第6回社会保障審議会年金財政における経済前提に関する専門委員会 議事録

●日時

平成30年7月12日(木)15時00分~16時08分

●場所

全国都市会館 第2会議室(3階)

●出席者

植田 和男(委員長)
小黒 一正(委員)
小野 正昭(委員)
権丈 善一(委員)
駒村 康平(委員)
武田 洋子(委員)
玉木 伸介(委員)
野呂 順一(委員)
山田 篤裕(委員)
佐藤 参事官(内閣府計量分析室)
森審議役(年金積立金管理運用(独):GPIF)
鎌田企画部長(年金積立金管理運用(独):GPIF)

●議題

(1)検討作業班における議論について
(2)その他

●議事録

○植田委員長
それでは、定刻になりましたので、第6回になりますが、「年金財政における経済前提に関する専門委員会」を開催いたします。皆さん、お忙しい中、お暑い中、どうもありがとうございます。
 今日は、小枝委員、吉川委員、米澤委員が御欠席です。
 それから、GPIFの組織改編がありまして、きょうから陣場調査数理室長もオブザーバーとして御出席の予定でしたけれども、所用によりきょうは御欠席ということでございます。
 それでは、議事に入らせていただきます。カメラの方は、ここで退席をお願いします。
 まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○武藤数理課長
数理課長の武藤でございます。私から、資料の確認をさせていただきます。
 資料1「専門委員会での経済前提の設定に関する主な意見の整理(未定稿)」
 資料2-1「今後ご議論いただきたい事項について」
 資料2-2「参考資料」
 資料3「利潤率の変動要因の分析」
 資料4「年金財政における経済前提に関する専門委員会検討作業班の設置について(案)」
 以上になりますが、皆様お手元にございますでしょうか。
○植田委員長
それでは、議題に移りたいと思います。
 きょうは「これまでの主な意見の整理等について」ということで、事務局のほうでこれまでに出ました意見を資料1に整理をしていただきました。本日の議論を踏まえた上で資料1、あるいはそれの改定版を年金部会に中間報告したいと考えています。
 それでは、事務局より御説明をお願いいたします。
○武藤数理課長
本日は、これまでの主な意見の整理等ということで、まずは私から資料1、資料2-1、資料2-2について御説明させていただきます。
 また、以前の専門委員会で御指摘いただきました点に関して、佐藤数理調整管理官より資料3で御説明させていただきます。
 それでは、まず資料1の「専門委員会での経済前提の設定に関する主な意見の整理」についてでございます。これまで5回開催されてきました本専門委員会において、委員の皆様からいただいた主な意見を事務局の責任において整理したものでございます。
 おめくりいただきまして1ページですが、まず「経済モデルについて」、(ア)は全般的な評価についてでございます。3つの御発言が並べてありますが、いずれも本専門委員会の経済モデルはスタンダードなモデルではないかとの御評価をいただいているところです。
 (イ)の1つ目は、前回の財政検証で幅の広い複数の前提を設定した点について、今回も同様に取り入れるのがよいと思うということ。また、残りの2つの点につきましては具体的なパラメーターの設定についてですが、工夫していくとした場合の御視点をいただいているということになります。
 2の「賃金上昇率の設定について」です。これは1点のみですけれども、有識者ヒアリングの際にいただいたコメントで、人口1人当たりの生産性が多くの国では1%程度で収束しており、長期で見たときに実質賃金が1%でふえていくことはベースシナリオとして妥当なのではないかというコメントをいただいております。
次に、3の「運用利回りの設定について」は、まず(ア)で「実質長期金利と金融政策、成長率等との関係について」でございます。
 1つ目の「・」ですけれども、今の長期金利の動向が日銀の金融政策等のアクションから独立しているとは考えられないが、長期的には利潤率やイノベーションなどのリアルなファクターが重要であろうとの御発言がありました。
 2つ目は、有識者ヒアリングの際のコメントですけれども、基本的にGDPの動きでアメリカの10年債の金利は説明できるというものがありました。
 また、3つ目も有識者ヒアリングの際のコメントでございますが、異次元の金融緩和後のマイナス金利と利潤率の関係を考えた場合のことですけれども、資本に分配される所得がマイナスに相当することになりますために、どのように解消を図るかという点について御提案された一つのやり方としては、異次元の量的緩和後のデータを除いて推計する方法があるのではないかというコメントがございました。
 続きまして、(イ)の「長期金利の水準を利潤率と関係させて推計することについて」です。
 1つ目の「・」は、長期金利を過去平均から設定する方法について考えられるのではないか。
 あるいは、2つ目の「・」は長期金利を潜在成長率から設定する方法、これらなどについても考えられるのではないかという御意見がありました。
 3つ目ですが、スタンダードなフレームワークでは、均衡状態では利潤率と成長率が1対1対応しているので、長期金利を利潤率から設定する方法でよいのではないかという御意見がございました。
 続きまして、(ウ)は前回の財政検証時の低成長のケースの運用利回り設定に当たってイールドカーブを用いた推計についてです。
 1つ目は、長期の経済前提が足元の経済指標に引っ張られると現実的ではない前提になるので工夫の余地があるのではないかという御意見です。
 2つ目は、前回の方法は市場がどのように先行きを見ているのかを織り込んで工夫をしており、今回も同様に考慮してはどうかという御意見でした。
 また、(エ)の「その他」は、消費から金利を予測する方法でチェックしていくとよいでしょうでありますとか、2つ目はGPIFのポートフォリオ変更との関係でリスク要因を現状以上に取り込む必要はなく、慎重に決めていけばよいのではないかとの御意見がございました。
 4番が、「物価上昇率の設定について」でございます。ここにあるように2点ございましたが、CPIとGDPデフレーターを議論した際にその調整をすれば違った数値が出てくるのではないかという御意見が1つ目です。
 2つ目につきましては、19世紀のイギリスで起きたことから考えて、つまり何十年もデフレが続くが成長率は高いということがあったことから、正直、物価についてはよくわからないという御意見がございました。
5の「その他」になります。
 (ア)の「経済変動を仮定するケースについて」です。この点につきましては、前回の財政検証時のオプション試算におきましても、マクロ経済スライドによる調整がフルに効いた場合の給付水準の影響を評価するために、一定の経済変動を設けて試算を行っておりましたが、これをさらに工夫していってはどうかという御意見を、ここに挙げているような2点ほどいただいておりました。
 ただ、本日の専門委員会では、むしろここで注に書いてあることに関係して、注に書いてある記述を背景として、後ほどの御議論においてこの点を深掘りしていただきたいと考えておりまして、この点については後ほど資料 2に沿って詳しく御説明させていただきたいと考えております。
最後に(イ)の「その他」ですが、初めの3つは足元10年間に用いる内閣府の中長期試算と長期の前提との接続に関することなどの御意見がございました。
 最後に、【年金部会】と書いてあるところの御意見は、実は当専門委員会における御意見ではありませんが、年金部会において経済前提に関する同じ内容の御発言が2回ほどありましたので、ここで御紹介させていただきたいと思っていることです。
 つまり、本専門委員会の諸外国調査でやったときにも確認したことなのですけれども、諸外国では日本ほど細かい前提の置き方とはなっておりませんので、日本も諸外国並みの過去実績をベースとした設定で十分ではないかというものでございました。
 以上が、資料1でございます。
 続きまして、資料2-1で「今後ご議論いただきたい事項について」という1枚紙がございます。今後、本専門委員会において定量的な議論を行っていただくことになりますが、さらに御議論を深めていただきたい事項として、ここで「■」で見出しをつけておりますように大きく2点ございます。
 1つ目は「経済変動を仮定するケースについて」で、もう一つは「運用利回りの設定方法について」でございます。
 まずは「経済変動を仮定するケースについて」でございますが、資料2-2の参考資料で御説明したいと思います。参考資料の1ページ目をごらんください。平成28年の年金改革法で年金額の改定ルールが見直されまして、平成33年度から賃金改定率がマイナスになったときでも賃金スライドが徹底されるというルールになりましたけれども、この1ページ目はその法律案に対する附帯決議で、もう既に御案内のとおりではございますが、下線部にあるとおり、平成31年の財政検証に向けては景気循環等の影響で新たな年金改定ルールが実際に適用される可能性も踏まえた上で、現実的かつ多様な経済前提のもとで財政検証の準備を進めることとされております。
 下のほうに4行くらい厚労大臣からの答弁もありますが、一時的に賃金上昇率がマイナスになるようなケースも含めて、幅の広い前提設定について本専門委員会を想定して御議論いただくことを考えているということの答弁となっております。
 次の2ページ目は、前回の2014年財政検証のオプション試算で設定した経済変動の仮定です。このときは物価、賃金の伸びが低い年についてはマクロ経済スライドがフルには発動しませんので、その低い状況を仮定して、またその際、仮にマクロ経済スライドをフルに発動させたらどの程度効果があるかを評価するためのものとして、ここに書いてあるような前提を設定したということです。
 青い点線が物価上昇率の平均値、赤い点線が賃金上昇率の平均値で、それを4年周期で変動幅1.2%を仮定してフル発動させると、特に低成長のケースでフル発動の効果が大きいということを確認したということです。
ただし、このときに設定した賃金上昇率の変動では、ごらんのとおり物価と賃金がパラレルに動いておりますので、実質賃金上昇率がプラスの一定値となっているわけですけれども、この設定では賃金スライド徹底ルールの効果を評価するためには不十分だということがあります。
 それはこの後、御説明いたしますけれども、4ページ目をごらんいただきたいのですが、新たな年金改定ルールである賃金スライドの徹底では、賃金と物価の組み合わせのうち、マル4とマル5の領域のルールが見直されたということになります。
 例えば、ここのマル4で確認してみますと、物価が低下しておりまして、賃金がそれを超えて低下するようなケースで、従来のルールでは物価の低下までの年金改定としておりました。つまり、色をつけて矢印で下に書かれているところまでの年金改定としていたということなんですけれども、このルールのままでは足元の所得代替率が上昇することにつながりますので、見直した後は灰色の白抜きの矢印にありますように賃金の低下で年金改定するということを徹底したというところです。
 この改正の効果を計測するためには、ごらんのとおり賃金改定率が一時的にでも名目でもマイナス、実質でもマイナスという状況を仮定する必要がありますが、これが前回のオプション試算における賃金変動の仮定が不十分と申し上げた理由でございます。
 そこで、また追加で5ページ目ですけれども、年金額改定に用いられる具体的な賃金改定率の指標のつくり方がこのページに書かれているということになります。右の列が賃金改定率のつくり方ということになりますけれども、右上の部分から見ていきますと、賃金は毎年、毎年変動するからこそ3年度平均をとっている。つまり、2年度前から4年度前の3年度平均の実質賃金変動率を計算して、前年のCPI変動率を加えて名目の賃金改定率をつくるということになっておりますので、前回のオプション試算のような4年の周期では、生の賃金変動率の変動がここでならされてしまうということになりますので、工夫が必要となってくるということになります。よって、前回のオプション試算よりはもうちょっと長い周期で、より大き目の変動を仮定する必要があります。
 それで、先ほど確定した附帯決議では、景気循環等の影響も考慮するようにということになっておりますので、参考まで7ページでは景気循環の周期についてどういう考え方があるかということで、約50年周期のコンドラチェフのサイクルというものから、約3~4年のキッチン・サイクルまであるという資料を準備させていただいているところでございます。
 資料2-1の1枚紙にお戻りいただきまして、「■」の後半のほう、「運用利回りの設定方法について」があるわけですけれども、これは先ほど資料1で御紹介させていただきました、出ていたうちの3点、1つ目の矢印が「諸外国のように、シンプルに過去実績から設定する方法なども考えられるか」とか、あるいは2点目、「異次元の金融緩和後の長期金利の実績を用いることができるか」、あるいは3点目、「市場における長期債のイールドカーブを用いた推計」について、御議論いただきたい事項として掲載させていただいております。
 私からの説明は、以上です。
○佐藤数理調整管理官
引き続きまして、資料3について私のほうから御説明させていただきたいと思います。
 資料3ですけれども、これは委員より、利潤率についてモデルが過去の部分にどれだけトレースされてきているのかといった御質問がございました。そこで、事務局におきまして利潤率の変化について要因分析を行いまして、モデルで考慮している要素と、また考慮していない要素、それぞれどの程度になっているかを見える化したものであります。
 おめくりいただきまして1ページでありますけれども、これは前回、26年財政検証で用いた、2005年基準のSNAで利潤率の変化を要因分解したものになります。折れ線グラフが利潤率を示しておりまして、実線が2014年度までの実績、点線が前回のケースEの推計値となっております。そして、この変化の要因を3つの要素に分解して棒グラフであらわしています。
 四角囲いの式をごらんいただくとわかるとおりですけれども、利潤率は資本係数と資本分配率、固定資本減耗率という3つの要素で計算されます。したがいまして、この3つの要素の変化によって利潤率が変化するということになります。
 そこで、実績の部分について資本係数の変化による寄与を緑、資本分配率の変化による寄与を紫、固定資本減耗率の変化による寄与を赤というふうに分解して示しているところでございます。
 一方、将来の部分、モデルの推計になりますが、このモデルの推計の部分におきましては資本分配率と固定資本減耗率は固定して設定しております。ですから、この2つの要素というのは変化することなく、したがって利潤率に影響を与えることはないということになりますので、専ら資本係数の変化、緑の部分が利潤率の変化の要因ということになるところであります。
 それで、過去の利潤率の変化の要因を見てみますと、紫の部分の資本分配率と、緑の部分の資本係数の寄与が大きいということがわかるところであります。
 特に、この中で、モデルで考慮しております資本係数の寄与というものを詳しく見ていきますと、バブル経済の1989年からリーマンショックの2008年までは利潤率の低下要因となっておりました。すなわち、資本係数はずっと上昇し続けてきたということであります。2009年以降はちょっと様相が変わっておりまして、プラスの年もマイナスの年もあり、おおむね中立となっているところであります。
 また、将来推計におきましては利潤率が上昇していくと推計されているところでありますが、これは資本係数が低下していくということを要因として、そのように推計されているというところであります。
 次の2ページにつきましては、同様のことを2011年基準のSNAによりまして、より直近となります2016年度までの実績を要因分解したというものであります。大まかな傾向については1ページと同様となっておりますが、リーマンショック後の様子を少し詳しく見ていきますと、資本係数の要素については1ページではおおむね中立というお話をさせていただいたところですけれども、こちらで見ますと若干利潤率の上昇要因となっているところが見受けられるところであります。
 続いて3ページになりますが、モデルにおきましては先ほど見ていただいた資本係数も内政変数として計算しております。そこで、この3ページでは資本係数の変化について同様の要因分解をしたというものになります。ここ でも、資本係数の変化を3つの要素に分解して棒グラフで示しているところであります。
 緑の部分が純投資によって資本係数の分子が変化する要素となりまして、紫の部分が実質成長により資本係数の分母が変化する要素、その他の要素が赤の部分となります。この赤の部分というものは、実質と名目の違いということになりまして、すなわちデフレーターによって生じる要素ということになります。
 具体的には、資本係数の分母は実質成長のほかにGDPデフレーターによって名目値が変化しますし、また分子の方は固定資産が再評価されることにより名目値が変化するということになります。
 この名目値の変化、デフレーターに相当する部分になりますが、これが赤の部分になります。デフレーターが分母、分子、同様に動く場合には資本係数への影響というものはないことになるわけですが、現実には異なって動きますので、資本係数がこれによって変動するということになります。
 実績はこの3つの要素に影響を受けるわけですけれども、将来のモデルの推計の部分になりますと、こちらのほうは全て実質で計算しているということになりますので、赤のデフレーターに相当する要素がなくなって、緑の純投資と紫の実質成長による影響のみを受けるということになります。
 それで、実績の部分を見ていきますと、赤のその他の要素については2000年代以降プラスの要因となる年が大きくなっているところでありますけれども、長期的に見ますと、純投資の緑の部分と実質成長の紫の部分が資本係数の動きに大きく影響しているということが見られるところであります。
 緑の純投資につきましては、1990年ごろのバブル期までは非常に大きく資本係数のプラス要因となっておりましたが、その後、徐々に純投資が減少していくということになっておりまして、リーマンショックの後、2008、2009年以降はおおむね中立となっているところであります。つまり、純投資によって資産が増加していかないという状況になっているところであります。
 一方、紫の実質成長につきましては、こちらも1990年ごろのバブル期までは非常に大きなプラス成長というものを実現しておりましたので、資本係数に対しては大きなマイナス要因となっておりました。その後、低成長期に入りましたのでマイナス要因の絶対値は小さくなっておりますが、リーマンショックなどの一時期を除きましてはプラス成長を維持しておりますので、おおむね直近まで資本係数に対してはマイナス要因となっております。
 折れ線の資本係数を見ていきますと、バブル後の1990年代に上昇していることが見受けられるところでありますが、これは分母の実質成長の低下に比べて純投資の低下は小さかったということから上昇してきているということがわかるところであります。
 次に、将来推計のモデルの部分を見ていきますと、今後も一定の実質プラス成長というものを見込んでおりますので、資本係数の分母が増加するというところで紫の部分はマイナス要因で働き続けているわけですが、一方、純投資による固定資産の増加は見込まれてないということになっておりまして、資本係数が低下していくと推計されているところであります。
 次の4ページになりますが、こちらは2011年基準のSNAによりまして同様に2016年度までの実績を要因分解したものであります。リーマンショック後の資本係数に若干低下傾向が見られるものとなっておりますが、大きな傾向については前ページと同じとなっているところであります。
 私の説明は、以上となります。
○植田委員長
ありがとうございました。
 それでは、主な意見を整理していただいた資料1と、今後議論すべき事項を御提示いただいた資料2-1、この2つを中心に御意見を伺いたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いいたします。
 では、どうぞ。
○小黒委員
ありがとうございます。また、私が以前に質問した関係で資料3を作成いただき、ありがとうございます。多分、資料1と資料2-1との関係すると思いますが、一つ質問させてください。
 資料3の1ページ目と2ページ目と3ページ目と4ページ目と5ページ目にいろいろその実績と推計値が載っているのですけれども、例えば資料3の1ページ目は2005年基準でその利潤率の実績と前回の推計値、ケースEがどうなっているかというものだと思います。私も世代重複型のマクロ経済モデル等で分析を行うことがありますが、想定するモデルやそのパラメーターの妥当性を確認する一番よい方法は、モデルから導出している利潤率の推計値と実績がどのくらい乖離しているかを把握することです。この資料では、利潤率の実績の部分が1980年から2014年くらいまでありますので、同じパラメーターで利潤率の推計値を今度は逆にフィードバックしていったら、実績とどれくらい乖離しているのかというのを少し確認するというのは難しいんですか。
 資料3の3ページ目も同じですが、4ページ目の2011年基準だと結構合っているような感じもするんですけれども。過去データとの比較で、推計値と実績の乖離を確認することはできないでしょうか。
○武藤数理課長
ただいまの小黒先生からの御質問ですけれども、先ほど説明がありましたとおり、ここでは過去の利潤率を要因分解して、さらに将来をモデルで当てはめた推計値と接続してみるということですが、過去において要因分解されて出てきた要因と、あとは将来推計値で出てくるときに考えるもの、ここでは資本係数の緑の部分だけということになりますけれども、過去の要因の中で将来推計に入っていないものがありますので、今の先生の御発言はその将来推計で入っている資本係数の要因を過去にさかのぼっていったらどうなのかということをおっしゃっているのかと理解しています。
 それ自体は、作業はできなくはないかもしれませんので、引き続き考えさせていただきたいと思いますけれども、情報量的に考えてみますと、結局この1ページ目でいうと緑の部分を抜き出してずっと接続させていくということになりますので、ここでやっているような要因分解したほうが情報量的には多いのかと思いますが、それを続けて並べてみるということかと理解いたしましたので、そこはどういう工夫ができるか。
 さらに、利潤率だけではなくて資本係数のほうも、過去で要因分解したものと将来推計値で残っているものとの関係がありますので、そちらのほうも結局、先生の御発言を踏まえると、将来推計で見込んでいるものを過去にさかのぼっていくかということになると思いますので、いずれにしてもどういうことができるか、ちょっと考えさせていただきたいと思います。
○野呂委員
資料1につきまして確認ですが、2点ございます。
 1点が、1ページの賃金上昇率の設定に関しまして、ここ数年の労働参加は非常に進んでいますので、今回の経済前提というのは高目の労働力率設定になるということも想像されるのですが、ここのところ高齢者、65歳以上の方の労働参加が特に進んでいるのではないかと思っています。
 実際に建設業界などを見ましても、70歳くらいの方が結構現場に出ておられますけれども、やはり健康問題から労働内容の制限を受けたり、危ない仕事はできないというルールにしたり、あるいはその分、賃金もちょっと抑えたりということも起こっているように仄聞します。今後、非常に高い労働力率を設定するとした場合はそうしたことも考慮しまして、賃金上昇率とか、全要素生産性についても調整するというか、少し低目に設定するようなことも考えないと、現実と乖離するのではないかというのが若干気になるところで、この点を確認させて頂きたいと思います。
 それからもう一点が、これも確認なんですけれども、4ページ目の5の「その他」の(ア)のところの注にございますが、参議院の厚生労働委員会の附帯決議でも、国民が将来の年金の姿を見直すことができるようにという御指摘があったと書かれております。8通りのシナリオを今回また同じように並列的に並べるのかどうかについては国民目線からいうと少し工夫といいますか、よりわかりやすさがあったほうがいいのではないかと思っております。
 例えば、これは素人考えですけれども、8通りか何通りは別にしましても、それぞれのシナリオの意味、あるいはその名前のようなものをつけるとか、あるいは難しいでしょうけれども、8通りのシナリオの発生確率を示すとか、場合によってはシナリオを少し減らし、それ以外のシナリオはオプションに持っていくというようなことで、実際にはたくさんのシナリオがあるんですけれども、主たるシナリオはもう少し絞り込むとか、そのようなことも検討の視点に入れたほうがいいんじゃないかと思っております。
○権丈委員
ただいまの御意見に関するものと、あとはつけ加えてほかにもあります。
 資料1の1番目、1ページ目の(イ)の「幅広い前提、パラメーターの設定について」というところで、これは2009年のときにもそういうことをやっておりまして、あのときも幅広い前提を置いて経済前提、人口前提で3掛ける3の9通りで、9通りの中の4通りは前の50%を切るというのが出ていたわけです。過去2回、「幅広い前提、パラメーターの設定について」はやっておりますので、今回3回目もしっかりとやる必要があると思っております。
 その中で、この発生確率というのはどうなのかというのはあります。発生確率があるというのは、ある程度予測の可能性が高い、確度が高いというようなことを含んでいくわけですけれども、これが第2番目とかかわってくるのですが、先ほど資料1の最後のほうで年金部会の御発言がありまして、「財政検証の前提について、諸外国でこれだけ細かい前提を置いてやっているところはないとのことであり、前提やケースの設定について諸外国並みで十分ではないか」ということがあります。
 これは、年金部会で委員が発言したわけですけれども、その発言の前に、権丈委員が全て言われたと思うのですけれども、という前置きがありましたので、恐らく私が答えておかなければいけないのではないかと思います。
 そのとき私は何を話したかといいますと、本日の資料2の14枚目に「財政検証に用いる経済前提の基本的な考え方」というのがございます。そこで私は6月の年金部会のときにこの文章をちょっと読み上げまして、「財政検証の結果は、人口や経済を含めた将来の状況を正確に見通す予測というよりも、人口や経済等に関して現時点で得られるデータの将来の年金財政への投影という性格のものであることに留意が必要である。そして、複数ケースの前提を設定して、その結果についても幅を持って解釈する必要がある」と書かれているところを読み上げました。
 やはり、将来というのは不確実なんですね。我々は、ここまで賃金が物価上昇率よりも低くあり続けるということは、20世紀の常識では予測ができなかった。そこもやはり不確実だったわけですけれども、そういうさまざまな状況がある中に、ある程度の幅を持って、この範囲内でこういう問題が起こるのではないかということをプロジェクションしていくということをやっているのが財政検証です。
 したがって、この範囲内でこの問題が起こるのではないか。この問題が現実にならないように、今ここでしっかりと対策をやっていかなければならないというようなことをやっていくのが財政検証です。だから、私は2004年のときに、今後このシステムはホメオスタット機構のようになっていく。状況変化にあわせて、不確実な将来にあわせて、みずからが変化して、生命体が恒常性を維持するようなシステムにこれから変化していくんだから、しっかりとプロジェクションをやっていく必要がある。そして、そこでプロジェクションをした範囲の問題が起こってくるのであれば事前に手を打って、その現実にならないようにしっかりとやっていきましょうというようなシステムに切りかわっていくんです。
 そういう意味で、私は幅広い前提を置くと同時に、これはプロジェクションであるということをこの前、6月の年金部会では100回読んで覚えてほしいという話をしているわけですけれども、そのくらい私たちがやろうとしていることは不確実な未来に向けて何とかして高齢期の生活が保障できるという目的を達成できるように、みずから制度の形を変えていく。その準備をしっかりやっていくというのが財政検証だ。そして、その不確実な未来に対して、これだということがなかなか言えるものではないということがございます。
 そういう意味で、ここはプロジェクションであるということを言いましたら、先ほどのように、財政検証の前提について諸外国でこれだけ細かい前提を置いてやっているところはないということを、ある委員が発言された。彼の意図というのは、プロジェクションであれば大枠の枠さえわかればいいわけですから、ぜひ今回の財政検証に当たっては諸外国と同じレベルの経済前提で私は十分だと思いますというふうに発言されて、逆にいえば前回に比べてなぜこんなに経済前提が簡単になったのですか。予測ではなくてプロジェクションだからですという議論をみんなでやることによって、今やっていることの意味をしっかりと理解しましょう。プロジェクションなんですよということを喚起するための発言としてこれを発言されております。
 だから、私は外国と同じようにやる必要はなくて、ここはやはりみんな汗をかいてしっかりやっていく必要があると思うんですけれども、そういう意図があるという話です。
 そして、3つ目のところで経済循環という言葉がこの前の法律の中に組み込まれるんですけれども、20世紀と21世紀で経済構造が変化してきていると考えられるところもあって、賃金がこれだけ物価上昇率も低くあり続けていくということがなかなか読めなかった。いろんな形でデフレがここまで続いていくということも、インフレで苦しんででき上がった私たちの常識ではなかなか読めないところがあった。
 これを循環と呼ぶのかどうかということになってくると、20年程度の期間がずっとありますので、循環と捉えるのであれば、かなり長い期間で捉えていってその賃金徹底の影響を見ていく。そして、賃金徹底が進んでいけば将来の所得代替率は高目にとどまることになっていくことを示していくというのはかなり重要なことではないかと思っております。長くなりました。
○山田委員
私のほうからは、やはり今もいろいろと御議論がありましたけれども、資料1の2の「賃金上昇率の設定について」なのですが、マクロ経済モデルで扱われている賃金というものと、それから我々が考えなくてはいけない賃金というのは微妙に異なっているわけです。
 どう異なっているのかというと、年金でいう賃金というのは平均標準報酬ということで、その平均標準報酬の動きと、マクロモデルで出てきている賃金上昇の動きというのが果たして一致しているかどうかというのを考えていただきたいというのが1点目です。
 2点目は、その経済モデルについて幅広い前提といった場合、例えば被用者保険で適用されている人たちが、これからの適用拡大の方向性によっては、その適用拡大のスピードによっては、かなりの低賃金の人たちが含まれてくることによって、またそれが賃金上昇率に影響も与えるということで、実は非常に難しいわけですけれども、どういうふうに制度改正するかというのと、それからこの年金上昇率というのが関係してくる可能性がある。この最後の資料にもありましたけれども、その整理をこれから多分いろいろと作業部会でやっていく中で考えていただきたいと思います。
 その2点について、お願い申し上げる次第です。
○小黒委員
私も今の権丈先生のお話はすごくよくわかりまして、むしろ平成26年の財政検証の結果の8ケースで、やはりこのケースを見たときに、上の5ケースは高成長ケースなわけですけれども、例えば一番高い経済成長率、2024年度以降は実質でいうと1.4%で、低いほうになると0.4%ですが、所得代替率はほぼ50%ちょっとで変わらない。
 他方で下のほうの3ケースですが、例えばケースGはマイナス0.2%ですけれども、ケースHはマイナス0.4%、乖離はたったの0.2%であるにもかかわらず、所得代替率が4割を切って3割台に陥ってしまうというように、所得代替率に与える影響がかなり異なる一方、ケースHでは2055年度に国民年金の積立金が枯渇するという記載があるとおり、積立金等に与える影響というのがかなり違うということで、むしろその投影という意味では、この幅の広さというものをどういうふうに見せていくかということのほうがむしろ重要かというふうに私も思いますので、もしその辺も議論していただければ、もう少し深化した形で財政検証ができるのではないかと思います。
○小野委員
3点ほどお話をしたいと思います。
 1つは、私が気にしているのは、先日、内閣府の中長期試算というのを御説明いただきましたけれども、前回の財政検証時には存在しました労働市場への参加が進まないという前提が存在しないということです。
 幅広いという点と絡んでいると思いますけれども、前回の御説明をお伺いする限りは、直近の中長期試算では雇用政策研究会報告書の「経済成長と労働参加が適切に進まないケース」というのは取り上げていないということでありまして、結果として今回の財政検証で前回と同じようなメッセージ、つまり労働市場への参加が進むケースではうまくいくというようなメッセージが発信できるかどうかということに関して、少し気になっているということです。
 2点目は、資料2になるかと思いますが、運用利回りの設定についてです。現在の基本ポートフォリオの作成のロジックですけれども、つまり賃金上昇率プラス1.7%を想定しつつ、下方確率とか、下方リスクとか、同じような手法を踏襲するということであれば、運用利回りの設定方法の変更は恐らく基本ポートフォリオの結果に影響を与え得るということになろうかと思います。そのあたりは、御認識いただいていた方がよろしいのではないかというのが2点目です。
 3点目は賃金上昇率ですけれども、第2回の専門委員会の資料3を拝見しますと、時間当たりの賃金というのは一般労働者とパートタイム労働者それぞれに分けると低下傾向が見られないというようなことだったかと思います。これを踏まえますと、いわゆる非正規労働者といわれるような被用者の割合が増加していることというのも全体として賃金が伸び悩む一因だと考えられます。
 労働分配率などとともに、この非正規労働者の割合だとか労働時間というものが一定程度に収れんしていくということが長期の前提になるとした場合には、一定の賃金の安定性を仮定するということはあり得るのではないかと思います。
 ただ、一方で物価上昇率というのは変動します。先ほど資料の中にあって説明されたように、御説明いただいたような仕組みによる適用のラグというのがありますね。物価のピークのときに実質賃金が下がって、それで物価のボトムのときにそれを考慮して賃金上昇率が決まるというような仕組みというのは、一定のラグがあると思われますので、長期の経済変動とともにこういったあたりも考慮していくのがよろしいのではないかと思います。以上です。
○玉木委員
同じく資料1でございますが、3ページに長期債のイールドカーブを用いた推計というものについての言及がございます。前回はイールドカーブを用いた推計が用いられたわけでございますけれども、前回と今回の間に金融政策の変更があってイールドカーブコントロールというものが導入されてございます。
 イールドカーブというものの取り柄というのは何かというと、市場のいろいろな見方が凝縮されたものであろうというところがあるかと思いますけれども、現在のイールドカーブというのは中央銀行が決めた10年は0%程度というものが色濃く影響している。それから、どうも最近いろいろな物をもとに聞いてみると、そういった金融政策のもとで長期債の取引が大変少なくなっている。想定されているような、世の中にあるさまざまな情報の業種ということがどうも少なくなっているのではないか。
 そうなってくると、そういうものに依拠しなくてはならないほど、ほかの方法が機能しないのかといったこともよく考えてみる必要があると思いますが、まだ、この時点で方法論を決定する必要はないかとは思いますけれども、イールドカーブというものの機能について、この場での議論での取り柄というものについては慎重にといいますか、細かく見ていく必要があるのではないかと思うところでございます。
○駒村委員
この先、少し細かいパラメーターの設定のための作業班が置かれるということになっているようですけれども、労働投入量について少し気になる動きもあるので考慮しておいていただきたいと思うのが、労働力率の動向です。
 2030年という先を予測していて、今後もっと先を予測すると思うのですけれども、一つ気になるのは、25~55歳ぐらいのところの労働力率が極めて小さい動きですが、やや下がっている状況だと思います。総務省からも未活用人材の統計が出ていたと思いますけれども、あるいは国勢調査を見ても不詳と答えている方が非常にふえてきている。都市部においても非常にふえてきているということで、もしかしたら意外に現役世代のところのほとんど働いているとみなされているところが非労働力化している可能性があるのではないか。
 それから、60代半ばから後半のところなのですけれども、現在、足元は労働力率は上がってきているのですが、気になるのは今後、在宅介護、在宅医療のほうに誘導していくことになると思うと、政策的にもそちらを今、目指していると思うのですけれども、やはり60代を過ぎた方の仕事と介護の両立というのが進むかどうかによってもストーリーが分かれてくると思いますので、この辺は作業班でもし労働力率に関しての議論が、あるいは労働投入量についての議論があったときには、今の延長上だけではない、あるいはちょっと足元で気になることも起きているということは少し議論していただきたいと思います。以上です。
○植田委員長
ほかにいかがでしょうか。
 では、どうぞ。
○武田委員
御説明いただきましてどうもありがとうございました。今後議論いただきたい事項ということで「■」が2つありますので、それについてコメントさせていただきたいと思います。
 まず、1つ目は経済変動を仮定するケースについて、景気循環の話が先ほどの資料にございました。景気循環のこれまでの考え方は全く意味をなさないとは思っていませんが、近年の成長率の動きを見ますと、一番大きな影響を及ぼしているのは金融危機の発生です。
 例えば、97年のアジア通貨危機、2000年代のITバブル、そして2000年代後半のリーマンショック、その後が欧州債務危機です。これだけ世界の金融ショックが起きたときの伝播のスピードが増していますと、それが結果的に日本発のショックではなかったとしても、その伝播のスピードが速く、それが結果的に日本の成長率に大きな振幅をつくってきたように思います。
 背景には、貿易のリンケージと、金融商品の高度化により金融面でのリンケージも強まっていることがあるように思います。
 したがって、3~4年のサイクルで在庫循環が振れますというよりは、むしろ金融システム面でのリスクの蓄積が、その後の景気後退を招いてきたのではないかというのが私の経済を見ていての印象でございます。
では、それがいつ起きるか予測するのは、正直申し上げてなかなか難しい。金融システム面でのリスクが、蓄積していそうだということはわかります。しかし、それがどこで、何がトリガーでというところまでは正直、予測するには不確実性を伴うということだと思います。
 2点目は、運用利回りの設定方法についてです。先ほど、イールドカーブについて難しさがあるということで、玉木委員のほうから問題提起がございました。確かにおっしゃるとおり、昨今の金融政策のもとで、フォワードカーブ機能が金融政策の先行きという意味で反映はされていますけれども、経済の姿の反映であるとか、流動性という観点で、以前に比べると機能が低下しているという御指摘はそのとおりかと思います。
 ただ、一方で運用する側の立場で考えますと、その金利の低さも事実になるわけです。したがって、本当にかけ離れた実態と、そのかけ離れた金利を想定していいのかどうか、我々は少し考える必要があるのではないかと思っております。
 また、分散投資効果について、実質長期金利プラス分散効果が実質運用利回りということで前提を置いているわけでございますが、この数字についても本当にこちらでいいのかということも含めて検討が必要ではないかと思っております。もしよろしければこの点、GPIFの方にオブザーバーとして御参加いただいておりますので、何か御意見等を承る機会があってもいいのではないかと考えております。以上です。
○植田委員長
大体、皆さん一通り御意見をおっしゃっていただいたと思います。まとめることはしませんけれども、今後ここで、あるいは後でお諮りします検討作業班で分析ないし取り上げるべきさまざまなポイントを御指摘いただいたかと思います。
 追加的に、何かよろしいでしょうか。
○小黒委員
さっき8ケースの話をさせていただいたのですけれども、武田先生の話とつながるのですが、要は権丈先生がおっしゃるとおり、確率についてはどのシナリオかというのは政府として出すのは非常に難しいのでそこはできないと思うのですけれども、シナリオの設定が重要ですね。
 前回は8ケースありましたが、例えば成長率がかなり上振れしても余り所得代替率が変わらないケースと、ちょっと下振れしただけで所得代替率が大きく変わるという推計結果が最も重要に思います。それは金利も同じようなことがあって、そういうようなキーパラメーターが何なのかということをよく我々が認識した上でシナリオをつくり、例えば参考情報として過去の賃金上昇率や金利・物価上昇率等の度数分析(ヒストグラム)も含め、情報を出していくということが一番、国民にとって分かりやすく、誠実かつ丁寧な情報提供の仕方になると思います。そこを余り認識しないで外に出すと、結局こちらのほうが実は動いたら大きなショックというか、所得代替率に影響を与えたにもかかわらず、それがシナリオに入っていないというような可能性もありますので、その辺について、特に今回また新しい賃金スライドの仕組みが入っていますので、その辺をしっかり特定してシナリオを設定するということが重要かと思います。
○権丈委員
前回、これはなかなかうまい方法だなと感心したのは、スプレッドという言葉を前面に出して議論していただいたところがありますので、給付そのものは賃金と連動していくということで、その名目賃金とか、名目金利とか、そういうようなものが所得代替率に与える影響ということは、結構そこは相殺されていく。
 そこで考えていくと、金利のところも名目ということで議論するのではなく、初めからスプレッドという形で前回は指標をつくってずっと議論されていたと思うのですけれども、そのあたりのところも何回も何回も繰り返しみんなで確認していったほうがいいのではないかと思っております。
○野呂委員
8つのシナリオの確率を出すことを検討するようにお願いしましたが、権丈先生や小黒先生に対していわゆる天に唾をするようなつもりは全くないのですけれども、これを受けとめた国民の側から見て、すっと理解できるようにするかという工夫があればいいと思います。例えば保険数理でも将来のプロジェクションで決定論的な複数シナリオを行うときには、これだけのシナリオで90%カバーしていますよということによって、ようやく世の中の理解、利用者の理解を得られるようなことがあります。
 それが唯一の方法ではないとは思うのですけれども、国民の理解を進めるような補助的な説明方法の一例として確率論を申し上げました。確率だけにこだわっているつもりではございませんので、よろしくお願いしたいと思います。
○植田委員長
幅広い前提ないし8つのシナリオあたりをめぐっては、かなりたくさんの御意見をいただいたと思います。幅広い前提でちゃんとやろうというのはよくないという方向の御意見はなかったと思うのですけれども、やった上で説明の仕方を工夫したほうがいいとか、あるいはより深く知りたい変数、小黒委員が言われましたが、所得代替率、その他に強く影響する変数ないしはパラメーターは何なのかというあたりも少し深めるべきポイントはあるのではないかという種類の御意見もいただいたかと思います。そのように私は理解いたしましたが、ほかにいかがでしょうか。
 あとは、賃金といっても制度、あるいは労働者の構成が変化することによって、いろいろな意味があるというあたりも着目しないといけないという御意見も複数あったかと思います。
 では、特に追加的に御意見がないようでしたら、事務局とも相談の上で、きょういただいた御意見をきょうの資料1に反映させて、それを年金部会に報告させていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
                   (委員:異議なし)
 ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。
それでは、今後のその先の進め方について、事務局からお願いいたします。
○武藤数理課長
それでは、資料4をごらんください。これまで御議論いただいた内容、あるいは本日御議論いただいた方向性に沿って、今後技術的な検討や具体的な作業を行うために、当専門委員会のもとに検討作業班を設置して、当面検討作業班で検討を進めていただいてはどうかと考えております。
 スケジュール的には、10月ぐらいまでこの検討作業班で御検討をお願いいたしまして、専門委員会にその成果を御報告いただいて、その後、年内を目途に専門委員会としての一定の取りまとめを行っていくという段取りではどうかというふうに進め方を考えているところでございます。
○植田委員長
ありがとうございます。
 今、御説明がありました検討作業班のメンバーですけれども、あらかじめ各委員と御相談いたしまして、玉木先生を座長として、小黒先生、小枝先生、小野先生の4名の方にお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
                   (委員:異議なし)
 それでは、御賛同いただけたと思いますので、当面は10月まで、暑い中大変ですが、検討作業班で議論を進めていただければと思います。玉木先生におかれましては、座長で大変でございますが、よろしくお願いいたします。
 まだ時間がありますので、何かこれだけはということがおありでしたらと思いますが、よろしいですか。
それでは、次回について事務局から連絡がありましたらお願いします。
○武藤数理課長
次回以降の日程につきましては、改めて御連絡申し上げたいと思います。
○植田委員長
それでは、きょうはこれまでにしたいと思います。
 どうもありがとうございました。