第9回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会

日時

平成30年5月11日(金)13:00~15:00

場所

厚生労働省 専用第21会議室

議事

○阿部座長 定刻となりましたので、ただいまから第9回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は加賀委員が御欠席です。また、漆原委員が所用により途中からお見えになると伺っております。志賀委員も間もなく御到着ではないかと思います。また、事務局に異動がありましたので、御報告をお願いいたします。
○障害者雇用対策課課長補佐 障害者雇用対策課課長補佐の高沢でございます。4月1日付けで事務局に異動がございましたので紹介いたします。主任障害者雇用専門官の松浦です。障害者雇用促進研究官の榧野です。以上です。
○阿部座長 本日ですが、東京大学先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授に、障害者の週20時間未満の雇用に関連して御発表いただくこととなっております。近藤先生、よろしくお願いいたします。
 また、本日の進め方ですが、近藤先生にお越しいただいている関係上、前回お示しした論点とは順番を逆にして進めていきたいと思います。まず、週20時間未満の雇用について、近藤准教授から資料1-2を御発表いただいた後、資料1-1の前半部分を事務局から説明いただき、意見交換の時間とさせていただきたいと思います。その後、事務局から資料1-1の後半部分を説明していただいて、意見交換の時間を取らせていただきたいと思います。最後に、事務局から前回研究会の関係で、簡単に説明していただきます。では、近藤先生、よろしくお願いいたします。
○東京大学先端科学研究センター近藤准教授 東京大学の近藤です。今日はこういう機会を頂きまして、誠にありがとうございます。私からは、15~20分ほどお時間を頂きまして、「超短時間雇用IDEAモデルの現況について」ということで、私たちが取り組んでいる、非常に短い時間から障害のある人たちを雇用できる仕組みについてお話をさせていただきます。
 まず、スライドを1枚めくって、最初の「雇用は公平か」という所の話です。私の先端研という研究所では、小学校3年生ぐらいの障害のある子供たちから成人に至るまでの長期的な支援を行うようなプロジェクトを幾つか行っておりまして、その中で教育から雇用の移行のときなどに非常に困っていたことは何かというと、障害の状況によって長い時間は働けない学生、例えば精神、発達、難病であったり、あとは肢体不自由などのある学生の中にも、長時間働くことが難しい学生というのがおりますので、彼らが就労に移行していくときに非常に困難を感じてきました。
 そのときに、どのような困難を感じてきたかというと、日本の雇用の特徴から、大きく分けて2つの枠組みがあります。1つ目は、まず長時間働く必要がある。週40時間、障害者雇用でも30時間又は20時間、さらに年間12か月を通じて働くということが基本となっておりますので、長時間安定して働くことが難しいタイプの人たちというのは雇用対象になりづらいという背景があります。
 もう1つは、雇用されるときに職務定義がないということです。例えば私の研究室でも障害者手帳を持っている人たちを雇用しています。彼らは障害があっても、もちろん何かしらのことはできるわけなのです。とても高い能力を持っていたりするわけです。例えば肢体不自由があって、手足に欠損があり、指は1本だけ使えるので、それでパソコンを使って作業することはできるのだけれども、掃除をしたりお茶を入れるということは難しいわけです。そのように、当然何かできることはあるのですが、日本型の雇用の場合ですと採用されるときに職務定義というものがないので、何を職務として職場から求められるかが分からないわけです。長期的な雇用をされていく中では、配置転換というものが頻繁に行われますので、その結果いろいろな職務をやっていくということが求められてしまいます。その結果として、常用雇用においては「何でもできる人であること」が暗黙の了解になってしまう。障害のある人は何かができる人ですが、何かできないことは必ずある人たちですので、そうすると、通常の雇用という形では採用されにくくなってしまう。
 以上のような結果として、一部の人々、特に障害のある人たちとか、実際にその他様々な事由のある方、長い時間働くことが難しいというと家で介護のある人たちであったり子育て世帯であったりいろいろなことがあると思うのですが、今のような2つの項目というのが、雇用参加において厚い壁となっていると感じてきました。
 次のスライドにいきます。伝統的な日本型雇用の形態ですと、これは障害者雇用においても共通していますが、まず労働者を採用して、採用した後で、部署配属が決まり、そこで様々な職務割当てが行われます。近年ですとメンバーシップ型雇用といった言い方がされますが、そういった「採用した後に仕事が決まる」というやり方が取られています。
 次のページにいきます。私たちの超短時間で雇用を進めていくプロジェクトにおいては、基本的に採用を後から行います。まず何を行うかというと、その職場で困っていることは何か、どういう人手が欲しくて、どういう職務が必要でということを明らかにしていく業務分析を行います。超短時間雇用モデルで雇用したい希望がある企業に出掛けていくわけですが、障害者のための仕事を切り出すということは基本的にやりません。その中で、この仕事がこれだけの時間数あり、そこで是非働いてもらいたい、誰かに来てもらいたいと思っているのだということを、まず明らかに定義します。工夫としては、仕事の粒度が大きくならないように、明確に手順を定義できる形で職務定義を作ります。それが、例えば週当たり5時間とか6時間という超短時間であっても、むしろそれを歓迎するわけです。その後に、今度は労働者を採用します。
 例えば週6時間当たりで、例えばPDF化していくような、電子化していくような作業の手が足りないので是非お願いしたいとか、在庫チェックの仕事をしてもらいたいのでお願いしたいとか、そういう仕事が数時間出てきたとしたら、その数時間だけその仕事ができる人というのを後から採用します。後から採用するのですが、このプロジェクトにおいては、障害のある人に来ていただきます。長時間働くことが難しくて、これまでになかなか障害者雇用であったとしても20時間、30時間の働き方ができなかったという人たちをそこに割り当てていくという形で、通常の職場の中にどんどん入っていってもらうという形を取ります。
 次のスライドにいきます。ただ、これはすぐにこのやり方、言っていることはとても簡単だと思うのですが、これを実装していこうと思うと、やはり地域のバックアップであったり、企業内で行うときも企業内の体制が必要になってきます。まず1つ目のスライドは、自治体でこのような形を実現するための枠組みです。今、川崎市と神戸市ではこのようなやり方で行っています。川崎市も神戸市も、どちらもちょうど人口が150万人ぐらいの政令指定都市なのですが、その中でこのような枠組みをとって超短時間雇用を行っています。
 まず、東大先端研と市役所内のチームとで、共同研究の連携を行っています。市役所内のチームには、障害者の雇用促進のチームだけではなくて、例えば困窮者支援、生活保護、あとは産業育成などで直接中小企業等と関わっている所、あとは広報に関わってくださるようなチームといった、部局横断型のチームを作っていただくことを依頼しています。というのは、例えば困窮者支援のほうなどから労働者が紹介されてくるというケースも、川崎市や神戸市などでは多いという背景があります。
 それから、市役所は工業団体等と連携をしていただいて、実際に企業を紹介していただくということも行っています。さらに、下のほうに企業がありますが、川崎市でも神戸市でも、私のほうからお願いしていることというのは、できるだけ障害者雇用義務のないような50人以下程度の企業を紹介していただくことです。その一つ一つの企業に対しては、1社あたりにたくさんの短時間の障害者に働いてもらうということではなくて、小さな企業が多いので、1社あたりに1人、2人という形で紹介します。さらに、企業には職務を明確に定義することを徹底していただいていて、それ以外の仕事を「これができるならあれもやってね」という形でどんどんお願いするというのはやらないようにお願いしています。さらに、そこに労働者を紹介したり、定着の支援を行ったりというのは、川崎市であったり神戸市が持っているような就労援助センター若しくは就労推進センターと言われる、市の独自の就労移行支援の仕組みを持っているのですが、その人たちの仕様に少し手を加えさせていただいて、20時間以下であってもサポートができるような仕組みにしていただいています。これまでだと就労移行支援の窓口に来たとしても、この人は20時間、30時間以上は無理だなと思ったら、1回市のワーカーに送り返すということが行われていたわけなのですが、それを20時間以下であっても、「少し働いてみますか」という声掛けができるようにしているということです。なので、企業から「うちのほうで是非働いてほしい」「人手が欲しい」という声があったとしたら、川崎市などでは10日以内の間に6名ぐらいの候補者が上がって、すぐに実習に入れるというシステムができているいるというわけです。
 次のスライドを御覧ください。これは、企業グループ内での実装例です。ソフトバンクなどではこのような形を取っております。こちらも社内の担当部署、社内と私たちの間で連携の関係を作らせていただいて、その社内の担当部署と一緒に、その社のガイドラインを作るということを行っています。どのような形で、その職場の中から超短時間で働く人にお願いする仕事を定義していくのか、さらにその職場の中で誰かが働く・・・ソフトバンクなどでは、今は精神障害のある人たちが非常に多いわけなのですが・・・そういう人たちが働く中で、やはりあれもこれもと仕事はお願いしないとか、定義した仕事は、手続がしっかり分かるように本人にお伝えするとか、様々なルールを作らせていただいていて、それをガイドラインとして定めています。それは社内のガイドラインとして、ショートタイムワーク制度として社内制度にしていただきましたので、その形で是非雇いたい、うちの部署で障害のある人と一緒に働きたいと言ってくれる部署の声掛けを待ちます。それなので、ソフトバンクの汐留のオフィスビルに行くと社内用のエレベーター内の電光掲示板や社内のイントラネットに「ショートタイムワーカーがあなたのお仕事を助けます」と表示されるのです。それを見て、どこかの部署が,人手が足りないからうちの部署を助けてほしいと思ったら、ショートタイムワーク担当の部署に電話をすると、職務定義に来てくれるわけです。その中で、まず職務定義をしていき、この形で働いてもらいましょうと。この仕事が週5時間なり6時間なりあるという形になったら、その形で働いてくれるワーカーをそこに紹介していくということになります。当然、そのときにはどの人に働いてもらうかというのは、社内の担当部署ですぐに見付けるということはできないので、外部の機関、就労移行支援機関であったり、支援団体などとの連携関係も時間をかけて作っておりまして、そこから紹介が来るということです。その人たちにまた採用の情報が送られるという形にしております。
 このような形で、非常に短い時間から雇用ができるような仕組みにしているわけなのですが、次のスライドを御覧ください。右上の、障害者雇用促進制度における既存モデルでは、1つの部署の中で週30時間1人を雇いましょうということでお願いされるわけです。その部署に30時間働く人がきたとして、この人にどのような仕事を30時間してもらおうかと後になって考えていくと。そうすると、仕事をいろいろな部署から集めて30時間分の仕事を切り出して作らないといけないという発想が出てきますし、さらにそれをコーディネートするような人が必要になってきます。今週の仕事が足りない、どうやって仕事を作ろうかという困り事というのが常にあるという形になります。
 IDEAモデルの場合ですと、まず仕事が定義されて、その必要な時間数だけ外部から障害のある労働者がやってくるということになります。その部署で、例えば一人が週4時間働いたとしたら、それを企業全体でまとめていくと30時間分の雇用が、この場合だと週4時間の人が8人いたとしたら32時間なので、30時間分の雇用が1人できたという考え方をします。さらに、地域で参加していただいている川崎市や神戸市などでは、それを地域全体で積算していくと何人分の30時間雇用ができたという考え方で、積算型で行っていくというモデルにしています。
 さらにIDEAモデルの中では、幾つか私から要件を作らせていただいています。1つ目は、これまで申し上げてきたような職務を明確に定義することをお願いしています。2つ目は、超短時間から働くことができるということで、時間数にはこだわらないという形にしていただいています。時間数については、後ほどまたデータをお示しします。
 それから、本質的業務以外は柔軟に配慮することをお願いしています。例えばコンピュータのプログラミングをするような部署で、その部署が困っていたのは、全員プログラマーなのですが、日本語のインターフェイスを英語に換えて、それを毎週アメリカ本社の部署に資料を送らなければいけなかったと。それをどのプログラマーにやってもらうかというのを毎週アサインするのに、そこの課長がすごく困っていたのです。なぜかと言うと、そのプログラミングの部署はみんなプログラミングをしたいわけであって翻訳はしたくないのです。やってもらおうとすると、「私は忙しい」とみんなが言うので、誰にやってもらうかを苦慮していたと。
 そこで、その手続を私たちが職務分析に入っていって、その職務は誰にやってもらえるか、どれぐらいの時間数があるか、どの手順でやるかというのを定義していくわけです。そうすると、大体週5時間ぐらい翻訳に関わってくれればいいと。最後に課長が内容をチェックして、本社に送ればいいという1つのルーチンができたので、その形で働いてくれる人を募集しようと。実際に英語ができる人が見付かったのですが、その方は日本語を英語にすることはできるのですが、敬語をしゃべることができない。だから、面接などで上司に当たる人がいたとしても、「お、元気?」とか言うのです。その方は精神障害、発達障害のある人で、それを敬語でしゃべろう、謙譲語をしゃべろうと思うと、どの立場でしゃべっていいのかが分からなくなってしまって、パニックを起こしてすごくつらくなるというタイプの人でした。
 その職場の方にお伺いして、この方は敬語を使う必要はあるかと聞くと、日本語を英語にすることなので敬語は要らないということになって、その部分は大丈夫だと。さらに、この方は感覚過敏などが見られていて襟付きのシャツを着ることが難しい、ひも付きの靴を履くのが難しくてサンダルで行きたいと。サンダル、ジーンズ、Tシャツで行くのが一番いいと言うのです。その形で、この方が客先に立って身だしなみが問われるようなことはあるかを聞いたら、部署の中で翻訳するだけなので客先には立たないと。特段要らないということで、身だしなみも敬語もできないのですが、職務は明確に果たすことができるので、そのまま採用となりました。その職場においては労使ともに非常に高い満足度が得られたそうです。
 そのように、本質的な業務について遂行できるということはまず重視するのですが、それ以外の部分というのは不要であれば配慮すると。本質的業務が遂行できるということだけを重視して、それ以外の、職務遂行上、本質的でないことには柔軟に配慮するということをお願いしています。
 それと、最後は同じ職場で共に働くということです。まず職場に障害理解や障害者が入っていくということを形作った後で障害者を入れていくということではなくて、まず役立つ人材として、その職場に来ていただきますので、1つの職務はしっかりできる方として来ていただくので、障害者理解を受け入れ前にことさら形作るということは最初は行いません。その働いていく中で、結果として、その方にどういう障害があるのかということが後から分かってくるという形です。最初は簡単なガイドラインだけしかお示ししません。それなので、釣りに一緒に行ったとか、仕事が終わった後に御飯をよく一緒に食べに行っているとか、この間は「プロレスを一緒に見に行った」と言っておられた方がいましたが、そういうことがよく起こっているということを感じています。
 次のスライドを御覧ください。今のようなこと、今日御説明するのは時間の関係で、フェーズ2とフェーズ3の「職務定義」と「採用」という所だけを御説明させていただいております。重要なことというのは、職務定義を明確にするということで、今日は御説明しませんが、いろいろなガイドラインだったり、手順やフレームワーク、スキームを作っていて、その形で職務定義をしていくということです。それから採用に対しては、先ほどのような自治体を連携して巻き込むようなモデルを作っていまして、そこの中から、これまでに働いたことがないというような人たちとか、生活保護と病院のデイケアと家だけというような方たちなどが新しく雇用に参加すると。これまで就Bなどにずっとおられた方とか、地活などにおられたような方々というのが、どんどん働きに行っているという現状があります。
 次の「社会への拡大」です。これまでソフトバンクグループ、川崎市、神戸市で、今のようなモデルを展開する形で行ってきています。ソフトバンクには社内制度にしていただいたので、もう2年ほど実施してきております。昨年ですが、グッドデザイン賞に、幾つかしか選ばれない特別賞というのがあるそうなのですが、それの「未来づくり賞」を受賞しておられました。
 次のスライドにいきます。IDEAモデルの実施状況についてです。では、実際に何名ぐらいの人たちがここに参加しているのかをまとめた図です。現在、ソフトバンク社においては、これまで30ほどの部署が参加してくれています。この3月末現在では労働者数は19名で、週当たり合計は160時間ほどになるので、30時間換算すると5.3人分です。川崎市においては、これまで23企業が参加しておりますが、労働者数は19名、週当たりの計が134時間、4.5人分ほどになります。神戸市においてはまだ1年にならないぐらいで、比較的新しく始めたものなのですが、これまでに9企業が参加しており、週当たりの合計が53時間で、1.8人分です。合計すると、11.6人分の30時間雇用に当たるかなと思います。
 次のスライドからは、働いている人たちがどういった人たちで、どういった職務を行っているかというデータを示しています。こちらも駆け足になりますが、ザッと御紹介させていただきます。印刷の都合で一部少し色が抜けてしまっているので見にくい部分があるようですが、御容赦ください。
 まず、ワーカーの属性ですが、多くの方々は精神障害又は発達障害をお持ちの方です。「重複」と書かれている所の多くは、精神と発達の重複の方々がほとんどと考えていただいていいと思います。内部障害との重複の方も一部おられます。比較的男性が多いですが、女性も一定程度おられます。年代としては、ほとんどが40代以下の比較的若い世代の方々と言っていいと思います。
 次のスライドにいきます。実際に、就労先企業の産業だったり従事している職務を簡単にまとめています。参加している企業ですが、企業の種類は様々です。ソフトバンクさんの参加があるので、情報通信業の比率が大きくなっているところはあるかなと思います。実際にどのような仕事をされているかということですが、事務の仕事、オフィスワークが46%です。清掃の仕事も比較的人気があります。それから翻訳だったり、リハビリ助手などもありますね。リハビリ助手というのは、医療法人などで、理学療法や作業療法をされている方が、おじいちゃん、おばあちゃんのリハビリをするときに、まずリハビリ室の入口まで迎えに行って、「元気ですか」と言いながら、OT、PTが作業室まで連れていきます。そこで椅子に座ってホットパックを足にはめて、体を温めてからホットパックを外して施術に入るのですが、業務分析をしてみると、ホットパックを外すところまで、OTやPTがやる必要があるのかと疑問に思っていたと言われるので、そこで今はPTの方の助手として統合失調症のある方が迎えに行って、ホットパックを付けて、外す。若しくは電気療法の治療の器具のようなものを付けて、外すというところまでは統合失調症の方がやられているというケースがあります。施術に入るところからOTやPTが関わるので、結果としてこなすことができる数が増える。結果として「生産性が上がる」と言っていいと思うのですが、そういった形が取られているところかなと思います。
 次に労働時間数です。これは3つの表で表しています。1日当たりの労働時間数で非常に多いのは、5時間以下ぐらいで、11名、16名ということです。週当たりの労働時間数で一番多いのは10時間以下ですね。5時間から10時間の間ぐらいが18名と15名で、7割近くを占めている状況です。週当たりの労働日数は、多くの方が1日や2日ぐらいです。1日か2日、4時間か5時間働いて、10時間いかないぐらいの形で働いておられることが多いかなと思います。
 次のスライドにいきます。労働時間数の経時的変化です。もう2年ぐらいプロジェクトをやってきているので、最初は数時間から働くわけなのですが、その結果として週20時間以上に伸びていく人がどれぐらいいるのかを見てみました。2年やってきて、若干名、20時間に至った人が出てきていますが、多くの方々は、やはり短い時間のままで働きたいと言われています。例えばこのデータでは60名ぐらいの方々の推移を追っているのですが、その中で労働時間の変化をつぶさにデータとして追えているのが、まだ24名しかいません。その中での半分ぐらい、13名が労働時間が変化しています。そのうち10時間を超えたのが5名ぐらいです。それなので、週あたりの労働時間数は、一方向的に増加しているわけではなく、時期によって増えたり減ったりしているという状況がお分かりになるかと思います。
 次に、ワーカーの雇用継続状況です。実際にどれぐらい継続して働いているかということなのですが、7割以上は継続して働いています。これは雇用開始の時期がみんなばらばらです。次々にどんどん労働者が増えていっているような状況なので、まだまだ2年半を超える人たちというのがやっと出てきたという状況なのです。安定して見られることは、やはり長く働ける傾向はあるかなと思います。なかなか辞めないという感想は皆さんから頂いています。一部、退職された方というのはおられます。そのうちで多いのは、体調悪化です。ただ、全員がネガティブな理由だけで辞めているということではなくて、例えばもっと別の企業で長い時間働くことにチャレンジしてみたくなったとか、安定して会社に出られるようになったので、もう一回大学で勉強して働きに行こうと思うなど、そのようなポジティブな理由で辞められている方も見られると思います。
 次のスライドにいきます。これは満足度についてです。簡単に言うと、労使ともに満足度が非常に高いです。不満が得られている結果はほとんどないと言っていいと思います。多くの方々が満足しているという回答で安定しています。雇っている側も、あらかじめ仕事が決まっていて、来てもらってすぐに助けてもらえるので、非常に助かっているという言葉を聞くことが多いです。
 次のスライドからは参考資料になるのですが、実際にこのやり方を企業の中に取り込んでみた結果、何か波及効果としていいことがあったかどうかを聞いています。そうすると、およそ6割ぐらいの部署で「波及効果が見られた」という回答がきています。どういうことかと言うと、特に多いのは、業務内容に関する影響で、「生産性が上がった」「業務の精度が向上した」「これまで明文化されておらずシステム化されていなかった仕事がシステム化され、円滑にいくようになった」「ずっとやりたいと思っていたが手付かずのままであった仕事に着手できるようになった」、職員への影響として、実際に障害のある方と同じ職場で働くということをお願いしていますので、「理解が深まった」ということです。社員に対しては、業務分析の中でそれぞれの社員の本務を明確にするということを管理職の方と一緒に行うのです。その結果として、「社員の本務に対してのモチベーションが向上した」といった結果が得られています。
 次のスライドです。実際にやってみて課題があったかを聞いています。7割近い所では、「ない」か「少ない」という回答が得られています。3割程度の所で「負担感があった」ということを答えています。どういったことに負担を感じたかというと、ほとんどが本人への対応です。ちょっとしたことが気になる方々が多い、精神や発達の方々で不安になられる様子がところどころで見られるので、そういったフォローに少し負担感が感じられることがあったということですが、ここで言えることというのは、7割近い所が、負担感が「ない」か「少ない」と答えているということがポイントかなと思います。
 最後のスライドです。継続意思について受入れ部署に聞いています。「継続したい」と答えた所が100%です。ただ、6割以上の所で「継続したい」とだけの回答だったのですが、残り4割弱の所で「継続したい」に2種類ありました。1つ目は、「拡大したい」というのが20%ぐらいです。もっと時間数を増やしたいとか、週当たりの日数が増やせないかとか、もっと追加採用できないかとか、他社にこういったケースを広めていけないだろうかというような積極的なコメントを頂いたのが20%程度でした。残りの20%からは、懸念が得られています。どういった懸念かと言うと、ほとんどが職務を明確に定義しますので、その職務がなくなったときにどうするかというコメントです。こちらの部分というのは、日本型の雇用スタイルというところで、どうしても長期的な雇用継続という発想にどう対処するかということはあると思います。この超短時間雇用のIDEAモデルというのは、いわゆる日本の職場の中にジョブ型の働き方、そこに選択的に障害のある方が働けるジョブ型の仕組みというのを作っていくことだと私は考えていますので、この懸念ありのところには、ジョブ型の仕事において出てくるような懸念が出てきたと。障害者雇用特有というよりは、そういったところがあるのかなと感じております。
 淡々と事実だけを述べさせていただきましたが、私たちで行っている現状というのは以上になります。ありがとうございました。
○阿部部長 ありがとうございました。それでは、事務局から続けて説明をお願いします。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局でございます。資料1-1、4、5ページを御覧いただきたいと思います。本日は、近藤先生から、週20時間未満の働き方の中でも、特に典型的というか、困難性であったり課題を抱えていたりという方についての支援ということで御説明いただいたイメージで考えていますが、全般として週20時間について意見が出てきておりますので、その辺りについて簡単に御説明したいと思います。
 4ページは、論点として前回提示したところでございますが、5ページにおいて、この論点での週20時間未満であれば働くことができる方への対応ということで、まず、これまで出されてきた意見について整理しております。様々な御意見がありまして、一番上のところで言えば、時間は週20時間未満での就労可能な人は多いので、採用の在り方を確立する必要があるとか、あるいは、雇用率に算定されない現状に課題があるとか、その次も同じですが、短時間トライアルコースで週10時間以上が認められているということの整合性を考えれば、週10時間以上での雇用もカウントに入れるべき、あるいは、2、3時間であっても企業で働くことによって社会参加が進む等々、法定雇用率に入れるという御意見、あるいは、入れるまでではないにせよ、何らかの支援をしていくという意見を含めて、週20時間未満について、全般的には進めていくべきという御意見が非常に多かったのではないかなと感じているところです。
 6ページは、私どものほうで、今回、様々な団体からのヒアリングであるとか、実際にいろいろな現場を見ていく中で、こういったイメージなのではないかということで整理したものです。「従来」と言いますのは、いわゆる障害者雇用促進制度が現行の形になった昭和51年、あるいはその頃ということで考えますと、やはり雇用労働者という形で働ける方というのが、結果としてという意味でも、週20時間以上の方が多かったのかなと考えています。当時は身体障害者雇用促進法といったわけですので、特に身体障害者の方で会社に通うことができてということで考えていくと、結果としてもこういった方が雇用の典型的なパターンだったのではないかと。雇用労働が難しい場合には在宅での就労であるとか、それも難しいということであると、日中活動の支援という方が当時はかなり一定数を占めていたと思います。
 近年においては、社会全体の影響としてはIT技術の進化であるとか、働き方自体が社会全体で柔軟になり、雇用義務化という意味においても、精神障害の方とか発達障害の方、義務化の対象ではありませんけれども、加えて難病とか高次脳機能障害とか、そういった様々な方々が就労を希望する、あるいは雇用の対象に入ってくるという中において、週20時間未満の働き方というのも選択肢として広まりつつあるのではないかと考えています。
 主な対象者のイメージとして下に書いてありますが、最初に近藤先生からも御紹介があったように、正に物理的な移動や疲労等によって制約を抱える身体障害の方であるとか、疲労や症状悪化を防止する観点から長時間の勤務は困難であるとか、長く引きこもりであったり、社会参加してこなかったことによって、なかなか週20時間のハードルが高く感じるというような方もいらっしゃるのかなと思っています。
 7ページです。そうした中で、今回、近藤先生から事例を御紹介いただくということもありましたので、典型的な2つだけを書いておりますが、例えば事例1で申し上げれば、この方は「脊髄性筋萎縮症」で入院されているわけですけれども、こういったパソコン、身体障害の方に適合した形でのマウスなどの打つ機械を使うことによって、1日3時間程度、週10数時間程度はテレワークで勤務をされています。この方はメールマガジンやSNSとか、編集や執筆等を担当されて働いているわけですが、介助や介護、疲労などの観点から、なかなかそれ以上の時間働くというのは難しい方であります。事例2は、近藤先生からも御紹介いただいたソフトバンクの事例ですけれども、週1日4時間から始められる方という前提ではありますけれども、御説明にもあったとおり、延びていく方も一定数はいらっしゃると考えております。
 8ページです。全体として見ていただきますと、データの制約上、一般労働者の方と障害者の方について年限がずれている点は御容赦いただきたいと思いますが、一般労働者については、約10%から12%程度が週20時間未満で勤務されており、かつ、全体が徐々に増加しているのに対して、それぞれの障害種別で見ていくと一般労働者に比べると低水準になっているという事情があります。
 9ページ、これは障害者就業・生活支援センターの支援を受けて一般事業所へ就職した者ということに限って見ていきます。平成28年度では、精神障害の方の約9%程度が週20時間未満での就職になっています。また、身体障害、知的障害の方も一定程度そういう方がいらっしゃるということです。また、障害者就業・生活支援センターへのヒアリングなどにおいても、それぞれ御意見はあると思いますけれども、週20時間未満での就職の選択肢がない中で、就職に向けて滞留されたりという事例も一定数見られるというお話が出てきています。
 10ページは、ハローワークにおける就職率です。データの制約上、希望される就業時間別で見ていますので、実際に何時間で就業しているかということではありませんので、少しそこは差し引いて考えていただく必要があると思いますが、週20時間未満を希望して就職活動をされている方に関しては、やはり就職率が一番低い状況になっています。これはもちろん、週20時間未満を希望しているということで、症状としても比較的重い方がいらっしゃるということがあると思いますが、一方で、やはり雇用率制度であるとか、様々な支援策との両方が影響しているのではないかと考えております。
 11ページ、12ページは、すみませんが時間もありませんので、一般労働全体のテレワークの全体像ということで、最近除々に増えているということを御紹介したいと思います。週20時間未満については様々な形で希望される方であるとか、現にそういった形で働いている方もいらっしゃる中で、就職率はなかなか上がっていかないという実情もあるわけですが、一方で、その社会保険制度の要件ということを考えていきますと、社会保険制度の被保険者要件等においては、週20時間以上と週20時間未満の間でセーフティネットの状況が大きく異なっているということでもありますので、20時間未満の方の働き方を支援していく上では、こうしたセーフティネットが必ずしも十分ではないというところも念頭に置いた上で議論いただく必要があるのかなと思っております。
 14ページです。簡単に、これまでのヒアリングや、委員の皆様、本日の近藤先生からの御意見、事前に伺ったことなども踏まえまして、幾つか論点を私どものほうで整理させていただきましたので、こちらも踏まえて御議論をいただければ幸いであると考えています。全体としては、週20時間未満勤務の障害者の方については、特に精神障害の方の特性などを踏まえると、制度上の対応を図るべきという声が多かったわけですが、対応の方向性については具体的に次のような論点があるのではないかと考えております。1つ目は、精神障害の方をはじめとして、様々な制約や事情から、ごく短時間での勤務とせざるを得ない方が、就業を希望される方の中には一定数含まれている中にあって、こうした機会によって、その後の安定的な就労であるとか、職業能力の向上、あるいは社会的な気運の醸成など、様々なことが期待されることを、適切に評価することとしてはどうかと考えております。
 2つ目としては、現行の在宅就業支援制度においてこういった形を取っているわけですが、それと同様に、週20時間未満での勤務の方については、所定労働時間などに応じて、例えば障害者雇用納付金制度における負担の調整を行う仕組みを、制度上組み込むことが考えられるのではないか。括弧書きは「なお」ということですが、現行制度上は週20時間未満での勤務については、雇用保険上も障害者雇用促進法上も全く対象となっていないという事情がございますので、新たにこういった方々に対する支援をどういった形で組み込むとしても、制度上明確に位置付ける必要があるのではないかと考えているところでございます。
 他方で、週20時間以上勤務の場合と比較した場合には、やはり社会保険制度におけるセーフティネット等にも違いがあることを踏まえると、やはり週20時間以上の方を雇用率の対象としていることとは一定の差を設ける必要があるのではないかと考えております。
 具体的には、各法人における週20時間未満勤務の障害者の方の所定労働時間に応じて、在宅就業障害者支援制度における特例調整金に該当するような、いわゆる新たな給付金を創設して支給していくというようなことが考えられるのではないかと考えております。その対象としては、マル1雇用率制度の対象となる身体障害者、知的・精神障害者の方とする方法もあると思いますし、例えば、論点として特に提示されている精神障害者の方に加えて、医師又は支援機関などにおいて短時間での就労に制限する必要があるとされた方に限定する方法もあると考えられますが、そういったことも含めて、どのような対象とすることが考えられるのかということも御議論いただければと思っております。事務局からは以上でございます。
○阿部座長 それでは、ただいまの近藤先生の御発表と事務局の説明につきまして、皆様から御意見等を頂戴したいと思います。これは毎回お願いしていることではありますが、必ず挙手をしてお名前をおっしゃってから御発言いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、どなたからでも結構です。
○栗原委員 栗原です。近藤先生の非常にユニークな発想のお話を伺って、ああ、なるほど、こういう考え方もあるのだなと思うと同時に、週4時間から6時間というお話になって、そうすると何かお手伝いするだけで終わってしまうような感じがするのですね。これで正規の一般雇用というのに結び付くのかなと。最初は有期になって、いずれは無期になるのかなと。そのときにそのような短い時間で、そうした形態が取れるものなのかなということですね。
 あと、仕事をまず明確にするということで、「こういう仕事があるけれど、どうでしょうか」ということでやっていくのは当然いいことだと思うのですが、それと同時に、できる仕事がある程度限られてきてしまうのではないかなと。継続的な仕事であれば、やはり一般の障害を持たれた方がやられるというのは分かるのですが、短時間でというような仕事になりますと、そうそう仕事がそんなにあるのかなという疑問が湧きました。
 先ほどB型から働きにというのは、これはあると思うのですね。B型でも重度の方という定義がありますが、やはりそういう方でも精神の方は一芸に秀でる方もいらっしゃいますので、そういう方は多分向いている方もいらっしゃるのかなと思いますが、でも、そうそうB型からそういう方々がいるとも思えないし、コーディネートをする部署も、それだけの方を集めて、要は手持ちの中から出していかなければならないという話になると、本当にどの程度広がるのかなという疑問が湧きました。
○阿部座長 よろしいですか。ありがとうございます。先生、よろしいでしょうか。
○東京大学先端科学研究センター近藤准教授 まず1つ目の一般雇用に結び付くのかというのは、長時間化していくかどうかということだと思うのですけれども。実際のところ一部の方は、20時間以上になっています。また、私ももう数年この形で精神・発達障害のある人を中心に、障害種別を問わずにいろいろな人に働いてもらっていますが、例えばこれまで何十人か雇ってきた中で、超短時間からはじめて、今、うちで職員として働いている人が3名います。手帳を持っていて、精神2人、重度障害者である肢体不自由のある人が1人います。
 ただ、私が思うのは、超短時間で職務を明確に定義して、その形で一人の個人が働ける範囲で働いてもらうということは、その職場が耕されていくようなイメージがあるのです。最初から週30時間の形で雇用しようとしても、管理職や同僚が自分事として仕事を定義していくことに慣れていないので、「そんなに仕事はない」となります。しかしそれを小さな範囲から職務を定義することに慣れていくと、「ああ、いろいろな人と働けるじゃないか」という感想を持つと。すると結果としてそれが長期間の雇用につながっていくと。結局その障害者の能力というよりも、やはり職場に職務が生まれていく文化がないと、結果として、長い時間雇うことができない。とはいえ実際、週あたりの時間数が長期化した人たちもいます。しかし、どれぐらいいるかと言われると、私たちは実践を通じて、そういう人がいますよぐらいしか言えないのですけれども、今のところケースとしては、長期化してフルタイム若しくは20時間、30時間の雇用につながった方がおられるという事実だけ、まず申し添えます。
 それともう1つの特徴は、やはり短い時間のままで働きたいという方がかなりの数おられるということです。これまでの場合ですと、やはり長い時間働ける方を作ると。1つの世帯の中に、週20時間、30時間しっかり働いて、雇われている1つの企業からだけの収入で生きていけるという人を作ることが、これまでの雇用モデルだったと思うのです。その結果、何が起こっているかというと、20時間、30時間以下でしか働けない人たちというのは、結局、就Bに行ったりとか、その結果として月平均工賃が1万3,000円ですか、それぐらいの所という状況になってしまうということです。
 更に言うと、長い時間働けないと労働だと思わないというのが、この日本社会の中での1つの概念になってしまっているということです。私たちが思うのは、短い時間であっても役割を持って働くということはできます。なので、労働社会の働き方全部を超短時間のジョブ型にしろと言っているわけでは全くなくて、これまでだと結果として労働市場からはじき出されて、結果、生活保護などのみに依拠して生きていくような方々というのを、それを通常の職場の中で共に働ける仕組みというのを新しく作りましょう、ということですので。完全に置き換えていくということは全く考えていない。これまで対象とならずに労働人口にされてこなかった人たちを、労働力として一緒に働ける職場を作ろうという考え方であると考えていただければと思います。
 2つ目の質問で、実際にそんな仕事がたくさんあるのかどうかということなのですけれども、私たちは障害者のための仕事を作るということをやりませんので、日本型の雇用の場合というのは、やはり日本型のメンバーシップ雇用の特徴というのは面白いなと思うのは、1人のワーカー、1人の労働者に対して様々な仕事が、本務と周辺業務というのが定義されないままに、非常にたくさんくっ付いていると。とにかく忙しくて残業が発生しているというところがよく見られます。
 なので、私たちが、まず本務を明らかにすること、働き方改革をやっているようなものですね。まず職場に入っていって、この人の本務を明らかにしましょう、それで周辺業務が出てくるけれど、この時間は本当は私、残業してやっているんですよと。そういう仕事が出てきたとしたら、では、その仕事を障害のある人と一緒にやりましょうという形でやりますので、私の感覚としては、本当にたくさんの、バリエーションに富むいろいろな仕事が出てきているなというのが、やってみての感想です。
 先ほどデータをお示ししたように、清掃などは定義しやすい気がすると思うのですが、清掃などにも「掃除しておいて」と言うのは結構仕事として難しいのですね。なので例えば、ある施設の中では、「隅っこ担当」という仕事を担当してもらっている人がいます。それは何かというと、清掃ではヘルパーさんが業務の空き時間に掃除をすると、大きいフロアの所はできるのですが、本当は一人一人の入所者さんのQOLに関わるような、部屋や施設の隅の部分をきれいにすることはずっと放置されていて、そこに食べかすがずっと溜まっているとかあるわけです。そういう仕事をやってくれる、2時間なり来てくれて、隅っこだけをきれいにしてくれる人がいます。そのようにかなり仕事の粒度を細かめにお願いして、新しい仕事を作る例があります。そう考えていくと、クリエイティブにその職場で必要とされている仕事を定義していくと、本当に様々な仕事が出てきているなというのが印象です。むしろ仕事の多様性というのは、このやり方でやることによって、結果、広がるという印象を持っています。
○工藤委員 感想も含めてなのですけれども、やはり働きたいという障害者にとってみると、これは非常にいい発想だなと思いました。ただ労働者性だとか労働者保護とか、そういうことから見ると、これを労働者として、やはり日本の法律の中では、労働者として位置付けるにはちょっと難しいのかなという感じはしました。
 でも本当にこういう働き方ができれば、働ける人というのはたくさんいるわけで、それでやはり満足度も高い、私は、10時間ぐらいがちょうどいいということで、それ以上をあえて希望しないとか、そういう人もいるわけで、そういう人たちがいろいろな所で、先ほど職務の定義を先にやって、それに合った人をB型とか地活とか、そういう所から紹介してもらうわけですよね。そのように理解しましたけれども、それでよろしいのかどうか、後で教えてほしいのです。
 また逆に、人には働かないという選択肢もあるわけですよね。もともと今まで随分無理して働いてきたのだけれども、それがトラウマのようになっている人もいるわけです。とにかく働きたくても結果的に働けないと。そして障害年金だとか、それも非常に少ないとか、生活自体も非常に厳しいという人もいるわけです。そうすると、こういう働き方をもっと広めていくのと併せて、社会福祉のほうの充実ですよね。社会保障、そちらのほうとタイアップして、連携して、こういう正に働き方改革ですね、そういう検討をしていくというのがいいのかなと思いました。
 それから社会保険だとか雇用率、先ほど30時間を基本として4.5人分とか、数式計算上はそうなるのでしょうけれども、だからこれを雇用率とか、それはまたどうなのかなと、これからそういうものも議論していく必要があるのだと思うのですが、そんなことを思ったりしています。
 それから、今、事例としては川崎と神戸、大都市ですよね。これが中小の小さい市町村とかでもこういうことが成り立つのかどうか。私はこの話を聞いて思ったのは、先ほどリハビリの補助というのがありましたけれども、病院の医師、看護師なども不足していまして、高齢の方がちょっと体調を崩して入院したら、逆に病院が病人を作ってしまう、重くしてしまう、食べられなくなったので、では点滴をしましょうと。そうすると、ちょっと痴呆が入っていたりすると、点滴を抜かれては困るということで、拘束、つながれたりするわけです。多分1日2日それをやられただけで、体力だとか気力だとかグッと落ちてしまい、痴呆もどんどん進んでしまうと。それが病院に入院する前は全然そうではない人がいっぱいいるのです。それが入院した途端、逆に重くなってしまう。そういったときに、声掛けだとか、やはり医療行為とそこは区別しないといけないところはあるわけですが、そういうところに関わっていくことで、やはりそういう高齢の方が病院に入院したら、だんだん病気を重くしてしまうと、そういうことなども防げるのではないかと、そんなことを感じて聞きました。ありがとうございました。
○阿部座長 ありがとうございました。幾つか御質問も混ざっていたとは思いますけれども、例えば中小都市で実現可能なのかというような御質問もあったと思いますが、その辺りはいかがなのでしょうか。
○東京大学先端科学研究センター近藤准教授 私に今、御質問を頂いたこととして認識しましたのが、就Bや地活から労働者が来ているのかどうかということと、今、中小の都市において実現ができるのかということでした。1つ目の、中小の都市において実現できるかどうかということについては、私たちも今、中小の都市においてのパートナーというのを探しているところではあるのですけれども。現実にやってみて思うのは、やはり政令指定都市等であると、独自の就労移行支援の仕組みを持っているケースがあって、その結果として何ができるかというと、市の判断、その自治体の判断によって、その就労支援の仕組みの仕様を決めることができるのです。なので、例えば20時間以下の雇用であっても、職務定義に入れるとか、定着支援の相談が少し受けられるとか、そのように対象を変えることができます。
 一方で非常に小さい自治体であったりすると、やはりそういったプロジェクトに携わる役割を持った職員もいなかったり、自治体独自の雇用促進の枠組みは持っていなくて、通常の障害者の就労移行支援の事業所が入ってやっている場合というのは、当然こういった形での関わりというのは非常に難しくなりますので、実現はなかなか難しいのではないかなとは思っています。
 それともう1つですが、政令指定都市等ですと、私が必ずその地域にオーダーをお願いしていることというのは、困窮者支援のチームを必ず入れてくださいとお願いしています。それと生活保護のチームを必ず入れてくださいとお願いしています。というのは、困窮者支援に自治体で関わっておられる職員さんのお話を聞くと、やはりおっしゃるのは、困窮者の支援だと思って始めてみると、障害認定のない障害者の支援でしたということ、つまり精神・発達等の困難を持っておられる方でしたというケースが非常に多くて、大きい所だと、やはりそういった心理士であるとか、いわゆる精神保健福祉士であるとか、そういった御専門の方を困窮者支援のチームに入れられるというケースが最近とても増えてきています。
 つまり中間型の雇用という、先ほどおっしゃっていた福祉と労働とをうまく組み合わせて、生き方や働き方を作るということをおっしゃっていただいたのかなと思うのですが、私も正にそのように考えています。これまでだと、自立ということが企業からの収入のみによって生きることだとされてしまうと、結果として短い時間でしか働けない人たちは、そもそも労働市場の中に全く入れないという排除が起こってしまっていた。ですけれども、例えば生活保護をもらっていて働いている人も結構いるのです。今日、データとしてお示ししていないですけれども、生活保護をもらっている、若しくは親の援助だけでこれまで生きてきた、そういう方がプラスアルファ、この超短時間雇用で最低賃金以上のお金をもらって働き始めたというケースが見られているので、必ず困窮者支援の中間型雇用などと組み合わせながらやっていくのは、1つ面白い点であるかなとは思っています。
○阿部座長 ありがとうございました。ではほかに。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局です。週に20時間未満の働き方ということで、1つ近藤先生から典型的な例ということでやっていただいているわけですが、地方の自治体で先生のモデルができるかどうかというのは1つの論点としてあると思いますが、一般論としては、地方部でも当然、20時間未満の仕事のあっせんであるとか切り出しということは相当数行われていますので、そこは先生のお話は前提というか、1つ議論の基にしながらも、そこの特に極端な事例に必ずしも関わらずに、少し全般的なことも御議論いただければ有り難いと思っております。
○阿部座長 ですから、今のは、近藤先生が行っているような事例でやると、もしかしたら幾つか問題点があるかもしれないけれど、一般的には、20時間以内での就労というのは、そういう切り出しも地方都市でも可能だし、できることだろうということです。ほかにいかがでしょうか。
○本條委員 全国精神保健福祉会連合会の本條です。今日の近藤先生のお話は非常に参考になりましたし、私ども精神障害者の団体としては、ソフトバンクのショートタイムワーク、そういう短時間の就労ということにも注目しておりますので、非常に参考になりました。
 ところで、これからの議論は、20時間未満の対応ということでありますけれども、その前に20時間以上30時間未満が0.5となっておりますけれども、これも一度検討すべきではないかと思っているわけです。と言いますのは、第7回の研究会で、フランス、ドイツの障害者雇用制度の中において、フランスの短時間カウント制度、これは日本で言えば40時間の半分、つまり20時間以下が0.5となっておりますので、数学的な概念から言うと、そちらのほうがより妥当ではないかと。もちろんこういう制度ができたということは、いろいろ検討されたことだとは思いますけれども、その辺りも一度検討して、例えば週に何時間とか、それで0.5というのはもちろん難しいでしょうけれど、少なくとも20時間未満であっても、ある程度は0.5としてカウントするというような検討もあってしかるべきではないかと思います。意見です。
○阿部座長 今、御意見は、ちょうど14ページ目の論点の3つ目の○に相当する所で御意見を頂いたと理解しました。ありがとうございます。その他いかがでしょうか。
○塩野委員 塩野です。事務局の論点について、意見を述べたいと思います。週20時間未満の勤務については、精神障害の方だけではなく、重度身体障害の方などの事例もあると思います。そのため、当面は新たに創設する助成金等を最大限活用しながら、雇用状況を精査し、中期的な検討課題とすべきではないかと考えます。なお、その場合、対象については、専門機関の証明により、短時間労働でしか働くことのできない方に限定するのが適当と考えます。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。
○志賀委員 志賀です。近藤先生に質問なのですが、今、話をしていただいた内容はいわゆる知的障害の領域ですが、個人的には、30年少々前の頃の知的障害者の福祉の現場でやっていた内容に非常に似ていて、親近感を感じて聞かせていただきました。知的障害は雇用率のカウントにはなったが、まだ義務でなかった頃というのは、いわゆる大手、大企業での雇用はほとんどなく、雇用率のカウントの制度によらない小規模の事業所で雇用されていたと思います。その際は、小規模の作業所であったり、施設等も、社会参加ができる、活躍ができる、障害者が生活できる社会を目指してということで、こういった超短時間の、いわゆる活躍の場を求めての取組というのはすごく行っていたように思います。個人店舗で開店前に掃除をしたり品出しをしたりというのが典型的だったと思います。
 近藤先生の今回の発表を聞いて、それと違うのは、当時はもともと変化が少ない職場、職務であるのが前提であり、なおかつ小規模であり、単純反復で変化がない仕事があるという前提に恩恵的な関わりをする雇用主がいるという条件で、そういった場が得られていたと思いますが、現在は、いわゆる職場のマッチングであったり、定着支援であったり、更には職業生活を継続するためのサポートであったりというのは、最近の就労支援の仕組みを活用されてのものなのだと思います。
 そういった面で質問なのですけれども、この新しい超短時間の就労支援の仕組み、いわゆる現在の就労支援の仕組み、専門性、あるいはそういった専門家の労働力を活用する量といいますか、ボリュームの問題です。就労支援の専門家の活動量は、短時間労働で働いている人の総労働時間に比例して増えると思われるのか、それとも対象者の頭数で増えるものなのかというのは、ちょっと資料に明確にはなかったので、なかなかそこまで分析はされていないかと思いますが、川崎や神戸市のほうでも実際にそういう仕組みでやられておりますので、その辺の直感的な意見というのをお伺いできればと思っています。
○東京大学先端科学研究センター近藤准教授 御質問ありがとうございます。今、頂いた点に関してですと、これまでの就労移行、超短時間というのは、昔いろいろな所でやっていたという御指摘というのは、正にそのとおりで、現時点でも、やはりそういう個人商店等が短い時間で受け入れてくださっているというのは正にそうだなと思うので、私も正直に言うと、新しいと銘打っていますけれど、余り新しくないなと思いながらやっているのです。
 とはいえ今の御指摘、つまり移行支援のような仕組みがどのように機能しているのかというところで感じていることは、かなり質的に異なるということです。というのは、やはりここ15年ぐらいの中で知的障害者の雇用の拡大というのが出てきて、その中で非常に確立された仕組みというのができてきています。それはやはり職務の切り出しということで、職務を切り出して30時間分の仕事を作るというノウハウというのが非常に、例えばジョブコーチなども使って、そういったことを行っていくというのはとてもよく完成されているのです。
 一方で、その結果何が起こってきているかというと、30時間分切り出せる仕事から選んでいくという視点が出てきてしまっていて、障害者という枠を外して、まずジョブを定義すると。長い時間の仕事を作ることがゴールではないという考え方というのが、なかなかピンとこないというか、なので、そのやり方というのを、この中間的な支援に入ってくださる移行支援の所に、我々はワークをやるのです。まずその仕事を洗い出していく、仕事を定義していくというのは、こういう順序でやっていきますよというワークショップをやって、そこの職場に入ってくださる方にどんどん知識移転を行うのです。そこで、その職務をきれいに見事に上手にその部署の中で定義ができると、実は定着支援がほとんど要らないのです。
 ところが、これまでの30時間働くということになると、川崎市などでも正にそうだったのですが、これは言っていいのかどうかよく分からないのですが、中間的な支援をやっている所というのが、定着支援ばかりに時間が取られてしまう。30時間働かせないといけないので、そこでやはりいろいろなトラブルが起こってくるわけです。そうすると定着支援にどんどん関わると。ところが市としてやってほしいことというのは、やはり新規開拓なのです。新しい企業を見付けて、その企業の中で新しい仕事を作り出していくということをやってほしいと。ところがそこの部分よりは、やはり定着支援にどんどん取られてしまうのが30時間の雇用だなという印象を持っています。
 ところがこの形で必要な仕事、必要な時間数をきれいに定義するということができると、それができる人を連れて働いてもらうので、論理的に言うと定着支援は要らないのです。ただ、当然体調の変動などは起こりますので、そういったときに外部の方に相談に乗っていただけるというのは大きな安心感につながります。時折、電話を掛けて「様子はどうですか」と聞いてくださったりというのはあるのですけれども、定着支援の仕事量というのがドーンと下がりますので、この職務の定義のノウハウ移転というのが中間支援してくださっている移行支援の所にしっかりできて、かつ、各職場においてそれがしっかりできると、むしろ長期的な支援の量というのは減ると感じているのが現状です。
 なので、頭数か時間数なのかということで言うと、頭数であると言っていいのかなと。つまり最初に仕事を定義するというところでは、結局のところ頭数になってきますので、頭数という言い方をしてもいいのかなとは思います。
○眞保委員 近藤先生、ありがとうございました。正に私も今日お話をしたいと思っていたことの内容の中に、近藤先生がおっしゃっていただいたことも含まれています。実は地方の企業に行きますと、現実的に1日3時間×5日とか、また逆に1日5時間で3日とか、そういう細かい仕事をしてほしいという、それは障害のある人でもない人でもいいわけですが、そういう仕事をしてほしいというニーズは結構高いものがあります。ですので、やはり障害のある労働者にとっても事業主にとっても、そうしたニーズはあるのかなと感じていますし、正に先ほど高沢さんがおっしゃったように、現実に地方の現場ではそうした切り出しをして、まずは仕事につなげていくということも実際には行われていると思います。ですので、仕事能力はあっても体調の不安とか、あと地方ですと、通勤の足の問題とか、それが2日は確保できるけれども5日は無理ということがよくあります。あるいは通院時間、通院日の確保とか、そうした様々な事情で短い時間しか働けないという人たちの選択肢が広がる、働き方改革その視点が1点です。
 もう1つは、この4月から雇用の義務化が始まっております精神障害者の雇用についてです。例えば2000年代に入って知的障害者の雇用というのは大変進んだと思います。実際、今、日本では大体人口の1.2%ぐらいの方が知的障害者で手帳を持っている方です。その方々が雇用率の上昇局面で、その方たちの仕事を切り出していく、その方たちに仕事をしていただく、これは相当努力が進んできたけれども、いつかは限界点というものも、もしかしたらあるかもしれない。
 そうすると、雇用率を達成するためには、やはり精神障害とか発達障害の方に働いていただくということが必要になってくると思います。そうすると、今、先生がおっしゃったような新たな事務職の仕事の切り出し、実際、切り出すという言葉を私たちは使いますが、正に先生がなさっているように、困っていることを探してきて、その分の仕事を確保することを切り出しと言っているわけですけれども、そうしたことがやはり必要だと思うのです。そうなってくると、やはり障害特性として短い時間しか働けない、それから状態に不安定さがある、こうした方たちが20時間未満働いて、それに対して雇用率をカウントしていきたいというニーズは、やはり一定程度あるのかなと思っています。
 ただ、これまで雇用保険の問題なども出ましたけれども、20時間以上30時間未満を1カウントにしていただくということで、それは多分、雇用の促進に非常につながると思うのですが、一方で現場サイドからすると、20時間以上働けると思っていた方が20時間以下になってしまうということも、やはり残念ながら起きてしまっていて、そうすると、そこでカウントができないということに非常に不安定さを感じているわけです。
 なので、そうしたことからすると、10時間なのか15時間なのかというような議論はあるかと思うのですが、そうした短時間の働き方に対して、一定程度、雇用率として雇用率制度の中で位置付けたいというニーズはやはりあるのかなと。ただ、直近で考えますと、例えば精神障害者の方を働きやすく、あるいは雇用しやすくと考えますと、特開金の支給の状態が、例えば勤務日数によって減額されるということがあります。そうしたことを、職場と支援機関と医療機関で連携して、環境整備の支援計画書を作るとか、そうしたことによって減額しないようにするとか、あるいは、先ほどもちょっと議論がありましたけれども、短時間トライアルのコースを少し使いやすくするとか、こうしたことはあるのかなと思っています。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。
○長谷川委員 福島大学の長谷川と申します。お話ありがとうございました。非常に興味深く伺わせていただいて、私は労働法を専門にしているのですけれども、日本型雇用みたいなものからの発想の転換をしないといけないという考え方は、一般的にも、また、企業のほうでもなかなか受け入れにくいのかなと思いながら聞いていました。ただ、労働法上、労働時間が短いからといってその人が労働者ではないというような定義はされていないので、労働時間の長短は、そういう意味では関係のないものかと思います。
 幾つかお聞きしたいことがあります。御説明の所で、例えば4ページの所ですが、「まず部署内の業務分析をするのです」とおっしゃってくださって、「仕事の切り出しはしないです」とおっしゃったような気がしたのですけれども、何かそこの業務分析というものと、一般的にいわれている仕事の切り出しというものの違いがよく分からなかったので、まずそこを教えていただきたいです。
 それとも関わってくると思うのですけれども、業務分析をして、では仕事の依頼、この障害者の方にしていただこうとなった場合に、その仕事の量は本当に一定なのだろうか、という疑問を持ちました。自分のことでしかよく分からないのですけれども、例えば学生に配るレジュメを印刷してくれる人がいれば、本当に有り難いと思いますが、ただ、週によって印刷量が変わってきたりとか、夏休み中は要らないとか、そのようにやはり業務の量には凸凹があるのではないかなと思ったときに、あれもこれもそれも、3つ4つぐらい仕事を頼めるのだったら、その中で、「では、今日はこっちをやっておいて」とお願いできると思うのですが、1つ2つと決まったものであると、そういう業務量の変動に対して、どのように対応されるのかなと感じました。それが2つ目の質問です。
 またちょっとそれとも関わるかと思うのですが、その会社においてその仕事がずっとあるということであれば問題ないかもしれないのですけれども、変動する可能性がある場合に、雇用の期間というものをどのように設定して労働契約を締結していらっしゃるのか、無期ではなくて有期でやって、結局、その仕事がなくなったら更新されないということだと、ちょっと問題もあるのかなと思いましたので、それが3つ目です。
 最後に、このような仕事の場合、賃金をどれぐらいに設定しているのか、という例とか相場感みたいなものがあれば、教えていただけると有り難いなと思います。以上です。
○東京大学先端科学研究センター近藤准教授 ありがとうございます。まず1つ目の、切り出しではないという言い方についてです。これは、あくまでも言い回しですが、切り出しというのは、私たちが考えるのは、IDEAモデルの中の要件の1つで、同じ職場で働いてほしいということをお願いしているのですね。よくあるのが、切り出された仕事、幾つかの部署から切り出された仕事を職場から取り出して、それで30時間分の業務を作るのですが、働いている場所というのが、一般の職員と異なる場所で働くケースが散見される。つまり、企業内アウトソーシングのような形で働いているケースが多い。「何か障害のある人が働いているみたい、廊下とかでチラチラ見るけれど、いるみたいね」というぐらいしか一般の職員の認識がない。私たちが思うことは、やはり障害のある人と共に過ごすことに慣れてほしいという思いです。やはり共にあるということが当たり前なんだというのを考えていただきたいので、要件の1つとして、同じ職場で働くということをお願いしています。その結果として、職場から仕事を切り出さないのです。取り出し、切り出しをしない。その職場の中に職務を明らかに定めて、そこに障害のある人を埋め込んでいくようなイメージをしています。ですので、必ずパートナーとして働くような印象を、これは1つのフィロソフィに近いところですが、そのようなお願いをしていることがあり、取り出しという言葉、切り出しという言葉はあえて使わないような言い回しをしています。
 2つ目の、業務の変動への対応です。例えば私たちが職場に入っていってまず行うことは、社員の方と上長の方に来ていただいて、この1人の社員の方にどのような仕事がくっ付いているかをずっと聞き出していく。話していくと、その社員の労働マップみたいなものが広がっていくわけです。それを上長の方と話しながら、この方に最も期待する、この方にお支払いしている給与と考えて最も期待している本務の部分はどこか、周辺的な部分はどこか。周辺的な業務なのだけれど、この方が行うことにより価値が出るのはどこかということを定義していきます。そうしていく中で、仕事の数がすごくたくさん出てきます。すごくたくさん出てきた中で、ではどれに決めていくかと判断するクライテリアをたくさん用意しています。その中の1つが業務量の安定性があることであったり、そのようないろいろな基準を作っています。これまで障害者と一緒に働いたことがない職場も多いので、では、まずこの仕事からやっていきましょうということを判断する20何項目のクライテリアです。例えば急にキャンセルになっても大丈夫な仕事ですかとか、ほかの人と連携して行っても大丈夫な仕事ですかなど、いろいろな判断基準があります。その判断基準の中で、超短時間の方にお願いしやすいものをまず決めて、そこからやっていきます。なので、その意味でいうと、業務の変動対応というのがクライテリアの中に既に組み込まれていると言っていいと思います。
 次に、雇用について有期の期間はどうしているかです。ここは、この場で申し上げるのが非常に悩やましいところでもありますが、やはりジョブ型の最大の壁は、そのジョブがなくなることです。そのジョブがなくなったら労働者を1回労働市場に放ち、その労働者はその仕事でまた別の所で働いていくという流動性をどう作っていくかをセットにしないといけないわけです。事実上、超短時間雇用はジョブ型の仕事ですので、仕事がなくなることが起こります。その結果どうなるかというと、やはり私たちが自治体を巻き込んでいるのはなぜかという理由と関係します。仕事がなくなることは、今のところはまだ2、3年しかプロジェクトをやっていないのでそれほど起こっていませんが、今後恐らく起こり得るだろうとは思っています。その結果、やはり自治体の就労移行の仕組みなども組み込み、そこで流動性を作っていくことは必要ではないかと考えています。つまり、実際に仕事がなくなることはあります。ですので、ちょうど3か月とか半年のような感じの有期で組んでいただいているのが、事実上多いと思います。ただ、精神疾患のある方ですと、やはりどれほど配慮のある職場で、どれほどすばらしい同僚に囲まれていたとしても、例えばそれが妄想の対象となってしまい、その職場で働くことが難しくなるケースも起こるのですね。ただ、そのときにほかの職場にも行けるぞと。しかも、この明確に決められた仕事をある会社でしっかりやった実績があるぞとなると、流動しやすいのです。そうなっていくと、1つの所で長く働いて一生働ける日本のモデルは意味があるとも思いますが、やはり流動性を組み込み、1つの所で働き続けるのではなく、あそこでもこっちでも、そっちでも働ける安心感を作ることを自治体を巻き込んで入れていく必要はあるのではないかと私は考えています。
 それと4つ目、もう1つ頂いていた最後に関心があるとおっしゃっていた賃金についてです。賃金は基本的に同一労働・同一賃金の考え方を入れてくださいとお願いをしております。当然、職務を定義してその職務ができる方だということで労働者を職場に入れていくわけですが、スタートは最低賃金からが一般的です。ですから、東京都ですと958円からです。実際に労働者が働いていく中で、その労働と見合っている金額、実際にできていることも分かってくる。超短時間雇用では実習がほとんどないです。というのは、実習という言葉を使って働いてもらうのですが、「最初からお金を払ってください」とお願いをしています。最初のころは私は、企業には「実習はなしにしてください」とお願いしていたのです。「仕事は決まっており、その仕事ができる方をフィットさせるのだから、実習なんていらない」と言って、そのようにお願いしていました。が、当事者の方から、実習をやらせてくれと。最初からいきなり戦力だとか言われてしまうと不安だから、実習という形にしてくださいと言われて、今、言葉だけ実習にしています。ただ、仕事は決まっていますし、実習期間が終わったあとも当然同じことをやるわけですから、給与は最初から払ってくださいとお願いしています。ですので、ソフトバンクさん等においても、最低賃金から出発するケースが多いようですが、その中で実務を遂行できれば賃金の見直しを入れてくださいとガイドラインの中に入れています。最終的には、同一労働・同一賃金、その働いている内容に対して対価を決めて払っていくところに持っていってくださいとお願いをしてはいます。ただ、これまでですとやはり年功序列賃金がベースになっており、職務と賃金のマッチングをすることに慣れていない職場が非常に多いので、これは今後の課題です。どのように使っていくか。
 もう1つの課題とは何かといいますと、就労移行をする所に、この仕事ができる人を割り当ててくださいとお願いしていますが、これまでの雇用の仕方は、基本的にメンバーシップ型雇用なので、まず30時間働ける人を職場に雇用して、その後に何ができるかを考えるのが職場の仕事になっていた、企業側の役割になっていたので、移行支援機関がアセスメントが非常に難しいのです。本来、アセスメントというのは、職務が決まっていて、その職務で本質的に必要になってくる能力が決まったときに、初めて、その労働者が求められる力を持っているかどうか、という労働者のアセスメントができるのです。ところがこれまでですと、30時間働ける人ということで雇用されるので、その対となるはずの職務が余り明確ではないというのが日本の雇い方の一般的なところです。ただ、私たちの場合ですと職務定義が先に来ますので、今後、職務に対して必要な本質的な能力、エッセンシャルファンクションと言われますが、そういったものをアセスメントする力を就労移行支援機関などに付けていくことを、今後の課題として、今、置いているところです。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。実は、もう1つ本日は議題があり、残り時間が余りないのですが、漆原委員、久保委員から特になければ、工藤委員から簡潔に御意見を述べていただきたいと思います。
○工藤委員 日本盲人会連合の工藤です。志賀先生のお話を聞いてふと思ったのは、B型等の施設からの、施設内就労として位置付けると、これは地方都市などもそれなりに広がっていくのではないかと思いました。それと、今、仕事の切り出しや切り取りなどそのようなことではなく、はめ込んでいく、埋め込んでいくこと、その言い方はともかくとして、いろいろな仕事がたくさんあるのだということに企業が気付くことですね。これは企業にとって非常に大きなメリットであって、障害者にとっても非常に大きなメリットだと思うのです。そういう意味では、ジョブコーチや、これに使えるように持っていくと、当然、ジョブコーチはアセスメントなどもやってくわけですから。そうすると、正に労働と福祉の連携がないとやはりいけないのではないかと思いました。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。皆様から頂いた意見を、ここで総括する必要もないとは思いますが、20時間未満勤務の障害者の対応は、一定程度は必要だろうと。1つは、短時間就業を望む方がいらっしゃるということと、それから20時間以上に向けて就労を短時間から始めていきたいと、大きく分ければ2つの層があるのではないかということで、そういった人たちへの対応としては、こういった20時間未満勤務の制度も十分考えていくべきものだろうと皆さんおっしゃっていると思います。
 その上で、切り出しという言葉がいいのか埋め込みという言葉がいいのか分かりませんが、結局、事業主側が、そういった20時間未満の仕事があることを認識してもらうためにも、やはり、例えば近藤先生のやり方でいえば業務分析をする、あるいは20時間未満の仕事を切り出すためにも、雇用主にある程度のそういったことをしてもらうインセンティブが必要なのかと思います。そうしますと、ここの論点にも出てきますような制度を、どのようにしていくかは考えてもいいのかなと。
 それからB型のお話も出てきたと思いますが、次週予定されているとは思いますが、在宅就業障害者支援制度の特例調整金に該当するというようなことがありますけれど、本日の話で私が理解したのは、例えば週4時間の方が何人か集まると週30時間分になると、そのような時間で集めるというやり方もあると思いますが、多分、在宅就業障害者支援制度では、金額で集めていくというような形でやっていると思いますので、その辺りの短時間でも、例えば頭数で集める、あるいは金額で集めるといったことで、例えば特例調整金に該当するような制度をやっていく。あるいは眞保委員も具体的にいろいろと制度の有り様についてもお話いただいたと思いますが、そういったものはもう少し議論を深めていく必要もあるという感想を持ちました。何か、事務局からあれば。よろしいですか。
 それでは時間も短い中、近藤先生には大変貴重な御発表をいただき、ありがとうございました。
○東京大学先端科学研究センター近藤准教授 ありがとうございました。
                                 (近藤准教授退室)
○阿部座長 それでは、もう1つ論点があり、残り時間で障害者の職業生活の自立の推進を議論していきたいと思います。まず、資料が準備されておりますので、事務局から説明をお願いしたいと思います。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局です。大変詰め込んでいて恐縮です。事前に委員には資料をお渡ししているということもありますので、手短に説明します。
 17ページに書いてあるとおり、精神障害の方の職場定着などについて、一人一人の傾向等を踏まえてどういうことが必要なのかをあらかじめ論点として示しております。次々回において、地域の支援機関の連携等については、また別途御議論いただく場を設けたいと思っております。今回は、精神障害の話のうち、特に制度的なことについて触れられたところに関連して御議論いただく形で資料を準備しております。
 18ページです。そういう中において、精神障害の方の定着、あるいは一人一人の特性に関して大きく2つ意見があったと思います。例えば、1つ目と2つ目にあるように、必ずしも手帳制度にこだわらずに、自立支援医療受給者証を持っている方や手帳を返還した方なども含めて、雇用率制度の対象にする、一定程度、制度の中に読み込んだらどうかという御意見があったかと思います。
 もう1つは3個目のポツ以降です。精神障害の方には、重度と言うか言わないかはあるにせよ、障害態様や発現状況に顕著な個別差がある。ただし、判定は困難を極めるようなところもあり、なかなか一人一人、その時々の状況により異なるということがありますので、4つ目のポツにあるように、統一的に判定できるような支援が必要ではないか、そのために、検討会を実施してはどうかということもありました。
 あるいは、定着支援について、これも上のような判定と少し近いと思いますが、様々な主体によって、支援機関や雇用企業にそれほど負担を掛けずに安定的に働けるような支援ツールが構築されてきていることも踏まえて、判定の手法だけではなくて、実際の支援の中で、その方がどういう特性を持っているのか、一人一人をしっかり見極めてサポートしていく方法の共有も必要なのではないかという御意見があったかと思っております。
 そういう前提の中で、まず、19ページの手帳制度を整理いたします。精神障害者保健福祉手帳については、日常生活の状況に応じて1級、2級、3級を分けております。1級は日常生活が不能であるということ、2級は著しく制限を受ける、3級は制限を受けるということで、日常生活に着目しているという意味においては、ある意味、就労困難性とは別の論点なのではないかと言われることも間々あります。
 20ページです。これは独立行政法人で作っているモデルなのでいろいろな御意見があるかもしれませんが、実際に障害のある方が就労する上では、もちろん、職業適性や基本的な労働習慣は大事であるものの、正に、日常生活の管理や健康管理という、先ほどの手帳の判定に関わってくるところも、就労する上での土台になってくるという意味においては、実は手帳制度と就労の困難性は連動しているのではないかという見方も、一定程度できなくはないということがあります。
 しかしながら一方で、21ページを見ていただくと、これは1事例にすぎないのですが、例えば、鬱病の方の2級の所を見ると、建設業の設計職でフルタイムの正社員という方がいらっしゃいます。こういう方は、当然、症状としては鬱病の2級ということで、かなり厳しい状況の場合もあるのかもしれませんが、一方で、先ほどのピラミッドで言えば一番上の職業適性として、もともとその方が設計職という専門職を持っていたがためにこういうことをやれるという方もいらっしゃれば、もちろん、フルタイムで非正規であるとか、3級であってもなかなか就労が難しいという方もいらっしゃるということです。やはり、日常生活との関係性と就労がある程度リンクするという見方もあるものの、実際どういう仕事ができるのかということでは、その方の持っているもともとの職業能力やその会社の環境など、それぞれによって大きく異なるということが言えるのではないかと思っております。
 ただ、22、23ページを見ていただくと、もちろん、これは働いた上でということですが、第1回の研究会でもお示ししたとおり、例えば、一般求人であっても、開示して働くことによって企業の理解を得やすくなる、配慮されやすくなるとか、あるいは、23ページにありますが、支援機関との連携がある場合には定着しやすくなる、支援機関との連携がない場合には定着しづらくなるということもデータとしてお示ししました。
 また、そのときの資料では、障害者求人で働いている方であっても、支援機関の連携がない場合にはなかなか定着が難しかったり、逆に、一般求人であっても、開示されていたり支援機関を使っているということであれば、かなり定着率が高かったりということで、必ずしも仕事だけではなくて、支援機関との関係や会社の配慮等、様々な要素が関わってくるということかと思っております。
 24ページ以降の詳細は事前に説明しているということもあり割愛します。例えば、このように障害者の方について、どういう能力があるのか、どういう特性があるのかということを整理するツールは独立行政法人だけでも幾つか作っています。机上にかなり分厚い資料を置いてありますが、様々なアセスメントのツールがあります。そのほかに、支援機関において様々なことをやっており、そういう手法なども踏まえた支援が考えられるのではないかということです。
 28ページです。簡単に論点を幾つか示しております。職場定着に困難を抱えるケースが多く見られることについて、更なる対応が必要という御意見が多く見られました。今回は、特に制度的な論点について御議論いただいたところを抽出しております。
 まず、前提として考えるべきこととして、障害者の方の定着状況については、ハローワークや支援機関の連携による支援がある方のほうが定着率が高い、事前に職業訓練を受けているほうが定着率が高い、会社によって配慮されることも、当然、定着につながるのではないかと考えられる中では、やはり支援機関同士の情報共有なども重要なのではないかと考えられます。特に精神障害の方に限りませんが、そういう方が増えてくる中にあっては、支援機関と一言で言っても、例えば、医療機関、様々な就労支援機関、OT等いろいろな方が関わってくる可能性がある中で、1か所の支援機関だけではなくて、いろいろな支援機関が連携することが大事になってくる場面もあると思われます。
 その中で、私どもから幾つか論点を提示しております。まず、ハローワークにおいて、現状、運用面で行っている所もありますが、例えば、まず、その方が障害情報を開示されるか非開示で就職されるのかということで、当然、これは御自身が選ぶ自由があるわけですが、支援機関を活用しながら障害情報を開示した場合のメリットなどについて、十分に理解されていないところもありますので、そういうことを含めて、丁寧な説明を行っていくということが、職業紹介の段階においても考えられるのではないかと思っております。
 また、そうした段階において、御本人の障害理解や支援機関同士の情報連携を促すという観点、あるいは、実際に就職した後の事業主による環境整備を配慮していただくという観点からも、就労に向けた情報共有のフォーマットを整理して、利活用の促進を図ることが考えられるのではないかと思っております。
 その際には、正に、今幾つかお示ししたようなものも含めて、実際に各支援機関が作っているものもいろいろありますが、全国に普及していくに当たって、一定程度同じようなものを使っていくということも、特に事業主や支援機関も含めてより使い勝手をよくしていく、より情報が適正化されていくという意味においては、望ましいという観点もあると思いますので、既存の様式も踏まえながら検討を進めるとともに、実際に使うに当たって、支援機関同士の具体的な情報連携の進め方などについても、実務者に集まっていただき検討していくことが考えられるのではないかと思っております。
 他方で、精神障害の方について、重度判定の話、手帳を持っていない方への雇用率の拡大などの御意見もありました。一人一人の就労の適性を把握するための基準としては、フランスなどの諸外国においても、一定程度そういう仕組みを用いているということがありますので、まず、そういう調査を進めるとともに、前述の就労パスポートの利活用状況なども踏まえながら、実際に日本の雇用現場に適応できるのかということを検討していくことが、考えられるのではないかと思っております。
 繰り返しになりますが、雇用率の適用される範囲についても、まず、そういう状況を踏まえながら考えていくことが適当ではないかと考えております。事務局からは以上です。
○阿部座長 今日は議題の資料1-1と1-2が逆転して短時間の20時間未満から始めました。ここは、20時間未満に限らずフルタイムも含めて精神障害者等の職場定着支援について議論していただきたいと思います。それでは、御意見がありましたら御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。
○漆原委員 連合の漆原です。今、御説明いただいた手帳の所持にかかわらず何かしらの支援をというところは、是非、検討すべきであると考えており、別途有識者の検討会を設置して、その判定の在り方について、あるいは、支援ツールの在り方について検討していただくということに賛成です。また、机上に配布していただいている情報共有のためのツールを、どのようにより効果的に活用していただくのかということは、また十分な議論が必要でありますし、本当に現在のままでいいのか、改良すべき点があるのかというところを含めて検討していただければと思います。
 ただ、手帳のあるなしというところで言えば、精神障害だけではなく難病やほかのケースもありますので、そこは幅広く考えていただければと思っております。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○塩野委員 塩野です。論点には、外国事例の調査結果を踏まえ、日本の雇用現場への適応の是非を検討とありますが、検討するに際して2点お願いしたいことがあります。
 1点目は、精神障害者の職業能力や適性などの認定基準の策定は早急な対応が求められているため、可能な限りスケジュールを明示していただきたいということです。2点目は、手帳を持っていない場合でも雇用率の対象者にするのか否かの判断についても、是非、検討をお願いしたいということです。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○栗原委員 栗原です。まず、ただいま漆原委員がおっしゃったような、精神障害の方の判定の基準、見方にはいろいろな内容があると思います。先ほどの4~6時間というお話の方、正常に働いている方、非開示で雇用されている方もいる。でも、配慮する場合にその辺りの判定基準がどうしても必要になってくるということで、基準を決めていくということは、やはり必要だという感じがいたします。そのために、先ほどおっしゃった研究会を設置するということも大賛成です。
 それと、今、法定雇用率が2%から2.2%になったわけです。今度は3年以内に2.3%になるということです。企業は従業員43~45人くらいに対して1人は雇用しなければいけない。そうすると、中小企業はそれについていけるのかという感じがいたします。
 また、雇用しても、ある程度年数がいって加齢を重ねていったときに、中小の方がその方にどういう扱いができるのですかと。ある程度の年数を雇用した場合、精神を別にすると平均で10年くらいだそうです。精神だと3年、5年というのがあるらしいですが、例えば、その倍くらい雇用された場合、当然、10年ということは20年ですから、学校を出て40歳近くなるということです。その辺からダブルカウント扱いをする必要があるのではないか。ということは、法定雇用率でラインがどんどん下に下がってくるということは雇用に対してのハードルが上がってくるわけですから、それに対して中小企業に障害者雇用への嫌悪感を少しでも覚えないような方向に持っていくことができればという感じがしております。
 例えば、今、20時間以下でも0.5を1にするという話があり、私はいいと思います。ただ、加齢や体力的に非常に困難な状況に陥った場合に、その方に同じようなカウントかプラスアルファにしていただくと、状況的にかなり良くなってくるのではないかと。
 要は、前にもお話したことがあると思うのですが、就労支援とリンクさせるということも1つなのかと。例えば、ある程度いって、もう体力的に落ちてきましたと、これで短時間にしてほしいと本人から申し出た場合、8時間から6時間、6時間から4時間ということもありにするためには、やはり、法定雇用率にうまくリンクできるようなこと、また、就労支援に移行できるような流れを作ってもらえれば、これから雇用率が上がると同時に、精神障害者の方もどんどん雇用していかなければいけない中において、当然、そういう状況が必要になってくると思っております。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○本條委員 全国精神保健福祉会連合会の本條です。手帳の所持者に限らずというところは、是非、検討していただきたいと思います。それに代わるべきものとしては、自立支援医療の受給者を対象にするのがいいのではないかと思っております。それから、ほかの委員からも福祉や医療との連携が提案されておりましたが、この点も、是非、進めていただきたいと思っております。
 例えば、週4時間で5日ですと20時間で短時間雇用になるわけです。これを半日の雇用就労として、あと半日、絶対に行かないといけないということではありませんが、支援に充てるとするとか、あるいは、今までは福祉的支援が終わって、それから就労ということでしたが、同時併行であってもいいのではないかと思っております。
 それから、もう一点は、長時間に耐えられないといっても4時間くらいは耐えられる人が多いようです。4時間に限定されているのは、もちろん体力的な面もありますが、通勤に非常に困難を来す。地方都市はJRとか軌道の鉄道等が通っておらずバスしかないわけです。バスが1時間に1本ということになり、通勤に非常に時間が掛かります。これをテレワークと組み合わせるということになると、企業にとっても働いていただける時間が長くなり、障害者の方にとっても、それだけ通勤に対する御負担が非常に減るのではないか。ですから、テレワークはテレワークとして考えるのではなくて、これを併せて検討していくということもいいのではないかという具合に思います。これは意見です。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○工藤委員 日本盲人会連合の工藤です。手帳に該当しなくても就労が非常に困難な方がおり、その1つが難病の人です。そういうことも、是非、今後、検討してほしいと思います。例えば、視覚障害に近いところで言うと、眼球使用困難な人がいるのです。眼そのものは異常なくても現実に眼が使えない、例えば眼瞼痙攣です。そういうものも実質ほとんど眼が使えない状況ということなので、そういうことも検討です。それから、精神障害の関係では受給者証をというのは賛成でいいのではないかと思っております。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。意見というか感想というか悩ましいと思っていることです。28ページの論点の2つ目です。確かに障害を開示している障害者専用求人なのか、それとも開示しない一般求人なのかによって定着率に大きな差が出てきているということがあるので、このような対応は大事になっていくと思います。ここに書いてあることはそのとおりだと思っています。
 他方で、使用者側、会社側が何を聞いて何を聞いてはいけないのかみたいなことも、明確にしていく必要があるのかと思っています。障害者差別禁止指針に、障害者求人であることを明らかにしている場合は、障害の状態を聞いても良いと書いてあります。けれど、そうでない場合のことについては、特に触れられておらず、それに関して、聞いて障害を持っている、では、採用するのをやめようかということももちろんあるので、差別をなくすためには、そういうことについて聞かないほうがいいと一方で思います。
 他方で、何らかの配慮は必要であって、そういうことを事前に知っていれば、最初からそういう対応を取りつつ長く働いてもらえるようにしたいと思っている使用者もいるかもしれない中で、でも、別に障害者を採りたいというわけではなくて、一般に誰でもいいから採りたいと思っているときに、使用者側が何を聞いて良いのかということが問題になるのかと思っています。
 その辺りについて悩んでいるのですということだけなのですが、どのようにしたらいいものでしょうかと思います。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。ただ、ここの論点の所には「支援機関を活用して情報を開示する」と書いてあります。当事者同士だけではなくて、そこに支援機関がどのように絡んでくるのかということが、論点なのかという理解をしているところです。
 ですから、支援機関がどのような関わり方をしていくのだろうかというところとか、今、長谷川委員がおっしゃった状況もあると思うのですが、そこにどのように支援機関が関わっていくのかというところが大事なのかと思いました。
○長谷川委員 はい。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○工藤委員 情報連携のことです。まず、医療やハローワーク、もちろん、それを本人自身も共有する必要があるだろうし、それから企業、その情報連携のための情報支援ツールみたいなものについては、是非、検討していただきたいと思います。配られたこういうものもありますが。
 それと、障害の認定基準に関して、資料の参考2に身体障害者の手帳の基準があります。視覚障害については、4月27日付けで現行の認定基準の改正の通知が出ており7月1日施行になっています。これでいくと、両眼視力の和が幾つ幾つ以下となっていますが、今度は良いほうの眼で決まっていくという形になります。今後、またこれが報告書などの資料に載るときには、そこを少し注意していただければと思います。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○栗原委員 栗原です。先ほど、少し中途半端な言い方をしたので補足します。加齢の問題が中心になるという話をしましたが、基本的に30時間以上働いている方が一定期間働いた場合は、その方に対してダブルカウントしていただきたいという話をしました。それが大体20年くらいだということで、これは知的、身体の方が中心で精神の方はそれほど長くお勤めの方がいらっしゃらないと思いますので、それは、また別途定める必要があると思いますが、そういうことでダブルカウントにしていただければというお願いです。
 加齢で時間を短くした方については、短時間にしていくことは当然の流れの中であるわけで、そういう方に対しても1から0.5にしないで、できれば当分の間、1のままで認めていただければという考えを先ほど言おうと思ったところです。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○志賀委員 志賀です。余り、まとまらない意見なので躊躇しているのですが、今の話の中で、手帳の交付の基準、等級、自立支援医療等いろいろな基準を広げてということ、並びに、その障害についての開示を支援機関と求めるというのは、正にそのとおりで、特に専門のワーキングチーム等で検討、ここではない場が非常に大切なのだと思います。
 現在、私、そういう面での支援機関に事務所を置いておりますので、そこを見てみると、例えば、手帳のメリットや開示のメリット、この資料のように定着率の数字等、いろいろな情報がありますので、説明は余り難しい話ではないのです。だからといって、手帳の交付を受けるのか、あるいは開示、障害者雇用を選択されるのかという問題とは、それだからすぐというわけでもない現実を見ていると、それだけで何かこの精神障害者の職場定着の問題は先に進むのかなという疑問だけがあるということを言いたかったのです。すみません、これだけです。
○阿部座長 ありがとうございました。つまり、今の話は障害等級も手帳のありなしも関係なく、何かうまくマッチングする場合としない場合があり、そこのキーになっているものは、まだよく分かっていない。
○志賀委員 志賀です。最終的には本人が自ら判断することになりますので、そこをどのように本人が考えていただくかに全て掛かっているので、仕組みを変えたからといって、その部分は基本的に変わらないですから、急激に拡大していくかどうかということは、今、現場にいる感覚からすると、基準が3から1に変わったからといって、障害者雇用でという方が急激に増えるというのは、また別の要因のような気がしているという話です。
○阿部座長 分かりました。例えば、志賀委員にお聞きしたいのですが、20ページに就労困難性と職業適性という図が用意されており、ここやその前に手帳の等級基準があります。ここで言うと、どの辺りがキーになるのでしょうか。今、私が志賀委員のお話を聞いて思ったのは、障害と労働能力があり、こちらの労働能力のほうがうまくマッチングしないと、やはりマッチングはうまくいかないし、障害の特性もそこに影響してくるわけです。その辺りは何がキーになっているのかというのは、両方キーになってくると思うのですが、その中で、例えば、どれをうまくやっていけば、何をうまくやっていけば、よりマッチングが効率的に進むのかと考えたとしたら、最終的には本人が決めるとしても、それをより決めやすくするためには何がキーになるのでしょうか。
○志賀委員 ストレートに回答できません。いわゆる、そのマッチングするためのツールの1つとして障害者手帳があり、雇用率制度があると考えています。その障害者手帳であれ、雇用率制度を活用するかしないかというルールには、必ずしも当事者の方が乗らないということなのだと。それゆえに、生活で苦労されている方もいらっしゃるのも事実なのですが、だからといって、今言ったように基準を上げ下げしたからという問題ではない問題が多いという話です。
○阿部座長 ただ、論点にもなっているわけですが、例えば、就労適性等を把握する基準を作っていくということ自体は、否定するものでもないですよね。
○志賀委員 そうです。すごく大切です。
○阿部座長 就労適性等を把握する基準と障害の基準が私の中では大きく2つあるような気がしていて、そこをどのようにうまく情報を使っていき最終的に良好なマッチングをしていくのかという、そこをうまくどのように作り込んでいくのかということが大事なような気がするのです。そこは、我々の議論ではなくて、そういう検討会でやっていただければということで、よろしいですね。
○志賀委員 はい。
○阿部座長 私もかなり整理できたような気がします。ほかにいかがでしょうか。
○塩野委員 先ほど、栗原委員が雇用率のカウントの件をお話されましたので、併せて発言させていただきます。企業にとって障害者雇用における大きな課題は、加齢や障害の状態変化を踏まえ、いかに安定的に働き続けていただくかということだと思っています。そのための環境整備を行っていくに当たり、是非、雇用率のカウントの見直しをお願いしたいと思います。具体的には、先ほど栗原委員が発言された点に加えて、今回の精神障害者の短時間労働の取扱いを恒久化することです。
最後に、これまでも何人かの方が発言されていましたが、加齢や状態変化等に伴って働き方を見直す必要があり、ご本人の同意を前提に、就労継続支援事業A型やB型事業所への円滑な移行を可能にするような仕組みの構築も、是非、お願いしたいと思います。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。栗原委員、塩野委員から雇用率のカウントの仕方、あるいは、今、塩野委員から移行支援の話も出ました。それについては、論点1ではなくて、別途、論点を設けて議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、既に予定している3時を少し回ってしまっているのですが、何か追加的に御意見ございましたら御発言いただきたいと思います。もし、なければ、基本的に精神障害等については、手帳のありなしではなくて、むしろ、その判定基準のほうをうまく利用していくことはどうかと。そのために検討会で検討していただければいいのではないかということが、大体、皆さんの御意見かと思いました。それ以外では特にありませんでした。
 本條委員が言われる自立支援医療制度の利用も手帳に代わる制度としてあるのではないかという御発言もありましたので、一考に値するのかと。また、テレワークについても御発言がありましたが、次回以降、それについてはまた別途御議論いただければと思います。本日はこうしたことで、そろそろ時間もまいりましたので、終わりにしたいと思います。
 皆様から多岐にわたっていろいろ御意見を頂きましたので、事務局でこれから適宜取りまとめて、また今後の議論に反映させていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。また、本日の議論について、この後、疑問や感想を持ったということがありましたら、事務局に御連絡を頂ければと思います。
 それでは、次回の日程について事務局より説明をお願いします。
○障害者雇用対策課課長補佐 事務局です。本日はありがとうございました。次回は、来週の18日(金)、同じ時間の13時からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。なお、31ページに前回、御質問いただいたことへの回答ということで資料を載せておりますので、こちらも御参照いただければと思います。以上です。
○阿部座長 本日もお忙しい中、お集まりいただきありがとうございました。それでは、これをもちまして、第9回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会を終了いたします。ありがとうございました。