第77回労働政策審議会障害者雇用分科会(議事録)

日時

平成30年8月22日(水)13:30~15:30

場所

厚生労働省 省議室

議事


○阿部分科会長 皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから「第77回労働政策審議会障害者雇用分科会」を開催いたします。本日は、中川委員、武石委員、桑原委員が欠席です。また、土屋職業安定局長は、他の公務により欠席されるとお聞きしております。
 初めに、事務局に異動がありましたので、事務局から報告をお願いします。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の松下でございます。私も含めて7月31日付けで事務局に異動がありましたので、紹介をさせていただきます。雇用開発部長の北條です。
○北條雇用開発部長 北條でございます。よろしくお願いします。
○松下障害者雇用対策課長 そして、私、障害者雇用対策課長の松下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。カメラ取材はここまでにさせていただきますので、御退室いただきたいと思います。よろしくお願いします。
 本日、議事に入ります前に、事務局から発言を求められておりますので、事務局からの発言を許したいと思いますが、よろしいですか。それでは事務局からお願いします。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の松下です。私のほうからお時間を頂きまして、国の行政機関におきます障害者雇用の状況について御報告させていただきたいと思っております。国の行政機関におきます障害者雇用の状況につきましては、障害者雇用促進法に基づきまして、毎年6月1日現在の状況を厚生労働省に報告いただいているところです。この件について、厚生労働省といたしまして、現在、全ての国の行政機関を対象としまして、平成29年6月1日現在におきます障害者雇用の状況の報告内容についての再点検をお願いしているところです。現在の状況ですが、国の各行政機関におきます再点検結果について、精査をしているところです。その結果が取りまとまり次第、速やかに公表をさせていただきたいと思っております。また、併せて、その公表内容についても、この分科会においても御報告をさせていただきたいと思っているところです。私からの説明については、以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。今回、一連の報道もありますが、この一報に接し、私としては非常に驚きました。正にびっくりしております。まだ詳細が明らかでないわけですが、国にとっては、あってはならないことがあったということで、非常に残念でなりません。国におかれましては、本件がどうして発生したのかをしっかり調査していただいて、このようなことが二度と起こらないような再発防止策をしっかりと考えていただきたいと思っております。
 ただ、これによって障害者雇用政策が後退するとか、遅れてしまうといったことは、あってはならないというふうに個人的には思っております。今後の障害者雇用の進展に向けて、本分科会でしっかりと議論をしていきたいと思っておりますので、改めて委員の皆様にはよろしくお願いしたいと思っております。また、関係者の皆様におかれましても、この件を機に、後退しないように、むしろ障害者雇用が一層進展するような前向きな議論をしていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。なお、この件に関して皆様から御発言があるかと思いますが、時間のこともありますので、この件に関しては最後にまとめて皆様から御発言していただきたいと思っておりますので、その旨御了解いただければと思います。以上です。では、どうぞ。
○北條雇用開発部長 雇用開発部長の北條です。ただいまの分科会長の御指摘につきましては、厚生労働省といたしましても、真摯に受け止めて対応してまいりたいと思います。
○阿部分科会長 それでは議事に入りたいと思います。本日の議題ですが、「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会について(報告)」と「障害者雇用対策の政策目標について」の2つとなっております。初めに、資料の確認をさせていただきたいと思います。資料1-1~1-3、資料2-1~2-3の合計6種類が皆様のお手元に配布されていると思いますが、よろしいでしょうか。御確認をお願いします。
 それでは、議題1「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会について(報告)」、事務局から説明をお願いします。
○松下障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の松下です。私から議題1「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会について(報告)」、御説明をさせていただきます。資料については、先ほど分科会長からお話がありました資料1-1~1-3を使いながら御説明をさせていただきます。説明に当たり、時間の関係がありますので、その中で特に資料1-1、この報告書の概要版をもって説明に代えさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 それでは、資料1-1「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(概要)」について説明をさせていただきます。1ページの「1.趣旨」です。我が国の障害者雇用については、障害者の就労意欲の高まり、企業理解や取組の進展、就労支援機関等の支援体制の充実により、大幅に雇用者数が増加しており、雇用障害者に占める知的障害者や精神障害者の割合も高まっている、そうした状況が見られます。
 こうした中で、平成29年3月28日の働き方改革実現会議、これは総理が議長になっておりますが、本会議の中で決定された「働き方改革実行計画」の中において、「多様な障害特性に対応した障害者雇用の促進、職場定着支援を進めるため、有識者による会議の場を設置し、障害者雇用に係る制度の在り方について幅広く検討を行う」ということが盛り込まれております。こうした実行計画の内容等も踏まえながら、今般、障害者雇用促進制度の中心的役割を果たす障害者雇用納付金制度や雇用率制度の在り方、その他諸々の課題等々に対して検討・研究を行う研究会の開催をさせていただいたところです。
 メンバーについては、3.に書いてあります。分科会長の阿部先生にも入っていただき、この研究会の座長となっていただきました。開催状況については、昨年の9月から今年の7月まで計15回開催をさせていただいております。その中では関係団体からのヒアリング等々も含めて行ってきたところです。その研究会の取りまとめが7月30日にされたということで、今回、その内容の説明をさせていただきたいと思っているところです。
 2ページをお開きください。2ページ以降が具体的な報告書の概要、中身に入ってくる部分です。Ⅰの「はじめに」です。先ほども少し申し上げましたが、2つ目の○ですが、企業理解の深まりや障害者の就労意欲の高まり等により、障害者雇用の量的側面は着実に進展をしている、そうした状況が見られる中で、多様な特性に対応した職場定着支援や就労環境の整備といったものが、より一層重要な課題となっている、そうした中で働き方改革実行計画を踏まえ、今般の報告書について報告をするという記載があります。
 右側のⅡでは、現状と課題を整理させていただいております。大きく6つ柱を立てております。1つ目の柱については、先ほど申し上げましたが、障害者雇用者数は毎年着実に増加してきており、障害種別についても多様化しています。左下の円グラフを見ていただければと思いますが、平成19年度と平成29年度の比較をしております。平成19年度においては、身体障害者の数、割合が半数以上を占めていたのが、10年後の平成29年度においては、身体障害者の数自体は増えてはいますが、全体の割合として27%と半分ぐらいになっています。他方で、精神障害者の割合が半数近くになっているという状況が見られるといった多様化が出てきています。
 また、上のほうに戻っていただき、2つ目の○です。精神障害者の職場定着率が低い傾向にあります。その傾向については、下の真ん中の折れ線グラフを見ていただければ分かるとおり、精神障害者は赤い折れ線グラフになっておりますが、1年後の定着率については半分程度、49.3%といった状況になっている傾向が見られます。
 上のほうに戻り、3つ目の○です。障害者の年齢別の状況についてですが、身体障害者については高齢者の増加傾向があり、一方で知的・精神障害の方については若年層が増加傾向にあるといった状況が見られます。
 4つ目です。精神障害者、重度の身体障害者等々は、これまではなかなか就労面で厳しい状況に置かれていましたが、そうした障害のある方々について、ICTの進展等に伴うテレワーク等の活用などにより、働き方が広がってきており、柔軟な働き方が認められてきているといった状況が見られます。
 5つ目ですが、中小企業の状況です。中小企業においても、障害者雇用は着実に進展しておりますが、他方で常用労働者100人以下の中小企業における障害者雇用は停滞をしている傾向が見られます。
 一番下の○です。地域の就労支援機関、これは後ほども説明させていただきますが、地域における障害者就業・生活支援センターであったり、障害者職業センターであったり、そうした諸々の支援機関がありますが、支援機関によって受けられる支援に差が見られるといった状況について記載をしております。
 3ページを見ていただきたいと思います。3ページが具体的な取組の提言をされているところです。大きな柱として、Ⅲの「多様な働き方のニーズ等に対応した障害者の雇用の質の向上に向けた取組の推進」が立っております。そのうちの1.の障害者の雇用の質についてですが、雇用の質の捉え方については、2つ目の○を御覧ください。雇用の質の捉え方として共通する考え方としては、「希望や特性に応じて、安心して、安定的に働き続けることができる環境が整っていること」といった整理がなされております。
 こうした環境整備に向けた取組として、その下の2.と右側に3.という形で柱が立っております。2.は、多様な希望や特性等に対応した働き方の選択肢の拡大です。この中で更に3つ大きく取組が具体的に提言されています。マル1は、週所定労働時間20時間未満の障害者の雇用に対する支援措置の創設です。これは週所定労働時間20時間未満の常用労働者として障害者を雇用する事業主の方に対して、納付金財政を活用した特例的な給付金による支援、そうした制度を組み込んではどうかといった提言がされているところです。
 マル2は、自宅や就労施設等での障害者の就業機会の確保です。これは下の3つ目のテレワークとも関連するところですが、2つ目は非雇用で自宅あるいは施設で働く障害者の方の就業機会の拡大、確保を図っていくといった内容ですが、具体的にはマル2の2行目に書いてあります。現在、在宅就業障害者支援制度といった制度がありますが、こうした支援制度は、なかなか利用頻度といいますか、利用が伸びていないといった現状があります。こうした支援制度の中身、在り方について、3行目にも書いてありますが、施設外就労の形で業務を発注する事業主の方に対して、支援金、ここで言いますと調整金という名称になっておりますが、そうした調整金の額を上乗せするといった形での支援、あるいは、今現在の調整金の算定に当たって、実際の障害のある方に対する報酬額といった形で算定をしている形になっておりますのを、その算定に当たりまして発注額という形にして、額が大きくなりますので、そういうことになりますと、調整金、支援する給付金の額が上がるといった見直しをしてはどうかといった提言がされているところです。
 マル3はテレワークの推進です。具体的な提言されている取組の内容については、都市部での充足をしていない求人と、地方部で働く希望を持っている障害のある方のマッチングを促進してはどうかと。具体的には、この取組を進めるに当たり、テレワークにおいて、これは健常者の方も同様ですが、労務管理、雇用管理の面で難しい部分があります。また、障害のある方については、支援する方も入るといったことも多々ありますので、事業主の方、障害のある方、また支援をする方と、そうした方々の雇用管理、労務管理、事業主の方と支援する方との関係等々、そうしたことのマニュアルを作成することによって、円滑にテレワークが推進するようにという提言がされているところです。
 右側の3.では、安心して安定的に働き続けられる環境の整備といった柱が立っております。大きく4つあります。マル1は、精神障害者等の個別性の高い支援を要する場合の支援の充実です。これは具体的には、精神障害のある方など、特にそういう方々を中心として障害特性等の情報について、事業主の方であったり、就労支援機関の方であったりと、そうした方々が共有できるフォーマット、ここに書いてありますのは「就労パスポート」という名称で書いてありますが、こうした就労パスポートを使うことによって、支援であったり、就職、働くことについてつなげていくとか、働くに当たってのその後の円滑な働きといったことにもつながるような、そういうパスポートを作ってはどうかといった提言がされているところです。
 マル2は中高年齢層の障害者が希望により長く安定的に働ける環境の整備です。中高年齢層の障害を持つ方が長く働き続けられるようにということで、これは年齢が高くなれば、健常者もそうですが、特に障害のある方は、労働能力であったり、そうした体力面といったところで厳しい状況が出てきますので、そうした状況を本人の希望も踏まえながら長く働き続けられるような取組、事業主の方と障害のある方が話をしていただきまして、例えば配値転換であったり、一般雇用から福祉的な就労といった、そうした今後の働き方といったことも相談していただきながら、長く働き続けられるような取組の支援をしていったらどうかという提言です。
 マル3は、地域における就労支援体制の機能強化です。地域における就労支援体制ですが、先ほど申し上げましたが、障害者就業・生活支援センターとか、当然ハローワークもありますし、また、それぞれの障害特性に応じた支援センター等々もあります。ここでは「ハブ」という形で書いてありますが、「地域の支援機関のネットワークのハブ」という形で障害者就業・生活支援センターが中心となって、障害者就業・生活支援センターが持っている就労支援のノウハウを他のセンターに移転することによって、そのネットワークとなっております他の支援センターの地域における支援力の底上げを図っていってはどうかといった内容です。そうした取組の中で、その下のポツにも書いてありますが、事業主団体や地域の事業主との関係構築による事業所開拓や、障害者の理解促進を図っていってはどうかといった内容です。
 その下のポツですが、企業内、特に中小企業においては、障害者の方の雇用管理をする担当の方、社員の方が、障害のある方に対する対応について相談する場がなかなかないといったこと等々を踏まえて、就業・生活支援センターが中心となって、そうした社員の方に対する相談支援といったものを行ってはどうかといった内容です。
 最後のポツですが、難病患者や依存症といった多様化する障害を持つ方に対する支援や、生活困窮者で障害がうかがわれる方に対する支援といったものも、そうした地域のネットワークの中で支援をしていくべきではないかといった提言もされているところです。
 最後のマル4ですが、障害者雇用の質の向上に向けた事業主の取組に対する支援措置の創設等です。具体的には、事業主の方が長きにわたって雇用を継続しているといった場合においては、雇用率制度におけるカウントの上積みをするといった措置を講じてはどうかといった内容が1つ目です。後段ですが、これも事業主の取組で、雇用をしている障害者に対するOJTや、off-JTといった取組を行う事業主に対して、支援措置といったものを講じてはどうかといった内容となっています。
 4ページのⅣは中小企業における障害者雇用の推進です。大きく3つ柱が立っておりますが、1つ目は、現状についてです。先ほども申し上げました中小企業の現状として、100人以下の企業においては障害者雇用が比較的停滞がみられます。また、障害者雇用ゼロ企業のほぼ全てが中小企業といった状況となっているところです。
 こうした中で、先ほど御説明をしました中小企業に対する支援の取組として、週所定労働時間20時間未満の雇用に対する支援措置については、中小企業において、フルタイム、長時間の働きに対する業務の切り出しがなかなか難しいといった話もあり、こういう短時間の労働に対する支援を行うということについての対応は、中小企業の支援の観点からも有効な取組ではないかといったところが、2つ目の○に入っております。
 2.ですが、中小企業の認証制度の創設が提言されております。具体的には、率先して障害者雇用の取組を行っている優良な中小企業に対して、公的な認証制度を創設してはどうかという提言がされております。それにより、認証を受けた中小企業においては、例えば認証のマーク等を使って、自社の広告や、商品に使うとか、また、その認証を受けた企業においては、政策金利の低利融資を受けられたりとか、そうしたメリットの創設を考えてはどうかといった内容です。
 3.は中小企業に対する障害者雇用調整金、納付金の適用です。この納付金制度の適用になります企業は、現行においては100人超の企業に制度が適用という形になっておりますが、この適用の企業の範囲について、50人以上といった形で適用される企業の範囲を広げていってはどうかといった提言がされているところです。
 Ⅴです。障害者が長く安心して安定的に働き続けられる環境整備につなげる制度の在り方、という柱が立っております。その中で2つ大きく提言がされております。1.が、障害者雇用率制度の在り方です。雇用率制度については、5年に1度見直しがされます。御承知の方は多いと思いますが、分母が常用労働者プラス失業者の方の数、分子がそれぞれの障害のある方の数と障害のある方の失業者の数という算定方式に基づいて雇用率の見直しが行われてきているところです。そうした雇用率の見直しの中で、その算定方式によって出た数字を直ちにそのまま採用するという形ではなくて、そこに書いてありますように労使や、障害のある当事者、あるいは有識者の議論により出た算定方式を経て出た数字を踏まえながら、どのように雇用率の適用をしていくのかを決定をするという中身にしていったらどうかという提言もされているところです。
 2.は障害者雇用納付金制度の在り方です。先ほども納付金の話がありましたが、その中で2つあります。1つ目は雇用調整金の関係です。雇用調整金については、雇用率を超えて雇っている1人につき、2万7,000円といった形で調整金が支給されておりますが、その支給額については青天井になっていて、上限がない状況にあります。ここに書いてありますように、その中で経営基盤が比較的安定している大企業については、見直しをして上限を掛けていくとことも考えたらどうか。また、就労継続支援A型事業所については、御承知の方が多いかと思いますが、福祉的サービスから補助も出ているといったことで、そうした福祉的な補助と調整金という形で二重に補助支援があるのではないか、そうしたことを捉えて上限を定めていってはどうかといった内容が盛り込まれているところです。
 2つ目は納付金財政の調整機能についてで、これは過去において納付金財政が赤字になった時代があります。こうしたことの備えといたしまして、ここに書いてありますように、単年度収支が赤字になった場合については、その赤字額の程度に応じて翌年度以降の調整金の額を減額させる、そうした仕組みの導入についても、あらかじめ制度の仕組みの中で考えてはどうかといった提言がされているところです。
 以上、雑ぱくな説明になったかと思いますが、この研究会報告の内容の概要ということで御説明をさせていただきました。また、本分科会において、委員の皆様方か御意見等を賜り、この研究会で提言、盛り込まれた内容について、今後の対応についても考えていきたいと思っているところです。事務局からの説明は以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、御質問、御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思います。視覚、及び聴覚障害者の方々への情報保障の観点から、御質問、御意見がございましたら、まず必ず挙手をして、私が指名した後に、お名前を名乗ってから御発言いただければと思います。よろしくお願いします。
○村上委員 ありがとうございます。連合の村上です。本日は、研究会の報告の説明をいただきましたけれども、まず、この報告の位置付けについて確認したいと思います。この研究会報告、大変熱心に開催されておりまして、参画されてきた皆様方の熱心な御努力、御見識について敬意を表するものです。
 内容としても多様な障害特性を持つ方への支援の仕組み、そういった現実的なアイディアも多数触れられておりますし、就労パスポートなどについても大変ニーズがあるものかもしれませんので、そういったものはコンセンサスができ、早く進んでいけばよいと思っているところです。ただ、種々、制度改正についても触れられておりまして、こういった中身についてはじっくりと議論する必要がございますし、今、そのような議論を行う前提条件は整っていないと考えております。先ほど分科会長からは、本来の議題が終わってから先般の6・1調査に関わる問題については意見を述べるようにと言われましたので、その問題については後ほどまた意見を述べたいと思っております。
 この6・1調査というのは、障害者雇用施策を考える上での大前提になっており、その信頼性が揺らいでいるとすれば、やはり、きちんとした調査が行われて、また、先ほど分科会長から言われましたけれども、再発防止策も示された上で制度改正に絡む話を議論していくべきではないかと思っております。研究会報告の位置付けについては、私としてはそのようなものであると認識しておりますが、皆様方としての理解を伺えればと思っております。以上です。
○阿部分科会長 それでは御質問もありましたので、報告の位置付けとしてどのように捉えているか、事務局から説明をお願いいたします。
○松下障害者雇用対策課長 事務局です。今、御質問いただきました本研究会の報告書の内容の取扱いです。これにつきましては趣旨の所で説明しましたけれども、働き方改革実行計画において、障害者雇用納付金制度の在り方、雇用率制度の在り方を中心として議論を進め、今後の障害者雇用促進制度の在り方といった観点で検討を進めるよう取り組んできた内容であると認識しております。今年の7月に本研究会は取りまとめされておりますので、研究会の報告書の内容について本日御説明させていただきまして、今後の取扱いということになるかと思います。本日、委員の先生方、皆様方から御意見を頂き、その御意見を踏まえて、今後のこの研究会の内容についての取扱いを、分科会長とも相談をさせていただきながら検討を進めていきたいと考えているところです。以上です。
○阿部分科会長 それでは、竹下委員、どうぞ。
○竹下委員 竹下です。4点ほど質問、意見を述べさせていただきます。今、指摘のあった点と重なるのですけれど、研究会の「趣旨」の所を読んでみますと、まず冒頭に書かれているのは何かというと、この研究会の位置付けとして、内閣が定めた実行計画、正確に言うと、働き方改革実行計画に基づいて、「多様な障害特性に対応した障害者雇用の促進」ということをうたっているのですね。さらに、それをきちっと明確にするために「はじめに」の所を読んでみますと、冒頭に、「障害者の希望や能力、適正を十分に活かし」、その後ですけれど、「障害の特性等に応じて」うんぬんとしているわけですよね。さらに、「はじめに」の最後の段落を読んでみますと、「働き方改革実行計画を踏まえ」と書いてあるわけです。ところが、内容を見てみますと、実際にそうなっていないのではないかと思うのですね。しかも、「はじめに」の終わりの所に、こう書いてあるのですね。「多くの意見が提示された課題等を踏まえて」となっていると思うのですよ。ところが、ここで出てきているのは、研究会で出された意見の一部だけが取り上げられているとしか思えないのです。研究会の議事録や提示された意見書を見れば、そこは明らかになると思うのですけれども、非常に絞り込まれていると思うのです。大きく言えば、精神障害者の職場定着の支援の関係と、高齢者、ないしは長期就労の障害者の取扱いと中小企業者支援ですよ。なぜ、それに絞り込まれたかという経緯を教えていただきたいというのが1点です。
 それから、2点目は、この研究会で在宅就業支援団体への支援ということを言っているのですが、これは例えば在宅就労を念頭に置いた記述ですけれども、ここでいう就業支援団体というのは、どのようなものを意味しているのか。それによって具体的に在宅就労をどう位置付けようとしているのかについて、この研究会でどういう議論があったのかを教えていただきたいのが2点目です。
 3点目は、就業支援体制の機能強化というくだりがあるけれども、その中身が今一よく分からないのです。例えば、ジョブコーチなどはどのようにここでは位置付けられたのか、どういう議論があったのかについて教えていただきたい。取り分け、障害の特性ということが今回非常に強調されているわけですから、障害の種別に対応したジョブコーチの配置について、どういう議論をされたのかについて教えていただきたい。
 最後ですけれども、法定雇用率の今後の在り方の所で、これまでの算定方式を基礎としながら、それをそのままではなく、労使、あるいは関係者、当事者の意見を踏まえて決めるとなっているのは、非常に違和感があるのです。なぜなら、これまで算定方式に基づいて算出された法定雇用率がそのまま実行されたかといったら、現に直前のところでもそうではなかったわけですよね。しかも、今回こういうことを入れたというのは、算定方式に問題があるというのなら、このくだりは分かるのですけれど、算定方式が合理的であるならば、その算定方式を、いわば圧縮に結び付けようとするかのような、こういうくだりを入れるというのは、何かそこに意図が感じられて仕方がないわけです。なぜ、こういうことになったのかについても御説明いただきたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 それでは、4点御質問がございました。事務局からお願いいたします。
○松下障害者雇用対策課長 事務局です。本研究会の内容について、最初の質問について、どういう経緯でこういう柱といいますか、内容の取りまとめになったのかというところです。これについては、先ほど申し上げましたとおりですが、この研究会の開催については、昨年の9月から今年の7月まで15回開催させていただく中で、それぞれ各関係団体等からのヒアリングも通じまして、それぞれ委員の参集者の皆様方からの御意見を踏まえて、その中でこうした今回の研究会の報告書が取りまとめられたというところです。
 先ほど竹下委員からもありましたように、障害の関係、雇用の質の向上に向けた取組や中小企業に対する障害者雇用の推進、また、安心して安定的に働ける環境整備の在り方といった大きな柱が、そうした議論の中で取りまとめられ、柱として立てられたという整理になっているものと認識をしております。そうした中で、いろいろな障害の種別ごとに対応した支援といったものも、こうした横串的な柱の中、それぞれの項目の中で、支援の在り方、今後の対応についても含みながら、整理をされてきているものと認識をしているところです。
 2点目の、在宅就業者支援制度のところですが、この在宅就業者支援制度については、現在におきましてはなかなか利用が進んでいないところで、非雇用という形での障害のある方においての対応支援といった形になっておりまして、事業主の方がその障害のある方に仕事を発注するに当たりまして、発注する間に団体が入って、その団体に事業主、会社側から発注をして、それで団体からさらに障害のある方に仕事がいくという仕組みになっております。これは特に施設外、企業の会社の中で働くような取組を行っている発注する企業については、一般雇用につながる可能性も高い、そうしたことも見受けられます。そうしたことも含めて、そういう団体に対する支援とかも含めて先ほど申し上げました事業主の方の活用促進というところで調整金の上乗せというところでインセンティブを与えていきたいと。そうすることによりましての障害者雇用の促進、就業の促進を図っていきたいという内容になっていることを御理解いただければと思っております。
 3点目のジョブコーチについては、恐縮ですが、資料1-3の24ページを御覧いただきたいと思います。上から2つ目の○の所です。少し長い文章になっておりますが、「このため」という所で、独立行政法人の中でノウハウを持っている障害者雇用に関する知見のある方、専門の方々の情報を蓄積して、障害者雇用の経験の少ない企業等に対して紹介・派遣するというネットワーク事業が行われているところですが、こうした中で、そこの中段の所にも書いてありますが、大企業や特例子会社等で障害者雇用の豊富な経験を有する企業在籍型ジョブコーチの方に、そうしたネットワークの中に入っていただきまして、障害者雇用の経験が少ない、ノウハウが少ない企業等に対してそういうジョブコーチの紹介をするとか、そうしたジョブコーチの活用等も含めて、記載をされているところです。こうした部分があるということを御紹介させていただきたいと思っております。
 最後4点目は、雇用率についてです。先ほど算定方式に基づいて、それを直ちにということで御説明を申し上げましたが、直ちにそれを適用するということではなくて、関係者の議論を踏まえてという形で話もさせていただいております。この研究会の中でいろいろな御意見が出たものと承知をしておりますが、特に現行でもそうですが、一律に法定雇用率の算定方式で出た数値を適用するのではなくて、例えば激変緩和というか、暫定的にその雇用率を適用していくと。そうした在り方等々も研究会の報告の中にも提言がされています。そうしたことも含めながら、今後の雇用率制度の取扱い、対応、在り方について検討を深めるべきだといった提言がされていると理解をしているところです。以上です。もし不足がありましたら、我々のほうでも説明等々をさせていただきたいと思っております。以上です。
○阿部分科会長 では、松為委員どうぞ。
○松為委員 通信大学の松為と申します。先ほどの話で、まず全体的に非常に網羅された報告書という印象は受けますけれども、問題は、これをどういう格好で制度の中に活かしていくか、その具体的な日程、計画を知りたいということが1点目です。
 2点目は、確かにおっしゃるように、具体的な法制度に関しての改革は非常に難しい、いろいろ議論しなければならないことがありますが、中身を見てみますと、法制度以外のところ、つまり制度改革までいかない段階でもすぐにできるものがあるという印象です。
 特にⅢの多様な働き方のニーズのマル3で、地域における就労支援体制の機能強化というのは、これは実はかつて労働者の在り方検討会で5年、10年前からさんざん議論されてきた話です。特に、ジョブコーチを含めて障害者就業・生活支援センターの在り方についてです。でも、そのときの議論というのは、もちろん提言はたくさんされているのですけれども、実際に予算措置が出てきていないのです。それと同じことが今、議論として繰り返されておりますけれども、少なくとも5年以上前に同じ議論が繰り返されているのでしたら、これをどのように、予算措置を含めて進展させていくか、それにつきましては是非とも強固に進めていっていただきたいと思います。障害者就業・生活支援センターに関しては、昔から企業における定着を含めて、企業にとって一番重要な機能というのはさんざん言われてきたのです。でも、肝心なのは、障害者就業・生活支援センター自身の人材や体制がそれに十分応えきれていない。ですから、こういった報告書に書かれましても、実際の形がうまく出てこないことがあります。
 制度という関係にしなくても、実は対応できるもの、そしてこれは特に障害者就業・生活支援センターに関しては前々からさんざん企業における定着を含めて言われてきた話ですから、制度的な問題とは違い、この報告書をもとに、できるだけ早い段階で実行に移せるような、そういうことをお願いしたいと思います。以上です。 
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、御質問がありましたので、事務局からお願いします。
○松下障害者雇用対策課長 事務局です。この網羅されている中身の今後の計画、対応方針ということかと思います。先ほども少し御説明申し上げた、この研究会の報告の中身につきましては、本日、委員の先生方、皆様方から御意見等々賜りまして、しっかりとそうした意見を踏まえた対応について、分科会長とも御相談しながら、取扱い、対応について進め、検討させていただきたいと思っております。
 また、この中身、提言されている内容につきましては、松為委員が言われたように、制度改正がそもそも必要なものと、予算措置ですぐ対応できるもの等々ございます。そうした、すぐできるものにつきましては、また本日の意見も頂きながら、我々として予算対応といったことも検討を深めながら、できる限りこの内容に沿った、また本日の意見を踏まえた対応といったものも進めさせていただきたいと思っておりますし、また、制度改正につきましては、これについても大きな取組になってまいりますので、そうした内容についてもしっかりと御議論を踏まえて検討を深めていきたいと思っているところです。以上です。
○阿部分科会長 ほかにいかがですか。では、阿部委員どうぞ。
○阿部委員 日本身体障害者団体連合会の阿部です。この報告書の中でテレワークについて言及していることは、重度の身体障害がある場合や難病の場合、とても大事なことだと思います。そして、このICTの進展ということをしっかりと踏まえながら、これまで仕事とは距離があったと思われた方々に、就労可能であるということでとても大事なことだとお話させていただきながら、また、これを実現するためには、様々な課題もあろうかと思いますので、好事例をしっかりと紹介していただく必要があると思います。そして在宅で生活しているときには、居宅介護のサービスも受けながら、ある意味、吸引や排泄の介護を受けながら在宅生活をしている場合においても、このようなテレワークでの仕事ができるのだろうとは思いながら、その辺のところについて、サービス提供体制が違うところ、福祉の領域と就労の領域のサービスの連携が求められます。その辺もきちんとクリアできているのではないのかなと思いながら、その確認も含めた質問と、このテレワークには大きく期待が寄せられているという意見を申し上げさせていただきます。以上です。
○阿部分科会長 事務局から何かありますか。
○松下障害者雇用対策課長 事務局です。今、阿部委員より頂いた意見、しっかりと我々として受け止めて対応していきたいと思っております。テレワークにつきましては、障害のある方が、特に通勤等々で、実際の職場に行かなくても働くことができるといった部分等も含めて、大きなメリットがある取組、仕組みだと思っております。今後につきましては、現在も好事例を収集し、周知も進めておりますので、そうした取組を引き続き進めながら、先ほど言いましたように、マニュアル等々の活用といったことも本研究会の報告書の中で提言されており、そうした取組等も、今後の我々行政サイドとしての対応としてしっかり考えていきたいと思っております。
 またもう1点、自宅で働く際の居宅介護の話がありました。ここの部分については、介護保険等々とのすみ分けといったところもあるかと思っております。厚生労働省の中でも、また、厚生サイドでも検討がされていると聞いておりますので、そうしたところの動きも見ながら、今御指摘があった点についても検討を深めていきたいと思っております。以上です。
○阿部分科会長 ほかにありますでしょうか。それでは、岡本委員、小出委員、石田委員、桑原委員の順で。では岡本委員どうぞ。
○岡本委員 ありがとうございます。サービス連合の岡本です。ほかの委員の方からもご意見が出ていますけれども、この研究会の報告の中身について、法整備が必要なものなのか、予算措置で対応できることなのか、また、もう少し検討が必要なものなのかといったような、少なくともここに出ているものに関してのきちんとした整理・分類が必要だろうと思っています。そのことについて、今後この分科会にきちんと提示していただくお考えがあるかどうかということをうかがいたい。それと、来年度の予算の審査の時期にそろそろなっていると思いますが、この報告書に記載された制度の中で、先ほど松為委員がおっしゃったように、すぐに予算措置で対応できるものがあって、既に対応に向けて動いているものがあれば、今そのことについては動いていますというようなことを、お話をいただけると有り難いと思います。
○阿部分科会長 では事務局、お願いします。
○松下障害者雇用対策課長 事務局です。今、御指摘がありました点、特に予算措置の関係で御質問がありました。この提言されている内容につきましては、予算で対応できるもの等々ございます。8月の下旬ということで、我々役所からしますと、概算要求に向けた取りまとめ最終段階にきているといったところです。そうした中で、我々として、本研究会の中で提言されている予算措置の部分については、可能な限り対応を進めさせていただきたいと思っております。それについて、また後ほど、概算要求が提示されて決まった段階におきましては、その後の分科会において報告等々もさせていただければと思っているところです。以上です。
○阿部分科会長 小出委員お願いします。
○小出委員 育成会の小出です。法定雇用率が今度2.2%になり、平成33年の前には2.3%と、この雇用率が変わる切れ目の時点で同じような現象が起こりますけれども、雇用率を達成するためという目的で障害者を雇う、そういうことに力を入れている所もあり、今回の研究会の趣旨でもありました本来働けるようなということ、本来の仕事という、中小企業を含めて働き方について取り組んでいる所と、法定雇用率を達成すればいいという所との2つに分かれているということが色濃く出る時期だと思います。本当に戦力として障害者を雇用するということは、企業の中の働き方そのものを変えていくという意味で非常に大きなことがありますけれども、今回のように0.2%の数値がアップされたことは非常に大きなことです。例えば、私ども地元である2万人の従業員がいる所ですと、0.2%だけでも40人雇わないといけないというところ、そうすると職場の中が障害のある人が多くなることで、福祉的な支援がその中でも必要になってくるということがありまして、今回の場合の研究会の中で、福祉サービスと雇用という、その制度のお互いの兼ね合いというか、支援の融通というか、そういう議論はこの中にされているのか、そういうところをもう少しお聞きしたいと思います。
○阿部分科会長 事務局お願いします。
○松下障害者雇用対策課長 事務局です。今御指摘のあった点について、一般雇用に就かれていた方が、その後に、例えば福祉的な就労に結び付く、移られるといった議論等々の話かと思っております。これにつきましては、先ほど少し冒頭の説明の際にも申し上げた部分になりますけれども、これは特に中高年齢の方で、体力面や能力面も含め、そういう部分が低減していく中で長く働き続けられる取組として、一般雇用でそうした働き方をしていながら、その後の福祉的な就労に移られる、就労継続支援のA型であったり、場合によってはB型に移るということが、一般雇用から福祉的な働き方、あるいはその福祉的な働き方から一般雇用に移るといった、そういう連動、流れといったものがスムーズにできるような仕組みの創設、仕組みを作っていくべきだという御議論がこの研究会の中でもなされていたということを承知しております。御紹介をさせていただきました。
○小出委員 私が言ったのは、今回、報酬改定、それから3年後の見直しの中で、企業の中に施設から移行した場合に、就労定着支援という福祉が手を差し伸べるという制度を新しくつくりました。しかしながら、それは限定された制度です。そうではなくて、この就労側、受ける側、障害者を雇用する側において、これだけ多くの障害者を雇うことになると、そういう福祉的な支援が色濃くなってくるのではないかと。それについて幾つかの点では述べられているところはありますけれども、具体的な制度として、こういう制度を作りながら、福祉サービスの法律とこちらの労働の法律が融合して一体になって障害者の就労を促進していく、そういう議論はあったのかということです。
○阿部分科会長 それでは私から。ただいまの小出委員からの御質問ですけれども、福祉のほうで行われている就労支援サービスはまだこれから始まるというか、今後本格的に始まっていくのだろうと思うのです。それがどのように進んでいくのかはまだ実態として見えてなかったというのが研究会でありましたので、余りその辺り、就労支援と雇用の場面での接続というようなことは、研究会では余り議論はされなかったかと思っております。ただ、これから、そういった福祉でやられている就労支援サービスと、雇用側で安定的な雇用に結び付けていくというところを、どうやって接続していくかという議論は非常に大事な議論になるかと思いますので、それについては、この分科会であるのか、あるいはまた別途、別な所で議論をするのかは考えていきたいと思います。ありがとうございました。
○小出委員 ありがとうございました。
○阿部分科会長 それでは、石田委員、小原委員の順番です。
○石田委員 石田でございます。今回この報告書を拝見して、非常に我々が意見を出した所が網羅されていると考えますが、具体的にどう取り組むのかはこれからの課題であると思います。その中で、中小企業の代表という形で参加しておりますので、中小企業の観点で発言をします。「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書の概要マル3」では「障害者雇用ゼロ企業のほぼ全てが中小企業」と記載されており、大変頭が痛い思いをしております。阿部分科会長のご発言の中で、社会福祉的な観点から障害者を採用するのか、もしくは戦力として採用するのかという点がありましたけれども、中小企業の場合は法定雇用率を達成するには45.5人に1人となります。そうしますと、社会福祉、企業戦略の観点から障害者雇用に取り組むことができると思います。様々なやり方はあると思います。ただ、現状において雇用ゼロ企業の全てが中小企業ということを考えると、どういう理由があり、なぜできていないのかという分析がもう少し必要と考えます。
 例えば障害者雇用の定着率は、1年間で、精神障害の方が49.3%、発達障害の方は71.5%と記載があります。一方で、健常者の定着率を見ると中学卒業生で約6割というデータがあります。また、高校卒業者と大学卒業者で約6割、約8割です。したがって、健常者であっても非常に継続雇用が難しい時代になっていることが分かります。そうした中で特に中小企業は、おそらく中学卒業者の方の就職率が高いと思います。よって、健常者ですら定着率が低いのに、障害者の方を採用して本当にやっていけるのかと考えます。中小企業は、障害者と健常者の定着について二重に影響を受けます。この点についていろいろな対応策が必要だと思います。
 以上より、意見として申し上げたいのは、まず、事業主が障害者の採用について、気持ちと考えを持っていただくことです。その中の1つとして、「企業」は社会の中で今の時代には立派な役割を果たしており、障害者の一人ぐらいは一緒に働きましょうという社会的なコンセスサスが絶対に必要だと思います。
 二点目は、中小企業において障害者を採用し、専門の方が付いてフォローするというのはなかなかできません。やはり日常の仕事の中に就労いただくことになると思います。しかし、一般的には健常者は社内において障害者と接触する機会が少ないので、どのようにフォローすればよいのか分からないという方が多くいると思います。そこで、文京区の事例ですが、障害者と一緒に働く健常者を研修するという制度があります。こうした障害者雇用促進の取り組みをもっと中小企業に広げていって、啓発していく対策が重要と考えます。現状、常用労働者100人以下の中小企業の障害者雇用が比較的停滞しており、障害者雇用ゼロ企業のほぼ全てが中小企業の中、50人にしても何の変化もないと考えます。そうすると単に納付金を徴収するだけしか改正する意味がありません。前段で申し上げました取組方針に転換していくことをお願いしたいと思います。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、小原委員お願いします。
○小原委員 大阪大学の小原です。今回のこの報告書を作るのに当たって、新たに調査を行ったのか、あるいはこういうのが必要で、ここが足りないからこういう調査を行おうとしているのか、というような議論があったのか。参考資料を見させていただくと、いわゆる労働力調査であったりとか、障害者雇用の実態調査とか、政府が取っている調査と別個に研究会で何かされているものが、深掘りするような調査が行われているのであれば、何かそういうのに基づいて、あるいはそれがどういう範囲で行われたかというのに基づいて書いています、あるいは議論していますという記述があってもよかったかなと。あるいは、これからするのであれば、その記述があってもよかったかなと思っています。
 なぜそう申し上げたかというと、昨今、統計データに基づいたというようなことが言われるのですが、そういう意味で言ったわけではなくて、いわゆる障害者の雇用をしましょうと、日本全体で見たら、その人数という意味では多くないところですので、統計データで平均的なものを挙げることに対しては抵抗があるところもたくさんあると思うのです。ですけれども、先ほどの石田委員からもあったような、中小企業が平均的になぜ雇えないのかといった議論とか、平均で共通項を吸い出すのも大事なところだと思いますので、統計が乗りにくい分野であっても平均的に何か見えるところがあるのであれば、それは抽出したほうがいいのかなと思います。
 もう1つ理由があって、私は大阪でやっているのですが、大阪は中小企業が多いので、調査すると中小企業がたくさん網に掛かってくるわけです。そこで障害者雇用に関する調査をしているのですが、大きく調査をしてしまうと、例えば障害者雇用をしている中小企業に、難しい点はどういうところですかと、これは簡単なことで、聞き出そうと思えば聞き出せるわけですけれども、実際にやらなければいけないのは、雇っていない企業に、なぜ雇えないのかというようなことを吸い上げないといけないと思うのです。ではそれを国全体でやろうとすると大変なことで、大阪府の中で例えば我々が大体いつも調査にかかってくるような人たちを対象にやると結構いろいろな興味深い回答がたくさん上がってくるのですが、国がやってできることと、地域でやって、地域の話もありましたけれども、いろいろな形で補完しあいながらやらないと、もう調査するのも手一杯、時間も手一杯だと思うので、お互い補完できたらいいのかなと。国が今何をしているのかがちょっと私たちも知らずに投げてしまったら、国からも来ましたという回答も今回あり、両方に答えないといけないのですかというのもありました。なので、どのように何をしようとしていらっしゃるのかというような話とかがどこかに出ていたらもっとよかったかなという、その2点です。
○阿部分科会長 何か事務局からありますか。
○松下障害者雇用対策課長 事務局です。調査の関係、特に御指摘、御意見を頂いた点ですが、国のいろいろな雇用の関係の調査があります。直近では、5年ごとの調査になりますけれども、障害者の実態調査といったものを行っており、前回は平成25年で今回が平成30年で、ちょうど今、実態調査の集計、取りまとめも行っているところです。いろいろ先生から、委員から御指摘頂いた点を含めて、こういう実態の調査、また、それぞれのきめ細かな調査だと地域においてということだと思うのですが、そういういろいろな調査を我々としてもしっかりと活用し、その使い方、また別のところで行われている調査についてもしっかりと検討、研究もしながら、こうした研究会、今後の分科会の在り方の検討の中で活用させていただきたいと思います。御指摘を頂いて、また検討を深めていきたいと思っております。ありがとうございました。
○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。遠藤委員、そのあと松為委員にお願いします。
○遠藤委員 経団連の遠藤と申します。まず、この研究会の報告書の位置付けについての議論が冒頭あったと思います。研究会報告書の中に幾つも御指摘されている障害者雇用の課題があります。現状、課題がありながら、その課題の改善に向けた施策の議論をしないという、その選択肢はないと思っていますので、審議会として、この研究会の報告書を踏まえて議論をするのは絶対必要なことであると思います。
 では、具体的にどう進めていくのかについては、各委員から御指摘がありましたように、予算措置でまかなうものについては最優先していく。そして制度改正、法律改正に委ねなければならないものについては、関係者間の合意形成を図った上で対応していく。その過程で、やはり大事なデータはどうなのかは当然問われて然るべきことですから、そういうものも抱き合わせながら進めていくのが、この審議会の在り方ではないかと思います。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、松為委員どうぞ。
○松為委員 通信大学の松為でございます。これは本省に対する要望という形で聞いていただけるといいと思います。前回の法改正の審議以来、そして今回のその後の在り方検討会第2次、そして今回の報告書、この全体の流れをずうっと数年見ていますと、はっきり言いまして、実はもはや雇用だけの問題ではなくなってきているとすごく実感いたします。最近の例えばICTの問題にしても、実は私は、働くヘルパーで実際に難病の遠隔操作の所の調査をしています。例えば難病の場合はICTをやるときには地元の生活支援センターとかのバックアップがない限りは成り立たない世界です。また精神障害の人たちにしましても、医療関係者のバックアップがないと成り立たない。そして普通例えば通勤が困難な人たちで言うと、福祉サービスなどでいろいろな通勤支援とかありますよね。つまりもはや我々は労働の問題ということを労働の問題だけで考えていくわけにはいかない時期になってきていると思います。
 そういった意味では、分科会で難しいのでしたら、せめて研究会レベルでいいですから、就労定着、移行それを含めた格好で、医療と福祉そして労働側、三者合同になって全体の意見を打ち合わせていくような、そして具体的な政策、対策を作っていけるような、そうした段階の研究会を是非ともこの後、中核的に作っていかないと、このままですと、労働は労働で頑張っていますと、先ほどの例えば定着支援事業についても、私の個人的考えからしますと、本来なら障害者就業・生活支援センターがやるべき話だという気もします。それがいつの間にか分からないままに福祉サービス、しかも個人的な福祉サービスの枠組みで入ってきています。そうすると完全にその政策が齟齬を来してきます。現場では今、例えば障害者就業・生活支援センターが定着支援するのですかと、定着支援事業が定着支援をするのですか、定着支援事業3年が終わった後どこが引き受けるのですかと。既にそうした齟齬を来しております。そういう意味では、特に企業にとってこれから先一番大事な時期においては、特に移行・定着については、もはや企業だけの問題、労働だけの問題ではカバーできないということを十分御認識いただきまして、今後はそうした福祉、医療、そして労働、三者合同で具体的に在り方を見ていけるような検討会を是非とも作っていただきたいと思います。これは要望でございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。石田委員どうぞ。
○石田委員 石田でございます。企業において学生の研修や会社見学等を受けることがあります。そのときに、例えば自社の例では、小学校40何校が来るのですが、障害者と一緒に働いている、あるいは障害者が働く場所を見せてくださいという質問が出る学校は1割ぐらいしかありません。大学生も企業に研修に来ますが障害者に関する質問は、ほぼありません。企業研修・見学の際は、障害者雇用に関する質問が企業に対してなされるような障害者雇用を意識する取組をもっと積極的に行ってほしいと思います。私どもでは、訪問学校には全部説明するようにさせております。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。その他、本件について御質問、御意見はありますか。長谷川委員お願いします。
○長谷川委員 福島大学の長谷川と申します。研究会報告書の位置付け等について、いろいろな方々から御意見が出されているところですが、研究会のメンバーの1人であった者として、少し意見を言わせていただきたいと思います。何人かの委員の先生から御指摘がありましたが、様々なヒアリングの中でのご意見や、研究会に出席していた委員からの意見がたくさんあった中で、確かにこの研究会報告書として取りまとめられているのはその一部だと私も思います。ただ、非常に膨大な量の情報量、意見があり、また、その意見も必ずしも一致するものではないといった中で、何とかこの報告書の形にまとめていきたいという思いは、研究会のメンバーは皆共通していたのかなと思います。ですから、出された意見が全て反映されていないからこの報告書は駄目なのではないかというようには捉えていただきたくないなと思います。
 もちろんいろいろな団体等を代表して来られていらっしゃる方々ですので、そこでの自分たちの意見が反映されていない、その部分についてはこの分科会で更に検討したいというのはそのとおりで、それは進めていくべきだとは思いますけれども、まずはこの研究会報告書に書かれた内容を前提に議論をしていっていただくのがよいのかなと思っております。
 あと、データ等が出されたかどうかという御意見もありましたけれども、今日配られている参考資料がその研究会で出された資料のごく一部だと思っていて、ほかにも様々なデータが出されておりましたし、研究会報告書のために調べられたデータもあったかと思っております。ですので、一応、そうした細かいデータも踏まえて研究会報告書ができていることもお伝えしておきたいと思いました。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかになければ、本件につきましては、皆様からの御意見を尊重しまして、今後、事務局と私の間で相談しながら、今後の取扱いについて考えていきたいと思います。
 また、これにつきましては、次回以降の分科会でも皆さんから御意見を頂きながら、進められるものは進めていきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 次の議題に移ります。次は、「障害者雇用対策の政策目標について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○松下障害者雇用対策課長 事務局でございます。今、分科会長から御紹介がありました議題の2つ目、「障害者雇用対策の政策目標について」です。資料2-1から資料2-3を活用して説明いたします。まず、資料2-1は、昨年度の目標に対する昨年度の実績を示しているペーパーです。昨年度、2017年度の政策目標として、大きく3つ目標が示されているところです。1つ目の目標ですが、ハローワークにおける障害者の就職件数についてです。昨年度の目標については、前年度の就職件数は9万3,229件ありますが、その件数以上ということで目標が立てられているところです。実績は9万7,814件ということで、目標をクリアしているという数字が出ているところです。その下の所ですが、少し分析をしております。この目標を達成したことについては、企業における障害者雇用への理解が進んでいること、就職を希望している障害者が増加していること、また関係機関との連携をはじめとした障害者支援策が効果を上げていることが要因として考えられるという分析をしております。
 2つ目の目標について、障害者の雇用率達成企業割合についてです。目標については、昨年度46.5%以上の企業達成割合ということで、目標を立てていたところです。昨年度の実績ですが、これは昨年度の実績を今年の6月1日時点での障害者雇用状況報告の結果に、その達成企業は出てきますので、その結果の出てきた数字を基に評価しているところです。今年の6月1日時点での調査については、現在集計を行っているところで、まだ数字が出ておりません。これについては、例年、年末近くになる見込みですので、その取りまとめ集計が出た際には、またこの分科会の中で報告いたします。
 3つ目の目標です。精神障害者雇用トータルサポーターの相談支援を終了した者のうち、就職に向けた次の段階へ移行した者の割合についてという目標です。この精神障害者の雇用トータルサポーターについては、ハローワークに配置され、支援を行っています。精神障害者に対してコンサルをやったりとか、事業主に対して支援を行う、そうした業務を担っているものです。そのトータルサポーターが支援を行って、支援が終了した後の精神障害のある方の次の段階、例えば就職に移ったりとか、また職業訓練に行ったり、そうした次の段階へ移行した方の割合を目標として立てているところです。昨年度の目標は、サポーターが相談支援を終了したうちの70%が次の移行という形で目標を立てたところです。その実績ですが、73.9%と、目標を上回っております。この分析については、精神障害者雇用トータルサポーターに対して、目標及びその進捗を意識した業務実施を指示するとともに、経験交流ということで、お互いのサポーター職員の中のいろいろなノウハウ等々の交流をする場の開催や、そうしたことを通じながらノウハウの共有を進めることによって、一定の質の高い取組ができた結果であるという分析をしているところです。以上、昨年度の目標に対する実績です。
 もう1点、お諮りしたい点があります。資料2-3の1枚紙についてです。先ほどの資料が昨年度、2017年の目標について説明いたしました。資料2-3は今年度、2018年度の目標の内容について、お諮りしたいということです。もう既に年度が始まっておりますが、この時期にお諮りさせていただくことにしたいと思っております。目標については、項目は先ほど3つ説明した点について、変更はないような形にしたいということで、ハローワークにおける障害者の就職件数が1点目です。今年度の目標については、昨年度の目標と同様に、前年度、2017年度の就職件数結果以上を目標ということで立てたいと思っているところです。
 2つ目の障害者の雇用率達成企業割合については、今年度の目標として、前年度の実績と比較して1.5ポイント以上の上昇としたいと思っております。右側のほうに2017年度の年度目標ということで46.5%としております。これについては、先ほど説明を省略しましたが、最近の雇用率の達成企業割合が50%まで来ていたところですが、御承知のとおり、今年の4月から法定雇用率が2.0%から2.2%に上昇したことを踏まえて、過去の雇用率が上がったときの例を踏まえて、そのときの数値の動きを勘案して46.5%ということで、昨年の目標を立てたところです。今年度の目標になりますが、雇用率は2.2%で動かない中で、これもこれまでの目標の立て方と同じような形になりますが、前年度の実績と比較して1.5ポイント上昇という形で目標を立てたいところです。
 3つ目の精神障害者のトータルサポーターの移行割合の目標です。73.4%ということで、この考え方については、これまでの考え方と同様ですが、過去3年間の移行割合の数値の平均を出して、それをその年度の目標ということで立てているところです。今回もそのような取扱いの中で73.4%ということで、数値が昨年度と比べて3%以上上がっておりますが、目標を立ててクリアを図っていきたいということです。事務局からは以上です。
○阿部分科会長 御質問、御意見がありましたら御発言いただきたいと思いますが、先ほどと同様、挙手をしていただいて、名前を名乗ってから御発言いただきたいと思います。どなたでも結構です。
○内田委員 労働側の内田です。障害者雇用率に関してですが、2018年度目標案では、障害者の雇用率達成の企業の割合が目標として設定されております。達成企業の割合を把握し、その割合を向上させることは大変重要であると思っております。加えて、障害者雇用率の全体的な底上げを考えた場合、障害者を1人も雇用していない障害者雇用ゼロ企業を減らしていくことも、今後、より重要になっていくと考えます。そこで、障害者雇用ゼロ企業に対し、なぜ雇用できていないのかの状況把握や対策や支援を行った上でのことになるかと思いますが、障害者雇用ゼロ企業の割合の減少に着目した目標を追加してはどうかと考えます。御検討いただければと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。竹下委員どうぞ。
○竹下委員 竹下です。この目標設定そのものに異論があるわけではありませんが、少し内容に不十分な点があるのではないかと認識しています。実績のところを見ていただければ分かるように、身体障害者のみが前年度に比較してもマイナス0.7%という状況で、これを5年、10年単位で見ると、それがもっと如実に表れるわけで、身体障害者の場合には毎年のハローワークによる就職者数はほぼ2万人台で推移していて、それに対する精神障害者は何倍という形で伸びてきている。その精神障害者が伸びてきたこと自身は非常に大きな意味を持つかと思っているわけですが、身体障害者に限ってみれば、増加傾向になっていないことの問題点の分析が、この間ずっとできていないと思うのです。このことに是非、目を向けていただきたいと思うわけです。
 それはなぜかと言うと、前段でも申し上げましたが、障害の種別ごとの特徴というか、特性というか、そういうものに対した支援が、ここでは十分に実施されていないことの結果ではないかと思うわけです。とりわけ身体障害者における部位別といいますか、視覚、聴覚、肢体といったような種別ごとでの、部位別での障害に対する特性や支援の在り方というものが、全くと言っては言いすぎなのかもしれませんが、目標の中に入ってきていないことに弱点があるのではないかと思っております。とりわけ視覚障害者の場合には、視力の程度にもよりますし、視覚障害者の個別的なニーズに対する支援を十分に実現する、あるいは雇用促進法、あるいは合理的配慮というのは正に個別性の特徴を持った支援だと思うのですが、そうした合理的配慮の在り方、あるいは内容によっては個別給付についての在り方も検討すべきではないかと思っているわけです。
 もう1点は、この間、雇用分科会でも議論されてきたはずですが、既に方針として決まっている法定除外率の見直しについて、何年も決まっていることが実施されていないと思っていますが、この点が目標から落ちているのは、少し問題ではないかと思っています。
 最後に、当然こういう実態調査は、6・1調査から出てくる数字に基づいて次の目標を立てているかと思うのですが、この6・1調査の内容が十分なのかどうかということだろうと思うのです。この後で時間があれば議論をすると分科会長がおっしゃっていましたが、今回の各省庁の水増し、ないしは不適切な申告、これは中央省庁にとどまらず、報道によると山形県だ、愛媛県だと、次々後出しじゃんけんのごとく出てくるわけですから、どこまで実態と報告されたものとのギャップが出るのかと末恐ろしいものを感じるわけです。
 それを考えると、なぜ6・1報告で水増し、ないしは不適切な報告が出てきたのかという分析が必要なのだろうと思うのです。その中で、是非、意識していただきたいのは、障害の種別は大枠で精神、知的、身体という形でしか出てきていないわけですが、それをより具体性というか、部位別の障害別の6・1調査が実施されれば、こういう水増しというものは、言葉は悪いかもしれませんが、やりにくくなるはずですよね。しかも、実態がより見えるようになるはずですから、数字に基づいた政策も含めて、6・1調査の項目についても十分に検討いただきたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。事務局から何かコメントはありますか。
○松下障害者雇用対策課長 事務局でございます。まず、内田委員からゼロ企業に対する目標をというお話があったかと思います。この件については、我々も中小企業において障害者雇用ゼロ企業が多数あることについては、問題意識を持って、その対応策についてはしっかりと取り組んでいかなければいけないという認識を十分持ってやっていきたいと思っているところです。
 他方で、そうした中で今回お諮りしている目標については、これはこれでしっかりとこれまでも目標という形で取組をさせていただいておりますし、それぞれの項目は大変重要な項目でもあります。これはこれでしっかりと進めて、今年度の目標も先ほど説明した形で御了解いただければと思っているところですが、併せて今申し上げたゼロ企業に対する取組といったことについても、今後の目標の在り方も含めて、我々としてその対応策、対策も、しっかり検討しながら、今後の検討課題ということで対応させていただければと思っているところです。
 また、竹下委員からお話がありました、まず身体障害者の話です。その中のいろいろなニーズだったり、実態の把握といったところの問題意識、具体的な部位別等々を含めた御指摘があったものと思っております。そうしたところについても、我々としてもしっかりと御意見も頂きながら、また今取り組んでいる調査もあります。これは視覚障害者に対する実態調査、あるいは視覚障害者の雇用のモデル事例といいますか、そうしたモデル事例の把握について、昨年度と今年度の2年間にかけて、そうした調査、研究、実態調査も行っております。こうした調査が取りまとめされた際には、また何らかの形で報告もさせていただければなと思っているところです。
 また、除外率の話もありました。そうした部分の御意見は、研究会の中でもいろいろお話もあったと聞いており、承知をしております。そうした除外率の取扱いについても、法律では廃止をするという形の中で、現在、段階的に引下げが行われているところになっております。こうした除外率の在り方、対応についても、御意見を頂いたことも踏まえて、我々としてもしっかりと検討していかなければいけないと思っているところです。
 また、6・1調査の話がありました。冒頭、私のほうから今回いろいろ話が出ております国の雇用率の状況について、説明もさせていただきました。現段階は、先ほど申し上げましたが、その状況を国の各行政機関に対して再点検をさせていただいておりますので、その中身、状況をしっかりと精査し、取りまとめをした上で公表して、その公表の内容に応じて、また然るべき対応を考えていきたいと思っているところです。以上です。
○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○佐保委員 労働側、自治労の佐保です。よろしくお願いします。私のほうからは精神障害者の割合について、意見というか、お話をさせていただきたいと思います。障害者雇用対策の目標として、これまで雇用率や就職件数等、量的な目標を設定し、これに基づいて一定の成果もあったものと私のほうでは理解をしております。今般、4月から精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加える等の措置や、精神障害者の短時間労働者の雇用率のカウントに特例措置が加えられたことを勘案すれば、雇用している精神障害者の人数や職場定着率などについても、新たな目標として検討してはいかがかと思いますので、ご検討よろしくお願いします。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。本條委員どうぞ。
○本條委員 全国精神保健福祉会連合会の本條でございます。6・1調査については、この後、時間を取って議論するということですので、1点だけ、それに関する質問ですので、教えていただきたいと思います。従来6・1で、もう既に報告があったものを集計し、まとめて結果は年末近くになるわけですが、中央省庁のみならず、地方行政においても違った数値になっているわけですから、それをまだ再精査していないところもあるかと思いますので、これがいつ頃に、従来どおり12月頃には結果が出るのかどうかということをお聞きしたいと思います。
○阿部分科会長 では、事務局お願いします。
○松下障害者雇用対策課長 事務局でございます。今年の6・1調査の公表の時期ということかとも思います。今年の調査については、既に依頼をして、取りまとめに向けて作業を進めているという状況にはなっているところで、その取りまとめの時期については、今、委員のほうからもお話がありました、通例であれば年末、11月、12月、昨年は12月12日に公表しております。今年度、今年の調査のスケジュール観については、現段階においては特に例年の時期を遅らせるとか、逆に言うと早くということも含めて、例年ベースでしっかりやっていきたいと思っているところです。他方で、また先ほど申し上げたいろいろな国の状況等々も含めて、我々は今、再点検をやっております。そうした国の状況の公表の状況も見ながら、また公表の6・1調査についても、中身がしっかりとしたものが出せるように検討していきたいと考えているところです。以上です。
○本條委員 ありがとうございました。
○阿部分科会長 ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは、本件については委員の皆様から御意見がありましたが、2018年度の目標の案については、項目を追加したらどうかという御意見もありましたが、これは2018年度でもう今走っているところですので、2019年度の目標に向けて皆様から御意見を頂いたものを精査しながら、どのように取り扱っていくかを少し考えさせていただきたいと思いますが、2018年度の目標及び現在の評価2-2については、本分科会としてはこれを了承したいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。では、そのように取扱いさせていただきます。
 その他ということで、冒頭ありました今回の6・1調査について、皆様から御意見があれば御発言をお願いしたいと思います。
○村上委員 連合の村上でございます。先ほど冒頭に分科会長からもありましたが、今回の報道などに接して、こういった報道では水増しとされているので、水増しと言わせていただきますが、水増しの問題について、大変遺憾でございます。中小企業も含めて、何とか障害者雇用を進めていこうとしているところで、企業の皆さんとか、あるいは就労支援の関係者の皆さん、特別支援学校などの関係者の皆さん、また何より障害を持ちながら働いている方、あるいはこれから働こうとしている方やその家族の思いや努力をないがしろにするものではないかと、大変残念に思っております。
 こういった問題に対して、厚生労働省だけで対応できるものではなく、政府全体で取り組んでいただきたいと思っております。国の機関の再調査結果について、今、精査をされているということですが、国だけではなくて地方公共団体についても問題が報じられておりますので、そういったこともきちんと実態把握をしていただきたいと考えております。また、このようなことになった背景、要因も明らかにした上で、今後、こういった問題が起こらないよう、必要であれば本格的な法改正も含めた対策を是非、検討いただきたいと思っております。
 例えば、国で、障害者の方を非常勤ではなく、常勤職員として採用できるようにしていくためには、人事院や財務省が協力して、障害者を採用する枠組みや予算を確保することも必要でしょうし、合理的配慮の提供のための予算の確保も不可欠だと思います。また、今回精査をすれば、多分、未達成となる国や地方公共団体が出てくると思いますが、1人、2人という話ではなくて、恐らく大幅な乖離があるところも出てくるかと思います。公的な機関には納付金制度はないのですが、そういったところに対して、サンクションは何もないのかということであるとか、いつまでにどのようにして法定雇用率を達成していくのかというロードマップのようなものも作成する必要があるのではないかと思います。
 そういったことを指導したり、フォローしたりしていく権限を持った機関でチェックをしていくことが必要だと思っております。国で言えば内閣人事局になるのかもしれませんが、権限を持ったところがきちんと採用していくようにということを指導していくような枠組みを作らないとならないのではないか。この問題は調査の問題だけではなく、いかにして法定雇用率を達成していただくのかということだと思いますので、そういった対策を是非検討いただきたいと思っております。
 そういった一連のことについて御報告いただくことが、この分科会で制度の改正を議論していく前提だと思っておりますので、まずはそちらの対策に専念をしていただきたいと思います。予算措置などについてはどんどん進めていただくことは必要かと思っておりますが、制度改正の議論は少し足踏みしていただいて、まず目の前の対策について、しっかりやっていただきたいということが意見です。以上です。
○遠藤委員 厚労省の事務方としてやるべきことが多くある中で、この審議会では、申し上げているとおり、ただ今、研究会の報告書が出てきたわけですから、この報告書についての議論を深めるということも、同じ土俵でやっていかなければいけないと考えています。例えば、冒頭、竹下委員が4つの質問を最初に言ってくださいました。大変有り難いお話で、本来であれば、みんなでどうやってこれについて考えていこうかという議論をやっていくことが必要なのですが、今日は全体を総括してというので、結果としてスルーになっている箇所もあるかと思います。丁寧な議論をやっていくことが関係者間の合意形成に必要であると思いますので、そういう意味で制度改正、法律改正に向けた議論も、併せて厚労省事務方の皆さんにはお願いしたいと思います。
○竹下委員 竹下です。結論としては、この問題は確かに遠藤委員のおっしゃるとおりだと私も思っていて、ここで議論すべきことではないのかもしれませんが、ここで認識を共通にするような指摘が必要かと思っているのです。それは冒頭に分科会長のほうから、なぜこうなったのかについて、十分に分析していただく、検討していただきたいというお話があったかと思うのですが、この「なぜ」というところの中身だと思うのです。私の理解では「なぜ」というところに2つあって、1つは意図です。なぜこんなことをしなければならなかったのか。なぜこういう曖昧、又は不適切ないしは誤った、そういう数字を水増しを含めてやらざるを得なかったのかというところがあると思うのです。もう1つの「なぜ」は、原因ですね。こういう報告を許してしまう報告のさせ方というのでしょうか、報告の求め方でしょうか。ここに問題はなかったのかということを、きちっと整理していく必要があるかと思っております。
 1点目ですが、意図のところが、民間の人たちというか、民間事業者の人たちは、もしもここで偽りの報告をしたら、それこそ重大な問題が起こるわけですよね。例えば雇用納付金を免れるためにやるとかいうことで、意図的な部分が見えたりすると、それこそが重大な違法の問題として、罰則も含めて出てくるわけですよね。それに対して、役所といいますか、中央省庁であれ、自治体であれ、現に水増し等が起こるというのは、別の意図があるのだろうと思うのです。それは見せかけというか、社会的な責任逃れなのか分かりませんが、そういう「なぜ」というところの意図のところまで、やはりきちっと分析する必要があるのだろうと思っています。
 2点目については、これは先ほど触れたので、もう繰り返しませんが、報道や新聞しか見ておらないので分かりませんが、ガイドラインがうんぬんだの、曖昧な理解しかしていなかっただのというのは、明らかなごまかしの答弁であって、少なくとも障害の種別や障害に対する理解が正しければ、こうした事態は起こらないはずですから、それらが報告書に表れるようにすることが、そうした誤った報告を招かないということになるのではないかと思うので、是非その辺も分析していただきたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。その他、いかがでしょうか。皆様、いろいろと思いはあるかと思います。本日、私も含めて4名から意見が出ましたので、厚生労働省はこれを非常に重く受け止めて、今後の再発防止と原因究明に取り組んでいただきたいと思います。また、それとは別に今後の障害者雇用の進展のために、当分科会としては誠実な議論をしていきたいと思いますので、繰り返しになりますが、委員の皆様には御協力のほどお願いしたいと思います。遠藤委員、あるいは村上委員から、報告書の取扱いについて再度、御意見がありましたが、これについても私と事務局のほうで、しっかりと本日の議論を整理した上で、次回以降の分科会に御提示させていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。ほかに皆様から御発言がありませんようでしたら、事務局から次回以降の日程について、説明があればお願いしたいと思います。
○松下障害者雇用対策課長 事務局でございます。次回の日程については、先ほど阿部分科会長のほうからお話がありました。我々事務局といたしましても、分科会長と御相談の上、次回の日程を皆様に御連絡させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○阿部分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了したいと思います。本日の会議に関する議事録の署名については、労働者代表は岡本委員、使用者代表は佐渡委員、障害者代表は本條委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日は、お忙しい中ありがとうございました。