第11回労働政策審議会人材開発分科会 議事録

人材開発総務担当参事官室

日時

平成30年10月18日(木)10:00~12:00

場所

厚生労働省共用第6会議室(3階)

議題

1 一般教育訓練給付の拡充に係る対象講座について
2 その他

議事

 
○小杉分科会長 定刻前ではございますが、本日御出席予定の委員の皆様がそろっていらっしゃいますので、少し早目に始めたいと思います。
それでは、現在、定足数に達しておりますので、ただいまから、第11回「労働政策審議会人材開発分科会」を開催いたします。
本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日の出欠状況ですけれども、橋本委員、小倉委員、高田委員、臼田委員、角島委員、小松委員、美野川委員が御欠席です。
なお、小松委員の代理といたしまして、日本商工会議所産業政策第二部、羽柴主任調査役に御出席いただいております。
それでは、議事に入る前に、今回より人材開発分科会はペーパーレス会議となりました。皆さんの目の前に置かれているタブレット端末により資料を御確認いただくことになりますが、端末の説明につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
 
○青山人材開発総務担当参事官 では、御説明します。厚生労働省では、審議会などのペーパーレス化の取り組みを推進しておりまして、本日の人材開発分科会のこの会合から原則ペーパーレスで実施させていただきます。
お手元にはタブレットを置かせていただいております。使用方法につきましては、操作説明書を机の上に配付しておりますが、委員の皆様におかれましては御不明な点、また説明者がどこの資料を使っているかわからないなどの御照会がありましたら、近くに職員がおりますので、手を挙げていますが、お声がけいただければと思います。基本的な操作について、これから簡単に御説明させていただきます。
皆様のタブレット、恐らく画面がもう出ているかと思いますけれども、今回の第11回人材開発分科会の資料のフォルダーが並んでいる設定になっていると思います。各資料のアイコンを押していただきますと資料が閲覧できるようになりますが、別の資料を閲覧する場合には、画面左上の水色みたいな字で「労働政策審議会人材開発分科会」と出ている場合と「戻る」と出る場合、両方あるのですけれども、いずれかの文字を押していただくと、一覧が映し出されるフォルダーに戻ります。その後、改めて別の資料を押していただくということになります。
恐縮ですが、複数の資料を同時に閲覧ということはできませんので、御留意いただければと思います。
御不明な点がありましたら、職員のほうにお声がけくださればと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
 
○小杉分科会長 よろしいですか。それでは、議事に移ります。
議題は「一般教育訓練給付の拡充に係る対象講座について」です。内容について、事務局から説明をお願いいたします。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 若年者・キャリア形成支援担当参事官でございます。
それでは、議題1にかかわりまして、事務局から御説明を申し上げます。
お手元の目次的ページの中では、資料1-1、1-2及び参考資料2、この3点が議題1にかかわる関係資料でございます。順次、ファイルをお開きいただければと思います。
初めに、資料1-1のファイルをお開きいただけますでしょうか。本議題、一般教育訓練給付の拡充に係る対象講座のあり方については、前2回の本分科会において集中的な御審議をいただき、幅広い御意見を頂戴したところでございます。本日は、前回までの御審議を踏まえ、対象講座の指定基準案及びこれに関連する資料を改めてお示しするものでございます。
ただいまお開きいただいております資料1-1に関しましては、前2回に頂戴いたしました主な意見、今後の課題に関しまして、見出しだけ御確認をいただければと思いますが、1ページにございます本拡充に係る対象講座のコンセプト。適宜スクロールいただければと思います。2として、次のページ、具体の対象となり得る各講座類型。さらに次のページ、3、対象講座のより具体的な訓練効果の評価方法、4、その他ということで、2回分の主な意見をこのような形でまとめさせていただいております。内容については、適宜御確認いただければと思っております。
続きまして、ダブルクリックをして、上の表示の「戻る」で目次画面がまた出てまいりますので、改めて、資料1-2をお開きいただければと思います。本資料、一般教育訓練給付の拡充に係る対象講座の指定基準等の改正案としてお示しするものでございます。
1ページ、スクロールいただければと思います。教育訓練給付全体についての各課程類型の関係性について整理をした資料です。前回もこれに大変よく似た資料をお示ししているところでございます。
真ん中の点線囲みの部分が、今回御審議いただいております一般教育訓練給付拡充の対象となる訓練の考え方でございます。御説明申し上げておりますように、今回の議論の前提となります政府方針「人づくり革命基本構想」の中で、「ITスキルなどキャリアアップ効果の高い講座を対象に給付率2割から4割引き上げ」ということになっております。
この「かぎかぎ」の部分の考え方について、2回にわたり御審議をいただきました。この間の御審議を踏まえ、この考え方として、その下の欄でございます、「即効性のあるキャリア形成ができる」「社会的ニーズ」。この中には、人手不足への対応、生産性向上等の考え方が含まれるものと解しております。こうしたニーズが高く、かつ特に就職実現・キャリアアップとの結びつきの強さを客観的に評価できる教育訓練ということで、この間御審議をいただいたものと受けとめております。
これに該当し得る課程類型として、前回の資料では、検討対象としてお示ししております公的職業資格の養成課程(短期)、これ以外の公的職業資格、具体的には業務独占、名称独占、必置の試験合格目標講座、ITSSレベル2以上のIT資格取得目標講座、ITLSに基づくいわゆる新iパス試験合格目標講座、また文科大臣が認定をする大学・専修学校の短期のプログラム、この4つの類型について、これまで専門実践について第1類型、第2類型という言い方をさせていただいておりますので、それと誤解が発生しないように、この資料上、A~Dということでお示ししているところでございます。
続きまして、講座指定基準等の基本的な考え方を同じ資料の下の欄で御確認いただければと思っております。この間の審議の中で、本拡充一般教育訓練、いわゆる高率給付の対象にふさわしい講座の質について、客観的な質保証が必要である。その際には資格取得、就職などの成果パフォーマンスが重要な視点であるといった点について御確認をいただいているものと認識しております。
そうした観点から、現行、専門実践教育訓練では、右下でございます。資格にひもづくものについては受験率80%、合格率全国平均以上、また全ての課程類型共通で就職・在職率80%、これをいずれも満たすというパフォーマンス基準を設定しているところでございます。
他方、現行の一般教育訓練給付に関しましては、その左側でございます。就職・在職率要件は設定していないところでございまして、また、資格にひもづくものについては受験率50%、合格率全国平均80%以上という、専門実践に比べて緩い基準を設定しているところでございます。この間の御審議を踏まえるならば、この一般教育訓練給付拡充の対象講座指定基準としては、専門実践と同等のパフォーマンス基準を設定してはどうかという考え方で、真ん中の下でございます。受験率80%、合格率全国平均以上、就職・在職率80%以上、これをいずれも満たすというパフォーマンス基準を設定してはどうかという内容になっております。
また、訓練前キャリコンとの関わりでございます。先の専門実践教育訓練対象講座、3年後の見直し、審議の中でも、専門実践教育訓練を確実にキャリアアップに結びつける。また、訓練受講者と講座の的確なマッチングを図っていくという観点から、在職者も含めて訓練前キャリコンを要件化することとしてはどうかという御意見をいただき、雇用保険部会につなげさせていただいているところでございます。
この一般教育訓練給付拡充講座についても同様の考え方のもとで、真ん中の欄の一番下の段でございます。訓練前キャリコンによる受講の意思、就職実現・キャリアアップ可能性の確認、さらには受講のインカレッジ、受講後の受講成果を具体的なキャリアアップに結びつけていく促進効果、こうした観点からこれを要件化することとしてはどうかという提案内容になっております。
ちなみに、ここで「することとしてはどうか」という表現になっておりますのは、本件給付制度そのものに係る事項でございますので、人開分科会としてこのようなお考えでもしおまとめいただけるのであれば、これを雇用保険部会につなげさせていただきたいという趣旨でございます。
続きまして、2ページ以下が具体的な指定基準案にかかわる説明資料でございます。まず、一番上の段がいわば前提となる事項でございます。今回御提案する指定基準案については、本分科会、また後ほども補足説明いたしますが、関連する雇用保険部会での審議、その後の告示策定、申請受け付け、審査等に要する期間等を見込んだ上でのいわば最短コースといたしまして、31年10月指定分からの適用を念頭に置いているものでございます。
続きまして、今般の一般教育訓練給付拡充の対象講座のコンセプトでございます。上の○に関しましては、前ページの資料で御説明したものと同様の内容になっております。それを前提とした上で、こうした講座、コンセプトを体現するためのいわば基本設計の基本的な考え方として2点お示ししております。1つには、今の専門と同等のいわゆるポジティブリスト方式によりまして対象課程類型を特定するという方式にしてはどうか。いわば最初から想定をしておりませんような課程類型が高率給付の対象になるということを防ぐための基本設計の考え方でございます。
また、ポジリス化いたしました対象課程類型の性格に応じ、それぞれふさわしい講座指定基準を設定するという設計としてはどうかという提案でございます。
以上の基本コンセプトを踏まえまして、先ほど申し上げましたA~Dの4つの課程類型にかかわる具体的な指定基準案の考え方を3ページ以下にお示ししているところでございます。
まず、対象講座A、公的職業資格の養成課程(短期)及び試験合格目標講座でございます。このAが意味する対象となる講座の考え方、範疇に関しまして、少しスクロールしていただく形になって恐縮でございますが、同じファイルの11ページの資料を御確認いただけますでしょうか。これは前回の分科会で全く同じ資料を御提示しているところでございます。公的資格にかかわるいわば概念整理として、横軸に公的資格の分類、業務独占、名称独占、必置、また、それ以外のもののうち実質的に業務独占的効果を持っている講座という分類でございます。
縦軸が養成課程、すなわち当該課程を修了することによって、当該資格そのものを取得できる、もしくはその受験資格を得られることができる課程。
それから、それ以外の課程。これはそれぞれの試験、資格取得を目標とする講座という意味合いでございます。今回、対象講座Aということで御提案申し上げます概念範囲は、この赤点線の部分、すなわち養成課程のうち既に専門実践の対象になっております長期の養成課程を除くもの。また、養成課程以外では、業務独占、名称独占、必置、資格に限定をした形でその取得を目標とする講座でございます。
恐れ入りますが、ページをまた前のほうに戻る形でスクロールいただきまして、先ほどお開きいただいた3ページ、Aの部分にお戻りいただければと思います。ただいま申し上げましたような公的資格、短期の養成課程、業務独占、名称独占、必置の試験合格目標講座に関しましては、それぞれの資格そのものの労働市場における価値が相対的に高いことなどから、先ほど申し上げました一般教育訓練給付の拡充のコンセプトに合致し得るものであるという考え方を持っているところでございます。
したがいまして、これに該当する課程のうち、一定の講座レベル基準を満たすものについて、今般の拡充一般の対象講座として位置づけることとしてはどうか。その場合の講座レベルの指定基準については、先ほど1ページで御確認いただきました受験率80%、合格率当該資格全国平均以上、かつ就職率・在職率80%以上という厳格なパフォーマンス基準を設定したいという考え方でございます。
続きまして、対象講座B、ITSSレベル2以上のIT資格取得目標講座に関してでございます。恐れ入りますが、こちらのほうも同様に少しスクロールいただきまして、12ページでございます。これも前回、同じ資料で御説明申し上げているところでございます。情報通信系の資格に関しましては、ITSSによりそのレベルが特定をされ、具体的な資格との関係に関しましては、この資料出所の下の段に書かせていただいております。私どもは俗にITスキルマップという言い方をしておりますけれども、経産省の指導のもとで、ここにございます専門性を持った法人が毎年メンテナンスをしておりますキャリアフレームワークマップというものに示されているところでございます。その中で赤点線の部分、国家資格、民間資格も含めて、レベル2相当以上のものをBの対象として位置づけてはどうかという考え方でございます。
ハローワーク、また民間職業紹介事業者における情報通信技術者の求人の実態を見てみましても、ここにございます各分野のレベル2以上の資格を取得していることが情報通信技術者正社員求人におけるおおむね共通のスペックになっているということも確認をしているところでございます。
恐れ入ります。また少しページをお戻りいただきまして、先ほどの3ページの下段、対象講座Bでございます。もともと人づくり革命基本構想の中で、ITスキルなどということで例示をされている部分でもございます。さきに別途資料でも御説明申し上げておりますように、人手不足分野の典型的な分野における職業実践的な資格に直結をする講座でございます。こうした考え方のもとで、今般の拡充一般のコンセプトに合致し得るものという考え方のもとで、そのうち一定講座基準を満たすものについて対象として位置づけることとしてはどうかという内容でございます。その際の具体的な講座基準については、資格にひもづくものでございますので、Aと同様の厳格な基準を設定したいと考えております。
続きまして、対象講座C、ITLSに基づくいわゆる新iパス試験合格目標講座と、次のページ、対象講座D、文科大臣が認定をする大学・専修学校の短時間のプログラムに関してでございます。これに関しましては、4ページ、5ページに基づいて具体的な指定基準案を御説明申し上げる前に、その基本的な考え方として、また少しページが飛ぶ形になって恐縮でございますが、7ページに「新たなITパスポート試験合格目標講座・文部科学大臣が認定する短期のプログラムの質保証・検証の具体的方法(案)」という資料がございますので、まずはこちらをお開きいただければと思っております。前2回の本分科会におきまして、この2つの講座の基本制度設計にかかわる両省から提供を受けた資料に基づき、私のほうから御報告を申し上げているところでございます。
また、その中でも経産省、文科省からの説明、また提供資料だけではなく、私ども事務局自身、例えば文科大臣認定プログラムの祖型となる実際のプログラムの視察や意見交換を行ったり、あるいはITLSの具体的な開発専門委員会に直接出席をするなどし、それぞれの構想に従っての準備状況等についてもつぶさに直接確認をしているところでございます。そうしたこれまでの過程を通じまして、私ども事務局といたしましては、この2つの課程類型に関しまして、構想どおりにこれが立ち上がった場合には、先ほど来申し上げております一般教育訓練給付拡充のコンセプトに即したものであるという基本的な考え方を持っているところでございます。その上で、この2つの課程類型については前2回の審議の中でさまざまな御指摘を頂戴しております。これを私ども事務局なりに整理いたしますと、具体的には3つの課題があるのではないかと考えております。これが上枠の2つ目の黒枠でございます。
1つ目は、新iパス試験合格目標講座について、試験としても講座としても純粋な祖型が存在しないということでございます。2つ目、文科大臣認定の短時間のプログラムに関しまして、これは資格と直接ひもづいてはいないプログラムでございますので、資格の受験・合格という観点での質保証に制約があるという点でございます。また3点目、これは両プログラム共通でございますが、この間御指摘を頂戴しておりますように、私どももこの両課程については、在職者が受講受給者の多数を占めるという見込みを持っているところでございます。したがいまして、離職者の就職実績という観点だけでは十全な講座の質保証がかなわない可能性があるという認識を持っているところでございます。
ただいま申し上げました、主にこの3つの観点から、この2つの課程類型について、いわばアディショナルな講座指定基準を設定する、あるいはアディショナルな検証手続を設定することが必要ではないかという考え方でございます。
その具体の中身でございます。同じ資料の下段をごらんいただければと思っております。まず、ただいま申し上げておりますような各課程類型共通の指定基準によって、この2つの課程類型においてどのようなものが対象にならないかということをお示ししております。新iパス試験目標講座に関しまして、時間数については後ほどさらに御説明申し上げますが、講座時間数が30時間未満といった直前試験対策講座については対象としない考え方でございます。
また、先ほど来申し上げております、受験率80%、合格率全国平均以上、いずれかを満たさない、いわば試験合格パフォーマンスが一定水準に満たないものは対象にしないという考え方でございます。また、就職・在職率80%未満のものは対象にしないということで、就職・キャリアアップ以外の目的受講者が一定数に上るような講座は当然対象にしないということでございます。
3点目については、右側の文科大臣認定、短期のプログラムでも同様でございます。
さらに、その下でございます。文科大臣認定の短期のプログラムについては、先ほど申し上げましたような問題意識のもとで2つの追加的な基準を設定したいと考えております。1つは、修了者のキャリアアップ成果やその事例。本人のいわば言い値だけでなく、在職・採用企業側の評価等の情報収集を求めるという考え方でございまして、逆に言えば、その情報開示を行わない、ないし虚偽の情報開示をするものについては、当然のことながら指定対象外という考え方でございます。本基準は、先の専門実践見直し審議を通じ、専門職大学院について追加をする基準と同等のものでございます。
2点目でございます。これらプログラムについては、習得を目指す能力、目標とする就職分野職業も極めて多岐にわたることが想定をされるところでございます。こうしたことに鑑みまして、習得を目指す実践的職業能力の対象職業、あるいは非正規の若者など受講者層の特性に応じたキャリアアップを目的とするものであるならば、そのキャリアアップ上の具体的な効果を明確にするということを指定基準として追加したいという考え方でございます。
こうした具体的な申請内容を点検した上で、別途申請をさせますプログラム内容と整合しない、あるいは目標が不明確であったり、その目標とする職業が雇用保険制度上ふさわしくないようなものについては指定基準としないという考え方でございます。本指定基準については、専門実践でいいますと、BPについて同等の基準を設定しているものでございます。
こうした御説明を申し上げますと、左側の新iパス試験についても同じような基準を設定すべきではないかという考え方があろうかと思っております。ただ、右側の文科大臣認定のプログラムについては、一つ一つのプログラムの人材像が多様でございますが、新iパス試験に関しましては、要すれば、この新iパス試験合格を目標とする、そのための知識・技術習得を目標とする講座でございますので、講座ごとに多様な人材像が存在するというわけでは必ずしもございません。
したがいまして、同等の効果を生むためには、むしろ制度設計主体である経産省、また試験実施主体であるIPAに対して、当該試験合格者全体としてのキャリアアップ成果にかかわる先ほど申し上げたような観点での具体的な事例、情報収集、公開を求めることがより実効性があるという考え方のもとで、既にこのような考え方については経産省にも私どものほうから伝えているところでございます。
以上が講座要件に係る内容でございます。
次に、検証という観点でのアディショナルな考え方について御説明を申し上げます。
新iパス試験については、先ほど申し上げましたように、試験合格率全国平均以上ということを求める考え方でございます。ただ、前回までに申し上げておりますように、今後の計画といたしましては、ITLSについて、既にシラバス祖型はできておりますが、完成するのは年内でございます。これに依拠する形での新iパス試験がリリースをされますのが新年度早々、31年4月でございます。したがいまして、試験を実際に実行しなければ、今ほど申し上げました講座指定基準、合格率全国平均以上の具体的なクライテリアが特定できないという仕組みになっております。
本試験に関しましては、コンピューターベースド方式の試験実施を計画しておりまして、通常の試験に比べて、試験実施後極めて速やかに、ほぼリアルタイムで試験の実施結果が把握可能という説明も受けているところでございます。こうしたことを前提に、新iパス試験、31年4月開始後一定期間、相当数の実績をとるためには二、三カ月程度の期間が必要ではないかという認識を我々事務局は持っているところでございます。そうした時期に試験の受験合格実態、また講座との関連性などについて経産省から報告を求め、当然のことながら本分科会にもその状況を御報告申し上げ、必要な確認を行った上で実質的な適用を開始したいという考え方でございます。これがいわば制度適用前の検証でございます。
続きまして、制度適用後の検証でございます。専門実績教育訓練に関しましては、実質的に27年4月に多数の講座がスタート、多くの講座がターム2年、検証に3年間要するということで、先般3年後の見直しを御審議いただいたところでございます。これに対し、今回の拡充一般教育訓練については、期間で見ますと3カ月から6カ月のものが多数と見込んでいるところでございます。したがいまして、専門の3年後の見直しと同等の受講受給者の属性、就職・在職実績等、雇用保険データで把握するのに要する期間については、専門に比べると圧縮が可能であろうということで、全体といたしましては、下段にございますように、適用開始から2年後を目途に、ただいま申し上げましたようなデータ収集・分析の上、検証を行いたく考えております。
ただ、ただいま申し上げました新iパス試験合格目標講座、文科大臣認定短期のプログラムに関しましては、今ほど申し上げましたような幾つかの課題が存することを前提に、いささか中間報告的な形にはなるわけでございますが、適用開始後1年を目途に、その時点で収集・分析可能なデータの範囲内での検証を行いたく考えているところでございます。
以上申し上げた内容を前提といたしまして、改めて4ページにお戻りいただければと思っております。対象講座C、ITLSに基づく新iパス試験合格目標講座、ITスキルなどということで、もともと人づくり革命基本構想のコンセプトに合致、人手不足分野にも該当、生産性向上への寄与期待等々の観点から、この拡充一般のコンセプトに合致するのではということでお示しした上で、今ほど申し上げましたような事前・事後の検証プロセスを前提とし、また、先ほど申し上げました講座レベルの指定基準を当然適用するという前提で、4ページの資料をお示ししているところでございます。
また、対象講座D、文科大臣認定短期のプログラムでございます。これも同じく人づくり革命基本構想に基づき、社会人、在職者がより多様な分野において現実に受講可能な環境を整備可能という前提で、既に一定分野での職業経験を有する方を対象に、よりコンパクト、密度の高い教育訓練機会を提供するという政策意図でございます。
こうした制度設計の考え方、同じく拡充一般のコンセプトに合致し得るという考え方のもとで、同時に、先ほど申し上げましたような検証プロセス、またアディショナルな指定基準、こういったものを設定するということもつけ加えた形で、対象講座Dについての指定基準の考え方を5ページにお示ししているところでございます。
続きまして、6ページ、各課程類型共通の部分でございます。
訓練時間の下限についてでございます。この間の御審議の中で、講座の質保証が重要であるということを繰り返し御指摘いただき、同時に、特に在職者にかかわりまして、時間的・物理的制約も念頭に置いての受講可能性を確保していく必要がある。あるいは講座のバリエーションを確保していく必要がある等々の幅広い御意見を頂戴してきたところでございます。こうした両面の御指摘を踏まえまして、今回の拡充一般の訓練時間数に関しましては、要すれば、現行の一般教育訓練給付にかかわる訓練時間数下限と同等の考え方を適用したいという内容でございます。
具体的には、現行一般教育訓練給付に関しまして、原則50時間以上という、教育訓練の固まり、あるいは教育訓練講座時間数分布の実態などを踏まえての原則を設定した上で、公的職業資格のうち養成課程、今回の御提案で申し上げますとAのうち、さらに養成課程に相当するものでございます。こちらに関しましては、それぞれの資格制度ごとに養成講座の時間数基準がそれぞれ多様であるということ。また、繰り返し申し上げておりますように、養成課程修了によりまして資格取得等の社会的効果と明確に結びついていくということから、現行一般でも養成課程については下限の適用をしない。この2つの考え方をそのまま適用するとともに、先ほど申し上げましたiパス試験目標講座に関しまして、これはITLS1級相当の資格でございますけれども、その下の2級相当の能力を習得している方を対象としたiパス試験目標講座の標準カリキュラム、標準時間数については、経産省として30時間という考え方を明確に私どもは説明を受けているところでございます。
こうした考え方、クライテリアのもとで、この部分については30時間という下限適用してはどうかという内容。言いかえますと、成果パフォーマンスについては専門実践同等、訓練時間数下限については一般同等の考え方でどうかという提案内容でございます。
検証事項。全体として2年目、今回御説明しているC、D限定で1年後を目途とした事後検証を行うということについては、先ほど申し上げた内容と同様でございますので、説明としては割愛をさせていただきたいと思います。
以下、幾つかの資料を御提示しております。時間の関係で少し絞って御説明申し上げたいと思います。
9ページでございます。前回の質疑の中で自己啓発に関し、今後とも人開行政として普遍的な政策目的として掲げる必要がある、また、そのための政策手段としては必ずしも教育訓練給付制度だけではない全体像を整理する必要があるのではないかという趣旨の御指摘をいただきました。こうした御指摘に対応して、本資料の中では、左側に能力開発基本調査により把握されております自己啓発普及の主な課題として改めて、時間、経済、教育訓練機会そのもの、情報、また教育訓練受講効果認識といった成果について掲げさせていただいているところでございます。それぞれの制約に対応した施策、決してこれは左と右が1対1対応ではございませんけれども、例えば主に時間的制約という観点では、前回、予算の中でも説明申し上げました長期の教育訓練休暇制度に対する企業助成の仕組みの創設計画。
教育訓練給付制度については、今ほど申し上げましたような時間的制約プラス経済制約、機会制約に主に対応する施策と位置づけが可能。これが専門実践、今御審議いただいております拡充一般、また現行の一般、それぞれ教育訓練の固まりによってセグメント化されているという考え方でございます。これにさらに教育訓練講座に係る情報発信、先ほども触れました訓練前キャリコンやセルフキャリアドックの普及など、さまざまな施策を有効に組み合わせることによって自己啓発の普及を図っていく必要があるのではないかという考え方をお示ししております。
また、次の資料、教育訓練給付制度だけではなく、企業主体の教育訓練への支援、公的訓練、こうした全体像を意識しながら教育訓練給付制度のあり方についても議論すべきという御指摘を頂戴いたしました。それを踏まえまして、本資料では、縦軸に主な対象層、在職者、離職者と置いた上で、横軸に企業主体の教育訓練、個人主体の教育訓練、これに主に対応するのが教育訓練給付制度でございます。さらに公的訓練という、いわば人開行政の主要施策の見取り図を大変概括的でございますがお示しをしているところでございます。
前回も特定行為研修などを例にとり、それぞれの事業運営上必要な教育訓練については企業主体で実施をすべきという考え方もお示ししております。私どももその考え方は同様でございまして、この左側にございますように、それぞれの企業の事業運営上の必要性から業務命令などで実施される教育訓練については、それぞれ要件を満たすもの、人開助成金などで支援をしているところでございます。
それとのかかわりで、個人主体の教育訓練については、基本的には在職者、離職者を問わず、それぞれのキャリア設計に即し、個人の意思で受講する教育訓練受講に対する支援というのが基本的な考え方でございます。
同時に、前回御議論も頂戴いたしましたように、例えば中小企業の労働者であって、企業から教育訓練、受講機会を提供されることが期待されるものの経営上の制約、毎年毎年の訓練受講制約、枠の制約、いろいろな事情で受講機会を得られにくいような労働者の方々がいるということも事実でございます。こうしたケースに関しましては、個人主体の教育訓練支援制度の中で対応することがあり得る。この資料の中でも、教育訓練プログラムとしては企業主体の教育訓練、個人主体の教育訓練、同一のプログラムが対象となることがあり得るということも御提示しているところでございますけれども、こうした理念プラス実態に応じた形で真に有効な教育訓練については、企業主体の教育訓練支援、個人主体の教育訓練、いわば両輪で支援をする設計とするということについて一定の合理性があるのではないかという考え方をお示ししております。
なお、企業主体の教育訓練のうちOJTについては大部分のものが公的支援の対象外となっている。いわばこの整理の枠外であるということを念のために御説明したいと思っております。
同じ資料の以下のページには、対象講座、課程類型C、Dに係るこれまでお示しをした主要な資料を御提示しているところでございます。
なお、時間の関係で一つ一つの説明は割愛したいと思いますが、もう一つのファイル、参考資料2には、この間御提示をしてまいりました現行一般教育訓練の概要、具体的なパフォーマンス、今回御提案をしておりますA~Dにかかわるそれぞれの制度設計、ニーズ等にかかわる詳細な資料を再掲するとともに、時間の関係で必要があれば後ほどの質疑の中で補足説明を差し上げたいと思っておりますが、10ページ以下に自己啓発の実態や効果に係る幾つかの主要データ、これは今回新しく提示しているものでございます。
ずっとページが飛びまして後半のほうになりますが、58ページ以下に文科省から提供を受けております社会人の学び直しニーズ、要は、これまでの120時間以上といった設定に比して、より短い時間数、コンパクトで密度の高い訓練受講ニーズが存在するということを示す幾つかの代表的なデータをお示ししているところでございます。これらについては、後ほど適宜補足をさせていただきたいと思います。
いささか冗長になってしまいましたが、関係資料に係る事務局説明は以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
○小杉分科会長 ありがとうございました。かなり主催に設計が進められたのかと思います。では、皆様から御質問、御意見を伺いたいと思いますが、いかがでございましょうか。上野委員、どうぞ。
 
○上野委員 資料1-2の2ページ、教育訓練拡充の対象講座コンセプトについてです。まずはキャリア形成についてですが、拡充の対象講座コンセプトとして、即効性のあるキャリア形成ができるものと記載してありますが、やや抽象的で具体的なイメージが持ちづらいのではないかと感じております。
また、社会ニーズに関しましては、判断する主体によって観点が異なりますが、雇用・労働分野における社会的ニーズとしては主に人手不足が考えられます。前回の分科会においても、建設業、介護業、運輸業などの人手不足の状況について資料を出していただきました。IT人材につきましては、IT企業に人材が偏っていることや、就業者に占めるIT人材の割合が低いこと、企業幹部のITを活用した意思決定が低調であることなどの資料が示されており、IT人材不足であるとの説明がありました。しかし、そうしたことは人材活用方法の問題であり、ほかの分野の深刻な人手不足の状況と比して、社会に与えるインパクトの度合いや切迫感が異なると感じております。そうしたことを踏まえまして、キャリア形成、社会的ニーズについて、厚労省として想定している内容について伺いたいと思います。
以上です。
 
○小杉分科会長 事務局、どうぞ。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 ただいま、資料1-2の1ページ、2ページにほぼ同じ記載がございますが、キャリアアップ効果に関しまして、事務局の考え方についてお尋ねがあったところでございます。
まず、社会的ニーズが高いという捉え方に関しましては、先ほど口頭説明の中で若干補足をしたつもりではございますけれども、この間の審議を踏まえて、人手不足への対応、あるいは中期的な人手不足への対応の処方箋の一つという捉え方も可能でございますが、生産性向上への寄与などがその代表的な視点ではないかという捉え方をしているところでございます。
その上で、就職実現・キャリアアップとの結びつきという観点に関しましては、私どもは別の資料の中で即効性という言葉もあわせて使わせていただいているところでございます。その即効性の意味するところとしては、当該講座受講、あるいはそのことによって資格取得を行う、そのことによって求人企業から評価をされ就職可能性が高まる。また、在職者に関しましては、同じく資格取得、当該講座によりまして実践的な職業能力、技術・知識を習得することによって従事する職務の範囲が広がっていく。あるいは中長期的に見た場合には、それが具体的な処遇等にもつながっていくことが期待されるということを私どもとして念頭に置いているところでございます。
そのこととのかかわりでの対象業種・職種の捉え方、これはあくまでも主にこうしたものが想定されるのではないかということでございます。ただいま上野委員からお話がございましたような運輸・建設関係、また、医療・福祉関係などもほぼ同じような状況ではないかと我々は考えているところでございますが、こうした分野におきましては、前回幾つかの資料で御説明申し上げましたように、足元でも需給が逼迫をしている。また、中期的にも当該分野における専門性を備えた、あるいは一定の資格を備えた人材が不足しているという状況が客観的に見てとれるものであると思っております。
したがいまして、今、申し上げましたような代表的な分野におきましては、その足元、中長期、両方の観点で、今ほど申し上げましたようなキャリア形成の効果、即効性という観点も含め、より明確な分野ではないかという捉え方をしているところでございます。
他方、IT分野に関しましては、この間多くの委員からさまざまな御意見を頂戴してきたところでございます。その中で、IT分野に関しまして、中長期的な我が国の産業構造、生産構造の変化、技術革新への対応という観点から、量質両面でIT技術者、あるいはIT技術者と協働しながらそれぞれの事業運営の中でIT、情報通信技術・システムを導入、運用、改善していく人材の必要性については一定御評価をいただいているという認識を持っております。
同時に、足元の指標で見た場合、前回の資料の中でも御説明申し上げましたように、ハローワークの有効求人倍率といったデータをとってみますと、必ずしも先ほど申し上げました建設・運輸、医療・福祉ほど有効求人倍率が突出して高いわけではないというデータも見てとれるわけでございます。ただ、この点に関しましては、ハローワークの対象職種ごとのカバレッジの広さ、狭さ。建設・運輸、医療・福祉ほどには、それぞれの市場におけるマッチングに係るハローワークのカバレッジが十分ではないという側面もある。指標で見た場合には確かに足元の逼迫の度合い、情報・通信技術分野について、建設・運輸、医療・福祉ほどではないという見方もできるわけでございますが、今、申しましたような分析・評価という観点で加味した場合には、足元の状況としても、量的、また情報通信技術のレベルという観点、これは必ずしもいわゆるベンダー企業だけではなく、今後恐らくそれぞれのユーザー企業の中でもシステム部門、あるいはシステム部門と協働できる人材が必要であると考えた場合には、こうした需要が量質両面で高まっていくということは極めて高い可能性で言える。
したがいまして、建設・運輸、医療・福祉分野と多少性格を異にする部分があるということは私ども事務局としても認識をした上で、こうした分野にかかわりましても、このコンセプトにお示ししております社会的ニーズ、また就職・キャリアアップ、即効性という観点からこれを後押しする学び直し支援にかかわる代表的な施策である拡充一般の中で支援をする一定の必要性が認められるのではないか。もちろん、人づくり革命基本構想の中でそうした考え方のもとであらかじめITスキルなどということで例示をされていることも一つのポイントであろうかと思っておりますけれども、そのような考え方を持っているところでございます。
 
○小杉分科会長 ほかに。松井委員、どうぞ。
 
○松井委員 同じく、資料1-2の1ページ、2ページのところでございます。大変わかりやすく整理をしていただいて、非常に全体像がクリアになってきたと思っておりますが、今ほど意見のあった今回の拡充のコンセプトの後半の部分についてです。特に就職実現・キャリアアップとの結びつきの強さを客観的に評価できるというところでございますけれども、一般の教育訓練についての資料を拝見しますと、受けている方の8割以上が在職者ということもございますし、客観的に評価できるというところで、例えばハローワークの求人票などには必要な資格について記載がございますけれども、そういったデータを把握して客観的な評価というところに生かすというようなこともぜひ御検討いただければと思っておりますので、意見として申し上げます。
 
○小杉分科会長 事務局、どうぞ。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 このコンセプトでお示ししております社会的ニーズあるいは就職実現・キャリアアップ、先ほどの質疑の中でも御説明申し上げましたように、人手不足への対応、就職可能性、そうした観点で言いますと、ハローワーク求人での具体的スペックということも一つの物差しになるというのは全く御指摘のとおりであろうと思います。
こうした観点については、引き続き私どものほうでも把握・分析に努めたいと思いますが、同時に、既に私どもがそうした観点でいろいろなリサーチを行っている中での気づきといたしまして、業務独占の場合には当然のことながらその資格がなければ就業のしようがございませんので、これはハローワーク求人でも明確に必要な資格として明示されております。
それから、先ほど情報通信技術に関しまして、レベル2を取得していることが正社員求人のディファクトと申し上げましたが、こうした極めてスペシフィックな知識・技術が必要なものについても明示されているケースが多うございます。
ただ、一般的にハローワークに求人をする事業所に関しましては、求人票上の表示が余りリジットな場合に、いわばボーダー的な応募者が応募を逡巡するという一般的な傾向に鑑みて、あえて求人票にはそこまで記載せずに、よく言われる委細面談ではございませんけれども、面談の中で資格、能力、それ以外の適正等を総合的に評価する中で採否を決定するという一般的な傾向もございます。
したがいまして、ハローワーク求人における資格の表示については重要な目安の一つではございますけれども、必ずしもハローワーク求人に明記をしていないからといって、その資格について考慮の対象になっていないというわけでもないというあたりも加味しながら評価が必要な一つの指標ではないかと事務局として考えているところでございます。
 
○小杉分科会長 ほかに御質問、御意見は。荘司委員、お願いします。
 
○荘司委員 確認なのですけれども、12ページの対象講座Bの情報通信系の民間資格のレベルのマップが示されているのですが、ITSSレベル2相当であるという判断は、どこでされているのでしょうか。
 
○小杉分科会長 事務局、お願いします。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 それでは、12ページに基づきまして、補足の説明を申し上げたいと思っております。
ITSSレベルそのものに関しましては、経産省の指導のもとでIPAという法人が開発、メンテナンスを行っているところでございます。このITSSにひもづく具体的なレベルごとの資格の種別に関しましては、先ほども少し触れました、この同じ資料の資料出所の中にお示ししているところでございます。経産省、IPAの指導のもとで、NPO法人スキル標準ユーザー協会、SSUGと言われる団体でございますが、ここがITSSレベル1以上のそれぞれのレベルに相当した具体的な資格との対応関係を整理するとともに、必要に応じ試験実施機関からの聞き取り等を行う中で、毎年メンテナンスを行っているところでございます。先の専門実践におけるITSSレベル3以上の位置づけに当たりましても、私どもはこのSSUGにおけるキャリアフレームワークスキルマップに準拠した形で対象資格を特定したいという考え方を申し上げたところでございますけれども、今回の拡充一般にかかわるレベル2以上の具体的な特定に関しましても、経産省と連携を図りながら、SSUGが毎年メンテナンスをいたしますキャリアフレームワークスキルマップの中で確認を行っていくという考え方。したがいまして、外縁に関しましてはスキルマップによって特定をされているということでございます。必要に応じて、その状況などにつきましても、この分科会でも報告を申し上げたいと考えております。
 
○小杉分科会長 どうぞ。
 
○荘司委員 ありがとうございます。
今ほどありましたように、民間のIT資格というのは、今後いろいろなソフトウエアごとに、新設ですとかレベルの変更というのがあると思うのですけれども、そういったものの判断といいますか、社会的ニーズや、就職・キャリアアップ効果との結びつきがなかなかわかりづらいというところもありますし、スキルマップは経産省の管轄で作成されており、厚生労働省自体が判断するものではないということです。厚生労働省としても精査はされるということでありますけれども、自動的に給付拡充の対象となる資格が拡大されるということにならないように、引き続き、分科会でも議論いただければと思います。
 
○小杉分科会長 わかりました。よろしいですか。ほかに御意見、御質問はございますか。どうぞ。
 
○浅井委員 ITスキル等々というのは、世界の経済動向を鑑みれば、もはや社会インフラに近いような存在ではないかと考えております。先ほど、建設・運輸、医療・福祉等々との比較の話もございましたけれども、そういった業界におきましても、生産性向上という観点からも、もはや基礎として、ベースとしてあることが必須になっているのではないか。今後の産業、国の成長におけるインパクトという意味でも、これがベースにあるということは不可欠ではないかと思います。
参考資料2、経済財政報告の22ページにIT人材の不足の状況というのがございますけれども、これを見ると、日本は強烈な危機感を持つ必要があるのではないかというのを改めて感じております。諸外国と比較してみますと、日本としては極めて大きな危機感を持つ必要があるのではないか。
資料からまず、企業幹部のビッグデータの戦略的価値の認識が非常に低い。それから、IT企業とそれ以外の企業に所属する情報処理・通信に携わる人材としても、日本は非常に偏りを見せている。こういう危機的な状況も踏まえますと、ITスキルなどキャリアアップ効果の高い講座を改めて考える必要があるのではないかと思います。
 
○小杉分科会長 ありがとうございます。わかりました。ほかに。大久保委員、どうぞ。
 
○大久保委員 今回整理をいただいて、ある程度枠組みができてきたわけでありますけれども、資料1-2の6ページの検証事項と書いてあるところについて少し意見を申し上げたいと思います。
先ほど御説明があったとおり、2年後をめどに検証をするのだということでございます。何を検証するのだということなのですけれども、ここではコンセプトにあるとおり、即効性のあるキャリア形成ができて、社会的ニーズが高く、かつ、特に就職実現・キャリアアップとの結びつきの強さを客観的に評価できる制度になっていたかどうかを検証すると書いてあるわけです。この1点はまさしく当然のことだと思うのですが、私のほうで少し要望をしたいと思うのは、検証項目にもう少し追加をしていただいたほうがいいのではないかということです。
今回は一般教育訓練給付がいわゆる自己啓発の促進として機能したかどうかということも見たい。これは目標に掲げるという話をしていたわけですから、これは能力開発基本調査でやるべきことになるかもしれませんが、いわゆる自己啓発がこの後どのように推移していったのか。自己啓発の数値の変化と教育訓練給付との関係がどうであったのか。あるいは今回は訓練前キャリコンを要件化しているということもありますので、そのキャリコンを受けて、自分自身のキャリアの見通しを立てて、その上で自己啓発のプログラムを具体的に選択していくという形になったときに、実際にそこにラインナップされているプログラムがキャリコンを受けた後の労働者の人たちにとって現実的な選択肢があるプログラムになっていたかどうか。
これは以前から懸念として私も申し上げているところなのですが、訓練前キャリコンを通じて、そういう実態のデータがとれる可能性もあると思うのです。他にも、雇用保険データの分析を通じてもできるかもしれませんが、自己啓発との関係性とか労働者に有効な選択肢を提供していたかどうか。こういったことも含めて検証していただき、まさしく今、厚生労働省で進めているエビデンスベースドのポリシーメーキングの趣旨にかなうように2年後の検証をやっていただきたいと思います。
 
○小杉分科会長 事務局、どうぞ。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 ただいま大久保委員から、今回御提案申し上げております適用開始後の検証の具体的な視点等について御提案いただきました。いずれも重要なポイントであると考えております。
今ほどいただいた点のうち、受講受給者の労働者属性の広がりという観点に関しましては、既に専門実践の3年後の見直しの際にもその基本属性を御提示しております。男女、在職・離職、年齢、場合によっては地域等々も含めまして、基本データについては雇用保険データで相当な把握が可能である。
これが今、ちょうどハローワークシステム改修をまたいでの今回の検証作業になるということで、技術的にこうした分析の可能性がどこまで広がっていくのかということは関係部局と相談しながら、さらに我々はチャレンジをしてみたいと考えているところでございます。
それから、自己啓発・キャリアアップ効果、ここは雇用保険データだけではなかなか十分に対応しきれない領域というのは既に大久保委員、見立てのとおりでございます。1つには、今回一部要件としても、指定基準としても追加をしたいと考えておりますキャリアアップの、これはなかなか統計分析直結にはなりませんけれども、少なくとも事例という観点では、今回の仕組みによりまして、これまでよりも充実をしたキャリアアップ事例というものが把握できるのではないかと考えております。
それぞれの自己啓発の効果ということになりますと、受講受給者を受給後さらにフォローアップしていく仕組みが必要になってまいります。職業安定局などとも相談をしながら、受講受給者に限定した形でのフォローアップがどこまで可能か、ここは今後の課題かなと。
なお、この後の議題2とも関わってきますけれども、拡充一般といった特定の制度に依拠しない形での自己啓発の経年的な分析については、それぞれの関係専門機関がさまざまなアプローチをしているところでございますので、拡充一般特化のデータプラス、こうしたより一般化された自己啓発の効果・効能に係るデータなども両両相まった形で私どもは今後必要な分析を行い、それがまとまったら、きょう御説明申し上げているようなタイミングでまた御報告をし、御審議をいただきたいと考えているところでございます。
 
○小杉分科会長 能力開発基本調査の中などもよく検討していただければと思います。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 はい。集計の仕方もさらに工夫をしてみたいと思います。
 
○小杉分科会長 早川委員、どうぞ。
 
○早川委員 ありがとうございます。
本日の御説明で随分明らかになってきたと思いますが、1つだけ質問と、その質問を教えていただいた後で意見を述べさせていただきます。資料1-2の6ページです。訓練時間について、訓練の下限が出されておりますが、原則は50時間です。今回、A~Dの類型の中でCの新たなITパスポートに関しては30時間、そしてDに関するBP、文部科学大臣の認定のほうでは60時間となっていて、時間がそれぞれ違いますけれども、その違いの合理的理由を教えていただければと思います。
 
○小杉分科会長 事務局、どうぞ。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 先にDのほうから申し上げたいと思います。現行、文科大臣認定、大学などによる職業実践力育成プログラム、また専修学校によるキャリア形成促進プログラムについては、本課程について、学校教育法上の履修証明プログラムとしての位置づけを併せ持っている。その中でさらに職業実践性という観点での教員資格、プログラム資格等、全てを満たす者について文科大臣が認定をするという仕組みの中で、これまでの履修証明プログラムの時間数基準、国際的に言うとサーティフィケートということになってくるわけでございますが、これが120時間以上であったということで、従前は専門実践の対象になるものも120時間以上限定だったわけでございます。
これを、文科省における社会人学び直しの機会拡充、先ほど申し上げましたような社会人が仕事をしながら現実に受けられる、また、既に当該分野で相当の就業経験を積んでいる人が、現在特に求められている特定の技術、知識を集中的に学ぶ。そうした機会を拡充する必要性があるのではないかという問題意識のもとで、履修証明プログラム制度そのものについての下限を60時間以上に引き下げ、また、それに対応する形でBP、キャリア形成促進プログラムに関しましても、既に120時間以上は専門実践の対象になっているわけでございますけれども、60時間以上というよりコンパクトなものを設計しようという考え方であると理解しているところでございます。今回は、このうち下のほうに広がった60時間以上120時間未満というゾーンに着目して、拡充一般の対象としてはどうかということで提案しています。したがいまして、ここの部分は文科省における法令制度設計上の明確な基準によって、実質60時間以上で切られるということでございます。
他方、課程類型案Cでございますけれども、ITLSに基づく新iパス試験については、同様に法令によりこの講座の時間数が規定されることが予定されているものではございません。ただ、せっかくのiパス試験、これを目指す人がより効率的・効果的に目指すことが可能になるようにということで、現在、経産省及びIPAにおきまして、新iパスのシラバスを整備しているところでございます。そこから標準的な試験合格を目標とするカリキュラムも導出されるわけでございますけれども、先ほども触れましたように、ITLS2級に既に到達している人がアディショナルに習得すべき知識・技術に特定した場合の合理的な標準カリキュラム、それに対応する時間数について、30時間という考え方を経産省として明確に持っているところでございます。
したがいまして、この基準を援用しないと、Cを対象課程類型にしたとしても現実問題として対象となる講座が出てこないとか、あるいは本来コンパクトに編成をすれば30時間で済むものについて、むしろ冗長なプログラム編成を助長するおそれがある等々の考え方から、対象講座Cに関しましては、今申し上げましたような前提のもとで30時間という下限を設定することが合理的ではないかという判断をしているものでございます。
 
○小杉分科会長 どうぞ。
 
○早川委員 御説明ありがとうございます。では、続けて意見を述べさせていただきます。
今回、こういった検討は、人材開発にかかわる国が持つシステムの効率的な有効利用という観点からメリットのあるものだと評価されます。他方で、雇用保険の教育訓練給付としては財源が労使折半の保険料を充てていて、国庫を充てていないという性質のものであることから、例えば産業構造の変化に伴う非常に大きい人材開発のニーズに対応するに当たっては、今回の検討課題ではありませんが、将来的には国としての財政によるバックアップというか、国庫の充当等の検討必要なのではないか。先ほどのIT分野の人材開発は、全産業で対応していかなくてはいけないということであれば、そういう時代に対応するために、将来的な課題としては、より確実な財源確保が必要になってくるのではないかと思われます。
その上で、CとDに関して、厚生労働省の職員の方が視察あるいは意見交換、そして事前の準備状況についてヒアリングをされているということについては、この説明を伺って安心した面もあるのですけれども、できれば事実上そういうことをするのではなくて、制度的に、厚生労働省の人材開発に関わる方が他省庁の制度の中に制度として関与していただきたいと思います。実際には、今回の制度はキャリコンの利用が義務づけられることもあり、他省庁のシステムの利用であっても厚生労働省も一部関与することになろうかと思われます。厚生労働省が専門性をもって支えている労働市場政策全体のなかでの教育訓練のニーズを制度全般に行き渡らせるためにも、そこはぜひ厚生労働省の関与をお願いしたいと思います。
 
○小杉分科会長 ありがとうございました。事務局、どうぞ。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 重要な点を御指摘ありがとうございました。
まず、前半の御指摘に関してでございます。本日資料1-2の9ページにもお示ししておりますように、自己啓発普及の政策手段、先ほど申し上げましたように教育訓練給付に限られるものではなく、企業支援、情報発信、キャリア支援、いろいろなアプローチがあり得ると思っております。今回の審議に関しましては、既に一部の委員からも御指摘いただいておりますように、雇用保険制度である拡充一般教育訓練の対象講座のあり方という前提で御議論をいただいているということでございますが、より広く捉えた場合に自己啓発、学び直しの支援策、その財源、論理的にはさまざまなバリエーションがあるというのは我々もそのような認識をしているところでございます。同時に、現下の財政状況の中で具体的にどのような重点化、アプローチが可能なのか、いろいろ考えるべき点があると思っております。
したがいまして、前半で御指摘いただいた点に関しましては、今回の拡充一般教育訓練の指定基準そのものの話ではございませんが、より幅広い社会人の学び直し、自己啓発への多様なアプローチの必要性という観点で、私ども事務局として捉え、また今後、継続的に検討していきたいと考えております。
また、後者の関連する他省庁の制度への厚労省としての主体的なコミットメントの必要性という観点からの御意見であると考えているところでございます。実質的、多角的なコミットメントをしているということは既に御説明申し上げているところでございます。今ほど委員から御指摘がございましたように、より仕組み、制度として事前にコミットをしていくということについては、私どものコミットメントが明確になるというプラスの側面も当然あるかと思います。
ただ、他方で、おそらく検討・開発の時点では、それが教育訓練給付、専門であれ拡充一般であれ、その対象になるかどうかというのは当然まだ決まっているわけではない。それは制度設計がなされ、本分科会で御審議をされ、初めて決定する事項。そういうことを前提にした場合に、その前段の各省の制度設計の検討の段階で公式に厚労省がコミットをしていくということについては、プラスマイナス、率直に言って両面あるなと。その両面性を考えながら、この間の御審議を踏まえるならば、私ども、教育訓練給付制度に位置づけられる可能性があるものについてはしっかりフォロー、コミットする。それが目的にふさわしいものとして立ち上がった場合に、厚労大臣指定としてふさわしい指定基準検証の仕組みを付与する。これはおそらく全員共通の問題意識ではないかと考えているところでございます。そうした適切な関わり方についても、今後、関係省庁と協議をする中で、今回の御指摘を踏まえた形で私どもは引き続き考えていきたいと考えております。
 
○小杉分科会長 ほかに意見等はございますでしょうか。村上委員、どうぞ。
 
○村上委員 ありがとうございます。他の委員の意見と重なる部分もあるのですが、労働側としてもう一、二点申し上げておきたいと思います。
私どもは、専門実践教育訓練も、一般教育訓練についても、先ほど早川委員からもありましたように、雇用保険財源で行われる制度であるという点を重視してずっと発言をしてきたところであります。雇用保険財源なのだから、有効に使われなければならないということと、納得性が必要だということで、その観点から、検証などについてはかなり盛り込んでいただいていると理解しますけれども、同じ観点からまた意見を申し上げたいと思います。
1つは、今、早川委員からも浅井委員からもご発言がありましたように、ITに関しましては、もはや必須のインフラのベースだということは多くの皆さんが認識されているかと思います。そういう観点で言えば、もはや自己啓発の世界ではないであろうということです。今回、自己啓発として一般教育訓練給付の中で位置づけていってはどうかという方向性で議論が行われておりますけれども、もう少し別の方法、例えばOFF-JTでそういった研修を行う企業に対する支援を拡充するという方策もありますし、また、財源についても早川委員の御指摘のとおり、もっと広く考えていくべきではないかということが1点でございます。
2点目として、先ほど来意見が出されている、訓練の有効性や社会的ニーズ、就職実現というものに対してどう対応を図っていくのかということについてであります。ハローワークデータだけでは判断できないという御回答もありましたけれども、有効な指標の一つではあると思います。特に中途採用などにおいては、どんな資格を持っているか、どんな経験をされてきたかということは重要な指標でありますし、それを教育訓練給付の講座を指定するに当たっての講座の判断基準にしていくということは考えられると思いますので、ぜひ今後も検討を続けていただければと思っております。
それから、やや具体的な話で、資料1-2の4ページのITLSに基づく新たなITパスポート試験の合格目標講座についてであります。これについては、対象講座とする前提として、2019年4月の試験開始後の報告を求めるとしていただいたところであります。さらに、適用開始後1年を目途に検証を行うということでありまして、本当に役立つ講座なのかを検証できる仕組みを入れていただいたことはありがたいと思っております。1点確認なのですが、試験開始後の報告や検証において、活用状況などから拡充対象講座としてふさわしいのかどうかを検証して、万一ふさわしくないということになった場合には対象から外すこともあり得るという認識でよいのかどうか、確認をしたいと思います。
 
○小杉分科会長 事務局、どうぞ。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 大きく3点御指摘いただいたところでございます。
1点目は、自己啓発、企業支援の関係性に係る御指摘であると考えております。本日御提示を差し上げている資料の中で言いますと、資料1-2の10ページに係る内容でございます。私どもは先ほど、本資料の中でも御説明申し上げましたが、基本的には企業がそれぞれ事業運営上、従業員に習得させることが必要と認識をする教育訓練については、企業が主体となって実施することがいわば原則基本。それに対して一定の要件を満たすものに対して人開金等で支援をするという仕組みも設定しているところでございます。
したがいまして、御指摘があったITも含め、それぞれの事業運営上の必要性が高いと考えられる教育訓練については、助成金制度の整備やこれに係る広報、あるいは関係省庁との連携などを通じまして、それぞれの企業の教育訓練実施の督励の取り組み、これをさらに一層強化していきたい。
あるいは、現状でも専門実践教育訓練の指定対象講座については、人開金の中でもこれを企業主体、業務命令で実施させた場合には高率助成の対象とするといった仕組みを既に盛り込んでいるところでございます。今回の拡充一般も含めまして、こうした2つの仕組みの連動の中で有用なプログラムについて、左側の企業主体の仕組みの中でも、よりインセンティブがきくような仕組みについてもさらに工夫をしていきたいと考えているところでございます。
2点目のハローワークデータの有効活用という点については、先ほども事務局としての一定の考え方を申し上げたところでございますが、ただいまの指摘も踏まえ、さらに検討研究をしていきたいと考えているところでございます。
3点目、ITLS準拠の新たなiパス試験合格目標講座にかかわる事前検証の考え方でございます。こちらのほうは改めて7ページの資料などをごらんいただければと考えておりますが、先ほど申し上げましたように、4月の試験リリース後一定時期、二、三カ月程度と先ほど申し上げましたが、試験の受験・合格実態、それから社会人向けの講座が一定立ち上がっている。こういった点をポイントに、私どもも把握をして御報告したいと考えております。
その際、例えばこの新iパス試験について、現行のiパスに比べ、繰り返し申し上げておりますように、当然高度、実践的ということで、現行の合格率は50%強ぐらいで推移しているところでございます。もちろんこれは受講者層の能力次第という部分があるわけでございますけれども、合格水準についても今のiパスよりは低い結果が見込まれる。あるいは受験者数規模についても経産省から一定の説明を受けているところでございます。こうした試験の規模感とか合格水準等々の観点から、私ども事務局として検証し、御報告を申し上げる。
今、村上委員から御確認がございました、この試験の実際の立ち上がり状況によって適用されないことがあり得るか、あり得ないかという意味では、もちろんこれは事前に国検証した上で実質的な適用開始ということでございますので、それはあり得るということでございますが、せっかく人づくり革命基本構想という同じ政府方針のもとで、私どものほうから経産省の制度設計自体についてもさまざまな指摘、督励をしながら、拡充一般の対象課程類型の一つとして、このように御提示、御提案さしあげているわけでございますので、今申し上げましたような一般的な要件を満たし得るような形で適切に計画どおりにこの試験を立ち上げてほしいということは、私どもからも改めて経産省のほうに強く申し出をし、要はしっかり委員の皆様方の検証にかなうような形で立ち上がるようにということ。決して経産省任せということではなく、先ほどコミットメントという話もございましたけれども、そうした部分も含めて、私ども、しっかりとこれからも関与していきたいという考え方でございます。
 
○小杉分科会長 よろしいですか。しっかり関与してください。遠藤委員、どうぞ。
 
○遠藤委員 各委員から指摘がありましたように、全体像を描くことの必要性が言われ、今回、一定程度整理ができたことについては、まず評価をしたいと思います。
その中で、今般打ち出された改正の方向性は、公的給付との兼ね合いの中で、質保証に重点を置きつつも、受講しやすさという観点も加味し、さらには、事後検証の仕組みも整備したということです。総じて妥当なものとして評価したいと思います。
その上で、2点お尋ねをさせてください。まず、資料1-2の1ページ目、全体像にかかわる部分です。一番下に、給付の要件として全体が比較できる表が用意されています。具体的な検討の場は雇用保険部会に委ねるということになるのですが、一番左端、一般教育訓練の場合、例えば受講者本人がキャリコンを受けたいときには、キャリコンの機会が用意されるのかどうか、その場合の費用の取り扱いはどのようにイメージすればよいのか、1点目のお尋ねです。
2つ目は、具体的な質保証にかかわるところで、資料で言いますと5ページ目、対象講座Dにかかわる部分の一番下の○に整理されています。具体的に、情報開示の仕組みを活かしていきたいということであり、「在籍・採用企業側の評価等」と書いています。御説明するまでもございませんが、教育訓練給付は自助努力によるもので、必ずしも企業側にこの状態をオープンにしていない場合も多々あるかと思います。とりわけ規模の小さいところではそういった状況が見られるのではないかと思います。
そういった場合、この評価等の等の中で読み込むのかもしれませんし、これまで議論が整理されているのかもしれないのですが、この辺の取り扱いをどうするのか、以上2点です。
 
○小杉分科会長 2点お尋ねがありました。事務局、どうぞ。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 まず1点目でございます。資料1-2の1ページ目の一番左下に係る部分ということで受けとめさせていただきました。今の一般教育訓練、2割給付に関しましては、引き続きこの訓練前キャリコンを要件化するという考え方は、私ども、人開部門の立場としてもとってはいないところでございます。
ただ、一般教育訓練給付受講受給希望者に関しましても、それぞれの受講効果を高め、キャリアアップにつなげたいということで、キャリコンを活用するニーズということは当然あり得る。これについては要件ではなく支援的アプローチが必要であるという考え方でございます。
それに対する具体的な対処でございますが、現状で言うと大きくは2つございます。1つには、一般教育訓練給付の給付制度の中で、近年の改正によりまして、これは基本的には訓練受講料そのものが2割給付の算定対象基礎でございますけれども、受講にあわせ、訓練前にキャリコンを受けた場合に、そのキャリコン経費について上限を2万円として給付算定額に算入することが可能な仕組み。キャリコンの経費についても、一般教育訓練給付、2割給付の中で支援の対象とするという仕組みがまずございます。
それから、もう一つのアプローチでございます。よく私どもは訓練前キャリコンと申し上げておりますけれども、これは現状であれば専門実践教育訓練受講希望者、それから公的職業訓練や雇用型訓練受講希望者の一部に関しまして、それぞれの質を保障するために訓練前キャリコンを要件化もしくは勧奨している。
制度的には少し横串になってくるわけでございますけれども、各訓練制度に附帯する訓練前キャリコンに関しましては、職業安定局のほうで一括して訓練前キャリコン事業ということで、キャリア支援者の職能団体、キャリア支援の専門性を備えた民間事業者等に対して委託をし、多くの場合には庁舎、物理的にはハローワーク庁舎内でそのサービスを提供しているという実態にございます。
この一般教育訓練給付受給希望者に関しましても、求職者であって、ハローワークの職業相談での判断上、訓練前キャリコンを受けた上で一般教育訓練給付を活用する人が当該求職者のキャリア支援上有効と判断される場合には、いわば訓練前キャリコン事業のいささか員外利用的位置づけということにはなりますけれども、この事業の中でのキャリコンを受ける機会を提供するといったサービスもあわせて行っているところでございます。
大きくはこの2つのアプローチによって対応しているという実態でございます。
もう一点、資料で申しますと、先ほど御指摘いただきました5ページ、対象課程類型Dにかかわる追加的な基準に係る情報公開の具体的な捉え方についての御質問でございました。専門職大学院に係る先の審議でさまざまな御指摘をいただく中で、当初、私ども事務局が考えておりましたのが、受講受給者自身のキャリアアップ成果に係る情報収集開示ということを主に念頭に置いていたわけでございます。ただ、そうした点に対しまして、本分科会の中で、もちろんそれは当然必要なのだけれども、それだけだと言い値になってしまう。あるいはキャリアアップ効果をより多面的に評価するという観点で、在籍・採用企業側の評価・情報というものも加味することによって、この仕組みがより生きてくるのではないかといった観点から、専門職大学院に関しましても、情報公開の対象として、本人側のキャリアアップ成果情報事例だけではなくて、在籍・採用企業側の評価ということもつけ加えさせていただいたところでございます。
ただ、その運用に当たりましては、それぞれの在籍・採用企業側、多様な事情があるのだろうと思っております。例えば、情報公開の中で企業名まで公開することについて、企業が許容するのかしないのか。あるいは専門実践の審議の中でも、キャリアアップの捉え方に関して、学び直しとの因果関係というのは多義的であるという趣旨の御指摘もいただいてきたところでございます。そうした意味では、評価等の捉え方についてはいささか幅を持った形で運用していく必要があるのだろうなと考えております。
したがいまして、私ども、この基準の具体的な運用に当たりましては、大まかな基準を提示した上で、それに対して具体的にプロバイダー側がどのような情報収集・提供が可能か、さらに企業がどこまで協力可能なのかということについて、事例を見据えながら具体的なガイドラインを順次整備していく必要があるのかなという考え方をとっております。
ただ、もとより指定基準として設定をするわけでございますので、最低限この情報については必ず収集、必ず公開、そこのベースラインを押さえた上で、ただいま遠藤委員から御指摘いただいたような点も加味しながら、実際に関係者の協力が得られるような形での情報公開の仕組みを有効に活用していきたいという大まかな考え方でございます。
 
○小杉分科会長 どうぞ。
 
○遠藤委員 ありがとうございました。
まず、訓練前キャリコンにつきましては、さらなる支援も含めて、今後、検討していく必要があるのではないかと個人的には思います。
それから、評価にかかわる部分では、その評価を厳格にするがために、かえって受けにくくなってしまうような状況をつくり出すというのも目的と逆ベクトルに働くことにもなり、その辺のさじかげんは難しいと思いますけれども、伊藤参事官から御説明がございましたように実態を見つつ、あるべき方向に向かってお導きいただければと思います。
 
○小杉分科会長 ありがとうございました。
ほかに御意見、御質問はございますか。よろしゅうございますか。
ほかにないようでしたら、この議論はこれで終了といたします。
一般教育訓練給付の拡充につきましては、当分科会における対象講座のあり方、指定基準に関する議論を踏まえた上で、教育訓練給付制度を所管します職業安定分科会雇用保険部会に改めて議論いただくことになります。当分科会における議論の内容を職業安定分科会雇用保険部会に報告するに当たり、事務局よりその考え方、段取り等について説明をお願いいたします。
 
○伊藤若年者・キャリア形成支援担当参事官 それでは、ただいま分科会長から御指示のあった点について、事務局としての考え方を御報告申し上げたいと思います。
今般の一般教育訓練給付拡充に関しましては、給付制度について雇用保険部会において、また、その対象講座に関しましては、本人材開発分科会において並行する審議という形態をとっております。いわば往来型の審議でございます。これまでに至る具体的な経過といたしましては、8月に雇用保険部会において一般教育訓練給付制度の拡充に係るキックオフ審議がなされ、その上で、まずは対象講座の考え方について、本人材開発分科会において審議の上、一定の方向性、取りまとめをということでいわばバトンが渡されている状況でございます。それを受けた形で、この間の3回の審議を踏まえまして、本日、指定基準案を御提示し、さらにそれについて幾つかの重要な御指摘をいただくというところまで立ち至っている状況でございます。
最終的には、本制度に関しまして、要は、現在は拡充の対象となる講座の雇用保険給付制度上の位置づけがまだ特定されていない状況でございますので、本日まで御審議いただいた対象講座の指定基準案、それにかかわる重要な考え方を人材開発分科会事務局から雇用保険分科会事務局につないだ上で、それを前提とした上で、さらに給付制度の御審議をいただく必要がございます。具体的には、本日御提示を申し上げました指定基準案に係る主要な資料と、本日までに御審議をいただいた主要な意見、これを私ども事務局の責任で取りまとめ、雇用保険部会事務局と調整を行った上で、次の雇用保険部会におきまして、これら資料を雇用保険部会事務局から報告の上、雇用保険部会におきまして、本給付制度に係る雇用保険法施行規則改正に向けた御審議をいただく運びでございます。その上で、雇用保険部会におきまして、省令、改正案、諮問、答申に至った場合には、いわば教育訓練給付制度上の今御議論いただいております指定基準、対象講座の給付制度上の立ち位置がそこで初めて明確化するということでございます。
その際には、雇用保険部会から今度はもう一度バトンを私ども人材開発分科会にお渡しいただいた上で、本日お示しした指定基準案、またそれに対するさまざまな御指摘、御確認を踏まえた上で、次回以降の人材開発分科会におきまして、この拡充一般教育訓練給付制度にかかわる対象講座についての告示改正案、要綱をお諮りしたい。また、その際には、前回の専門実践3年後の見直しの際にも、指定基準に直接反映はされないが重要な論点、あるいは今後引き続きフォローすべき点について、主要な論点、意見としてまとめさせていただいたところでございます。
今回も同じような形で、今回いただいております重要な意見のうち、直ちに指定基準に反映はされないけれども、本分科会における重要な論点については同じような形で取りまとめ、次回以降の分科会において御確認をいただきたいという手順を想定しているところでございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 
○小杉分科会長 ただいま事務局から説明がありました進め方でよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
 
○小杉分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。
次の議題です。次の議題は「その他」として事務局から1つ報告がございます。労働経済の分析につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
 
○相本人材開発政策担当参事官 人材開発政策担当参事官の相本でございます。
議題の「その他」といたしまして、平成30年版労働経済の分析について御報告をいたします。
先月、9月28日に平成30年版労働経済の分析、労働経済白書が公表されております。この中でテーマといたしまして人材育成の分析が今回行われたということで、当分科会でも御紹介をさせていただきます。
資料といたしましては、資料2-1が骨子でございます。それから、資料2-2が概要となっております。
この労働経済白書でございますけれども、雇用、賃金、労働時間、勤労者家計などの現状や課題について統計データを活用して分析する報告書で、今回でちょうど70回目の報告となっております。
この白書は2部構成となっており、第Ⅰ部はその年の労働経済の特徴、第Ⅱ部は労働経済を取り巻く環境の変化を捉えながら、毎年度テーマが設定されているところでございます。今回、平成30年版におきましては、第Ⅱ部の分析テーマを「働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」として、能力開発、それから雇用管理のあり方について分析が行われたところです。その中でも特に人材開発行政と関係の深い箇所につきまして、資料2-1の骨子を中心に御紹介させていただきたいと考えております。
まず、資料2-1の3ページ目、4ページ目をごらんください。第Ⅱ部第1章「労働生産性や能力開発をめぐる状況と働き方の多様化の進展」というタイトルの部分です。4ページ目の右上の図2-2、図2-3です。まず、図2-2は、GDPに占める企業の能力開発費の動向の国際比較でございます。これによりますと、日本の割合は低下傾向にあって、労働者の人的資本が十分に蓄積されない懸念があるということが見てとれます。
他方で、図2-3、近年までの能力開発費の推移と今後の人材育成の見通しですが、能力開発費の1社当たりの平均額は、2015年以降は増加に転じているところです。今後、人手不足感が強い企業を中心に人材育成を強化する動きが生じてくることが見込まれ、効果的な人材育成のあり方をさらに検討していくことが重要であると考えております。
続きまして、5ページ目、第Ⅱ部第2章「働き方や企業を取り巻く環境変化に応じた人材育成の課題について」の上段、企業の能力開発等をめぐる課題、それから6ページ目の図表の部分です。左上の図3-1ですけれども、能力開発と企業のパフォーマンス・労働者のモチベーションとの関係を分析したものです。OFF-JTや自己啓発支援への費用の支出は翌年の労働生産性等を向上させる効果が見られるということが見てとれるデータです。また、能力開発に積極的な企業では、仕事に対するモチベーションが上昇している労働者が多くなっているということが見てとれる資料となっております。
さらに続きまして、9ページ目、第Ⅱ部第4章「誰もが主体的にキャリア形成できる社会の実現に向けて」の下段の部分、自己啓発の現状と支援策、それから10ページ目、下段の図5-3、図5-4をごらんください。まず、左下の図5-3、正社員の自己啓発の実施状況ですが、これは年齢の上昇、加齢に伴いまして、自己啓発の実施率自体は低下しているということですけれども、年次比較いたしますと、足元では特に50歳以上を中心に自己啓発の実施率が上昇しているということが見てとれるところです。
さらに、右下の図5-4、正社員の自己啓発の実施につながる能力開発に関する支援につきましては、自己啓発の実施促進に向けて金銭的な援助のみならず、教育訓練機会等の情報提供やキャリアコンサルティングを行うことが有効な取り組みとなる可能性が示唆されているところが見てとれます。
以上が労働経済白書に関します関連部分の御紹介ですが、あわせて資料といたしまして、資料2-3をお配りしております。これは本年8月に公表された内閣府の平成30年度年次経済財政報告の抜粋です。この中で特に第2章「人生100年時代の人材と働き方」というタイトルの部分で、人材育成や社会人の学び直しについての分析があります。これもあわせて参考資料としてお配りさせていただいております。
以上のような労働経済白書の分析結果の内容を踏まえまして、引き続き、誰もが幾つになっても新たな活躍の機会に挑戦できるような環境整備を進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
 
○小杉分科会長 ありがとうございました。
すごく駆け足な御説明でしたけれども、御質問、御意見等、いかがでございましょうか。
遠藤委員、どうぞ。
 
○遠藤委員 御説明どうもありがとうございました。今回で70冊目ということになるのでしょうか。人生100年時代ということも言われていますので、昨年版にはなくて、今年版のなかで特徴的なものがあるのであれば、教えてください。
 
○小杉分科会長 いかがですか。
 
○相本人材開発政策担当参事官 先ほど御紹介した資料のデータともかぶりますけれども、改めて御説明いたしますと、白書の2部構成のうち第Ⅱ部に関しましては、労働経済を取り巻く環境変化を捉えながら、毎年度分析のテーマを変えておりまして、本年版の第Ⅱ部に関しましては、人材育成のあり方についての多面的な分析となっております。この中で、新たに今回、データとして分析できたものとして2点御説明させていただきます。
まず、資料2-1の6ページ目の図3-1、先ほど御紹介した能力開発と企業のパフォーマンスですけれども、このデータに関しましては、厚生労働省が実施しております能力開発基本調査と経済産業省が実施している企業活動基本調査の個票をひもづけして作成したパネルデータを用いて、能力開発の実施が翌年の労働生産性、売上高の額に与える影響を推計したものです。このOFF-JTや自己啓発の支出が実施していない企業に比べて、翌年の企業の生産性、労働生産性に正の効果があるということをデータ分析の結果としても示したものということでございます。
もう一点ですけれども、同じく骨子の資料2-1の10ページ目、図5-4、正社員の自己啓発の実施につながる能力開発に関する支援です。これにつきましては、先ほども御説明しました厚生労働省の能力開発基本調査の複数の問いの結果を用いまして、労働者の自己啓発の実施の有無に関する事業所の能力開発の支援の影響度合いを分析したものです。
例えば、キャリアコンサルティングを行っている事業所が行っていない事業所に比べて自己啓発の実施が8.1%高まるといったことをデータとしてもお示しできているということでございます。御参考として以上2点を御紹介させていただきます。
 
○小杉分科会長 どうぞ。
 
○遠藤委員 ありがとうございました。
御説明するまでもございませんが、生産性向上に取り組みながら、一体的に働き方改革というものを労使で取り組んでいるさなかです。そういった中で、一つの切り口として能力開発のあり方ということも大きなポイントになってきており、今回示されたデータを重く受けとめたいと思います。
資料2-1の4ページ、図2-2をごらんいただきたいのです。各国を比較する形でGDPに占める企業の能力開発費の動向が示されていて、先ほど御説明がございました。果たしてこれが日本の企業現場の実態を示しているものなのかという率直な疑問がございまして、手元には白書そのものをコピーして持ってきています。ご紹介させていただきますと、小見出しがついており、その小見出しの中で、「米国、フランス、ドイツ、イタリア、英国と比較し、突出して低い水準にある」とうたわれており、解説も細かく分析されています。
具体的には、「ここでの能力開発費については、企業内外の研修費用などを示すOFF-JTが推計されたものであり、OJTを含まないことに留意が必要である」という解説がなされています。こう見てまいりますと、ジョブ型の欧米と異なって、日本の現場を考えたときに、OJTによる人材育成の効果を見ないで各国と比較することが、実態を正しく反映しているものなのか、これは大いに疑問があると思います。
今回、もう一つ資料が出されており、資料2-3を見ていただきますと、7ページに「企業の教育訓練とその効果」という左下の図表があります。ここに(4)の「企業の労働者1人当たりの人的資本投資額(平均)」という図表が出ています。
これを見ますと、年額でOJT機会費用とOFF-JT機会費用に分かれていましたものですから、試みに次のような計算をしてみました。どういう計算をしたかといいますと、OJT機会費用18万円を踏まえ、雇用保険の被保険者として一般の形で働いている4030万人、これに掛け算をいたしまして総額費用を出し、それがGDPに占める割合を計算してみました。単純ではないことはわかりますが、やってみましたら1.32%と出るのです。そうすると、突出して低い水準にあるというところまでは言い切れないのではないかというのが、私どもで検討した結果です。
 
○小杉分科会長 特に反論はありますか。いいですか。
 
○相本人材開発政策担当参事官 御指摘のとおりでございまして、今の骨子のほうにはなかったのですけれども、概要のほうには出典が書いております。資料2-2の7ページ目ですけれども、この中で注といたしまして「ここでの能力開発費は、企業内外の研修費用等を示すOFF-JTの額の推計値を指し、OJTに要する費用は含まない」ということで、こちらのほうで、OJTに要する費用は含まないということを御説明しているところです。
御指摘のとおり、海外だと必ずしもOJTを重要視していないということも言われておりまして、データが仮に比較可能であれば、そこを含めますともうちょっと変わってくるというのは御指摘のとおりでございます。ただ、今回の分析に当たっては、OJTまで含めたデータが集約できなかったということもありますので、比較可能なデータとしてこういう形で分析をさせていただいたということでございます。
いずれにいたしましても、御指摘のとおり、日本企業は慣行として、職場で働きながら能力を高めるOJTを重視しているというのは重々承知しているところですので、こういったことも踏まえながら、引き続き企業における能力開発に対する支援について検討していきたいと考えております。
以上でございます。
 
○小杉分科会長 ありがとうございます。村上委員、どうぞ。
 
○村上委員 遠藤委員の御指摘もありましたので、労働側としても発言をしておきたいと思います。
遠藤委員の御指摘と全部一緒というわけではないのですが、かなりの部分で重なる部分はございます。今、事務局からも御説明がありましたように、日本の職場の中ではOJTが主体であって、仕事を通じて上司や先輩や同僚が仕事を教えながら能力を身につけていくという日本型の雇用について、数年前の白書ではそちらが逆に強調されていて、今回の白書はかなり違う方向感なので、やや違和感を覚えたというのが率直なところです。
そのことと同時に、資料2-3として経済財政報告の資料も出されておりまして、先ほど遠藤委員のご指摘は7ページでしたけれども、私は8ページのデータについてなのですが、前回の分科会の最後のほうで小杉分科会長からも、日本は学び直しがOECDに比べても少ないのだという(3)のデータの御紹介がありました。私どもとしても社会全体で学び直しを進めていこうという方向感自体を否定しているわけではないのです。ただ、このデータだけで日本の労働者が何か能力開発をサボっているということではないということは申し上げておきたいと思っております。
仕事の中でよりよいサービスとか、よりよい品質のものを提供していきたいというこだわりを労働者は持っているわけで、その中で能力を身につけているという部分もありますし、必ずしも教育機関に行くことだけが学び直しというか、自分を高めることではないと思っております。
最近、医師や看護師の方々の働き方改革の中で自己啓発について議論することも多いのですが、ほかの業種もそうかもしれませんけれども、皆さん物すごく自己啓発とか自己研さんをされていて、特定行為研修も自己負担で行かれる方も多いですし、学会とかそういったものに看護師の皆さんも自腹で行かれていて、そういったことも少し加味しながらいろいろなデータを見ていく必要があるのではないかと考えております。
以上です。
 
○小杉分科会長 ほかに御意見ございますか。どうぞ。
 
○早川委員 ありがとうございます。
前回、小杉分科会長からOECDの資料を御紹介いただいて、本日は、政府の白書の中でのデータを説明いただきまして、大変ショックな内容だったのですが、今、遠藤委員からも御意見あったように、データの解釈には一考が必要かとは思われます。とはいえ国際的にみて低い水準にあるのは恐らく事実なのだろうと。そして、私たちがこれまで思っていたような日本型雇用に基づく長期雇用の中で企業は従業員の能力開発の面倒見がよくて、他方、労働者はたいへん勤勉で職業能力も高いというものが、ひょっとしたら徐々に幻想になりつつあるのではないかという問題を突きつけたデータではあると思われます。これに対してやはり施策的な対応がどうしても必要と思われます。
一方で、多分、自己啓発のところで数字に出ていない自己啓発を日本の労働者は実はやっていると思うのです。とはいいながら、その部分のバイアスを省いても多分低い水準、危機感を持つべきレベルになっているのではないかということに対しては、今回の白書は大変重要な示唆をいただくものと思います。
ちょっと余分なことを言ってしまうのですが、ことしは明治維新から150年ということで、佐賀ではいろいろなイベントが行われています。そこでは、当時の人の生きざまとか、あるいは学び方というのに触れることができ、現代の私たちが勇気をもらえるものがあります。明治維新150年の節目に、新たな時代の新たな「学問のすすめ」的な能力開発が、労働者や社会の活力に結びつくような施策を展開していただければと思います。ありがとうございました。
 
○小杉分科会長 ぜひ佐賀においでくださいとおっしゃるのかと思いました。
 
○早川委員 実はそうなのです。
 
○小杉分科会長 はい。
 
○大久保委員 せっかくの機会なので、私も1つだけ質問させていただきたいのですが、資料2-1の4ページ、先ほど遠藤委員が指摘された図2-2の隣の図2-3なのですけれども、1社当たりの能力開発費が一回下がってまた増加に転じているという図と、その隣に、人手が不足している企業においては能力開発を強化しているというデータが示されております。
もしおわかりになれば聞きたいと思ったのは、企業の能力開発費は、多分これよりもっと前から長い時系列で見てもかなりアップダウンしている。数値変動が結構大きいのではないかと思うのですが、私はそれをほとんど企業業績による影響だと理解していたのです。これは人手不足の労働需給の問題が人材開発の能力開発費に大きく影響を与えているというような理解をする説明をされているのかと思うのですけれども、そのような認識、分析をされているのでしょうか。
 
○小杉分科会長 お願いします。
 
○相本人材開発政策担当参事官 必ずしも能力開発費の年次ごとの推移の背景についての分析がなされているわけではなくて、御指摘があったように企業の収益等の要素とか、企業における人手不足に関する取り組みとか、いろいろな要素があるのが実態だろうということでございます。
ここで御紹介しておりますのも、能力開発費が近年、伸びに転じたという統計上の事実関係と、それから最近の企業に対する調査として人手不足感が感じられる企業ほど人材育成の必要性を感じているところが大きいという2つのデータを御紹介したいということであり、必ずしも増加に転じたものが、イコール人手不足が全ての要因であるということを御説明しているものではないということです。
 
○大久保委員 普通に考えると、企業業績の推移と比べてみれば、理由のほとんどはそちらのほうで説明できるのではないかと思うので、何となくそうではないことを伝えようとしている雰囲気を感じたものですから、確認をさせていただきました。
 
○小杉分科会長 事務局から何かありますか。
 
○相本人材開発政策担当参事官 能力開発基本調査の分析ともかかわってくるかと存じますけれども、能力開発費の推移がどういう要因でなされていくのかということについても、どういった形でお示しできるかというのは検討してまいりたいと思います。
 
○小杉分科会長 ありがとうございました。浅井委員、どうぞ。
 
○浅井委員 人生100年時代で人生観がかなり変化しているのかなという気がします。例えば今、図5-3の正社員の自己啓発の実施状況を見ますと、30歳未満で2016年度は48.1%の方が自己啓発を実施している。この数字の背景にあるものなのですけれども、ひょっとしたら彼らは転職ということを考えているから自己啓発に半数の人が取り組むというチャレンジングな状況にあるのではないかという気がします。日本のシステムの中に長く生きてくると、自己啓発を何のためにしているのかというのをクロスで分析していかないと見誤るものがあるのではないかというのが、図5-3の感想です。
次の図5-4を見ますと、正社員の自己啓発の実施につながる能力開発に関する支援なのですが、社内での自主的な勉強会等に対する援助が8.1%となっています。一方で、イノベーションということを考えますと、社内という日ごろの仕事上の人間関係の中での勉強中心でいいのかどうか。イノベーションという視点を考えますと、むしろ日ごろの仕事上の人間関係から遠いところでの勉強を支援するということに力を入れていかないと、今後の企業の成長、国の発展のためにはまだまだ不十分な面があるのではないかという印象を受けました。
以上です。
 
○小杉分科会長 事務局のほうからございますか。
 
○相本人材開発政策担当参事官 今、御指摘がございました図5-3に関しましては、自己啓発の背景の部分は転職の志望を契機に自己啓発をやっているのか等々の要因分析までは確かに踏み込めていない部分もございますので、今後、どのような契機が自己啓発の大もととなっているのかといったことも含めまして、どういった形で把握できるかということについては検討してまいりたいと考えております。
もう一点、自己啓発の実施に関しまして、社内の自主的な勉強以外のさまざまな手法について、今後支援を考えていくべきだという御指摘だと思います。そういったことも含めまして、自己啓発の支援の仕方も含めまして、学び直しの取り組みの支援のあり方につきまして、私どもとしてもいろいろな形での検討を進めてまいりたいと思います。
以上でございます。
 
○小杉分科会長 今回このような分析はされていないかもしれませんが、全般に、自己啓発の一番大きな理由というのは、転職よりは、今の場所でよいパフォーマンスを上げるということだったかと思いますので、特に年齢が違うとどうなるか、そこまではわかりませんけれども、転職を理由にというのはちょっとうがっているかなという気がします。私の感想です。済みません。
ほかにございますでしょうか。どうぞ。
 
○河本委員 今ちょうど自己啓発の話が出て、今回の教育給付金の見直しもやはり自己啓発という言葉がキーワードになっていると思います。その捉え方は、先ほどからあるように、やっていることが趣味なのか、自己啓発なのかという分類も非常に難しい。趣味的な、要は文化・教養みたいなものも、趣味であったと本人は思っていても、それが幅広い意味でのリテラシーになっているというのもあるのではないかと思います。
そういった意味で、世の中がちょっと変わってきている中では、こういう言葉の定義をもう一度再定義するなり、その考え方を整理した上で統計をとっていかないと、何がこの施策によって変化したのかという分析とかも因果関係が見えにくくなってくると思いますので、そういうところに工夫をしていく必要があるのかなと感じています。
それは年齢層も同じで、やはりアクティブシニア。シニアというくくりも一口にするのではなく、就業を希望するシニア、今回の図でたまたま見れば、この表もそうですけれども、50歳以上30歳未満となっていて、恐らく分解すればそれぞれの数字は出てくるのでしょうけれども、そういったところにも着目しながら労働力としての期待を伝えていかないと、十把一からげ的に捉えていくというのはモチベーションの低下にもなるのではないかというのを印象として持っていますので、また御検討いただければと思います。
以上です。
 
○小杉分科会長 今回の白書はテーマがテーマなだけに大変盛り上がりましたけれども、ほかによろしゅうございますか。
ないようでしたら、この議題もここまでとさせていただきます。そのほか、委員の方から何かこの際にございますでしょうか。ないようでしたら、本日の議論につきましては以上といたします。また、次回、第12回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたします。
本日の議事録署名委員ですけれども、労働者側は上野委員、使用者側は遠藤委員にお願いいたします。
それでは、本日はこれで終了いたします。どうも御協力ありがとうございました。