりますね。50あるいは55からふえてきているということ。先ほど言われた子宮頸がんですけれども、20代はほんのわずかですが、一応入っています。ですので、こういった観点でデータとしては出せると思います。これを数値化して出すべきですかね。
○井上構成員 プロットしているもとの数字があれば。
○大内座長 中山構成員、これは最新のデータベースとして出せますか。
○中山構成員 これはがん情報サービスのデータなので、こういうものはすぐ出せると思いますけれどもね。
○大内座長 そうしたら、議論すると私も非常に悩むのですけれども、例えば乳がんは30代からすごくふえているのですね。この資料は40代からしか出ていないので、実はその前のデータもあれば議論できるのかなと。ただ、検診方法は確立していません、皆さんに広く知ってもらうために、もしつけるのであれば、全てのがん種で年齢を20歳以上にして出してもらえれば、より理解しやすいのかなと思いました。では、中山構成員あるいは事務局のほうで、人口10万人対罹患率のデータを出していただけますか。はい。
ほかに御意見いただけますか。肺がんについての意見をもう少しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○棟重構成員 個人的な意見として少しお話しをさせていただきたいのですが、先ほど国民の皆さんにわかりやすい内容にして頂きたいとコメントをしました。松田構成員から、国際比較というものがあり、一つの基準になるのではないかということでしたが、肺がんは日本以外に他の国の基準がないということで、この辺がわかりづらい。多分、専門家の方はいろいろよく御存じかと思うのですが、どのように理解すればいいのかを教えていただきたい。
○大内座長 肺がん検診については、歴史的な経緯がございまして、多分、先生も御存じだと思いますけれども、結核検診から始まっていまして、それこそ局長が最初に御挨拶された平成7、8年のときに議論になったのは、なぜ日本だけなのだということで、5つのケース・コントロール・スタディがちょうど走っていたときなので、結果が出るまで待ちましょうかということでペンディングになった経緯もございます。確かに、胃がんと肺がんについては、国際的基準ではないのですね。日本の特殊な事情があってやっていますけれども、もっと詳しいのは中山先生ですか。どうぞ。
○中山構成員 要は、老人保健法という法律のもとに検診がどんどん採用されるときに、エビデンスとか死亡率減少効果という話がまだ日本の中に入ってこなかったので、先行してやって、後づけで証拠をつくっていったという経緯があって、胃がんについては、ほかの国でそれほど問題になっていなかったので、日本でエビデンスが後づけでつくられたからといって広まらなかったという経緯がありますし、肺がんについては、70年代に海外でRCTというものが行われたのですけれども、その研究結果が有効性を示さなかったということなので広まらなかったというところがあります。日本は、もう少しおくれてからやり出したというか、それで証拠を固めていって、自国内の証拠をもとにやり続けているというところです。
○大内座長 国産なのです。ただ、それも精度を向上すべき時点に来ていますので、ここで皆さんに意見をいただきながら変えていきたいと思っています。
○棟重構成員 職域のがん検診は任意ですので、対策型とは違う検診の方法が入ってきているところです。胃がんのときに内視鏡を先行して取り入れたということがありますが、肺がん検診も低線量CTなどで実施しているところも徐々に出始めています。その辺との関係が私もよくわからないのです。
いずれにしても、わかりやすさということで、多分、専門家の方はおわかりいただいているにしても、国民の皆さんにわかりやすい説明の仕方を少し考えていただきたいということを要望したいと思います。
○大内座長 よろしいですか。
ほかに御意見ございますか。
井上構成員。
○井上構成員 肺がん検診に関しては、今の話を聞いていると、なくしてしまうのもあれかと思うのですけれども、それは置いておいて、喫煙率が減少していますので、これは何にも変えられない事実なので、そういう意味では、喫煙の影響を受けている人たち、主に上のほうの年齢の方たちが上にどんどんシフトしていく。胃がんと一緒で、年齢を上げていくのは、そういう意味からリーズナブルな話じゃないかなと思います。
○大内座長 大変貴重な御意見だと思います。
では、肺がん以外の検診についても意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
大腸がんについて、松田構成員、いかがですか。
○松田構成員 現在、大腸がん検診は便潜血検査で行っていまして、下限が40歳で上限が設定されていません。先ほど、上限についてはお話ししたとおりですけれども、現場としては、上限とはこの年齢までは積極的に受診勧奨すべき年齢という意味で、上限の設定は必要なのだろうと思います。ただし以前から申し上げていますが、その年齢を超えた人たちの機会を奪うものでは決してないということが条件です。75歳、もしくは80歳までは積極的に受診勧奨する。その理由は、この年齢層では罹患率も死亡率も高い。精検まで受ければ大腸がん検診の死亡率減少効果はしっかりあるということを踏まえてということです。
下限については、先ほど中山構成員もお話しになったように、今、大腸がん検診受診対象年齢の下限は40歳です。がん検診の対象としては罹患数が人口10万対20を超えている場合が適しているという話が座長からありました。40歳代における大腸がんの罹患率は20を超えています。諸外国の数字から見ると50歳というのは妥当ではないかと思いますが、職域で35歳以上に行っているものを一律50歳に引き上げてしまうと非常に混乱を招くと思います。積極的に勧奨すべき年齢は50歳以上だということの理解は必要なのかなと思います。ただし、大腸がん検診の受診対象年齢の下限を、地域、職域ともに50歳に今、引き上げられるかというと、ちょっと難しい面があろうかと思います。
○大内座長 ここは悩ましいですね。要精密検査受診率からすると、確かに大腸がん、70歳以上は非常に落ちていますので、上限についてはかなりきちんとしなければいけないかなと思っています。
下限について、大変悩ましいと思います。ただ、傾向としては、50代。でも、40代で20人を超えていますので、これはなかなか無視できませんね。 いかがでしょうか。はい。
○中山構成員 20という数字の根拠がよくわからないところで、胃がんも45歳から49歳という前回の改定でカットされたところは、罹患率は10万対25ぐらいです。20は超えているのですけれども、前回の改定のときにそこはカットしたというところがあるので、どこに横並びでカットオフをつくるかというのは、極めて微妙なところで、そこの整合性をどう保つかというところかなと思います。
先ほど松田構成員からの意見も出ましたけれども、そもそもこの話は、これより下の年齢の人は検診を受診してはいけないとか、するなという話ではなくて、強く受診勧奨する年齢範囲を決めるだけというところなので、ある程度そこはきつ目というか、狭めに決めてもいいのかなと思いますけれどもね。
○大内座長 胃がんのときの議論の中では、確かに45歳代、人口10万人対25という数字があったのですけれども、年齢階層別にピロリ菌を有している年齢層が高齢化していくのが見てとれた。それで、10年ごとに胃がんは確実に罹患率が下がっているのです。ところが、大腸がんはそうではないのです。そこが多分大きな違いだと思っていますので、そういった幅広い観点から意見をいただく。
今、井上構成員から御意見があったように、肺がんについては喫煙との関係も重要ですので、その点からも、強く勧奨すべき年代を絞ってはどうかということは、非常に建設的な御意見だと思います。
どうぞ。
○井上構成員 先ほど松田構成員からありまして、それはいいなと思ったのですけれども、そもそも指針自体に年齢がこれ以上じゃなければだめだというような、これまで何となく縛りを感じていたのですね。ただ、この検討会で出していく指針の改定の中で、強く推奨する年齢ということできちんと置きかえて話ができるのであれば、全くそのほうがいいと思っていまして、まずそういう勧奨の仕方というか、指針のつくり方に非常に賛同いたします。
○大内座長 実は、この検討会の位置づけですけれども、基本的には健康増進法で定めているがん検診の費目の中での指針、推奨すべきガイドラインを策定していくことになっているのですが、実施主体は市区町村です。厚生労働省のお立場を改めてお伺いしたいのですが、このガイドラインをつくったからといって、強制的ではないということでよろしいでしょうか。どこまで踏み込んで、推奨グレードを強く推奨する場合、Aとする、推奨する場合、Bとするとか、そういったことの強調も図ることで、それが都道府県を介して市区町村に行った場合に、ある意味国を動かすようになるのですが、そこまで踏み込んだ権限を持っていいのでしょうか。
○がん対策推進官 確かに座長御指摘のとおり、市区町村ががん検診の実施主体になっております。ですから、現行の国の指針もそのようにやるべきだという言い方をしていて、実際、現に市区町村が行っているがん検診は、国の指針に全て沿っているものではないという現状も踏まえて、国が出す指針のあり方については、きょうしっかり御議論いただいた上で、そこは先生がおっしゃるように、あるいは井上構成員がおっしゃるような推奨の仕方を変えることでお示しすることも可能だと思います。
○大内座長 具体的にUS PSTFのようなA、B、CとかIといったことも、強く推奨する、ある程度推奨するといった濃淡の差をつけることは可能かどうかなのですが。
○がん対策推進官 御議論の上で、科学的にそういった示し方が必要に応じてできるのであれば、それも可能だと思います。
○大内座長 祖父江構成員、いかがですか。
○祖父江構成員 推奨グレードを市町村にですか。
○大内座長 市町村向けになってしまうのですね。だから、ここはなかなか難しいと思います。表現の仕方で書くことはできるのですけれども、A、B、Cというグレードづけというのは、なかなか指針にそぐわないのではないか。
○祖父江構成員 だから、市町村にそういう判断ができる人がいればいいですけれども、A、B、C、D、Iをつけて、その市町村ごとの施策を変えるみたいなことを判断する人は、恐らくいないでしょうから、もうちょっと、やる、やらないという形のもののほうがいいと思います。
○大内座長 井上構成員。
○井上構成員 余りグレードで分けてA、B、C、Dとやっていくと、そもそももととなる情報もはっきりとない中で、現場もそれを聞いて混乱する。あと、グレードが低いほうに対する、ある意味切り捨てるかどうかという微妙な判断を市町村に委ねるというのは、市町村としても非常にやりづらいことだと思うので、もっとシンプルに、今までは対象者ということで年齢をがんと出していますけれども、強く推奨するのはこの年齢ですよというところにとどめて、出せばいいのではないでしょうか。
○大内座長 重点的な推奨という言葉で書くことは可能ですね。そのような方向で行きますか。
はい。
○祖父江構成員 上限と下限でやや考えが違うような気がしますけれども、下限の場合は、有効性の大きさが絶対的に小さいということで考えるのだと思います。だから、それより下の年齢を受け入れますみたいなことは余り積極的に言う必要はなくて、ある程度年齢を決めるというのはいいと思いますけれども、上限側は、理屈としては、利益・不利益バランスが、利益が不利益を上回るという判断が、多くの人にできる年齢をカバーしようというわけですね。上の年齢に行くと、個人によって、そのバランスが変わってくるので、個々に判断してくださいというスタンスでの決め方ですね。だから、人によっては、利益・不利益バランスが、80でも利益のほうが上回るかもしれないということを考えた上での、多くの人が利益を上回るので推奨しますという意味での上限だと思います。
だから、一律には上限は決められないというか、そういう意味合いで受ける人は受けてください。だけれども、受けない人も、受けないほうがいいと判断される人もいるという意味での年齢限界だと思います。
○大内座長 御意見いただいておりますが、今までは、このがん検診の指針の記載の仕方について、年齢層の下限については書いてあって、上限については書いていない。どの年齢層も同じように推奨してきたわけですが、皆様の御意見ですと、重点的に推奨する年齢層も考える。それも不利益も含めて検討するという流れでよろしいですね。
○祖父江構成員 ですから、不利益の大きさこそ、個人によって違いますし、利益のほうも、余命との関係で変わってくる。ですから、その利益・不利益バランスの判断が個人によって違うような年齢層では、一律に進められないという理屈だと思います。
○大内座長 それでは、議論も1時間ほど行っていまして、改めて参考資料3と4をごらんいただいて、あとUS PSTFの資料もごらんいただいて、次回以降、どのように進めるかですが。皆様の御賛同をいただいたのは、今、重点的に勧奨すべき年齢層ということ。それから、不利益についてきちんと明記する。対象年齢の中で、上限の場合に、できるだけ排除しないような書き方が必要だと思います。例えば、希望される場合は受け入れますという形ですね。今、日本人は高齢化していますし、健康寿命が延びていますので、そういった観点は必要かと思っております。ですから、その書き方だと思います。
そういった観点で、重点的に推奨する年齢層ということを各がん検診の下限・上限である程度出していただく。しかし、特に上限については、受診の機会を妨げるものではないという形がふさわしいのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
はい。
○松田構成員 座長のおっしゃるとおりだと思います。上限の設定に関して言うと、さっき不利益の話もちょっと申し上げたのですが、受診者一人一人、相当大きな違いがあるはずなので、受診したいという人たちの受診機会は奪わない、妨げるものではない。それは非常に大事だと思います。ただし、押しなべてというか、均等に受診勧奨する年齢じゃないということもきちんとお話しすべきかと思います。
ただ、下限について言うと、受診による利益が大きくないということも、しっかりうたうべきです。ただし、その人たちの受診の機会を奪うのかどうか、それはまたなかなか難しい議論で、特に職域に関して言うと、受診対象年齢下限の引き上げはちょっと難しい面があろうかと思います。ただ、利益・不利益バランスということも踏まえると、この年齢が特に受けるべき年齢と示すべきだと思います。今回、私の関心事は、上限を決めること。しかも上限については、本人の判断によるところが大きいということかと思います。
 
○大内座長 大変貴重な御意見です。
検査に伴う偶発症、あるいは不必要な検査や治療ということが上限にはございますので、がん検診のメリット・デメリットをきちんと精査して、最終的には国民をがんから守るということ、そのメリット、国民の利益を最大化するための年齢層はどうなのかということだと思うのですが、それに基づいて行っていきたい。
胃エックス線検査の偶発症の発生率について、年齢階級でこれだけきれいに出ていますけれども、実は先ほどから議論になっている肺がんについての偶発症は、なかなかデータがないのです。中山構成員、いかがですか。
○中山構成員 手元の資料で申しわけないですけれども、地域保健・健康増進事業報告でも偶発症というものを重ねていますので、5年分ぐらい足し合わせたのですけれども、要はスクリーニング検査というもので偶発症が発生するというのは、ほぼ胃のエックス線透視検査なのですけれども、大腸と肺がんに関しては、精密検査の内視鏡検査、肺の場合は気管支鏡検査も見事に年齢を重ねると偶発症の発生率が多くなっているというデータがあります。明らかにそういうことなので、そういう情報がまだ表に出ていないというか、まとまった報告がほとんど出ていない段階なのですけれどもね。
先ほど大内先生が言われましたように、希望する人は受診を損ねないというのはいいのですけれども、そもそもこういう偶発症があります、年齢がこのぐらいになるとすごく危険ですということは、きちんと伝えて理解して中止してもらえるかどうかですけれども、最新の米国のインタビュー調査の論文を見ますと、アメリカのお医者さんが検診を受診するのをやめなさいということを患者さんに言っていますかという確認は、実際言われたのは9%ぐらいということでして、ほとんどそういうものがアメリカでも浸透していないところですから、日本ではこれからもっと高齢化社会が激しく進みますので、それをどんどん進めていく。
だから、今まで受診しろと言ってきましたけれども、ブレーキをかけるということをあわせてやっていかないといけないかなと強く考えます。
○大内座長 そのようなデータは、まだ公表されていないのですけれども、国立がん研究センターのデータとしてまとめられますか。
○中山構成員 日本語の論文にする予定で進めています。
○大内座長 そういうデータを事前にこの検討会で開示はしていただけますか、どうしますか。この議論を進めるに当たっては、高齢者の受診率が要精密検査の中で起こる偶発症も含めて検討せざるを得ないのですね。ですから、そういうデータがまだ未公表ではあるけれども、ある一定の裏づけがとれていれば、例えば集計値というものは本検討会で皆さんに見ていただきながら議論を進めるということでいかがでしょうか。
○がん対策推進官 そうした議論に必要なデータについては、座長と御相談の上で、できる限り、できるものは準備していきたいと思います。
○大内座長 どうぞ。
○椎名構成員 この資料の中の胃エックス線検査における偶発症の発生率のことなのですが、今お話があったように、地域保健・健康増進事業報告の中でも、確かに偶発症というのは報告の欄はあるのですけれども、検診直後になかなか表面化しないといったこともあって、数字として上がりにくいと感じております。この100万件を超える検査で起こっている偶発症の数字というのは非常に貴重だと私は思います。特に75歳以上になると1,000人に1人ぐらいという勘定になるのでしょうか。これは決して小さい数字ではないと思いました。
ただ、こういったものを見る機会というのは、今までほとんどなかったように思いますので、こういったことを、特に高齢になると嚥下障害が出てきたり、また、検診台から落ちるということも可能性としてはあると思いますので、場合によっては命にかかわる偶発症ともなりかねない。この辺は注意喚起する必要があるのかなと思います。一律に上限の年齢は決められないということではありますけれども、そういう中でも、ある一定の年齢を超えるとこういうことが起こりやすくなるというのは、受診者も、また検査を実施する側も十分理解した上で事業は進めなければいけないのかなと思っております。
以上でございます。
○大内座長 椎名構成員から大変貴重な御意見いただきました。偶発症について、データがもし存在する、存在しないとしても、その集積に努めること。それを周知することが前提になるだろうということですね。あとは事務局と相談させていただいて、今後の進め方に反映させていただきたいと思っております。
ほかに御意見ございますか。どうぞ。
○祖父江構成員 資料2の8ページ目、9ページ目の発見率。高齢者の中に明らかに利益の少ない人たちがいるということですね。これは、それまでずっと検診を受け続けていてネガティブだった人が、その後受け続けると、発見率としては非常に低いということですね。ですから、こういう人たちはどこかで検診を受けることをやめたほうが、その人の利益・不利益バランスからすると、恐らくいいと。このことはきちんと伝えないといけないと思います。恐らく、この人たちはずっと受け続けて、ネガティブと言われ続けるのでしょう。
それはそれでいいのですけれども、検診を受けるということ自体が、不利益を必ずある一定のレベルで生じさせることになりますので、偽陽性とか、ひょっとしたら過剰診断ということもあるでしょうし、そういうことをこういう受診層の人たちにきちんと伝えないといけないという面はあると思います。
○大内座長 大変重要なポイントだと思います。
どうぞ。
○福田構成員 私も、基本的には重点的な推奨する年齢を決めてというのは賛成ですけれども、きょうのお話を聞いていても、上限の上の方に関しては個別に判断していただくというところなので、むしろそこに対して、どう受診のアプローチとか説明をしていくのかというのは難しいなというのをすごく思いました。重点的なところは、ぜひ受けてくださいでいいと思いますが、今のような話とかをどうやって伝えていくべきかみたいなところも、どこかで議論していく必要があると思います。
あとは、偶発症がこのくらいになりますというのも重要ですけれども、それをどう判断すればいいのかというのを、通知を受け取った人が悩まれるような気がするので、そういうものをサポートするとか、そういうものも必要なのかなと思いました。
○大内座長 がん検診を受ければいいというものでもなくて、受けた場合のメリット・デメリットについては十分に説明しなさい、理解を求めなさいということで、シェアード・ディシジョン・メーキングという言葉が普通になっているのですが、現場ではなかなかそこまで行っていないのが実態だと思います。そういう体制をつくっていくためにどうするかということで、皆様からもお知恵をいただきながら、指針改正に当たっては書き込めるところは書けるような検討会の報告書にしたいと思っています。
いかがでしょうか。ほかにございますか。本日の議論としては、大体進んだかと思っております。
途中で私、1つ申し述べたのは、10枚目のプロセス指標です。精検受診率、未把握率あるいは精検未受診率、がん発見率、陽性反応的中度の数値が最新のものではないということで、10年が経過しておりますことから、この見直しも同時に進めたいと思っていますが、よろしいでしょうか。はい。
では、引き続き、これからも重点的に推奨すべき年齢階級、各種がん検診におけるあり方について検討を継続したいと思っております。まだ途中でございますが、幾つか宿題がございましたので、次回に向けて、またデータをいただきながら皆さんと議論を深めたいと思っておりますが、よろしいでしょうか。
祖父江構成員、どうぞ。
○祖父江構成員 ちょっときょうの議論と関係ない話をしてもいいですか。時間があるようなので。
きょうは、年齢の下限・上限でグレード、推奨を変えるという話でしたけれども、それも重要ですけれども、前回まで、職域のがん検診に関してマニュアルを発出して、何とか精度管理を進めましょうという話でしたね。そのことをちゃんと継続的に取り組むというのは非常に重要で、あのマニュアルの最後のほうに、職域のがん検診に関して、きちんと実態把握するためのデータの収集の仕組みを検討するということが書かれていますので、ぜひその仕組みを検討するということも、このあり方検討会の中で議題に上げてほしいと思います。
特に、この資料2の10枚目か、各がん検診におけるプロセス指標の値が、これは地域保健事業報告のほうから定められているので、職域とはちょっとフィットしないということもありますので、こういう値をきちんと定めていくためにも、実態をきちんと把握すると。きちんととは言えないかもしれませんが、一部の健保組合とか協会けんぽというところだけでもいいので、実際のデータをできるだけ集めて、こういうものを実際に即したような形で決めていくというのは必要じゃないかと思います。
○大内座長 データヘルス全体のがん対策あるいは健康寿命、全て関連するのですが、がん・疾病課長あるいは推進官のほうから御意見いただけますか。
○がん対策推進官 御指摘いただいたとおり、今、全省的に、データヘルスについて、保険・医療・介護のデータをどう集めて、どう活用していくかということで、保険者ごとに番号がありますけれども、それを個人にひもづけて何とか活用できるような方法ということで検討を進めています。
加えて申し上げますと、職域のほうでも保険者の御協力をいただきながら、地域で、あるいは市区町村でのデータをどうまとめていくのかという議論が、今、進められていますので、そういったところもさらに深めて、また御報告あるいは御議論いただければと思っております。
○大内座長 ありがとうございました。
ほかに御意見ございますか。よろしいですか。
では、議題1については、これまでにしますが、議題2で「その他」でございます。皆様から何かございましたら、お受けいたしますが、ございますか。
では、本日の議論はこれまでといたします。
事務局のほうにマイクを戻します。
○がん対策推進官 本日は、お忙しい中、また、お暑い中、お集まりいただきまして、積極的な御議論をいただきまして、本当にありがとうございます。
次回の開催につきましては、追って、また日程調整させていただきたいと思います。また、データ等については、座長と御相談の上、次回、検討会に向けて準備をしたいと思っています。
本日は、どうもありがとうございました。事務局からは以上です。
○大内座長 それでは、第25回「がん検診のあり方に関する検討会」をこれにて終了いたします。
ありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線3826)