第13回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

平成30年7月23日(月) 13:00~17:40

場所

厚生労働省 専用第22会議室(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

委員

議題

 
1 開会
2 議事
   (1)国立研究開発法人国立がん研究センターの平成29年度業務実績評価について
   (2)国立研究開発法人国立循環器病研究センターの平成29年度業務実績評価について
   (3)国立研究開発法人国立国際医療研究センターの平成29年度業務実績評価について
   (4)その他
3 閉会
 

配布資料

【国立研究開発法人国立がん研究センター】

資料1-1 平成29事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 平成29事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 平成29年度 財務諸表等
資料1-4 平成29年度 監査報告書


【国立研究開発法人国立循環器病研究センター】

資料2-1 平成29事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 平成29事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 平成29年度 財務諸表等
資料2-4 平成29年度 監査報告書


【国立研究開発法人国立国際医療研究センター】

資料3-1 平成29事業年度 業務実績評価書(案)
資料3-2 平成29事業年度 業務実績概要説明資料
資料3-3 平成29年度 財務諸表等
資料3-4 平成29年度 監査報告書

議事

第13回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
○医政局医療経営支援課樋口課長 
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第13回「厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。
 委員の皆様には大変お忙しい中、また、お暑い中、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。
 本日の出欠でございますが、本日は藤川委員と本田委員が途中退席ということと、福井委員が議題2の循環器のところから、大西委員が議題3の国際から参加される予定である旨の連絡をいだたいております。
 出席委員に関しましては過半数を超えておりますので、会議が成立することをご報告いたします。
 続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。委員の皆様のお手元に議事次第と委員名簿、座席表。その他に紙媒体としまして1-2、1-4、2-4、2-4、3-2、3-4とそれぞれ各センターの業務実績評価説明資料と監査報告書が並んでおります。1-1、1-3の奇数の部分につきましては本体資料等々もございますので、タブレットに収納しております。
 その他、委員のお手元には評価をご記入いただく用紙と、永井部会長から事前に依頼がございました資料を非公開資料として置かせていただいております。
 資料の不足、乱丁等がございましたら事務局までお申しつけください。
 委員の手持ち資料でございますが、参考資料1から参考資料11までの資料となっておりまして、参考資料1としまして論文数の引用数等の調査から、参考資料11のNC評価一覧までの11項目の手持ち資料となっております。
 以降の進行につきまして永井部会長、よろしくお願いいたします。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 まず国立がん研究センター平成29年度業務実績評価の御議論ですが、理事長さんから一言、御挨拶をお願いいたします。
○国立がん研究センター中釜理事長
 私から簡単に一言話させていただきます。
 国立がん研究センターは、社会と共同して全ての国民に最適ながん医療を届けるということで、がん医療の均てん化に努めるとともに、最新の医療を開発する研究開発にも力を注いできております。加えて昨年度はゲノム医療、希少がん対策、AI開発、さらにはNEXTを中心とした医療技術あるいは医療機器の開発にも着手してまいりました。
 それから、均てん化に加えて診療連携の重要性、これからの高齢化社会を考えたときの診療連携のあり方、がん医療にとっても重要なテーマだと考えており、そのあたりも取り組んでおります。
 もう一つ、重要なテーマとして国際化、国際連携においても、昨年度はかなり力を入れて取り組んできたつもりであります。さらにがん医療、がん研究に対する国民の期待が、その範囲が広がり、我々の機能も拡充する必要がある中、安定的な運営のために事務機能の効率化あるいは機能強化というのは必須であります。そのあたりもセンター内で深く議論をして、最終的には経常収支のプラスですが、そういうものを編み出す。さらに引き続き中長期的なビジョンのもとで運営に当たっていきたいと考えております。
 加えて、昨年度御指摘がありました、これまでのがんセンターが単年度的な取り組みではなくて、経年的にどういうふうな取り組みをして、それが成果につながったかという視点も加えて、本日の資料とさせていただきますので、以降につきましては各担当の者から説明させていただきたいと思います。本日はよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 ありがとうございました。
 それでは、評価項目1-1及び1-2に関係する業務実績と自己評価について、まず法人から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○国立がん研究センター間野理事・研究所長 
 研究所長の間野でございます。
 評価項目1-1、1-2、研究と開発に関する事項について御紹介申し上げます。
 4ページをご覧ください。評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究開発の推進であります。自己評価としてはSをつけさせていただきました。その理由といたしましては、基礎研究の成果から実際の臨床試験あるいは臨床性能試験に入った医薬品あるいは医療機器が複数存在するということ。それから、研究発表論文数が急増しているということなどが、その理由として挙げられます。現在センターとしては病院と研究所が一体となって臨床開発を行っておりますし、先ほど理事長が申しましたように、ゲノム解析だけではなくて29年度は人工知能の開発にも注力を割いております。
 以下、具体的な事項について簡単に御紹介を申し上げます。
 同じページの右側をごらんください。丸1のRET融合遺伝子陽性肺がんの薬剤耐性メカニズムを発見であります。RET融合遺伝子といいますのは、我々研究所が見つけました肺がんの原因遺伝子ですが、その遺伝子を持つ人たちに薬を届ける医師主導治験を行うために、東病院を中心として当時はLC-SCRUMという名前で呼ばれましたが、現在はSCRUM-Japanとなりました、世界でもまれに見る大規模な臨床試験ネットワークをつくり、その患者さんをスクリーニングし、さらにRET阻害剤であるバンデタニブという薬の有効性を医師主導治験において証明いたしました。
 今年度はそこで臨床試験を行った患者さんのうち、最初は有効だったのですけれども、耐性になった原因を明らかにすることに成功したものでございます。実際に薬剤耐性の原因は、RETたんぱくの中の904番目のセリンがフェニルアラニンに置換していて耐性になったのですけれども、これは普通によく起きるATP結合部位のアミノ酸置換とは全然違う場所の変異でした。
 何でこういう遠く離れた場所のアミノ酸変異がバンデタニブの耐性を生じるのかということを調べるために、スーパーコンピューター「京」を使って分子シミュレーションを行いまして、置換が起きた際の分子モデルの予測に成功いたしました。その結果、遠い部位のアミノ酸変異であっても、順番にたんぱくの構造異常を来してバンデタニブの結合を阻害することを明らかにいたしました。このような知見をもとにRETに対する有効な阻害剤がつくられれば、RET融合遺伝子陽性肺がんというのは世界で毎年2万人から3万人の人が亡くなると考えられますから、その方の救命につながる成果ではないかと思います。
 5ページをご覧ください。右側の丸4胆道がんの世界横断的・最大の分子統合解析により、特徴的な治療標的分子を発見であります。
 胆道がんは国内でも2万人以上の患者さんが毎年発生して、極めて予後の悪い難治がんであります。特に胆道がんはアジアに多いがんですので、アジア地域の諸国が国際的コンソーシアムをつくって胆道がんの原因を明らかにしようという試みを日本とシンガポールがリーダーシップをとって行いました。その結果、10カ国の国際共同研究コンソーシアムで約500例の胆道がんについてゲノム、エピゲノムあるいは遺伝子発現解析の包括的なオミックス解析を行いました。
 その結果、右の絵にありますように胆道がんが予後が異なる4種類のグループからなることがわかり、それぞれのサブグループが固有の治療標的を持つことも明らかになりました。例えば赤の最も予後のよいグループは、FGFR遺伝子融合が存在することがわかって、その阻害剤が治療選択になりますし、最も予後の悪い青の肝吸虫の慢性感染症によって起きる胆道がんのサブグループなのですが、それに対してはHER2という遺伝子の増幅がしばしば認められますので、その阻害剤が治療として使えるのではないかということが明らかになりました。
 6ページ、右側の丸7、世界初の酸素飽和度を可視化可能な機能性内視鏡の開発と承認に成功であります。これは当センターの東病院と先端医療開発センターが一緒になって新しく開発した内視鏡システムであります。これまで内視鏡は画像で判断はできるのですけれども、映っているものの質を判定することは極めて難しいというのが現状でありました。しかし、当センターでは、473nmのレーザーを当てますと、酸素が結合しているヘモグロビンだけが励起されることを利用しまして、それによって酸素の飽和度を可視化する技術に成功しました。グリーンのレーザーを当てて、全ヘモグロビンの量を測定して、その中で今度は青の473nmのレーザーを励起して、酸素が結合しているヘモグロビンだけを可視化して、正規化したデータをレインボーカラーで見られるようにするという極めて画期的な内視鏡の開発に成功しております。
 今年度、平成29年度は既にそれが薬事承認されておりまして、平成30年度、それが今年4月以降ですけれども、現在、臨床的有用性を証明するための臨床試験を行っております。
 7ページ、左側の2の丸1、6NCコホートの共同研究基盤体制構築を開始であります。がんセンターを含め6つの国立研究開発法人は、それぞれ固有の疾患コホートを持っておりますけれども、そこで集めたSNPデータあるいは臨床情報のデータに関して、統合的に一緒に集めた大きいデータサーバーを今度、国立がんセンターの中に置いて全てのナショナルセンターが自由にアクセスできて横断的な解析が可能になるというものであります。これを用いることによって、下側に書いてありますけれども、今後の展開として2020年ごろに疾患総合的な健康寿命延伸のためのガイドラインの提言などを行ってまいりたいと考えております。
 8ページ、左側の丸2悪性脳腫瘍等の増殖を抑制する変異型IDH-1阻害剤を開発であります。IDH-1という遺伝子の異常、体細胞変異は、脳腫瘍と急性白血病において高頻度に生じることが知られています。当研究所の北林らは、上の写真にありますけれども、急性白血病においても脳腫瘍においても、変異型IDH-1がなくなるとがん細胞が死ぬということを明らかにして、そのプルーフ・オブ・コンセプトを基に第一三共製薬株式会社と変異型IDH-1だけに効く、野生型のIDH-1には阻害効果を持たない特異的阻害剤を開発することに成功しました。
 幸運なことに、この変異型IDH-1阻害剤は脳血液関門の移行がよくて、脳腫瘍に対して治療効果が期待できました。そこで実際に当センターにおいて臨床試験を行いましたところ、目覚ましい治療効果が確認されました。現在は途中ですので細かいことは申し上げられないのですけれども、例えばその下にありますように髄芽腫において18週の時点で完全寛解が得られています。このような治療効果というのは、極めて例外的な目覚ましい成果ではないかと思われます。今後、臨床試験は拡大して、臨床的有効性が証明されるのではないかと非常に期待しております。
 9ページは昨年のヒアリングで御助言いただきましたように、幾つかの成果について経年の変化というものの進行、進捗を可視化しております。上側はRET融合遺伝子、下側は胆道がんの解析であります。例えば上側のRET融合遺伝子は、平成24年にRET融合遺伝子を肺がんにおいて発見しまして、27年度にSCRUM-Japanのスクリーニングを行い、28年度にそこで用いたバンデタニブの臨床的有用性を証明し、そして29年度には薬剤耐性メカニズムを明らかにしたものであります。治療標的の発見から薬の有効性の証明さらには耐性原因の解明までを1つのセンターで行う、1つの施設で行うというのは、日本では極めてまれなことではないかと考えます。
 丸4は胆道がんですけれども、27年度は大規模な胆道がん、日本人の胆道がん解析、28年度は300例の肝臓がんの全ゲノム解析、そして29年度は国際コンソーシアムにおける胆道がんの解明というふうに順調に進捗しております。これは先ほど理事長も申していましたように、アジアにおけるがん種というのは特有のプロファイルがありますので、そこでアジアにおけるがんに対する研究の開発あるいは創薬、臨床試験のリーダーシップをぜひ日本はとりたいということのあらわれの一環でもあります。
 ページをめくっていただいて、これは論文の成果をあらわしたものですけれども、10ページです。右上にありますように総論文数は2015年が695、2016年が780、2017年が820というふうに急増しております。さらにその論文をほかからたくさん引用してもらった論文の数、つまりインパクトが大きい論文であると認められたものの1つのマーカーなのですけれども、高被引用論文数の数で言いますと、日本では腫瘍学において当センターが最多となっておりまして、先ほどの論文数とあわせて研究事業が非常に活発に行われていることが見てとれるかと思います。
 11ページ、評価項目1-2、実用化を目指した研究開発の推進及び基盤整備。本項目においても自己評価Sをつけさせていただきました。
 これは、これまでゲノム医療に関して当センターが着実に順番に成果を上げ、いよいよ今度、日本でゲノム医療が保険収載下で行われますので、その体制の整備が始まったということを評価したものであります。その下にありますように、先ほども申しましたが、ゲノム情報を用いた非常に大規模な世界でまれに見るSCRUM-Japanという臨床試験のネットワークを構築しましたし、また、さらには進めてリキッドバイオプシーを用いた臨床試験もできる体制を構築しました。
 右側の丸2ですが、臨床試験だけではなくて実際の病院の実臨床において、そういうゲノム医療が果たして有効かどうかということを証明するために、NCCではNCCオンコパネルという解析パネルをみずから開発して、その有用性を検証するプロジェクトをスタートしております。その結果を受けて、NCCオンコパネルは今年4月から先進医療になっておりますので、来年の保険収載を目指しております。
 12ページ、左側丸3がんゲノム情報管理センター設置準備を開始であります。来年と思われますがんゲノム医療の保険収載に合わせて、そのための中央のデータセンターであるがんゲノム情報管理センター(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics:C-CAT)というセンターを設置するための準備をスタートいたしました。ここにデータが集まってくるわけですけれども、ゲノム医療中核拠点病院及び連携病院と一緒になって日本でゲノム医療がスタートしていくと思われます。C-CATではそれらの臨床情報とパネル検査の全ゲノム情報を集約して、さまざまな利活用を考えております。
 右側に移りまして2の丸1、アジアにおけるがん治療のリーダーシップポジションに向けてであります。これは先ほどのアジアの胆道がんの解析の研究国際コンソーシアムだけではなくて、臨床の面でもリーダーシップをとることを目指しております。実際にアジアに多いがん種の予防診断治療で牽引することを目指して、アジアの5医療機関でコンソーシアムのAsian Oncology Early Phase 1 Consortium、通称アジアワンと呼んでいますが、それを構築して、これは早期の新薬の開発を目指すものですけれども、既に臨床試験が何本か走っております。
 13ページ、右側の丸3産学連携ラボの構築、推進であります。東病院では次世代外科内視鏡治療開発センター、通称NEXTという建物をつくって臨床開発を推進しております。既に企業8社及び2大学がその中に入っておりまして、新たなロボット技術さらには人工知能を用いた支援ロボット技術の開発にも着手しております。また、当研究棟においても研究開発を企業と行うことを非常に推進しておりまして、企業ラボの専用のフロアを研究所の中につくって、現在9社に入っていただいていますが、そこと研究所あるいは病院とが一緒になって、さまざまな医薬品、医療機器の開発を行っております。
 私からは以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。
 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。
○祖父江委員
 先日も現場を拝見したのですが、がんのレジストリコホートといいますか、非常に大量のデータから臨床に向けた研究へのリンクというのがだんだん見えてきている感じが非常に強くいたしました。非常にすばらしいなと思いましたが、その中で今日お話しいただいた6ナショセンのコホートのインテグレーションといいますか、それに向けたお話に非常に興味があったのですが、こういうことができると非常にいいなと思いますし、がんセンターは先日もちょっとお聞きしたところ25万例、数十万例の前向きのコホートを維持されておられるということですので、随時進めていただくといいのですが、実際にはどうなのですか。かなり難しい点が多いようにも思うのですが、将来これができると、私は次の段階に各ナショセンとも入れる非常に大きな基盤ができてくると思うのですが、例えば倫理面とか実際のシステムを動かしていく上での各ナショセンのいろいろな独立したハードルがあると思うのですが、その辺は将来に向けてどのようにお考えなのか、今、構想の段階でも結構ですけれども。
○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 当方の社健センターのセンター長の津金から説明します。
○国立がん研究センター津金社会と健康研究センター長
 私がお答えさせていただきます。
 健康とか予防を考えるときには、疾患別ではなくて疾患横断的に考える必要があるということで、各ナショセンそれぞれコホートをやっていて、我々がコホートをやっていても循環器も出てくるし糖尿病も出てくるので、それはもう少しうまく連携しながら使うべきだと考えてこれを提案して、平成29年度の推進枠としての予算を確保していただきまして、始めました。まだ1年なのたっただけですけれども、各NCが持っているコホートをうちのがんセンターのサーバーに入れるとか、各コホートでほかの病気ができるようにということで電子化医療情報などをうまく活用しながら、ほかの疾患にも活用できるようにという形でやっています。
 困難な問題は、基本的にもともと違う調査票とか違ういろいろなプロトコルでやっていたので、それをいかに合わせていくかというところのノウハウ的な問題が難しいという面があります。ですので、後づけ的にやると困難な面があるので、今後はより前向きに最初から国として税金を使っているコホートに関しては、いろいろな病気のことの検証ができるような形で持っていくべきというような形を視野に入れながら、新たなそういう枠組みを皆で検討してまいりたいと考えています。もちろん倫理的な問題で、要するに個人情報を集めるということにおける困難はあるのですけれども、ただ、法とか指針に基づいて、きちんと倫理審査に基づいて、ある程度は集められるという状況になっています。
 我が国だけではなくて、今、アジア150万人のコホートのデータが我々のところに集まったりとかしていますので、そこは比較的うまくいっています。基本的に匿名化されている情報に関してはある程度できます。
 今後、我が国としてこういう研究を推進して、国民の健康につなげるためには、できましたら医療IDがあって、それでいろいろな病気の情報に関して一括でリンクできるような体制ができれば、それは既に台湾とか韓国で行われていて、イギリスとかでもそうなのですけれども、他の国で行われていることを日本でもできるようになればというふうに考えています。
 以上です。
○祖父江委員
 がんセンターがイニシアチブをとっていただくというのは、非常にもともとのそういうノウハウが蓄積されていると思うのでいいのですが、6つのナショセンが独立して存在している今の状況で結構難しいところがあるのではないかという気がするのですが、ぜひ進めていただけるといいなと。例えばそこは別枠の組織にしていくという方向もあるのかなと思ったりもしました。
○国立がん研究センター津金社会と健康研究センター長
 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、なるべく健康ということに関しては6NCがより一層連携する必要があって、1つの組織なり、あるいは緩い組織、それぞれのセンターにいながら、かつ、我々と兼務するみたいな形で1つの組織をつくるということも、1つのソリューションではないかと私は考えています。
○永井部会長
 どうぞ。
○内山部会長代理
 がんの多領域にわたりまして著名な業績を上げておられますことに感心しています。
 ナショセンの役割としては、高度先進医療の研究開発と、そこで得られた、ある程度日本全国、ほかの地域でもやれる知見を普及させていく、いわゆる医療の均てん化という2つの面があると思うのです。
 今回、1-1の中で、5番目のAIを活用したリアルタイムの内視鏡診断サポートシステムや、6番の膵臓がんの新バイオマーカーによる検診などが医療の均てん化として果たす役割が大きいと思います。お聞きしたいことの1つは、両方の研究それぞれについて知財、がんセンターがどのようにかかわっておられるのかということと、実際に6番は検診が始まっている地域もあるようですが、5番が今後、日本国内で普及したときに、もちろん知財も関係してくるでしょうし、いわゆるどの程度の費用負担といいますか、そういったことで均てん化が望めるのか、その辺がもしわかりましたら教えていただきたいと思います。
○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 ありがとうございます。人工知能はこの2つの領域だけではなく、例えば電子カルテから有用な情報をオートマチックに抜き出すようなやり方とか、さらには病理画像をAIで診断するとか、さまざまなアプローチを現在も試みています。
 今、御指摘されましたリアルタイムの内視鏡と膵臓がんのマーカーについては、後者はメーンががんセンターで、前者は診断機器の内視鏡のメーカーと共同の知財を持っています。前者に関しては少なくとも医者よりははるかに診断能力が高いという結果が出まして、現在がんセンターだけの臨床試験ではなくて、他のセンターで他の内視鏡を用いても同じような診断能力があるかということを検証するための前向きの臨床試験を計画しております。
 後者の膵臓がんのマーカーに関しては、アメリカの早期がんを診断するマーカーのための組織としてEDRNというのがあるのですが、そこが日本のいろいろなマーカーをアメリカのコホートで検証したところ、パスしたのはこのマーカーだけだったのです。それで現在は鹿児島県において人間ドックの中に組み込んで、いわば臨床性能試験をそこでやっているという段階です。実際にそれが承認された場合にどのような薬価がつくかというのは、今の段階ではわからないというのが正直なところですけれども、早期膵臓がんの診断に役立てばすばらしいことではないかと我々は期待しています。
○永井部会長 
 例のエクソソーム解析の話ですか。何年か前に堀田先生のときに十数種類のがんを早期診断できるということでしたけれども、その中の1つが今のEDRNなのですか。
○国立がん研究センター間野理事・研究所長 
 いや、これはたんぱくのマーカーでして、あるたんぱく質のC末のペプチドがマーカーになるというもので、この前のエクソソームの話とは別です。
 エクソソームに関しては少なくともバイオバンクの既存検体を用いた解析では、非常に高い診断精度が得られています。ただし、永井先生も御指摘のように、前向きでSOPをきちんとそろえた形の検体で有効性が証明されないと診断マーカーとしては使えないと私自身も思っていますので、現在、各マーカーについて前向きにがんの検体も正常の検体も同じプロトコルでサンプルを収集して、診断マーカーとしての有用性の検証スタディーを昨年始めたところです。それはまた結果が出次第、御報告したいと思います。
○深見委員 
 関連なのですけれども、内視鏡の酸素飽和イメージングのところなのですが、薬事承認されたのはこういった機能を持つ内視鏡としての薬事承認ですか。それとも何か別な顕微鏡自体というよりは、何か試薬等を使ってこういう飽和度を見るという意味の薬事承認ですか。
○国立がん研究センター大津東病院長
 通常はこれは診断ですので、薬事承認までは本当は要らない、認証だけでもいい部分があるのですけれども、臨床試験をやって臨床での有効性という部分を出して薬事承認というものをとっています。機器に関しましては、低酸素のイメージングできる内視鏡を拾える部分と、解析の部分を含めて機器全体としての承認という形になっております。
○深見委員
 酸素飽和度をはかるということが、診断において例えばそれは正常組織とがんの診断になるのですか。
○国立がん研究センター大津東病院長
 そうです。肉眼診断においては正常組織とがんの境界の領域です。特に割と胃がんの場合だと早期の表層型といいまして、表層に広く進展して、なかなか通常の内視鏡ではわかりにくい場合がございまして、そういった場合にこのイメージングをすると、色調ががんの組織というのは割と低酸素の状況が多いので、そこでクリアに出てくるケースもある。そういったところの臨床的有用性と、もう一つは機能として低酸素の場合だといろいろな薬剤、血管新生阻害剤というものがございまして、それが組織の酸素の状態によって効果が違うということがわかってきていまして、実際に組織の酸素濃度を定量化することによって、お薬の効く効かないということを予測できるような機能としても有効性を出そうという試験を今やっているところです。
○深見委員
 血管が入っているというのは酸素飽和度が高いという意味ですよね。そうすると例えば血管阻害剤が効きやすいということの診断になる、お薬が使えるという意味でよろしいですか。
○国立がん研究センター大津東病院長
 そういうことです。
○花井委員
 実は今、薬機法改正をやるに当たって、ある程度奏効率で見て早目に出そうという流れの制度を検討しているのですけれども、一般の医薬品であれば一定程度それで出した後に、本当に最終的にその有効性がどの程度のものかというのは、ある程度HTAの議論に委ねても構わない部分がどうしてもあるのですけれども、抗がん剤だけは別格で、結局エンドポイントが明らかでないと毒性自体とのバランスが抗がん剤は特殊な領域で、当然イギリスのNICEでも抗がん剤の扱いは非常に困っていて、この制度をするに当たって承認した医薬品の有効性というものが上市以降、できるだけ速やかにわかるほうがいいわけですね。メーカーにいろいろな承認条件をつけて調べるのですけれども、それに余り厳密な条件をつけるとそれはメーカーの負担も大きくなるところで、そこでこういったビッグデータは非常に期待されるのですが、いわゆる製薬企業がこういうデータを利用して、市販後の有効性なり安全も含めて評価できるような利用というのは何とか早く実現しないものかと思っているのですけれども、どうですか。がんだけ特別なので、がんだけそこがそろうと後の医薬品が相当議論しやすくなるし、あとMID-NETではエンドポイントもわからないので、こういったビッグデータは非常に期待されるのですが、それはどうなのですか。
○国立がん研究センター大津東病院長
 幾つかの方向性があります。HTAとしてどこまで評価するかというのは日本だけではなく世界的な関心がありまして、1つの取り組みとしてESMOというヨーロッパのメディカルオンコロジーの学会が、薬の薬効評価を臨床的な意義を段階的に例えば増悪までの期間であるとか、生存であるとか、そういったことで段階を決めて、今、ヨーロッパのほうではガイドライン的なものを各規制当局に受け入れていただいて、それをもとに薬の有効性と薬価を決めていくような取り組みを学会が主導でやっているところはございます。
 実際の有効性、特に今もこういったゲノム医療でどんどん薬の対象例というのが希少化していまして、実はそれは究極にいくと一例一例みんな違うということになってくると、臨床試験としての今までのマスの評価とはなかなかしいところです。ビッグデータというよりも個々に質の高いものを見つけていくというのが今、SCRUMとかでやっている、レジストリも登録を開始しましたけれども、通常のプラクティスでのデータではなくて、かなりそういったターゲットになる遺伝子対象者を対象として、かなり質の高いデータを集めているところです。
 安全性のところは、御指摘のとおりMID-NETはどちらかというとがん以外の良性疾患のほうが主で、あそこからだけでとれるデータというのはある程度限られていますので、今、多分、中央病院の藤原先生のグループががんの副作用とかのそういった市販後調査に対応できるようなシステムをつくっているのではないかと思います。
 有効性のところは我々のところでは今、CDISCといいまして治験の国際基準があり、国際的に今、我々のところはデータ統合をやっていまして、そのための自動収集から国際基準のデータに自動的に変換できるようなシステムというものをつくっております。ですからそういったところが完全につながってできてきますと、花井委員の御指摘のようなものが、日本が一番先ぐらいにつくれるのではないかと期待しております。
○永井部会長 
 祖父江委員、どうぞ。
○祖父江委員
 私も今の議論は非常に、ぜひがんのほうでやっていただけるといいなと思っているのですけれども、私は神経のほうなのですが、神経でも条件つきの承認をまず1年かそこらの治験で出して、その後、PMSでリアルワールド型にこれを検証するという方向に少しずつ向いていると思うのです。だから例えば5年以上、10年後とか10年単位ぐらいの予後について、リアルワールドで本当に薬が効くのかどうかということをどうやって検証するのかというルールというかパラダイムがないのです。今おっしゃったように、いろいろなところで考えられていると思うのですが、がんは例えばアルツハイマーとかパーキンソンとか、ほかの神経の疾患に比べてかなりクリアカットにやれるのではないかと期待しておりまして、むしろ先導を切って、その前の段階だとGCPというスタンダードがあるのですけれども、それを超えて長期のエフィカシーをリアルワールドでどうやって見るのか。そのことをぜひ提唱していただく方向が期待されるのではないかと思いますが。
○国立がん研究センター大津東病院長
 まさに御指摘いただいた点で今、FDA、アメリカのほうもほぼ同じような悩みというか、いろいろと我々のところも、企業治験は今は国内治験ではなくてグローバルな開発がほとんどですので、結局、規制側もPMDAだけに合わせるのではなくてFDAとの歩調をとっていかなければなりませんので、そこの部分はまさに議論をしていろいろ国際的に合わせる話をやっているところでございます。ただ、恐らく国家的にできているレジストリとしては、アメリカより日本のほうが、先生のところもそうですけれども、結構持っているのではないか。多分今度、間野先生が立ち上げるC-CATもそうですし、恐らく国家的につくれるのは日本のほうが早いのではないか。
○祖父江委員
 私も同感で、日本のほうが非常に緻密で、かつ精度の高いものがつくれるのではないかという感じはしておりますので、ぜひそれを先導的にやっていただけるといいなと思っています。
○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 C-CATに関して言いますと、恐らくこれから毎年10万人ぐらいのデータが集まってくるのはそう遠くないと思います。現在はがん登録の情報と突合することを最初から視野に入れたデザインにしていますので、無増悪生存期間なんかは難しいと思うのですけれども、Overall Survivalの解析はC-CATのデータで、日本人の少なくとも化学療法を受けるがんの患者さんに関しては大まかな評価ができるような時代になると思います。
 それから、C-CATでは重篤な有害事象、グレード3以上の有害事象の情報を集めることを念頭に置いてデザインしていますので、GCPグレードみたいな質の担保というのは難しいのですけれども、リアルワールドで物すごい数の患者さんに対する有害事象のデータが国としてとれるという国になるのだと思います。
○藤川委員
 去年、過去の研究の推移をきれいに整理していただきたいということと、将来的なアウトカムはどうなのかということがわかる資料にしていただきたいということが反映されて、素人目にも、難しい面はまだいっぱいありますけれども、毎年の御説明のつながりがわかるようになったのでありがたいと思います。
 すばらしい研究をどんどん積み重ねていらっしゃって、特にゲノム医療が進むようになれば、個々の人の遺伝子に訴えかけて余計な治療もしなくてもいいという面では、無駄なコストがかからないという方向にはなるのかと思うのですけれども、とはいえ金額はきっとお高いのかなと思うので、治療の高度化が進むのはそれはそれとして、みんな治りたいというのはもちろんなのだけれども、国民にとって財政への影響力というか、がんセンターが頑張れば頑張るほど医療費が高くなってしまうのでは困るのではないかと思う面も一部あると思うのですが、そういったことに対する研究の過程でコストを下げるための努力というのが、どのようなところに見えてくるのかということを教えていただけたらと思いました。
○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 さまざまな立場からお答えできると思うのですけれども、まずC-CATのセンター長としてお答えしますと、例えばがん遺伝子パネル解析がどのぐらいの値段になるか、今のところ私どもでは全然わからないのですけれども、海外で例えばファンデーション1が3,500ドル、だから40万円ぐらいです。30万人に40万円のお金を使ったとすると1,200億円がゲノム解析のために必要になります。そうすると、それが高いか安いかというと微妙なところではないかと思うのですけれども、実際に今、分子標的薬を投与する際に治療薬の選択に使うコンパニオン診断薬でも10万円ぐらいする診断薬が幾つもあるのです。ですのでどれぐらいが適用と見るか、さらにこれは将来的には必ず値段は下がってくると思いますから、遺伝子の診断というのは比較的リーズナブルではないかと思います。
 一方、このような新しい診断機器、おっしゃるように高い分子標的薬や免疫療法のお薬というのが、どれぐらいの社会に対するコストで、どれぐらいのメリットがあるのかということは、科学的に調べないといけない時代になっているのだと思います。私たちのところでもゲノム医療の医療経済学的な効果がどれぐらいの、イギリスなんかではそういう研究が盛んなのですけれども、患者さんのアクティブな生活を維持するのにどれぐらいかかるか。どれぐらいなら国として保てるかというのはがんセンターだけの問題ではなくて、厚生労働省だけの問題でもなくて、それは日本全体で考えていただかなくてはいけない。ただし、考えるための資料みたいなものは、科学的に我々が収集していかなくてはいけないと思っています。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。
 続いて1-3から1-5、医療の提供とその他、業務の質の向上に関する事項をお願いします。
○国立がん研究センター大津東病院長
 最初に評価項目1-3、医療の提供に関する事項に関しまして私、大津から説明させていただきます。
 自己評価に関しましてはSとさせていただきました。我々のところの目標としましては高度先進的な医療の提供、そして質の高い医療の提供と開発的な研究、それから、患者さんの視点に立った良質かつ安全な医療の提供ということで、Ⅱのところに目標と実績の比較で書いてございますが、目標値をほぼ全て両病院とも達成してございます。高度な医療をしながら診療としても十分経営面も含めて対応しているかと思います。
 そして、昨年度としましては、特記事項としまして右のページの丸1に東病院が新しい要件下で初の特定機能病院を取得いたしました。これによって既に中央病院は取得してございますので、同一法人で初めて複数の特定機能病院を有する法人となります。中央病院、東病院ともに既に臨床研究中核病院のほうは取得しておりまして、両病院とも国内トップレベルの病院であることが、この点からも評価されたかなと思っております。
 2番目は、先ほど間野所長からお話されましたように、ゲノム医療中核拠点の体制で両病院ともに中核病院に指定されまして、研究所で開発されたオンコパネルの先進医療が既に両病院でスタートしたところでございます。
 以上です。
○国立がん研究センター西田中央病院長
 引き続いて、中央病院の西田が御説明申し上げます。
 14ページの下のところからまいりますけれども、私どもは患者さんにできるだけ負担が少ない侵襲的な治療をやろうということで取り組んでいます。御存じのように内視鏡治療、IVRは世界トップレベルです。
 最近、力を入れておりますのが15ページの左側を見ていただいてわかりますように、腹腔鏡手術でもそういうことをやろうということで、NHK、オリンパス、NTTデータと共同して8K内視鏡手術の開発を行っております。これは以前、1990年ごろから腹腔鏡が開発されて今、半分以上の手術が腹腔鏡になりつつあるのですけれども、当時の画像を今のレベルから見ますと、非常に霞がかかったような画面で手術をしていたわけです。正確に見ることによってより安全で、より高質な外科手術が提供できるようになると期待されます。
 そのプロセスですけれども、15ページの右上を見ていただいておわかりのように、自由診療の部分が現在終わって、今年度に入って先進医療Bとしてやっておりまして、来年度にはぜひ承認申請に持って行きたいと思っています。
 先ほど間野からも御紹介がありましたように、15ページの下には東病院のNEXT及び中央病院の研究所の中でやられています機器開発の御紹介がございます。本件は、先ほど御紹介がありましたので割愛させていただきます。
 16ページ、平成26年、4年前からがんセンターでは希少がん、難治がんに力を入れようということで、希少がんセンターをつくってやってまいりした。その中でホットラインを設置しました。ホットラインは今や年間5,000人以上の患者さんの御相談に応じております。そういった事業並びに軟部腫瘍などでワーキンググループをつくって明確な指針を示したことが評価され、今年度、希少がん中央機関としてがんセンターが指名されております。この中では病理診断とか希少がん特有の問題を解決すべく、ただ単にがんセンターの中だけではなく、外とコラボレーションして共同開発をしております。
 特に希少がんはこれまで治療法あるいは診断法が明確ではなかったので、16ページの右側にありますようにMASTER KEYプロジェクトというものを昨年度から立ち上げ、まず希少がんのレジストリをすると同時に、バイオマーカーに基づく臨床試験を始めました。昨年度、複数試験開始し、今年になって既に3試験ほど開始されていますし、今後も幾つか片手以上の医師主導あるいは企業主導の治験を開始する予定になっております。このように希少がんの開発に関して尽力してまいりました。
 17ページ、このようにこれまでは多くの場合はキュアを目指した治療をやってきたのですけれども、それだけでは十分ではないということで、4年少し前、東病院ではサポーティブケアセンターを、2年前に中央病院では患者サポート研究開発センターをつくって、ケアの部分にもエビデンスと臨床開発を入れていきたいということで臨んでまいりました。特に17ページの左側を見ていただいてアピアランスケアに関して、アピアランス支援センターを25年7月につくって、現在ではこの教室はオープンしますと数分でいっぱいになるような状況です。各拠点病院もこれに取り組んでいっていただけるようになって、均てん化も進んでいっているかなと思っています。
 17ページの右側を見ていただきますと、このケアの部分や支持療法の部分はまだ十分にエビデンスがないということで、我々臨床研究ネットワークを造って~J-SUPPORTと申しますけれども、昨年度は9試験を行い、今年度は予定としては7試験を追加でやる予定になっています。こういったことで支持療法の領域にもエビデンスを出していきたいと思っております。
 私からは以上です。
○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長 
 続きまして、がん対策情報センターの若尾から評価項目1-4及び1-5について御説明させていただきます。
 まず評価項目1-4、18ページをご覧になってください。人材育成に関する項目です。こちらでは国内外の有用な人材育成の拠点となるように、がん医療研究のリーダーとなって活躍できる人材の育成及びモデル的な研修の実施に努めるという目標に目指して活動しております。29年度としましては、がんに関する医療及び研究者の人材育成において、国内のみならず海外の人材育成も大きな実績を上げたということで、自己評価はAをつけさせていただきました。
 数値目標としましては18ページの左側にございますが、指導者的立場にある医療従事者への研修プログラムの提供を、目標9に対して10項目実施させていただいております。
 リーダーとしての人材育成なのですが、丸1です。全国のがん拠点病院の院長、部長等70名以上及び大学病院の教授50名以上を輩出しているという過去からの実績を引き続き29年度も多くの研修を実施しました。
 右側の丸3をご覧になってください。全国の医療従事者を対象とした専門研修としまして、38種類の専門研修を実施し、昨年度だけで5,757名の医療従事者の研修を実施しております。及びこの中で先ほども地域の連携が非常に大事だというお話がございましたが、地域緩和ケア連携調整員という新しい形の研修、これを昨年度は新たにアドバンスコースというより進んだ地域での連携を進めるための研修プログラムを作成しまして、それを初めて行ったというところがございます。
 丸4の海外からの医療従事者におきましては、特に内視鏡科を中心に長期の海外からの研修者がふえておりまして、昨年度は194名の研修者がいました。これは5年前に比べて倍増しているという状況です。
 19ページ、こちら評価項目1-5です。医療政策の推進に関する項目となっています。こちらでは政策提言や医療の均てん化あるいは情報の収集・発信において大きな成果を上げたということで、自己評価Aをつけさせていただいております。
 数値目標としましては下にございますが、病理診断コンサルテーションの数として目標330に対しまして459の実績を示しております。
 まず丸1のところです。国への政策提言としましては、組織としての活動というわけではないのですが、国の審議会、検討会などに多くのセンター職員が委員として参加しております。こちらは昨年度、前年度に比べまして大きく伸びているところです。
 右側のページ丸2をご覧になってください。医療の均てん化の部分では、まず都道府県のがん対策の支援ということで、都道府県の担当者に向けた研修を実施するとともに、特に昨年度は検診の分野において検診の全国調査を行って、それらの結果をデータブックとして公表しました。それらを用いてどのように県庁が市区町村のデータを分析するか、あるいは評価するかということについての研修会も含めまして、適切ながん検診の精度管理を進めるための対策を進めているところです。
 丸2としましては、拠点病院等の支援も強化しております。拠点病院の各病院の施設においてのPDCAサイクルを回すということも、拠点病院の整備指針の中で求められていることなのですが、それをやるためのプログラムをつくりまして、具体的には拠点病院の相互訪問による実地調査の支援をしております。それから、昨年度はがん診療連携拠点病院の整備指針の見直しという大きな事項が行われていたのですが、都道府県がん診療連携拠点病院の連絡協議会を通しまして全国の拠点病院からの意見を集約しまして、それを厚労省などに提案を行っております。相談支援分野におきましては、5ブロックで地域相談支援フォーラムを開催させていただいております。
 丸3で情報の収集、発信の部分です。まずこの中の丸1としましては、全国がん登録におきましてオンラインシステムの運用開始を行っております。現時点で全国4,800の施設をオンラインで接続されて、3,400から100万件以上の届け出を得ているという状況です。
 続いて院内がん登録におきましては、これは拠点病院が中心となりますが、427施設から70万件のデータを収集しております。昨年度は初めて拠点病院の5年生存率のデータを公表させていただきました。
 丸2の部分です。がん情報サービスの充実ということで、2点、御報告させていただきます。1点はアクセスの向上ということで、がん情報サービスはずっと地道な情報発信をしてまいりましたが、それが評価されたということもあると思いますが、Googleが昨年12月に検索アルゴリズムの変更を行いまして、それにより多くのがんに関する項目で検索ランキングがトップとなりました。
 小さい図なのですけれども、20ページの右側のGoogleというところをごらんになってください。それまで12月の前半では5位とか17位だったものが、9日の時点でほぼ1位となっております。これによりまして上のグラフがありますが、今まで大体月に200万から250万ページビューぐらいだったものが。12月以降、500万を毎月超えるような状況になっています。
 さらに検索エンジンはGoogle、Yahoo共通なのですが、その上に広告が出ております。Yahooとは広告より上にがん情報サービスを表示することの協定を結びまして、実施していただいているところです。さらにコンテンツとしましては膵臓がん、前立腺がんなど10種類のがんについて及び免疫療法などについて、患者さんにわかりやすい情報を複数の外部の評価者及び患者さんにも評価していただきまして、情報コンテンツし、発信しております。
 最後丸4をご覧になってください。そのようにインターネットの情報を強化するだけでは多くの方に、全ての方に情報を届けるわけにはいきませんので、昨年度の夏より一般の方から寄附をいただきまして、がん情報サービスの内容をまとめた冊子を全国の公共図書館に寄贈させていただくというプロジェクトを開始させていただいています。4月の時点で1都14県の43施設に寄贈させていただいて、今も寄附を募っているところです。
 私からは以上となります。
○永井部会長 
 ありがとうございました。
 それでは、御質問をお願いいたします。どうぞ。
○本田委員
 先ほどのところと引きずってしまうかもしれませんけれども、14ページの医療の提供に関するところで、がんゲノム医療のことを今後、研究だけではなくて実際の診療にもどんどん進めていくという方向性は大変期待しているのですけれども、例えば今は先進医療でオンコパネルの活用をされていてということなのですが、来年から保険診療も目指していく。そうした場合に今もそうなのですけれども、パネルでいろいろな対応を例えば肺がんの方が今、肺がんの治療薬として認められていないお薬にヒットしたりとか、そういうケースも出てくるかと思うのですが、そういうことに対する現状での臨床医療の中での対応というのはがんセンターではどうされているのかとか、がんセンターだけではなくて、そういうことを全国の病院に対してどのような指導、国と一緒にとは思うのですけれども、どのような状況にされているのか教えてください。患者さんはきっと迷っていかれると思いますので。
○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 現在の対応については院長から御紹介したいと思うのですけれども、C-CATで来年から日本がつくっていくがんゲノム医療に向けてのネットワーク、そこで何をしようと考えているかといいますと、今おっしゃるように、御指摘のように標的遺伝子はわかって、だけれども、対応する薬が例えば日本では別の臓器で承認されていて適用外になるということで、言えばゲノム難民というか、診断だけされるけれども、治療法がないという方が今の状態だと非常に多いと思うのです。がんセンターはその中にあっては例外的にたくさんの臨床試験を走らせることができるので、そこにリクルートすることはできるのだと思います。
 来年以降の体制は、せっかくそういう中央のデータセンターとしてのC-CAT、それから、ゲノム中核病院、連携病院というネットワークをつくりますので、そこを使って例えば今、軽はずみには言えないのですが、適用外使用みたいなことを拠点だけに、あるいは拠点と連携のネットワークだけに限って医師主導治験のバリアを下げたり、さらにはそこで施設限定の早期承認制度みたいな形など、国民への薬のアクセスの最大化をこのネットワークを使ってしていただきたいと思います。今、ゲノム医療に向けた課題ごとのワーキンググループを中核拠点病院とC-CATの間で作っているのですが、その中に薬剤到達を最大化するための施策を議論するワーキンググループもあります。このネットワークをつくったからこそ薬に到達できる患者さんを最大化することを前向きに検討しています。
○国立がん研究センター西田中央病院長
 NCCオンコパネルの後半部分の解析をしてみますと、大体そういった患者さんの6~7割が未承認薬、インベスティゲーショナル・ドラッグなのです。ですから臨床試験をまず1つは増やす。例えば東病院を中心にやっているSCRUMの中で増やすというのが1つの手。
 もう一つは、あと3割ぐらいは適用外使用を考えていかなければいけない。それは今、間野が申し上げたような厚労省と一緒に相談しなければいけないのですけれども、いろいろな制度を工夫していかなければいけないかなと考えております。
○本田委員 
 現状では臨床試験を走らせるものにリクルートできる部分はちゃんとリクルートされているのだと思うのですけれども、それ以外は体制の整備をアピールしていくという状況ということですか。
○国立がん研究センター西田中央病院長
 ただし、これはがんセンターだから6~7割カバーしているので、ほかのいわゆる中核が全部同じレベルかというと、必ずしもそうではないということは御認識いただいたら非常にありがたいかなと思います。
○永井部会長
 花井委員、どうぞ。
○花井委員
 人材育成に関することで教えてほしいのですけれども、今がんの専門医を育成するとして、いわゆる2年、法定研修が終わった後に専門医を目指すということかもしれないのですが、多くの場合はある程度、法定研修期間中から目指す方向があってみんな学んでいくと思うのですけれども、そういった今の制度の中でいわゆる専門病院としてやりにくいとか、もしくはここが有利とか、そういうところはございますでしょうか。国際のようにああいうところは法定研修医がぼんと来るのでしょうけれども、専門病院で研修して、しかし、専門医も育成するというところで、今の研修制度で問題点とかあれば教えてください。
○国立がん研究センター大津東病院長
 問題点というよりも、御指摘のとおりがんセンターにとっては多分ほかの国際以外のナショセンもそうでしょうが、不利だろうと思います。
 結局、我々のところもがんだけというか、専門のところだけですので、1段階目のところのいわゆる専門医機構が言うところの基幹病院にはなれないというところが大きな問題です。ですから大学あるいは市中の基幹病院とたくさんのところと今、連携をとりながらやっているというところが大変やりにくくなっています。結局、大学のプログラムの中で1段階目から後期の2段階目のところまで全部ある程度決められてしまうので、どちらかというと我々がこれから専門医というかレジデントというか新しい対応策をとっていくには、多分、市中の基幹病院で一般の1段階目が終わった方たちの2段階目の専門研修としてがんセンターに来る。ですから内科とか外科とか放射線という基盤の専門医をとった後の方に来ていただくような形により集中していく。もう既にレジデントのところはかなりそうなってきていますので、いずれにしても多分、中央病院もかもしれませんが、我々のところは大学病院からというよりはむしろ一般の市中の基幹病院から来て、そこでレジデントで鍛えていくというのが中心ですので、恐らくその枠は続くのかなと思っています。ただ、以前より少しやりにくくなってきているのは確かだと思います。
○国立がん研究センター西田中央病院長
 卒後1、2年目の初期研修はうちではできませんので、やっていません。その後の専門医教育はどこまでできるかというと、病理と皮膚科はできるのですが、それ以外は良性疾患が入ってくると全くできないので、5年目以後が現在のところ対象にならざるを得ない。これまで3~5年で来ていた人たちががんをやりたいと思っても、5年たたないとがんセンターに来て研修することができない状況に今はなっていると御理解いただけるとわかりやすいかなと思います。
○永井部会長
 斎藤委員、どうぞ。
○斎藤委員
 3つ教えてください。
 アピアランスケアの支援をなさっているということを最初に伺ったときには非常に画期的に思ったのですが、それと比べて今回注目というのがどこが注目なのかよくわからなかったので、それをもうちょっと教えていただけますか。
 それから、民間企業との連携、オリンパスであるとかNHKであるとかいろいろなさっていらっしゃいます。それは先方からアプローチがあるのか、あるいはどうなのか。民間の企業との提携のやり方、アプローチを教えてください。
 そして16ページのところでは単に製薬企業とだけ書いてあって、実際の名前が書いていないのは、これはコンフィデンシャルの関係で名前が出せないのか何なのか、それを教えてください。
 以上です。
○国立がん研究センター西田中央病院長
 最後のところが一番簡単で、これはまだ企業の了解をとっていないので名前が入っていないだけです。
 2番目のほうはアウトリーチと両方ございます。企業様からおっしゃってこられるものもありますし、我々から企業に積極的に声をかけているのも最近はふえております。
 アピアランスに関しては、アピアランスセンターを立ち上げてそれなりに話題になっていたのですが、まず1つはその成果が評価されて、第3期のがん対策推進基本計画の中に入れていただいたということ。それから、各病院がその意味を理解し、今、教室を始めているのです。その教室に対して我々がアウトリーチしてアピアランスを広めていって、なおかつ今回AMEDの資金なんかいただきながら、J-SUPPORTではないのですけれども、アピアランスをケアすることによって患者さんのQOLがどう上がるかという臨床試験も始めたということがあります。
 以上です。
○国立がん研究センター藤原企画戦略局長
 第3期がん対策推進基本計画に入ったのが、アピアランスは今年度、一番大きな点ではないかと思います。
○永井部会長
 本田委員、どうぞ。
○本田委員
 20ページの情報提供のところで、先ほどの御説明でGoogle等のアルゴリズムが変わったことで大変伸びたというのは、それはそれで喜ばしいことだとは思うのですけれども、正しい情報ということと患者さんが求める情報もしくは患者にとって理解しやすい情報というのは、似て非なるところもあるかと思うのです。それで先ほどの御説明の中で患者さんにも情報の評価なりをしてもらっていると一言おっしゃっていましたけれども、具体的にどのような形でブラッシュアップされているのか教えてください。
○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 がん対策情報センターでがん情報サービスを作成するに当たって、患者市民パネルという形で全国100名の患者さんを登録していただきまして、その患者さんから情報に関する企画会に参加していただくとともに、実際にこれから発信しますコンテンツについてはレビューを行っていただいております。そのレビューはわかりやすさだけではなくて、患者にとってつらくないかと、その辺の視点も含めてレビューしていただいたものをさらに専門家のレビューも並列して行って、それらを合わせた形でコンテンツの発信をさせていただいているところです。
○永井部会長 ありがとうございます。
 それでは、次に評価項目2-1から4-1につきまして、よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター廣田統括事務部長
 廣田から説明させていただきます。
 21ページをお開きください。まず1つのポイントでございます経常収支から説明をさせていただきますが、29年度は経常収支13.7億、収支率は102%、3期連続のプラスとなりました。
 その要因でございますが、24ページをお開きください。収益の部分でございますけれども、診療収益としては15.4億、研究収益、補助金収益として13.8億、一方で費用としては給与費が13.2億、委託費、消耗品などで26.4億等となっていますが、このうち12.4億につきましては先ほど来、築地キャンパスの研究とNEXTの新設を申し上げましたが、その移転経費として単年度の経費の支出でございますが、12.4億が一時的に支出となっているということでございまして、経常収支額は昨年度26.3億から13.7億になった要因の1つとなっています。
 22ページ、これは財務状況にも関係してございます。外部資金の獲得状況についてでございますが、体制として競争的資金の募集情報を収集し、速やかに情報提供を図り、応募を促すような体制を構築し、これも増につながった要因の1つと考えています。特に黄色の部分でございますが、共同研究費については27年度から増加傾向にありまして、28年度からも約10億の増となっています。一方で寄附金の獲得についても1.1億から1.4億、23%の増と増額傾向になっております。
 23ページ、内部統制の関係につきましては、連携を密に適正な構築を進めているところでございます。また、広報についても築地、柏キャンパス専属スタッフを配置し、積極的に進めております。29年度はブルーでございますが、5大紙の掲載状況が大幅に伸びている状況でございます。
 以上、3項目のうち3-1、4-1は標準であるBとしています。一方で2-1でございますが、定量的な指標だけでは非常に厳しいと考えておりますが、まず21にお戻りください。1の効率的な業務運営体制でございます。これは1つがセンター全体の情報システム、それから、ネットワークについて適切に整備、運営、効率的な活用を図るため29年10月に情報統括センターを設置しました。これは横串機能の構築でございます。
 2つ目といたしましては、財務ガバナンスの強化といたしまして、部門ごとの責任と予算上限の明確化を図るため、セグメント予算に加え部門別予算を設定いたしました。ただ、この部門別予算についても財投の対象、それから、約1,000万以上の投資につきましては理事長が委員長とする投資委員会を設け、必要性、費用対効果を審議する体制を確保したところでございます。
 さらに今後、長期的に安定的な運営を図るため、中長期キャッシュフローを踏まえた6カ年業務体制をまとめました。これは今後、築地の病棟改修、柏の建てかえ等々、これは中長期的に体制強化がございますので、長期的な投資計画を基盤とするような業務体制をつくったところでございます。したがって、2-1につきましては経常収支3年プラスに加え、このような定性的な視点も加え、自己評価はAとさせていただきました。
 以上でございます。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。非公開資料で31ページに参考資料9、減価償却費の累計額のことをお聞きしたのですが、がんセンター392億というのはこれまでに積み立てた減価償却費ということですか。お聞きしたかったのは積み立てた額と、現在、ストックとして持っておられる額です。
○国立がん研究センター廣田統括事務部長
 現状のキャッシュは130億です。
○永井部会長
 それは減価償却費として確保しているのですか。
○国立がん研究センター廣田統括事務部長
 キャッシュフローとしてです。
○永井部会長
 本来は減価償却費として幾らぐらいないといけないのか。施設と備品合わせて求められる減価償却額の何%ぐらい確保されているのですかということをお聞きしたかったのです。国と民間とでは違うかもしれないのですけれども。
○国立がん研究センター廣田統括事務部長
 私も4月からここに異動してきたのでございますが、今どういう状況かといいますと、先ほど長期キャッシュフローの計算をしているということで、今後、十数年にわたって必要な経費を今、積んでございまして、それに伴って毎年の投資を踏まえて詳細の計算をしているところでございまして、現時点でお答えが。後ほど回答させていただきたいと思います。
○永井部会長
 藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
 2-1のところをAにされている理由として、21ページに注目という2つを掲げられて御説明いただきました。
 丸2のほうなのですけれども、部門別予算設定ということによる具体的な効果をもう少し説明していただけたらと思います。
○国立がん研究センター中釜理事長
 センター全体として中長期的な投資計画を立てる。その中で年度の投資をどうしていくかという視点から全体の運用を考えていこうと。その充実が財務ガバナンスの充実なのですが、従来、振り返ってみると毎年大体50億ぐらいの投資、45~50ぐらい投資がされてきたのですが、年によってはかなり膨らんで60あるいは90、そういうものを統一的に、少し長期的にならしていくような努力をするということで、実際の効果として検討の結果、今のがんセンターの体力からいくと年間総額にして投資額、それは保守改修も含めて45億程度の枠内で運用するのがベスト。ただし、それには毎年二十数億の収益を上げながらということだと思うのですが、そのことをもろもろ検討した結果、当初予定していた今年度の最終的な見込みが100億ぐらいだったのが130までリカバーできているというところ、実際それは短期的かもしれませんけれども、そういうことを繰り返していきながら、さらに単年度ではなくて数年、5年、10年という期間でそのあたりの計画を立てながら、実際の効果を評価していきたいと考えているころです。この1年に関してもそのくらいの効果があったかなと考えています。
○永井部会長
 祖父江委員、どうぞ。
○祖父江委員
 外部資金の獲得のところで、今おっしゃったように27年度からほぼ倍々ゲームの形で非常にふえてきていますね。これは非常にすばらしいなと思って拝見していたのですが、中身としては企業との共同が結構ふえているのではないかと期待して聞いていたのです。
 恐らく今後ナショセンの非常に重要な柱として、これが非常に重要だと思うのですが、どれぐらいの数、例えば企業だとすれば数でどれぐらいの、例えば億単位なのか何千万単位なのか、その辺の規模感と、もしできればどういった内容、どういう領域のことが多いのか教えていただけるとありがたいなと思ったのですが。
○ 国立がん研究センター中釜理事長
 では私が記憶している数字で申しますと、昨年は企業との共同研究は大体25億ぐらいだと思うのですけれども、そのとき大体共同研究件数としては250件ぐらいだったかと思います。それは大小さまざまなので額的に押し並べると、割り算をすると1,000万円平均になりますが、多いもの少ないものが混ざってそういう状況だと思います。
 例えば共同研究経費の中で知財収入というのも同額ぐらいありますし、そのあたりのところ、知財収入は大体一定の割合は確保できているのですけれども、企業との共同研究というのはそういった意味では増員の1つのファクターかと思いますし、そこをどうやって今後伸ばしていくか。先ほど言いました企業連携ラボを活用しながら、成果を出していく部分はまだ伸びしろがあるかなと考えているところです。少し違っていたら訂正していただきたいのですけれども、大体。
○国立がん研究センター大津東病院長
 恐らく臨床側で言うといわゆる企業資金での医師主導治験というものがふえてきていまして、額面上かなり高い額になっていますけれども、それがそのまま利益になるかどうかというのはまた別の問題で、ただ、額面上は医師主導治験がふえてきているということと、あと中央病院でもMASTER KEYとか始まってSCRUMみたいなああいう形式でやるとかですが、額面上はふえていますが、それが収益という話とは若干違うかなと。
○国立がん研究センター西田中央病院長
 追加しますと、がんセンターは東も中央も力を入れているのはTR研究です。ここ1、2年ぐらいでTRの研究費の部分も大分ふえてきていると御理解いただければありがたいかなと思います。
○祖父江委員
 どうもありがとうございます。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 もしございませんようでしたら、監事からの説明をお願いしたいと思います。監査報告をお願いします。
○国立がん研究センター小野監事
 監事の小野です。
 監査報告は、既にお手元の資料にありますように、無限定適正意見ですので問題ありません。
 業務面について一言、申し上げます。法人から各部門について、いろいろ成果について御説明を申し上げましたけれども、一昨年から今年にかけましては今回の説明に出てきましたようにビッグプロジェクトが目白押しでございまして、今、申し上げたような成果を上げながら築地では新研究棟、柏ではNEXTという次世代の外科内視鏡治療開発センターを完成させました。それに加加え、国策とも言える全国のがん登録を情報センターでオンラインシステムを稼働させ、研究所の間野所長が責任者としてゲノム情報の管理センターを稼働させました。私が監事を務めてからこれだけ大きなプロジェクトが、もちろん導入、リードタイムがあったわけですけれども、これだけ集中したということは初めてでありますし、大変職員の方の負担は大きかったと思います。そういう時期に一方でそれぞれの本来の成果も上げていただいたということです。
 もう一点は、これはセンターに限らないかもしれませんけれども、いわゆるハードの予算というのはそれなりにつくという形が多いかと思うのですが、実際に目に見えないところでのソフト、運用面の予算あるいは人の手当、そういったものについて必ずしも十分なリソースというものがなかなか確保できないのが、今の日本の現状だと思います。
 しかしながら、御説明がありましたプロジェクトの効果を出すには、いわゆるAIですとかそういったものも力を入れていかないと、これから世界との競争の中でどれだけ闘っていけるかという問題になります。AIなどは当然、医療者だけではなくて、ITから統計からそれに対する情報保護の問題ですとか、非常に多様な専門的な人材が要るということですので、そういったことを提携するにせよ、内部化するにせよ、どちらにしても必要なコストがかかるということです。国家的な競争にかかわるところを担うのが国立研究開発法人という独法であろうと思いますので、そういったところを関係の皆様方の御理解を得ながら、センターのほうも努力をしながらやっていくことを、監事としては見守っていきたいと思っております。ありがとうございます。
○永井部会長
 ありがとうございました。
 続けて理事長から現在の業務運営の状況、今後の課題、改善方針等についてコメントをいただければと思います。
○国立がん研究センター中釜理事長
 きょう説明させていただきましたように、がん医療、がん研究に求められるものは非常に拡大している。それに応えるための開発研究というのも非常に高度化している。それを効率よく進めるための安定的な基盤、人的な基盤、研究基盤、そういうものは非常に重要である。それをうまく活用しながらより効率的に動かしていくということを今後さらに深めていく必要があるだろう。その1つとして、財務ガバナンスもそうですし、計画的な運用が求められる。さらには事務機能の強化は喫緊の課題だと思います。
 それから、今、監事御指摘のように、これからは国内だけではなくて特に希少がんの対応に関しては、国際的な視野に立った連携をいかに進めていくかというのが非常に重要で、C-CAT等を含めた、あるいはSCRUMのレジストリを含めたものを活用しながら企業を呼び込んでいって、アジア主導の創薬開発、アジア特有の疾患に対する開発を進めていきたいと思います。
 さらには超高齢化をする中で、医療提供のあり方というのはがんにおいても変わってくると思うので、そういうものも視野に入れながら中長期的なビジョンを綿密に立てていく必要がある。それが課題であり、今後の方向性というふうに認識しています。
 私からは以上です。
○永井部会長
 ありがとうございました。
 全体を通して何か御質問、御意見はないでしょうか。もしございませんでしたら、以上でがん研究センターの平成29年度業務実績評価を終了いたします。どうもありがとうございました。

(休  憩)

○永井部会長
 それでは、ただいまから国立研究開発法人国立循環器病研究センター平成29年度業務実績評価について御議論をお願いいたします。
 最初に理事長さんから一言、御挨拶をお願いいたします。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 国立循環器病研究センター理事長の小川でございます。
 まず最初に、6月18日、先月の大阪北部地震で循環器病研究センターはかなり被害を受けまして、医療経営支援課初め、たくさんの方々にいろいろお世話になりました。現時点でも1病棟を含む64床の病床がまだ稼働していない状況ですけれども、非常に早い復旧を目指してやっております。まずその報告と、本日は望月理事から研究全体のこと、小林病院長から病院全体のこと、さらに柳樂局長からは経営に関することを御報告させていただきます。
 それでは、よろしくお願いいたします。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 それでは、評価項目1-1及び1-2に関する業務実績と自己評価について御説明をお願いいたします。
○国立循環器病研究センター望月理事
 研究所の望月でございます。よろしくお願いいたします。
 5ページ、今年度の自己評価はSとさせていただきました。昨年度まで心臓レプリカ、カバードステントのことを報告させていただいたのですが、今年はより革新的に、もしくは治療法も開発できたということでSとさせていただきました。
 5ページに掲げますように、革新的な医療機器・医薬品の開発、治療法の研究開発、生活習慣病の予防法の研究開発の3つを軸にしておりまして、ページをおめくりください。6ページになりますが、1つ目には体外循環の人工心臓システムの医師主導治験を完了することができた点。2つ目として、ブルガダ症候群の突然死予測が非常に達成することができたということ。3つ目の生活習慣病の予防に関しましては、心房細動リスクスコアの開発ができましたことを報告させていただきます。
 定量的指標につきましては、目標値に対して140%の352件の論文を発表することができました。それから、循環器疾患の解明と医療推進に大きく貢献する目標として年2つとしておりましたが、3件として達成率150%ということでSとさせていただきました。
 7ページ、評価項目1-1の具体的な実績を説明させていただきます。
 1番目の革新的な医療機器・医薬品の開発につきまして、体外式連続流型補助人工心臓システムの医師主導治験を行いました。右側をご覧ください。本機器の特徴でございますけれども、動圧浮上の非接触回転型ディスポ遠心ポンプ、それから、強力な抗血栓性処理を施しておりますので、非常に長期間安定な駆動が可能となりました。これは従来の拍動型と違いますので、使用期間も6時間から30日に飛躍的に向上することが達成できました。この機器によりまして現在、心臓移植を考えていらっしゃる、それから、植え込み型人工心臓への展開もしくは離脱を考えているような患者さん方に対して、Bridge to Decisionの補助のシステムとしてこれが非常に有効であることを訴えさせていただきたいと思います。本機器に対抗するのは世界に1機しかございませんで、それに関しましても当センターの開発したものは非接触型で、しかも抗血栓性が非常に優れているということで強調させていただきたいと思います。
 8ページ、ブルガダ症候群の突然死予測に関して説明させていただきます。心臓の突然死というのは非常に問題となってございますが、中でも不整脈の1つの典型でございますブルガダ症候群、右上に示しますような青の正常の心電図に比べまして、赤の右肩上がりの部分が上がっているブルガダ症候群という特徴的な心電図を示す患者さん群において、SCN5A、下段に示しますようなソディウムチャンネル、ナトリウムチャンネルの遺伝子異常のありなしによって予後が違うということを明らかにすることができました。これは200カ月、10年近くのフォローアップによって差が出るということで、遺伝子の診断をすることが非常に重要である、植え込み型除細動器の適用を決める上でも非常に重要であるということを打ち出すことができました。
 9ページ、循環器病研究センターはもともと住民コホートを30年来取り組んでいまして、吹田スタディーと私ども呼んでいるのですけれども、それによりまして現在の住民の状態からどのような予後になるかということを、心房細動につきまして明らかにすることができました。
 右の図をご覧ください。緑と赤で示されているのですけれども、例えば50代の男性で心雑音がマイナスが左になります。心雑音がある人が右側になります。そうしますと赤い数字で示されるように、心房細動の予測確率が高くなることがわかります。また、X軸に循環器病のリスクでY軸に生活習慣と血清脂質のリスクが加味されてございますので、右もしくは上に行くに従って心房細動になる確率が高いということがわかると思います。これを逆に考えれば、循環器リスク、下段に示しますように収縮期高血圧を142から下げる、もしくは生活習慣病で過剰飲酒2~3合を減らすもしくは喫煙を減らす、HDLを増加するような運動をすることによってリスクを下げて、心房細動にならないようにするということを吹田の市民の皆さん方に啓発することができたということを御報告させていただきます。
 続きまして、評価項目1-2に移らせていただきます。10ページ、これまで私ども評価としてBを2年いただいておりまして、ここは理事長が何としても頑張らなければいないということで昨年、一生懸命頑張らせていただきました。実用化に関しては上段に掲げていますように産官学の連携強化、それから、循環器疾患情報の収集、登録体制、難治性・希少性疾患の原因究明や開発の治験・臨床研究を推進するということを掲げております。特に産官学の連携に関しては来年度、移転します新センター内にオープンイノベーションセンターをつくることを計画しておりまして、それに対する準備を進めております。
 また、丸2の循環器疾患の情報収集に関しては、循環器病統合情報センターを設置しまして、力を入れて頑張っておるところでございます。
 また、下段に示しますように連携強化に関しましては、オープンイノベーションのことを後で説明させていただきます、2つ目の循環器病疾患情報の収集に関しての一例として、カテーテルアブレーションのJ-ABレジストリに関して説明させていただきます。
 また、難治性・希少性疾患に関しては、トシリズマブの薬事承認が得られたことを説明させていただきます。
 定量的指標に関しましては11ページをご覧いただけますように、臨床研究、治験の実施件数、医師主導治験の数とともに大体150%を超えておりまして、後ほど述べさせていただきますが、先進医療の承認件数も年1件と書いてございますが、これは先進医療を3件飛び越しまして保険適用になっておりますので、説明させていただきます。
 12ページ、オープンイノベーションセンターについて説明させていただきます。来年度7月の新センターのオープンに向けて、オープンイノベーションセンターを設置することは昨年度も御報告させていただきましたが、今年度はさらに具体的に共同研究実施体制を確立するということで2つの会社、キヤノンメディカルシステムズとGEヘルスケアジャパンと2つの包括連携協定をもとに、さらに具体的な研究テーマを事前に決定することによって開始いたしました。
 また、右図をご覧ください。運営組織に関しましても現在、研究開発基盤センターという組織は国循にはございますが、改めまして産学連携本部を中心とした事業化推進、知的財産の活用、管理を行うように組織変更を考えております。また、研究拠点整備に関しましてもオープンイノベーションラボとして大体3,000平米の共同研究施設を設置しておりまして、なおかつ研究所の地下1階と1階には国内最大規模の動物実験施設を設置することによって、企業との共同研究を進めるというふうに考えてございます。
 評価項目1-2の情報収集と登録体制のことに関しまして、13ページをご覧ください。J-ABレジストリは、日本不整脈心電学会との共同研究として昨年5月からエントリーを開始しましたが、これを敢えて出させていただいた理由は表をご覧いただきますように、J-ABでは半年間で1万6,000超、これを今後10年間予定してございますので、30万のレジストリを予想しております。右側に書いてございますように、スペインとドイツと比べましても数では大幅に凌駕しておりまして、あとは質を向上していくということで素晴らしいレジストリにしていきたいと考えております。
 また、参加施設も日本全国のアブレーションができるカテーテル焼灼術をできる施設を網羅しておりますので、日本全国で日本不整脈心電学会と共同して大きなレジストリとして達成していきたいと考えております。
 また、難治性・希少性疾患に関する原因究明や創薬に関する臨床試験に関しては、13ページ右下に記載しております高安動脈炎に対するトシリズマブの薬事承認を挙げさせていただきます。本トシリズマブは慢性関節リウマチの画期的治療薬として使われてございましたけれども、研究所の部長が数例のトランスレーショナルリサーチを始めまして、それが功を奏したということで、企業を動かすことによって14ページをおめくりください。日本では右側に書いてございます動脈炎としては、日本の女性に起こる希少疾病として有名な高安動脈炎の臨床試験、また、海外では同企業が動脈の疾患である巨細胞性動脈炎に対するGiACTA試験として両方を走らせることによって巨細胞性動脈炎、高安動脈炎に対する治療効果があるという臨床研究を行うことができました。
 最後に15ページをご覧いただきます。定量的なことに関しまして申し上げさせていただきます。先ほど申し上げましたグラフ3をご覧いただきますと、達成率300%となっているところがございまして、これは通常、先進医療として目標としていたのですけれども、それが実際には保険承認が得られるところまで進めることができたということで、敢えてここで述べさせていただきたいと思います。
 以上、1-1と1-2に関しまして報告させていただきました。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。
 ディスポ型の人工心臓ですが、手術の侵襲はさほど高くはないのでしょうか。
○国立循環器病研究センター望月理事
 7ページに書かれてございますように、血栓がつかなければずっと使えるということなので、血栓ができた段階で取りかえればいいというふうになっていますので、非常に簡易に取りかえられるシステムです。
○永井部会長
 血栓ができたかどうかはどのように調べるのですか。
○国立循環器病研究センター望月理事
 血液中の中でFDPとかそういうものをモニタリングしながらというのはあると思うのですけれども、あとは拍出量が下がったりとか、何か通常で運転しているところで異常が起きればわかると思います。
○永井部会長
 昔の東洋紡の人工心臓は必死に受け持ち医が見ていたわけですけれども、そういうものではないということですね。いかがでしょうか。
○深見委員
 項目1-1なのですけれども、今の補助人工心臓システムとか、ブルガダ症候群の突然死の予測等、実際に例えば研究成果として発表できたのはとてもよかったと思うのですが、あとスコアの開発ですね。継続的に前年度に比べて今年度はということで伸展があったということはよく理解できるのですけれども、研究成果というのは成果が出るまでに時間がかかりますので、見えないところで既に次の芽といいますか、たくさん多分あると思うのですけれども、着実にそういう研究の芽というものが、次の大きくなるソースというものが育っているのか。ここの表だけだと単発的にうまくいきましたというところまでは見えるのですが、ほかに研究成果がないのかなと、そういうところが見えてこないのですけれども、循環器センターさんですので規模の問題から言ったらもう少しそういった芽が見えてもいいのかなというところがあるのですが、そういったところを補足していただければありがたいです。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 まず人工心臓に関して、これはまだ始めていないのでなかなかお伝えしにくいのですけれども、心臓のみでなく、肺の治療まで含めたシステムの開発を行っております。動物実験も終わりまして、臨床の段階に行く準備中です。これは今までの創立以来、人工心臓の研究の歴史の中から肺のほうにまで応用が広がっていくような研究です。
 それから、人工心臓の件ですけれども、これも非常に新しいものでございまして、PMDAが9例で認可をするということでやっているのですが、これは実は5月に9例全て終わっております。今までの人工心臓ではどうしても非常に苦しいという患者さんが東京から来られたのですけれども、こちらに入れかえますと非常に楽だということも言っていますので、継続的なずっと延長の仕事はできております。
○深見委員
 基盤研究の割と臨床研究に近いそういった研究がたくさん出てきているなという印象があるのですけれども、もう少し基盤的なところの研究はどうですか。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 多分、先ほどの心房細動以外のことの御質問かと思うのですけれども、吹田コホートスタディーというのは何十年も前からやっていまして、既に例えば心筋梗塞の発生予測というものもスコアでやっておりますので、これからもそういういろいろな予測が吹田コホートスタディーでできるのではないかと思っています。
○国立循環器病研究センター望月理事 もう一つ追加させていただきますと、ベーシックな研究としてもちろんゲノム研究もやっていますし、私どもは昔からペプチドの研究というのも研究所として一貫してやっているところでございまして、今年度は敢えて出しませんでしたけれども、それはずっと継続的にやっている研究であることを御理解いただきたいと思います。
○永井部会長
 祖父江委員、どうぞ。
○祖父江委員
 私も今の質問のやりとりと同じような印象を持ったのですが、このブルガダの予測の遺伝子異常、それから、心房細動のリスクスコアの点つけということ、非常にこれはわかりやすくて予防に使えるのではないかということで、私は非常に重要な成果だと思うのですが、今おっしゃったように吹田コホートという大きなコホートを持っておられる中で、今後こういうものをどういうふうに展開されていかれる予定なのか。長い目で見た構想みたいなものを多分お持ちである。AIを使って予防予測をシステマチックにやっていくというお話を前回か前々回かお聞きしたことがあって、そういうものと絡めてもう少し長期あるいは大きなスケールでどう考えられているのか、将来展望も含めてお聞きできるといいなと思ったのですが。
○国立循環器病研究センター望月理事
 まず吹田コホートは30年来やってきましたもので、さらにそれを大きくしたい。やはり疾患コホートと大きく違うところは住民コホートだという、これは非常に特徴だと思っていますので、今度移りますところではさらに大きくして、吹田だけではなくて隣の町、それから、大阪に広めていきたい。その地域特異性というのはあるかと思うのですけれども、さらに私どもは九州延岡市ともやっておりまして、日本全国に広げていきたい。あくまでも住民コホートというところは大切にしていきたいと考えております。
○祖父江委員
 それは遺伝子なんかも絡められて、生活習慣とか非常に多元的な情報を包括的にとっておられるという形と、ちょっとその中身がいつも余りマニフェストされなくて、結果をおっしゃるので、私はむしろ吹田コホートがどう運営されていて、どういうものをとられていて、今後の展望が今おっしゃったようにほかのコホートとも合体させながらどう展開されるのかというのが非常に重要だと思ったのですが、その辺はまたちょっと教えていただけるといいかなと思ったのです。
○国立循環器病研究センター望月理事
 当初にこのスタディーを始めたときに、とっていくパラメータがどんどん世代が進むことによって変わってきてしまって、現在は遺伝子も入ってきますし、今度、入れていくのはウェアラブルなものを入れていて、日常動作とかいろいろなものを加えていくことができるので、前に振り返ることはできないのですけれども、前向きの観察研究もできるというふうにしていきたい。どうしても前に入っている情報は限られてしまうことを後ろ向き研究では仕方がないと理解しているのですけれども、さらにそれを使いながらも広げていきたいと考えています。
○祖父江委員
 わかりました。
 もう一ついいですか。この間、前振りのときもお聞きしたことなのですが、オープンイノベーションです。これは最初に御提案されたときから非常に期待しているのですが、これは恐らく今後きちんと移られた暁からさらに展開されることで、今ちょっとプレの段階かなという感じがしているのですが、今まだ2社だけなのです。だからこれはどういう運営の、例えばプロジェクトオリエンテッドで何社かが入れかわり立ちかわりやっていくというイメージを私は持っていたのですけれども、どのような形の運営の仕方あるいはこれをどう発展させていかれようとしているのか。その辺の構想、これも将来構想なのですが、もう少しお聞かせ願えるといいかなと思ったのですが。
○国立循環器病研究センター望月理事
 先生がおっしゃるように、まず課題がございまして、課題に手を挙げていただいた会社と一緒に共同研究をする。要は共同研究ベースなので私どもは課題がないとできないプロジェクトというのが大きくあります。
 また別に一方で基礎研究者が相手を見つけてやっていく、育てていく研究ございますので、そのときにはどうしても共同研究ベースで最初にネゴシエーションがあってから、それを共同研究として立ち上げていきたいという、大きな2つの枠で進めていく。実際には2社しか書いてございません。これは29年度だったので2社なのですけれども、現在、30年度に変わって15社と実際にやっておりますので、オープンのときには埋まっているか、ほぼ埋まっているに近い状態にさせたいと思います。
○永井部会長
 どうぞ。
○花井委員
 実は評価に当たって世界初で顕著だとかウルトラCだとかいろいろ基準を言われていて、いつも循環器は奥ゆかしい発表で、例えばこのポンプなのですけれども、素人なので実際にどういうふうに使うかほとんどわからないまま読ませてもらっているのですが、こういう工学的テクノロジーというのは大なり小なりみんな世界初だったりするわけで、だから臨床上これがどれだけ患者のために、患者の多くを救命とは書いてあるのですけれども、もう少し有用性の部分、有効性ではなくて有用性の部分をもっと説明していただけると、世界初の価値がわかると思うのです。
 工学的な世界初はいろいろな細かいものがあって、大なり小なりどんな薬も世界初だったりするわけです。だからそれがいわゆる臨床上こんなに有用なんだということを説明いただけると助かるのですが、いかがでしょうか。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 臨床研究担当の理事長特任補佐の山本でございます。
 B to Dと呼んでいるのですけれども、補助人工心臓につきましては今までのものから非常にコンパクトになったということ。それから、これはもともと外科医がこういうものを開発してほしいと言って、うちの研究所の人工臓器部に依頼をしてきたというところがありまして、特に今回9例つけたのですけれども、9例ほとんど全員が重症心筋炎といって突然、重症心不全になって救急で運ばれてきて、その場でつけなければならないという方々が9人のうちの7~8人でございまして、それこそドクターカーで迎えに行って連れてきて、これをその場で一応、治験ですのでICはとっておりますけれども、その場でつけて状態を安定させる。
 それから、その前に永井先生もおっしゃっていましたが、そういう本当に重症の方なので、その後よくなるかどうかがわからないので、そのまま植え込み型の人工心臓をつけるのも時期尚早である。ですので内科的な治療をした上で移植に行くのか行かないのか、あるいは移植に行くにしても現在、心移植の登録までに2週間ぐらいかかって、それこそ担がん患者かどうかとか、そういう検査もいろいろやらなければならないのですけれども、そういう時期を非常にコンパクトで、かつ、運搬も軽くて、院内での移動も簡単で、患者さんにも負担の少ない、そして凝固も余りしない、それから、かなり大きな100キロぐらいの方も1人入ったのですけれども、そういう方でも十分に拍出量が稼げるということで、恐らく世界中の心臓外科医がつけたいと思うようなものということで、そこまで言ったらわかっていただけるかなと思うのですが。
○花井委員
 それを書いておいたら。さらっと9例で全例生存とかすごい奥ゆかしい表現になっていて、今よくわかりました。ありがとうございます。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 我々の循環器の医師主導治験というのはほとんどが緊急でつけておりますので、しかもクラス4という植え込み機器がほとんどですので、医師主導治験一つ一つが非常に重いのですけれども、我々の中では当たり前のような感じでやっているので、ほかの領域から見たときには難易度は非常に高いと思います。
○花井委員
 世界待望の製品だということですか。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 だと思います。これは9例で終わってしまって、心臓外科医の先生方は早く通せと。何で次つけられないのかとかなり言われているのですけれども、今はとにかく現行の機器で何とかやってくださいということでやっていただいております。
○内山部会長代理
 私も全く同じ疑問を持っていましたが、今の話で大分わかりました。世界初というのはどこにかかるのか、仕組みなのか、成果なのか。一般社会では、よく6時間が30日(当社比)と言う表現があるのですが、先ほどの説明ですと、世界的にもう1社というか、ほかに1個、飛躍的に性能がよいものがあるというお話でしたが。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 体外式で、1つは小児に長期間つけられるベルリンハートの体外式の補助循環心臓がございますが、これは小児だけということになっております。それと国内に入ってきていないのですけれども、1つ米国であるらしいのですが、そちらはかなり値段が高くて、これは実はコストパフォーマンスもかなりいいということで、できるだけ安く出せるように、今、海外のものは多分数百万するのですけれども、これは1つ100万以内で抑えるような形で開発を考えておりまして、これで今のデータを固定して解析をしているところで、今年度中にはPMDAに承認を申請することができると考えております。
○内山部会長代理
 よくわかりました。ありがとうございました。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 実はこれは8リットル流れるという話を、スウェーデンにゲティンゲ社というものがあるのですけれども、その話をしますと非常にびっくりしておりまして、永井先生言われたように東洋紡の体外式というのは30年以上前に開発したので十分なフローがとれない。8リットルとれるということで、かなりの流量がとれるということを申し上げたいと思います。
○永井部会長
 開発は日本の企業ですか。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 長年、人工臓器部がA社(国内企業)と開発をしておりまして、もう製品になる形でA社に製造していただきまして、承認申請もA社からしていただくということで内諾はとれております。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 もう少し追加させていただきますと、今年3月だったと思うのですけれども、植え込み型の人工心臓は非常に成績が世界ばらばらなのですが、国立循環器病研究センターの成績が世界一ということで、アジアで唯一、世界で9番目のいわゆる指導施設に認定されまして、海外から医師が植え込みの学びに来ているところでございます。そこら辺も書いております。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。
 先ほどの人工心臓の件ですが、日本でも承認されたIMPELLAよりはコストは大分安いのですが、使い分けはどう考えるのですか。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 今のところIMPELLAは5リットルまでなのです。普通、内科の先生が入れるのは2.5リットルなので急性心筋梗塞、特に左の主管部の梗塞の場合にはこれがないと無理だと思います。IMPELLAの5.0でも流量が不足すると思います。
○永井部会長
 片方はカテーテル的にできますが。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 そうですね。カテーテルで経皮でできるほうは2.5リットルの流量しかとれないので、5リットルとなると我々心臓外科医が行かなければいけませんので、それでも5リットルしかとれないということで、やはり8リットルとれるというのはかなり有効ではないかと思っています。
○永井部会長
 最初から人工心臓を入れてよいのですか。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 それは症例によって使い分けておりますので、現時点ではIMPELLAも使っておりますし、ECMOも使っております。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。
 それでは、評価項目1-3から1-5についてお願いいたします。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 病院長の小林から御報告させていただきます。
 医療の提供に関する事項ということでは、自己評価をAとさせていただいております。
 目標と実績との比較ですけれども、まず高度・専門的な医療の提供に関しては、低侵襲心臓手術の推進、慢性肺血栓塞栓症に対する肺動脈バルーン形成術の推進、胎児・新生児心疾患と心疾患を持つ妊婦の出産を項目とさせていただきました。
 2番目に、新たな診療体制モデルの構築・提供に関しては、脳卒中後てんかんの診療体制モデル構築、丸3の臓器組織移植と補助人工心臓治療の実施に関しては、心臓移植医療の推進を挙げさせていただきました。
 丸4循環器終末医療モデルの確立に関しては、循環器緩和ケアの推進を挙げさせていただいております。
 定量的指標としては、心房細動の根治手術件数は達成率171%、補助人工心臓装着患者の社会復帰を目指した外来管理患者数に関しましては、達成率166%となっております。
 18ページ、先ほどの少し細かく御説明させていただきます。低侵襲心臓手術の推進に関しましては、生体弁機能不全に対する経カテーテル再弁置換術の施行を挙げさせていただきました。従来、生体弁機能不全患者に対しては手術が施行されておりましたけれども、高齢のハイリスクの患者に関しましては経カテーテル生体弁植え込み術、いわゆるTAV-in-SAVを臨床研究として実施し、平成29年度は28年度に比べて7件増の11件を施行しております。大動脈弁が7件、僧帽弁が4件です。この成績は日本循環器学会のLate breaking clinical trialに報告させていただきまして、大動脈弁位に関しては今年7月から保険適用になっております。日本で唯一国際レジストリに参加しているのはこのデータのみでありまして、JACC Interventionに掲載されております。
 また、人工弁周囲逆流に対する経カテーテル閉鎖術、これはRESEAL試験と申しまして医師主導治験で行っておりますが、5例に施行しております。また、ロボット補助下僧帽弁形成術を治験で以前行っておりましたけれども、これを昨年度、先進医療Bを申請しておる過程で治験を行っているというところから、保険収載に進めることができ、今年4月から施行しております。既に18例に行っております。このロボットの手術のプロクターとしては本邦4人おられるのですけれども、我々の施設が2人を占めております。
 丸2の慢性肺血栓塞栓症に対する肺動脈バルーン形成術ですけれども、これは下のX線での画面の一番左はこのように末梢の血管が映ってこないのですが、バルーンをやることで末梢まで肺動脈が映ってくれるのがわかるかと思います。平成29年度は施行する枠を増加させて、待機期間を平均146日から77日と約半分となっております。年間275回のバルーン形成術を施行しておりまして、その技術に関しては海外からも見学者を受け入れております。下の図が国循での件数と全国の件数でございます。2014年以前はデータがございませんが、これも医療の均てん化を示したものだと思います。
 19ページにまいりまして、胎児・新生児心疾患と心疾患を持つ妊婦の出産ですけれども、平成29年度に過去の診療実績をまとめ、平成23年から28年までに207例の胎児・新生児心疾患を診断し、正確に診断ができるということがわかってまいりました。出生後24時間以内に治療介入が必要な患者さんとしては、外科手術は19例、生後すぐ動脈管開存目的でプロスタグランジンE1を持続静注した方が105例おられました。平成29年度は138例の胎児心臓病診断を行い、29例増加しております。一方、心疾患を持つ妊婦の出産に関しましては93例に行いまして、28年度と比べまして24例増加しております。
 そのほかヘパリン起因性血小板減少症の診断・治療も行ってきました。
 心房細動治療の推進に関して少し説明させていただきますと、心房細動に対するアブレーションは、先ほども申し上げましたように下のグラフ1にありますように171%の達成率でございました。毎年増加しております。それから、これまでは失神のみ適用をとっておりました埋め込み型心電図モニタですけれども、原因不明の脳梗塞例に行いまして16名に埋め込んで3例で発作性心房細動を検出し、カテーテルのアブレーション手術に繋がっております。そのほか複雑先天性心疾患に対するステント治療や大動脈瘤に対するステント治療の拡大、それから、脳血管病に対するハイブリッド手術と「もやもや病」に対する手術なども行っております。
 脳外科領域におきましては、ハイブリッド手術室の活用というのはまだ広く行われていないのですが、今度の新病院ではハイブリッド手術室もつくる予定でございます。
 20ページに行きまして、新たな診療体制モデルの構築・提供ということに関しましては、脳卒中後てんかんの診療体制モデル構築ということで、遠隔脳波判読システムを構築して、脳卒中を専門とする施設に在籍しないてんかん専門医の補助を行うというシステムを開発しております。
 リハビリテーションの推進ということに関して、まず脳血管のリハビリは28年度と比べて3,453単位と非常に増加しております。28年度から下肢装着型サイボーグ型ロボットを用いたリハビリを積極的に行って、平成30年度からは腰部装着型ロボットも導入する予定でございます。心臓リハビリテーションに関しましても29年度は28年度と比べて2,209単位の増加となっております。
 臓器・組織移植と補助人工心臓治療の実施に関しては、心臓移植治療はコンスタントに15~20例ぐらいセンターでは毎年行っております。また、10年生存率は95.3%と世界最良の成績を得ております。小児1例はJarvik補助心臓装着例の世界最低年齢の9歳でございました。
 冷凍保存同種組織、いわゆるホモグラフトを用いた治療ですけれども、これは28年度より保険収載されたのですが、院内外での治療例が増加し、良好な成績を得たことから保険が大幅に増額されております。70万円程度の保険診療が得られるようになっております。
 世界有数の補助人工心臓治療、これは既に理事長が申し上げましたように非常に成績がいいということで検証されてございます。
 循環器病の先制的予防医療の実施としては、既にMRIを用いた非侵襲的冠動脈プラークイメージングというものを確立させたのですけれども、これを現在、多施設共同前向き観察研究として行っております。
 21ページ、患者の自己決定の支援に関しては、多職種共同による入院診療計画書を作成しております。
 チーム医療の推進に関しては、Infection Control Team(ICT)の活動として毎週1~2回の環境及び抗菌薬ラウンドを行っております。平成29年度は不幸なことにカルバペネム耐性腸内細菌のアウトブレイク、これは発症はなかったのですが、起こりました。ということでこの強化により6カ月以上、新規の検出例ゼロということで、アウトブレイクということがありましたけれども、チーム医療が強化され、解決することができました。
 デバイス遠隔モニタリングは、従来はペースメーカーやICDをつけられた方は6カ月ごとに来られたのですが、高齢化しておりますので通院の負担が大きいということで、遠隔モニタリングを進めております。
 循環器終末期医療モデルの確立に関しては、循環器緩和ケアは以前より進めておりますけれども、これも広く日本全国に啓発活動を行ってまいりました。
 入院時から地域ケアを見通した医療の提供としては、脳卒中地域連携パスというものが既に保険で採用されておりますけれども、それ以外に看看連携の推進や、今後センターが移転します健都における連携も吹田市民病院と進めております。
 医療安全管理体制の充実強化に関しては、医療安全管理の一元化ということでPatient Safetyと海外では一括して言われておりますけれども、医療安全管理、感染対策、褥瘡対策、医療の質の管理、安全衛生管理、高難度新規医療評価を一元化しております。
 また、高難度新規医療評価の実施ですけれども、これはいろいろな大学で問題となった病院幹部が知らない医療が行われて死亡者が続いているということに対して進められたシステムですが、平成29年度は室員会議7回、申請13件、実施決定11件、重篤な有害事象報告はございませんでした。
 医療倫理等に基づく質の高い医療の推進ということは、医療法施行規則に基づいて医療安全に関して各科にモニタリングを行いまして、これをホームページに載せております。
 評価項目1-4.人材育成に関する事項としては、自己評価をAとさせていただいております。
 リーダーとしての活躍できる人材の育成としては生物統計家の育成、丸2モデル的研修・講習の実施に関しては、重症心不全治療に関する研修の実施、心臓弁・血管を中心とする組織移植医療に関する研修の実施を行っております。
 定量的指標としては、教育プログラムの数が136%の達成率となっております。
 23ページに細かい説明がありますけれども、リーダーとして活躍できる人材として生物統計家の育成。研究の立案から得られたデータの解析まで、非常に生物統計家というのは重要でございますけれども、AMEDの生物統計家育成事業、これは国内では東京大学、国立がんセンターとともに京都大学と当センターの2連合体のみが採択されて、生物統計家を5年間で100名養成する計画となっております。
 連携大学院制度の充実に関しましては、従来からNCでは専門医は取れるけれども、博士号が取れないというのがNCの問題でございましたが、連携大学院として協定を17大学に結んで新たにセンター職員6名が博士号を取得し、合計では47名となっております。
 そのほかセンター独自の専門看護師(CVEN)の認定を行っておりまして、制度発足後156名、現在勤務しているのは63名ですけれども、これは給与に既に反映させております。
 モデル的研修・講習の実施に関しましては、重症心不全治療に関する研修の実施。これは先ほどのIMPELLAとも関係しておるのですけれども、循環器内科に対して機械的補助循環や腎臓移植の免疫療法、ドナー評価などの研修を行っております。国内最多の補助人工心臓治療を有する当センターでは、7名が補助人工心臓管理認定の資格を取得しております。それから、先ほど理事長が申し上げたようなことがそこに記載されております。
 心臓弁・血管を中心とする組織移植医療、これはブタの心臓を用いてドナーハートからの心臓を取り出すという研修をしておりますけれども、これはいろいろな大学から10名の参加が得られております。
 そのほか循環器看護に関する研修も、そこに記載されておるようにさまざま行っております。
 24ページにまいりまして評価項目1-5となりますが、これも自己評価Aとさせていただいております。
 まず丸1情報の収集・発信に関しましては、抗凝固療法中患者への脳梗塞急性期再開通治療に関する推奨、2番目はナレッジキャピタル超学校における国循講座の開講です。
 丸2公衆衛生上の重大な危害への対応としては、震災時のエコノミークラス症候群の遠隔診断スクリーニング体制の構築をしております。
 定量的指標としては、国際貢献する人数は達成率133.9%となっております。
 細かく御説明いたしますと、まず国への政策提言に関する事項としては、厚生労働省への患者申出療養評価構成員及び先進医療会議に出席しております。脳卒中、心臓病、その他の循環器病に関する診療提供体制のあり方に関する指針の作成にも携わっております。また、臨床研究法施行規則への意見反映、生活習慣改善指導ガイドラインの提言などもしております。
 医療の均てん化及び情報の収集及び発信に関する事項としては、情報の収集・発信は診療ガイドラインとして抗凝固療法中患者への脳梗塞急性期再開通治療に関する推奨となっております。そのほか家族性高コレステロール血症、各種ガイドラインへの関与を行っております。
 ナレッジキャピタル超学校は、通常のいわゆる市民公開講座と違いまして少し若い方々に理解していただいて、将来の共同研究に繋がるものかもしれません。
 最後に情報の収集・発信に関しては、資料に項目が書いておりますが、日露の交流、明美ちゃん基金による医療支援、国際的なガイドラインへの関与を行っております。
 最後に公衆衛生上の重大な危害への対応としては、震災時エコノミークラス症候群の遠隔診断スクリーニング体制の構築ということで、右のグラフがありますように熊本地震、これは29年度ではなく28年度でございましたけれども、エコノミークラス症候群の診断をエコーでしたところ、9.3%の方が陽性であることがわかっております。これはやはりその場に行かないとこの診断がつかないのかということで、その後、1年後に熊本の避難所で5例の方に遠隔診断をして、その画像をスマートフォンで飛ばして診断をして、5例中4例の方に深部静脈血栓が見つかったということで、先日の水害もありましたように非常に医師がそういうところに行くこと自体が難しくなっておりますので、エコーの技師さん等がエコーを撮ってセンターに送っていただいて診断できるという体制ができております。
 以上です。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 それでは、御質問をお願いします。いかがでしょうか。
○祖父江委員
 どうもありがとうございました。
 生物統計家の育成というところで100名5年間養成ということなのですが、この内容を拝見しますと臨床試験にかかわる生物統計家というイメージが非常に強いのですが、それ以外の例えばディープラーニングとかAIとか生物統計そのものという、もう少しベーシックな、あるいは数学的な、生物統計家と言ってもいろいろ種類があると思うのですけれども、ここでおっしゃっている生物統計家というのは、臨床研究にかかわる生物統計家と理解していいですか。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 分担研究者にもなっておりますので山本から回答いたします。
 AMEDのこの事業は、あくまで臨床試験に携わる生物統計家を養成するというふうに決まっておりますので、これではそのようになっているのですけれども、ただ、我々国循では疫学研究も非常にやっておりますので、国循での実習に来ていただくのですが、そのときには疫学にも回っていただいて、疫学研究についても触れていただきたいということで研修自体は組んでおります。
 また、今、疫学部でAIで心不全をカルテの言葉からAIに学習させて、心不全の症状名をテキストからピックアップして、心不全らしい人を抜いてくるというようなAIを用いた心不全の診断、それから、それをできたらビッグデータにしていって、それをまた解析するというようなことをIBM等と組んで、それはそれで別に研究を始めております。
○祖父江委員
 今後そういうビッグデータの解析などを進めていこうとすると、開発型の研究に対応できる生物統計といいますか、広い意味での治験と直接関係しない生物統計家の育成というか開発というか、そういうものが非常に大事になってくると思うので、それも考えていただいているということですか。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 はい。この事業ではどうしても臨床試験に特化した人をということで、それに縛られていまして、それでの研修内容になってしまっているのですけれども、実際に先生も御存じのように循環器は非常にコモンディジーズでありまして、ビッグデータをとるにしてもいろいろなAIの手助けが要るところもございますので、またそれと非常にビッグデータの解析に適した領域でもございますので、それは当センターの研究者、疫学研究の者もそうですし、一部の心臓内科の先生が情報学研究所の東大の先生の機械学習とかやっていらっしゃる方と今、共同研究をやって、それはただ昨年度には結果が出ておりませんので、今後、結果が出次第また御報告させていただけると思います。
○永井部会長
 内山部会長代理、どうぞ。
○内山部会長代理
 生物統計家の育成はとても重要な内容だと思って聞いておりました。一つお聞きしたいのは、具体的にこの方たちがが今後力を発揮できるようなポジションは期待できるのでしょうか。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 もう既に東大と京大のそれぞれで、これはマスターをつくるということになっているのですけれども、マスターコースで既に10人程度の方々が応募されて来ておられます。彼らは全国から来られておりまして、AMEDからはできるだけアカデミックな機関にマスターが終わったら就職してほしいという希望を聞いておりますけれども、一方でこの事業には実は製薬協からある程度お金が入っておりまして、製薬協さんたちはやはり一定時期、企業で活躍していただけるということも、それはそれで期待されているようです。
 我々がAROとして見ている限りでは、一定期間、企業でPMDAとのやり方とか、シビアな承認申請のところも経験していただいて、アカデミアにも来ていただくというような、最終的にはできたらそういう人材が産学で循環するような形になっていってくれると非常にいいなと我々は考えております。
○内山部会長代理
 ありがとうございます。
 もう一つは、震災時のエコノミークラス症候群の遠隔診断スクリーニング体制。日本は災害列島になりつつあって、非常にいい取り組みだと思います。スマホで送ることについて教えてください。画像を送るのですか、それともビデオが送れるのかどうか、また時間的な制約ですとか、容量的な制約はいかがなものでしょうか。
 それと、これはDMATと関連するのか、それとも各地の検査技師さんと連携体制をつくっておいて、すぐやれるような体制になるのか。それから、どれぐらいのマスでやれるのか。今後の見通しを含めて教えてください。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 多分資料にありますように、26ページです。4月から12月までに3,200人ということで、月には大体400人ぐらいしかやれていないのではないかと思うのです。これは医者が行ってやった件数なのです。ですから医者がやれる範囲というのは限られてくるので、エコーの技師が撮ってそのデータを送るということが重要だと思うのです。
○国立循環器病研究センター小川理事長 担当しましたので追加させていただきますと、小さいスマホでエコーをとって国立循環器病研究センターに送れるのです。画像の問題ですけれども、実際にやってみたのですが、技師の人が見落としたものを循環器病研究センターの医師が見つけたものもあるのです。これは血栓があるのではないかと。まだ本当に始めたばかりなのですが、スマホでできる。次の段階として、心臓のエコーも何とかやれるように今、持ってきています。
 もう一つは、これはAMEDの予算で言われたのでもう少し安い機器でできないのかと言われまして、今、安い機器もトライしているところでございます。そうするとかなりの例数がさばけると思っております。
○永井部会長
 いかがですか。どうぞ。
○福井委員
 いろいろなテーマについて十分ミッションを果たされていると思います。
 ところで、減塩食のプロジェクトはどうなったのでしょうか。
 もう一つ、メーンのテーマなくて恐縮ですけれども、いろいろな病院で自分の専門分野とは違った臓器に異常が見つかったときの対応が問題になっていますが、循環器病センターとしては循環器以外に病気が見つかったとき、十分な対応がとられているのでしょうか。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 後半の部分の御説明をさせていただきますと、そういうニュースが頻繁に流れていまして、昨年度から放射線の診断医が異常を見つけた場合は、重要な場合は直接電話で連絡するという体制になっております。
○国立循環器病研究センター望月理事
 最初の御質問のかるしおというプロジェクトに関しては、毎年着実に伸びておりまして、大体1年ごとに150%、平成29年度累計で115品目ということなので、収益に関しても数千万ずつ利益を得るようになっております。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 合併については、がんの問題だと思うのですけれども、必ずがんの見落としはないという感じで診断すれば循環器病研究センターにないのは消化器ですので、消化器の先生に定期的に来ていただいて内視鏡、そしてその治療はやっております。
○祖父江委員
 これは直接の提案していただいた内容と余り関係がないことかもしれませんが、将来的な展望も含めてなのですけれども、特に脳卒中関連とか、先ほどの不整脈もそうですけれども、どちらかというと中等度大血管系をずっと循環器病センターとしてはやってこられたという感じがしているのです。現在、非常に需要が高まっているのは、脳循環の中ではむしろ非常にマイクロの、なかなか今まで到達できなかったところが非常に重要化してきて、疾患関連だということがだんだんわかってきて、特に認知症とかてんかんとか脳機能とか脳老化ということと非常に密接に繋がってきているということがだんだんはっきりしてきたのですが、そういう領域というのは、余りこれをやっている施設が日本で少ないのです。今後ますます重要性が高まると思うのですけれども、循環器病センターとしては今後この辺はどうされるのか。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 詳細は山本先生から話していただきますけれども、今度新しいセンターがオープンいたしまして、PETの特殊なポジトロン核種で非常に微小循環の障害とか、認知症の早期発見、専門に研究している猪原先生がいますので、そこら辺と一緒に今やっているところなのですけれども、詳しくは山本先生から。
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 てんかんは脳血管内科の中で、脳卒中後のてんかんというのがかなり多いということは前からわかっておりまして、ようやく「てんかん外来」というか、脳卒中後のてんかんに焦点を合わせた研究グループが脳内科の中でできまして、実は京大のてんかんグループの先生方とウエブ会議をしたりしながら、中でてんかんの専門医も養成するようになってきておりますので、今後それに焦点を合わせた研究も進めていく予定になっております。
 認知症のほうは先ほど理事長からもございましたように、脳内科の猪原部長が既にシロスタゾールを用いた軽度の認知症の初期の状態での医師主導治験というものをやっておりますけれども、ここの認知症についても脳内科の1つの軸として長寿医療研究センター等とできたら一緒にやるということも含めて、特に血管障害、それから、そういうリスク因子を持った方々の認知症というところに、我々は焦点を当てて研究を進めております。
○永井部会長
 斎藤委員、どうぞ。
○斎藤委員
 素人なものですからよくわからないのですが、マニュアルのことを書いてありまして、これは26ページのところで国際ガイドラインのところで今までマニュアルがないというのは、国循でなかったのでしょうか、それとも医療の世界ではマニュアルというのがないということなのでしょうか。これがどのぐらいすごいことなのかが、ビジネスの世界でマニュアルをつくらないというのは考えられないので、それを教えてください。
 それから、先ほどかるしおのことで毎年、数千万円増えていて、また、成長率も非常に大きいということでしたが、もう一度数字を教えていただけますか。そうするとAをつけやすくなりますので。
○国立循環器病研究センター望月理事
 26ページのマニュアルのことに関してですけれども、動物実験に関しては各国でいろいろな問題がございまして、どういう基準をしていかなければいけないかということが決まっていなかったのですけれども、大体決まりつつあるので、国際のガイドラインに従って個別研究に関してこういうことを最低限守りなさい。例えばケージの大きさとかそういうことに関しても遵守しなさい、何匹このケージには入れなければいけないとか、そういうことまで細かく決めていくことにしましたということで記載させていただきました。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 臨床に関しては山ほどのガイドラインがあるのですけれども、基礎実験に関しては今までなかったということで、ガイドラインができつつあるというところでよろしいですね。
○斎藤委員
 それはこの医療の世界では、今までなかったものを国循でおつくりになったという理解でよろしいのですか。そういう意味では日本初、世界初に入るのでしょうか。
○国立循環器病研究センター望月理事
 それは正直申し上げて世界初ということではございません。ただ、世界に準拠したことを日本で初めてしっかりと作成したということだと理解しています。
 かるしおの件に関しまして、平成29年度末で115品目です。
○永井部会長
 センター独自の専門看護師を養成されているということですが、それはよろしいのですけれども、例の特定行為研修との関係ではどうなのでしょうか。つまり特定行為研修というのは包括的指示ができるということで、新しい試みですが。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 センターで現在のところはそういう養成をしておらないのですけれども、いわゆる医師の働き方改革、医師だけではなく看護師の働き方改革等を含めて考えていくもので重要だと思いますが、うちの看護部長から。
○国立循環器病研究センター三井看護部長
 特定については今後またそういう教育もしていかなければいけないと思っているところです。行為自体は循環器に関することが非常に多いので、今後考えていきます。
 当センターの専門看護師というのは15年前に始めたのですが、日本看護協会の認定看護師制度の中に循環器が非常に少ない。がん系は多いのですけれども、慢性心不全しかなくて当センターは急性心不全ですので、そこに日本看護協会がやっていただけない研修をきっちりやっていこうということで、専門看護師制度をつくりましたということです。
○永井部会長
 それを超えてもっと自立性を持てるように、国策として現在、特定行為研修を進めているのですから、ぜひそこは御協力いただきたいと思うのです。
○国立循環器病研究センター三井看護部長
 きっちりとやっていきたいと思います。
○国立循環器病研究センター小林病院長
 外科医も減っていきますし、いわゆるサージカルアシスタントあるいはナース・クリニシャンみたいなものをこれから養成してやっていくべきだと考えております。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、続いて2-1から4-1までお願いします。
○国立循環器病研究センター柳樂企画戦略局長
 評価項目2から4までについて御説明をいたします。
 まず資料の28ページ、平成29年度の経営状況をご覧ください。左上に経常収支の推移という表がございますが、平成29年度の経営上利益、経常収支差は14億7,800万円の黒字でございます。経常収支率は105.1%でした。黒字決算ということです。黒字になりましたのは独法初年度の平成22年度以来、7年ぶりでございます。また、その黒字額も経常黒字で見ますと22年度を上回りまして、独法化後最高額になってございます。
 前年度、28年度は約2億円の赤字でございましたので、前年度と比べた改善額は約17億円となります。改善の要因といたしましては、下のほうにありますけれども、入院患者が増えたこと、それから、外来診療の患者一人当たり点数が増えたことなどで、医療収益が増加したことが大きいと考えております。また、そのほか各種のコストの削減など、あるいは減価償却費の減少などがございます。
 この結果、累積額で見ましても平成28年度末には累積欠損金が約12億円ございましたが、これを1年で解消いたしまして、約3億円の累積黒字に29年度末では転換をいたしました。
 このような結果を踏まえまして、29ページでございます。評価項目2-1、業務運営の効率化という項目については、自己評価をAとしております。
 また、1つ飛びまして31ページに評価項目3-1に財務内容の改善という項目がございますが、この項目については自己評価をBとしております。
 具体的な取り組み内容につきましては32ページをご覧ください。まず評価項目2-1に関しまして、効率的な業務運営体制、その構築の取り組みといたしまして丸2のところにございますが、国立病院機構の大阪医療センターと連携をいたしまして、大阪医療センター内に胎児心エコー外来というものを設置いたしました。これによりまして胎児診断技術の普及、重篤な症例の早期発見などの効果が期待されるというところでございます。
 効率化による収支改善の取り組みといたしましては、高額の診療材料の価格交渉を行いまして、単価を引き下げるということで約7,000万円の削減効果を上げました。また、SPDの業務委託契約の見直しをいたしまして、3年で約3億円の費用削減となるような契約を締結いたしたこと。また、右のほうになりますが、後発医薬品の採用を進めたことなどのコスト削減を行いました。
 医業未収金につきましても、29年度から新たに回収困難な債権の回収を専門の回収業者に委託するなどの取り組みを進めました。ここまでが2-1でございます。
 次に評価項目3-1、自己収入の増加という項目でございますが、各種の競争的研究費、寄附金の収入、ライセンス収入の獲得などに努めまして、全体として見るとおおむね目標を達成した成果となっております。
 最後に33ページ、評価項目4-1、その他の業務運営に関する事項というのをご覧ください。この項目では内部統制の構築、移転に向けた施設・設備の整備、人事システムの最適化などが目標とされておりまして、この項目につきまして自己評価はBとしております。
 具体的な取り組み内容は34ページに記載をいたしております。内部統制の構築につきましては随意契約あるいは一者応札の減少などに取り組みをいたしました。
 また、施設・設備に関しましては、来年7月の新センターへの移転に向けまして建物の建設を進めるとともに、機器の選定準備を行いました。3月時点での工事状況の写真が右下についてございますが、現時点では10階建ての建物本体はほぼ完成をしておりまして、現在、内装の工事などを行っている状況でございます。
 最後に人事システムの最適化ということに関しましては、クロスアポイントメント制度を導入し、適用の1例目を開始したこと。それから、女性2名の部長職への登用、女性の非常勤理事の任命決定などを行いまして、女性の幹部登用を進めました。
 説明は以上でございます。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 それでは、御質問をお願いいたします。
 先ほど減価償却費が改善したということなのですが、私立病院ですと減価償却費はどんどん増えていきます。会計が違うようなのですが、説明いただけますか。
○国立循環器病研究センター柳樂企画戦略局長
 経営に関しましては先ほど説明したように、今、新しいセンターに移転して建て替えをするという大きなプロジェクトが進行中でございまして、それで特殊な事情がございます。減価償却費に関しましては、建物は今あるものは毎年減価償却していくということと、医療機器に関しましては移転を控えておりましたので、2、3年間は不要なといいますか、新たな購入は基本的には行わない。壊れたものの入れかえという程度にとどめておりましたので、そういうことで機器・設備関係の費用が抑えられてきたということで、減価償却費が結果的に減ってございます。
○永井部会長
 そうすると移転後にどんと増える可能性があるわけですね。それを賄える財務体質になっているかどうかということが後々問われるということですね。
 いかがでしょうか。
○内山部会長代理
 今のことに関連して、給与費の減少、退職手当が減ったというのは、たまたま退職される方が少なかったのか、いかがなものなのでしょうか。経費が減少したことは一般の病院から見ますと、どんな御努力をされているのか非常に興味があるところですので、よろしくお願いします。
○国立循環器病研究センター柳樂企画戦略局長
 給与費そのものは、退職金も確かに対前年度に比べると減少しているという面がございます。ただ、人事につきましても部会長も御指摘がございましたが、移転後の各種費用増、それから、新しい建物は主に借入金で財源を賄っておりますので、そういった今後の経営状況もにらみまして、採用については現に抑制するという方法でやってございます。
 経費につきましては、これも2年前、非常に経営状態が厳しい状態になりまして、そのときに理事長が財政緊急事態宣言というものをセンターの中に発しまして、それこそコピー1枚から光熱費の削減から出張旅費の抑制など、さまざまな一連の施策を28年度の半ばから打ちまして、そういったものの効果が29年度に少し出てきているのではないかと考えています。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 続けて監事から業務の運営の状況、今後の課題等について御説明をお願いいたします。
○国立循環器病研究センター竹山監事
 監事の竹山でございます。
 監査意見につきましては、お手元にございますように特に問題なく、すべて適正に御報告申し上げています。
 昨年申し上げましたように、ちょうど新しいセンター移転を1年後に控えておるのですけれども、そのときのために今おっしゃったように全て借入金で賄わなければいけない、減価償却費含めていろいろな経費が増えるということで、その危機感ということについては理事長以下、全て具体的な見積数字といいますか、こういうことなるだろうというものを常に御認識されて、それに対して本当に黒字にできるかどうか非常に厳しい状況にあるのですけれども、それを達成すべくアクションプラン、ここは将来のことですから一切きょうは御報告されていませんが、アクションプランというものをつくられて、そしてみんながより効率的に、効果的にやっていこうという機運が盛り上がった矢先に、こういう地震が起こったということで非常に私も落胆しました。
 この地震の災害の被害が相当、いわゆる建物とかそういうものの被害よりは、建物が損傷したおかげで患者さんが受け入れられない、そのための減収といいますか、いわゆる稼ぎ頭の収入がかなりの金額で減るということは、本年の決算は相当大きな赤字が予想されるのですけれども、それだけではなくてお金に直接影響しますので、現在、全て借入金で賄って手元資金がほとんどない状況で新しいところに行って、そしてアクションプランで乗り切ろうという矢先ですので、私のほうからは何か特別な天災なのだから、理事長ほかの方に特別な補助とか含めて適切な対策をとってほしいとお願いしているところです。
 以上です。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 続きまして、理事長からマネジメントを踏まえて業務運営の状況、今後の課題、改善方針等について御説明をお願いいたします。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 まとめとして言わせていただきます。
 来年7月に新センターに移転するわけでございます。今、監事がおっしゃったとおり確かに部会長もおっしゃいましたように経営的に少し厳しい面もあるのですけれども、いろいろな方法を考えまして乗り切っていこうと思っているところでございます。
 センター全体の問題点としまして、先ほど御指摘ございましたようにアピールの力が少し足りないというのは確かにそのとおりでございまして、例えばオープンイノベーションセンターの入居の募集に関しましても、説明に行けば非常にいいプロジェクトで、こんなに大きなプロジェクトがあるのを知らなかったというようなことで、すぐに了承していただけるのですけれども、そのアピールの仕方がまだ少し私たちは悪かったのかなと思っていまして、それは改善していく予定でございます。
 ただ、救いは来年新センターは非常に大きなセンターでございまして、検査室、オペ室なんかもかなり増えます。カテーテル室も現在ハイブリッド手術室が1室しかない。それから、普通のカテーテル室が6つなのですけれども、そのカテーテル室が9つと、ハイブリッド手術室が4つ増えまして、約2倍になります。ですから今でもカテーテルアブレーションなんかは2カ月待ちという状況なのですが、それが解消されますので、私としては非常に楽観的かもしれませんが、経営的にはかなりプラスになっていくと思っています。
 また、僧帽弁の形成術なんかも国循で始めたのですけれども、まだ十分ドクターはいるのですが、カテ室が回らない状況で今できない。そのような状況でございますので、カテーテル室も増えますので、何とか経営的にもいい見通しを立てていけるのではないかと思っております。
 ただ、監事がおっしゃったとおり非常に厳しい状況ですので、職員が自覚していかないといけないと思っています。
○永井部会長
 ありがとうございます。
○斎藤委員
 監事の方にお伺いしたいのですけれども、今おっしゃられたことで災害に対する損害保険というのは何か入ってこないのですか。
○国立循環器病研究センター竹山監事
 御承知のように損害の対象等は基本的に物とか財産とかそういうものにかかりますけれども、機会損失といいますか、要するにその結果、収益が減ったというものについては基本的には適用になっていないと思うのです。ですから保険の対象にならないと私は思っております。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 私も存じ上げなかったのですけれども、地震に関しては対象にならないということで、非常に困っております。
○斎藤委員
 では建物の損害なんかも補償されないのですか。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 建物の損害に関しては医療経営支援課の御協力で、あと1年なのですけれども、できるだけのことをやれという指示もございまして、今どんどん、1年ですが、ベストな状況にしていっております。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 そこは当然、国の機関ですし、災害復旧の話はこちらのほうで今、財務省とこれから話を詰めていくという状況になっております。
○国立循環器病研究センター竹山監事
 ぜひそのときに今の収益といいますか、基本的にはしにくいのでしょうけれども、私が申し上げているのは、もし建て替えの時期でなければ建物にもう少しお金をかけて、基本的にいろいろな変わっていくことについては、新しいものをつくるから基本的には抑えているということもあるので、それに準じたような今回の援助をされないと、国循が次の新しいところで立ち上がっていくときに今のことが、資金繰りが回らなくなると思います。この損害の部分がかなり大きいので。それはやはりせめて新しいところに行くのだから、何とかみんなでしてあげてほしいなと願っております。
○医政局医療経営支援課樋口課長
 いずれにしても最大限の支援はしていくつもりでございます。
○永井部会長
 その場合、今年の予算計画を見直す必要はないのですか。
○国立循環器病研究センター小川理事長
 多分、見直さないといけないと思っています。局長のほうからも、何か予算計画は見直さなければいけないですよね。
○国立循環器病研究センター柳樂企画戦略局長
 経営計画を年度の初めに立てておりますが、そのときには地震の発生は予定しておりませんので、それを踏まえて今年度、来年度以降のキャッシュフローを確実に把握して管理していくことが必要だと考えておりますし、準備はいたしております。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、以上で国立循環器病研究センター平成29年度業務実績評価を終了いたします。どうもありがとうございました。

(休  憩)

○永井部会長
 それでは、ただいまから国立国際医療研究センター平成29年度業務実績評価を始めたいと思います。
 まず理事長からご挨拶御挨拶をいただけますか。
○国立国際医療研究センター國土理事長
 国立国際医療研究センター(NCGM)の理事長の國土でございます。
 本日はお忙しい中、しかも酷暑の中、私どもNCGMの評価委員会を開催いただきましてありがとうございます。
 今年度の評価は、ほとんどの委員の先生方が併任されているNCの在り方検討委員会でのご評価御評価と並行して行われると理解しております。
 私どもNCGMのミッションにつきましては、5月9日のヒアリングを含めてそれ以降、先生方にご説明御説明申し上げているところですが、本日は昨年度の業績について詳しくご説明御説明したいと思っております。
 資料3-2をご覧いただきたいと思いますが、これについてこれから御ご説明御説明申し上げますが、表紙にありますロゴは、今年創立150周年を迎えるNCGMの記念事業のロゴでございます。明治初期に当院の前身であります陸軍病院に勤務したことのある森鴎外をメーンキャラクターにしております。
 次のページは、広報委員会で昨年秋に策定したNCGMのスローガン、3つのGでございます。他のナショセンに比べましてミッションが多岐にわたるNCGMを少しでも理解いただくということで、昨年、広報委員会を活性化させて何回もディスカッションを重ねてこのようにまとめました。
 すなわち、1つのGはGlobal Health Contributionということで、国際医療協力・人材育成への貢献。2番目はGrand General Hospital、全ての病態・感染症に対応できる総合病院ということで、これについては在り方委員会でもご説明御説明申し上げました。3つ目はGateway to Precision Medicineということで、最近大きく取り上げておりますゲノム医療、個別化医療、高度先進医療について、私ども研究拠点になるという覚悟を示しております。
 概要につきまして、その後、数ページございます。2ページをご覧いただきますと、私どもには3つのキャンパスがございまして、戸山に780床のセンター病院と研究所、そして千葉の市川市に385床の国府台病院と肝炎・免疫センターがあり、東京都清瀬市には国立看護大学校がございます。センター全体の常勤役職員総数は2,010名であります。
 その後、個別の主な特色については3ページから書いてございますので、ご覧いただければと思います。
 5ページに平成33年度までの中長期計画の概要が書いてございますが、ここに書いてございますように国際水準の医療を創出・展開し、全人的な高度専門・総合医療の実践及び均てん化並びに疾病の克服を目指す研究開発の実施ということで、重点分野としては新興・再興感染症及びエイズ等の感染症、糖尿病・代謝性疾患、肝炎・免疫疾患並びに国際保健医療協力となっております。
 ということでございまして、これから評価項目ごとに各責任者が詳細なご説明をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 それでは、評価項目1-1と1-2に関してご説明をお願いいたします。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 研究所長の満屋と申します。前回の事前打ち合わせ会議では欠席をやむなくいたしまして、申し訳ございませんでした。
 1-1でございますが、自己評価はSでございます。
 6ページをご覧ください。中長期目標の内容、疾病に着目した研究及び均てん化に着目した研究、そして国際保健医療協力に関する研究と分けてご報告いたします。目標と実績との比較にも触れたいと存じます。
 まず実際のデータをお示ししたいと思います。厚労省のリンクでアップロードされ公開されるということですので、10ページのデータは現段階では未発表・未公開で、また、共同実験のデータでもあり、知財の関連もございますので、先生方のお手元の非公開資料をご覧いただきたく存じます。
 評価項目1-1、最初はB型肝炎に対する治療薬の開発状況をご説明いたします。ご承知のようにエンテカビルという薬が、現在、日本と世界で最も汎用されている慢性B型肝炎の治療薬でございますが、日本でも耐性株が出現して治療に難渋する方が多くおられます。そのようなエンテカビル耐性に対しても強力な活性を有します新規化合物、ここではCFCPと名称をつけておりますが、そのデザイン・合成・同定に5年かけて成功いたしましたのでご報告いたします。
 私は5つの有機合成のグループと共同研究を継続しておりまして、この間二百余種類の新規化合物をデザイン・合成・同定しましてCFCPに至ったわけでございます。CFCPは核酸系逆転写酵素阻害剤で、私、HIVに対する核酸系逆転写酵素阻害剤の開発に30数年前から従事いたしましたことから、いわばリード化合物の私的ライブラリーを持っておりまして、それらを再デザイン、合成を続けて同定したものでございます。
 ヒト肝キメラマウスと言いますのは、ヒトの肝細胞を移植しました高度免疫不全マウスでして、そのようなマウスにヒトB型肝炎を感染させましてB型肝炎ウイルスのDNA、ウイルスのコア抗原、ウイルスの表面抗原の血中濃度の推移を化合物の投与・非投与群別に決定いたしましたデータを示してございます。赤は何も投与していないビーイクル(コントロール)だけでございまして、CFCPとエンテカビルを1日1回投与して、ウイルスDNA、コア抗原、S抗原の消長について見ますと、今回は、最初の実験ということで、エンテカビル、CFCPのどちらも大量投与いたしましたが、ご覧のようにいずれも非常に強力な抑制効果が得られております。しかし、下の段のエンテカビル耐性のB型肝炎ウイルスDNAの量は、大量のエンテカビルを投与しましても横ばい、つまり全く効果が出ておりません。しかし、CFCP投与のマウスではおよそ3log、つまり1,000分の1あるいはそれ以上減少して落ちているのがお分かりかと存じます。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 先生すみません、資料は10ページと振ってあるのですが、非公開資料をどう見ればいいのか少しご説明いただければと思うのですが。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 失礼いたしました。皆様非公開資料をお持ちでしょうか。
 もう一度簡単に申し上げますが、B型肝炎、マウスの絵を付してありますのが非公開資料でございまして、そこに折れ線グラフが書いてあります。野生B型肝炎ウイルスDNAとコア抗原、表面抗原の消長が示してございます。エンテカビルとCFCPは何れも全ての項目で著明な減少をもたらしておりますが、エンテカビル耐性B型肝炎ウイルスに対してはエンテカビルは横ばい、CFCPでは1,000分の1くらいに下がっているのがお分かりかと存じます。CFCPを得るまでには、構造に立脚した化合物のデザイン・合成・仔細な生物活性の検討を繰り返す必要がありました。このヒト肝キメラマウスシステムは現在、最良のヒトB型肝炎モデルとされているわけでございますので、このシステムで強力な効果が観察されたということは特筆に値すると存じます。このCFCPについては既に特許を申請、PCT対応まで進めております。特許は、普通はいかに新規のものでも成立するのに3年くらいはかかりまして、まだ今は申請後2年目というところではありますが、製薬企業への導出を急いでいるところでございます。
 もう一つは、去年もご報告いたしました国内のヤマサ醤油、ご存じのように製薬企業ではございませんが、ここと共同でデザイン・合成・開発したEFdAという、この化合物も核酸系の逆転写酵素阻害剤でございますが、これはUS特許・国際特許がとれておりまして、米国Merck社に導出しまして、その実用化への研究開発を進めているところでございます。ご覧のグラフはIAS2017という学会で去年7月に報告されたもので、右側に説明をしておりますが、サル免疫不全ウイルス(SIV:Simian Immuno-deficiency Virus)をサルに経直腸的に毎週接種しますと、サルへのSIV感染が全例で成立いたします。しかし、EFdAを週に1回経口投与するだけで全例で完全に、少なくとも168日にわたってその感染をブロックするというデータが得られております。こうしたデータはHIV感染のハイリスクの方々を感染から強力に防御する可能性が高いことを強く示唆しているものと考えているところでございます。
 3つ目が11ページ、これらのデータは非公開ではございませんので、お手元の公開資料を見ていただきますと、ダルナビルというのは私達が2003年に報告いたしまして、現在もエイズの治療及びHIV感染症の治療で用いられているプロテアーゼ阻害剤というクラスの一員でございます。このダルナビルは現在も世界で一番用いられているプロテアーゼ阻害剤でございます。しかし、残念ながらこのダルナビルに対しても感染者で高度の耐性発現が見られております。加えて、HIV感染症、エイズに対する治療薬は脳内へ到達することがございませんで、そのために体の他の部分ではHIVの増殖はほぼ完全にブロックされますが脳内及び中枢神経系内では持続的に、感染と増殖を繰り返すことから、特に神経系のHIV関連神経認知障害というふうに名づけられている神経・認知障害が起きるということが大きな問題となっております。そこで私達は特に脳・中枢神経系に到達可能な治療薬候補の開発を目指して、GRL-142のデザイン・合成・同定に成功したところでございます。
 12ページを見ていただきますと、これはそのGRL-142の左側に構造がございまして、右側にラットの脳内に投下するというデータを示した図がございます。ここでもう一つコンフィデンシャルのデータをお手元の非公開資料でご説明いたします。霊長類でこのGRL-142を投与いたしまして、サルに免疫不全を起こすSIVのウイルス血症を本当にブロックするかどうかについて、12週にわたって観察いたしました。非公開資料をご覧下さい。SIV接種の4週間後から8週連続で筋肉注射を行いました。サルの1とサルの2を見ていただきますと、赤がウイルス量、青丸がGRL-142の薬の血中濃度を示しておりますが、ウイルス量がほぼ検出限界以下になっているのがお分かりかと存じます。これらのデータは、プロテアーゼ阻害剤が特にサル、霊長類でブロックできたという世界で初めての報告でございます。
 13ページ、お手元の公開資料の丸4をご覧下さい。J-DOIT研究は2005年に開始されました糖尿病予防のための戦略研究の1つでございまして、世界最多2,540名の患者さんを血糖、血圧、脂質について、従来療法群と強化療法群にランダムに割りつけたものでございまして、結論は強化療法群で有害事象が統計学的に有意に強く抑制されているということで、今後この結果がガイドラインに取り入れられて、合併症の抑制のためのゴールドスタンダードとなるものと期待されているところでございます。
 15ページを見ていただきますと、そこに我々の特に研究所を中心としました論文被引用回数がございます。これは順調に伸びてきております。残念ながら論文の発表数はこの2年は少し低迷しているかのように見られますが、いずれにしても論文被引用回数の増加は社会的にインパクトの高い論文が多くなっていると解されまして、私自身のこれまでの臨床研究の経験も踏まえて、臨床に即した研究を続けてほしいということが私達の研究所所員に伝わればと考えているところでございます。
 次に15ページの疾病に着目した研究の記載がございます。特にエイズ治療・研究開発センターは先ほど申し上げましたエイズ関連認知症に関する介入研究を続けておりますし、また、ベトナムで感染して日本に帰国しましたジカウイルス感染症患者への対応などの研究も続けているところでございます。また、糖尿病でも特に新規の代謝規定因子等の研究を進めておりますし、ウイルス性肝がん、非ウイルス性の肝がんの病理発生と増悪についての研究も強力に推進しているところでございます。
 16ページを見ていただきますと、疾患の実態把握ということで特に強調したいと思いますのはACC、我々のNCGMにありますエイズ治療・研究開発センターではHIVの患者4,000例、国内で最多のコホートを維持、管理しているところでございまして、また、大企業の従業員約10万人の職域コホートあるいは肝炎のコホート等々を確立して研究を進めているところでございます。
 特に17ページを見ていただきますと、2点について強調したいと思います。1つはマラリアに関する対応でございまして、マラリアの診断はそこに絵が右半分に書いてございますが、これまでの検査診断所要時間は30~40分あるいは15分でございましたのが、特に多項目自動血球分析装置、これは国内の検査会社との共同で行っているものでございまして、マラリア原虫感染赤血球の検出が今や1分で可能になっているところでございまして、特にタイでの臨床研究を行う準備を進めているところでございます。
 18ページを見ていただきます。膵島移植を現在も進めているところでございまして、特に1型糖尿病に対して同種膵島移植を実施しております。特にブタ膵島を用いたバイオ人工膵島が使用可能になりますと、免疫抑制剤が不要になる可能性あるいはドナー不足が解消される可能性がございますので、NCGMでは重要な課題として追究しているところでございます。
 19ページを見ていただきます。均てん化に着目した研究では当然、エイズへの対応についての均てん化を推進しておりますし、また、薬剤耐性の腸内細菌等々についても、特にナショナルセンター(NC)のいわばミッションでもございますので、そのような課題についての努力を続けているところでございます。また、糖尿病診療についての研修会を開催したり、肝疾患の拠点病院の責任者向けの研修会等を進めながら、情報発信手法の開発等も進めているところでございます。
 20ページは国際保健医療協力に関する研究についてでございまして、ベトナム、カンボジア、また、その他の特に東京2020のオリンピック・パラリンピックにおける感染症リスク分析等も進めているところでございます。
 22ページに評価項目1-2、研究開発に関する事項がございます。これは自己評価Aでございまして、中長期目標の内容と、目標と実績との比較がございます。特に24ページでは、実用化を目指した研究開発の推進及び基盤整備を記載しております。また、25ページを見ていただきますと、特に産官学との連携強化も今、強化、推進を進めているところでございます。
 26~28ページは時間が押していますので、ご覧いただくことに留めたいと存じます。
 以上でございます。ありがとうございました。
○永井部会長
 ありがとうございました。
 それでは、ご質問をお願いします。
○花井委員
 実はACCが特にやっているHAND問題で、実はまだ一般臨床では半信半疑なのです。今、先生のほうから神経系透過性の高いプロテアーゼ阻害剤の開発のお話がございまして、例えば神経透過性の高い薬と低い薬でコホートを利用して、HANDのあるいわゆる病態のもう少し実装というものがわかる研究というのは想像できるのですが、ACCとの連携というのはどのような形でやられているのでしょうか。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 これは非常に難しい課題でございまして、特にHANDの場合、このような薬物があったにしても、まず最初は抗ウイルス効果と副作用がテストされなければなりません。
 HANDといった神経系の問題は、臨床試験をやりますとかなり長期にわたって、恐らく5~10年あるいは15年かかるものですから、実際にこのような薬があっても2次的なインディケーターで判断するしかないと今のところは考えています。といいますのは、10年、15年とかかる臨床試験では、薬剤資本はそこに資本を投下したくないという事情があるからでございます。しかし、極めて強力な抗ウイルス効果を発揮して、脳内中枢神経系へ透過するというのを示すことは将来的にみて非常に重要だと考えています。
 今、ACCが確立しておりますHIV感染症の方々、4,000人の方々にこれを投与するという計画は、今のところは申し上げた理由から現在は考えておりません。まずはそうした薬物を治療薬として用いることができて、それが2次的に、最終的に評価されることになるというのが恐らく道筋になるだろうと考えております。
○花井委員
 ありがとうございます。今、トレンドがインテグラーゼ阻害剤になってしまっていて、理由がないとプロテアーゼ阻害剤なりそういうものに変えろということはないと思うのですけれども、一種そういう長期的な視点から薬のチョイスというのが今、判断しにくくなってきていると思うのですが、その辺で示唆があればと思いまして。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 インテグラーゼ阻害剤も非常に強力ですけれども、プロテアーゼ阻害剤はご存じかもしれませんが、耐性発現が非常に出にくいという長所がありますし、極めて強力であればその分だけ副作用も、つまりごくわずかで完全にHIVのウイルスの増殖をブロックすることができれば、副作用もかなり低減されるものと期待しているところでございます。ありがとうございます。
○永井部会長
 他にいかがでしょうか。福井委員、どうぞ。
○福井委員
 すばらしい成果が出ていると思います。先生はアメリカでのご経験も踏まえまして、例えばCFCPの現場への導入が十分速い速度でといいますか、知財関係のいろいろなサポートも含めまして、十分な体制で行われているとお考えでしょうか。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 なかなかそれは難しゅうございまして、例えばこの前もバイオテック2018に行ってまいりましたけれども、そのようなところで国内の企業がライセンスしてほしいとおっしゃる可能性は極めて小さいと思っております。
 実際にヤマサ醤油との共同研究でMerck社に導出したものは私、はっきり言いまして個人の伝でいろいろな会社の社長、副社長に直接直談判を続けまして、やっとMerck社の副社長に売りつけたということがございまして、それも論文として発表して特許を取得した5年後にやっとライセンシングができたということがございますので、今後も同じ努力を並行的にやろうと考えております。
 また、私どものNCGMでも知財が懸命な努力をして、そのような国内での集まりでも宣伝をするようにしておりますので、一刻も早くこれを導出に持ち込みたいと思っております。
○祖父江委員
 今のまさに同じことを聞こうと思ったのですけれども、先生のアメリカでのご経験から、例えば今のヤマサの問題を詳しくおっしゃったのですが、非常にすばらしい成果を出しておられると思うのですが、それが社会実装の段階になるとなかなか日本国内ではうまくいかなくて、こういうMerck社とか外国にいったん社会実装の現場を移して、それをまた日本に逆輸入するというようなストーリーが今までずっと依然として続いているなという感じがあると思ったのですが、今後どうしていったらいいですか。患者さんに早く届けるという観点から言えば、今のようにやれるところでどんどん国際的にやっていくというのがいいと思うのですが、なかなか今、先生おっしゃったように日本国内で育たないですよね。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 幾つかの点でお答えしたいと思います。
 1つは日本の製薬企業の開発の資金が、アメリカのそれと比べると5分の1から6分の1しかございません。人口比からすると日本は1.3億人、アメリカは3億を少し超えつつある。つまり2.5倍であるのに薬剤資本が上位6社、10社の米国、日本で比較しますと5~6倍ですから、日本はリスクをとれないというのが実情だと存じます。今日お示ししましたサルで初めてその効果が確認できたGRL-142というプロテアーゼ阻害剤も、実は国内のかなり大きな薬剤資本の社長と知り合いだったものですから、6カ月くらいいろいろ説明した挙句、一緒にやろうということになって、しかし、その後で理由を開示せずにやっぱりやめたということになりました。なかなか日本の製薬企業はハイリスクがとれないという状況があると思います。
 もう一つは、ご存じのようにHIV感染者とエイズの患者さんは幸い日本ではそう多くない。アメリカとかヨーロッパと比べたらの話ですけれども、それでやはりエイズについてはMerck社を選ばざるを得なかったという経緯がございます。
 B型肝炎にしてもリスクが高いと思いますのは、まだ汎用されているエンテカビル等々の治療薬がございまして、また、アデホビルとか「次世代」の治療薬がある程度、効果を奏することが分かっていますので、開発に関しては短期的にやはりリスクが高いと日本の企業はなかなかライセンスを受けてくれないのではないかと思います。しかし、あまり言いたくないのですが、ヤマサにはロイヤルティー等の大きなお金がやはり入ってきますから、日本内に投下した資本が再還流するというのは確実だろうと思っております。そうした事情はやむを得ないと思います。
 もう一つは薬価の問題ですけれども、薬価の問題は例えばオプジーボで見ますと、必ずしも日本で開発したものが、実際はご存じのように欧米の2~3倍という高値がついたという経緯もありますから、薬価がどのように決まるかについて私は必ずしも承知していないところでございます。
 そうしたことから、祖父江先生がご指摘になった点をどのようにやっていくかというのは、やはり我々の立場からすると困っている患者さんに一刻も早くということで、欧米の薬剤資本に頼らざるを得ない時期がまだまだ続くのではないかと残念ながらそう考えているところでございます。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。
 それでは、1-3から1-7についてご説明をお願いします。
○国立国際医療研究センター大西病院長
 病院長の大西です。
 29ページ、1-3、医療の提供に関する事項についてご説明いたします。
 自己評価は、今回はAに上げております。
 31ページをご覧ください。31ページの高度・専門的な医療の提供では、右上に写真がございますが、特定感染症病床が4床あって、エボラとかMARS疑いの患者さんを受け入れた実績がありますが、そのうち2床をICU化しまして重症者にも対応できるようにいたしました。
 その下、ダ・ヴィンチ手術を導入しまして、前立腺を中心に全70例を安全に実施いたしましたいたしまたが、現在それをいろいろな領域に拡大しているところです。
 その3、がん連携拠点病院の指定を受けまして、がん診療のさまざまな体制を整備しています。
 丸6、右下に写真がございますが、形成外科の体制をだいぶ整備しまして、スーパーマイクロサージャリーを用いたリンパ浮腫の治療を非常に多くの件数やっていて、世界のトップクラスの件数になっております。あと分類が右下に書いてありますが、当科の科長が提案した重症度分類が国際基準に採用されております。
 32ページ、右上に救急車の写真がございますが、当センターは救急搬送の患者数が都内でもトップクラス、恐らくトップではないかと思いますが、年間1万1,109人でありました。真ん中にグラフがありますが、真ん中のグラフが応需率でかなり上がってきて、右側の三次救急搬送の件数も非常に増えております。下のほうに書いてございますが、多臓器不全を伴った重症感染症の患者が非常に多くて、その救命率も上昇して95%になっております。
 また、国府台においては精神科救急とか重症身体合併の患者さんの割合が非常に高くて、精神科の地域医療に多大なる貢献をいたしております。
 33ページの右上は、これは実はイスラム教徒のための祈祷室、Prayer roomなのですけれども、外国人の患者さんが今増えていまして、特にハラル食の提供とか、こういうPrayer roomなども整備しています。
 ちなみにデータからお話しますと、初診患者さんの12%が外国人、入院患者さんの5%は外国人、救急患者さんの実に15%が外国人になっておりまして、人間ドックセンターも今、収益の半分は外国人が占める状況になっております。そこに書いてありますようにJMIPとかMedical Excellence JAPANのジャパンインターナショナルホスピタル、その他いろいろ認証を取っており、国際診療部を中心にさまざまな外国の患者さんのニーズに応える体制を整備しております。
 下半分に書いてありますように、言語対応が非常に重要でして、センター病院では受付のところに5カ国語で対応できるような表示機、受付機を整備いたしました。電話通訳も導入していまして13言語、さまざまな方、特に最近中国とかベトナム、ミャンマー、韓国、いろいろな方がいらっしゃっていますので、なかなか言語対応が大変なのですが、そういった通訳も配置しながら電話通訳も活用しています。
 また、トラベルクリニックの活動も当院の特徴ではございますが、下のグラフにありますようにトラベルクリニックにおける初診患者さんは増加し、ワクチン接種もかなり増えてきております。
 34ページには上のほうに客観的指標等を用いた医療の質の評価ということで、制度化なども一生懸命やられていますが、JQ等で求められているQIに準拠したセンター病院独自のQIをさまざまに策定し、ホームページ等でも公開しております。
 真ん中の患者さんの視点に立った良質かつ安心な医療の提供ということでは、エイズ患者さんの会とか、がん患者さんの会とかいろいろなことを実施して、また、患者さんが相談しやすい体制を整えております。
 下のほうの丸7に患者満足度調査を定期的に実施していますが、センター病院、国府台病院ともに非常に満足しているという患者さんが多くて、非常にありがたいと思っています。
 一番下のほうに書いてありますのは右のグラフに関係するのですが、昨年度のこの部会で永井部会長から、患者さんの外来待ち時間を改善したほうがいいというご指摘を受けまして、各診療科の各医師の診療実態に合わせたきめ細かな予約設定に変更いたしました。右のグラフは上が再診、下が初診ですが、少し長いところのプロポーションが徐々に改善してきているのがわかると思います。
 35ページの上の段はチーム医療の推進ということで、さまざまなチームを立ち上げておりますが、平成29年度には新たに入退院支援センターを立ち上げまして、入院前から多職種間で患者さんへの指導や説明に取り組む体制、薬剤師さんによる薬剤チェックとかそういう体制を整えました。また、認知症ケアのチームを発足させたりしました。
 右上のグラフにチーム医療の介入件数が増えてきていることがわかると思います。
 丸2の専門・認定看護師は、延べでセンター病院が35人、国府台病院が8人在籍していまして、右下にグラフがありますが、これを今増やしていて、特定看護師は今3人ですが、さらにそれを増やす努力を続けております。
 下のほうですが、入院時から地域ケアを見通した医療の提供ということで、センター病院、国府台病院ともに高い紹介率、逆紹介率を維持いたしております。
 36ページ、まず医療安全管理体制の充実ということで、特定機能病院の新要件でさまざまな医療安全管理体制の強化が今、求められておりますが、右のほうに組織図がちょっと小さいですが書いてありますけれども、当院も新要件に合致したような体制を全て整えまして、専従医師を1名含む医師5人、専従看護師2人、医薬品安全管理者、医療機器の安全管理者が所属しまして、29年4月には専従薬剤師を配置することができました。また、全職員を対象としたe-ラーニングを年2回実施して、100%の受講率。そのほかにもさまざまな中途採用研修とかいろいろな取り組みをいたしております。
 右下にインシデントレポート数がありますが、これもどんどん現場に出すようにお願いしていまして、少しシステムを変えましてレポートを出しやすいようにしたり、共有できやすいようなシステムに変更してから非常に件数が増加してきて、さまざまなインシデントを積極的に出していただくようになり、医師のインシデントレポートの報告率も11~12%ぐらいを今、推移しています。
 以上です。
○国立国際医療研究センター日下国際医療協力局長
 国際医療協力局長の日下と申します。どうぞよろしくお願いします。
 1-4から1-6までご説明をさせていただきたいと思います。
 37ページ、1-4、人材育成に関する事項でございます。中長期の目標は2点ございます。1点目はリーダーとして活躍できる人材の育成。2点目はモデル的研修、講習の実施ということでございます。いずれも当初の目的を大きく上回る成果を上げているという評価とさせていただいております。
 次のページをご覧ください。具体的な成果でございます。リーダーとして活躍できる人材の育成ということで、1番目に長崎大学熱帯医学・グローバル研究科修士課程の東京キャンパス、NCGMサテライトというものがございます。昨年5月に設置されたものでございますが、これは長崎大学との連携により国際保健に関する社会人向けの人材育成基盤を整備したものでございます。
 2点目は、昨年9月に厚生労働省の委託事業としてグローバルヘルス人材戦略センターを開所いたしました。これは国際的な保健政策人材の養成を戦略的に進めるという目的の下、現在、国際保健課題への貢献と発展に、育成人材が寄与できるような形となるよう事業を進めさせていただいております。
 5番目になりますが、HIV・マラリア・結核等の感染症の専門家を育てる総合感染症科フェロープログラムです。これは平成22年から実施している事業でございますが、昨年度は2名の受け入れを行っております。
 6番目ですけれども、昨年9月より医療教育部門の拡充を行っております。これまでの対象は医師のみでしたが、看護師、メディカルスタッフまで拡大し、全ての教育を所掌する組織に拡充しております。
 7番目でございますけれども、国際医療展開セミナーでございます。日本の医療機器を国際展開するのに必要であるWHOの認証をどのようにして取得するのかということについてセミナーを開催したところ、企業等関係者を含め、多くの参加をいただいたところでございます。
 次のページのモデル的研修・講習の実施についてご説明させていただきます。4番目にございますが、日本人の国際協力を目指す若手人材育成のための医師向けのコースと看護師向けのコース、その他、職種を問わないコースがございます。これらに加えて昨年度は、リーダーの育成を目指して初級からの次のステップとしてアドバンスコース「UHCと保健人材」を開始したところ、昨年度は9名の参加がございました。今後、このコースを拡大する予定としております。
 5番目でございますけれども、肝炎に関しまして肝疾患診療連携拠点病院の責任者向けの研修会を2回、看護師相談員向けの研修会を1回開催しておりまして、着実に研修を実施しているところでございます。
 40ページ、1-5、医療政策の推進等に関する事項についてご説明させていただきます。
 中長期の目標としましては3点ございます。1点目が国への政策提言、2点目が医療の均てん化、情報の収集発信、3点目が公衆衛生上の重大な危機への対応ということでございます。これらの実績についてですが、当初の目標を大きく上回る成果を上げているという評価とさせていただいております。
 42ページをご覧いただきたいと思います。具体的な成果でございますが、まず国等への政策提言に関する事項については、ラオスにおいてNCGMは麻疹風疹に対する調査研究を実施しております。この調査結果についてWHOに報告をするとともに、昨年度は麻疹風疹の排除認定会議というものを日本で開催しました。こうした機会を活用しながら国際機関に対する提言を行っております。また、WHOのワクチン接種に関する専門家会合にIPACというものがございますが、ここにNCGMから専門家を派遣しており、途上国におけるワクチン接種の課題と解決策について提言を行っております。これまで行った調査や提言については、ラオスの国家予防接種プログラムガイドラインに反映をされたところであります。
 2番目になりますけれども、保健省のアドバイザーとしてセネガル、コンゴ民主共和国、ラオス、ミャンマーの4カ国に専門家を派遣しております。この4カ国の保健医療政策の立案にこのアドバイザーが参画をいたしました。その結果として例えばセネガルではUHCを目指した国家保健財政戦略、コンゴ民主共和国においては第2次国家保健人材開発に係る5カ年計画、ラオスにおきましてはアジア太平洋地域におけるHIV、B型肝炎、梅毒母子垂直感染の排除に向けての地域フレームワーク、ミャンマーにおいては保健省HIV検査ガイドライン、保健省HIV臨床ガイドラインが策定されることとなりました。このように派遣された専門家は、国家の保健政策に大きな影響を与えているところでございます。
 引き続きまして、真ん中の医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項についてご説明させていただきたいと思います。
 丸2の肝炎情報センターにつきましては、全国70の肝疾患診療連携拠点病院の情報共有を支援するとともに、肝疾患患者相談支援システムを導入し、拠点病院の連携促進と相談員等を支援しております。また、肝炎の検査を無料で受けられる医療機関を探すことができる地図アプリ「肝ナビ」を開発したところでございます。
 丸4のWHO協力センター(WCC)でございますけれども、今、NCGMにはWCCが3つございますが、高齢者のための包括ケアシステムについてはこの3つのうちの1つとして認定されているところですが、この活動の一環として、ベトナム、ラオス、カンボジアにおける保健人材の規制枠組みの開発プロセスに関する研究をWPROと一緒に実施することで合意をしております。また、WCCについてはその期間が4年間なのですけれども、さらに4年間の契約更新をしたところでございます。
 さらにWCCにつきましては、日本国内36機関が認定されているところでございますが、WCC間の協力についてNCGMが事務局として、その具体的な協力を促し開始されたところでございます。
 43ページ、丸5国際感染症センターにつきましては、昨年4月にWHOの協力センターに認定をされました。具体的な成果でございますけれども、WHO西太平洋事務局からの依頼で、ノロウイルス感染症に対しての専門的なアドバイスといったものを行っております。
 丸6、今年3月ですけれども、WHOの西太平洋事務局からの依頼でWPRO及び国立保健医療科学院と協力し、ラオス、ベトナム、カンボジア、モンゴルからの担当者を招へいし、病院の質と安全管理に関する研修を実施しました。ここの成果としましては、ベトナムにおいては医療の質に関する国における意識が高まりまして、大会が開催されるようになるとともに、質の改善に係る人材が飛躍的に増加しているとお聞きしております。
 8番目になりますけれども、昨年度において3つの協定を結んでおります。1つ目がフランスのパスツール研究所と昨年7月、そして昨年11月にはタイのマヒドン大学熱帯医学熱帯学教室と調印をしまして、今年1月にはフィリピン大学のマニラ校とMOUの調印をしております。
 引き続きまして45ページ、公衆衛生上の重大な危機への対応についてご説明をさせていただきたいと思います。
 1番目、先ほど大西病院長からもお話がございましたが、感染症の対応ということでNCGMには特定感染症病床が4床ございますが、このうち2床について重症出血熱や重症呼吸器不全に対応可能な病室へと改築をしているところでございます。
 丸2、新感染症を想定した院内合同訓練を毎年1回することとなっておりますけれども、昨年度は2回実施をし、さらに医療従事者向けの個人防護具の着脱訓練を毎週実施しているところでございます。
 丸6でございますけれども、海外の公衆衛生危機に対しての日本人派遣を行うために設立されましたJICAの国際緊急援助隊の感染症対策チームというものがございます。現在この運用について議論を進めているところでございますが、これには支援委員会というものがございまして、この委員にNCGMから1名、そして、その中の公衆衛生班員、診療・感染防護班員としての委員として選ばれており、具体的な研修計画の立案に参画をしているところでございます。昨年度につきましては研修2回に職員を講師として派遣しておりまして、今後、公衆衛生危機対応のための人材育成に協力するとともに推進していくつもりでございます。
 46ページ、1-6、医療政策の推進等に関する事項でございますけれども、自己評価はS○でございます。
 中長期の目標については2点ございまして、1点目が日本の経験・知見の移転、保健医療に関する国際協力の実施。2点目が政策形成支援、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進でございます。この2つの目標とも当初の目標を大きく上回っております。
 47ページ、国際協力につきましては、従来は外務省、JICAの実施する国際協力にお手伝いをするという形でございましたが、平成27年度から厚生労働省独自の予算で医療技術等国際展開推進事業が創設されました。この創設に関してはNCGMと一緒につくったという経緯がございまして、また、その実施についても厚生労働省から委託を受けております。この事業開始の影響もあり、中長期の目標を大きく上回る研修の受け入れを実施しております。下の左側にありますけれども、当初の中長期目標は960名ということでしたが、29年度には1,153名と大幅な伸びを示しております。
 また、右側のグラフをご覧ください。研修の受け入れの状況ですが、ほぼ半数がアジア、そして、その次にアフリカといった状況でございます。
 丸2は専門家派遣状況でございます。昨年度はカンボジアなどの諸外国に母子保健対策、疾病対策、保健システム強化等の日本人専門家を延べ381名派遣しております。下の右側の表でございますけれども、昨年度で当初の中長期目標であります600名を大きく超える状況となっております。
 丸3でございますけれども、日本人の国際協力人材を育成するために204名に対して研修事業を実施しており、今後、国際協力に参加する日本人の人材が増加することが期待されております。
 48ページ、伊勢志摩サミットにおいて提案された4つの国際保健課題ということで、公衆衛生危機対応強化、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、薬剤耐性(AMR)対策強化、研究開発(R&D)の4つがございますが、この4つについて進捗報告をさせていただきたいと思います。
 まず公衆衛生危機対応につきましては、国際緊急援助隊の感染症チームの研修の計画立案を引き続きJICAと協力して実施しておりまして、チーム能力の向上を通じて世界的な公衆衛生危機対応の基盤を構築してまいりたいと考えております。
 Bのユニバーサル・ヘルス・カバレッジにつきましては、昨年12月に開催されたUHCフォーラムにおきまして、2つのサイドイベントを開催いたしました。その中でUHCの実現に向けた政策提言を行っておりまして、その政策面においてもNCGMの存在感を示すことができたのではないかと考えております。
 次に薬剤耐性、AMRについてご説明させていただきたいと思います。AMRにつきましてはミャンマーにおけるAMR対策の一環として、ミャンマーの17医療機関にAMRネットワークを拡大するとともに、同医療機関においてグラム陰性細菌の分離・収集を実施いたしました。その結果、計457株の薬剤耐性菌を分離いたしまして、それぞれについてゲノム解析を実施したところでございます。
 DのR&Dにつきましては大きく2点ございまして、1つ目がマラリアワクチンの開発、2つ目がマラリア抗体の開発でございます。マラリアワクチンにつきましてはGMP原薬の製造を完了いたしまして、製造法に関する特許を出願しまして各国へ移行しているところでございます。マラリア抗体につきましては、マラリア完全ヒト型抗体の作製を企業と実施したところ、その作製に成功しており、一定の原虫増殖抑制阻害効果を得ているところでございます。現在は前臨床試験を開始しており、今後、ヒト臨床試験への展開を目指しているところでございます。
 49ページ、5番目の国際共同治験実施に向けましてタイのマヒドン大学熱帯医学教室、フィリピン大学マニラ校とMOUの締結をしておりまして、国際共同治験の基盤が整備をされたところでございます。
 6番目でございますけれども、下の左側の絵の緑色のところに仏語圏アフリカ保健人材管理ネットワークというものがございますが、これはこれまでJICA等で実施した研修でつくったコネクションを活用し、12カ国に拡大された仏語圏アフリカ保健人材広域ネットワークを形成したものでございます。このネットワークを活用してセネガルでネットワーク会合を開催し、ここで得られた知見、経験について仏語圏のアフリカ諸国と共有しながらこれらを拡大するということを実施しております。具体的な成果としては、セネガルで実施した僻地への医師、看護師定着研究というものがございます。この結果についてネットワークにおいて情報共有したところ、セネガルでは保健省が人材の異動政策実施のための基準に取り入れたということでございました。また、ブルキナファソにおいても同様の施策が実施されたと聞いております。
 最後のページ、50ページとなります。厚生労働省の昨年度の医療技術等国際展開推進事業に関しましては17カ国、31の研修事業を実施しております。研修の受け入れは280名、派遣は399名、セミナーを124回実施しております。
 8番目、企業等との連携事案として3件、ベトナム、ザンビア、カンボジアで実施をしております。ザンビアに関しましては左下にございますけれども、エアロセンス社のドローンを活用した医療物資、検査キットや医療検体などを輸送システムとしてドローンを使って試験飛行を実施しておりまして、今後これが実用化することに向けて大きく前進したのではないかと考えております。
 右上のベトナムに関しましては、遠隔画像診断法というものを導入いたしまして、ベトナムにおける小児がんの診断能力強化ということで、ベトナムの主要7病院で小児がんの専門医を臨床現場で遠隔システムを使いながらの指導を実施しております。具体的にはフエ中央病院で小児固形腫瘍に対して、初めて化学療法が開始されたところでございます。
 最後にカンボジアでございますけれども、カンボジアの産婦人科学会、そして日本の産婦人科学会とNCGM、この三者共同で子宮頸がん検診のための病理人材育成と体制整備事業を実施しております。具体的には子宮頸がんの早期診断、治療を目的としまして、HPVの簡易検査法を用いまして同国初の子宮頸がん検診を443名に実施しておって、今後、途上国における子宮頸がん検診のモデルとして期待されるところでございます。
 以上です。
○国立国際医療研究センター井上看護大学校長
 国立看護大学校長の井上でございます。
 1-7、医療政策の推進等に関する事項(看護に関する教育及び研究)をご説明いたします。自己評価はAとさせていただきました。
 国立看護大学校は2001年に設置法に基づきまして開学されましたが、中長期目標のその下に書いてございますように、NCの看護職員、でき得れば将来の幹部看護職員を養成し、その研修を目的として看護に関する学理及び技術の教授、研修並びに研究を行うというもとに、以下丸1~5の中長期目標を掲げております。
 Ⅱの目標と実績との比較において説明させていただきます。なお、この後、52ページ、53ページにつきましては具体的な内容を書いてございますので、適宜ご覧ください。
 まず丸1の看護学部及び研究課程部における教育の充実と看護学部卒業生のNCへの就職率90%以上。この研究課程部といいますのは大学院のことでございますが、省庁大学校ゆえに大学院とは名乗れないためにこのようになっております。
 下のところをご覧ください。94名の卒業生、看護師、助産師とも国家試験合格率は100%でございます。修士課程につきましてはがん看護、精神看護、小児看護の専門看護師教育課程を新たに開設し、従来からございます感染管理とともに4課程となりました。さらに前期2年、後期3年でございますが、大学院、研究課程部が完成となりまして、看護学研究の発展に寄与する体制が整いました。90%以上の就職率ということでございますが、52ページに6センター8病院のそれぞれの人数の内訳が出ています。
 丸2でございます。質の高い学生の確保のための努力をするということでございますが、18歳人口の減少の中、また、看護系大学260、この4月においては277と看護系大学は増え続けております。その中で一昨年6.1倍から昨年は6.8倍という志願率を確保しております。ちなみに首都圏の国立大学法人の倍率は、全て3倍以下という状況でございます。また、これは前期課程のデータでございますが、国立大学法人41校中20校が定員割れをしている中で、本学は前期、後期ともに一度で定員を確保しております。そのためにはオープンキャンパス、公開講座以外にも、出前授業あるいはさまざまな予備校等主催の行事に参加しております。
 丸3でございます。専門性の高い政策的な内容に視点を当てた短期研修は延べ687名。これはNCを最優先として国立病院機構(NHO)、それから、一般から公募しておりますが、NCの看護職員の研修ということも本学の大きな目的でございます。当初の6コースの中で12コース開設いたしました。2カ月にわたる長期研修においても定員以上の募集を受け入れてやっています。
 丸4の看護師等の看護研究活動の推進。これはNC側の看護職員の手挙げによる看護研究の指導あるいは共同研究という形でそれぞれ目標値を設定しておりますが、それぞれをクリアしております。
 最後に、グローバル化の中でハイズオン医療技術大学、これはベトナムでございますが、ここには本学の4年生が来週から国際看護実習として毎年訪れているところですが、そことの共同研究を行い、また、JICAとともにインドネシアにおける看護実践強化プロジェクトの最終評価年度に当たり、現地調査への参加、また、教員が現任教育として複数回インドネシアを訪問し、高齢化が進むインドネシアの老年看護学構築に大きく貢献しております。
 以上でございます。
○永井部会長
 ありがとうございました。
 それでは、ご質問をお願いいたします。
 病院の外来待ち時間、随分改善したと思います。いろいろな工夫をなさったと思いますが、国府台が少し遅れているのですか。
○国立国際医療研究センター青柳副院長(国府台)
 国府台副院長の青柳でございます。
 国府台が今回出したデータは、実は前々年までの数値の取り方と若干変わっておりまして、一概には比較できないということであります。
○国府台病院宇都事務部長
 補足で説明させていただきます。非公開資料の資料一覧の24ページに国際国府台外来診療待ち時間、下のほうに出ています。他のセンターと国府台だけ形が違うなというのがあると思いますが、これは実際に調査の手法が、四角の中に「待ち時間は「予約時間から診療開始まで」の時間を指す。」となっていますが、この予約時間ではなくて、外来で受付をした時間からの数値で記載させてもらっています。なので予約時刻よりも早く来る方々が多かったために、こういう結果になっています。ここには間に合わなかったのですけれども、予約時刻でもどうにか、この同じ患者数について再調査をしたところ、戸山あるいは他のNC同様のグラフになっています。そういった意味では去年よりだいぶ改善はされました。
○永井部会長
 そういうことであれば十分結構です。よくわかりました。
 どうぞ。
○内山部会長代理
 極めて多種多様な診療内容で、病院のマネジメントも大変だろうと推察できます。特に外国人の方に対して言語から始まってさまざまな形で対応されているということで、日本に住んでいる外国人、あるいは訪日される方たちにとって心強い存在だと思います。
 全体の患者数に占める割合あるいは外国人の患者数そのものは増えているのでしょうか。
○国立国際医療研究センター大西病院長
 実は3年前に国際診療部を立ち上げたのです。そして窓口を明確に一本化して、それからかなり患者さんがスムーズになりまして、ただ、外国人と言ってもいろいろなチャンネルがありまして、インバウンドでいらっしゃる富裕層、そういう方もかなり増えていて、中国の方とかベトナムの方とかが多いのですが、そういう方はかなり手間がかかりますので、例えばコストは2倍を取っているとか、人間ドックもかなり外国の方がいらっしゃって収益の半分ぐらいは外国の方なのですけれども、人間ドックは大体1.5倍ぐらいで取っているのですが、初診が今12%、入院が5%、救急の実に15%が外国人で、人間ドックの収益の半分は外国人なのです。
 ただ、そういうインバウンドで来る方、人間ドックで来る方、あるいは新宿区というのはもともと外国の方が非常に多く住んでいる地域で、恐らく都内で一番多いと思うのですが、そういう方もいらっしゃったり、救急車で来る方にバッグパッカーみたいな方とか、いろいろな方が混ざっているので、多種多様な対応をしなければいけないというのが苦労しています。
○国立国際医療研究センター青柳副院長(国府台)
 国府台病院からお答えします。
 国府台病院は地理的に江戸川の千葉県寄りというか、田舎にあるという関係もありまして、外国人に関してはさほど多くないという現状で推移しております。一番多いのは中国の方でありまして、全体で見ましても外来患者さんで正確なデータは承知しておりませんけれども、恐らく2%弱だろうと思います。入院患者さんはそれより少なくて1%前後ではないかと思っており、この頻度に関しましてはここ4、5年、大きな変化は特にないと認識しております。
○内山部会長代理
 ありがとうございました。大西病院長のご説明で、恐らくこれだけの展開はナショナルセンターとしての矜持のもとにやられていることと思ったのですけれども、私の推測以上に収益も上がっているということを聞きまして、少し安心いたしました。ありがとうございます。
○永井部会長
 どうぞ。
○深見委員
 看護学部の出願者数というところでお伺いしたいのですけれども、特に非常に出願者数が多いということで、入学した学生さんがどういうふうに評価してここを選んだかという、そこの大きな理由はどういうところにあるのでしょうか。
○国立国際医療研究センター井上看護大学校長
 本学は省庁大学校のためにセンター試験が使えないのです。それで自前の科目で受験をしておりますが、国語、外国語、数学と理科を2科目課しております。ですので私学系と重ならず、どちらかというと国立理系の、そして看護学を志す学生さんが受験する、その層かと思うのですが、センター試験と重ならないということで選択肢の1つとして多くの人が受けてくれて、その中で選んでくれている。ただ、入学生の7割が関東信越ぐらいまでということですので、今、地方はほとんど国立、県立、市立の看護大学校が1県5~6校ある時代ですので、関東圏の理系の国立系の看護大学に行きたいという人たちの1つの選択肢となっていると考えております。
○深見委員
 教育内容に関しては、特に他の看護学部と大きな違いがあるというわけではないという理解でよろしいですか。入学に関する受けやすさというところが大きな原因ということですか。
○国立国際医療研究センター井上看護大学校長
 プラスもう一つ、NCに就職するという前提ですので、いわゆる実習は6センター8病院を使っている。第一線のところで実習ができるということが最初から保証されている。最近の新設の看護系大学は、実習病院を探すのに大変苦労をして、分散していたりとか、そういう形になっておりますが、うちはNCで実習をして、そしてそこに就職してもらうという道筋がついているというのは学生、そして親御さんにとってはとても魅力的なようです。
○福井委員
 非常に多岐にわたるテーマについて、期待される以上の成果を出されていると思います。
 1点聞かせていただきますと、最近、千葉大学や横浜市立大学が発表した画像診断上の予期しない所見があった場合の対応です。これだけ大きな組織になるとシステムを組み込んでおくべきで、一人一人の能力に頼るわけにいかないと思いますが、先生のところではどういう仕組みで予防されようとしているのでしょうか。
○国立国際医療研究センター大西病院長
 実は昨年、当センターは救急車がいっぱいくると先ほどお話しましたけれども、救急の現場でちょっとそういう事例があったのです。それで早速やりましたことは、まず主治医がそのCT、MRIあるいは病理をオーダーします。そうすると、結果を見ていたかどうかはまずシステムで、見たらそこにボタンを押すような、所見を最後まで読んで、最後にボタンを押したら終了というシステムを入れたのです。それを2週間後に全部調べまして、誰がまだ見ていないかを全部公表して、診療科長にフィードバックして、本人にも連絡するようにしました。
 ただ、それだけでは十分ではないので、例えば何となく慣れてしまうとボタンだけ押してしまう、あるいはレポートを見ても自分の興味のあるところしか見ていないケースもあるので、それでは困るので第三者的なレビューが必要だろうということで、救急のほうは救急を通る画像は全部レビューするようになったのですが、全科的には最近強化したのは、診療情報管理室でレギュラーに重要なキーワードを拾って新しいがんとか出てきたら、それを定期的にチェックして診療情報管理士がカルテの内容を見て、医師がちゃんと対応をとっているか。それを見てフィードバックをするという体制をとっております。
○永井部会長
 どうぞ。
○祖父江委員
 すごいレベルで多岐にわたって非常にアウトプットを出しておられるなという感じがいたしました。
 一番最初の研究のことでもすごいなと思ったのですけれども、今お聞きすると病院、国際協力、看護でも非常に高いレベルを維持されていて、改めてびっくりいたしました。
 たくさんお聞きしたいことがあるのですが、2点だけ教えていただけたらと思うのですけれども、私はよく存じ上げなかったのですが、先ほどの看護の話です。ナショナルセンターへの就職が九十何%ですかね。もともとの理念として看護学部はナショナルセンターの看護師養成というコンセプトでつくられていると考えていいですか。私はそこをよく理解していなかったのですが、そういう理念ですか。
○国立国際医療研究センター井上看護大学校長
 そのとおりでございます。NCができ、それ以外にもNHO等ございますが、それぞれが3年制の看護学校を持っておりました。そのあたりを全部ではないのですが、統廃合という形で看護大学校がつくられ、そしてメーンの目的はNCの将来の幹部看護職員を養成するということで、博士後期課程までつくりました。
○祖父江委員
 なるほど、わかりました。
 国際協力も看護学部で結構やっておられますが、そういう方向を1つの軸にしながら看護ということもやっておられると理解していいですか。
○国立国際医療研究センター井上看護大学校長
 国際看護学という分野を独自に教員2人配置しておりまして、昨年からテロとかいろいろな問題等がありましたので選択制にしたのですが、それまでは100名全員、国際看護学実習を必修化しておりました。今年もベトナムに参ります。
○祖父江委員
 ありがとうございます。
 もう一点だけ、国際協力のところで非常にこれも幅広い世界のいろいろなところで活躍されておられるのですが、地域から言いますと私は主にアジアかなと思っていたのですけれども、最近はどうも先ほどのお話を聞くとアフリカ、ただ、中南米が少ないのかなという感じがするのですが、何か重点的な地域政策とか、世界中で理念がどうなっているのかというのはちょっとよくわからなかったのですが、教えていただけますか。
○国立国際医療研究センター日下国際医療協力局長
 もともとはJICAの事業を一緒にやっていくということで、ODAの対象となる国ということでスタートしております。その関係がありまして中南米の国というのは1980年代はまだ援助をしておりました。その後、所得が上がってきた関係でJICAの援助の対象からどんどんずれていったということで中南米がなくなり、そして今、アジアも所得がだんだん上がっているので対象から外れていく方向ではあるのですけれども、ただ、日本はODAの対象を従来からアジアに絞ってきたという関係がありまして、所得は上がってきたけれども、アジアからは抜きにくいというところがあって、アジアを重点的にやっております。
 また、最近の国際機関の援助の対象として今、中心はアフリカに移りつつあります。ただ、JICAの支援もどういうふうに国際保健を進めていくのかということで、アフリカは従来からの関係がありまして、イギリスとかフランスがかなり昔から入っている関係で、後進になるのですけれども、昔から実はやっている国が先程もお話しましたが、仏語圏のアフリカ地域がありまして、こういったところは前からのコネクションがあるということで今、進めております。ただ、JICAもやはりアフリカに今後進んでいくということがありまして、NCGMとしてもそちら側の展開を今後考えているところでございます。
○永井部会長
 大西委員、どうぞ。
○大西委員
 本当に多岐にわたる活動をご説明いただき、どうもありがとうございます。
 言葉が目を引いたものですからお尋ねしたいのですけれども、医療政策の推進等に係る事項の42ページの後段の丸4ですが、アジアにおける高齢者のための地域包括ケアシステムに関する政策研究という項目がございます。これは先程の病院の医療の展開の中とは少し趣が違うのかなという気もしたのですけれども、どういう内容のものを想定されておられるのか教えていただけますでしょうか。
○国立国際医療研究センター日下国際医療協力局長
 WHO協力センターというのは、いわゆる国際協力というよりは、日本の高齢化対策とか国民皆保険をどのように進めてきたのかという国内の情報を、NCGMの国際医療協力局で集めた情報を、相手であるWHOの西太平洋事務局との間で情報共有することがメーンでありまして、これプラスアルファでJICAとNCGMが進めている高齢化に関する事業というのが実はアジア地域でありまして、例えばタイとかそういったところでやっているのですけれども、そういったところの知見をWHOの西太平洋地域事務局と情報共有しながら、どういうふうに進めていったら、日本は課題先進国でございますので、どういうことが問題で、どういうことをやるとブレークスルーになるのかということを情報共有しながら、それを主にアジア地域の人たちに向けて情報共有をしてお役に立てたいということで進めているものでございます。
○大西委員
 そうすると、情報共有の窓口機能という位置づけと考えてよろしいですか。
○国立国際医療研究センター日下国際医療協力局長
 そのとおりです。
○花井委員
 2つだけ教えてほしいのですけれども、まず特定感染症病床なのですが、これというのはいわゆる一類感染症類受け入れ可能ということですよね。これを標榜しているのは日本で1カ所、ここだけですよね。
○国立国際医療研究センター日下国際医療協力局長
 他でも例えばエボラだとかありますけれども、ほとんどはうちに来ます。
○花井委員
 ありがとうございます。とても大事なことで、なかなかそういうことが今までなかったことなのでいいことかなと思います。
 もう一つ気になるのは人材育成のところで、実はここだけがいわゆる専門医研修の基幹病院になれるということになっていて、他のNCは結局、先程も議論したのですが、5年目でレジデントだと言っていて、本来は2階建て部分のところで3階を見据えるという話になると、3年目の先生とか各専門NCでもある程度研修できるほうがいいと思うのです。それをうまく連携する術はここにお願いするしかないのではないかと思っていて、今、10領域あって最終的には19領域全部プログラムをつくるとおっしゃっているのですが、他のNCでのプログラムの中にうまく研修できるようなことはお考えがあるのでしょうか。
○国立国際医療研究センター大西病院長
 その点は大きな問題にはなっていまして、他のNCもかなり困っている面もございました。かなり以前からいろいろな連携のプログラムができないかとか、既に具体的な話し合いはいろいろ進んでおります。私たちもできれば相互に乗り入れてお互いに学び合うプログラムをつくりたいと思って今、進めているところです。できたらそういうふうにしたいと思っています。
○花井委員
 ぜひお願いします。
○福井委員
 細かいことですが教えていただければと思います。、WHO協力センターに認定されという文章がございますが、これは国立国際医療研究センター全体が認定されるのか、それとも内部組織である国際感染症センターを認定されているのか、どういう形になっているのでしょうか。
○国立国際医療研究センター日下国際医療協力局長
 WCCの認定は大きな機関ごとでございませんで、例えば高齢化とUHCに関しては国際医療協力局がなっておりまして、感染症対策はDCCがなっておりますという形で、NCGM全体として認定をされているわけではなく、中の1つの組織、部局がその対象となっております。
○永井部会長
 先程特定看護師さん3人ということでしたが、もっと増やす必要があるのではないかと思います。他のナショセンも非常に少ない。センターで教育するのはなかなか大変でしょうから、看護大学校などと連携して増やしていく、あるいは指導者をまず養成しないといけないですね。この辺の方策はどのように考えていらっしゃいますか。
○国立国際医療研究センター木村看護部長
 今年度3名で、今年は4名を特定行為研修に出しております。また、日本看護協会の協力病院にはなっているのですけれども、今後、NCとして特定行為の研修をどうするか理事長、病院長と相談をしています。今後は積極的にいろいろな特定行為分野の看護師を育てていく必要性は感じております。
○永井部会長
 国立病院機構の救急で相当活躍していると聞いていますので、その辺をよく参考にされながら育成されたらよろしいのではないかと思います。
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続いて2-1から4-1までお願いいたします。
○国立国際医療研究センター栁澤事務局長
 2-1、54ページをお開きください。事務局長の栁澤でございます。よろしくお願いします。
 業務運営の効率化に関する事項、自己評価Bとさせていただいています。
 中長期目標の中で大きく3点、目標がございますけれども、効率的な業務運営体制、いわゆる弾力的な組織の再編と構築、それから、丸2で効率化による収支改善ということで経常収支率100%以上となるよう経営改善に取り組む。それから、後発医薬品を80%以上、一般管理費の削減。3つ目ですけれども、電子化の推進ということで電子化の推進と情報セキュリティー対策という3つの柱になってございます。
 まず最初に実績のほうでございますけれども、真ん中にございますが、効果的な業務運営体制でございますけれども、先程来からの外国人診療の問題もございますが、国際診療部を設置して、特に外国人の患者さんの割合が入院では4.5%、外来では4.2%、初診に至っては11.5%という高い比率を占めておりますので、外国人の通訳を増員するなど円滑な外国人診療に努めております。人間ドックセンターにつきましても、やはり外国語対応ができるようにということで増員をして、平成28年度では232件だったものが29年度では717件と、大幅に外国人診療を増やしております。
 手術件数でございますけれども、一人当たりの手術件数の増加を図るということで、内科系から外科系への体制の強化、麻酔科医の増員ということで、具体的には57ページをお開きいただきたいのですが、外科を臓器別に再編しましてご覧のような科に分けて、外科系の診療体制を強化しております。先程ご説明しましたように麻酔科医も増員しておりまして、右側の欄にございますように手術件数も平成22年度4,266件が、29年度は5,203件と大幅に増えております。その結果として、一人当たりの診療点数が右側の真ん中にございますけれども、22年度約6,000点だったものが今7,318点となっています。あわせて査定率についても、診療報酬の支払基金等の査定の状況を踏まえて院内で対策会議を開いて対策を講じた結果として、22年度1.03%から29年度0.35%と、かなり縮減してきてございます。
 54ページにお戻りいただきたいのですけれども、効率化による収支改善ということでございます。大きく申し上げて2つございまして、経常収支率の100%という話と定量的な後発医薬品の確保となっています。経常収支率100%につきましては、29年度目標97%を目指しておりましたが、残念ながら96.6%になっています。しかしながら、達成度99.6%ということで、概ね達成しているのではないかと思います。
 ちなみにやはり経常収支に大きな影響を及ぼすのは運営費交付金の削減でございますけれども、ここに書いてございませんけれども、平成22年度から運営費交付金が診療部門だけで26億円くらい減っております。パーセンテージにして30%くらい。他のNCに比べてもかなり高い率ではないかと思います。
 それから、減価償却です。平成22年から数年間かけて病棟と外来診療棟を整備しておりますけれども、この減価償却が毎年40億円くらい発生しておりますので、そういった大きなファクターがございまして、今なかなか達成ができない状況でございますけれども、ポテンシャルとしては非常に高いのではないかと思っています。
 55ページ、電子化の推進でございます。電子化の推進につきましては、真ん中にございますけれども、情報セキュリティー監査において平成29年度にありましたが、AA判定ということでかなり高い評価をいただいております。引き続きセキュリティー対策をしっかりやっていかなければいけないということで、私ども戸山地区と清瀬地区と国府台地区で3分割しておりますけれども、こういったものについて1回線に一本化したり、情報セキュリティー対策を高めております。
 それから、(3)にございますように職員に対するセキュリティー教育を定期的に行ってございます。
 59ページ、財務内容の改善に関する事項、自己評価をBにしてございます。中長期目標では自己収入の増加、資産及び負債の管理となっております。
 まず自己収入の増加でございますけれども、寄附金が真ん中辺にございます。28年度約5,200万円だったものが29年度は約8,100万円ということで155%増、件数に至っても182%増となっています。
 研究の競争的資金の獲得についてもかなり大きな伸びを示しておりまして、受託研究については28年度約9,200万円が29年度約1億8,700万円と、約200%増。それから、競争的資金については約18億円1から約25億円ということで、約140%の増となっています。
 資産及び負債の管理ということで、投資ルールを明確にして、その枠の中で投資をしていくということを行っております。
 61ページ、その他業務運営に関する重要事項については、自己評価Bでございます。2点ございます。エイズ裁判の和解に基づく対応、それから、人事の最適化となっています。
 エイズ患者さんの治療成功率は真ん中にございますけれども、実質的には毎月90%以上を達成しているということ。それから、紹介率、逆紹介率もかなり高い状況でございまして、地域のクリニックとか連携体制をかなり進めているのではないかと思っています。
 28年度に行った予備調査の結果から、血友病の患者さんあるいはHIVの患者さんについては、一般の方よりも10年早くがん年齢に達するということが、あるいは肺がんや消化器系のがんが多いということが判明しておりますので、29年度からがんの早期発見、早期治療のためにFDG-PETを用いたがんのスクリーニングを実施しております。
 人事の最適化につきましては、他のNCと同じように大学と連携協定あるいは連携大学院制度を活用しまして、いながらにして学位を取れるような形にしております。それから、クロスアポイントメント制度につきましては、現在3名実施しております。
 ということで64ページにございますように、29年度の全体の財務状況でございますけれども、右側の損益計算書をご覧いただきたいと思います。29年度の欄を見ていただきますと、経常収支率96.6%、総収支につきましては右から2つ目ですけれども、▲14.3億円となってございます。
 説明は以上でございます。
○永井部会長
 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。運営費交付金がだいぶ痛手になっているようですけれども、何か他に自己収入、例えば満屋先生の薬が潤すなどということはないのでしょうか。そういう方策は常に考えておく必要があると思います。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長長
 もちろん考えておりまして、そうなれば私も個人的に大変うれしく思います。ロイヤルティーは1年間で少なくとも10億から20億くらいは見込めるようになりますから、そういうことがあればかなり収支にも貢献できるのではないか。しかし、やはり今日ご提示しましたものは治療薬となるにしましても、恐らく7、8年から10年くらいはかかります。無論、私がいなくなってもお金は残りますので、そういうふうに希望します。
○永井部会長
 別に収入にならなくても、研究を大事にして育てていくということをぜひ心がけていただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○花井委員
 1つだけ、これはセンターに聞く話か事務局に聞く話か知らないのですけれども、常々謎なのですが、6ナショセンのうちに運営費交付金がセグメントでもろに診療部門に入っているのはここだけなのですが、何か特殊な事情があるのですか。他は一応、建て付け上は診療部門には運営費交付金を入れていないという形式をとっているではないですか。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 そうです。もともと例えば初期臨床研修の費用だとか救急の補助金というのは、運営費交付金で見ていたという時代があったというものであって、今、基本的には例えばそういったものは一般の要するに救急の補助金を自分たちで取りに行きなさいとか、そのような仕組みになっているということです。そこが大きな違いです。
○花井委員
 何が言いたいかというと、他のナショセンが診療部門は全く税金を入れずに頑張っていますという形式になっているのに、あたかもここだけが税金で応援してもらっているのはあまり余りよろしくないのかなと思って、会計上の何かの整理であれば。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 それは濡れ衣です。
○花井委員
 濡れ衣ですよね。紙で出てきてしまうと9,000万の税金が入っているとなってしまって、結構疑いをかけられるのでよくないと思うので、過去の経緯があると思うので、いつかの段階で整理されるかなと思ったらずっとここだけ残っているので、ずっと気になっていたので濡れ衣を晴らしておいたほうがいいかなといつも思うのですが、いいのでしょうか。
 財務諸表の中でセグメント別というので各ナショセン出ていますね。セグメント別になると、どこもここ以外は全部診療部門です。運営費交付金とかゼロになっています。国際だけはいつも9,000万円ほど税金が入っているようになってしまっていて、実態と違うなと思って、それがずっと気になっていたのですが言う機会がなくて、今日初めて言ったのです。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 またそこは確認します。基本的には入っていないのと、例えばACCみたいなところもございますので。
○花井委員
 そうかなと思いながら言う機会がなかったのですが。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 基本的に、他のナショセンと違うということはないです。
○花井委員 
 でもこのセグメント別情報を見ると、あたかも国際だけ他のナショセンと違うという形になっているのがあまりよくないかなと思った次第です。
○永井部会長
 他にいかがでしょうか。大西委員、どうぞ。
○大西委員
 64ページの表の損益計算書を拝見したときに、その他の経費というところだけを見ますと28年度、29年度で経費が12.1億円増えていることになっています。いろいろな収入上の努力をされてきたと思ったのですが、その他の経費のここにある増加の要因というのはどういうことなのでしょうか。ご説明があったかもしれないのですが、詳しく教えていただければと思います。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 先ほどの1点訂正で、花井委員のご指摘の0.9億円の話なのですが、これは初期臨床研修の要するに民間がもらっている補助金が、運営費交付金で措置されているというものですので、基本的には初期臨床研修というのは国際特有ですので、それが診療部門に入っているというだけであって、診療そのもので0.9億円0補助してもらっているよというものではなくて、研修にかかる費用という指導医の経費だということでございます。
○花井委員
 わかりました。だから他がゼロなのにここだけ数字が入っているから、ぎらつくかなと。他には書いていないので。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 ただ、後ろ指さされるようなものではございません。
○国立国際医療研究センター栁澤事務局長
 その他経費が確かに12億伸びておりますけれども、今それは手元に資料がございませんので、また後でご報告させていただきたいと思います。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。
 それでは、監事からこれまでの業務運営の状況、今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いします。
○国立国際医療研究センター水嶋監事
 監事の水嶋でございます。
 私どもの平成29年度の監事の監査結果、監査報告は、資料3-4に添付してございます。
 この監事の意見は6月20日付で理事長に提出しまして、同じものが大臣宛てに提出されているところです。
 監査報告の内容ですが、方法、その内容、監査の結果、これにつきましては監査報告書記載のとおりでございまして、昨年とほぼ変わりありませんので内容の説明は省略させていただきます。
 昨年もこの席で申し上げたわけでありますが、当法人の財務上の課題ということで少し触れさせていただきたいと思います。
 本年度は第2次中長期経営計画の中間年度、3年度目に当たるわけでありますが、本年度も14億3,000万の欠損金、当期総損失を計上しております。独法化以降、欠損金が累積をいたしまして、現在では100億の大台に達しているところであります。
 第2次中長期計画期間でも、最終的に累積で2億円の利益の計上を計画しているところでありますが、これは公表しておりますが、現在の収支の状況から判断しまして、この2億円というのは極めて厳しい状況下にあるのかなと思っております。
 私ども監事といたしましては、引き続き当法人の財務状況に重大な関心を持って、経営改善の進捗状況やら業務運営について注視してまいりたいと思っております。
 監事としてのご報告は以上でございます。
○永井部会長
 ありがとうございました。
 それでは、理事長からコメントをお願いいたします。
○国立国際医療研究センター國土理事長
 本日は長時間にわたりご検討いただき、ありがとうございました。
 水嶋監事から厳しい財務状況についてのご指摘がございまして、幹部一同、非常に深刻に受けとめております。
 今年度になりまして、さらに詳しくマイナス要因は何かということをセグメント別というよりは部門別に検討しましたところ、やはり2つの病院が赤字であることが明らかになりました。その要因についてもいろいろ検討しておりますが、どこの病院もそうかもしれませんけれども、病床利用率がやや低下しているとか、あるいは人件費が少し伸びてしまっているというようなことがございますので、職員全体で危機感を共有して経営の改善に当たりたいと思っております。お二人の院長ともいつも相談しながら次年度にかけて、なかなか累積赤字は私が就任したときは87億円で、いきなり100億円を超えてしまって非常に私自身がショックを受けておりますけれども、そのような形で頑張りたいと思います。幸いキャッシュフローにつきましては微減ぐらいで回っておりますので、何とか今は回っておりますが、これから先にかけて10年前ぐらいに揃えた医療機器の更新も始まる見込みもございますので、引き続き危機感を持って経営に当たりたいと思っております。ありがとうございます。
○永井部会長
 ありがとうございました。
 以上で議事は終了でございます。
 事務局から今後の流れについて連絡をお願いいたします。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐
 どうもありがとうございました。
 今後の流れについてご連絡をいたします。
 本日、ご議論をいただきました平成29年度業務実績評価につきましては、この後、本部会におけるご意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果につきまして法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容につきましては、後日、委員の先生の皆様にお送りいたします。
 委員におかれましては、評定記入用紙のご記入を終えている場合は机上に置いたままご退席いただきたいのと、後日、提出いただく場合は来週水曜日、8月1日までに事務局宛てにメールでご送付くださいますようお願いいたします。
 また、最後に本日配付しました資料の送付を希望される場合は、事務局より送付いたしますので、机上の封筒に資料をお入れになりご退席いただきますようお願い申し上げます。
 最後になりましたが、医療経営支援課長の樋口よりお礼のご挨拶をさせていただきます。
○医政局医療経営支援課樋口課長
 医療経営支援課長の樋口でございます。
 委員の皆様にはお暑い中、また、先週と本日の2日間、また、長時間にわたりまして活発なご議論をいただきまして、まことにありがとうございました。
 各法人から説明させていただきました業務実績や自己評価に対しまして、皆様方からいただきましたご意見等、こういった点を踏まえまして厚生労働大臣としての評価を検討させていただきたいと考えております。
 皆様には引き続き当部会のご協力をお願いいたしますとともに、今後もナショナルセンター、6法人でございますが、こちらへのご指導を引き続き賜れれば幸いと考えております。
 本日、先週と誠にありがとうございました。
○永井部会長
 ありがとうございました。
 以上で終了いたしますが、国立国際医療研究センターの皆様、長時間ありがとうございました。これで閉会といたします。